IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヨーゼフ マイスナー ゲーエムベーハー ウント コー カーゲーの特許一覧

特許7519023芳香族化合物の断熱ニトロ化のプロセスおよびプラント
<>
  • 特許-芳香族化合物の断熱ニトロ化のプロセスおよびプラント 図1
  • 特許-芳香族化合物の断熱ニトロ化のプロセスおよびプラント 図2
  • 特許-芳香族化合物の断熱ニトロ化のプロセスおよびプラント 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-10
(45)【発行日】2024-07-19
(54)【発明の名称】芳香族化合物の断熱ニトロ化のプロセスおよびプラント
(51)【国際特許分類】
   C07C 201/08 20060101AFI20240711BHJP
   C07C 205/06 20060101ALI20240711BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240711BHJP
【FI】
C07C201/08
C07C205/06
C07B61/00 300
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019541406
(86)(22)【出願日】2017-12-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-02-27
(86)【国際出願番号】 EP2017082770
(87)【国際公開番号】W WO2018141451
(87)【国際公開日】2018-08-09
【審査請求日】2019-10-25
【審判番号】
【審判請求日】2022-01-18
(31)【優先権主張番号】102017000973.2
(32)【優先日】2017-02-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102017106881.3
(32)【優先日】2017-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102017110084.9
(32)【優先日】2017-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】506348824
【氏名又は名称】ヨーゼフ マイスナー ゲーエムベーハー ウント コー カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100069073
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 和保
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン ポールマン
(72)【発明者】
【氏名】ハインリッヒ ヘルマン
(72)【発明者】
【氏名】ミルコ ヘンデル
(72)【発明者】
【氏名】ソフィー ヴェルニッツ
(72)【発明者】
【氏名】ステファン ファンケル
【合議体】
【審判長】木村 敏康
【審判官】冨永 保
【審判官】松元 麻紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-217357(JP,A)
【文献】英国特許出願公告第995004(GB,A)
【文献】特公昭37-12666(JP,B1)
【文献】米国特許第4241229(US,A)
【文献】特表2013-503127(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対応するニトロ化芳香族有機化合物の使用によって、有機相および酸相の間の界面張力を低下させるための、且つ、ニトロ化可能な芳香族有機化合物のニトロ化反応における有機相および酸相の分散性を改善するための方法において、
前記ニトロ化可能な芳香族有機化合物は、硝酸および硫酸を含有する硝化酸混合物の存在下で、断熱ニトロ化反応を介して、前記対応するニトロ化芳香族有機化合物に変換されること、
前記対応するニトロ化芳香族有機化合物は、反応開始混合物に添加されること、該反応開始混合物は、(i)ニトロ化される前記ニトロ化可能な芳香族有機化合物および(ii)前記硝化酸混合物を具備すること、およびニトロ化反応が、前記対応するニトロ化芳香族有機化合物の存在下で開始され実行されること;および
取得された前記対応するニトロ化芳香族有機化合物は、ニトロ化反応に部分的に再循環され、それに続くニトロ化反応は、前記対応するニトロ化芳香族有機化合物の存在下で開始され実行されること;
前記ニトロ化反応は、モノニトロ化として断熱反応条件下において実行されること;
使用される前記硝化酸混合物は、前記硝化酸混合物に基づいて、60~79重量%の量の硫酸と、1~8重量%の硝酸と、特に合計で100重量%となる比率の水を含有すること;
前記ニトロ化反応は、管状反応器において実行されること;および
ニトロ化反応に添加される前記対応するニトロ化芳香族有機化合物の量は、添加される前記対応するニトロ化芳香族有機化合物が、有機相および酸相の間の界面張力を低下させ且つ有機相および酸相の分散性を改善する量に選択されること、
ニトロ化される前記ニトロ化可能な芳香族有機化合物に基づいた、ニトロ化反応に添加される前記対応するニトロ化芳香族有機化合物の重量比が、0.01~60重量%の範囲内であること、
前記硝化酸混合物の硫酸に基づいた、ニトロ化反応に添加される前記対応するニトロ化芳香族有機化合物の重量比が、0.01~10重量%の範囲内であること、および、
前記管状反応器における反応混合物の反応時間、前記硝化酸混合物の硝酸が、少なくとも99%の範囲内で変換されるように選択されることを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニトロ化の技術分野、特に、好ましくは断熱ニトロ化によるニトロ化有機芳香族化合物(以下、「ニトロ化芳香族」、「ニトロ化生成物」、「芳香族ニトロ化生成物」、「芳香族ニトロ化化合物」、「ニトロ化生成物」と同義語)に関する。
【0002】
特に、本発明は、対応するニトロ化芳香族有機化合物(ニトロ化芳香族化合物)を与えるための、ニトロ化可能な芳香族有機化合物(芳香族化合物)のニトロ化、特に断熱ニトロ化の方法に関する。
【0003】
本発明はさらに、対応するニトロ化芳香族有機化合物(ニトロ化芳香族化合物)の形でニトロ化生成物を与えるための、ニトロ化可能な芳香族有機化合物(芳香族化合物)のニトロ化、特に断熱ニトロ化のための製造プラント(ニトロ化プラントまたはプラント)に関し、 特に、本発明の方法を実施するための生産プラントに関する。
【0004】
最後に、本発明は、ニトロ化芳香族有機化合物(ニトロ化芳香族化合物)の本発明による使用に関する。
【背景技術】
【0005】
芳香族ニトロ化合物(例:ニトロベンゼン(MNB)、モノニトロトルエン(MNT)、ジニトロトルエン(DNT)、トリニトロトルエン(TNT)、ニトロクロロベンゼン(MNCB)など)は、通常、対応する開始芳香族化合物(例、ベンゼン、トルエン、キシレン、 クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなど)のニトロ化によって、特に対応する開始芳香族化合物と硝酸との、触媒としての硫酸及び水結合剤の存在下での反応によって、すなわち、対応する出発芳香族化合物と硝化酸(すなわち、反応の開始時に混合酸とも呼ばれ、反応の終了時に使用済み(硝化)酸とも呼ばれる硝酸/硫酸硝化酸混合物との反応によって、調製される。
【0006】
従来技術において、硝酸/硫酸硝化酸混合物による芳香族のニトロ化は、酸相で起こる対応するニトロ化芳香族化合物を形成するために、硝酸でニトロ化される芳香族化合物の反応によって、有機相と酸相の不均一な液体/液体混合物として実行される。そのため、最初にニトロ化される芳香族化合物は、それと反応することができるように、有機相から酸相に移行しなければならない。それから、酸相において形成されたニトロ化芳香族化合物は、溶解限界を超えた後、有機相として分離する;この有機相は、主に全体的な硝酸もしくはニトロ化される芳香族化合物のいずれかが反応したときに、主にニトロ化の開始時にニトロ化される芳香族化合物と、反応の終了時の所望のニトロ化芳香族化合物とからなる。
【0007】
芳香族化合物の迅速で効果的な反応の前提条件は、ニトロ化されるのに十分な芳香族化合物が常に有機相から酸性相に移行することである。これは通常、上記の2つの相の間に非常に大きな交換領域を生成することによって、特に酸性相に有機相を分散させる(オイルインウォータまたはO/Wエマルション)か、逆に、有機相に酸性層を分散させる(ウォータインオイルまたはW/Oエマルション)かのいずれかで達成される。有機相と酸性相の間の交換領域が大きいほど(つまり、分散相の液滴サイズが小さいほど)、ニトロ化における、たとえばニトロベンゼンを生成するベンゼンのニトロ化における、またはモノニトロトルエンを生成するトルエンのニトロ化における変換が大きくなる(すべての物質移動制限反応におけるように)。
【0008】
例えば、ニトロ化が、撹拌容器内で連続的かつ等温的にまたは撹拌容器のカスケード反応における並流および/または向流で実行される場合、一定条件、例えば有機相と酸相の組成、およびそれに関連した一定の物理化学的条件または有機相と酸相の2相混合物のパラメータが各反応器で優先される。ニトロ化は、各反応器で常に同じ条件下で進行する。
【0009】
一方、完全な逆混合を伴うバッチ作業における攪拌容器もしくは逆混合なしの栓流を伴う管状反応器におけるニトロ化は、完全に異なって進行する。いずれの場合も、有機相および酸相の組成だけでなく、それらの物理化学的状態又は特に密度、界面張力等のパラメータもまた、ニトロ化が進むにつれて、連続的に変化する。連続的に変化する状態またはパラメータに基づいて、反応時間の全体にわたって、制御された反応のための一定の変化領域を生成することは大変困難であるかほとんど不可能である。
【0010】
また、ベンゼンやトルエンなどの純粋な芳香族化合物が、硫酸または硝化酸混合物に分散することは非常に難しいこと、及び、硫酸または硝化酸混合物における芳香族の分散が、比較的迅速に合体することはすでに知られている。たとえばEP 0 373 966A2に記載されているように、55.3%のみの硝酸の変換及び52.5%のみのベンゼンの変換は、有機相の非常に迅速な合体による混合酸中のニトロ化(ベンゼン)への芳香族化合物の一度限りの分散の場合に達成される。そのため、2つの相がニトロ化混合物中に存在するニトロ化の場合(いわゆる第1にニトロ化された芳香族化合物および生成されたニトロ化芳香族化合物からなる有機相及び第2に硝化酸混合物)において、2つの相の間の所望の交換領域が維持されるように、混合エネルギーが連続的に導入されることが必要であり、かつ、所望の変換は、予め与えられた滞留時間で達成される。
【0011】
特にニトロ化の開始時(例えば管状反応器)では、有機相と酸相の間に十分に大きな交換領域を作り出し維持するために、特に大量の混合エネルギーを供給する必要があり、これによってニトロ化が開始され進行する。もし、これが起こらない場合、交換領域の劇的な減少は、結果として分散相の急速なもしくは遅速な合体を生じ、単位時間当たりニトロ化される芳香族化合物の変換において劇的な減少を助長する。
【0012】
たとえば、硝化酸中に分散した有機相の刺激的合体が、添加的な混合エネルギーの供給によって、硝化酸混合物におけるニトロ化された芳香族化合物(たとえばベンゼン)の混合エネルギーの初期生成分散への新たな導入によって防止されることが、反応器の全長にわたって確保されない場合(例えば、EP 1 272 268 A2またはEP 0 708 076 A2に記載されたように)、そこで、たとえ硝酸がまだ硝化酸内に存在し且つニトロ化された芳香族化合物が有機相内にまだ存在する場合でさえ、ニトロ化の熱がもはや解放されないことから認識できるニトロ化が分解される。
【0013】
対応する状況は、反応の開始時に適用される:反応の開始時に生成される液滴サイズが十分に小さくならず、これによる交換領域が小さすぎる場合、たとえばニトロベンゼンもしくはモノニトロルエンを形成するためのベンゼンまたはトルエンの質量伝達制限反応は、この反応が開始されないので、反応混合物において観察された温度上昇がないかまたは単に小さいことによって認識できるように、単にゆっくりと進行する。逆に、分散相の液滴サイズが十分に小さく、交換領域が大きい場合には、ニトロ化される芳香族の迅速な反応が、急激な温度上昇によって認識されることができ且つそれによって助長される同一の条件下で起こり、対応する芳香族ニトロ化合物へのニトロ化された芳香族化合物の所望の高い変換が観察される。
