IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ グローバス メディカル インコーポレイティッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】埋め込み型仮骨延長デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/72 20060101AFI20240710BHJP
【FI】
A61B17/72
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2023027171
(22)【出願日】2023-02-24
(65)【公開番号】P2023124853
(43)【公開日】2023-09-06
【審査請求日】2023-02-24
(31)【優先権主張番号】17/652,513
(32)【優先日】2022-02-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507400686
【氏名又は名称】グローバス メディカル インコーポレイティッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】アンティ リトバネン
(72)【発明者】
【氏名】ユハ ハーヤ
(72)【発明者】
【氏名】ハリ ハリラ
(72)【発明者】
【氏名】タネリ カリ
【審査官】木村 立人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第5415660(US,A)
【文献】特表2013-526952(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0010233(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0173351(US,A1)
【文献】国際公開第2009/115645(WO,A1)
【文献】特表2016-526930(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/56―17/92
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
埋め込み型仮骨延長デバイスであって、
外管と、
少なくとも部分的に前記外管内に配設された内管と、
前記外管及び前記内管のうちの一方に接続され、かつ少なくとも部分的に前記一方内にあり、外部電力コイルへの誘導結合を介して電力を受け取るように構成された、誘導電力伝送回路と、
前記外管及び前記内管のうちの前記一方に接続され、かつ少なくとも部分的に前記一方内にある形状記憶合金アクチュエータであって、前記形状記憶合金アクチュエータが、前記誘導電力伝送回路によって電力供給されるように電気的に接続された形状記憶合金要素を含み、前記形状記憶合金要素が、閾値抵抗加熱に応答して、対応する形状変化を伴って第1の相から第2の相に移行するように構成されている、形状記憶合金アクチュエータと、
前記形状記憶合金アクチュエータに接続され、前記外管及び前記内管のうちの別の一方に摺動可能に接続された一方向直線運動ロッキングクラッチを含む力伝達装置であって、前記一方向直線運動ロッキングクラッチが、前記第1の相及び前記第2の相のうちの一方から前記第1の相及び前記第2の相のうちの他方への移行による前記形状記憶合金要素の形状変化を、前記外管内からの前記内管の伸長に変換し、前記形状記憶合金要素が前記第1の相及び前記第2の相のうちの前記他方から前記第1の相及び前記第2の相のうちの前記一方へ移行するときに、前記外管内への前記内管の収縮を防止するように構成されている、力伝達装置と、を備
前記形状記憶合金アクチュエータが、
プレストレスばねであって、前記形状記憶合金要素と前記力伝達装置との間に結合され、前記第1の相及び前記第2の相のうちの前記他方から前記第1の相及び前記第2の相のうちの前記一方に移行するときに、前記形状記憶合金要素の伸長を促進するために前記形状記憶合金要素に張力を印加するように構成されている、埋め込み型仮骨延長デバイス。
【請求項2】
前記一方向直線運動ロッキングクラッチが、前記第1の相から前記第2の相への移行による前記形状記憶合金要素の形状変化を、前記外管内からの前記内管の伸長に変換し、前記形状記憶合金要素が前記第2の相から前記第1の相へ移行するときに、前記外管内への前記内管の収縮を防止するように構成されている、請求項1に記載の埋め込み型仮骨延長デバイス。
【請求項3】
前記力伝達装置の前記一方向直線運動ロッキングクラッチが、
角度リングとローラとを含む少なくとも1つのリング装置であって、前記角度リングの少なくとも一部分が、前記外管及び前記内管のうちの前記他方の内面に対して、かつ前記内面に面した傾斜した表面を有し、前記ローラが、前記傾斜した面と前記外管及び前記内管のうちの前記他方の前記内面との間に位置決めされている、少なくとも1つのリング装置を含み、
前記形状記憶合金要素が、前記外管への前記内管の収縮を促す、前記第1の相及び前記第2の相のうちの前記他方から、前記第1の相及び前記第2の相のうちの前記一方に移行するときに、摩擦によって、前記ローラが、スレートでふかれた表面上で転動して、前記スレートでふかれた表面と前記外管及び前記内管のうちの前記他方の前記内面との間に押し込まれ、前記外管への前記内管の収縮を防止する、請求項1に記載の埋め込み型仮骨延長デバイス。
【請求項4】
前記一方向直線運動ロッキングクラッチが、
複数の前記リング装置と、
前記複数の前記リング装置の前記角度リングの中心開口部を通って延在して、前記角度リングを前記外管及び前記内管のうちの前記一方の長軸に沿って配置するロッドであって、前記形状記憶合金アクチュエータに取り付けられている、ロッドと、を含む、請求項に記載の埋め込み型仮骨延長デバイス。
【請求項5】
前記リング装置が、前記角度リングの周りで円周方向に離間され、前記傾斜した面を有する、前記角度リングの複数の表面凹部と、前記表面凹部のうちの異なる表面凹部内に位置決めされた複数のローラと、を含む、請求項に記載の埋め込み型仮骨延長デバイス。
【請求項6】
前記ローラが、
球状ボール及び円筒のうちの1つを含む、請求項に記載の埋め込み型仮骨延長デバイス。
【請求項7】
前記力伝達装置の前記一方向直線運動ロッキングクラッチが、
前記形状記憶合金アクチュエータに接続された第1のロッドと、
角度リングとローラとを含む少なくとも1つのリング装置であって、前記角度リングが、第2のロッドを取り囲み、前記角度リングの一部分が、前記ロッドに面した傾斜した面を有し、前記ローラが、前記傾斜した面と前記ロッドとの間に位置決めされている、少なくとも1つのリング装置と、を含み、
前記形状記憶合金要素が前記第1の相及び前記第2の相のうちの前記他方から前記第1の相及び前記第2の相のうちの前記一方に移行すると、これにより前記第1のロッドへの前記ロッキングクラッチの結合が引き起こされて、前記埋め込み型仮骨延長デバイスの運動及び伸延が引き起こされる、請求項1に記載の埋め込み型仮骨延長デバイス。
【請求項8】
前記形状記憶合金アクチュエータが、
第1の部材と離間された第2の部材との間に延在する複数のロッド状の形状記憶合金要素を含み、前記第1の部材が、前記外管及び前記内管のうちの前記一方に接続され、かつ少なくとも部分的に前記一方内にあり、前記第2の部材が、前記力伝達装置の前記一方向直線運動ロッキングクラッチに接続されている、請求項1に記載の埋め込み型仮骨延長デバイス。
【請求項9】
前記ロッド状の形状記憶合金要素が、ニッケルとチタンとの合金を含む、請求項に記載の埋め込み型仮骨延長デバイス。
【請求項10】
前記形状記憶合金アクチュエータが、
前記第1の部材と前記第2の部材との間に延在する複数の弾性ロッドを含む、請求項に記載の埋め込み型仮骨延長デバイス。
【請求項11】
前記弾性ロッドが、前記ロッド状の形状記憶合金要素とともに散在して配置されている、請求項10に記載の埋め込み型仮骨延長デバイス。
【請求項12】
前記弾性ロッドが金属を含み、前記ロッド状の形状記憶合金要素がニッケルとチタンとのニチノール合金を含み、
前記第1及び第2の部材が、締め付け板であって、前記弾性ロッド及び前記ロッド状の形状記憶合金要素の両端部を受容して固定的に締め付けるように構成された開口部を有する締め付け板を含む、請求項10に記載の埋め込み型仮骨延長デバイス。
【請求項13】
前記形状記憶合金アクチュエータが、
プレストレスばねであって、前記第2の相から前記第1の相に移行するときに、前記ロッド状の形状記憶合金要素の伸長を促進するように、前記ロッド状の形状記憶合金要素に張力を印加するように構成されたプレストレスばねを更に含む、請求項に記載の埋め込み型仮骨延長デバイス。
【請求項14】
仮骨延長システムであって、前記仮骨延長システムが、
誘導電力ユニットであって、少なくとも1つのプロセッサと、制御された電流レベルを誘導電力コイルに供給するために前記少なくとも1つのプロセッサによって制御されるように構成された電源と、を含む、誘導電力ユニットと、
埋め込み型仮骨延長デバイスと、を備え、前記埋め込み型仮骨延長デバイスが、
外管と、
少なくとも部分的に前記外管内に配設された内管と、
前記外管及び前記内管のうちの一方に接続され、かつ少なくとも部分的に前記一方内にあり、前記誘導電力ユニットの前記誘導電力コイルへの誘導結合を介して電力を受け取るように構成された、誘導電力伝送回路と、
前記外管及び前記内管のうちの前記一方に接続され、かつ少なくとも部分的に前記一方内にある形状記憶合金アクチュエータであって、前記形状記憶合金アクチュエータが、前記誘導電力伝送回路によって電力供給されるように電気的に接続された形状記憶合金要素を含み、前記形状記憶合金要素が、閾値抵抗加熱に応答して、対応する形状変化を伴って第1の相から第2の相に移行するように構成されている、形状記憶合金アクチュエータと、
前記形状記憶合金アクチュエータに接続され、前記外管及び前記内管のうちの別の一方に摺動可能に接続された一方向直線運動ロッキングクラッチを含む力伝達装置であって、前記一方向直線運動ロッキングクラッチが、前記第1の相及び前記第2の相のうちの一方から前記第1の相及び前記第2の相のうちの他方への移行による前記形状記憶合金要素の形状変化を、前記外管内からの前記内管の伸長に変換し、前記形状記憶合金要素が前記第1の相及び前記第2の相のうちの前記他方から前記第1の相及び前記第2の相のうちの前記一方へ移行するときに、前記外管内への前記内管の収縮を防止するように構成されている、力伝達装置と、を含み、
通信ネットワークを介して通信するように構成されたネットワークインターフェースを更に備え、
前記少なくとも1つのプロセッサが、前記形状記憶合金要素を前記対応する形状変化を伴って前記第1の相から前記第2の相に移行させるように前記電源が制御される毎に、時刻を追跡する患者治療日誌を生成し、前記ネットワークインターフェースを介して前記患者治療日誌を通信するように構成されている、仮骨延長システム。
【請求項15】
