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特許7518975運動状態の制御方法、装置、ホイールロボット及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】運動状態の制御方法、装置、ホイールロボット及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G05B 13/02 20060101AFI20240710BHJP
   G05B 11/36 20060101ALI20240710BHJP
   G05D 1/495 20240101ALI20240710BHJP
【FI】
G05B13/02 C
G05B11/36 G
G05D1/495
【請求項の数】 28
(21)【出願番号】P 2023521655
(86)(22)【出願日】2022-01-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-11-09
(86)【国際出願番号】 CN2022071024
(87)【国際公開番号】W WO2022152083
(87)【国際公開日】2022-07-21
【審査請求日】2023-04-07
(31)【優先権主張番号】202110049662.8
(32)【優先日】2021-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】517392436
【氏名又は名称】▲騰▼▲訊▼科技(深▲セン▼)有限公司
【氏名又は名称原語表記】TENCENT TECHNOLOGY (SHENZHEN) COMPANY LIMITED
【住所又は居所原語表記】35/F,Tencent Building,Kejizhongyi Road,Midwest District of Hi-tech Park,Nanshan District, Shenzhen,Guangdong 518057,CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】王 ▲帥▼
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ ▲競▼帆
(72)【発明者】
【氏名】来 杰
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ ▲東▼▲勝▼
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼ 科
(72)【発明者】
【氏名】▲鄭▼ 宇
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 正友
【審査官】尾形 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-195079(JP,A)
【文献】特開2004-299010(JP,A)
【文献】特開2016-057917(JP,A)
【文献】国際公開第2014/141356(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/084354(WO,A1)
【文献】特開2014-080107(JP,A)
【文献】特開2012-250569(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104155976(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108121334(CN,A)
【文献】特表2009-512563(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 11/00-13/04
G05D 1/00- 1/87
B25J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホイールロボットが実行する運動状態の制御方法であって、
初期運動状態にあるように前記ホイールロボットを制御するステップであって、前記初期運動状態は、前記ホイールロボットが第1の期間にある場合の運動状態であるステップと、
前記初期運動状態から静止立位状態に切り替えるように前記ホイールロボットを制御するステップであって、前記ホイールロボットは、第2の期間にバランス誤差に基づいて調整し続けることにより、前記静止立位状態にあるステップと、を含
前記バランス誤差は、前記ホイールロボットの実際の重心点と、前記ホイールロボットの予測重心点又は標定重心点との間の誤差である、運動状態の制御方法。
【請求項2】
前記初期運動状態から静止立位状態に切り替えるように前記ホイールロボットを制御する前記ステップは、
前記ホイールロボットの基礎データ及び運動状態データを取得するステップであって、前記基礎データは、前記ホイールロボットの構造的特徴を示し、前記運動状態データは、前記ホイールロボットの運動特徴を示すステップと、
前記基礎データ及び前記運動状態データに基づいて、前記ホイールロボットの状態行列を決定するステップであって、前記状態行列は、前記ホイールロボットの干渉パラメータに関連し、前記干渉パラメータは、前記ホイールロボットの前記バランス誤差に対応するステップと、
前記状態行列に基づいて、前記ホイールロボットを制御するモーメントを決定するステップと、
前記モーメントで、前記静止立位状態にあるように前記ホイールロボットを制御するステップと、を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記基礎データ及び前記運動状態データに基づいて、前記ホイールロボットの状態行列を決定する前記ステップは、
前記基礎データに基づいて、オブザーバを決定するステップと、
前記運動状態データ及び前記干渉パラメータに基づいて、前記オブザーバにより前記状態行列を決定するステップと、を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記基礎データに基づいて、オブザーバを決定する前記ステップは、
前記基礎データに基づいて、前記オブザーバにおける行列パラメータを決定するステップと、
前記行列パラメータに基づいて、前記状態行列を決定する前記オブザーバを取得するステップと、を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記運動状態データに基づいて、オブザーバにより前記状態行列を決定する前記ステップは、
前記オブザーバにより、状態行列を推定するステップと、
推定された状態行列に基づいて、反復値の推定値を決定するステップと、
前記運動状態データに基づいて、前記反復値の実際値を決定するステップと、
前記推定値と前記実際値との差を取得するステップと、
前記オブザーバにより、前記差に基づいて、前記推定された状態行列を更新して、前記状態行列を取得するステップと、を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記ホイールロボットの前記状態行列の形式に基づいて、前記オブザーバの形式を決定するステップと、
前記運動状態データの内容に基づいて、前記オブザーバにおける前記反復値の形式を決定するステップと、をさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記オブザーバの形式は、
【数1】
であり、式中、
【数2】
は、前記オブザーバによって推定された前記状態行列であり、uは、制御モーメントであり、Lは、予め設定されたパラメータであり、
【数3】
は、前記反復値の実際値であり、
【数4】
は、前記反復値の推定値であり、
【数5】

【数6】
は、前記基礎データに基づいて決定されたパラメータ行列である、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
ホイールロボットが実行する運動状態の制御方法であって、
初期運動状態にあるように前記ホイールロボットを制御するステップであって、前記初期運動状態は、前記ホイールロボットが第1の期間にある場合の運動状態であるステップと、
前記初期運動状態から静止立位状態に切り替えるように前記ホイールロボットを制御するステップであって、前記ホイールロボットは、第2の期間にバランス誤差に基づいて調整し続けることにより、前記静止立位状態にあるステップと、を含み、
前記初期運動状態から静止立位状態に切り替えるように前記ホイールロボットを制御する前記ステップは、
