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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-10
(45)【発行日】2024-07-19
(54)【発明の名称】発光装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/50 20100101AFI20240711BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20240711BHJP
   F21V 9/38 20180101ALI20240711BHJP
【FI】
H01L33/50
F21S2/00 100
F21V9/38
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021023599
(22)【出願日】2021-02-17
(65)【公開番号】P2021150641
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-07-20
(31)【優先権主張番号】P 2020046014
(32)【優先日】2020-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000106276
【氏名又は名称】サンケン電気株式会社
(72)【発明者】
【氏名】梅津 陽介
【審査官】村井 友和
(56)【参考文献】
【文献】特許第6349771(JP,B2)
【文献】特開2012-015471(JP,A)
【文献】特表2009-525594(JP,A)
【文献】特開2013-201132(JP,A)
【文献】特開2008-085026(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0020929(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00-33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子と蛍光体を備えた発光装置であって、
発光ピーク波長が430nm以上、470nm以下にある青色発光素子と、
前記青色発光素子の出射光によって励起され、発光ピーク波長が510nm以上、545nm以下にある緑色蛍光体と、
前記青色発光素子の出射光によって励起され、発光ピーク波長が625nm以上、675nm以下にある赤色蛍光体と、
を備え、
CIELAB(L’a’b’)色空間において、色品質尺度CQSに用いられるマンセル色見本のVS14に対応する座標(a’、b’)が、
b’=-0.75×a’+α (α≧77)
の関係を満たす白色の出力光を出力するものであることを特徴とする発光装置。
【請求項2】
前記αは、α≧82の関係であることを特徴とする請求項1の発光装置。
【請求項3】
前記緑色蛍光体は、半値幅が70nm以下のものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の発光装置。
【請求項4】
前記緑色蛍光体が、CaMg(SiOCl:Eu2+又はSi6-xAl8-x:Eu2+であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項5】
前記赤色蛍光体は、半値幅が95nm以下のものであることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項6】
前記赤色蛍光体が、(Sr,Ca)AlSiN:Eu2+又はCaAlSiN:Eu2+であることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項7】
前記青色発光素子は、発光ピーク波長が440nm以上、460nm以下にあるものであることを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の発光装置。
【請求項8】
