(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】モノブロックレシプロピストンICE/ORC複合発電装置
(51)【国際特許分類】
F02B 75/02 20060101AFI20240710BHJP
F01K 25/10 20060101ALI20240710BHJP
F02B 63/04 20060101ALI20240710BHJP
F02B 73/00 20060101ALI20240710BHJP
【FI】
F02B75/02 B
F01K25/10 Q
F02B63/04 C
F02B73/00 A
(21)【出願番号】P 2023515241
(86)(22)【出願日】2021-08-30
(86)【国際出願番号】 EP2021073919
(87)【国際公開番号】W WO2022043565
(87)【国際公開日】2022-03-03
【審査請求日】2023-06-19
(32)【優先日】2020-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523079510
【氏名又は名称】シーエーイー(アイピー) エルエルピー
(74)【代理人】
【識別番号】100080182
【氏名又は名称】渡辺 三彦
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー ヒーンリー
【審査官】津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104533604(CN,A)
【文献】国際公開第2011/073718(WO,A2)
【文献】実開昭55-132304(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 75/00
F02B 73/00
F02G 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノブロックレシプロピストンエンジン動力装置であって、
内燃シリンダ内部に収容した少なくとも1つまたは複数の
内燃ピストンの変位を制御する内燃部と、
有機ランキンサイクルシリンダ内部に収容した少なくとも2つ以上の
有機ランキンサイクルピストンの変位を制御する有機ランキンサイクル部と
を含み、
前記内燃部および有機ランキンサイクル部のピストンは、前記モノブロックレシプロピストンエンジン動力装置の共通のクランクシャフトに接続して前記クランクシャフトを駆動させ、
前記有機ランキンサイクル部は、前記内燃部での燃焼によって発生した熱によって動作し、前記有機ランキンサイクル部における前記
有機ランキンサイクルピストンの変位は、加熱および加圧された有機ランキンサイクル流体を噴射することによって達成され、
加熱および加圧された前記有機ランキンサイクル流体は、高圧タンクから前記有機ランキンサイクル部の第1の
有機ランキンサイクルシリンダ内に噴射されて、内部の第1の
有機ランキンサイクルピストンを下方に変位させ、
前記第1の
有機ランキンサイクルピストンが上方に変位すると、前記有機ランキンサイクル流体は、前記第1の
有機ランキンサイクルシリンダから排出され、
前記有機ランキンサイクル流体の圧力および熱が事前定義された第1の閾値未満に下がった場合、前記有機ランキンサイクル流体は、使用済み流体とみなされて凝縮器内に排出され、前記有機ランキンサイクルで再循環され、
下がらなかった場合、前記有機ランキンサイクル流体は、前記有機ランキンサイクル部の第2の
有機ランキンサイクルシリンダ内に移送および噴射され、内部の第2の
有機ランキンサイクルピストンを下方に変位させ、
前記有機ランキンサイクル流体はこのように、使用済みとみなされるまで、前記有機ランキンサイクル部の
有機ランキンサイクルシリンダ間で連続的に循環され、
使用済みの前記ランキンサイクル流体が前記凝縮器内に排出されると、使用済みの前記有機ランキンサイクル流体は、前記高圧タンクから前記
有機ランキンサイクルシリンダのうちの1つの中に噴射される加熱および加圧された前記有機ランキンサイクル流体と置き換えられる、モノブロックレシプロピストンエンジン動力装置。
【請求項2】
モノブロックレシプロピストンエンジン動力装置であって、
内燃シリンダ内部に収容した少なくとも1つまたは複数の
内燃ピストンの変位を制御する内燃部と、
有機ランキンサイクルシリンダ内部に収容した少なくとも2つ以上の
有機ランキンサイクルピストンの変位を制御する有機ランキンサイクル部と
を含み、
前記内燃部および有機ランキンサイクル部のピストンは、共通のクランクシャフトに接続して前記クランクシャフトを駆動させ、
前記有機ランキンサイクル部は、前記内燃部での燃焼によって発生した熱によって動作し、前記有機ランキンサイクル部における前記
有機ランキンサイクルピストンの変位は、加熱および加圧された有機ランキンサイクル流体を噴射することによって達成され、
加熱および加圧された前記有機ランキンサイクル流体は、高圧タンクから前記有機ランキンサイクル部の第1の
有機ランキンサイクルシリンダ内に噴射されて、内部の第1の
有機ランキンサイクルピストンを下方に変位させ、
前記第1の
有機ランキンサイクルピストンが上方に変位すると、前記有機ランキンサイクル流体は、前記第1の
有機ランキンサイクルシリンダから排出され、
前記有機ランキンサイクル流体の圧力および熱が事前定義された第2の閾値を超える場合、前記有機ランキンサイクル流体は、前記有機ランキンサイクル部の第2の
有機ランキンサイクルシリンダ内に移送および噴射され、内部の第2の
有機ランキンサイクルピストンを下方に変位させ、
超えない場合、前記有機ランキンサイクル流体の一部は、凝縮器内に排出されて、前記有機ランキンサイクルで再循環され、前記一部が前記高圧タンクからの加熱および加圧された前記有機ランキンサイクル流体と置き換えられ、
得られた混合前記有機ランキンサイクル流体は次に、前記有機ランキンサイクル部の第2の
有機ランキンサイクルシリンダ内に噴射されて、内部の第2の
有機ランキンサイクルピストンを下方に変位させ、
前記有機ランキンサイクル流体はこのように、前記有機ランキンサイクル部の
有機ランキンサイクルシリンダ間で連続的に混合および再循環される、モノブロックレシプロピストンエンジン動力装置。
【請求項3】
前記モノブロックレシプロピストンエンジン動力装置は、1つまたは複数の発電機に結合される請求項1または2に記載のモノブロックレシプロピストンエンジン動力装置。
