(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-10
(45)【発行日】2024-07-19
(54)【発明の名称】型枠用シート及び型枠
(51)【国際特許分類】
E04G 9/10 20060101AFI20240711BHJP
【FI】
E04G9/10 101B
(21)【出願番号】P 2023179200
(22)【出願日】2023-10-17
【審査請求日】2023-10-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】595071416
【氏名又は名称】アイエスティー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】323008497
【氏名又は名称】近森 弘昌
(74)【代理人】
【識別番号】100085235
【氏名又は名称】松浦 兼行
(72)【発明者】
【氏名】近森 精志
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-014753(JP,A)
【文献】特開2023-100096(JP,A)
【文献】特開平09-254289(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 9/00 - 9/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動状のコンクリート混合物中の余剰水を吸水して排出する機能を備え、熱架橋型の親水剤による親水処理された不織布シートである吸水層と、
前記吸水層により吸水されて排出された前記流動状のコンクリート混合物中の余剰水を外部へ排出する機能と前記流動状のコンクリート混合物のセメント微粒子を保持する機能とを備えたシート状の混合物製排水層と
が熱圧着により積層された構造であり、
前記吸水層は
融解によりシート状フィルムとされたポリプロピレン製の不織布シートであり、
前記混合物製排水層は、少なくともポリエステルを含む混合物の不織布シートであることを特徴とする型枠用シート。
【請求項2】
型枠本体と、前記型枠本体の表面に取り付けられた型枠用シートとからなる型枠において、
前記型枠用シートは、
流動状のコンクリート混合物に接して前記流動状のコンクリート混合物中の余剰水を吸水して排出する機能を備え、熱架橋型の親水剤による親水処理され
、かつ、融解によりシート状フィルムとされたポリプロピレンの不織布シートである吸水層と、
前記吸水層により吸水されて排出された前記流動状のコンクリート混合物中の余剰水を外部へ排出する機能と前記流動状のコンクリート混合物のセメント微粒子を保持する機能とを備え、少なくともポリエステルを含む混合物の不織布シートである排水層とが熱圧着により積層された構造であることを特徴とする型枠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は型枠用シート及び型枠に係り、特にコンクリート打設時に用いる型枠の表面に取り付けられる型枠用シート、及びその型枠用シートが表面に取り付けられた型枠に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート構造物を製造するコンクリート打設時には、例えば離間配置して固定した複数枚の型枠で囲まれた空間内に流動状のコンクリート混合物を流し込み、その状態でコンクリート混合物が硬化するのを待ってから型枠を外し(脱型し)、硬化したコンクリート混合物をコンクリート構造物として露出させる。このコンクリート打設時において、硬化前の流動状のコンクリート混合物の余剰水が外部に排出されないと、製造されたコンクリート構造物の表面にピンホールやアバタ(気泡)が生じる。
【0003】
そこで、従来よりコンクリート混合物中の余剰水を外部へ排出させるため、型枠のコンクリート側表面に型枠用シートを取り付け、その型枠用シートを通してコンクリート混合物中の余剰水を外部へ排出させる型枠用シートあるいは型枠が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1記載の型枠用シートは、それぞれシート状の吸水層と排水層とが積層されており、吸水層の表面がコンクリートに接するように排水層の裏面を型枠に貼付する。特許文献1に記載の型枠用シートによれば、吸水層は打設されたコンクリート混合物中の余剰水を吸水して排水層に排出する機能を有し、排水層は吸水層から排出されたコンクリート混合物中の余剰水を取り込んで外部へ排出する機能とコンクリート混合物中のセメント微粒子を保持する機能とを備えており、吸水層が熱架橋型の親水剤により親水処理されたポリエチレン(PE)の不織布シートである点に特徴がある。
