(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】回転運動システム用の磁気ストッパ
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20240710BHJP
B23Q 1/52 20060101ALN20240710BHJP
B23Q 16/06 20060101ALN20240710BHJP
【FI】
H01L21/68 P
B23Q1/52
B23Q16/06 Z
(21)【出願番号】P 2022500546
(86)(22)【出願日】2020-06-18
(86)【国際出願番号】 EP2020066917
(87)【国際公開番号】W WO2021004747
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2023-01-17
(32)【優先日】2019-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】502149218
【氏名又は名称】エテル・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】タミグニオー・フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ドロヴァル・ヤニック
【審査官】内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-027664(JP,A)
【文献】特開2000-064694(JP,A)
【文献】中国実用新案第206035166(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
B23Q 1/52
B23Q 16/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースユニット(102)と、該ベースユニット(102)に回転可能に取り付けられた回転ユニット(104)とを含む回転運動システム(100)用の磁気ストッパ(10)であって、該磁気ストッパ(10)が、前記ベースユニット(102)に取り付けられるように構成されている不動部分(12)と、前記回転ユニット(104)に取り付けられるように構成されている回転アーム(30)とを含んでおり、不動部分(12)が、
回転アーム(30)の末端部(32b)を収容するように構成された回転アームストッパ部(14)と、
可動の装置と
を含んでいる、前記磁気ストッパにおいて、
前記可動の装置が、磁石ホルダ(26)と、該磁石ホルダ(26)に取り付けられつつ回転アームストッパ部(14)内で可動であるように適合された可動の磁石(28)とを含んでおり、回転運動システム(100)が動作しているときに回転ユニット(104)の過剰な移動を防止するために不動部分(12)及び回転部分(30)がそれぞれベースユニット(102)及び回転ユニット(104)に取り付けられている場合に、前記可動の磁石(28)と磁気的に相互作用するように構成された回転アーム磁石(36)を回転アーム(30)が含んで
おり、回転アーム磁石(36)の円形状の軌道が、回転アームストッパ部(14)内で、10~20°の間、好ましくは10~15°の間で延びていることを特徴とする磁気ストッパ。
【請求項2】
回転アーム(30)が不動部分(12)の回転アームストッパ部(14)内で移動するときに磁石の極が回転アーム磁石(36)の円形状の軌道の接線と一直線になるように、磁石ホルダ(26)が前記可動の磁石(28)を保持するように形作られていることを特徴とする請求項1に記載の磁気ストッパ(10)。
【請求項3】
回転アーム(30)が前記回転アームストッパ部(14)内で移動するときに可動の磁石(28)及び回転アーム磁石(36)の同一の極が互いに対向し、これにより接触することなく互いに反発するように、可動の磁石(28)及び回転アーム磁石(36)が位置決めされていることを特徴とする請求項1又は2に記載の磁気ストッパ(10)。
【請求項4】
回転アーム(30)の末端部(32b)が磁石収容部(34)を含んでおり、該磁石収容部では、回転ユニット(104)がベースユニット(102)に対して相対的に回転しているときに回転アーム磁石(36)が該回転アーム磁石(36)の円形状の軌道の接線と一直線であるその逆の極N-Sをもって取り付けられていることを特徴とする請求項1~