前記少なくとも1つのプロセッサが、前記電源を制御して、前記形状記憶合金要素を前記対応する形状変化を伴って前記第1の相から前記第2の相に移行させるのに十分な第1の規定の持続時間の間、前記制御された電流レベルを前記誘導電力コイルに供給するように、かつその後、前記形状記憶合金要素を前記形状変化の対応する逆戻りを伴って前記第2の相から前記第1の相に移行させるのに十分な少なくとも第2の規定の持続時間の間、前記電源が前記制御された電流レベルを前記誘導電力コイルに供給するのを防止するように構成されている、請求項14に記載の仮骨延長システム。
【請求項16】
通信ネットワークを介して通信するように構成されたネットワークインターフェースを更に備え、
前記少なくとも1つのプロセッサが、前記ネットワークインターフェースを介して所定の起動スケジュールを受信し、前記所定の起動スケジュールに従って、前記制御された電流レベルを前記誘導電力コイルに供給するように前記電源を制御するように構成されている、請求項14に記載の仮骨延長システム。
【請求項17】
方法であって、
外部電力コイルへの誘導結合を介して電力を受け取るように誘導電力伝送回路を動作させることであって、前記誘導電力伝送回路が、外管及び前記外管内に少なくとも部分的に配設されている内管のうちの一方に接続され、かつ少なくとも部分的に前記一方内にある、動作させることと、
前記外管及び前記内管のうちの前記一方に接続され、かつ少なくとも部分的に前記一方内にある形状記憶合金アクチュエータを提供することであって、前記形状記憶合金アクチュエータが、前記誘導電力伝送回路によって電力供給されるように電気的に接続された形状記憶合金要素を含み、前記形状記憶合金要素が、閾値抵抗加熱に応答して、対応する形状変化を伴って第1の相から第2の相に移行するように構成されている、提供することと、
前記形状記憶合金アクチュエータに接続され、前記外管及び前記内管のうちの別の一方に摺動可能に接続された一方向直線運動ロッキングクラッチを含む力伝達装置を提供することであって、前記一方向直線運動ロッキングクラッチが、前記第1の相及び前記第2の相のうちの一方から前記第1の相及び前記第2の相のうちの他方への移行による前記形状記憶合金要素の形状変化を、前記外管内からの前記内管の伸長に変換し、前記形状記憶合金要素が前記第1の相及び前記第2の相のうちの前記他方から前記第1の相及び前記第2の相のうちの前記一方へ移行するときに、前記外管内への前記内管の収縮を防止するように構成されている、提供することと、を含み、
前記形状記憶合金アクチュエータが、
プレストレスばねであって、前記形状記憶合金要素と前記力伝達装置との間に結合され、前記第1の相及び前記第2の相のうちの前記他方から前記第1の相及び前記第2の相のうちの前記一方に移行するときに、前記形状記憶合金要素の伸長を促進するために前記形状記憶合金要素に張力を印加するように構成されている、方法。
【請求項18】
前記形状記憶合金要素を前記対応する形状変化を伴って前記第1の相から前記第2の相に移行させるのに十分な第1の規定の持続時間の間、前記形状記憶合金アクチュエータに電力を供給するように前記誘導電力伝送回路を動作させることと、その後、前記形状記憶合金要素を前記形状変化の対応する逆戻りを伴って前記第2の相から前記第1の相に移行させるのに十分な少なくとも第2の規定の持続時間の間、前記誘導電力伝送回路が前記形状記憶合金アクチュエータに電力を供給するように動作するのを防止することと、を更に含む、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、脚又は腕などの四肢を伸延するために人間に使用される、四肢伸延デバイス及び関連する処置に関する。
【背景技術】
【0002】
四肢伸延処置はかなりの合併症を伴うという一般的な一致がある。にもかかわらず、手術は、功を奏する有益な治療選択肢と考えられている。したがって、四肢長差及び低身長は、種々の外科的な骨伸延技術によって治療される。
【0003】
創外固定による骨伸延は、1950年代に発明され、依然として世界的なゴールデンスタンダードである。創外固定器による伸延は、疼痛、ピントラック感染、リハビリテーションを行う可能性が限られていることによる関節硬直、及びフレームの早期除去による再骨折などの合併症を伴う。創外固定はまた、美容上の転帰不良につながり、フレームは患者の日常生活において実用的ではない。
【0004】
創外固定の問題を克服するために、髄内伸延釘による四肢伸延術が開発され、過去10年間に人気を得ている。内部伸延は、患者にとってはるかにより便利であり、上に列挙した問題を克服することができるが、デバイス関連の合併症及び技術的問題が依然として存在する。報告されたそのような問題は、(i)埋め込み機器の腐食及び摩耗微粒子の放出(例えば、NuVasiveによるPRECICE(「Precice」)及びOrthofixによるFITBONE(「Fitbone」))、(ii)釘の機械的破損(Precice)、(iii)伸延速度の制御不良(Intramedullary Skeletal Kinetic Distractor(「ISKD」))、(iv)分離したアンテナの破損(Fitbone)、(v)軟組織に置かれたアンテナに起因する組織刺激(Fitbone)、(vi)自宅環境において危険につながる強い磁石(Precice)、(vii)軟組織の厚さに依存する伸延速度(Precice)、(viii)患者が正しく位置決めすることが困難なかさばる在宅ケア器具(Precice)、(ix)患者が順守しているかを遠隔で監視する可能性がないこと(全て)、並びに(x)厳格な体重負荷制限に起因するリハビリテーションの制限(全て)である。
【発明の概要】
【0005】
本開示のいくつかの実施形態は、外管と、外管内に少なくとも部分的に配設された内管と、誘導電力伝送回路と、形状記憶合金アクチュエータと、力伝達装置と、を含む、埋め込み型仮骨延長デバイスを対象とする。外管及び内管のうちの一方に接続され、かつ少なくとも部分的にその一方内にあり、外部電力コイルへの誘導結合を介して電力を受け取るように構成されている、誘導電力伝送回路。外管及び内管のうちの一方に接続され、かつ少なくとも部分的にその一方内にある、形状記憶合金アクチュエータ。形状記憶合金アクチュエータは、誘導電力伝送回路によって電力供給されるように電気的に接続された形状記憶合金要素を含む。形状記憶合金要素は、閾値抵抗加熱に応答して、対応する形状変化を伴って第1の相から第2の相に移行するように構成されている。力伝達装置は、形状記憶合金アクチュエータに接続され、かつ外管及び内管のうちの別の一方に摺動可能に接続された、一方向直線運動ロッキングクラッチを含む。一方向直線運動ロッキングクラッチは、第1の相及び第2の相のうちの一方から第1の相及び第2の相のうちの他方への移行による形状記憶合金要素の形状変化を、外管内からの内管の伸長に変換し、形状記憶合金要素が第1の相及び第2の相のうちの他方から第1の相及び第2の相のうちの一方へ移行するときに、外管内への内管の収縮を防止するように構成されている。他の実施形態では、第1の相及び第2の相のうちの一方から第1の相及び第2の相のうちの他方に移行するために、ラチェット機構を使用してもよい。
【0006】
いくつかの他の実施形態は、誘導電力ユニット又は在宅ケアユニットと埋め込み型仮骨延長デバイスとを含む、仮骨延長システムを対象とする。誘導電力ユニットは、少なくとも1つのプロセッサと、制御された電流レベルを誘導電力コイルに供給するために少なくとも1つのプロセッサによって制御されるように構成された電源とを含む。埋め込み型仮骨延長デバイスは、外管と、外管内に少なくとも部分的に配設された内管と、誘導電力伝送回路と、形状記憶合金アクチュエータと、力伝達装置とを含む。誘導電力伝送回路は、外管及び内管のうちの一方に接続され、かつ少なくとも部分的にその一方内にあり、誘導電力ユニットの伝送コイル又は誘導電力コイルへの誘導結合を介して電力を受け取るように構成されている。形状記憶合金アクチュエータは、外管及び内管のうちの一方に接続され、かつ少なくとも部分的にその一方内にある。形状記憶合金アクチュエータは、誘導電力伝送回路によって電力供給されるように電気的に接続された形状記憶合金要素を含む。形状記憶合金要素は、閾値抵抗加熱に応答して、対応する形状変化を伴って第1の相から第2の相に移行するように構成されている。力伝達装置は、形状記憶合金アクチュエータに接続され、かつ外管及び内管のうちの別の一方に摺動可能に接続された、一方向直線運動ロッキングクラッチを含み、一方向直線運動ロッキングクラッチは、第1の相及び第2の相のうちの一方から第1の相及び第2の相のうちの他方への移行による形状記憶合金要素の形状変化を、外管内からの内管の伸長に変換し、形状記憶合金要素が第1の相及び第2の相のうちの他方から第1の相及び第2の相のうちの一方へ移行するときに、外管内への内管の収縮を防止するように構成されている。
【0007】
いくつかの他の実施形態は、伝送コイルから誘導結合を介して電力を受け取るように誘導電力伝送回路を動作させることであって、誘導電力伝送回路が、外管及び内管のうちの一方に接続され、かつ少なくとも部分的にその一方内にあり、内管が外管内に少なくとも部分的に配設されている、動作させること、を含む方法を対象とする。本方法は更に、外管及び内管のうちの一方に接続され、かつ少なくとも部分的にその一方内にある形状記憶合金アクチュエータを提供することを含み、形状記憶合金アクチュエータは、誘導電力伝送回路によって電力供給されるように電気的に接続された、形状記憶合金要素を含む。形状記憶合金要素は、閾値抵抗加熱に応答して、対応する形状変化を伴って第1の相から第2の相に移行するように構成されている。本方法は、形状記憶合金アクチュエータに接続され、外管及び内管のうちの別の一方に摺動可能に接続された一方向直線運動ロッキングクラッチを含む、力伝達装置を提供することを更に含む。一方向直線運動ロッキングクラッチは、第1の相及び第2の相のうちの一方から第1の相及び第2の相のうちの他方への移行による形状記憶合金要素の形状変化を、外管内からの内管の伸長に変換し、形状記憶合金要素が第1の相及び第2の相のうちのその他方から第1の相及び第2の相のうちのその一方へ移行するときに、外管内への内管の収縮を防止するように構成されている。
【0008】
本発明の主題の実施形態による他の埋め込み型仮骨延長デバイス、仮骨延長システム、及び対応する方法は、以下の図面及び詳細な説明を検討すると、当業者には明らかであるか、又は明らかになるであろう。全てのそのような追加的な埋め込み型仮骨延長デバイス、仮骨延長システム、及び方法が、本明細書内に含まれ、本発明の主題の範囲内にあり、添付の特許請求の範囲によって保護されることが意図される。更に、本明細書に開示される全ての実施形態は、別々に実装され得るか、又は任意の方法及び/又は組み合わせで組み合わされ得ることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本開示の態様は、例として示され、添付の図面によって限定されるものではない。図面において、
図1】大腿骨に埋め込まれロッキングねじを使用して固着された、いくつかの実施形態に従って構成されたNitinail大腿骨伸延埋め込み機器を示す。
