(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】医療デバイス用金属ワイヤ、及び、ガイドワイヤ
(51)【国際特許分類】
A61M 25/09 20060101AFI20240710BHJP
【FI】
A61M25/09 516
A61M25/09 500
(21)【出願番号】P 2023191450
(22)【出願日】2023-11-09
【審査請求日】2023-11-09
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【氏名又は名称】田邊 淳也
(74)【代理人】
【識別番号】100157277
【氏名又は名称】板倉 幸恵
(72)【発明者】
【氏名】近岡 空
(72)【発明者】
【氏名】牛田 圭亮
(72)【発明者】
【氏名】星野 成美
【審査官】佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/161832(WO,A1)
【文献】特開2003-275322(JP,A)
【文献】特開2001-340467(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療デバイス用金属ワイヤであって、
少なくとも第1の色を呈
し、酸化チタンを含む被膜を有する所定領域と、
少なくとも第2及び第3の色を呈
し、酸化チタンを含む被膜を有する特定領域と、
前記特定領域に隣接し、かつ、前記特定領域から見て前記所定領域とは反対側に位置する予め定められた領域であって、
少なくとも第4の色を呈
し、酸化チタンを含む被膜を有する予め定められた領域と、
を備え
、
前記所定領域の前記被膜の厚さは、前記特定領域の前記被膜の厚さよりも大きく、
前記特定領域の前記被膜の厚さは、前記予め定められた領域の前記被膜の厚さよりも大きい、
医療デバイス用金属ワイヤ。
【請求項2】
ガイドワイヤであって、
請求項1に記載の医療デバイス用金属ワイヤを備える、ガイドワイヤ。
【請求項3】
請求項2に記載のガイドワイヤであって、
前記所定領域よりも先端側に設けられた先端チップを備える、ガイドワイヤ。
【請求項4】
請求項3に記載のガイドワイヤであって、
前記特定領域は、前記所定領域よりも先端側に設けられた先端側特定領域と、前記所定領域よりも基端側に設けられた基端側特定領域と、を含み、
前記先端チップは、前記先端側特定領域に取り付けられている、ガイドワイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、医療デバイス用金属ワイヤ、医療デバイス、及び、医療デバイス用金属ワイヤの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血管にカテーテル等を挿入する際に用いられるガイドワイヤが知られている。このようなガイドワイヤにおいて、ニッケルチタン合金のような、超弾性合金により形成されたワイヤ(金属ワイヤ)が芯材として使用される場合がある。超弾性合金は曲がり癖が付きづらい性質を有している。ニッケルチタン合金は、熱処理を加えることによって超弾性特性が消失し、曲がり癖を付けやすくなることが知られている。例えば、特許文献1,特許文献2には、このような性質を利用して、金属ワイヤに熱処理を施すことでシェイピング性能を向上させたガイドワイヤが開示されている。なお、「金属ワイヤ」は、コア、ワイヤ、コアワイヤ、コアシャフト、医療デバイス用金属ワイヤとも呼ばれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2020/161832号パンフレット
【文献】特開2017-153615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、熱処理による金属の物性変化を利用して金属ワイヤを加工することがある。金属ワイヤを熱処理する方法としては、電気炉による焼きなましや、レーザーによる熱処理等の方法がある。上記の特許文献では、曲がり癖の付きやすさの程度を変化させることについては何ら考慮されていない。なお、このような課題は、血管系に限らず、リンパ腺系、胆道系、尿路系、気道系、消化器官系、分泌腺及び生殖器官等、人体内の各器官に挿入される医療デバイス、及び、これらの医療デバイスに使用される金属ワイヤに共通する。
【0005】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、曲がり癖の付きやすさの程度を変化させた医療デバイス用金属ワイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
【0007】
(1)本発明の一形態によれば、医療デバイス用金属ワイヤが提供される。この医療デバイス用金属ワイヤは、所定の色グループより選ばれる少なくとも1つの色を呈する被膜を有する所定領域と、特定の色グループより選ばれる少なくとも1つの色を呈する被膜を有する特定領域と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図3】第1実施形態の医療デバイスの構成を例示した説明図である。
【
図6】金属ワイヤの先端部の表面組織の一例を示す図である。
【
図8】医療デバイスの製造方法を示すフローチャートである。
【
図9】第2実施形態の金属ワイヤの先端部の一例を示す図である。
【
図10】第3実施形態の金属ワイヤの先端部の一例を示す図である。
【
図11】第4実施形態の金属ワイヤの先端部の一例を示す図である。
【
図12】第5実施形態の金属ワイヤの先端部の一例を示す図である。
【
図13】第6実施形態の金属ワイヤの先端部の一例を示す図である。
【
図14】第7実施形態の金属ワイヤの先端部の一例を示す図である。
【
図15】第8実施形態の金属ワイヤの先端部の一例を示す図である。
【
図16】第9実施形態の金属ワイヤの先端部の拡大図である。
【
図17】第9実施形態の医療デバイスの製造方法を示すフローチャートである。
【
図18】第10実施形態の金属ワイヤの先端部の拡大図である。
【
図19】第10実施形態の医療デバイスの製造方法を示すフローチャートである。
【
図20】第11実施形態の金属ワイヤの先端部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
金属ワイヤに熱処理を施すことでシェイピング性能を向上できる。以下では、物性の異なる第1領域、第2領域、及び未熱処理部を有する金属ワイヤに対してシェイプ試験を実施した。この結果、第1領域が最も曲がり癖を付けやすく、第2領域では第1領域よりも曲がり癖を付けにくいことが分かった。
【0010】
図1は、シェイプ試験について説明する図である。
図1(A)は、シェイプ試験において用いた試験具を示す。試験具は、シリコン製の台座901と、Φ0.5mmのピン902とを備える。サンプルSWとなる金属ワイヤは、ニッケルチタン合金製のワイヤに対して、熱処理条件を変えることで形成した第1領域、第2領域、未熱処理部を有するワイヤである。まず、
図1(A)に示すように、台座901にサンプルSWの先端部を置いて、サンプルSWの第1領域をピン902で押さえつけ、ピン902に0.98Nの荷重を付与した状態で、サンプルSWを鉛直上方向(白抜き矢印の方向)に引き抜いた。引き抜き長は2mmとした。その後、サンプルSWの引き抜き部位の湾曲形状の角度を測定し、シェイプ角度とした。サンプルSWの第2領域、及び、サンプルSWの未熱処理部に対しても、上述の手順で試験を行い、シェイプ角度をそれぞれ測定した。
【0011】
図1(B)は、シェイプ試験の結果(サンプルSWの各引き抜き部位のシェイプ角度)を表す。
図2は、サンプルSWとなる金属ワイヤの各領域の物性を表す表である。第1領域のシェイプ角度は60°である。第1領域は第1温度で熱処理されている。第1領域の酸化被膜の厚みは100nm以上である。第1領域の酸化被膜は、第1の色グループより選ばれる少なくとも一つの色を呈する。第1の色グループは、緑、青緑、赤紫、黄を含む。第2領域のシェイプ角度は18°である。第2領域は第2温度で熱処理されている。第2領域の酸化被膜の厚みは10nm以上30nm以下である。第2領域の酸化被膜は、第3の色グループより選ばれる少なくとも一つの色を呈する。第3の色グループは、紫、金を含む。移行領域のシェイプ角度は18°より大きく、60°より小さいと推定される。移行領域は、第1領域に付与された熱が、サンプルSW上を伝導することによって形成される。移行領域の熱処理温度は、第1温度より低く、第2温度より高いと推定される。移行領域の酸化被膜の厚みは30nmより大きく、100nmより小さい。移行領域の酸化被膜は、第2の色グループより選ばれる少なくとも一つの色を呈する。第2の色グループは、青、白を含む。未熱処理部のシェイプ角度は9°である。未熱処理部は、酸化被膜の厚みは約0nmである。未熱処理部は、酸化被膜の色が第4の色グループより選ばれる少なくとも一つの色を呈する。第4の色グループは、灰、銀を含む。第1温度、第2温度、の大小関係は、第1温度>第2温度、となっている。
【0012】
図1(B)及び
図2から明らかなように、金属ワイヤの酸化被膜の厚みが厚くなればなるほど、シェイプ角度(癖付き角度)が大きくなるという相関関係が得られた。酸化被膜の厚さと色には、後述の通り相関関係がある。すなわち、酸化被膜の色と、曲がり癖の付けやすさには相関関係があるということが分かった。なお、
