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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-10
(45)【発行日】2024-07-19
(54)【発明の名称】二液硬化型樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 63/00 20060101AFI20240711BHJP
   C08L 63/02 20060101ALI20240711BHJP
   C08L 101/10 20060101ALI20240711BHJP
   C08K 5/17 20060101ALI20240711BHJP
   C08K 5/57 20060101ALI20240711BHJP
   C08K 5/54 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
C08L63/00 A
C08L63/02
C08L101/10
C08K5/17
C08K5/57
C08K5/54
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020133488
(22)【出願日】2020-08-06
(65)【公開番号】P2022029897
(43)【公開日】2022-02-18
【審査請求日】2023-05-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000132404
【氏名又は名称】株式会社スリーボンド
(72)【発明者】
【氏名】下川 瑛志
【審査官】赤澤 高之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/077887(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 63/00
C08K 5/17
C08K 5/57
C08K 5/54
C08L 63/02
C08L 101/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記のA剤とB剤からなる二液硬化型樹脂組成物。
A剤:(A)成分及び(B)成分を含有する組成物。
(A)成分:水素化ビスフェノール型エポキシ樹脂
(B)成分:(C)成分を硬化させる化合物(但し、(D)成分は含まない)
B剤:(C)~(E)成分を含有し、(C)成分として両末端にジメトキシシリル基を有するポリエーテル主鎖構造の重合体を含み、(E)成分の含有量が(C)成分100質量部に対して0.01~10質量部である組成物。
(C)成分:1分子中に加水分解性シリル基を1以上有する重合体
(D)成分:3級アミン化合物
(E)成分:3-アミノプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸およびホウ酸エステルからなる群から1以上選択される化合物。
【請求項2】
前記(A)成分が水素化ビスフェノール型エポキシ樹脂である請求項1に記載の二液硬化型樹脂組成物。
【請求項3】
前記(B)成分が錫触媒である請求項1または請求項2に記載の二液硬化型樹脂組成物。
【請求項4】
前記(D)成分の2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールおよび/またはジメチルアミノメチルフェノールである請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の二液硬化型樹脂組成物。
【請求項5】
前記(C)成分の含有量が、(A)100質量部に対して70~130質量部である請求項1~4のいずれか一項に記載の二液硬化型樹脂組成物。
【請求項6】
前記(E)成分の含有量が(C)成分100質量部に対して0.5~5質量部である請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の二液硬化型樹脂組成物。
【請求項7】
前記(B)成分の含有量が(C)成分100質量部に対して0.1~30質量部であり、(D)成分の含有量が(A)成分100質量部に対して0.1~50質量部である請求項1~請求項6のいずれか一項に記載の二液硬化型樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の二液硬化型樹脂組成物のA剤とB剤を混合してから放置して得られた硬化物。
【請求項9】
25℃,55%RH雰囲気下に7日間放置して得られた請求項8に記載の硬化物。
【請求項10】
伸び率が500%以上である請求項8または請求項9のいずれか一項に記載の硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、常温硬化可能であり、柔軟性と伸び率に優れ、さらに保存安定性に優れた二液硬化型樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来よりエポキシ樹脂を使用した組成物は、耐熱性や耐薬品性、接着性に優れていることから様々な分野に広く用いられている。一方で、エポキシ樹脂の剛直な骨格に起因して、柔軟性を発現させることが難しいため、様々な手法で柔軟化することが求められている。なかでもエポキシ樹脂とシリコーンポリマーからなる二液混合型の樹脂組成物はシリコーン由来の柔軟な骨格から硬化物が柔軟であり、二液であることから保存安定性に優れるという理由で様々な分野で用いられている。(特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-029470
