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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】工作機械
(51)【国際特許分類】
   B23Q 1/00 20060101AFI20240710BHJP
   B23Q 1/01 20060101ALI20240710BHJP
   F16M 1/00 20060101ALI20240710BHJP
【FI】
B23Q1/00 S
B23Q1/01 G
F16M1/00 R
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2023546588
(86)(22)【出願日】2021-09-07
(86)【国際出願番号】 JP2021032813
(87)【国際公開番号】W WO2023037402
(87)【国際公開日】2023-03-16
【審査請求日】2024-02-14
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100185719
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 悠樹
(72)【発明者】
【氏名】木村 有紀
(72)【発明者】
【氏名】日永 健斗
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第108481007(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 1/00-1/01;
F16M 7/00,11/00-11/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械であって、
ベッドと、
前記ベッドに対して移動可能に支持されている第1,第2の移動体と、
前記ベッドを支持するための第1~第4のジャッキとを備え、
前記第1の移動体の重心の移動範囲は、前記工作機械の上面視において、前記第1~第4のジャッキの内の3つのジャッキを頂点とする第1の三角形の内側に収まっており、
前記第2の移動体の重心の移動範囲は、前記工作機械の上面視において、前記第1~第4のジャッキの内の3つのジャッキを頂点とする第2の三角形の内側に収まっており、
前記第1の三角形を構成する3つのジャッキの組み合わせと、前記第2の三角形を構成する3つのジャッキの組み合わせとは、互いに異な
前記第1~第4のジャッキを頂点とする四角形は、凸四角形であり、
前記第1の三角形と前記第2の三角形とは、前記凸四角形の対角線を共通な辺として有する、工作機械。
【請求項2】
前記工作機械は、さらに、第1のリブを備え、
前記第1のリブの両端は、前記第1~第4のジャッキの内で第1の対角に位置している各ジャッキに繋がっている、請求項1に記載の工作機械。
【請求項3】
前記工作機械は、さらに、第2のリブを備え、
前記第2のリブの両端は、前記第1~第4のジャッキの内で第2の対角に位置している各ジャッキに繋がっており、
前記第1の対角および前記第2の対角は、互いに異なる対角である、請求項2に記載の工作機械。
【請求項4】
前記第1の移動体は、工具を回転するための工具主軸を含み、
前記第2の移動体は、複数の工具を保持するための刃物台を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の工作機械。
【請求項5】
前記工作機械は、さらに、前記ベッドに対して移動可能に支持されている第3の移動体を備え、
前記第3の移動体の重心の移動範囲は、前記工作機械の上面視において前記第2の三角形の内側に収まっている、請求項1~4のいずれか1項に記載の工作機械。
【請求項6】
前記第3の移動体は、ワークを回転するためのワーク主軸を含む、請求項5に記載の工作機械。
【請求項7】
前記工作機械は、さらに、
前記第1の移動体を移動するための第1の駆動部と、
前記工作機械を制御するための制御部とを備え、
前記制御部は、工具がワークを加工している最中において前記第1の移動体の重心の移動範囲が前記第1の三角形の内側に収まるように、前記第1の駆動部を制御する処理を実行する、請求項1~6のいずれか1項に記載の工作機械。
【請求項8】
前記工作機械は、さらに、前記第2の移動体を移動するための第2の駆動部を備え、
前記制御部は、さらに、工具がワークを加工している最中において前記第2の移動体の重心の移動範囲が前記第2の三角形の内側に収まるように、前記第2の駆動部を制御する処理を実行する、請求項7に記載の工作機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ベッド上に移動体が設けられている工作機械に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2020-075298号公報(特許文献1)は、ベッドを備えた工作機械を開示している。当該ベッドは、3個以上の支持装置により支持されている。各支持装置は、上下方向に移動可能に構成されている。各支持装置の位置は、ベッドの基準面が水平となるように調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-075298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