図2に示すように、第1領域と第2領域との間の移行領域については、シェイプ角度は、第1領域>移行領域>第2領域という関係が成立することが推測される。第1領域は、請求項での「所定領域」に該当する。移行領域は、請求項での「特定領域」に該当する。第2領域は、請求項での「予め定められた領域」に該当する。第1の色グループは、請求項での「所定の色グループ」に該当する。第2の色グループは、請求項での「特定の色グループ」に該当する。第3の色グループは、請求項での「予め定められた色グループ」に該当する。第1温度は、請求項での「所定温度」に該当する。第2温度は、請求項での「特定温度」に該当する。
【0013】
これを利用して、以下に示す各実施形態では、曲がり癖の付けやすさの程度を変化させた医療デバイスを作成することに成功した。
【0014】
<第1実施形態>
図3は、第1実施形態の医療デバイス1の構成を例示した説明図である。医療デバイス1は、ガイドワイヤである。医療デバイス1は、血管や消化器官に他の医療デバイス(カテーテル等)を挿入する際に用いられる。医療デバイス1は、第1金属ワイヤ10を備える。医療デバイス1は、第2金属ワイヤ20を備える。医療デバイス1は、コイル40を備える。医療デバイス1は、先端チップ51を備える。医療デバイス1は、基端側接合部52を備える。第1金属ワイヤ10の先端部100は、熱処理によって形成された被膜を有する。医療デバイス1は、先端部100における曲がり癖の付きやすさ(シェイピング性能)が向上されている。
【0015】
図3は、説明の便宜上、各構成部材の大きさの相対比が実際とは異なる部分を含んでいる。
図3は、各構成部材の一部が誇張されている部分を含んでいる。
図3は、医療デバイス1の中心を通る軸を軸線O(一点鎖線)で表す。軸線Oは、第1金属ワイヤ10、第2金属ワイヤ20、及びコイル40の各中心を通る軸とそれぞれ一致している。軸線Oは、上述の各構成部材の各中心軸と相違していてもよい。
図3には、相互に直交するXYZ軸を図示する。X軸は医療デバイス1の長さ方向に対応する。Y軸は医療デバイス1の厚み方向に対応する。Z軸は医療デバイス1の幅方向に対応する。
図3の左側(-X軸方向)を医療デバイス1及び各構成部材の「先端側」と呼び、
図3の右側(+X軸方向)を医療デバイス1及び各構成部材の「基端側」と呼ぶ。また、医療デバイス1及び各構成部材について、先端側に位置する端部を「先端」と呼び、先端及びその近傍を「先端部」と呼ぶ。基端側に位置する端部を「基端」と呼び、基端及びその近傍を「基端部」と呼ぶ。先端側は、生体内部へ挿入され、基端側は、医師により操作される。これらの点は、
図3以降においても共通する。
【0016】
第1金属ワイヤ10は、医療デバイス用金属ワイヤである。第1金属ワイヤ10は、医療デバイス1の先端側に配置されている。第1金属ワイヤ10は、第2金属ワイヤ20よりも先端側に配置されている。第1金属ワイヤ10は、例えば、ニッケルチタン合金や、ニッケルチタンと他の金属との合金により形成されている。第1金属ワイヤ10は、先端側から基端側に向かって順に、第1部11、第2部12、第3部13、第4部14、第5部15を有している。各部の厚み、幅、長さは任意に決定できる。
【0017】
第1部11は、第1金属ワイヤ10のうち、最も先端側に位置する部分である。第1部11は、第1金属ワイヤ10の厚みが最小の部分である。第1部11には、表面に酸化チタンを含む被膜が形成されている。第1部11には、曲がり癖の付きやすさ(シェイピング性能)を向上させるためのプレス加工が施されている。詳細は後述する。以降、第1部11のうち、基端側の一部分を除く全体を「第1金属ワイヤ10の先端部100」または単に「先端部100」とも呼ぶ。
【0018】
第2部12は、第1金属ワイヤ10のうち、第1部11と第3部13との間に位置する部分である。第3部13は、第1金属ワイヤ10のうち、第2部12と第4部14との間に位置する部分である。第4部14は、第1金属ワイヤ10のうち、第3部13と第5部15との間に位置する部分である。第2部12の厚みは、先端に向かって薄くなる。第3部13の厚みは、先端に向かって薄くなる。第4部14の厚みは、先端に向かって薄くなる。第2部12の厚みの変化率、第3部13の厚みの変化率、及び、第4部14の厚みの変化率は、それぞれ異なる。第5部15は、第1金属ワイヤ10のうち、最も基端側に位置する部分である。第5部15は、略円柱形状を有し、第1金属ワイヤ10の厚みが最大の部分である。
【0019】
本実施形態において「略一定」とは「概ね一定」と同義であり、製造誤差等に起因したぶれを許容しつつ、概ね一定であることを意味する。同様に、「略円柱形状/略円錐台形状」とは「概ね円柱形状/概ね円錐台形状」と同義であり、製造誤差等に起因したぶれを許容しつつ、概ね当該形状であることを意味する。本実施形態において「同一」及び「等しい」とは、厳密に一致する場合に限らず、製造誤差等に起因した相違を許容する意味である。
【0020】
第2金属ワイヤ20は、医療デバイス1の基端側に配置されている。第2金属ワイヤ20は、第1金属ワイヤ10よりも基端側に配置されている。第2金属ワイヤ20は、一定の外径を有する略円柱形状の部材である。第2金属ワイヤ20の外径は、第1金属ワイヤ10の第5部15の外径と同じである。第2金属ワイヤ20は、第1金属ワイヤ10よりも線形変形領域のヤング率が大きい材料、例えば、SUS304、SUS316等のステンレス合金により形成されている。
【0021】
接合部30は、第1金属ワイヤ10と第2金属ワイヤ20とが、溶接により接合された部分である。接合部30は、第1金属ワイヤ10と第2金属ワイヤ20とが溶接とは異なる手段、例えば、固定具により固定されることで形成されてもよい。第1金属ワイヤ10と第2金属ワイヤ20とが接合された部材は、コアシャフトである。接合部30は、第1金属ワイヤ10の第5部15の基端面と、第2金属ワイヤ20の先端面との間に形成されている。図示の例では、接合部30は、軸線Oに対してほぼ垂直な平面状である。接合部30は、軸線Oに対して傾斜していてもよい。この接合部30によって、第1金属ワイヤ10と第2金属ワイヤ20とが固定されている。
【0022】
第1金属ワイヤ10のうち、第1部11、第2部12、及び第3部13の先端側は、コイル40によって覆われている。第1金属ワイヤ10のうち、第3部13の基端側、第4部14、及び第5部15は、コイル40によって覆われておらず、コイル40から露出している。第2金属ワイヤ20の基端部は、医師が医療デバイス1を把持する際に使用される。
【0023】
コイル40は、螺旋状に巻回された素線41により形成されており、略円筒形状を有している。コイル40は、1本の素線を単条に巻回して形成される単条コイルであってもよい。コイル40は、複数本の素線を多条に巻回して形成される多条コイルであってもよい。コイル40は、複数本の素線を撚り合せた撚線を単条に巻回して形成される単条撚線コイルであってもよい。コイル40は、複数本の素線を撚り合せた撚線を複数用い、各撚線を多条に巻回して形成される多条撚線コイルであってもよい。コイル40の素線41の線径と、コイル40の外径及び内径と、コイル40の長さとは、任意に決定できる。
【0024】
素線41は、例えば、SUS304、SUS316等のステンレス合金、ニッケルチタン合金等、ピアノ線、ニッケル-クロム系合金、コバルト合金等の放射線不透過性合金、金、白金、タングステン、これらの元素を含む合金(例えば、白金-ニッケル合金)等の放射線不透過性合金、上記以外の公知の材料によって形成できる。
【0025】
先端チップ51は、医療デバイス1の先端に設けられている。先端チップ51は、第1金属ワイヤ10の第1部11の先端と、コイル40の先端とを一体的に保持している。基端側接合部52は、医療デバイス1の中間部に向けられている。基端側接合部52は、第1金属ワイヤ10の第3部13の一部分と、コイル40の基端とを一体的に保持している。先端チップ51は、任意の接合剤、例えば、銀ロウ、金ロウ、亜鉛、Sn-Ag合金、Au-Sn合金等の金属はんだによって形成されている。基端側接合部52は、任意の接合剤、例えば、銀ロウ、金ロウ、亜鉛、Sn-Ag合金、Au-Sn合金等の金属はんだによって形成されている。先端チップ51と基端側接合部52とは、同じ接合剤を用いてもよく、異なる接合剤を用いてもよい。
【0026】
以降、
図4~
図7を用いて、第1金属ワイヤ10の先端部100に形成された被膜と、先端部100の詳細な構成について説明する。
図3で説明した第1金属ワイヤ10のように、ニッケルチタン合金や、ニッケルチタンと他の金属との合金等、チタン(Ti)を含む金属ワイヤに対して熱処理を施した際、チタンが酸化することで、金属ワイヤの表面にチタンの酸化被膜が形成される。チタン酸化被膜を、以降、単に「被膜」とも呼ぶ。
【0027】
図4は、被膜の厚さと色の関係を示す図である。熱処理温度が高ければ高いほど、金属ワイヤに形成される被膜の膜厚は厚くなる。熱処理温度が低ければ低いほど、金属ワイヤに形成される被膜の膜厚は薄くなる。被膜の膜厚は、熱処理温度に関連がある。この被膜の膜厚は、金属ワイヤの外観の色と関連がある。
図4に示すように、被膜が「緑色」の場合は被膜の厚さが最も厚く、被膜が「青緑色」の場合は被膜の厚さが2番目に厚く、被膜が「赤紫色」の場合は被膜の厚さが3番目に厚く、被膜が「黄色」の場合は被膜の厚さが4番目に厚く、被膜が「白色」の場合は被膜の厚さが5番目に厚く、被膜が「青色」の場合は被膜の厚さが6番目に厚く、被膜が「紫色」の場合は被膜の厚さが7番目に厚く、被膜が「金色」の場合は被膜の厚さが8番目に厚い。なお、熱処理が施されず、被膜が形成されていない場合、金属ワイヤの外観の色は、灰色または銀色である。
【0028】