前記ホイールロボットの基礎データ及び運動状態データを取得するステップであって、前記基礎データは、前記ホイールロボットの構造的特徴を示し、前記運動状態データは、前記ホイールロボットの運動特徴を示すステップと、
前記基礎データ及び前記運動状態データに基づいて、前記ホイールロボットの状態行列を決定するステップであって、前記状態行列は、前記ホイールロボットの干渉パラメータに関連し、前記干渉パラメータは、前記ホイールロボットの前記バランス誤差に対応するステップと、
前記状態行列に基づいて、前記ホイールロボットを制御するモーメントを決定するステップと、
前記モーメントで、前記静止立位状態にあるように前記ホイールロボットを制御するステップと、を含むことを特徴とし、
前記基礎データ及び前記運動状態データに基づいて、前記ホイールロボットの状態行列を決定する前記ステップは、
前記基礎データに基づいて、オブザーバを決定するステップと、
前記運動状態データ及び前記干渉パラメータに基づいて、前記オブザーバにより前記状態行列を決定するステップと、を含み、
前記運動状態データに基づいて、オブザーバにより前記状態行列を決定する前記ステップは、
前記オブザーバにより、状態行列を推定するステップと、
推定された状態行列に基づいて、反復値の推定値を決定するステップと、
前記運動状態データに基づいて、前記反復値の実際値を決定するステップと、
前記推定値と前記実際値との差を取得するステップと、
前記オブザーバにより、前記差に基づいて、前記推定された状態行列を更新して、前記状態行列を取得するステップと、を含み、
前記オブザーバの形式は、
【数7】
であり、式中、
【数8】
は、前記オブザーバによって推定された前記状態行列であり、uは、制御モーメントであり、Lは、予め設定されたパラメータであり、
【数9】
は、前記反復値の実際値であり、
【数10】
は、前記反復値の推定値であり、
【数11】

【数12】
は、前記基礎データに基づいて決定されたパラメータ行列であり、
【数13】
【数14】
であり、
式中、
【数15】
【数16】
【数17】
であり、mは、前記ホイールロボットにおける本体部分の重量であり、Mは、前記ホイールロボットにおけるホイールの重量であり、lは、前記ホイールロボットの身長である、方法。
【請求項9】
前記ホイールロボットの前記基礎データ又は前記運動状態データが変化した後、前記基礎データ及び前記運動状態データに基づいて、前記ホイールロボットの状態行列を決定して、変化後の状態行列を決定するステップをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項10】
前記状態行列に基づいて、前記ホイールロボットを制御するモーメントを決定する前記ステップは、
前記ホイールロボットを制御する入力行列を決定するステップであって、前記入力行列は、前記ホイールロボットの基礎データに基づいて決定された行列であるステップと、
前記入力行列と前記状態行列との積を、前記ホイールロボットを制御するモーメントとして決定するステップと、を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
前記ホイールロボットを制御する入力行列を決定する前記ステップは、
前記ホイールロボットのピッチ角速度及び線速度がゼロに近い場合、制御モーメントと前記状態行列との等式関係を決定するステップと、
前記等式関係に基づいて前記入力行列を決定するステップと、を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ホイールロボットが実行する運動状態の制御方法であって、
初期運動状態にあるように前記ホイールロボットを制御するステップであって、前記初期運動状態は、前記ホイールロボットが第1の期間にある場合の運動状態であるステップと、
前記初期運動状態から静止立位状態に切り替えるように前記ホイールロボットを制御するステップであって、前記ホイールロボットは、第2の期間にバランス誤差に基づいて調整し続けることにより、前記静止立位状態にあるステップと、を含み、
前記初期運動状態から静止立位状態に切り替えるように前記ホイールロボットを制御する前記ステップは、
前記ホイールロボットの基礎データ及び運動状態データを取得するステップであって、前記基礎データは、前記ホイールロボットの構造的特徴を示し、前記運動状態データは、前記ホイールロボットの運動特徴を示すステップと、
前記基礎データ及び前記運動状態データに基づいて、前記ホイールロボットの状態行列を決定するステップであって、前記状態行列は、前記ホイールロボットの干渉パラメータに関連し、前記干渉パラメータは、前記ホイールロボットの前記バランス誤差に対応するステップと、
前記状態行列に基づいて、前記ホイールロボットを制御するモーメントを決定するステップと、
前記モーメントで、前記静止立位状態にあるように前記ホイールロボットを制御するステップと、を含むことを特徴とし、
前記状態行列に基づいて、前記ホイールロボットを制御するモーメントを決定する前記ステップは、
前記ホイールロボットを制御する入力行列を決定するステップであって、前記入力行列は、前記ホイールロボットの基礎データに基づいて決定された行列であるステップと、
前記入力行列と前記状態行列との積を、前記ホイールロボットを制御するモーメントとして決定するステップと、を含み、
前記入力行列Kは、
【数18】
及び
【数19】
を満たし、
式中、
【数20】
【数21】
【数22】
であり、
mは、前記ホイールロボットにおける本体部分の重量であり、Mは、前記ホイールロボットにおけるホイールの重量であり、lは、前記ホイールロボットの身長であり、
【数23】
【数24】
【数25】
【数26】
【数27】
であり、Lは、予め設定されたパラメータである、方法。
【請求項13】
前記ホイールロボットは、本体部分及びホイール脚部分を含み、前記ホイール脚部分及び前記本体部分は、倒立振子構造を呈し、前記ホイールロボットの身長は、前記ホイール脚部分により調整される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
ホイールロボットの運動状態を制御する制御装置であって、
初期運動状態にあるように前記ホイールロボットを制御する制御モジュールを含み、前記初期運動状態は、前記ホイールロボットが第1の期間にある場合の運動状態であり、
前記制御モジュールは、さらに、前記初期運動状態から静止立位状態に切り替えるように前記ホイールロボットを制御し、前記ホイールロボットは、第2の期間にバランス誤差に基づいて調整し続けることにより、前記静止立位状態にあ
前記バランス誤差は、前記ホイールロボットの実際の重心点と、前記ホイールロボットの予測重心点又は標定重心点との間の誤差である、ホイールロボットの運動状態を制御する制御装置。
【請求項15】
前記ホイールロボットの基礎データ及び運動状態データを取得する取得モジュールであって、前記基礎データは、前記ホイールロボットの構造的特徴を示し、前記運動状態データは、前記ホイールロボットの運動特徴を示す取得モジュールと、
前記基礎データ及び前記運動状態データに基づいて、前記ホイールロボットの状態行列を決定する決定モジュールであって、前記状態行列は、前記ホイールロボットの干渉パラメータに関連し、前記干渉パラメータは、前記ホイールロボットのバランス誤差に対応する決定モジュールと、をさらに含み、
前記決定モジュールは、さらに、前記状態行列に基づいて、前記ホイールロボットを制御するモーメントを決定し、
前記制御モジュールは、さらに、前記モーメントで、静止立位状態にあるように前記ホイールロボットを制御する、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記決定モジュールは、さらに、前記基礎データに基づいて、オブザーバを決定し、前記運動状態データ及び前記干渉パラメータに基づいて、前記オブザーバにより前記状態行列を決定する、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記決定モジュールは、さらに、前記基礎データに基づいて、前記オブザーバにおける行列パラメータを決定し、前記行列パラメータに基づいて、前記状態行列を決定する前記オブザーバを取得する、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記決定モジュールは、さらに、前記オブザーバにより、状態行列を推定し、推定された状態行列に基づいて、反復値の推定値を決定し、前記運動状態データに基づいて、前記反復値の実際値を決定し、前記推定値と前記実際値との差を取得し、前記オブザーバにより、前記差に基づいて、前記推定された状態行列を更新して、前記状態行列を取得する、請求項16に記載の装置。
