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  • 特許-船舶用推進装置及びそれを備えた船舶 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】船舶用推進装置及びそれを備えた船舶
(51)【国際特許分類】
   B63H 1/26 20060101AFI20240710BHJP
   B63H 1/20 20060101ALI20240710BHJP
【FI】
B63H1/26 Z
B63H1/20 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023053472
(22)【出願日】2023-03-29
【審査請求日】2023-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000110435
【氏名又は名称】ナカシマプロペラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100197147
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 雅美
(74)【代理人】
【識別番号】100110320
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 知子
(74)【代理人】
【識別番号】100224465
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 智加
(74)【代理人】
【識別番号】100116687
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 爾
(72)【発明者】
【氏名】藤本 浩史
(72)【発明者】
【氏名】岡田 善久
(72)【発明者】
【氏名】蓮池 伸宏
(72)【発明者】
【氏名】片山 健太
(72)【発明者】
【氏名】立川 拓也
【審査官】福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-234861(JP,A)
【文献】特開2012-086667(JP,A)
【文献】特開2020-111177(JP,A)
【文献】特表2016-507410(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0062819(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63H 1/26
B63H 1/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のプロペラ羽根が外周面に設けられるプロペラボスと、
複数の翼が設けられ、該プロペラボスの後端部に取り付けられるキャップと、を備えた船舶用推進装置であって、
該キャップの回転軸方向に見た該翼の形状は、該キャップの回転軸に対してフォワードスキューとなるように設定され
さらに、該翼の形状は、該キャップへの該翼の根部から該翼の先端に至る該翼の中心線について、該回転軸からの半径の変化量に対するスキューの変化量を示すスキュー分布が、該翼の根部付近ではアフトスキューであり、該翼の先端付近ではフォワードスキューとなるS字型を有していることを特徴とする船舶用推進装置。
【請求項2】
複数のプロペラ羽根が外周面に設けられるプロペラボスと、
複数の翼が設けられ、該プロペラボスの後端部に取り付けられるキャップと、を備えた船舶用推進装置であって、
該キャップの回転軸方向に見た該翼の形状は、該キャップの回転軸に対してフォワードスキューとなるように設定され、
さらに、該翼の形状は、該回転軸の軸方向に対して、該翼の該プロペラ羽根側の側端部で最も該プロペラ羽根に近い部分の位置は、該翼の付根の該プロペラ羽根側の端部の位置よりも該プロペラ羽根寄りに位置することを特徴とする船舶用推進装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の船舶用推進装置を備えることを特徴とする船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶用推進装置及びそれを備えた船舶に関し、特に、複数のプロペラ羽根が外周面に設けられるプロペラボスと、複数の翼が設けられ、該プロペラボスの後端部に取り付けられるキャップとを備えた船舶用推進装置及びそれを備えた船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プロペラ羽根のプロペラボスに取り付けるキャップにフィンを設け、スクリュープロペラの推進効率を向上する船舶用推進装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の船舶用推進装置においては、キャップに設けられるフィンの形状を、後半部において後縁側をカットした形状とすることにより、プロペラ後方の縮流に対するフィン効果を維持しながら、フィンの抵抗を少なくして推進効率を増加させている。
【0003】
特許文献1に代表される従来の船舶用推進装置においては、推進効率向上を目的としているが、フィン外周端から発生するキャビテーションの低減について解決手段を提供していない。
【0004】
