(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-10
(45)【発行日】2024-07-19
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
H04L 69/18 20220101AFI20240711BHJP
【FI】
H04L69/18
(21)【出願番号】P 2022546924
(86)(22)【出願日】2021-08-31
(86)【国際出願番号】 JP2021031933
(87)【国際公開番号】W WO2022050272
(87)【国際公開日】2022-03-10
【審査請求日】2023-02-27
(31)【優先権主張番号】P 2020149677
(32)【優先日】2020-09-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114971
【氏名又は名称】青木 修
(72)【発明者】
【氏名】友藤 真司
【審査官】前田 健人
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-095747(JP,A)
【文献】特開2012-099958(JP,A)
【文献】特開2015-085519(JP,A)
【文献】特開2012-019303(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 69/18
H04L 12/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器において、
第1の有線LAN回路と、
第2の有線LAN回路と、
有線LAN通信に使用する有線LAN回路を、前記第1の有線LAN回路および前記第2の有線LAN回路のうちの一方から他方へ切り替える有線LAN管理部とを備え、
前記第1の有線LAN回路の上限通信速度は、所定の第1値であり、
前記第2の有線LAN回路の上限通信速度は、所定の第2値であり、
前記第2値は、前記第1値より小さく、
前記第2の有線LAN回路の消費電力は、前記第1の有線LAN回路の消費電力より少なく、
前記有線LAN管理部は、当該電子機器が待機状態となるときに、前記有線LAN通信に使用する有線LAN回路を、前記第1の有線LAN回路から前記第2の有線LAN回路へ切り替えること、
を特徴とする電子機器。
【請求項2】
前記有線LAN管理部は、当該電子機器が待機状態となるときに、(a)前記第2の有線LAN回路の電源を投入し、(b)前記第1の有線LAN回路でネットワークを介して、当該電子機器のIPアドレスを前記第1の有線LAN回路のIPアドレスから前記第2の有線LAN回路のIPアドレスへ切り替えさせるアドレス切替通知を、特定のホスト装置に送信し、(c)前記第1の有線LAN回路の電源を遮断することを特徴とする請求項1記載の電子機器。
【請求項3】
前記有線LAN管理部は、前記第1の有線LAN回路または前記第2の有線LAN回路で、前記特定のホスト装置から、前記アドレス切替通知に対応する応答を受信した後に、前記第1の有線LAN回路の電源を遮断することを特徴とする請求項2記載の電子機器。
【請求項4】
前記第1の有線LAN回路および前記第2の有線LAN回路は、それぞれ、MAC層回路を含み、
前記有線LAN管理部は、前記第2の有線LAN回路の電源投入後に、(a)前記第2の有線LAN回路のIPアドレスを取得し、(b)前記第2の有線LAN回路のMACアドレスとIPアドレスとの対応関係がネットワーク上の通信相手のARPテーブルに登録された後に、前記第1の有線LAN回路で前記アドレス切替通知を前記特定のホスト装置に送信することを特徴とする請求項
2記載の電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ある端末装置は、ネットワーク接続機能を有し、省エネ状態に移行する際に、ネットワーク通信の通信速度を、物理層デバイスで設定可能な最も少ない通信速度に設定している(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、有線LAN(Local Area Network)の通信速度は、高速化しているが、高速かとともに、有線LAN回路の消費電力も大きくなっている。
【0005】
有線LAN回路において、例えば、IEEE802.3azで標準化された省電力型イーサーネット(Energy Efficient Ethernet)などのアイドル時の省電力技術があるものの、上限の通信速度が高い(例えば10Gbpsの)有線LAN回路の通信速度を低く制限しても、上限の通信速度が低い(例えば100Mbpsの)有線LAN回路より消費電力が大きくなってしまう。