前記緑色蛍光体の発光ピーク波長をλg、前記赤色蛍光体の発光ピーク波長をλrとし、(λg、λr)座標空間において、(540,675)、(530,647)、(510,625)、(510,675)の4点を結ぶ領域内に発光ピーク波長を有することを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子と蛍光体を備えた発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
照明を当てた食肉(特に牛肉)を鮮度よく見せるためには、食肉の赤みの部分とサシの部分とのコントラストが重要である。つまり、赤みの赤色を鮮やかに見せつつ、サシの白色を赤っぽく見せない照明が求められる。この効果を得るために、食肉専用の蛍光灯が従来から使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6349771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、エコロジーや省エネルギーの観点から、食肉用の照明を蛍光灯から発光ダイオード(「LED」、「発光素子」ともいう。)を用いた照明に置き換えたいという要求が高まってきた。食肉用のLED照明を実現するために、様々な方法が検討されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、青色発光素子(LED)のほかに赤色発光素子(LED)を用いるため、製造原価が高く、市場に普及しにくいという課題があった。また、赤色発光素子(LED)は、青色発光素子(LED)と比べて温度特性が悪いという問題もある。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、本発明は、低コストで温度特性に優れた青色発光素子と蛍光体の組合せで、食肉を鮮度良く見せることが発光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するためになされたものであり、発光素子と蛍光体を備えた発光装置であって、発光ピーク波長が430nm以上、470nm以下にある青色発光素子と、青色発光素子の出射光によって励起され、発光ピーク波長が510nm以上、545nm以下にある緑色蛍光体と、青色発光素子の出射光によって励起され、発光ピーク波長が625nm以上、675nm以下にある赤色蛍光体と、を備え、CIELAB(L’a’b’)色空間において、色品質尺度CQSに用いられるマンセル色見本のVS14に対応する座標(a’、b’)が、
b’=-0.75×a’+α (α≧77) ・・・・(式1)
の関係を満たす白色の出力光を出力するものである発光装置を提供する。
このような発光装置によれば、温度特性に優れた青色発光素子と蛍光体の組合せで、食肉を鮮度良く見せることができ、低コストで市場への普及が期待できるものとなる。
【0007】
このとき、前記αは、α≧82の関係である発光装置を提供しても良い。
このような発光装置によれば、温度特性に優れた青色発光素子と蛍光体の組合せで、食肉を鮮度良く見せることができ、低コストで市場への普及が期待できるものとなる。
【0008】
このとき、前記緑色蛍光体は、半値幅が70nm以下のものである発光装置を提供しても良い。
【0009】
また、前記緑色蛍光体が、CaMg(SiOCl:Eu2+又はSi6-xAl8-x:Eu2+である発光装置を提供しても良い。
これにより、食肉の鮮度をよりよく見せることが可能なものとなる。
【0010】
また、前記赤色蛍光体は、半値幅が95nm以下のものである発光装置を提供しても良い。
【0011】
また、前記赤色蛍光体が、(Sr,Ca)AlSiN:Eu2+又はCaAlSiN:Eu2+である発光装置を提供しても良い。
これにより、食肉の鮮度をよりよく見せることが可能なものとなる。
【0012】
また、前記青色発光素子は、発光ピーク波長が440nm以上、460nm以下にあるものである発光装置を提供しても良い。
これにより、食肉の鮮度をさらによく見せることが可能なものとなる。
【0013】