工作機械のベッド上には、主軸などの移動体が設けられている。移動体がベッド上で移動すると、各支持装置にかかる重さが変化する。これにより、ベッドのたわみが微少に変化する。この変化は、ワークの加工精度に影響を与える。したがって、ベッドをより安定させるための技術が望まれている。なお、特許文献1は、当該技術を開示するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一例では、工作機械は、ベッドと、上記ベッドに対して移動可能に支持されている第1,第2の移動体と、上記ベッドを支持するための第1~第4のジャッキとを備える。上記第1の移動体の重心の移動範囲は、上記工作機械の上面視において、上記第1~第4のジャッキの内の3つのジャッキを頂点とする第1の三角形の内側に収まっている。上記第2の移動体の重心の移動範囲は、上記工作機械の上面視において、上記第1~第4のジャッキの内の3つのジャッキを頂点とする第2の三角形の内側に収まっている。上記第1の三角形を構成する3つのジャッキの組み合わせと、上記第2の三角形を構成する3つのジャッキの組み合わせとは、互いに異なる。
【0006】
本開示の一例では、上記工作機械は、さらに、第1のリブを備える。上記第1のリブの両端は、上記第1~第4のジャッキの内で第1の対角に位置している各ジャッキに繋がっている。
【0007】
本開示の一例では、上記工作機械は、さらに、第2のリブを備える。上記第2のリブの両端は、上記第1~第4のジャッキの内で第2の対角に位置している各ジャッキに繋がっている。上記第1の対角および上記第2の対角は、互いに異なる対角である。
【0008】
本開示の一例では、上記第1の移動体は、工具を回転するための工具主軸を含む。上記第2の移動体は、複数の工具を保持するための刃物台を含む。
【0009】
本開示の一例では、上記工作機械は、さらに、上記ベッドに対して移動可能に支持されている第3の移動体を備える。上記第3の移動体の重心の移動範囲は、上記工作機械の上面視において上記第2の三角形の内側に収まっている。
【0010】
本開示の一例では、上記第3の移動体は、ワークを回転するためのワーク主軸を含む。
【0011】
本開示の一例では、上記工作機械は、さらに、上記第1の移動体を移動するための第1の駆動部と、上記工作機械を制御するための制御部とを備える。上記制御部は、工具がワークを加工している最中において上記第1の移動体の重心の移動範囲が上記第1の三角形の内側に収まるように、上記第1の駆動部を制御する処理を実行する。
【0012】
本開示の一例では、上記工作機械は、さらに、上記第2の移動体を移動するための第2の駆動部を備える。上記制御部は、さらに、工具がワークを加工している最中において上記第2の移動体の重心の移動範囲が上記第2の三角形の内側に収まるように、上記第2の駆動部を制御する処理を実行する。
【0013】
本発明の上記および他の目的、特徴、局面および利点は、添付の図面と関連して理解される本発明に関する次の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】工作機械の外観を示す図である。
図2】工作機械の内部に備えられる加工機本体を示す図である。
図3図2に示されるベッドの下面を示す図である。
図4】移動体の移動範囲の一例を示す図である。
図5】移動体の移動範囲の一例を示す図である。
図6】工作機械の駆動機構の一例を示す図である。
図7】CNC(Computer Numerical Control)ユニットのハードウェア構成の一例を示す図である。
図8】各移動体の移動範囲を制限する処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ、本発明に従う各実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品および構成要素には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、これらについての詳細な説明は繰り返さない。なお、以下で説明される各実施の形態および各変形例は、適宜選択的に組み合わされてもよい。
【0016】
<A.工作機械100>
まず、図1を参照して、実施の形態に従う工作機械100について説明する。図1は、工作機械100の外観を示す図である。
【0017】
本明細書でいう「工作機械」とは、ワークを加工する機能を備えた種々の装置を包含する概念である。本明細書では、工作機械100の一例として、ターニングセンタの加工機能とマシニングセンタの加工機能とを備えた複合加工機を例に挙げて説明を行うが、工作機械100は、これに限定されない。たとえば、工作機械100は、横形または縦形のマシニングセンタであってもよい。あるいは、工作機械100は、ターニングセンタであってもよい。あるいは、工作機械100は、付加加工機であってもよい。あるいは、工作機械100は、その他の切削機械や研削機械であってもよい。
【0018】
図1に示される工作機械100は、回転するワークに工具を接触させてワークの加工を行なう旋削機能と、ワークに回転する工具を接触させてワークの加工を行なうミーリング機能とが備わった複合加工機である。
【0019】
工作機械100は、加工エリアAR1と、工具エリアAR2とを有する。加工エリアAR1および工具エリアAR2は、それぞれカバーによって区画化されている。加工エリアAR1には、工具主軸12が設けられている。工具エリアAR2には、ATC(Automatic Tool Changer)160と、マガジン170とが設けられている。マガジン170は、ワークの加工に用いられる種々の工具を収納する。マガジン170に収納されている工具は、加工エリアAR1と工具エリアAR2との間の仕切に設けられているドアDを介して工具主軸12に取り付けられる。ドアDは、スライド式のドアであり、モータなどの駆動源により開閉される。