3のいずれか1項に記載の磁気ストッパ(10)。
【請求項5】
可動の装置が、不動部分(12)と結合された基端部(24a)及び磁石ホルダ(26)に結合された末端部(24b)を含むブレード(24)を更に含んでおり、該ブレード(24)が、回転アーム磁石(36)が前記可動の磁石(28)と磁気的に相互作用しているときに湾曲するように構成されていることを特徴とする請求項1~
4のいずれか1項に記載の磁気ストッパ(10)。
【請求項6】
不動部分(12)がケーシング(13)を含んでおり、ブレード(24)は、該ブレード(24)が停止構成にあるときに、前記ケーシングの側方側(13a,13b)から等距離の軸線に沿ってケーシング(13)内に位置決めされていることを特徴とする請求項
5に記載の磁気ストッパ(10)。
【請求項7】
回転アームストッパ部(14)が、前記軸線に関して傾斜された2つの逆側(18a,18b)を含んでおり、磁石ホルダ(26)が、回転ユニット(104)があらかじめ規定された回転を超える場合に前記各逆側(18a,18b)に対して接触することを特徴とする請求項
6に記載の磁気ストッパ(10)。
【請求項8】
回転ユニット(104)があらかじめ規定された回転を超える場合に2つの各逆側(18a,18b)に対して磁石ホルダ(26)が接触すること防止するために、磁気ストッパの不動部分(12)が不動の磁石(22a,22b)を更に含んでいることを特徴とする請求項1~
6のいずれか1項に記載の磁気ストッパ(10)。
【請求項9】
可動の磁石(28)が直方体の形状を有している一方、回転アーム磁石(36)が円筒状の形状を有していることを特徴とする請求項1~
8のいずれか1項に記載の磁気ストッパ(10)。
【請求項10】
ベースユニット(102)に回転可能に取り付けられた回転ユニット(104)を含む回転運動システムであって、該回転運動システムが、請求項1~
9のいずれか1項に記載の磁気ストッパ(10)を更に含んでおり、磁気ストッパの回転アーム(30)が回転ユニット(104)に取り付けられている一方、磁気ストッパの不動部分(12)がベースユニット(102)に取り付けられていることを特徴とする回転運動システム。
【請求項11】
回転アーム(30)が、回転ユニット(104)の側方部に取り付けられているとともに、該側方部の外側エッジから径方向外方へ延びていることを特徴とする請求項
10に記載の回転運動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転運動システムの回転ユニット用の磁気ストッパに関するものである。本発明は、磁気ストッパを備え、X-Y運動システムに取り付けられた回転システムを含む高精度位置決めシステムに関するものでもある。
【背景技術】
【0002】
通常、ベースユニットに回転可能に取り付けられたウエハチャックのタイプの回転運動システムは、ウエハチャック(以下、回転ウエハ保持ユニットという。)の表面に配置された真空孔又はリングパターンを通してウエハの後ろ側へ負圧を及ぼすことでウエハを適当な位置に保持するために、回転ウエハ保持ユニット及び真空源に結合された真空配管を含んでいる。したがって、ウエハ保持ユニットは、連続回転運動に耐えることができず、さもなければ、真空配管は、真空源から外れ、ウエハチャックに巻き付けられ、これにより、配管に摩耗及び引裂きが生じ、回転運動システムに損傷が生じることがあり得る。
【0003】
一般的に、回転ウエハ保持ユニットは、基準位置から時計方向及び反時計方向の両方向へ回転駆動されるように構成されている。回転ウエハ保持ユニットの連続回転を阻止するために、様々な機械的なストッパが既に存在しており、これにより、時計方向又は反時計方向における駆動時に、保持ユニットが180°をやや超えて回転することが可能である。
【0004】
図1には、従来技術の一部である機械的なストッパの一例が示されている。機械的なストッパは、回転運動システムのバースステーションBに取り付けられた不動部分Aを含んでおり、ピンCは、ベースステーションBに回転可能に取り付けられた回転ウエハ保持ユニットEを有する統合部分を形成する径方向の延長部分Dに垂直に取り付けられている。機械的なストッパの不動部分は、旋回軸Gに結合されたショックアブソーバFと、旋回軸の両側に配置された2つのハードストップHとを含んでいる。ウエハ保持ユニットEのピンCは、回転ウエハ保持ユニットEの回転方向に応じてショックアブソーバFの各側に当接するように構成されている。ピンCとショックアブソーバFの各側の間の当接により、回転ウエハ保持ユニットを次第に停止させるために、後者が旋回軸G周りに回転される。
