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  • 特許-クリーニングブレード 図1
  • 特許-クリーニングブレード 図2
  • 特許-クリーニングブレード 図3
  • 特許-クリーニングブレード 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】クリーニングブレード
(51)【国際特許分類】
   G03G 21/00 20060101AFI20240710BHJP
【FI】
G03G21/00 318
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022572066
(86)(22)【出願日】2021-12-03
(86)【国際出願番号】 JP2021044521
(87)【国際公開番号】W WO2022138076
(87)【国際公開日】2022-06-30
【審査請求日】2023-06-16
(31)【優先権主張番号】P 2020216514
(32)【優先日】2020-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004358
【氏名又は名称】弁理士法人NYTパートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100120846
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 雅也
(72)【発明者】
【氏名】神山 潤也
(72)【発明者】
【氏名】萩 洋一
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 憲司
(72)【発明者】
【氏名】福岡 智
(72)【発明者】
【氏名】中北 里志
【審査官】牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-225164(JP,A)
【文献】特開2019-144383(JP,A)
【文献】特開2008-076512(JP,A)
【文献】特開平11-119620(JP,A)
【文献】特開2020-016766(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0153987(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体部材と接触する先端部を有しており、
前記先端部は、23℃環境下でのtanδが0.35以上であり、23℃環境下での損失弾性率が5.59MPa以上であり、23℃環境下での反発弾性率が21%以下であるポリウレタンから形成されていることを特徴とするクリーニングブレード。
【請求項2】
前記ポリウレタンのtanδは0.50以下である、請求項1に記載のクリーニングブレード。
【請求項3】
前記ポリウレタンの損失弾性率は12.10MPa以下である、請求項1に記載のクリーニングブレード。
【請求項4】
前記ポリウレタンの反発弾性率は16%以上である、請求項1に記載のクリーニングブレード。
【請求項5】
前記ポリウレタンの架橋剤はトリメチロールエタンである、請求項1に記載のクリーニングブレード。
【請求項6】
前記ポリウレタンの鎖延長剤は1,3-プロパンジオールである、請求項1に記載のクリーニングブレード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置で使用されるクリーニングブレードに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を利用した画像形成装置(例えば、複写機、プリンター)では、感光体ドラムの表面に形成されたトナー像を、移動するシートに転写させる。感光体ドラムの表面に残存したトナーは、クリーニングブレードによって除去される。
【0003】
クリーニングブレードは、適度な変形を起こすように適切な弾性を有し、長い寿命を確保するために適切な耐摩耗性を有することが望ましい。一般的には、クリーニングブレードは、熱硬化性ポリウレタン樹脂または熱硬化性ポリウレタンエラストマーから製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2017/111061号
【発明の概要】
【0005】
画像形成装置においては、感光体ドラムとその周囲の部品は1つのユニットとして提供されることが多い。この場合、ユニットの寿命は最も寿命が短い部品によって決まってしまう。クリーニングブレードは、寿命が短い部品であり、さらにその寿命を長くすることが望まれている。
【0006】
本発明は、さらに寿命が長いクリーニングブレードを提供する。
【0007】
本発明のある態様はクリーニングブレードを提供する。このクリーニングブレードは、感光体部材と接触する先端部を有する。前記先端部は、23℃環境下でのtanδが0.35以上であり、23℃環境下での損失弾性率が5.59MPa以上であり、23℃環境下での反発弾性率が21%以下であるポリウレタンから形成されている。
【0008】
この態様においては、クリーニングブレードの先端部の耐摩耗性を向上させ、クリーニングブレードの寿命を延ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る使用中のクリーニングブレードを示す図である。
図2】本発明の好適な範囲を調べるために製作されたサンプルの特性と試験結果を示す表である。
図3】本発明の好適な範囲を調べるためのクリーニングブレードの摩耗試験の様子を示す図である。
図4】クリーニングブレードの摩耗測定の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付の図面を参照しながら本発明に係る実施形態を説明する。図面の縮尺は必ずしも正確ではなく、一部の特徴は誇張または省略されることもある。
【0011】
図1に示すように、実施形態に係るクリーニングブレード10は、電子写真方式を利用した画像形成装置の感光体ドラム(感光体部材)1の近傍に配置されている。周知のように、感光体ドラム1の近傍には転写装置2が配置されている。図示しない搬送装置で搬送される紙のシートSが、感光体ドラム1と転写装置2の間のニップを通過する間に、感光体ドラム1に形成されたトナー像がシートSに転写される。
【0012】