本実施形態において「緑色」には、グリーンのほか、ライムグリーンや、スカイグリーンなど、緑系の各色が含まれる。「青緑色」には、ピーコックグリーンのほか、アクアマリンや、ターコイズなど、緑と青の中間色に相当する各色が含まれる。「赤紫色」には、クラレットのほか、プラムや、マゼンタなど、赤と紫の中間色に相当する各色が含まれる。「黄色」には、イエローのほか、レモンイエローや、トパーズなど、黄系の各色が含まれる。「白色」には、ホワイトのほか、シルバーホワイトや、オイスターホワイトなど、白系の各色が含まれる。「青色」には、ブルーのほか、シアンや、ネービーブルーなど、青系の各色が含まれる。「紫色」には、パープルのほか、バイオレットや、グレープなど、紫系の各色が含まれる。「金色」には、アンティックゴールドのほか、バフや、ベージュなど、金系の各色が含まれる。
【0029】
被膜の色は、熱処理済の金属ワイヤの外観を目視で識別できる。具体的には、作業者は、デジタルマイクロスコープ「VHX-7000」(株式会社キーエンス製)を用いて、熱処理済の金属ワイヤの外観写真を撮影する。そして、作業者は、撮影された外観写真を目視で確認することで、被膜の色を識別する。すなわち、上述した被膜の色は、デジタルマイクロスコープVHX-7000での光環境下における色である。酸化被膜の確認場所(外観写真の撮影場所)は、Y軸方向から見た側面(後述する
図7(B)に示す側面)である。第1の色グループC1は、緑色、青緑色、赤紫色、及び黄色を含む。第3の色グループC3は、紫色、金色を含む。第2の色グループC2は、白色、青色を含む。第1の色グループC1は、被膜の厚さが相対的に厚い。第3の色グループC3は、被膜の厚さが相対的に薄い。第2の色グループC2は、被膜の厚さが、第1の色グループC1の被膜よりも薄く、第3の色グループC3の被膜よりも厚い。
【0030】
図5は、第1金属ワイヤ10の先端部100の一例を示す図である。
図5(A)は、先端部100の被膜の色をハッチングの線種で表した線図である。
図5(B)は、先端部100の写真である。線図は写真に対応している。
図5の線図及び写真は、共に、第1金属ワイヤ10の扁平形状の幅方向を示している。図示のように、第1金属ワイヤ10の先端部100は、先端から基端に向かって、部分91a~91lを有している。末尾に付したアルファベットがa,b,cと進むにつれ、第1金属ワイヤ10の長手方向における位置が基端側へと移動していく。なお、第1金属ワイヤ10の先端の未熱処理部は、少なくとも一部が、第1金属ワイヤ10を用いた医療デバイス1の製造時において、カットされて除外されてもよい。第1金属ワイヤ10の先端の未熱処理部は、第1金属ワイヤ10を用いた医療デバイス1の製造時において、カットせずにそのまま使用されてもよい。
【0031】
図示のように、部分91aは、未熱処理であることを示す銀色である。部分91bは、青色の被膜を有している。部分91cは、白色の被膜を有している。部分91dは、黄色の被膜を有している。部分91eは、赤紫色の被膜を有している。部分91fは、緑色の被膜を有している。部分91gは、青緑色の被膜を有している。部分91hは、赤紫色の被膜を有している。部分91iは、白色の被膜を有している。部分91jは、青色の被膜を有している。部分91kは、紫色の被膜を有している。部分91lは、金色の被膜を有している。
図5(A)では、図示の便宜上、ある部分と、ある部分に隣接する他の部分との境界を明示している。しかし、
図5(B)に示すように、ある部分と他の部分との境界は、被膜の色が段階的に遷移するグラデーションであってもよい。
図5(B)に示すように、各部分91b~91lの被膜の色(色そのもののほか、色味、質感も含む)、及び、各部分91b~91lの境界における色のグラデーションは、金属ワイヤに対する熱処理により発現する。
【0032】
「第1領域A1」は、第1金属ワイヤ10の先端部100の中央部に位置する領域である。第1領域A1は、第1の色グループC1に含まれる色(具体的には、緑色、青緑色、赤紫色、黄色の少なくとも何れか1色)の被膜を有する。
【0033】
「先端側移行領域AT1」は、第1領域A1と長手方向に異なる位置の領域である。先端側移行領域AT1は、第1金属ワイヤ10の第1領域A1よりも先端側に位置する。先端側移行領域AT1は、第2の色グループC2に含まれる色(具体的には、白色、青色の少なくとも何れか1色)の被膜を有する。先端側移行領域AT1は、第1領域A1の先端に隣接している。「基端側移行領域AT2」は、第1領域A1と長手方向に異なる位置の領域である。基端側移行領域AT2は、第1金属ワイヤ10の第1領域A1よりも基端側に位置する。基端側移行領域AT2は、第2の色グループC2に含まれる色(具体的には、白色、青色の少なくとも何れか1色)の被膜を有する。基端側移行領域AT2は、第1領域A1の基端に隣接している。第2の色グループC2に含まれる色の被膜を有する領域は、移行領域ATである。先端側移行領域AT1は、移行領域ATである。基端側移行領域AT2は、移行領域ATである。移行領域AT(先端側移行領域AT1、及び、基端側移行領域AT2)の被膜は、第2の色グループC2に含まれる色(白色、青色)を含むグラデーションを呈す。移行領域ATにおいて、白色の被膜は、青色の被膜と比べて、より第1領域A1に近い側に位置している。なお、先端側移行領域は、請求項での「先端側特定領域」に該当する。基端側移行領域は、請求項での「基端側特定領域」に該当する。
【0034】
「第2領域A2」は、第1領域A1とは長手方向に異なる位置の領域である。第2領域A2は、第1金属ワイヤ10の移行領域AT(具体的には、基端側移行領域AT2)から見て、第1領域A1とは反対側に位置する。第2領域A2は、第3の色グループC3に含まれる色(具体的には、紫色、金色の少なくとも何れか1色)の被膜を有する。第2領域A2は、移行領域ATの基端に隣接している。第2領域A2は、基端側移行領域AT2の基端に隣接している。換言すれば、第2領域A2は、第1金属ワイヤ10の長手方向において、第1領域A1とは離れた位置に設けられている。
【0035】
図2に示すように、第1領域A1は、シェイプ試験を実施した際のシェイプ角度が、60°である。移行領域ATは、シェイプ試験を実施した際のシェイプ角度が、18°より大きく、かつ、60°より小さい。第2領域A2は、シェイプ試験を実施した際のシェイプ角度が、18°である。未熱処理部は、シェイプ試験を実施した際のシェイプ角度が、9°である。第1領域A1は、シェイプ試験を実施した際のシェイプ角度が、移行領域ATよりも大きい。第1領域A1は、シェイプ試験を実施した際のシェイプ角度が、第2領域A2よりも大きい。
【0036】
図6は、第1金属ワイヤ10の先端部100の表面組織の一例を示す図である。
図6は、第1金属ワイヤ10の第1領域A1を、TEM(透過電子顕微鏡)「JEM-2100F」(日本電子株式会社製)で観察した際に得られた像を表す。
図6(A)は、TEMにより得られた第1領域A1の線図である。
図6(B)は、TEMにより得られた第1領域A1の写真である。
図6(A)と
図6(B)は、同じ像を表している。
【0037】
図6(A),(B)に示すように、熱処理済の第1金属ワイヤ10の表面には、チタン酸化被膜の形成に伴って表面偏析が生じ、層が形成されている。最も外側の層は、チタン酸化被膜CO1である。第1金属ワイヤ10の第1領域A1の被膜CO1の厚さT1は、100nm以上である。被膜CO1の厚さT1を得る方法について説明する。作業者は、第1金属ワイヤ10の第1領域A1のうち、最も被膜の厚さが薄いことを表す色(
図5に示す第1金属ワイヤ10の場合は、黄色)の部分について、TEMでの観察を行い、TEMにより得られた像において相対的に被膜が薄い部分の厚さを計測することで、被膜CO1の厚さT1を得る。
【0038】
第1金属ワイヤ10において、第1領域A1の被膜CO1の厚さT1は、移行領域ATの被膜の厚さよりも大きい。移行領域ATの被膜の厚さを得る方法について説明する。作業者は、最も被膜の厚さが厚いことを表す色(
図5に示す第1金属ワイヤ10の場合は、白色)の部分について、TEMでの観察を行い、TEMにより得られた像において相対的に被膜が厚い部分の厚さを計測することで、移行領域ATの被膜の厚さを得る。
【0039】
第1金属ワイヤ10において、第2領域A2の被膜の厚さは、10nm以上、かつ、30nm以下である。第3被膜の厚さの下限値について、作業者は、最も被膜の厚さが薄いことを表す色(
図5に示す第1金属ワイヤ10の場合は、金色)の部分について、TEMでの観察を行い、TEMにより得られた像において相対的に被膜が薄い部分の厚さを計測する。第3被膜の厚さの上限値について、作業者は、最も被膜の厚さが厚いことを表す色(
図5に示す第1金属ワイヤ10の場合は、紫色)の部分について、TEMでの観察を行い、TEMにより得られた像において相対的に被膜が厚い部分の厚さを計測する。
【0040】
図6(A),(B)に示す第1金属ワイヤ10の横断面視において、最も外側の層(チタン酸化被膜CO1)における任意の位置を第1の位置P1とする。外側から2番目の層における任意の位置を第2の位置P2とする。このとき、第1の位置P1におけるチタンの含有率は、第2の位置P2におけるチタンの含有率よりも大きい(チタン:第1の位置P1>第2の位置P2)。第2の位置P2におけるニッケル(Ni)の含有率は、第1の位置P1におけるニッケルの含有率よりも大きい(ニッケル:第1の位置P1<第2の位置P2)。
【0041】
上述したチタン及びニッケルの偏りは、熱処理に伴い、第1金属ワイヤ10の表面に向かってチタンの表面偏析が生じることに起因する。