【0020】
<B.工作機械100の内部構成>
次に、図2を参照して、工作機械100の内部構成の一例について説明する。図2は、工作機械100の内部に備えられる加工機本体を示す図である。
【0021】
説明の便宜のために、以下では、重力方向(鉛直方向)をX方向とも称する。また、水平面上の一方向をY方向とも称する。また、X方向およびY方向の両方に直交する方向をZ方向とも称する。Z方向は、水平面上の一方向である。
【0022】
工作機械100は、ベッド5を有する。ベッド5は、工作機械100に備えられる各種部品を支持するためのベース部材であり、工場などの床面に設置されている。ベッド5は、鋳鉄などの金属から形成されている。
【0023】
ベッド5上には、様々な移動体が設けられている。本明細書でいう「工作機械」とは、ベッド5上を移動可能に構成される種々のユニットを含む概念である。移動体は、たとえば、工具を回転するための工具主軸と、複数の工具を保持可能に構成される刃物台と、ワークを回転するためのワーク主軸と、当該ワーク主軸の反対側からワークを回転可能に支持する対向ワーク主軸との少なくとも1つを含む。
【0024】
図2の例では、移動体10,20,30がベッド5上に設けられている。移動体10,20,30の各々は、ベッド5上に移動可能に設けられている。なお、図2には、3つの移動体10,20,30が設けられている例が示されているが、ベッド5上に設けられる移動体の数は、2つであってもよいし、4つ以上であってもよい。
【0025】
移動体10は、たとえば、コラム11と、工具主軸12とを含む。コラム11は、ベッド5上に設けられており、工具主軸12を支持する。工具主軸12は、ワークを切削するための工具を保持可能なように構成されている。工具主軸12は、たとえば、X~Z方向の各方向に移動可能に構成される。
【0026】
移動体10は、Z方向における工具主軸12の駆動機構としてガイドG1Zを含む。ガイドG1Zは、たとえば、2本のレールで構成され、Z方向における工具主軸12の案内面として機能する。各レールは、Z方向に対して平行に設けられている。各レールの間には、ボールネジB1Zが設けられている。ボールネジB1Zは、ガイドG1Zに対して平行に設けられている。また、ボールネジB1Zには、後述のモータ112Z(図6参照)が接続されている。モータ112Zは、ボールネジB1Zを駆動することで、Z方向の任意の位置に工具主軸12を移動する。
【0027】
ガイドG1Z上には、ガイドG1Yが設けられている。ガイドG1Yは、たとえば、2本のレールで構成され、Y方向における工具主軸12の案内面として機能する。各レールは、Y方向に対して平行に設けられている。各レールの間には、ボールネジ(図示しない)が設けられている。当該ボールネジは、ガイドG1Yに対して平行に設けられている。また、当該ボールネジには、後述のモータ112Y(図6参照)が接続されている。モータ112Yは、当該ボールネジを駆動することで、Y方向の任意の位置に工具主軸12を移動する。
【0028】
コラム11の内部には、ガイドG1Xが設けられている。ガイドG1Xは、たとえば、2本のレールで構成され、X方向における工具主軸12の案内面として機能する。各レールは、X方向に対して平行に設けられている。各レールの間には、ボールネジB1Xが設けられている。ボールネジB1Xは、ガイドG1Xに対して平行に設けられている。また、ボールネジB1Xには、後述のモータ112X(図6参照)が接続されている。モータ112Xは、ボールネジB1Xを駆動することで、X方向の任意の位置に工具主軸12を移動する。
【0029】
また、工具主軸12には、後述のモータ112B(図6参照)が接続されている。モータ112Bは、Y方向を回転中心として工具主軸12を旋回する。
【0030】
また、工具主軸12には、後述のモータ112C(図6参照)が接続されている。モータ112Cは、工具主軸12の軸方向を回転中心として工具主軸12を回転する。
【0031】
移動体20は、たとえば、刃物台21を含む。刃物台21は、ワークを切削する工具を保持可能なように構成されている。刃物台21は、タレット22を有する。タレット22は、Z方向を中心に旋回可能に設けられている。
【0032】
タレット22は、複数の工具を装着可能に構成される。各工具は、Z方向を中心とした周方向に間隔を隔ててタレット22に保持されている。タレット22がZ方向を中心に旋回することによって、各工具は周方向に移動する。
【0033】
移動体20は、Z方向における刃物台21の駆動機構としてガイドG2Zを含む。ガイドG2Zは、たとえば、2本のレールで構成され、Z方向における刃物台21の案内面として機能する。各レールは、Z方向に対して平行に設けられている。各レールの間には、ボールネジB2Zが設けられている。ボールネジB2Zは、Z方向に対して平行に設けられている。また、ボールネジB2Zには、後述のモータ122Z(図6参照)が接続されている。モータ122Zは、ボールネジB2Zを駆動することで、Z方向の任意の位置に刃物台21を移動する。
【0034】
ガイドG2Z上には、ガイドG2XYが設けられている。図2の例では、ガイドG2ZがY方向に対して傾斜しているため、ガイドG2Z上に設けられているガイドG2XYもY方向に対して傾斜している。ガイドG2XYは、たとえば、2本のレールで構成され、ガイドG2XYの傾斜方向における刃物台21の案内面として機能する。各レールは、平行に設けられている。各レールの間には、ボールネジ(図示しない)が設けられている。当該ボールネジは、ガイドG2XYに対して平行に設けられている。また、当該ボールネジには、後述のモータ122XY(図6参照)が接続されている。モータ122XYは、当該ボールネジを駆動することで、ガイドG2XYの傾斜方向の任意の位置に刃物台21を移動する。