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のエポキシ樹脂(A剤)と変成シリコーン(B剤)を用いた二液硬化型樹脂組成物は、常温硬化させるためにB剤の変成シリコーンの反応性を高くすると、温度が高い環境下において著しくB剤の保存安定性が低下する傾向にあった。また、常温硬化が可能で保存安定性が良い二液硬化型樹脂組成物であっても柔軟で伸び率に優れた硬化物を得るには至らなかった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、常温硬化可能であり、柔軟で優れた伸び率を有し、かつB剤の保存安定性に優れた二液硬化型樹脂組成物を発明するに至った。
【0006】
本発明の要旨を次に説明する。
[1]下記のA剤とB剤からなる二液硬化型樹脂組成物。
A剤:(A)及び(B)を含有する組成物。
(A)水素化エポキシ樹脂
(B)(C)を硬化させる化合物(但し、(D)は含まない)
B剤:(C)~(E)を含有する組成物。
(C)1分子中に加水分解性シリル基を1以上有する重合体
(D)(A)を硬化させる化合物
(E)3-アミノプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸、ホウ酸エステルからなる群から1以上選択される化合物。
【0007】
[2]前記(A)が水素化ビスフェノール型エポキシ樹脂である[1]に記載の二液硬化型樹脂組成物。
【0008】
[3]前記(B)が錫触媒である[1]または[2]に記載の二液硬化型樹脂組成物。
【0009】
[4]前記(D)がアミン化合物である[1]~[3]のいずれか一項に記載の二液硬化型樹脂組成物。
【0010】
[5]前記(C)が(C-1)トリメトキシシリル基を有する重合体および(C-2)ジメトキシシリル基を有する重合体である[1]~[4]のいずれか一項に記載の二液硬化型樹脂組成物。
【0011】
[6]前記(E)の含有量が(C)100質量部に対して0.01~10質量部である[1]~[5]のいずれか一項に記載の二液硬化型樹脂組成物。
【0012】
[7]前記(B)の含有量が(C)100質量部に対して0.1~30質量部であり、(D)の含有量が(A)100質量部に対して0.1~50質量部である[1]~[6]のいずれか一項に記載の二液硬化型樹脂組成物。
【0013】
[8][1]~[7]のいずれか一項に記載の二液硬化型樹脂組成物のA剤とB剤を混合してから放置して得られた硬化物。
【0014】
[9]25℃,55%RH雰囲気下に7日間放置して得られた[8]に記載の硬化物。
【0015】
[10]伸び率が500%以上である[8]もしくは[9]のいずれか一項に記載の硬化物。
【発明の効果】
【0016】
本発明のエポキシ樹脂組成物はA剤とB剤の混合により速やかに常温硬化し、優れた伸び率を有する柔軟な硬化物を得ることができる。また気温が高い環境下でも保存安定性に優れるものである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に発明の詳細を説明する。なお、本明細書において、「X~Y」は、その前後に記載される数値(XおよびY)を下限値および上限値として含む意味で使用し、「X以上Y以下」を意味する。
【0018】
本発明の二液硬化型樹脂組成物は、A剤及びB剤を含有するものであり、A剤は(A)及び(B)を含有する組成物であり、B剤は(C)~(E)を含有する組成物である。本発明においてA剤100質量部に対して、B剤は10~200質量部が好ましく、50~150質量部がより好ましい。
【0019】
本発明で使用される前記(A)は水素化エポキシ樹脂である。水素化エポキシ樹脂とは、芳香族環を有するエポキシ樹脂の芳香環を核水素化して得られる化合物のことである。反応性の観点からエポキシ基を1分子中に2以上有するものが好ましい。(A)の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、3、3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ビフェノール型エポキシ樹脂、4,4’-ビフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレンジオール型エポキシ樹脂、トリスフェニロールメタン型エポキシ樹脂、テトラキスフェニロールエタン型エポキシ樹脂、フェノールジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂等の芳香族エポキシ樹脂の芳香環を水素化したエポキシ樹脂等が挙げられる。なかでもA剤と混合した時の相溶性および伸び率の観点から、水素化ビスフェノール骨格をもつものが好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂もしくはビスフェノールF型エポキシ樹脂を水素化したものがより好ましく、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を水素化したものが最も好ましい。(A)は25℃で液体もしくは固体どちらでも構わないが、作業性の観点から液状が好ましい。
