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特許7518901固定床バイオリアクタおよび固定床バイオリアクタを使用する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】固定床バイオリアクタおよび固定床バイオリアクタを使用する方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/14 20060101AFI20240710BHJP
【FI】
C12M1/14
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2022526216
(86)(22)【出願日】2020-10-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-01-11
(86)【国際出願番号】 US2020056240
(87)【国際公開番号】W WO2021091683
(87)【国際公開日】2021-05-14
【審査請求日】2022-07-06
(31)【優先権主張番号】62/930,935
(32)【優先日】2019-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】フェリー,アン ミージン
(72)【発明者】
【氏名】ゴラール,ヴァシリー ニコラエヴィチ
【審査官】西村 亜希子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-158461(JP,A)
【文献】特表平08-506019(JP,A)
【文献】国際公開第2006/088029(WO,A1)
【文献】特表2019-512270(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0223581(US,A1)
【文献】国際公開第2016/121775(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/087235(WO,A1)
【文献】特開2002-306155(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0263021(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0196375(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定床バイオリアクタシステムであって、
培地入口、培地出口、および前記培地入口と前記培地出口との間に配置され、前記培地入口と前記培地出口とに流体連通している内部空洞を備える容器と、
前記培地入口と前記培地出口との間の前記内部空洞内に充填床構成で配置され、複数の多孔質ディスクを積層配置で備える細胞培養基材と
前記内部空洞内で前記細胞培養基材と前記培地出口との間に配置されたスペーサと、を備え、
前記複数の多孔質ディスクは、互いに物理的に直接接触して積層されており、 前記複数の多孔質ディスクの各々は、細胞を培養するように構成された表面を備え
前記内部空洞は、細胞培養セクションおよび、該細胞培養セクションの上方かつ前記細胞培養セクションと前記培地出口との間に位置するスペーサセクションを備え、
前記細胞培養基材は、前記細胞培養セクションに配置され、
前記スペーサは、前記スペーサセクションに配置され、
前記スペーサは、前記細胞培養基材を前記培地出口から所定の距離だけ離間させてヘッドスペースを形成し、前記細胞培養基材を前記内部空洞の前記細胞培養セクションに閉じ込めて保持するように構成されており、
前記充填床構成は、複数のメッシュが充填床に充填されている構成である、固定床バイオリアクタシステム。
【請求項2】
前記スペーサは、前記スペーサセクションの長さに対して平行な方向に延在する複数のスペーサ部材を備える、請求項記載の固定床バイオリアクタシステム。
【請求項3】
前記細胞培養基材と前記スペーサとの間に配置された充填床保持器をさらに備え、前記充填床保持器は、前記細胞培養基材の頂部に構造的支持を提供するように構成されている、請求項記載の固定床バイオリアクタシステム。
【請求項4】
前記充填床保持器は、多孔質で性であり、前記内部空洞の幅にわたって延在している、請求項記載の固定床バイオリアクタシステム。
【請求項5】
前記複数の多孔質ディスクの各ディスクは、第1の面と、前記第1の面とは反対側の第2の面と、前記第1の面と前記第2の面とを分離するディスク厚さと、前記ディスクに形成され、前記ディスク厚さを貫通した複数の開口とを備え、
前記複数の開口は、前記細胞培養基材を通る細胞培養培地、細胞または細胞副産物のうちの少なくとも1つの流れを可能にするように構成されている、
請求項1記載の固定床バイオリアクタシステム。
【請求項6】
前記培地入口と前記細胞培養基材との間に配置された入口分配プレートをさらに備え、前記入口分配プレートは、前記培地入口から前記内部空洞に入る流体を前記細胞培養基材の領域にわたって分配するように構成されている、請求項1記載の固定床バイオリアクタシステム。
【請求項7】
前記細胞培養基材と前記培地出口との間に配置された出口分配プレートをさらに備える、請求項1記載の固定床バイオリアクタシステム。
【請求項8】
前記細胞培養基材と前記スペーサセクションとの間に配置された充填床保持器をさらに備え、前記充填床保持器は、前記細胞培養基材の頂部に構造的支持を提供するように構成されている、請求項記載の固定床バイオリアクタシステム。
【請求項9】
前記内部空洞内で前記充填床保持器と前記培地出口との間に配置され、相互間に前記スペーサセクションを画定するスペーサをさらに備え、前記スペーサは、前記細胞培養基材を前記培地出口から所定の距離だけ離間させ、前記細胞培養基材を前記内部空洞の前記細胞培養セクションに閉じ込めるように構成されている、請求項記載の固定床バイオリアクタシステム。
【請求項10】
前記スペーサは、調整可能な長さを有し、前記細胞培養セクションと前記培地出口との間の多様な所定の距離を維持するために調整可能であるように構成されており、それにより、前記細胞培養セクションに収容することができる前記細胞培養基材内の前記多孔質ディスクの数を変化させることができる、請求項記載の固定床バイオリアクタシステム。
【請求項11】
異なる長さの複数の取外し可能なスペーサをさらに備え、前記複数の取外し可能なスペーサの各々は、前記細胞培養セクションと前記培地出口との間の、スペーサ同士により維持される距離とは異なる所定の距離を維持するために、前記スペーサセクションに配置されるように構成されており、それにより、前記細胞培養セクションに収容することができる前記細胞培養基材内の前記多孔質ディスクの数を、前記スペーサセクションに配置された前記スペーサの長さに基づいて変化させることができる、請求項記載の固定床バイオリアクタシステム。
【請求項12】
前記細胞培養基材と前記培地入口との間に配置された少なくとも1つの多孔質スペーサディスクをさらに備える、請求項1記載の固定床バイオリアクタシステム。
【請求項13】
前記複数の多孔質ディスクは、織布メッシュの複数の層を備える、請求項1記載の固定床バイオリアクタシステム。
【請求項14】
前記織布メッシュの複数の層の各々は、規定された均一な配列の孔を有する、請求項13記載の固定床バイオリアクタシステム。
【請求項15】
前記バイオリアクタシステムは、細胞、細胞培養培地および細胞副産物のうちの少なくとも1つを前記培地入口を通して押し出すために、前記培地出口を介して前記内部空洞を加圧流体で満たすように構成されている、請求項1記載の固定床バイオリアクタシステム。
【請求項16】
前記複数の多孔質ディスクの各々は、織布メッシュの複数の層を備え、
該織布メッシュの複数の層が、それぞれ異なる幾何学形状の織布メッシュを備え、
該異なる幾何学形状が、繊維直径、開口直径または開口の幾何学形状のうちの少なくとも1つにおいて異なる、請求項1記載の固定床バイオリアクタシステム。
【請求項17】
前記異なる幾何学形状の織布メッシュが、前記容器内の所望の流れ特性に基づいて、所定の配置で前記容器内に配置されている、請求項16記載の固定床バイオリアクタシステム。
【請求項18】
前記所望の流れ特性が、前記複数の多孔質ディスクにわたる液体培地の均一な灌流および前記複数の多孔質ディスクにわたる細胞増殖の分布のうちの少なくとも一方を含む、請求項17記載の固定床バイオリアクタシステム。
【請求項19】
前記異なる幾何学形状の織布メッシュが、第1の幾何学形状を有する第1のメッシュと、第2の幾何学形状を有する第2のメッシュとを備える、請求項16または17記載の固定床バイオリアクタシステム。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本開示は、米国特許法第120条のもと、2019年11月5日に出願された米国仮特許出願第62,930,935号明細書の優先権の利益を主張し、その内容全体を参照により本明細書に援用するものとする。
【技術分野】
【0002】
本開示は、概して、細胞を培養するための装置、システムおよび方法に関する。詳細には、本開示は、細胞培養基材、固定床バイオリアクタ容器およびこのような基材を組み込んだシステムならびにこのような基材およびバイオリアクタを使用して細胞を培養する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
バイオプロセス産業では、ホルモン、酵素、抗体、ワクチンおよび細胞療法剤の製造を目的として、細胞の大規模培養が行われる。バイオプロセスに使用される細胞のかなりの部分は足場依存性であり、これは、細胞が増殖および機能のために付着する表面を必要とすることを意味する。伝統的に、接着細胞の培養は、多数の容器フォーマット、例えば、Tフラスコ、ペトリ皿、細胞工場(cell factory)、細胞スタック容器、ローラボトルおよびHYPERStack(登録商標)容器のうちの1つに組み込まれた二次元(2D)細胞接着表面上で行われる。これらのアプローチは、治療剤または細胞の大規模製造を可能にするのに十分に高い細胞密度を達成することの困難性を含む重大な欠点を有する場合がある。
【0004】
培養細胞の体積密度を増大させるための代替的な方法が提案されている。これらは、撹拌タンク内で行われるマイクロキャリア培養を含む。このアプローチでは、マイクロキャリアの表面に付着した細胞は、一定の剪断応力に供され、増殖および培養性能に顕著な影響をもたらす。高密度細胞培養システムの別の例は、中空繊維バイオリアクタであり、このバイオリアクタでは、細胞は、それらが相互繊維空間において増殖するにつれて、大きな三次元凝集体を形成することができる。一方で、細胞の増殖および性能は、栄養素の欠乏により著しく阻害される。この問題を軽減するために、これらのバイオリアクタは小型化され、大規模製造には適していない。
【0005】
足場依存性細胞のための高密度培養システムの別の例は、充填床バイオリアクタシステムである。例えば、細胞を捕捉するための支持体またはマトリクス系の充填床を含有する充填床バイオリアクタシステムは、以前から、特許文献1、特許文献2および特許文献3に開示されている。充填床マトリクスは、通常、基材としての多孔質粒子またはポリマーの不織マイクロファイバで製造される。このようなバイオリアクタは、再循環フロースルーバイオリアクタとして機能する。このようなバイオリアクタについての重要な問題の1つは、充填床内の細胞分布の不均一性である。例えば、充填床は、主に入口領域で捕捉された細胞を有するデプスフィルタとして機能し、播種ステップ中に細胞分布の勾配が生じる。加えて、ランダムな繊維パッケージングのために、充填床の流れ抵抗および充填床の断面の細胞捕捉効率は均一ではない。例えば、培地は、低い細胞充填密度を有する領域では速く流れ、より多くの数の捕捉された細胞のために、抵抗がより高い領域ではゆっくりと流れる。これにより、栄養素および酸素がより低い体積細胞密度を有する領域に、より効率的に送達されるチャネリング効果が生じ、より高い細胞密度を有する領域は、最適以下の培養条件に維持される。先行技術に開示された充填床システムの別の重大な欠点は、培養プロセスの終わりにインタクトな生存細胞を効率的に回収することができないことである。特許文献4には、細胞回収ステップ中に充填床からの細胞回収効率を改善するためのバイオリアクタ設計が開示されている。これは、充填床マトリクスを緩め、充填床粒子を振とうするかまたは撹拌して、多孔質マトリクスを衝突させ、これにより、細胞を剥離させることに基づいている。しかしながら、このアプローチは困難であり、重大な細胞損傷を引き起こす場合があり、このため、全体的な細胞生存率が低下する。
【0006】
ローラボトルは、複数の利点、例えば、取扱いの容易さおよび付着表面上の細胞を監視する能力を有する。ただし、製造の観点から、主な欠点は、ローラボトル形態が製造床空間の広い面積を占める一方で、体積に対する表面積比が低いことである。ローラボトルフォーマット内での接着細胞に利用可能な表面積を大きくするために、種々のアプローチが使用されてきた。幾つかの解決手段が、市販の製品に実装されてきたが、ローラボトルの生産性をさらに向上させるための改善の余地が残っている。伝統的に、ローラボトルは、ブロー成形プロセスにより単一構造として製造される。このような製造の単純さにより、バイオプロセス産業におけるローラボトルの経済的な実行可能性が可能となる。細胞培養に利用可能な表面積を大きくするための幾つかのローラボトルの改変は、製造プロセスを変更することなく達成することができるが、改変されたローラボトル表面積がわずかに大きくなる程度である。ローラボトル設計の他の改変は、製造プロセスに著しい複雑さを加えるため、バイオプロセス産業において経済的に実行不可能となってしまう。したがって、同じブロー成形プロセスをその製造に使用しながら、大きな表面積およびバイオプロセス生産性を有するローラボトルを提供することが望ましい。
【0007】
既存のプラットフォームを使用して、初期段階の臨床試験のためのウイルスベクターの製造が可能であるが、後期段階の商業的製造規模に到達するために、より多くの数で高品質な製品を製造することができるプラットフォームが必要とされている。
【0008】
均一な細胞分布および容易に達成可能なかつ向上させられた回収収率を伴う高密度フォーマットで細胞を培養しかつ生存細胞を回収することが可能となる細胞培養マトリクス、充填床バイオリアクタ容器およびバイオリアクタシステムならびに方法が必要とされている。加えて、調整可能な製造レベルを可能にする拡張性のある解決手段により、それぞれ異なる規模での、例えば研究から製造規模に対するプロセス開発までの種々の使用事例のニーズに適応することが可能となるこのようなマトリクス、容器、システムおよび方法が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】米国特許第4,833,083号明細書
【文献】米国特許第5,501,971号明細書
【文献】米国特許第5,510,262号明細書
【文献】米国特許第9,273,278号明細書
【発明の概要】
【0010】
本開示の実施形態によれば、固定床バイオリアクタシステムが提供される。バイオリアクタシステムは、培地入口、培地出口、および培地入口と培地出口との間に配置され、培地入口と培地出口とに流体連通している内部空洞を有する容器を含む。バイオリアクタシステムは、培地入口と培地出口との間の内部空洞内に充填床構成で配置され、複数の多孔質ディスクを積層配置で含む細胞培養基材をさらに含む。複数の多孔質ディスクの各々は、細胞を培養するための表面を有する。内部空洞は、細胞培養セクションおよびスペーサセクションを含み、細胞培養基材は、細胞培養セクションを画定しており、スペーサセクションは、細胞培養セクションと培地出口との間に配置されている。
【0011】
1つ以上の実施形態の態様は、内部空洞内で細胞培養基材と培地出口との間に配置され、相互間にスペーサセクションを画定するスペーサをさらに含む。スペーサは、細胞培養基材を培地出口から所定の距離だけ離間させ、細胞培養基材を内部空洞の細胞培養セクションに閉じ込める。スペーサは、スペーサセクションの長さに対して平行な方向に延在する複数のスペーサ部材を含んでよい。幾つかの実施形態の更なる態様として、細胞培養基材とスペーサとの間に充填床保持器が配置されていてよく、充填床保持器は、細胞培養基材の頂部に構造的支持を提供する。充填床保持器は、多孔質で実質的に剛性であってよく、内部空洞の幅の実質的な部分にわたって延在していてよい。
【0012】
1つ以上の実施形態の更なる態様では、複数の多孔質ディスクの各ディスクは、第1の面と、第1の面とは反対側の第2の面と、第1の面と第2の面とを分離するディスク厚さと、ディスクに形成され、ディスク厚さを貫通した複数の開口とを有する。複数の開口は、細胞培養基材を通る細胞培養培地、細胞または細胞副産物のうちの少なくとも1つの流れを可能にするように構成されている。
【0013】
システムは、培地入口と細胞培養セクションとの間に配置された入口分配プレートをさらに含んでよい。入口分配プレートは、培地入口から内部空洞に入る流体を細胞培養基材の領域にわたって分配してよい。システムは、スペーサセクションと培地出口との間に配置された出口分配プレートをさらに含んでよい。
【0014】
1つ以上の実施形態の一態様として、バイオリアクタシステムは、細胞培養基材とスペーサセクションとの間に配置された充填床保持器をさらに含み、充填床保持器は、細胞培養基材の頂部に構造的支持を提供するように構成されている。充填床保持器は、多孔質で実質的に剛性であってよく、内部空洞の幅の実質的な部分にわたって延在していてよい。システムは、内部空洞内で充填床保持器と培地出口との間に配置され、相互間にスペーサセクションを画定するスペーサをさらに含んでいてよい。スペーサは、細胞培養基材を培地出口から所定の距離だけ離間させ、細胞培養基材を内部空洞の細胞培養セクションに閉じ込める。充填床保持器は、例えば、剛性のある格子構造であってよい。
【0015】
1つ以上の実施形態の付加的な態様として、スペーサは、調整可能な長さを有し、細胞培養セクションと培地出口との間の多様な所定の距離を維持するために調整可能であり、それにより、細胞培養セクションに収容することができる細胞培養基材内の多孔質ディスクの数を変化させることができる。
【0016】
1つ以上の実施形態の更なる態様では、システムは、異なる長さの複数の取外し可能なスペーサを含み、複数の取外し可能なスペーサの各々は、細胞培養セクションと培地出口との間の、スペーサ同士により維持される距離とは異なる所定の距離を維持するために、スペーサセクションに配置可能であり、それにより、細胞培養セクションに収容することができる細胞培養基材内の多孔質ディスクの数を、スペーサセクションに配置されたスペーサの長さに基づいて変化させることができる。