【0006】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、待機状態において低消費電力で動作する電子機器を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る電子機器は、第1の有線LAN回路と、第2の有線LAN回路と、有線LAN通信に使用する有線LAN回路を、前記第1の有線LAN回路および前記第2の有線LAN回路のうちの一方から他方へ切り替える有線LAN管理部とを備える。前記第1の有線LAN回路の上限通信速度は、所定の第1値であり、前記第2の有線LAN回路の上限通信速度は、所定の第2値であり、前記第2値は、前記第1値より小さく、前記第2の有線LAN回路の消費電力は、前記第1の有線LAN回路の消費電力より少ない。そして、前記有線LAN管理部は、当該電子機器が待機状態となるときに、前記有線LAN通信に使用する有線LAN回路を、前記第1の有線LAN回路から前記第2の有線LAN回路へ切り替える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、待機状態において低消費電力で動作する電子機器が得られる。
【0009】
本発明の上記又は他の目的、特徴および優位性は、添付の図面とともに以下の詳細な説明から更に明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態に係る電子機器の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す電子機器の動作を説明するフローチャートである。
【
図3】
図3は、
図2におけるモード切替動作(ステップS4,S7)について説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0012】
図1は、本発明の実施の形態に係る電子機器の構成を示すブロック図である。
【0013】
図1に示す電子機器1は、所定機能を有する内部装置11を備え、ネットワーク2を介してホスト装置3から受信される要求に応じて、内部装置11を使用して、その要求に応じた処理を実行する。この実施の形態では、電子機器1は、プリンター、スキャナー、複合機などといった画像形成装置であって、内部装置11は、要求された画像をプリントシートにプリントするプリント装置、原稿から原稿画像を光学的に読み取り原稿画像の画像データを生成する画像読取装置などである。ホスト装置3は、例えばパーソナルコンピューターなどであって、電子機器1用のドライバー3aをインストールされた、ネットワーク機能を有する端末装置である。
【0014】
さらに、電子機器1は、高速有線LAN回路12、省電力有線LAN回路13、記憶装置14、操作パネル15、およびシステムコントローラー16を備える。
【0015】
高速有線LAN回路12は、有線でネットワーク2に接続可能なネットワークインターフェイス回路であって、LANケーブルを接続可能なLANポート12a、物理層回路12b、およびMAC層回路12cを備える。物理層回路12bおよびMAC層回路12cは、例えばSoC(System on a chip)で実装される。
【0016】
省電力有線LAN回路13は、有線でネットワーク2に接続可能なネットワークインターフェイス回路であって、LANケーブルを接続可能なLANポート13a、物理層回路13b、およびMAC層回路13cを備える。物理層回路13bおよびMAC層回路13cは、例えばSoCで実装される。
【0017】
物理層回路12b,13bは、OSI階層モデルにおける最下層(物理層)の通信機能を有する回路であって、物理層回路13bの上限通信速度は、物理層回路12bの上限通信速度より低い。MAC層回路12c,13cは、OSI階層モデルにおける第2層(データリンク層)の通信機能(メディアアクセス制御機能など)を有する回路である。
【0018】
つまり、高速有線LAN回路12の上限通信速度(具体的には物理層の上限通信速度)は、所定の第1値(例えば10Gbps)であり、省電力有線LAN回路13の上限通信速度(具体的には物理層の上限通信速度)は、所定の第2値(例えば100Mbps)であり、この第2値は、上述の第1値より小さい。そして、省電力有線LAN回路13の消費電力は、高速有線LAN回路12の消費電力より低い。少なくとも、アイドル時において、省電力有線LAN回路13の消費電力は、高速有線LAN回路12の消費電力より低い。
【0019】
記憶装置14は、フラッシュメモリーなどといった不揮発性の記憶装置である。
【0020】
操作パネル15は、当該電子機器1の筐体表面に設置され、ユーザーに各種情報を表示する液晶ディスプレイパネル、インジケーターなどの表示装置と、ユーザー操作を受け付けるタッチパネル、ハードキーなどの入力装置を備える。
