(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】CD3融合タンパク質およびその使用
(51)【国際特許分類】
C07K 19/00 20060101AFI20240710BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20240710BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20240710BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20240710BHJP
C07K 14/725 20060101ALN20240710BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20240710BHJP
C12N 5/10 20060101ALN20240710BHJP
【FI】
C07K19/00
C12N5/0783
C12N15/12 ZNA
C12Q1/02
C07K14/725
C07K16/28
C12N5/10
(21)【出願番号】P 2022559692
(86)(22)【出願日】2021-03-29
(86)【国際出願番号】 EP2021058124
(87)【国際公開番号】W WO2021198163
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2022-11-25
(32)【優先日】2020-04-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】517419917
【氏名又は名称】メディジーン イミュノテラピーズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100110663
【氏名又は名称】杉山 共永
(72)【発明者】
【氏名】サイラー,ナジャ
(72)【発明者】
【氏名】エリンガー,クリスティアン
【審査官】長谷川 強
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-146598(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 19/00
C12N 5/0783
C12N 15/12
C12Q 1/02
C07K 14/725
C07K 16/28
C12N 5/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
- CD8シグナルペプチドドメイン、
- CD3δ外部ドメインおよびCD3ε外部ドメインを含むCD3ヘテロ二量体、
- CD8ヒンジドメイン、
- CD28膜貫通ドメイン、および
- CD3ζドメイン
を含むCD3融合タンパク質であって、
前記CD3δ外部ドメインが、配列番号2であるアミノ酸配列を含み、前記CD3ε外部ドメインが、配列番号4であるアミノ酸配列を含み、前記CD3ζドメインが、配列番号8であるアミノ酸配列を含む、前記CD3融合タンパク質。
【請求項2】
請求項1に記載の融合タンパク質をコードする配列を含有する核酸分子。
【請求項3】
インビトロまたはエクスビボでのT細胞のTCR非依存性活性化のための方法であって、
- 請求項1に記載の融合タンパク質を前記T細胞において発現させるステップ、
- 前記T細胞をCD3刺激剤およびCD28刺激剤で刺激するステップ
を含む、インビトロまたはエクスビボ方法。
【請求項4】
- 請求項1に記載の融合タンパク質を前記T細胞において発現させるステップ、
- 前記T細胞の内因性TCRを欠失させるステップ、
- 前記T細胞をCD3刺激剤およびCD28刺激剤で刺激するステップ
を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記CD3刺激剤が、活性化抗CD3抗体またはその抗原結合性断片である、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
前記CD28刺激剤が、活性化抗CD28抗体またはその
抗原結合性断片である、請求項3または4に記載の方法。
【請求項7】
前記CD3刺激剤および前記CD28刺激剤が、抗CD3抗体および抗CD28抗体またはその
抗原結合性断片を含む組成物である、請求項3または4に記載の方法。
【請求項8】
抗CD3抗体および抗CD28抗体またはその
抗原結合性断片を含む前記組成物が、固定化されている、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
抗CD3抗体および抗CD28抗体またはその
抗原結合性断片を含む前記組成物が、ビーズ上に固定化されている、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
請求項1に記載の融合タンパク質を含むT細胞。
【請求項11】
前記T細胞が、内因性TCRを欠いている、請求項10に記載のT細胞。
【請求項12】
医薬としての使用のための、請求項10または11に記載のT細胞。
【請求項13】
がんまたはウイルス性疾患の処置における使用のための、請求項10または11に記載のT細胞。
【請求項14】
外因性エフェクター分子の試験および特性評価のための、請求項10または11に記載のT細胞の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、T細胞、特に、TCR陰性T細胞のTCR非依存性活性化のためのツールおよび方法を提供する。特に、本発明は、CD3ε外部ドメイン、CD3δ外部ドメインまたはCD3γ外部ドメイン、膜貫通ドメイン、およびCD3ζドメインを含むCD3融合タンパク質に関する。本発明は、そのようなCD3融合タンパク質をコードする核酸分子、そのようなCD3融合タンパク質をコードするT細胞、および医学的使用のための前記T細胞にさらに関する。さらに、外因性エフェクター分子の試験および特性評価のためのT細胞の使用が記載される。
【背景技術】
【0002】
Tリンパ球は、適応免疫応答の一部であり、骨髄に位置する造血幹細胞が起源である。Tリンパ球は、それらの膜上で固有の抗原結合性受容体を発現し、T細胞受容体(TCR)は、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)分子との会合において抗原を認識する。
【0003】
免疫系におけるそれらの中心的な役割により、T細胞は、典型的には、病原体または悪性細胞からの保護を提供する。各T細胞は、感染した細胞または変更された細胞を認識するためにT細胞によって使用される構造である単一形態のT細胞受容体(TCR)を発現する。
【0004】
免疫療法の概念は、病原体および腫瘍細胞の認識および排除のための適応免疫応答の特異性に基づく。免疫療法の成功の目標は、免疫系による破壊のために腫瘍細胞を特異的に標的にするために、患者の免疫応答の操作または再プログラミングである。
【0005】
がんの処置において免疫系を再プログラムするために使用される治療アプローチは、DCワクチンを含むワクチン接種戦略の使用を含む能動免疫療法、および腫瘍抗原を特異的に認識する腫瘍特異的抗体または遺伝子操作されたリンパ球またはT細胞の養子移入の適用を含む受動免疫療法を含む。
【0006】
養子T細胞移入の原理は、自己または同種異系の腫瘍特異的Tリンパ球のエクスビボ拡大増殖、およびその後の患者への再注入に基づく。転移性黒色腫を患っている患者におけるがんの退縮は、エクスビボで拡大増殖された自己腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の移入後に観察された。この治療アプローチの欠点は、あらゆる個々の患者から単離される必要がある既存の腫瘍反応性細胞についての要件、および黒色腫以外のがんに対するTILの困難な検出である。したがって、患者から単離されたT細胞の遺伝子改変に焦点を合わせた他の方法が開発された。これらの遺伝子操作されたT細胞は、例えば、腫瘍特異的TCRのα鎖およびβ鎖による、すなわち組換えTCRによる、自己T細胞の形質導入によって作出され得る。
【0007】
2009年にWilde et al.によって開発され、国際公開第2007/017201号パンフレットに記載されているようなアプローチは、TAAおよび選択された同種異系MHC分子の両方をコードするRNA種で共トランスフェクトされた自己DCを使用する同種制限ペプチド特異的T細胞の単離を可能にする。自己T細胞を自己ペプチド/同種MHC複合体を提示するDCとともに共培養することによって、自己抗原を認識する高アビディティーのT細胞を得ることができる(Wilde et al., 2009, Dendritic cells pulsed with RNA encoding allogeneic MHC and antigen induce T cells with superior antitumor activity and higher TCR functional avidity. Blood, 114(10), 2131-9)。T細胞培養およびT細胞クローンの拡大増殖は、面倒であり、かつ再刺激の反復ラウンドを必要とするので、レシピエントPBLにそれらを導入することによってそれらの特性評価を可能にするために、早い時点でTCRのcDNAを単離することは有利である。これは、それらが患者における治療適用のために使用される前に、抗原特異性、アビディティーおよび機能性に関するTCRの特性評価を可能にする。しかしながら、この方法は、面倒であり、時間がかかる。さらに、未知の特異性を有するリンパ球の内因性TCRは、導入された導入遺伝子/組換えTCRとヘテロ二量体を形成することができ、再度の未知の特異性の交差反応性に至る。
【0008】
加えて、がんのための養子免疫療法においてなされている実質的な前進を踏まえると、養子T細胞療法における使用のためのそれらの可能性について、トランスジェニックTCRを試験および特性評価するための決定的で迅速な方法の提供についての必要性が存在する。
【0009】
T細胞が増殖することができ、その結果、さらに繁殖することができることがT細胞開発の前提条件である。しかしながら、T細胞の増殖は、とりわけ、インタクトTCRの発現に依存する。そのため、機能的TCRを欠いているレシピエント細胞では、レシピエントT細胞が機能的TCRの非存在下で分裂することを可能にする代替の増殖シグナルについての必要性が存在する。特に、T細胞の増殖をインビトロおよび/またはインビボで始動することができることが必要である。
【0010】
さらに、治療剤として使用される場合、レシピエント細胞が、治療効果を媒介する受容体とは独立して、インビトロまたはインビボで増殖することができることが望ましい。このことは、その治療の運命が決定される前に、レシピエント細胞の繁殖を可能にする。加えて、このアプローチは、治療的に活性な受容体が導入された後に、インビトロおよび/またはインビボでの増殖刺激の均一な誘導を可能にする。それにより、TCRなどの異なる治療用受容体をそれぞれ持つ異なる治療用細胞株は、治療効果を媒介する分子と独立している増殖刺激による均一で標準化された様式でさらに刺激され得る。
【0011】