【0017】
幾つかの実施形態の一態様では、システムは、細胞培養基材と培地入口との間に配置された少なくとも1つの多孔質スペーサディスクをさらに含む。少なくとも1つの多孔質スペーサディスクは、スペーサディスク孔径を含んでよく、複数の多孔質ディスクの各々は、スペーサディスク孔径がディスク孔径より大きくなるようなディスク孔径を有してよい。少なくとも1つの多孔質スペーサディスクは、第1のスペーサディスク孔径を有する第1のディスクと、第2のスペーサディスク孔径を有する第2のディスクとを含んでよく、第1のスペーサディスク孔径は、第2のスペーサディスク孔径とは異なる。
【0018】
幾つかの実施形態の一態様として、複数の多孔質ディスクは、織布メッシュの複数の層を含む。織布メッシュの複数の層の各々は、規定された実質的に均一な配列の孔を有する。織布メッシュの複数の層の各層は、複数の織り合わされた繊維を含み、複数の織り合わされた繊維は、第1の方向に互いに平行に延在する繊維の第1の群と、第2の方向に互いに平行に延在する繊維の第2の群とを備える。第1の方向は、第2の方向に対して実質的に垂直であってよい。幾つかの実施形態では、メッシュの複数の織り合わされた繊維は、繊維の第1の群および繊維の第2の群からなる。
【0019】
1つ以上の実施形態の一態様として、培地入口は、細胞培養前または細胞培養中に細胞および細胞培養培地のうちの少なくとも一方を内部空洞に供給するように構成されており、培地出口は、細胞培養中または細胞培養後に細胞、細胞培養培地および細胞副産物のうちの少なくとも1つを内部空洞から引き出すように構成されている。培地出口は、回収操作中にスペーサセクションに加圧流体を供給するように構成されており、培地入口は、回収操作中に細胞、細胞培養培地および細胞副産物のうちの少なくとも1つを内部空洞から引き出すように構成されている。バイオリアクタシステムは、細胞、細胞培養培地および細胞副産物のうちの少なくとも1つを培地入口を通して押し出すために、培地出口を介して内部空洞を加圧流体で満たすように構成されている。
【0020】
1つ以上の実施形態の態様は、50~1000枚の多孔質ディスクまたは100~500枚の多孔質ディスクである複数の多孔質ディスクを含む。複数の多孔質ディスクは、ディスク当たり約1.00×10~約2.00×10個の平均濃度に細胞を培養してよい。複数の多孔質ディスクの各ディスクは、相互間に孔を画定する繊維を有してよく、繊維は、約50μm~約1000μmの直径を有し、孔は、約100μm~約1000μmの直径を有する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1A】本開示の1つ以上の実施形態に係る細胞培養基材の三次元モデルの斜視図を示す。
図1B図1Aの基材の二次元平面図である。
図1C図1Bにおける基材の線A-Aに沿った断面図である。
図2A】幾つかの実施形態に係る第1の幾何学形状を有する例示的な細胞培養基材の写真である。
図2B】幾つかの実施形態に係る第2の幾何学形状を有する例示的な細胞培養基材の写真である。
図2C】幾つかの実施形態に係る第3の幾何学形状を有する例示的な細胞培養基材の写真である。
図3A】1つ以上の実施形態に係る多層細胞培養基材の斜視図である。
図3B図3Aの多層細胞培養基材の平面図である。
図4】1つ以上の実施形態に係る図3Bの多層細胞培養基材の線B-Bに沿った断面図である。
図5】1つ以上の実施形態に係る図4の多層細胞培養基材の線C-Cに沿った断面図である。
図6】1つ以上の実施形態に係る多層細胞培養マトリクスを有する充填床細胞培養システムの模式図である。
図7A】1つ以上の実施形態に係る充填床細胞培養システムの断面図である。
図7B】1つ以上の更なる実施形態に係る充填床細胞培養システムの断面図である。
図8】1つ以上の実施形態に係るバイオリアクタ容器の例示的なコンポーネントの写真である。
図9A】1つ以上の実施形態に係る図7A図8の細胞培養システムの流れ分配プレートの平面図である。
図9B】1つ以上の実施形態に係る図7A図8の細胞培養システムの充填床保持器グリッドの平面図である。
図10】1つ以上の実施形態に係る図7A図8の細胞培養システムのスペーサの斜視図である。
図11A】1つ以上の実施形態に係る第1の高さを有するスペーサおよび第1の高さまたは厚さの細胞培養マトリクスを有する細胞培養システムの断面図である。
図11B】1つ以上の実施形態に係る第2の高さを有するスペーサおよび第2の高さまたは厚さの細胞培養マトリクスを有する細胞培養システムの断面図である。
図11C】1つ以上の実施形態に係る第3の高さを有するスペーサおよび第3の高さまたは厚さの細胞培養マトリクスを有する細胞培養システムの断面図である。
図12】1つ以上の実施形態に係る充填床細胞培養システムを組み込んだバイオプロセスシステムの模式図である。
図13】1つ以上の実施形態に係る細胞回収プロセスの3つの段階における充填床細胞培養システムの断面図を示す。
図14A】1つ以上の実施形態に係る細胞培養システムで細胞を培養するためのプロセスフローチャートを示す図である。
図14B】1つ以上の実施形態に係る細胞培養システムの灌流流量を制御するための動作のためのフローチャートを示す図である。
図15A】1つ以上の実施形態に係る、細胞が第1の細胞播種密度で播種された場合の細胞培養基材上の染色されたHEK293T細胞の顕微鏡写真である。
図15B】1つ以上の実施形態に係る、細胞が第1の細胞播種密度で播種された場合の細胞培養基材上の染色されたHEK293T細胞の顕微鏡写真である。
図15C】1つ以上の実施形態に係る、細胞が第3の細胞播種密度で播種された場合の細胞培養基材上の染色されたHEK293T細胞の顕微鏡写真である。
図16A】1つ以上の実施形態に係る、充填床バイオリアクタ内で細胞培養を行い、細胞培養基材上で細胞回収操作を行った後の染色された細胞を有する細胞培養マトリクスのディスクの写真である。
図16B】1つ以上の実施形態に係る、充填床バイオリアクタ内で細胞培養を行い、細胞培養基材上で細胞回収操作を行った後の染色された細胞を有する細胞培養マトリクスのディスクの写真である。
図17A】HYPERFlask(登録商標)を使用して培養された細胞と比較した、本開示の実施形態に係る2つの実施例について回収された総細胞の実験結果を示す棒グラフである。
図17B】HYPERFlask(登録商標)を使用して培養された細胞と比較した、本開示の実施形態に係る2つの実施例についての容器当たりの総ゲノムコピーの実験結果を示す棒グラフである。
図17C】HYPERFlask(登録商標)を使用して培養された細胞と比較した、本開示の実施形態に係る2つの実施例についての表面積当たりのゲノムコピーの実験結果を示す棒グラフである。
図18】1つ以上の実施形態に係る細胞培養システムの詳細な模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本開示の種々の実施形態は、図面がある場合には、図面を参照して詳細に説明される。種々の実施形態への言及は、本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の範囲は、本明細書に添付された特許請求の範囲によってのみ限定される。さらに、本明細書で説明された任意の例は、限定的なものではなく、単に、特許請求される発明の多くの可能性のある実施形態の一部を説明するものである。
【0023】
本開示の実施形態は、細胞培養基材ならびにこのような基材を組み込んだ細胞培養またはバイオリアクタシステムおよびこのような基材を使用して細胞を培養する方法を対象とする。また、実施形態は、バイオリアクタ容器であって、容器内の細胞培養基材を使用した細胞播種、培養、トランスフェクションおよび/または回収を実行することができ、異なる製造規模を操作することができるバイオリアクタ容器も含む。
【0024】
従来の大規模細胞培養バイオリアクタでは、異なるタイプの充填床バイオリアクタが使用されてきた。通常、これらの充填床は、接着細胞または懸濁細胞を保持し、成長および増殖を支持するための多孔質マトリクスを含有する。充填床マトリクスは、体積に対する表面積の高い比を提供するため、細胞密度を他のシステムより高くすることができる。充填床は、多くの場合、デプスフィルタとして機能する。このデプスフィルタにおいて、細胞は、マトリクスの繊維内に物理的に捕捉されまたは絡み合う。ただし、充填床を通る細胞播種物の直線的な流れのために、細胞は、充填床内で不均一な分布に供される。このため、例えば、バイオリアクタの入口領域ではより高い細胞密度が存在し、バイオリアクタの出口部分では明らかに低い細胞密度が存在する。充填床の内部の細胞のこの不均一な分布により、バイオプロセス製造におけるこのようなバイオリアクタの拡張性が著しく妨げられる。
【0025】
先行技術に開示された充填床バイオリアクタが遭遇する別の問題は、チャネリング効果である。充填不織布繊維のランダムな性質のため、充填床の任意の所定の断面における局所繊維密度は均一ではない。培地は、低繊維密度(高床透過性)を有する領域ではすばやく流れ、高繊維密度(低床透過性)の領域ではるかに遅く流れる。充填床にわたる不均一な培地灌流により、チャネリング効果が生じる。これ自体により、細胞培養およびバイオリアクタ性能全体に悪影響を及ぼす明らかな栄養素および代謝産物の勾配が発生する。低培地灌流の領域に位置する細胞は飢餓状態になり、非常に多くの場合、栄養素の欠如または代謝産物中毒により死んでしまうことがある。細胞回収は、不織繊維足場が充填されたバイオリアクタが使用される場合に遭遇するさらに別の問題である。デプスフィルタとしての充填床の機能のために、細胞培養プロセスの終わりに放出される細胞は、充填床内部に捕捉され、細胞回収率は非常に低い。これは、生細胞が生成物であるバイオプロセスにおけるこのようなバイオリアクタの利用を著しく制限する。
【0026】
本開示は、細胞または細胞由来産物(例えば、タンパク質、抗体、ウイルス粒子)のための任意の実用的な製造規模への容易かつ有効なスケールアップを可能にする、足場依存性細胞のための細胞増殖マトリクスおよび/または充填床システムの実施形態を含む。一実施形態では、マトリクスは、接着細胞が付着し、増殖するための構造的に規定され、良好な機械的強度を有し、充填床または他のバイオリアクタ内で組み立てられた場合、非常に均一な多数の相互接続された流体ネットワークを形成する表面領域を備える。特定の実施形態では、機械的に安定な不分解性の織布メッシュを使用して、接着細胞の産生を支持することができる。このようなマトリクスの均一な細胞播種およびバイオリアクタの細胞または他の産物の効率的な回収を達成することができる。加えて、本開示の実施形態は、開示されたマトリクス上の接着細胞のコンフルエントな単層または多層を達成するための細胞培養を支持し、制限された栄養拡散および上昇した代謝産物濃度による3D細胞凝集体の形成を回避することができる。1つ以上の実施形態の構造的に規定されたマトリクスにより、バイオリアクタの充填床からの完全な細胞回収および一貫した細胞回収が可能となる。本開示の別の実施形態では、治療用タンパク質、抗体、ウイルスワクチンまたはウイルスベクターのバイオプロセス製造のためのマトリクスを有するバイオリアクタを使用する細胞培養の方法が提供される。
【0027】
本明細書で使用する場合、「構造的に規定された」は、コンポーネントが、規定された構造設計に伴う非ランダムで規則正しい構造を有することを意味する。
【0028】
1つ以上の実施形態では、高体積密度フォーマットで足場依存性細胞の付着および増殖を支持する細胞培養マトリクスが提供される。マトリクスは、バイオリアクタシステム、例えば灌流バックベッド(back bed)バイオリアクタ内に組み立てて使用することができ、播種ステップ中に均一な細胞分布を提供することができ、一方で、マトリクスまたは充填床の内部での大きなかつ/または制御不能な細胞凝集体の形成を防止することができる。したがって、マトリクスにより、バイオリアクタの動作中の拡散制限が排除される。加えて、マトリクスにより、バイオリアクタからの容易かつ効率的な細胞回収が可能となる。
【0029】
マトリクスは、比較的薄い厚さで、分離された第1の面および第2の面を有する薄いまたはシート状の構造を有する基材材料で形成することができる。すなわち、シート状基材の厚さは、基材の第1の面および第2の面の幅および/または長さに対して小さい。加えて、複数の孔または開口が、基材の厚さを通して形成される。開口間の基材材料は、二次元(2D)表面であるかのように、細胞が基材材料の表面に付着することが可能となり、一方で、基材材料の周囲および開口を通る適切な流体の流れが可能となるサイズおよび幾何学形状のものである。幾つかの実施形態では、基材は、ポリマー系材料であり、成形ポリマーシート、厚さを通して打ち抜かれた開口を有するポリマーシート、メッシュ様層に融合される多数のフィラメントまたはメッシュ層に織り込まれた複数のフィラメントとして形成することができる。マトリクスの物理的構造は、足場依存性細胞を培養するための体積に対する表面の高い比を有する。種々の実施形態によれば、均一な細胞播種、均一な培地灌流および効率的な細胞回収を得るために、マトリクスをバイオリアクタ内に特定の方法で配置しまたは充填することができる。
【0030】
本発明の実施形態は、バッチ当たり約1015~約1018以上のウイルスゲノムの規模でウイルスゲノムを産生することができる実用的なサイズのウイルスベクタープラットフォームを達成することができる。例えば、幾つかの実施形態では、ウイルスゲノム収量は、バッチ当たり約1015~約1016のウイルスゲノムまたはバッチ当たり約1016~約1019のウイルスゲノムまたはバッチ当たり約1016~約1018のウイルスゲノムまたはバッチ当たり約1017~約1019のウイルスゲノムまたはバッチ当たり約1018~約1019のウイルスゲノムまたはバッチ当たり約1018以上のウイルスゲノムであることができる。「バッチ」は、単一のバイオリアクタ容器の単一の細胞培養実行を意味することができる。本明細書における実施形態の拡張性のために、バイオリアクタ容器および収容される細胞培養基材は、これらの収率を達成するために適切に規模決定することができる。この拡張性は、均一な細胞播種および培養、均一な培地流動性ならびに/または均一な回収を提供する、細胞培養基材の構造的に規定された性質により補助される。幾つかの実施形態では、バッチは、調整細胞培養操作に使用される複数のバイオリアクタ容器を含むことができる。
【0031】
加えて、本明細書に開示された実施形態は、細胞培養基材への細胞の付着および増殖を可能にするだけでなく、培養細胞の生きた状態での回収も可能にする。生存細胞を回収することができないことは、現在のプラットフォームにおいて重大な欠点であり、製造能力のために十分な数の細胞を構築し、維持することが困難になる。本開示の実施形態の態様によれば、80%~100%の生存率または約85%~約99%の生存率または約90%~約99%の生存率を含む、細胞培養基材から生存細胞を収集することができる。例えば、回収される細胞のうち、少なくとも80%が生存しており、少なくとも85%が生存しており、少なくとも90%が生存しており、少なくとも91%が生存しており、少なくとも92%が生存しており、少なくとも93%が生存しており、少なくとも94%が生存しており、少なくとも95%が生存しており、少なくとも96%が生存しており、少なくとも97%が生存しており、少なくとも98%が生存しておりまたは少なくとも99%が生存している。細胞を、例えばトリプシン、TrypLEまたはAccutaseを使用して、細胞培養基材から放出することができる。
【0032】
図1Aおよび図1Bそれぞれに、本開示の1つ以上の実施形態の例に係る、細胞培養基材100の三次元(3D)斜視図および二次元(2D)平面図を示す。細胞培養基材100は、第1の方向に走る第1の複数の繊維102と、第2の方向に走る第2の複数の繊維104とから製造された織布メッシュ層である。基材100の織布繊維により、複数の開口106が形成されている。開口のサイズおよび形状を、織りのタイプ(例えば、フィラメントの数、形状およびサイズ;交差するフィラメント間の角度等)に基づいて変化させることができる。開口を、図1Bにおける第1の直径Dおよび第2の直径Dにより示されたように、特定の幅または直径により定義することができる。織布メッシュは、マクロスケールでは、二次元のシートまたは層と考えることができる。ただし、織布メッシュを密に検査すれば、メッシュの交差する繊維の立ち上がりと立ち下がりによる三次元構造が明らかになる。このため、図1Cに示されたように、織布メッシュ100の厚さTは、単一繊維の厚さより厚くなる場合がある。本明細書で使用する場合、厚さTは、織布メッシュの第1の面108と第2の面110との間の最大厚さである。
【0033】
図1Bでは、開口106は、対向する繊維102間の距離として定義される直径Dと、対向する繊維104間の距離として定義される直径Dとを有する。DおよびDは、織りの幾何学形状に応じて、等しい場合または等しくない場合がある。DとDとが等しくない場合、大きい方を、長径と呼ぶことができ、小さい方を、短径と呼ぶことができる。幾つかの実施形態では、開口の直径は、開口の最も広い部分を指すことができる。特に断らない限り、本明細書で使用する場合、開口直径は、開口の両側の平行繊維間の距離を指す。
【0034】
複数の繊維102のうちの所定の繊維は、厚さtを有し、複数の繊維104のうちの所定の繊維は、厚さtを有する。図1Aに示されたような円形断面の繊維または他の三次元断面では、厚さtおよびtは、繊維断面の最高直径または厚さである。幾つかの実施形態によれば、複数の繊維102は全て同じ厚さtを有し、複数の繊維104は全て、同じ厚さtを有する。加えて、tとtとは等しい場合がある。ただし、1つ以上の実施形態では、tとtとは等しくない。加えて、複数の繊維102および複数の繊維104はそれぞれ、2つ以上の異なる厚さの繊維(例えば、t1a、t1b等およびt2a、t2b等)を含む場合がある。図1A図1Cに示されたように、織布メッシュの三次元的性質のために、細胞の付着および増殖に利用可能な繊維の有効表面積は、マクロスケールで同じ基材寸法を有する同等の平坦な2D表面上の付着のための表面積を上回る。
【0035】
織布メッシュを、モノフィラメントまたはマルチフィラメントポリマー繊維から構成することができる。1つ以上の実施形態では、モノフィラメント繊維は、約50μm~約1000μmの範囲の直径を有する場合がある。マイクロスケールレベルでは、細胞と比較した繊維のスケール(例えば、繊維直径が細胞より大きい)のために、モノフィラメント繊維の表面は、接着細胞が付着し、増殖するための規則的な2D表面として提示される。このような繊維は、規定されたパターンおよび特定の量の構造的剛性を有するメッシュに織られる。繊維を、約100μm×100μm~約1000μm×1000μmの範囲の開口を有するメッシュに織ることができる。フィラメント直径および開口直径のこれらの範囲は、幾つかの実施形態の例であるが、全ての実施形態に係るメッシュの可能性のある特徴サイズを限定することを意図するものではない。