【0005】
回転ウエハ保持ユニットEがエラーモードに至り、あらかじめ規定された回転を超える場合には、保持ユニットのピンCがショックアブソーバFに当接し、すると、ショックアブソーバは、回転ウエハ保持ユニットを停止させるために各ハードストップHと接触するまで旋回軸G周りに回転する。
【0006】
しかし、クリーンルーム環境アプリケーションのための精密位置システムのために機械的なショックは回避されるべきである。なぜなら、当該ショックにより、半導体装置の製造のためのフロントエンドアプリケーション及びバックエンドアプリケーションの両方に対して重大なネガティブな影響を有し得る粒子が生成されることがあるためである。
【0007】
図2には、従来技術の一部であって、大きな加速を受けるときに
図1のショックアブソーバが両ハードストップHに対して揺動し当接することを防止するために開発された機械的なストッパが示されている。これは、特に、
図1に示されたタイプの回転位置システムが、高精度位置決めアプリケーションのために、大きな加速度が生じやすいX-Y運動システムに取り付けられている場合である。
【0008】
ストッパは、旋回軸Gに旋回可能に取り付けられた基端部と、
図1の回転ウエハ保持ユニットEのピンによって当接されるように配置された末端部とを有するアームを含んでいる。磁石Kが、強磁性材料から成るブラケットL内に位置決めされたアームに取り付けられている。X-Y運動システムの加速時には、ラケットLの各逆側に対して作用され、これにより、加速の方向に応じて第1のロック位置又は第2のロック位置への磁気引力によってアームがロックされる。したがって、当該機械的なストッパにより、大きな加速を受けるときに両ハードストップHでの機械的なショックの問題が克服される。
【0009】
図2の機械的なストッパによってもまだ、ピンCとアームの末端部の間の当接によってのみならずアーム回転時の旋回軸Gとアームの間に生じる摩擦によって生じ得る粒子が発生する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の1つの目的は、回転運動システムの回転ユニットのために、粒子のないストッパ又は少なくともよりわずかな粒子を生成するストッパを提供することにある。
【0011】
したがって、本発明の他の目的は、回転運動システムの回転ユニットのために、弾性的かつ耐久性のあるストッパを提供することにある。
【0012】
本発明の更なる目的は、厳重なクリーンルーム分離及び基準に適合する高精度位置決めシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
これら目的は、ベースユニットと、当該ベースユニットに回転可能に取り付けられた回転ユニットとを含む回転運動システム用の磁気ストッパによって達成される。磁気ストッパは、ベースユニットに取り付けられるように構成された不動部分と、回転ユニットに取り付けられるように構成された回転アームとを含んでいる。不動部分は、回転アームの末端部を収容するように構成された回転アームストッパ部と、磁石ホルダ及び当該磁石ホルダに取り付けられ回転アームストッパ部内で移動可能に適合された可動の磁石を含む可動の装置とを含んでいる。回転アームは、回転運動システムが動作しているときに回転ユニットの過剰な移動を防止するために不動部分及び回転アームがそれぞれベースユニット及び回転ユニットに取り付けられている場合に可動の磁石と磁気的に相互作用するように構成された回転アーム磁石を含んでいる。
【0014】
一実施例では、回転アームが不動部分の回転アームストッパ部内で移動するときに磁石の極N-Sが回転アーム磁石の円形状の軌道の接線と一直線になるように、磁石ホルダが可動の磁石を保持するように形作られている。
【0015】
一実施例では、回転アームが回転アームストッパ部内で移動するときに可動の磁石及び回転アーム磁石の同一の極が互いに対向し、これにより接触することなく互いに反発するように、可動の磁石及び回転アーム磁石が位置決めされている。
【0016】
一実施例では、回転アーム磁石の円形状の軌道が、回転アームストッパ部内で、10~20°の間、好ましくは10~15°の間で延びている。
【0017】