【0035】
移動体30は、たとえば、ワーク主軸31と、対向ワーク主軸36とを含む。ワーク主軸31および対向ワーク主軸36は、ワークを保持可能なように構成されている。ワーク主軸31および対向ワーク主軸36は、Z方向において、互いに対向して設けられている。ワーク主軸31および対向ワーク主軸36は、主に、固定工具を用いた旋削加工時にワークを回転させるために設けられている。
【0036】
ワーク主軸31は、ベッド5上に固定されており、Z方向に平行な軸を中心に回転可能なように設けられている。対向ワーク主軸36は、Z方向に平行な軸を中心に回転可能なように設けられている。
【0037】
対向ワーク主軸36は、ガイドG2Zに沿って移動可能に構成される。図2の例では、ガイドG2Zは、刃物台21と対向ワーク主軸36とで共用されているが、刃物台21および対向ワーク主軸36のそれぞれにガイドが設けられてもよい。
【0038】
ガイドG2Zは、たとえば、Z方向における対向ワーク主軸36の案内面として機能する。ガイドG2Zを構成する各レールの間には、ボールネジB3Zが設けられている。ボールネジB3Zは、Z方向に対して平行に設けられている。また、ボールネジB3Zには、後述のモータ132Z(図6参照)が接続されている。モータ132Zは、ボールネジB3Zを駆動することで、Z方向の任意の位置に対向ワーク主軸36を移動する。
【0039】
<C.ベッド5の支持機構>
次に、図3を参照して、ベッド5の支持機構について説明する。図3は、図2に示されるベッド5の下面を示す図である。
【0040】
ベッド5は、4つ以上の支持機構で支持される。図3には、支持機構の例として、ジャッキJ1~J4が示されている。以下では、ジャッキJ1~J4の各々を特に区別しない場合には、ジャッキJ1~J4をジャッキJと総称する。
【0041】
ジャッキJは、ベッド5の高さを調整するための機構である。ジャッキJは、機械式のジャッキであってもよいし、油圧作動式のジャッキであってもよいし、空気作動式のジャッキであってもよい。
【0042】
ジャッキJ1~J4は、ベッド5の下面の四隅に設けられている。作業者は、ジャッキJ1~J4の各々の高さを手動で調整することで、ベッド5の傾きを微調整することができる。
【0043】
ジャッキJ1~J4の内の対角に位置しているジャッキ同士は、ベッド5の剛性を高めるためにリブR1,R2が接続されている。リブR1,R2は、ベッド5のたわみを抑制するための補強材である。
【0044】
図3の例では、リブR1の両端は、ジャッキJ1~J4の内で第1の対角に位置しているジャッキJ1,J3に繋がっている。すなわち、リブR1の一端はジャッキJ1に繋がっており、リブR1の他端はジャッキJ3に繋がっている。これにより、ベッド5の剛性が高まり、ベッド5をより安定させることができる。
【0045】
また、リブR2の両端は、ジャッキJ1~J4の内で第2の対角に位置しているジャッキJ2,J4に繋がっている。すなわち、リブR2の一端はジャッキJ2に繋がっており、リブR2の他端はジャッキJ4に繋がっている。これにより、ベッド5の剛性がさらに高まり、ベッド5をより安定させることができる。
【0046】
なお、対角に位置しているジャッキ同士だけでなく、隣接しているジャッキ同士がリブで繋がれてよい。一例として、ジャッキJ1,J2がリブで繋がれてもよい。あるいは、ジャッキJ2,J3がリブで繋がれてもよい。あるいは、ジャッキJ3,J4がリブで繋がれてもよい。あるいは、ジャッキJ1,J4がリブで繋がれてもよい。
【0047】
また、ベッド5の裏面に設けられるジャッキの数は、4つに限定されない。5つ以上のジャッキがベッド5の裏面に設けられてもよい。5つ以上のジャッキが設けられる場合、ジャッキJ1~J4は、全ジャッキの内で最も外側にある4つのジャッキであり、ジャッキJ1~J4以外の他のジャッキは、補助的にベッド5を支持する。このとき、メインのジャッキJ1~J4にかかる加重は、補助的なジャッキにかかる加重よりも重い。
【0048】
<D.移動体の移動範囲>
次に、図4を参照して、上述の移動体10,20の移動範囲について説明する。図4は、移動体10,20の移動範囲の一例を示す図である。
【0049】
移動体10の重心G1の移動範囲RG1は、工作機械100の上面視において、ジャッキJ1~J4の内の3つのジャッキを頂点とする三角形T1の内側に収まっている。また、移動体30の重心G2の移動範囲RG2は、工作機械100の上面視において、ジャッキJ1~J4の内の3つのジャッキを頂点とする三角形T2の内側に収まっている。なお、図4の例では、三角形T1,T2が互いに重複していない例が示されているが、三角形T1,T2の一方の一部は、他方に重複していてもよい。
【0050】
ここで、工作機械100の上面視とは、工作機械100の各種部品(たとえば、各移動体、各ジャッキ、ベッドなど)を重力方向から水平面に投影することを意味する。
【0051】
三角形T1,T2のそれぞれを構成する3つのジャッキの組み合わせは、互いに異なればよい。すなわち、任意の組み合わせの3つのジャッキを頂点として三角形T1,T2が構成される。
【0052】
一例として、三角形T1は、ジャッキJ1,J2,J4を頂点とする。三角形T2は、たとえば、ジャッキJ2,J3,J4を頂点とする。
【0053】