図2】大腿骨伸延埋め込み機器を大腿骨内に埋め込み、ロッキングねじを固着するために、整形外科手術室で利用可能な他のツールとともに使用され得る、いくつかの実施形態による外科キットのツールを示す。
図3】Nitinail埋め込み機器の誘導電力伝送ユニットに隣接して位置決めされる伝送コイル伝送コイルを制御する、いくつかの実施形態による在宅ケアユニットを示す。
図4】いくつかの実施形態による、Nitinailシステムの構成要素のブロック図を示す。
図5】いくつかの実施形態による伸延を引き起こすように動作する、Nitinail埋め込み機器の4つの主な構成要素を示す。
図6】いくつかの実施形態による、誘導的にリンクされた二次回路及び三次回路を含む受信アンテナの回路図を示す。
図7】一実施形態に従って構成されたロッキングねじの一部分を示す。
図8】いくつかの実施形態による、Nitinail埋め込み機器の誘導電力伝送回路に電力を伝送するように動作する、在宅ケアユニット及び接続された伝送コイルの回路図を示す。
図9】いくつかの実施形態による、非活性拡張状態(左)及び活性収縮状態(右)で示される、NiTi合金アクチュエータの簡略化された構造表現を示す。
図10】本開示のいくつかの実施形態に従って使用されるNiTi合金材料の、変態温度に対するヒステリシスの効果を示すグラフを示す。
図11】いくつかの実施形態に従って構成された、力伝達装置の一方向直線運動ロッキングクラッチの断面図を示す。
図12】角ロッドと係合するように角度リングに沿って移動するローラを有し、これによりロッキング方向の運動を防止しながら自由方向の運動を可能にする、いくつかの実施形態に従って構成された一方向直線運動ロッキングクラッチの側面図を示す。
図13】いくつかの実施形態に従って構成された、別のNitinail大腿骨伸延埋め込み機器の2つの図を示す。
図14】いくつかの実施形態に従って構成された、図13のNitinail埋め込み機器の2つの長手方向断面図を示す。
図15】いくつかの実施形態に従って構成された、図14に示されるNiTi合金アクチュエータの拡大図を示す。
図16】いくつかの実施形態に従って構成された、誘導電力伝送回路の断面図を示す。
図17A】いくつかの実施形態に従って構成された、力伝達装置の一方向直線運動ロッキングクラッチの等角図を示す。
図17B】いくつかの実施形態に従って構成された、図17Aの一方向直線運動ロッキングクラッチの断面図を示す。
図18】いくつかの実施形態による、無線エネルギー伝達の機能の回路図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の考察は、当業者が本開示の実施形態を作製及び使用することを可能にするために提示されるものである。図示された実施形態に対する様々な修正は、当業者には、非常に明らかであり、本明細書の原理は、本開示の実施形態から逸脱することなく、他の実施形態及び用途に適用され得る。したがって、実施形態は、示される実施形態に限定されることを意図するものではなく、本明細書に開示される原理及び特徴と一致する最も広い範囲を与えられるべきである。以下の詳細な説明は、図面を参照して読まれるべきであり、異なる図の同様の要素は、同様の参照番号を有する。図は必ずしも縮尺どおりではなく、選択された実施形態を示し、実施形態の範囲を限定することを意図するものではない。当業者は、本明細書で提供される実施例が、多くの有用な代替物を有し、実施形態の範囲内にあることを認識するであろう。
【0011】
本開示は、本明細書の説明に記載又は図面に示される構成の詳細及び構成要素の配列に対するその用途に限定されないことを理解されたい。本開示の教示は、他の実施形態で使用及び実施され得、様々な方法で実施又は実行され得る。また、本明細書で使用される表現及び専門用語は、説明の目的のためであり、限定するものとみなされるべきではないことを理解されたい。本明細書の「含む」、「備える」、又は「有する」、及びその変形の使用は、その後に列挙された項目及びその等価物、並びに追加の項目を包含することを意味する。別途指定されない限り、又は限定されない限り、「取り付けられた」、「接続された」、「支持された」、及び「結合された」という用語並びにそれらの変形は、広く使用され、直接及び間接的な取り付け、接続、支持、及び結合の両方を包含する。更に、「接続された」及び「結合された」は、物理的又は機械的接続又は結合に限定されない。
【0012】
創外固定に伴う様々な問題を克服するために、髄内伸延釘を使用する四肢伸延術が開発され、過去10年間に人気を得ている。内部伸延は、患者にとってより便利であり、上述の様々な問題を克服することができるが、デバイス関連の合併症及び技術的問題が存在し続ける。報告されている問題には、(i)埋め込み機器の腐食及び摩耗微粒子の放出(Precice及びFitbone)、(ii)釘の機械的破損(Precice)、(iii)伸延速度の制御不良(ISKD)、(iv)分離したアンテナの破損(Fitbone)、(v)軟組織に置かれたアンテナに起因する組織刺激(Fitbone)、(vi)自宅環境において危険につながる強い磁石(Precice)、(vii)軟組織の厚さに依存する伸延速度(Precice)、(viii)患者が正しく位置決めすることが困難なかさばる在宅ケア器具(Precice)、(ix)患者の適合性を遠隔で監視することができないこと(全て)、並びに(x)厳格な体重負荷制限に起因するリハビリテーションの制限(全て)が含まれ得る。
【0013】
本開示の実施形態は、他の内部伸延釘に関連する1つ以上の問題を克服し得る、四肢伸延システム及び装置を対象とする。いくつかの実施形態は、Globus Medical,Inc.の一部であるSYNOSTEによるNitinailシステムの文脈において記載されるが、これら及び他の実施形態は、本明細書で開示される例示的なNitinailシステム及び装置構成に限定されない。
【0014】
Nitinailシステムは、例えば、外傷性短縮、先天性変形、及び腫瘍切除によって引き起こされる脚長不等を治療するために、大腿骨、頸骨、及び/又は他の骨格骨を伸延するために使用されることができる。
【0015】
Nitinailシステムは、以下の5つのサブ構成要素を含むことができる。1)入れ子式延長釘として動作するNitinail埋め込み機器、2)Nitinail埋め込み機器を骨に固定するための骨ねじであるロッキングねじ、3)埋め込み及び外植のために使用される特定の手術用器具のセットである外科キット、4)Nitinail埋め込み機器伸延の無線起動のための遠隔制御である在宅ケアユニット、及び5)延長段階中のデバイスの、患者の在宅ケア使用のための所定の起動スケジュールの設定をサポートするソフトウェアである、伸延プロトコルソフトウェア40(図4)。
【0016】
図1は、大腿骨14に埋め込まれロッキングねじ12を使用して固着されて示されている、いくつかの実施形態に従って構成されたNitinail大腿骨伸延埋め込み機器10(「Nitinail埋め込み機器」又は「埋め込み機器」)を示す。図2は、大腿骨伸延埋め込み機器10を大腿骨14内に埋め込み、ロッキングねじ12を固着するために、整形外科手術室で利用可能な他のツールとともに使用され得る、いくつかの実施形態による外科キット20のツールを示す。図3は、Nitinail埋め込み機器10の誘導電力伝送ユニットに隣接して位置決めされる伝送コイルを制御する、在宅ケアユニット32を示す。埋め込み機器の様々な実施形態は、大腿骨伸延の文脈で説明されるが、それらは、腕及び他の骨格構造を伸延するために使用されてもよい。
【0017】
在宅ケアユニット32は、Nitinail埋め込み機器10の伸延機構を起動するために、病院内及び患者の自宅で使用することができる電子デバイスである。ユニット32はまた、埋め込み機器機能を検証し、Nitinail埋め込み機器10の初期伸延を実施するために、埋め込み中に手術室で使用され得る。Nitinail埋め込み機器10は、治療される脚又は腕の周りに伝送コイル30を置き、Nitinail埋め込み機器10の受信アンテナと位置合わせすることによって、共振誘導電力伝送を介して起動される。共振誘導伝達は、同じ周波数又は選択された任意の周波数で共振するように同調された磁気的に結合されたコイル間の電気エネルギーの近距離無線伝達によって実施することができる。以下で説明するように、伝送コイル30は、大腿骨伸延埋め込み機器10の力伝達デバイスに誘導的に電力を供給するように簡単に操作され、力伝達デバイスは、所定のレベルの内部軸方向力を大腿骨14に印加し、大腿骨14の所定の速度の伸延を引き起こす。複数の所定の日の各々の間に埋め込み機器10を反復動作させることにより、大腿骨又は他の四肢の所望の伸延をもたらすことができる。
【0018】
在宅ケアユニット32は、患者、介護者、及び/又は医療従事者による監視のために、無線(例えば、WiFi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、4G/5G/NRセルラなど)及び/又は有線接続(例えば、イーサネット(登録商標))並びに広域ネットワーク(例えば、インターネット)を介して、ネットワークサーバにデータを通信するように構成されてもよい。データは、使用のタイムスタンプ、位置決めがどの程度良好に行われたか、在宅ケアユニット32が地理的にどこに位置しているか、及び疼痛レベルなどの患者の報告による転帰尺度を含み得る。また、外科医は、Nitinail埋め込み機器10の運動を制御するために、新たな処方、すなわち伸延スケジュールを在宅ケアユニット32にプログラムしてもよい。データは、埋め込み機器10に作用する力又は埋め込みの長さなど、Nitinail埋め込み機器10から測定又は決定された情報を含むことができる。例えば、在宅ケアユニット32及びNitinail埋め込み機器10は両方とも、特定の埋め込み機器パラメータ(例えば、長さ、負荷分散、インピーダンス測定、再生骨の質)の測定を可能にし、長期治療に対する外科医の制御を可能にし、ひいては治療転帰の可能性を改善することができるように、在宅ケアユニット32とNitinail埋め込み機器10との間の遠隔測定リンクを提供する無線通信回路を含む。
【0019】
図4は、Nitinailシステムの構成要素のブロック図を示し、当該構成要素には、外科キット20、Nitinail大腿骨伸延埋め込み機器10(簡略化のために「Nitinail」又は「Nitinail埋め込み機器」とも呼ばれる)、ロッキングねじ12、在宅ケアユニット32、及びいくつかの実施形態による動作を実施するために少なくとも1つのコンピューティングプラットフォームの少なくとも1つのプロセッサによって実行されるSyndex伸延プロトコルソフトウェア40(簡略化のために「Syndexソフトウェア」とも呼ばれる)が含まれる。例えば、伸延プロトコルソフトウェア40のいくつかの動作は、在宅ケアユニット32のプロセッサによって実施されてもよく、他の動作は、医療従事者がNitinail埋め込み機器10の動作及び患者の伸延プロセスの進行を監視及び制御するための堅牢なインターフェースを提供する、ネットワークコンピュータによって実施されてもよい。
【0020】