したがって、直接的な戦略が、それらの内因性TCRの刺激と独立してT細胞を培養するために必要である。
【発明の概要】
【0012】
本発明は、TCRと独立したT細胞の繁殖のための戦略を提供する。特に、本発明は、
- CD3ε外部ドメイン、
- CD3δ外部ドメインまたはCD3γ外部ドメイン、
- 膜貫通ドメイン、および
- CD3ζドメイン
を含むCD3融合タンパク質を提供する。
【0013】
このCD3融合タンパク質は、T細胞において発現されると、CD3およびCD28の活性化刺激の際に、T細胞のTCR非依存性活性化を可能にする。特に、T細胞は、抗CD3抗体および抗CD28抗体を含む組成物によって容易に活性化され得る。そのため、T細胞のTCR非依存性活性化は、市販の製品、例えば、抗CD3抗体および抗CD28抗体が固定化されているミクロスフェアビーズを使用して行うことができる。そのため、LCL細胞などのフィーダー細胞を使用する時間のかかる活性化は不必要になる。それにより、TCRのTCR非依存性活性化のための直接的な経済的方法が提供される。CD3融合タンパク質は、インビトロで任意の特異的標的を認識しないので、細胞アッセイにおけるバックグラウンド活性化が低減される。
【0014】
典型的には、言及される膜貫通ドメインは、CD28膜貫通ドメインである。CD3外部ドメインは、ヒンジドメインによって膜貫通ドメインに連結されていてもよい。CD3外部ドメインを膜貫通ドメインに連結するヒンジドメインは、IgGヒンジドメイン、CD28ヒンジドメイン、またはCD8ヒンジドメインからなる群から選択されてもよい。
【0015】
CD3外部ドメインを膜貫通ドメインに連結するヒンジドメインは、IgGヒンジドメイン、CD28ヒンジドメイン、またはCD8ヒンジドメインからなる群から選択されてもよい。好ましくは、ヒンジドメインは、CD8ヒンジドメインである。
【0016】
さらに、融合タンパク質は、ER膜への共翻訳局在化を可能にするシグナルペプチドドメインをさらに含んでもよい。シグナルドメインは、好ましくは、CD8シグナルドメインである。
【0017】
典型的には、CD3δ外部ドメインおよびCD3ε外部ドメイン、またはCD3ε外部ドメインおよびCD3γ外部ドメインは、リンカー、好ましくは、非免疫原性リンカーを介して接続される。典型的には、リンカーは、少なくとも5アミノ酸を含む。アミノ酸は、グリシンおよびセリン残基の群から選択されてもよい。
【0018】
好ましい実施形態において、CD3融合タンパク質は、
- CD8シグナルペプチドドメイン、
- CD3δ外部ドメインおよびCD3ε外部ドメイン、
- CD8ヒンジドメイン、
- CD28膜貫通ドメイン、
- CD3ζドメイン
を含む。
【0019】
CD8シグナルペプチドは、配列番号1であるアミノ酸配列、または配列番号1と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0020】
CD3δ外部ドメインは、配列番号2であるアミノ酸配列、または配列番号2と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0021】
CD3γ外部ドメインは、配列番号3であるアミノ酸配列、または配列番号3と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0022】
CD3ε外部ドメインは、配列番号4であるアミノ酸配列、または配列番号4と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0023】
CD3δ外部ドメインおよびCD3ε外部ドメイン、またはCD3δドメインおよびCD3γ外部ドメインを接続するリンカーは、配列番号5であるアミノ酸配列、または配列番号5と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0024】
CD8ヒンジドメインは、配列番号6であるアミノ酸配列、または配列番号6と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0025】
膜貫通ドメインは、配列番号7であるアミノ酸配列、または配列番号7と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0026】
CD3ζドメインは、配列番号8であるアミノ酸配列、または配列番号8と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0027】
具体的な実施形態において、融合タンパク質は、配列番号11であるアミノ酸配列、または配列番号11と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0028】
典型的には、CD3融合タンパク質のN末端からC末端の方向でのドメインの順序は、CD3δ外部ドメインまたはCD3γ外部ドメイン、リンカー、CD3ε外部ドメイン、ヒンジドメイン、CD28膜貫通ドメイン、およびCD3ζドメインである。
【0029】
CD3融合タンパク質は、CD28、OX40、ICOSおよびCD28からなる群から選択される少なくとも1つの共刺激分子をさらに含んでもよい。
【0030】
本発明のさらなる態様は、本明細書に記載されるCD3融合タンパク質をコードする配列を含有する核酸分子に言及する。
【0031】
核酸分子は、蛍光タンパク質をコードする配列をさらに含んでもよい。典型的には、CD3融合タンパク質をコードする配列と蛍光タンパク質をコードする配列との間に、リボソームスキッピング配列が存在する。
【0032】
本発明の別の態様は、CD3刺激剤およびCD28刺激剤によるTCR陰性T細胞の活性化のための、本明細書に記載されるCD3融合タンパク質または本明細書に記載される核酸分子の使用に言及する。好ましくは、CD3刺激剤は、活性化抗CD3抗体またはその結合性断片である。
【0033】
CD28刺激剤は、フィーダー細胞、例えば、リンパ芽球様細胞株(LCL)の細胞との共培養物の形態、または活性化抗CD28抗体によってであり得る。好ましくは、CD28刺激剤は、活性化抗CD28抗体またはその結合性断片である。
【0034】
好ましくは、TCR非依存性活性化のために、抗CD3抗体および抗CD28抗体を含む組成物が使用される。抗CD3抗体および抗CD28抗体は、好適な表面に、例えば、ミクロスフェアビーズの表面上に、Streptamers(登録商標)上に、または組織培養容器表面上に固定化されていてもよい。好ましくは、抗CD3抗体および抗CD28抗体またはその結合性断片を含む組成物は、ミクロスフェアビーズ上に固定化されている。
【0035】
そのため、本方法は、サイトカインもフィーダー細胞も刺激のために必要ではないので有利であり、より価格が安く、より効率的な刺激をもたらす。
【0036】
本発明の別の態様は、T細胞のTCR非依存性活性化のための方法であって、
- 本明細書に記載されるCD3融合タンパク質を発現させるステップ、
- T細胞をCD3刺激剤およびCD28刺激剤で刺激するステップ
を含む、方法に言及する。
【0037】
方法はまた、内因性TCRの欠失のステップを含んでもよい。そのため、方法は、
- 本明細書に記載されるCD3融合タンパク質を発現させるステップ、
- 内因性TCRを欠失させるステップ、
- T細胞をCD3刺激剤およびCD28刺激剤で刺激するステップ
を含んでもよい。
【0038】
本発明の別の態様は、本明細書に記載されるCD3融合タンパク質を含むT細胞に言及する。
【0039】
当業者は、T細胞がCD28陽性であること、すなわち、T細胞が、その細胞表面上でCD28を発現することを理解する。
【0040】
TCR非依存性T細胞活性化の目標は、細胞培養の間に生存可能な発現されるTCRを欠いているT細胞を保つこと、すなわち、細胞培養においてT細胞を拡大増殖することである。トランスジェニック/組換えTCRまたはキメラ抗原受容体の発現の際に、T細胞は、細胞のエフェクター機能(すなわち、IFN-γ放出)および死滅能力を誘発する。そのため、典型的には、TCR複合体は、ノックアウトされるか、その発現は、本発明の方法の一段階で抑制される。したがって、いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるCD3融合タンパク質を含むT細胞は、機能的TCRを発現しないか、または言い換えると、TCR受容体陰性である。
【0041】
本明細書に記載されるCD3融合タンパク質を含むそのようなTCR陰性T細胞は、レシピエント細胞の免疫エフェクター機能を活性化することができる外因性受容体の導入のために直ぐに使用できる。
【0042】
本発明は、医薬としての使用のためのT細胞にも言及する。特に、本発明は、がんの処置のためのT細胞に言及する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】CD3融合タンパク質のドメイン構造。可撓性(Gly
4Ser)
3リンカーによって分離されたCD3δ外部ドメインおよびCD3ε外部ドメインの細胞外一本鎖断片(scFv)は、CD8ヒンジドメインを介してCD28膜貫通ドメインおよびCD3ζシグナル伝達ドメインにカップリングされる。scFvは、ネイティブフォールディングの際に、α-CD3抗体のOKT-3の結合エピトープを保持する。CD3融合タンパク質のコード配列は、ER(小胞体)膜への共翻訳局在化を確実にするために、CD8シグナルペプチドが先行する。P2Aエレメントを介してカップリングされたeGFPを使用して、細胞への形質導入の成功をモニターすることができる。多重クローニング部位(MCS)は、異なる骨格のベクターへのクローニングを容易にする。
【
図2】CD3融合タンパク質を用いるための戦略。CD3融合タンパク質で形質導入されたT細胞は、ノックアウト後に内因性TCRの非存在下で刺激シグナル1および2を送達するために、α-CD3抗体およびα-CD28抗体によって活性化され得る。CD3融合タンパク質と結合する抗体は、フィーダー細胞の存在下で可溶性形態、またはα-CD28抗体と組み合わされたビーズ結合(ミクロスフェア)形態のいずれかで使用され得る。
【
図3】TCR欠損Jurkat-76細胞におけるCD3融合タンパク質発現。形質導入Jurkat-76細胞を、α-CD3抗体による染色とその後のフローサイトメトリー分析によって、形質導入の7日後にCD3融合タンパク質の発現およびeGFP発現について分析した。生じた単一細胞クローン(単一細胞クローニング)を、その後、FACSの2週後のα-CD3抗体染色とそれに続くフローサイトメトリー分析によって、CD3融合タンパク質およびeGFPの発現についても評価した。2つの代表的なクローンの結果を示す。形質導入細胞を灰色で表す。非形質導入Jurkat-76細胞は陰性対照としての役割を果たした(黒色線)。ヒストグラム内に、CD3陽性細胞およびそれぞれのeGFP陽性細胞のパーセンテージを示す。
【
