(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】灯具ユニット及び車両用灯具
(51)【国際特許分類】
F21S 41/663 20180101AFI20240710BHJP
F21S 41/143 20180101ALI20240710BHJP
F21S 41/151 20180101ALI20240710BHJP
F21S 41/20 20180101ALI20240710BHJP
F21W 102/155 20180101ALN20240710BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20240710BHJP
【FI】
F21S41/663
F21S41/143
F21S41/151
F21S41/20
F21W102:155
F21Y115:10
(21)【出願番号】P 2022501711
(86)(22)【出願日】2021-01-20
(86)【国際出願番号】 JP2021001906
(87)【国際公開番号】W WO2021166533
(87)【国際公開日】2021-08-26
【審査請求日】2023-10-25
(31)【優先権主張番号】P 2020025176
(32)【優先日】2020-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 昭則
(72)【発明者】
【氏名】市川 知幸
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正和
【審査官】下原 浩嗣
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-086306(JP,A)
【文献】特開2016-004665(JP,A)
【文献】特開2013-149412(JP,A)
【文献】特開2010-153076(JP,A)
【文献】特開2014-038700(JP,A)
【文献】特開平05-238308(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/663
F21S 41/143
F21S 41/151
F21S 41/20
F21W 102/155
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1カットオフラインを有する第1ロービーム用配光パターンを出射するように構成された第1ロービーム用照明ユニットと、
第2カットオフラインを有する第2ロービーム用配光パターンを出射するように構成された第2ロービーム用照明ユニットと、
前記第1ロービーム用照明ユニットと前記第2ロービーム用照明ユニットとの間に配置され、ハイビーム用配光パターンを出射するように構成されたハイビーム用照明ユニットと、を備え、
前記第1ロービーム用照明ユニットと、前記第2ロービーム用照明ユニットと、前記ハイビーム用照明ユニットは、第1の方向において並んで配置され
ており、
前記ハイビーム用照明ユニットが点灯している状態で、前記第1ロービーム用照明ユニットは点灯している一方、前記第2ロービーム用照明ユニットは消灯している、灯具ユニット。
【請求項2】
前記第1ロービーム用照明ユニットは、
光を出射する第1発光素子と、
前記第1発光素子に対向すると共に、前記第1発光素子から出射された光を出射することで前記第1ロービーム用配光パターンを形成するように構成された第1レンズユニットと、を備え、
前記第2ロービーム用照明ユニットは、
光を出射する第2発光素子と、
前記第2発光素子に対向すると共に、前記第2発光素子から出射された光を出射することで前記第2ロービーム用配光パターンを形成するように構成された第2レンズユニットと、を備え、
前記ハイビーム用照明ユニットは、
光を出射する第3発光素子と、
前記第3発光素子に対向すると共に、前記第3発光素子から出射された光を出射することで前記ハイビーム用配光パターンを形成するように構成された第3レンズユニットと、を備え、
前記第3発光素子は、前記第1の方向において前記第1発光素子と前記第2発光素子との間に配置され、
前記第3レンズユニットは、前記第1の方向において前記第1レンズユニットと前記第2レンズユニットとの間に配置される、請求項1に記載の灯具ユニット。
【請求項3】
前記第1レンズユニットの出射面と、前記第2レンズユニットの出射面と、前記第3レンズユニットの出射面は、同一平面上に位置する、請求項2に記載の灯具ユニット。
【請求項4】
前記第1発光素子と、前記第2発光素子と、前記第3発光素子は、同一の回路基板上に配置され、