シートSに転写されず感光体ドラム1の表面に残存したトナーは、クリーニングブレード10によって除去される。画像形成装置は、当業者に熟知されているように他の多くの部品を有するが、他の部品の説明は省略する。
【0013】
クリーニングブレード10は、硬いプラスチックまたは金属製のブラケット(支持部材)11と、ブラケット11に固定された弾性部材12を有する。ブラケット11も弾性部材12も感光体ドラム1の軸線方向と平行に延びている。ブラケット11は画像形成装置の定位置に固定されており、弾性部材12を支持する。ブラケット11が高い剛性を有するのに対して、弾性部材12は適度な弾性を有する。弾性部材12の先端部13は、感光体ドラム1の外周面に接触させられる。感光体ドラム1に接触した先端部13は、感光体ドラム1上の残留トナーを掻き落とす。感光体ドラム1から反力を受けて、弾性部材12、特に先端部13は弾性変形させられる。
【0014】
クリーニングブレード10の先端部13の耐摩耗性を向上させ、クリーニングブレード10の寿命を延ばすことが望ましい。出願人は、弾性部材12の多数のサンプルを準備し、これらのサンプルの特性を測定し、摩耗試験を行った。
【0015】
図2は、各サンプルの材料と特性を示す。
【0016】
製造された弾性部材12の各サンプルは、ポリウレタンであった。使用されたポリオールはエステル系ポリオール(分子量2000)であった。使用されたイソシアネートは、4,4'-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)であり、東ソー株式会社(日本国東京)製の「MILLIONATE MT」であった。架橋剤であるトリメチロールエタン(TME)と1,1,1-トリメチロールプロパン(TMP)は、ともに広栄化学工業株式会社(日本国東京)製であった。鎖延長剤である1,3-プロパンジオール(1,3PD)と、1,4-ブタンジオ-ル(1,4BD)はともに三菱ケミカル株式会社(日本国東京)製であった。
【0017】
反発弾性率、損失弾性率、および貯蔵弾性率は、気温23℃、湿度55%R.H.で測定した。
【0018】
反発弾性率は、JIS K6255(2013年)に準拠したリュプケ式反発弾性測定装置(株式会社上島製作所(日本国東京)製の「VR-6512」)で測定した。
【0019】
損失弾性率および貯蔵弾性率は、各サンプルについて製作された弾性率測定のためのテストピースに対して測定した。テストピースの厚さは2mmであり、幅は3mmであり、標線間距離は20mmであった。
【0020】
これらのテストピースに、2μmの振幅で10Hzの周波数で変形を与え、動的応力と動的歪みの位相差を測定した。測定した機械は、株式会社ユービーエム(日本国京都)製の「Rheogel-E4000HP」であった。そして、公知の式に歪みを当てはめて、損失弾性率および貯蔵弾性率を計算した。粘性/弾性比(tanδ)は、損失弾性率を貯蔵弾性率で除算することで得た。
【0021】
摩耗量は、下記の実験で測定した。摩耗量も、気温23℃、湿度55%R.H.で測定した。図3に示すように、弾性部材12のサンプルにおけるブラケット11の端部からの突出長さLは9mmであり、厚さtは2mmであった。ただし、長さLは弾性部材12が真っ直ぐな状態で測定した。
【0022】
図3に示すように、回転可能な円柱19の外周に厚さ0.3μmのラッピングフィルム20を巻き付けた。円柱19は、ガラス材料の円柱の表面にポリカーボネートをコーティングしたものであり、感光体ドラム1を模倣した。ラッピングフィルム20は、スリーエムジャパン株式会社(日本国東京)から入手可能な「ラッピングフィルム研磨材 #15000 A3-0.3SHT」であった。円柱19にラッピングフィルム20を巻き付けた理由は、研磨剤によって、弾性部材12の先端部13の摩耗を加速するためであった。
【0023】
次に、クリーニングブレード10の弾性部材12をラッピングフィルム20が巻かれた円柱19に対して、接触角度θ、接触荷重0.18N/cmにて接触させた。接触角度θは20度であった。そして、感光体ドラム1の周速度を460mm/sで回転させ、1485mm(A4サイズの紙、5枚の合計長さ)の距離、感光体ドラム1を弾性部材12に対して摺動した。
【0024】
この後、弾性部材12の先端部13の摩耗量を測定した。摩耗量の測定には、株式会社キーエンス(日本国大阪)のレーザー顕微鏡「VK-X250」を用いて、拡大率150倍の対物レンズ使用し、先端部13のエッジを撮影し、撮影画像において摩耗部分22の面積を計算した。撮影方向は、弾性部材12の長手方向に対して傾いていたが(図4中の矢印は撮影方向を示す)、計算上の補正によって弾性部材12の長手方向に直交する摩耗部分22の面積を計算することができた。撮影は、弾性部材の長手方向における3ヶ所に対して行った。3ヶ所について得られた面積を平均した値を図2に掲載した。
【0025】
試験結果から、摩耗量は、サンプル1~3では非常に小さく、サンプル4~8では大きかった。
【0026】
したがって、弾性部材12の少なくとも先端部13は、23℃環境下での粘性/弾性比(tanδ)が0.35以上であり、23℃環境下での損失弾性率が5.59MPa以上であり、23℃環境下での反発弾性率が21%以下であるポリウレタンから形成されていると好ましい。このような特性を有する先端部13は、反発弾性率が低いので、衝撃または振動の吸収性が高い。そして、粘性/弾性比(tanδ)が高いので、感光体ドラム1との摺動で発生する摩擦エネルギーを熱エネルギーとして放散する能力が高く、このため耐摩耗性が高い。したがって、クリーニングブレード10の寿命を延ばすことができる。
【0027】
以上、本発明の好ましい実施形態を参照しながら本発明を図示して説明したが、当業者にとって特許請求の範囲に記載された発明の範囲から逸脱することなく、形式および詳細の変更が可能であることが理解されるであろう。このような変更、改変および修正は本発明の範囲に包含されるはずである。
【0028】
例えば、上記の実施形態においては、クリーニングブレードは感光体ドラム1の外周面に接触して感光体ドラム1を清掃する。しかし、本発明に係るクリーニングブレードは、感光体ドラム1の代わりに、複数のロールに巻きつけられた感光体ベルトに接触して、そのベルトを清掃してもよい。
【符号の説明】
【0029】
1 感光体ドラム(感光体部材)
2 転写装置
10 クリーニングブレード
11 ブラケット(支持部材)
12 弾性部材
13 先端部
S シート
図1
図2
図3
図4