【0014】
特に断熱反応(例えば、ニトロベンゼンを与えるベンゼンの断熱ニトロ化)において、このために要求される変換と時間は、2相間の交換領域およびこれによる分散相の液滴サイズだけでなく、さらに硝化酸(反応の開始時での混合酸として、最終時の廃酸として参照される)中の硫酸および硝酸の濃度のような一般的に知られているパラメータ、開始温度(たとえばEP 2 168 942 A1参照)、有機相と酸相との間の相比、それに関連する最終温度などにも依存する。
【0015】
管状反応器中の断熱ニトロ化(例えば、ニトロベンゼンを与えるベンゼンの断熱ニトロ化)における変換は、定義された開始温度から進行し、解放されたニトロ化の熱の結果としてニトロ化混合物の温度の上昇を特徴とするものである(たとえばEP 2 168 942 A1およびEP 1 272 268 A2参照)。特定のニトロ化混合物について測定された温度差(デルタTまたはΔTとも呼ばれる)は、直接的に、特に直線的に、例えばEP 2 168 942 A1に記載されるように、硝酸の変換と関係づけることができるものである。
【0016】
管状反応容器内の所定の滞留時間において最も大きく可能な変換(例えば、導入された硝酸の98%以上)を達成するために、そこには混合酸中でニトロ化される芳香族化合物の最適な分散だけでなく、初期もしくは開始時の反応のための最適な開始温度も必要であるので、開始材料の混合後、反応が、ニトロ化混合物内における激しい、特に均一な、好ましくは急激な温度上昇が観察され、且つ、たとえば導入される硝酸の少なくとも60%が、管状反応器の反応空間の13容量%において反応されるように、生じるものである(EP 2 168 942 A1参照)。たとえば、これは、管状反応器内で初めに急速に合体する有機相の必要な再分散のための分散元素の特定の配置によって達成される(たとえば、EP 1 272 269 A1参照)。
【0017】
たとえば、開始温度は、50℃から120℃の範囲内において選択される。いろいろな加熱された供給流の混合(すなわち硫酸、硝酸、硝酸およびニトロ化かされた芳香族、例えばベンゼン、例えば、EP 0 436 443 A2またはEP 1 272 269 A1参照)は、混合温度を生じるとともに、開始温度に対す主な貢献は、過剰に存在する硫酸から生じる。
【0018】
所定の滞留時間において、開始温度は、特にジニトロフェノールおよびトリニトロフェノール(ピクリン酸)の量およびジニトロベンゼン(DNB)の量で、たとえばニトロベンゼンを与える断熱ニトロ化の典型的な副産物の変換だけでなく形成をも制御する。
【0019】
80℃~120℃の開始温度(たとえばUS4 091 042A参照)、好ましくは97℃以上の温度および特に好ましくは100℃~120℃の温度(たとえばEP 0 436 443 A2もしくはEP 2 168 942 A1参照)において、2分未満の反応管での滞留時間で少なくとも99%の硝酸の変換を達成することができる(たとえば25秒以内、たとえばEP 0 436 443 A2参照)。
【0020】
一方、開始温度が低い場合は、滞留時間が大幅に長くなる。例えば、約80℃の開始温度では、先行技術(チューブ反応器)によってプラント中の硝酸の完全な変換を達成するために、必要に応じて300秒の滞留時間が記載されている(例えば、US8 692 035 B2又はWO2010/051616A1参照)。
【0021】
従来技術に基づくプラントに比べ、開始温度は約97℃~110℃で、開始温度を下げるためにはかなり大きなニトロ化反応器が必要であるが、これらは通常エナメル鋼で作られているため大変高価である。
【0022】
例えば、1時間あたり20メートルトンのニトロベンゼン(NB)(すなわち20tNB/h)のプラント出力として、直径250mmの管状反応器は、ニトロ化混合物の1.25m/sの流速で動作し、少なくとも300sの滞留時間は、長さ150mの従来技術に記載された標準反応器よりも2.5倍長い(すなわち約375m)の係数は、それ以外の場合は同一の条件(すなわち同一の混合酸組成、同じ位相比等)下で120sの滞留時間で運転する。
【0023】
芳香族化合物、特にベンゼンの断熱ニトロ化のためのプラントの最適化のさらなる目的は、ニトロベンゼン中の副産物の量を最小限に抑えることである。既にEP 0 436 443 A2に記載されているように、ジニトロフェノールおよびトニトロフェノールの形成は、ニトロ化混合物の最終温度の上昇に伴って急速に増加する。これらの理由から、ニトロ化混合物の最終温度も135~145℃を超えてはならない。それから、粗ニトロベンゼン(粗NB)中のニトロフェノールの含有量は、2000~3000ppmの範囲である。これら最終温度でのジニトロベンゼン(DNB)の含有量は、200~250ppmの範囲内である。粗ニトロベンゼンからのこれらニトロフェノールの除去およびたとえば熱分解による排水中のこれらの破壊は(EP 0 953 546 A2およびEP 0 005 203 A2に記載されるように)、複雑であり高価である。
【0024】
副産物の形成は、開始温度およびこれによる最終温度を下げることによって大幅に低減することができる。20~25℃まで開始温度がそれぞれの低下は、粗ニトロベンゼン中のニトロフェノール含有量の半減につながる。開始温度を約110℃から約80℃まで下げると、ニトロフェノール含有量が、たとえばEP 0 436 443 A2に記載された状況と比較して約50%、すなわち約1500ppm以下(例えば1000ppm)まで、特に好ましくは約1000ppmの値まで減少する (例えば、US8 692 035 B2またはWO2010/051616A1参照)。
【0025】
開始温度と最終温度との間のニトロ化混合物の温度上昇は、混合酸中の所定の硝酸濃度で、酸相と有機相との相比によって制御することができる。開始混合酸中の一定相比、同じ硫酸濃度および開始温度において、ニトロ化混合物の最終温度は、混合酸中の硝酸の含有量の増加に伴って増加するとともに、同じ変換において逆もまた可能である。
【0026】
すでにEP 0 771 783 A1に記載されているように、高い選択性を得るために、高い初期変換が、相の最適な混合によって、管状反応器の開始時に達成されることに利点がある。従来技術は、反応の開始時に、開始混合酸中でニトロ化される芳香族の非常に最適な分散を達成することおよび再分散を達成することを目的とした様々な測定値を記載する(例えば、EP 0 373 966 A2,EP 0 489 211A1,EP 0 771 783 A1,EP 0 779 270 A1,EP 1 272 269 A1,EP 1 291 078 A2およびEP2 168 942 A1参照)。
【0027】
反応を開始するために、硝化酸中、特にニトロ化開始時に、ニトロ化される芳香族(例えばベンゼン)の最適な分散は、特にニトロ化の開始時に、高変換のための前提条件である(EP 1 272 269 A1またはEP 2 168 942 A1参照)。この点に関して、US 9 284 256 B2およびEP 2 877 442 A1で述べられているように、ニトロ化されるベンゼンに4%を超える脂肪族炭化水素を添加すると、ニトロ化が開始されない、つまり出発物質と最初の分散を組み合わせた後にニトロ化混合物における急激でない温度上昇が観察されるが、脂肪族0.1%未満の含有量を有するベンゼンを使用する他の同一の条件下で、ニトロ化が開始される(EP 1 272 269 A1またはEP 2 168 942 A1参照)とともに、管状反応器の最初の13体積%で急激な温度上昇があり、意図したとおりに進行する。
【0028】
ニトロ化酸中にニトロ化される芳香族化合物の改善された分散を達成するために、先行技術において多くの試みがあった。これを達成するための従来技術から知られている1つの手段は、たとえばEP 0 436 443 A2およびUS 8 692 268 B2に記載されているように、有機相の分散性が向上し、合体が低減されると言われる手段による有機相に対する酸相の大きな比率である。従来技術から知られているさらなる手段は、EP 1 272 268 A2およびEP 2 168 942 A1に記載されているように、混合および分散要素を有する管状反応器中でニトロ化を行うことであり、均一性を達成すること、特に反応の開始時での指数関数的、好ましくはS形状温度上昇および前記管状反応器の前領域における非常に高い変換を、前記管状反応器の全長にわたって混合および分散要素の不均一な配置または分布によって、達成することである。しかしながら、従来技術から知られている手段は、硝化酸中でニトロ化される芳香族の最適な分散を常に達成し、不十分な分散による課題および不利益点および上記に指摘された課題および不利益点を補うには十分とは言えない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0029】
【文献】EP 0 373 966 A2
【文献】EP 1 272 268 A2
【文献】EP 1 291 078 A2
【文献】EP 0 708 076 A2
【文献】EP 2 168 942 A1
【文献】EP 1 272 269 A1
【文献】EP 0 436 443 A2
【文献】US 4 091 042 A
【文献】US 8 692 035 B2
【文献】WO2010/051616 A1
【文献】EP 0 953 546 A2
【文献】EP 0 005 203 A2
【文献】EP 0 489 211 A1
【文献】EP 0 771 783 A1
【文献】EP 0 779 270 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0030】
したがって、本発明の目的は、方法および対応する生産プラント、すなわちこの方法を実施するために、ニトロ化可能な芳香族有機化合物(芳香族化合物)のニトロ化、特に断熱ニトロ化のために適した生産プラント(ニトロ化プラントまたはプラント)を提供するとともに、従来技術の上述した不利益点および不十分さが、少なくとも大部分は避けられるか、少なくとも減少されることである。
【0031】
特に、本発明の目的は、対応するニトロ化芳香族有機化合物(ニトロ化芳香族化合物)を与えるために、ニトロ化可能な芳香族有機化合物が技術的に効果的であり、安全で且つ簡単な方法で、変換もしくは反応されることによるニトロ化可能な芳香族有機化合物(芳香族化合物)のニトロ化、特に断熱ニトロ化のためにこの方法を実行するのに最適な方法および対応する製造プラントを提供することにある。
【0032】
本発明のさらなる目的は、ニトロ化可能な芳香族有機化合物(芳香族化合物)のニトロ化、特に断熱ニトロ化のためにこの方法(ニトロ化プラントもしくはプラント)を実行するのに最適な方法および対応する生産プラントを提供することであるとともに、ニトロ化に関して、硝化酸においてニトロ化される芳香族化合物の分散が、特に反応の開始時において、好ましくは開始材料の結合後すぐに改善されることである。特に、有機相および酸相の分散は、たとえ好ましくない条件下(たとえば、ニトロ化される芳香族化合物中の脂肪族化合物の増加した含有量のような不純物の存在下、低すぎる開始温度で、または分散エネルギーの入力が低い場合)でも、ニトロ化が十分に実行され、特にニトロ化混合物が、所定の反応もしくは前記反応器における滞留時間で、少なくとも98%の範囲で変換されるような方法で改善されるべきである。
【0033】
最後に、本発明の目的は、ニトロ化可能な芳香族有機化合物(芳香族化合物)のニトロ化、特に断熱ニトロ化のための方法(ニトロ化プラントもしくはプラント)を実行するために最適な方法および製造プラントを提供するもので、そこでは、ニトロ化に関連して、改善された分散が、硝酸を含む硝化酸相とニトロ化される芳香族化合物を含む有機相の反応物の接触(たとえば混合)後すぐに、好ましくは硝化酸中においてニトロ化される芳香族化合物の急速な合体を回避することによって、好ましくは従来技術と比較して相対的に低い開始温度ですらニトロ化反応を開始する目的で、達成されるものである(より高い開始温度であるがそれ以外は同一の条件である従来技術による方法と比較して要求されないより長い反応もしくは滞留時間)。
【課題を解決するための手段】
【0034】
本発明によれば、上述された目的は、本発明第1の様相によれば、請求項1に記載されている方法によって達成される;さらに本発明の方法に係る利益的な発展例および具体例は、対応する従属請求項の主題である。
