(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】地表及び地表下の物体を検出するための検出システムを備えた車両及び車両の制御方法
(51)【国際特許分類】
A01B 45/02 20060101AFI20240710BHJP
A01G 7/00 20060101ALI20240710BHJP
G01V 3/12 20060101ALI20240710BHJP
B60D 1/00 20060101ALN20240710BHJP
【FI】
A01B45/02
A01G7/00 602A
G01V3/12 A
B60D1/00 A
(21)【出願番号】P 2022507568
(86)(22)【出願日】2020-07-30
(86)【国際出願番号】 US2020044165
(87)【国際公開番号】W WO2021025933
(87)【国際公開日】2021-02-11
【審査請求日】2023-05-25
(32)【優先日】2019-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】598159757
【氏名又は名称】ザ・トロ・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】The Toro Company
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【氏名又は名称】森本 有一
(74)【代理人】
【識別番号】100151459
【氏名又は名称】中村 健一
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ライアン ダバーン
(72)【発明者】
【氏名】レックス レイ バーグステン
(72)【発明者】
【氏名】チャールズ ハングビエト ホ
【審査官】小林 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】実開平01-160014(JP,U)
【文献】実開昭63-145406(JP,U)
【文献】特開2011-062115(JP,A)
【文献】特開昭60-259115(JP,A)
【文献】特開2018-121594(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 69/00-69/08
A01B 63/00-63/12
A01B 27/00-31/00
A01B 35/00-49/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力付き地上保守車両であって、
地面接触部材によって地表に支持されたシャーシと、
前記シャーシに装着された原動機と、
前記原動機によって動力を供給され、前記地面接触部材の1つ以上に選択的に動力を供給して前記車両を前記地表で推進するように構成された牽引駆動システムと、
前記シャーシによって担持された地上保守器具と、
前記器具を前記シャーシに接続する器具係合システムであって、選択的に、前記器具を前記地表に係合し、また前記器具を前記地表から係合解除するように構成された器具係合システムと、
前記器具前方の検出ゾーンを監視し、前記車両が前記地表を横切るときに前記検出ゾーンを通過する物体を検出するように構成された検出システムであって、前記物体が前記検出ゾーン内に残っている間に、前記物体に関連付けられた物体情報を周期的に捕捉するようにさらに構成された検出システムと、
前記シャーシによって支持され、前記検出システムと前記係合システムの両方と通信する電子制御装置であって、前記物体情報を受信し、車両の対地速度に基づいて、前記器具が物体に到達する時間を推定するように構成され、前記器具が前記物体に接触する前に前記器具を前記地表から係合解除することを命じる通知を発出するようにさらに構成された電子制御装置と、
を含む動力付き地上保守車両。
【請求項2】
前記制御装置が前記器具係合システムに前記通知を発出するように構成され、前記器具係合システムが、前記器具が前記物体と接触する前に、前記器具を前記地表から自動的に持ち上げるか、又は別の方法で係合解除するように構成された、請求項
1に記載の車両。
【請求項3】
前記制御装置が、前記器具が前記物体を通過した後に、前記器具係合システムに自動的に前記器具を下げるか、又は別の方法で前記地表に係合することを指令するように構成された、請求項
2に記載の車両。
【請求項4】
前記器具が芝生曝気装置を備える、請求項
1に記載の車両。
【請求項5】
前記物体が灌漑用スプリンクラーヘッドを備える、請求項
1から
4の何れか一項に記載の車両。
【請求項6】
前記検出システムが前記車両に固定されたRFIDアンテナを備え、前記RFIDアンテナが前記物体上又はその近傍に位置するRFIDタグを検出するように構成された、請求項
1から
4の何れか一項に記載の車両。
【請求項7】
前記検出システムがマイクロ波レーダを含む、請求項
1から
4の何れか一項に記載の車両。
【請求項8】
地上保守作業を実行する車両を制御する方法であって、前記方法が、
地表で順方向に前記車両を推進することであって、前記車両が、シャーシと、前記シャーシに装着された地上保守器具とを備えることと、
前記器具を前記地表に係合する、ことと、
変換器を備える検出システムを用いて前記器具の前方の検出ゾーンを監視することと、
前記検出ゾーンを通過する前記地表又はその近傍の物体を前記変換器を用いて検出することと、
前記物体が前記検出ゾーンを通過している間、前記物体に関連付けられた物体情報を周期的に捕捉することと、
前記物体情報に基づいて、前記器具が前記物体に到達するまでの期間を推定することと、
制御装置を用いて、器具係合システムに対して、前記器具が前記物体に到達する前に前記器具を前記地表から自動的に持ち上げ、又は別の方法で係合解除することを命じる係合解除指令を発出することと、
を含む、方法。
【請求項9】
前記器具が前記物体を通過した後に、前記制御装置を用いて前記器具係合システムに対して、前記器具を前記地表に再係合することを命じる係合指令を発出することをさらに含む、請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
前記検出システムが、各々が検出領域を有する2つ以上の変換器を備える、請求項
8に記載の方法。
【請求項11】
前記物体を検出することが、スプリンクラーヘッドを検出することを含む、請求項
8に記載の方法。
【請求項12】
前記変換器を用いて前記物体を検出することが、マイクロ波レーダアンテナを用いて前記物体を検出することを含む、請求項
8から
11の何れか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記変換器を用いて物体を検出することが、無線周波数識別(RFID)アンテナを用いて、前記物体に関連付けられたRFIDタグを検出することを含む、請求項
8から
11の何れか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記物体情報を捕捉することが、前記RFIDタグに関連付けられた物体情報を捕捉し記憶することを含み、前記物体情報が、RFIDタグの読み取り毎の、前記RFIDアンテナのアイデンティティ、固有のタグ識別子、時間、受信信号強度の指標(RSSI)、前記RFIDアンテナの周波数チャネル、前記RFIDアンテナが送信した信号と受信した信号との間の移相、及び前記車両の対地速度の何れか1つ以上を含む、請求項
13に記載の方法。
【請求項15】
前記物体が前記検出ゾーン内でもはや検出されなくなった後に、1つ又は複数のタグ統計値を計算することをさらに含み、前記1つ又は複数のタグ統計値が、前記検出ゾーン内で前記物体が検出された存在期間、前記存在期間中に検出された最大受信信号強度の指標(RSSI)、前記存在期間中に検出された最小RSSI、前記存在期間中に検出されたRSSIの標準偏差、前記物体の最初の検出と前記最大RSSIの時間との間の期間、前記最大RSSIの検出と前記物体の最後の検出との間の期間、前記物体が検出された間の直線移動距離、前記最初の検出と前記最大RSSIの前記時間との間の直線移動距離、及び前記最大RSSIの前記時間と前記最後の検出との間の直線移動距離、から選択される何れか1つ以上の統計値を備える、請求項
13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2019年8月20日出願の米国仮特許出願第62/889,253号及び2019年8月6日出願の米国仮特許出願第62/883,526号に対する優先権及び/又はその利益を主張し、それらの文書の各々が、その内容全体を参照により本明細書に援用される。
【0002】
本開示の実施形態は、地上保守器具を運搬する車両に関し、より詳細には、地上保守作業中にスプリンクラーヘッド等の地表及び地表下の物体を検出しながら車両を制御するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
土壌及び芝生処理機械は、芝生の健康を促進することがよく知られている。例えば、芝生曝気装置は、芝生面に穿孔を形成するために使用される。そのような穿孔によって、水、空気、及び栄養素がより効果的に草の根に到達できる。曝気は、高圧縮土がよく見られる土壌域において特に有益である可能性がある。
【0004】
