(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】航路計画装置、航路計画方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
B63B 79/40 20200101AFI20240710BHJP
G01C 21/22 20060101ALI20240710BHJP
G08G 3/00 20060101ALN20240710BHJP
【FI】
B63B79/40
G01C21/22
G08G3/00 A
(21)【出願番号】P 2022500264
(86)(22)【出願日】2021-01-08
(86)【国際出願番号】 JP2021000479
(87)【国際公開番号】W WO2021161696
(87)【国際公開日】2021-08-19
【審査請求日】2023-12-26
(31)【優先権主張番号】P 2020021623
(32)【優先日】2020-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000166247
【氏名又は名称】古野電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125645
【氏名又は名称】是枝 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100145609
【氏名又は名称】楠屋 宏行
(72)【発明者】
【氏名】山林 潤
(72)【発明者】
【氏名】森田 敬年
(72)【発明者】
【氏名】奥田 将斗
【審査官】秋山 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-206452(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 79/40
G01C 21/22
G08G 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画面に海図を表示する表示部と、
前記画面内の位置を指定する操作部と、
ウェイポイントの根拠点となり得る1又は複数の根拠点候補を位置と関連付けて記憶する記憶部と、
前記操作部が受付けたユーザの操作に応じて前記海図内にウェイポイントを設定するポイント設定部と、
前記海図内に前記ウェイポイントが設定されたときに、設定された前記ウェイポイントを基準とする範囲内にある前記根拠点候補を前記記憶部から取得する候補取得部と、
取得された前記根拠点候補の中から、設定された前記ウェイポイントの根拠点を決定する根拠点決定部と、
を備える、航路計画装置。
【請求項2】
取得された前記根拠点候補を前記表示部の画面に表示する表示制御部をさらに備え、
前記根拠点決定部は、前記表示部の画面に表示された前記根拠点候補のうち、前記操作部が受付けたユーザの操作により選択された根拠点候補を、前記ウェイポイントの根拠点として決定する、
請求項1に記載の航路計画装置。
【請求項3】
前記表示制御部は、所定の優先度に応じて並べられた前記根拠点候補のリストを前記表示部の画面に表示する、
請求項2に記載の航路計画装置。
【請求項4】
前記優先度は、前記ウェイポイントからの距離及び方向の少なくとも1つに基づく、
請求項3に記載の航路計画装置。
【請求項5】
前記優先度は、前記ウェイポイントからの距離が基準距離に近いほど高くなる、
請求項3に記載の航路計画装置。
【請求項6】
前記優先度は、前記ウェイポイントからの方向が船首方向に対して90度に近いほど高くなる、
請求項3に記載の航路計画装置。
【請求項7】
ユーザによる選択結果に基づき、前記優先度を調整する学習部をさらに備える、
請求項3ないし6の何れかに記載の航路計画装置。
【請求項8】
ユーザの操作に応じて海図内にウェイポイントを設定し、
前記海図内に前記ウェイポイントが設定されたときに、ウェイポイントの根拠点となり得る1又は複数の根拠点候補を位置と関連付けて記憶する記憶部から、設定された前記ウェイポイントを基準とする範囲内にある前記根拠点候補を取得し、
取得された前記根拠点候補の中から、設定された前記ウェイポイントの根拠点を決定する、
航路計画方法。
【請求項9】
海図内にウェイポイントを設定するポイント設定部、
前記海図内に前記ウェイポイントが設定されたときに、ウェイポイントの根拠点となり得る1又は複数の根拠点候補を位置と関連付けて記憶する記憶部から、設定された前記ウェイポイントを基準とする範囲内にある前記根拠点候補を取得する候補取得部、及び、
取得された前記根拠点候補の中から、設定された前記ウェイポイントの根拠点を決定する根拠点決定部、
としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航路計画装置、航路計画方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ユーザが作成した航行予定のルートを地図上に表示する表示部と、前記ルートの航行日時の入力を受け付ける日時入力部と、前記日時入力部に入力された航行日時に基づいて、航行に影響する情報であって位置及び日時に関連付けられた情報である注意情報を読み出す注意情報読出し部と、前記注意情報読出し部が読み出した前記注意情報が示す位置と、前記ルートの位置と、に基づいて少なくとも当該ルート上又はルートの近傍に位置する前記注意情報を抽出し、抽出した前記注意情報に基づいて前記ルートを検証するルート検証部と、を備える航路計画装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、航路計画時において、ウェイポイントは根拠点を伴って設定される。根拠点は、例えば灯台、ブイ、岬等の船上から確認しやすい物標である。航海士は、そのような根拠点を選びつつウェイポイントを設定する。
【0005】
ECDIS等で航路計画を行う場合には、ウェイポイント及び根拠点だけでなく、ウェイポイントから根拠点までの距離及び方向も入力する必要があり、手順が煩雑である。ECDISには、根拠点を手動で選択した後に、その根拠点からの距離及び方向を確認しながらウェイポイントを設定可能なものもある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、ウェイポイント及びその根拠点の設定が容易な航路計画装置、航路計画方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の一の態様の航路計画装置は、画面に海図を表示する表示部と、前記画面内の位置を指定する操作部と、ウェイポイントの根拠点となり得る1又は複数の根拠点候補を位置と関連付けて記憶する記憶部と、前記操作部が受付けたユーザの操作に応じて前記海図内にウェイポイントを設定するポイント設定部と、設定された前記ウェイポイントを基準とする範囲内にある前記根拠点候補を前記記憶部から取得する候補取得部と、取得された前記根拠点候補の中から、設定された前記ウェイポイントの根拠点を決定する根拠点決定部と、を備える。
【0008】
また、本発明の他の態様の航路計画方法は、ユーザの操作に応じて海図内にウェイポイントを設定し、ウェイポイントの根拠点となり得る1又は複数の根拠点候補を位置と関連付けて記憶する記憶部から、設定された前記ウェイポイントを基準とする範囲内にある前記根拠点候補を取得し、取得された前記根拠点候補の中から、設定された前記ウェイポイントの根拠点を決定する。
【0009】
また、本発明の他の態様のプログラムは、海図内にウェイポイントを設定するポイント設定部、ウェイポイントの根拠点となり得る1又は複数の根拠点候補を位置と関連付けて記憶する記憶部から、設定された前記ウェイポイントを基準とする範囲内にある前記根拠点候補を取得する候補取得部、及び、取得された前記根拠点候補の中から、設定された前記ウェイポイントの根拠点を決定する根拠点決定部、としてコンピュータを機能させる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ウェイポイント及びその根拠点の設定が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】船舶ICTシステムの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0013】
図1は、実施形態に係る航路計画装置1を備える船舶ICTシステム100の構成例を示すブロック図である。
【0014】
船舶ICTシステム100は、航路計画装置1の他に、例えばレーダー2、GNSS受信機3、ジャイロコンパス4、及びAIS5等を備えている。これらの機器は、例えばLAN(Local Area Network)等のネットワークNに接続されており、相互にネットワーク通信が可能である。
【0015】
航路計画装置1は、ECDIS(Electronic Chart Display and Information System)である。これに限らず、航路計画装置1は、GNSSプロッタであってもよい。航路計画装置1の具体的な構成例については後述する。
【0016】
レーダー2は、自船の周囲に存在するターゲットを検出し、ターゲットの位置及び速度ベクトルを表すターゲット追跡データ(TTデータ)を生成する。
【0017】
GNSS受信機3は、GNSS(Global Navigation Satellite System)から受信した電波に基づいて自船の位置を検出し、自船の位置を表す位置データを生成する。
【0018】
ジャイロコンパス4は、自船の船首方位を検出し、船首方位を表す方位データを生成する。これに限らず、GPSコンパス又は磁気コンパスが用いられてもよい。