より具体的には、三角形T1は、ジャッキJ1内の代表点V1と、ジャッキJ2内の代表点V2と、ジャッキJ4内の代表点V4とを頂点とする。三角形T2は、ジャッキJ2内の代表点V2と、ジャッキJ3内の代表点V3と、ジャッキJ4内の代表点V4とを頂点とする。
【0054】
代表点V1は、ジャッキJ1の重心点であってもよいし、上面視におけるジャッキJ1の中心点であってもよいし、ジャッキJ1の内側のその他の点であってもよい。代表点V2は、ジャッキJ2の重心点であってもよいし、上面視におけるジャッキJ2の中心点であってもよいし、ジャッキJ2の内側のその他の点であってもよい。代表点V3は、ジャッキJ3の重心点であってもよいし、上面視におけるジャッキJ3の中心点であってもよいし、ジャッキJ3の内側のその他の点であってもよい。代表点V4は、ジャッキJ4の重心点であってもよいし、上面視におけるジャッキJ4の中心点であってもよいし、ジャッキJ4の内側のその他の点であってもよい。
【0055】
仮に、移動体10の重心G1が三角形T1内から三角形T2内に移動する場合、移動体10を主に支持するジャッキの組み合わせが、ジャッキJ1,J2,J4からジャッキJ2,J3,J4に変化する。同様に、仮に、移動体30の重心G2が三角形T2内から三角形T1内に移動する場合、移動体10を主に支持するジャッキの組み合わせが、ジャッキJ2,J3,J4からジャッキJ1,J2,J4に変化する。その結果、ベッド5のたわみが微少に変化する。
【0056】
そこで、工作機械100は、移動体10(第1移動体)の重心G1の移動範囲RG1が工作機械100の上面視において三角形T1(第1三角形)の内側に収まるように、かつ移動体20(第2移動体)の重心G2の移動範囲RG2が工作機械100の上面視において三角形T2(第2三角形)の内側に収まるように構成される。これにより、移動体10,20の移動に起因するベッド5のたわみの変化が抑制され、ベッド5をより安定させることができる。結果として、ワークの加工精度が向上する。
【0057】
なお、移動体10の移動範囲RG1を三角形T1内に収める方法は特に限定されない。一例として、ジャッキJ1,J2,J4の位置が移動体10の移動範囲RG1に合わせて調整されてもよいし、移動体10の移動範囲RG1がジャッキJ1,J2,J4の位置に合わせて調整されてもよい。ある局面において、Y方向またはZ方向に係る移動体10のボールネジの長さがジャッキJ1,J2,J4の取り付け位置に合わせて設計上調整される。あるいは、Y方向またはZ方向に係る移動体10の移動範囲がジャッキJ1,J2,J4の取り付け位置に合わせてソフトウェアによって制限されてもよい。
【0058】
同様に、移動体20の移動範囲RG2を三角形T2内に収める方法は特に限定されない。一例として、ジャッキJ2,J3,J4の位置が移動体20の移動範囲RG2に合わせて調整されてもよいし、移動体20の移動範囲RG2がジャッキJ2,J3,J4の位置に合わせて調整されてもよい。ある局面において、Y方向またはZ方向に係る移動体20のボールネジの長さがジャッキJ2,J3,J4の取り付け位置に合わせて設計上調整される。あるいは、Y方向またはZ方向に係る移動体20の移動範囲がジャッキJ2,J3,J4の取り付け位置に合わせてソフトウェアによって制限されてもよい。
【0059】
また、移動体10,20の種類は、ベッド5上を移動する部材であれば特に限定されない。一例として、移動体10は、工具を回転するための上述の工具主軸12(図2参照)を含む。移動体20は、複数の工具を保持するための上述の刃物台21(図2参照)を含む。
【0060】
また、図4の例では、移動体10がY方向およびZ方向のそれぞれに駆動されている例が示されているが、移動体10は、Y方向およびZ方向のいずれかにのみ駆動されてもよい。すなわち、移動体10の移動範囲RG1は、二次元である必要はなく、一次元であってもよい。
【0061】
同様に、図4の例では、移動体20がY方向およびZ方向のそれぞれに駆動されている例が示されているが、移動体20は、Y方向およびZ方向のいずれかにのみ駆動されてもよい。すなわち、移動体20の移動範囲RG2は、二次元である必要はなく、一次元であってもよい。
【0062】
<E.変形例>
上述の図4では、移動体10,20の移動範囲RG1,RG2がベッド5の上面視において三角形T1,T2内に収められている例について説明を行ったが、移動範囲が三角形T1,T2内に収められる移動体は、移動体10,20に限定されない。三角形T1内に収められる移動体の数は2つ以上であってもよいし、三角形T2内に収められる移動体の数は2つ以上であってもよい。
【0063】
図5は、移動体10,20,30の移動範囲の一例を示す図である。図5の例では、移動体20の重心G2の移動範囲RG2だけでなく、移動体30の重心G3の移動範囲RG3が三角形T2の内側に収められている。このように、工作機械100は、移動体30(第3移動体)の重心G3の移動範囲RG3が工作機械100の上面視において三角形T2(第2三角形)の内側に収まるように構成されている。これにより、移動体10,20,30の移動に起因するベッド5のたわみの変化が抑制され、ベッド5をより安定させることができる。
【0064】
なお、移動体30の移動範囲RG3を三角形T2内に収める方法は特に限定されない。一例として、ジャッキJ2,J3,J4の位置が移動体30の移動範囲RG3に合わせて調整されてもよいし、移動体30の移動範囲RG3がジャッキJ2,J3,J4の位置に合わせて調整されてもよい。ある局面において、Y方向またはZ方向に係る移動体30のボールネジの長さがジャッキJ2,J3,J4の取り付け位置に合わせて設計上調整される。あるいは、Y方向またはZ方向に係る移動体30の移動範囲がジャッキJ2,J3,J4の取り付け位置に合わせてソフトウェアによって制限されてもよい。