前記第1レンズユニットと、前記第2レンズユニットと、前記第3レンズユニットは、一体的に形成されている、請求項2又は3に記載の灯具ユニット。
【請求項5】
前記第1の方向における前記第1レンズユニットの外縁と前記第2レンズユニットの外縁との間の距離Dは、0mm<D<75mmを満たす、請求項2から4のうちいずれか一項に記載の灯具ユニット。
【請求項6】
前記第1レンズユニットは、
前記第1発光素子に対向すると共に、前記第1発光素子から出射された光の一部を
車両の外部に向けて出射させるように構成された中央光透過部と、
前記中央光透過部を囲むように設けられ、前記第1発光素子から出射された光の他の一部を前記車両の外部に向けて全反射させるように構成された周辺光透過部と、を有し、
前記周辺光透過部は、その周方向に沿って複数の反射領域に区分されている、
請求項2から5のうちいずれか一項に記載の灯具ユニット。
【請求項7】
前記灯具ユニットは、
車両の左前側に配置された左側車両用灯具に搭載されると共に、前記車両の右前側に配置された右側車両用灯具に搭載される、請求項1から6のうちいずれか一項に記載の灯具ユニット。
【請求項8】
第1カットオフラインを有する第1ロービーム用配光パターンを出射するように構成された第1ロービーム用照明ユニットと、
第2カットオフラインを有する第2ロービーム用配光パターンを出射するように構成された第2ロービーム用照明ユニットと、
前記第1ロービーム用照明ユニットと前記第2ロービーム用照明ユニットとの間に配置され、ハイビーム用配光パターンを出射するように構成されたハイビーム用照明ユニットと、を備え、
前記第1ロービーム用照明ユニットと、前記第2ロービーム用照明ユニットと、前記ハイビーム用照明ユニットは、第1の方向において並んで配置されており、
前記ハイビーム用照明ユニットが点灯している状態で、前記第1ロービーム用照明ユニットは点灯している一方、前記第2ロービーム用照明ユニットは消灯し、
前記ハイビーム用照明ユニットが消灯状態から点灯状態に移行するタイミングは、前記第2ロービーム用照明ユニットが点灯状態から消灯状態に移行するタイミングよりも早く、
前記第2ロービーム用照明ユニットが点灯している状態で、前記第1ロービーム用照明ユニットは点灯している一方、前記ハイビーム用照明ユニットは消灯し、
前記第2ロービーム用照明ユニットが消灯状態から点灯状態に移行するタイミングは、前記ハイビーム用照明ユニットが点灯状態から消灯状態に移行するタイミングよりも早い、
灯具ユニット。
【請求項9】
請求項1から
8のうちいずれか一項に記載の灯具ユニットを搭載した車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、灯具ユニット及び当該灯具ユニットが搭載された車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、左側灯具ユニットが搭載された左側車両用灯具と右側灯具ユニットが搭載された右側車両用灯具を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された左側車両用灯具及び右側車両用灯具では、左側車両用灯具に搭載される左側灯具ユニットと右側車両用当灯具に搭載される右側灯具ユニットを別途製造する必要がある。このように、左側車両用灯具及び右側車両用灯具に対して2つの異なる灯具ユニットを製造する必要があるため、灯具ユニット及び車両用灯具の製造コストが増加してしまう。上記観点より、灯具ユニット及び車両用灯具の製造コストを低減する手法について検討の余地がある。
【0005】
本開示は、灯具ユニット及び車両用灯具の製造コストを低減させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る灯具ユニットは、
第1カットオフラインを有する第1ロービーム用配光パターンを出射するように構成された第1ロービーム用照明ユニットと、
第2カットオフラインを有する第2ロービーム用配光パターンを出射するように構成された第2ロービーム用照明ユニットと、
前記第1ロービーム用照明ユニットと前記第2ロービーム用照明ユニットとの間に配置され、ハイビーム用配光パターンを出射するように構成されたハイビーム用照明ユニットと、を備える。
前記第1ロービーム用照明ユニットと、前記第2ロービーム用照明ユニットと、前記ハイビーム用照明ユニットは、第1の方向において並んで配置される。
【0007】