【0019】
AIS(Automatic Identification System)5は、周囲の船舶及び陸上の管制にAISデータを送信するとともに、周囲の船舶及び陸上の管制からAISデータを受信する。これに限らず、VDES(VHF Data Exchange System)が用いられてもよい。
【0020】
図2は、航路計画装置1の構成例を示すブロック図である。航路計画装置1は、制御部10、記憶部17、操作部18、及び表示部19を備えている。
【0021】
制御部10は、CPU、RAM、ROM、及び入出力インターフェース等を含むコンピュータである。記憶部17は、不揮発性メモリ等の補助記憶装置である。制御部10のCPUは、記憶部17からRAMにロードされたプログラムに従って情報処理を実行する。
【0022】
プログラムは、例えば光ディスク又はメモリカード等の情報記憶媒体を介して供給されてもよいし、例えばインターネット又はLAN等の通信ネットワークを介して供給されてもよい。
【0023】
記憶部17には、プログラムの他に、海図データ21及び根拠点候補データベース(根拠点候補DB)22等も記憶されている。根拠点候補DB22は、外部に構築され、インターネット等の通信ネットワークを介してアクセスされてもよい。
【0024】
操作部18は、例えばトラックボール又はタッチセンサ等の、表示部19の画面内の位置を指定するポインティングデバイスである。表示部19は、例えば液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイ等の表示装置である。
【0025】
制御部10は、表示制御部11、ポイント設定部12、候補取得部13、根拠点決定部14、及び学習部15を備えている。これらの機能部は、制御部10のCPUがプログラムに従って情報処理を実行することによって実現される。これらの機能部の動作の詳細は後述する。
【0026】
図3は、根拠点候補DB22の内容例を示す図である。根拠点候補DB22は、ウェイポイントの根拠点となり得る根拠点候補を位置と関連付けて記憶している。根拠点候補DB22は、「ID」、「種類」、「位置」、「高さ」、及び「光達」等のフィールドを含んでいる。
【0027】
「ID」は、根拠点候補を識別するための識別子である。「種類」は、根拠点候補の種類を表す。根拠点候補の種類には、例えば灯台、ブイ、岬等の物標が含まれる。「位置」は、根拠点候補の位置を表す。根拠点候補の位置は、例えば緯度・経度の位置座標で表される。
【0028】
「高さ」は、根拠点候補の高さを表す。「光達」は、根拠点候補が灯台である場合に、灯台の光が到達する距離を表す。
【0029】
図4は、航路計画装置1において実現される、実施形態に係る航路計画方法の手順例を示すフロー図である。航路計画装置1の制御部10は、同図に示す情報処理をプログラムに従って実行する。
図5及び
図6は、画面表示例を示す図である。
【0030】
まず、制御部10は、記憶部17に記憶された海図データ21に基づいて、表示部19の画面に海
図NCを表示する(S11;表示制御部11としての処理)。
【0031】
次に、制御部10は、操作部18が受付けたユーザの操作に応じて、海
図NC内にウェイポイントWPを設定する(S12;ポイント設定部12としての処理)。
【0032】
図5に示すように、表示部19の画面には、操作部18と連動するポインタARが表示され、海
図NC内の指定された位置にウェイポイントWPが設定される。また、表示部19の画面には、ウェイポイントWPを辿るルートRTも表示される。海
図NC内には、灯台、ブイ、岬等の物標TGも含まれる。
【0033】
海
図NC内にウェイポイントWPが設定されると(S12:YES)、制御部10は、ウェイポイントWPを基準とする範囲内にある根拠点候補を根拠点候補DB22から抽出する(S13;候補取得部13としての処理)。
【0034】
具体的には、制御部10は、根拠点候補DB22に記憶された各根拠点候補の位置を参照し、各根拠点候補がウェイポイントWPを基準とする範囲に含まれるか否か判定し、範囲に含まれると判定された根拠点候補を抽出する。
【0035】
例えば、ウェイポイントWPを中心とする所定半径の円形状の範囲に含まれる根拠点候補が抽出される。これに限らず、例えば船舶の前後方向(船首-船尾)よりも左右方向(左舷-右舷)に長い楕円形状の範囲であってもよい。
【0036】
次に、制御部10は、抽出された各根拠点候補について、ウェイポイントWPからの距離及び方向を算出する(S14)。ウェイポイントWPから根拠点候補の方向は、船首方向に対する角度で表される。例えば右舷方向が90度、左舷方向が270度とされる。
【0037】
次に、制御部10は、抽出された各根拠点候補について優先度を算出する(S15)。優先度は、ウェイポイントWPからの距離及び方向の少なくとも1つに基づく。