土壌穿孔を形成する様々な方法が知られているが、1つの普及している方法は、動作時に土壌面に打ち込まれる1組の貫通コアリング歯の使用を含む。後退動作で土壌の「栓」を掘り出し、そこに穿孔を残す管状のコアリング歯を利用する曝気装置がある。土壌コアは掘削して芝生上に置かれ、そこで最終的に分解する。固体歯を利用する他の曝気装置もある。
【0005】
これはその意図した目的に対しては非常に効果的であるが、コアリング歯は、芝生面又はその近傍の物品を損傷する可能性がある。例えば、灌水スプリンクラーヘッドは、コアリング歯が接触すると、相当な損傷を受ける可能性がある。したがって、曝気装置の運転者は、通常、曝気中には周囲の領域を監視して、スプリンクラーヘッドを横切って曝気歯で損傷することを防止する。そのような能動的な監視は、特に、運転者が経験不足であるか又はその特性に慣れていない場合には特に、曝気効率を低下させることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本明細書に記載の実施形態は、車両に関連付けられた器具、例えば、曝気装置のコアリング歯と接触する可能性が生まれる前に地表又は地表下の物体を自動的に検出する検出システム及び方法を提供することができる。いくつかの実施形態では、このシステムは車両の他のシステムと通信して、車両がその器具と物体との接触を自動的に回避することを可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1の態様によれば、動力付き地上保守車両が提供される。この車両は、地面接触部材によって地表に支持されたシャーシと、当該シャーシに装着された原動機と、当該原動機によって動力を供給され、当該地面接触部材の1つ以上に選択的に動力を供給して車両を地表で推進するように構成された牽引駆動システムとを含む。当該車両はまた、シャーシによって担持された保守器具と、当該器具前方の検出ゾーンを監視するように構成された検出システムとを含む。また、当該検出システムは、当該車両が地表を横切るときに当該検出ゾーンを通過する地表近傍の物体を検出するように構成されている。当該検出システムは、器具が物体に接触するのに先立って当該物体の位置を示す通知を発出するように構成されている。
【0008】
第1の態様に記載の第2の態様では、当該車両は、当該検出システムと通信するように構成された電子制御装置をさらに含み、当該制御装置は、当該通知を発出するように構成されている。第1又は第2の態様に記載の第3の態様では、当該車両は、当該通知の受信に応答して、当該器具を当該地表から自動的に係合解除するように構成された器具係合システムをさらに含む。上記態様の何れか1つに記載の第4の態様では、当該通知は、当該車両を制御する運転者に対する視覚的、触覚的又は聴覚的通知の1つ以上を含む。
【0009】
第5の態様では、地面接触部材によって地表に支持されたシャーシと、当該シャーシに装着された原動機と、当該原動機によって動力を供給され、当該地面接触部材の1つ以上に選択的に動力を供給して前記車両を地表で推進するように構成された牽引駆動システムと、当該シャーシによって担持された地上保守器具とを含む動力付き地上保守車両が提供される。当該車両は、当該器具を当該シャーシに接続する器具係合システムをさらに含み、当該係合システムは、選択的に、当該器具を地表に係合し、また当該器具を地表から係合解除するように構成されている。当該車両はまた、当該器具の前方の検出ゾーンを監視し、当該車両が地表を横切るときに当該検出ゾーンを通過する物体を検出するように構成された検出システムを含む。当該検出システムは、当該物体が当該検出ゾーン内に残っている間に、当該物体に関連付けられた物体情報を周期的に捕捉するようにさらに構成されている。当該車両はまた、当該シャーシによって支持され、当該検出システム及び当該係合システムの両方と通信する電子制御装置を含む。当該制御装置は、当該物体情報を受信し、車両の対地速度に基づいて、当該器具が物体に到達する時間を推定するように構成され、当該制御装置は、当該器具が物体に接触する前に当該器具を地表から係合解除することを命じる通知を発出するようにさらに構成されている。
【0010】
第5の態様に記載の第6の態様では、当該制御装置は、当該器具係合システムに当該通知を発出するように構成されており、当該器具係合システムは、当該器具が当該物体と接触する前に、当該器具を地表から自動的に持ち上げるか、又は別の方法で係合解除するように構成されている。第5又は第6の態様に記載の第7の態様では、当該制御装置は、当該器具が物体を通過した後に、当該器具係合システムに対して、自動的に当該器具を下げるか、又は別の方法で地表に係合することを指令するように構成されている。第5から第7の態様の何れか1つに記載の第8の態様では、当該器具は芝生曝気装置を備える。第5から第8の態様の何れか1つに記載の第9の態様では、当該物体は灌漑用スプリンクラーヘッドを備える。第5から第9の態様の何れか1つに記載の第10の態様では、当該検出システムは、車両に固定されたRFIDアンテナを備え、当該RFIDアンテナは当該物体上又はその近傍に位置するRFIDタグを検出するように構成されている。第5から第9の態様の何れか1つに記載の第11の態様では、当該検出システムはマイクロ波レーダを備える。
【0011】
第12の態様では、地上保守作業を実行する車両を制御する方法が提供される。この方法は、地表で順方向に当該車両を推進することを含み、当該車両は、シャーシと、当該シャーシに装着された地上保守器具とを含む。この方法は、当該器具を地表に係合することと、変換器を備える検出システムを用いて当該器具の前方の検出ゾーンを監視することと、当該検出ゾーンを通過する地表又はその近傍の物体を当該変換器を用いて検出することと、当該物体が当該検出ゾーンを通過している間、当該物体に関連付けられた物体情報を周期的に捕捉することとを含む。この方法はまた、当該物体情報に基づいて、当該器具が当該物体に到達するまでの期間を推定することと、当該制御装置を用いて、器具係合システムに対して、当該器具が当該物体に到達する前に当該器具を地表から自動的に持ち上げ、又は別の方法で係合解除することを命じる係合解除指令を発出することとをさらに含む。
【0012】
第12の態様に記載の第13の態様では、当該方法は、当該器具が当該物体を通過した後に、当該制御装置を用いて、器具係合システムに対して、当該器具を地表に再係合することを命じる係合指令を発出することをさらに含む。第12又は第13の態様に記載の第14の態様では、当該検出システムは、各々が検出領域を有する2つ以上の変換器を備える。第12から第14の態様の何れか1つに記載の第15の態様では、当該物体を検出することは、スプリンクラーヘッドを検出することを含む。第12から第15の態様の何れか1つに記載の第16の態様では、当該変換器を用いて当該物体を検出することは、マイクロ波レーダアンテナを用いて当該物体を検出することを含む。第12から第15の態様の何れか1つに記載の第17の態様では、当該変換器を用いて当該物体を検出することは、無線周波数識別(RFID)アンテナを用いて、当該物体に関連付けられたRFIDタグを検出することを含む。第17の態様に記載の第18の態様では、当該物体情報を捕捉することは、当該RFIDタグに関連付けられた物体情報を捕捉し記憶することを含み、当該物体情報は、RFIDタグの読み取り毎の、当該RFIDアンテナのアイデンティティ、固有のタグ識別子、時間、受信信号強度の指標(RSSI)、当該RFIDアンテナの周波数チャネル、当該RFIDアンテナが送信した信号と受信した信号との間の移相、及び当該車両の対地速度の何れか1つ以上を含む。第17の態様に記載の第19の態様では、当該方法は、当該物体が当該検出ゾーン内でもはや検出されなくなった後に、1つ又は複数のタグ統計値を計算することをさらに含み、当該1つ又は複数のタグ統計値は、当該検出ゾーン内で当該物体が検出された存在期間、当該存在期間中に検出された最大受信信号強度の指標(RSSI)、当該存在期間中に検出された最小RSSI、当該存在期間中に検出されたRSSIの標準偏差、当該物体の最初の検出と当該最大RSSIの時間との間の期間、当該最大RSSIの検出と当該物体の最後の検出との間の期間、当該物体が検出された間の直線移動距離、当該最初の検出と当該最大RSSIの時間との間の直線移動距離、及び当該最大RSSIの時間と当該最後の検出との間の直線移動距離、から選択される何れか1つ以上の統計値を備える。
【0013】
上記の概要は、各実施形態又はあらゆる実施態様を説明することを意図するものではない。例示的な実施形態のより完全な理解は、添付図面と併せて好ましい実施形態の以下の詳細な説明及び特許請求の範囲を参照することによって明らかとなり、認識されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図面を参照して、好ましい実施形態を詳述する。
【0015】
【
図1】本開示の実施形態による物体検出システムを組み込んだ例示的な車両及び対応する地上保守器具の斜視図である。
【
図2】本開示の実施形態による物体検出システムの概略図である。
【
図4】本開示の実施形態に従って動作する
図1の車両の上面図である。
【
図5】無線周波数識別(RFID)アンテナの検出領域内の物体を検出する例示的なプロセスを示す図である。
【
図6】本開示の実施形態によるRFIDアンテナアレイを示す図である。
【
図7】本開示の一実施形態によるRFID検出システムを有する車両の操作方法を示すフローチャートである。
【
図8】本開示の他の実施形態によるRFID検出システムを有する車両の操作方法を示すフローチャートである。
【