図4】CD3融合タンパク質で形質導入されたTCR欠損T細胞クローンのX倍拡大増殖。a)14日ごとの反復刺激で56日の過程にわたる4つの異なるT細胞クローン(CD8+_001、CD8+_002、CD8+_003およびCD8+_004)のX倍拡大増殖。細胞数を各拡大増殖ラウンド後に決定した。その内因性TCRを持つクローンCD4+_50は、増殖能力を比較するための対照としての役割を果たした(対照)。b)異なる活性化条件を使用する単回刺激サイクルにわたる2つの選択されたT細胞クローンのX倍拡大増殖。細胞を、それぞれ、LCLフィーダー細胞、IL-2およびOKT-3抗体を含む完全刺激ミックス(黒色長方形または黒色丸)、またはOKT-3を欠く刺激ミックス(灰色長方形または灰色丸)、またはOKT-3およびLCL(白色長方形または白色丸)のいずれかで刺激した。生存細胞の数を5日目および10日目に決定した。
【
図5-1】チロシナーゼ特異的TCRのT58またはD115のいずれかでの形質導入後のCD3融合タンパク質形質導入T細胞クローンのエフェクター機能。
図5a)それぞれのトランスジェニックTCRβ鎖、およびYMDGTMSQV(YMD)ペプチドを含む四量体に特異的なα-CD3抗体およびα-TCR-Vβ抗体による、T58またはD115のいずれかでそれぞれ形質導入された単離されたT細胞クローン(CD3融合タンパク質001=CD8+_001およびCD3融合タンパク質002=CD8+_002)およびPBLの染色。示される数は、CD3陽性であり、同時に特異的TRBV抗体またはそれぞれの四量体と結合する、細胞のパーセンテージを表す。FACSによる富化後、細胞は、フローサイトメトリー分析によってその後に分析した。非形質導入CD8+_001およびCD8+_002T細胞クローン、ならびに未処理PBLを、それぞれの陰性対照として使用した(ヒストグラムにおいて灰色で表す)。
【
図5-2】
図5b)同じ共培養物に由来する上清のIFN-γELISAを、形質導入T細胞(CD3融合タンパク質001=CD8+_001、CD3融合タンパク質002=CD8+_002またはPBL)の標的細胞との2:1のE:T比でのインキュベーション20時間後に、死滅アッセイにおいて使用した。陽性対照は、750ng/mLのPMAおよび5ng/mLのイオノマイシン(PMA/Iono)で活性化されたエフェクター細胞を含んでいた。形質導入PBLのIFN-γ放出を2つの独立した実験において決定した。非形質導入細胞(w/o)は陰性対照としての役割を果たした。標的細胞は、チロシナーゼ陽性腫瘍細胞(Mel624.38)およびチロシナーゼ陰性腫瘍細胞(A375)を含んでいた。
【
図5-3】
図5c)TCR形質導入T細胞クローン(CD3融合タンパク質001=CD8+_001、CD3融合タンパク質002=CD8+_002)およびPBLの機能的アビディティーを、ペプチド濃度の減少に応答する相対IFN-γ放出としてプロットした。K562_A2_CD86細胞に、漸減量のペプチド(10
-4~10
-12M)をロードし、それぞれT58またはD115を発現するT細胞とともに2:1の固定E:T比で共培養した。IFN-γ放出を、IFN-γELISAによって20時間後に決定し、相対IFN-γ放出を、最大IFN-γ放出を100%の参照値に設定することによって算出した。より低い値は、この参照に従って算出した。値は、生物学的な二反復に由来した。破線は、算出されたEC50値を示す。10
-4Mの無関係なSLLMWITQCペプチド(配列番号25)がロードされたK652_A2_CD86細胞は陰性対照としての役割を果たした。
【
図6】トランスジェニックチロシナーゼ特異的TCRのT58(001_T58)またはD115(001_D115)のいずれかの形質導入後の単離されたCD3融合タンパク質を発現するT細胞クローンの死滅能力。死滅アッセイを、IncuCyte(登録商標)ZOOMシステムを使用して実施して、2:1のE:T比で、72時間にわたってIncuCyte(登録商標)NucLight Red色素で標識されたチロシナーゼ陽性(Mel624.38)および陰性(A375)の腫瘍細胞の死滅(細胞溶解)をモニターした。それぞれの腫瘍細胞単独(白色丸)は、エフェクター細胞の非存在下で増殖についての対照としての役割を果たした。非形質導入エフェクター細胞(白色四角、001)は、トランスジェニックTCRの非存在下でバックグラウンド死滅を推定するための対照としての役割を果たした。細胞数/ウェルを、IncuCyte(登録商標)ZOOMソフトウェア2016Bを使用することによって決定して、各アプローチの四反復で分析した。
【
図7】CD3融合タンパク質で形質導入され、フィーダー細胞(LCL細胞)およびα-CD3抗体もしくはα-CD3/CD28抗体でコーティングされたミクロスフェアビーズを介した刺激、またはCD3/CD28 streptamerを介した刺激のいずれかを使用して刺激された、T細胞クローン(001および002)のX倍拡大増殖。2つの異なるT細胞クローン(001および002)のX倍拡大増殖を示す。
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明をその好ましい実施形態のいくつかに関して詳細に説明する前に、以下の一般的定義を提供する。
【0045】
本発明は、以下に例示的に説明される場合、本明細書に具体的に開示されていない任意の1つまたは複数の要素、1つまたは複数の限定の非存在下で、好適に実施され得る。
【0046】
本発明は、特定の実施形態に関しておよびある特定の図を参照して説明されるが、本発明は、それらに限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0047】
「含む(comprising)」という用語が本記載および特許請求の範囲において使用される場合、それは、他の要素を排除しない。本発明の目的のために、「からなる(consisting of)」という用語は、「を構成する(comprising of)」という用語の好ましい実施形態であると考えられる。本明細書の以下で群が少なくともある一定数の実施形態を含むと定義される場合、これはまた、好ましくはこれらの実施形態のみからなる群を開示すると理解されるべきである。
【0048】
不定冠詞または定冠詞が、単数の名詞、例えば、「a」、「an」または「the」を指す場合に使用される場合、これは、他のものが具体的に述べられない限り、その名詞の複数を含む。
【0049】
技術用語は、それらの一般的な意味で使用される。具体的な意味がある特定の用語によって伝えられる場合、用語の定義は、以下に、その用語が使用される文脈において示される。
【0050】
本発明は、TCRと独立したT細胞の繁殖のための戦略を提供する。特に、本発明は、
- CD3ε外部ドメイン、
- CD3δ外部ドメインまたはCD3γ外部ドメイン、
- 膜貫通ドメイン、および
- CD3ζドメイン
を含むCD3融合タンパク質を提供する。
【0051】
典型的には、膜貫通ドメインは、CD28膜貫通ドメインである。CD3ε外部ドメインおよびCD3δ外部ドメインまたはCD3γ外部ドメインは、ヒンジドメインによって膜貫通ドメインに連結されていてもよい。CD3ε外部ドメインおよびCD3δ外部ドメインまたはCD3γ外部ドメインを膜貫通ドメインに連結するヒンジドメインは、IgGヒンジドメイン、CD28ヒンジドメイン、またはCD8ヒンジドメインからなる群から選択されてもよい。
【0052】
CD3ε外部ドメインおよびCD3δ外部ドメインまたはCD3γ外部ドメインを膜貫通ドメインに連結するヒンジドメインが、IgGヒンジドメイン、CD28ヒンジドメイン、またはCD8ヒンジドメインからなる群から選択される、請求項1~3に記載のCD3融合タンパク質。好ましくは、ヒンジドメインは、CD8ヒンジドメインである。
【0053】
さらに、融合タンパク質は、ER膜への共翻訳局在化を可能にするシグナルペプチドドメインをさらに含んでもよい。シグナルドメインは、好ましくは、CD8シグナルドメインである。
【0054】
典型的には、CD3δ外部ドメインおよびCD3ε外部ドメイン、またはCD3ε外部ドメインおよびCD3γ外部ドメインは、好ましくは、非免疫原性リンカーによって接続される。典型的には、リンカーは、少なくとも5アミノ酸を含有する。アミノ酸は、グリシンおよびセリン残基の群から選択されてもよい。
【0055】
好ましい実施形態において、CD3融合タンパク質は、
- CD8シグナルペプチドドメイン、
- CD3δ外部ドメインおよびCD3ε外部ドメイン、
- CD8ヒンジドメイン、
- CD28膜貫通ドメイン、
- CD3ζドメイン
を含む。
【0056】
CD8シグナルペプチドは、配列番号1であるアミノ酸配列、または配列番号1と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0057】
CD3δ外部ドメインは、配列番号2であるアミノ酸配列、または配列番号2と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0058】
CD3γ外部ドメインは、配列番号3であるアミノ酸配列、または配列番号3と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0059】
CD3ε外部ドメインは、配列番号4であるアミノ酸配列、または配列番号4と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0060】
CD3δ外部ドメインおよびCD3ε外部ドメイン、またはCD3δ外部ドメインおよびCD3γ外部ドメインを接続するリンカーは、配列番号5であるアミノ酸配列、または配列番号5と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0061】
CD8ヒンジドメインは、配列番号6であるアミノ酸配列、または配列番号6と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0062】
膜貫通ドメインは、配列番号7であるアミノ酸配列、または配列番号7と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0063】
CD3ζドメインは、配列番号8であるアミノ酸配列、または配列番号8と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0064】
具体的な実施形態において、融合タンパク質は、配列番号11であるアミノ酸配列、または配列番号11と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含んでもよい。
【0065】
本明細書で使用される「少なくとも80%同一」、特に、「少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する」は、アミノ酸配列が、提示されるアミノ酸配列と少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であることを含む。
【0066】
多数の配列間の同一性パーセントの決定は、好ましくは、Vector NTI Advance(商標)10プログラム(Invitrogen Corporation、Carlsbad CA、USA)のAlignXアプリケーションを使用して達成される。このプログラムは、改変Clustal Wアルゴリズムを使用する(Thompson et al., 1994. Nucl Acids Res. 22: pp. 4673-4680; Invitrogen Corporation; Vector NTI AdvanceTM 10 DNA and protein sequence analysis software. User’s Manual, 2004, pp.389-662)。同一性パーセントの決定は、AlignXアプリケーションの標準パラメーターを用いて行われる。