Nitinail埋め込み機器10の伸延機構の起動は、病院内及び在宅ケアの両方において、在宅ケアユニット32を使用して実施される。ソフトウェアは、患者日誌の形態で行われる起動のスケジュールを患者に提供することによって、伸延を制御するために使用される。
【0021】
Nitinail埋め込み機器10は、髄内釘として構成され、これは、一実施形態では、14mmの最大外径と、305mmの開始長から50mmの伸延能力を有する1つの変形形態、及び325mmの開始長から70mmの伸延能力を有する別の変形形態など、構成された変形形態に基づく様々な開始長及び伸延能力とを有することができる。Nitinail埋め込み機器10の機能は、ニチノールの使用、機械的運動へのニチノールの相変化形状の正確な結合、及び伝送コイル30からの誘導電力伝送によるニチノールの活性化のためのエネルギー伝達に基づく。図5は、いくつかの実施形態による機械的伸延を引き起こすように動作する、Nitinail埋め込み機器10のいくつかの主な構成要素を示す。
【0022】
図5を参照すると、Nitinail埋め込み機器10の4つの主な構成要素は以下のとおりである。
1)伝送コイル30から誘導結合により電力を受け取る(誘導電力伝送)ように構成されたアンテナを含み、交番磁界の電力を交流電流(alternating electric current、AC)に変換するように動作する、誘導電力伝送回路54。
2)誘導電力伝送回路54からのAC電流に応答したNiTi要素の抵抗加熱によって活性化される二方向相変化形状記憶効果で動作するNiTi要素を有する、NiTi合金アクチュエータ52。
3)摩擦ベースの一方向直線運動ロッキングクラッチを形成する力伝達装置50であって、一実施形態では、NiTi要素の形状変化によって動かされるように釘フレーム56を介して接続された摩擦ベースのロッキングスタックを含み、ステッパモータのような方法で埋め込み機器10の入れ子式伸延を引き起こす力伝達を提供する、力伝達装置50。
4)Nitinail埋め込み機器10の離間した端部領域を通って延在する複数対のねじ穴58(図1のねじ12は図示せず)によるねじ固定であって、骨切りされた骨間隙に釘伸延部を取り付けて移動させる、ねじ固定。
【0023】
Nitinail埋め込み機器10の異なる構成要素の機能は、以下のセクションでより詳細に説明される。誘導電力伝送回路54は、伝送コイル30から受信した電磁界を、NiTi合金アクチュエータ52を通って流れるAC電流に変換して、NiTi要素の中のNiTi材料の相変化によってNiTi要素を加熱し、NiTi要素の形状を変化させる。NiTi材料は、ニッケルとチタンとの金属合金であり、この2つの元素は、ほぼ等しい原子百分率で存在し得る。形状記憶特性は、金属合金の特定の原子組成に依存する。二方向相変化形状記憶効果は、二方向形状記憶効果(two-way shape memory effect、TWSME)とも呼ばれる可逆的現象であり、マルテンサイト相とオーステナイト相との間のNiTi変態によって引き起こされる。マルテンサイトからオーステナイトへの記憶効果相変態の間、NiTiは、Nitinail埋め込み機器10の長さを伸長するための仕事エネルギーとして、Nitinail埋め込み機器10によって利用される運動を生成することができる。マルテンサイトからオーステナイトへの相変態は、規定の温度Asで開始され、規定の温度Afで完了する。オーステナイトからマルテンサイトへ戻る変態は、規定の温度Msで開始され、規定の温度Mfで完了する。相変態はヒステリシス挙動を呈し、温度の関係は、Mf<As<Ms<Afである。伝送コイル30によって伝送される電力は、在宅ケアユニット32によって制御されて、NiTi要素の抵抗加熱を生じさせ、NiTi要素の相変化をトリガし、このNiTi要素の相変化がNitinail埋め込み機器10による規定の延長速度目標をトリガする。
【0024】
本開示のいくつかの実施形態は、NiTi合金アクチュエータの使用を考察しているが、他の実施形態は、本明細書に記載されるような誘導結合によって供給される電力を通して取得可能である加熱に応答して形状を変化させる他の形状記憶合金(shape memory alloy、SMA)が使用されてもよいため、NiTi材料の使用に限定されない。
【0025】
合金によって生成されるTWSME運動の量は、1)プレストレス、2)相変態中に合金にかけられる荷重、及び3)変態の終わりにおける変態の程度によって影響を受ける。プレストレスは、オーステナイトへの相変態前にマルテンサイト相にあるNiTi合金にかけられる応力であり、オーステナイトからマルテンサイトへの変態を手助けするために使用される。
【0026】
伝送コイル30及び在宅ケアユニット32は、従来の電源コンセントからの50~60Hz、100~240Vの電力又はバッテリによって供給される電力を、例えば、+/-4kHzの公差内の258kHzの周波数を伴うRFエネルギー伝達信号に変換するように構成することができる。エネルギーの伝達中、伝送コイル30は、誘導電力伝送回路54の受信アンテナと位置合わせされる。実際には、これは、伝送コイル30を膝に近い患者の大腿の周りに置くことを意味する。エネルギー伝達信号は、伝送コイル30の伝送コイルを介して伝送される。
【0027】
図6は、いくつかの実施形態による、誘導的にリンクされた二次回路及び三次回路を含む受信アンテナの回路図を示す。その機能は、伝送コイル30によって伝送された電力を受け取り、それを三次回路に転送することである。銅リッツ線であってもよい二次巻線62は、コイル巻型の上部に巻き付けられる。巻線62を通して磁界を集束させるために、フェライトロッドがコイル巻型の内側に挿入される。フェライトロッドが巻型の少なくとも一部を形成してもよい。コンデンサ60は、巻型の端部に、巻線62と直列に取り付けられている。二次回路全体は、漏れのないシームレスガラスパッケージ内に封入される。三本巻き(trifilar)(平行する3本のワイヤ)の三次巻線64は、ガラス封入体の上部に直接巻き付けられる。二次回路と結合することによって、誘導電流が、生体適合性導体を通してNiTi合金アクチュエータ52のNiTi要素(Rt)66に導かれる。三次巻線64は、ポリ(エーテルウレタン)で絶縁された生体適合性銀ワイヤで作られてもよい。フェライトロッドの周りに同軸に巻き付けられた二次巻線及び三次巻線は、本質的に変圧器として機能する。三次回路内の電流は、例えば、最大14.75Aであるように指定され得る。したがって、図6において、項Cs 60は二次回路直列共振タンクコンデンサを表し、項Lsは二次回路巻線を表し、項Ltは三次巻線を表し、項RtはNiTi合金アクチュエータ52のNiTi要素の抵抗負荷を表す。
【0028】
再び図5を参照すると、NiTi合金アクチュエータ52は、制御された方法でNiTi要素が繰り返し活性化される(電流の流れによって加熱される)ことによって機能する。NiTi要素の加熱は、Nitinail埋め込み機器10の軸方向のストロークを生成するように構成されたNiTi要素の形状変化を引き起こす。NiTi要素(NiTiワイヤ)は、ある期間、例えば、4秒間、NiTi要素を通して電流を伝導することによって加熱される。一実施形態では、一群のNiTiワイヤが一緒に圧着されて、調和して作用する1つの能動素子を形成する。ワイヤは、束内で機械的かつ電気的に並列であり、単一ワイヤと比較して、作動性能の増加及び電気抵抗の減少をもたらす。更なる実施形態では、束は、圧着部間に20mmの距離を有する7xD0.381mmワイヤを有する。
【0029】
マルテンサイト相からオーステナイト相への変態は、NiTiをその変態温度(対抗する荷重に応じて約70~120℃)を超えて加熱することによって誘導されるNiTi要素において起こり、これが、NiTi要素を収縮させ、大きな力を生み出す。NiTi合金アクチュエータ52は、NiTi要素の収縮をNitinail埋め込み機器10に沿った半径方向のストロークに変換する。NiTi要素の収縮、ひいてはストロークは、対抗する荷重に依存し、例えば、ワイヤ長の1~7%、変動する。ストロークは、力伝達装置50の摩擦ベースの一方向直線運動ロッキングクラッチを介して、Nitinail埋め込み機器10の互いに離間したロッドを直接押す。NiTiが冷却されて初期温度、例えば変態温度未満に戻ると、NiTiはマルテンサイト相に戻り、別の作動又はストロークの準備が整う。
【0030】
NiTi要素は、埋め込み機器表面への熱エネルギーの即時伝導を低減又は防止するために、例えば、ポリマー管類又は空隙を用いて、釘フレーム56から熱的に分離される。作動後の短時間の間、NiTi要素の近傍で、埋め込み機器表面のある程度の加温が局所的に生じる。しかしながら、Nitinail埋め込み機器10の熱質量は、加熱を許容範囲内に維持するのに十分である。
【0031】
図5の力伝達装置50は、NiTi合金アクチュエータ52の繰り返されるストロークを、Nitinail埋め込み機器10の段階的な一方向軸方向伸延に変換して伝達するように動作する。力伝達装置50はまた、Nitinail埋め込み機器10が受ける軸方向荷重を担持する。力伝達には、2つの摩擦ベースの一方向直線運動ロッキングクラッチである可動クラッチ及び固定クラッチと、角ロッドとが含まれる。2つのロッキングクラッチ及びロッドは、NiTi合金アクチュエータ52のストロークによって作動する、インチワームタイプのアクチュエータを形成する。NiTi合金アクチュエータ52は、可動ロッキングクラッチに取り付けられる。固定クラッチは、釘フレーム56の内管に取り付けられる。角ロッドは、釘フレーム56の外管に取り付けられる。NiTi合金アクチュエータ52が作動すると、それが可動ロッキングクラッチを前方に移動させ、クラッチは角ロッドを把持(「ロック」)し、固定ロッキングクラッチを通して角ロッドを強制的に移動させ、ひいては入れ子式Nitinail埋め込み機器10を伸長させる。このようにして、Nitinail埋め込み機器10は、1分間のステップ距離を伸延する。一実施形態では、ロッキングクラッチは、10個の同一のロッキングレベルのスタックとして構成され、これにより、角ロッドが一方向に移動することを可能にするが、角ロッドの表面とロッキングレベルの傾いた壁との間に押し込まれた小さいローラを用いて、他方向への運動を防止する。
【0032】
釘フレーム56は、内管及び外管を含み、Nitinail埋め込み機器10にかけられる曲げ荷重及びねじり荷重(力伝達装置50と組み合わせて)を担持するように機能し、Nitinail埋め込み機器10を処置された骨に固定し、他の埋め込み機器構成要素を体液の浸透から保護する。釘フレーム56は、Nitinail埋め込み機器10の外面として機能する。図示された釘フレーム56は、入れ子式の外管59A及び内管59Bを有する。釘フレーム56は、隙間腐食を受けにくいコバルトクロム合金、MP35N、ASTM F 562から形成されてもよい。2つのロッキングねじ12が、Nitinail埋め込み機器10の近位端及び遠位端に内外側配向で挿入される。ロッキングねじ12の構成により、安定した固定を確立することを可能にする。ねじ固定は、Nitinail埋め込み機器10の伸延を骨切り術間隙の分離に移行する役割を果たす。釘フレーム56の部分は、Nitinail埋め込み機器10の残りの部分のための筐体として機能し、例えばリップ封止部又はOリングを利用することによって、それらを体液の侵入から遮蔽する。
