(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-10
(45)【発行日】2024-07-19
(54)【発明の名称】バイスのワーク台及びバイス装置
(51)【国際特許分類】
B23Q 3/06 20060101AFI20240711BHJP
B25B 1/02 20060101ALI20240711BHJP
B25B 1/10 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
B23Q3/06 301L
B23Q3/06 304C
B25B1/02
B25B1/10 Z
(21)【出願番号】P 2020052358
(22)【出願日】2020-03-24
【審査請求日】2023-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】393028117
【氏名又は名称】株式会社テック・ヤスダ
(74)【代理人】
【識別番号】100078673
【氏名又は名称】西 孝雄
(72)【発明者】
【氏名】安田 嘉和
(72)【発明者】
【氏名】安田 嘉宣
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-326470(JP,A)
【文献】実開平06-003535(JP,U)
【文献】実開昭52-093998(JP,U)
【文献】特表2020-524611(JP,A)
【文献】米国特許第08939442(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 3/06;
B25B 1/00-3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイスの対向する2つのジョーの間に装着されてワークを支持するワー
ク台において、
前記バイスの可動ジョーの移動方向に移動自在に
して前記バイスに装着される台座と、
当該台座の上面から突出している仕切ジョーを挟んで前記移動方向に並置して
支持される2個のワークを仕切る仕切板を備えて当該方向に移動自在に前記台座の上面に装着された2個の座板と、
前記
仕切ジョー側端部を大径のバネ収納部にして前記座板に設けた
前記移動方向の貫通孔と、
基端に設けた凸部を前記バネ収納部に収納しかつ先端を前記座板から突出して前記貫通孔に挿通された前記移動方向に移動自在な押棒と、
前記バネ収納部に収納されて前記座板を
、前記バネ収納部の底面
となっている係合面と前記
凸部との当接により前記座板を前記移動方向に押動すると共に
、
前記押棒を当該座板の移動ストロークより大きなストロークで同方向に移動させる
圧縮バネと、
前記仕切ジョーに固定されて前記座板の上面より高く突出している仕切口金と
を備えている、
バイスのワー
ク台。
【請求項2】
前記台座の一部である前記
仕切ジョー上面の前記移動方向中央に取り付けられた
仕切口金を備え、この
仕切口金の両側に前記座板、
圧縮バネ及び押棒が対称に配置されている請求項1記載のワー
ク台。
【請求項3】
バイスの固定ジョーと可動ジョーとの間の
当該バイスの基台上に
当該バイスの可動ジョーの移動方向と同方向に移動自在な中間ジョーが装着され、当該中間ジョーの前記バイスの固定ジョー側及び可動ジョー側に請求項1又は2記載のワー
ク台が前記移動方向に移動自在に装着さ
れている、バイス装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、工作機械のテーブルに複数のワークを固定するのに用いるバイス装置及び当該バイス装置に使用するワーク台に関するもので、特に複数のワークの把持及び開放を一操作で行うことができ、把持面が円弧状のワークの把持にも適した上記バイス装置及びワーク台に関するものである。
【0002】
ここで、バイス装置とは、バイス(vice、万力)の対向するジョー(顎、口金を介して又は介さないでワークに当接する部材)の間でワークを支持するワーク台ないしワークを把持する中間ジョーを装着したバイスを言う。
【背景技術】
【0003】
マシニングセンタなどの工作機械でワークを加工する場合、バイスを介してワークを工作機械のテーブルに固定することが一般的に行われている。比較的小型の多数のワークを加工するときは、バイスにワーク台や中間ジョーを取り付けて1個のバイスに多数のワークを把持できるようにすることで、加工能率と作業効率を向上させることができる。
【0004】
本願出願人は、例えば特許文献1、2などにより、1個のバイスで複数のワークを把持するのに用いるワーク支持台ないし受台を提案している。このようなワーク支持台や受台は、把持されるワークの形状に合わせて準備しなければならない場合も多い。
【0005】
ワークをバイスに把持して加工する場合、ワークの把持及び開放などの段取り作業を効率よく行うことができるようにする必要がある。この必要は、1個のバイスに複数のワークを把持して加工を行うときに特に重要である。バイスに把持された多数のワークの把持及び開放は、例えば流体圧を用いて一括して行う構造とすることもできるが、ワークが変わったときの流体配管の段取り替えが面倒になるなどの問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平11-170134号公報
【文献】特開平11-300562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
1個のバイスに複数のワークを把持して加工を行う場合、複数のワークの把持及び開放を簡単な操作で速やかに行うことができること、複数のワークが均一に把持及び開放されること、バイスに装着する支持台ないし受台が安価に製作できることなどが重要である。