上記構成によれば、第1ロービーム用照明ユニットと第2ロービーム用照明ユニットとの間にハイビーム用照明ユニットが配置されている。このため、車両からロービーム用配光パターンが出射される場合において、第1ロービーム用照明ユニット及び第2ロービーム用照明ユニットが点灯する一方で、ハイビーム用照明ユニットが消灯する。このように、ロービームを出射中の灯具ユニットの外観は、灯具ユニットの所定の位置を中心として左右対称となる。
【0008】
したがって、同一の灯具ユニットが左側車両用灯具及び右側車両用灯具に搭載される場合にロービームを出射中の左側車両用灯具と右側車両用灯具の外観は略一致するので、同一の灯具ユニットを左側車両用灯具及び右側車両用灯具の両方に適用可能となる。このように、左側車両用灯具及び右側車両用灯具のそれぞれに対して2つの異なる灯具ユニットを製造する必要がなくなり、灯具ユニットの製造コストを低減することが可能となる。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、灯具ユニット及び車両用灯具の製造コストを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図5】ヒートシンクと、回路基板と、発光素子と、インナーレンズを示す横断面図である。
【
図6】第1ロービーム用照明ユニットのレンズユニットを拡大して示した横断面図である。
【
図7】(a)は、第1ロービーム用照明ユニットを概略的に示した正面図である。(b)は、ハイビーム用照明ユニットを概略的に示した正面図である。(c)は、第2ロービーム用照明ユニットを概略的に示した正面図である。
【
図8】(a)は、ロービーム出射時において仮想スクリーン上に形成された配光パターンを概略的に示す図である。(b)は、ハイビーム出射時において仮想スクリーン上に形成された配光パターンを概略的に示す図である。
【
図9】照明ユニットの発光素子間の電気的接続関係を簡潔に示した図である。
【
図10】(a)は、ハイビーム用照明ユニットの点灯タイミングと第2ロービーム用照明ユニットの消灯タイミングとの間の関係を説明するための図である。(b)は、ハイビーム用照明ユニットの消灯タイミングと第2ロービーム用照明ユニットの点灯タイミングとの間の関係を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態(以下、本実施形態という。)について図面を参照しながら説明する。本図面に示された各部材の寸法は、説明の便宜上、実際の各部材の寸法とは異なる場合がある。
【0012】
本実施形態の説明では、説明の便宜上、「左右方向」、「上下方向」、「前後方向」について適宜言及する場合がある。これらの方向は、
図3に示す灯具ユニット3について設定された相対的な方向である。ここで、「左右方向」は、「左方向」及び「右方向」を含む方向である。「上下方向」は、「上方向」及び「下方向」を含む方向である。「前後方向」は、「前方向」及び「後方向」を含む方向である。左右方向と、上下方向と、前後方向のうちの一方は、残りの2方向に直交するものとする。
【0013】
また、本実施形態では、「水平方向」は、上下方向(垂直方向)に垂直な方向であって、左右方向と前後方向を含む方向である。また、本実施形態の説明では、灯具ユニット3について設定された方向(左右方向、上下方向、前後方向)は、車両1及び左側車両用灯具2Lに設定された方向(左右方向、上下方向、前後方向)に一致するものとする。
【0014】
最初に、
図1を参照して本実施形態に係る車両1について説明する。
図1は、左側車両用灯具2Lと右側車両用灯具2Rを備えた車両1の正面図である。
図1に示すように、車両1の左前側に左側車両用灯具2Lが配置されていると共に、車両1の右前側に右側車両用灯具2Rが配置されている。左側車両用灯具2L及び右側車両用灯具2Rの各々には、同一の灯具ユニット3が搭載されている。
【0015】
次に、
図2を参照して左側車両用灯具2Lについて説明する。尚、左側車両用灯具2Lの構成は、右側車両用灯具2Rの構成と概ね同一であるため、右側車両用灯具2Rについての説明は割愛する。
図2は、左側車両用灯具2Lの縦断面図を示す。
図2に示すように、左側車両用灯具2Lは、ランプハウジング12と、ランプハウジング12の開口部を覆うランプカバー14と、灯具ユニット3とを備える。灯具ユニット3は、ランプハウジング12とランプカバー14とによって形成された灯室S内に配置されている。
【0016】
次に、
図3から
図5を参照して灯具ユニット3の構造について具体的に説明する。
図3は、灯具ユニット3の斜視図である。
図4は、灯具ユニット3の正面図である。