図9】例示的なマイクロ波レーダ検出システムの概略図である。
【
図11】本開示の実施形態による手動又は半自動検出方法を示す車両の部分側面図である。
【0016】
各図は、主として見やすいように描画されており、その結果、必ずしも縮尺通りに描かれていない。また、これに限定されないが、締結具、電気部品(例えば、配線、ケーブル)などを含む様々な構造/構成要素は、図示された実施形態の各態様をよりよく示すために、又はそのような構造/構成要素を含めることが本明細書に記載される様々な好ましい実施形態の理解にとって必要ではない場合に、概略を示し、又は図面の一部又は全部から除去されていることがある。しかしながら、特定の図におけるそのような構造/構成要素の図示/説明がないことは、決して様々な実施形態の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下の例示的な実施形態の詳細な説明では、本明細書の一部を成す添付図面を参照する。本明細書で説明及び/又は図示しない他の実施形態も確実に企図されていることを理解すべきである。
【0018】
本明細書で提供される全ての見出し及び副見出しは、読者の便宜のためであり、そのように指定されない限り、見出し又は副見出しに続く任意の文章の意味を制限するために使用されるべきではない。また、特に断りのない限り、明細書及び特許請求の範囲における量を表す全ての数字、及び方向/向き(例えば、鉛直、水平、平行、垂直など)を表す全ての用語は、用語「ほぼ」によって修飾されていると理解されるべきである。用語「及び/又は」(使用される場合)は、列挙された要素の1つ若しくは全て、又は列挙された要素の任意の2つ以上の組み合わせを意味する。「i.e.」は、ラテン語句id estの略語として使用され、「すなわち」を意味する。「e.g.」は、ラテン語句exempli gratiaの略語として使用され、「例えば」を意味する。
【0019】
本開示の実施形態は、地表(例えば、芝生面)、その上方、又は下側の物体(例えば、灌漑スプリンクラーヘッド、ボックス、及び/又は関連部品)を検出するための検出システム及び方法、並びにそれを組み込んだ動力付き地上保守車両に関する。他の実施形態は、地上保守作業を実行する車両を制御する方法に関する。いくつかの実施形態では、車両は、アタッチメントを含んでいてもよい。用語「アタッチメント」は、本明細書では、地表又は芝生の保守作業を実行するための器具又は用具を担持する大半の任意の装置又は部品を指すために使用される。
【0020】
本明細書で使用される、「物体」は、器具と接触した場合に損傷させやすい(又は損傷の原因となりやすい)、地表、その上方、又は下に配置された任意の物品を指すことができる。例えば、物体は、灌漑用スプリンクラーヘッドであってもよい。しかしながら、スプリンクラーヘッドは例示に過ぎず、例えば、灌注バルブボックス、電気(例えば、造園)ボックス、ゴルフカップ、暗渠排水口、公共施設バルブ開閉カバーなども本開示の範囲内として企図される。
【0021】
本明細書に記載されるように、本開示の実施形態による検出システム及び方法は、車両がこれから物体と交差する経路又は進路上にあることを決定することができる。決定がなされると、検出システムは、器具が物体に接触して物体を損傷するおそれがある前に物体の位置を示す通知(例えば、係合解除通知)を発出することができる。いくつかの実施形態では、当該通知(例えば、係合解除通知)は、当該車両の運転者に、当該検出された物体に到達する前に当該器具の係合解除(例えば、持ち上げ)を手動で開始するように指示する当該運転者に対する視覚的、触覚的、及び/又は聴覚的通知の1つ以上を含んでいてもよい。
【0022】
他の実施形態では、車両は、検出システムと通信するように構成された、本明細書に記載の電子制御装置を含むことができ、制御装置は、通知(例えば、係合解除通知)を発出するように構成されている。制御装置はまた、対地速度などの他の車両パラメータを監視してもよい。対地速度及び検出ゾーンと器具との間の距離のようなその他のパラメータを知って、制御装置は、物体(例えば、スプリンクラーヘッド)の検出の間又は後に、物体との接触を回避するためにいつ器具を地表から係合解除すればよいかを計算することができる。計算された時間になると、制御装置は車両に関連付けられた器具係合又は「持ち上げ」システムへの通知(例えば、指令)を発出することができる。器具係合システムは、器具を車両のシャーシに接続することができ、選択的に、器具を地表に係合し、また器具を地表から係合解除するように構成されていてもよい。いくつかの実施形態では、器具係合システムは、器具が物体に接触する前に、係合解除通知の受信に応答して、器具を地表から自動的に係合解除することができる。本開示の実施形態による検出システム及び制御装置を組み込むことができる1つの例示的な芝生車両は、米国、ミネソタ州、ブルーミントンのトロ社から入手可能なアウトクロス芝生ユーティリティビークルである。本開示の実施形態による検出システム及び方法を組み込むことにより、そのような車両は、物体及び/又は器具の何れかの損傷を回避するために、そのアタッチメント/器具を自動的に持ち上げ、及び、下げるように構成することができる。
【0023】
さらに他の実施形態では、器具を地表から係合解除することに加えて、又はその代わりに、制御装置は、代替策として、車両に関連付けられた自律航法システムと通信することができる。そのような構成によって、車両は効果的かつ自律的に迂回して経路を変更することができ、検出された物体との接触を回避することができる。
【0024】
器具が地表から自動的に又は手動で係合解除されているか否かにかかわらず、検出システム(及び/又は車両制御装置)は、また、いつ器具が物体を超えて移動したかを決定し、器具が再び地表と係合できるという係合通知(例えば、運転者又は制御装置への)を発出できる。代替策として、器具は、車両の所与の対地速度及び物体の大きさに見合った所定の期間の経過のみに基づいて再係合されてもよい。さらに他の実施形態では、検出システムは、器具が地表と再係合する前にいつ物体を通過したかを能動的に検出するように構成されていてもよい。
【0025】
したがって、本開示の実施形態は、自動又は半自動検出を可能にし、芝生処理中のスプリンクラーヘッド及び他の地表又は地表下の物体の回避を可能にし、その結果、潜在的なヘッド及び/又は器具の損傷、並びにその修理に関連付けられた相応の時間及びコストを減少させることができる。
【0026】
図面を参照すると、
図1は、本開示の実施形態による検出システム200を組み込んだ例示的な車両100(様々な構造が除去された)を示し、
図2は、車両及び検出システムの一部の概略を示す。これらの図に示すように、車両100は、後輪106及び前輪108などの1つ又は複数の地面接触部材(例えば、車輪、トラック、ローラなど)によって芝生又は地表103に支持されたシャーシ102を含んでいてもよい。前輪及び後輪の1つ以上は、地表103で車両を推進するように構成された牽引駆動システム126の一部を形成していてもよい。原動機104は、
図1に示すように、車両の前端近傍でシャーシ102に装着されて(又は別の方法で担持されて)いてもよい。原動機104は、牽引駆動システム126の1つ又は複数の車輪106、108に動力を供給して、地表103で車両を推進することができる。また原動機104(内燃機関、電動機、又は他の動力源として構成できる)は、他の車両システム及び任意の車両アタッチメントに動力を供給することができる。
【0027】
シャーシ102は、着座した運転者を支持するように構成された座席113を有する運転室112を画定する搭乗プラットフォームをさらに画定することができる。運転室112は、様々な車両制御装置を含み、そのいくつかを以下に詳述する。例えば、運転室112は、車両速度を足で制御するアクセルペダルとブレーキペダルとを含んでいてもよい。周知の方法で運転者による車両の方向の制御を可能にするステアリングホイール114が提供されてよい。運転室112内に、例えばダッシュボード115又はセンタコンソール116上に、その他の制御装置及び計器が提供されてよい。
【0028】
車両100は、シャーシ102に接続され、シャーシによって地上保守器具を担持するためのアタッチメントシステム105をさらに含んでいてもよい。アタッチメントシステム105は、車両100の後端部でアタッチメント部110を支持するように構成されているが、車両の前側又は横側の近傍、さらに車両の下でアタッチメントを支持できるアタッチメントシステムも企図される。アタッチメント110は、芝生曝気装置を形成する複数のコアリング歯109(
図3参照)によって画定される器具111を含んでいてもよい。曝気装置として説明されてはいるが、大半の任意の地上保守用具を提供するアタッチメントが本開示の範囲内で企図されている。例えば、本明細書に記載するように、カッティングリール、回転芝刈り機ヘッド、レーキ、散布機、噴霧器、デサッチャーなどを含むアタッチメントを、アタッチメントシステム105を介して車両に搭載し、制御することができる。
【0029】
いくつかの実施形態では、アタッチメントシステム105は、シャーシ102の後部に担持された従来の3点リンク機構117を形成してもよい。リンク機構117は、上部中央リンクと、シャーシ102に枢動可能に連結された一対の下部の短手方向に離間したリンクとを含んでいてもよい。上部及び下部リンクの後端部は、様々なアタッチメントを直接に又は何らかのタイプの簡単着脱搭載システムによってそこに搭載するための枢動接続部を有する。3点リンク機構117に連結され、車両100上の油圧システム(図示せず)によって動力を供給される1つ又は複数の油圧シリンダ(図示せず)を用いて、アタッチメント/器具を係合又は作業位置(器具が地表103に係合された位置)まで下げ、係合解除又は搬送位置(器具が地表から係合解除された位置)まで持ち上げることができる。また、シャーシ102の後部にドローバーを提供して、車両100の後方で何らかのタイプのアタッチメントを牽引することができる。