【0035】
本発明はさらに、本発明の第2の様相によれば、関連する独立生産プラント請求項において請求されるような生産プラント (ニトロ化プラントもしくはプラント)を提供する;本発明のこの様相に係る利益的発展例および具体例は、対応する従属請求項(従属生産プラント請求項)の主題である。
【0036】
最後に、本発明は、本発明の第3の様相よれば、関連する独立使用請求項において請求される発明に係る使用を提供する;さらに本発明のこの様相に係るさらなる有利な具体例およびこの利益的な発展は、関連する従属請求項(従属使用請求項)の主題である。
【0037】
本発明の1つの様相に対して、以下に定める変形例、実施形態、利点等も適用されるもので、不必要な繰り返しを避けるために、発明の他のすべての側面に関して同様に適用されることは言うまでもない。
【0038】
さらに、値、数値、範囲を以下に示される場合、示されたそれぞれの値、数値、範囲が制限として解釈されないことは言うまでもない。当業者は、本発明の範囲外に出ることなく、個々の場合または用途に対して指定された範囲または数値から逸脱することが可能であることは明らかである。
【0039】
また、以下に示すすべての値またはパラメータ等は、原則として、標準化または明示的に言及された測定方法を用いて、またはこれに熟練した人が関与する判定または分析の方法を用いて測定または決定することができる。
【0040】
これをいい、本発明は以下に詳細に説明する。
【0041】
本発明は、このように、本発明の第1の様相によって、対応するニトロ化芳香族有機化合物(ニトロ化芳香族化合物)を与えるために、ニトロ化可能な芳香族有機化合物(芳香族化合物)のニトロ化、特に断熱ニトロ化のための方法を提供するもので、ニトロ化可能な芳香族有機化合物(芳香族化合物)は、硝酸/硫酸硝化酸混合物(いわゆる「混合酸」)によるニトロ化反応において、対応するニトロ化された芳香族有機化合物(ニトロ化芳香族化合物)に変換されるものにおいて、
本発明の方法は、
対応するニトロ化芳香族有機化合物(ニトロ化芳香族化合物)が、ニトロ化可能な芳香族有機化合物(芳香族化合物)および硝酸/硫酸硝化酸混合物を含有する開始反応混合物に添加され、変換および/もしくはニトロ化反応が、ニトロ化された芳香族有機化合物(ニトロ化芳香族化合物)の存在下で開始されおよび/もしくは実行されること;且つ/または、
取得されたニトロ化芳香族有機化合物(ニトロ化芳香族化合物)が、部分的にニトロ化反応およびそれに続く変換に再循環され、および/もしくは、ニトロ化反応が、ニトロ化芳香族有機化合物(ニトロ化芳香族化合物)の存在下で、開始されおよび/もしくは実行されること;
を特徴とする。
【0042】
対応するニトロ化芳香族有機化合物(ニトロ化芳香族化合物)という用語は、本発明に係る使用と同様に、本発明に関して、使用される前記開始芳香族化合物のニトロ化、特にモノニトロ化によって調製することができるニトロ化芳香族化合物として参照される。これによって、たとえば、モノニトロベンゼン(MNB)は、ベンゼンに対応するニトロ化芳香族有機化合物(ニトロ化芳香族化合物)であり、モノニトロトルエン(MNT)は、トルエンに対応するニトロ化芳香族有機化合物(ニトロ化芳香族化合物)であり、モノニトロクロロベンゼンは、クロロベンゼンに対応するニトロ化芳香族有機化合物(ニトロ化芳香族化合物)である。
【0043】
本発明の方法は、本発明の方法を実行するために、以下に詳細に記載された発明による(生産)プラントのように、以下で詳細に議論される多数の特別な様相および利点に関連している:
【0044】
出願人は、本発明に関連して、開始反応混合物へのニトロ化生成物の添加が有機相と酸性水相もしくは酸相との間の界面張力の低下につながることを驚くべきことに見出しにした(ここで前記有機相は、ニトロ化される芳香族化合物と、添加されたニトロ化生成物と、付加的にニトロ化副産物を含有し、且つ、ここで反応開始時に開始反応混合物中の酸性水相または酸相は、硫酸を含有し、且つ、硝酸、硝化酸もしくは混合酸を添加した後、反応の終わりに、水性使用済み硝化酸もしくは水性使用済み硝化酸混合物を含有し、必要に応じて添加されたニトロ化芳香族化合物および/もしくはそこに溶融するニトロ化において形成されたニトロ化芳香族化合物の割合を有する)。このようにして、有機相と酸性水相または酸相との間の十分に改善された分散性もしくは乳化性が達成される。すなわちニトロ化最終生成物もしくはニトロ化芳香族化合物は、このように開始反応混合物において分散剤(分散機)として機能する。すなわち、分散剤もしくは乳化剤は、反応に無関係で、反応生成物を汚染する可能性のある物質が使用されないため、システムに固有の分散剤または乳化剤である。
【0045】
全体的に、改善された、特に2つの相の親密な混合および分散(すなわち有機相および酸相)は、開始反応混合物にニトロ化生成物を添加することによって達成され、2つの相の間の全体的な改善とより迅速な交換が実行される。その結果として、より迅速な変換もしくはより迅速なニトロ化反応も起こり、特に改善された歩留まり、特に改善された空時収量を伴うものである。
【0046】
さらに、本発明による反応手順において、著しく少ない量の副産物が形成される。全体的に、反応もしくは方法手順およびニトロ化反応は、開始反応混合物へのニトロ化生成の添加によってより良く制御することができる。
【0047】
改善された歩留まりおよびより低い副産物の形成を伴うより短い反応時間とより迅速な反応とは別に、反応を起動し開始するための開始温度は、本発明の方法において、他の同一条件を有する従来のニトロ化方法と比較して十分に減少させることができる。すなわちニトロ化反応のための十分に低い(反応)開始温度が、下記に詳細に示されるように、本発明において使用される。
【0048】
要約すると、本発明は、それゆえに、全体的に改善された効率、特に改善された技術的効率および改善されたエネルギー効率、および全体的に改善されたプロセス経済学および特に添加的に完全された取り扱い性を示すニトロ化可能な芳香族有機化合物のための改善された、特に断熱ニトロ化方法を提供する。
【0049】
本発明に関連して、ニトロ化のための断熱反応手順の場合(たとえば管状反応器においてモノニトロベンゼンを与えるベンゼンの断熱ニトロ化)でも、特に反応の始まりにおいて、好ましくは開始材料の接触(たとえば混合)の直後に、好ましくない条件下(たとえば、ニトロ化される芳香族化合物における脂肪族化合物の増加した含有量のような不純物の存在下またはあまりにも低い開始温度の場合もしくは分散エネルギーの入力が低い場合)でも、ニトロ化が十分に実行されるように、硝化酸混合物においてニトロ化される芳香族化合物の分散を改善することが可能となり、これによって、特に前記ニトロ化混合物が、硝化酸混合物、上述した反応または反応器における滞留時間における硝酸変換に基づくそれぞれの場合において、少なくとも98%の範囲、特に少なくとも99%の範囲、好ましくは少なくとも99.5%の範囲まで反応することができる。
【0050】
本発明の方法は、ニトロ化に関連して、反応生成物の接触(たとえば混合)、特に硝酸を含有する硝化酸相およびニトロ化される芳香族化合物を含有する有機相の接触(たとえば混合)直後に、硝化酸においてニトロ化される芳香族化合物の急速な合体の回避によって、好ましくは従来技術(および従来技術よる方法におけるより長い反応もしくは滞留時間もしくはより高い開始温度なしに)と比較して相対的に低い開始温度においてすらニトロ化反応を開始する目的で、改善された分散を達成することを可能にする。特に、本発明の方法は、100℃未満、好ましくは95℃未満、特に好ましくは90℃未満の(反応)開始温度であっても、より高い開始温度を有し他が同一条件である従来技術による方法においてより長い反応もしくは滞留時間が必要のないように、ニトロ化が起動もしくは開始される。
【0051】
このように、本発明は、対応するニトロ化芳香族有機化合物(ニトロ化芳香族化合物)を与えるために、技術的効率および安全且つ簡単な方法において変換されもしくは反応することを可能にする。
【0052】
本発明に関連して、このように、完全に驚くべきことに、開始反応混合物へのニトロ化生成物(たとえばベンゼンのニトロ化の場合のニトロベンゼン)の添加は、結果として、ニトロ化される芳香族化合物の十分に改善された初期分散(特にニトロ化の引き金となる初期分散後のニトロ化混合物における急激な温度上昇によって特徴づけられる)を生じ、この分散が合体する傾向が低下することが観察される。
【0053】
言い換えると、本発明は、水結合剤および触媒としての硫酸の存在下の硝酸によって、好ましくは管状反応器において且つ好ましくはニトロ化される芳香族化合物の化学量論的過剰を使用して、且つ反応バッチもしくは開始反応混合物に添加されまたは混合される対応するニトロ化芳香族化合物(たとえばベンゼンのニトロ化の場合のニトロベンゼン)の比率によって、対応する開始芳香族化合物(たとえばベンゼン、トルエン、クロロベンゼン等)の好ましくは断熱反応によるニトロ化芳香族化合物(たとえばニトロベンゼン、ニトロトルエン、ニトロクロロベンゼン等)を得るための全体的に改善された、好ましくは断熱方法を提供する。
【0054】
以下に詳細に示すように、本発明の方法は、完全に柔軟に実行することができる:これによって、そこに添加または混合されるニトロ化芳香族化合物(例えば、ベンゼンのニトロ化の場合にはニトロベンゼン)の比率は、たとえばニトロ化のために要求される再生もしくは新しい硫酸に、且つ/または、さらなる開始材料(いわゆる硫酸および硝酸)の最初の共同分散前にニトロ化される芳香族化合物に、且つ/または、さらなる開始材料(いわゆる硫酸および硝酸並びにニトロ化される芳香族化合物の残りの部分)の最初の共同分散前にニトロ化される芳香族化合物のほんの一部に、これらの変異体が可能となる組み合わせに添加することができるものである。原則として、唯一重要なことは、有機相と酸相の効率的な分散を確保するために、ニトロ化反応の開始時に、十分な量のニトロ化芳香族化合物が、開始反応材料に存在することである。
【0055】
特に、本発明の方法の有利なまたは好ましい実施形態は、以下に説明される:
【0056】
上述したように、変換および/もしくはニトロ化反応は、本発明の方法によって断熱反応条件下で行われるのが好ましい。
【0057】
本発明の特定の実施形態では、変換および/もしくはニトロ化反応も、特にモノニトロ化として行われる。
【0058】
本発明のさらなる特定の実施形態では、本方法は、通常、開始反応混合物およびニトロ化芳香族有機化合物(ニトロ化芳香族化合物)が、選択された反応条件下において、有機相および酸相もしくは酸性水相の液体/液体混合物として存在するように実行される。特に前記有機相は、ニトロ化可能な芳香族有機化合物(芳香族化合物)およびニトロ化芳香族有機化合物(ニトロ化芳香族化合物)を含有することができ、特に酸相(特に酸性水相)は、硝酸、硫酸および任意に水(およびそこに溶解されるニトロ化において形成された添加されたニトロ化芳香族化合物および/もしくはニトロ化芳香族化合物の任意の比率)を有することができる。
【0059】
本発明の方法において、ニトロ化可能な芳香族有機化合物(芳香族化合物)および硝酸/硫酸硝化酸混合物並びに(添加的または再循環的な)ニトロ化芳香族有機化合物(ニトロ化芳香族化合物)は、(開始)ニトロ化混合物(すなわち、変換および/もしくはニトロ化反応の開始時に存在する初期ニトロ化混合物)を形成する。言い換えると、ニトロ化混合物(いわゆる初期ニトロ化混合物または変換および/もしくはニトロ化反応の初期時に存在するニトロ化混合物)は、ニトロ化可能な芳香族有機化合物(芳香族化合物)および硝酸/硫酸硝化酸混合物並びにニトロ化芳香族有機化合物(ニトロ化芳香族化合物)を含有する初期反応混合物を有する。対照的に、変換後および/もしくはニトロ化反応の最終段階で取得されるか結果として生じるニトロ化混合物は、少なくとも実質的に使用済みの硝化酸およびニトロ化芳香族有機化合物(ニトロ化芳香族化合物)並びに(存在する所定の不純物および副産物を有する)所定の少量の未反応ニトロ化可能な芳香族有機化合物(芳香族化合物)を含有する。
【0060】
原理的には、実質的に任意のニトロ化可能な芳香族有機化合物(芳香族化合物)は、本発明に従ってニトロ化することができる。
【0061】
本発明の特定の実施形態では、ニトロ化可能な芳香族有機化合物(芳香族化合物)は、選択された反応条件下で液体である。特に、ニトロ化可能な芳香族有機化合物(芳香族化合物)は、標準圧力下(1.01325バール)および70℃以上、特に50℃以上、好ましくは25℃以上、特に好ましくは10℃以上の温度で、液体状態で存在することができる。これにより、効率的な反応手順が可能になる。