【0067】
典型的には、融合タンパク質のN末端からC末端の方向でのドメインの順序は、CD3δ外部ドメインまたはCD3γ外部ドメイン、CD3εドメイン、ヒンジドメイン、CD28膜貫通ドメイン、CD3ζドメインである。
【0068】
CD3融合タンパク質は、CD28、OX40、ICOSおよびCD28からなる群から選択される少なくとも1つの共刺激分子をさらに含んでもよい。
【0069】
「TCRと独立したT細胞の繁殖」という用語は、TCRの刺激の必要性なく増殖するT細胞を指す。「TCRからの増殖刺激と独立して増殖するヒトT細胞」がTCRを発現し得ることが理解され、したがって、T細胞がTCRからの増殖刺激にさらに基づいて増殖することが可能であり得る。
【0070】
TCRは、2つの異なる別々のタンパク質鎖、すなわち、TCRアルファ(a)およびTCRベータ(b)鎖から構成される。TCRα鎖は、可変(V)領域、接合(J)領域、および定常(C)領域を含む。TCRb鎖は、可変(V)領域、多様性(D)領域、接合(J)領域、および定常(C)領域を含む。TCRα鎖およびTCRβ鎖の両方の再構成V(D)J領域は、超可変領域(CDR、相補性決定領域)を含有し、その中で、CDR3領域は、特異的エピトープ認識を決定する。C末端領域において、TCRα鎖およびTCRβ鎖は両方とも、疎水性膜貫通ドメインを含有し、短い細胞質尾部で終わる。
【0071】
典型的には、TCRは、1つのα鎖および1つのβ鎖のヘテロ二量体である。このヘテロ二量体は、ペプチドを提示するMHC分子に結合することができる。
【0072】
本発明の文脈における「可変TCRα領域」または「TCRα可変鎖」または「可変ドメイン」という用語は、TCRα鎖の可変領域を指す。本発明の文脈における「可変TCRβ領域」または「TCRβ可変鎖」という用語は、TCRβ鎖の可変領域を指す。
【0073】
TCR遺伝子座および遺伝子は、国際免疫遺伝学(IMGT)TCR学名命名法(IMGTデータベース、www.IMGT.org;Giudicelli, V., et al., IMGT/LIGM-DB, the IMGT(R) comprehensive database of immunoglobulin and T cell receptor nucleotide sequences, Nucl. Acids Res., 34, D781-D784 (2006). PMID: 16381979; T cell Receptor Factsbook, LeFranc and LeFranc, Academic Press ISBN 0-12- 441352-8)を使用して命名される。
【0074】
本発明のさらなる態様は、本明細書に記載されるCD3融合タンパク質をコードする配列を含有する核酸分子に言及する。
【0075】
核酸分子は、蛍光タンパク質をコードする配列をさらに含んでもよい。典型的には、CD3融合タンパク質をコードする配列と蛍光タンパク質をコードする配列との間に、リボソームスキッピング配列が存在する。
【0076】
以下の表は、それぞれのペプチド配列をコードするヌクレオチド配列を示す。
【0077】
【0078】
「核酸分子」は、一般に、DNAまたはRNAのポリマーを意味し、これは、一本鎖または二本鎖であり得、天然起源から合成または得ることができ(例えば、単離および/または精製される)、天然、非天然または変更されたヌクレオチドを含有することができ、未改変オリゴヌクレオチドのヌクレオチド間で見られるホスホジエステルの代わりに、天然、非天然または変更されたヌクレオチド間の連結、例えば、ホスホロアミデート連結またはホスホロチオエート連結を含有することができる。好ましくは、本明細書に記載される核酸は、組換え体である。本明細書で使用される場合、「組換え体」という用語は、(i)天然もしくは合成核酸セグメントを、生細胞中で複製し得る核酸分子に接合することによって、生細胞の外側で構築される分子、または(ii)上記(i)に記載されたものの複製から得られる分子を指す。本発明の目的のために、複製は、インビトロ複製またはインビボ複製であり得る。核酸は、当技術分野において公知の手順、または市販の手順(例えば、Genscript、Thermo Fisherおよび同様の会社から)を使用して、化学合成および/または酵素的ライゲーション反応に基づいて構築することができる。例えば、Sambrook et al.を参照されたく、核酸は、天然に存在するヌクレオチド、または分子の生物学的安定性を増加させるように、もしくはハイブリダイゼーションの際に形成される二重鎖の物理的安定性を増加させるように設計されたさまざまな改変ヌクレオチド(例えば、ホスホロチオエート誘導体およびアクリジン置換ヌクレオチド)を使用して化学的に合成することができる。核酸は、組換えTCR、ポリペプチド、もしくはタンパク質、またはその機能的部分もしくは機能的バリアントのいずれかをコードする任意のヌクレオチド配列を含み得る。
【0079】
本開示は、単離された核酸または精製された核酸のバリアントであって、バリアント核酸が、本明細書に記載されるCD3融合タンパク質をコードするヌクレオチド配列と少なくとも75%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%同一なヌクレオチド配列を含む、バリアントも提供する。
【0080】
本開示は、本明細書に記載される核酸のいずれかのヌクレオチド配列に相補的であるヌクレオチド配列、またはストリンジェントな条件下で本明細書に記載される核酸のいずれかのヌクレオチド配列にハイブリダイズするヌクレオチド配列を含む、単離された核酸または精製された核酸も提供する。
【0081】
ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするヌクレオチド配列は、好ましくは、高ストリンジェンシー条件下でハイブリダイズする。「高ストリンジェンシー条件」とは、ヌクレオチド配列が、非特異的ハイブリダイゼーションよりも検出可能な強い量で、標的配列(本明細書に記載される核酸のいずれかのヌクレオチド配列)に特異的にハイブリダイズすることを意味する。高ストリンジェンシー条件は、ヌクレオチド配列に適合したわずかな小領域(例えば、3~10塩基)を偶然有するランダム配列から、正確に相補的な配列を有するポリヌクレオチド、または散在するわずかな不適合のみを含有するポリヌクレオチドを識別するであろう条件を含む。そのような相補性の小領域は、14~17塩基またはそれより多い塩基の全長相補体よりも容易に融解し、高ストリンジェンシーのハイブリダイゼーションは、それらを容易に識別可能にする。比較的高ストリンジェンシー条件は、例えば、低塩および/または高温の条件、例えば、約50~70℃の温度で、約0.02~0.1MのNaClまたは等価物によって提供されるような条件を含むであろう。そのような高ストリンジェンシー条件は、存在する場合、ヌクレオチド配列と鋳型または標的鎖との間の不適合をほとんど許容せず、本明細書に記載されるTCRのいずれかの発現を検出するために特に好適である。一般に、条件が、ホルムアミドの漸増量の添加によって、よりストリンジェントになり得ることが認識されている。
【0082】
本明細書の他の箇所で既に記載されているように、TCRをコードする核酸は、改変されていてもよい。核酸配列全体における有用な改変は、コドン最適化であり得る。発現されるアミノ酸配列内に保存的置換をもたらす変更がなされてもよい。これらのバリエーションは、機能に影響を及ぼさないTCR鎖のアミノ酸配列の相補性決定領域および非相補性決定領域においてなされ得る。通常、付加および欠失は、CDR3領域において行われることはない。
【0083】
別の実施形態は、本明細書に記載されるCD3融合タンパク質をコードする核酸を含むベクターに言及する。
【0084】
ベクターは、好ましくは、プラスミド、シャトルベクター、ファージミド、コスミド、発現ベクター、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、または遺伝子治療において使用される粒子および/もしくはベクターである。
【0085】
「ベクター」は、核酸配列を、コードされたポリペプチドの合成が起こり得る好適な宿主細胞中に運ぶ能力を有する任意の分子または組成物である。典型的には、かつ好ましくは、ベクターは、所望の核酸配列(例えば、本発明の核酸)を組み込むために、当技術分野において公知である組換えDNA技法を使用して操作された核酸である。ベクターは、DNAもしくはRNAを含んでいてもよく、かつ/またはリポソームを含んでもよい。ベクターは、プラスミド、シャトルベクター、ファージミド、コスミド、発現ベクター、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、または遺伝子治療において使用される粒子および/もしくはベクターであり得る。ベクターは、宿主細胞における複製を可能にする核酸配列、例えば、複製開始点を含んでもよい。ベクターはまた、1つまたは複数の選択マーカー遺伝子、および当業者に公知の他の遺伝要素を含んでもよい。ベクターは、好ましくは、前記核酸の発現を可能にする配列に作動可能に連結された本発明による核酸を含む発現ベクターである。
【0086】
好ましくは、ベクターは、発現ベクターである。より好ましくは、ベクターは、レトロウイルス、より具体的には、ガンマ-レトロウイルス、またはレンチウイルスのベクターである。
【0087】
本発明の別の態様は、CD3刺激剤およびCD28刺激剤によるTCR陰性T細胞の活性化のための、本明細書に記載される融合タンパク質または本明細書に記載される核酸分子の使用に言及する。好ましくは、CD3刺激剤は、活性化抗CD3抗体またはその結合性断片である。
【0088】
CD28刺激剤は、リンパ芽球様細胞株(LCL)の細胞(典型的には、CD86および/またはCD80を介してCD28を活性化する)または活性化抗CD28抗体であり得る。好ましくは、CD28刺激剤は、活性化抗CD28抗体である。
【0089】
好ましくは、TCR非依存性活性化のために、抗CD3抗体および抗CD28抗体またはその結合性断片、例えば、Fab断片を含む組成物が使用される。抗CD3抗体および抗CD28抗体またはその結合性断片は、例えば、ビーズ上に、Streptamers(登録商標)上に、または組織培養容器表面上に固定化されていてもよい。好ましくは、抗CD3抗体および抗CD28抗体を含む組成物は、ビーズ上に固定化されている。
【0090】