図5は、灯具ユニット3のうちヒートシンク6と、回路基板8と、発光素子5a~5dと、インナーレンズ4とを示す横断面図である。
図3から
図5に示すように、灯具ユニット3は、ヒートシンク6と、ブラケット9と、回路基板8と、発光素子5a~5dと、インナーレンズ4とを備える。以降では、説明の便宜上、発光素子5a~5dを総称して発光素子5という場合がある。
【0017】
ヒートシンク6は、発光素子5から放出された熱を灯室S内の空気中に放出するように構成されている。ヒートシンク6は、例えば、アルミプレートを押出成形することで形成される。ブラケット9は、例えば、ポリカーボネートやナイロン等の樹脂材料により形成されていると共に、互いに完全に分離した第1ブラケット部9aと第2ブラケット部9bとを有する。
【0018】
第1ブラケット部9aは、ヒートシンク6の一端側においてヒートシンク6に固定されていると共に、光軸調整機構として機能するエイミングスクリュー92及び支点機構として機能する支点スクリュー95に接続されている(
図4参照)。エイミングスクリュー92は、上下方向における灯具ユニット3の光軸Axを調整するように構成されている。第2ブラケット部9bは、ヒートシンク6の他端側においてヒートシンク6に固定されていると共に、光軸調整機構として機能するエイミングスクリュー93(
図4参照)に接続されている。エイミングスクリュー93は、水平方向における灯具ユニット3の光軸Axを調整するように構成されている。
【0019】
回路基板8は、ヒートシンク6の前面60に配置されている。回路基板8は、図示しない電源回路に電気的に接続されている。この点において、電源回路は、回路基板8に搭載されてもよい。発光素子5a~5dは、回路基板8上に配置されていると共に、回路基板8を介して図示しない光源駆動回路に電気的に接続されている。発光素子5は、例えば、LED等の半導体発光素子である。発光素子5は、白色光を外部に向けて出射するように構成されており、例えば、青色LEDと黄色蛍光体とを備えてもよい。各発光素子5a~5dは、左右方向(第1の方向の一例)において同一直線上に配列されている。ハイビーム用照明ユニット7bを構成する発光素子5bと、ハイビーム用照明ユニット7cを構成する発光素子5cは、左右方向において、第1ロービーム用照明ユニット7aを構成する発光素子5aと第2ロービーム用照明ユニット7dを構成する発光素子5dとの間に配置されている。
【0020】
発光素子5a~5cの各々は、その下端が左右方向に対して平行となるように回路基板8に配置されている一方で、発光素子5dは、その下端が左右方向に対して斜めとなるように回路基板8に配置されている。発光素子5dの下端が左右方向に対して斜めとなっているため、後述するように第2ロービーム用照明ユニット7dは、斜めカットオフラインL2(第2カットオフラインの一例)を有するロービーム用配光パターンP2(第2ロービーム用配光パターンの一例)を形成することができる(
図8の(a)参照)。
【0021】
インナーレンズ4は、各発光素子5a~5dを覆うようにヒートシンク6の前面60に配置されている。インナーレンズ4は、例えば、ポリカーボネートやアクリル樹脂等の透明な樹脂材料により形成されている。インナーレンズ4は、左右方向において同一直線上に配列されたレンズユニット40a~40dを有する。各レンズユニット40a~40dは一体的に形成されている。
【0022】
図5に示すように、レンズユニット40a(第1レンズユニットの一例)は、前後方向において発光素子5a(第1発光素子の一例)に対向する。レンズユニット40aは、発光素子5aから出射された光を車両1の外部に向けて出射することで水平カットオフラインL1(第1カットオフラインの一例)を有するロービーム用配光パターンP1(第1ロービーム用配光パターンの一例)を形成するように構成されている(
図8の(a)参照)。ここで、
図8の(a)は、ロービーム出射時において車両1の25m前方に配置された仮想スクリーン上に形成された配光パターンを概略的に示す図である。
図8の(b)は、ハイビーム出射時において当該仮想スクリーン上に形成された配光パターンを概略的に示す図である。ロービーム用配光パターンP1は、H-H線に沿って延びるように形成されている。
【0023】
レンズユニット40aは、中央光透過部42aと、周辺光透過部43aとを有する。中央光透過部42aは、前後方向において発光素子5aに対向すると共に、発光素子5aから出射された光の一部を車両1の外部に向けて出射するように構成されている。周辺光透過部43aは、中央光透過部42aを囲むように設けられ、発光素子5aから出射された光の他の一部を車両1の外部に向けて全反射するように構成されている。中央光透過部42aによって形成される配光パターンと周辺光透過部43aによって形成される配光パターンとを合成することでロービーム用配光パターンP1が形成される。