図6(A),(B)では、第1金属ワイヤ10の第1領域A1について、第1の位置P1と第2の位置P2とにおけるチタン及びニッケルの含有率について説明した。第1金属ワイヤ10の移行領域ATと第2領域A2とにおいても、それぞれ第1領域A1と同じように、チタンの含有率は第1の位置P1>第2の位置P2となり、ニッケルの含有率は第1の位置P1<第2の位置P2となる。
【0042】
図7は、第1金属ワイヤ10の先端部100の拡大図である。
図7(A)は、Z軸方向から見た先端部100の側面図を表す。
図7(B)は、Y軸方向から見た先端部100の側面図を表す。
図7では、コイル40の図示を省略している。第1部11は、第1プレス部111と、遷移部112と、第2プレス部113とを有する扁平形状である。第1プレス部111は、第1絞り率でプレス加工が施された部分である。第1プレス部111は、相対的に幅広な偏平形状を有している。第2プレス部113は、第1絞り率よりも小さな第2絞り率でプレス加工が施された部分である。第2プレス部113は、第1プレス部111と比較して円柱に近い。第2プレス部113は、楕円円柱形状を有している。遷移部112は、第1プレス部111と第2プレス部113との間において、絞り率と、外側形状とが徐変している部分である。
【0043】
第1プレス部111と、遷移部112と、第2プレス部113の基端部を除く全体と、に熱処理による被膜が形成されている。図示の例では、第1プレス部111の先端部のうちの先端側は、未熱処理部である。第1プレス部111の先端部のうちの基端側には、先端側移行領域AT1が形成されている。第1プレス部111の中央部から基端までの間には、第1領域A1が形成されている。遷移部112の先端から基端の間には、基端側移行領域AT2が形成されている。第2プレス部113のうち基端部を除く全体には、第2領域A2が形成されている。なお、この第1領域A1、移行領域AT、第2領域A2と、第1プレス部111、遷移部112、及び第2プレス部113の対応関係はあくまで一例に過ぎず、任意に変更してよい。
【0044】
第1金属ワイヤ10の先端部100において、被膜(第1領域A1、移行領域AT、第2領域A2)は、第1金属ワイヤ10の扁平形状の厚み方向に形成されている。換言すれば、被膜は、第1金属ワイヤ10の厚み方向の表面111a,112a,113aに形成されている。第1金属ワイヤ10の先端部100において、被膜(第1領域A1、移行領域AT、第2領域A2)は、第1金属ワイヤ10の扁平形状の幅方向に形成されている。換言すれば、被膜は、第1金属ワイヤ10の幅方向の表面111b,112b,113bに形成されている。
【0045】
先端チップ51(破線)は、第1金属ワイヤ10の先端部100のうち、第1領域A1よりも先端側に取り付けられている。具体的には、先端チップ51は、第1領域A1よりも先端側に設けられた先端側移行領域AT1に取り付けられている。図示の例では、先端チップ51の基端は、先端側移行領域AT1の基端よりも僅かに先端側に位置しているが、先端チップ51の基端は、先端側移行領域AT1の範囲内の任意の位置にあってよい。
【0046】
図8は、医療デバイス1の製造方法を示すフローチャートである。工程S10において、作業者は、ニッケルチタン合金製の金属ワイヤを準備する。金属ワイヤは、ニッケルチタンと他の金属との合金製でもよい。工程S12において、作業者は、金属ワイヤの先端部をプレス加工する。工程S12では、
図7(A),(B)で説明したように、複数回プレス加工が行われ、第1プレス部111、遷移部112、第2プレス部113が形成される。工程S12では、1回のみプレス加工をしてもよい。
【0047】
工程S14において、作業者は、第1領域A1に対して、第1温度で熱処理を施す。熱処理は、金属ワイヤに対して高出力レーザーを照射して加熱する「レーザー熱処理」によって行われる。第1温度は、任意に定められてよい。熱処理は、他の熱処理方法(例えば、加熱炉を用いた熱処理)により行われてもよい。工程S14の結果、第1領域A1及び移行領域AT(先端側移行領域AT1、基端側移行領域AT2)に被膜が形成される。すなわち、移行領域AT(先端側移行領域AT1、基端側移行領域AT2)の被膜は、第1領域A1に照射されたレーザーによる熱が、金属ワイヤ上を伝導することによって形成される。第1領域A1の熱処理の程度は、移行領域ATの熱処理の程度よりも強い。第1領域A1の曲がり癖の付きやすさの程度は、移行領域ATよりも強くなる。工程S14は、第1領域A1及び移行領域ATに被膜を形成する工程である。第1領域A1の第1の色グループC1に含まれる色と、移行領域ATの第2の色グループC2に含まれる色とは、1回目の熱処理により発現する。
【0048】
工程S18において、作業者は、第2領域A2に対して、第2温度で熱処理を施す。第2領域A2は、第1領域A1よりも基端側に位置する。第2領域A2は、基端側移行領域AT2よりも基端側に位置する。第2温度での熱処理は、レーザー熱処理によって行われる。第2温度での熱処理は、他の熱処理方法(例えば、加熱炉を用いた熱処理)により実施されてもよい。第2温度は、第1温度よりも低い(第1温度>第2温度)。第1温度と、第2温度とは、熱処理時の金属ワイヤの温度を、放射温度計を用いて測定することによって測定できる。工程S18の結果、第2領域A2に被膜が形成される。第1温度よりも低い第2温度での熱処理が行われた結果、第2領域A2の熱処理の程度は、第1領域A1の熱処理の程度よりも弱い。ひいては、第2領域A2の曲がり癖の付きやすさの程度は、第1領域A1よりも弱くなる。工程S18は、第2領域A2に被膜を形成する工程である。第2領域A2の被膜の色は、第3の色グループC3に含まれる色である。第2領域A2の被膜の色は、2回目の熱処理により発現する。
【0049】
工程S14,S18において、レーザーの出力を同じ(出力:S14=S18)、または、大小関係を逆(出力:S14<S18)にして熱処理をした場合でも、第1温度>第2温度の関係は成立する。これは、プレス加工された金属ワイヤのうち、
図7(B)に示すXZ面に対してレーザーを照射した結果、工程S14における照射面積(第1プレス部111及び遷移部112の面積)が、工程S18における照射面積(第2プレス部113の面積)よりも大きいことに起因する。本実施形態では、レーザーの照射径が
図7(B)の第1プレス部111の幅よりも大きい。
【0050】
工程S22において、作業者は、第1領域A1、移行領域AT、及び第2領域A2の被膜の色を検査する。具体的には、次のa1,a2の手順によって、被膜の色を検査する。手順a1,a2は、連続して実行される必要はない。具体的には、手順a1は、工程S14の前に実行されてもよい。工程S22は、第1領域A1、移行領域AT、第2領域A2の被膜の色を検査する工程である。
(a1)作業者は、第1領域A1の被膜の色が、第1の色グループC1に含まれる色(
図4)のいずれかに該当し、かつ、移行領域ATの被膜の色が、第2の色グループC2に含まれる色(
図4)のいずれかに該当する場合に、工程S14の熱処理が正常に完了したと判定する。作業者は、第1領域A1の被膜の色が、第1の色グループC1に含まれる色のいずれにも該当しないこと、及び、移行領域ATの被膜の色が、第2の色グループC2に含まれる色のいずれにも該当しなことの少なくともいずれかの場合に、工程S14の熱処理が正常に完了していないと判定する。
(a2)作業者は、第2領域A2の被膜の色が、第3の色グループC3に含まれる色(
図4)のいずれかに該当する場合に、工程S18の熱処理が正常に完了したと判定する。作業者は、第2領域A2の被膜の色が、第3の色グループC3に含まれる色のいずれにも該当しない場合に、工程S18の熱処理が正常に完了していないと判定する。
【0051】
以上の工程S10~S22によって、
図3で説明した第1金属ワイヤ10が製造される。工程S10~S22は、医療デバイス用金属ワイヤ10の製造方法である。工程S10~S22を経て製造された医療デバイス用金属ワイヤ10は、金属ワイヤに対する熱処理により発現した第1の色グループC1に含まれる色の被膜と、第2の色グループC2に含まれる色の被膜と、第3の色グループC3に含まれる色の被膜とを有している。工程S10~S22を経て製造された医療デバイス用金属ワイヤ10は、被膜の各色(第1の色グループC1に含まれる色、第2の色グループC2に含まれる色、第3の色グループC3に含まれる色)の検査によって、熱処理が正常に完了したことが確認されている。工程S22によれば、複数の第1金属ワイヤ10を製造する場合に、寸法や表面状態などにぶれがある複数の金属ワイヤを用いた場合であっても、各々の金属ワイヤに付加された熱量の大小(熱処理の程度)を、正確かつ容易に把握できるため、安定した品質の第1金属ワイヤ10を得ることができる。
【0052】
工程S24において、作業者は、コイル40を準備する。工程S26において、作業者は、第1金属ワイヤ10の先端部100(具体的には、先端側移行領域AT1)と、コイル40の先端とを、任意の接合剤、例えば、銀ロウ、金ロウ、亜鉛、Sn-Ag合金、Au-Sn合金等の金属はんだによって接合することで、先端チップ51を形成する。チタン酸化被膜は、はんだの濡れ性が低いという性質を有するため、チタン酸化被膜が厚く形成されている部分(第1領域A1)に先端チップ51を形成した場合、使用時において第1金属ワイヤ10から先端チップ51が脱離するおそれがある。このため、工程S26では、第1金属ワイヤ10のうち、チタン酸化被膜が厚く形成されている部分(第1領域A1)よりも先端側に先端チップ51を形成することが好ましい。また、第1金属ワイヤ10のうち、チタン酸化被膜が形成されていない部分(未熱処理部分)は、第1金属ワイヤ10の超弾性特性によって曲がり癖を付けづらいという性質を有するため、チタン酸化被膜が形成されていない部分(未熱処理部分)に先端チップ51を形成した場合、使用時の使い勝手が低下するおそれがある。このため工程S26では、チタン酸化被膜が相対的に薄く形成されている部分(先端側移行領域AT1)に先端チップ51を形成することがより好ましい。なお、工程S26では、先端側移行領域AT1の被膜を除去した上で、先端チップ51を形成してもよい。最後に、作業者は、第1金属ワイヤ10と第2金属ワイヤ20とを接合し、接合部30を形成する。