【0062】
特に、ニトロ化可能な芳香族有機化合物(芳香族化合物)は、任意にハロゲン化単環または多環性有機芳香族化合物の中から選択することができる。
【0063】
本発明の特定の実施形態では、ニトロ化に用いられるニトロ化可能な芳香族有機化合物(芳香族化合物)は、特に、ベンゼン、モノニトロベンゼン(MNB)、ハロゲン化ベンゼン、特にモノクロロベンゼンおよびジクロロベンゼン、モノニトロ化されたハロゲン化ベンゼン、トルエン、モノニトロトルエン(MNT)、ジニトロトルエン(DNT)およびキシレン、およびそれらの混合物および組み合わせからなる群から選択することができる。特に好ましいのは、ベンゼンである。
【0064】
原理的には、実質的に任意のニトロ化芳香族有機化合物(ニトロ化芳香族化合物)は、本発明に従って調製される。
【0065】
調製されたニトロ化芳香族有機化合物(ニトロ化芳香族化合物)に関しては、これらは、特に選択された反応条件下で液体である。特に、ニトロ化芳香族有機化合物(ニトロ化芳香族化合物)は、標準圧力(1.01325バール)および70℃以上、特に50℃以上、好ましくは25℃以上、特に好ましくは10℃以上の温度で、液体状態で存在することができる。これは方法が効果的に進行することを確実にする。
【0066】
調製されたニトロ化芳香族有機化合物(ニトロ化芳香族化合物)は、特に、任意にハロゲン化単環または多環のモノニトロ化、ジニトロ化、またはトリニトロ化有機芳香族化合物の間で選択される。
【0067】
本発明の特定の実施形態では、調製されたニトロ化芳香族有機化合物(ニトロ化芳香族化合物)は、モノニトロベンゼン(MNB)、ジニトロベンゼン(DNB)、ハロゲン化モノニトロベンゼンおよびジクロロベンゼン、時にモノニトロ化およびジニトロ化されたモノクロロベンゼンおよびジクロロベンゼン、モノニトロトルエン(MNT)、ジニトロトルエン(DNT)、トリニトロトルエンおよびモノニトロ化およびジニトロ化されたキシレンおよびそれらの混合物並びに組み合わせからなる群から選択される。特にモノニトロベンゼンであることが好ましい。
【0068】
本発明の好ましい実施形態では、ベンゼンはニトロ化可能な芳香族有機化合物(芳香族化合物)として使用され、モノニトロベンゼン(MNB)は、ニトロ化芳香族有機化合物(ニトロアロマティック)として得られる。
【0069】
本発明の方法の一般的な実施形態では、変換および/もしくはニトロ化反応に続いて、使用済み硝化酸および粗ニトロ化芳香族有機化合物(粗ニトロ化芳香族化合物)への酸性水相(酸相)および/もしくは取得されたニトロ化混合物の相分離の除去が行われ、好ましくはそれに続いて、特に1つ以上の洗浄段階において洗浄媒体による粗ニトロ化芳香族有機化合物(粗ニトロ化芳香族化合物)の洗浄が行われ、さらにそれに続いて好ましくは使用された洗浄媒体の除去が行われ、この方法(いわゆる精製)において、不純物が除去され洗浄されたニトロ化芳香族有機化合物(ニトロ化芳香族化合物)が得られるものである。
【0070】
本発明の好ましい実施形態では、洗浄は、少なくとも2つの洗浄段階で行うことができるとともに、少なくとも1つの酸性洗浄段階(「酸洗浄」)および少なくとも1つの中性洗浄段階(「中性洗浄」)が提供される。
【0071】
洗浄は、好ましくは(i)好ましくは洗浄媒体として水もしくはミネラル酸を使用する酸性媒体において実行される少なくとも1つの第1の洗浄段階(「酸洗浄」)、(ii)好ましくは洗浄媒体として塩基を使用するアルカリ(塩基)媒体において実行される少なくとも1つの第2の洗浄段階(「塩基洗浄」)、および(iii)好ましくは洗浄媒体として水を使用する中性媒体において実行される少なくとも1つの第3の洗浄段階(「中性洗浄」)(且つ第1から第3の洗浄は上述した順番でまたは連続して)を具備することが好ましい。
【0072】
本発明の特定の実施形態では、使用される洗浄媒体は、精製後に、洗浄工程においてリサイクルされおよび/もしくは循環されおよび/もしくは再循環され、特に精製後に使用することができる。
【0073】
上述したように、そこに溶解および懸濁する洗浄媒体によって抽出されるニトロ化混合物の酸、ニトロフェノールおよび他の酸性不純物および他の不純物を除去するための粗ニトロ化芳香族化合物の洗浄は、通常3つの洗浄段階を具備する(例えば、F.マイスナー他)。産業工学化学, 第46巻, 718ページから724ページ(1954);ウルマンス・エンジクロパディー・デル・テクニッシェン・ケミー、第4版、第17巻、384ページ~386ページ。H.ヘルマン他「ジニトロトルエンへのトルエンの産業的ニトロ化」、ACSシンポジウムシリーズ623(1996)、234ページ~249ページ、編集者:リットル.F.オルブライト、R.V.C.カー、R.J.シュミット;米国6 288 289B1;EP 1 816 117 B1)。洗浄媒体として、水を使用することができるとともに、洗浄は、(すなわち、洗浄されるニトロ化芳香族化合物が液体として存在する温度で) 液体/液体洗浄として実行される。さらに、使用済み硝化酸の再濃縮からの蒸気凝縮物は、本発明によれば、酸洗浄(洗浄工程(i))またはアルカリ洗浄(洗浄工程(ii))中の洗浄媒体としても使用することができる。
【0074】
上述したように、3段階洗浄は、通常、次の手順で構成される:
(i) 硫酸、硝酸および窒素酸化物など、溶解および懸濁したミネラル酸を除去するために水を使用する酸洗浄(「酸洗浄」);
(ii) 粗ニトロ化芳香族化合物に溶解した弱酸性不純物、たとえばニトロフェノール、ニトロクレゾール、ニトロ安息香酸、たとえばシュウ酸等のフェノールまたは脂肪族もしくは環状炭化水素等の酸化分解からの分解産物、または、TNTの場合における非対称異性体を除去するために、塩基、例えば炭酸ナトリウム(ソーダ)、重炭酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、ナトリウム水素硫酸塩、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど(例えば、US 4 482 769 AまたはUS 6 288 289 B1を参照)の存在下での塩基またはアルカリ洗浄(「アルカリ洗浄」)(「塩基洗浄」);
(iii) アルカリの残留痕跡を除去し、生成物の痕跡に残っている不純物をさらに減少させるための中性洗浄(「中性洗浄」)。
【0075】
これらの洗浄段階の目的は、特に、純粋な生成物だけでなく、生成物のメートルトン当たりの非常に少ない廃水も得られるものであり、廃水では、除去された不純物は、安価に廃棄できるような形で存在する。
【0076】
本発明の特定の実施形態は、変換および/もしくはニトロ化反応が、粗ニトロ化芳香族有機化合物(粗ニトロ化芳香族化合物)が分離された後、特に濃縮の後および/もしくは新しい硝酸および/もしくは硫酸の添加の後、ニトロ化反応にリサイクルされおよび/もしくは循環されおよび/もしくは再循環されるべき変換および/もしくはニトロ化反応の後、得られる使用済み硝化酸を提供する。このプロセス効率は、さらにこの方法において向上する。
【0077】
さらに、変換および/もしくはニトロ化反応のために添加されおよび/または再循環されるニトロ化芳香族有機化合物(ニトロアロマティクス)の量も広い範囲内で変化しうる。
【0078】
本発明の特定の実施形態において、変換および/もしくはニトロ化反応のために添加されおよび/もしくは再循環されるニトロ化芳香族有機化合物(ニトロ化芳香族化合物)の量は、添加されおよび/もしくは再循環されるニトロ化芳香族有機化合物(ニトロ化芳香族化合物)の量が、有機相および酸相の間の界面張力の低下をもたらし、且つ/または添加されおよび/もしくは再循環されるニトロ化芳香族有機化合物(ニトロ化芳香族化合物)の量が、有機相および酸相の改善された分散性、特に乳化性の向上をもたらすように、利益的に選択されるものである。
【0079】
同様に、本発明のさらなる特定の実施形態において、変換および/もしくはニトロ化反応のために添加および/もしくは再循環されるニトロ化芳香族有機化合物(ニトロ化芳香族化合物)の量は、ニトロ化されおよび/もしくは反応したニトロ化可能な芳香族有機化合物(芳香族化合物)に基づいた添加されおよび/もしくは再循環されるニトロ化芳香族有機化合物(ニトロ化芳香族化合物)の重量比が、0.01~60重量%の範囲内、特に0.1~50重量%の範囲内、好ましくは5~45重量%の範囲内、特に好ましくは10~40重量%の範囲内であるか、その範囲内で変化するように選択されるものである。
【0080】
同様に、本発明のさらなる特定の実施形態において、変換および/もしくはニトロ化反応のために添加されおよび/もしくは再循環されるニトロ化芳香族有機化合物(ニトロ化芳香族化合物)の量は、硝酸/硫酸硝化酸混合物の硫酸に基づいた添加されおよび/もしくは再循環されるニトロ化芳香族有機化合物(ニトロ化芳香族化合物)の重量比が、0.01~10重量%の範囲内、特に0.2~5重量%の範囲内、好ましくは0.5~3重量%の範囲内、特に好ましくは1~2重量%の範囲内となるように選択されるものである。
【0081】
本発明の方法は、他のプロセス条件に関しても柔軟であり、それぞれの条件(例えば装置に関する状況)に事実上あらゆる方法で適合または一致させることができる。
【0082】
したがって、ニトロ化芳香族有機化合物(ニトロ化芳香族化合物)の導入は、本発明の方法の様々な方法段階および位置においても行うことができる。特に、変換および/もしくはニトロ化反応のために添加されおよび/もしくは再循環されるニトロ化芳香族有機化合物(ニトロ化芳香族化合物)は、以下の位置(i)から(iv)の少なくとも1つの位置に添加されおよび/もしくは導入される:(i)すべて他の反応物の開始反応混合物;且つ/または(ii)特に硝酸/硫酸硝化酸混合物の生成前の硝酸/硫酸硝化酸混合物の硫酸;且つ/または(iii)硝酸/硫酸硝化酸混合物;且つ/または(iv)ニトロ化されるニトロ化可能な芳香族有機化合物(芳香族化合物)。これらの変形例の2つ以上の組み合わせも原則可能である。
【0083】
さらに、再循環されるニトロ化芳香族有機化合物(ニトロアロマティクス)の取り外しは、本発明の方法の様々な工程段階および位置でも行うことができる。特に、変換および/もしくはニトロ化反応のために添加されおよび/もしくは再循環されるニトロ化芳香族有機化合物(ニトロ化芳香族化合物)は、下記する(i)~(iv)の少なくとも1つに由来する:(i)水性酸相(酸相)の除去の後および/もしくは取得されたニトロ化混合物の使用済み硝化酸および粗ニトロ化芳香族有機化合物(粗ニトロ化芳香族化合物)への相分離の後の粗ニトロ化芳香族有機化合物(粗ニトロ化芳香族化合物);且つ/または(ii)特に酸もしくは中性洗浄後の洗浄されたニトロ化芳香族有機化合物(ニトロ化芳香族化合物);且つ/または(iii)洗浄され、特に酸もしくは中性洗浄後に取得され、揮散されもしくは蒸留されもしくは乾燥されたニトロ化芳香族有機化合物(ニトロ化芳香族化合物);且つ/または(iv)使用済みの硝化酸の濃縮の後の蒸気凝縮において得られるニトロ化芳香族有機化合物(ニトロ化芳香族化合物)。ここでも、これらの変形例の2つ以上の組み合わせが原則可能である。
【0084】
本発明の特定の実施形態では、変換および/もしくはニトロ化反応のために添加されおよび/もしくは再循環されるニトロ化芳香族有機化合物(ニトロ化芳香族化合物)は、開始反応混合物の有機相および酸相の両方に導入されるかおよび/もしくは添加されることが望ましい。この方法において、上述した2つの相(有機相および酸相)において添加されおよび/もしくは再循環されるニトロ化芳香族有機化合物(ニトロ化芳香族化合物)の効率的な分配平衡がもたらされる。この実施形態において、ニトロ化芳香族有機化合物の有機相に基づいて0.1~3重量%の範囲、特に10~25重量%の範囲が有機相に添加されることも可能であり、且つ/またはニトロ化芳香族有機化合物(ニトロ化芳香族化合物)の酸相に基づいて0.01~3重量%の範囲、特に0.1~2重量%の範囲、好ましくは0.5~1.5重量%の範囲、特に好ましくは1.1~1.5重量%の範囲が、酸相に添加されることも可能である。
【0085】