【0024】
レンズユニット40aには、2つの凹部54a,56aが形成されている。凹部54aは凹部56aに連通しており、凹部56aの径は凹部54aの径よりも大きい。中央光透過部42aは、凹部54aの底面を構成する出射面52aと、入射面47aとを有する。周辺光透過部43aは、凹部56aの底面を構成する出射面53aと、入射面49aと、全反射面46aとを有する。本実施形態では、発光素子5aとレンズユニット40aにより、ロービーム用配光パターンP1を形成するように構成された第1ロービーム用照明ユニット7aが構成される。
【0025】
レンズユニット40b(第3レンズユニットの一例)は、前後方向において発光素子5b(第3発光素子の一例)に対向する。レンズユニット40bは、発光素子5bから出射された光を車両1の外部に向けて出射することでハイビーム用配光パターンP3を形成するように構成されている(
図8の(b)参照)。レンズユニット40bは、中央光透過部42bと、周辺光透過部43bとを有する。中央光透過部42bは、前後方向において発光素子5bに対向すると共に、発光素子5bから出射された光の一部を車両1の外部に向けて出射するように構成されている。周辺光透過部43bは、中央光透過部42bを囲むように設けられ、発光素子5bから出射された光の他の一部を車両1の外部に向けて全反射するように構成されている。中央光透過部42bによって形成された配光パターンと周辺光透過部43bとによって形成された配光パターンとを合成することでハイビーム用配光パターンP3が形成される。
【0026】
レンズユニット40bには、2つの凹部54b,56bが形成されている。凹部54bは凹部56bに連通しており、凹部56bの径は凹部54bの径よりも大きい。中央光透過部42bは、凹部54bの底面を構成する出射面52bと、入射面47bとを有する。周辺光透過部43bは、凹部56bの底面を構成する出射面53bと、入射面49bと、全反射面46bとを有する。本実施形態では、発光素子5bとレンズユニット40bにより、ハイビーム用配光パターンP3を形成するように構成されたハイビーム用照明ユニット7bが構成される。
【0027】
レンズユニット40c(第3レンズユニットの一例)は、前後方向において発光素子5c(第3発光素子の一例)に対向する。レンズユニット40cは、レンズユニット40bと同一の構成を有し、発光素子5cから出射された光を車両1の外部に向けて出射することでハイビーム用配光パターンP4を形成するように構成されている(
図8の(b)参照)。本実施形態の説明では、レンズユニット40cにより形成されるハイビーム用配光パターンP4は、レンズユニット40bにより形成されるハイビーム用配光パターンP3に完全に重なるものとする。レンズユニット40cは、中央光透過部42cと、周辺光透過部43cとを有する。中央光透過部42cは、前後方向において発光素子5cに対向すると共に、発光素子5cから出射された光の一部を車両1の外部に向けて出射するように構成されている。周辺光透過部43cは、中央光透過部42cを囲むように設けられ、発光素子5cから出射された光の他の一部を車両1の外部に向けて全反射するように構成されている。中央光透過部42cによって形成された配光パターンと周辺光透過部43cとによって形成された配光パターンとを合成することでハイビーム用配光パターンP4が形成される。
【0028】
レンズユニット40cには、2つの凹部54c,56cが形成されている。凹部54cは凹部56cに連通しており、凹部56cの径は凹部54cの径よりも大きい。中央光透過部42cは、凹部54cの底面を構成する出射面52cと、入射面47cとを有する。周辺光透過部43cは、凹部56cの底面を構成する出射面53cと、入射面49cと、全反射面46cとを有する。本実施形態では、発光素子5cとレンズユニット40cにより、ハイビーム用配光パターンP4を形成するように構成されたハイビーム用照明ユニット7cが構成される。
【0029】
レンズユニット40d(第2レンズユニットの一例)は、前後方向において発光素子5d(第2発光素子の一例)に対向する。レンズユニット40dは、発光素子5dから出射された光を車両1の外部に向けて出射することで斜めカットオフラインL2を有するロービーム用配光パターンP2を形成するように構成されている(
図8の(a)参照)。
