(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-09
(45)【発行日】2024-07-18
(54)【発明の名称】ボイスコイル、及びボイスコイルの製造方法
(51)【国際特許分類】
H04R 9/04 20060101AFI20240710BHJP
H04R 31/00 20060101ALI20240710BHJP
【FI】
H04R9/04 103
H04R31/00 B
(21)【出願番号】P 2024033604
(22)【出願日】2024-03-06
【審査請求日】2024-05-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】598146850
【氏名又は名称】後藤電子 株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109634
【氏名又は名称】舛谷 威志
(74)【代理人】
【識別番号】100160831
【氏名又は名称】大谷 元
(72)【発明者】
【氏名】後藤芳英
(72)【発明者】
【氏名】後藤大樹
【審査官】▲徳▼田 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-312222(JP,A)
【文献】特公昭49-13019(JP,B1)
【文献】特開平04-183099(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 9/04
H04R 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルボビンと、
前記コイルボビンに巻かれたコイルと、
前記コイルボビンに取り付けられ、前記コイルの2つの端部のうちの一方とそれぞれ電気的に接続される2つの導電箔と、
前記2つの端部のそれぞれを、対応する導電箔の表面に沿って巻いた状態で前記導電箔に電気的に接続させつつ固定させる2つの固定接続部と、
を備えるボイスコイル。
【請求項2】
前記2つの端部はそれぞれ、前記対応する導電箔の表面に沿って1周以上、巻かれた状態で前記2つの固定接続部により固定されている、
請求項1に記載のボイスコイル。
【請求項3】
前記2つの端部はそれぞれ、前記コイルとして用いられる電線の非絶縁部分であり、
前記2つの固定接続部はそれぞれ、前記2つの端部のうちの一方、及び前記一方に続く前記電線の部分を含め固定している、
請求項1、または2に記載のボイスコイル。
【請求項4】
コイルボビンに巻かれたコイルの非絶縁化させた2つの端部のそれぞれを、前記コイルボビンに取り付けた対応する導電箔の表面に沿って巻いた状態にし、
前記巻いた状態にした前記2つの端部をそれぞれ、前記対応する導電箔に電気的に接続させつつ固定させる、
ボイスコイルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイスコイル、及びボイスコイルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スピーカ-ユニットでは、音の発生源としてボイスコイルが用いられるのが普通である。このボイスコイルは、コイルボビンと呼ばれる芯材の周りに絶縁された電線をコイルとして巻き、そのコイル(電線)の非絶縁化された端部をリード線、例えば錦糸線と電気的に接続させた構造である。端部とリード線とは、コイルボビンに銅箔等の導電箔を取り付け、その導電箔上でハンダ(半田)溶接等により、電気的に接続させるのが普通である(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
普通、電線の非絶縁化は、電線を絶縁化する皮膜を除去することで行われる。皮膜を除去した部分は、錆等が発生し易い。錆等の発生は、ボイスコイルの寿命を短くさせる。このことから、従来、皮膜を除去した部分が露出しないように、皮膜を精度良く除去することが行われている。しかし、皮膜を精度良く除去するには、長い時間が必要である。そのため、ボイスコイルの製造に要する時間(タクトタイム)が長く、それによって製造コストもより大きくなっている。このようなことから、品質を維持させ、ボイスコイルの寿命が短くなるようなことを抑えつつ、その製造コストもより抑えることも重要と思われる。
【0005】