【請求項4】
前記1つまたは複数の発電機は、再充電可能なバッテリーパックまたはスーパーキャパシタパックを充電するように配置される、請求項3に記載のモノブロックレシプロピストンエンジン動力装置。
【請求項5】
前記1つまたは複数の発電機は、前記モノブロックレシプロピストンエンジン動力装置をかけて前記モノブロックレシプロピストンエンジン動力装置を始動させるように、すなわち、前記モノブロックレシプロピストンエンジン動力装置の1つまたは複数のスタータモータとして機能するように配置される、請求項
4に記載のモノブロックレシプロピストンエンジン動力装置。
【請求項6】
前記1つまたは複数の発電機のシャフトは、前記モノブロックレシプロピストンエンジン動力装置の前記クランクシャフトと一列に結合されており、前記クランクシャフトおよび前記発電機のシャフトは、前記クランクシャフトの全長に及ぶ同一の仮想直線軸に延びる、請求項
5に記載のモノブロックレシプロピストンエンジン動力装置。
【請求項7】
前記クランクシャフトの少なくとも一端が、前記1つまたは複数の発電機に結合される、請求項6に記載のモノブロックレシプロピストンエンジン動力装置。
【請求項8】
前記クランクシャフトの前記少なくとも一端に結合された前記1つまたは複数の発電機は、前記クランクシャフトの動釣り合いを達成するように配置される、請求項7に記載のモノブロックレシプロピストンエンジン動力装置。
【請求項9】
前記モノブロックは、新しい特別注文のモノブロックであるか、または再利用された標準的な内燃エンジンブロックであり、複数の前記
内燃シリンダおよび
内燃ピストンは、内燃動作用に手つかずのまま残され、残りの前記シリンダおよびピストンは
、前記有機ランキンサイクル流体によって駆動されるように配置され
、有機ランキンサイクルピストンおよび有機ランキンサイクルシリンダとなる、請求項1から8のいずれか一項に記載のモノブロックレシプロピストンエンジン動力装置。
【請求項10】
前記有機ランキンサイクルは、前記モノブロック、排熱および/またはエンジン冷却システムのうちの1つまたは組み合わせから熱を回収する、請求項1から9のいずれか一項に記載のモノブロックレシプロピストンエンジン動力装置。
【請求項11】
前記有機ランキンサイクルによる回収は、1つの有機ランキンサイクル流体、または2つの異なる温度動作範囲を有する2つの有機ランキンサイクル流体、または2つ以上の異なる温度動作範囲で動作するように配置された単一のハイブリッド有機ランキンサイクル流体を利用する、請求項1から10のいずれか一項に記載のモノブロックレシプロピストンエンジン動力装置。
【請求項12】
2つ以上の異なる温度動作範囲で動作するように配置されたハイブリッドまたは2つの有機ランキンサイクル流体を利用する場合、第1の範囲が、排熱などの高温から回収したエンジン熱から動作するように構成され、第2の範囲が、冷却剤および一般的なスカベンジング熱回収から回収したエンジン熱から動作するように構成される、請求項11に記載のモノブロックレシプロピストンエンジン動力装置。
【請求項13】
前記
内燃および有機ランキンサイクルシリンダは、
前記内燃および有機ランキンサイクルシリンダ容積を柔軟に制御できるようにウェットライニングされる、請求項1から12のいずれか一項に記載のモノブロックレシプロピストンエンジン動力装置。
【請求項14】
EGRからの
超濾過水は、前記
内燃シリンダ内の燃焼温度がNOxを形成するポイントに達する直前の時点で、内燃シリンダヘッド内に噴射され、
前記噴射された水は、NOxの閾値温度に達する直前に、内燃シリンダ温度のピークゾーンに到達するようにタイミング合わせされる、請求項1から13のいずれか一項に記載のモノブロックレシプロピストンエンジン動力装置。
【請求項15】
請求項3から14に記載の前記モノブロックレシプロピストンエンジン動力装置を利用して電力を生成するシステム。
【請求項16】
請求項3から14に記載の前記モノブロックレシプロピストンエンジン動力装置を利用して電力を生成する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有害な排出物を低減またはゼロにした新規のモノブロックレシプロピストンエンジンを利用して、電力を生成する装置、システム、および方法に関する。モノブロックは、複合された内燃(Internal Combustion:IC)部と有機ランキンサイクル(Organic Rankine Cycle:ORC)部とを含み、各部が、1つまたは複数の部それぞれのピストンを変位させ、ピストンはすべて、1つまたは複数の発電機に結合され得る、モノブロック発電装置の共通のクランクシャフトに接続してクランクシャフトを駆動させる。
【背景技術】
【0002】
内燃機関エンジン(Internal Combustion Engine:ICE)は、本質的に非効率的である。現在のICEは、20%~35%の効率の達成に取り組んでいる。ICE燃料の燃焼によって生み出されるエネルギーのほとんどは、熱として失われる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、内燃(IC)部と有機ランキンサイクル(ORC)部とのハイブリッド複合エンジンとともに、ICエンジンの損失熱をORC部で取り込み、その熱をエンジンの追加機械エネルギーおよび引き続いて電気エネルギーへと変換する解決策を提案している。
【0004】
さらに、本発明は、「2050年までにカーボンニュートラル」という目標の推進のために、IC燃料として水素を利用する。
【0005】
本発明は、バッテリーおよび燃料電池の代替品の現在の高額な初期費用とライフサイクルコストに対処しながら、非常に高い効率をもたらし、よく知られた技術を利用することで、設備一新、再教育、およびメンテナンスに伴う多額のコストを克服する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様によると、モノブロックレシプロピストンエンジン動力装置であって、
各々が内部にピストンを収容した2つ以上のシリンダと、
前記ピストンのうちの少なくとも1つの変位を制御する内燃(IC)部と、
前記ピストンのうちの少なくとも1つの変位を制御する有機ランキンサイクル(ORC)部と
を含み、
前記ICおよびORCのピストンは、前記モノブロックエンジン動力装置の共通のクランクシャフトに接続して前記クランクシャフトを駆動させ、