【0030】
アタッチメントを下げ、また持ち上げて器具を個別に地表に係合し、また係合解除する構成として本明細書で図示され説明されてはいるが、そのような構成は例示に過ぎず、器具への動力供給を終了するなどの他の動作によって他の器具を係合し、また係合解除することができる。
【0031】
パワーテイクオフシャフト(PTO)119(
図2に概略を示し、
図3に破線で示す)もまた、シャーシ102の後部に担持されている。PTO119は、3点リンク機構117に搭載されるとアタッチメントに動力を供給するか又はそれを駆動するために使用できる機械的動力源を提供する(例えば、原動機104を介して)。何らかのタイプのアタッチメントを操作する際、PTO119は、運転室内のPTOスイッチ(例えば、
図1のコンソール116上の)を用いて、運転者が手動で係合及び係合解除することができる。手動での制御以外に、PTO119は、シャーシ102によって支持された電子制御装置130(
図2参照)によって自動的に係合及び係合解除することができる。
【0032】
本発明の例示的な車両100の態様は、米国特許出願公開第2019/0389519号にさらに記載されている。さらに、本開示による実施形態は、着脱可能な器具を備えた汎用の乗用ユーティリティ車両として記載されているが、本開示の範囲から逸脱することなく、専用の器具(例えば、立ち乗り型曝気装置)を備えて構成された車両だけでなく、歩行型又は立ち乗り型車両にも同様に適用される。さらに、本明細書に記載の検出システムは、遠隔及び自律制御車両にも適用することができる。
【0033】
図2に示すように、検出システム200は、器具の前方の検出ゾーン205を監視し、車両100が地表を横切るときに検出ゾーンを通過する地表103又はその近傍の物体を検出するように構成されている。例えば、検出システム200は、変換器の検出領域207内の物体を検出するように構成された1つ又は複数のセンサ又は変換器204を含んでいてもよい。変換器204は、車両100の前方(例えば、方向107)、短手方向、及び/又は下側の位置、並びにアタッチメント110(器具111)の前方の位置で、シャーシ102上に配置されていてもよい。例えば、
図1に示すように、変換器204は、車両の前端近傍の位置120に配置することができる。或いは、変換器204は、車両の横側(及び下側)の、概ね、位置122(
図3も参照)に配置されてもよい。その他の位置も可能である。例えば、変換器204は、器具ハウジング自体に直接装着可能である。
【0034】
変換器204は、車両100がヘッドの所定の範囲内に入ると(すなわち、ヘッドが検出ゾーン205に入ると)、物体、例えば、スプリンクラーヘッド300を検出する能力がある。例えば、
図4に示すように、検出システム200は、磁気(磁力計)変換器、無線周波数識別(RFID)又は近距離無線通信(NFC)変換器、ビジョンベースの変換器、マイクロ波レーダ変換器、及びリアルタイムキネマチックGPS(RTK GPS)変換器から選択できる1つ又は複数の変換器204を含んでいてもよい。本明細書で使用する「変換器」及び「センサ」は、検出された物体(例えば、スプリンクラーヘッド)に関連付けられた1つ又は複数のパラメータの検出及び/又は測定と、各パラメータを表す電気信号の生成とを可能にする任意のデバイス、モジュール、アンテナ、送信機、受信機、送受信機、及び関連付けられた構成要素を指すために交換可能に使用される。
【0035】
概して、RFID技術は、電波を用いて、物体上又はその近傍に位置する(例えば、スプリンクラーヘッド300に装着された)無給電タグ303に電流を誘導し、任意選択として、そのタグに記憶された情報を読み取る。一方、磁力計は、磁気波を測定する。こうして、各スプリンクラーヘッド300上に既知の磁気タグ303を配置することによって、ヘッド位置を検出できる。一方、マイクロ波レーダは、スプリンクラーヘッド300から受信したエコー又は戻り信号の大きさ及び周波数を決定し、ドップラー偏移法の原理を適用して相対距離を推定することができる。マイクロ波レーダではスプリンクラーヘッドのタグ付けは必要ないが、何らかのタイプの物体(ヘッド)の特徴付けが最初に必要になる場合がある。変換器204は、パターン認識アルゴリズムを活用して連続する画像内のスプリンクラーヘッド300の位置を検出するように構成されたディジタル撮像センサを含むこともできる。そして、RTK GPSは、物体の位置と車両のリアルタイムの位置が既知である周辺領域のマップを利用することができる。
【0036】
本開示の実施形態は、使用される変換器に関わらず、物体を検出し、器具/物体の接触の可能性及びその結果としての損傷を最小限にする動作を開始することができる(例えば、運転者に持ち上げを開始するように通知するか又は器具を自動的に持ち上げることによって)検出システムを提供できる。物体を超えて移動した後、器具に指令して、再度下げること、又は別の方法で地表103と係合することによって通常の動作を再開させてもよい。
【0037】
図2は、例示的な検出システム200を組み込んだ車両100の部分概略図である。この図に示すように、車両は、様々な車両機能を監視し制御するように構成された電子制御装置130を含んでいてもよい。例示的な制御装置130は、プロセッサ132及びメモリ134を含み、プロセッサ132は各種入力を受信し、メモリ134に記憶された1つ又は複数のコンピュータプログラム又はアプリケーションを実行する。メモリ134は、例えばプロセッサ132によって実行されると制御装置130に各種計算を実行させ、且つ/又は各種指令を発出させるコンピュータ可読命令又はアプリケーションを含んでいてもよい。すなわち、プロセッサ132及びメモリ134は共に、入力データを処理し、1つ又は複数の構成要素/デバイスへの所望の出力を生成するように動作可能な計算装置を画定することができる。
【0038】
検出システム200からの入力の受信に加えて、制御装置は、車両の動作に関する様々なその他の入力を受信してもよい。例えば、制御装置は、対地速度センサ141からの入力又は信号140を受信することができ、そのような信号は車両の対地速度を表す。その他の入力140は、エンジン回転速度、エンジン温度、ペダル又はハンドルの位置、PTOスイッチの位置、パドルコントロール123(
図10参照)の位置などに関する信号又はデータを含んでいてもよい。さらに、制御装置130は、他の車両システム及び構成要素へ各種指令及び/又はデータを送信してもよい。例えば、制御装置130は、アタッチメントシステム105に関連付けられた器具係合システム150へ各種指令を送信できる。そのような指令は、器具を地表から係合解除する「持ち上げ」指令と、器具を地表との係合位置に戻す「下げ」指令とを含んでいてもよい。言うまでもないが、制御装置130は、例として、牽引駆動システム126などの車両制御システム、PTO119、運転インジケータなどに、その他の出力144を提供してもよい。実際、いくつかの実施形態では、制御装置は、様々な車両パラメータと一部又は全部の運転者入力が制御装置に提供され、制御装置がそれに基づいて適切な出力を生成する「電子制御方式による運転システム」の一部を形成していてもよい。
【0039】
したがって、制御装置130は、検出システム200と器具係合システム150の両方と通信可能であり、物体情報を受信し、車両の対地速度に基づいて、当該器具が物体に到達する時間を推定するように構成されている。制御装置は、器具が物体に接触する前に器具を地表から係合解除することを命じる通知を発出するようにさらに構成されている。
【0040】
図2にさらに示すように、検出システムは、変換器204と、変換器からの情報を含む様々な情報を記憶して処理し、結果としての電気信号を車両制御装置130へ送信する1つ又は複数の関連付けられた電子処理モジュール206とを含んでいてもよい。例えば、検出システムがRFID技術を利用している場合、変換器204は1つ又は複数の処理モジュール206にデータを提供するRFIDアンテナであってもよい。次いで処理モジュール206はアンテナデータを処理して、制御装置130に提供される電気信号を生成してもよい。この場合、車両制御装置130は検出システム200の一部を形成していてもよく、或いは、検出システムは制御装置130とは別体の制御装置を含んでいてもよい。
【0041】
制御装置130の機能は、当業者に周知の任意の方法で実施できる。例えば、メモリ134は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、不揮発性RAM(NVRAM)、電気的消去可能プログラマブルROM(EEPROM)、フラッシュメモリ、及び/又は任意のその他のディジタル媒体などの、任意の揮発性、不揮発性、磁気的、光学的、及び/又は電気的媒体を含んでいてもよい。メモリ134及びプロセッサ132は、共に制御装置130に組み込まれたものとして示されているが、別々のモジュールに含まれていてもよい。
【0042】