【請求項19】
前記決定モジュールは、さらに、前記ホイールロボットの前記状態行列の形式に基づいて、前記オブザーバの形式を決定し、前記運動状態データの内容に基づいて、前記オブザーバにおける前記反復値の形式を決定する、請求項18に記載の装置。
【請求項20】
前記オブザーバの形式は、
【数28】
であり、式中、
【数29】
は、前記オブザーバによって推定された前記状態行列であり、uは、制御モーメントであり、Lは、予め設定されたパラメータであり、
【数30】
は、前記反復値の実際値であり、
【数31】
は、前記反復値の推定値であり、
【数32】

【数33】
は、前記基礎データに基づいて決定されたパラメータ行列である、請求項18に記載の装置。
【請求項21】
ホイールロボットの運動状態を制御する制御装置であって、
初期運動状態にあるように前記ホイールロボットを制御する制御モジュールを含み、前記初期運動状態は、前記ホイールロボットが第1の期間にある場合の運動状態であり、
前記制御モジュールは、さらに、前記初期運動状態から静止立位状態に切り替えるように前記ホイールロボットを制御し、前記ホイールロボットは、第2の期間にバランス誤差に基づいて調整し続けることにより、前記静止立位状態にある、ホイールロボットの運動状態を制御し、
前記ホイールロボットの基礎データ及び運動状態データを取得する取得モジュールであって、前記基礎データは、前記ホイールロボットの構造的特徴を示し、前記運動状態データは、前記ホイールロボットの運動特徴を示す取得モジュールと、
前記基礎データ及び前記運動状態データに基づいて、前記ホイールロボットの状態行列を決定する決定モジュールであって、前記状態行列は、前記ホイールロボットの干渉パラメータに関連し、前記干渉パラメータは、前記ホイールロボットのバランス誤差に対応する決定モジュールと、をさらに含み、
前記決定モジュールは、さらに、前記状態行列に基づいて、前記ホイールロボットを制御するモーメントを決定し、
前記制御モジュールは、さらに、前記モーメントで、静止立位状態にあるように前記ホイールロボットを制御し、
前記決定モジュールは、さらに、前記基礎データに基づいて、オブザーバを決定し、前記運動状態データ及び前記干渉パラメータに基づいて、前記オブザーバにより前記状態行列を決定し、
前記決定モジュールは、さらに、前記オブザーバにより、状態行列を推定し、推定された状態行列に基づいて、反復値の推定値を決定し、前記運動状態データに基づいて、前記反復値の実際値を決定し、前記推定値と前記実際値との差を取得し、前記オブザーバにより、前記差に基づいて、前記推定された状態行列を更新して、前記状態行列を取得し、
前記オブザーバの形式は、
【数34】
であり、式中、
【数35】
は、前記オブザーバによって推定された前記状態行列であり、uは、制御モーメントであ
り、Lは、予め設定されたパラメータであり、
【数36】
は、前記反復値の実際値であり、
【数37】
は、前記反復値の推定値であり、
【数38】

【数39】
は、前記基礎データに基づいて決定されたパラメータ行列であり、
【数40】
【数41】
であり、
式中、
【数42】
【数43】
【数44】
であり、mは、前記ホイールロボットにおける本体部分の重量であり、Mは、前記ホイールロボットにおけるホイールの重量であり、lは、前記ホイールロボットの身長である、装置。
【請求項22】
前記決定モジュールは、さらに、前記ホイールロボットの前記基礎データ又は前記運動状態データが変化した後、前記基礎データ及び前記運動状態データに基づいて、前記ホイールロボットの状態行列を決定して、変化後の状態行列を決定する、請求項18に記載の装置。
【請求項23】
前記決定モジュールは、さらに、前記ホイールロボットを制御する入力行列を決定し、前記入力行列は、前記ホイールロボットの基礎データに基づいて決定された行列であり、前記入力行列と前記状態行列との積を、前記ホイールロボットを制御するモーメントとして決定する、請求項15に記載の装置。
【請求項24】
前記決定モジュールは、さらに、前記ホイールロボットのピッチ角速度及び線速度がゼロに近い場合、制御モーメントと前記状態行列との等式関係を決定し、前記等式関係に基づいて、前記入力行列を決定する、請求項23に記載の装置。
【請求項25】
ホイールロボットの運動状態を制御する制御装置であって、
初期運動状態にあるように前記ホイールロボットを制御する制御モジュールを含み、前記初期運動状態は、前記ホイールロボットが第1の期間にある場合の運動状態であり、
前記制御モジュールは、さらに、前記初期運動状態から静止立位状態に切り替えるように前記ホイールロボットを制御し、前記ホイールロボットは、第2の期間にバランス誤差に基づいて調整し続けることにより、前記静止立位状態にある、ホイールロボットの運動状態を制御し、
前記ホイールロボットの基礎データ及び運動状態データを取得する取得モジュールであって、前記基礎データは、前記ホイールロボットの構造的特徴を示し、前記運動状態データは、前記ホイールロボットの運動特徴を示す取得モジュールと、
前記基礎データ及び前記運動状態データに基づいて、前記ホイールロボットの状態行列を決定する決定モジュールであって、前記状態行列は、前記ホイールロボットの干渉パラメータに関連し、前記干渉パラメータは、前記ホイールロボットのバランス誤差に対応する決定モジュールと、をさらに含み、
前記決定モジュールは、さらに、前記状態行列に基づいて、前記ホイールロボットを制御するモーメントを決定し、
前記制御モジュールは、さらに、前記モーメントで、静止立位状態にあるように前記ホイールロボットを制御し、
前記決定モジュールは、さらに、前記ホイールロボットを制御する入力行列を決定し、前記入力行列は、前記ホイールロボットの基礎データに基づいて決定された行列であり、前記入力行列と前記状態行列との積を、前記ホイールロボットを制御するモーメントとして決定し、
前記入力行列Kは、
【数45】
及び
【数46】
を満たし、
式中、
【数47】
【数48】
【数49】
であり、
mは、前記ホイールロボットにおける本体部分の重量であり、Mは、前記ホイールロボットにおけるホイールの重量であり、lは、前記ホイールロボットの身長であり、
【数50】
【数51】
【数52】
【数53】
【数54】
であり、Lは、予め設定されたパラメータである、装置。
【請求項26】
前記ホイールロボットは、本体部分及びホイール脚部分を含み、前記ホイール脚部分及び前記本体部分は、倒立振子構造を呈し、前記ホイールロボットの身長は、前記ホイール脚部分により調整される、請求項14~25のいずれか一項に記載の装置。
【請求項27】
プロセッサ及びメモリを含み、前記メモリには、少なくとも1つのプログラムが記憶され、前記少なくとも1つのプログラムは、前記プロセッサによりロードされて実行されることにより、請求項1~13のいずれか一項に記載の運動状態の制御方法を実現する、ホイールロボット。
【請求項28】
コンピュータに、請求項1~13のいずれか一項に記載の運動状態の制御方法を実施させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2021年1月14日に提出された、出願番号が「202110049662.8」号で、発明の名称が「運動状態の制御方法、装置、デバイス及び読み取り可能な記憶媒体」である中国特許出願の優先権を主張するものであり、その全ての内容は、参照により本願に組み込まれるものとする。
【0002】
本願の実施例は、ロボット制御の分野に関し、特に運動状態の制御方法、装置、デバイス及び読み取り可能な記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0003】
ホイールロボットとは、ホイール構造によりロボット本体に対して運動制御を行うロボット構造であり、ホイールロボットと地面との接触点は、ホイールと地面との接触点のみを含むため、ホイール構造の配置が安定しない場合、バランス制御の問題がある。関連技術において、一般的には、従来の線形化モデルを用いて制御する。
【0004】