前記有機ランキンサイクルは、前記内燃部での燃焼によって発生した熱によって動作し、前記ORC部における前記ピストンの変位は、加熱および加圧されたORC流体を噴射することによって達成され、
加熱および加圧された前記ORC流体は、高圧タンクから前記ORC部の第1のシリン
ダ内に噴射されて、内部の第1のピストンを下方に変位させ、
前記第1のピストンが上方に変位すると、前記ORC流体は、前記第1のシリンダから
排出され、
前記ORC流体の圧力および熱が事前定義された第1の閾値未満に下がった場合、前
記ORC流体は、使用済み流体とみなされて凝縮器内に排出され、前記ORCサイクルで
再循環され、
下がらなかった場合、前記ORC流体は、前記ORC部の第2のシリンダ内に移送お
よび噴射され、内部の第2のピストンを下方に変位させ、
前記ORC流体はこのように、使用済みとみなされるまで、前記ORC部のシリンダ間
で連続的に循環され、
使用済みの前記ORC流体が前記凝縮器内に排出されると、使用済みの前記ORC流
体は、前記高圧タンクから前記シリンダのうちの1つの中に噴射される加熱および加圧さ
れた前記ORC流体と置き換えられる、モノブロックレシプロピストンエンジン動力装置が提供される。
【0007】
本発明の第2の態様によると、モノブロックレシプロピストンエンジン動力装置であっ
て、
各々が内部にピストンを収容した2つ以上のシリンダと、
前記ピストンのうちの少なくとも1つの変位を制御する内燃(IC)部と、
前記ピストンのうちの少なくとも1つの変位を制御する有機ランキンサイクル(OR
C)部と
を含み、
前記ICおよびORCのピストンは、前記モノブロックエンジン動力装置の共通のク
ランクシャフトに接続して前記クランクシャフトを駆動させ、
前記有機ランキンサイクルは、前記内燃部での燃焼によって発生した熱によって動作
し、前記ORC部における前記ピストンの変位は、加熱および加圧されたORC流体を噴
射することによって達成され、
加熱および加圧された前記ORC流体は、高圧タンクから前記ORC部の第1のシリン
ダ内に噴射されて、内部の第1のピストンを下方に変位させ、
前記第1のピストンが上方に変位すると、前記ORC流体は、前記第1のシリンダから
排出され、
前記ORC流体の圧力および熱が事前定義された第2の閾値を超える場合、前記OR
C流体は、前記ORC部の第2のシリンダ内に移送および噴射され、内部の第2のピスト
ンを下方に変位させ、
超えない場合、前記ORC流体の一部は、凝縮器内に排出されて、前記ORCサイク
ルで再循環され、前記一部が前記高圧タンクからの加熱および加圧された前記ORC流体
と置き換えられ、
得られた混合ORC流体は次に、前記ORC部の第2のシリンダ内に噴射されて、内
部の第2のピストンを下方に変位させ、
前記ORC流体はこのように、前記ORC部のシリンダ間で連続的に混合および再循環
される、モノブロックレシプロピストンエンジン動力装置が提供される。
【0008】
好ましくは、前記モノブロックエンジンは、1つまたは複数の発電機に結合される。
【0009】
好ましくは、前記1つまたは複数の発電機は、再充電可能なバッテリーパックまたはスーパーキャパシタパックを充電するように配置される。
【0010】
好ましくは、前記1つまたは複数の発電機は、前記エンジンをかけて前記エンジンを始動させるように、すなわち、前記モノブロックエンジンの1つまたは複数のスタータモータとして機能するように配置される。
【0011】
好ましくは、前記1つまたは複数の発電機のシャフトは、前記エンジンの前記クランクシャフトと一列に結合されており、前記クランクシャフトおよび前記発電機のシャフトは、前記クランクシャフトの全長に及ぶ同一の仮想直線軸に延びる。
【0012】
好ましくは、前記クランクシャフトの少なくとも一端が、前記1つまたは複数の発電機に結合される。
【0013】
好ましくは、前記クランクシャフトの前記少なくとも一端に結合された前記1つまたは複数の発電機は、前記クランクシャフトの動釣り合いを達成するように配置される。
【0014】
好ましくは、前記モノブロックは、新しい特別注文のモノブロックであるか、または再利用された標準的なICエンジンブロックであり、複数の前記シリンダおよび前記ピストンは、IC動作用に手つかずのまま残され、残りの前記シリンダおよび前記ピストンは、前記ORC部のシリンダ内部の前記ORC流体によって駆動されるように配置される。
【0015】
好ましくは、前記有機ランキンサイクルは、前記エンジンモノブロック、排熱および/またはエンジン冷却システムのうちの1つまたは組み合わせから熱を回収する。
【0016】
好ましくは、前記有機ランキンサイクルによる回収は、1つの有機ORC流体、または2つの異なる温度動作範囲を有する2つの有機ORC流体、または2つ以上の異なる温度動作範囲で動作するように配置された単一のハイブリッドORC流体を利用する。
【0017】
好ましくは、2つ以上の異なる温度動作範囲で動作するように配置されたハイブリッドまたは2つのORC流体を利用する場合、第1の範囲が、排熱などの高温から回収したエンジン熱から動作するように構成され、第2の範囲が、冷却剤および一般的なスカベンジング熱回収から回収したエンジン熱から動作するように構成される。
【0018】
好ましくは、前記シリンダは、シリンダ容積を柔軟に制御できるようにウェットライニングされる。
【0019】
好ましくは、EGRからの濾過水は、前記シリンダ内の燃焼温度がNOxを形成するポ
イントに達する直前の時点で、ICシリンダヘッド内に噴射され、
前記噴射された水は、NOxの閾値温度に達する直前に、ICシリンダ温度のピークゾ
ーンに到達するようにタイミング合わせされる。
【0020】
本発明の第3の態様によると、上述のエンジンを利用して電力を生成するシステムが提供される。
【0021】
本発明の第4の態様によると、上述のエンジンを利用して電力を生成する方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本発明は、添付の図面を参照して例として説明される。
【0023】
【
図1】本発明による同じモノブロックにIC部とORC部とが複合されたモノブロックの例示的なシステムの概略図を示す。
【
図2】本発明を達成するために使用され得る一般的なICエンジンブロックを示す。
【
図3】本発明によるコンロッドと、ICおよびORCのピストンとを有する一般的なクランクシャフトを示し、クランクシャフトの各端部は、発電機に結合されている。