一実施例では、回転アームの末端部が磁石収容部を含んでおり、該磁石収容部では、回転ユニットがベースユニットに対して相対的に回転しているときに回転アーム磁石が該回転アーム磁石の円形状の軌道の接線と一直線であるその逆の極N-Sをもって取り付けられている。
【0018】
一実施例では、可動の装置は、不動部分に結合された基端部と、磁石ホルダに結合された末端部とを含むブレードを更に含んでいる。ブレードは、回転アーム磁石が可動の磁石と磁気的に相互作用する時に湾曲するように構成されている。
【0019】
一実施例では、不動部分はケーシングを含んでいる。ブレードは、当該ブレードが非動作構成にあるときにケーシングの側方側から等距離の軸線に沿ってケーシング内に位置決めされる。
【0020】
一実施例では、回転アームストッパ部は前記軸線に関して傾斜された2つの逆側を含んでいる。磁石ホルダは、回転ユニットがあらかじめ規定された回転を超える場合に、前記逆側のそれぞれに対して接触する。
【0021】
一実施例では、回転ユニットがあらかじめ規定された回転を超える場合に回転アームストッパ部の2つの各逆側に対して磁石ホルダが接触すること防止するために、磁気ストッパの不動部分が、ケーシングに取り付けられた不動の磁石を更に含んでいる。
【0022】
一実施例では、可動の磁石が直方体の形状を有している一方、回転アーム磁石が円筒状の形状を有している。
【0023】
本発明の他の態様は、ベースユニットに回転可能に取り付けられた回転ユニットを含む回転運動システムに関するものである。回転運動システムは、上述のような磁気ストッパを更に含んでいる。磁気ストッパの回転アームが回転ユニットに取り付けられている一方、磁気ストッパの不動部分はベースユニットに取り付けられている。
【0024】
一実施例では、回転アームは、回転ユニットの側方部に取り付けられているとともに、該側方部の外側エッジから径方向外方へ延びている。
【0025】
本発明の他の態様は、X-Y運動システムと、当該X-Y運動システムに取り付けられた回転運動システムとを含む高精度位置決めシステムに関するものである。
【0026】
例示され、図面に図示されたいくつかの実施例の説明により、本発明がより良好に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】ベースユニットに回転可能に取り付けられ、従来技術によるストッパを含むウエハ保持ユニットの平面図である。
【
図2】従来技術による改善されたストッパの斜視図である。
【
図3】本発明の一実施例による磁気ストッパの斜視図である。
【
図4】
図3の磁気ストッパの他の角度からの部分的な斜視図である。
【
図5】ベースユニットに回転可能に取り付けられ、
図3及び
図4の磁気ストッパを含むウエハ保持ユニットの部分的な斜視図である。
【
図7】
図3及び
図4の磁気ストッパの平面図であり、回転アームは、磁気ホルダの不動部分と磁気的に相互作用しようとしている。
【
図8】
図7と類似の図であり、回転アームは、回転アーム磁石と可動の磁石の間の反発平衡状態に対応する静止位置に達している。
【
図10】回転ユニットがあらかじめ規定された回転を超え、エラーモードに至るときの
図8と類似の図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図5及び
図6を参照すると、回転運動システム100は、ベースユニット102と、ベースユニット102に回転可能に取り付けられた回転ユニット、例えば回転ウエハ保持ユニット104とを含んでいる。回転ユニットは、基準位置から時計方向及び反時計方向の両方向へ±182.5°のあらかじめ規定された範囲内で回転駆動されるように構成されている。
【0029】
回転運動システム100は、高精度位置決めシステムを提供するためにX-Y運動システムに取り付けられることができる。高精度位置決めシステムは、特にフロントエンドアプリケーション及びバックエンドアプリケーションに良好に適合されており、当該フロントエンドアプリケーション及びバックエンドアプリケーションでは、プロセス又は制御工具とウエハ又は半導体チップの間の精密なアライメントが最も重要である。
【0030】
有利な実施例では、回転運動システム100は、動作条件下で摩擦も衝撃も受けない磁気ストッパを含んでいる。磁気ストッパ10は、ベースユニット102に取り付けられた不動部分12と、回転ユニット104に取り付けられた回転アーム30とを含んでいる。