しかしながら、関連技術において、実際のホイールロボットと、理想化されたモデルとの間に物理的な区別があることを考慮していない。取り付けのミス又はモデル近似誤差のため、実際の平衡点と、理想的なモデルにおける平衡点との間に乖離がある可能性があり、バランス制御に必要なホイール回転モーメントに誤差があることを招く。したがって、上記方式によりホイールロボットのバランスを安定して制御することができず、安定性が低いという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願の実施例によれば、ホイールロボットに対する制御安定性及び精度を向上させることができる運動状態の制御方法、装置、デバイス及び読み取り可能な記憶媒体が提供される。前記技術的手段は、以下のとおりである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様では、ホイールロボットが実行する運動状態の制御方法であって、
初期運動状態にあるように前記ホイールロボットを制御するステップであって、前記初期運動状態は、前記ホイールロボットが第1の期間にある場合の運動状態であるステップと、
前記初期運動状態から静止立位状態に切り替えるように前記ホイールロボットを制御するステップであって、前記ホイールロボットは、第2の期間にバランス誤差に基づいて調整し続けることにより、前記静止立位状態にあるステップと、を含む、運動状態の制御方法が提供される。
【0007】
他の態様では、ホイールロボットの運動状態を制御する制御装置であって、
初期運動状態にあるように前記ホイールロボットを制御する制御モジュールを含み、前記初期運動状態は、前記ホイールロボットが第1の期間にある場合の運動状態であり、
前記制御モジュールは、さらに、前記初期運動状態から静止立位状態に切り替えるように前記ホイールロボットを制御し、前記ホイールロボットは、第2の期間にバランス誤差に基づいて調整し続けることにより、前記静止立位状態にある、ホイールロボットの運動状態を制御する制御装置が提供される。
【0008】
他の態様では、プロセッサ及びメモリを含み、前記メモリには、少なくとも1つのプログラムが記憶され、前記少なくとも1つのプログラムは、前記プロセッサによりロードされて実行されることにより、上記本願の実施例のいずれか一項に記載の運動状態の制御方法を実現する、ホイールロボットが提供される。
【0009】
他の態様では、少なくとも1つの命令、少なくとも1つのプログラム、コードセット又は命令セットが記憶され、前記少なくとも1つの命令、前記少なくとも1つのプログラム、前記コードセット又は命令セットは、プロセッサによりロードされて実行されることにより、上記本願の実施例のいずれか一項に記載の運動状態の制御方法を実現する、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体が提供される。
【0010】
他の態様では、コンピュータ命令を含み、該コンピュータ命令は、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶される、コンピュータプログラム製品又はコンピュータプログラムが提供される。コンピュータデバイスのプロセッサは、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体から該コンピュータ命令を読み取り、プロセッサは、該コンピュータ命令を実行して、該コンピュータデバイスに上記実施例のいずれか一項に記載の運動状態の制御方法を実行させる。
【発明の効果】
【0011】
本願の実施例に係る技術的手段による有益な効果は、少なくとも、ホイールロボットを制御するモーメントを決定する前に、まず、ロボットのバランス誤差を表現する状態行列を決定することにより、状態行列に基づいてホイールロボットを制御するモーメントを決定し、該モーメントでホイールロボットのホイールを制御し、それにより静止立位状態にあるようにホイールロボットを制御し、バランス誤差があるホイールロボットに対する制御精度を向上させることを含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本願の1つの例示的な実施例に係るホイールロボットの概略構造図である。
図2】本願の1つの例示的な実施例に係るホイールロボットの異なる高さでの状態の概略図である。
図3】本願の1つの例示的な実施例に係る運動状態の制御方法のフローチャートである。
図4】本願の別の例示的な実施例に係る運動状態の制御方法のフローチャートである。
図5】本願の1つの例示的な実施例に係る実験時のホイールロボットの状態の概略図である。
図6】本願の1つの例示的な実施例に係る時間-ピッチ角の測定状態と観測値とを比較するグラフである。
図7】本願の1つの例示的な実施例に係る時間-ピッチ角速度の推定値と実際値とを比較するグラフである。
図8】本願の1つの例示的な実施例に係る時間-変位の推定値と実際値とを比較するグラフである。
図9】本願の1つの例示的な実施例に係る時間-線速度の推定値と実際値とを比較するグラフである。
図10】本願の1つの例示的な実施例に係る時間-ピッチ角誤差値のグラフである。
図11】本願の1つの例示的な実施例に係る運動状態の制御装置の構成ブロック図である。
図12】本願の1つの例示的な実施例に係る端末の構成ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
まず、本願の実施例に係る名詞を説明する。
【0014】
ホイールロボットとは、ホイール構造によりロボット本体に対して運動制御を行うロボット構造であり、ホイールロボットと地面との接触点は、ホイールと地面との接触点のみを含むため、ホイール構造の配置が安定しない場合、バランス制御の問題がある。いくつかの実施例において、ホイールロボットは、ホイール脚式ロボット、又は固定ホイールを含むロボットをさらに含み、ホイール脚式ロボットとは、ホイールがホイール脚に固定され、ホイール脚が屈伸してホイールロボットの高さを調整できるロボット構造を指し、固定ホイールを含むロボットとは、ホイールがロボット本体の指定位置に固定され、ロボットの高さを調整できないロボット構造を指し、本実施例において、ホイール脚式ロボットを例として説明する。
【0015】
オブザーバとは、数学ツールであり、反復更新の方式により、推定された反復値と実際の反復値との誤差に基づいて、自らが推定した目標数学的関係を修正し、最終的に正確な目標数学的関係を取得することができる。動力学分野において、物理量を観測することにより、オブザーバが推定した動力学的関係を反復更新し、最終的に、相対的に正確な動力学的関係を決定する。
【0016】
本願の本実施例において、ホイールロボットが二足ホイールロボットとして実現されることを例として説明し、すなわち、該二足ホイールロボットは、2つの移動用のホイールを含み、2つのホイールは、それぞれ脚部構造に接続され、脚部構造を介してロボット本体に接続されることで、2つのホイールにより、運動制御を完了するようにロボット本体を駆動する。なお、本願に係るホイールロボットは、上記構造に限定されない。ホイールロボットは、ホイール構造を含む任意のロボットとして理解されるべきである。
【0017】
概略的には、図1は、本願の1つの例示的な実施例に係るホイールロボットの概略構造図である。図1に示すように、該ホイールロボット100は、本体部分110及びホイール脚部分120を含み、
本体部分110は、ホイール脚部分120に接続され、ホイール脚部分120は、2つのホイール121及び脚部構造122を含み、脚部構造122は、ホイール121と本体部分110を接続するためのものであり、図1に示すように、該ホイールロボット100は、4つの脚部構造122を含み、該4つの脚部構造122のうちの2つの脚部構造122は、それぞれ1つのホイール121に接続される。概略的には、脚部構造A、脚部構造B、脚部構造C及び脚部構造Dがあると、脚部構造Aと脚部構造Bは、第1のホイールに接続され、脚部構造Cと脚部構造Dは、第2のホイールに接続される。脚部構造A、脚部構造B、及び第1のホイールと脚部構造C、脚部構造D、及び第2のホイールは、ホイールロボットの両脚平面並列構造を構成する。並列型脚は、5つの回転関節を有し、それぞれ横方向及び垂直方向に2つの並進自由度を有する。直列構造に比べて、該並列構造は、構造がコンパクトで、剛性が高く、負荷能力が高いという特徴を有する。したがって、ロボットは、より高くジャンプし、障害物を柔軟に回避することができる。
【0018】
好ましくは、脚部構造122は、下腿部1221及び上腿部1222を含み、下腿部1221と上腿部1222との間が回転関節により接続され、下腿部1221とホイール121との間も回転関節により接続される。
【0019】