【0020】
前記(A)のエポキシ当量は硬化性の観点から、100g/eq~400g/eqが好ましく、より好ましくは180g/eq~300g/eqである。100g/eq以上であれば柔軟で優れた伸び率を有する樹脂組成物を得ることができ、400g/eq以下であれば常温硬化性を損なう恐れがない。作業性の観点から(A)の粘度は、25℃で100mPa・s~10000mPa・sが好ましく、500mPa・s~5000mPa・sがさらに好ましい。
【0021】
前記(A)の市販品としては、新日本理化株式会社製のリカレジンHBE-100、ナガセケムテックス製のEX-252、新日鉄住金化学製のST-3000、株式会社ADEKA社製のEP-4080、坂本薬品工業製のSR-HBAなどが挙げられる。これらは、それぞれ単独で用いられてもよく、また2種以上を混合して用いても良い。
【0022】
本発明で使用される前記(B)は(C)を硬化させる化合物である。(C)を硬化させる化合物であれば特に限定されない。但し、(D)は含まない。(B)の具体例としては、錫触媒、亜鉛触媒、ジルコニウム触媒、チタン触媒などが挙げられるが、常温硬化性の観点から錫触媒、亜鉛触媒が好ましく、錫触媒が最も好ましい。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が混合されてもよい。
【0023】
錫触媒としては、ブチル錫オキサイドやジオクチル錫オキサイド等のジアルキル錫オキサイドと、ジオクチルフタレート、ジイソデシルフタレート、メチルマレエート等のエステル化合物との反応物や、ジブチル錫オキシラウレート等が挙げられる。常温硬化性の観点から、アルキル錫オキサイドとフタル酸エステル化合物との反応物が好ましい。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が混合されてもよい。
【0024】
前記(B)の含有量は(C)100質量部に対して0.1~30質量部が好ましく、0.5~20質量部がさらに好ましく、1~10質量部が最も好ましい。0.1質量部以上であればA剤とB剤を混合した時の常温硬化性に優れ、30質量部以下であれば二液硬化型樹脂組成物の伸び率を低下させる恐れがない。
【0025】
前記(B)の含有量は(A)100質量部に対して0.1~30質量部が好ましく、0.5~20質量部がさらに好ましく、1~10質量部が最も好ましい。0.1~30質量部であればA剤の保存安定性を低下させる恐れがない。
【0026】
本発明で使用される(C)は1分子中に加水分解性シリル基を有する重合体である。常温硬化性の観点から加水分解性シリル基を2以上有することが好ましい。加水分解性シリル基は重合体の末端および/または側鎖に結合してもよいが常温硬化性と柔軟性の観点から末端に結合しているものが好ましい。
【0027】
前記加水分解性シリル基の具体例としては、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基などのトリアルコキシシリル基;ジメトキシメチルシリル基、及びジエトキシメチルシリル基などのジメトキシシリル基;メトキシジメトキシシリル基、及びエトキシジメチルシリル基などのモノアルコキシシリル基が挙げられる。なかでも優れた伸び率を実現する観点から(C-1)トリメトキシシリル基を有する重合体と(C-2)ジメトキシシリル基を有する重合体を併用することが好ましい。
【0028】
前記(C)成分の主鎖を構成する重合体としては特に限定されず、ポリエーテル主鎖構造、ポリエステル主鎖構造、ポリカーボネート主鎖構造、ポリウレタン主鎖構造、ポリアミド主鎖構造、ポリウレア主鎖構造、ポリイミド主鎖構造、重合性不飽和基を重合して得られるビニル系重合体主鎖構造などが挙げられる。(C)はこれらの主鎖構造を1分子中に単独で有しても、複数組み合わせて得られた主鎖構造を有してもよい。また、これら構造を持つ化合物2種以上の混合物であってもよい。前述の主鎖構造のなかでもポリエーテル主鎖構造であることが好ましい。
【0029】
前記ポリエーテル主鎖構造としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の主鎖構造や、これらの共重合体構造、置換基を有するこれら誘導体を挙げることができる。
【0030】
前記ポリエステル主鎖構造としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、テトラメチレングリコール等のグリコールと、テレフタル酸、イソフタル酸、セバシン酸、コハク酸、フタル酸、アジピン酸等のジカルボン酸とを縮合させて得られるポリエステル主鎖構造が挙げられる。
【0031】
前記ポリウレタン主鎖構造としては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール等のポリオールと、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート、トルイレンジイソシアネート等のジイソシアネートとを重付加させて得られるポリウレタン主鎖構造等が挙げられる。
【0032】