【0053】
医療デバイス用金属ワイヤ10、及び、これを備える医療デバイス1によれば、先端側から基端側に向かって、熱処理の程度、すなわち曲がり癖の付きやすさの程度を変化させた第1領域A1、基端側移行領域AT2、第2領域A2を有しており、上述の通り、熱処理の程度(曲がり癖の付きやすさの程度)は、第1領域A1>移行領域AT>第2領域A2の関係となり、先端側に向かうにつれて強くなっている。このため、先端側にかけてより曲率が大きくなるようなシェイプ形状を付与することが可能な医療デバイス1を提供できる。この結果、医師は、医療デバイス1を用いた手技において、血管の分岐箇所において所望の血管を選択しやすくなる。
【0054】
以上のように、第1実施形態の医療デバイス用金属ワイヤ10によれば、被膜の色C1,C2が互いに異なる第1領域A1と移行領域ATとを備えている(
図5)。このため、熱処理の程度、すなわち曲がり癖の付きやすさの程度を変化させて、物性徐変を実現した医療デバイス用金属ワイヤ10を提供できる。また、第1領域A1と移行領域ATとは、被膜の色C1,C2がそれぞれ相違するため、医療デバイス用金属ワイヤ10の癖付きやすさを、第1金属ワイヤ10の外観(色)で識別することができる。
【0055】
また、第1実施形態の医療デバイス用金属ワイヤ10によれば、移行領域ATの被膜は、少なくとも2つ以上の第2の色グループC2に含まれる色を含むグラデーションを有している(
図5)。このため、第1金属ワイヤ10の移行領域AT内においても、熱処理の程度、すなわち曲がり癖の付きやすさの程度を変化させて、物性徐変を実現できる。また、移行領域AT内における物性徐変の程度を、第1金属ワイヤ10の外観(白から青へと変化する色のグラデーション)で識別することができる。
【0056】
さらに、第1実施形態の医療デバイス用金属ワイヤ10によれば、移行領域AT(具体的には、基端側移行領域AT2)から見て第1領域A1とは反対側に第2領域A2を備えている(
図5)。このため、熱処理の程度、すなわち曲がり癖の付きやすさの程度をさらに変化させて、よりきめ細かな物性徐変を実現した医療デバイス用金属ワイヤ10を提供できる。また、第2領域A2は、第1領域A1や移行領域ATとは被膜の色C3が相違するため、医療デバイス用金属ワイヤ10の癖付きやすさを、第1金属ワイヤ10の外観(色)で識別することができる。
【0057】
さらに、第1実施形態の医療デバイス用金属ワイヤ10によれば、第2の位置P2と比べて相対的に外側に位置する第1の位置P1(換言すれば、医療デバイス用金属ワイヤ10の表面近傍)におけるチタンの含有率が大きいため、医療デバイス用金属ワイヤ10の生体適合性と、耐食性とを向上できる。さらに、第1実施形態の医療デバイス用金属ワイヤ10によれば、第2の位置P2と比べて相対的に外側に位置する第1の位置P1(換言すれば、医療デバイス用金属ワイヤ10の表面近傍)におけるニッケルの含有率が小さいため、生体適合性を向上できる。
【0058】
さらに、第1実施形態の医療デバイス用金属ワイヤ10によれば、第1領域A1の被膜の厚さは100nm以上であるため、医療デバイス用金属ワイヤ10の曲がり癖の付きやすさ(シェイピング性能)をより一層向上できる。さらに、第1実施形態の医療デバイス用金属ワイヤ10によれば、第1領域A1の被膜の厚さは、移行領域ATの被膜の厚さよりも大きいため、第1領域A1を、移行領域ATと比較してより曲がり癖の付きやすい構成とできる。さらに、第1実施形態の医療デバイス用金属ワイヤ10によれば、第2領域A2の被膜の厚さは、10nm以上、かつ、30nm以下であるため、第2領域A2における曲がり癖の付きやすさの程度を第1領域A1よりも小さくし、よりきめ細かな物性徐変を実現した医療デバイス用金属ワイヤ10を提供できる。
【0059】
さらに、第1実施形態の医療デバイス1によれば、先端チップ51は、医療デバイス用金属ワイヤ10の第1領域A1よりも先端側に取り付けられているため、先端チップ51形成のためのロウ付け作業を容易にできると共に、先端チップ51から医療デバイス用金属ワイヤ10が脱離しづらい構成とできる。この結果、医療デバイス1の製造をより容易にできると共に、医療デバイス1の安全性を向上できる。
【0060】
さらに、第1実施形態の医療デバイス1によれば、先端チップ51は、先端側移行領域AT1に取り付けられているため、先端チップ51形成のためのロウ付け作業を容易にできると共に、先端チップ51から医療デバイス用金属ワイヤ10が脱離しづらい構成とできる。さらに、先端チップ51は、第1領域A1よりも先端側に設けられた先端側移行領域AT1に取り付けられているため、医療デバイス1の曲がり癖の付きやすさ(シェイピング性能)を向上できる。
【0061】
さらに、第1実施形態の医療デバイス用金属ワイヤ10の製造方法によれば、金属ワイヤに熱処理(工程S14)を施すことによって、被膜の色が互いに異なる第1領域A1と移行領域ATとを形成する。このため、1回の熱処理で、物性徐変を実現した医療デバイス用金属ワイヤ10を製造できる。
【0062】
さらに、第1実施形態の医療デバイス用金属ワイヤ10の製造方法によれば、金属ワイヤのうちの第1領域A1よりも基端側に熱処理(工程S18)を施すことによって第2領域A2を形成する。このため、工程S14及び工程S18の2回の熱処理で、さらに物性徐変を実現した医療デバイス用金属ワイヤ10を製造できる。また、第2領域A2を形成するための熱処理の温度(第2温度)は、第1領域A1及び移行領域ATを形成するための熱処理の温度(第1温度)よりも低いため、第1領域A1の被膜の厚さと、第2領域A2の被膜の厚さとを簡単に変化させることができる。
【0063】
さらに、第1実施形態の医療デバイス用金属ワイヤ10の製造方法によれば、第1領域A1と移行領域ATとは被膜の色C1,C2がそれぞれ相違するため、金属ワイヤの外観(具体的には、第1領域A1及び移行領域ATの被膜の色)を検査することで、工程S14の熱処理が正常に完了したか否かを容易に判定できる(工程S22)。この結果、安定した品質の医療デバイス用金属ワイヤ10を製造できる。また、第1金属ワイヤ10の外観(具体的には、第2領域A2の被膜の色C3)を検査することで、第2領域A2を形成するための工程S18の熱処理が正常に完了したか否かを容易に判定できる(工程S22)。この結果、安定した品質の医療デバイス用金属ワイヤ10を製造できる。
【0064】
<第2実施形態>
図9は、第2実施形態の第1金属ワイヤ10Aの先端部100Aの一例を示す図である。医療デバイス1は、第1実施形態で説明した第1金属ワイヤ10に代えて、次に説明する第1金属ワイヤ10Aを備えてもよい。第1金属ワイヤ10Aは、先端部100Aの第1領域A1、移行領域AT、第2領域A2における被膜の色が、第1実施形態とは相違する。
図9(A)は、先端部100Aの被膜の色をハッチングの線種で表した線図である。
図9(B)は、先端部100Aの写真である。線図は写真に対応している。
図9の線図及び写真は、共に、第1金属ワイヤ10Aの扁平形状の幅方向を示している。
【0065】
図示のように、部分92aは、未熱処理であることを示す銀色である。部分92bは、青色の被膜を有している。部分92cは、白色の被膜を有している。部分92dは、黄色の被膜を有している。部分92eは、赤紫色の被膜を有している。部分92fは、緑色の被膜を有している。部分92gは、赤紫色の被膜を有している。部分92hは、黄色の被膜を有している。部分92iは、白色の被膜を有している。部分92jは、青色の被膜を有している。部分92kは、紫色の被膜を有している。例えば、
図9(B)に示すように、部分92gは、淡い赤紫色でもよい。部分92kは、基端側に向かって金色がかった紫色でもよい。例えば、
図9(B)に示すように、第1領域A1内には、同じ色(図示の例では黄色と赤紫色)の被膜が繰り返し現れてもよい。
【0066】
第1金属ワイヤ10Aの先端部100Aの中央部は、第1の色グループC1に含まれる色(具体的には、緑色、赤紫色、黄色)の被膜を有する第1領域A1である。第1領域A1よりも先端側は、第2の色グループC2に含まれる色(具体的には、白色、青色)の被膜を有する先端側移行領域AT1である。第1領域A1よりも基端側は、第2の色グループC2に含まれる色(具体的には、白色、青色)の被膜を有する基端側移行領域AT2である。移行領域AT(具体的には、基端側移行領域AT2)から見て、第1領域A1とは反対側は、第3の色グループC3に含まれる色(具体的には、紫色)の被膜を有する第2領域A2である。
【0067】
このように、第1金属ワイヤ10Aの先端部100Aの第1領域A1、移行領域AT、第2領域A2における被膜の色、色の登場順、及び、複数色ある場合の色の組み合わせは、種々の変更が可能である。第1領域A1には、
図4で説明した第1の色グループC1に含まれる色のうちの少なくとも1つの色の被膜が形成されていればよい。移行領域ATには、
図4で説明した第2の色グループC2に含まれる色のうちの少なくとも1つの色の被膜が形成されていればよい。第2領域A2には、