本体部分110には、それぞれ4つの脚部構造122に対応して4組のモータが設けられ、各脚部構造122は、1組のモータに対応し、該4組のモータは、脚部構造122の曲げ伸ばしを制御し、いくつかの実施例において、脚部構造122と本体部分110との接続部分は、回転関節により接続され、概略的には、図1に示すように、モータが回転関節を時計回りに回転させる場合、曲げになるように脚部構造122を制御し、モータが回転関節を反時計回りに回転させる場合、伸ばしになるように脚部構造122を制御する。(2組の脚部構造122が回転関節により駆動される方式は、同じであっても異なってもよい)。すなわち、正反時計回りの回転方式と曲げ伸ばし制御モードとの関係は、同じであっても異なってもよい。
【0020】
脚部構造122の曲げ伸ばし(すなわち、下腿部1221と上腿部1222との間の相対的な位置関係)は、ホイールロボット100の高さを制御することができ、すなわち、脚部構造122が曲げになる場合、ホイールロボット100の高さが低くなり、脚部構造122が伸ばしになる場合、ホイールロボット100の高さが高くなる。概略的には、図2に示すように、図1は、脚部構造122の曲げ程度が大きい状況を示し、該状況で、ホイールロボット100の高さが低く、図2において、脚部構造122の曲げ程度が図1の脚部構造122より小さく、該曲げ程度では、ホイールロボット100の高さが高く、図1図2の異なる高さでは、ホイールロボットのバランス能力が異なるため、2つの高さでのバランス制御モーメントも異なる。
【0021】
ホイール121は、駆動輪であり、すなわち、ホイール121は、モータにより駆動された後に主動回転することができ、それによりホイールロボット100の運動状態に対する制御を実現し、例えば、前進するようにホイールロボットを制御し、後進するようにホイールロボットを制御し、旋回するようにホイールロボットを制御するか、又は静止立位にあるようにホイールロボットを制御する。
【0022】
ホイールロボット100における本体部分110及びホイール脚部分120の構造に基づいて、該ホイールロボット100を台車倒立振子の構造に近似することができる。ホイールロボット100の身長は、倒立振子構造における振り子の長さに対応する。
【0023】
該ホイールロボット100の重量は、主に、本体部分110及びホイール121に集中している。本体部分110の重量要素は、主に、脚部構造122を駆動する4台のモータ、マイクロコンピュータ、回路基板、モータ、電池などを含む。
【0024】
ホイールロボット100の動力学モデルは、以下の式1により表すことができる。
【0025】
式1:
【数1】
【数2】
式中、mは、ホイールロボットの車体である本体部分の重量を指し、Mは、ホイールロボットのホイールの重量を指し、lは、ホイールロボットの現在の身長、すなわち、現在の脚部構造でのホイールロボットの高さである。xは、ホイールの回転距離を示し、
【数3】
は、ホイールの回転線速度を示し、
【数4】
は、回転線加速度を示す。
【数5】
は、ホイールロボットの傾斜角を示し、
【数6】
は、ホイールロボットの傾斜角速度を示し、
【数7】
は、ホイールロボットの傾斜角加速度を示す。本実施例において、傾斜角
【数8】
がホイールロボットのピッチ角であることを例として説明する。uは、ホイールロボットに与えられた付勢力を示し、uとホイールに与えられたモーメントとの間に対応関係がある。
【0026】
地面とホイール構造との間に1つの接触点(すなわち、ホイールと地面との間の接触点)のみがあるため、複数のホイール構造の配置が安定しない場合、ホイールロボットは、バランス制御の問題がある。ロボットの重量分布が変化するため、平衡点は、一般的に、近似モデルによって予測された位置ではなく、したがって、バランス制御の正確な基準位置を提供しにくい。この場合、出力調整は、未知の干渉の下でシステムの出力を所望の状態に調整することができる。本願の実施例において、ホイールロボットのバランス制御効果を向上させることができる出力調整コントローラを提供する。
【0027】
本願の実施例において、まず、初期運動状態にあるようにホイールロボットを制御し、初期運動状態は、ホイールロボットが第1の期間にある場合の運動状態であり、それにより、初期運動状態から静止立位状態に切り替えるようにホイールロボットを制御し、ホイールロボットは、第2の期間にバランス誤差に基づいて調整し続けることにより、静止立位状態にある。
【0028】
いくつかの実施例において、初期運動状態は、地面に斜めに静立する状態、等速運動状態、加速運動状態、ジャンプ状態などの状態のうちの少なくとも1つを含む。第1の期間は、第2の期間よりも時系列的に前である。
【0029】
いくつかの実施例において、受信された制御命令に基づいて、第2の期間の開始時刻に、静止立位状態に切り替えるようにホイールロボットを制御するか、又は、経路計画データに基づいて、第2の期間の開始時刻に達する場合に、静止立位状態に切り替えるようにホイールロボットを制御し、本実施例は、これを限定しない。
【0030】
初期運動状態から静止立位状態に切り替えるようにホイールロボットを制御する場合、ホイールロボットの基礎データ及び運動状態データに基づいて制御し、図3は、本願の1つの実施例に係る運動状態の制御方法のフローチャートであり、該方法は、ホイールロボットのマイクロプロセッサで実現することができる。図3に示すように、上記第2の期間に、初期運動状態から静止立位状態に切り替えるようにホイールロボットを制御する前記ステップは、以下のステップ301~ステップ304を含む。
【0031】
ステップ301では、ホイールロボットの基礎データ及び運動状態データを取得し、基礎データは、ホイールロボットの構造的特徴を示し、運動状態データは、ホイールロボットの運動特徴を示す。
【0032】
好ましくは、ホイールロボットの基礎データ、及びホイールロボットのリアルタイム運動状態データを取得する。
【0033】
基礎データは、該ホイールロボットの構造的特徴を示し、構造的特徴は、ロボットの複数の部分の物理値を含む。図1の二足ホイールロボット100を例として、構造的特徴は、前脚部構造で示される身長、本体部分の重量、ホイールの重量、ホイールの半径、及び2つのホイールの間の距離などを含む。構造的特徴は、各部分間の連動構造を含んでもよい。例えば、図1の二足ホイールロボット100を例として、時計回りに回転するようにホイールを制御することにより、右へ移動するようにホイールロボットを制御する場合、本体部分及び脚部構造は、連動方式によりホイールに対して左へ移動し、この連動構造も基礎データに表現されてもよい。本願は、基礎データの具体的な形式又は内容を限定するものではない。
【0034】
いくつかの実施例において、ホイールロボットの基礎構造が部分的に固定されるため、一部の基礎データは、予め設定されてもよい。図1の二足ホイールロボット100を例として、例えば、本体部分の第1の重量データ、及びホイール脚部分におけるホイールの第2の重量データ、脚部構造のなす角度と身長との対応関係などは、予め設定される。いくつかの実施例において、一部の基礎データは、計算して得られてもよい。図1の二足ホイールロボット100を例として、基礎データにおける身長は、脚部構造のなす角度に基づいて、対応関係に応じて計算して得られ、脚部構造のなす角度は、脚部構造における下腿部と上腿部とのなす角度を指す。
【0035】
運動状態データは、ホイールロボットの運動特徴を示し、傾斜角、傾斜角速度、ホイール回転距離(すなわち、ホイールロボットの移動距離)、ホイール回転線速度などのようなホイールロボットの傾斜角データ及びホイールの回転データを含んでもよい。本願は、運動状態データの具体的な形式又は内容を限定するものではない。
【0036】
いくつかの実施例において、運動状態データは、ホイールロボットの運動状態に基づいて検出して取得する必要がある。例えば、センサにより、ホイールロボットの傾斜角データを収集して取得し、かつモータにより、ホイールに関連するデータを読み取ることができる。本願は、運動状態データを取得する具体的な方式を限定するものではない。
【0037】
ステップ302では、基礎データ及び運動状態データに基づいて、ホイールロボットの状態行列を決定し、該状態行列は、ホイールロボットの干渉パラメータに関連する。
【0038】
状態行列は、ホイールロボットの動力学方程式の表現形式であり、基礎データ及び運動状態データにより決定することができる。干渉パラメータは、ホイールロボットのバランス誤差に対応する。バランス誤差は、実際の重心点と、予測重心点又は標定重心点との間の誤差である。いくつかの場合、ホイールロボット自体の組立に誤差があるか、又は慣性測定ユニットの取付姿勢に誤差があるか、又は様々な原因により、実際の重心の位置は、設計された又は標定された重心位置と一致しないことを招く。したがって、本実施例は、干渉パラメータを表現する状態行列を予測することにより、ホイールロボットのバランスをよりよく制御することができる。当業者であれば、いくつかの実施例において、状態行列は、互いに連立した動力学連立方程式として表されることを理解されたい。