【0036】
基材メッシュは、例えば、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリビニルピロリドン、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンオキシド、ポリピロールおよびポリプロピレンオキシドを含む、細胞培養用途に適合したポリマー材料のモノフィラメントまたはマルチフィラメント繊維から製造することができる。メッシュ基材は、例えば、編み、縦編みまたは織り(平織り、撚り織り、デューチ織り、5針織り)を含む、種々の構造パターンまたは織りを有する場合がある。
【0037】
メッシュフィラメントの表面化学は、所望の細胞接着特性を提供するように改質される必要がある場合がある。このような改質を、メッシュのポリマー材料の化学処理またはフィラメント表面への細胞接着分子のグラフト化により行うことができる。代替的には、メッシュを、例えば、コラーゲンまたはMatrigel(登録商標)を含む、細胞接着特性を示す生体適合性ヒドロゲルの薄層で被覆することができる。代替的には、メッシュのフィラメント繊維の表面を、種々のタイプのプラズマ、プロセスガスおよび/または本業界において公知の化学物質による処理プロセスにより、細胞接着特性を有するようにすることができる。
【0038】
図2A図2Cに、本開示の一部の企図される実施形態に係る織布メッシュの異なる例を示す。これらのメッシュの繊維直径および開口サイズと、同等の2D表面に対する各メッシュの単一層により提供される細胞培養表面積の増加のおよその倍率とを、以下の表1にまとめる。表1において、メッシュAは、図2Aのメッシュを指し、メッシュBは、図2Bのメッシュを指し、メッシュCは、図2Cのメッシュを指す。表1の3つのメッシュの幾何学形状は単なる例であり、本開示の実施形態は、これらの特定の例に限定されない。メッシュCは、最も大きい表面積を提供するため、細胞接着および増殖において高い密度を達成するのに有利である場合があるため、細胞培養に最も効率的な基材を提供する場合がある。ただし、幾つかの実施形態では、細胞培養マトリクスは、例えば、培養チャンバ内で所望の細胞分布または流れ特性を達成するために、より小さい表面積を有するメッシュ、例えば、メッシュAもしくはメッシュB)または異なる表面積のメッシュの組み合わせを含むことが有利である場合がある。
【0039】
【表1】
【0040】
上記表に示されたように、メッシュの三次元品質により、同等のサイズの平坦な2D表面と比較して、細胞の付着および増殖のための表面積の増大が提供される。この表面積の増大は、本開示の実施形態の拡張性に役立つ。プロセス開発およびプロセス検証研究のために、試薬コストを節約し、実験スループットを向上させるように、小規模バイオリアクタが多くの場合必要とされる。本開示の実施形態は、このような小規模研究に適用可能であるが、工業規模にスケールアップすることもできる。例えば、直径2.2cmの円の形態にある100層のメッシュCが、内径2.2cmの円筒状充填床に充填される場合、細胞が付着し、増殖するのに利用可能な総表面積は、約935cmに等しい。このようなバイオリアクタを10倍に大きくするために、内径7cmおよび100層の同じメッシュを有する円筒状充填床の同様の構成を使用することができる。このようなケースでは、総表面積は、9,350cmに等しい。幾つかの実施形態では、利用可能な表面積は、約99,000cm/L以上である。幾つかの実施形態では、バイオリアクタ容器は、例えば、100~1000層以上または約300層の細胞培養基材を含む、100層を超える細胞培養基材を有することができる。一部の例では、300層のセル培養マトリクスは、約3×10~5×10cmの表面積を有することができる。幾つかの実施形態では、充填床バイオリアクタは、例えば、1m、2m、2.5m、3m、4m、5mおよび10mならびにその間の範囲を含む1~10mの相当表面積を有する。充填床におけるプラグ型灌流のために、断面充填床表面積の同じ流量(ml/分/cmで表現される)を、バイオリアクタのより小規模およびより大規模なバージョンで使用することができる。
【0041】
十分な剛性の構造的に規定された培養マトリクスを使用することにより、マトリクスまたは充填床にわたる高い流れ抵抗均一性が達成される。種々の実施形態によれば、マトリクスを、単層または多層フォーマットで配備することができる。この柔軟性により、拡散限界が排除され、マトリクスに付着した細胞への栄養および酸素の均一な輸送が提供される。加えて、マトリクスは、充填床構成においていかなる細胞捕捉領域も有しておらず、これにより、培養の終わりに高い生存率を有する完全な細胞回収が可能となる。また、マトリクスは、充填床の充填均一性ももたらし、プロセス開発ユニットから大規模工業バイオプロセスユニットへの直接的な拡張性が可能となる。充填床から細胞を直接回収する能力により、撹拌されまたは機械的に振とうされた容器内にマトリクスを再懸濁させる必要性が排除される。さらに、細胞培養マトリクスの高い充填密度により、工業規模で管理可能な体積において高いバイオプロセス生産性がもたらされる。
【0042】
図3Aに、多層基材200を備えたマトリクスの実施形態を示し、図3Bは、同じ多層基材200の平面図である。多層基材200は、第1のメッシュ基材層202および第2のメッシュ基材層204を含む。第1および第2の基材層202および204が重なっているにもかかわらず、メッシュの幾何学形状(例えば、繊維直径に対する開口直径の比)は、第1および第2の基材層202および204の開口が重なり合い、図3Bにおけるフィラメントを含まない開口206により示されたように、流体が多層基材200の全厚さを通って流れるための経路を提供するようになっている。図3Aおよび図3Bに、基材の2つの層のみを示すが、本開示の実施形態は、例えば、図3Aおよび3図Bに示されたように、積層配置で配置された細胞培養基材の多くの層を含む細胞培養マトリクスを含むと理解されたい。図3Bには、基材層202および204が完全には整列されていないことが示されているが、開口206が整列状態にあるように、層を整列させることもできる。
【0043】
図4に、図3Bにおける線B-Bでの多層基材200の断面図を示す。矢印208は、第2の基材層204の開口を通り、次いで、第1の基材層202のフィラメントの周りを通る可能性のある流体流路を示す。メッシュ基材層の幾何学形状は、1つまたは複数の基材層を通る効率的でほぼ均一な流れが可能となるように設計される。マトリクス200の構造は、複数の向きでマトリクスを通る流体の流れを収容することができる。例えば、図4に示されたように、バルク流体の流れ方向(矢印208により示される)は、第1および第2の基材層202および204の主側面に対して垂直である。ただし、マトリクスを基材層の側面がバルク流れ方向に対して平行になるように、流れに対して配向させることもできる。例えば、図5に、図4における線C-Cに沿った多層基材200の断面図を示すように、マトリクス200の構造により、多層基材200内の流体経路を通る流体の流れ(矢印210)が可能となる。メッシュ層の第1の面および第2の面に対して垂直または平行な流体の流れに加えて、マトリクスを、中間角度でまたは流体の流れに対してランダムな配置でも、複数の基材片で配置することができる。マトリクスのこの柔軟性により、種々の用途およびバイオリアクタまたは容器設計におけるその使用が可能となる。
【0044】
本明細書で検討されたように、細胞培養基材を、1つ以上の実施形態に係るバイオリアクタ容器内で使用することができる。例えば、基材を、充填床バイオリアクタ構成または三次元培養チャンバ内の他の構成で使用することができる。ただし、実施形態は、三次元培養空間には限定されず、基材は、細胞のための培養基材を提供するために、基材の1つ以上の層が例えば、平底培養ディッシュ内に平坦に置かれる、二次元培養表面構成と考えることができるもので使用することができると企図される。汚染の懸念から、容器は、使用後に廃棄することができる使い捨て容器とすることができる。
【0045】
1つ以上の実施形態によれば、細胞培養マトリクスがバイオリアクタ容器の培養チャンバ内で使用される、細胞を培養するための充填床バイオリアクタシステムが提供される。図6に、バイオリアクタ容器302の内部空洞内に細胞培養チャンバ304を有するバイオリアクタ容器302を含む、細胞培養システム300の例を示す。細胞培養チャンバ304内には、複数の基材層308から構成される細胞培養マトリクス306が存在する。複数の基材層308は、スタックで配置された複数の分離可能で別個の基材層を含むことができるが、複数の層同士が固定された一体型細胞培養マトリクスを含むこともできる。基材層308は、基材層の第1または第2の面が隣接する基材層の第1または第2の面に面するように積層されている。バイオリアクタ容器300は、培地、細胞および/または栄養素を培養チャンバ304内に投入するために、一端に入口310を有し、培地、細胞または細胞産物を培養チャンバ304から除去するために、反対端に出口312を有する。このように基材層を積み重ねることを可能にすることにより、このシステムは、規定された構造および積層された基材を通る効率的な流体の流れのために、細胞の付着および増殖に悪影響を及ぼすことなく、容易にスケールアップすることができる。
【0046】
1つ以上の実施形態では、充填床の流れ抵抗および体積密度を、異なる幾何学形状の基材層を交互配置することにより制御することができる。特に、メッシュサイズおよび幾何学形状(例えば、繊維直径、開口直径および/または開口の幾何学形状)は、充填床フォーマットにおける流体流れ抵抗を規定する。異なるサイズおよび幾何学形状のメッシュを間に差し込むことにより、バイオリアクタの特定の部分における流体抵抗を制御することができる。これにより、充填床バイオリアクタにおける液体灌流のより良好な均一性が可能となる。例えば、10層のメッシュA(表1)と、続けて、10層のメッシュB(表1)と、続けて、10層のメッシュC(表1)とを積層して、所望の充填床特性を達成することができる。別の例として、充填床を、10層のメッシュBから開始し、続けて、50層のメッシュC、続けて、10層のメッシュBとすることができる。このような繰り返しパターンを、完全なバイオリアクタがメッシュで充填されるまで続けることができる。これらは、単なる例であり、可能性のある組み合わせを限定することを意図するものではなく、例示の目的で使用される。実際、異なるサイズのメッシュの種々の組み合わせが、細胞増殖表面の体積密度および流れ抵抗の異なるプロファイルを得るために可能である。例えば、異なる体積細胞密度のゾーン(例えば、低/高/低/高等の密度のパターンを形成する一連のゾーン)を有する充填床カラムを、異なるサイズのメッシュを交互配置することにより組み立てることができる。
【0047】
図6では、バルク流れ方向は、入口310から出口312への方向であり(示された矢印の方向により示す)、この例では、基材層308の第1および第2の主面がバルク流れ方向に対して垂直である。ただし、実施形態は、この構成に限定されない。例えば、基材は、第1および第2の面がバルク流れ方向に対して平行になるようにまたはバルク流れ方向に対してある中間角度になるように、培養空間内に配置することができる。このため、本開示の実施形態のマトリクスを、いずれの構成でも使用することができる。いずれの構成においても、基材を、培養チャンバにより画定される内部空間を適切に満たすような大きさおよび形状にすることができる。加えて、基材の個々の層のサイズまたは基材の層のスタックのサイズを、内部空間を満たすようなサイズにすることができまたは必要に応じて、内部空間の全体未満を満たすようなサイズにすることができる。例えば、幾つかの実施形態では、基材層のスタックが内部空間の全体未満を占有することが望ましい場合がある。
【0048】
上記検討されたように、本開示の実施形態は、容器内の細胞培養基材を使用した細胞播種、培養、トランスフェクションおよび/または回収を実行可能でありかつ異なる製造規模を操作可能なバイオリアクタ容器を含む。本開示の実施形態に係るバイオリアクタにより、エンドユーザが、同じバイオリアクタユニットを使用して、1倍~10倍のスケールでバイオプロセス実験を行うことが可能となる。これらの実施形態の単純な拡張性モデルにより、1つのシステム内で、研究からプロセス開発へ、製造規模へのバイオプロセス移行が可能となる。バイオリアクタ容量の構成におけるこのような柔軟性により、1倍~10倍のスケール範囲におけるプロセス最適化および検証のコストおよび時間の節約がもたらされる。幾つかの実施形態の態様により、エンドユーザが、バイオリアクタのスケールアップ中に再最適化を必要とせずに、同じ所定の流量で細胞を播種し、回収することも可能となる。
【0049】
図7に、1つ以上の実施形態に係る灌流型バイオリアクタ320を示す。バイオリアクタ320は、流体、細胞および栄養素を含む培地をバイオリアクタ320の内部空洞327に供給することができる培地入口321を含む。内部空洞327は、細胞培養基材323が配置される細胞培養セクション327aと、スペーサ325が配置されるスペーサセクション327bとを収容するものと考えることができる。培地入口321は、流れ分配プレート322につながっている。流れ分配プレート322は、細胞培養基材323が保持される内部空間の幅にわたって、入ってくる培地を分散させかつ/または分配する。図示されていないが、同様の流れ分配プレートを、出口326の直前に配置することができる。出口分配プレートは、内部空洞327の幅から出口に培地または成分を送り込むのに役立つことができる。以下でさらに説明されるように、バイオリアクタ320を、流体が出口326を通って内部空洞327に入れられるモードでも動作させることができ、この場合、出口分配プレートは、内部空洞327の幅にわたって、流体を均一に分配するのに役立つことができる。この逆流モードでは、入口321を使用して、内部空洞327から流体または成分を取り出すことができる。
【0050】
細胞培養基材323は、例えば、多孔質ポリマー基材を含む、本明細書に開示された実施形態に対応することができる。基材323は、基材323の流れ分配プレート側から、基材323の反対側または頂部まで延在する高さhを有する。場合により、流れ分配プレート322と反対側の基材323の頂部には、充填床保持器324が存在する。充填床保持器324は、培地入口321から入ってくる培地の流れに対して、基材323に構造的支持を提供するように設計されている。そのようにして、充填床保持器324は、充填床基材323の位置および/または形状を保持するのに役立つことができる。充填床保持層324は、種々の実施形態に係る多くの構成を有することができるが、一般的には、細胞を含む培地が充填床保持層324を通過するのを可能にしながら、基材323を適所に保持するのに十分な構造を有する。充填床保持層324の上には、スペーサ325が存在する。スペーサ325は、基材323および/または充填床保持層324の上方かつ内部空洞327の頂部の培地出口326の前のスペーサセクション327bまたは内部空間を実質的に満たすような大きさにされる。この空間を満たすことにより、スペーサ325は、内部空間の頂部または内部空間内の何らかの支持機構に対してしっかり固定され、このため、充填床保持層324および基材323が適所に保持される。
【0051】
また、スペーサ325により、細胞培養セクション327aの上方のスペーサセクション327bにヘッドスペースも形成される。このヘッドスペースは、基材323内、特に、基材323の頂部付近の流れの均一性を向上させる効果を有することができる。例えば、基材323の頂部が、内部空洞327の頂部付近にある場合、内部空洞327の頂部における流れの制限により、圧力が増加し、充填床内の流れの均一性がもたらされる領域が生じる場合がある。以下で検討されるように、また、このヘッドスペースは、回収操作中に内部空洞327を充填し始めるための加圧流体のためのスペースも提供する。
【0052】
図7Bに、図7Aの実施形態の変形形態を示す。図7Bでは、少なくとも1つの多孔質スペーサディスク328は、細胞培養基材323と培地入口321との間に配置される。多孔質スペーサディスク328は、種々の形態をとることができるが、一般的には、内部空洞327の幅または基材323の幅にわたって延在し、流体が多孔質スペーサディスク328を通って流れることが可能となるように多孔質である。実施形態によれば、多孔質スペーサディスク328は、基材内の開口または孔の孔径より大きいスペーサディスク孔径を有する。幾つかの実施形態では、複数の多孔質スペーサディスク328を、基材323と注入口321との間に積層することができる。これらの複数の多孔質スペーサディスク328はそれぞれ、同じ構造(例えば、厚さおよびスペーサディスク孔径)または異なる構造(例えば、異なる厚さおよびスペーサディスク孔径)を有することができる。多孔質スペーサディスク328は、流体が細胞培養基材323に到達する前に、入口321または分配プレート322から流れる流体をさらに均一にし、分配するのに役立つことができることが企図される。
【0053】
図7Aおよび図7Bの基材323は、不織布または織布、例えば、織布PET基材であることができる。ただし、幾つかの実施形態では、基材を、不織布であることができる。基材は、積層配置にある基材材料の複数の層または基材材料のロールもしくはスパイラルを含むことができる。
【0054】
図8は、図7Aおよび図7Bのバイオリアクタ320の例におけるコンポーネントの写真である。示されたように、バイオリアクタ320は、2つ以上の分離可能なハウジングコンポーネント350aおよび350bを含むことができる。下部ハウジングコンポーネント350aには、流れ分配プレート352が示されており、これは、培地入口(図8には図示せず)の上方に位置する。充填床保持器354の例が示されている。充填床保持器354は、一般的には、格子形状であり、規定された厚さを有する。充填床保持器354の格子により、この格子を通る培地および他の成分の流れが可能となるが、バイオリアクタ内の任意の基材層への支持が提供される。スペーサ355の例も示されている。ハウジングコンポーネント350a,350b、分配プレート352、充填床保持器354およびスペーサ355の形状およびサイズは、単なる例として示されており、本開示の実施形態は、示された構成に限定されない。第1の多孔質スペーサディスク356、第2の多孔質スペーサディスク357および第3の多孔質スペーサディスク358も入口付近に示されている。第2および第3の多孔質スペーサディスク357,358は、この例では同一の構造を有し、両方とも、細胞培養基材360の孔または開口直径より大きいスペーサディスク孔径を有するメッシュまたはネット材料で製造される。また、第1の多孔質スペーサディスク356も、メッシュ、ネットまたは格子材料で製造されるが、第2および第3の多孔質スペーサディスク357,358より大きなスペーサディスク孔径を有する。