図4で説明した第3の色グループC3に含まれる色のうちの少なくとも1つの色の被膜が形成されていればよい。また、第1領域A1、移行領域AT、及び第2領域A2の長手方向における長さ、及び、各部分の長さも、任意に定めることができる。このような第2実施形態の医療デバイス用金属ワイヤ10Aにおいても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0068】
<第3実施形態>
図10は、第3実施形態の第1金属ワイヤ10Bの先端部100Bの一例を示す図である。医療デバイス1は、第1実施形態で説明した第1金属ワイヤ10に代えて、次に説明する第1金属ワイヤ10Bを備えてもよい。第1金属ワイヤ10Bは、先端部100Bの第1領域A1、移行領域AT、第2領域A2における被膜の色が、第1実施形態とは相違する。
図10(A)は、先端部100Bの被膜の色をハッチングの線種で表した線図である。
図10(B)は、先端部100Bの写真である。線図は写真に対応している。
図10の線図及び写真は、共に、第1金属ワイヤ10Bの扁平形状の幅方向を示している。
【0069】
図示のように、部分93aは、未熱処理であることを示す銀色である。部分93bは、青色の被膜を有している。部分93cは、白色の被膜を有している。部分93dは、黄色の被膜を有している。部分93eは、赤紫色の被膜を有している。部分93fは、黄色の被膜を有している。部分93gは、白色の被膜を有している。部分93hは、青色の被膜を有している。部分93iは、紫色の被膜を有している。部分93jは、金色の被膜を有している。例えば、
図10(B)に示すように、部分93fは、赤みがかったむらを有する黄色であってもよい。
【0070】
第1金属ワイヤ10Bの先端部100Bの中央部は、第1の色グループC1に含まれる色(具体的には、赤紫色、黄色)の被膜を有する第1領域A1である。第1領域A1よりも先端側は、第2の色グループC2に含まれる色(具体的には、白色、青色)の被膜を有する先端側移行領域AT1である。第1領域A1よりも基端側は、第2の色グループC2に含まれる色(具体的には、白色、青色)の被膜を有する基端側移行領域AT2である。移行領域AT(具体的には、基端側移行領域AT2)から見て、第1領域A1とは反対側は、第3の色グループC3に含まれる色(具体的には、紫色)の被膜を有する第2領域A2である。
【0071】
このように、第1金属ワイヤ10Bの先端部100Bの第1領域A1、移行領域AT、第2領域A2における被膜の色、色の登場順、及び、複数色ある場合の色の組み合わせは、種々の変更が可能である。また、第1領域A1、移行領域AT、及び第2領域A2の長手方向における長さ、及び、各部分の長さも、任意に定めることができる。このような第3実施形態の医療デバイス用金属ワイヤ10Bにおいても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0072】
<第4実施形態>
図11は、第4実施形態の第1金属ワイヤ10Cの先端部100Cの一例を示す図である。医療デバイス1は、第1実施形態で説明した第1金属ワイヤ10に代えて、次に説明する第1金属ワイヤ10Cを備えてもよい。第1金属ワイヤ10Cは、先端部100Cの第1領域A1、移行領域AT、第2領域A2における被膜の色が、第1実施形態とは相違する。
図11(A)は、先端部100Cの被膜の色をハッチングの線種で表した線図である。
図11(B)は、先端部100Cの写真である。線図は写真に対応している。
図11の線図及び写真は、共に、第1金属ワイヤ10Cの扁平形状の幅方向を示している。
【0073】
図示のように、部分94aは、未熱処理であることを示す銀色である。部分94bは、青色の被膜を有している。部分94cは、白色の被膜を有している。部分94dは、黄色の被膜を有している。部分94eは、赤紫色の被膜を有している。部分94fは、黄色の被膜を有している。部分94gは、白色の被膜を有している。部分94hは、青色の被膜を有している。部分94iは、紫色の被膜を有している。部分94jは、金色の被膜を有している。例えば、
図11(B)に示すように、部分94d,94fは、淡い黄色でもよい。
【0074】
第1金属ワイヤ10Cの先端部100Cの中央部は、第1の色グループC1に含まれる色(具体的には、赤紫色、黄色)の被膜を有する第1領域A1である。第1領域A1よりも先端側は、第2の色グループC2に含まれる色(具体的には、白色、青色)の被膜を有する先端側移行領域AT1である。第1領域A1よりも基端側は、第2の色グループC2に含まれる色(具体的には、白色、青色)の被膜を有する基端側移行領域AT2である。移行領域AT(具体的には、基端側移行領域AT2)から見て、第1領域A1とは反対側は、第3の色グループC3に含まれる色(具体的には、紫色、金色)の被膜を有する第2領域A2である。
【0075】
このように、第1金属ワイヤ10Cの先端部100Cの第1領域A1、移行領域AT、第2領域A2における被膜の色、色の登場順、及び、複数色ある場合の色の組み合わせは、種々の変更が可能である。また、第1領域A1、移行領域AT、及び第2領域A2の長手方向における長さ、及び、各部分の長さも、任意に定めることができる。このような第4実施形態の医療デバイス用金属ワイヤ10Cにおいても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0076】
<第5実施形態>
図12は、第5実施形態の第1金属ワイヤ10Dの先端部100Dの一例を示す図である。医療デバイス1は、第1実施形態で説明した第1金属ワイヤ10に代えて、次に説明する第1金属ワイヤ10Dを備えてもよい。第1金属ワイヤ10Dは、先端部100Dの第1領域A1、移行領域AT、第2領域A2における被膜の色が、第1実施形態とは相違する。
図12(A)は、先端部100Dの被膜の色をハッチングの線種で表した線図である。
図12(B)は、先端部100Dの写真である。線図は写真に対応している。
図12の線図及び写真は、共に、第1金属ワイヤ10Dの扁平形状の幅方向を示している。
【0077】
図示のように、部分95aは、未熱処理であることを示す銀色である。部分95bは、青色の被膜を有している。部分95cは、白色の被膜を有している。部分95dは、黄色の被膜を有している。部分95eは、赤紫色の被膜を有している。部分95fは、緑色の被膜を有している。部分95gは、赤紫色の被膜を有している。部分95hは、黄色の被膜を有している。部分95iは、白色の被膜を有している。部分95jは、青色の被膜を有している。部分95kは、紫色の被膜を有している。部分95lは、金色の被膜を有している。例えば、
図12(B)に示すように、部分95d,95iは、黄みがかった白色でもよい。部分95fは、淡い緑色でもよい。
【0078】
第1金属ワイヤ10Dの先端部100Dの中央部は、第1の色グループC1に含まれる色(具体的には、緑色、赤紫色、黄色)の被膜を有する第1領域A1である。第1領域A1よりも先端側は、第2の色グループC2に含まれる色(具体的には、白色、青色)の被膜を有する先端側移行領域AT1である。第1領域A1よりも基端側は、第2の色グループC2に含まれる色(具体的には、白色、青色)の被膜を有する基端側移行領域AT2である。移行領域AT(具体的には、基端側移行領域AT2)から見て、第1領域A1とは反対側は、第3の色グループC3に含まれる色(具体的には、紫色、金色)の被膜を有する第2領域A2である。
【0079】
このように、第1金属ワイヤ10Dの先端部100Dの第1領域A1、移行領域AT、第2領域A2における被膜の色、色の登場順、及び、複数色ある場合の色の組み合わせは、種々の変更が可能である。また、第1領域A1、移行領域AT、及び第2領域A2の長手方向における長さ、及び、各部分の長さも、任意に定めることができる。このような第5実施形態の医療デバイス用金属ワイヤ10Dにおいても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0080】
<第6実施形態>
図13は、第6実施形態の第1金属ワイヤ10Eの先端部100Eの一例を示す図である。医療デバイス1は、第1実施形態で説明した第1金属ワイヤ10に代えて、次に説明する第1金属ワイヤ10Eを備えてもよい。第1金属ワイヤ10Eは、先端部100Eの第1領域A1、移行領域AT、第2領域A2における被膜の色が、第1実施形態とは相違する。
図13(A)は、先端部100Eの被膜の色をハッチングの線種で表した線図である。
図13(B)は、先端部100Eの写真である。線図は写真に対応している。
図13の線図及び写真は、共に、第1金属ワイヤ10Eの扁平形状の幅方向を示している。
【0081】
図示のように、部分96aは、未熱処理であることを示す銀色である。部分96bは、青色の被膜を有している。部分96cは、白色の被膜を有している。部分96dは、黄色の被膜を有している。部分96eは、白色の被膜を有している。部分96fは、青色の被膜を有している。部分96gは、紫色の被膜を有している。部分96hは、金色の被膜を有している。例えば、
図13(B)に示すように、部分96dは、褐色を帯びた黄色でもよい。部分96eは、暗い白色でもよい。
【0082】
第1金属ワイヤ10Eの先端部100Eの中央部は、第1の色グループC1に含まれる色(具体的には、黄色)の被膜を有する第1領域A1である。第1領域A1よりも先端側は、第2の色グループC2に含まれる色(具体的には、白色、青色)の被膜を有する先端側移行領域AT1である。第1領域A1よりも基端側は、第2の色グループC2に含まれる色(具体的には、白色、青色)の被膜を有する基端側移行領域AT2である。移行領域AT(具体的には、基端側移行領域AT2)から見て、第1領域A1とは反対側は、第3の色グループC3に含まれる色(具体的には、紫色、金色)の被膜を有する第2領域A2である。