【
図4】ピストンおよびシリンダ室の概略図であり、
図4aは、ICピストン、シリンダ室、および弁を示し、
図4bは、ORCピストン、シリンダORC膨張室、ORC流体入口および出口、ならびにシリンダ内圧および温度センサを示す。
【
図5】本発明による完全可変弁作動(FVVA)を示す。
【
図6】本発明による共通のクランクシャフトを駆動させるICおよびORCのピストンシリンダの例示的な配置とタイミングサイクルとを示す。
【
図7】本発明による特別注文の吸気/排気マニホールドを示す。
【
図8】本発明による排気再循環(EGR)の回路図を示す。
【
図9】本発明によるIC-ORCモノブロックエンジンのプロセスおよび構成要素の一実施形態の詳細図を示し、ORC入口は並列であり、ORC流体は各ORCシリンダに対して個別に噴射され、ORCピストンは単一の膨張段階:凝縮器への噴射-膨張-抽出(すなわち、ORCシリンダ内へのORC流体の噴射ごとのピストンの1度の下方/ダウンストローク変位、およびその後のピストンの上方/アップストローク変位によるORC流体の凝縮器への排出)で動作する。
【
図10】本発明によるIC-ORCモノブロックエンジンのプロセスおよび構成要素の別の実施形態の詳細図を示し、ORC入口は直列であり、かつ/または並列に補充を有し、ORC流体は、ORCシリンダ間で直列に循環および移送され、ORCピストンが1回の「フレッシュな」ORC流体の噴射ごとに複数の膨張段階:例えば、シリンダ5内への噴射―ピストン5の変位―ORC流体の排出およびシリンダ6内への噴射のための移送―ピストン6の変位―{ORC流体をシリンダ5に戻す―n回繰り返し}―その後凝縮器への排出(すなわち、
図4bに示す圧力センサおよび温度センサからのデータに基づいて、コントローラによってORC流体の圧力および熱が消費されたとみなされるまでORCシリンダへの一度のORC流体噴射ごとの、シリンダにおける繰り返しの膨張)で動作する。
【
図11】本発明によるICシリンダ内への分岐した水素および霧状水の噴射の概略図を示す。
【
図12】本発明によるそれぞれの入力および出力ポート/弁を有するICシリンダ4およびORCシリンダ5の図を示す。
【
図13】
図10の実施形態によるそれぞれの入力および出力ポート/弁、ならびにORC流体経路を有するORCシリンダ5およびORCシリンダ6の図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、有害な排出物を低減またはゼロにしたモノブロックレシプロピストンエンジンの新規の設計を利用して電力を生成する装置、システム、および方法を説明する。モノブロックは、複合された内燃(IC)部と有機ランキンサイクル(ORC)部とを含み、各部が、1つまたは複数の部それぞれのピストンを変位させ、ピストンはすべて、モノブロック発電装置の共通のクランクシャフトに接続してクランクシャフトを駆動させる。
【0025】
本明細書において、モノブロックは、共通のブロックまたはエンジンブロック、あるいは単にブロックと、互いに言い換え可能に言及される場合がある。
【0026】
ブロックの内燃機関(ICE)構成要素は、ガソリン、ディーゼルなど、当技術分野で知られている任意の可燃性燃料、ならびにメタン、ブタン、またはプロパンなどのガス状流体を利用可能である。しかしながら、結果として生じる炭素の排出を削減または回避するためには、水素など、よりクリーンな可燃性燃料を使用することが好ましい。
【0027】
本明細書では、ICE部の1つまたは複数のピストンおよびシリンダを、ICEピストン(1つまたは複数)およびICEシリンダ(1つまたは複数)と称することにする。
【0028】
有機ランキンサイクル(ORC)部では、1つまたは複数のピストンおよびシリンダを、ORCピストン(1つまたは複数)およびORCシリンダ(1つまたは複数)と称することにする。1つまたは複数のORCピストンは、エンジンの内燃部での燃焼により発生した熱を動作に利用する内部ORCサイクルによって駆動される。
【0029】
エンジンからの高品位の「廃棄」熱はすべて、向流熱交換器を使用して回収される。ORC部は、エタノールまたはメタノール、あるいは「ハイブリッド」な代替物などの適切なORC有機流体を加熱する。
【0030】
IC部およびORC部は、それぞれのICピストンおよびORCピストンを互いに独立して変位させるための電力を発生させる。しかしながら、ICピストンおよびORCピストンは共通のクランクシャフトに接続してクランクシャフトを駆動させるため、それらの発射と変位のタイミングが同期されて、ピストンの変位からクランクシャフトの回転へのエネルギー伝達が最大化し、したがって取り出された仕事が最大に達する。
図3は、ICピストンおよびORCピストンに接続されたクランクシャフト110を示す。
二重機能モータ発電機
【0031】
一実施形態では、モノブロックエンジンは、1つまたは複数の発電機に結合される。クランクシャフトの少なくとも一端が、1つまたは複数の発電機に結合される。結合は、1つまたは複数の発電機のシャフトが、モノブロックのクランクシャフトに、直接またはギアの配置を介して、結合/接続されるようにするものである。結合は、シャフトおよびクランクシャフトの端部において行うことができる。1つまたは複数の発電機は、再充電可能なバッテリーパックまたはスーパーキャパシタパックを充電するために接続および配置される。
【0032】
1つまたは複数の発電機のシャフトは、エンジンのクランクシャフトと一列に結合されるため、クランクシャフトおよび発電機のシャフトが、クランクシャフトの全長に及ぶ同一の仮想直線軸に延びる。複数の発電機が接続されている場合、それらは同一の仮想直線軸において直列に一列になって結合され、1本の長い連続したジョイントシャフトを形成する。電気機械式クラッチを採用して、発電機を連続したジョイントシャフトから結合または分離させてもよい。
【0033】
図3は、少なくとも1つの発電機121および122に結合され得るクランクシャフト110を示し、結合は、同一の仮想直線軸Aにおいて直列に一列になっており、1本の長い連続したジョイントシャフトを形成している。
【0034】
あるいは、クランクシャフトおよび発電機シャフトは、様々な角度または平行に配置されたギアによって結合されてもよい。
【0035】
バッテリーパックまたはスーパーキャパシタパックを再充電可能な1つまたは複数の発電機は、電気モータを駆動させるために配置される。