このようなフィンから生じるキャビテーションに起因する騒音は、航行時における静穏性の確保が要請される船舶において特に問題となる。近年、乗船時における快適性や海洋生物保護等の観点から、航行時における静穏性を確保しながら、推進性能を向上することができる船舶が要請されている。
【0005】
この課題を解決するため、本出願人は、特許文献2において、主としてプロペラ羽根外径に対するプロペラボス径の比率が大きくなる高速船用の可変ピッチプロペラに好適な構造として、キャップの後端面に繋がるフィンを設け、フィンの外径をコンパクト化し、キャビテーションの発生を抑制する構成を提案した。しかしながら、固定ピッチプロペラが採用される一般商船用プロペラにおいては、プロペラ羽根外径に対するプロペラボス径の比率が小さく、特許文献2によるフィンの配置では静穏性の確保は図れたとしても十分な推進効率改善が得られないため、異なる手段による静穏性と推進性能の向上を実現した船舶用推進装置の開発が期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5405872号公報
【文献】特許第6812057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、上述したような問題を解決し、静穏性と推進性能の向上を図った船舶用推進装置を提供することである。また、この船舶用推進装置を備えた船舶を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の船舶用推進装置及びそれを備えた船舶は、以下の技術的特徴を有する。
(1) 複数のプロペラ羽根が外周面に設けられるプロペラボスと、複数の翼が設けられ、該プロペラボスの後端部に取り付けられるキャップと、を備えた船舶用推進装置であって、該キャップの回転軸方向に見た該翼の平面形状は、該キャップの回転軸に対してフォワードスキューとなるように設定されていることを特徴とする。
【0009】
(2) 上記(1)に記載の船舶用推進装置において、該翼の平面形状は、該キャップへの該翼の根部から該翼の先端に至る該翼の中心線について、該回転軸からの半径の変化量に対するスキューの変化量を示すスキュー分布が、該翼の根部付近でアフトスキューであり、該翼の先端付近ではフォワードスキューとなるS字型を有することを特徴とする。
【0010】
(3) 上記(1)に記載の船舶用推進装置において、該翼の形状は、該回転軸の軸方向に対して、該翼の該プロペラ羽根側の側端部で最も該プロペラ羽根に近い部分の位置は、該翼の付根の該プロペラ羽根側の端部の位置よりも該プロペラ羽根寄りに位置することを特徴とする。
【0011】
(4) 上記(1)に記載の船舶用推進装置において、該翼の該回転軸から同じ半径の位置における翼断面は、前縁から後縁の直前まで曲率が連続で変化し、かつキャンバーをもつ翼断面形状となることを特徴とする。
【0012】
(5) 上記(1)乃至(5)のいずれかに記載の船舶用推進装置を備えることを特徴とする船舶である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複数のプロペラ羽根が外周面に設けられるプロペラボスと、複数の翼が設けられ、該プロペラボスの後端部に取り付けられるキャップと、を備えた船舶用推進装置であって、該キャップの回転軸方向に見た該翼の平面形状は、該キャップの回転軸に対してフォワードスキューとなるように設定されているため、翼の先端付近で発生するチップボルテックスキャビテーションを低減させることができる。
【0014】
しかも、該翼の該回転軸から同じ半径の位置における翼断面を、前縁から後縁の直前まで曲率が連続で変化し、かつキャンバーをもつ翼断面形状を併せて採用することで、翼面上の圧力分布をフラットにでき、翼外周端にキャビテーションを生じに難くくさせることができる。これらによって静穏性を高めると同時に、翼の外周側をプロペラ羽根直後に配置することができ、推進性能の向上も図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の船舶用推進装置に係るスクリュープロペラの一例を示す斜視図である。
図2】本発明の船舶用推進装置に係るスクリュープロペラの一例を示す側面図である。
図3】本発明で使用する翼に適用するS字型フォワードスキューを説明する図である。
図4図3の翼における半径rに対するスキュー角の変化を示すグラフである。
図5】本発明の船舶用推進装置に係るスクリュープロペラの一例を示す、根部の断面図である。
図6】従来の板状フィンにおける周辺の流れを示す図である。
図7】従来の不連続曲率を有するフィンにおける周辺の流れを示す図である。
図8】本発明で使用する翼における周辺の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明の船舶用推進装置に係るスクリュープロペラについて説明する。なお、本発明の実施形態に係るスクリュープロペラは、固定ピッチプロペラ(FPP: Fixed Pitch Propeller)に好適に使用されるが、その適用対象はFPPに限定されるものではなく、可変ピッチプロペラ(CPP:Controllable Pitch Propeller)にも使用することができる。
【0017】
図1は、本発明の船舶用推進装置に係るスクリュープロペラ1の斜視図である。図2は、該スクリュープロペラ1の側面図である。以下の説明においては、図1及び図2に示す前後方向は、当該スクリュープロペラ1が搭載される船舶の前後方向と同じ意味を示す。