【0005】
この特許文献1に記載の型枠用シートによれば、脱型時において、硬化したコンクリート構造物の表面から極めて容易に型枠用シートを離型剤を用いなくても剥離することができ、その結果、型枠用シートの表面に離型層を設ける作業及び打設されたコンクリート構造物表面に残留した離型剤を除去する作業が不要で作業効率を従来に比べて大幅に向上できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の型枠用シートによれば、吸水層の耐久性が低く、型枠用シートの転用回数が少ないという課題がある。
【0008】
また、上記型枠用シートは排水層が(1)シート状の吸水性不織布と芯鞘構造の不織布シートとをニードルパンチ加工により一体化した不織布シートである例と、(2)シート状吸水性不織布の上に芯鞘構造の不織布シート又はポリプロピレン若しくはポリエステルの不織布シートが積層され、その上にシート状のポリエチレン樹脂層が積層された3層積層構造体である例とが開示されている。しかしながら、これらの構造の排水層は、吸水層から取り込んで外部へ排出するコンクリート混合物中の余剰水が十分に乾燥するまでに長時間かかるため、特に冬季で低温の環境下や降雨があった時には型枠用シート全体が乾燥しずらく湿った状態が長時間かかり、問題が生じる。
【0009】
例えば、建築工事ではコンクリート打設した翌日に型枠からコンクリート構造物を解体する場合があり、その場合には型枠用シート及びコンクリート構造物のいずれも乾燥しきれず水分を含んだ状態で解体されることになる。その結果、面木や目地棒周囲がコンクリート構造物の表面を型枠用シートと一緒に引っ張って解体してしまい、打設したコンクリート構造物の表面に欠損やピンホールを生じさせるという課題がある。
【0010】
本発明は以上の点に鑑みなされたもので、耐久性及び速乾性を大幅に向上し得る型枠用シート及びその型枠用シートが取り付けられた型枠を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するため、本発明の型枠用シートは、流動状のコンクリート混合物中の余剰水を吸水して排出する機能を備え、熱架橋型の親水剤による親水処理された不織布シートである吸水層と、吸水層により吸水されて排出された流動状のコンクリート混合物中の余剰水を外部へ排出する機能と流動状のコンクリート混合物のセメント微粒子を保持する機能とを備えたシート状の混合物製排水層とが熱圧着により積層された構造であり、吸水層は融解によりシート状フィルムとされたポリプロピレン製の不織布シートであり、混合物製排水層は、少なくともポリエステルを含む混合物の不織布シートであることを特徴とする。
【0012】
また、上記の目的を達成するため、本発明の型枠は、型枠本体と、前記型枠本体の表面に取り付けられた型枠用シートとからなる型枠において、型枠用シートは、流動状のコンクリート混合物に接して流動状のコンクリート混合物中の余剰水を吸水して排出する機能を備え、熱架橋型の親水剤による親水処理され、かつ、融解によりシート状フィルムとされたポリプロピレンの不織布シートである吸水層と、吸水層により吸水されて排出された流動状のコンクリート混合物中の余剰水を外部へ排出する機能と流動状のコンクリート混合物のセメント微粒子を保持する機能とを備え、少なくともポリエステルを含む混合物の不織布シートである排水層とが熱圧着により積層された構造であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、型枠用シートの転用回数を大幅に向上できると共に、冬季や降雨での乾きにくい状況下で使用して短時間で解体した場合にも、従来に比べて打設したコンクリート構造物の表面に生じることがある欠損やピンホールを大幅に低減若しくは生じないようにできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る型枠用シートの一実施形態の構造断面図である。
【
図2】本発明の型枠用シートの作成に用いられる熱圧着装置の一例の概略構成図である。
【
図3】コンクリート打設時における本発明に係る型枠の一実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0016】