【0036】
さらなる実施形態では、発電機を、エンジンをかけてエンジンを始動させるように、つまり、モノブロックエンジンのスタータモータ(1つまたは複数)として機能するように配置してよい。モータ発電機のうちの1つまたは複数を、始動時にエンジンをかけるスタータモータとして使用してもよい。点火を開始するために(複数のモータ発電機が設置されている場合)、例えば電子クラッチを使用して、エンジン始動プロセスに不要なすべての発電機を分離させてもよい。
【0037】
クランクシャフトの少なくとも一端に結合された1つまたは複数の発電機は、クランクシャフトの動釣り合いを達成するために配置される。
【0038】
発電機は、クランクシャフトから前方または後方にある電力テイクオフに位置してよい。
【0039】
モータ発電機(1つまたは複数)の設計は、ORCプロセスに回収された高品位の高熱を用いた油冷式パンケーキ設計またはスイッチトリラクタンス設計であることが好ましい。
【0040】
エンジン負荷および電力生成を、例えば電子クラッチを介して、必要に応じて1つまたは複数の発電機のスイッチを切るか、あるいは機械的に分離させることで制御してよい。
【0041】
モータ発電機により、回生制動を行い、回収したエネルギーをウルトラ/スーパーキャパシタまたはバッテリーパックに蓄えることができる。
ICおよびORCの動作
【0042】
仕事および負荷要件に応じて、IC部とORC部とを同時に動作させるか、あるいは各部を個別にオフにしてよい。一例として、エンジンおよびORCサブシステムが所望のORC動作温度に達するまで、IC部を動作可能とし、ORC部をオフにしてもよい。同様に、エンジンからすべての熱が掃気され、ORC流体およびORC部においてすべての熱を使い切るまで、IC部をオフにしてもよく、ORC部はクランクシャフトを動作させ、バッテリーバンクを充電し続ける。
【0043】
IC部およびORC部は同一のエンジンブロック内にあるため、ICおよびORCシリンダ数の組み合わせを、必要なエンジンの種類および仕事に応じて構成してもよい。
【0044】
本発明は、標準的なICEエンジンブロックを再利用および変更するとともに、新たにカスタマイズしたモノブロックを使用するものであり、複数のシリンダおよびピストンをIC動作用に手つかずのまま残し、残りのシリンダおよびピストンをORCサブシステムによって駆動されるように配置する。
【0045】
提案した発明の原理は、2つ以上のシリンダを有し、インライン、V字、W字、ボクサー、直線状などの様々な配列のエンジンブロックに適用可能である。提案したモノブロックは、車両用エンジン、トラック用エンジン、大型船舶、静的または鉄道発電装置などに利用可能である。
【0046】
本発明をよりうまく説明するために、
図2に示すように、6つのシリンダブロックを採用した例を説明する。
【0047】
図1を参照すると、
図2のブロックは、シリンダ1~4をICシリンダとして維持し、シリンダ5および6をORC部によって駆動されるように変更されている。この配置は、
図3、
図9、
図10、および
図14にさらに示されている。
【0048】
本発明を伝えるために、ICシリンダおよびORCシリンダは、例として、参照しやすいように、この配置で示されている。その他、ICシリンダがORCシリンダの前方にあるか、あるいはICシリンダおよびORCシリンダが均等または不均等に往復する配置も可能である。
【0049】
いくつかの実施形態では、エンジンからの熱抽出を増やすために、ORCシリンダは、水、冷却剤ポンプの近くに配置されることが好ましい。
【0050】
図1を参照すると、モノブロック100は、IC部200とORC部300とを含む。この例の目的では、ブロックは、ICシリンダとしてシリンダ1、2、3、4と、ORCシリンダとしてシリンダ5および6とを含む。これらのシリンダのそれぞれのピストンは、同じ番号、すなわち、ピストン1、ピストン2などで言及される。
【0051】
図2は、本発明を達成するために使用され得る典型的なICエンジンブロック100を示し、
図3は、そのエンジンのクランクシャフト110を示す。
【0052】
図9および
図10を参照すると、本発明は、各々が内部にピストンを収容した2つ以上のシリンダを含むモノブロックレシプロピストンエンジン発電装置を提案している(1、2、3、4、5、および6の6つのシリンダを有する例が示され、シリンダ1~4は、IC部のシリンダであり、シリンダ5および6は、ORC部のシリンダである)。
【0053】
内燃(IC)部200は、ピストン1~4のうちの少なくとも1つの変位を制御し、有機ランキンサイクル(ORC)部は、ピストン5および6のうちの少なくとも1つの変位を制御し、ICピストンおよびORCピストンは、モノブロックエンジン発電装置100の共通のクランクシャフト110に接続してクランクシャフト110を駆動させる。
【0054】
有機ランキンサイクルは、内燃部での燃焼によって発生した熱によって動作し、ORC部におけるピストンの変位は、加熱および加圧されたORC流体を噴射することによって達成される。
【0055】
IC部200に注目すると、水素H2などの燃焼燃料は、シリンダ1~4内に噴射される。また、ICシリンダ内には霧状水(詳細は以下および
図11)が噴射される。
【0056】
熱回収―熱は、エンジンのIC部から排気ガスおよびEGR、ならびにエンジン冷却システムに加え、掃気された熱からも回収される。
【0057】
回収された熱を使用して、有機ランキンサイクル(ORC)を動作させる。
図9および
図10を参照すると、熱回収から得た加熱されたORC流体は、高圧タンクに集められる。加熱および加圧されたORC流体は次に、ORC部シリンダ(5および6)内に噴射される。ORC流体は、ピストンが上死点(TDC)にあるシリンダ(1つまたは複数)に噴射され、噴射されたORC流体によって内部のピストンが完全に下方変位する。
【0058】
図9は、本発明によるIC-ORCモノブロックエンジンのプロセスおよび構成要素の一実施形態の詳細図を示し、ORC入口は並列であり、ORC流体は各ORCシリンダに対して個別に噴射され、ORCピストンは単一の膨張段階:凝縮器への噴射-膨張-抽出(すなわち、ORCシリンダ内へのORC流体の噴射ごとのピストンの1度の下方/ダウンストローク変位、およびその後のピストンの上方/アップストローク変位によるORC流体の凝縮器への排出)で動作する。