また、緑色蛍光体の発光ピーク波長をλg、前記赤色蛍光体の発光ピーク波長をλrとし、(λg、λr)座標空間において、(540,675)、(530,647)、(510,625)、(510,675)の4点を結ぶ領域内に発光ピーク波長を有する発光装置を提供しても良い。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明の発光装置によれば、温度特性に優れた青色発光素子と蛍光体の組合せで、食肉を鮮度良く見せることができ、低コストで市場への普及が期待できるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る発光装置の一例を示す。
図2】比較例1から3の発光装置の、CIELAB(L’a’b’)色空間における分布を示す。
図3】実施例1から3及び比較例4の発光装置の、CIELAB(L’a’b’)色空間における分布を示す。
図4】実施例4から7の発光装置の、CIELAB(L’a’b’)色空間における分布を示す。
図5】実施例8から10及び比較例5の発光装置の、CIELAB(L’a’b’)色空間における分布を示す。
図6】比較例6から9の発光装置の、CIELAB(L’a’b’)色空間における分布を示す。
図7】実施例1から10と比較例4から8の(λg、λr)座標空間における分布と、αの範囲を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0017】
上述のように、低コストで温度特性に優れた青色発光素子と蛍光体の組合せで、食肉を鮮度良く見せることができる発光装置が求められていた。
【0018】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、発光素子と蛍光体を備えた発光装置であって、発光ピーク波長が430nm以上、470nm以下にある青色発光素子と、前記青色発光素子の出射光によって励起され、発光ピーク波長が510nm以上、545nm以下にある緑色蛍光体と、前記青色発光素子の出射光によって励起され、発光ピーク波長が625nm以上、675nm以下にある赤色蛍光体と、を備え、CIELAB(L’a’b’)色空間において、色品質尺度CQSに用いられるマンセル色見本のVS14に対応する座標(a’、b’)が、
b’=-0.75×a’+α (α≧77) ・・・・(式1)
の関係を満たす白色の出力光を出力するものである発光装置により、食肉を鮮度良く見せることができ、低コストで市場への普及が期待できるものとなることを見出し、本発明を完成した。上記の式1は上記の特許文献1の仮想線と同様の方法で導出されるので、式1の導出方法は省略する。
【0019】
以下、図面を参照して説明する。
【0020】
白色の出力光については、CIELAB(L’a’b’)色空間において、色品質尺度CQSに用いられるマンセル色見本のVS14に対応する座標(a’、b’)が、
b’=-0.75×a’+α (α≧77) ・・・・(式1)
の関係を満たす白色の出力光であれば、食肉のサシなどの白い部分を鮮やかに見せつつ食肉の赤色を鮮やかに見せることができ、食肉を鮮度よく見せることができることが知られ
ている。本発明者は、このような特性を有する白色光を、青色発光素子と蛍光体の組合せで実現することを目的として鋭意調査を行い、本発明を完成させた。
【0021】
(発光装置)
図1に、本発明に係る発光装置100の一例を示す。本発明に係る発光装置100は、図1に示すように、基板40上に配置された青色発光素子10と、青色発光素子10からの光の一部を吸収して青色発光素子10の発光波長とは異なる波長の光Lに変換する蛍光体1とを含むものである。
【0022】
(発光素子)
青色発光素子10としては、発光ピーク波長が430nm以上、470nm以下の範囲にあるものを使用する。このような発光素子は、高品質で低コストのものが比較的容易に入手が可能なものである。青色発光素子は、発光ピーク波長が440nm以上、460nm以下にあるものが、食肉の鮮度をよりよく見せることが可能なものとなる点で、より好ましい。なお、青色発光素子10を使用することは必須であり、赤色発光素子を使用する必要はないが、目的に応じて青色発光素子に加えて、赤色等の発光素子等をさらに備えることは可能である。
【0023】
(蛍光体)
蛍光体1としては、青色発光素子10の出射光により励起されて緑色光を出射する緑色蛍光体1aと、赤色光を出射する赤色蛍光体1bを含む。
【0024】