プロセッサ132は、マイクロプロセッサ、制御装置、ディジタル信号プロセッサ(DSP)、特殊用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、及び/又は同等の離散又は集積論理回路の何れか1つ以上を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、プロセッサ132は、1つ又は複数のマイクロプロセッサ、1つ又は複数の制御装置、1つ又は複数のDSP、1つ又は複数のASIC、及び/又は1つ又は複数のFPGA、並びにその他の離散又は集積論理回路の任意の組み合わせのような複数の構成要素を含んでいてもよい。本明細書に記載の制御装置/プロセッサに帰せられる機能は、ソフトウェア、ファームウェア、ハードウェア、又はそれらの任意の組み合わせとして具体化できる。少なくとも1つの実施形態では、上述した車両100の様々なサブシステムは、例えば、直接相互接続することで、無線方式で、バスアーキテクチャ(例えば、制御装置エリアネットワーク(CAN)バス)を介して、又は、車両の様々な構成要素とシステムとの間でデータ及び/又は電力を送信可能にする任意のその他の接続構成などの大半の任意の方法で接続することができる。
【0043】
図3は、車両100の底面図である。この図に示され、上述したように、検出システム200は、器具の前方、車両の前端部(位置「A」)、又は長手方向の前後輪108、106の間(位置「B」)に位置する変換器204のアレイを含んでいてもよい。
【0044】
図4は、地表103の器具の運転中の
図3の車両100の上面図であり、当該器具は様々な場所にスプリンクラーヘッド300を含む。この図に示すように、検出システム200(例えば、変換器204)は、検出ゾーン205内に進入するスプリンクラーヘッド300を連続的に走査することができる。器具111とヘッド300との接触を最小限にするために、検出ゾーン205は、器具の前方に配置されることに加えて、好ましくは、器具の幅を越えて短手方向外方に延びる。
【0045】
検出ゾーン205を通過する各ヘッド300を追跡することによって、検出システム200は、ヘッド300が移動中の器具の経路内にあるか否かを決定することができる。
図2に示すように、ヘッド300が経路内にある場合、システム200は(例えば、制御装置130を介して)、係合解除通知、例えば、解除指令145を発出してもよい。上記のように、係合解除通知を器具係合システム150に提供して、器具が物体/ヘッドと接触する前に、器具を地表103から自動的に持ち上げるか、又は別の方法で係合解除するようにシステム150に指令することができる。器具が検出されたヘッド300を通過した後(その通過は車両の速度と対応する期間の経過とに基づいて推定されてもよい)、制御装置は、器具を自動的に下げるか、又は別の方法で器具を地表と係合する(例えば、器具を地表に係合した動作位置に戻す)ように器具係合システム150に指令することができる。
【0046】
本明細書に記載のシステム及び方法は、様々な地上保守アタッチメント/器具及び異なる地表又は地表下の物体のこれに対応する検出用途を有していてよいが、以下の好ましい実施形態は、芝生コア曝気装置110と、地下灌漑システムに関連付けられたスプリンクラーヘッド300の損傷を検出し、これを回避するように構成された検出システム200の文脈で説明される。したがって、用語「曝気装置」、「器具」、及び「アタッチメント」は、用語「物体」、「ヘッド」及び「スプリンクラーヘッド」がそうであるように、本明細書では交換可能に使用できる。
【0047】
[超高周波RFID]
いくつかの実施形態では、超高周波(UHF)RFID(例えば、900~915メガヘルツ(MHz)範囲の)がスプリンクラーヘッド300の各々に装着されているか又は別の方法で関連付けたタグ303(
図4参照)を検出するために使用できる。タグは、汎用の識別子を含んでいてもよく、又は各タグ/ヘッドの組み合わせは、その特定の地理的位置に一意に結合されていてもよい。
【0048】
各RFID変換器又はアンテナ204は、
図1~4に示すように、車両シャーシ102上の前方位置に配置され、下向き(地表103に対して垂直)に向けられる。
図4に示す実施形態では、3つの変換器アレイは、車両中心線131の近傍にアンテナを配置し、その各々の横側にアンテナを配置してもよい。その結果、各アンテナ204は、
図5に示すように、地表にある概ね円形又は横長形状の独立した検出領域207を形成することができ、検出領域207の有効径は、地表103上方のアンテナ204の標高に依存する。組み合わせ領域207は
図4に示す検出ゾーン205を形成できる。図示のように、3アンテナRFIDアレイ検出ゾーン205は、以下に詳述するように、カバレッジ及び検出能力を向上させるために互いに重複する検出領域207を有していてもよい。
図2に示すように、アンテナ204は、各々がRFID処理モジュール206にデータを提供することができ、RFID処理モジュール206は制御装置130と通信することができる。なお、3つのアンテナ204が図示されているが、1つ、2つ、又は4つ以上のアンテナを使用する実施形態も企図されている。
【0049】
本明細書で使用される用語「前方」は、器具の動作方向に対する検出ゾーンの位置を指すために使用されてもよい。したがって、変換器及び検出ゾーンは、器具の操作中に車両が順方向(
図4の方向107)に移動するときに器具の前方に位置していてもよい。ただし、他の実施形態では、変換器及び検出ゾーンは、本開示の範囲から逸脱することなく、車両が逆方向に移動するときに器具が動作するように意図されている場合には実際に器具の「背後」にあってよい。
【0050】
曝気中、車両100は、0.4メートル/秒(m/s)から1.2メートル/s(例えば、0.9マイル(1.44841キロメートル)/時(mph)~2.7mph)の速度で、前方(例えば、順方向107)に推進することができる。車両のこの前進動作中、検出システム200の各アンテナ204はタグ303を連続的に走査することができる。アンテナの1つがタグ303を検出すると、システムは受信信号強度の指標(RSSI)を処理モジュールのメモリ内に記憶された値の「指紋」データベースと比較することができる。
【0051】
タグ情報の経時的な変化を観測し、どのアンテナ204がタグ303を検出するかを監視することによって、検出システム200は、タグ303の位置を推定し、したがって、車両/器具に対するスプリンクラーヘッド300の位置を推定して、タグ/ヘッドが移動中の曝気装置110の経路内にあるか否かを決定することができる。上記のように、検出システム200は、車両制御装置(例えば、
図2の制御装置130を参照)と通信可能であり、車両制御装置は、上記のように、車両の対地速度を表す信号を受信することもできる。次いで検出システムは、制御装置130を介して、車両の対地速度と、アンテナによって検出されたタグ情報とに基づいて、ヘッド300がこのままではいつ曝気装置110と接触する可能性があるかを計算し、器具係合システム150に対して、スプリンクラーヘッド300との接触を回避するために適切な時間に曝気装置を自動的に持ち上げることを命じる係合解除通知を発出することができる。
【0052】
器具がスプリンクラーヘッドを通過した後に、制御装置130は、器具係合システム150に対して曝気装置110を下げることを命じる係合通知を発出することができる。いくつかの実施形態では、例えば、車両の速度に基づいて、所定の(又は計算された)期間が経過した後に、指令を発出してもよい。他の実施形態では、同じか又は異なる変換器204はいつ曝気装置110がスプリンクラーヘッドを通過したかを能動的に検出して、制御装置130に通知でき、その後、曝気装置を再び下げることができる。
【0053】
図5は、アンテナ204の1つの例示的な検出領域207を示す図である。下記のように、アンテナ204によって検出されたタグ情報を用いて、検出システム200は、任意の所与の時間にスプリンクラーヘッド300/タグ303が検出領域207の範囲のどこにあるかを推定することができる。例えば、検出システム200は、検出領域207にタグが進入しつつあること、例えば、検出領域の外側範囲すなわち「リング」4にタグが進入しつつあることを決定できる。次の読み取りでは、タグはリング4内のリング3内にあると推定できる(例えば、RSSIに基づいて)。その後の読み取り値がリング3に残っており、最終的にやはりリング4内に残っている場合、検出システム200は、線310又は線312に示すように、タグ303/ヘッド300の相対的な経路又は移動が検出領域207の外周に沿っていると決定できる。すなわち、一連のタグの読み取りを分析することによって、この場合、アンテナ204に対するヘッド経路の具体的な位置が線310又は線312沿いにあることを概ね識別できる。同様に、読み取り値がリング4からリング3、さらにリング2及び1のタグの通過を示す場合、読み取りのタイミング及び識別子情報を用いて、タグの相対的な移動が例えば概ね線314又は316沿いにあることを示すことができる。なお、検出領域207は本明細書では4つの別個の範囲又はリングを備えるものとして示されているが、そのような実施形態は専ら例示的なものであり、例えば、任意の数の「リング」が企図されている。タグ情報(例えば、信号移相など)も用いてタグ/ヘッド位置及び検出領域207の通過を推定できることは当然である。
【0054】
単一のアンテナ204に対するタグ/ヘッドの位置を推定するだけでは、ヘッドが曝気装置110の経路内にあるかどうかを決定するには充分ではないことが理解されよう。例えば、