【0059】
したがって、一実施形態では、加熱および加圧されたORC流体を高圧タンクからORC部シリンダ内に噴射し、内部のピストンを下方に変位させ、ピストンが上方に変位すると、ORC流体が凝縮器内に排出され、ORCサイクルに再循環される。シリンダ5および6の入口は互いに独立しており、ストロークタイミングに従ってORC流体を噴射する。凝縮器からのORC流体はサイクルにポンプで送り返され、EGRクーラー(
図7参照)および熱回収によって加熱され、次に高圧タンクなどに戻される。
【0060】
図10は、本発明によるIC-ORCモノブロックエンジンのプロセスおよび構成要素の別の実施形態の詳細図を示し、ORC入口は直列であり、かつ/または並列に補充を有し、ORC流体は、ORCシリンダ間で直列に循環および移送され、ORCピストンが1回の「フレッシュな」ORC流体の噴射ごとに複数の膨張段階:例えば、シリンダ5内への噴射―ピストン5の変位―ORC流体の排出およびシリンダ6内への噴射のための移送―ピストン6の変位―{ORC流体をシリンダ5に戻す―n回繰り返し}―その後凝縮器への排出(すなわち、
図4bに示す圧力センサおよび温度センサからのデータに基づいて、コントローラによってORC流体の圧力および熱が消費されたとみなされるまでORCシリンダへの一度のORC流体噴射ごとの、シリンダにおける繰り返しの膨張)で動作する。
【0061】
図10を参照すると、ORCシリンダにおけるORCサイクルは、以下の2つの実施形態のうちの1つに従うことができる。
【0062】
加熱および加圧されたORC液体を、高圧タンクからORC部の第1のシリンダ(5)内に噴射し、内部の第1のピストン(ピストン5)を下方に変位させ、第1のピストン(5)が上方に変位すると、ORC流体は、第1のシリンダ(5)から排出され、ORC流体の圧力および熱が事前定義された第1の閾値未満に下がった場合、ORC流体は、使用済み流体とみなされ、凝縮器内に排出されてORCサイクルに再循環され、下がらなかった場合、ORC流体は、ORC部の第2のシリンダ(6)内に移送および噴射され、内部の第2のピストン(6)を下方に変位させ、ORC流体は、使用済みとみなされるまでORC部のシリンダ(5から6、5から…)間でこのように連続して循環され、使用済みORC流体が凝縮器内に排出されると、高圧タンクからシリンダの1つの中に噴射される加熱および加圧されたORC流体と置き換えられる。
【0063】
コントローラは、熱センサおよび圧力センサ(
図4b参照)から圧力と熱のデータを取得し、ORC流体の流れをプロセスの次のシリンダまたは凝縮器のいずれかに制御する。
【0064】
別の実施形態では、加熱および加圧されたORC流体は、高圧タンクからORC部の第1のシリンダ5内に噴射され、内部の第1のピストン5を下方に変位させ、第1のピストン5が上方に変位すると、ORC流体は第1のシリンダから排出され、ORC流体の圧力および熱が事前定義された第2の閾値を超える場合、ORC流体は、ORC部の第2のシリンダ6内に移送および噴射され、内部の第2のピストンを下方に変位させ、超えない場合、ORC流体の一部は、凝縮器内に排出され、ORCサイクルで再循環され、この一部が高圧タンクから加熱および加圧されたORC流体と置き換えられ、得られた混合ORC流体は次に、ORC部の第2のシリンダ6内に噴射され、内部の第2のピストン6を下方に変位させ、ORC流体はこのように、ORC部のシリンダ間で連続的に混合および再循環される。
図12は、ICシリンダおよびORCシリンダの入口と出口の概略図を示す。より具体的には、IC部200では、符号241の燃焼燃料噴射入口弁と、霧状水噴射弁240と、排気弁244とを有するICシリンダ4が示されている。
【0065】
ORC部300では、ORC流体入口弁351と、次のORCシリンダ353への循環出口流体弁(例えば、ORC流体をORCシリンダ6に移送する場合)と、凝縮器への出口流体弁354とを有するORCシリンダ5が示されている。
【0066】
図13は、ORC部300における2つのORCシリンダ5および6の入口と出口、ならびに
図10の実施形態によるORC流体経路の概略図である。
【0067】
シリンダ5はORC流体入口弁351を含み、シリンダ6はORC流体入口弁361を含む。ただし、これらはいずれも、高圧タンクおよび/または別のORCシリンダの循環ORC流体弁/出口からORC流体を受け取ってよい。例えば、シリンダ6の次のORCシリンダ363への循環出口流体弁は、ORC流体をシリンダ5内へ移送する。例えば、シリンダ5の次のORCシリンダ353への循環出口流体弁は、ORC流体をシリンダ6内へ移送する。3つ以上のORCシリンダが利用可能な場合、流体の循環は、ORC循環流体コントローラによって制御されるとともに、ORCシリンダのストロークサイクルにも依存する。
【0068】
図13は、シリンダ5の凝縮器354への出口流体弁と、シリンダ6の凝縮器364への出口流体弁とをさらに示している。
ORCシリンダ
【0069】
図4を参照すると、ORCの変更されたシリンダは、ICシリンダと同じ構成を維持することになる。シリンダヘッドを変更に合わせて変えてもよい。ICの燃料入口弁は、ORCの流体入口になるように変更され、ICの排気弁がORCの流体出口となる。ORC流体の入口と出口ポート/弁として、
図5に示す完全可変弁作動(Fully Variable Valve Actuation:FVVA)を用いてもよい。
【0070】
旧インジェクタ開口は、シリンダ内部のORC流体の圧力および熱を測定する圧力および熱センサを収容するように変更されてもよい。ORCでは、標準的なピストンが動作可能である。ただし、ORC部ピストンは、凹型であることが好ましい。
【0071】
図10および
図11に示すように、加熱されたORC流体は、用途に応じてORCシリンダごとに最大で2つの、標準的な完全可変弁(1つまたは複数)を介してORC部のシリンダ内に噴射されるまで、高圧タンクに集められて保持される。噴射されると、ORC流体は膨張し、ピストンに力をかけ、ピストンをBDCまでシリンダ内に押し下げる。次に、クランクシャフトおよびコンロッドの動作により、ピストンがTDCまで戻される。使用済みまたは半分使用済みのORC流体は、残った熱と圧力に応じて、次に第2のORCシリンダ内に噴射されてもよい。このプロセスは、有用なエネルギーがすべて使用されるまで、2つのORCシリンダ間で継続される。ORC流体は次に、出口弁(1つまたは複数)を経由して凝縮器に戻される。