【0055】
図9Aに、図8の分配プレート352と同様の分配プレート2の平面図を示す。分配プレート2における孔7は、分配プレートの幅およびバイオリアクタの内部空間にわたって均等に流れを分配するように配置されている。図9Bに、幾つかの実施形態に係る充填床保持器4の平面図を示し、これは、流れ抵抗を最小限に抑えるために多数の大きな開口8を画定する格子形状を有し、さらに、充填床領域内に細胞培養基材を効果的に保持する。
【0056】
図10に、図8のスペーサ355の三次元モデルを示す。このスペーサは、充填床領域に基材を押し込みかつ/または保持することができ、同時に、バイオリアクタの内部空洞327にスペーサセクション327b(図7Aを参照のこと)を形成して、充填床細胞培養マトリクス上のヘッドスペースを画定することができる。異なる高さの取外し可能なスペーサ355により、ユーザが異なる体積の細胞培養基材を使用してバイオリアクタ内で細胞培養を行うことが可能となり、充填床から培地出口ポートへの培地の制限されない流れが可能となる。すなわち、より高い高さを有するスペーサ355は、それに応じて、充填床の高さを低くすることができ、一方、より低い高さを有するスペーサ355は、それに応じて、より高い充填床のためのより大きな空間を可能にすることができる。幾つかの実施形態では、バイオリアクタシステムは、異なる高さの別個のスペーサを使用するのではなく、調整可能な高さを有するスペーサを含むことができる。
【0057】
図11に、異なる高さのスペーサインサートを有し、それに応じて、充填床基材の高さが異なる、組み立てられた充填床バイオリアクタの例を示す。この例では、左から右に、同じバイオリアクタを、生産性が3倍に大きくなるように構成することができる。ただし、本開示の実施形態は、それに応じて、コンポーネントのサイズを調整することにより、所定のバイオリアクタの生産性をさらに大きな範囲で拡大することが可能となることが企図される。
【0058】
図12に、1つ以上の実施形態に係るバイオプロセスシステム400に組み込まれたバイオリアクタ402を示す。システム400は、例えば、細胞培養培地パラメータ、例えば、pH、温度および酸素化レベルを適切に維持するための培地調整容器411を含む。自動制御ポンプ409は、バイオリアクタ402を通して培地を灌流するのに使用される。バイオリアクタ入口413は、細胞播種または収集された細胞の回収を容易にするために、追加の3方向ポートを備える。システム400は、インラインセンサおよび培地調整容器411内のセンサ412を含むことができる。
【0059】
図13に、バイオリアクタから細胞を回収するプロセスの間の複数の段階にある、上記実施形態に係るバイオリアクタを示す。細胞回収プロセスは、バイオリアクタに細胞解離溶液422を予め充填し、充填床を所定量の時間インキュベートして、基材から細胞を剥離することを含む。得られた細胞の懸濁液が、図13における段階の左から右への進行に示されたように、培地出口426を通して加圧流体(例えば、空気)を加えることにより、入口421を通って出る培地/細胞の逆流により、培地入口421から回収される。
【0060】
表3に、図7図13の実施形態に係る60mmのバイオリアクタにおけるAAV産生運転の結果を示す。60mmのバイオリアクタは、6780cmの全基材表面積に対応する。トランスフェクションされた細胞収率、トランスフェクション効率および1cm当たりのウイルスゲノム収率を示す。
【0061】
本開示の上記拡張性のある容器の実施形態は、同じプラットフォームおよび同じバイオリアクタ容器を使用して、幾つかの異なる規模でのプロセス最適化または製造を可能にする、足場依存性細胞のための標的充填床バイオリアクタシステムである。一実施形態では、例えば、バイオリアクタ容器320は、接着細胞のための充填床323を保持して、付着させ、増殖させ、トランスフェクションし、産物を産生する。細胞培養培地を、充填床およびバイオリアクタ容器を通して連続的に灌流させて、細胞に酸素および栄養分を補充し、有害な代謝産物を除去することができる。培地は、計算された流量で容器入口321を通って導入され、出口326を通ってバイオリアクタを出る。充填基材材料にわたって均一な流れ分配を達成するために、流れ分配プレート322は、充填層領域の前方に配置される。この流れ分配プレートは、分岐または放射状に相互接続された設計を有することができ、これにより、その全体において充填層にわたる流れの均等な分配が可能となる。
【0062】
別の実施形態では、充填床の層は、隆起した保持格子4により密に充填された状態で保持される。この保持格子は、バイオリアクタ灌流中の流れ抵抗を最小限に抑える大きな開口を有するが、PETメッシュの層を密に充填した状態に保つために、充填床の表面に均一に圧力を及ぼすのに十分な構造的剛性を有する。開示されたバイオリアクタ内の充填床の体積を、保持格子4を適所に固定するために、異なる寸法のスペーサ5を利用することにより変化させることができる。バイオリアクタ容器のサイズおよび充填床の直径を、約1cm(実験室規模)から約10cm(プロセス開発規模)まで、50cm(パイロット規模)まで、200cm(製造規模)まで変化させることができる。
【0063】
図8に、接着性HEK293T細胞によるウイルス粒子の生物生産において試験されたバイオリアクタの一部を示す。バイオリアクタ充填床領域の内径は、60mmであり、バイオリアクタの組み立てられた状態の充填床は、硬質PET基材の10~300層からなることができる。これは、接着細胞が付着し、増殖しかつ目的の化合物を産生するのに利用可能な678~20300cm2の表面積に相当する。図12に、培地調整容器、バイオリアクタへの培地の流れを可能にするポンプおよびバイオプロセスを成功させるのに必要なプロセス条件を支持する外部溶存酸素センサから構成される主要外部コンポーネントに接続される、組み立てられた状態にあるバイオリアクタ容器402の摸式図を示す。細胞培養培地は、適切なpH、温度および溶存酸素レベルが維持される培地調整容器411内で調整される。続けて、培地は、ポンプ409によりバイオリアクタを通して灌流される。ポンプ409の流量は、バイオリアクタを出る培地内の溶存酸素の所定の最少レベルを維持するように自動的に調整されるフィードバックループに組み込まれる。所定のバイオプロセスに必要な全てのトランスフェクション試薬、栄養素および追加の培地補充物を、バルク培地に導入することができ、使用済み培地を、培地調整容器411を介して除去することができる。プロセスの終わりに、培地を、バイオリアクタから排出し、細胞回収溶液422で再充填することができる(図13)。充填床を回収溶液内で、細胞を基材から剥離させるのに十分な所定の時間インキュベーションした後、細胞を、70ml/cm2(充填床断面積)/分の範囲の流量を達成するために、バイオリアクタ出口6で空気圧を加えることによる逆流により細胞を回収する。細胞を、バイオリアクタ3方向ポート413で回収する。また、細胞を、バイオリアクタ内で直接溶解させることができ、AVV粒子を含有するライゼート溶液は、3方向ポート413を通して回収することができる。
【0064】
培地調整容器404は、懸濁バッチ、流加バッチまたは灌流培養のためにバイオプロセス産業で使用される典型的なバイオリアクタに見出されるセンサおよび制御コンポーネントを含むことができる。これらは、DO酸素センサ、pHセンサ、酸素供給器/ガス散布ユニット、温度プローブならびに栄養素添加および塩基添加ポートを含むが、これらに限定されない。散布ユニットに供給される混合ガスを、N、OおよびCOガス用のガスフローコントローラにより制御することができる。また、培地調整容器404は、培地混合のためのインペラも含む。上記列記されたセンサにより測定された全ての培地パラメータを、培地調整容器404と通信している培地調整制御ユニット418により制御することができ、細胞培養培地406の条件を測定可能でありかつ/またはこれを所望のレベルに調整可能である。
【0065】
培地調整容器404からの培地406は、入口を介してバイオリアクタ402に送られ、この入口は、細胞を播種しかつ細胞の培養を開始するための細胞播種物の注入ポートも含むことができる。また、バイオリアクタ容器402は、細胞培養培地が容器402を出る1つ以上の出口も含むことができる。加えて、細胞または細胞産物を、出口を通って出力することができる。バイオリアクタ402からの流出の内容物を分析するために、1つ以上のセンサ412を、インラインで提供することができる。幾つかの実施形態では、システム400は、バイオリアクタ402への流れを制御するための流れ制御ユニットを含む。例えば、流れ制御ユニットは、1つ以上のセンサ412から信号を受信し、その信号に基づいて、バイオリアクタ402への入口408の上流のポンプ(例えば、蠕動ポンプ)に信号を送ることにより、バイオリアクタ402への流れを調整することができる。このようにして、センサ412により測定された因子の1つまたは組み合わせに基づいて、ポンプは、バイオリアクタ402への流れを制御して、所望の細胞培養条件を得ることができる。
【0066】
培地灌流量は、培地調整容器404からのセンサ信号と充填床バイオリアクタ出口に位置するセンサ信号とを収集し、これらを比較する信号処理ユニットにより制御される。充填床バイオリアクタ402を通る培地灌流の充填流の性質のために、栄養素、pHおよび酸素の勾配が、充填床に沿って発生する。バイオリアクタの灌流流量を、図14Bのフローチャートに従って、蠕動ポンプに操作可能に接続された流れ制御ユニットにより自動的に制御することができる。
【0067】
本開示の1つ以上の実施形態は、従来の方法とは異なる細胞播種ステップを提供する。従来の方法では、従来のマトリクスを有する充填床に、培養培地を充填し、濃縮した播種物が、培地循環ループに注入される。細胞懸濁液は、従来の充填床マトリクス上での捕捉による細胞播種の不均一性を低下させるために、増加させた流量でバイオリアクタを通してポンプ輸送される。このような従来の方法では、循環ループ内の細胞を増加させた流量でポンプ輸送することは、細胞の大部分が充填床バイオリアクタに捕捉されるまで、おそらく数時間続く。しかしながら、従来の充填床バイオリアクタの不均一な深床ろ過性質のために、細胞は、バイオリアクタの入口領域ではより高い細胞密度で、バイオリアクタの出口領域ではより低い細胞密度で、充填床の内側に不均一に分布される。
【0068】
対照的に、本開示の実施形態によれば、バイオリアクタ内の培養チャンバの空隙体積に等しい体積の細胞播種物が、バイオリアクタ402の入口の細胞播種物注入ポートを通して充填床に直接注入される(図12)。次いで、細胞懸濁液は、本明細書に記載された細胞培養マトリクス内に存在する均一かつ連続的な流体通路のために、充填床内で均一に分配される。最初の播種段階での重力による細胞沈降を防止するために、培地灌流を、播種物注入直後に開始することができる。灌流流量は、重力のバランスをとり、細胞が充填床バイオリアクタから洗浄されるのを回避するために、予めプログラムされた閾値未満に維持される。このため、最初の細胞付着段階において、細胞は、充填床内で穏やかにタンブリングされ、均一な細胞分布および利用可能な基材表面上への付着が達成される。
【0069】
図14Aに、幾つかの実施形態に係る本明細書に開示された細胞培養システムについて使用される方法ステップを示す。図14Aに示されたように、これらの方法ステップは、プロセス準備(S1)、細胞の播種および付着(S2a,S2b)、細胞増殖(S3)、トランスフェクション(S4a,S4b)、ウイルスベクターの産生(S5a,S5b)ならびに回収(S6a,S6b)を含むことができる。
【0070】
図14Bに、灌流バイオリアクタシステム、例えば、図12のシステム400の流れを制御するための方法450の例を示す。方法450によれば、システム400の特定のパラメータは、バイオリアクタ最適化実行を通じて、ステップS1において予め決定される。これらの最適化実行から、pH、pO、[グルコース]、pH、pO、[グルコース]および最高流量を決定することができる。pH、pOおよび[グルコース]についての値は、ステップS2でバイオリアクタ402の細胞培養チャンバ内で測定され、pH、pOおよび[グルコース]は、ステップS3で培地調整容器404内のセンサ412により測定される。S2およびS3におけるこれらの値に基づいて、灌流ポンプ制御ユニットは、S4において、灌流流量を維持しまたは調整するための決定を行う。例えば、pH≧pH2min、pO≧pO2minおよび[グルコース]≧[グルコース]2minのうちの少なくとも1つであれば、細胞培養チャンバへの細胞培養培地の灌流流量を現在の量で継続することができる(S5)。現在の流量が、細胞培養システムの所定の最大流量以下であれば、灌流流量を増加させる(S7)。さらに、現在の流量が、細胞培養システムの所定の最大流量以下でない場合、細胞培養システムのコントローラは、(1)pH2min、pO2minおよび[グルコース]2min;(2)pH、pOおよび[グルコース]および(3)バイオリアクタ容器の高さのうちの少なくとも1つを再評価することができる(S6)。
【0071】
細胞培養マトリクスを、所望のシステムに応じて、培養チャンバ内に複数の構成で配置することができる。例えば、1つ以上の実施形態では、このシステムは、培養チャンバ内の規定された細胞培養空間の幅にわたって延在する幅を有する基材の1つ以上の層を含む。基材の複数の層は、このようにして所定の高さまで積層される場合がある。基材層を、1つ以上の層の第1および第2の面が培養チャンバ内の規定された培養空間を通る培養培地のバルク流れ方向に対して垂直であるように配置することができる。幾つかの実施形態では、1つ以上の層の第1および第2の面は、バルク流れ方向に対して平行であってもよい。1つ以上の実施形態では、細胞培養マトリクスは、バルク流れに対して第1の配向の1つ以上の基材層と、第1の配向とは異なる第2の配向の1つ以上の他の層とを含む。例えば、種々の層は、バルク流れ方向に対して平行もしくは垂直またはその間の何らかの角度で第1および第2の面を有する場合がある。
【0072】
1つ以上の実施形態では、細胞培養システムは、充填床構成にある細胞培養基材の複数の別個のピースを含み、この場合、基材のピースの長さおよび/または幅は、培養チャンバに対して短い。本明細書で使用する場合、基材のピースは、基材のピースの長さおよび/または幅が培養空間の長さおよび/または幅の約50%以下である場合、培養チャンバに対して短い長さおよび/または幅を有すると考えられる。このため、細胞培養システムは、所望の配置で培養空間内に充填された複数の基のピースを含むことができる。基材のピースの配列は、ランダムもしくは半ランダムでありまたは、ピースが実質的に同様の配向(例えば、水平、垂直またはバルク流れ方向に対して0°~90°の角度)で配向される等の所定の順序または整列を有する場合がある。
【0073】
本明細書で使用する場合、「規定された培養空間」は、細胞培養マトリクスにより占められ、細胞播種および/または培養が行われる培養チャンバ内の空間を指す。規定された培養空間を、培養チャンバのほぼ全体を満たすことができまたは培養チャンバ内の空間の一部を占めることができる。本明細書で使用する場合、「バルク流れ方向」は、細胞の培養中かつ/または培養チャンバへの培養培地の流入もしくは流出中に、細胞培養マトリクスを通るかまたはその上の流体または培養培地のバルク質量流れの方向として定義される。
【0074】
1つ以上の実施形態では、細胞培養マトリクスは、固定機構により培養チャンバ内に固定される。固定機構により、細胞培養マトリクスの一部を、マトリクスを取り囲む培養チャンバの壁にまたは培養チャンバの一端のチャンバ壁に固定してもよい。幾つかの実施形態では、固定機構は、細胞培養マトリクスの一部を、培養チャンバを通って走る部材、例えば、培養チャンバの長手方向軸線に対して平行に走る部材または長手方向軸線に対して垂直に走る部材に付着させる。ただし、1つ以上の他の実施形態では、細胞培養マトリクスは、チャンバまたはバイオリアクタ容器の壁に固定的に取り付けられることなく、培養チャンバ内に収容される場合がある。例えば、マトリクスは、マトリクスがバイオリアクタ容器の所定の領域内に保持され、マトリクスがそれらの境界または構造部材に固定されないように、培養チャンバまたはチャンバ内の他の構造部材の境界まで収容される場合がある。
【0075】
幾つかの実施形態の一態様は、ローラボトル構成にあるバイオリアクタ容器を提供する。培養チャンバは、本開示に記載された実施形態のうちの1つ以上に従って、細胞培養マトリクスおよび基材を収容可能である。
【0076】
ローラボトル構成では、バイオリアクタ容器を、バイオリアクタ容器を容器の中心長手方向軸線を中心に移動させるための手段に動作可能に取り付けることができる。例えば、バイオリアクタ容器を、中心長手方向軸線を中心に回転させることができる。この回転は、連続的(例えば、一方向に継続する)または不連続的(例えば、単一方向もしくは交互方向に断続的に回転するまたは前後の回転方向に往復する)であることができる。動作において、バイオリアクタ容器の回転により、チャンバ内の細胞および/または流体を移動させる。この移動は、チャンバの壁に対して相対的であると考えることができる。例えば、バイオリアクタ容器が、その中心長手方向軸線を中心に回転するとき、重力により、流体、培養培地および/または非接着細胞が、チャンバの下部に向かって残存する場合がある。一方、1つ以上の実施形態では、細胞培養マトリクスは、本質的に容器に対して固定され、このため、容器と共に回転する。1つ以上の他の実施形態では、細胞培養マトリクスは取り付けられず、容器が回転するのにつれて、容器に対して所望の程度に自由に動くことができる。細胞は、細胞培養マトリクスに付着することができ、一方、容器の移動により、細胞が細胞培養培地または液体と培養チャンバ内の酸素または他のガスとの両方への曝露を受けることが可能となる。
【0077】