本発明の方法の特定の実施形態では、特に、変換および/もしくはニトロ化反応後に得られる使用済み硝酸が、粗ニトロ化芳香族有機化合物(粗ニトロ化芳香族化合物)の除去の後およびそれに続く新しい硝酸および/もしくは硫酸の濃縮および任意の添加の後、ニトロ化反応にリサイクルされおよび/もしくは循環されおよび/もしくは再循環されることが可能であるとともに、変換および/もしくはニトロ化反応のために添加されおよび/もしくは再循環されるニトロ化芳香族有機化合物(ニトロ化芳香族化合物)が、新しい硝酸および/もしくは硫酸且つ/またはニトロ化されるニトロ化可能な芳香族有機化合物(芳香族化合物)と任意に混合される濃縮された使用済み硝化酸に添加されおよび/もしくは導入されるものである。特に、この特定の実施形態において、ニトロ化可能な芳香族有機化合物(芳香族化合物)は、反応の開始直前および/もしくは時間ベースで最後の反応成分(反応物)として、好ましくは変換および/もしくはニトロ化反応を起動する初期分散作業の直前に、添加されおよび/もしくは導入されることが好ましい。
【0086】
本発明の方法の別のさらなる特定の実施形態では、変換および/もしくはニトロ化反応後に取得される使用済みの硝化酸が、粗ニトロ化芳香族有機化合物(粗ニトロ化芳香族化合物)の除去後、且つ、それに続く濃縮の後、リサイクル酸としてリサイクルされ且つ/またはニトロ化反応に循環されおよび/もしくは再循環されることを可能にし、第1に濃縮されたリサイクル酸およびニトロ化されるニトロ化可能な芳香族有機化合物(芳香族化合物)およびニトロ化芳香族有機化合物(ニトロ化芳香族化合物)の分散を与えるとともに、硝酸が分散に添加され、特にそこに分散され、この方法においてニトロ化反応が開始されるものである。硝酸は、この特定の実施態様において、反応の開始直前に、且つ/または、時間ベースで最後の反応成分(反応物)として、好ましくは変換および/もしくはニトロ化反応を起動する最初の分散作業直前に、添加されおよび/もしくは導入されるものである。
【0087】
上述したように、本発明の方法は、プロセス条件に関して柔軟であり、それぞれの条件(例えば装置に関する状況)に事実上あらゆる方法で適合または一致させることができる。これに関して、(反応)開始温度も広い範囲内で変化しうる。
【0088】
変換および/もしくはニトロ化反応の開始温度は、通常、70℃~120℃の温度範囲、特に80℃~120℃の温度範囲、好ましくは80℃~110℃の温度範囲、特に好ましくは85℃~105℃までの温度範囲で選択することができる。
【0089】
発明の方法の利点および特別な様相に関しては上述したように、それは、本発明の方法の有利な実施形態において、変換および/もしくはニトロ化反応のための開始温度は、120℃以下、特に100℃以下、好ましくは95℃以下、特に好ましく90℃以下である。
【0090】
特に、本発明の方法は、ニトロ化反応を従来技術と比較して低い開始温度で開始すること(より高い温度以外同じ条件が要求される従来技術に係る方法に比べて長い反応または滞留時間なし)も可能である。特に、本発明の方法は、100℃以下、好ましくは95℃以下、特に90℃以下の(反応)開始温度で、より高い開始温度を有するがその他の条件は同じことが要求される従来技術の方法において、より長い反応または滞留時間なしに、ニトロ化が始動しまたは開始されることを可能にする。
【0091】
硝化酸として本発明によって用いられる硝酸/硫酸硝化酸混合物に関しては、特に、水性硝酸/硫酸硝化酸混合物とすることができる。
【0092】
通常使用される硝酸/硫酸硝化酸混合物は、該硝酸/硫酸硝化酸混合物に基づいて、60~79重量%、特に62~75重量%、好ましくは65~72重量%の量の硫酸、および、1~8重量%、特に2~6重量%、好ましくは3~5重量%の量の硝酸を含有する。100重量%となるような残りは水である。
【0093】
本発明の特定の実施形態において、前記硝酸/硫酸硝化酸混合物は、特にニトロ化可能なニトラブル芳香族有機化合物(芳香族化合物)の使用される硝酸/硫酸硝化酸混合物に存在する硝酸に対する化学量論比は、1.0~1.51の範囲内で、特に1.05~1.15の範囲内となるような量で使用されるものである。
【0094】
本発明の利益的な実施形態によれば、前記硝酸/硫酸硝化酸混合物は、特にニトロ化された有機化合物(ニトロ化芳香族化合物)に対する使用済み硝化酸の容量ベースの相比が、3:1~25:1の範囲内、特に4:1~15:1の範囲内、好ましくは5:1~8:1の範囲内となるような量において使用されるものである。
【0095】
通常の手順によれば、本発明の方法または変換および/もしくはニトロ化反応は、反応器、特に管状反応器で行うことができる。
【0096】
本発明の方法の実施形態において、方法または変換および/もしくはニトロ化反応は、反応器、特に管状反応器において実行されるとともに、硝酸/硫酸硝化酸混合物の硝酸が、少なくとも98%、特に少なくとも99%、好ましくは99.5%の範囲内で反応するように選択されるものである。
【0097】
本発明の方法のさらなる実施形態では、方法または変換および/もしくはニトロ化反応は、特に、管状反応器内で行うことができる。ここで、管状反応器内の反応混合物の反応時間および/もしくは滞留時間は、10~180秒、特に30~180秒、好ましくは40~120秒、特に好ましくは60~90秒であることが好ましい。さらに、本実施形態は、管状反応器内の反応混合物の反応時間および/もしくは滞留時間が180秒、特に120秒を超えないような方法で行うことができる。さらに、管状反応器における反応混合物の流速は、本実施形態では、特に逆混合なしの栓流が存在するように選択されるものである。特に、反応混合物は、本実施形態では、特に逆混合なしの栓流を有する管状反応器を通って流れる。特に、管状反応器内の反応混合物の流速は、0.01~10m/s、特に0.1~5m/s、好ましくは0.2~3m/s、特に好ましくは0・25~2m/s、さらに好ましくは0.8~1.5m/sであることがこのましい。
【0098】
本発明の方法の特定な実施形態において、方法または変換および/もしくはニトロ化反応は、管状反応器において実行されるとともに、前記管状反応器は、特に添加的な混合エネルギーを導入するために、1つ以上、好ましくは複数の混合要素(分散要素)を装備する。本実施形態において、混合要素は、特に金属プレート、特に衝突もしくは偏向プレートとして、オリフィスプレートとして、静的混合器として、分流器として形成されることができる。特に、10~1000ジュール/リットル、好ましくは10~500ジュール/リットル、特に好ましくは20~200ジュール/リットルの混合エネルギーが、混合要素に導入されることが提供される。さらに、混合要素毎の圧力降下は、特に0.1~3.0バール、好ましくは0.3~1.5バール、特に好ましくは0.3~0.8バールである。本実施形態において、管状反応器に配置される混合要素は、硝酸/硫酸硝化酸混合物の硝酸の変換が、反応器の最初の10~30容量%において少なくとも40%、特に少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%となるように与えられることが好ましい。
【0099】
本実施形態では、管状反応器の終わりに導入された硝酸の変換が、少なくとも98%、好ましくは少なくとも99%、特に好ましくは99.5%となるような方法で、混合要素が管状反応器に配置されていることが好ましい。
【0100】
最後に、本発明の方法のさらなる特定の実施形態によれば、この方法または変換および/もしくはニトロ化反応が、反応器、特に管状反応器において行うことができ、そこで、特に分散もしくは乳化、特に開始反応混合物もしくはニトロ化混合物を製造するための分散装置、好ましくは混合装置が、反応器、特に管状反応器の上流側に配置されることが好ましい。さらに本実施形態では、分散装置、特に混合装置は、撹拌容器、噴流混合器もしくはポンプ、特に遠心ポンプとして構成されるものである。本実施形態の特定の変形例において、分散装置、特に混合装置は、ポンプ、特に遠心力ポンプとして構成されるものである。本実施形態の別の変形例において、分散装置、特に混合装置は、噴流混合器として構成される;特に噴流混合器は、好ましくは中央駆動噴流と、該駆動噴流を取り囲む媒体を、特に環状噴流の形で生成することができる。特に、分散装置、特に混合装置は、本実施形態では、反応器、特に管状反応器の上流、特に上流側直前に配置されるとともに、前記分散装置から反応器等に入るもので、特に前記分散装置は、反応器に一体化されるものでありおよび/もしくは反応器の構成要素である。
【0101】
本発明の方法は、特に好ましくは以下のように行われるとともに、その方法はニトロベンゼンを与えるためにベンゼンのニトロ化のための例によって説明される。しかしながら、本発明の方法は、特に、硫酸または硝酸における分散が困難なすべて他の芳香族化合物(例えばトルエン、キシレン、クロロベンゼンなど)にも採用することができる。
【0102】
この目的のために使用されるニトロベンゼンを与えるためにベンゼンの断熱ニトロ化の基礎となる方法は、EP 1 272 268 A2およびEP 2 168 942 A1の例によって説明される。
【0103】
断熱ニトロ化においては、本発明の方法においても使用されることが好ましく、例えば60~79重量%、特に62~72重量%、好ましくは65~72重量%の硫酸の重量比を有し、且つ1~8重量%、特に2~6重量%、好ましくは3~5重量%の硝酸の重量比を有する混合酸(硝化酸混合物もしくは硝化酸)と、分配装置において1.0~1.5、好ましくは1.05~1.15の硝酸に対するベンゼンの化学量的比においてニトロ化されるベンゼンとを混合することが一般的に可能である。前記ニトロ化混合物における有機相と酸相の間の相比は、使用される混合酸における硝酸の濃度によって決定される。4.5重量%の硝酸を含む混合酸の場合、重量ベースで10%の過剰なベンゼンにおいて、16.3の混合酸/ベンゼンの比率が存在する。反応の終わりにおいて、反応の総熱量が蓄積され、約10.3の使用済み酸/生成物比を有するニトロ化混合物が、その後に得られるものである。相比が小さくなると、例えば混合酸中の硝酸の含有量が高くなるため、最終温度と開始温度との差(ΔT)が大きくなる。またその逆も同様である。
【0104】
反応参加物の混合の後、有機相および酸相の2相混合物は、ニトロ化が、例えばニトロ化混合物において急激な温度上昇が認識可能な管状反応器において、開始されるように、分散される。開始温度は、それぞれの供給流の混合温度によって与えられ、且つ、断念ニトロ化、特にニトロベンゼンを得るためのベンゼンの断熱ニトロ化の場合、開始温度は、代表的に、70~120℃の範囲内、特に80~120℃の範囲内、好ましくは80~110℃の範囲内、特に好ましくは85~105℃の範囲内である。特に、変換および/もしくはニトロ化反応についての開始温度は、120℃以下であり、特に100℃以下、好ましくは95℃以下、特に90℃以下であることが好ましい。
【0105】
導入された硝酸の少なくとも98%、好ましくは99%が最終端で反応する管状反応器におけるニトロ化混合物の滞留時間は、通常30~180秒、好ましくは120秒以下、特に好ましくは60~90秒である。管内におけるニトロ化混合物の流速は、逆混合なしの栓流が管状反応器内で優先されるように、0.1~5.0m/s、好ましくは0.2~3.0m/s、特に好ましくは0.5~2.0m/s、より特に好ましくは0.8~1.5m/sである。管状反応器の寸法は、製品の時間ごとの出力、混合酸中の硝酸の含有量、管状反応器内の滞留時間および流速の設定によって明確に固定される。
【0106】
特定の実施形態において、混合酸は、硫酸と硝酸を組み合わせることによって初期時に生成されることが好ましい。第2段階において、ニトロ化される芳香族化合物が、この混合酸に分散される。それから開始温度は、個々の供給流の混合温度を結果として生じる。供給流の温度は、所望の開始温度が混合後に優先される方法において設定されることが好ましい。
【0107】
適切な開始温度の選択、最終温度および開始温度の間の温度差(ΔT)並びにニトロ化混合物自体の最終温度の設定とは別に、上述された滞留時間に準拠する硝酸のほぼ完了した変換のためのさらなる前提条件は、目標とされる方法において、第1の分散作業が実行された直後に所望の温度上昇がニトロ化混合物に起こるような方法(従来技術から当業者には公知であり当然のものである)において、ニトロ化が開始されるような混合酸におけるニトロ化される芳香族化合物の分散である。この目的のために、ニトロ化される芳香族化合物は、再分散作業においえ使用されることも好ましい、例えば適当な形状のノズル(例えばEP 0 373 966 A2、EP 0 436 443 A2またはEP 0 708 076 A2参照)によって混合酸中に分散されるか、または、ニトロ化混合物は、静的ミキサー(例えばEP 0 489 211 A1またはEP 0 799 270 A1参照)によって、もしくは、噴流ミキサー(例えばEP 0 771 783 A1)によって、もしくは、特別な形状のオリフィスプレート(例えばEP 1 272 268 A2またはEP 1 291 078 A2)を使用することによって、混合酸に分散することができる。