【0072】
図3および
図6を参照すると、ORCピストンは、一方が上死点(TDC)にあり、他方が下死点(BDC)にあるように配置される。これは、第1のピストンのダウンストロークにおけるTDCからBDCまでのORCの膨張から最大の仕事を取り出し、もう一方のピストンが逆のピークに位置し、シリンダ間の流体の移送において最大の仕事を取り出すようにするためである。
【0073】
例としては、ICエンジンのシリンダブロックは、通常の動作条件では70℃未満に維持される。つまり、ピストンのダウンストロークの結果として生じる流体の膨張により、第1のシリンダ内の容積が増加し、圧力が減少する。この膨張は、吸熱である。このように、ORCによって第1のピストンで仕事が完了する。第1のピストンがアップストロークすると、わずかに減圧されたORC流体は、隣接する第2のシリンダに移送される。第2のピストンがダウンストロークすると、ORC流体が設定された圧力および温度の閾値を依然として超えていれば、第1のシリンダに戻すように移送される。流体が閾値よりも低い場合、凝縮器内に排出され、第1のピストンの入口弁が開いて新しいORC流体を受け取り、さらに仕事を取り出す。有用な機械的仕事をすべて取り出すと、分流弁が流体を凝縮器に導く。コントローラは、三方弁を作動させてもよく、ORC流体の残圧に基づいていてもよい(すなわち、凝縮器へのダンプと第1のシリンダへの高圧ORCの再充電のいずれかを行う)。完全に独立した可変弁システムにより、この柔軟性が可能になる。このプロセスは、反復される。
【0074】
ORC部は、エタノールまたはメタノール、あるいは「ハイブリッド」な代替物などの適切なORC有機流体を加熱する。エタノールを使用する場合の例として、20℃の常温常圧(NTP)温度、および1気圧(101.325kPa)の絶対圧力の場合、エタノールの沸点は、約70℃である。シリンダブロックの温度は、±70℃となる。したがって、かなりの吸熱反応が予想される。これにより、機械的仕事の可能性が最適化され、使用済みのORC流体は、凝縮器に戻る際に、その液体状態に近くなる。ORCシステムの最高温度は、用途と電力出力とに応じて、±500℃であると推定される。
【0075】
一実施形態では、横方向に動く水または空気圧ばねの設計の入口および排気弁により、ORCサイクルを完了するための最終的なORC排気弁を囲む弁室を実現することができる。用途に応じて、ORCシリンダごとに最大2つの弁を使用してよい。これらは、水平、横方向、作動弁であってよい。ORC流体の状態によって、ORCの膨張(あるシリンダから他のシリンダへの流体の移送)可能回数が決定されることになる。他の実施形態では、電気機械式弁も採用可能である。
【0076】
ICEおよびORCの両方のすべてのシリンダは、シリンダ容積を柔軟に制御できるように、ウェットライニングされていることが好ましい。
【0077】
ICシリンダを有し、シリンダをORCエキスパンダーとして同一モノブロック内で使用する機械構造は、他に例がない。
エンジンの概要
【0078】
以下を取り入れることで、効率が最適化される。
●クランクシャフトを1つまたは複数の好ましくはパンケーキ設計のECDCモータ/発電機に直接接続することにより、定常状態の動力ユニットの毎分回転数を維持する。他の電気または軸力発電手段も適用可能である。
●シリンダブロックを4つの「燃焼シリンダ」、4ストローク構成に「分割」し、残りの2つのシリンダを、サブシステムおよび排気ガスから回収したすべての顕熱を利用する「2ストローク作用」の有機ランキンサイクル設計により電力供給する。好ましくは、ORC流体は、メタノールまたはエタノールである。ただし、他のオゾン破壊性が低いか、またはゼロの代替物を採用してもよい。
●ORCシリンダは、ORC流体の温度/圧力条件に応じて、1段、2段、または3段のエキスパンダーとして動作してよい。これは、2つのシリンダと有機流体の排気とにわたって動作する迅速に作動する多方向(好ましくは)の入口および排気弁によって達成されている。
●6シリンダブロックの例では、1-5-3-6-2-4の発射順序で、シリンダ5および6はORCシステム専用とし、シリンダ1、3、4、および2は水素燃料の4ストローク圧縮点火で動作することが好ましい。
●好ましくは、燃焼空気入口にPEM技術を組み込んで、ICEユニットへの酸素供給を強化して不活性NOxガスを低減するものとする。
●サージバッテリーシステムは、例えば、自動車用途の回生制動、余剰発電能力の過剰電力をハーベスティングし、これにより、例えばヒルクライムおよび初期始動条件の高負荷条件に対応するように蓄積する。
●4つの燃焼シリンダは、
・スパークアシスト型圧縮点火システム(好ましくはマーラー式)と、
・可変圧縮を容易にし、不要なポンピングロスを回避する完全可変独立制御の入口および排気弁と、
・好ましくは、誘導電荷を増加させる、ターボチャージまたはスーパーチャージと、
・
図7に示すように、マニホールド水噴射(インタークーラー効果)と直接(シリンダ内)水噴射との併用(排気ガスからの濾過水を凝縮したものからハーベスティングされる)により、誘導冷却を行い、シリンダのホットスポットを回避し、高乱流の燃料空気混合を引き起こし、燃焼ガス最高温度の制御によるNOx生成を最小化し、フラッシュ蒸気の生成によりシリンダ電力出力を増加させることと、
・積極的な点火タイミングを適用して、効率および電力を最適化することと、
・電力が不要なときに個々のシリンダを「切り替え」て、ポンピングロスを低減する能力と、
・カムシャフト駆動システムに関連する電力損失の回避することと、スタータモータの分離、交流機の分離、高圧燃料ポンプ(ディーゼル車にあるような)、およびラジエターファンの冷却電力要件を最小化すること
の特徴を有するものとする。
●エンジンは、
図8に示すように、排気ガス再循環(EGR)の温度および量の制御を用いる。これにより、事前点火および「ホットスポット」事前燃焼が防止され、EGRガスが部分的に予冷されるため、ICEユニットの全体の燃焼効率が向上すると同時に、ゼロに近いNOx排出が保証されると予想される。
【0079】
他の補助的な方法に加えて水素を燃料として使用することで、提案した発明は、64%~72%の範囲内の潜在的なMBHP効率を有する。微粒子排出は、実質的にゼロとなる。NOx排出レベルは、無視できるほどになる。一酸化炭素および二酸化炭素の排出は、ゼロになる。オゾン破壊性の排出は、測定可能なレベルより低いか、それに近くなる。潤滑油からのほんのわずかな排出が予想される。