【0039】
いくつかの実施例において、基礎データ及び運動状態データに直接基づいて、実際の干渉パラメータの値を取得し、さらに基礎データ、運動状態データ、及び干渉パラメータに基づいて、状態行列を決定することができる。
【0040】
他の実施例において、基礎データと運動状態データを結合して、ホイールロボットの状態行列を決定し、かつ干渉パラメータを状態行列に内包して表現することができる。いくつかの実施例において、干渉パラメータは、運動状態データ及び基礎データに関連する。
【0041】
以下、図4を参照して例示的な具体的な実施形態を開示したが、本願は、該状態行列を決定する具体的な実施形態を限定するものではない。
【0042】
ステップ303では、該状態行列に基づいて、ホイールロボットを制御するモーメントを決定する。
【0043】
状態行列に基づいて、ホイールロボットを制御するモーメントを取得し、該モーメントは、静止立位状態にあるようにホイールロボットを制御することを目標として計算して得られたモーメントである。
【0044】
いくつかの実施例において、モーメントは、線形出力調整の計算方式に基づいて得られる。以下、図4を参照して例示的な具体的な実施形態を開示したが、本願は、制御モーメントを決定する具体的な方法を限定するものではない。
【0045】
ステップ304では、モーメントで静止立位状態にあるようにホイールロボットを制御する。
【0046】
いくつかの実施例において、計算して得られたモーメントをモータに伝送し、モータによりホイールロボットのホイールに対して電力制御を行って、該モーメントで回転するようにホイールを制御することにより、静止立位状態になるようにホイールロボットのホイール構造及びホイールロボットの本体部分を駆動する。本願は、モーメントを与える実現方式を限定せず、例えば、油圧による駆動方式も本願に含まれるとみなされるべきである。
【0047】
以上より、本願の実施例に係る運動状態の制御方法は、ホイールロボットを制御するモーメントを決定する前に、まず、ロボットのバランス誤差を表現する状態行列を決定することにより、状態行列に基づいてホイールロボットを制御するモーメントを決定し、該モーメントでホイールロボットのホイールを制御し、それにより静止立位状態にあるようにホイールロボットを制御し、バランス誤差があるホイールロボットに対する制御精度を向上させる。
【0048】
図4は、本願のいくつかの実施例に係る運動状態の制御方法のフローチャートであり、図4に示す実施例において、オブザーバにより干渉パラメータを表現する状態行列を推定することを例として説明し、該方法は、以下のステップ401~ステップ405を含む。
【0049】
ステップ401では、基礎データ及び運動状態データを取得し、基礎データは、ホイールロボットの構造的特徴を示し、運動状態データは、ホイールロボットの運動特徴を示す。
【0050】
このステップの実施形態は、上記ステップ301を参照して、ここでは説明を省略する。
【0051】
ステップ402では、基礎データに基づいて、オブザーバを決定する。
【0052】
オブザーバとは、物理量を観測することにより、オブザーバが推定した状態行列を反復更新し、最終的に状態行列を決定することができる式を指す。
【0053】
いくつかの実施例において、基礎データに基づいてオブザーバを決定する前に、まず、オブザーバの形式を設計する。オブザーバの形式は、ホイールロボットの状態行列の形式に基づいて決定されてもよい。
【0054】
以下、図1の二足ホイールロボット100を例として状態行列の形式を示し、他のホイールロボットの状態行列は、異なる形式を有する可能性があることを理解すべきであり、該二足ホイールロボット100の状態行列も、他の形式に近似するか又は他の形式で示される可能性があり、これらは、いずれも本願の開示範囲にある。
【0055】
いくつかの実施例において、基礎データに基づいて、オブザーバにおける行列パラメータを決定し、行列パラメータに基づいて、状態行列を決定するオブザーバを取得する。
【0056】
二足ホイールロボット100の運動学モデルの式1は、平衡点の近傍で、理想的に線形に近似することができ、以下の式2を参照する。
【0057】
式2:
【数9】
式中、
【数10】
であり、A及びBは、行列パラメータであり、
【数11】
【数12】
であり、gは、重力加速度を示す。
【0058】
いくつかの実施例において、ピッチ角の最大値は、数学的モデルに合わせる理想値である。しかしながら、上述した原因のため、他の実施例において、慣性測定ユニットにより測定された
【数13】
は、実際値からずれる。したがって、二足ホイールロボットのバランス誤差、すなわち、干渉パラメータを考慮すると、測定されたピッチ角を補正することができる。
【0059】
式3:
【数14】
式中、
【数15】
は、ピッチ角の補正値を示し、
【数16】
は、測定された又は理論的なピッチ角を示し、dは、本願の実施例における干渉パラメータを示し、定数である。
【0060】
該式3に基づいて、上記二足ホイールロボットの状態行列の式2は、以下の式4に変換することができる。
【0061】
式4:
【数17】
式中、
【数18】
は、動力学システムの状態を示し、uは、与えられたモーメントである動力学システムの入力であり、
【数19】
であり、かつ
【数20】
【数21】
である。
【0062】
いくつかの実施例において、オブザーバにおける反復値の選択は、物理量の意味に基づいて決定される。反復値の実際値は、測定により決定されるか、又は測定された物理量に基づいて計算して決定されてもよい。したがって、反復値の形式の選択は、測定可能な物理量に依存し、或いは、反復値の形式の選択は、運動状態データの形式又は内容に依存し、概略的には、運動状態データの内容に基づいて、オブザーバにおける反復値の形式を決定する。いくつかの実施例において、該オブザーバは、ホイールロボットの傾斜角、傾斜角速度、ホイール回転距離、ホイール回転線速度などの物理量から反復値を選択することができる。
【0063】
例えば、オブザーバにおける反復量
【数22】
を以下のように定義することができる。
【0064】
式5:
【数23】
式中、
【数24】
であり、すなわち、この行列により、上記
【数25】
における第1の項及び第3の項を選択する。
【0065】
当然のことながら、本願は、反復値の具体的な選択を限定せず、例えば、いくつかの実施例において、反復値として
【数26】
及び
【数27】
を選択してもよく、すなわち、上記
【数28】
における第2の項及び第4の項を選択する。
【0066】
以下、二足ホイールロボット100を例として、オブザーバの形式を説明する。なお、異なる形式を有する状態行列に対して、オブザーバは、様々な実施形態が可能である。本発明は、オブザーバの形式の具体的な選択を限定するものではない。
【0067】
いくつかの実施例において、式4における状態行列に対して、オブザーバは、以下の形式を用いることができる。
【0068】
式6:
【数29】
式中、オブザーバが推定した状態行列は、以下のとおりである。
【数30】
【数31】
【数32】
【0069】
当業者によって理解されるように、式6形式のオブザーバは、式4形式の状態行列を観測することができる。
【0070】
オブザーバにおける行列パラメータ
【数33】
及び
【数34】
は、M、m、l、gなどの基礎データに基づいて決定することができ、行列パラメータ数
【数35】
は、既知である。
【数36】
は、反復値の実際値であり、
【数37】
は、反復値の推定値である。Lは、予め設定されたパラメータであってもよく、オブザーバが反復値の実際値と推定値の差に基づいて、反復更新を行う程度を示す。
【0071】
これにより、本実施例は、基礎データに基づいて、オブザーバをどのように決定するかを例示的に開示する。
【0072】
ステップ403では、運動状態データに基づいて、オブザーバにより状態行列を決定する。
【0073】
運動状態データに基づいて、オブザーバにより干渉パラメータを含む状態行列を決定する。いくつかの実施例において、オブザーバが推定した状態行列を、観測された運動状態データに基づいて反復更新し、最終的に状態行列を決定して取得する。
【0074】