【0038】
具体的には、優先度は、ウェイポイントWPから根拠点候補までの距離が基準距離に近いほど高くなってもよいし、ウェイポイントWPから根拠点候補に向かう方向が船首方向に対して90度に近いほど高くなってもよい。
【0039】
例えば、優先度は、ウェイポイントWPから根拠点候補までの距離d、ウェイポイントWPから根拠点候補の方向(船首方向に対する角度)θ、根拠点候補の種類別に設定された得点p、根拠点候補の高さh、及び根拠点候補が灯台である場合の光の到達距離dlなどを変数とする下記の関数fで表される。
この関数fの値が大きい又は小さいほど優先度が高くなる。ここで、α,β,γ,δ,εは、各変数の重み付け係数である。
【0040】
dは、所定の基準値d0との差分又はその逆数であってもよいし、θは、所定の基準角度θ0(例えば90度)との差分又はその逆数であってもよい。
【0041】
ウェイポイントWPから根拠点候補の方向(船首方向に対する角度)は、直前のウェイポイントからウェイポイントWPに向かう直線(直前の経路RT)の延長線と、ウェイポイントWPと根拠点候補を結ぶ直線とが成す角である。
【0042】
次に、制御部10は、抽出された根拠点候補のシンボル及びリストを、表示部19の画面に表示する(S16;表示制御部としての処理)。
【0043】
図6に示すように、表示部19の画面には、根拠点候補を表すシンボルCDが、根拠点候補の物標TGに付加されて表示される。また、ウェイポイントWPと根拠点候補の物標TGとの間には両者を結ぶラインDLが表示され、その脇には距離と方向を示す文字列KHが表示される。
【0044】
図の例では、ウェイポイントWPに対して1.5NM(nautical mile)の距離・90度(正横)の方向にある灯台、0.5NMの距離・320度の方向にあるブイ、及び3.1NMの距離・85度の方向にある灯台に、シンボルCDが付加されている。
【0045】
さらに、表示部19の画面には、根拠点候補のリストLSTも表示される。リストLSTでは、根拠点候補が上述の優先度が高い順に並べられている。
【0046】
図の例では、ウェイポイントWPに対して1.5NMの距離・90度の方向にある灯台、0.5NMの距離・320度の方向にあるブイ、及び3.1NMの距離・85度の方向にある灯台の項目が、この順でリストLSに含まれている。
【0047】
次に、制御部10は、表示部19の画面に表示された根拠点候補のうち、操作部18が受付けたユーザの操作により選択された根拠点候補を、ウェイポイントWPの根拠点として決定する(S17,S18;根拠点決定部14としての処理)。
【0048】
図6に示すように、根拠点候補の選択は、根拠点候補であることを表すシンボルCD又はリストLSTに含まれる根拠点候補の項目がポインタARにより指定されることで実現される。
【0049】
なお、画面表示が煩雑になることを避けるため、リストLSTで選択された根拠点候補の項目に対応するシンボルCDのみを他のシンボルCDと識別表示し、ラインDL及び文字列KHを付加してもよい。
【0050】
以上に説明した実施形態によれば、ウェイポイントが設定されると、その付近の根拠点候補がユーザに提示され、ユーザはその中から根拠点を選択すれば良いので、ウェイポイント及びその根拠点の設定が容易となる。また、ユーザに提示されるリストでは、根拠点候補が優先度に応じて並べられており、ユーザは優先度が上位の根拠点候補から確認すれば良いので、根拠点の効率的な選択が可能となる。
【0051】
なお、抽出された根拠点候補の中から最も優先度が高いものを自動的に根拠点として決定してもよいが、ウェイポイント及びその根拠点の選定は航海士の経験に基づくものであり、絶対的な基準がある訳ではなく、人の好みがある程度入り得るものであるので、上記実施形態のように、根拠点候補をユーザに提示して選択を受け付けるように構成することが好ましい。
【0052】
制御部10は、ユーザによる選択結果に基づいて優先度を調整してもよい(学習部15としての処理)。すなわち、優先度が2番目以降の根拠点候補が選択された場合に、優先度を算出するための関数の重み付け係数を最適化することで、個人の嗜好に合わせることが可能となる。優先度の調整は、例えば選択された根拠点候補を正解とする教師あり学習を行うことによって実現できる。
【0053】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が当業者にとって可能であることはもちろんである。
【符号の説明】
【0054】
1 海図表示装置、10 制御部、11 表示制御部、12 ポイント設定部、13 候補取得部、14 根拠点決定部、15 学習部、17 記憶部、18 操作部、19 表示部、2 レーダー、3 GNSS受信機、4 ジャイロコンパス、5 AIS、100 船舶ICTシステム