【0080】
提案した電力システムは、燃料電池よりも安いコストで製造でき、効率は現在の燃料電池システムと同等か、または向上する。
【0081】
提案した電力システムは、大型のバッテリーシステムよりも安いコストで製造できる。ライフサイクルメンテナンスコストはどちらの代替案よりも低く、再利用/リサイクルは大幅に低いコストとなる。さらに、提案した発明は、エンジンブロックのリサイクルおよび変更を助け、これにより、よりクリーンな電力を生成し、発電機、トラック、車両、船舶などを駆動できる。
【0082】
モノブロックは、新しい特別注文のモノブロックであってもよいし、標準的なICエンジンブロックを再利用したものであってもよく、複数のシリンダおよびピストンをIC動作用に手つかずのまま残し、残りのシリンダおよびピストンをORC部シリンダ内のORC流体によって駆動されるように配置する。
【0083】
有機ランキンサイクルは、エンジンモノブロック、排気熱および/またはエンジン冷却システムのうちの1つまたは組み合わせから熱を回収し得る。有機ランキンサイクル回収は、1つの有機ORC流体、または2つの異なる温度動作範囲を有する2つの有機ORC流体、または2つ以上の異なる温度動作範囲で動作するように配置された単一のハイブリッドORC流体を利用し、2つ以上の異なる温度動作範囲で動作するように配置されたハイブリッドまたは2つのORC流体を利用する場合、第1の範囲は排気熱などの高温から回収したエンジン熱から動作するように構成され、第2の範囲は冷却剤および一般のスカベンジング熱回収から回収したエンジン熱から動作するように構成される。
【0084】
エンジンのプロセスに関するさらなる詳細は、以下に提供される。
水素燃焼プロセス
【0085】
IC部が燃料として水素を使用する好適な一実施形態では、以下の特徴をさらに用いてもよい。
【0086】
微量の水素を、圧縮点火エンジン内のスパークアシストシステム(好ましくはMahler(商標)システム)内に噴射する。
【0087】
水素燃料は、電力ニーズ(すなわち、リーンまたは化学量論)に応じて、3,000,000~10,000,000パスカルの高圧力で噴射される。
【0088】
水素インジェクタは単数でもよいが、好適な実施形態では、
図11に示すように、水素インジェクタを2つに分岐させて、水素とチャージエアガスとの混合を最大化してもよい。
【0089】
水素供給弁の開閉によって、より広範囲の噴射圧が決定される。タイミング制御は、ECUを介して電力需要によって決定される。
【0090】
電力ニーズは、ECUの求めに従う。同様に、排気ガス温度の監視は、SSSI/ECUを介して行われる。
i)
図11に示すように、シリンダ内の燃焼温度がNOxを形成する温度に達する直前の時点で、超濾過水(EGRからの)をシリンダヘッド内に噴射する。
ii)霧状水噴射は、
図11に示すように、シリンダ径とストロークに応じて、5度~12度の間の角度で2つの超微細噴出口を介して行われる。
iii)水噴射により、シリンダおよび排気弁内に「ホットスポット」が生じるリスクが防止され、事前点火が回避される。
iv)このプロセスにより、各ICEシリンダからの電力出力を増加させる「フラッシュ蒸気」のプロセスが促進される。
v)噴射水は、NOxの閾値温度に達する直前にICEシリンダ温度のピークゾーンに到達するようにタイミング合わせされる。
【0091】
水素燃料エンジン内で水噴射、フラッシュ蒸気、および高度な燃焼制御を統合することは、当技術分野で知られていない。
【0092】
水素と水とを組み合わせてシリンダヘッド内に噴射することは、他に例のない構成である。
【0093】
再び
図11を参照すると、水素噴射プロファイルは、標準的な単独方式インジェクタまたは好ましくは二分岐式インジェクタとしてよい。水素インジェクタを2つに分岐させる目的は、チャージエアおよび水素の迅速な分配を最適化し、シリンダ内で均質な可燃性混合物を生じさせることである。
【0094】
既存のエンジンブロック、コンロッド、クランクシャフト、ピストン設計、および潤滑は、以下のように変更される。
●強化されたコンロッド
●不適合な金属の回避
●強化されたクランクシャフト(必要な場合)
●PTFEまたは類似の化合物から製造されたORCピストンリング
●エンジンオイル内への固体潤滑剤WS2およびMS2の混在(摩耗の低減および摩擦損失の低減)による、特に「ドライ」燃料の影響への対処
●変更されたピストン(必要に応じて)
●完全独立可変弁およびアクチュエータの設計変更に対応するために再設計したシリンダヘッド
●ピストンは、好ましくは凹型である。
【0095】
標準的なICEエンジンブロックを再利用および変更する場合、ヘッドを以下に記載するようにいくつか変更する必要がある。
【0096】
弁座は、弁を収容するように機械加工する必要があり、特殊な金属コーティングが必要となる。用途に応じて、各シリンダに1つまたは2つの入口弁、および1つまたは2つの排気弁が組み込まれる。
【0097】
シリンダヘッドおよび弁ギアが変更される。ICシリンダおよびORCシリンダの両方の弁座は、完全可変燃料、完全可変ORC流体噴射および排気弁、ならびにアクチュエータを受け入れるように変更する必要がある。
【0098】
この変更により、標準的な縦型(ポペット)弁と対照的な、
図5に示すような完全可変横型バルブFVVAの取り付けが容易になる。
【0099】
ブロックおよびサンプ―CA吸気に対して積極的に通気されたサンプ、SSSI/ECUに対するサンプ圧力の積極的な監視、および可能な限り外部と遮断されたシリンダブロック。
【0100】
排気マニホールド―保温のためのツインスキン構造およびスキン間の絶縁、および
図7に示すように、水噴射プロセスのために監視された排気ガス温度。
【0101】
クランクシャフト―最大電力出力に応じたいくつかの条件下では、クランクシャフトの冶金硬化およびコーティングが必要となる。クランクシャフトは、前方および後方の電力テイクオフが可能なように機械加工される。クランクシャフトのベアリングは、ブロックの底に存在し得る水素による劣化に耐える材料から作られることになる。
【0102】
コンロッド―水素燃料に耐え、より大きな電力を搬送するために冶金的に機械加工され強化される。コンロッドのベアリングは、ブロックの底に存在し得る水素による劣化に耐える材料から作られることになる。