本開示の実施形態に係る細胞培養マトリクス、例えば、織布またはメッシュ基材を含むマトリクスを使用することにより、接着細胞が付着し、増殖しかつ機能するのに利用可能な大きくなった表面積を有するローラボトル容器が提供される。特に、ローラボトル内のモノフィラメントポリマー材料の織布メッシュの基材を使用すると、表面積は、標準的なローラボトルの表面積の約2.4~約4.8倍または約10倍に大きくなる場合がある。本明細書で検討されたように、メッシュ基材の各モノフィラメントストランドはそれ自体が、接着細胞が付着するための2D表面として提示可能である。加えて、メッシュの複数の層を、ローラボトルに配置することができ、その結果、利用可能な全表面積が、標準的なローラボトルの表面積の約2~20倍の範囲で大きくなる。このため、既存のローラボトル設備および細胞播種、培地交換および細胞回収を含む処理を、既存の動作インフラおよび処理ステップへの影響を最小限に抑えながら、本明細書に開示される改善された細胞培養マトリクスの追加により改変することができる。
【0078】
バイオリアクタ容器は、場合により、入口および/または出口手段に取り付け可能な1つ以上の出口を含む。1つ以上の出口を介して、液体、培地または細胞を、チャンバに供給しまたはチャンバから除去することができる。容器内の単一のポートが、入口および出口の両方として機能する場合がありまたは複数のポートが、専用の入口および出口に提供される場合がある。
【0079】
実施形態は、中心長手方向軸線を中心とする容器の回転に限定されない。例えば、容器は、容器に対して中心に位置しない軸線を中心に回転する場合がある。加えて、回転軸線は、水平軸線または垂直軸線である場合がある。
【実施例
【0080】
本開示の細胞培養マトリクス、細胞培養システムおよび関連する方法の有効性を例証するために、以下の実施例に従って、細胞の播種および培養について研究を行った。
【0081】
実施例1では、ポリエチレンテレフタレート(PET)織布メッシュ基材を有する細胞培養マトリクス(図15A図15Cを参照のこと)を、静的細胞培養条件で試験した。PETメッシュを、エタノール内で洗浄し、酸素RFプラズマ内でプラズマ処理した。細胞接着を促進するために、ゼラチンを、メッシュフィラメントの表面に吸着させた。メッシュのディスク状ピースをCorning(登録商標)超低付着(ULA)6ウェルプレートに入れた。HEK293T細胞を種々の播種密度(それぞれ、図15A図15Bおよび図15Cに対応する、1cm当たり50K、1cm当たり75K、1cm当たり100K)でメッシュディスク上に播種し、細胞培養を3日間行った。フィラメント表面上の細胞を、蛍光緑色細胞追跡色素で染色した。図15A図15Cに、フィラメント表面上の細胞のこの可視化の結果を示す。細胞のサイズに対するメッシュフィラメントのサイズにより、モノフィラメント繊維が細胞の付着および増殖のための二次元表面として効果的に機能することが可能となる。細胞増殖を、メッシュから細胞を回収し、Beckman Coulter製のVi-Cell(登録商標)細胞カウンタでカウントすることにより測定した。結果から、静的細胞培養条件下における細胞培養マトリクス上での良好な細胞の付着および増殖が示された。
【0082】
実施例2では、細胞を、本開示の実施形態の一例に従って、充填床バイオリアクタシステム、例えば、図6に示されたもので培養した。充填床は、円筒形状を有し、それぞれ円形またはディスク形状の細胞培養基材のスタックで構成される。具体的には、実施例2では、充填床は、約25mmの高さを有し、それぞれ約20mmの直径を有する100枚のPETメッシュ基材のディスクを含んでいた。使用されたメッシュは、表1におけるメッシュCに相当する。細胞付着に利用可能な全二次元表面積は、約760cmであったと推定される。バイオリアクタに播種するために、8mlのHEK293T細胞懸濁液(200万個/ml)を、充填床に直接注入した。細胞懸濁液の導入直後に、培地灌流を開始し、灌流流量を、3ml/分に設定した。この流量での灌流を、24時間続け、次いで、流量を、1ml/分に低下させた。この後、灌流流量を、バイオリアクタの出口でpO≧50%飽和およびpH≧7を維持するように調整した。2~3日後、バイオリアクタ実行細胞をクリスタルバイオレットで染色し、バイオリアクタを分解して、マトリクス内での細胞付着の均一性を検証した。好ましい実施形態によれば、バイオリアクタに、初期付着段階中に細胞が充填床内で連続的にタンブリングされる播種方法により播種することができる。その結果、2日間の細胞培養後、充填床の全ての部分において、均一な細胞分布が達成される。これは、バイオリアクタが細胞播種段階で連続的に灌流された場合に、均一な細胞分布が達成されたことを示す。
【0083】
実施例3では、細胞を、充填床バイオリアクタシステム内で培養し、HEK293T細胞のトランスフェクションを、バイオリアクタ内でのアデノ随伴ウイルス(AAV)産生のために行った。実施例2と同じバイオリアクタ設定を、実施例3で使用した(例えば、図6を参照のこと)。充填床は、100枚のPETメッシュ(表1のメッシュC)のディスクを含んでいた。各ディスクの直径は、約20mmであり、床の高さは、約25mmであり、合計約760cmの二次元表面積が、細胞の付着および増殖に利用可能であった。バイオリアクタに播種するために、8mlのHEK293T細胞懸濁液(200万個/ml)を、充填床に直接注入した。約50mlの培地を含有する培地貯留容器を、バイオリアクタ容器に取り付けた。細胞を、10%のFBSおよび6mMのL-グルタミンを添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)ATCC(登録商標)培地内で72時間培養した。貯留容器内の培地のpHが7未満に低下したとき、培地を、新鮮な培地供給物と交換した。したがって、バイオリアクタの出口でpO≧50%飽和およびpH≧7を維持するように、灌流流量を調整した。72時間後、培養培地を、10%のFBS、6mMのL-グルタミンを添加した50mlのCorning(登録商標)DMEM(15-018)に変更し、トランスフェクション試薬を、1:2の比で2ug/mlのAAV2およびPEIproの最終濃度で添加した。次の72時間の間、貯留ボトル内のpHが7未満に低下した場合、培養培地を、新鮮な供給物と交換した。したがって、バイオリアクタの出口でpO≧50%飽和およびpH≧7を維持するように、灌流流量を調整した。細胞を、5×TrypLEを使用することにより回収した。トランスフェクション効率を蛍光フローサイトメータにより分析し、ウイルス粒子およびウイルスゲノム力価を、ELISAおよびPCRアッセイにより分析した。細胞培養結果を、表2に示す。同表において、「VP」は、ウイルスタンパク質を意味し、「GC」は、ゲノムコピーを意味する。
【0084】
【表2】
【0085】
本明細書に開示される実施形態は、細胞培養およびウイルスベクター産生のための既存のプラットフォームを上回る利点を有する。本開示の実施形態を、例えば、接着または半接着細胞、トランスフェクションされた細胞を含むヒト胚性腎臓(HEK)細胞(例えば、HEK23)、ウイルスベクター、例えば、レンチウイルス(幹細胞、CAR-T)およびアデノ随伴ウイルス(AAV)を含む、多数のタイプの細胞および細胞副産物の産生に使用することができることが留意される。これらは、本明細書に開示されたバイオリアクタまたは細胞培養基材についての幾つかの一般的な用途の例であるが、当業者が他の使用への実施形態の適用可能性を理解するように、開示された実施形態の使用または用途を限定することを意図するものではない。
【0086】
上記検討されたように、本開示の実施形態の1つの利点は、細胞培養基材を通る流れの均一性である。理論に束縛されることを望むものではないが、細胞培養基材の規則的または均一な構造により、培地が流れることができる一貫しかつ均一な本体が提供されると考えられる。対照的に、既存のプラットフォームは、主に、不規則またはランダムな基材、例えば、フェルト様または不織繊維材料による。本開示の基材の均一な特性を、基材上で達成される均一かつ一貫した細胞播種を調べることにより例証することができる。図16Aに、例えば、本開示の幾つかの実施形態に係る基材材料の3つのディスク(1801,1802,1803)を示す。図16Aのディスクは、本明細書に記載された織布PETメッシュ材料であり、それぞれ約60mmの直径を有する。10~300層の同様のディスクが充填されたバイオリアクタについての表面積は、約678~20,300cmである。本実施例では、細胞培養を、100枚のディスクのスタックを使用して行った。第1のディスク1801は、バイオリアクタ内のこのようなディスクのスタックにおける上部ディスクであり、第2のディスク1802は、スタックの中間ディスクであり、第3のディスク1803は、スタックの下部ディスクであった。
【0087】
図16Aに、播種72時間後のバイオリアクタ内の細胞分布の均一性を示す。充填床の3つの異なる領域からの基材層を、バイオリアクタから回収し、クリスタルバイオレット染色して、付着したHEK293T細胞を可視化した。上部層、中間層および底部層の細胞の染色均一性から、細胞が、播種および付着ステップ中に充填床全体に均一に分布していることが例証された。また、充填床基材サンプルも、開示されたバイオリアクタから回収された細胞の効率を確認するために、回収後に染色した(図16Bを参照のこと)。図16Bに、回収ステップ後の充填床の3つの異なるゾーンから回収された、染色された基材層を示す。図16Bから分かるように、回収プロセスにより、バイオリアクタから95%超の細胞回収が達成された。細胞培養結果を、表3に示す。
【0088】
図16Aおよび図16Bの画像を生成した実験では、バイオリアクタに、細胞培養培地を予め充填し、システムを、pH7.2、D.O.100%および37℃の定常状態を達成するために、一晩予め調整した。400mlの10%のFBS、6mMのL-グルタミンを添加したATCC DMEM培地を使用して、バイオリアクタシステム全体を充填した。30mlの懸濁液内のHEK293T細胞(500万個/mL)を、播種物を形成するために、3方向ポートを通して充填床に直接注入した。バイオリアクタを、30mL/分の速度で、最初の48時間、予め調整された培地で灌流して、充填床における均一な細胞分布、付着および初期増殖が可能となった。48時間培養後、200mlの新鮮な完全ATCC DMEM培地をシステムに添加して、グルコースレベルを1g/L超に維持した。バイオリアクタ出口で培地飽和のDO外部≧45%を維持するように、灌流流量を自動的に調整した。播種の72時間後、培養培地を500mlの10%のFBS、6mMのL-グルタミンを添加したCorning DMEM(15-018)と交換し、2時間灌流させた。トランスフェクション混合物(プラスミドDNAとPEIとの1:2の比での複合体;0.8ugの総DNA/100万個の細胞)を、トランスフェクションの24時間後に培地1ml当たり2μgの総DNAの最終濃度で添加し、培養培地を500mlの新鮮な完全Corning DMEM(15-018)培地と交換して、消費された栄養素を補充した。バイオリアクタの出口でDO外部≧45%飽和を維持するように、灌流流量を自動的に調整した。グルコースレベルを、後続の48時間の培養の間監視し、0.3g/L超のレベルを維持するために、必要に応じて、培地の添加または交換を通して補充した。トランスフェクションの72時間後、細胞をDPBSで洗浄し、1×Accutase溶液を使用することにより回収した。トランスフェクション効率を、蛍光フローサイトメトリーにより分析し、ウイルス粒子およびウイルスゲノム力価を、ELISAおよびqPCRアッセイにより分析した。
【0089】
クリスタルバイオレット染色を使用して、図16Aのディスクの表面全体にわたる細胞の均一な増殖を強調した。第1のディスク1801、第2のディスク1802および第3のディスク1803が細胞培養マトリクスのスタック全体に広がっているにもかかわらず、細胞増殖は、3つのディスク全てにわたって一貫している。図16Aの画像は、72時間培養した後で、細胞を基材から回収する前に撮影した。図16Bに、細胞を回収した後の同じ3つのディスクを示す(1801’,1802’および1803’)。図16Bにおけるクリスタル染色の相対的不在により示されたように、細胞は、各ディスクの表面にわたってかつ細胞培養マトリクススタックの3つのディスクにわたって均一に回収された。分析に基づいて、95%超の細胞が、バイオリアクタから回収された。6780cmの全表面積を有するこれらの直径60mmの基材スタック/容器におけるAAV産生の細胞培養結果を、以下の表3に示す。表3に、トランスフェクションされた細胞収率、トランスフェクション効率およびウイルスゲノム/cm収率を示す。再度、基材の均一な構造および均一な流れ特性が、この効率的かつ均一な増殖および回収能力に寄与すると考えられる。
【0090】
【表3】
【0091】
以下の表4に、異なる直径(29mmおよび60mm)のバイオリアクタ容器を含む複数の実験の文脈における上記の結果を示す。これらのデータから、より小さい(例えば、直径29mm、表面積1600cm)容器および/または充填床マトリクスと、より大きい(例えば、直径60mm、表面積6780cm)容器および/または充填床マトリクスとの間の良好な拡張性が示される。
【0092】
【表4】
【0093】
実施例.60mmのバイオリアクタユニットにおけるHEK293T細胞によるAAV産生および充填床バイオリアクタにおけるAAV産生
図7に示されたように、充填層バイオリアクタをαユニットに組み立てた。実際のバイオリアクタ部分を、図8に示す。100層の層の構造化され、処理されたPET基材が収容された直径60mmの充填層をバイオリアクタに入れた。充填床の高さは、26mmであり、細胞の付着および増殖に利用可能な全2D表面積は、6780cmであると計算された。バイオリアクタに細胞培養培地を予め充填し、pH7.2、D.O.100%および37℃の定常状態を達成するために、システムを一晩予め調整した。400mlの10%のFBS、6mMのL-グルタミンを添加したATCC DMEM培地を使用して、バイオリアクタシステム全体を充填した(図12)。30mlの懸濁液内のHEK293T細胞(500万個/mL)を、播種物を形成するために、3方向ポート413を通して充填床に直接注入した。
【0094】
バイオリアクタを、30mL/分の速度で、最初の48時間、予め調整された培地で灌流して、充填床における均一な細胞分布、付着および初期増殖が可能となった。48時間培養後、200mlの新鮮な完全ATCC DMEM培地をシステムに添加して、グルコースレベルを1g/L超に維持した。バイオリアクタ出口で培地飽和のDO外部≧45%を維持するように、灌流流量を自動的に調整した。播種の72時間後、培養培地を500mlの10%のFBS、6mMのL-グルタミンを添加したCorning DMEM(15-018)と交換し、2時間灌流させた。トランスフェクション混合物(プラスミドDNAとPEIとの1:2の比での複合体;0.8ugの総DNA/100万個の細胞)を、トランスフェクションの24時間後に培地1ml当たり2μgの総DNAの最終濃度で添加し、培養培地を500mlの新鮮な完全Corning DMEM(15-018)培地と交換して、消費された栄養素を補充した。バイオリアクタの出口でDO外部≧45%飽和を維持するように、灌流流量を自動的に調整した。
【0095】
播種の72時間後、培養培地を500mlの10%のFBS、6mMのL-グルタミンを添加したCorning DMEM(15-018)と交換し、2時間灌流させた。次いで、トランスフェクション混合物(プラスミドDNAとPEIとの1:2の比での複合体;0.8ugの総DNA/100万個の細胞)を、トランスフェクションの24時間後に培地1ml当たり2ugの総DNAの最終濃度で添加し、培養培地を500mlの新鮮な完全Corning DMEM(15-018)培地と交換して、消費された栄養素を補充した。バイオリアクタの出口でDO外部≧45%飽和を維持するように、灌流流量を自動的に調整した。
【0096】
グルコースレベルを、後続の48時間の培養の間監視し、0.3g/L超のレベルを維持するために、必要に応じて、培地の添加または交換を通して補充した。トランスフェクションの72時間後、細胞をDPBSで洗浄し、1×Accutase溶液を使用することにより回収した。トランスフェクション効率を、蛍光フローサイトメトリーにより分析し、ウイルス粒子およびウイルスゲノム力価を、ELISAおよびqPCRアッセイにより分析した。図16Aに、播種72時間後のバイオリアクタ内の細胞分布の均一性を示す。図16Bから分かるように、回収プロセスにより、バイオリアクタから95%超の細胞回収が達成された。細胞培養結果を、表3に示す。
【0097】
上記検討されたように、本開示の実施形態は、比較的小さく実用的な設置面積で高密度の細胞を培養可能な充填床細胞培養マトリクスおよび/またはバイオリアクタを提供することができる。例えば、上記表3および表4の実施例における60mmの細胞培養基材は、約6870cmの表面積を有する。参考までに、Corning HYPERFlask(登録商標)は、約1720cmの表面積を有する。表3および表4の直径60mmの細胞培養マトリクスを、HYPERFlask(登録商標)より小さいバイオリアクタに収容することができるが、それにもかかわらず、回収時により多くの細胞カウントをもたらし、容器当たりの総ゲノムコピー(GCまたはウイルスゲノム(VG))数がより多くなる。図17A図17Bおよび図17Cに、1cm当たりのGCを含むHYPERFlask(登録商標)の2D表面上の細胞培養からのデータ(図17C)と比較した、表3および表4からの直径60mmの基材を有する本開示に係る2つのバイオリアクタ容器内での細胞培養から得られたデータを示す。このデータは、この実施例においてHYPERFlask(登録商標)より低いが、より大きな表面積でそれを補う。
【0098】
図18に、1つ以上の実施形態に係る細胞培養システム520のより詳細な模式図を示す。システム520の基本構造は、図12におけるシステム400と同様であり、細胞培養材料、例えば、PET織布メッシュの充填床を収容する容器を有する充填床バイオリアクタ522と、別個の培地調整容器524とを有する。ただし、システム400とは対照的に、システム520は、センサ、ユーザインターフェースおよびコントローラならびに培地および細胞のための種々の入口および出口を含む、システムの詳細を示す。幾つかの実施形態によれば、適切な温度、pH、Oおよび栄養素を提供するために、培地調整容器524は、コントローラ526により制御される。幾つかの実施形態では、バイオリアクタ522も、コントローラ526により制御することができるが、他の実施形態では、バイオリアクタ522が、別個の灌流回路528に提供される。この場合、ポンプは、バイオリアクタ522の出口またはその付近でのO2の検出に基づいて、灌流回路528を通る培地の流量を制御するのに使用される。
【0099】
例示的な構成