本発明は、ボイスコイルの品質を維持させつつ、その製造コストもより抑えられるようにする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様のボイスコイルは、コイルボビンと、前記コイルボビンに巻かれたコイルと、前記コイルボビンに取り付けられ、前記コイルの2つの端部のうちの一方とそれぞれ電気的に接続される2つの導電箔と、前記2つの端部のそれぞれを、対応する導電箔の表面に沿って巻いた状態で前記導電箔に電気的に接続させつつ固定させる2つの固定接続部と、を備える。
【0007】
本開示の一態様のボイスコイルの製造方法は、コイルボビンに巻かれたコイルの非絶縁化させた2つの端部のそれぞれを、前記コイルボビンに取り付けた対応する導電箔の表面に沿って巻いた状態にし、前記巻いた状態にした前記2つの端部をそれぞれ、前記対応する導電箔に電気的に接続させつつ固定させる。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、ボイスコイルの品質を維持させつつ、その製造コストもより抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係るボイスコイルの製造途中の状態例を説明する図である。
【
図2】
図1に示すA部、B部の例を示す拡大図である。
【
図3】
図1に示すA部、B部の他の例を示す拡大図である。
【
図4】本発明の実施形態に係るボイスコイルの例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について、図を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施形態は、変形例を含めあくまでも一例であって、本発明の技術的範囲はこれに限られるものではない。本発明の技術的範囲には、様々な変形例も含まれる。
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係るボイスコイルの製造途中の状態例を説明する図である。
図1に例を示す正面図のように、このボイスコイルは、例えば中空の円柱状の形状をしたコイルボビン1の下方に、コイル2を巻き付けた構造である。コイルボビン1のコイル2より上方には、2つの導電箔3A、3Bがコイルボビン1に取り付けられている。
【0012】
コイル2は、例えば皮膜により絶縁化された電線4を巻いて得られたものである。コイル2を構成する電線4の両端部(二つの端部)5A、5Bは、導電箔3A、3Bでの電気的な接続のために、皮膜が除去され、非絶縁化されている非絶縁部分である。なお、電線4、導電箔3A、3Bの種類は何れも特に限定されない。電線4については、例えばエナメル銅クラッドアルミ線(CCAW)等を採用しても良い。コイルボビン1については、材質、及び形状等は特に限定されない。
【0013】
図2は、
図1に示すA部、B部の例を示す拡大図である。
図2(a)はA部、
図2(b)はB部の拡大図の例をそれぞれ示している。
図2(a)に示すように、導電箔3Aに対応づけられた端部5Aは、導電箔3Aの表面に沿って巻かれた状態、より具体的には渦巻き状に巻かれた状態となっている。そのような状態に端部5Aが巻かれているため、端部5Aの長さ、つまり皮膜を除去すべき長さの余裕度が高く、許容範囲が広くなる。その余裕度が高くなることにより、電線4のうちで皮膜を除去すべき位置の許容範囲も広くなって、それに求められる精度は低くなる。
【0014】
それにより、例えば皮膜を除去すべき位置をより端の方にしつつ、皮膜を除去する長さをより長くするというような方法をとることができる。そのような方法をとったとしても、
図2(a)に示すように、導電箔3Aから端部5Aを露出させることなく、端部5Aの全てを導電箔3Aの範囲内に収めることが容易に行えるようになる。従って、作業員は、電線4の皮膜を除去する適切な作業をより容易に、且つより確実に行えることとなる。端部5Aが導電箔3Aから露出する等の不具合が発生することもより確実、且つより容易に回避できるようになる。このため、皮膜の除去をやり直す、等の作業が発生するようなこともより確実に回避できるようになる。
【0015】