【0033】
図7は、一実施形態に従って構成されたロッキングねじ12の一部分を示す。ロッキングねじ12は、近位皮質のためのセルフタッピングねじ山と、六角ソケット(例えば、3.5mm)と、より容易な埋め込み及び外植のためにねじ回しに取り付けるための内側ねじ山とを含む。ロッキングねじ12は、チタングレード5であってもよい。又はコバルトクロム。
【0034】
図8は、いくつかの実施形態による、Nitinail埋め込み機器10の誘導電力伝送回路54に電力を伝送するように動作する、在宅ケアユニット32及び接続された伝送コイル30の回路図を示す。図8を参照すると、伝送コイル30から誘導電力伝送回路54への無線エネルギー伝達は、共振誘導電力伝送に基づく。Nitinail埋め込み機器10への電力送達を達成するために、伝送コイル30は、AC電流(I_pri)wを有し、これは次に、Nitinail埋め込み機器10への無線電力伝送を更に可能にするAC磁界を生成する。この回路の特徴は、(伝送コイル30内で選択的に起動されるLED又は他の可視デバイス及び/又は音声デバイスによってユーザに示され得る)治療が可能な領域内に埋め込み機器10が残っており、伝送コイル30が指定された動作条件内で動作する限り、伝送コイル30内のNitinail埋め込み機器10の位置にかかわらず、正しい量の電力がNitinail埋め込み機器10に送達されることを確実にする、送信電力の調整である。伝送コイル30の送信アンテナによって生成される電磁界に対するNitinail埋め込み機器10の受信アンテナの位置の検出は、伝送コイル30の一次コイルのインピーダンスの変化を感知することによって決定することができる。伝送コイル30によって生成された磁界は、誘導電力伝送回路54の受信アンテナに結合し、NiTi合金アクチュエータ52の機能に必要な電力を供給する。
【0035】
在宅ケアユニット32は、少なくとも1つのメモリからのプログラム命令を実行する少なくとも1つのプロセッサ回路(「プロセッサ」)を含み、更に、デバイスを外科医モードでの動作と患者モードでの動作との間で切り替えるための指示をプロセッサに提供するために使用され得る、取り外し可能メモリモジュールポート、例えば、SDカードスロットを含み得る。これらのモード間の差異は、以下を含んでもよい:患者モードは、起動間に例えば20分の時間制限を有し、外科医モードは、起動間に例えば10分の時間制限を有する。起動の量に対する1日当たりの制限は、患者モードでは、例えば10であり得、外科医モードでは、例えば30であり得る。外科医モードの目的は、手術室及び病院施設内でのより効果的な使用を容易にすることである。
【0036】
伸延プロトコルソフトウェア40は、Nitinailシステムを用いた仮骨延長術治療の計画及び追跡を意図したウェブベースのアプリケーションであってもよい。ソフトウェア40は、Nitinailシステムを用いた仮骨延長術治療を実施する整形外科医によって使用される。加えて、ソフトウェアは、ユーザ(外科医)及び埋め込み機器が管理され得る管理モードを含む。一実施形態では、ソフトウェア40とNitinailシステムの他の部分との間に直接的なインターフェースはない。しかしながら、ソフトウェア40は、アルゴリズムの動作に必要とされる重要な埋め込み機器情報、並びに有効期限などの他の主要な情報を取り込む。重要な情報は、個々に測定された動作特性と、各Nitinail埋め込み機器の最大伸延とを含む。加えて、ソフトウェア40は、埋め込み機器を特定の外科医に割り当てることを可能にし、これにより、間違ったNitinail埋め込み機器を選択するリスクを最小限に抑える。
【0037】
様々な実施形態では、ソフトウェア40は、外科医の延長速度目標(mm/日)を満たすように、周期的な延長計画を作成するように動作することができる。ソフトウェア40は、入力として、Nitinail埋め込み機器10内のX線又は他の測定装置から測定された、最後の制御期間に実施された伸延と、患者日誌内の患者マーキングに基づいて実施された起動数とを取る。この情報及び外科医によって提供される情報に基づいて、ソフトウェア40は、外科医が提供する目標延長速度を目標とする、次の期間(通常は1週間)の治療計画を計算する。加えて、ソフトウェア40は、計算された計画に従って自動的に作成される印刷可能な患者日誌を提供し、患者に、実施された起動を追跡するだけでなく処方箋に容易に従うための手段を提供する。治療全体は、全ての事象とともに、ソフトウェア40に保存され、これにより、外科医が治療経過を見ること、並びに不正確なデータを編集することを可能にする。治療からの全ての主要な情報を含む概要シートは、治療が完了すると、印刷され、患者記録に記憶されてもよい。ソフトウェア40は、治療の計画及び制御を可能にする外科医モードと、外科医及び埋め込み機器の追加を可能にする管理モードと、管理機能とを提供することができる。ソフトウェア40のアルゴリズム論理は、X線分析を通して測定され得る、以前の伸延期間における伸延の測定値に基づいて、1日当たりの起動数を調整するように動作することができる。
【0038】
したがって、いくつかの実施形態では、プロセッサは、制御された電流レベルを伝送コイル30(誘導電力コイル)に供給するために在宅ケアユニット32の電源を制御するように構成されている。更なる実施形態では、プロセッサは、電力変換ユニットを介して電源を制御して、形状記憶合金要素を対応する形状変化を伴って第1の相から第2の相に移行させるのに十分な第1の規定の持続時間の間、制御された電流レベルを伝送コイル30に供給するように、かつその後、形状記憶合金要素を形状変化の対応する逆戻りを伴って第2の相から第1の相に移行させるのに十分な少なくとも第2の規定の持続時間の間、電源が制御された電流レベルを伝送コイル30に供給するのを防止するように構成されている。更なる実施形態では、在宅ケアユニット32は、通信ネットワークを介して通信するように構成されたネットワークインターフェースを含む。プロセッサは、形状記憶合金要素を対応する形状変化を伴って第1の相から第2の相に移行させるように電源が制御される毎に、時刻を追跡する患者治療日誌を生成し、ネットワークインターフェースを介して、外科医によって監視される遠隔ネットワークサーバなどに患者治療日誌を通信するように構成されている。別の更なる実施形態では、プロセッサは、ネットワークインターフェースを介して所定の起動スケジュールを受信し、この所定の起動スケジュールに従って、制御された電流レベルを伝送コイル30に供給するように電源を制御するように構成されている。
【0039】
次に、Nitinail埋め込み機器10の様々な構成要素の例示的な構成を、いくつかの実施形態に従って説明する。
【0040】
図3及び図5を参照して上で説明したように、伝送コイル30は、誘導結合を介して誘導電力伝送回路54に無線エネルギー伝達を提供するように電力供給される。誘導電力伝送回路54は、NiTi合金アクチュエータ52を通して電流を供給し、NiTi要素を抵抗加熱する。加熱は、ニチノール要素によるTWSMEを発生させ、TWSMEは、ロッド(「プッシュロッド」)を押して、クラッチ及び力伝達装置50を移動させ、入れ子式外管59Aを入れ子式内管59Bに対して移動させる。連続的な誘導活性は、NiTi要素の十分な冷却が可能である限り、プッシュロッドを前後に繰り返し移動させる。
【0041】
力伝達装置50は、一方向直線運動ロッキングクラッチを備え、一方向直線運動ロッキングクラッチは、釘フレーム56のプッシュロッドを介してNiTi合金アクチュエータ52に接続されている。NiTi合金アクチュエータ52のTWSME運動は、一方向直線運動ロッキングクラッチを移動させる。いくつかの実施形態では、クラッチは、移動すると角ロッドを把持する。これは、外部荷重に依存するある量の弾性バックラッシュを引き起こし、NiTi合金アクチュエータ52の入れ子式ステップモータ機能によって達成可能な作動量を減少させる。角ロッドは次に、力伝達装置50のフレームに固定された別の線形一方向直線運動ロッキングクラッチを通って移動する。角ロッドは、外管及びクラッチに取り付けられる。NiTi合金アクチュエータ52のTWSME運動の前後運動は、入れ子式部分を移動させ、その長さを増加させる。NiTi合金アクチュエータ52のTWSME運動が冷却中に逆戻りして入れ子式部分の長さを短くすると、一方向直線運動ロッキングクラッチは、ロッキング方向に係合して、荷重によって生じる弾性バックラッシュは別として、Nitinail埋め込み機器10の短縮を防止する。
【0042】
図9は、いくつかの実施形態による、非活性拡張状態(左)及び活性収縮状態(右)、又は形状記憶合金の元の形状記憶に応じてその逆で示される、NiTi合金アクチュエータ52の簡略化された構造表現を図示する。上で説明したように、NiTi合金アクチュエータ52は、ニチノール要素94のTWSMEにより動作する。ニチノール要素94は、伝送コイル30によって通電されている間、誘導電力伝送回路54によって供給される電流を通してTWSME変態を有するように構成されている。アクチュエータ52が非活性状態にあるとき、ニチノール要素94はマルテンサイト(低温)相にあり、マルテンサイト相では、ニチノール要素94は拡張される。マルテンサイト相にある間、プレストレスばね96を使用して、ニチノール要素94にプレストレスを印加し、例えば、要素94の拡張(伸延)を助ける。プレストレスの目的は、ニチノール要素94のNiTi合金材料の作動性能を向上させ、オーステナイト(高温)相からマルテンサイト相に戻る変態を手助けすることである。オーステナイト開始温度(As)を超えるNiTi合金材料の加熱により、マルテンサイト相からオーステナイト相への変態が開始する。オーステナイト終了(Af)温度に達すると、NiTi合金材料は完全にオーステナイト形態になり、ニチノール要素94は収縮状態になり(図9の右側)、又は形状記憶合金の元の形状記憶に応じてその逆になる。NiTi合金材料が冷却し始め、マルテンサイト開始(Ms)温度に達すると、マルテンサイト相に戻る変態が始まる。この変態はマルテンサイト終了(Mf)温度で完了し、それによってニチノール要素94は拡張状態にあり(図9の左側)、又は形状記憶合金の元の形状記憶に応じてその逆になる。
【0043】
図9において、ニチノール要素94は、ニチノール又は任意の他の形状記憶合金で作られた個々のワイヤ又はロッドの少なくとも1つの束であってもよい。個々のワイヤ又はロッドの束は、互いに直列又は並列に電気的に接続され、機械的に並列に配置され、その結果、束の相移行を介した収縮力は、個々のワイヤ又はロッド各々の収縮力の合計をもたらす。
【0044】
図10は、本開示のいくつかの実施形態に従って使用されるNiTi合金材料の、変態温度に対するヒステリシスの効果を示すグラフを示す。NiTi合金材料は、変態温度でヒステリシスを呈し、これは、材料が完全にマルテンサイトに変態して戻るためにオーステナイト開始温度よりも更に冷却されなければならないことを意味する。これは、到達する最低正常温度が摂氏約37度である人体内部で、好ましい動作を達成するために正しいニチノール組成物を選択するときに重要となる、設計因子であり得る。