いくつかの実施例において、まず、オブザーバにより状態行列を推定し、それにより、オブザーバが推定した状態行列に基づいて、反復値の推定値を決定し、運動状態データに基づいて、反復値の実際値を決定し、反復値の推定値と実際値との差を取得し、オブザーバにより、差に基づいて、推定された状態行列を更新する。いくつかの実施例において、この過程を複数回繰り返すことにより、オブザーバが推定した状態行列を反復更新し、状態行列に絶えず近似し、最終的に状態行列を決定する。状態行列の反復更新回数は、予め設定され、或いは、状態行列の反復更新回数は、反復値の推定値と実際値との差に基づいて決定される。いくつかの実施例において、二足ホイールロボットを例として、式6におけるオブザーバが推定した状態行列
【数38】
は、反復値の差
【数39】
に基づいて反復更新を行い、最終的に状態行列
【数40】
を決定し、
【数41】
は、推定された
【数42】
及び干渉パラメータ
【数43】
を含む。反復更新の方式が新たな状態行列に絶えず適応することができるため、この実施例は、運動中に干渉パラメータが変化する状態行列を決定することができる。例えば、二足ホイールロボットの高さが運動中に変化することにより、平衡点の変化及び状態行列の変化を引き起こしても、オブザーバは、依然として、状態変化後の運動状態データに基づいて、変化後の状態行列を調整して決定することができる。
【0075】
これにより、本実施例は、運動状態データに基づいて、オブザーバにより干渉パラメータを含む状態行列をどのように決定するかを例示的に開示する。
【0076】
ステップ404では、状態行列に基づいて、ホイールロボットを制御するモーメントを決定する。
【0077】
オブザーバで得られた状態行列に基づいて、ロボットに対して行われた制御操作を決定することができ、例えば、制御モーメントを与える。ホイールロボットの静止バランスを維持することを目標とする場合、システムの目標状態、すなわち、動力学システムの目標出力は、ゼロに近い
【数44】
及びゼロに近い
【数45】
である。システムの目標出力に基づいて、システムの入力を決定する。
【0078】
1つの実施例において、ホイールロボットを制御する入力行列を決定し、入力行列と状態行列との積を、ホイールロボットを制御するモーメントとして決定する。
【0079】
二足ホイールロボットを例として、入力行列
【数46】
及び1つの特定ベクトル
【数47】
が存在する場合のみに、
【数48】
及び
【数49】
をゼロにすることができる。式中、
【数50】

【数51】
は、入力行列における要素であり、
【数52】
は、ゲイン行列であり、
【数53】
は、ゲイン係数である。概略的には、以下の式7及び式8に基づいて、計算して入力行列Kを計算して得られる。
【0080】
式7:
【数54】
式8:
【数55】
式中、
【数56】
である。
【0081】
式7及び式8を連立して連立方程式とすることにより、入力行列Kを計算して得られる。
【0082】
入力行列Kと上記状態行列
【数57】
との積をモーメントuとしてモータに入力する。
【0083】
これにより、実施例を用いて、状態行列に基づいてホイールロボットを制御するモーメントを決定する方法を開示したが、本願は、ホイールロボットを制御するモーメントを具体的に決定する具体的な方法を限定するものではない。
【0084】
ステップ405では、モーメントで静止立位状態にあるようにホイールロボットを制御する。
【0085】
いくつかの実施例において、モーメントに基づいてホイールロボットのホイールを制御することにより、ホイールロボットを静止立位状態に安定させる。本願は、モーメントで静止立位状態にあるようにホイールロボットを制御する具体的な実施方法を限定しない。
【0086】
以上より、本願の実施例に係る運動状態の制御方法は、ホイールロボットを制御するモーメントを決定する前に、まず、オブザーバにより現在の状態でのホイールロボットの状態行列を決定し、該状態行列にバランス誤差(干渉パラメータ)が含まれ、それにより該状態パラメータに基づいてホイールロボットを制御するモーメントを決定し、かつ該モーメントでホイールロボットのホイールを制御し、それにより静止立位状態にあるようにホイールロボットを制御し、バランス誤差があるホイールロボットに対する制御精度を向上させる。
【0087】
概略的には、本願は、二足ホイールロボット100の実施例に適用され、線形出力調整によりホイールロボットを制御し、かつ実験により線形出力調整の安定性及び性能を検証する。まず、パラメータを以下の表1にまとめる。
【0088】
【表1】
なお、2行目のRobot/IPCは、二足ホイールロボット100の基礎データを示し、例えば、mは、本体部分の重量である11kgであり、Mは、ホイールの重量である3kgであり、gは、重力加速度である9.81m/sであり、lは、身長であり、0.37メートル~0.7メートルの間で調整でき(すなわち、異なる使用角度で、本体部分のモータから地面までの距離である)、rは、ホイールの半径を示し、dは、2つのホイールの間の距離を示す。
【0089】
3行目のOutput regulationは、本願の実施例において得られた線形出力調整方法で用いられるパラメータを示し、入力行列におけるゲイン行列k、ゲインパラメータk及び行列Lを含むが、これらに限定されない。
【0090】
上記パラメータに基づいて、慣性測定ユニット(Inertial Measurement Unit、IMU)によりピッチ角
【数58】
及びロール角
【数59】
とピッチ角
【数60】
及びロール角
【数61】
の速度を測定する。それとともに、モータエンコーダにより右ホイールの角速度
【数62】
及び左ホイールの角速度
【数63】
を読み取る。そして、二足ホイールロボット100のx方向の直線速度
【数64】
及びヨー速度
【数65】
を計算して得られる。以下の式9で示されている。
【0091】
式9:
【数66】
【数67】
バランス力uに基づいて、二足ホイールロボット100を制御する場合、式
【数68】
によりモーメントに変換し、
【数69】
は、左右2つのモータの平均モーメントである。他方では、平均モーメント
【数70】
とヨーモーメント
【数71】
を加算して、左モータに与えられたモーメントとなり、平均モーメント
【数72】
とヨーモーメント
【数73】
を減算して、右モータに与えられたモーメントとなり、これにより、二足ホイールロボット100を回転させ、
【数74】
は、1つのリモートコントローラによって与えられた相対ヨー速度である。ヨーモーメントの和は、x方向の総モーメントを変更しないため、ロボットのバランスを破壊しない。
【0092】
実験では、型番がPICO-WHU4の中央処理装置(Central Processing Unit、CPU)を使用し、その処理周期は、
【数75】
であり、それにより
【数76】
で、xを計算し、かつオブザーバを離散化する。式中、
【数77】
は、k時刻の距離を示し、
【数78】
は、k-1時刻の距離を示し、
【数79】
は、k-1時刻の速度を示す。
【0093】
概略的には、立位状態にあるように二足ホイールロボット100を制御する実験結果を例として、本願の実施例に係る線形出力調整方法を説明する。
【0094】
図5に示すように、実験時の二足ホイールロボット520の状態を示し、すなわち、高さが変化しない場合に、立位状態にあるように二足ホイールロボット520を制御する。
【0095】
いくつかの実施例において、オブザーバに基づく線形出力調整を用いることにより、ロボットが最小高さの姿勢で静止するように保持する。図6図10に示すように、オブザーバが推定した物理量と実際の観測値とを比較する。
【0096】
図6は、時間を横座標とし、オブザーバによるピッチ角の推定値と、ピッチ角の実際値を比較するグラフである。図6に示すように、二足ホイールロボット520の状態調整の過程において、ピッチ角のオブザーバ推定値は、曲線620で示され、ピッチ角の実際値は、曲線630で示される。二足ホイールロボット520が最終のバランスに達する場合、ピッチ角の値は、曲線610で示される。
【0097】
図7は、時間を横座標とし、オブザーバによるピッチ角速度の推定値と、ピッチ角速度の実際値を比較するグラフである。図7に示すように、二足ホイールロボット520の状態調整の過程において、ピッチ角速度のオブザーバ推定値は、曲線710で示され、ピッチ角速度の実際値は、曲線720で示される。
【0098】
図8は、時間を横座標とし、オブザーバによる変位の推定値と、変位の実際値を比較するグラフである。図8に示すように、二足ホイールロボット520の状態調整の過程において、変位のオブザーバ推定値は、曲線810で示され、変位の実際値は、曲線820で示される。
【0099】