緑色蛍光体1aとしては、青色発光素子の出射光によって励起され、発光ピーク波長が510nm以上、545nm以下にあるものを使用する。また、赤色蛍光体1bとしては、青色発光素子の出射光によって励起され、発光ピーク波長が625nm以上、675nm以下にあるものを使用する。
【0025】
緑色蛍光体1aは、半値幅が70nm以下のものが好ましい。また、緑色蛍光体1aとして、CaMg(SiOCl:Eu2+又はSi6-xAl8-x:Eu2+を使用することがより好ましい。このような緑色蛍光体を用いれば、食肉の鮮度をよりよく見せることが可能な発光装置となる。
【0026】
赤色蛍光体1bは、半値幅が95nm以下のものが好ましい。また、赤色蛍光体1bとして、(Sr,Ca)AlSiN:Eu2+又はCaAlSiN:Eu2+を使用することがより好ましい。このような赤色蛍光体を用いれば、食肉の鮮度をよりよく見せることが可能な発光装置となる。
【0027】
これらの緑色蛍光体1a、赤色蛍光体1bは、青色発光素子10を被覆する樹脂やガラスなどからなる封止体としても機能する蛍光体層20の中に分散させられ、パッケージ30に収納されている。蛍光体層20の中には樹脂の他、例えば、フィラー2や、蛍光体1等の分散性を高めるための添加物などを、適宜添加することができる。また、パッケージ30と基板40とは一体成型されていても良い。
【0028】
上記のような青色発光素子10、緑色蛍光体1a、赤色蛍光体1bの組み合わせとすることによって、CIELAB(L’a’b’)色空間において、色品質尺度CQSに用いられるマンセル色見本のVS14に対応する座標(a’、b’)が、
b’=-0.75×a’+α (α≧77) ・・・・(式1)
の関係を満たす白色の出力光を出力する発光装置となる。
【0029】
このような発光装置は、食肉を鮮度良く見せることができるものであり、低コストで温度特性に優れた青色発光素子を使用するため、市場への普及が期待できるものである。
【実施例
【0030】
以下、実施例を挙げて本発明について詳細に説明するが、これは本発明を限定するものではない。
【0031】
(比較例1から3)
比較例1として食肉用の蛍光ランプを、比較例2として特許文献1に記載の食肉用LEDを、比較例3として超高演色の白色LEDを用いた発光装置とした。
【0032】
(実施例1)
発光ピーク波長が452nmのInGaN系の青色チップ(発光素子)と、発光ピーク波長513nmの緑色蛍光体であるCaMg(SiOCl:Eu2+(以下、「CMSCl」と略す)と、発光ピーク波長650nmの赤色蛍光体であるCaAlSiN:Eu2+(以下、「CASN」と略す)蛍光体とを用いて、発光装置を作製した。熱硬化型のシリコーン樹脂と蛍光体の沈降を防ぐためにアエロジルを用いた。蛍光体層の配合比率を以下に示す。
シリコーン樹脂A(主剤) 0.5000g
シリコーン樹脂B(硬化剤) 0.5000g
アエロジル 0.0120g
CMSCl(513nm) 0.4149g
CASN(650nm) 0.1325g
【0033】
(実施例2)
発光ピーク波長が452nmのInGaN系の青色チップ(発光素子)と、発光ピーク波長528nmの緑色蛍光体であるCMSCl蛍光体と、発光ピーク波長650nmのCASN蛍光体とを用いて、発光装置を作製した。熱硬化型のシリコーン樹脂と蛍光体の沈降を防ぐためにアエロジルを用いた。蛍光体層の配合比率を以下に示す。
シリコーン樹脂A(主剤) 0.5000g
シリコーン樹脂B(硬化剤) 0.5000g
アエロジル 0.0120g
CMSCl(528nm) 0.2109g
CASN(650nm) 0.1466g
【0034】
(比較例4)
発光ピーク波長が452nmのInGaN系の青色チップ(発光素子)と、発光ピーク波長536nmの緑色蛍光体であるSi6-xAl8-x:Eu2+(以下、「β-SiAlON」と略す)蛍光体と、発光ピーク波長650nmのCASN蛍光体とを用いて、発光装置を作製した。熱硬化型のシリコーン樹脂と蛍光体の沈降を防ぐためにアエロジルを用いた。蛍光体層の配合比率を以下に示す。
シリコーン樹脂A(主剤) 0.5000g
シリコーン樹脂B(硬化剤) 0.5000g
アエロジル 0.0120g
β-SiAlON(536nm) 0.4166g
CASN(650nm) 0.1189g
【0035】
(実施例3)