【0045】
マルテンサイト相からオーステナイト相への変態は、ニチノール要素94に使用されるニチノールワイヤの長さを減少させ、又はその逆に、ニチノール要素94の元の形状記憶に応じて長さを伸長させ、これが、図9に長さ変化ΔLによって示されるように、アクチュエータ52の出力ストロークを生成するために利用される。図示された要素90及び要素91は、入れ子式外管59A又は内管のいずれかに接続され得る固定構造体であり、図示された要素90及び要素91は、入れ子式アクチュエータ部分59Bに接続されるfである。図示された要素92は、移動構造体であり、これは、相間の交番を通じてニチノール要素94の拡張及び収縮によってプッシュロッド98の運動を引き起こす。プッシュロッド98は、一方向直線運動ロッキングクラッチを含む力伝達装置50に接続される。ニチノール要素94の反復的な拡張及び収縮により、外管59Aは内管59Bから入れ子式に徐々に離れる。力伝達装置50の一方向直線運動ロッキングクラッチは、ニチノール要素94が冷却期間中の作動後の拡張の際に、内管59Bに対する外管59Aの収縮運動を実質的に防止する。
【0046】
ニチノール要素94内のニチノールワイヤは、数秒で電流によって変態温度まで加熱される。この後、ワイヤは冷却されることが可能であり、プレストレスばねの助けを借りてマルテンサイト状態に戻る。長さが変化する間、ニチノール要素94は、要素94の表面積に比例する力を生み出すこともできる。ニチノールは、荷重の大きさに関係なく外部荷重に対して作動する。しかしながら、荷重の大きさは、出力ストローク、図9のΔL、及びニチノールの疲労寿命に影響を及ぼす。一般に、外部荷重が高いほど、ストロークが短くなり、かつ達成される最大サイクル寿命が短くなる。サイクル寿命は、(設計に応じて)170MPaの荷重レベルで数百万サイクルになる可能性があり、400~500MPaの荷重レベルが使用されると数千サイクルに低下する。
【0047】
プレストレスばね96によって生じるプレストレスのレベルは、変態温度、出力ストローク、及び疲労寿命に影響を及ぼす。一般に、プレストレスが高いほど、変態温度及び出力ストロークは高くなる。同時に、疲労寿命はわずかに減少する。商用ニチノールアクチュエータ合金製造業者による最良の性能のためのガイドラインとして、一般に50~70MPaのプレストレスレベルが推奨されている。アクチュエータの有効出力は、以下のように計算することができる。
【0048】
F(sma_act_out)=F(design_stress)-F(prestress)=P(design)A-P(prestress)
図11は、いくつかの実施形態に従って構成された、力伝達装置50の一方向直線運動ロッキングクラッチの断面図を示す。図11を参照すると、一方向直線運動ロッキングクラッチは、摩擦ベースの動作を使用して、プッシュロッド98(図9)によって移動させられるように接続された角ロッド110の一方向運動のみを可能にする。一方向直線運動ロッキングクラッチは、異なるロッキングレベルで動作することができる。図11の画像において角ロッド110を上方に移動させることは、角ロッドがある摩擦を伴って自由に移動することを可能にする。際立って対照的に、角ロッド110を押し下げると、クラッチがロックされ、バックラッシュが生成される。ロッキングレベル112を押し下げると、クラッチはある摩擦で自由に動くことができ、ロッキングレベル112を引き上げると、クラッチはロックされ、バックラッシュが生成される。
【0049】
摩擦ベースの一方向直線運動ロッキングクラッチは、いくつかの実施形態によれば、摩擦力による押し込めに基づくロッキング作用を生成する少なくとも3つの構成要素を含む装置である。図12は、角ロッドと係合するように角度リング120に沿って移動するローラ114を有し、これによりロッキング方向の運動を防止しながら自由方向の運動を可能にする、いくつかの実施形態に従って構成された一方向直線運動ロッキングクラッチの側面図を示す。一方向直線運動ロッキングクラッチの構成要素は、傾斜した面を含む角度リング120と、ローラ114と、角ロッド110とを含む。平面ばねを使用して、ローラ114を、全ての状況において角ロッド110及び角度リング120と、システム内の詰まりを防止するローラブロッカ板122とに接触させておくことができる。
【0050】
したがって、いくつかの実施形態では、力伝達装置50の一方向直線運動ロッキングクラッチは、形状記憶合金アクチュエータ52に接続されたロッド(例えば、図9の92及び98、図11の110など)を含む。少なくとも1つのリング装置は、角度リングとローラとを含み、角度リングは角ロッドを取り囲み、角度リングの一部分はロッドに面した傾斜した面を有し、ローラは、傾斜した面とロッドとの間に位置決めされている。形状記憶合金要素が、外管59Aへの内管59Bの収縮を促す、ある相から別の相に移行するときに、摩擦によって、ローラが、スレートでふかれた表面上で転動して、スレートでふかれた表面とロッドとの間に押し込まれ、外管59Aへの内管59Bの収縮を防止する。
【0051】
バックラッシュの量を制限する重要な材料パラメータは、材料の硬度及びその弾性係数である。高い外部荷重における損傷を防止するために、重要なパラメータは、材料の降伏強度及び硬度である。加えて、構成要素間の接触面の面積を増加させることによって、バックラッシュを減少させ、最大耐荷重能力を増加させることができる。これは、例えば使用されるロッキングレベルの数を増加させることによって行うことができる。
【0052】
原理的には、バックラッシュは1/Nだけ減少し、ここで、Nはシステムにおけるロッキングレベルの数である。また、システム内のローラ114の長さを増加させることは、同様の効果を引き起こし、ローラ114と、角度リング120と、角ロッド110との間の不均一な接触表面から生じる非理想性によって影響される。システムの耐荷重能力は、ロッキングレベルの数を増加させたときに、おおよそN倍に増加する。
【0053】
更に、選択されたロッキング角度はバックラッシュに影響を及ぼす。ロッキング角度αの値が大きいほど、バックラッシュは小さくなる。しかしながら、角度を大きすぎる値に増加させると、システムを完全にロックさせず、代わりにシステムをロッキング方向にスリップさせる。ロッキング角度の選択においては環境要因も考慮されなければならない。なぜなら、システム内の摩擦係数を変化させ得る要因は、必要なロッキング角度も変化させ得るからである。典型的には、8~12度の角度値が使用される。角ロッド110が自由方向(図11では上方向、図12では右方向)に移動すると、ローラ114が押し込まれた位置から係合解除され、角ロッド110は自由に移動することができる。摩擦力がこの状況で生成されるが、それは主に、ローラ114を角度リングと接触させたままにする平面ばねによってローラ114上に生成される垂直力に起因する。
【0054】
ばね力が大きいほど、摩擦が大きくなる。バックラッシュの観点から、高いバネ力を有することは、2つの対向面に対するローラ114の荷重を増加させるため、有益である。荷重がない場合、ローラ114は、各対向表面と線接触を形成し、荷重が加えられているとき、接触の表面積は急速に増加し、したがってバックラッシュ挙動は線形ではない。初期荷重ステップは、最大のバックラッシュを生成し、これは、平面ばねによって生じる予荷重を有することによって、ある伸長まで対抗することができる。
【0055】
上で説明したように、ニチノール要素がTWSME運動を有し、ニチノール要素94が収縮してプッシュロッド98の出力ストロークを生成するときに、NiTi合金アクチュエータ52の入れ子式ステップモータ機能の作動が起こる。プッシュロッド98の作動は、角ロッド110を移動させるクラッチを押す。NiTi合金アクチュエータ52のストロークが完了すると、一方向直線運動ロッキングクラッチは、角ロッド110に対して摺動し、移動するクラッチは、NiTi合金アクチュエータ52によって引っ張られた元の位置に戻る。作動中、外部荷重は、NiTi合金アクチュエータ52が出力ストロークを生成している持続時間中、固定されたクラッチから移動するクラッチに最初に伝達される。ストロークが完了し、NiTi合金アクチュエータ52が後退し始めると、外部荷重は、固定されたクラッチに戻される。
【0056】
NiTi合金アクチュエータ52のステップ長は、式:ΔL=ΔL(SMA_act)-L(backlash)によって与えられ、式中、L(backlash)=移動クラッチ及び固定クラッチのバックラッシュの合成であり、2つの同一のクラッチの場合、個々のクラッチのバックラッシュの約2倍である。
【0057】
生成される力出力は、式:F(out)=F(sma_act_out)-F(friction)によって与えられ、式中、F(friction)=入れ子式ステップモータのクラッチ及び他の摺動構造の摩擦の合計である。初期作動の後、システムは、NiTi合金アクチュエータ52がリセットされることを可能にする適切な冷却時間の後、再び作動の準備ができる。
【0058】
作動後の伸延は、作動が完了した後も依然としてNiTi合金アクチュエータ52の入れ子式ステッパモータ機能に長さを増加させることができる動作である。これは、摩擦ベースの一方向クラッチにおけるバックラッシュの弾性的性質によるものである。入れ子式ステップモータへの外部荷重が作動後に低減される場合、固定クラッチのバックラッシュは低減し、入れ子式ステップモータは等しい長さを得る。最大増加長さは、外部荷重によって生じる完全バックラッシュである。
【0059】
ステップモータの作動は、外部荷重だけでなく、外部荷重の荷重履歴にも依存する。外部荷重を0からある所望の荷重まで増加させた後に実施される第1の作動は、ランプアップ(Ramp up)作動と呼ばれる。同じ荷重における第2の活性はドウェル(Dwell)作動と呼ばれ、ドウェル作動はランプアップ作動よりも短く(作動ステップ長さがより小さく)、同じ外部荷重における作動が追加の荷重又は除荷ステップなしで継続される場合、第1のドウェル作動後の全ての後続の作動は同じ大きさである。作動長さの変化の原因は、摩擦ベースの一方向直線運動ロッキングクラッチの荷重/除荷と、それら一方向直線運動ロッキングクラッチを介してNiTi合金アクチュエータ52に伝達される外部荷重との複雑な組み合わせである。ランプアップ作動とドウェル作動との間の差は、外部荷重が増加するにつれて大きくなる。
【0060】
第3の作動クラスである臨床性能作動が定義されており、臨床使用において最も可能性の高い荷重シナリオ履歴を提示する。この荷重シナリオは、治療された脚並びに作動の間に収縮及び弛緩する筋肉の荷重によって引き起こされる外部荷重の変化をシミュレートする。これは、1)最初に圧縮荷重を所望の作動力の圧縮荷重よりも300N高くまで増加させ、2)次に100N低い圧縮荷重にし、3)次に300N高い圧縮荷重に戻し、4)最後に所望の作動外部荷重にしてステップモータを作動させるものとして定義される。臨床性能作動は、ドウェル作動とランプアップ作動との間に位置する。