図8の(a)に示すように、ロービーム用配光パターンP2は、H-H線に対して斜めに延びるように形成されている。レンズユニット40aにより形成されたロービーム用配光パターンP1とレンズユニット40dにより形成されたロービーム用配光パターンP2によって、ロービーム出射時の配光パターンが形成される。レンズユニット40dは、中央光透過部42dと、周辺光透過部43dとを有する。中央光透過部42dは、前後方向において発光素子5dに対向すると共に、発光素子5dから出射された光の一部を車両1の外部に向けて出射するように構成されている。周辺光透過部43dは、中央光透過部42dを囲むように設けられ、発光素子5dから出射された光の他の一部を車両1の外部に向けて全反射するように構成されている。中央光透過部42dによって形成された配光パターンと周辺光透過部43dとによって形成された配光パターンとを合成することでロービーム用配光パターンP2が形成される。
【0030】
レンズユニット40dには、2つの凹部54d,56dが形成されている。凹部54dは凹部56dに連通しており、凹部56dの径は凹部54dの径よりも大きい。中央光透過部42dは、凹部54dの底面を構成する出射面52dと、入射面47dとを有する。周辺光透過部43dは、凹部56dの底面を構成する出射面53dと、入射面49dと、全反射面46dとを有する。本実施形態では、発光素子5dとレンズユニット40dにより、ロービーム用配光パターンP2を形成するように構成された第2ロービーム用照明ユニット7dが構成される。
【0031】
このように、本実施形態では、灯具ユニット3は、第1ロービーム用照明ユニット7a(以下では、単に「照明ユニット7a」という。)と、ハイビーム用照明ユニット7b,7c(以下では、単に「照明ユニット7b,7c」という。)と、第2ロービーム用照明ユニット7d(以下では、単に「照明ユニット7d」という。)を備える。
図5に示すように、これらの照明ユニット7a~7dは、左右方向において並んで配置されている。照明ユニット7b,7cは、左右方向において照明ユニット7aと照明ユニット7dとの間に配置されている。
【0032】
また、中央光透過部42a~42dの出射面52a~52dは同一平面上に位置すると共に、周辺光透過部43a~43dの出射面53a~53dは同一平面上に位置している。
【0033】
次に、
図6を参照してレンズユニット40aについて具体的に説明する。
図6は、レンズユニット40aを拡大して示した横断面図である。
図6に示すように、発光素子5aから出射された光の一部は、中央光透過部42aの入射面47aに入射した後に出射面52aに到達する。その後、出射面52aに到達した光は、出射面52aに形成された拡散レンズ素子48aによって拡散された状態で外部に出射される。一方、発光素子5aから出射された光の他の一部は、周辺光透過部43aの入射面49aに入射した後に全反射面46aによって全反射される。その後、全反射面46aにより全反射された光は、出射面53aに到達した後に、出射面53aに形成された拡散レンズ素子48aによって拡散された状態で外部に出射される。このように、レンズユニット40aによりロービーム用配光パターンP1が形成される。
【0034】
レンズユニット40b~40dもレンズユニット40aと同様の構成を有している。この点において、
図4に示すように、レンズユニット40b~40dの出射面も拡散レンズ素子48b~48dを有している。同図に示すように、レンズユニット40a~40cに形成された拡散レンズ素子48a~48cの各々は、上下方向に略平行に延びるように形成されている。一方で、レンズユニット40dに形成された拡散レンズ素子48dは、発光素子5dの下端が左右方向に対して角度α(α>0°、例えば、α=15°)だけ斜めになっているため、上下方向に対して角度αだけ斜めに延びるように形成されている。
【0035】
次に、
図7を参照して、レンズユニット40aの周辺光透過部43aと、レンズユニット40bの周辺光透過部43bと、レンズユニット40dの周辺光透過部43dの構成について以下に説明する。
図7の(a)は、照明ユニット7aを概略的に示した正面図である。
図7の(b)は、照明ユニット7bを概略的に示した正面図である。
図7の(c)は、照明ユニット7dを概略的に示した正面図である。
図7の(a)に示すように、レンズユニット40aの周辺光透過部43aは、中央光透過部42aをその周方向において囲むように設けられている。周辺光透過部43aは、その周方向に沿って8つの反射領域R1~R8に区分されている。反射領域R1~R8の各々は、レンズユニット40aの中心から45°の角度領域を有する。反射領域R1~R8の各々は、互いに外形が異なる全反射面46aを有する。