図5に図示されているように、回転アーム30の基端部32aは、例えば回転ユニット104の側方部に配置された空洞部内に、回転ユニット104に固定して取り付けられている。回転アーム30は、径方向に延びているとともに、1つの水平面内で、回転ユニット104の側方部の外側エッジから外方へ突出している。磁気ストッパ10の不動部分12は、回転アーム30の末端部32bが不動部分12の一部と磁気的に相互に作用し得るように、ベースユニット102の取付ベース部103に固定されている。
【0031】
とりわけ、例えば
図3及び
図4に示されるような磁気ストッパ10の不動部分12はケーシング13を含んでおり、当該ケーシングの内部にはブレード24が取り付けられている。ブレード24は、例えばクランプ装置25によってケーシング13に結合された基端部24aを含んでいる。磁石ホルダ26は、ブレード24の末端部24bに結合されている(
図7)。磁石ホルダ26は、ブレード24の末端部の一方側に対して配置された第1の磁石ホルダ固定部26aと、ブレード24の末端部の反対側に対して配置された第2の磁石ホルダ固定部26bとを含んでいるとともに、第1の固定部26aに結合されており、これにより、これらの間で末端部24bが押し込まれる。第2の磁石ホルダ固定部26bは、例えば、
図3及び
図4に図示されているように、第1の磁石ホルダ固定部26aに螺着されることが可能である。
図7に示されるように、ブレード24は、当該ブレードが非動作構成にあるときに、ケーシングの側方側13a,13bから等距離の軸線に沿ってケーシング13内に位置決めされる。回転アームストッパ部14は、前記軸線に関して傾斜された2つの逆側18a,18bを含んでいる。
【0032】
回転アーム30の末端部32bは、例えば空洞部の形態の磁石収容部34を含んでおり、当該磁石収容部の内部には、好ましくは円筒状の形状を有する分極化された回転アーム磁石36が取り付けられている。回転アーム磁石36は、回転ユニット104が回転運動システム100のベースユニット102に対して相対的に回転しているときに、磁石36の逆の極N-Sが回転アーム磁石36の円形状の軌道の接線と一直線であるように、磁石収容部34において向けられている。
【0033】
不動部分12の磁石ホルダ26は、
図7に示されるようにブレード24が非動作構成にあるときに磁石の極N-Sも回転アーム磁石36の円形状の軌道の接線と一直線であるように、
図3に図示されるように好ましくは直方体の形状を有する可動の磁石28を保持するように形作られている。可動の磁石28及び回転アーム磁石36は、回転ユニット104の回転アーム36が磁気ストッパ10の回転アームストッパ部14に係合するときに各磁石28,36が互いに対向するように位置決めされており、これにより、接触することなく互いに反発しあう。可動の磁石28の直方体の形状及び回転アーム磁石36の円筒状の形状は、後者が互いに相互作用するときに、これら磁石28,36の間の相対的な位置の変化を考慮に入れることが好ましい。
【0034】
図7には、非動作構成から動作構成へ変化しようとしている磁気ストッパ10が示されている。回転保持ユニット104は、可動の磁石28と磁気的に相互作用するのに十分近い位置へ到達することなく、回転アームストッパ部14と係合するために、回転アーム磁石36が174°の円弧に沿って基準位置から移動するように回転駆動される。
【0035】
回転保持ユニット104の更なる回転に際して、回転アーム磁石36は、可動の磁石38と回転アーム磁石36の同極間、例えばN極間の反発が生じ始め、これにより、両磁石36,38間の磁気的な相互作用が例えば
図8に示されるような反発均衡状態に達するまで、ブレード24の湾曲が開始される。この実施例では、回転アーム磁石36が基準位置から約182.5°の円弧に沿って移動するように回転保持ユニット104が回転駆動されるときに、反発平衡状態に達する。
【0036】
回転保持ユニット104が逆方向へそのあらかじめ規定された範囲、すなわち182.5°にわたって駆動されると、ブレード24は、回転アーム磁石36が回転アームストッパ部14の他の側に係合するまで、その非動作構成へ戻り、そうすると、この実施例では、可動の磁石38及び回転アーム磁石36の同極間、すなわちS極間の磁気的な反発が消磁はじめ、これにより、両磁石36,38間の磁気的な相互作用が反発平衡状態に到達するまでブレード24が逆方向へ湾曲し始める。
【0037】
回転保持ユニット104がエラーモードとなり、