図6に示すように、タグ識別子情報が類似しているために、右側のアンテナ204-3は、一連の読み取り値に基づいて、ヘッド300の経路がアンテナの短手方向外側にある(
図6の線310で表される)か、又はタグ識別子情報として短手方向内側にある(線312)かを決定できない可能性がある。外側(線310)に沿って通過する場合に、ヘッド300が曝気装置の先まで短手方向に通過するため、曝気装置110の持ち上げは不要としてもよい。ただし、ヘッドがアンテナ204-3の検出領域207の内側に沿って通過する(線312に沿って)場合、ヘッドは曝気装置110の経路内に位置していてもよい。
【0055】
どのヘッド/タグ経路が正しいかを決定するために、他のアンテナ(
図6に中央アンテナ204-1及び左側アンテナ204-2として示す)からの検出を使用できる。例えば、ヘッド300が経路312に沿って移動する場合、アンテナ204-1もその検出領域207を通過するヘッド/タグを読み取る。実際、2つの検出領域が重複しているため、2つの検出領域207内で同時に任意のヘッド300を検出することができる。ただし、ヘッド/タグ経路が線310に沿っている場合、アンテナ204-1(アンテナ204-2も)は、タグを登録しない。この場合、検出システム200は、経路310が実際のヘッド経路であることを正確に決定することができる。
【0056】
タグが一連のタグ読み取りによって識別されると、処理モジュール206は、いつタグがもはや検出されなくなったかに関して、車両制御装置130(
図2参照)に通知し、タグ/ヘッドが該当する検出領域207を完全に通過したことを示すことができる。このイベントに基づいて、制御装置130は、車両速度と検出ゾーン205から曝気装置110までの距離211(
図4参照)とに基づいて、いつ器具係合システム150に対して曝気装置を地表から係合解除することを命じる係合解除通知を発出するかを決定できる。さらに、制御装置130は、曝気装置110がヘッドを通過した後に、器具係合システムに対して、曝気装置を地表に再係合することを命じる係合通知を自動的に発出してもよい。
【0057】
図7は、
図5~6を参照して説明した方法を用いて車両100を操作する例示的なプロセス400を示す。このプロセスは402から始まる。403で決定されるように、器具が動作中で地表に係合されていると決定されると、車両は、地表103で順方向(例えば、
図4の方向107を参照)に推進することができる。変換器(アンテナ204)は、404でタグ303を走査することによって器具前方の検出ゾーン205を監視することができる。405でタグ(例えば、「タグID x」が検出された(例えば、タグが検出ゾーンを通過した)場合、検出システム200は、406で、検出ゾーン205のタグの検出領域207の範囲(例えば、
図5のリング1~4を参照)の1つの内にタグを推定し又は「配置」することができ。タグ303の推定位置は、408で、例えばタグ識別子情報、他のアンテナ204による検出などに基づいて例えば、タグ識別子情報の変化、他のアンテナ204による検出などに基づいて、408で更新でき、その後、制御は404に戻る。
【0058】
405でタグが検出されない場合、検出システム200は、タグID xが以前に検出されたか否かを410で決定する。タグID xが以前に検出されなかった場合、制御は404に戻る。一方、410でタグID xが以前に検出された場合(タグが特定のアンテナ204の該当する検出領域207を完全に通過したことを示す)、検出システム200及び/又は車両制御装置130は、412で、車両100の対地速度と検出ゾーンから曝気装置までの距離211とに基づいて、スプリンクラーヘッドの損傷を回避するために曝気装置を持ち上げなければなると満了することができる。413でTdelayが満了すると、制御装置130は、414で、係合解除通知(例えば、器具係合システム(
図2のシステム150など)に対して器具/曝気装置を地表から係合解除するか又は持ち上げることを命じる指令)を発出することができる。次いで、プロセス400は、任意選択として、416で、器具が物体/スプリンクラーヘッドを通過したか否かを決定できる。もしそうである場合、検出システム(制御装置130を介した)は、418で、係合通知(例えば、器具係合システム150に対して器具/曝気装置を地表に係合するか又は下げることを命じる指令)を発出することができる。420で決定されたように、曝気装置がまだ動作していると仮定して、プロセスは404に戻る。420で曝気装置が停止している(例えば、もはや動作していない)場合、プロセスは422で終了する。
【0059】
上記のように、
図7のプロセス400は、指紋データベースを用いて、タグ位置を関連付ける(特定のアンテナに対して)ことに頼ってもよい。特定のどの実施形態にも縛られることを意図していないが、指紋データベースは、特定のアンテナの周囲の様々な位置にタグデータをロギングし、タグ情報(例えば、RSSI、周波数、位相)をそれらの対応する位置に記録することによって、経験的に(例えば、車両操作の前に)データを記入することができる。次いで、機械学習アルゴリズムを用いて、そのアンテナに対するタグの位置(例えば、
図5の1~4のどの範囲内か)を計算する決定木を生成することができる。
【0060】
そのような方法は、有効とはいえ、その精度は、読み取り時のアンテナに対する特定のタグの向きにいくらか左右されることがある。したがって、器具係合解除(持ち上げ)タイミング計算のばらつきが生じる場合がある。そのような問題に対処するために、車両100を操作する代替プロセス500を
図8に示す。プロセス500は、本明細書で既に説明したのと同じ車両100及びRFIDアンテナアレイを使用することができる。ただし、タグ移動経路は、以下に示すように、追加のタグ情報(例えば、指紋データベースの代わりに)を評価することによって、よりよく推定することができる。
【0061】
プロセス500は、502から始まる。504で器具が動作中で地表103に係合している(例えば、動力付き曝気装置と地表との係合)と判断されると、車両は地表を順方向に推進され、検出システム200は、変換器(RFIDアンテナ204)を用いて、506で、検出ゾーン205に物体がないか監視(例えば、スプリンクラーヘッド300/RFIDタグ303の走査)を始めることができる。特定の物体/タグ(スプリンクラーヘッドに装着されたタグID x)が、508で、アンテナの1つを介して検出された、又は「読み出された」場合(例えば、物体が検出ゾーンを通過しているところが検出された場合)、検出システムは、510で、これがタグID xの最初の検出であるか否かを決定することができる。そうである場合、検出システムは、タグID xをタグデータベースに追加し、さらにタグID xの現在のタグ情報をタグデータベースに512で記録することができる。プロセスは506に戻る。一方、システムが510でこれがタグID xの最初の検出ではない(すなわち、タグID xが既にタグデータベース内にある)と決定した場合、タグID xの現在のタグ情報は、514で、タグデータベース内に記録され、その後、プロセスは再び506に戻る。
【0062】
本明細書で使用される、タグ(タグID x)の「最初の検出」という語句は、タグID xが検出ゾーンに入って最初に検出されたタグ読み取りを指す。タグID xが検出ゾーンを一旦抜けると、タグID xの後続の何れかの読み取りは、別の最初の検出として登録される。また、本明細書で使用される、用語「タグデータベース」は、現在検出されているタグのタグID及びその関連タグ(物体)情報を含むデータセットを指す(以下に説明するように、現在検出されていないが、タグの検出ゾーン通過を示す以前の期間内に検出されたタグを含めて)。
【0063】
網羅的なリストではないが、「タグ情報」(本明細書では「物体情報」とも呼ばれる)は、各タグ読み取りについて、特定の検出アンテナのアイデンティティと、固有のタグ識別子と、時間(タグ読み取りの)と、受信信号強度の指標(RSSI)、検出器/アンテナの周波数チャネルと、検出器/アンテナによって送受信される信号間の移相と、車両の対地速度(
図2のセンサ141から制御装置130に提供される)との任意の1つ以上を含んでいてもよい。
【0064】
タグID xが508で検出されなかった場合、プロセス500は、516で、タグID xが以前に検出されたか否かを決定する。そうでない場合、プロセスは506に戻る。ただし、タグID xが516で以前に検出されたと決定された場合、プロセスは522で過去y秒の間にタグが検出されたか否かを決定できる。タグID xが過去y秒の間に検出された場合、プロセスは506に戻ることができる。一方、522における決定がタグID xが過去y秒の間に検出されなかったという内容の場合、検出システムは、524で、読み出し継続期間にわたってタグID xの様々な物体又はタグの統計値を計算することができる。こうして、検出システムが、物体が検出ゾーン内に残っている間に物体(スプリンクラーヘッド)に関連付けられた物体又はタグの情報を周期的に捕捉する(例えば、タグを読み取るたびに)ように構成できることが理解されよう。
【0065】
522で使用されるyの値は、タグID xの検出がなかったことが一定のアンテナ周波数での無線干渉又は検出の欠如のような外的要因によるものではないことを保証するように選択可能である。yの例示的な値は、0.5秒(sec)から1secの範囲内である。例えば、タグが検出ゾーンを通過したと誤って結論することなく潜在的な検出の見逃しを可能にするのに0.75秒で充分であることが分かっている。
【0066】