【0021】
システムコントローラー16は、CPU(Central Processing Unit)などといったプロセッサー(コンピューター)を備え、記憶装置14などに記憶されているプログラムをそのプロセッサーで実行することで、操作パネル15に対するユーザー操作やホスト装置3(ドライバー3a)からの要求に従って、内部装置11などを制御するとともに、各種処理部として動作する。ここでは、システムコントローラー16は、通信処理部16aおよび有線LAN管理部16bとして動作する。
【0022】
通信処理部16aは、OSI階層モデルにおける第3層以上の通信機能を有し、有線LAN回路12,13を使用して、ホスト装置などとのデータ通信(要求の受信、通知や処理結果の送信など)を行う。
【0023】
有線LAN管理部16bは、ホスト装置3などとの有線LAN通信に使用する有線LAN回路を、高速有線LAN回路12および省電力有線LAN回路13のうちの一方から他方へ切り替える。
【0024】
特に、有線LAN管理部16bは、当該電子機器1の動作状態がレディ状態から待機状態となるときに、有線LAN通信に使用する有線LAN回路を、高速有線LAN回路12から省電力有線LAN回路13へ切り替える。
【0025】
具体的には、有線LAN管理部16bは、当該電子機器1がレディ状態から待機状態となるときに、(a)省電力有線LAN回路13の電源を投入し、(b)高速有線LAN回路12でネットワーク2を介して、当該電子機器1のIP(Internet Protocol)アドレスを高速有線LAN回路12のIPアドレスから省電力有線LAN回路13のIPアドレスへ切り替えさせるアドレス切替通知を、特定のホスト装置3に送信し、(c)高速有線LAN回路12の電源を遮断する。
【0026】
アドレス切替通知の宛先は、通信中の(つまり、通信セッションが確立している)ホスト装置3のネットワーク識別子(IPアドレスなど)としてもよいし、通信処理部16aまたは有線LAN管理部16bが、通信したホスト装置3のネットワーク識別子を通信履歴として記憶装置14に記憶していき、有線LAN管理部16bが、その通信履歴に含まれるネットワーク識別子をアドレス切替通知の宛先としてもよい。
【0027】
さらに、この実施の形態では、有線LAN管理部16bは、高速有線LAN回路12または省電力有線LAN回路13で、上述の特定のホスト装置3から、アドレス切替通知に対応する応答を受信した後に、省電力有線LAN回路13の電源を遮断する。
【0028】
また、この実施の形態では、有線LAN回路12,13は、上述のように、それぞれ、MAC層回路12c,13cを含んでおり、有線LAN管理部16bは、省電力有線LAN回路13の電源投入後に、(a)DHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)などで省電力有線LAN回路13のIPアドレス(動的IPアドレス)を取得し、(b)省電力有線LAN回路13(MAC層回路13c)のMAC(Media Access Control)アドレスとIPアドレスとの対応関係がネットワーク2上の通信相手(具体的にはネットワーク2内のルーターやホスト装置3)のARP(Address Resolution Protocol)テーブルに登録された後に、高速有線LAN回路12でアドレス切替通知を特定のホスト装置3に送信する。
【0029】
なお、有線LAN管理部16bは、当該電子機器1の動作状態が待機状態からレディ状態となるときに、同様の処理で、有線LAN通信に使用する有線LAN回路を、省電力有線LAN回路13から高速有線LAN回路12へ切り替える。
【0030】
次に、上記電子機器1の動作について説明する。
図2は、
図1に示す電子機器の動作を説明するフローチャートである。
【0031】
電子機器1が起動すると、システムコントローラー16は、まず、電子機器1の動作状態をレディ状態(つまり、内部装置11を使用する機能をただちに使用可能な状態)に移行する(ステップS1)。レディ状態では、有線LAN管理部16bは、ネットワーク2を介した有線LAN通信に使用する有線LAN回路を、高速有線LAN回路12に設定し、通信処理部16aは、高速通信モードを選択し、高速有線LAN回路12を使用して有線LAN通信を行う(ステップS2)。高速通信モードでは、高速有線LAN回路12の電源が投入され、省電力有線LAN回路13の電源は遮断され、高速有線LAN回路12は、例えばDHCPでIPアドレスを取得し、ネットワーク2に対してリンクアップする。
【0032】