【0083】
このように、第1金属ワイヤ10Eの先端部100Eの第1領域A1、移行領域AT、第2領域A2における被膜の色、色の登場順、及び、複数色ある場合の色の組み合わせは、種々の変更が可能である。また、第1領域A1、移行領域AT、及び第2領域A2の長手方向における長さ、及び、各部分の長さも、任意に定めることができる。このような第6実施形態の医療デバイス用金属ワイヤ10Eにおいても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0084】
<第7実施形態>
図14は、第7実施形態の第1金属ワイヤ10Fの先端部100Fの一例を示す図である。医療デバイス1は、第1実施形態で説明した第1金属ワイヤ10に代えて、次に説明する第1金属ワイヤ10Fを備えてもよい。第1金属ワイヤ10Fは、先端部100Fの第1領域A1、移行領域AT、第2領域A2における被膜の色が、第1実施形態とは相違する。
図14(A)は、先端部100Fの被膜の色をハッチングの線種で表した線図である。
図14(B)は、先端部100Fの写真である。線図は写真に対応している。
図14の線図及び写真は、共に、第1金属ワイヤ10Fの扁平形状の幅方向を示している。
【0085】
図示のように、部分97aは、未熱処理であることを示す銀色である。部分97bは、青色の被膜を有している。部分97cは、白色の被膜を有している。部分97dは、黄色の被膜を有している。部分97eは、赤紫色の被膜を有している。部分97fは、青緑色の被膜を有している。部分97gは、赤紫色の被膜を有している。部分97hは、緑色の被膜を有している。部分97iは、赤紫色の被膜を有している。部分97jは、黄色の被膜を有している。部分97kは、白色の被膜を有している。部分97lは、青色の被膜を有している。部分97mは、紫色の被膜を有している。部分97nは、金色の被膜を有している。例えば、
図14(B)に示すように、部分97e,97gの赤紫色と、部分97fの青緑色とは、入り混じってまだら状になっていてもよい。
【0086】
第1金属ワイヤ10Fの先端部100Fの中央部は、第1の色グループC1に含まれる色(具体的には、緑色、青緑色、赤紫色、黄色)の被膜を有する第1領域A1である。第1領域A1よりも先端側は、第2の色グループC2に含まれる色(具体的には、白色、青色)の被膜を有する先端側移行領域AT1である。第1領域A1よりも基端側は、第2の色グループC2に含まれる色(具体的には、白色、青色)の被膜を有する基端側移行領域AT2である。移行領域AT(具体的には、基端側移行領域AT2)から見て、第1領域A1とは反対側は、第3の色グループC3に含まれる色(具体的には、紫色、金色)の被膜を有する第2領域A2である。
【0087】
このように、第1金属ワイヤ10Fの先端部100Fの第1領域A1、移行領域AT、第2領域A2における被膜の色、色の登場順、及び、複数色ある場合の色の組み合わせは、種々の変更が可能である。また、第1領域A1、移行領域AT、及び第2領域A2の長手方向における長さ、及び、各部分の長さも、任意に定めることができる。このような第7実施形態の医療デバイス用金属ワイヤ10Fにおいても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0088】
<第8実施形態>
図15は、第8実施形態の第1金属ワイヤ10Gの先端部100Gの一例を示す図である。医療デバイス1は、第1実施形態で説明した第1金属ワイヤ10に代えて、次に説明する第1金属ワイヤ10Gを備えてもよい。第1金属ワイヤ10Gは、先端部100Gの第1領域A1、移行領域AT、第2領域A2における被膜の色が、第1実施形態とは相違する。
図15(A)は、先端部100Gの被膜の色をハッチングの線種で表した線図である。
図15(B)は、先端部100Gの写真である。線図は写真に対応している。
図15の線図及び写真は、共に、第1金属ワイヤ10Gの扁平形状の厚み方向を示している。
【0089】
図示のように、部分98aは、未熱処理であることを示す銀色である。部分98bは、青色の被膜を有している。部分98cは、白色の被膜を有している。部分98dは、黄色の被膜を有している。部分98eは、赤紫色の被膜を有している。部分98fは、緑色の被膜を有している。部分98gは、赤紫色の被膜を有している。部分98hは、黄色の被膜を有している。部分98iは、白色の被膜を有している。部分98jは、青色の被膜を有している。部分98kは、紫色の被膜を有している。部分98lは、金色の被膜を有している。例えば、
図15(B)に示すように、部分98b~98lは、それぞれ、明度が相対的に高い色(明るい色、淡い色)であってもよい。
【0090】
第1金属ワイヤ10Gの先端部100Gの中央部は、第1の色グループC1に含まれる色(具体的には、緑色、赤紫色、黄色)の被膜を有する第1領域A1である。第1領域A1よりも先端側は、第2の色グループC2に含まれる色(具体的には、白色、青色)の被膜を有する先端側移行領域AT1である。第1領域A1よりも基端側は、第2の色グループC2に含まれる色(具体的には、白色、青色)の被膜を有する基端側移行領域AT2である。移行領域AT(具体的には、基端側移行領域AT2)から見て、第1領域A1とは反対側は、第3の色グループC3に含まれる色(具体的には、紫色、金色)の被膜を有する第2領域A2である。
【0091】
このように、第1金属ワイヤ10Gの先端部100Gの第1領域A1、移行領域AT、第2領域A2における被膜の色、色の登場順、及び、複数色ある場合の色の組み合わせは、種々の変更が可能である。また、第1領域A1、移行領域AT、及び第2領域A2の長手方向における長さ、及び、各部分の長さも、任意に定めることができる。このような第8実施形態の医療デバイス用金属ワイヤ10Gにおいても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0092】
<第9実施形態>
図16は、第9実施形態の第1金属ワイヤ10Hの先端部100Hの拡大図である。第9実施形態の医療デバイス1Hは、第1実施形態で説明した第1金属ワイヤ10に代えて、次に説明する第1金属ワイヤ10Hを備える。第1金属ワイヤ10Hは、先端側移行領域AT1と、第2領域A2とを有していない点が、第1実施形態とは相違する。
図16(A)は、Z軸方向から見た先端部100Hの側面図を表す。
図16(B)は、Y軸方向から見た先端部100Hの側面図を表す。なお、
図16では、コイル40の図示を省略している。
【0093】
図16(A),(B)に示すように、医療デバイス1Hにおいて、先端チップ51(破線)は、第1金属ワイヤ10Hの先端部100Hのうち、第1領域A1よりも先端側に取り付けられている。図示の例では、先端チップ51の基端は、第1領域A1の先端よりも僅かに先端側に位置しているが、先端チップ51の基端は、第1領域A1よりも先端側の範囲内の任意の位置にあってよい。
【0094】
図17は、第9実施形態の医療デバイス1Hの製造方法を示すフローチャートである。
図8に示す第1実施形態との違いは、工程S18が実行されない点と、工程S22に代えて工程S22Hが実行される点である。工程S22Hにおいて、作業者は、第1領域A1及び移行領域ATの被膜の色を検査する。具体的には、作業者は、第1実施形態で説明した手順a1のみを実行し、手順a2を実行しない。
【0095】
このように、医療デバイス1Hの構成は種々の変更が可能であり、第1金属ワイヤ10Hは、第1領域A1と、第1領域A1の基端側に隣接する移行領域AT(基端側移行領域AT2)と、を有していてもよい。また、第1金属ワイヤ10Hは、第1領域A1と、第1領域A1の先端側に位置する移行領域AT(先端側移行領域AT1)と、を有していてもよい。第1金属ワイヤ10Hは、第1領域A1と、先端側移行領域AT1と、基端側移行領域AT2と、を有していてもよい。このような第9実施形態の医療デバイス1H及び医療デバイス用金属ワイヤ10Hにおいても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、第9実施形態の医療デバイス用金属ワイヤ10Hによれば、第2領域A2を有さないため、第2領域A2を形成する工程S18(
図8)を省略できると共に、検査工程(
図17:S22H)を簡略化できる。この結果、医療デバイス1H及び医療デバイス用金属ワイヤ10Hの製造コストを低減できる。
【0096】
<第10実施形態>
図18は、第10実施形態の第1金属ワイヤ10Iの先端部100Iの拡大図である。第10実施形態の医療デバイス1Iは、第1実施形態で説明した第1金属ワイヤ10に代えて、次に説明する第1金属ワイヤ10Iを備える。第1金属ワイヤ10Iは、第1プレス部111、遷移部112、及び第2プレス部113を有していない点が、第1実施形態とは相違する。
図17(A)は、Z軸方向から見た先端部100Iの側面図を表す。
図18(B)は、Y軸方向から見た先端部100Iの側面図を表す。なお、
図17では、コイル40の図示を省略している。
【0097】
図18(A),(B)に示すように、第1金属ワイヤ10Iの先端部100Iには、プレス加工が施されておらず、第1部11Iは、円柱形状を有している。換言すれば、第1部11Iは、Z軸方向から見た形状と、Y軸方向から見た形状とが同じである。
【0098】
図19は、第10実施形態の医療デバイス1Iの製造方法を示すフローチャートである。