図1は、本発明に係る型枠用シートの一実施形態の構造断面図を示す。同図において、本実施形態の型枠用シート10は、ポリプロピレン製吸水層11と、ポリプロピレン製吸水層11からの水分を外部へ排出するための混合物製排水層12とが積層されたシート状積層体である。
【0017】
ポリプロピレン製吸水層11は、表面が硬化前のコンクリート混合物に接し、そのコンクリート混合物中の余剰水(水分)を吸水して裏面から混合物製排水層12へ排出する、熱架橋型の親水剤により親水処理されたポリプロピレン製の不織布シートである。ポリプロピレン製吸水層11は、ポリエチレンに比べて耐久性に優れ、傷や皺に強く破れにくいという特長がある。また、熱に強く縮みにくいという性質も有しているため、日光による劣化の影響が少ないという特長もある。
【0018】
また、ポリプロピレン製吸水層11は、その表面が接するコンクリート混合物が硬化して得られるコンクリート構造物の表面を毛羽立ちせずに平滑面とする平滑化機能と、脱型時に剥離剤を使用しなくても硬化後のコンクリート構造物が引っ付かずに容易に剥離できる剥離機能も有している。
【0019】
ポリプロピレンは、特許文献1の吸水層に使用されるポリエチレンに比べ、強度に優れ融点が高く、有毒ガスが発生しない環境に優しい性質を持っている。また、ポリプロピレンの不織布シートは、表面が硬く耐摩耗性に優れ、曲げ加工もし易く、傷がつきにくく、軽量で、耐水性があり、価格的にも安価である。更に、引張強度、衝撃強度、圧縮強度といった機械的強度と耐熱性にも優れている。
【0020】
以上より、ポリプロピレン製吸水層11は、耐久性に優れているので解体時に表面に傷や皺ができにくく破れにくい。また、耐熱性に優れているので日光などの熱による縮みが小さい。このため、ポリプロピレン製吸水層11を使用した型枠用シート10は従来に比べてシートの転用回数が大幅に向上した(従来の1.5~2倍程度)。
【0021】
また、ポリプロピレン製吸水層11は、ポリプロピレンの不織布シートを熱架橋型の親水剤により親水処理した後、後述する混合物製排水層12との熱圧着時に溶けることで得られるシート状フィルムである。上記の親水処理は、ポリプロピレンの不織布シートが疎水性を有し、コンクリート混合物中の余剰水を吸水して通過させにくいため、その疎水性を低減し実用上十分な吸水性を有するための処理である。
【0022】
親水処理は、親水剤を水で希釈した親水処理液に含浸するか、スプレーで塗布する方法により、ポリプロピレンの不織布シートの表面に親水処理液を被覆する処理方法である。親水剤としては、例えば市販されている非イオン系シリコンポリマーからなる熱架橋型の親水剤を用いることができる。熱架橋型の親水剤による親水処理により、ポリプロピレンの不織布シートが熱による架橋反応により高分子化して水に溶けない網状の分子構造になるため、不織布シートの繊維に絡み、流出しにくくなる。
【0023】
次に、混合物製排水層12について説明する。混合物製排水層12は、ポリプロピレン製吸水層11を通過して入力されるコンクリート混合物中の余剰水を型枠用シート10の外部へ速やかに排出すると同時に、コンクリート混合物中のセメント微粒子を適度に保持する排出・保水性を有すると共に、特に速乾性に優れ、水分を短時間で拡散蒸発させるという特長がある。
【0024】
混合物製排水層12は、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレンテレフタレートコポリマーとが混合されたポリエステルに、油剤等の添加物がごく少量混合された混合物の不織布シートであり、水分を短時間で拡散蒸発させる優れた速乾性を有する。このため、混合物製排水層12を有する本実施形態の型枠用シート10によれば、冬季や降雨での乾きにくい状況下で使用してコンクリート打設した日の翌日などの短時間で解体した場合にも、従来に比べて打設したコンクリート構造物の表面に生じることがある欠損やピンホールを大幅に低減若しくは生じないようにできる。なお、排水層12も吸水層11と同様に熱架橋型の親水剤による親水処理することが望ましい。
【0025】
次に、本実施形態の型枠用シート10の作製方法について説明する。本実施形態の型枠用シート10はポリプロピレン製吸水層11と混合物製排水層12とを熱圧着して作成する。
【0026】