前記ポリアミド主鎖構造としては、ジアミンとジカルボン酸を縮合、あるいはカプロラクタムを開環重合させて得られるポリアミド主鎖構造が挙げられる。上記ポリウレア主鎖構造としては、ジアミンとジイソシアネートを重付加させて得られるポリウレア主鎖構造が挙げられる。ポリイミド主鎖構造としては、ジアミンと一分子中に2個の環状酸無水物構造を有する化合物のイミド化によって得られるポリイミド主鎖構造が挙げられる。
【0033】
前記(C)成分の数平均分子量は、好ましくは3,000~100,000であり、特に好ましくは5,000~50,000である。数平均分子量が3,000以上であると優れた伸び率を有する柔軟な硬化物が得られ、数平均分子量が100,000未満であれば、粘性が高くなりなりすぎることがなく、作業性に優れる。なお、数平均分子量は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を用いた標準ポリスチレン換算法により算出した。
【0034】
(A)成分の市販品としては、株式会社カネカ製のSAT030、SAT200、SAT350、SAT400、SAX510、SAX520、SAX530、SAX575、SAX750、MA410、MA440、MA480などが挙げられる。
【0035】
前記(C)の含有量は、(A)100質量部に対して20~200質量部が好ましく、50~150質量部がより好ましく、70~130質量部が最も好ましい。20質量部以上であれば、A剤とB剤を混合し硬化させることで優れた伸び率を有する硬化物を得ることができ、200質量部以下であれば二液硬化型樹脂の硬化物の樹脂強度を低下させる恐れがない。
【0036】
前記(C-1)と(C-2)を併用する場合、1:9~9:1で混合することが好ましく、2:8~8:2で混合することが好ましく、7:3~3:7で混合することが最も好ましい。1:9~9:1で混合することで、二液硬化型樹脂組成物の硬化物は高い伸び率を実現することができる。
【0037】
本発明の(D)は(A)を硬化させる化合物である。常温硬化性の観点から25℃で液状のアミン化合物が好ましい。具体例としては、脂肪族ポリアミン、脂環式ポリアミン、芳香族ポリアミン、2級アミン、3級アミン、ポリアミドアミン、ポリアミドなどが挙げられる。
【0038】
脂肪族ポリアミンの具体例としては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ヘキサメチレンジアミン等があげられる。また、脂環式ポリアミンの具体例としては、メンセンジアミン(MDA)、イソフォロンジアミン(IPDA)、N-アミノエチルピペラジン(N-AEP)、ジアミノジシクロヘキシルメタン、ノルボルナンジアミン(NBDA)等が挙げられる。また、芳香族ポリアミンの具体例としては、メタキシリレンジアミン(MXDA)、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン、ジアミノジエチルジフェニルメタン等が挙げられる。2級アミン、または3級アミンの具体例としては、ピペリジン、ピリジン、ベンジルジメチルアミン、ジメチルアミノメチルフェノール、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、トリエチレンジアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、ジメチルベンジルアミン、ジメチルヘキシルアミン、ジメチルアミノフェノール、ジメチルアミノp-クレゾール、ピペリジン、1,4-ジアザジシクロ〔2.2.2〕オクタン、1.8-ジアザビシクロ〔5.4.0〕ウンデセン-1等が挙げられる。常温硬化性と保存安定性の観点から、3級アミンが好ましく、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ジメチルアミノメチルフェノールがさらに好ましく、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールが最も好ましい。
【0039】
前記(D)の市販品としてはEVONIC社製のANCAMINE1110、ANCAMINE K54、ANCAMINE K618、ANKAMIN2709やT&KTOKA社製のフジキュアー4011、4025、4030、7000、7001、7002、三菱化学株式会社製のST11、ST12、ST14、ST15、LV11などが挙げられる。
【0040】
前記(D)の配合量は、(A)100質量部に対して、0.1~50質量部が好ましく、1~40質量部がより好ましく、3~30質量部が最も好ましい。0.1質量部以上であれば、A剤とB剤を混合した時に常温硬化性を維持することができ、50質量部以下であれば二液硬化型樹脂組成物の硬化物の伸び率を低下させる恐れがない。
【0041】
前記(D)の配合量は、(C)100質量部に対して、0.1~50質量部が好ましく、1~40質量部がより好ましく、3~30質量部が最も好ましい。0.1~50質量部であることで、B剤の保存安定性を低下させる恐れがない。
【0042】
本発明の(E)は3-アミノプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸、ホウ酸エステルからなる群から1以上選択される化合物である。(E)を含有することで、二液硬化型樹脂組成物として柔軟な硬化物になりながらも、B剤の保存安定性を維持することができる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が混合されてもよい。