網羅的ではないが、524で計算されるタグ統計値は、タグ/物体が検出ゾーン内で検出された存在期間(タグ/物体が検出ゾーン内にあった期間)と、存在期間中に検出された最大RSSIと、検出された最小RSSIと、存在期間中に検出されたRSSIの標準偏差と、物体の最初の検出と最大RSSIの時間との間の期間と、最大RSSIの検出と物体の最後の検出との間の期間と、物体が検出されている間に移動した直線距離と、当該最初の検出と最大RSSIの時間との間に移動した直線距離と、最大RSSIの時間と最後の検出との間に移動した直線距離と、の何れか1つ以上を含むことができる。
【0067】
現在の車両速度と、ある種の車両パラメータ(例えば、後者は器具を地表から係合解除する(例えば、持ち上げる)のに必要な距離211(
図4参照)と時間を含む)とに関する情報を用いて、車両制御装置130は、器具が物体に到達するまでの期間を推定することができる。この推定値に基づいて、制御装置は、526で、物体との接触を回避するために地表103からの器具の係合解除が必要になると満了する遅延時間(Tdelay)を計算することができる。528でTdelayが満了すると、検出システム(例えば、制御装置130)は、530で、器具を地表から係合解除することを命じる係合解除通知を発出することができる。
【0068】
Tdelayは、変化することがある(例えば、異なる実施形態、異なる車両構成、異なる車両速度に応じて)が、いくつかの実施形態では、Tdelayは、器具が物体と接触することにならずに物体に接近するまで動作を継続することを保証するように選択される。
【0069】
いくつかの実施形態では、係合解除通知は、器具係合システム150(
図2参照)へ送信される、器具を適切な時間(例えば、物体に到達する前)に地表103から自動的に持ち上げ又は別の方法で係合解除することを命じる指令又は信号145であってもよい。他の実施形態では、係合解除通知145は、運転者制御コンソール(例えば、
図2及び
図10に示すディスプレイ124)に提供される視覚的、触覚的及び/又は聴覚的警報であってよい。そのような通知を受信すると、運転者は、以下に詳述するように、パドルコントロール123(
図10)を用いて、器具を地表から手動で係合解除することができる。
【0070】
いくつかの実施形態では、プロセス500は、
図8に示すように、追加のステップ532及び534を含んでいてもよい。具体的には、器具を地表から係合解除することを命じる係合解除指令又は通知の発出に加えて、検出システム(例えば、制御装置130)は、532で、いつ器具が物体から離れたか又は物体を通過したかを決定し、器具を地表と係合又は再係合することを命じる係合指令又は通知を534で発出することができる。534の後で、プロセスは、器具が536でまだ動作していると決定されたか否かに応じて、506に戻ってもよく、又は538で終了してもよい。
【0071】
器具係合解除通知と同様に、器具係合通知は、器具が物体から離れた後で自動的に地表に再係合するように自動化することができる。例えば、係合通知は、器具係合システム(持ち上げシステム)150へ送信される、適切な時間に器具を自動的に下げる信号であってもよい。いくつかの実施形態では、係合通知は係合解除通知に続く特定の時間に送信されてもよく、そのような時間は固定されているか又は車両速度及び/又はその他のパラメータに基づいて可変である。さらに他の実施形態では、変換器(例えば、RFIDアンテナの別のセット)を提供して器具の背後の領域を監視し、物体/タグが器具を通過した(背後で)ことが検出されると係合通知を発出することができる。さらに他の実施形態では、係合通知を運転者に提供でき、その時点で、運転者は、器具に対して地表と再係合することを手動で指令することができる。
【0072】
[マイクロ波レーダ]
上記のRFID方法と同様に、他の実施形態では、レーダを用いてスプリンクラーヘッド、さらには埋設物などの物体を検出し、ヘッド/物体が曝気装置に向かう経路内にあると決定されたときに、車両運転者にヘッド/物体の存在を通知する(又はヘッド/物体との接触を回避するために自動的に器具/曝気装置を持ち上げる)ことができる。レーダ検出は、最初にタグ又は他の標的をスプリンクラーヘッドに固定する必要なしにヘッドを回避できるという付加的な利益を含み得る。
【0073】
例えば、いくつかの実施形態では、検出システム200は、それぞれ1メートル(m)から1ミリメートル(mm)の波長範囲に対応する300MHzから300ギガヘルツ(GHz)のマイクロ波周波数帯域範囲(例えば、8GHzから12GHzのX帯域周波数)でエネルギーを送信するように構成された
図9に示す送受信アンテナ204を有するマイクロ波レーダを含んでいてもよい。そのような送信源を用いて、検出システム200は、曝気装置110の接近経路内にある物体(例えば、スプリンクラーヘッド)の位置を推定するためにドップラーシフトの原理に依拠してもよい。当技術分野で知られているように、「ドップラーシフト」は、波源に対して移動している検出器/観察者に関する波の周波数又は波長の変動を指す。
【0074】
したがって、マイクロ波レーダを利用する検出システム200は、上記の周波数及び範囲でエネルギーを放射し、戻り信号(例えば、ドップラーシフト)の反射波の大きさ及び周波数を測定するアンテナ(204)を利用することができる。ドップラーシフトの大きさは、送信されたエネルギーの反射に比例し、ドップラーシフトの周波数は、車両100/アンテナ204に対する物体の速度に比例する。この関係は、以下の式1に示すように数学的に表現することができる。
Fd=2*(v/c)*Ft*Cos(a) (式1)
ただし、
Fd=ドップラー反射波(「エコー」)周波数
v=標的の速度(例えば、物体に対する車両の速度)
c=光の速度(定数3×108メートル/秒(m/s))
Ft=変換器/アンテナの送信周波数
a=物体の相対移動方向とレーダアンテナモジュールの軸線とがなす角度
【0075】
実際の運用では、ドップラーレーダアンテナ204を車両100の上(例えば、
図1の位置121)に装着してよい。アンテナは、例えば10.525GHzのX帯域で前方にマイクロ波エネルギーを送信することができる。様々な誘電率(絶縁定数)の材料は、エネルギーの大きさ及び周波数データを反射してドップラーレーダアンテナへ戻す。したがって、スプリンクラーヘッドは、周囲の芝生とは異なるレーダ反射を提供する。
【0076】
図9に示すように、検出された物体(スプリンクラーヘッド300)からのデータは、レーダアンテナ204によって受信される。これらのデータは、機械学習(ML)ソフトウェア環境230に供給され、機械学習(ML)ソフトウェア環境230は、処理モジュール206(又は制御装置130)内で実行され、データ内のパターン及び規則を発見するための埋め込みシステム上のニューラルネットワーク(NN)人工知能(AI)モデルの推論を行うことができる。これらの推論されたデータは、事後の詳細分析のためにメモリ228に記憶され、機械制御(MC)のためのオブジェクト識別情報のローカルライブラリ229と比較される。処理モジュール206は、上記のRFID処理モジュールと同様に、車両制御装置130を介して器具係合システム150と通信することができる。したがって、上記のRFID検出システムと同様に、マイクロ波レーダ検出システムは、スプリンクラーヘッド300を識別し、器具係合システム150に対する、曝気装置110とヘッド300との意図しない接触を低減又は解消することを命じる通知又は指令を発出する(例えば、車両制御装置130を用いて)ことができる。
【0077】
[手動及び半自動制御]
上記の実施形態は、器具の持ち上げの自動化について記載しているが、検出システム200はまた、そのような作業を自動化できる車両制御装置(例えば、制御装置130)を含まない車両と併用することが企図されている。そのような場合、検出システム200は、適切な時間に、当該器具を持ち上げる、聴覚的、触覚的、又は視覚的な合図を介して、運転者に通知するだけでよい。例えば、
図10は、車両100の例示的な運転室112の部分斜視図である。この図に示すように、運転室112は、パドルコントロール123及び1つ又は複数のディスプレイ124を含む各種コントロールを含んでいてもよい。車両100には制御装置130がないため、
図8の530での係合解除通知は、ディスプレイ124への視覚的な通知であってよく、そのような通知は、赤、緑、及び黄色の光を提供する。本明細書で既に説明したように、検出ゾーンを通過したスプリンクラーヘッドが検出されると、通知は緑から黄色に変化して接近するヘッドを示し、器具の持ち上げを開始せよと指示することができる。さらに時間が経過すると、光は赤に変化し、ヘッドが曝気装置の下にあり、曝気装置を下げてはならないことを示す。充分な時間が経過すると、光は再び緑色に変化し、曝気装置を再度下げて操作できることを示す。
【0078】
いくつかの実施形態では、運転者は、パドルコントロール123を引き寄せることによって、係合解除通知(例えば、黄色の光)に応答できる。そのようなパドルコントロールの操作によって、器具係合解除システム150に器具を持ち上げさせることができる。同様に、ディスプレイ124は、
図8の534で識別される係合通知を表示してもよい(例えば、緑の光を用いて)。係合通知を確認した運転者は、パドルコントロール123を押し、器具係合システム150に、今一度器具を押し下げ又は別の方法で地表と係合することができる。
【0079】