図2は、型枠用シート10の作製に用いられる熱圧着装置の一例の概略構成図を示す。同図に示すように、熱圧着装置20は互いに近接対向配置された同方向に回転する熱ローラ21と樹脂ローラ22とからなる。一方、一定幅で長尺の前述した親水処理されたポリプロピレン製の第1の不織布シートAは、図示しない巻出し機から巻き出されて第1の移動手段(例えばベルトコンベア)により幅方向とは直角方向へ移動して熱ローラ21と樹脂ローラ22との間に進入する。
【0027】
また、これと同時に、一定幅で長尺の前述した混合物製の第2の不織布シートBは、図示しない巻出し機から巻き出されて第2の移動手段(例えばベルトコンベア)により幅方向とは直角方向へ移動して第1の不織布シートAに積層された後熱ローラ21と樹脂ローラ22との間に進入する。
【0028】
図2に示すように、熱ローラ21と樹脂ローラ22とは、進入する第1の不織布シートA及び第2の不織布シートBの積層シートを圧着すると共に熱ローラ21側に接する第1の不織布シートAを加熱することにより融解させてシート状フィルムとし、かつ、第2の不織布シートBに融着(熱圧着)し、両者を熱圧着した積層シートCを作製する。従って、積層シートCは第2の不織布シートBの上にシート状フィルムが熱圧着された構造である。
【0029】
続いて、熱ローラ21と樹脂ローラ22との間から出力されたシート状フィルムと第2の不織布シートBとの積層シートCは、図示しない第3の移動手段(例えばベルトコンベア)で移動され、例えば図示しない裁断装置で所望のサイズに裁断されて型枠用シートとして製造される。製造された型枠用シートは、積層シートCのシート状フィルムがポリプロピレン製吸水層11に相当し、第2の不織布シートBが混合物製排水層12に相当する、
図1の構造の型枠用シート10である。なお、熱ローラ21及び樹脂ローラ22の代わりに、入力される積層シートの表裏両シートを熱融着する公知の熱ロールプレス機を用いることもできる。
【0030】
次に、本発明の型枠について説明する。
図3は、コンクリート打設時における本発明に係る型枠の一実施形態の断面図を示す。同図において、本実施形態の型枠30は、型枠本体31と、接着等の手段で型枠本体31の表面に取り付けられた型枠用シート32とからなる。型枠用シート32は、本発明に係る型枠用シートで、
図1の構造の型枠用シート10である。
【0031】
図3では型枠用シート10の混合物製排水層12の裏面(すなわち、ポリプロピレン製吸水層11とは反対側の面)が型枠本体31の表面に接着等の手段により取り付けられている。コンクリート打設前には、型枠用シート10のポリプロピレン製吸水層11の表面は空間に面しており、また離型剤による離型層は形成されていない。すなわち、本発明の型枠用シート及び型枠では、型枠用シート32(10)の表面に離型剤は使用しない。なお、離型剤を使用してもよい。
【0032】
コンクリート打設時には、まず、型枠本体31の表面に型枠用シート32が取り付けられた型枠30を複数個、互いの型枠用シート32が離間対向して囲まれた所望の閉空間の中に、流動状のコンクリート混合物を充填する。これにより、
図3に示すように、コンクリート混合物41が型枠用シート32(10)のポリプロピレン製吸水層11の表面に圧接する。そして、この状態でコンクリート混合物41に含まれている余剰水は
図3に矢印42で示すように、ポリプロピレン製吸水層11を通過して混合物製排水層12に入力され、更に自重で混合物製排水層12から型枠30の外部へ排出され、コンクリート混合物41の硬化が進行する。また、コンクリート混合物41に含まれるセメント微粒子は混合物製排水層12で適度に保持される。
【0033】
そして、コンクリート混合物41が硬化するのを待ってから、硬化したコンクリート混合物41を型枠30から取り外し(脱型し)、コンクリート混合物41をコンクリート構造物として露出させる。このとき、型枠用シート32(10)のコンクリート混合物41に接しているポリプロピレン製吸水層11は、吸水層としてポリエステルを使用した従来の型枠用シートに比し耐久性及び耐熱性が格段に優れているので、この従来の型枠用シートに比べて型枠用シートの転用回数が大幅に向上する。
【0034】
また、ポリプロピレン製吸水層11は、フィルム状シートであるため、コンクリート構造物の表面を毛羽立ちせずに平滑面とし、ポリプロピレン製吸水層11に引っ付かずに容易に剥離できる。従って、本実施形態の型枠30では脱型時において、硬化したコンクリート構造物の表面から極めて容易に型枠用シート32(10)を離型剤を用いなくても剥離することができ、しかも平坦面のコンクリート構造物が得られる。従って、本実施形態によれば、型枠用シートの表面に離型層を設ける作業及び打設されたコンクリート構造物表面に残留した離型剤を除去する作業が不要で作業効率を従来に比べて大幅に向上できる。しかも、本実施形態では平坦面の表面を有するコンクリート構造物を打設できる。