したがって、結合性断片は、インタクトな全長抗体の部分、例えば、完全抗体の抗原結合性領域または可変領域を含み得る。抗体断片の例としては、Fab、F(ab’)2、IdおよびFv断片;ダイアボディ;線状抗体;一本鎖抗体分子(例えば、scFv);多重特異性抗体断片、例えば、二重特異性、三重特異性、および多重特異性抗体(例えば、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ);ミニボディ;キレート組換え抗体;トリボディまたはバイボディ;イントラボディ;ナノボディ;小モジュール免疫製剤(SMIP)、結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質;ラクダ化抗体;VHH含有抗体;および抗体断片から形成される任意の他のポリペプチドが挙げられる。当業者は、抗体の抗原結合機能が全長抗体の断片によって行われ得ることを承知している。好ましくは、結合性断片は、Fab断片である。
【0091】
Fab断片は、VL、VH、CL、およびCH1ドメインからなる。F(ab’)2断片は、ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFab断片を含む。Fdは、抗体のシングルアームのVHおよびCH1ドメインである。Fv断片は、抗体のシングルアームのVLおよびVHドメインである。
【0092】
Dynabeads(ThermoFisher Scientific 番号11132D)などの固定化された抗CD3抗体および抗CD28抗体を有するビーズは市販されている。また、(Iba、番号6-8901-000)などのstreptamers(登録商標)を使用することができる。好ましくは、ビーズ、すなわち、Dynabeads(ThermoFisher Scientific 番号11132D)が使用される。
【0093】
streptamers(登録商標)は、Strep-Tactin(登録商標)多量体に結合しているFab断片を含有する。Strep-Tactin(登録商標)多量体は、多量体化されたStrep-Tactin(登録商標)であり、これはストレプトアビジンのムテインである。
【0094】
そのため、本方法は、サイトカインもフィーダー細胞も刺激のために必要ではないので有利であり、より価格が安く、より効率的な刺激をもたらす。
【0095】
本発明の別の態様は、T細胞のTCR非依存性活性化のための方法であって、
- 本明細書に記載されるCD3融合タンパク質をT細胞において発現させるステップ、
- T細胞をCD3刺激剤およびCD28刺激剤で刺激するステップ
を含む、方法に言及する。
【0096】
方法はまた、内因性TCRの欠失のステップを含んでもよい。そのため、方法は、
- 本明細書に記載されるCD3融合タンパク質をT細胞において発現させるステップ、
- T細胞の内因性TCRを欠失させるステップ、
- T細胞をCD3刺激剤およびCD28刺激剤で刺激するステップ
を含んでもよい。
【0097】
本発明の具体的な実施形態において、方法は、
- 本明細書に記載されるCD3融合タンパク質をT細胞において発現させるステップ、
- T細胞の内因性TCRを欠失させるステップ、
- T細胞をCD3刺激剤およびCD28刺激剤で刺激するステップ
- 外因性T細胞エフェクター分子を発現させるステップ
- 任意選択で、CD3融合タンパク質を欠失させるステップ
を含む。
【0098】
T細胞の内因性TCRを欠失させるステップおよびCD3融合タンパク質をT細胞において発現させるステップは、実質的に並行して起こってもよい。これは、2つのステップ間、すなわち、T細胞の内因性TCRを欠失させることとCD3融合タンパク質を発現させることとの間、またはCD3融合タンパク質を発現させることT細胞の内因性TCRを欠失させることとの間の時間が、12時間未満、好ましくは、6時間未満、より好ましくは、1時間未満、さらにより好ましくは、10分未満、さらにより好ましくは、5分未満、最も好ましくは、1分未満であることを意味する。
【0099】
外因性T細胞エフェクター分子は、外因性抗原特異的受容体、より具体的には、T細胞の少なくとも1つのエフェクター機能を活性化することができる外因性抗原特異的受容体であり、TCR、キメラ抗原受容体(CAR)、または抗体がカップリングしたT細胞受容体であり得る。好ましくは、T細胞の少なくとも1つのエフェクター機能を活性化することができる外因性抗原特異的受容体は、TCRである。
【0100】
エフェクター分子は、安定にまたは一過性にT細胞に導入され得る。安定導入は、典型的には、限定されないが、安定トランスフェクション、ウイルス形質導入、またはゲノムの定義された標的部位での安定導入を可能にする方法、例えば、セーフハーバー遺伝子座またはsleeping beauty技法によって行われ得る。一過性導入は、典型的には、一過性トランスフェクションによって、好ましくは、ivtRNAの一過性トランスフェクションによって起こる。好ましい実施形態において、特に遺伝子操作されたT細胞が治療のために使用される場合、エフェクター分子、例えば、外因性のTCRα鎖およびTCRβ鎖は、T細胞に安定に導入され得る。遺伝子操作されたT細胞が所望のTCRを特性評価するために使用される場合、T細胞は、典型的には、一過性トランスフェクトされる、好ましくは、ivtRNAで一過性トランスフェクトされる。本発明のさらなる態様は、TCRα鎖およびTCRβ鎖の両方がノックアウトされ、インビトロでの内因性TCR増殖刺激と独立してT細胞の増殖を可能にする少なくとも1つの外因性分子を含む、T細胞に関する。
【0101】
キメラ抗原受容体(CAR)は、モノクローナル抗体のT細胞に対する特異性を付与するモジュール的にアセンブルされた人工受容体である。細胞外ドメインは、可撓性リンカーによって分離された免疫グロブリン軽鎖および重鎖からなる抗体由来一本鎖可変断片(scFv)を含む。scFvは、スペーサーおよび膜貫通ドメインを介してサイトゾルシグナル伝達ドメインに連結される。CARは、限定されないが、CD3ζ、CD27、CD28、CD137、DAP10、FcR、および/またはOX40などの共刺激シグナル伝達ドメインを含み得る。
【0102】
TCR非依存性T細胞活性化の目標は、細胞培養の間に生存可能な発現されるTCRを欠いているT細胞を保つこと、すなわち、細胞培養においてT細胞を拡大増殖することである。トランスジェニック/組換えTCRまたはキメラ抗原受容体の発現の際に、T細胞は、細胞のエフェクター機能(すなわち、IFN-γ放出)および死滅能力を誘発する。典型的には、TCR複合体は、ノックアウトされるか、その発現は、本発明の方法の一段階で抑制される。したがって、いくつかの実施形態において、本明細書に記載されるCD3融合タンパク質を含むT細胞は、機能的TCRを発現しないか、または言い換えると、TCR受容体陰性である。
【0103】
本明細書に記載されるCD3融合タンパク質を含むそのようなTCR陰性T細胞は、レシピエント細胞の免疫エフェクター機能を活性化することができる外因性受容体の導入のために直ぐに使用できる。
【0104】
いくつかの実施形態において、細胞は、単離されているか、または天然に存在しない。
【0105】
具体的な実施形態において、細胞は、本明細書に記載されるCD3融合タンパク質をコードする核酸、または前記核酸を含むベクターを含み得る。
【0106】
細胞において、上記に記載のCD3融合タンパク質をコードする核酸配列を含む上記に記載のベクターが導入され得るか、または前記CD3融合タンパク質をコードするivtRNAが導入され得る。細胞は、T細胞などの末梢血リンパ球であり得る。初代ヒトT細胞のレンチウイルスベクターによる形質導入は、例えば、Cribbs “simplified production and concentration of lentiviral vectors to achieve high transduction in primary human T cells” BMC Biotechnol. 2013; 13: 98に記載されている。
【0107】
「トランスフェクション」および「形質導入」という用語は交換可能であり、外因性核酸配列が、宿主細胞、例えば、真核宿主細胞に導入されるプロセスを指す。核酸配列の導入または移入は、言及される方法に限定されないが、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、遺伝子銃送達、リポフェクション、スーパーフェクション、およびレトロウイルス、または形質導入もしくはトランスフェクションのための他の好適なウイルスによる言及される感染を含む任意のいくつかの手段によって達成され得ることに留意されたい。
【0108】
いくつかの実施形態において、細胞は、末梢血リンパ球(PBL)または末梢血単核細胞(PBMC)である。細胞は、ナチュラルキラー細胞またはT細胞であってもよい。好ましくは、細胞は、T細胞である。T細胞は、CD4+またはCD8+T細胞であってもよい。いくつかの実施形態において、細胞は、幹細胞様メモリーT細胞である。
【0109】
幹細胞様メモリーT細胞(TSCM)は、自己再生および長期間存続する能力によって特徴付けられる、分化の程度が低いCD8+T細胞の亜集団である。これらの細胞がインビボでそれらの抗原に遭遇すると、それらは、一部の静止して残っているTSCMとともに、セントラルメモリーT細胞(TCM)、エフェクターメモリーT細胞(TEM)および最終分化エフェクターメモリーT細胞(TEMRA)にさらに分化する(Flynn et al., Clinical & Translational Immunology (2014))。これらの残っているTSCM細胞は、インビボで永続的な免疫記憶を構築する能力を示し、したがって、養子T細胞療法のための重要なT細胞亜集団であると考えられる(Lugli et al., Nature Protocols 8, 33-42 (2013)、Gattinoni et al., Nat. Med. 2011 Oct; 17(10): 1290-1297)。幹細胞メモリーT細胞サブタイプにT細胞プールを限定するために、免疫磁気選択を使用することができる。(Riddell et al. 2014, Cancer Journal 20(2): 141-44)を参照されたい。
【0110】
本発明はまた、医薬としての使用のためであり得るT細胞にも言及する。特に、本発明は、がんまたはウイルス性疾患の処置のためのT細胞に言及する。
【0111】
TCRの欠失
TCRなどのヘテロ二量体細胞表面タンパク質についての効率的なノックアウト戦略の作成が、レシピエント細胞の作製のために重要であることは当業者には明らかである。
【0112】
TCRの両方の鎖のダブルノックアウトは、以下のステップ:
(a)内因性TCRα鎖のノックアウト、
(b)機能的TCRを欠いている細胞についての選択、
(c)内因性TCRβ鎖のノックアウト、
(d)TCRα鎖の一過性発現、
(e)機能的TCRを欠いている細胞についての選択
によって達成され得るか、または代わりに、以下のステップ:
(a)内因性TCRβ鎖のノックアウト、
(b)機能的TCRを欠いている細胞についての選択、
(c)内因性TCRα鎖のノックアウト、
(d)TCRβ鎖の一過性発現、
(e)機能的TCRを欠いている細胞についての選択
によって達成される。
【0113】
特定の実施形態において、TCRα鎖およびTCRβ鎖両方のダブルノックアウトは、以下のステップ:
(a)内因性TCRβ鎖のノックアウト、
(b)機能的TCRを欠いている細胞についての選択、
(c)内因性TCRα鎖のノックアウト、
(d)TCRβ鎖の一過性発現、
(e)機能的TCRを欠いている細胞についての選択
によって達成され得る。
【0114】