【0018】
図1及び図2に示すように、スクリュープロペラ1は、図示しない駆動源からの推進力が伝達されるプロペラ軸に固定されるプロペラボス(以下、単に「ボス」という)2と、ボス2の外周面に設けられる複数のプロペラ羽根3と、ボス2の後端部に取り付けられるキャップ4とを含んで構成される。ボス2、プロペラ羽根3及びキャップ4は、駆動源からの推進力により一体的に回転可能に構成される。スクリュープロペラ1は、回転軸Aを基準として矢印B方向に回転する(図1参照)。
【0019】
ボス2は、概して円筒形状を有し、例えば、図示しないプロペラ軸の外周部に固定される。ボス2は、回転軸A方向に見ると、円形状を有する外周面を備える。ボス2の外周面には、複数のプロペラ羽根3が設けられる。なお、複数のプロペラ羽根3がボス2と別部品として構成される場合、ボス2の外周面には、複数のプロペラ羽根3が嵌合される複数の溝部が形成される。これらの溝部は、プロペラ羽根3の嵌合部分における断面形状に一致した形状を有している。
【0020】
複数のプロペラ羽根3は、ボス2の外周面にて周方向に等間隔を空けて配置される。複数のプロペラ羽根3は、それぞれボス2の外周面から径方向外側に向かって延びるように設けられている。ボス2及びプロペラ羽根3は、銅合金等の金属材料を鋳造することで一部品として形成することができる。しかしながら、ボス2及びプロペラ羽根3の構成については、これに限定されるものではなく任意の構成を採用できる。例えば、ボス2を銅合金で形成する一方、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)等で製造したプロペラ羽根3をボス2の外周面に嵌合させてもよい。
【0021】
図1及び2では、4枚のプロペラ羽根3と、7枚の翼5で構しているが、プロペラ羽根の数や翼の数はこれらに限定されない。また、回転軸A方向に見て、翼5をプロペラ羽根3と重ねて配置しても良いし、隣接するプロペラ羽根3の間の位置に配置しても良い。翼5は、プロペラ羽根3の回転に伴ってボス2の後方側に発生する渦(以下、適宜「ハブ渦」という)の発生を抑制するとともに、翼5外周端から発生するチップボルテックスキャビテーションの低減を前提として、キャップ4における周方向の任意の位置に配置することができる。
【0022】
このような構成を有するスクリュープロペラ1において、駆動源から推進力を得てプロペラ羽根3及び翼5が回転すると、翼5がボス2の後方側の水流を調整することで、ボス2の後方側に発生するハブ渦が除去される。これにより、ハブ渦に起因するエネルギーのロスを軽減すると同時に推進力を増大することができる。なお、ハブ渦は、ハブ渦キャビテーションと呼ばれることもある。
【0023】
翼5の外周端から発生したチップボルテックスキャビテーションは、航行に伴う騒音の原因となる。このため、特に航行時における静穏性が要請される船舶においては、翼5からのチップボルテックスキャビテーションの発生を極力抑制する必要がある。
【0024】
本発明の船舶用推進装置では、翼5で発生するキャビテーションを抑制するため、図3に示すように、キャップ4の回転軸(A)方向に見た翼5の平面形状を、翼が取り付けられたキャップ4の回転軸Aに対して、フォワードスキューとなるように設定している。
【0025】
フォワードスキューとは、図3に示すように、翼5のキャップ4への根部RTから翼の先端TPに至る翼5の翼幅中心線CLに着目し、回転軸Aから該翼幅中心線CTへの接線L0と回転軸Aと先端TPを結ぶ直線L1とが形成する角度(スキュー)θが、接線L0を基準に、翼5の回転方向(矢印B)側に位置している状態である。本発明では、スキュー角θを15度以上に設定することが好ましい。
【0026】
本発明においては、特に、翼幅中心線CLの分布形状は「S字型」とする。このS字型のフォワードスキューの構成を採用することで、翼5の先端TP付近で発生するキャビテーション(チップボルテックス・キャビテーション)を効果的に抑制することが可能となる。これにより、水中の騒音レベルを低減できる。
【0027】
図3は、本発明の船舶用推進装置に係る一実施例を示す翼5の平面形状を示す図である。図3では、中心軸Aからの距離(半径)rを、翼5の先端TPの位置の中心軸Aからの距離(基準半径)Rで規格化(r/R)した数値で表示している。
【0028】
図3で示した翼5の平面形状では、翼幅中心線CLは、翼5の根部RTからアフトスキューとなり、回転方向Bに対して反対方向に変化する。その後、接線L0の位置からは、翼の先端TPに進むについて、フォワードスキューとなる。フォワードスキューの変化も、翼5の中心部付近(図4のCPの範囲を参照)、例えば半径位置r/Rの値が0.65~0.9の範囲では、半径位置r/Rの変化量に対してスキューの変化量が大きく変化している。そして、翼5の先端TP付近ではスキューの変化量が緩やかとなっている。
【0029】
この翼の形状をより分かり易く示すため、図4では、半径位置r/Rに対して、スキューθの変化をグラフで示している。回転軸Aからの半径r/Rの変化量に対するスキューの変化量の大きさは、図4のグラフの傾きとして表すことができる。図4を見ると、翼の根部RTが0.5(r/R)付近の位置にあり、根部RTからスキューが上昇するアフトスキューとなり、翼5の中央部付近CP(例えば、0.65~0.9r/R)では、フォワードスキューとなり、スキューの変化(グラフの傾き)も大きくなっている。そして、翼5の先端TP付近では、フォワードスキューにおけるスキューの変化は緩やかになっている。このように、図4のグラフの形状から、半径位置に対するスキューの変化は略「S字」を描くように変化している。本発明では、図4のようなスキューの変化形状を「S字型」又は「S字型フォワードスキュー」と称している。