この状態で、ホスト装置3のドライバー3aが要求を送信する場合、ドライバー3aは、例えば TCP(Transmission Control Protocol)での電子機器1用の特定のポート番号で問合せをブロードキャスト送信して電子機器1からの応答に基づいて電子機器1のIPアドレスを取得し、そのIPアドレス宛てに要求を送信する。
【0033】
その後、システムコントローラー16は、無操作期間が所定時間を超えた場合や予めスケジューリングされた時刻になった場合などにおいて、当該電子機器1の動作状態をレディ状態から待機状態(つまり、内部装置11などの所定部位の電源を遮断しているがシステムコントローラー16での要求の受け付けなどは可能な状態)へ切り替える。
【0034】
待機状態への移行を検出すると(ステップS3)、有線LAN管理部16bは、モード切替動作を実行し(ステップS4)、通信処理部16aは、省電力通信モードを選択し、省電力有線LAN回路13を使用して有線LAN通信を行う(ステップS5)。
【0035】
また、待機状態において、システムコントローラー16は、ユーザー操作が検出された場合や予めスケジューリングされた時刻になった場合などにおいて、当該電子機器1の動作状態を待機状態からレディ状態へ切り替える。
【0036】
レディ状態への移行を検出すると(ステップS6)、有線LAN管理部16bは、モード切替動作を実行し(ステップS7)、通信処理部16aは、高速通信モードを選択し、高速有線LAN回路12を使用して有線LAN通信を行う(ステップS2)。
【0037】
このように、電子機器1の動作状態に応じて、有線LAN回路12,13のうちの1つのみが電源投入されネットワーク通信に使用される。
【0038】
ここで、モード切替動作(ステップS4,S7)について説明する。
図3は、
図2におけるモード切替動作(ステップS4,S7)について説明するフローチャートである。
【0039】
有線LAN管理部16bは、停止中の有線LAN回路(ステップS4では省電力有線LAN回路13、ステップS7では高速有線LAN回路12)の電源を投入し起動する(ステップS11)。
【0040】
有線LAN管理部16bは、起動した有線LAN回路のIPアドレスを取得し、ネットワーク2に対してリンクアップする(ステップS12)。
【0041】
その後、有線LAN管理部16bは、元々動作している有線LAN回路(ステップS4では高速有線LAN回路12、ステップS7では省電力有線LAN回路13)を使用して、アドレス切替通知をホスト装置3に送信する(ステップS13)。
【0042】
この時点では、高速有線LAN回路12および省電力有線LAN回路13の両方とも、有線LAN通信が可能な状態となっている。
【0043】
ホスト装置3のドライバー3aは、このアドレス切替通知を受信すると、電子機器1に対して記憶されているIPアドレス(例えば、電子機器1用のポート番号に関連付けられているIPアドレス)を、アドレス切替通知で通知されたIPアドレスに更新する。ホスト装置3のドライバー3aは、アドレス切替通知を受信すると、あるいは、IPアドレスを更新すると、ただちに、アドレス切替通知に対する応答(受信確認など)を電子機器1(更新前のIPアドレスまたは更新後のIPアドレス)に送信する。
【0044】
そして、有線LAN管理部16bは、いずれかの有線LAN回路でその応答を受信すると、元々動作している有線LAN回路(ステップS4では高速有線LAN回路12、ステップS7では省電力有線LAN回路13)の電源を遮断し、その有線LAN回路を停止させる(ステップS14)。
【0045】
以上のように、上記実施の形態によれば、省電力有線LAN回路13の上限通信速度は、高速有線LAN回路12の上限通信速度より低く、省電力有線LAN回路13の消費電力は、高速有線LAN回路12の消費電力より少ない。そして、有線LAN管理部16bは、当該電子機器1が待機状態となるときに、有線LAN通信に使用する有線LAN回路を、高速有線LAN回路12から省電力有線LAN回路13へ切り替える。
【0046】
これにより、高速有線LAN回路12を低速で動作させる場合に比べて、待機状態において低消費電力でネットワーク通信などの動作が行われる。
【0047】
なお、上述の実施の形態に対する様々な変更および修正については、当業者には明らかである。そのような変更および修正は、その主題の趣旨および範囲から離れることなく、かつ、意図された利点を弱めることなく行われてもよい。つまり、そのような変更および修正が請求の範囲に含まれることを意図している。
【0048】
例えば、上記実施の形態において、有線LAN回路12,13に対して動的IPアドレスを割り当てずに静的IPアドレスを予め割り当て、それらの静的IPアドレスをドライバー3aに予め登録しておいてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、例えば、画像形成装置に適用可能である。