当業者は、TCRα鎖およびTCRβ鎖の連続したノックアウトのこの戦略が、好ましい実施形態であり、したがって、本出願の開示を限定するものではないことを理解する。あるいは、ダブルノックアウトは、TCRα鎖およびTCRβ鎖の同時ノックアウトによっても達成され得る。
【0115】
ステップ(d)において、プレTCRα鎖または成熟α鎖のいずれかが一過性に発現され得る。プレTCRα鎖は、サロゲートTCRα鎖(インバリアントpTα鎖とも呼ばれる)であり、これは、T細胞の発達の間に発現される。「TCRα鎖の成熟形態」または「成熟TCRα鎖」という用語は、TCRα鎖遺伝子の配置後に通常存在し、プレTCRα鎖が排除されたTCRα鎖配列を指す。
【0116】
好ましくは、ステップ(d)「TCRα鎖の一過性発現」において、TCRα鎖の成熟形態は、一過性に発現される。
【0117】
「レシピエント細胞」という用語は、本明細書で使用される場合、内因性のTCRα鎖およびTCRβ鎖の両方のダブルノックアウトに起因して機能的TCRを発現せず、内因性TCR増殖刺激と独立して増殖することができる、T細胞を指す。
【0118】
(内因性)TCRαおよびβ鎖のノックアウトおよびダブルノックアウトは、例えば、Znフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、およびクラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート(CRISPR)系を含む分子クローニングツール、照射、または化学的変異誘発によって達成することができる。ダブルノックアウトという用語は、TCRα鎖およびTCRβ鎖の両方をコードする生産的に配列された対立遺伝子が働かなくなり、その結果、TCRα鎖もTCRβ鎖もダブルノックアウト細胞中に存在しないことを意味する。これは、ダブルノックアウト細胞が、細胞表面上でのTCRα鎖およびTCRβ鎖の両方の機能的発現を欠くことを意味するだけでなく、機能的内因性TCRα鎖も機能的内因性TCRβ鎖も細胞中に存在しないことも意味する(例えば、ER)。
【0119】
「機能的内因性TCRα鎖」、「機能的TCRα鎖」および「機能的TCR鎖」という用語は、本明細書で使用される場合、機能的TCRα鎖が機能的TCRβ鎖と対形成することができ、したがって、細胞表面で発現され得ることを意味する。したがって、機能的ではないTCRα鎖は、機能的TCRβ鎖と対形成することができないTCRα鎖を指し、したがって、TCRα鎖は、細胞表面で発現されない。
【0120】
「機能的内因性TCRβ鎖」、「機能的TCRβ鎖」および「機能的TCR鎖」という用語は、本明細書で使用される場合、機能的TCRβ鎖が機能的TCRα鎖と対形成することができ、したがって、細胞表面で発現され得ることを意味する。したがって、機能的ではないTCRβ鎖は、機能的TCRα鎖と対形成することができないTCRβ鎖を指し、したがって、TCRβ鎖は、細胞表面で発現されない。
【0121】
ZFNおよびTALENは、調節可能な配列特異的DNA結合性ドメインおよび非特異的DNA切断ドメインから構成される。指向性DNA二本鎖破壊を導入すること、およびエラープローン非相同末端接合または相同性-指向性修復機構を刺激することによって、それらは遺伝子操作のための優れたツールを提供する。TALENのDNA結合性ドメインは、可変の長さの中央のリピートドメインによって特徴付けられる一方、各リピートは、典型的には、34アミノ酸からなる。DNA結合性ドメインの特異性は、各リピートの12位および13位の超可変アミノ酸の隣接対に依存し、これは、リピート-可変二残基(RVD)と称されている。配列特異性は、単純なコードによって支配され、各RVDは、独立して、DNA中の1つの塩基対を特定する。4つの最も一般的なRVDは、DNA中の4つの塩基の1つと優先的に会合する(NG=T、HD=C、NI=A、NN=G)。
【0122】
当業者は、TALENの構築のための異なるプロトコールを承知している。ほとんどの戦略は、指示された方法で多数のDNA断片の同時アセンブリーを可能にするゴールデンゲートクローニングに基づく(Cermak et al., 2011, Efficient design and assembly of custom TALEN and other TAL effector-based constructs for DNA targeting. Nucleic acids research, 39(12), e82;Li et al., 2011, Modularly assembled designer TAL effector nucleases for targeted gene knockout and gene replacement in eukaryotes. Nucleic acids research, 39(14), 6315-25;Morbitzer et al., 2011, Assembly of custom TALE-type DNA binding domains by modular cloning. Nucleic acids research, 39(13), 5790-9, 2011;Sanjana, et al. 2012; A transcription activator-like effector toolbox for genome engineering. Nature protocols, 7(1), 171-92.)。この方法は、単一の反応混合物中で消化およびライゲーションを行うことを可能にするIIS型制限酵素の使用に基づく。IIS型制限酵素は、固有の4bpのオーバーハングを作出する認識部位の外側を切断するそれらの性質によって特徴付けられる。プラスミドのクローニングのために使用される場合、正しいライゲーションは、断片の正しいアセンブリーの際に、固有のオーバーハングおよび認識部位の排除によって確保される(Engler et al., 2009 Golden gate shuffling: a one-pot DNA shuffling method based on type IIs restriction enzymes. PloS one, 4(5), e5553)。この適用において、Cermak et al. (2011)の方法は、TALENの構築のために使用された。市販のキット、例えば、EZ-TAL(商標)(System Bioscience)またはFastTALEN(商標)(Sidansai Biotechnology Co.,LTD)、ならびに市販のサービス、例えば、Thermo Fisher ScientificまたはGeneCopoeiaによって提供されるサービスが、TALENアセンブリーのために利用可能である。
【0123】
具体的な実施形態において、ダブルノックアウトは、TALENによって得られる。TCRα鎖のTALEN標的領域は、可変AVセグメント中または定常ACセグメント中にあり得る。TCRβ鎖のTALEN標的領域は、可変BVセグメント中または定常BCセグメント中にあり得る。ある特定の実施形態において、TCRα鎖のTALEN標的領域は、定常ACセグメント中にあり、かつ/またはTCRβ鎖のTALEN標的領域は、定常BCセグメント中にある。具体的な実施形態において、TCRα鎖のTALEN標的領域は、定常ACセグメント中にあり、かつTCRβ鎖のTALEN標的領域は、定常BCセグメント中にある。
【0124】
ZFNおよびTALENの代替は、CRISPR系によって提供される。細菌において、CRISPR系は、CRISPR系を使用する場合にRNAがガイドするDNA切断を介して、外来性DNAの侵入に対する獲得免疫を提供し、2つの構成要素は、ゲノム編集を行うために細胞に導入されなければならない:ヌクレアーゼ(一般に、Cas9)およびガイドRNA(gRNA)。gRNAは、CRISPR RNA(crRNA)部分およびトランス活性化CRISPR RNA(tracrRNA)部分からなる。gRNAの5’末端の20ヌクレオチドは、ヌクレアーゼ、例えば、Cas9を特異的標的DNA部位に向かわせ、これは、プロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)配列の直ぐ5’側になければならない。CRISPR/Cas9系は、マウス、ラットおよびヒトの細胞株を含む各種の種において遺伝子を変更するために使用され得る(例えば、Sander and Joung, 2014, Improving CRISPR-Cas nuclease specificity using truncated guide RNAs, Nat Biotechnol. 2014 Mar; 32(3): 279-284を参照されたい)。
【0125】
TCRα鎖の標的領域は、定常ACセグメント中で選択され得、かつ/またはTCRβ鎖の標的領域は、定常BCセグメント中で選択され得る。それにより、任意の特異性の任意のTCRα鎖が標的にされ得、かつ/または任意の特異性の任意のTCRβ鎖が標的にされ得る。そのため、異なる特異性を有する異なるTCR、例えば、異なる可変鎖を有するTCRに対する異なる標的領域を選択する必要はない。しかしながら、ノックアウトが、可変TCRα鎖の種類および可変TCRβ鎖の種類が公知である特異的細胞クローンにおいて行われる場合、TCRα鎖の標的領域は、可変AVセグメント中で選択され得、かつ/またはTCRβ鎖の標的領域は、可変BVセグメント中で選択され得る。
【0126】
あるいは、ノックアウトおよび/またはダブルノックアウトは、照射または化学的変異誘発によって達成されてもよい。照射または化学的変異誘発によるノックアウトは標的化されていないので、処理された細胞は、細胞表面で機能的TCRを発現しない変異体について効率的に選択されなければならない。したがって、本発明の方法、すなわち、第2のノックアウト後の相補的TCR鎖の一過性発現と組み合わせた細胞表面でのTCRの存在に基づくノックアウト細胞の選択は、ランダム変異誘発戦略と組み合わせて非常に有用である。
【0127】
加えて、特にレシピエント細胞がインビボで使用される場合、照射された細胞は、例えばT細胞エフェクター機能の喪失をもたらす他の変異によって影響を受けないTCRノックアウト細胞を選択するために、機能的に分析され得る。
【0128】
「内因性のTCRα鎖およびTCRβ鎖」という用語は、T細胞に固有であるTCRα鎖およびTCRβ鎖を指す。
【0129】
TCRα鎖の欠失は、欠失の7~10日後に成熟T細胞の細胞表面上のTCRの喪失をもたらすが、少量の表面結合したTCRβ鎖は、長期間にわたって発現された(Polic et al., How αβ T cells deal with induced TCRα ablation. Proceedings of the National Academy of Sciences, 98(15), 8744-8749.2001)。さらに、外因性TCRがシングルノックアウト変異体に導入される場合、内因性TCR鎖の存在は、未知の特異性を有する混合TCRヘテロ二量体の発現をもたらし得る(Sommermeyer et al., 2006, Designer T cells by T cell receptor replacement; European Journal of Immunology, 36(11), 3052-9.)。そのため、両方のTCR鎖をノックアウトすることは、細胞表面上での内因性TCR鎖のさらに低レベルの発現、および外因性TCR鎖の発現の際に混合TCRヘテロ二量体の可能性のある形成を防止する利点を有する。