【0030】
図3及び図4に示すように、半径位置に対するスキューの変化を、翼の根部付近ではアフトスキューとし、翼の中心部付近で大きくフォワードスキューで変化し、翼の先端付近ではフォワードスキューの変化を小さくすることによって、翼の強度を十分確保しながら、キャビテーションの発生を抑制することが可能となる。
【0031】
さらに本発明の船舶用推進装置においては、翼の形状をスキュー角θを15度以上のフォワードスキューにすることを利用して、図2に示すように、翼5のプロペラ羽根3側の側端部で最もプロペラ羽根3に近い部分の位置は、翼5の根部のプロペラ羽根3側の端部の位置よりもプロペラ羽根3寄りに設定している。この配置により翼5の根部ではキャップ取り付けに必要となるボルトを組み付けるクリアランスを確保するとともに、推進効率向上への寄与が大きい翼5の外周部についてはプロペラ羽根3との間隔Gをより狭くすることで、効率改善効果が最も大きくなるプロペラ翼直後に配置することが可能となる。
【0032】
図5は、プロペラ羽根3のボス2への付根であるプロペラ羽根3の根部S3や、翼5のキャップ4への付根である翼5の根部S5の形状を示すものである。翼5の同じ半径位置(r/R)における断面形状は、図5に示すような前縁から後縁の直前まで曲率が連続で変化し、かつキャンバーをもつ翼断面形状をしている。この構成により、キャビテーションの発生をより効果的に抑制することが可能となる。
【0033】
従来のフィンにおいては、図6及び図7のフィン6の前縁部の断面図が示すように、前縁部が水の流れ(流線)Fに対して垂直な面(図6参照)、あるいは単純なR形状(図7参照)を備えており、このため、流線Fが急に曲げられ、剥離領域Dを形成する。剥離領域Dでは圧力が低くなり、キャビテーションが発生し易い。このため、図8に示すように、翼5の前縁から後縁までを曲率が連続で変化し、かつキャンバー(符号Cで示すように、翼の断面の幅の中心線(点線)が、翼の前縁と後縁とを結ぶ直線(実線)から外れていること)を有する翼断面形状とすることで、翼面上の圧力分布を平坦にして、キャビテーションの発生を抑制している。特許文献2では、翼5の後方側の側面のみに円弧形状部を設けているが、図8のように、翼5では断面は前縁から後縁の直前まで曲率が連続で変化し、かつキャンバーを有する形状にすることで、より一層のキャビテーションを抑制することが可能となる。
【0034】
以上説明したように、本発明の船舶用推進装置を構成するスクリュープロペラ1においては、キャップ4に設ける複数の翼5をS字型のフォワードスキューとすることで、翼5の半径を大きくしながら、チップボルテックスキャビテーションの発生を抑制することができる。この結果、キャビテーションに起因する騒音の発生を防止でき、航行時における静穏性を確保することができる。また、ボス2の後方側の水流が翼5により調整されることから、ボス2の後方側に形成されるハブ渦の発生も抑制できるので、推進性能を向上することができる。さらに、翼5の外周部をプロペラ羽根直後に配置できることから推進力もより大きくなる。この結果、航行時における静穏性を確保しながら、推進性能を向上することが可能となる。
【0035】
以上の説明では、ボス2とキャップ4とを別体で設ける例を中心に説明したが、これに限らず、ボス2とキャップ4とを一体的に設けることも可能である。また、翼5を設けたキャップ4の側面を図2に示すように、キャップの直径が徐々に減少するテーパー形状とすることも可能である。さらには、テーパー形状の部分とその後側の部分とを分けて構成したり、テーパー形状の部分だけ、ボス2と一体的に構成することも可能である。
【0036】
また、キャップ4は、後方側に凸の円錐形状を有してもよい。また、この円錐形状の先端に平面部分を配置する形状(すなわち、円錐台形状)であってもよい。このように構成される場合であっても、上記実施の形態のように翼5の形状を調整することにより、同様の作用及び効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
以上説明したように、本発明は、静穏性と推進性能の向上を図った船舶用推進装置を提供することが可能となる。また、この船舶用推進装置を備えた船舶を提供することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 スクリュープロペラ(船舶用推進装置)
2 プロペラボス(ボス)
3 プロペラ羽根(ブレード)
4 キャップ
5 翼(フィン)

【要約】
【課題】
静穏性と推進性能の向上を図った船舶用推進装置を提供すること。
【解決手段】
複数のプロペラ羽根3が外周面に設けられるプロペラボス2と、複数の翼5が設けられ、該プロペラボス2の後端部に取り付けられるキャップ4と、を備えた船舶用推進装置であって、該キャップ4の回転軸方向に見た該翼5の平面形状は、該キャップの回転軸に対してS字型のフォワードスキューとなるように設定されていることを特徴とする。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8