発光ピーク波長が452nmのInGaN系の青色チップ(発光素子)と、発光ピーク波長513nmの緑色蛍光体であるCMSCl蛍光体と、発光ピーク波長636nmの赤色蛍光体である(Sr,Ca)AlSiN:Eu2+(以下、「SCASN」と略す)蛍光体とを用いて、発光装置を作製した。熱硬化型のシリコーン樹脂と蛍光体の沈降を防ぐためにアエロジルを用いた。蛍光体層の配合比率を以下に示す。
シリコーン樹脂A(主剤) 0.5000g
シリコーン樹脂B(硬化剤) 0.5000g
アエロジル 0.0120g
CMSCl(513nm) 0.3779g
SCASN(636nm) 0.0769g
【0036】
(実施例4)
発光ピーク波長が452nmのInGaN系の青色チップ(発光素子)と、発光ピーク波長513nmの緑色蛍光体であるCMSCl蛍光体と、発光ピーク波長642nmのSCASN蛍光体とを用いて、発光装置を作製した。熱硬化型のシリコーン樹脂と蛍光体の沈降を防ぐためにアエロジルを用いた。蛍光体層の配合比率を以下に示す。
シリコーン樹脂A(主剤) 0.5000g
シリコーン樹脂B(硬化剤) 0.5000g
アエロジル 0.0120g
CMSCl(513nm) 0.5276g
SCASN(642nm) 0.0319g
【0037】
(実施例5)
発光ピーク波長が452nmのInGaN系の青色チップ(発光素子)と、発光ピーク波長513nmの緑色蛍光体であるCMSCl蛍光体と、発光ピーク波長655nmのCASN蛍光体とを用いて、発光装置を作製した。熱硬化型のシリコーン樹脂と蛍光体の沈降を防ぐためにアエロジルを用いた。蛍光体層の配合比率を以下に示す。
シリコーン樹脂A(主剤) 0.5000g
シリコーン樹脂B(硬化剤) 0.5000g
アエロジル 0.0120g
CMSCl(513nm) 0.4825g
CASN(655nm) 0.0967g
【0038】
(実施例6)
発光ピーク波長が452nmのInGaN系の青色チップ(発光素子)と、発光ピーク波長513nmの緑色蛍光体であるCMSCl蛍光体と、発光ピーク波長660nmのCASN蛍光体を用いて、発光装置を作製した。熱硬化型のシリコーン樹脂と蛍光体の沈降を防ぐためにアエロジルを用いた。蛍光体層の配合比率を以下に示す。
シリコーン樹脂A(主剤) 0.5000g
シリコーン樹脂B(硬化剤) 0.5000g
アエロジル 0.0120g
CMSCl(513nm) 0.5875g
CASN(660nm) 0.0734g
【0039】
(実施例7)
発光ピーク波長が452nmのInGaN系の青色チップ(発光素子)と、発光ピーク波長513nmの緑色蛍光体であるCMSCl蛍光体と、発光ピーク波長670nmのCASN蛍光体を用いて、発光装置を作製した。熱硬化型のシリコーン樹脂と蛍光体の沈降を防ぐためにアエロジルを用いた。蛍光体層の配合比率を以下に示す。
シリコーン樹脂A(主剤) 0.5000g
シリコーン樹脂B(硬化剤) 0.5000g
アエロジル 0.0120g
CMSCl(513nm) 0.4196g
CASN(670nm) 0.0524g
【0040】
(実施例8)
発光ピーク波長が452nmのInGaN系の青色チップ(発光素子)と、発光ピーク波長528nmの緑色蛍光体であるCMSCl蛍光体と、発光ピーク波長670nmのCASN蛍光体を用いて、発光装置を作製した。熱硬化型のシリコーン樹脂と蛍光体の沈降を防ぐためにアエロジルを用いた。蛍光体層の配合比率を以下に示す。
シリコーン樹脂A(主剤) 0.5000g
シリコーン樹脂B(硬化剤) 0.5000g
アエロジル 0.0120g
CMSCl(528nm) 0.3903g
CASN(670nm) 0.0904g
【0041】
(実施例9)
発光ピーク波長が452nmのInGaN系の青色チップ(発光素子)と、発光ピーク波長536nmの緑色蛍光体であるβ-SiAlON蛍光体と、発光ピーク波長670nmのCASN蛍光体を用いて、発光装置を作製した。熱硬化型のシリコーン樹脂と蛍光体の沈降を防ぐためにアエロジルを用いた。蛍光体層の配合比率を以下に示す。
シリコーン樹脂A(主剤) 0.5000g
シリコーン樹脂B(硬化剤) 0.5000g
アエロジル 0.0120g
β-SiAlON(536nm) 0.6773g
CASN(670nm) 0.0769g
【0042】
(実施例10)