【0043】
前記ホウ酸エステルとしては、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリプロピル、ホウ酸トリブチル、ホウ酸トリペンチル、ホウ酸トリヘキシル、ホウ酸トリヘプチル、ホウ酸トリ-n-オクチル、ホウ酸トリデシル、ホウ酸トリヘキサデシル、ホウ酸トリオクタデシル、ホウ酸トリオクタデシル、2,4,6-トリメトキシボロキシン、ホウ酸トリフェニル、ホウ酸トリ-o-トリル、2-エトキシ-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン,2-イソプロポキシ-4,4,5,5-テトラメチル6-トリメチル-1,3,2-ジオキサボリナン、2-メトキシ-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン、2,2’-オキシビス(5,5’-ジメチル-1,3,2-オキサボリナン)等が挙げられる。なかでも保存安定性に優れる観点から、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリプロピル、ホウ酸トリブチルが好ましい。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が混合されてもよい。
【0044】
前記(E)の市販品としては、信越化学工業株式会社製のKBM-903、KBM-1003、X-12-967Cなどが挙げられる。
【0045】
前記(E)の含有量は(C)100質量部に対して0.01~10質量部であり、より好ましくは0.1~7質量部であり、最も好ましくは0.5~5質量部である。0.01以上であれば二液硬化型樹脂組成物として優れた伸び率を有する硬化物を得ることができ、10質量部以下であれば、保存安定性を維持することができる。
【0046】
本発明のA剤には任意のシランカップリング剤を含むことができる。具体例としては、例えば、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジプロピルオキシシラン、3-グリシドキシプロピルジメチルモノメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルジメチルモノエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルジメチルモノプロピルオキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン等のグリシジル基含有シランカップリング剤、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のビニル基含有シランカップリング剤、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルジメチルモノメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルジメチルモノエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルメチルジプロピルオキシシラン、3-アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルメチルジプロピルオキシシラン、3-アクリロキシプロピルジメチルモノプロピルオキシシラン、3-アクリロキシプロピルジメチルモノメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルジメチルモノエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルジメチルモノプロピルオキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリル基含有シランカップリング剤、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらの中でも、接着力が優れるという観点より、グリシジル基含有シランカップリング剤がより好ましい。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。シランカップリング剤の配合量の好適な範囲は、本発明の(A)100質量部に対して0.1~20質量部である。
【0047】
さらに、本発明の特性を損なわない範囲で、A剤および/またはB剤に無機充填剤、有機充填剤、顔料、染料、レベリング剤、レオロジーコントロール剤等の添加剤をさらに適量含んでいてもよい。
【0048】
前記無機充填剤としては、アルミナ粉、炭酸カルシウム粉、タルク粉、シリカ粉、ヒュームドシリカ粉、銀粉、ニッケル粉、パラジウム粉、カーボン粉、タングステン粉、メッキ粉など挙げられるがこれに限定されない。無機充填剤の配合量の好適な範囲は、(A)もしくは(C)100質量部に対して、1~50質量部が好ましく、より好ましくは5~30質量部である。
【0049】