【0130】
一過性発現は、例えば、ivtRNAの発現によって行われ得る。
【0131】
好ましい実施形態において、ステップ(d)において一過性に発現されるTCRα鎖は、TCRα鎖の成熟形態である。
【0132】
当業者は、3つの異なるタンパク質を含むタンパク質複合体のノックアウトのこの例から、本原理の適用によって、3つ超のタンパク質を含む表面タンパク質複合体のノックアウトも作製され得ることを理解する。
【0133】
「細胞表面でTCRを欠いている」という用語は、細胞表面上でTCRα/TCRβヘテロ二量体を発現しない細胞を指す。T細胞が細胞表面でTCRを発現するかどうかは、例えば、TCR複合体のタンパク質への抗体結合およびフローサイトメトリーに基づいて検出することができる。
【0134】
本適用の一実施形態は、TCRレシピエント細胞を得るための方法の提供に言及する。得られる両方のTCRレシピエント細胞において、内因性のTCRα鎖およびTCRβ鎖はノックアウトされている。
【0135】
「TCRα鎖の一過性発現」、「成熟TCRα鎖の一過性発現」または「TCRβ鎖の一過性発現」という用語は、TCRα鎖およびTCRβ鎖の非安定発現を指す。ある特定の実施形態において、一過性発現は、細胞のivtRNAによるトランスフェクションを介して起こる。第2のノックアウトステップ後のTCRα鎖およびTCRβ鎖の一過性発現は、2つのTCR鎖の1つが依然として存在し、一過性に発現したTCR鎖が細胞中で永続的に発現されない利点を有する細胞間を識別することを可能にする。そのため、ivtRNAの産物がもはや発現されず、発現した産物が分解される場合、細胞は、一過性に発現されるTCR鎖を欠いている。
【0136】
したがって、ステップ(e)における細胞表面でTCRを欠いている細胞の選択後、ivtRNAがもはや発現されず、発現した産物が分解される場合、細胞は、機能的なTCRα鎖もTCRβ鎖も発現しない。
【0137】
通常、CD3融合タンパク質は、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90、少なくとも100、少なくとも120、少なくとも140、少なくとも160、少なくとも180、少なくとも200、少なくとも220、少なくとも240、少なくとも260、少なくとも280、少なくとも300世代、またはそれ以上の世代の間、インビトロで、内因性TCR増殖刺激と独立したT細胞の増殖を可能にする。これは、細胞集団の実質的に一部が、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90、少なくとも100、少なくとも120、少なくとも140、少なくとも160、少なくとも180、少なくとも200、少なくとも220、少なくとも240、少なくとも260、少なくとも280、少なくとも300回、またはそれ以上の回数、分裂することを意味する。
【0138】
例えば患者が良くない副作用を経験する場合、治療用細胞を選択的に死滅させるために、例えばカスパーゼドメインを含む分子を、レシピエント細胞に導入することができ、これは、リガンド結合の際にアポトーシスを誘導する。
【0139】
さらに、操作されたT細胞に対する患者の免疫応答を回避するために、免疫原性表面タンパク質は、レシピエント細胞においてノックアウトされてもよい。したがって、細胞表面上でのMHC IおよびMHC II複合体分子の発現は、例えばノックアウトによって、妨げられ得る。例えば、MHC I複合体は、例えばベータ-2ミクログロブリン(B2M)の両方の対立遺伝子を破壊することによって、レシピエント細胞においてノックアウトされ得る。
【0140】
T細胞は、CD8および/もしくはCD4を発現してもよく、またはCD8およびCD4の両方を欠いていてもよい。
【0141】
ある特定の実施形態において、T細胞は、CD4を発現する。他の実施形態において、T細胞は、CD8を発現し得る。
【0142】
「T細胞エフェクター機能」は、とりわけ、サイトカインおよび/もしくは細胞傷害性エフェクタータンパク質、例えば、パーフォリン、グランザイム、およびグラニュリシンの放出、ならびに/またはFasリガンドの発現を指す。T細胞エフェクター機能は、Janeway, Immunobiology: The Immune System in Health and disease, 2011に詳細に記載されている。異なるT細胞型は、異なるT細胞エフェクター機能を示す。
【0143】
例えば、IFN-γは、TH1型のCD4+およびCD8+T細胞の両方によって放出される。したがって、IFN-γの放出は、T細胞エフェクター機能についての一般的な試験である。当業者は、IFN-γの測定のための異なる技法、例えば、IFN-γ酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)(BD OptEIA(商標))を承知している。
【0144】
「外因性」という用語は、分子が遺伝子工学技法のいずれかによって各細胞に移入されていることを指す。
【0145】
本出願は、外因性エフェクター分子、特に、外因性TCRを試験および特性評価するための遺伝子操作されたT細胞の使用も企図する。本出願は、TCRペプチド感受性、多量体結合特性、ならびに細胞傷害性アッセイおよびサイトカイン放出アッセイにおける機能性の調査を企図する。特性評価されるべき目的のTCRは、レシピエント細胞に導入されていてもよい。目的のTCRを持つそれによって作製された遺伝子操作されたT細胞は、外因性TCRの試験および特性評価のために使用することができる。
【0146】
具体的な実施形態において、本発明のT細胞は、正常な核型を有する。特に、レシピエント細胞が治療のために使用される場合、異常な核型を有する細胞はがん性細胞に進行する可能性が非常に高いので、レシピエント細胞は、正常な核型を有し、異常な核型を有するように変更されていないことが好ましい。「正常な核型」という用語は、例えば、染色体バンディング分析または蛍光インサイツハイブリダイゼーション(FISH)で検出可能な任意の眼に見える核型の異常を欠く細胞の状態を指す。
【実施例】
【0147】
構築物の正しい発現およびフォールディングを、α-CD3抗体およびeGFP発現を介して、
図1に記載されるように、CD3融合タンパク質の検出によって、TCR欠損Jurkat-76細胞において検証した(
図3)。形質導入Jurkat-76細胞を、抗CD3抗体による染色とその後のフローサイトメトリー分析によって、形質導入の7日後にCD3融合タンパク質の発現およびeGFP発現について分析した。生じた単一細胞クローンを、FACSの2週後に、抗CD3抗体染色とそれに続くフローサイトメトリー分析によって、CD3融合タンパク質およびeGFPの発現について再び評価した。作製された単一細胞クローンは、CD3キメラの発現レベルが、異なるクローンにおいて変わることを実証した。
【0148】
2人のドナー由来のTCR陰性T細胞を作製し、α-CD3抗体刺激を介して細胞の拡大増殖が可能になるように、CD3融合タンパク質で同時に形質導入した。単離されたクローンのCD8
+_001およびCD8
+_002は、インビトロで拡大増殖し、内因性TCRと独立した非常に高い増殖速度を示した(
図4a)。これらのT細胞クローンの高い拡大増殖速度は、抗CD3抗体(OKT-3)の存在下でのみ達成され得、これは、α-CD3抗体のCD3キメラ構築物への結合が、これらのTCR陰性T細胞の活性化をもたらしたことを実証した(
図4b)。
【0149】
CD3融合タンパク質を使用して作製された汎用レシピエント細胞は、細胞の任意のバックグラウンド活性化なしで、トランスジェニックTCR(国際公開第2010/058023A1号およびWilde, S., D. Sommermeyer, B. Frankenberger, M. Schiemann, S. Milosevic, S. Spranger, H. Pohla, W. Uckert, D. H. Busch, and D. J. Schendel. 2009. Dendritic cells pulsed with RNA encoding allogeneic MHC and antigen induce T cells with superior antitumor activity and higher TCR functional avidity. Blood 114: 2131-2139に開示されるT58、D115)発現、特異性、機能的アビディティー(
図5a~5c)、および死滅能力(
図6)の試験を可能にする。それぞれT58またはD115のいずれかで形質導入された単離されたT細胞クローン(CD8+_001およびCD8+_002)およびPBLを、それぞれのトランスジェニックTCRβ鎖およびYMDGTMSQV(YMD、供給源:immunAware、Copenhagen、Denmark)ペプチドを含む四量体に特異的なα-CD3およびα-TCR-Vβ抗体(TRBV抗体、TCR-Vβ23、T58、AF23、IgG1マウスPE;TCR-Vβ8、D115、56C5.2、IgG2aマウス、両方ともBeckman Coulter)で染色した(
図5a)。FACSによる富化後、細胞は、フローサイトメトリー分析によってその後に分析した。非形質導入CD8+_001およびCD8+_002T細胞クローン、ならびに未処理PBLを、それぞれの陰性対照として使用した。IFN-γを、形質導入T細胞(CD8+_001、CD8+_002またはPBL)の標的細胞との2:1のE:T比でのインキュベーション20時間後の死滅アッセイにおいて使用された同じ共培養物に由来する上清のELISAによって測定した。陽性対照は、750ng/mLのPMAおよび5ng/mLのイオノマイシン(PMA/Iono)で活性化されたエフェクター細胞を含んでいた。形質導入PBLのIFN-γ放出を2つの独立した実験において決定した。非形質導入細胞(w/o)は陰性対照としての役割を果たした。標的細胞は、チロシナーゼ陽性腫瘍細胞(Mel624.38)およびチロシナーゼ陰性腫瘍細胞(A273)を含んでいた(
図5b)。K562_A2_CD86細胞に、漸減量のペプチド(10
-4~10
-12M)をロードし、それぞれT58またはD115を発現するT細胞とともに2:1の固定E:T比で共培養した。IFN-γ放出を、IFN-γELISAによって20時間後に決定し、相対IFN-γ放出を、最大IFN-γ放出を100%の参照値に設定することによって算出した。より低い値は、この参照に従って算出した。TCR形質導入T細胞クローン(CD8+_001、CD8+_002)およびPBLの機能的アビディティーを、ペプチド濃度の減少に応答する相対IFN-γ放出として
図5c)にプロットする。値は、生物学的な二反復に由来した。
【0150】