発光ピーク波長が452nmのInGaN系の青色チップ(発光素子)と、発光ピーク波長528nmの緑色蛍光体であるCMSCl蛍光体と、発光ピーク波長660nmのCASN蛍光体を用いて、発光装置を作製した。熱硬化型のシリコーン樹脂と蛍光体の沈降を防ぐためにアエロジルを用いた。蛍光体層の配合比率を以下に示す。
シリコーン樹脂A(主剤) 0.5000g
シリコーン樹脂B(硬化剤) 0.5000g
アエロジル 0.0120g
CMSCl(528nm) 0.3367g
CASN(660nm) 0.0780g
【0043】
(比較例5)
発光ピーク波長が452nmのInGaN系の青色チップ(発光素子)と、発光ピーク波長544nmの緑色蛍光体であるβ-SiAlON蛍光体と、発光ピーク波長670nmのCASN蛍光体を用いて、発光装置を作製した。熱硬化型のシリコーン樹脂と蛍光体の沈降を防ぐためにアエロジルを用いた。蛍光体層の配合比率を以下に示す。
シリコーン樹脂A(主剤) 0.5000g
シリコーン樹脂B(硬化剤) 0.5000g
アエロジル 0.0120g
β-SiAlON(544nm) 0.3858g
CASN(670nm) 0.0349g
【0044】
(比較例6)
発光ピーク波長が452nmのInGaN系の青色チップ(発光素子)と、発光ピーク波長544nmの緑色蛍光体であるβ-SiAlON蛍光体と、発光ピーク波長660nmのCASN蛍光体を用いて、発光装置を作製した。熱硬化型のシリコーン樹脂と蛍光体の沈降を防ぐためにアエロジルを用いた。蛍光体層の配合比率を以下に示す。
シリコーン樹脂A(主剤) 0.5000g
シリコーン樹脂B(硬化剤) 0.5000g
アエロジル 0.0120g
β-SiAlON(544nm) 0.3819g
CASN(660nm) 0.0368g
【0045】
(比較例7)
発光ピーク波長が452nmのInGaN系の青色チップ(発光素子)と、発光ピーク波長528nmの緑色蛍光体であるCMSCl蛍光体と、発光ピーク波長642nmのSCASN蛍光体を用いて、発光装置を作製した。熱硬化型のシリコーン樹脂と蛍光体の沈降を防ぐためにアエロジルを用いた。蛍光体層の配合比率を以下に示す。
シリコーン樹脂A(主剤) 0.5000g
シリコーン樹脂B(硬化剤) 0.5000g
アエロジル 0.0120g
CMSCl(528nm) 0.1471g
SCASN(642nm) 0.0154g
【0046】
(比較例8)
発光ピーク波長が452nmのInGaN系の青色チップ(発光素子)と、発光ピーク波長536nmの緑色蛍光体であるβ-SiAlON蛍光体と、発光ピーク波長660nmのCASN蛍光体を用いて、発光装置を作製した。熱硬化型のシリコーン樹脂と蛍光体の沈降を防ぐためにアエロジルを用いた。蛍光体層の配合比率を以下に示す。
シリコーン樹脂A(主剤) 0.5000g
シリコーン樹脂B(硬化剤) 0.5000g
アエロジル 0.0120g
β-SiAlON(536nm) 0.5829g
CASN(660nm) 0.0662g
【0047】
(比較例9)
発光ピーク波長が452nmのInGaN系の青色チップ(発光素子)と、発光ピーク波長535nmの緑色蛍光体であるY(Al,Ga)12:Ce3+(以下、「GaYAG」と略す)蛍光体と、発光ピーク波長660nmのCASN蛍光体を用いて、発光装置を作製した。熱硬化型のシリコーン樹脂と蛍光体の沈降を防ぐためにアエロジルを用いた。蛍光体層の配合比率を以下に示す。
シリコーン樹脂A(主剤) 0.5000g
シリコーン樹脂B(硬化剤) 0.5000g
アエロジル 0.0120g
GaYAG(535nm) 0.7344g
CASN(660nm) 0.0551g
【0048】
表1に、上記実施例1から10及び比較例4から9で使用した蛍光体の粉末特性をまとめた。
【0049】
【表1】
【0050】
実施例では、緑色蛍光体としてはCMSClやβ-SiAlONを用いたが、他の蛍光体でも適用できる。また、赤色蛍光体としては、SCASN,CASNを用いたが、他の蛍光体でも適用できる。
【0051】
図2から6に、比較例1から9、実施例1から10のCIELAB(L’a’b’)色空間における分布を示す。
【0052】