以下は、開示された主題の構成の種々の態様の説明である。各態様は、開示された主題の種々の特徴、特性または利点のうちの1つ以上を含むことができる。これらの構成は、開示された主題の幾つかの態様を例示することを意図しており、考えられる全ての構成の包括的または網羅的な説明とみなされるべきではない。
【0100】
態様1は、細胞培養システムであって、バイオリアクタ容器と、バイオリアクタ容器内に配置され、細胞を培養するように構成された細胞培養マトリクスとを備え、細胞培養マトリクスが、第1の面と、第1の面とは反対側の第2の面と、第1の面と第2の面とを分離する厚さと、基材に形成され、基材の厚さを貫通した複数の開口とを備え、複数の開口が、基材の厚さを通る細胞培養培地、細胞または細胞副産物のうちの少なくとも1つの流れを可能にするように構成されている、細胞培養システムに関する。
【0101】
態様2は、基板が、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリビニルピロリドン、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンオキシド、ポリピロールおよびポリプロピレンオキシドのうちの少なくとも1つを含む、態様1記載の細胞培養システムに関する。
【0102】
態様3は、基材が、成形ポリマー格子シート、3D印刷格子シートおよび織布メッシュシートのうちの少なくとも1つを備える、態様1または2記載の細胞培養システムに関する。
【0103】
態様4は、基材が、1つ以上の繊維を含む織布メッシュを備える、態様3記載の細胞培養システムに関する。
【0104】
態様5は、1つ以上の繊維が、平坦、円形、長方形または多角形のうちの少なくとも1つの断面形状を有する、態様4記載の細胞培養システムに関する。
【0105】
態様6は、1つ以上の繊維が、モノフィラメント繊維およびマルチフィラメント繊維のうちの少なくとも一方を含む、態様4または5記載の細胞培養システムに関する。
【0106】
態様7は、1つ以上の繊維が、約50μm~約1000μm、約50μm~約600μm、約50μm~約400μm、約100μm~約325μmまたは約150μm~約275μmの第1の繊維直径を有する第1の繊維を含む、態様4から6までのいずれか1つ記載の細胞培養システムに関する。
【0107】
態様8は、1つ以上の繊維が、約50μm~約1000μm、約50μm~約600μm、約50μm~約400μm、約100μm~約325μmまたは約150μm~約275μmの第2の繊維直径を有する第2の繊維をさらに含む、態様7記載の細胞培養システムに関する。
【0108】
態様9は、第2の繊維直径が、第1の繊維直径とは異なる、態様8記載の細胞培養システムに関する。
【0109】
態様10は、複数の開口が、約100μm~約1000μm、約200μm~約900μmまたは約225μm~約800μmの開口直径を有する、態様1から7までのいずれか1つ記載の細胞培養システムに関する。
【0110】
態様11は、繊維直径が、約250μm~約300μmであり、開口直径が、約750μm~約800μmであり、または繊維直径が、約270μm~約276μmであり、開口直径が、約785μm~約795μmである、態様10記載の細胞培養システムに関する。
【0111】
態様12は、繊維直径が、約200μm~約230μmであり、開口直径が、約500μm~約550μmであり、または繊維直径が、約215μm~約225μmであり、開口直径が、約515μm~約530μmである、態様10記載の細胞培養システムに関する。
【0112】
態様13は、繊維直径が、約125μm~約175μmであり、開口直径が、約225μm~約275μmであり、または繊維直径が、約150μm~約165μmであり、開口直径が、約235μm~約255μmである、態様10記載の細胞培養システムに関する。
【0113】
態様14は、繊維直径に対する開口直径の比が、約1.0~約3.5、約1.25~約3.25、約1.4~約3.0、約1.5~約2.9、約1.5~約2.4または約2.4~約2.9である、態様10から13までのいずれか1つ記載の細胞培養システムに関する。
【0114】
態様15は、複数の開口が、正方形、長方形、菱形、変菱形、円形または楕円形である形状を有する開口を備える、態様1から14までのいずれか1つ記載の細胞培養システムに関する。
【0115】
態様16は、複数の開口が、規則的なパターンで配列されている、態様1から15までのいずれか1つ記載の細胞培養システムに関する。
【0116】
態様17は、細胞培養マトリクスが、単層基材を備える、態様1から16までのいずれか1つ記載の細胞培養システムに関する。
【0117】
態様18は、細胞培養マトリクスが、多層基材を備え、多層基材が、少なくとも第1の基材層と第2の基材層とを備え、第1の基材層が、第1の面と、第1の面とは反対側の第2の面とを備え、第2の基材層が、第3の面と、第3の面とは反対側の第4の面とを備え、第2の面が、第3の面に面している、態様1から17までのいずれか1つ記載の細胞培養システムに関する。
【0118】
態様19は、第1の基材層が第2の基材層に対して所定の位置合わせを有するように、多層基材が構成されている、態様18記載の細胞培養システムに関する。
【0119】
態様20は、第1の基材層上の繊維同士の交点が第2の基材層における開口に面するように、多層基材が構成されている、態様19記載の細胞培養システムに関する。
【0120】
態様21は、第1の基材層における開口が、第2の基材層における開口と少なくとも部分的に重なり合っている、態様19または20記載の細胞培養システムに関する。
【0121】
態様22は、第1の基材層における開口と第2の基材層における開口とが位置合わせされている、態様21記載の細胞培養システムに関する。
【0122】
態様23は、第1の基材層が第2の基材層に対してランダムな位置合わせを有するように、多層基材が構成されている、態様18記載の細胞培養システムに関する。
【0123】
態様24は、バイオリアクタ容器を通る培地のバルク流れ方向が第1および第2の面に対して平行または垂直であるように、細胞培養マトリクスが、バイオリアクタ容器内に配置されている、態様1から23までのいずれか1つ記載の細胞培養システムに関する。
【0124】
態様25は、細胞培養マトリクスが、バイオリアクタ容器内にランダムに充填された複数の基材を備える、態様1から24までのいずれか1つ記載の細胞培養システムに関する。
【0125】
態様26は、バイオリアクタ容器が充填床バイオリアクタである、態様1から25までのいずれか1つ記載の細胞培養システムに関する。
【0126】
態様27は、バイオリアクタ容器が、バイオリアクタ容器内に配置され、細胞培養マトリクスを収容する培養空間と、培養空間に流体を提供しまたは培養空間から流体を除去するように構成された1つ以上の開口とを備える、態様1から26までのいずれか1つ記載の細胞培養システムに関する。
【0127】
態様28は、1つ以上の開口が、培養空間の内部に流体を提供するように構成された入口と、バイオリアクタ容器の培養空間から流体を除去することを可能にするように構成された出口とを備える、態様27記載の細胞培養システムに関する。
【0128】
態様29は、バイオリアクタ容器が、入口を備える第1の端部と、第1の端部とは反対側にあり、出口を備える第2の端部とを備え、培養空間が、第1の端部と第2の端部との間に配置されている、態様28記載の細胞培養システムに関する。
【0129】
態様30は、細胞培養マトリクスが、培養空間の形状に対応する形状を有する、態様29記載の細胞培養システムに関する。
【0130】
態様31は、細胞培養マトリクスが、円筒状ロール構成のポリマーメッシュ材料を含む、態様1から30までのいずれか1つ記載の細胞培養システムに関する。
【0131】
態様32は、円筒状ロールの中心長手方向軸線が、培地の流れ方向に対して平行である、態様31記載の細胞培養システムに関する。
【0132】
態様33は、円筒状ロールが、円筒状ロールをほどくことにより、バイオリアクタ容器内の培養空間の形状に拡張するように構成されている、態様31または32記載の細胞培養システムに関する。
【0133】
態様34は、円筒状ロールが収縮状態にある間に培養空間内に挿入され、培養空間内に配置されたときに培養空間内で拡張するように、円筒状ロールが構成されている、態様31から33までのいずれか1つ記載の細胞培養システムに関する。
【0134】
態様35は、ポリマーメッシュ材料と培養空間の壁との間の摩擦力によりポリマーメッシュ材料が培養空間内の適所に保持されるように、円筒状ロールおよび培養空間が構成されている、態様31から34までのいずれか1つ記載の細胞培養システムに関する。
【0135】
態様36は、円筒状ロールが、バイオリアクタ容器における開口を通して培養空間内に挿入されるように構成されている、態様34記載の細胞培養システムに関する。
【0136】
態様37は、開口が、バイオリアクタ容器の入口および出口のうちの一方である、態様36記載の細胞培養システムに関する。
【0137】
態様38は、バイオリアクタ容器が、培養空間内に基材支持体を備え、基材支持体が、培養空間内で細胞培養マトリクスをガイドし、位置合わせしまたは固定するように構成されている、態様31から37までのいずれか1つ記載の細胞培養システムに関する。
【0138】
態様39は、基材支持体が、第1または第2の端部のうちの一方から第1または第2の端部のうちの他方に向かって延在する支持部材を備え、支持部材が円筒状ロールの中心長手方向軸線に対して平行であるように、円筒状ロールが、支持部材を取り囲むように構成されている、態様38記載の細胞培養システムに関する。
【0139】
態様40は、バイオリアクタ容器が、細胞培養中にバイオリアクタ容器の中心長手方向軸線を中心に回転するように構成されている、態様1から39までのいずれか1つ記載の細胞培養システムに関する。
【0140】
態様41は、中心長手方向軸線が、細胞培養中の重力方向に対して垂直である、態様40記載の細胞培養システムに関する。
【0141】
態様42は、基材がバイオリアクタ容器の回転中に細胞培養流体を通って移動するように、細胞培養システムが構成されている、態様40または41記載の細胞培養システムに関する。
【0142】
態様43は、細胞培養システムが、バイオリアクタ容器に操作可能に連結され、中心長手方向軸線を中心にバイオリアクタ容器を回転させるように構成された回転手段をさらに備える、態様40から42までのいずれか1つ記載の細胞培養システムに関する。
【0143】
態様44は、細胞培養マトリクスが、異なる幾何学形状の織布メッシュを備える複数の基材を備え、異なる幾何学形状が、繊維直径、開口直径または開口の幾何学形状のうちの少なくとも1つにおいて異なる、態様1から43までのいずれか1つ記載の細胞培養システムに関する。
【0144】
態様45は、異なる幾何学形状の織布メッシュが、バイオリアクタ容器内の所望の流れ特性に基づいて、所定の配置でバイオリアクタ容器内に配置されている、態様44記載の細胞培養システムに関する。
【0145】
態様46は、所望の流れ特性が、細胞培養マトリクスにわたる液体培地の均一な灌流および細胞培養マトリクスにわたる細胞増殖の分布のうちの少なくとも一方を含む、態様45記載の細胞培養システムに関する。
【0146】
態様47は、異なる幾何学形状の織布メッシュが、第1の幾何学形状を有する第1のメッシュと、第2の幾何学形状を有する第2のメッシュとを備え、所定の配置が、バルク流れ方向に関して、第1のメッシュが第2のメッシュの上流にあることを含む、態様45または46記載の細胞培養システムに関する。
【0147】
態様48は、所定の配置が、第2のメッシュのスタックの上流に配置された第1のメッシュのスタックを備える、態様47記載の細胞培養システムに関する。
【0148】
態様49は、所定の配置が、第1のメッシュのスタックと、第2のメッシュのスタックとを、バルク流れ方向に沿った交互の配置で備える、態様47または48記載の細胞培養システムに関する。
【0149】
態様50は、接着細胞または細胞副産物を回収するための手段をさらに備える、態様1から49までのいずれか1つ記載の細胞培養システムに関する。
【0150】
態様51は、細胞副産物が、タンパク質、抗体、ウイルス、ウイルスベクター、ウイルス様粒子(VLP)、微小胞、エキソソームおよび多糖類のうちの少なくとも1つを含む、態様50記載の細胞培養システムに関する。
【0151】
態様52は、基材が、官能化表面を備え、官能化表面が、ポリマーメッシュ材料への接着細胞の接着を改善するために物理的または化学的に改質されている、態様1から51までのいずれか1つ記載の細胞培養システムに関する。
【0152】
態様53は、細胞培養マトリクスが、メッシュの表面上に培養培地中の成分を吸着しまたは吸収するように構成された表面を備える、態様1から52までのいずれか1つ記載の細胞培養システムに関する。
【0153】
態様54は、細胞培養マトリクスが、ポリマーメッシュ材料の表面上の被覆を備え、被覆が、接着細胞の接着を促進するように構成されている、態様1から53までのいずれか1つ記載の細胞培養システムに関する。
【0154】
態様55は、細胞が、被覆に接着する、態様54記載の細胞培養システムに関する。
【0155】
態様56は、被覆が、細胞培養マトリクスへの細胞付着を促進するように構成された生物学的または合成生体活性分子である、態様54または55記載の細胞培養システムに関する。
【0156】
態様57は、被覆が、ヒドロゲル、コラーゲン、Matrigel(登録商標)、生体活性分子またはペプチドおよび生物学的タンパク質のうちの少なくとも1つである、態様54から56までのいずれか1つ記載の細胞培養システムに関する。
【0157】
態様58は、官能化表面がプラズマ処理されている、態様53から56までのいずれか1つ記載の細胞培養システムに関する。
【0158】
態様59は、細胞が、接着細胞、懸濁細胞および織布メッシュに緩く接着した接着細胞のうちの少なくとも1つを含む、態様1から58までのいずれか1つ記載の細胞培養システムに関する。
【0159】
態様60は、バイオリアクタ容器の入口に培地を供給するように構成された培地調整容器をさらに備える、態様1から59までのいずれか1つ記載の細胞培養システムに関する。
【0160】
態様61は、細胞培養マトリクスであって、基材を備え、基材が、第1の面と、第1の面とは反対側の第2の面と、第1の面と第2の面とを分離する厚さと、基材に形成され、基材の厚さを貫通した複数の開口とを備え、複数の開口が、基材の厚さを通る細胞培養培地、細胞または細胞産物のうちの少なくとも1つの流れを可能にするように構成されている、細胞培養マトリクスに関する。
【0161】
態様62は、基板が、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリビニルピロリドン、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンオキシド、ポリピロールおよびポリプロピレンオキシドのうちの少なくとも1つを含む、態様61記載の細胞培養マトリクスに関する。
【0162】
態様63は、基材が、成形ポリマー格子シート、3D印刷格子シートおよび織布メッシュシートのうちの少なくとも1つを備える、態様61または62記載の細胞培養マトリクスに関する。
【0163】
態様64は、基材が、1つ以上の繊維を含む織布メッシュを備える、態様63記載の細胞培養マトリクスに関する。
【0164】
態様65は、1つ以上の繊維が、平坦、円形、長方形または多角形のうちの少なくとも1つの断面形状を有する、態様64記載の細胞培養マトリクスに関する。
【0165】
態様66は、1つ以上の繊維が、モノフィラメント繊維およびマルチフィラメント繊維のうちの少なくとも一方を含む、態様64または65記載の細胞培養マトリクスに関する。
【0166】
態様67は、1つ以上の繊維が、約50μm~約1000μm、約50μm~約600μm、約50μm~約400μm、約100μm~約325μmまたは約150μm~約275μmの第1の繊維直径を有する第1の繊維を含む、態様64から66までのいずれか1つ記載の細胞培養マトリクスに関する。
【0167】
態様68は、1つ以上の繊維が、約50μm~約1000μm、約50μm~約600μm、約50μm~約400μm、約100μm~約325μmまたは約150μm~約275μmの第2の繊維直径を有する第2の繊維をさらに含む、態様67記載の細胞培養マトリクスに関する。
【0168】
態様69は、第2の繊維直径が、第1の繊維直径とは異なる、態様68記載の細胞培養マトリクスに関する。
【0169】
態様70は、複数の開口が、約100μm~約1000μm、約200μm~約900μmまたは約225μm~約800μmの開口直径を有する、態様61から69までのいずれか1つ記載の細胞培養マトリクスに関する。
【0170】
態様71は、繊維直径が、約250μm~約300μmであり、開口直径が、約750μm~約800μmであり、または繊維直径が、約270μm~約276μmであり、開口直径が、約785μm~約795μmである、態様70記載の細胞培養マトリクスに関する。
【0171】
態様72は、繊維直径が、約200μm~約230μmであり、開口直径が、約500μm~約550μmであり、または繊維直径が、約215μm~約225μmであり、開口直径が、約515μm~約530μmである、態様70記載の細胞培養マトリクスに関する。
【0172】
態様73は、繊維直径が、約125μm~約175μmであり、開口直径が、約225μm~約275μmであり、または繊維直径が、約150μm~約165μmであり、開口直径が、約235μm~約255μmである、態様70記載の細胞培養マトリクスに関する。
【0173】
態様74は、繊維直径に対する開口直径の比が、約1.0~約3.5、約1.25~約3.25、約1.4~約3.0、約1.5~約2.9、約1.5~約2.4または約2.4~約2.9である、態様70から73までのいずれか1つ記載の細胞培養マトリクスに関する。
【0174】
態様75は、複数の開口が、正方形、長方形、菱形、変菱形、円形または楕円形である形状を有する開口を備える、態様61から74までのいずれか1つ記載の細胞培養マトリクスに関する。
【0175】
態様76は、複数の開口が、規則的なパターンで配列されている、態様61から75までのいずれか1つ記載の細胞培養マトリクスに関する。
【0176】
態様77は、細胞培養マトリクスが、単層基材を備える、態様61から76までのいずれか1つ記載の細胞培養マトリクスに関する。
【0177】
態様78は、細胞培養マトリクスが、多層基材を備え、多層基材が、少なくとも第1の基材層と第2の基材層とを備え、第1の基材層が、第1の面と、第1の面とは反対側の第2の面とを備え、第2の基材層が、第3の面と、第3の面とは反対側の第4の面とを備え、第2の面が、第3の面に面している、態様61から77までのいずれか1つ記載の細胞培養マトリクスに関する。