【0108】
使用される分散技術にかかわらず、お互いに相の、例えば過剰な状態で存在する混合酸中のベンゼンの第1の分散において、最も好ましくない界面張力が相の間に及び、この結果として最適な分散が妨げられることが生じる。さらに、エネルギー入力によって生成される混合酸中でニトロ化される純粋芳香族化合物の分散は、急激に合体する傾向がある。
【0109】
ニトロ化芳香族化合物と水性相(例えばニトロベンゼンと水)の間の界面張力は、ニトロ化される芳香族化合物(例えばベンゼン)と水との間の界面張力よりも十分に低い。反応を開始させる第1の初期分散作業以前にニトロ化される生成物の本発明による添加は、効果的且つ十分に相界面での界面張力を低下させ、この結果として、改善された分散が初期時に達成され、初期に生成された分散が合体するための傾向が減少される。
【0110】
好ましくは管状反応器における断熱ニトロ化のためのニトロ化の前に、特に反応の開始直前に、たとえばニトロ化を開始する第1の初期分散作業の前に、硫酸、硝酸およびにニトロ化される芳香族化合物(たとえばベンゼン)に添加されるさらなる要素としてニトロ化生成物の本発明のよって提供されるさらなるニトロ化混合物への添加物において、添加物のためのいろいろな変形例が可能である。
再循環する生成物は、特に、
a) ニトロ化される芳香族化合物(たとえばベンゼン)の添加前におよび硝酸の混合前に濃縮されおよび再生された硫酸(リサイクル酸)に、且つ/または、
b)硝酸の混合直後にニトロ化される芳香族化合物(たとえばベンゼン)の添加前に混合酸に、且つ/または、
c)ニトロ化される芳香族化合物とともに、且つ/または、
d)リサイクル酸または混合酸への相分離前に、ニトロ化エマルジョンおよび/もしくはサブ流として、且つ/または、
e)特に添加された硝酸生成物(たとえばニトロベンゼン)の一部が、a)および/もしくはb)により水性相に導入され、他の部分が、c)によりニトロ化される芳香族化合物とともに導入されるような方法において、
導入されるものである。
【0111】
硝酸とは別にニトロ化混合物中の第2の反応成分として、ニトロ化される芳香族化合物への添加は、ケースa)~e)において、特に最終端において、好ましくは反応を開始させる第1の分散作業直前で有利に実行されるものである。
【0112】
これらの変形例とは別に、第1の分散作業前の最後の成分として、ニトロ化混合物へのニトロ化される芳香族化合物の添加も、ニトロ化混合物への第1の分散装置前に最後の成分としてニトロ化に参加する第2のパートナーとして硝酸に添加されることが特に有利である。
【0113】
濃縮されたリサイクル酸、混合酸もしくはニトロ化される芳香族化合物(たとえばベンゼン)に添加される生成物(たとえばニトロベンゼン)は、たとえば下記のような方法から等しき採取することができる。
A)使用済み硝化酸およびニトロベンゼンからなるニトロ化混合物の相分離の後、冷却の前もしくは後、好ましくは洗浄媒体での処理の前の粗ニトロベンゼンとして(この粗ニトロベンゼンは、生成物に加えて、2~10%のベンゼン、ニトロフェノールおよび約0.2~0.25%の溶解形態における硫酸の痕跡、およびミクロ乳化としての使用済み酸を含有するが、水は含有しない);且つ/または、
B)酸洗浄後の酸を含まない部分的に生成されたニトロベンゼンとして(中性洗浄からのこのニトロベンゼンは、総ニトロフェノールに加えて、すべての超過したベンゼンを含有し、水で飽和される);且つ/または、
C)中性洗浄後の生成されたニトロベンゼンとして(中性洗浄からのこのニトロベンゼンは、約2~60ppmのニトロフェノールの痕跡およびすべての超過ベンゼンのみを含有し、同様に水で飽和される);且つ/または、
D)使用済み酸のリサイクル酸への濃縮における蒸気凝縮において得られるニトロベンゼンとして(使用済み酸の凝縮物から得られる約10~15%の生成物のこのニトロベンゼンは、実質的にニトロフェノールを含有しないが、ベンゼンの少量の残留物を含有し、同様に水で飽和される);且つ/または、
E)超過したベンゼンの除去の後、水を含有しないか、水で飽和された最終生成物として;且つ/または、
F)また、ニトロ化工程へのそれに続く再循環による相分離前にニトロ化エマルションの部分的除去として;且つ/または、
G)上記A)~F)の組み合わせ。
【0114】
上述したA)~C)の後にベンゼンをまだ含有するニトロベンゼンの再循環は有益であり、且つ、上述したB)およびC)の後にまだベンゼンを含有するニトロベンゼンの再循環は、リサイクル酸における硝酸の痕跡による副産物、特にニトロベンゼンからのジニトロベンゼンの形成を最小化するために、特に有益である。
【0115】
硝酸の混合酸への添加の前に濃縮されたリサイクル酸へ生成物を添加する場合、0.1~5.0重量%、好ましくは0.5~3.0重量%、特に好ましくは1.1~2.0重量%の生成物が、リサイクル酸に添加される。
【0116】
有機相と酸相との間の界面張力の効率的な低下は、0.1~50%、好ましくは5.0~45%、特に好ましくは11~40%のニトロベンゼンベンゼンを含むベンゼン/ニトロベンゼンの混合物が導入されるようにニトロベンゼンとニトロ化されるベンゼンを混合することによって達成されるものである。


【0117】
ニトロ化生成物(たとえばニトロベンゼン)をリサイクル酸に直接添加する場合およびニトロ化される芳香族化合物に生成物(たとえばニトロベンゼン)を添加する場合の両方において、ニトロ化された生成物の前分散もしくはニトロ化された生成物/ニトロ化される芳香族化合物の前分散並びにその期間がリサイクル酸において添加された有機相の前分散の品質による所定の滞留時間を提供し、酸と有機相の間のニトロ化生成物の分割均衡が、ニトロ生成物の含有する2相の間の最適に変化される界面張力が効果的となる以前に確立されるものである。
【0118】
第1の分散作業の前にこの滞留時間を短縮するために、リサイクル酸または混合酸に、硝酸生成物(例えばニトロベンゼン)を、それぞれの酸に添加された生成物の溶解限界が超えるような量で、添加することが特に有利である。それから、2つの相からなるニトロ化された生成物/酸の混合物が、形成される。
【0119】
この混合物へのニトロ化される芳香族化合物を添加すると、酸に溶解されない添加されたニトロ化生成物の一部は、ニトロ化される芳香族化合物とすぐに混合され、これによってベンゼン/ニトロベンゼンの混合物は、結果として第1の分散作業の前ですら、有機相を生じる。この方法において、それぞれニトロベンゼンを含有する両相は、第1の分散作業のために要求される界面張力の減少に寄与する。
【0120】
第1の分散作業の前の管状反応器への滞留時間を短縮し、これによって非常の素早く2つの相間に添加される生成物のためにおおよその分配平衡を達成するためのさらなる可能な方法は、たとえばリサイクル酸の量に基づいて、0.1~2.0重量%、好ましくは0.5~1.5重量%、特に好ましくは1.1~1.5重量%が酸相に添加されるように、且つ/または、たとえばニトロベンゼンの0.1~32重量%、好ましくは11.0~25重量%が、ニトロ化されるベンゼンおよびニトロベンゼンから構成される有機相に添加されるように、酸相を介しておよび有機相を介してニトロ化回路へ生成物(たとえばニトロベンゼン)を導入することである。
【0121】
上述したように、完全なニトロ化混合物の第1の分散作業前の最後の成分としてニトロ化される芳香族化合物の添加の変形例とは別に、特に、適当な混合装置によって第2の画分における水性相において均等に均質に分散された硝酸であるだけであり、且つ、前記前分散されたニトロ化混合物が保持されるだけでなく添加的なさらなる分散するものであり、それに関連して、分散有機相と、均質な酸相の間のより大きな変換領域も生成される方法において、リサイクル酸、ニトロ化生成物およびニトロ化される芳香族化合物の混合物を前分散し、さらにそれに続いてニトロ化混合物への最後の成分として硝酸を添加することは、同様に非常に有益である。
【0122】
上記発明または本発明の方法は、原理的に、先行技術から公知の任意の断熱ニトロ化方法のために、好ましくは純粋な開始材料、特に分散が困難な芳香族化合物(好ましくはベンゼン)および純粋混合酸(水性硝酸/硫酸硝化酸混合物)を使用するニトロ化が、機械的混合エネルギーの導入によって開始される管状反応器に関連した断熱ニトロ化方法のために、たとえばEP 0 373 966 A2、EP 0 436 443 A2、EP 0 489 211 A1、EP 0 708 076 A2、EP 0 771 783 A1、EP 0 779 270 A1、EP 1 272 268 A2、EP 1 291 078 A2、EP 2 168 942 A1、EP 2 354 117 A1およびEP 2 473 477 A1において記載されるように、使用することができる。
【0123】
本発明はさらに、本発明の第2の態様によれば、ニトロ化のための製造プラント(すなわちニトロ化プラントまたはプラント)、特に断熱ニトロ化、ニトロ化可能な芳香族有機化合物(芳香族化合物)は、対応するニトロ化芳香族有機化合物(ニトロ化芳香族化合物)の形態でニトロ化された生成物を与え、特に上述した本発明に係る方法を実施するための製造プラントにおいて
該製造プラントは、以下のユニットおよび装置を具備する。
(a) 対応するニトロ化芳香族有機化合物(ニトロ化芳香族化合物)の形のニトロ化生成物を与えるためのニトラブル芳香族有機化合物(芳香族化合物)のニトロ化のためのニトロ化、特に断熱ニトロ化のためのニトロ化ユニットであって、ニトロ化反応を実行するために1つ以上の反応器、好ましくは管状反応器を有するもの;
(b) 任意に、特に使用済み硝酸をニトロ化粗生成物から分離するために、生産ライン内の前記ニトロ化ユニットの下流に配置される少なくとも1つの分離装置、特に分離化装置(分離機);
(c) ニトロ化ユニットおよび生産ラインに存在する任意の分離装置の下流に配置され、特に1つ以上の洗浄段階において、洗浄媒体でニトロ化された粗生成物の洗浄を実行するための少なくとも1つの洗浄ユニット;
(d) 洗浄媒体から洗浄されたニトロ化生成物を分離するために、製造ラインの洗浄ユニットの下流側に配置される分離装置、特に分離化装置(分離機);
ここで、製造プラントは、ニトロ化された生成物をニトロ化ユニットに、特にニトロ化ユニットの開始反応混合物へ部分的に再循環させるための少なくとも1つの再循環装置を具備するものである。
【0124】
本発明の好ましい実施形態において、ニトロ化ユニットは、反応器として少なくとも1つの管状反応器を具備する。
【0125】
特に、ニトロ化ユニットは、本発明の製造プラントの好ましい実施形態において、反応器として少なくとも1つの管状反応器を具備し、そこで前記管状反応器は、特に添加的な混合エネルギーの導入のための1つ以上、好ましくは複数の混合要素(分散要素)を装備するものである。この実施形態において、前記混合要素は、特に金属プレート、特に衝突もしくは偏向プレートとして、オリフィスプレートとして、静的混合器として、もしくは分流器として構成されるものである。さらにこの実施形態では、前記混合要素は、特に作業状態において、10~100ジュール/リットル、好ましくは10~500ジュール/リットル、特に好ましくは20~200ジュール/リットルの混合エネルギーが混合要素によって導入されるような方法において、構成されることが可能である。さらに、作業状態における混合要素毎の圧力降下は、0.1~3.0バール、好ましくは0.3~1.5バール、特に好ましくは0.3~0.8バールであることができる。さらにまた、この実施形態の特定の変形例において、混合要素は、硝酸/硫酸硝化酸混合物の硝酸の変換が、反応器の最初の10~30容量%において、少なくとも40%、特に少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%となるような方法において、前記管状反応器に配置されることができる。最後に、この実施形態の特定の変形例において、混合要素は、導入される硝酸の変換が、前記管状反応器の最終端で、少なくとも98%、好ましくは少なくとも99%、特に好ましくは少なくとも99.5%であるように、前記管状反応器に配されることができる。
【0126】
さらに、本発明の製造プラントの特定の実施形態によれば、特に分散もしくは乳化、特に開始反応混合物もしくはニトロ化混合物を生成するための分散装置、好ましくは混合装置が、反応器の上流側、もしくはニトロ化ユニットの反応器、特に管状反応器の上流側に配置される。