図10に示されるように±182.5°のそのあらかじめ規定された範囲を超える場合には、回転アーム30の末端部32bは、回転アームストッパ部のそれぞれ傾斜した逆側18a,18bに対してもたらされる磁気ホルダ26と接触することとなる。傾斜した両逆側18a,18bは、回転運動システムのモータの最大トルクに耐えることが可能である。
【0038】
図9に図示される実施例では、回転運動システムの摂動又は加速による揺動のような、回転ユニットがそのあらかじめ規定された範囲を超える場合に磁石ホルダ26が各逆側18a,18bに対して接触するのを防止するために、磁気ストッパ10の不動部分12は、好ましくは傾斜した両逆側18a,18bの近傍において、ケーシング13に取り付けられた2つの不動の磁石22a,22bを含んでいるとともに、以下の2つの反発力によって制限されている:i)可動の磁石28と回転アーム磁石36の間で生じる1つの反発力及びii)可動の磁石28と各不動の磁石22a,22bの間の1つの反発力。
【0039】
上述のような磁気ストッパの構成は、衝撃がなく、また磁気ストッパの異なる部分間でいかなる摩擦も生じないため、動作時にいかなる粒子も生じさせないという利点を有している。磁気ストッパは、従来の機械的なストッパより弾性的であるとともに耐久性もある。これは、主に異なるファクタによるものであり、特に:
-旋回部を有する従来のストッパと異なり、ブレードは、旋回レベルにおいて発生する摩擦による摩耗及び引裂きを受けない;
-回転ユニットがエラーモードとなり、あらかじめ規定された回転の角度を超えるとしても、ブレードが受ける、生じる最大の応力振幅が、通常の動作条件の間その疲労強さ未満に維持される;
-ハードストップを有する従来のストッパと異なり、可動の磁石と回転アーム磁石の間の磁気的な相互作用は、摩耗及び引裂きの原因となる接触を回避する。
【0040】
磁気ストッパは、X-Y運動システム及びこれに取り付けられた回転運動システムを含む高精度位置システムやクリーンルームアプリケーション(用途)に特に適合するが、磁気ストッパは、回転ユニットがベースユニットに回転可能に取り付けられている他の用途にも用いられることが可能である。
【0041】
加えて、不動部分の可動の磁石は、上記有利な実施例により磁石ホルダを介してブレードに結合されているが、摩擦がないか、摩擦が低減された可動の磁石をガイドする他の配置を特許請求の範囲内で実施することが可能である。例えば、不図示の実施例によれば、可動の磁石28を支持するためのブレードの使用に代えて、可動の磁石は、他の回転アームの末端部に取り付けられることができる一方、この追加的な回転アームの基端部は、上記有利な実施形態によりブレードの末端部に結合されるときに、回転アームストッパ部内で回転アームの末端部に取り付けられた可動の磁石が可動の磁石と同一の円形軌道に従うのに適合されているように、磁気ストッパの不動部分における旋回軸の周りに取り付けられている。好ましくは、この追加的な回転アームは、従来のステンレス鋼軸受よりも大幅に低い摩擦特性を有することで知られたセラミック軸受を介して旋回軸の周りに取り付けられている。
なお、本発明は、以下の態様も包含し得る:
1.ベースユニット(102)と、該ベースユニット(102)に回転可能に取り付けられた回転ユニット(104)とを含む回転運動システム(100)用の磁気ストッパ(10)であって、該磁気ストッパ(10)が、前記ベースユニット(102)に取り付けられるように構成されている不動部分(12)と、前記回転ユニット(104)に取り付けられるように構成されている回転アーム(30)とを含んでおり、不動部分(12)が、
回転アーム(30)の末端部(32b)を収容するように構成された回転アームストッパ部(14)と、
可動の装置と
を含んでいる、前記磁気ストッパにおいて、
前記可動の装置が、磁石ホルダ(26)と、該磁石ホルダ(26)に取り付けられつつ回転アームストッパ部(14)内で可動であるように適合された可動の磁石(28)とを含んでおり、回転運動システム(100)が動作しているときに回転ユニット(104)の過剰な移動を防止するために不動部分(12)及び回転部分(30)がそれぞれベースユニット(102)及び回転ユニット(104)に取り付けられている場合に、前記可動の磁石(28)と磁気的に相互作用するように構成された回転アーム磁石(36)を回転アーム(30)が含んでいることを特徴とする磁気ストッパ。