【0036】
図7の(b)に示すように、レンズユニット40bの周辺光透過部43bは、中央光透過部42bをその周方向において囲むように設けられている。周辺光透過部43bは、その周方向において複数の反射領域に区分されていない。尚、レンズユニット40cは、レンズユニット40bと同様の構成を有するため、レンズユニット40cの周辺光透過部43cもその周方向において複数の反射領域に区分されていない。
【0037】
図7の(c)に示すように、レンズユニット40dの周辺光透過部43dは、中央光透過部42dをその周方向において囲むように設けられている。周辺光透過部43dは、その周方向に沿って8つの反射領域R10~R17に区分されている。各反射領域R10~R17の各々は、レンズユニット40dの中心から45°の角度領域を有する。各反射領域R10~R17の各々は、互いに形状が異なる全反射面46dを有する。
【0038】
次に、本実施形態に係る灯具ユニット3の作用効果について以下に記載する。
【0039】
本実施形態によれば、照明ユニット7aと照明ユニット7dとの間に照明ユニット7b,7cが配置されている。このため、車両1からロービーム用配光パターンP1,P2が出射される場合において、照明ユニット7a,7bが点灯する一方で、照明ユニット7b,7cが消灯する。このように、ロービームを出射中の灯具ユニット3の外観は、灯具ユニット3の左右方向の中心位置を中心として左右対称となる。したがって、同一の灯具ユニット3が左側車両用灯具2L及び右側車両用灯具2Rに搭載されている場合に、ロービームを出射中の左側車両用灯具2Lの灯具ユニット3の外観とロービームを出射中の右側車両用灯具2Rの灯具ユニット3の外観は略一致する。このため、同一の灯具ユニット3を左側車両用灯具2L及び右側車両用灯具2Rの両方に適用可能となる。このように、左側車両用灯具2L及び右側車両用灯具2Rのそれぞれに対して2つの異なる灯具ユニットを製造する必要がなくなり、灯具ユニット3及び車両用灯具の製造コストを低減することが可能となる。
【0040】
また、本実施形態に係る灯具ユニット3では、レンズユニット40a~40dの各々が発光素子から出射された光に基づいて配光パターンを形成しているため、レンズユニットと発光素子との間の位置調整が重要となる。この点において、本実施形態では、レンズユニット40a~40dがインナーレンズ4内において一体的に形成されているため、レンズユニット40aと発光素子5aとの間の位置調整と、レンズユニット40bと発光素子5bとの間の位置調整と、レンズユニット40cと発光素子5cとの間の位置調整と、レンズユニット40dと発光素子5dとの間の位置調整とを一括で行うことができる。
【0041】
また、本実施形態では、レンズユニット40a~40dの各々が中央光透過部と周辺光透過部とを有している。このため、レンズユニットの中央光透過部と周辺光透過部により、発光素子から出射された光の利用効率を高めた状態で配光パターンを形成することが可能となる。
【0042】
次に、
図8を参照してロービーム出射時における配光パターンとハイビーム出射時における配光パターンについてそれぞれ以下に説明する。
図8の(a)に示すように、灯具ユニット3がロービームを出射するときには、ロービーム用配光パターンP1,P2が車両1の外部に出射される一方で、ハイビーム用配光パターンP3,P4は車両1の外部に出射されない。即ち、灯具ユニット3がロービームを出射するときには、照明ユニット7a,7dが点灯する一方で、照明ユニット7b,7cは消灯する。
【0043】
その一方で、
図8の(b)に示すように、灯具ユニット3がハイビームを出射するときには、ハイビーム用配光パターンP3,P4及びロービーム用配光パターンP1が出射される一方で、ロービーム用配光パターンP2は出射されない。即ち、灯具ユニット3がハイビームを出射するときには、照明ユニット7a,7b,7cが点灯する一方で、照明ユニット7dは消灯する。このように、灯具ユニット3がハイビームを出射中において照明ユニット7dが消灯しているため、灯具ユニット3の消費電力を低減することができると共に、灯具ユニット3から放射される放熱量を低減することができる。
【0044】
次に、
図9を参照して、照明ユニット7a~7dの発光素子5a~5d間の電気的接続関係について以下に説明する。