【0061】
ステップモータの作動長さは、ステップモータの使用中に減衰する。これは、NiTi合金アクチュエータ52内のニチノールのTWSME疲労によって引き起こされる。疲労は、ニチノールの外部荷重、プレストレス、作動数及び作動温度に依存する。ステップモータの要件を構築する際には疲労を考慮する必要がある。ステップモータの周期的な外部荷重は、ステップモータの微小量のバックトラック(短縮)を引き起こす。バックトラッキングは、荷重サイクルの関数であり、摩擦ベースの一方向直線運動ロッキングクラッチ及び他のステップモータ構造における弾性変形及び塑性変形に起因する。
【0062】
図13は、いくつかの実施形態に従って構成された、別のNitinail大腿骨伸延埋め込み機器130の2つの図を示す。Nitinail埋め込み機器130の上の図は、外管134内からの内管132の伸長が、周期的な交互の活性及び非活性を介して実施される前の公称初期長さに対応する。Nitinail埋め込み機器130の下の図は、外管134内からの内管132の伸長が周期的な交互の活性及び非活性を介して実施された後の最大伸長長さに対応する。Nitinail埋め込み機器130の伸延能力は、最大長さ(下図)と公称初期長さ(上図)との間の差として示されている。様々な実施形態が、円形断面を有する内管132及び外管134の文脈において図示され記載されているが、これら及び他の実施形態はそれに限定されず、楕円形、長方形、正方形などの任意の断面形状を有してもよい。
【0063】
図14は、いくつかの実施形態に従って構成された、図13のNitinail埋め込み機器130の2つの長手方向断面図を示す。図14を参照すると、上図は、Nitinail埋め込み機器130全体の長手方向断面図を示す。下図は、Nitinail埋め込み機器130の構成要素の視認を容易にするために筐体(フレーム)が除去された、点B-B間の拡大図を示す。構成要素は、力伝達装置140、NiTi合金アクチュエータ142、及び誘導電力伝送回路144を含む。
【0064】
図14のNitinail埋め込み機器130によって潜在的な利点が提供され、これには、例えば外管134の湾曲シャフトが、大腿骨などの湾曲骨内に形成された中空開口部に、より容易に適合することができることが含まれ得る。いくつかの実施形態では、内管132及び外管134は、それらの長さに沿って湾曲して、埋め込みのために骨に作成された開口部に密接に適合する。それによって、湾曲シャフトは、例えば図5に示されるような直線シャフトを有する別の埋め込み機器の使用と比較して、より大きい公称直径の埋め込み機器が湾曲骨内に埋め込まれることを可能にし得る。代替的又は追加的に、湾曲シャフトは、真っ直ぐなシャフトを有する別の埋め込み機器の使用と比較して、埋め込み機器を受容するためにくり抜かれる骨をより少なくすることができる。
【0065】
図14を参照すると、誘導電力伝送回路144は、外管及び内管のうちの一方に接続され、かつ少なくとも部分的にその一方内にあり(例えば、内管132内にあるように示されている)、伝送コイル30(例えば、外部電力コイル)への誘導結合を介して電力を受け取るように構成されている。NiTi合金アクチュエータ142(例えば、又は他の形状記憶合金アクチュエータ)は、外管及び内管のうちの一方に接続され、かつ少なくとも部分的にその一方内にある(例えば、内管132内にあるように示されている)。NiTi合金アクチュエータ142は、誘導電力伝送回路144によって電力供給されるように電気的に接続されたNiTi合金要素148(例えば、又は他の形状記憶合金要素)を含む。NiTiが可能なアクチュエータ142は、(例えば、図10に示されるような)閾値抵抗加熱に応答して対応する形状変化を伴って、第1の相から第2の相へ(例えば、オーステナイト相からマルテンサイト相へ)移行するように構成されている。力伝達装置140は、NiTiが可能なアクチュエータ142に接続され、かつ外管及び内管のうちの別の一方(例えば、外管134として示されている)に摺動可能に接続された、一方向直線運動ロッキングクラッチ170を含む。一方向直線運動ロッキングクラッチ170は、第1の相及び第2の相のうちの一方から第1の相及び第2の相のうちの他方への移行によるNiTi合金要素148の形状変化を、外管134内からの内管132の伸長に変換し、NiTi合金要素148が第1の相及び第2の相のうちのその他方から第1の相及び第2の相のうちのその一方へ(例えば、マルテンサイト相からオーステナイト相へ、又はその逆に)移行するときに、外管134内への内管132の収縮を防止するように構成されている。
【0066】
図14及び図15に示される実施形態では、プレストレスばね146が、NiTi合金要素148と力伝達装置140との間に取り付けられ、第1及び第2の相のうちの他方から第1及び第2の相のうちの一方に(例えば、マルテンサイト相からオーステナイト相へ、又はその逆に)移行するときに、NiTi合金要素148の伸長を促進するためにNiTi合金要素148に張力を印加するように構成されている。
【0067】
図17Aは、いくつかの実施形態に従って構成された、力伝達装置140の一方向直線運動ロッキングクラッチ170の一部を形成する構成要素172の等角図を示す。図17Bは、いくつかの実施形態に従って構成された、一方向直線運動ロッキングクラッチ170を形成する構成要素172の組み立てられた対の断面図を示す。図示された実施形態では、一方向直線運動ロッキングクラッチ170の構成要素172の各々は、積み重ねられた、例えば10セットの、角度リング120及び関連するローラ、球体、ボール、若しくはバレル114を含む。
【0068】
一実施形態では、力伝達装置140の一方向直線運動ロッキングクラッチ170は、角度リング120及びローラ114を含む少なくとも1つのリング装置を含む。角度リング120の少なくとも一部分は、外管及び内管のうちの他方(例えば、外管134として示されている)の内面に対して、かつ内面に面した傾斜した面を有し、ローラは、傾斜した面と外管及び内管のうちの他方(例えば、外管134)の内面との間に位置決めされている。NiTi合金エレメント148が第1及び第2の相のうちの他方から第1及び第2の相のうちの一方に(例えば、マルテンサイト相からオーステナイト相に、又はその逆に)移行すると、収縮を促し、クラッチを前方に押し、外管の内面を把持し、次いで、入れ子を伸長させ、図示された実施形態では、一方向直線運動ロッキングクラッチ170は、複数のリング装置と、角度リング120を外管及び内管のうちの一方の長軸に沿って配置するために複数のリング装置の角度リング120の中心開口部を通って延在する、ロッド176とを含む。ロッド176は、NiTi合金アクチュエータ142に取り付けられる。
【0069】
図17Aに示される実施形態では、リング装置は、角度リング120の周りで円周方向に離間され、傾斜した表面を有する、角度リング120の複数の表面凹部174と、表面凹部174のうちの異なる表面凹部内に位置決めされた複数のローラ120とを含む。
【0070】
ローラは、本明細書に記載の一方向直線運動ロッキングクラッチを提供するように摩擦移動され得る、球状ボール、円筒、又は別の形状であってよい。
【0071】
一方向直線運動ロッキングクラッチ170は、第1の相及び第2の相への移行(例えば、オーステナイト相からマルテンサイト相へ、又はその逆に移行するとき)によるNiTi合金要素148の形状変化を、外管134内からの内管132の伸長に変換し、NiTi合金要素148が第2の相から第1の相に移行するとき(例えば、マルテンサイト相からオーステナイト相へ、又はその逆に移行するとき)に、外管134内への内管132の収縮を防止するように構成されている。
【0072】
角度リング120の表面は、ロッド176をロッキング方向に押すこと(図17Bにおけるロッド176の左方向への運動)が、ローラ114を角度リング120と外管134の内面との間に押し込むように、外管134に対して傾斜している。ローラ114を詰まらせるのに必要な角度の値は、構造に使用される材料間の摩擦係数に基づく。ロッキングが生じると、ロッド176に印加された外力がシステム内にバックラッシュを生成する。バックラッシュは、材料の弾性特性によって引き起こされる。
【0073】
図15は、いくつかの実施形態に従って構成された、図14に示されるNiTi合金アクチュエータ142の拡大図を提供する。図14を参照すると、NiTi合金アクチュエータ142は、NiTi合金要素148及びプレストレスばね146を含む。
【0074】
NiTi合金アクチュエータ142は、第1の部材149Aと離間された第2の部材149Bとの間に延在する、複数のNiTi合金ロッド150(例えば、又は他のロッド状の形状記憶合金要素)を含む。第1の部材149Bは、外管及び内管のうちの一方に接続され、かつ少なくとも部分的にその一方内にある(例えば、内管132内にあるように示されている)。ロッドは、円形断面、楕円形断面、正方形断面、又は他の形状を有してもよい。第2の部材149Aは、力伝達装置140の一方向直線運動ロッキングクラッチ170に接続され、例えば、プレストレスばねを通って延在するロッドを介してクラッチに接続される。プレストレスばねは、図14及び図15に示すように、管149に対して支持される。
【0075】
NiTi合金ロッド150は、ニッケルとチタンとのニチノール合金を含む。NiTi合金アクチュエータ142は、第1の部材149Aと第2の部材149Bとの間に延在する複数の弾性ロッド152、例えば十分な強度を有する金属又は他の弾性材料を含むことができる。弾性ロッド152は、NiTi合金ロッド150と散在して配置されてもよい。第1の部材149A及び第2の部材149Bは、弾性ロッド152及びNiTi合金ロッド150の両端部を受容して固定的に締め付けるように構成された開口部を有する、締め付け板を含んでもよい。
【0076】
プレストレスばね146は、第2の部材149Bと力伝達装置140との間に取り付けることができ、第2の相から第1の相に移行するとき(例えば、マルテンサイト相からオーステナイト相に、又はその逆に移行するとき)に、NiTi合金ロッド150の伸長を促進するために、NiTi合金ロッド150に張力を印加するように構成することができる。
【0077】
上で説明したように、インNitinailシステムにおける無線エネルギー伝達は、共振誘導電力伝達に基づく。図18は、いくつかの実施形態による、無線エネルギー伝達の機能の回路図を示す。図18を参照すると、AC信号が一次LC回路(L_pri及びC_pri)に供される。共振周波数において、C_pri及びL_priの無効成分は互いに相殺され、本質的に一次回路のインピーダンスをR_priに低減する。インダクタL_pri内の電流は、LC回路の共振周波数でAC磁界を誘導する。生成された磁界は、特定の周波数に同調された共振回路からなる二次回路に結合する(k_12)。この結合は、一次回路によって生成される磁界と反対の磁界を更に生成する電流を誘導する。二次回路は、生成された磁界を介して三次回路に更に結合し(k_23)、それによって三次回路内に電流を誘導する。三次回路に誘導された電流は、NiTiワイヤの加熱(R_NiTi)をもたらす。加えて、一次磁界は、三次回路に直接結合し(k_13)、かつNitinail埋め込み機器10の金属筐体に直接結合する(k_14)。金属筐体への結合は、埋め込み機器10の金属管内に渦電流をもたらし、金属管の温度の上昇(損失)をもたらす。