2.回転アーム(30)が不動部分(12)の回転アームストッパ部(14)内で移動するときに磁石の極が回転アーム磁石(36)の円形状の軌道の接線と一直線になるように、磁石ホルダ(26)が前記可動の磁石(28)を保持するように形作られていることを特徴とする上記1.に記載の磁気ストッパ(10)。
3.回転アーム(30)が前記回転アームストッパ部(14)内で移動するときに可動の磁石(28)及び回転アーム磁石(36)の同一の極が互いに対向し、これにより接触することなく互いに反発するように、可動の磁石(28)及び回転アーム磁石(36)が位置決めされていることを特徴とする上記1.又は2.に記載の磁気ストッパ(10)。
4.回転アーム磁石(36)の円形状の軌道が、回転アームストッパ部(14)内で、10~20°の間、好ましくは10~15°の間で延びていることを特徴とする上記1.~3.のいずれか1つに記載の磁気ストッパ(10)。
5.回転アーム(30)の末端部(32b)が磁石収容部(34)を含んでおり、該磁石収容部では、回転ユニット(104)がベースユニット(102)に対して相対的に回転しているときに回転アーム磁石(36)が該回転アーム磁石(36)の円形状の軌道の接線と一直線であるその逆の極N-Sをもって取り付けられていることを特徴とする上記1.~4.のいずれか1つに記載の磁気ストッパ(10)。
6.可動の装置が、不動部分(12)と結合された基端部(24a)及び磁石ホルダ(26)に結合された末端部(24b)を含むブレード(24)を更に含んでおり、該ブレード(24)が、回転アーム磁石(36)が前記可動の磁石(28)と磁気的に相互作用しているときに湾曲するように構成されていることを特徴とする上記1.~5.のいずれか1つに記載の磁気ストッパ(10)。
7.不動部分(12)がケーシング(13)を含んでおり、ブレード(24)は、該ブレード(24)が停止構成にあるときに、前記ケーシングの側方側(13a,13b)から等距離の軸線に沿ってケーシング(13)内に位置決めされていることを特徴とする上記6.に記載の磁気ストッパ(10)。
8.回転アームストッパ部(14)が、前記軸線に関して傾斜された2つの逆側(18a,18b)を含んでおり、磁石ホルダ(26)が、回転ユニット(104)があらかじめ規定された回転を超える場合に前記各逆側(18a,18b)に対して接触することを特徴とする上記7.に記載の磁気ストッパ(10)。
9.回転ユニット(104)があらかじめ規定された回転を超える場合に2つの各逆側(18a,18b)に対して磁石ホルダ(26)が接触すること防止するために、磁気ストッパの不動部分(12)が不動の磁石(22a,22b)を更に含んでいることを特徴とする上記1.~7.のいずれか1つに記載の磁気ストッパ(10)。
10.可動の磁石(28)が直方体の形状を有している一方、回転アーム磁石(36)が円筒状の形状を有していることを特徴とする上記1.~9.のいずれか1つに記載の磁気ストッパ(10)。
11.ベースユニット(102)に回転可能に取り付けられた回転ユニット(104)を含む回転運動システムであって、該回転運動システムが、上記1.~10.のいずれか1つに記載の磁気ストッパ(10)を更に含んでおり、磁気ストッパの回転アーム(30)が回転ユニット(104)に取り付けられている一方、磁気ストッパの不動部分(12)がベースユニット(102)に取り付けられていることを特徴とする回転運動システム。
12.回転アーム(30)が、回転ユニット(104)の側方部に取り付けられているとともに、該側方部の外側エッジから径方向外方へ延びていることを特徴とする上記11.に記載の回転運動システム。
13.X-Y運動システムと、上記11.又は12.に記載の回転運動システムとを含む高精度位置決めシステム。
【符号の説明】
【0042】
100 回転運動システム
102 ベースユニット
103 取付ベース部
104 回転ユニット
回転ウエハ保持ユニット
10 磁気ストッパ
12 不動部分
13 ケーシング
13a,13b 側方側
14 回転アームストッパ部
18a,18b 傾斜した逆側
22a,22b 不動の磁石(一実施例)
可動の装置
可動の磁石支持部
24 ブレード
24a 基端部
24b 末端部
25 ブレード結合手段
クランプ装置
26 磁石ホルダ
26a 第1の磁石ホルダ固定部
26b 第2の磁気ホルダ固定部
28 可動の磁石
30 回転アーム
32a 基端部
32b 末端部
34 磁石収容部
36 回転アーム磁石