図9に示すように、発光素子5aは、発光素子5d,5bに接続されている。発光素子5dと切替スイッチ21が互いに直列接続されていると共に、発光素子5b,5cと切替スイッチ22が互いに直列接続されている。また、発光素子5dと切替スイッチ21からなるグループは、発光素子5b,5c及び切替スイッチ22からなるグループに並列接続されている。切替スイッチ21,22は、例えば、電界効果トランジスタ(FET)によって実現される。灯具ユニット3がロービームを出射する場合には、切替スイッチ21がONとなる一方で、切替スイッチ22がOFFとなる。灯具ユニット3がハイビームを出射する場合には、切替スイッチ21がOFFとなる一方で、切替スイッチ22がONとなる。
【0045】
次に、
図10の(a)を参照して、灯具ユニット3から出射されるビームがロービームからハイビームに切り替わる場合の照明ユニット7b,7cの点灯タイミングと照明ユニット7dの消灯タイミングとの関係について説明する。この場合、照明ユニット7b,7cが消灯状態(OFF状態)から点灯状態(ON状態)に移行する点灯タイミングt
onは、照明ユニット7dが点灯状態から消灯状態に移行する消灯タイミングt
offよりも早くなる。具体的には、切替スイッチ22がOFFからONになるタイミングは、切替スイッチ21がONからOFFになるタイミングよりも早くなる。このように、照明ユニット7b,7cが点灯する直前に照明ユニット7dが消灯してしまうといった状況を防止することができる。
【0046】
次に、
図10の(b)を参照して、灯具ユニット3から出射されるビームがハイビームからロービームに切り替わる場合の照明ユニット7b,7cの消灯タイミングと照明ユニット7dの点灯タイミングとの関係について説明する。この場合、照明ユニット7dが消灯状態から点灯状態に移行する点灯タイミングt
onは、照明ユニット7b,7cが点灯状態から消灯状態に移行する消灯タイミングt
offよりも早くなる。具体的には、切替スイッチ21がOFFからONになるタイミングは、切替スイッチ22がONからOFFになるタイミングよりも早くなる。このように、照明ユニット7dが点灯する直前に照明ユニット7b,7cが消灯してしまうといった状況を防止することができる。
【0047】
以上、本発明の実施形態について説明をしたが、本発明の技術的範囲が本実施形態の説明によって限定的に解釈されるべきではないのは言うまでもない。本実施形態は単なる一例であって、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、様々な実施形態の変更が可能であることが当業者によって理解されるところである。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲に記載された発明の範囲及びその均等の範囲に基づいて定められるべきである。
【0048】
例えば、本実施形態では、灯具ユニット3は2つのハイビーム用照明ユニットを備えているが、ハイビーム用照明ユニットの個数は特に限定されるものではない。例えば、灯具ユニット3に設けられるハイビーム用照明ユニットの個数は1つであってもよい。
【0049】
この点において、灯具ユニット3に設けられたハイビーム用照明ユニットが1つである場合を想定する。例えば、灯具ユニット3には、左右方向において照明ユニット7aと、照明ユニット7bと、照明ユニット7dが配置されるものとする。この場合、灯具ユニット3の左右方向におけるレンズユニット40aの外縁とレンズユニット40dの外縁との間の距離Dは、0mm<D<75mmを満たすことが好ましい。距離Dが0mm<D<75mmを満たすとき、灯具ユニット3がロービームを出射している間において、照明ユニット7aの点灯と照明ユニット7dの点灯によって照明ユニット7bの消灯が車両1の外部から視認しづらくなる。
【0050】
また、本実施形態の説明では、車両1は四輪自動車として説明されているが、本実施形態の車両は四輪自動車に限定されるものではない。この点において、車両1は、自動二輪車又は自動三輪車であってもよい。
【0051】
また、本実施形態では、照明ユニット7dは、斜めカットオフラインL2を有するロービーム用配光パターンP2を出射するように構成されているが、ロービーム用配光パターンP2のカットオフラインは水平カットオフラインであってもよい。この点において、車両1が自動二輪車又は自動三輪車である場合に、ロービーム用配光パターンP2のカットオフラインが水平カットオフラインとなる。このように、ロービーム用配光パターンP2が水平カットオフラインを有することで、灯具ユニット3は、自動二輪車用又は自動三輪車用のロービームを出射することができる。
【0052】
本出願は、2020年2月18日に出願された日本国特許出願(特願2020-025176号)に開示された内容を適宜援用する。