【0035】
次に、本発明に係る型枠用シート及び型枠と特許文献1記載の型枠用シート及び型枠との対比実験結果について説明する。
【0036】
幅21cm、長さ30cm、厚さ2cmのサイズの試験用コンクリート型枠を用意してコンクリート打設した。第1の試験用コンクリート型枠は、特許文献1記載の吸水層がポリエチレン(PE)の不織布シートで、排水層がシート状の吸水性不織布と芯鞘構造の不織布シートとをニードルパンチ加工により一体化した不織布シートである。この第1の試験用コンクリート型枠では、コンクリートの打設と脱型とを4回繰り返したとき(転用回数4回目)の脱型した型枠の型枠用シート表面(つまり吸水層表面)を観察すると、約1cm程度の破れ穴が発生したことが確認された(転用回数4回)。
【0037】
また、低温の冬季環境下で第1の試験用コンクリート型枠を用いてコンクリート打設後、翌日に解体して型枠用シートの表面を観察したところ、未乾燥のコンクリート片が付着していることが確認された。
【0038】
他方、上記と同じサイズで本実施形態の型枠である第2の試験用コンクリート型枠を用いて、コンクリートの打設と脱型とを7回繰り返したとき(転用回数7回目)、脱型した型枠の型枠用シート表面のザラザラ感と型枠用シートの強度自体が弱くなり転用を中止した。つまり、本実施形態では転用回数7回であり、第1の試験用コンクリート型枠を用いた従来の型枠の転用回数に比べて転用回数を大幅に向上できた。ただし、第2の試験用コンクリート型枠の場合、転用回数5回目の型枠用シート表面に多少のレイタンスが付着してきたが、それをゴムヘラで削ぎ落として転用を続け、7回目までの転用は確認できた。
【0039】
また、上記の第1の試験用コンクリート型枠を用いたコンクリート打設時と同じ冬季環境条件化で第2の試験用コンクリート型枠を用いてコンクリート打設後、翌日に解体して型枠用シートの表面を観察したところ、コンクリート片の付着は確認されなかった。なお、工事現場で降雨の日に第2の試験用コンクリート型枠を用いてコンクリート打設後、翌日に解体した場合も、型枠用シートの表面にはコンクリート片が付着していないことが確認された。
【0040】
なお、本発明は以上の実施形態に限定されるものではなく、例えばポリプロピレン製吸水層11と混合物製排水層12との間の接着性を、吸水性及び排水性を阻害することなく高めるため、ホットメルト樹脂層を接着層として設けるようにしてもよい。この場合は、例えば混合物製排水層12となる前記第2の不織布シートBの表面にホットメルトパウダーを散布するか、ホットメルト樹脂を塗布した後に第1の不織布シートAと重ねた状態で熱ローラ21と樹脂ローラ22の間に進入させる。
【0041】
熱ローラ21と樹脂ローラ22は、進入する第1の不織布シートA、ホットメルトパウダー(又はホットメルト樹脂)及び第2の不織布シートBを積層状態で圧着すると共に熱ローラ21側に接する第1の不織布シートAを加熱することにより融解させてシート状フィルムとし、かつ、ホットメルトパウダー(又はホットメルト樹脂)によるホットメルト樹脂層を介して第2の不織布シートBに融着(熱圧着)し、それらが熱圧着された積層シートCを作製する。
【0042】
また、本発明に係る型枠用シートは、
図1に示した実施形態の型枠用シート10に限定されるものではなく、例えば親水処理した混合物製排水層12と同様構成の不織布シート単体を用いることもできる。
【符号の説明】
【0043】
10、32 型枠用シート
11 ポリプロピレン製吸水層
12 混合物製排水層
20 熱圧着装置
21 熱ローラ
22 樹脂ローラ
30 型枠
31 型枠本体
41 コンクリート混合物
【要約】
【課題】耐久性及び速乾性を大幅に向上し得る型枠用シート及びその型枠用シートが取り付けられた型枠を提供する。
【解決手段】型枠用シート10は、流動状のコンクリート混合物中の余剰水を吸水する機能を備え、熱架橋型の親水剤による親水処理されたポリプロピレン製の不織布シートである吸水層11と、吸水層11により吸水された流動状のコンクリート混合物中の余剰水を外部へ排出する機能と流動状のコンクリート混合物のセメント微粒子を保持する機能とを備え、少なくともポリエステルを含む混合物の不織布シートである混合物製排水層12とが熱圧着されてなる。
【選択図】
図1