【0078】
電力伝送システムの性能は、各構成要素に対する正しい値の選択に大きく依存する。加えて、公称値からの構成要素の変動は、全体的な性能に著しい影響を及ぼす可能性がある。したがって、回路内の特定のパラメータが制御される必要がある。全ての構成要素が何らかの固有の分散を有すると仮定すると、システムの全体的な性能の最適化には、1)性能の最適化(効率性P_tert/P_pri)、及び2)堅牢性の最適化が含まれる。後者は、システムの性能が特定の個々のパラメータに影響されないように回路を設計することを含む。加えて、設計は、例えば、患者の安全性(高電圧、磁界強度...)、構成要素制限(C_secの定格電圧及び電流など)、及び物理的サイズ制限によって設定されるいくつかの制限を考慮する必要がある。
【0079】
一次回路の構成要素の選択は、本質的に、エネルギー伝達システム全体の動作周波数を規定する。それに応じて、一次回路のインダクタンス(L_pri)及び一次回路を流れる電流I_priは、生成される磁界の強度を規定する。また、一次コイルの巻き数及び断面積も重要な設計パラメータである。加えて、R_priの値は、一次回路における抵抗損失を規定し、L_priとともに一次回路のQ値を規定する。
【0080】
二次回路及び三次回路の組み合わせは、一次磁界に対して有意な周波数で共振するように設計される必要がある。この周波数は、一次回路の動作周波数に必ずしも全く等しいわけではない。受信回路(二次回路及び三次回路)において、損失(NiTiにおける意図された損失を含まない)は、主に二次回路における抵抗損失(R_sec)、三次回路における抵抗損失(R_wire)、管における渦電流損失及びフェライトにおける損失によって引き起こされる。NiTiにおける損失を制御するために、これらの損失も制御される必要がある。
【0081】
一次巻線と二次巻線との間の位置は固定されていない。したがって、結合k_12は、Nitinail埋め込み機器10、すなわち誘導電力伝送回路54が伝送コイル30の一次コイル内で移動するときに著しく変化し得る。概して、一次コイルの縁部の近くでは、より良好な結合が達成される。それに対応して、コイルの中心で達成される結合は、より悪い。補償されない場合、この変化する結合が三次回路において著しく異なる電流をもたらす可能性がある。結合k_12は、在宅ケアユニット32によって、V_DC、I_Dc、及びR_DCの比の変化として観察することができる。より高い結合は、バックコンバータによって見られる負荷を増加させ、対応して、より低い結合によってより低い負荷が見られる。最小R_buckは、一次巻線内に負荷がないときに観測される。結合とR_buckとの間の関係は、NiTi負荷に送達される電流を補償するために使用されることができる。最も高い結合(高いR_buck)では、I_buckは低減され得、最も低い結合では、I_buckは、Niti負荷において公称に近い電流を達成するために増加され得る。
【0082】
図16は、いくつかの実施形態に従って構成された、誘導電力伝送回路142の断面図を示す。誘導電力伝送回路142は、二次コイル160及び三次コイル162を含み、これらは、フェライトロッド164の周りに巻かれ、更にフェライトロッドによって誘導結合される。これらの構成要素は、体液が誘導電力伝送回路142を汚染することを防止するために、密封又は他のタイプの漏れのないカプセル166内に封入される。
【0083】
更なる定義及び実施形態:
本発明の概念の様々な実施形態の上記の説明において、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態のみを説明する目的のためであり、本発明の概念を限定することを意図するものではないことを理解されたい。別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、本発明の概念が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。一般的に使用される辞書で定義されるものなどの用語は、本明細書及び関連技術の文脈においてそれらの意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、本明細書で明示的にそのように定義された、理想的又は過度に形式的な意味で解釈されるべきではないことが更に理解されよう。
【0084】
要素が別の要素に「接続された」、「結合された」、「応答する」、又はそれらの変形と称される場合、それは、他の要素に直接接続され、結合され、若しくは応答することができるか、又は介在要素が存在してもよい。対照的に、要素が別の要素に「直接接続された」、「直接結合された」、「直接応答する」、又はそれらの変形と称される場合、介在要素は存在しない。同様の番号は、全体を通して同様の要素を指す。更に、本明細書で使用される「結合された」、「接続された」、「応答する」、又はそれらの変形は、無線で結合され、接続され、又は応答することを含むことができる。本明細書で使用される場合、「a」、「an」、及び「the」という単数形は、文脈が別途明確に示されない限り、複数形も含むことが意図される。周知の機能又は構造は、簡潔さ及び/又は明確さのために詳細に説明されない場合がある。「及び/又は」という用語は、関連する列挙された項目のうちの1つ以上のありとあらゆる組み合わせを含む。
【0085】
本明細書では、第1、第2、第3などの用語が、様々な要素/動作を説明するために使用されることができるが、これらの要素/動作は、これらの用語によって限定されるべきではないことが理解されよう。これらの用語は、1つの要素/動作を別の要素/動作から区別するためにのみ使用される。したがって、いくつかの実施形態における第1の要素/動作は、本発明の概念の教示から逸脱することなく、他の実施形態では第2の要素/動作と呼ばれ得る。同じ参照番号又は同じ参照符号は、本明細書全体を通して同じ又は同様の要素を示す。
【0086】
本明細書で使用される場合、「備える(comprise)」、「備える(comprising)」、「備える(comprises)」、「含む(include)」、「含む(including)」、「含む(includes)」、「有する(have)」、「有する(has)」、「有する(having)」、又はそれらの変形は、オープンエンドであり、1つ以上の記載された特徴、整数、要素、ステップ、構成要素又は機能を含むが、1つ以上の他の特徴、整数、要素、ステップ、構成要素、機能又はそれらの群の存在又は追加を排除するものではない。更にまた、本明細書で使用される場合、「例えば(exempli gratia)」というラテン句から派生する「例えば(e.g.)」という一般的な略語は、前述の項目の一般的な例又は複数の例を導入又は指定するために使用されてもよく、そのような項目を限定することを意図するものではない。「すなわち(id est)」というラテン句から派生する「すなわち(i.e.)」という一般的な略語は、より一般的な列挙から特定の項目を指定するために使用されることができる。
【0087】
例示的な実施形態は、コンピュータ実装方法、装置(システム及び/又はデバイス)及び/又はコンピュータプログラム製品のブロック図及び/又はフローチャート図を参照して本明細書に記載されている。ブロック図及び/又はフローチャート図のブロック、並びにブロック図及び/又はフローチャート図におけるブロックの組み合わせは、1つ以上のコンピュータ回路によって実行されるコンピュータプログラム命令によって実装されることができることが理解される。これらのコンピュータプログラム命令は、コンピュータ及び/又は他のプログラマブルデータ処理装置のプロセッサを介して実行される命令が、ブロック図及び/又はフローチャートブロック又は複数のブロックにおいて指定された機能/動作を実装するために、トランジスタ、メモリ位置に記憶された値、及びそのような回路内の他のハードウェア構成要素を変換及び制御し、それによってブロック図及び/又はフローチャートブロックで指定された機能/動作を実施するための手段(機能)及び/又は構造を形成するように、機械を製造するために汎用コンピュータ回路、専用コンピュータ回路、及び/又は他のプログラマブルデータ処理回路のプロセッサ回路に提供されてもよい。
【0088】
これらのコンピュータプログラム命令はまた、コンピュータ可読媒体に記憶された命令が、フローチャート及び/又はブロック図のブロック又は複数のブロックにおいて指定された機能/動作を実装させる命令を含む製品を生成するように、特定の方法で機能するようにコンピュータ又は他のプログラム可能データ処理装置に指示することができるコンピュータ可読媒体に記憶されてもよい。したがって、本発明の概念の実施形態は、集合的に「回路」、「モジュール」、又はそれらの変形と称されることができる、ハードウェア及び/又はデジタル信号プロセッサなどのプロセッサ上で実行されるソフトウェア(ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコードなどを含む)において具現化されてもよい。
【0089】
また、いくつかの代替の実装では、ブロックに記載された機能/動作がまた、フローチャートに記載された順序とは異なる順序で発生してもよいことにも留意されたい。例えば、連続して示される2つのブロックは、実際には実質的に同時に実行されてもよいか、又はブロックは、関与する機能/動作に応じて、時には逆の順序で実行されてもよい。更に、フローチャート及び/又はブロック図の所与のブロックの機能は、複数のブロックに分離されてもよく、又はフローチャート及び/又はブロック図の2つ以上のブロックの機能は、少なくとも部分的に統合されてもよい。最後に、本発明の概念の範囲から逸脱することなく、例示されるブロック間に他のブロックが追加/挿入されてもよく、及び/又はブロック/動作が省略されてもよい。更に、一部の図は、通信の主要な方向を示すために通信経路上に矢印を含むが、通信は、描かれた矢印と反対方向に発生してもよいことを理解されたい。
【0090】
本発明の概念の原理から実質的に逸脱することなく、実施形態に対して多くの変形及び変更が行われることができる。全てのそのような変形及び変更は、本発明の概念の範囲内で本明細書に含まれることが意図される。したがって、上記の主題は、例示的であるとみなされるべきであり、限定的ではなく、実施形態の添付の例は、本発明の概念の趣旨及び範囲内にある、そのような全ての変更、強化、及び他の実施形態を網羅することを意図している。したがって、法律によって許容される最大範囲まで、本発明の概念の範囲は、実施形態及びそれらの均等物の以下の例を含む本開示の最も広い許容可能な解釈によって決定されるべきであり、前述の詳細な説明によって制限又は限定されるものではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17A
図17B
図18