【0065】
また、移動体30の種類は、ベッド5上を移動する部材であれば特に限定されない。一例として、移動体30は、ワークを回転するための上述のワーク主軸31(図2参照)を含む。
【0066】
また、図5の例では、移動体30がZ方向に駆動されている例が示されているが、移動体30は、二方向以上に駆動されてもよい。すなわち、移動体30の重心G3の移動範囲RG3は、一次元である必要はなく、二次元であってもよい。
【0067】
<F.工作機械100の駆動機構>
次に、図6を参照して、工作機械100の各種構成について説明する。図6は、工作機械100の駆動機構の一例を示す図である。
【0068】
図6に示されるように、工作機械100は、移動体10,20,30と、制御部50と、駆動部110,120,130とを含む。
【0069】
移動体10は、たとえば、工具主軸12を含む。移動体20は、たとえば、刃物台21を含む。移動体30は、たとえば、ワーク主軸31と、対向ワーク主軸36とを含む。
【0070】
制御部50は、工作機械100を制御するための装置である。制御部50の装置構成は、任意である。制御部50は、単体の制御ユニットで構成されてもよいし、複数の制御ユニットで構成されてもよい。一例として、制御部50は、PLC(Programmable Logic Controller)などのCPU(Central Processing Unit)ユニットや、CNCユニットなどで構成される。
【0071】
制御部50は、たとえば、予め設計されている加工プログラムに従って、駆動部110,120,130を駆動し、ワークを加工する。
【0072】
駆動部110(第1の駆動部)は、移動体10を移動するための駆動機構である。駆動部110の装置構成は、任意である。駆動部110は、単体の駆動ユニットで構成されてもよいし、複数の駆動ユニットで構成されてもよい。図6の例では、駆動部110は、モータドライバ111B,111C,111X,111Y,111Zと、モータ112B,112C,112X,112Y,112Zとで構成されている。
【0073】
モータドライバ111Bは、制御部50から目標回転速度の入力を逐次的に受け、モータ112Bを制御する。モータ112Bは、Y軸方向を中心として工具主軸12を回転駆動する。モータ112Bは、交流モータであってもよいし、ステッピングモータであってもよいし、サーボモータであってもよいし、その他の種類のモータであってもよい。
【0074】
モータ112Bがサーボモータである場合、モータドライバ111Bは、モータ112Bの回転角度を検知するためのエンコーダ(図示しない)のフィードバック信号からモータ112Bの実回転速度を算出する。そして、モータドライバ111Bは、算出した実回転速度が目標回転速度よりも小さい場合にはモータ112Bの回転速度を上げ、算出した実回転速度が目標回転速度よりも大きい場合にはモータ112Bの回転速度を下げる。このように、モータドライバ111Bは、モータ112Bの回転速度のフィードバックを逐次的に受けながらモータ112Bの回転速度を目標回転速度に近付ける。
【0075】
モータドライバ111Cは、制御部50から目標位置の入力を逐次的に受け、モータ112Cを制御する。モータ112Cは、工具主軸12の軸方向を回転中心として工具主軸12を回転駆動する。モータ112Cは、交流モータであってもよいし、ステッピングモータであってもよいし、サーボモータであってもよいし、その他の種類のモータであってもよい。モータドライバ111Cによるモータ112Cの制御方法は、モータドライバ111Bと同様であるので、その説明については繰り返さない。
【0076】
モータドライバ111Xは、制御部50から目標位置の入力を逐次的に受け、モータ112Xを制御する。モータ112Xは、上述のボールネジB1X(図2参照)を介して工具主軸12を送り駆動し、X方向の任意の位置に工具主軸12を移動する。モータ112Xは、交流モータであってもよいし、ステッピングモータであってもよいし、サーボモータであってもよいし、その他の種類のモータであってもよい。モータドライバ111Xによるモータ112Xの制御方法は、モータドライバ111Bと同様であるので、その説明については繰り返さない。
【0077】
モータドライバ111Yは、制御部50から目標位置の入力を逐次的に受け、モータ112Yを制御する。モータ112Yは、上述のボールネジB1Y(図2参照)を介して工具主軸12を送り駆動し、Y方向の任意の位置に工具主軸12を移動する。モータ112Yは、交流モータであってもよいし、ステッピングモータであってもよいし、サーボモータであってもよいし、その他の種類のモータであってもよい。モータドライバ111Yによるモータ112Yの制御方法は、モータドライバ111Bと同様であるので、その説明については繰り返さない。
【0078】
モータドライバ111Zは、制御部50から目標位置の入力を逐次的に受け、モータ112Zを制御する。モータ112Zは、上述のボールネジB1Z(図2参照)を介して工具主軸12を送り駆動し、Z方向の任意の位置に工具主軸12を移動する。モータ112Zは、交流モータであってもよいし、ステッピングモータであってもよいし、サーボモータであってもよいし、その他の種類のモータであってもよい。モータドライバ111Zによるモータ112Zの制御方法は、モータドライバ111Bと同様であるので、その説明については繰り返さない。
【0079】