【0127】
この実施形態において、分散装置、特に混合装置は、撹拌容器、噴流混合器もしくはポンプ、特に遠心ポンプとして構成されるものである。本実施形態の特定の変形例において、ポンプ、特に遠心ポンプとして構成されるものである。この実施形態の別の特定の変形例において、分散装置、特に混合装置は、噴流混合器として構成されるとともに、特に前記噴流混合器は、中央駆動噴流と、特に環状噴流の形で前記駆動噴流の周りを回る媒体とを生成する。この実施形態において、分散装置、特に混合装置は、特に反応器、特に管状反応器の上流側に、好ましくは上流側直前に配置されるとともに、前記分散装置は、反応器と一体に設けられることおよび/もしくは反応器の構成要素である。
【0128】
製造ラインおよび存在する分離装置のニトロ化ユニットの下流側に配される洗浄ユニットに関して、この洗浄ユニットは、
- ニトロ化粗生成物および洗浄媒体を接触させおよび乳化させるための少なくとも1つの分散装置、特に混合装置、および
- 前記分散装置の下流側に配置され、分散装置において生成されるニトロ化粗生成物および洗浄媒体の乳化において供給するための環状反応器;を具備するものであるとともに、特に環状反応器は、この環状反応器を介する乳化の通過中に、ニトロ化粗生成物中に初期時に存在する不純物の除去が可能となるように構成されること、且つ/または、ニトロ化粗生成物に初期時に存在する不純物が、反応器を介する乳化の通過中に洗浄媒体に移動し、それによって中性化されるものである。
【0129】
従来の洗浄装置(たとえば混合器/沈降器装置、抽出塔など)が添加的に存在しうることは言うまでもない。
【0130】
前記洗浄装置は、通常、少なくとも2つの洗浄段階、特に少なくとも1つの酸洗浄および少なくとも1つの中性洗浄において洗浄を実行するために構成される。
【0131】
好ましい実施形態において、洗浄ユニット(W)は、特に少なくとも3つの洗浄段階を有する洗浄を実行するために構成される。特に少なくとも3つの洗浄段階を有する洗浄は、(i)好ましくは洗浄媒体として水またはミネラル酸を使用する酸媒体において実行される少なくとも1つの第1の洗浄段階(「酸洗浄」);(ii)好ましくは洗浄媒体として塩基を使用するアルカリ(塩基)媒体において実行される少なくとも1つの第2の洗浄段階(「塩基洗浄」);および(iii)好ましくは洗浄媒体として水を使用する中性媒体において実行される少なくとも1つの第3の洗浄段階(「中性洗浄」)を具備するものである。
【0132】
本発明の方法に関して上記に説明したように、本発明の方法は、プロセス条件に関して柔軟であり、それぞれの条件(たとえば装置に関する条件)に対して事実上あらゆる方法において適合させることができる。これによって、上述したように、ニトロ化芳香族有機化合物(ニトロ化芳香族化合物)の導入および除去は、いろいろな方法段階および本発明の方法の配置において達成されるものである。これは、本発明の製造プラントにも適用される。
【0133】
これによって、ニトロ化ユニットへのニトロ化生成物の部分的な再循環のための本発明の製造プラントにおいて提供される再循環装置は、本発明の特定な実施形態において、部分的に再循環されたニトロ化生成物が、製造流の下記する配置(i)~(iv)の少なくとも1つから取得されるような方法において、構成され且つ/または配置されるものである:(i)好ましくは、酸性水相(酸相)の排除後および/もしくは取得されたニトロ化混合物の使用済み硝化酸および粗ニトロ化芳香族有機化合物(粗ニトロ化芳香族化合物)への相分離の後、粗ニトロ化芳香族有機化合物(粗ニトロ化芳香族化合物);且つ/または(ii)特に酸もしくは中性洗浄後の洗浄されたニトロ化芳香族有機化合物(ニトロ化芳香族化合物);且つ/または(iii)洗浄され、特に酸もしくは中性洗浄の後に取得され、揮散されもしくは抽出されまたは乾燥されたニトロ化芳香族有機化合物(ニトロ化芳香族化合物);(iv)使用済み散の濃縮の後の水蒸気凝縮において取得されたニトロ化芳香族有機化合物(ニトロ化芳香族化合物)。原理的に、これらの変形例の2つ以上の組み合わせが可能である。
【0134】
さらに、ニトロ化ユニットへの前記ニトロ化生成物の部分的再循環のための本発明の製造プラントにおいて提供される再循環装置は、本発明のさらなる特定の実施形態において、部分的に再循環されるニトロ化生成物が、製造流の下記する配置(i)~(iv)の少なくとも1つにおいて、添加されおよび/もしくは導入されるような方法において、構成されることおよび/もしくは配置されるものである:(i)すべて他の反応物の開始反応混合物;且つ/または(ii)特に硝酸/硫酸硝化酸混合物を生成する以前の硝酸/硫酸硝化酸混合物の硫酸;且つ/または(iii)硝酸/硫酸硝化酸混合物;且つ/または(iv)ニトロ化されるニトロ化可能な芳香族有機化合物(芳香族化合物)。原理的に、これらの変形例の2つ以上の組み合わせもここでは可能である。
【0135】
最後に、製造プラントは、本発明の製造プラントの更なる特定の実施形態において、使用済み硝酸をリサイクルするための少なくとも1つのリサイクル装置を加えて含むことができる。このようにして、工程の経済性と固定効率をさらに向上させることができる。特に、リサイクル装置は、この特定の実施形態において、使用済み硝酸を濃縮する装置と、必要に応じて新しい硝酸および/もしくは硫酸を添加するための装置を含むことができる。
【0136】
本発明の製造プラントのさらなる詳細に関しては、不必要な繰り返しを避けるために、本発明の製造プラントに類似して適用される発明の工程に関して上記で述べられているものに言及することができる。
【0137】
本発明はさらに、本発明の第3の態様によれば、分散剤(分散薬剤)、特に乳化剤として、ニトロ化芳香族有機化合物(ニトロ化芳香族化合物)の使用、特にニトロ化、対応するニトロ化されていない芳香族有機化合物のニトロ化反応を提供するものである。
【0138】
さらに、本発明はさらに、本発明のこの態様によれば、有機相および酸相の界面張力を低下させるために、ニトロ化芳香族有機化合物(ニトロ化芳香族化合物)を使用すること、且つ/または、ニトロ化において、特に対応するニトロ化されていない芳香族有機化合物のニトロ化反応において、有機相および酸相の分散性の改善を提供するものである。
【0139】
最後に、本発明はさらに、本発明のこの態様によれば、収率を増加させるためにニトロ化芳香族有機化合物(ニトロ化芳香族化合物)の使用、且つ/または、副産物形成の減少、且つ/または、総反応時間の短縮、且つ/または、ニトロ化における、特に対応するニトロ化されていない芳香族有機化合物のニトロ化反応における反応開始温度の低下を提供する。
【0140】
本発明による使用に関して、下記する手順は一般的に採用される:ニトロ化芳香族有機化合物(ニトロ化芳香族化合物)は、好ましくは硝酸/硝酸硝化酸混合物による断熱性硝酸反応において、対応する硝酸性香族有機化合物(ニトロ化芳香族化合物)に変換されるものにおいて;対応するニトロ化芳香族有機化合物(ニトロ化芳香族化合物)が、ニトロ化可能な芳香族有機化合物(芳香族化合物)および硝酸/硫酸硝化酸混合物を具備する開始反応混合物に添加され、且つ、変換および/もしくはニトロ化反応が、ニトロ化芳香族有機化合物(ニトロ化芳香族化合物)の存在下で、開始および/もしくは実行されること:且つ/または、
得られたニトロ化芳香族化合物(ニトロ化芳香族化合物)は、ニトロ化反応およびそれに続く変換に部分的に再循環されおよび/もしくはニトロ化反応が、ニトロ化芳香族有機化合物(ニトロ化芳香族化合物)の存在下で、開始されおよび/もしくは実行されること。
【0141】
本発明に係る用途のさらなる詳細に関しては、不必要な繰り返しを避けるために、本発明の方法及び本発明の製造プラントに関して上記で述べられていることを、これに係る使用に類似して適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0142】
図1図1は、本発明の好ましい実施形態による本発明の方法または製造プラントの概略構成図である。
図2図2は、従来技術(図2(a))と比較した本発明のさらに好ましい実施形態(図2(b)乃至(d))による本発明の方法または製造プラントのいろいろな変形例を示した概略構成図である。
図3図3は、 本発明のさらに好ましい実施形態による本発明の方法または製造プラントのさらに別の変形例を示した概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0143】
図1は、ニトロベンゼンを与えるためのベンゼンのニトロ化の例としてニトロ化混合物に再循環する生成物ための様々な変形例のための発明に係る方法の実施形態を概略的に示すとともに、図2(b)乃至(d)は、ニトロベンゼンを与えるためのベンゼンのニトロ化の例のための様々な開始材料の添加のための最も重要な様々な可能な変形例および配列を概略的に示したものである。
【0144】
図1に示すように、開始材料硝酸1、ベンゼン2および再循環ニトロベンゼン9,12,13,14および15は、管状反応器に直接接続される管状反応器TRの計量/予混合ユニットPMにおける上述されるか定義される順番(図2(b)乃至(d)に示すように)において、所定の入力圧力P1(少なくとも管状反応器のすべての圧力降下の合計プラス最終圧力P2)で、適当なポンプP(たとえば遠心力ポンプ)によって計量/予混合ユニットPMに供給される濃縮再生硫酸3に導入される。硝酸はリサイクル酸に完全に且つ均一に溶解する。リサイクル酸(硫酸)/硝酸(=混合酸)とともにベンゼン2および再循環ニトロベンゼン9,12,13,14または15は、2つの相からなる初期ニトロ化混合物4を形成し、再分散される。混合酸、ベンゼンおよびニトロベンゼンからなるニトロ化混合物4の温度は、個々の供給流(1,2,3および/もしくは9,12,13,14,15)の温度から混合温度(たとえば開始温度)として決定され、ニトロ化が分散装置FDにおける最初の分散動作後に開始されるような方法において80~120℃の範囲内で選択される。計量/予混合ユニットPMにおいて予混合されたこれらの開始材料は、それに続いて、分散装置FDの後のニトロ化混合物4における非常に急激な温度上昇から認識される開始され起動されるニトロ化のための有機相と酸相間の十分に大きな変換領域(相界面)が形成されるような方法において、分散装置FDにおいてお互いに分散される。ニトロ化混合物が前記管状反応器TRを通過する間の合体によって生じる有機相および酸相の間の相界面における減少は、管状反応器TRにおいて区分される分散要素RD~RDによって相殺される。管状反応器TRの出力側で、ニトロ化混合物(今は使用済み酸と生成物)5は、通常120~145℃の範囲内の最終温度および圧力P2で相分離装置Sに進む。圧力P2は、ニトロ化混合物5、特に粗ニトロベンゼン(ニトロベンゼンを与えるためのベンゼンのニトロ化の場合には脂肪族化合物/ベンゼン/ニトロベンゼンの混合物)における揮発性成分のフラッシュ蒸発が相分離装置において確実に回避されるように選択されるものである。
【0145】
図1に示されるように、マイクロエマルションとして硫酸および溶解したすべての不純物(たとえば未反応ベンゼン、ニトロフェノール等)を含む粗ニトロベンゼン6の傍流13は、相分離装置Sでの相分離の後、計量/予混合ユニットPMを介して冷却の前後でニトロ化に再循環される。粗ニトロベンゼン6の主な量は、1~3の洗浄段階において、水(塩基の添加の有無)による粗洗浄Wにおいてすべての酸化合物(たとえばミネラル酸、ニトロフェノール他)を有しない。複数の洗浄段階からなる洗浄の1つ以上の洗浄段階において分岐するニトロベンゼン/ベンゼン混合物7の傍流14は、ニトロ化に再循環されることが好ましい。痕跡を除いて、すべてのミネラル酸およびニトロフェノールを有しないニトロベンゼン/ベンゼン混合物7の主な量は、それに続いて未反応ベンゼン10がなく、たとえば精製装置DSにおける分配もしくは流除去による揮発性脂肪族不純物がないものである。回収されたベンゼン10は、超過した脂肪族化合物の排除後に、ニトロ化に再循環される。完全に精製されたニトロベンゼン8の傍流9は、同様に、ニトロ化に再循環される。
【0146】
図1に示されるように、ニトロ化から生じる水および溶解限界まで使用済み酸に溶解した硝酸およびニトロベンゼン並びに揮発性成分(たとえばベンゼン、硝酸、脂肪族化合物等)は、120~145℃の温度で、相分離ユニットSにおいて分離される使用済み酸11から完全に排除されるものである。(10%~15%の生成された総ニトロベンゼンから製造される)水および純粋ニトロベンゼン12の混合物である使用済み酸のフラッシュ蒸発において得られた蒸気濃縮液は、総分離装置Sから粗ニトロベンゼン6とともに洗浄において精製され且つ処理される。本発明の方法によれば、蒸気濃縮液から得られるこの純粋なニトロベンゼン12は、同様に相分離の後、全体としてニトロ化に再循環されるものである。