比較実験において、単離されたクローンのCD8+_001およびCD8+_002を、フィーダー(LCL)細胞およびOKT-3抗体(標準として示す)、CD3/CD28streptamer(登録商標)(Iba、番号6-8901-000)、またはそこに固定化されたα-CD3抗体およびα-CD28抗体を有するミクロスフェアビーズ(Thermo Fisher Scientific、番号11132D)のいずれかによる活性化の下、インビトロで拡大増殖させた。細胞を、2~3日間拡大増殖させた。細胞を、15日の期間にわたって刺激した。15日目に、細胞数を決定した。死滅アッセイを、IncuCyte(登録商標)ZOOMシステムを使用して実施して、2:1のE:T比で、72時間にわたってIncuCyte(登録商標)NucLight Red色素で標識されたチロシナーゼ陽性(Mel624.38)および陰性(A375)の腫瘍細胞の死滅(細胞溶解)をモニターした。それぞれの腫瘍細胞単独は、エフェクター細胞の非存在下で増殖についての対照としての役割を果たした。非形質導入エフェクター細胞は、トランスジェニックTCRの非存在下でバックグラウンド死滅を推定するための対照としての役割を果たした。細胞数/ウェルを、IncuCyte(登録商標)ZOOMソフトウェア2016Bを使用することによって決定して、各アプローチの四反復で分析した。しかし、フィーダー細胞のさらなる共刺激分子は欠けており、streptamer(登録商標)またはビーズによる刺激は、同等またはより良好なレベルで、有意な活性化さえ可能にする。
【0151】
項目
項目1. - CD3ε外部ドメイン、
- CD3δ外部ドメインまたはCD3γ外部ドメイン、
- 膜貫通ドメイン、および
- CD3ζドメイン
を含むCD3融合タンパク質。
【0152】
項目2. 膜貫通ドメインが、CD28膜貫通ドメインである、項目1に記載のCD3融合タンパク質。
【0153】
項目3. CD3ヘテロ二量体が、ヒンジドメインによって膜貫通ドメインに連結されている、項目1または2に記載のCD3融合タンパク質。
【0154】
項目4. CD3ε外部ドメインおよびCD3δ外部ドメインまたはCD3γ外部ドメインを膜貫通ドメインに連結するヒンジドメインが、IgGヒンジドメイン、CD28ヒンジドメイン、またはCD8ヒンジドメインからなる群から選択される、項目1~3に記載のCD3融合タンパク質。
【0155】
項目5. ヒンジドメインが、CD8ヒンジドメインである、項目4に記載のCD3融合タンパク質。
【0156】
項目6. 融合タンパク質が、CD8シグナルペプチドドメインをさらに含む、先行する項目に記載のCD3融合タンパク質。
【0157】
項目7. CD3δ外部ドメインおよびCD3ε外部ドメイン、またはCD3ε外部ドメインおよびCD3γ外部ドメインが、少なくとも5アミノ酸を含有するリンカーによって接続されている、先行する項目に記載のCD3融合タンパク質。
【0158】
項目8. アミノ酸が、グリシンおよびセリン残基の群から選択される、項目7に記載のCD3融合タンパク質。
【0159】
項目9. 融合タンパク質が、TCR陰性T細胞がCD3活性化刺激剤およびCD28活性化刺激剤と接触すると、前記融合タンパク質が発現される前記TCR陰性T細胞を活性化することができる、項目8に記載のCD3融合タンパク質。
【0160】
項目10. CD3活性化刺激剤が、抗CD3抗体である、項目9に記載のCD3融合タンパク質。
【0161】
項目11. CD28活性化刺激剤が、抗CD28抗体である、項目9または10に記載のCD3融合タンパク質。
【0162】
項目12. 融合タンパク質が、
- CD8シグナルペプチドドメイン、
- CD3δ外部ドメインおよびCD3ε外部ドメイン、
- CD8ヒンジドメイン、
- CD28膜貫通ドメイン、
- CD3ζドメイン
を含む、先行する項目に記載のCD3融合タンパク質。
【0163】
項目13. CD8シグナルペプチドが、配列番号1と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む、先行する項目6~12に記載のCD3融合タンパク質。
【0164】
項目14. CD8シグナルペプチドが、配列番号1であるアミノ酸配列を含む、先行する項目6~12に記載のCD3融合タンパク質。
【0165】
項目15. CD3δ外部ドメインが、配列番号2と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む、先行する項目に記載のCD3融合タンパク質。
【0166】
項目16. CD3δ外部ドメインが、配列番号2であるアミノ酸配列を含む、先行する項目に記載のCD3融合タンパク質。
【0167】
項目17. CD3γ外部ドメインが、配列番号3と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む、先行する項目に記載のCD3融合タンパク質。
【0168】
項目18. CD3γ外部ドメインが、配列番号3であるアミノ酸配列を含む、先行する項目に記載のCD3融合タンパク質。
【0169】
項目19. CD3ε外部ドメインが、配列番号4と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む、先行する項目に記載のCD3融合タンパク質。
【0170】
項目20. CD3ε外部ドメインが、配列番号4であるアミノ酸配列を含む、項目3~14に記載のCD3融合タンパク質。
【0171】
項目21. CD3δドメインおよびCD3εドメイン、またはCD3δドメインおよびCD3γドメインを接続するリンカーが、配列番号5と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む、先行する項目に記載のCD3融合タンパク質。
【0172】
項目22. CD3δ外部ドメインおよびCD3ε外部ドメイン、またはCD3δ外部ドメインおよびCD3γ外部ドメインを接続するリンカーが、配列番号5であるアミノ酸配列を含む、先行する項目に記載のCD3融合タンパク質。
【0173】
項目23. CD8ヒンジドメインが、配列番号6と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む、先行する項目に記載のCD3融合タンパク質。
【0174】
項目24. CD8ヒンジドメインが、配列番号6であるアミノ酸配列を含む、先行する項目に記載のCD3融合タンパク質。
【0175】
項目25. 膜貫通ドメインが、配列番号7と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む、先行する項目に記載のCD3融合タンパク質。
【0176】
項目26. 膜貫通ドメインが、配列番号7であるアミノ酸配列を含む、先行する項目に記載のCD3融合タンパク質。
【0177】
項目27. CD3ζドメインが、配列番号8と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む、先行する項目に記載のCD3融合タンパク質。
【0178】
項目28. CD3ζドメインが、配列番号8であるアミノ酸配列を含む、先行する項目に記載のCD3融合タンパク質。
【0179】
項目29. 融合タンパク質が、配列番号11と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含む、先行する項目に記載のCD3融合タンパク質。
【0180】
項目30. 融合タンパク質が、配列番号11であるアミノ酸配列を含む、先行する項目に記載のCD3融合タンパク質。
【0181】
項目31. 融合タンパク質のN末端からC末端の方向でのドメインの順序が、CD3δ外部ドメインまたはCD3γ外部ドメイン、リンカー、CD3ε外部ドメイン、ヒンジドメイン、CD28膜貫通ドメイン、CD3ζドメインである、先行する項目に記載のCD3融合タンパク質。
【0182】
項目32. CD3融合タンパク質が、CD28、OX40、ICOSおよびCD28からなる群から選択される共刺激分子をさらに含む、先行する項目に記載のCD3融合タンパク質。
【0183】
項目33. 項目1~32に記載される融合タンパク質をコードする配列を含有する核酸分子。
【0184】
項目34. ベクターが、蛍光タンパク質をコードする配列をさらに含む、項目33に記載の核酸分子。
【0185】
項目35. 項目1~32に記載のCD3融合タンパク質をコードする配列と蛍光タンパク質をコードする配列との間が、リボソームスキッピング配列である、項目34に記載の核酸分子。
【0186】
項目36. CD3刺激剤およびCD28刺激剤によるTCR陰性T細胞の活性化のための、項目1~32に記載の融合タンパク質または項目33~35に記載の核酸分子の使用。
【0187】
項目37. CD3刺激剤が、活性化抗CD3抗体またはその結合性断片である、項目36に記載の使用。
【0188】
項目38. CD28刺激剤が、活性化抗CD28抗体またはその結合性断片である、項目36~37に記載の使用。
【0189】
項目39. T細胞のTCR非依存性活性化のための方法であって、
- 項目1~32に記載の融合タンパク質を発現させるステップ、
- T細胞をCD3刺激剤およびCD28刺激剤で刺激するステップ
を含む、方法。
【0190】
項目40. - 項目1~32に記載の融合タンパク質を発現させるステップ、
- TCRを欠失させるステップ、
- T細胞をCD3刺激剤およびCD28刺激剤で刺激するステップ
を含む、項目39に記載の方法。
【0191】
項目41. CD3刺激剤およびCD28刺激剤が、抗CD3抗体および抗CD28抗体またはその結合性断片を含む組成物である、項目38に記載の使用、および項目39または40に記載の方法。
【0192】
項目42. 抗CD3抗体および抗CD28抗体またはその結合性断片を含む組成物が、固定化されている、項目38に記載の使用、および項目41に記載の方法。
【0193】
項目43. 抗CD3抗体および抗CD28抗体またはその結合性断片を含む組成物が、ビーズ上または組織培養容器表面上に固定化されている、項目38に記載の使用、および項目42に記載の方法。
【0194】
項目44. 抗CD3抗体および抗CD28抗体またはその結合性断片を含む組成物が、ビーズ上に固定化されている、項目38に記載の使用、および項目43に記載の方法。
【0195】
項目45. サイトカインが、TCR陰性T細胞の活性化のために必要ではない、項目38に記載の使用、および項目39~44に記載の方法。
【0196】
項目46. T細胞が、CD28陽性である、項目38に記載の使用、および項目39~45のいずれか一項に記載の方法。
【0197】
項目47. TCR複合体がノックアウトされているか、またはその発現が抑制されている、項目38に記載の使用、および項目39~46のいずれか一項に記載の方法。
【0198】
項目48. 項目1~32に記載の融合タンパク質を含むT細胞。
【0199】
項目49. T細胞が、内因性TCRを欠いている、項目48に記載のT細胞。
【0200】
項目50. 医薬としての使用のための、項目48および49のいずれか一項に記載のT細胞。
【0201】
項目51. がんまたはウイルス性疾患の処置における使用のための、項目48および49のいずれか一項に記載のT細胞。
【0202】
項目52. 外因性エフェクター分子の試験および特性評価のための、項目48および49に記載のT細胞の使用。
【0203】
項目53. エフェクター分子が、TCRである、項目52に記載の使用。
【配列表】