図9は、時間を横座標とし、オブザーバによる線速度の推定値と、実際値を比較するグラフである。図9に示すように、二足ホイールロボット520の状態調整の過程において、線速度のオブザーバ推定値は、曲線910で示され、線速度の実際値は、曲線920で示される。
【0100】
図10は、時間を横座標とし、オブザーバによるピッチ角速度の推定値と、ピッチ角速度の実際値との差の変化のグラフである。図10に示すように、二足ホイールロボット520の状態調整の過程において、差の変化は、曲線1010で示される。
【0101】
図6図10から分かるように、実際の平衡点が未知である場合、推定された状態行列は、徐々に実際の状態行列に近似し、二足ホイールロボット520は、成功裏に静止バランス状態に達する。バランス状態で、推定された状態行列と実際の状態行列は、依然として一定の区別があり、これは、ホイールと敷物との間の摩擦のためである。しかしながら、図10から分かるように、上記線形出力調整は、バランス状態に達した後、依然として、実際値に近似するように推定値を調整する。
【0102】
以上より、本願の実施例に係る運動状態の制御方法は、ホイールロボットを制御するモーメントを決定する前に、まず、ホイールロボットの状態行列を決定し、該状態行列は、ホイールロボットの干渉パラメータを表現することにより、該状態行列に基づいてホイールロボットを制御するモーメントを決定し、かつ該モーメントでホイールロボットのホイールを制御し、それにより静止立位状態にあるようにホイールロボットを制御し、ホイールロボットに対する制御精度を向上させる。
【0103】
図11は、本願の1つの例示的な実施例に係る運動状態の制御装置の構成ブロック図であり、図11に示すように、該装置は、
ステップ301及びステップ401における実施例を実行する取得モジュール1110と、
ステップ302、ステップ303、ステップ402、ステップ403及びステップ404における実施例を実行する決定モジュール1120と、
ステップ303及びステップ405における実施例を実行する制御モジュール1130と、を含む。
【0104】
以上より、本願の実施例に係る運動状態の制御方法は、ホイールロボットを制御するモーメントを決定する前に、まず、ホイールロボットの状態行列を決定し、該状態行列は、ホイールロボットの干渉パラメータを表現することにより、該状態行列に基づいてホイールロボットを制御するモーメントを決定し、かつ該モーメントでホイールロボットのホイールを制御し、それにより静止立位状態にあるようにホイールロボットを制御し、ホイールロボットに対する制御精度を向上させる。
【0105】
なお、上記実施例に係る運動状態の制御装置は、上記各機能モジュールの分割のみを例に挙げて説明したが、実際の応用において、必要に応じて上記機能を異なる機能モジュールに割り当てて完了させることができ、つまり、デバイスの内部構造を異なる機能モジュールに分割することにより、以上で説明された機能の全部又は一部を完了することができる。また、上記実施例に係る運動状態の制御装置は、運動状態の制御方法の実施例と同じ構想に属し、その具体的な実現プロセスについては、方法の実施例を参照でき、ここでは繰り返して説明しない。
【0106】
図12は、本願の1つの例示的な実施例に係る電子デバイス1200の構成ブロック図を示す。該電子デバイス1200は、携帯型移動端末、例えば、スマートフォン、タブレットコンピュータ、MP3プレーヤー(Moving Picture Experts Group Audio Layer III、動画エキスパート圧縮標準オーディオレイヤ3)、MP4(Moving Picture Experts Group Audio Layer IV、動画エキスパート圧縮標準オーディオレイヤ4)プレーヤー、ノートパソコン又はデスクトップパソコンであってもよい。電子デバイス1200は、ユーザデバイス、携帯端末、ラップトップ端末、デスクトップ端末などの他の名称とも称されうる。本願の実施例において、該電子デバイス1200は、ホイールロボットにおける制御デバイスの部分として実装される。
【0107】
一般的に、電子デバイス1200は、プロセッサ1201及びメモリ1202を含む。
【0108】
プロセッサ1201は、4コアプロセッサ、8コアプロセッサなどのような1つ又は複数の処理コアを含んでもよい。プロセッサ1201は、DSP(Digital Signal Processing、デジタル信号プロセッサ)、FPGA(Field-Programmable Gate Array、フィールドプログラマブルゲートアレイ)、PLA(Programmable Logic Array、プログラマブルロジックアレイ)のうちの少なくとも1つのハードウェア形式で実現することができる。プロセッサ1201は、メインプロセッサ及びコプロセッサを含んでもよく、メインプロセッサは、アクティブ状態でデータを処理するプロセッサであり、CPU(Central Processing Unit、中央処理装置)とも呼ばれ、コプロセッサは、待機状態でデータを処理する低電力プロセッサである。いくつかの実施例において、プロセッサ1201は、GPU(Graphics Processing Unit、画像プロセッサ)と統合されてもよく、GPUは、表示画面に表示される必要があるコンテンツをレンダリングし、描画する。いくつかの実施例において、プロセッサ1201は、さらに、AI(Artificial Intelligence、人工知能)プロセッサを含んでもよく、該AIプロセッサは、機械学習に関連する計算操作を処理する。
【0109】
メモリ1202は、1つ又は複数のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体を含んでもよく、該コンピュータ読み取り可能な記憶媒体は、非一時的であってもよい。メモリ1202は、さらに、高速ランダムアクセスメモリ、及び不揮発性メモリ、例えば、1つ又は複数の磁気ディスク記憶デバイス、フラッシュメモリ記憶デバイスを含んでもよい。いくつかの実施例において、メモリ1202内の非一時的なコンピュータ読み取り可能な記憶媒体は、少なくとも1つの命令を記憶し、該少なくとも1つの命令は、プロセッサ1201によって実行されることにより、本願の方法の実施例に係る運動状態の制御方法を実現する。
【0110】
いくつかの実施例において、電子デバイス1200は、好ましくは、他の部品をさらに含んでもよい。当業者が理解できるように、図12に示す構造は、電子デバイス1200を限定するものではなく、図示より多いか又は少ない部品を含んでもよく、ある部品を組み合わせてもよく、異なる部品配置を有してもよい。
【0111】
本願の実施例によれば、プロセッサ及びメモリを含み、該メモリには、少なくとも1つの命令、少なくとも1つのプログラム、コードセット又は命令セットが記憶され、少なくとも1つの命令、少なくとも1つのプログラム、コードセット又は命令セットは、プロセッサによりロードされて実行されることにより、上記各方法の実施例に記載の運動状態の制御方法を実現する、ホイールロボットがさらに提供される。
【0112】
本願の実施例によれば、少なくとも1つの命令、少なくとも1つのプログラム、コードセット又は命令セットが記憶され、少なくとも1つの命令、少なくとも1つのプログラム、コードセット又は命令セットは、プロセッサによりロードされて実行されることにより、上記各方法の実施例に記載の運動状態の制御方法を実現する、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体がさらに提供される。
【0113】
本願の実施例によれば、コンピュータ命令を含み、該コンピュータ命令は、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶される、コンピュータプログラム製品又はコンピュータプログラムがさらに提供される。コンピュータデバイスのプロセッサは、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体から該コンピュータ命令を読み取り、プロセッサは、該コンピュータ命令を実行して、該コンピュータデバイスに上記実施例のいずれか一項に記載の運動状態の制御方法を実行させる。
【符号の説明】
【0114】
100 ホイールロボット
110 本体部分
120 ホイール脚部分
121 ホイール
122 脚部構造
1221 下腿部
1222 上腿部
520 二足ホイールロボット
1110 取得モジュール
1120 決定モジュール
1130 制御モジュール
1200 電子デバイス
1201 プロセッサ
1202 メモリ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12