前記有機充填剤としては、ゴム、エラストマー、プラスチック、重合体(または共重合体)などから構成される有機物の粉体であればよい。また、コアシェル型などの多層構造を有する有機フィラーでもよい。有機フィラーの平均粒径としては、0.05~50μmの範囲が好ましい。耐久試験における特性を向上させるという観点から、アクリル酸エステルおよび/もしくは(メタ)アクリル酸エステル)の重合体もしくは共重合体からなるフィラー、またはスチレン化合物の重合体もしくは共重合体からなるフィラーを含むことが好ましい。有機充填剤の好適な配合量は、(A)成分もしくは(C)成分100質量部に対して、1~50質量部が好ましく、より好ましくは5~30質量部である。
【0050】
本発明の二液硬化型樹脂組成物は高温環境下での保存安定性に優れるが、二液硬化型樹脂組成物の硬化物が高い伸び率と柔軟性を維持する観点から水を含まないことが好ましい。
【0051】
<A剤とB剤の混合方法>
本発明の二液硬化型樹脂組成物のA剤とB剤を混合する方法としては、均一に混合することができれば特に限定されない。例えば、ミキサー、プラネタリなどの撹拌機を用いてもよく、ガラス棒などを用いて手で撹拌しても良い。本発明の二液硬化型樹脂組成物はA剤とB剤を混合することで、速やかに反応することから、40℃以下で混合することが好ましい。
【0052】
<塗布方法>
本発明の二液硬化型樹脂組成物を被着体への塗布する方法としては、公知のシール剤や接着剤の方法が用いられる。例えば、自動塗布機を用いたディスペンシング、スプレー、インクジェット、スクリーン印刷、グラビア印刷、ディッピング、スピンコートなどの方法を用いることができる。塗布性の観点から、本発明の組成物の粘度(25℃)は200Pa・s以下が好ましく、100Pa・s以下がより好ましく、70Pa・s以下が最も好ましい。
【0053】
<硬化方法および硬化物>
本発明の二液硬化型樹脂組成物はA剤とB剤を常温で混合し、常温で硬化させることで硬化物を得ることができる。好ましい硬化条件としては例えば、温度20℃~50℃、湿度40%RH~60%RHで硬化時間は5日~10日である。
【0054】
<用途>
本発明の二液硬化型樹脂組成物は様々な用途に使用することができる。具体例としては、自動車用のスイッチ部分、ヘッドランプ、エンジン内部品、電装部品、駆動エンジン、ブレーキオイルタンク、フロントフード、フェンダー、ドアなどのボディパネル、ウインドウ等の接着、封止、注型、コーティング等;電子材料分野では、フラットパネルディスプレイ(液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、発光ダイオード表示装置、フィールドエミッションディスプレイ)や、ビデオディスク、CD、DVD、MD、ピックアップレンズ、ハードディスク等の接着、封止、注型、コーティング等;電池分野では、リチウム電池、リチウムイオン電池、マンガン電池、アルカリ電池、燃料電池、シリコン系太陽電池、色素増感型電池、有機太陽電池等の接着、封止、コーティング等;光学部品分野では、光スイッチ周辺、光コネクタ周辺の光ファイバー材料、光受動部品、光回路部品、光電子集積回路周辺の接着、封止、コーティング等;光学機器分野では、カメラモジュール、レンズ用材料、ファインダプリズム、ターゲットプリズム、ファインダーカバー、受光センサー部、撮影レンズ、プロジェクションテレビの当社レンズ等の接着、封止、コーティング等;インフラ分野では、ガス管、水道管などの接着、ライニング材、封止、コーティング材等に使用が可能である。
【実施例
【0055】
次に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0056】
[実施例1~6、比較例1~14]
組成物を調製するために下記成分を準備した。
【0057】
(A-1)水素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂 商品名HBE-100 新日本理化株式会社製 エポキシ当量210~220g/eq 粘度2200mPa・s
(A’-1)ビスフェノールA型エポキシ樹脂 商品名jER828 三菱化学株式会社製 エポキシ当量184~194g/eq 粘度120000mPa・s
(A’-2)ダイマー酸変性エポキシ樹脂 商品名jER871 三菱化学株式会社製
エポキシ当量390~470g/eq 粘度7000mPa・s
(A’-3)ゴム分散エポキシ樹脂(ビスフェノールF型エポキシ樹脂75%、コアシェルゴム25%) 商品名カネエースMX-136 株式会社カネカ製 エポキシ当量226g/eq 粘度2500mPa・s
(B-1)フタル酸イソノニルとジブチル錫オキサイドの反応物 商品名MSCAT-01 日本化薬株式会社製
(C-1)両末端トリメトキシシリル基を有し、ポリエーテル主鎖骨格を有する重合体 商品名SAX-575 株式会社カネカ製
(C-2)両末端ジメトキシシリル基を有し、ポリエーテル主鎖骨格を有する重合体 商品名SAX-750 株式会社カネカ製
(D-1)2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール 商品名ANCAMINE K-54 エアープロダクツジャパン株式会社製
(E-1)3-アミノプロピルトリメトキシシラン 商品名KBM-903 信越化学工業株式会社製
(E-2)ビニルトリメトキシシラン 商品名KBM-1003 信越化学工業株式会社製
(E-3)3-トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物 商品名X-12-967C 信越化学工業株式会社製
(E-4)ホウ酸トリブチル(試薬)