【0178】
態様79は、第1の基材層が第2の基材層に対して所定の位置合わせを有するように、多層基材が構成されている、態様78記載の細胞培養マトリクスに関する。
【0179】
態様80は、第1の基材層上の繊維同士の交点が第2の基材層における開口に面するように、多層基材が構成されている、態様79記載の細胞培養マトリクスに関する。
【0180】
態様81は、第1の基材層における開口が、第2の基材層における開口と少なくとも部分的に重なり合っている、態様79または80記載の細胞培養マトリクスに関する。
【0181】
態様82は、第1の基材層における開口と第2の基材層における開口とが位置合わせされている、態様81記載の細胞培養マトリクスに関する。
【0182】
態様83は、第1の基材層が第2の基材層に対してランダムな位置合わせを有するように、多層基材が構成されている、態様78記載の細胞培養マトリクスに関する。
【0183】
態様84は、細胞培養マトリクスが、複数の基材を備え、複数の基材の各々が、複数の基材の他のものに対してランダムに配向している、態様61から83までのいずれか1つ記載の細胞培養マトリクスに関する。
【0184】
態様85は、細胞培養マトリクスが、複数の基材を積層配置で備える、態様61から83までのいずれか1つ記載の細胞培養マトリクスに関する。
【0185】
態様86は、複数の基材のうちの1つの第1および第2の面が、積層配置で他の基材の第1および第2の面に対して実質的に平行である、態様85記載の細胞培養マトリクスに関する。
【0186】
態様87は、基材が、円筒状ロール構成にある、態様61から83までのいずれか1つ記載の細胞培養マトリクスに関する。
【0187】
態様88は、円筒状ロールが、培養チャンバ内に配置されたときに、円筒状ロールを部分的にほどくことにより、バイオリアクタ容器内の培養チャンバの形状に拡張するように構成されている、態様87記載の細胞培養マトリクスに関する。
【0188】
態様89は、円筒状ロールが収縮状態にある間に培養空間内に挿入され、培養空間内に配置されたときに培養空間内で拡張するように、円筒状ロールが構成されている、態様88記載の細胞培養マトリクスに関する。
【0189】
態様90は、細胞培養マトリクスが、異なる幾何学形状の織布メッシュを備える複数の基材を備え、異なる幾何学形状が、繊維直径、開口直径または開口の幾何学形状のうちの少なくとも1つにおいて異なる、態様61から89までのいずれか1つ記載の細胞培養マトリクスに関する。
【0190】
態様91は、異なる幾何学形状の織布メッシュが、バイオリアクタ容器内の所望の流れ特性に基づいて、所定の配置で配列されている、態様90記載の細胞培養マトリクスに関する。
【0191】
態様92は、所望の流れ特性が、細胞培養マトリクスにわたる液体培地の均一な灌流および細胞培養マトリクスにわたる細胞増殖の分布のうちの少なくとも一方を含む、態様91記載の細胞培養マトリクスに関する。
【0192】
態様93は、異なる幾何学形状の織布メッシュが、第1の幾何学形状を有する第1のメッシュと、第2の幾何学形状を有する第2のメッシュとを備え、所定の配置が、細胞培養マトリクスを通る細胞培養培地の所望のバルク流れ方向に関して、第1のメッシュが第2のメッシュの上流にあることを含む、態様91または92記載の細胞培養マトリクスに関する。
【0193】
態様94は、所定の配置が、第2のメッシュのスタックの上流に配置された第1のメッシュのスタックを備える、態様93記載の細胞培養マトリクスに関する。
【0194】
態様95は、所定の配置が、第1のメッシュのスタックと、第2のメッシュのスタックとを、バルク流れ方向に沿った交互の配置で備える、態様93または94記載の細胞培養マトリクスに関する。
【0195】
態様96は、細胞培養マトリクスが、細胞、タンパク質、抗体、ウイルス、ウイルスベクター、ウイルス様粒子(VLP)、微小胞、エキソソームおよび多糖類のうちの少なくとも1つを培養しかつ/または回収するように構成されている、態様61から95までのいずれか1つ記載の細胞培養マトリクスに関する。
【0196】
態様97は、基材が、官能化表面を備え、官能化表面が、ポリマーメッシュ材料への接着細胞の接着を改善するために物理的または化学的に改質されている、態様61から96までのいずれか1つ記載の細胞培養マトリクスに関する。
【0197】
態様98は、細胞培養マトリクスが、メッシュの表面上に培養培地中の成分を吸着しまたは吸収するように構成された表面を備える、態様61から97までのいずれか1つ記載の細胞培養マトリクスに関する。
【0198】
態様99は、細胞培養マトリクスが、ポリマーメッシュ材料の表面上の被覆を備え、被覆が、接着細胞の接着を促進するように構成されている、態様61から98までのいずれか1つ記載の細胞培養マトリクスに関する。
【0199】
態様100は、細胞が、被覆に接着する、態様99記載の細胞培養マトリクスに関する。
【0200】
態様101は、被覆が、細胞培養マトリクスへの細胞付着を促進するように構成された生物学的または合成生体活性分子である、態様99または100記載の細胞培養マトリクスに関する。
【0201】
態様102は、被覆が、ヒドロゲル、コラーゲン、Matrigel(登録商標)、生体活性分子またはペプチドおよび生物学的タンパク質のうちの少なくとも1つである、態様99から101までのいずれか1つ記載の細胞培養マトリクスに関する。
【0202】
態様103は、官能化表面がプラズマ処理されている、態様99から102までのいずれか1つ記載の細胞培養マトリクスに関する。
【0203】
態様104は、細胞が、接着細胞、懸濁細胞および織布メッシュに緩く接着した接着細胞のうちの少なくとも1つを含む、態様61から103までのいずれか1つ記載の細胞培養マトリクスに関する。
【0204】
態様105は、バイオリアクタ内で細胞を培養する方法であって、バイオリアクタ容器を提供するステップであって、バイオリアクタ容器が、バイオリアクタ容器内の細胞培養チャンバと、細胞培養チャンバ内に配置され、細胞を培養するように構成された細胞培養マトリクスとを備え、細胞培養マトリクスが、基材を備え、基材が、第1の面と、第1の面とは反対側の第2の面と、第1の面と第2の面とを分離する厚さと、基材に形成され、基材の厚さを貫通した複数の開口とを備える、提供するステップと、細胞培養マトリクス上に細胞を播種するステップと、細胞培養マトリクス上で細胞を培養するステップと、細胞の培養の産物を回収するステップとを含み、基材における複数の開口が、基材の厚さを通る細胞培養培地、細胞または細胞産物のうちの少なくとも1つの流れを可能にするように構成されている、方法に関する。
【0205】
態様106は、基材が、成形ポリマー格子シート、3D印刷格子シートおよび織布メッシュシートのうちの少なくとも1つを備える、態様105記載の方法に関する。
【0206】
態様107は、基材が、ポリマー材料を含む、態様105または106記載の方法に関する。
【0207】
態様108は、ポリマー材料が、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリビニルピロリドン、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンオキシド、ポリピロールおよびポリプロピレンオキシドのうちの少なくとも1つである、態様107記載の方法に関する。
【0208】
態様109は、播種するステップが、細胞を基材に付着させるステップを含む、態様105から108までのいずれか1つ記載の方法に関する。
【0209】
態様110は、播種するステップが、細胞播種物を細胞培養マトリクスに直接注入するステップを含む、態様105から109までのいずれか1つ記載の方法に関する。
【0210】
態様111は、細胞播種物をバイオリアクタ容器における細胞播種物注入ポートを通して注入する、態様110記載の方法に関する。
【0211】
態様112は、細胞播種物の容量が、細胞培養チャンバの空隙容量にほぼ等しい、態様110または111記載の方法に関する。
【0212】
態様113は、細胞播種物を注入した後に培養チャンバを通して細胞培地を灌流するステップをさらに含む、態様110から112までのいずれか1つ記載の方法に関する。
【0213】
態様114は、培養中に細胞に細胞培養培地および酸素のうちの少なくとも一方を供給するステップをさらに含む、態様105から113までのいずれか1つ記載の方法に関する。
【0214】
態様115は、細胞培養培地を供給するステップが、細胞培養チャンバを通って、基材にわたって細胞培養培地を流すステップを含む、態様114記載の方法に関する。
【0215】
態様116は、細胞培養培地を供給するステップが、バイオリアクタ容器に流体連通された培地調整容器を提供するステップと、培地調整容器からバイオリアクタ容器に細胞培養培地を供給するステップとを含む、態様114または115記載の方法に関する。
【0216】
態様117は、培養中または培養後に培地の少なくとも一部をバイオリアクタ容器から回収し、培地調整容器に戻す、態様116記載の方法に関する。
【0217】
態様118は、細胞培養チャンバへの細胞培養培地の流れを制御するステップをさらに含み、細胞培養培地が、細胞、細胞培養栄養素または酸素のうちの少なくとも1つを含む、態様105から117までのいずれか1つ記載の方法に関する。
【0218】
態様119は、バイオリアクタ容器内の細胞培養培地、細胞および/もしくは細胞産物またはバイオリアクタ容器からの出力を分析するステップをさらに含む、態様105から118までのいずれか1つ記載の方法に関する。
【0219】
態様120は、分析するステップが、pH、pO、[グルコース]、pH、pO、[グルコース]および流量のうちの少なくとも1つを測定するステップを含み、pH、pOおよび[グルコース]を細胞培養チャンバ内で測定し、pH、pOおよび[グルコース]を細胞培養チャンバまたはバイオリアクタ容器の出口で測定する、態様119記載の方法に関する。
【0220】
態様121は、細胞培養チャンバへの細胞培養培地の流れを細胞培養培地、細胞および/または細胞産物の分析結果に少なくとも部分的に基づいて制御する、態様119または120記載の方法に関する。
【0221】
態様122は、pH≧pH2min、pO≧pO2minおよび[グルコース]≧[グルコース]2minのうち少なくとも1つである場合、細胞培養チャンバへの細胞培養培地の灌流流量を現在の速度で継続し、pH2min、pO2minおよび[グルコース]2minが、細胞培養システム設計に基づいて予め決定されている、態様120または121記載の方法に関する。
【0222】
態様123は、現在の流量が細胞培養システムの所定の最大流量以下である場合、灌流流量を増加させる、態様120から122までのいずれか1つ記載の方法に関する。
【0223】
態様124は、現在の流量が細胞培養システムの所定の最大流量以下でない場合、細胞培養システムのコントローラが、pH2min、pO2minおよび[グルコース]2min、pH、pOおよび[グルコース]ならびにバイオリアクタ容器の高さのうちの少なくとも1つを再評価する、態様120から123までのいずれか1つ記載の方法に関する。
【0224】
態様125は、細胞が、少なくとも約24時間、少なくとも約48時間または少なくとも約72時間培養した後、約90%超または約95%超の生存率を有する、態様105から124までのいずれか1つ記載の方法に関する。
【0225】
態様126は、細胞が、接着細胞、懸濁細胞および細胞培養マトリクスに緩く接着した接着細胞のうちの少なくとも1つを含む、態様105から125までのいずれか1つ記載の方法に関する。
【0226】
態様127は、細胞を培養するステップの産物が、細胞、タンパク質、抗体、ウイルス、ウイルスベクター、ウイルス様粒子(VLP)、微小胞、エキソソームおよび多糖類のうちの少なくとも1つを含む、態様105から126までのいずれか1つ記載の方法に関する。
【0227】
態様128は、細胞を培養するステップの産物が、少なくとも80%生存、少なくとも85%生存、少なくとも90%生存、少なくとも91%生存、少なくとも92%生存、少なくとも93%生存、少なくとも94%生存、少なくとも95%生存、少なくとも96%生存、少なくとも97%生存、少なくとも98%生存または少なくとも99%生存している細胞を含む、態様127記載の方法に関する。
【0228】
態様129は、バイオリアクタシステムであって、少なくとも1つの貯留器を備える細胞培養容器と、少なくとも1つの貯留器内に配置された細胞培養マトリクスとを備え、細胞培養マトリクスは、細胞を接着するように構成された表面を有する複数の織り合わされた繊維を有する織布基材を備える、バイオリアクタシステムに関する。
【0229】
態様130は、織布基材が、複数の織り合わされた繊維の均一な配置を備える、態様129記載のシステムに関する。
【0230】
態様131は、織布基材が、複数の繊維の間に配置された複数の開口を備える、態様129または130記載のシステムに関する。
【0231】
態様132は、複数の繊維が、ポリマー繊維を含む、態様129から131までのいずれか1つ記載のシステムに関する。
【0232】
態様133は、ポリマー繊維が、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリビニルピロリドン、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンオキシド、ポリピロールおよびポリプロピレンオキシドのうちの少なくとも1つを含む、態様132記載のシステムに関する。
【0233】
態様134は、細胞培養マトリクスが、複数の織布基材を備える、態様129から133までのいずれか1つ記載のシステムに関する。
【0234】
態様135は、複数の基材の各基材が、第1の面と、第1の面とは反対側の第2の面と、第1の面と第2の面とを分離する厚さとを備え、複数の開口が、基材の厚さを貫通している、態様134記載のシステムに関する。
【0235】
態様136は、基材の第1および第2の面の一方が、隣接する基材の第1または第2の面の他方に隣接するように、複数の基材の基材同士が、互いに隣接して配置されている、態様134または135記載のシステムに関する。
【0236】
態様137は、複数の基材の少なくとも一部が、スペーサ材料または障壁により分離されていない、態様134から136までのいずれか1つ記載のシステムに関する。
【0237】
態様138は、複数の基材の少なくとも一部が、互いに物理的に接触している、態様134から137までのいずれか1つ記載のシステムに関する。
【0238】
態様139は、細胞培養容器が、少なくとも1つのポートであって、少なくとも1つのポートを介して少なくとも1つの貯留器に材料を供給しまたは少なくとも1つの貯留器から材料を除去するように構成された少なくとも1つのポートを備える、態様129から138までのいずれか1つ記載のシステムに関する。
【0239】
態様140は、少なくとも1つのポートが、少なくとも1つの貯留器に材料を供給するための少なくとも1つの入口と、少なくとも1つの貯留器から材料を除去するための少なくとも1つの出口とを備える、態様139記載のシステムに関する。
【0240】
態様141は、材料が、培地、細胞または細胞産物のうちの少なくとも1つを含む、態様140記載のシステムに関する。
【0241】
態様142は、バイオリアクタシステムであって、第1の端部と、第2の端部と、第1の端部と第2の端部との間の少なくとも1つの貯留器とを備える細胞培養容器と、少なくとも1つの貯留器内に配置され、細胞を接着するように構成された表面を有する複数の織り合わされた繊維をそれぞれ備える複数の織布基材を備える細胞培養マトリクスとを備え、バイオリアクタシステムが、第1の端部から第2の端部への流れ方向に少なくとも1つの貯留器を通って材料を流すように構成されており、各織布基材が、他の織布基材の各々に対して実質的に平行であり、かつ流れ方向に対して実質的に垂直であるように、複数の織布基材の基材が積層されている、バイオリアクタシステムに関する。
【0242】
態様143は、基材の各々が、第1の面と、第1の面とは反対側の第2の面と、第1の面と第2の面とを分離する厚さとを備え、複数の開口が、基材の厚さを貫通している、態様142記載のシステムに関する。
【0243】
態様144は、バイオリアクタシステムであって、第1の端部と、第2の端部と、第1の端部と第2の端部との間の少なくとも1つの貯留器とを備える細胞培養容器と、少なくとも1つの貯留器内に配置され、細胞を接着するように構成された表面を有する複数の織り合わされた繊維をそれぞれ備える複数の織布基材を備える細胞培養マトリクスとを備え、バイオリアクタシステムが、第1の端部から第2の端部への流れ方向に少なくとも1つの貯留器を通って材料を流すように構成されており、各織布基材が、他の織布基材の各々に対して実質的に平行であり、かつ流れ方向に対して実質的に平行であるように、複数の織布基材の基材が積層されている、バイオリアクタシステムに関する。
【0244】
態様145は、基材の各々が、第1の面と、第1の面とは反対側の第2の面と、第1の面と第2の面とを分離する厚さとを備え、複数の開口が、基材の厚さを貫通している、態様144記載のシステムに関する。
【0245】
態様146は、バイオリアクタシステムであって、第1の端部と、第2の端部と、第1の端部と第2の端部との間の少なくとも1つの貯留器とを備える細胞培養容器と、少なくとも1つの貯留器内に配置され、細胞を接着するように構成された表面を有する複数の織り合わされた繊維を備える織布基材を備える細胞培養マトリクスとを備え、少なくとも1つの貯留器および細胞培養マトリクスのうちの少なくとも一方が、細胞培養中にバイオリアクタ容器の中心長手方向軸線を中心に回転するように構成されている、バイオリアクタシステムに関する。
【0246】
態様147は、織布基材が、バイオリアクタ容器の中心長手方向軸線を少なくとも部分的に取り囲む円筒状基材として、少なくとも1つのリザーバ内に配置されている、態様146記載のシステムに関する。
【0247】
態様148は、バイオリアクタシステムが、第1の端部から第2の端部への流れ方向に少なくとも1つの貯留器を通って材料を流すように構成されている、態様146または147記載のシステムに関する。
【0248】
態様149は、円筒状基材の中心長手方向軸線が、培地の流れ方向に対して平行である、態様148記載のシステムに関する。
【0249】
態様150は、円筒状基材が、巻かれた織布基材を備え、巻かれた織布基材が、巻かれた織布基材の解放により、少なくとも1つの貯留器の壁と接触するように拡張するように構成されている、態様146から149までのいずれか1つ記載のシステムに関する。