駆動部120(第2の駆動部)は、移動体20を移動するための駆動機構である。駆動部120の装置構成は、任意である。駆動部120は、単体の駆動ユニットで構成されてもよいし、複数の駆動ユニットで構成されてもよい。図6の例では、駆動部120は、モータドライバ121C,121XY,121Zと、モータ122C,122XY,122Zとで構成されている。
【0080】
モータドライバ121Cは、制御部50から目標位置の入力を逐次的に受け、モータ122Cを制御する。モータ122Cは、Z方向を回転中心として刃物台21を旋回駆動する。モータ122Cは、交流モータであってもよいし、ステッピングモータであってもよいし、サーボモータであってもよいし、その他の種類のモータであってもよい。モータドライバ121Cによるモータ122Cの制御方法は、モータドライバ111Bと同様であるので、その説明については繰り返さない。
【0081】
モータドライバ121XYは、制御部50から目標位置の入力を逐次的に受け、モータ122XYを制御する。モータ122XYは、ボールネジ(図示しない)を介して刃物台21を送り駆動し、Y方向に対して傾斜している方向の任意の位置に刃物台21を移動する。モータ122XYは、交流モータであってもよいし、ステッピングモータであってもよいし、サーボモータであってもよいし、その他の種類のモータであってもよい。モータドライバ121XYによるモータ122XYの制御方法は、モータドライバ111Bと同様であるので、その説明については繰り返さない。
【0082】
モータドライバ121Zは、制御部50から目標位置の入力を逐次的に受け、モータ122Zを制御する。モータ122Zは、上述のボールネジB2Z(図2参照)を介して刃物台21を送り駆動し、Z方向の任意の位置に刃物台21を移動する。モータ122Zは、交流モータであってもよいし、ステッピングモータであってもよいし、サーボモータであってもよいし、その他の種類のモータであってもよい。モータドライバ121Zによるモータ122Zの制御方法は、モータドライバ111Bと同様であるので、その説明については繰り返さない。
【0083】
駆動部130(第3の駆動部)は、移動体30を移動するための駆動機構である。駆動部130の装置構成は、任意である。駆動部130は、単体の駆動ユニットで構成されてもよいし、複数の駆動ユニットで構成されてもよい。図6の例では、駆動部130は、モータドライバ131C,131Zと、モータ132C,132Zとで構成されている。
【0084】
モータドライバ131Cは、制御部50から目標位置の入力を逐次的に受け、モータ132Cを制御する。モータ132Cは、ワーク主軸31の軸方向(すなわち、Z方向)を回転中心としてワーク主軸31を回転駆動する。モータ132Cは、交流モータであってもよいし、ステッピングモータであってもよいし、サーボモータであってもよいし、その他の種類のモータであってもよい。モータドライバ131Cによるモータ132Cの制御方法は、モータドライバ111Bと同様であるので、その説明については繰り返さない。
【0085】
モータドライバ131Zは、制御部50から目標位置の入力を逐次的に受け、モータ132Zを制御する。モータ132Zは、上述のボールネジB3Z(図2参照)を介して対向ワーク主軸36を送り駆動し、Z方向の任意の位置に対向ワーク主軸36を移動する。モータ132Zは、交流モータであってもよいし、ステッピングモータであってもよいし、サーボモータであってもよいし、その他の種類のモータであってもよい。モータドライバ131Zによるモータ132Zの制御方法は、モータドライバ111Bと同様であるので、その説明については繰り返さない。
【0086】
<G.CNCユニット300のハードウェア構成>
次に、図7を参照して、図6に示される制御部50の一例であるCNCユニット300のハードウェア構成について説明する。図7は、CNCユニット300のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0087】
CNCユニット300は、制御回路301と、ROM302と、RAM303と、通信インターフェイス304と、補助記憶装置320とを含む。これらのコンポーネントは、内部バス309に接続される。
【0088】
制御回路301は、たとえば、少なくとも1つの集積回路によって構成される。集積回路は、たとえば、少なくとも1つのCPU、少なくとも1つのGPU(Graphics Processing Unit)、少なくとも1つのASIC(Application Specific Integrated Circuit)、少なくとも1つのFPGA(Field Programmable Gate Array)、またはそれらの組み合わせなどによって構成され得る。
【0089】
制御回路301は、制御プログラム322などの各種プログラムを実行することでCNCユニット300の動作を制御する。制御プログラム322は、たとえば、ワークの加工プログラムなどを含む。制御回路301は、制御プログラム322の実行命令を受け付けたことに基づいて、ROM302からRAM303に制御プログラム322を読み出す。RAM303は、ワーキングメモリとして機能し、制御プログラム322の実行に必要な各種データを一時的に格納する。
【0090】
通信インターフェイス304は、有線または無線で他の装置との通信を実現するためのインターフェイスである。一例として、CNCユニット300は、通信インターフェイス304を介して、ワークの加工を実現するための各種駆動ユニット(たとえば、上述の駆動部110,120,130など)と通信を行う。
【0091】