(E’-1)N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン 商品名KBM-602 信越化学工業株式会社製
(E’-2)3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミン KBE-9103P 信越化学工業株式会社製
(E’-3)N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン 商品名KBM-573 信越化学工業株式会社製
(E’-4)トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレート 商品名KBM-9659 信越化学工業株式会社製
(E’-5)3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン 商品名KBM-802 信越化学工業株式会社製
(E’-6)3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン 商品名KBM-9007 信越化学工業株式会社製
(E’-7)ビニルトリエトキシシラン 商品名KBE-1003 信越化学工業株式会社製
(E’-8)3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン 商品名KBM-503 信越化学工業株式会社製
(E’-9)3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン 商品名KBM-5103 信越化学工業株式会社製
(E’-10)3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン 商品名KBM-403 商品名信越化学工業株式会社製
【0058】
前記(A)成分と(B)成分をミキサーで30分間攪拌混合し、A剤を作製した。(C)~(E)成分を混合、ミキサーで30分攪拌混合し、B剤を作製した。詳細な調製量は表1および表2に従い、数値は全て質量部で表記する。いずれの試験も25℃,55%RHで行った。
【0059】
[A剤の初期粘度]
25℃、剪断速度10s-1 コーンプレート型粘度計を用いてA剤単独の粘度を測定した。
[A剤の保存安定性]
B剤100gをラミネートチューブに封入し、60℃の環境下で3日間保管し、常温に戻し、上記と同様に粘度を測定した。
合格基準 ○ 粘度が初期から2倍未満であること。
× 粘度が初期から2倍以上であること。
[B剤の初期粘度]
25℃、剪断速度10s-1 コーンプレート型粘度計を用いてB剤単独の粘度を測定した。
[B剤の保存安定性]
B剤100gをラミネートチューブに封入し、60℃の環境下で3日間保管し、常温に戻し、上記と同様に粘度を測定した。
合格基準 ○ 粘度が初期から2倍未満であること。
× 粘度が初期から2倍以上であること。
[伸び率]
各二液硬化型樹脂組成物のA剤1gとB剤1gを混合し、得た二液硬化型樹脂組成物をスペーサーを用いて厚さ2mmの板状に塗布して、25℃,55%RH雰囲気下にて7日間静置して硬化物を作成した。板状の硬化物をダンベル5号の形状の試験片になるように切り出した。試験片に基線間距離を25mmとして引張試験機により500mm/minで引っ張り、ダンベル形状の試験片が破断するまでの基線間距離を測定して、下記式の通り計算し、伸び率(%)を算出した。
伸び率(%)=(破断時基線間距離-初期基線間距離)/初期基線間距離×100(%)
合格基準:500%以上、より好ましくは600%以上である。上限は特に限定されないが1000%以下が好ましい。
【0060】
【表1】
【0061】
【表2】
【0062】
実施例1~6の組成物はB剤の保存安定性および二液硬化型樹脂組成物の硬化物は優れた伸び率を示していた。一方で、A成分以外のエポキシ樹脂を用いた比較例1、比較例2は硬化物の伸び率が著しく低い結果であり、比較例3は硬化時に硬化ムラが発生し、均一な硬化物にならず伸び率の測定ができなかった。比較例4~14はいずれも粘度が上昇してしまい、保存安定性が満足できるものでなく硬化物が作製できなかった。
【0063】
[剪断接着強度]
実施例1と比較例3の組成物についてA剤1gとB剤1gを混合し、引張試験機を用いて接着力を測定した。
被着体:SPCC-SD/SPCC-SD(25mm×100mm×1.6mm)
接着面積:25mm×10mm×1mm
硬化条件:25℃,55%RH×7日間
引張速度:50mm/min
実施例1は7.2MPaであり接着剤として満足のいく結果であった。一方で比較例3は2.7MPaであり、接着力が低い結果であった。これは比較例3を硬化させた時の硬化ムラに起因するものと考えられる。なお、本発明における好ましい剪断接着強度は3.0MPa以上である。以上のことから(A)~(E)を組み合わせることで、本願の課題である常温硬化においても優れた伸び率と接着性を有する硬化物を得ることができ、さらには保存安定性に優れた組成物が得られることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明の二液硬化型樹脂組成物は、常温硬化可能であり、優れた伸び率を有する柔軟性のある硬化物を得ることができ、保存安定性に優れているために、保存環境温度や使用環境温度に影響されない接着剤、コーティング剤、ポッティング剤として様々な分野に有用である。