【0250】
態様151は、巻かれた織布基材が、細胞培養容器内の少なくとも1つの貯留器の内部の形状に拡張するように構成されている、態様146から150までのいずれか1つ記載のシステムに関する。
【0251】
態様152は、巻かれた織布基材が、収縮した巻かれた状態にある間に培養空間内に挿入され、貯留器内に配置されたときに貯留器内で拡張するように構成されている、態様151記載のシステムに関する。
【0252】
態様153は、織布基材と貯留器の壁との間の摩擦力により織布基材が貯留器内の実質的に適所に保持されるように、巻かれた織布基材および貯留器が構成されている、態様151または152記載のシステムに関する。
【0253】
態様154は、巻かれた織布基材が、細胞培養容器における開口を通して貯留器内に挿入されるように構成されている、態様151から153までのいずれか1つ記載のシステムに関する。
【0254】
態様155は、開口が、細胞培養容器の入口および出口のうちの一方である、態様154記載のシステムに関する。
【0255】
態様156は、細胞培養容器が、貯留器内に基材支持体を備え、基材支持体が、培養空間内で織布基材をガイドし、位置合わせしまたは固定するように構成されている、態様146から155までのいずれか1つ記載のシステムに関する。
【0256】
態様157は、基材支持体が、第1または第2の端部のうちの一方から第1または第2の端部のうちの他方に向かって延在する支持部材を備え、支持部材が、巻かれた織布基材の中心長手方向軸線に対して平行であるように、巻かれた織布基材が、支持部材の周囲の少なくとも一部を取り囲むように構成されている、態様156記載のシステムに関する。
【0257】
態様158は、中心長手方向軸線が、細胞培養中の重力方向に対して垂直である、態様146から157までのいずれか1つ記載のシステムに関する。
【0258】
態様159は、細胞培養容器の回転中に基材が細胞培養流体を通って移動するように、バイオリアクタシステムが構成されている、態様146から158までのいずれか1つ記載のシステムに関する。
【0259】
態様160は、バイオリアクタシステムが、細胞培養容器に操作可能に連結され、中心長手方向軸線を中心に細胞培養容器を回転させるように構成された回転手段をさらに備える、態様146から159までのいずれか1つ記載のシステムに関する。
【0260】
態様161は、細胞培養マトリクスであって、織り合わされた複数の繊維と、複数の繊維の間に配置された複数の開口とを備える織布基材を備え、繊維がそれぞれ、細胞を接着するように構成された表面を備える、細胞培養マトリクスに関する。
【0261】
態様162は、繊維の表面が、この表面に細胞を剥離可能に接着するように構成されている、態様161記載のマトリクスに関する。
【0262】
態様163は、複数の繊維が、ポリマー繊維を含む、態様161または162記載のマトリクスに関する。
【0263】
態様164は、ポリマー繊維が、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリビニルピロリドン、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンオキシド、ポリピロールおよびポリプロピレンオキシドのうちの少なくとも1つを含む、態様163記載のマトリクスに関する。
【0264】
態様165は、細胞培養マトリクスが、複数の織布基材をさらに備える、態様161から164までのいずれか1つ記載のマトリクスに関する。
【0265】
態様166は、複数の基材の各基材が、第1の面と、第1の面とは反対側の第2の面と、第1の面と第2の面とを分離する厚さとを備え、複数の開口が、基材の厚さを貫通している、態様165記載のマトリクスに関する。
【0266】
態様167は、基材の第1および第2の面の一方が、隣接する基材の第1または第2の面の他方に隣接するように、複数の基材の基材同士が、互いに隣接して配置されている、態様165または166記載のマトリクスに関する。
【0267】
態様168は、複数の基材の少なくとも一部が、スペーサ材料または障壁により分離されていない、態様165から167までのいずれか1つ記載のマトリクスに関する。
【0268】
態様169は、複数の基材の少なくとも一部が、互いに物理的に接触している、態様165から168までのいずれか1つ記載のマトリクスに関する。
【0269】
態様170は、バイオリアクタシステムであって、培地入口と、培地出口と、細胞培養空間とを備える容器を備え、細胞培養空間が、容器の内部に配置されていて、培地入口と培地出口との間で流体連通しており、細胞培養空間が、細胞培養基材セクションと、細胞培養基材セクションと培地出口との間に配置されたスペーサセクションとを備え、細胞培養空間が、細胞培養基材を充填床構成で収容するように構成されている、バイオリアクタシステムに関する。
【0270】
態様171は、細胞培養基材が、態様61から104までのいずれか1つ記載の細胞培養マトリクスを備える、態様170記載のバイオリアクタシステムに関する。
【0271】
態様172は、培地入口と細胞培養空間との間に配置された流れ分配プレートをさらに備える、態様170または171記載のバイオリアクタシステムに関する。
【0272】
態様173は、細胞培養空間とスペーサセクションとの間に配置された充填床保持層をさらに備える、態様170から172までのいずれか1つ記載のバイオリアクタシステムに関する。
【0273】
態様174は、培地出口と細胞培養空間との間に配置されたスペーサインサートをさらに備える、態様170から173までのいずれか1つ記載のバイオリアクタシステムに関する。
【0274】
態様175は、スペーサインサートが、培地出口と充填床保持層との間に配置されている、態様174記載のバイオリアクタシステムに関する。
【0275】
定義
「完全に(wholly)合成の」または「完全に(fully)合成の」は、全体が合成の供給源材料から構成され、任意の動物由来材料または動物起源材料を欠く、細胞培養物品、例えば、培養容器のマイクロキャリアまたは表面を指す。開示された完全に合成の細胞培養物品は、異種混入のリスクを排除する。
【0276】
「含む(include)」、「含む(includes)」または同様の用語は包含するであること、すなわち、包含的であり、排他的ではないことを意味するが、これらに限定されない。
【0277】
「ユーザ」は、本明細書に開示されたシステム、方法、物品またはキットを使用する者を指し、細胞または細胞産物を回収するために細胞を培養している者または本明細書における実施形態に従って培養されかつ/または回収された細胞または細胞産物を使用している者を含む。
【0278】
例えば、本開示の実施形態を説明する際に利用される組成物内の成分の量、濃度、体積、処理温度、処理時間、収率、流量、圧力、粘度および同様の値ならびにそれらの範囲またはコンポーネントの寸法および同様の値ならびにそれらの範囲を修飾する「約」は、例えば、材料、組成物、複合体、濃縮物、構成部品、製造物品または使用配合物を調製するのに使用される典型的な測定および取扱い手法により、これらの手法における不注意な誤差により、方法を実施するのに使用される出発材料または成分の製造、供給源または純度の差によりかつ同様の考慮事項により生じる場合がある数量の変動を指す。また、「約」という用語は、特定の初期濃度を有する組成物もしくは配合物または混合物の劣化により異なる量および特定の初期濃度を有する組成物もしくは配合物または混合物を混合しまたは加工することにより異なる量も包含する。
【0279】
「任意の」または「場合により」は、後ろに記載された事象または状況が生じる場合がありまたは生じない場合があることを意味し、その記載がその事象または状況が生じる場合と、生じない場合を含むことを意味する。
【0280】
本明細書で使用する場合、不定冠詞「a」または「an」およびその対応する定冠詞「the」は、特に断らない限り、少なくとも1つまたは1つ以上を意味する。
【0281】
当業者に周知の略語を使用することができる(例えば、時間(hour)または時間(hours)について「h」または「hrs」、グラムについて「g」または「gm」、ミリリットルについて「mL」、室温について「rt」、ナノメートルについて「nm」および同様の略語)。
【0282】
コンポーネント、成分、添加剤、寸法、条件および同様の態様ならびにそれらの範囲について開示された特定の好ましい値は、単なる例示であり、他の定義された値または定義された範囲内の他の値を排除しない。本開示のシステム、キットおよび方法は、明示的または暗示的な中間値および範囲を含む、本明細書に記載された値、特定の値、より特定の値および好ましい値の任意の値または任意の組み合わせを含むことができる。
【0283】
特に明記しない限り、本明細書で説明された任意の方法は、そのステップが特定の順序で行われることを必要とすると解釈されることを決して意図するものではない。したがって、方法の請求項が、そのステップに続ける順序を実際に言及していない場合またはこのステップが特定の順序に限定されることが特許請求の範囲もしくは説明に何等かの方法で具体的に記載されていない場合、任意の特定の順序を推論することを決して意図するものではない。
【0284】
開示された実施形態の精神または範囲から逸脱することなく、種々の修正および変形を行うことができることは、当業者に明らかである。当業者であれば、実施形態の精神および要旨を組み込んだ開示された実施形態の修正、組み合わせ、部分組み合わせおよび変形を行うことができるため、開示された実施形態は、添付の特許請求の範囲およびその均等物の範囲内の全てを含むものと解釈されるべきである。
【0285】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0286】
実施形態1
固定床バイオリアクタシステムであって、
培地入口、培地出口、および前記培地入口と前記培地出口との間に配置され、前記培地入口と前記培地出口とに流体連通している内部空洞を備える容器と、
前記培地入口と前記培地出口との間の前記内部空洞内に充填床構成で配置され、複数の多孔質ディスクを積層配置で備える細胞培養基材と
を備え、
前記内部空洞は、細胞培養セクションおよびスペーサセクションを備え、前記細胞培養基材は、前記細胞培養セクションを画定しており、前記スペーサセクションは、前記細胞培養セクションと前記培地出口との間に配置されており、
前記複数の多孔質ディスクの各々は、細胞を培養するように構成された表面を備える、
固定床バイオリアクタシステム。
【0287】
実施形態2
前記内部空洞内で前記細胞培養基材と前記培地出口との間に配置され、相互間に前記スペーサセクションを画定するスペーサをさらに備え、前記スペーサは、前記細胞培養基材を前記培地出口から所定の距離だけ離間させ、前記細胞培養基材を前記内部空洞の前記細胞培養セクションに閉じ込めるように構成されている、実施形態1記載の固定床バイオリアクタシステム。
【0288】
実施形態3
前記スペーサは、前記スペーサセクションの長さに対して平行な方向に延在する複数のスペーサ部材を備える、実施形態2記載の固定床バイオリアクタシステム。
【0289】
実施形態4
前記細胞培養基材と前記スペーサとの間に配置された充填床保持器をさらに備え、前記充填床保持器は、前記細胞培養基材の頂部に構造的支持を提供するように構成されている、実施形態2記載の固定床バイオリアクタシステム。
【0290】
実施形態5
前記充填床保持器は、多孔質で実質的に剛性であり、前記内部空洞の幅の実質的な部分にわたって延在している、実施形態4記載の固定床バイオリアクタシステム。
【0291】
実施形態6
前記複数の多孔質ディスクの各ディスクは、第1の面と、前記第1の面とは反対側の第2の面と、前記第1の面と前記第2の面とを分離するディスク厚さと、前記ディスクに形成され、前記ディスク厚さを貫通した複数の開口とを備え、
前記複数の開口は、前記細胞培養基材を通る細胞培養培地、細胞または細胞副産物のうちの少なくとも1つの流れを可能にするように構成されている、
実施形態1記載の固定床バイオリアクタシステム。
【0292】
実施形態7
前記培地入口と前記細胞培養セクションとの間に配置された入口分配プレートをさらに備え、前記入口分配プレートは、前記培地入口から前記内部空洞に入る流体を前記細胞培養基材の領域にわたって分配するように構成されている、実施形態1記載の固定床バイオリアクタシステム。
【0293】
実施形態8
前記スペーサセクションと前記培地出口との間に配置された出口分配プレートをさらに備える、実施形態1記載の固定床バイオリアクタシステム。
【0294】
実施形態9
前記細胞培養基材と前記スペーサセクションとの間に配置された充填床保持器をさらに備え、前記充填床保持器は、前記細胞培養基材の頂部に構造的支持を提供するように構成されている、実施形態1記載の固定床バイオリアクタシステム。
【0295】
実施形態10
前記充填床保持器は、多孔質で実質的に剛性であり、前記内部空洞の幅の実質的な部分にわたって延在している、実施形態9記載の固定床バイオリアクタシステム。
【0296】
実施形態11
前記内部空洞内で前記充填床保持器と前記培地出口との間に配置され、相互間に前記スペーサセクションを画定するスペーサをさらに備え、前記スペーサは、前記細胞培養基材を前記培地出口から所定の距離だけ離間させ、前記細胞培養基材を前記内部空洞の前記細胞培養セクションに閉じ込めるように構成されている、実施形態9記載の固定床バイオリアクタシステム。
【0297】
実施形態12
前記充填床保持器は、剛性のある格子構造である、実施形態9記載の固定床バイオリアクタシステム。
【0298】
実施形態13
前記スペーサは、調整可能な長さを有し、前記細胞培養セクションと前記培地出口との間の多様な所定の距離を維持するために調整可能であるように構成されており、それにより、前記細胞培養セクションに収容することができる前記細胞培養基材内の前記多孔質ディスクの数を変化させることができる、実施形態2記載の固定床バイオリアクタシステム。
【0299】
実施形態14
異なる長さの複数の取外し可能なスペーサをさらに備え、前記複数の取外し可能なスペーサの各々は、前記細胞培養セクションと前記培地出口との間の、スペーサ同士により維持される距離とは異なる所定の距離を維持するために、前記スペーサセクションに配置されるように構成されており、それにより、前記細胞培養セクションに収容することができる前記細胞培養基材内の前記多孔質ディスクの数を、前記スペーサセクションに配置された前記スペーサの長さに基づいて変化させることができる、実施形態1記載の固定床バイオリアクタシステム。
【0300】
実施形態15
前記細胞培養基材と前記培地入口との間に配置された少なくとも1つの多孔質スペーサディスクをさらに備える、実施形態1記載の固定床バイオリアクタシステム。
【0301】
実施形態16
前記少なくとも1つの多孔質スペーサディスクは、スペーサディスク孔径を有し、前記複数の多孔質ディスクの各々は、前記スペーサディスク孔径がディスク孔径より大きくなるようなディスク孔径を有する、実施形態15記載の固定床バイオリアクタシステム。
【0302】
実施形態17
前記少なくとも1つの多孔質スペーサディスクは、第1のスペーサディスク孔径を有する第1のディスクと、第2のスペーサディスク孔径を有する第2のディスクとを備え、前記第1のスペーサディスク孔径は、前記第2のスペーサディスク孔径とは異なる、実施形態15記載の固定床バイオリアクタシステム。
【0303】
実施形態18
前記複数の多孔質ディスクは、織布メッシュの複数の層を備える、実施形態1記載の固定床バイオリアクタシステム。
【0304】
実施形態19
前記織布メッシュの複数の層の各々は、規定された実質的に均一な配列の孔を有する、実施形態18記載の固定床バイオリアクタシステム。
【0305】
実施形態20
前記織布メッシュの複数の層の各層は、複数の織り合わされた繊維を備え、前記複数の織り合わされた繊維は、第1の方向に互いに平行に延在する繊維の第1の群と、第2の方向に互いに平行に延在する繊維の第2の群とを備える、実施形態18記載の固定床バイオリアクタシステム。
【0306】
実施形態21
前記第1の方向は、前記第2の方向に対して実質的に垂直である、実施形態20記載の固定床バイオリアクタシステム。
【0307】
実施形態22
前記メッシュの複数の織り合わされた繊維は、繊維の前記第1の群および繊維の前記第2の群からなる、実施形態20記載の固定床バイオリアクタシステム。
【0308】
実施形態23
前記培地入口は、細胞培養前または細胞培養中に細胞および細胞培養培地のうちの少なくとも一方を前記内部空洞に供給するように構成されており、前記培地出口は、細胞培養中または細胞培養後に細胞、細胞培養培地および細胞副産物のうちの少なくとも1つを前記内部空洞から引き出すように構成されている、実施形態1記載の固定床バイオリアクタシステム。
【0309】
実施形態24
前記培地出口は、回収操作中に前記スペーサセクションに加圧流体を供給するように構成されており、前記培地入口は、前記回収操作中に細胞、細胞培養培地および細胞副産物のうちの少なくとも1つを前記内部空洞から引き出すように構成されている、実施形態23記載の固定床バイオリアクタシステム。
【0310】
実施形態25
前記バイオリアクタシステムは、細胞、細胞培養培地および細胞副産物のうちの少なくとも1つを前記培地入口を通して押し出すために、前記培地出口を介して前記内部空洞を前記加圧流体で満たすように構成されている、実施形態24記載の固定床バイオリアクタシステム。
【0311】
実施形態26
前記複数の多孔質ディスクは、50~1000枚の多孔質ディスクを備える、実施形態1記載の固定床バイオリアクタシステム。
【0312】
実施形態27
前記複数の多孔質ディスクは、100~500枚の多孔質ディスクを備える、実施形態26記載の固定床バイオリアクタシステム。
【0313】
実施形態28
前記複数の多孔質ディスクは、ディスク当たり約1.00×10~約2.00×10個の平均濃度に細胞を培養するように構成されている、実施形態1記載の固定床バイオリアクタシステム。
【0314】
実施形態29
前記複数の多孔質ディスクの各ディスクは、相互間に孔を画定する繊維を備え、前記繊維は、約50μm~約1000μmの直径を有し、前記孔は、約100μm~約1000μmの直径を有する、実施形態1記載の固定床バイオリアクタシステム。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9A
図9B
図10
図11A
図11B
図11C
図12
図13
図14A
図14B
図15A
図15B
図15C
図16A
図16B
図17A
図17B
図17C
図18