補助記憶装置320は、たとえば、ハードディスクやフラッシュメモリなどの記憶媒体である。補助記憶装置320は、制御プログラム322および制御パラメータ324などを格納する。制御パラメータ324は、制御プログラム322の実行時に制御回路301に参照されるパラメータである。制御プログラム322および制御パラメータ324の格納場所は、補助記憶装置320に限定されず、制御回路301の記憶領域(たとえば、キャッシュメモリ)、ROM302、RAM303、外部機器(たとえば、サーバー)などに格納されていてもよい。
【0092】
<H.フローチャート>
上述したように、ベッド5上の各移動体の移動範囲は、工作機械100の上面視において3つのジャッキを頂点とする三角形の内側に収められる。このとき、当該移動範囲は、ハードウェア的に制限されてもよいし、ソフトウェア的に制限されてもよい。
【0093】
以下では、図8を参照して、ベッド5上の各移動体の移動範囲をソフトウェア的に制限する処理について説明する。図8は、各移動体の移動範囲を制限する処理の流れを示すフローチャートである。
【0094】
図8に示される処理は、上述の制御プログラム322に規定されており、工作機械100の制御部50によって実行される。なお、図8に示される処理の一部または全部は、回路素子またはその他のハードウェアによって実行されてもよい。
【0095】
ステップS110において、制御部50は、ワークの加工が開始されたか否かを判断する。一例として、制御部50は、ワークの加工プログラムが実行されたことに基づいて、加工が開始されたと判断する。制御部50は、ワークの加工が開始されたと判断した場合(ステップS110においてYES)、制御をステップS112に切り替える。そうでない場合には(ステップS110においてNO)、制御部50は、ステップS110の処理を再び実行する。
【0096】
ステップS112において、制御部50は、工作機械100のベッド5上に設けられている各種移動体の移動範囲を制限する。
【0097】
一例として、制御部50は、工具がワークを加工している最中において移動体10の重心の移動範囲が上述の三角形T1の内側に収まるように、上述の駆動部110を制御する。制限後における移動体10の移動範囲は、たとえば、上述の制御パラメータ324などに予め規定されている。制御パラメータ324は、たとえば、水平方向(たとえば、Y方向およびZ方向)における移動体10の移動範囲の上下限値を含む。
【0098】
他の例として、制御部50は、工具がワークを加工している最中において移動体20の重心の移動範囲が上述の三角形T2の内側に収まるように、上述の駆動部120を制御する。制限後における移動体20の移動範囲は、たとえば、上述の制御パラメータ324などに予め規定されている。制御パラメータ324は、たとえば、水平方向(たとえば、Y方向およびZ方向)における移動体20の移動範囲の上下限値を含む。
【0099】
他の例として、制御部50は、工具がワークを加工している最中において移動体30の重心の移動範囲が上述の三角形T2の内側に収まるように、上述の駆動部130を制御する。制限後における移動体30の移動範囲は、たとえば、上述の制御パラメータ324などに予め規定されている。制御パラメータ324は、たとえば、水平方向(たとえば、Z方向)における移動体30の移動範囲の上下限値を含む。
【0100】
ステップS120において、制御部50は、ワークの加工が終了したか否かを判断する。一例として、制御部50は、加工プログラムの最終行の実行が完了したことに基づいて、ワークの加工が終了したと判断する。制御部50は、ワークの加工が終了したと判断した場合(ステップS120においてYES)、制御をステップS122に切り替える。そうでない場合には(ステップS120においてNO)、制御部50は、ステップS120の処理を再び実行する。
【0101】
ステップS122において、制御部50は、ステップS112において設定された各移動体の移動範囲の制限を解除する。その後、制御部50は、制御をステップS110に戻す。
【0102】
<I.まとめ>
以上のようにして、工作機械100は、移動体10の重心G1の移動範囲RG1が工作機械100の上面視において三角形T1の内側に収まるように構成され、移動体20の重心G2の移動範囲RG2が工作機械100の上面視において三角形T2の内側に収まるように構成される。これにより、移動体10,20の移動に起因するベッド5のたわみの変化が抑制され、ベッド5をより安定させることができる。結果として、ワークの加工精度が向上する。
【0103】
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0104】
5 ベッド、10 移動体、11 コラム、12 工具主軸、20 移動体、21 刃物台、22 タレット、30 移動体、31 ワーク主軸、36 対向ワーク主軸、50 制御部、100 工作機械、110 駆動部、111B モータドライバ、111C モータドライバ、111X モータドライバ、111Y モータドライバ、111Z モータドライバ、112B モータ、112C モータ、112X モータ、112Y モータ、112Z モータ、120 駆動部、121C モータドライバ、121XY モータドライバ、121Z モータドライバ、122C モータ、122XY モータ、122Z モータ、130 駆動部、131C モータドライバ、131Z モータドライバ、132C モータ、132Z モータ、170 マガジン、300 CNCユニット、301 制御回路、302 ROM、303 RAM、304 通信インターフェイス、309 内部バス、320 補助記憶装置、322 制御プログラム、324 制御パラメータ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8