車両制御装置がない車両の場合には、車両の対地速度が分からなくても通知を発出することができる。したがって、通知は、比較的高い対地速度を想定して持ち上げを間違いなく指示し、低速の対地速度を想定して器具の持ち上げを指示するように構成されていてもよい。そのような動作は、曝気装置がヘッド周囲の所望の領域へ侵入することを回避できるが、スプリンクラーヘッドの接触/損傷の機会も減らすことができる。
【0080】
他の実施形態では、車両には本明細書に記載の検出システムがなくてもよいが、車両制御装置130は含む。そのような実施形態では、解除/係合指令を運転者が確認し運転者が手動で開始することへの信頼が必要になり得る。例えば、
図11は、上記の車両100と大半の点で同様であるが、関連付けられた検出システムがない車両900の部分側面図を示す。運転者は、器具(図示せず)の操作に先立って、車両に装着された(例えば、車両のフードの端部に装着された)車両サイト902を通して自分の視線904を較正することができる。そのような較正は、例えば、サイト又は運転席113の高さを調整することによって実行できる。操作中、物体300のサイト902との位置合わせ(運転者の視線904に沿った)は、運転者に対する、器具を地表から係合解除することを命じる係合解除通知として機能できる。次いで、運転者は、物体300の存在を示すコントロールを起動する(例えば、パドルコントロール123を引き寄せる)ことができる。
【0081】
視線904は物体300と器具との間の具体的な距離に対応するため、制御装置130は、パドルコントロール124の作動時に遅延タイマを開始するように構成されていてもよい(例えば、特定のエンドユーザによってプログラムされてもよい)。この遅延タイマが満了した後で、制御装置130は、システム150に対する、器具を持ち上げることを命じる解除指令を送信することができる。遅延タイマは、可能な限り長期間(車速に基づいて)器具が地表と係合した状態にあり、物体300との接触の前に持ち上げられることを保証するように設定されてもよい。本明細書に記載の他の実施形態と同様に、制御装置130はまた、器具が物体を通過すると、適切な時間(例えば、期間の満了後)に、器具を再度下げて地表に再び係合するように構成することができる。
【0082】
本明細書で引用した特許、特許文献、及び刊行物の完全な開示は、各々が個々に援用されているかのように、その内容全体を参照により本明細書に援用される。本出願の開示とその内容を参照により本明細書に援用される任意の文書の開示との間に矛盾が存在する場合、本出願の開示が優先するものとする。
【0083】
例示的な実施形態を説明し、それらの可能な変形形態について言及してきた。これら及びまたその他の変形形態、組み合わせ形態、及び修正形態は、当業者には明らかであり、特許請求の範囲は、本明細書に記載の例示的な実施形態に限定されないことを理解されたい。
[実施例1]
動力付き地上保守車両であって、
地面接触部材によって地表に支持されたシャーシと、
前記シャーシに装着された原動機と、
前記原動機によって動力を供給され、前記地面接触部材の1つ以上に選択的に動力を供給して前記車両を前記地表で推進するように構成された牽引駆動システムと、
前記シャーシによって担持された保守器具と、
前記器具前方の検出ゾーンを監視し、前記車両が前記地表を横切るときに前記検出ゾーンを通過する前記地表又はその近傍の物体を検出するように構成された検出システムであって、器具が物体に接触するのに先立って前記物体の位置を示す通知を発出するように構成された検出システムと、
を備える動力付き地上保守車両。
[実施例2]
前記車両が前記検出システムと通信するように構成された電子制御装置をさらに含み、前記制御装置が前記通知を発出するように構成された、実施例1に記載の車両。
[実施例3]
前記通知の受信に応答して、前記器具を前記地表から自動的に係合解除するように構成された器具係合システムをさらに備える、実施例1に記載の車両。
[実施例4]
前記通知が、前記車両を制御する運転者に対する視覚的、触覚的又は聴覚的通知の1つ以上を含む、実施例1から2の何れか一項に記載の車両。
[実施例5]
動力付き地上保守車両であって、
地面接触部材によって地表に支持されたシャーシと、
前記シャーシに装着された原動機と、
前記原動機によって動力を供給され、前記地面接触部材の1つ以上に選択的に動力を供給して前記車両を前記地表で推進するように構成された牽引駆動システムと、
前記シャーシによって担持された地上保守器具と、
前記器具を前記シャーシに接続する器具係合システムであって、選択的に、前記器具を前記地表に係合し、また前記器具を前記地表から係合解除するように構成された器具係合システムと、
前記器具前方の検出ゾーンを監視し、前記車両が前記地表を横切るときに前記検出ゾーンを通過する物体を検出するように構成された検出システムであって、前記物体が前記検出ゾーン内に残っている間に、前記物体に関連付けられた物体情報を周期的に捕捉するようにさらに構成された検出システムと、
前記シャーシによって支持され、前記検出システムと前記係合システムの両方と通信する電子制御装置であって、前記物体情報を受信し、車両の対地速度に基づいて、前記器具が物体に到達する時間を推定するように構成され、前記器具が前記物体に接触する前に前記器具を前記地表から係合解除することを命じる通知を発出するようにさらに構成された電子制御装置と、
を含む動力付き地上保守車両。
[実施例6]
前記制御装置が前記器具係合システムに前記通知を発出するように構成され、前記器具係合システムが、前記器具が前記物体と接触する前に、前記器具を前記地表から自動的に持ち上げるか、又は別の方法で係合解除するように構成された、実施例5に記載の車両。
[実施例7]
前記制御装置が、前記器具が前記物体を通過した後に、前記器具係合システムに自動的に前記器具を下げるか、又は別の方法で前記地表に係合することを指令するように構成された、実施例6に記載の車両。
[実施例8]
前記器具が芝生曝気装置を備える、実施例5に記載の車両。
[実施例9]
前記物体が灌漑用スプリンクラーヘッドを備える、実施例5から8の何れか一項に記載の車両。
[実施例10]
前記検出システムが前記車両に固定されたRFIDアンテナを備え、前記RFIDアンテナが前記物体上又はその近傍に位置するRFIDタグを検出するように構成された、実施例5から8の何れか一項に記載の車両。
[実施例11]
前記検出システムがマイクロ波レーダを含む、実施例5から8の何れか一項に記載の車両。
[実施例12]
地上保守作業を実行する車両を制御する方法であって、前記方法が、
地表で順方向に前記車両を推進することであって、前記車両が、シャーシと、前記シャーシに装着された地上保守器具とを備えることと、
前記器具を前記地表に係合する、ことと、
変換器を備える検出システムを用いて前記器具の前方の検出ゾーンを監視することと、
前記検出ゾーンを通過する前記地表又はその近傍の物体を前記変換器を用いて検出することと、
前記物体が前記検出ゾーンを通過している間、前記物体に関連付けられた物体情報を周期的に捕捉することと、
前記物体情報に基づいて、前記器具が前記物体に到達するまでの期間を推定することと、
前記制御装置を用いて、器具係合システムに対して、前記器具が前記物体に到達する前に前記器具を前記地表から自動的に持ち上げ、又は別の方法で係合解除することを命じる係合解除指令を発出することと、
を含む、方法。
[実施例13]
前記器具が前記物体を通過した後に、前記制御装置を用いて前記器具係合システムに対して、前記器具を前記地表に再係合することを命じる係合指令を発出することをさらに含む、実施例12に記載の方法。
[実施例14]
前記検出システムが、各々が検出領域を有する2つ以上の変換器を備える、実施例12に記載の方法。
[実施例15]
前記物体を検出することが、スプリンクラーヘッドを検出することを含む、実施例12に記載の方法。
[実施例16]
前記変換器を用いて前記物体を検出することが、マイクロ波レーダアンテナを用いて前記物体を検出することを含む、実施例12から15の何れか一項に記載の方法。
[実施例17]
前記変換器を用いて物体を検出することが、無線周波数識別(RFID)アンテナを用いて、前記物体に関連付けられたRFIDタグを検出することを含む、実施例12から15の何れか一項に記載の方法。
[実施例18]
前記物体情報を捕捉することが、前記RFIDタグに関連付けられた物体情報を捕捉し記憶することを含み、前記物体情報が、RFIDタグの読み取り毎の、前記RFIDアンテナのアイデンティティ、固有のタグ識別子、時間、受信信号強度の指標(RSSI)、前記RFIDアンテナの周波数チャネル、前記RFIDアンテナが送信した信号と受信した信号との間の移相、及び前記車両の対地速度の何れか1つ以上を含む、実施例17に記載の方法。
[実施例19]
前記物体が前記検出ゾーン内でもはや検出されなくなった後に、1つ又は複数のタグ統計値を計算することをさらに含み、前記1つ又は複数のタグ統計値が、前記検出ゾーン内で前記物体が検出された存在期間、前記存在期間中に検出された最大受信信号強度の指標(RSSI)、前記存在期間中に検出された最小RSSI、前記存在期間中に検出されたRSSIの標準偏差、前記物体の最初の検出と前記最大RSSIの時間との間の期間、前記最大RSSIの検出と前記物体の最後の検出との間の期間、前記物体が検出された間の直線移動距離、前記最初の検出と前記最大RSSIの前記時間との間の直線移動距離、及び前記最大RSSIの前記時間と前記最後の検出との間の直線移動距離、から選択される何れか1つ以上の統計値を備える、実施例17に記載の方法。