【0147】
さらに、ニトロ化から得られたニトロベンゼンは、相分離前に、ニトロ化混合物5の傍流15の再循環によってニトロ化回路に再循環される。
【0148】
本発明の方法について記載されないさらなる変形例は、廃水処理から、たとえば廃水除去から再循環するニトロベンゼンを具備する。
【0149】
図2(b)~(d)に図示されたものについて、特に下記するものが説明される:
【0150】
図2(a)は、リサイクル硫酸に、開始材料としての硝酸およびベンゼンを添加する通常の順番に関する従来技術と比較するために:硝酸1は最初にリサイクル酸3に添加れ、リサイクル酸3と均等に混合される。ニトロ化されるベンゼン2は、結果として生じる混合酸(流れ3+1)に添加され、そして結果として生じる開始ニトロ化材料4もしくは開始反応混合物(混合酸/ベンゼン)は、分散ユニットFD後に、開始ニトロ化混合物4の非常に急激な温度上昇から認識される開始するニトロ化のための十分に大きい変換領域(相界面)が形成されるよう、分散ユニットFDに分散される。
【0151】
図2(b)において、開始材料としての硝酸1、ベンゼン2およびいろいろな供給源9,12,13,14または15からのニトロベンゼンは、本発明によれば、順番に、供給源9,12,13,14または15からのニトロベンゼン、それから硝酸1および最後にベンゼン2の順番にリサイクル硫酸に添加される。ニトロベンゼンは、硝酸が添加される前に、リサイクル硫酸3に予め分散される。硝酸はできる限り速やかに均質に混合され、混合された酸/ニトロベンゼンの混合物にベンゼンが添加された後、開始ニトロ化混合物4は、分散ユニットFDの後で開始ニトロ化混合物4の非常に急激な温度上昇を認識することができる開始するニトロ化のための十分に大きな変換領域(相界面)が、形成されるような方法において、分散ユニットFDにおいて分散される。
【0152】
図2(c)において、開始材料としての硝酸1、ベンゼン2およびいろいろな供給源9,12,13,14または15からのニトロベンゼンは、いろいろな供給源9,12,13,14または15からのニトロベンゼン、硝酸1および最後に供給源9,12,13,14または15からのニトロベンゼンとベンゼンとの混合物として存在するベンゼンの順番においてリサイクル硫酸3に添加される。ニトロベンゼンは、硝酸を添加する前にリサイクル酸3に予め分散される。硝酸は、できるだけ速やかに均質に混合され、混合酸(硝化酸)/ニトロベンゼンの混合物へベンゼン/ニトロベンゼンを添加した後で、開始ニトロ化混合物4は、前記分散ユニットFDの後で、開始ニトロ化混合物における非常に急激な温度上昇によって認識される開始するニトロ化のための十分に大きな変換領域(相界面)が形成されるような方法において分散ユニットFDに分散されるものである。
【0153】
最後に、図2(d)において、開始材料、たとえば硝酸1、ベンゼン2およびいろいろな供給源9,12,13,14または15からのニトロベンゼンは、下記する順番:供給源9,12,13,14または15からのニトロベンゼンの添加、それからベンゼン2のみおよび/もしくは供給源9,12,13,14または15からのニトロベンゼンとの混合物として、またはリサイクル酸への分流において、リサイクル硫酸に添加される。ニトロベンゼン/ベンゼン混合物は、硝酸の添加前にリサイクル酸に予め分散される。硝酸が最後に添加され、できるだけ速やかに均質に混合される。この開始ニトロ化混合物は、分散ユニットFDの後に開始ニトロ化混合物における非常に急激な温度上昇によって認識される開始ニトロ化混合物4の開始し始動するニトロ化のために十分に大きな変換領域(相界面)が形成されるような方法において、分散ユニットFDに分散される。
【0154】
図3は、本発明の特定の実施形態によって本発明の方法もしくは本発明による製造プラントのさらなる概略説明図を示すものである:図3によれば、対応するニトロ化芳香族有機化合物(ニトロ化芳香族化合物)を与えるためにニトロ化可能な芳香族有機開始化合物(芳香族化合物)の特に断熱状態下でのニトロ化は、最初に上述した反応アプローチにしたがって、ニトロ化ユニットNにおいて生じる(たとえば、ニトロ化される芳香族化合物および硝酸/硫酸硝化酸混合物から構成される開始反応混合物並びに対応するニトロ化生成物の添加)。製造ラインにおいてニトロ化ユニットNの下流側には、ニトロ化粗生成物からの使用済み酸もしくは使用済み硝化酸混合物を分離するための分離装置S、特に分離する装置(分離機)が配置される。製造ラインのニトロ化ユニットNおよび分離ユニットSの下流側には、上述されたように、ニトロ化された粗生成物の洗浄を実行するための洗浄装置Sが設けられ、洗浄され精製された生成物NPがそれに続いて形成される(洗浄媒体の排除および洗浄されたニトロ化生成物の任意の乾燥後に)。
【0155】
図3による本発明のプラントおよび方法手順は、上述されたように、開始反応混合物にニトロ化生成物を部分的に再循環させるための再循環装置Rが、本発明による方法手順を可能にするように、添加的に設けられることを特徴とする。ここで、本発明による再循環装置は、ニトロ化生成物が、本発明の製造プラントのいろいろな位置で、または本発明の方法のいろいろな位置で、除去され、上述したように再循環される(たとえばニトロ化の直後の2つの相のニトロ化混合物として、且つ/または、特に使用済み硝化酸の除去の後、洗浄の前、洗浄からもしくは洗浄後に、特に酸洗浄後もしくは中性洗浄後のニトロ化粗生成物として、且つ/または、リサイクルユニットRAにおける使用済み硝化酸の濃縮からの純粋ニトロベンゼンとして、または、精製されおよび任意に乾燥された最終ニトロ化生成物として、これらの可能性の組み合わせが提供されることも可能である)。
【0156】
開始反応混合物へのニトロ化生成物の部分的な再循環は、上記に詳細に説明された利点、特に有機相および酸相の分散可能性およびこれによる改善された全体的な反応(すなわち、収率の向上、副産物形成の減少、開始温度の低下、エネルギー効率の向上、取り扱い性の改善など)を助長する。
【0157】
図3および上記説明において示されるように、前記生産プラントは、本発明の製造プラントのさらに特定の実施形態において、添加的に使用済み硝化酸をリサイクルするための少なくとも1つのリサイクルユニットRAを具備する。特に、上述したように、リサイクルユニットRAは、この特定の実施形態において、使用済み硝化酸を濃縮するため装置および添加的に新しい硝酸および/もしくは硫酸を添加するための装置を具備する。
【0158】
それによって、全体としては、ニトロ化可能な芳香族有機化合物のための改善されたニトロ化方法およびこの方法を実施するための対応する(製造)プラントであって、全体的に改善された効率、特に改善された技術的効率および改善されたエネルギー効率、並びに全体的に改善された経済性および改善された取り扱い性が、本発明によって提供される。
【0159】
本発明のさらなる実施形態、適応例、変形例、改良例等は、本発明の範囲を超えることなしに、本明細書を読解することによって、当業者によって容易に認識され、現実化することができる。
【0160】
本発明は、下記する実施例の助けを借りて説明されるが、本発明はこれに限定されるものでない。
【実施例
【0161】
実施例1(比較例)
762g/hのベンゼン(10%過剰)と、65.73%の硫酸および4.99%の硝酸を含有する15.4kg/hの混合酸とが、80℃の開始温度のために231mリットルの内部容積を有し、異なる間隔の17の混合要素(静的混合要素とオリフィスプレートの組み合わせ)を備えている管状反応器に計量して入れられる。ベンゼンは、初期分散を達成するためにノズルを介して約9バールの初期圧力で反応器に導入される。80秒の反応器における(重量ベースで11.7および容量ベース9.6の使用済み酸/生成物の相比を有する)ニトロ化混合物での滞留時間で、ニトロ化混合物の流速は、0.42m/sである。初期分散の後、15番目の混合要素の後の反応器の温度は98℃であり、反応器の終端温度は121℃である。使用済み硝化酸中の硝酸の残留含有量は、(97%の硝酸の変換に対応して)1200ppmである。ニトロ化混合物の温度上昇は、41℃である。粗ニトロベンゼンは、導入されたベンゼンの超過とは別に、120ppm未満のジニトロベンゼン(DNB)および非常に少量のピクリン酸を有する1200ppm未満のニトロフェノールを含有する。
【0162】
実施例2(本発明による)
762g/hのベンゼン(10%過剰)と、(計量された25%のベンゼンに対応する)ニトロ化から生じる再循環される190.5g/hのニトロベンゼンと、65.73%の硫酸および4.99%の硝酸の含有量を有する15.4kg/hの混合酸の混合物とが、80℃の開始温度のために上述した実施例1のように管状反応器に計量して入れられる。ベンゼン/ニトロベンゼン混合物は、初期分散を達成するために、ノズルを介して約8バールの初期圧力で反応器に導入される。(重量ベースで10.2および容量ベースで8.0の使用済み酸/生成物の相比を有する)ニトロ化混合物での78秒の反応器における滞留時間で、ニトロ化混合物の流速は0.43m/sである。初期分散の後で15番目の混合要素の後の反応器の温度は、102℃であり、反応器の終端温度は、122.1℃である。使用済み硝化酸中の硝酸の残留含有量は、(99.5%の硝酸の変換に対応して)200ppm未満である。ニトロ化混合物における温度上昇は、42.1℃である。粗ニトロベンゼンは、導入されたベンゼンの超過とは別に、約80ppmのジニトロベンゼン(DNB)および非常に少ない比率のピクリン酸を有する900ppm未満のニトロフェノールを含有する。
【0163】
実施例3(本発明による)
65.73%の硫酸および4.99%の硝酸を含有する154.4kg/hの混合酸と、(1.31%の混合酸に対応する)ニトロ化から生じる190.5g/hの再循環ニトロベンゼンと、762g/hのベンゼン(10%過剰)とが、約80℃の開始温度のために、実施例1において記載されたように管状反応器に計量されて入れられるとともに、ニトロベンゼンがベンゼンの添加前に混合酸に予め分散される。ベンゼンは、初期分散を達成するために、反応器内の混合酸およびニトロベンゼンの混合物に、ノズルを介して約8バールの初期圧力で導入される。重量ベースで10.2および容量ベースで8.0の使用済み酸/生成物の相比を有するニトロ化混合物の78秒間の反応器における滞留時間で、ニトロ化混合物の流速は、0.43m/sである。初期の予分散後の第15番目の混合要素の後の反応器内の温度は、102℃であり、反応器終端の温度は、122.1℃である。使用済み硝化酸における硝酸の残留含有量は、(99.5%の硝酸の変換に対応して)200ppm未満である。ニトロ化混合物の温度上昇は、42.1℃である。粗ニトロベンゼンは、導入されるベンゼンの超過とは別に、約80~90ppmのジニトロベンゼン(DNB)および非常の小さい比率のピクリン酸を有する900ppmのニトロベンゼンを含有する。
【0164】
実施例4(本発明による)
65.73%の硫酸および4.99%の硝酸を含有する15.4kg/hの混合酸と、(1.1%のリサイクル酸に対応する)160g/hのニトロベンゼンと、762g/hのベンゼン(10%過剰)および(導入されるベンゼンの10%に対応する)76g/hのニトロベンゼンの混合物とが、約80℃の開始温度のために、実施例1に記載されたように、管状反応器に計量されて入れられるとともに、ニトロベンゼンがベンゼンを添加する前に、混合酸に予め分散される。ベンゼン/ニトロベンゼン混合物は、初期分散を達成するために、反応器内の混合酸およびニトロベンゼンの混合物に、ノズルを介して約9バールの初期圧力で導入される。重量ベースで10.2および容量ベースで8.0の使用済み酸/生成物の相比を有するニトロ化混合物の78秒の反応器における滞留時間で、ニトロ化混合物の流速は、0.43m/sである。初期の予分散後の第15番目の混合要素の後の反応器の温度は102℃であり、反応器の最終端の温度は、122.1℃である。使用済み硝化酸における硝酸の残留含有量は、(99.5%の硝酸の変換に対応して)200ppm未満である。ニトロ化混合物の温度上昇は、42.1℃である。粗ニトロベンゼンは、導入されたベンゼンの超過とは別に、約80ppmのジニトロベンゼン(DNB)および非常の小さい比率のピクリン酸を有する900ppm未満のニトロフェノールを含有する。
図1
図2
図3