また、表2に、従来技術の比較例1から3、青色発光素子(LED)と緑色蛍光体と赤色蛍光体を組み合わせた比較例4から9及び実施例1から10について、条件及び評価結果をまとめた。なお、表2のαは、特許文献1の仮想線の導出手法と同様に、作製した白色の出力光を出力する発光装置を測定して得られたa’、b’と、
b’=-0.75×a’+α ・・・・(式2)
の式から計算した。
【0053】
また、表2中の評価の項目は、以下の意味である。
「◎」: 上記の式2において、α≧87の関係を満たす。
「〇」: 上記の式2において、82≦α<87の関係を満たす。
「△」: 上記の式2において、77≦α<82の関係を満たす。
「×」: 上記の式2において、α≧77の関係を満たさない。
【0054】
このとき前記αの範囲が、α≧77であれば食肉の鮮度をよく見せることができる。α≧82を満たすものであればより赤みが強調された白色の出力光を、α≧87を満たすものであればさらに赤みが強調された白色の出力光を出力する発光装置となるため、好ましい。
【0055】
【表2】
【0056】
表2に示すように、実施例1から10の発光装置では、CIELAB(L’a’b’)色空間において、演色評価数CQSに用いられるマンセル色見本のVS14に対応する座標(a’、b’)が、
b’=-0.75×a’+α (α≧77) ・・・・(式1)
の関係を満たす白色の出力光を出力するものであることがわかる。
特に、実施例1、実施例4から8と10の発光装置は、
b’=-0.75×a’+α (α≧82) ・・・・(式3)
の関係を満たす白色の出力光を出力するものであり、より赤みが強調されるため好ましい。
さらに、実施例5から7の発光装置は、
b’=-0.75×a’+α (α≧87) ・・・・(式4)
の関係を満たす白色の出力光を出力するものであり、さらに赤みが強調された発光装置であることがわかる。
【0057】
また、比較例3、7、9からわかる通り平均演色評価数Raが高くても前記αがα≧77を満たすとは限らない。
比較例9で用いる赤色蛍光体は比較例8と同じである。一方、比較例9と比較例8の緑色蛍光体とを比較すると、発光ピーク波長は535nmに対し536nmと大きな違いはないが、半値幅が108nmに対し52nmと大きく異なる。比較例9のαより比較例8のαの方が高いことから、緑色蛍光体の半値幅は狭い方が好ましい。
【0058】
ここで、緑色蛍光体の発光ピーク波長をλg(nm)、前記赤色蛍光体の発光ピーク波長をλr(nm)とし、(λg、λr)座標空間を考える。
【0059】
図7は、横軸に緑色蛍光体の発光ピーク波長λg(nm)を、縦軸に赤色蛍光体の発光ピーク波長λr(nm)をとり、実施例1から10と比較例4から8の前記αの範囲をプロットした。
図中の●は、α≧87を満たすもの、〇は82≦α<87を満たすもの、△は77≦α<82を満たすもの、×はα≧77を満たさない(α<77)ものである。
【0060】
図7より、(540,675)、(530,647)、(510,625)、(510,675)の4点を結ぶ領域内の発光ピーク波長の組合せた発光装置であれば、α≧77を満たすことがわかる。
【0061】
更に、(536,675)、(530,655)、(510,635)、(510,675)の4点を結ぶ領域内の発光ピーク波長の組合せた発光装置であれば、α≧82を満たすため、さらに好ましい。
【0062】
以上のとおり、本発明の実施例によれば、発光ピーク波長が430nm以上、470nm以下にある青色発光素子と、青色発光素子の出射光によって励起され、発光ピーク波長が510nm以上、545nmnm以下にある緑色蛍光体と、青色発光素子の出射光によって励起され、発光ピーク波長が625nm以上、675nm以下にある赤色蛍光体とを組み合わせることで、食肉を鮮度良く見せることができ、低コストで市場への普及が期待できる発光装置を得ることができた。
【0063】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0064】
1…蛍光体
1a…緑色蛍光体
1b…赤色蛍光体
2…フィラー
10…青色発光素子(LED)
20…蛍光体層
30…パッケージ
40…基板
100…発光装置
L…光
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7