これらは、B部でも同じである。そのため、設計時の想定より寿命が短くなると予想されるボイスコイルの製造は回避できるか、或いはより抑えられるようになる。電線4の両端部分での皮膜の適切な除去はより容易、且つより確実に行えるため、タクトタイムはより短くなる。従って、ボイスコイルの品質を維持させつつ、その製造コストもより抑えられるようになる。
【0016】
図3は、
図1に示すA部、B部の他の例を示す拡大図である。
図3(a)はA部、
図3(b)はB部の拡大図の例をそれぞれ示している。
図3に示す例は、皮膜を除去する位置をより手前側、つまり電線4が巻かれたコイル2側にするとともに、皮膜を除去する長さもより長くさせた場合のものである。
図3(a)、及び
図3(b)に示すように、皮膜を除去する位置、及び皮膜を除去する長さがそれぞれ異なっても、端部5A、5B、及びそれに続く電線4部分を導電箔3A、3Bの範囲内に収めることができる。このことからも、端部5A、5Bを曲げるようにした場合、要求される精度をより低くするうえで有効である。
【0017】
図4は、本発明の実施形態に係るボイスコイルの例を説明する図である。
図4に例を示す正面図は、導電箔3A上の端部5Aにリード線6A、導電箔3B上の端部5Bにリード線6Bをそれぞれハンダ溶接により電気的に接続させるとともに、それらを導電箔3A、3Bに固定させた場合のものである。それにより、導電箔3A、及び3B上には、それぞれ固定接続部であるハンダ7A、7Bが存在する。
【0018】
端部5A、5Bは、
図2、或いは
図3に示すように、巻いたように曲げられた状態であり、全体がハンダ7A、7Bに覆われている。そのようにしたのは、端部5A、5Bの露出した部分が錆、或いは腐蝕等をしないようにするためである。巻いたように曲げた端部5A、5Bをリード線6A、6Bにそれぞれハンダ7A、7Bにより電気的に接続させているため、導電箔3A、3Bとしては、従来と同じものを採用することもできる。それにより、ボイスコイル10の外形も従来と同じか、或いは略同じものとすることができる。ハンダ7A、7Bはともに、本実施形態における固定接続部に相当する。
【0019】
端部5A、5Bの露出した部分を全てハンダ7A、7Bで覆うようにする場合、ハンダ7A、7Bが電線4の皮膜を除去していない部分にかかることになる。電線4が絶縁物により被覆させたものであった場合、被覆されている絶縁物がハンダにより溶け、接着力に悪影響を及ぼす可能性がある。このことから、特にそのような電線4を採用する場合、
図2、或いは
図3に示すように、各端部5A、5Bは、1周以上、巻いた状態として、電気的な接続がより確実に実現されるようにするのが望ましい。
【0020】
なお、本実施形態では、ハンダ溶接を端部5A、5B、導電箔3A、3、更にはリード線(例えば錦糸線)6A、6Bとの電気的な接続に用いているが、ハンダ溶接とは異なる方法により、その電気的な接続を実現させても良い。また、端部5A、5Bと、リード線6A、6Bとの電気的な接続は、直接、或いはハンダ7A、7Bを介して実現されているが、導電箔3A、3Bを介して実現させるようにしても良い。つまり、端部5A、5Bと、リード線6A、6Bとは、導電箔3A、3B上の異なる位置に電気的に接続させるようにしても良い。
【0021】
ボイスコイル10を製造する製造方法については、その製造方法における手順、或いは工程は特に限定されず、各種の変化が可能である。例えば導電箔3A、3Bについては、各端部5A、5Bを用意した後、各端部5A、5Bの位置、或いは長さ等に応じて、配置すべき場所を決定し、決定した場所に配置するようにしても良い。
【符号の説明】
【0022】
1 コイルボビン、2 コイル、3A、3B 導電箔、4 電線、5A、5B 端部、6A、6B リード線、7A、7B ハンダ(半田)、10 ボイスコイル
【要約】 (修正有)
【課題】品質を維持させつつ、製造コストもより抑えられるボイスコイル及びその製造方法を提供する。
【解決手段】ボイスコイル2を構成する電線4の2つの端部5A、5Bは、被膜が除去されて非絶縁化されている。この2つの端部5A、5Bは、それに続く電線4の部分を含め、それぞれ対応する導電箔3A、3Bの表面に沿って曲げられ、巻いた状態にされる。そのような曲げた状態にして、2つの端部5A、5Bは、対応する導電箔3A、3Bの範囲内に収められ、ハンダ溶接等により、導電箔3A、3Bと電気的に接続されるとともに固定される。2つの導電箔3A、3Bは、コイルボビン1に取り付けられている。
【選択図】
図1