図8に示す第1実施形態との違いは、工程S12,S22が実行されない点である。すなわち、本製造方法によれば、金属ワイヤをプレス加工することなく、熱処理が施される。また、本製造方法によれば、第1領域A1、移行領域AT、及び第2領域A2の被膜の色の検査は行われない。
【0099】
このように、医療デバイス1Iの構成は種々の変更が可能であり、第1金属ワイヤ10Iの先端部100I(第1金属ワイヤ10Iの第1部11I)は、プレスされていない丸線であってもよい。このような第10実施形態の医療デバイス1I及び医療デバイス用金属ワイヤ10Iにおいても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。また、第10実施形態の医療デバイス用金属ワイヤ10Iによれば、プレス加工工程S12(
図8)と、検査工程S22(
図8)とを省略できるため、医療デバイス1I及び医療デバイス用金属ワイヤ10Iの製造コストを低減できる。
【0100】
<第11実施形態>
図20は、第11実施形態の第1金属ワイヤ10の先端部100の拡大図である。第11実施形態の医療デバイス1Jは、第1実施形態で説明した先端チップ51に代えて、次に説明する先端チップ51Jを備える。先端チップ51Jは、第1金属ワイヤ10に取り付けられている位置が、第1実施形態とは相違する。
図20(A)は、Z軸方向から見た先端部100の側面図を表す。
図20(B)は、Y軸方向から見た先端部100の側面図を表す。なお、
図20では、コイル40の図示を省略している。
【0101】
図20(A),(B)に示すように、先端チップ51J(破線)は、第1金属ワイヤ10の先端部100のうち、第1領域A1よりも先端側であって、かつ、先端側移行領域AT1よりも先端側に取り付けられている。図示の例では、先端チップ51Jの基端は、先端側移行領域AT1の先端よりも僅かに先端側に位置している。
【0102】
このように、医療デバイス1Jの構成は種々の変更が可能であり、先端チップ51Jは、第1金属ワイヤ10の先端部100の任意の位置に設けられてよい。図示の例では、先端チップ51Jは先端側移行領域AT1よりも先端側に取り付けられているとした。しかし、先端チップ51Jは、第1領域A1内(例えば、第1領域A1の先端部)に設けられてもよい。このような第11実施形態の医療デバイス1Jにおいても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0103】
<本実施形態の変形例>
本発明は上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0104】
[変形例1]
上記第1~11実施形態では、医療デバイス1,1H,1I,1Jの構成を例示した。しかし、医療デバイス1の構成は種々の変更が可能である。例えば、医療デバイス1は、第1金属ワイヤ10、第2金属ワイヤ20、及びコイル40の表面に、親水性樹脂または疎水性樹脂により形成されたコーティング層をさらに備えていてもよい。例えば、コイル40の長手方向における長さ、換言すれば、コイル40が第1金属ワイヤ10を覆っている範囲は、任意に変更してよい。例えば、医療デバイス1は、先端チップ51と基端側接合部52との間に、第1金属ワイヤ10とコイル40とを接合するための中間接合部をさらに備えていてもよい。例えば、第2金属ワイヤ20の形状は種々の変更が可能である。また、医療デバイス1は第2金属ワイヤ20を有していなくてもよい。医療デバイス1は、コイル40を備えていなくてもよい。
【0105】
[変形例2]
上記第1~11実施形態では、医療デバイス用金属ワイヤ10,10A~10Iの構成を例示した。しかし、第1金属ワイヤ10の構成は種々の変更が可能である。例えば、
図3で説明した第1金属ワイヤ10の形状はあくまで一例であり、種々の変更が可能である。例えば、第2部12、第3部13、及び第4部14のうちの少なくともいずれか1つを省略してもよい。第3部13は、テーパ形状ではなく、円柱形状であってもよい。
【0106】
上記実施形態では、第1金属ワイヤ10の第1部11のうち、基端側の一部分を除く全体が「第1金属ワイヤ10の先端部100」に相当するものとしたが、先端部100の範囲は種々の変更が可能である。例えば、第1金属ワイヤ10のうち、第1部11の全体、及び、第2部12の先端側の一部分が「先端部100」に相当するとしてもよい。
【0107】
上記実施形態では、第1金属ワイヤ10の先端部100の第1領域A1、移行領域AT、第2領域A2における被膜の色パターンを例示した。しかし、先端部100の第1領域A1、移行領域AT、第2領域A2における被膜の色パターンは、第1領域A1において第1の色グループC1に含まれる色のうちの少なくとも1つの色の被膜が形成され、移行領域ATにおいて第2の色グループC2に含まれる色のうちの少なくとも1つの色の被膜が形成され、第2領域A2において第3の色グループC3に含まれる色のうちの少なくとも1つの色の被膜が形成されている限りにおいて、任意に変更してよい。
【0108】
上記実施形態では、第1金属ワイヤ10の第1領域A1の被膜CO1の厚さT1は、100nm以上であるとした。しかし、第1領域A1の被膜CO1の厚さT1は、100nm未満であってもよい。また、第1領域A1の被膜CO1の厚さT1は、移行領域ATの被膜の厚さよりも大きいとしたが、厚さT1は、移行領域ATの被膜の厚さよりも小さくてもよく、移行領域ATの被膜の厚さと同じでもよい。
【0109】
上記実施形態では、第1金属ワイヤ10の第2領域A2の被膜の厚さは、10nm以上、かつ、30nm以下であるとした。しかし、第2領域A2の被膜の厚さは、10nmよりも小さくてもよい。また、第2領域A2の被膜の厚さは、30nmよりも大きくてもよい。
【0110】
図2で説明したシェイプ試験の結果はあくまで一例である。シェイプ試験を実施した際のシェイプ角度は、第1領域A1=移行領域ATであってもよい。シェイプ試験を実施した際のシェイプ角度は、第1領域A1<移行領域ATであってもよい。シェイプ試験を実施した際のシェイプ角度は、第1領域A1=第2領域A2であってもよい。シェイプ試験を実施した際のシェイプ角度は、第1領域A1<第2領域A2であってもよい。
【0111】
上記実施形態では、最も外側の層(チタン酸化被膜CO1)における任意の位置を第1の位置P1とし、外側から2番目の層における任意の位置を第2の位置P2とした。しかし、第1の位置P1は、第2の位置P2よりも外側(第1金属ワイヤ10の表面側)である限りにおいて、第1の位置P1と第2の位置P2とは任意に設定してよい。また、チタンの含有率は、第1の位置P1>第2の位置P2であるとしたが、第1の位置P1<第2の位置P2であってもよく、第1の位置P1=第2の位置P2であってもよい。さらに、ニッケルの含有率は、第1の位置P1<第2の位置P2であるとしたが、第1の位置P1>第2の位置P2であってもよく、第1の位置P1=第2の位置P2であってもよい。
【0112】
上記実施形態では、医療デバイス1に組み込まれた医療デバイス用金属ワイヤ10を例示した。しかし、医療デバイス用金属ワイヤ10は、単独で、換言すれば、第2金属ワイヤ20、コイル40、先端チップ51、及び基端側接合部52を備えない状態で製品化されてもよい。
【0113】
[変形例3]
第1~11実施形態の医療デバイス及び医療デバイス用金属ワイヤの構成、及び上記変形例1,2の医療デバイス及び医療デバイス用金属ワイヤの構成は、適宜組み合わせてもよい。例えば、第2~第8実施形態(第1領域A1、移行領域AT、第2領域A2の色パターン相違)いずれかの第1金属ワイヤ10A~10Gにおいて、第9実施形態(第2領域A2、先端側移行領域AT1なし)の構成を組み合わせてもよく、第10実施形態(プレスなし、検査工程なし)の構成を組み合わせてもよく、第11実施形態(先端チップ51の位置相違)の構成を組み合わせてもよい。例えば、第9実施形態(第2領域A2、先端側移行領域AT1なし)の第1金属ワイヤ10Hにおいて、第10実施形態(プレスなし、検査工程なし)の構成を組み合わせてもよく、第11実施形態(先端チップ51の位置相違)の構成を組み合わせてもよい。例えば、第10実施形態(プレスなし、検査工程なし)の第1金属ワイヤ10Iにおいて、第11実施形態(先端チップ51の位置相違)の構成を組み合わせてもよい。
【0114】
以上、実施形態、変形例に基づき本態様について説明してきたが、上記した態様の実施の形態は、本態様の理解を容易にするためのものであり、本態様を限定するものではない。本態様は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本態様にはその等価物が含まれる。その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することができる。
【符号の説明】
【0115】
1,1H,1I,1J…医療デバイス
10,10A~10I…医療デバイス用金属ワイヤ
11,11I…第1部
12…第2部
13…第3部
14…第4部
15…第5部
20…第2金属ワイヤ
30…接合部
40…コイル
41…素線
51,51J…先端チップ
52…基端側接合部
100,100A~100I…先端部
111…第1プレス部
112…遷移部
113…第2プレス部
【要約】
【課題】曲がり癖の付きやすさの程度を変化させた医療デバイス用金属ワイヤを提供する。
【解決手段】医療デバイス用金属ワイヤは、所定の色グループより選ばれる少なくとも1つの色を呈する被膜を有する所定領域と、特定の色グループより選ばれる少なくとも1つの色を呈する被膜を有する特定領域と、を備える。
【選択図】
図2