【0008】
この発明は、1個のバイスに把持された複数のワークを通常行われるバイスの開閉動作で一括してかつ複数のワークのそれぞれについて均等に行うことができ、把持面が円弧状のワークも確実に把持することができ、かつ装置を安価に提供することが可能な、バイスのワーク台及びバイス装置を得ることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明のワーク台3は、工作機械のワークテーブルに装着してワークを固定するバイス1の対向する2つのジョー2(2a、2b、2c)、一般的には固定ジョー2aと可動ジョー2bとの間のバイスの基台11上に装着して2個以上のワークを支持するワーク台である。
【0010】
この発明のワーク台3は、バイスの基台11に可動ジョー2bの進退方向(以下、「長手方向」と言う。)に移動自在に装着される台座31と、台座31の上面に長手方向に摺動可能に案内された座板33と、この座板の上面に立設された仕切板34と、台座31を隣接するジョー2(2a、2b、2c)から離隔させる方向に押動する押棒41とを備えている。加工しようとするワークWは、仕切板34の両側の座板33上に載置される。
【0011】
座板33及び押棒41は、台座31の端面側に押動されるように圧縮バネ42で付勢されている。圧縮バネ42による座板33の押動により、座板上の一方のワークWbの把持が開放され、押棒と座板の押動ストロークの差により、他方の隣接するジョー2側のワークWaの把持が開放される。従って、圧縮バネ42による座板33の押動量は押棒41の押動量より小さく、好ましくは1/2である。座板33と押棒41を押動する圧縮バネ42は、個別に設けることも1個とすることもできる。
【0012】
1個の圧縮バネ42で座板33と押棒41とを押動するときは、押棒41が押動したあと当該押棒に係合して座板33が押動するようにすれば良い。例えば、押棒41の基端に大径部などの凸部46を形成し、圧縮バネ42により押棒41が押動したあと、凸部46が座板33に係合して座板33を押動するようにすれば良い。
【0013】
台座31の長手方向の中央にワークWbに当接する仕切口金4を設けて、その両側に座板33、押棒41及び圧縮バネ42を配置することにより、4個のワークWを同時に把持及び開放するワーク台3を得ることができる。
【0014】
この発明のバイス装置は、バイスの固定ジョー2aと可動ジョー2bとの間の基台11上に、隣接するワーク台相互の間に長手方向に移動自在な中間ジョー2cを介して、この発明のワーク台3の複数個を装着したバイス装置である。
【発明の効果】
【0015】
この発明のバイス装置は、複数個のワークWをバイス1の可動ジョー2bの進退動作により、一括して把持及び開放することができる。そして、ワーク開放時のワークWとこれを把持するジョー2、4との間に形成される間隙を均一化することが可能であり、バイス装置へのワークWの着脱を自動化することも容易である。更に、この発明のワーク台3は、構造が簡単で製作が容易であるから、この発明のバイス装置を安価に構成できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施例を示す図面を参照して、この発明を具体的に説明する。
図3において、1はバイス、11はバイス1の基台、3は基台11に装着されるワーク台である。
【0018】
この発明のバイス装置の一例は、
図3に示されている。バイス1は、工作機械のワークテーブルに固定される細長い角柱状の基台11と、基台11の一端に固定された固定ジョー2aと、固定ジョー2aに対向して進退する可動ジョー2bとを備えている。固定ジョー2a及び可動ジョー2bには、それぞれ口金5a、5bが取り付けられている。
【0019】
図のバイス1の可動ジョー2bは、位置決め台12により定位置を変更できるようになっている。すなわち、可動ジョー2b及び位置決め台12は、基台11の両側面に設けたガイド溝13に案内されて移動自在であり、位置決め台12は、基台11の側面に設けた複数の基台側ピン穴14・・・の一つと位置決め台12に設けた位置決め台側ピン穴15とを一致させた穴にピンを挿入することにより、所望の位置で基台11に固定される。可動ジョー2bは、位置決め台12に軸方向移動不能かつ回動可能に設けられたネジ杆16と螺合しており、ネジ杆16を回動することにより、位置決め台12に対して相対的に進退してワークW(Wa、Wb)の把持及び開放を行う。この進退ストロークを基台側ピン穴14の配置ピッチより大きくすることで、固定ジョーと可動ジョーの間隔を連続的に変えることができる。
【0020】
図3のバイス装置は、上記構造のバイス1の固定ジョー2aと可動ジョー2bとの間に、2個のワーク台3と1個の中間ジョー2cを取り付けたバイス装置である。ワーク台3及び中間ジョー2cは、基台11の長手方向に移動自在に装着されている。
【0021】
図1、2は、
図3のバイス装置に装着されたワーク台3の詳細を示した図で、31はワーク台3の台座、32は台座31の一部である仕切ジョー、4はワークの寸法に応じて交換可能に仕切ジョー32に固定された仕切口金、33は台座31の上面に長手方向に摺動自在に装着された座板、34は座板33に固定された仕切板、41は座板33を長手方向に進退自在に貫通している押棒、42は押棒41の基部と仕切ジョー32との間に介装された圧縮バネである。
【0022】
図に示すワーク台3は、仕切口金4の長手両側に座板33、押棒41及び圧縮バネ42を対称に配置することにより、4個のワークW(Wa、Wb)を同時に把持及び開放することができるようにしたもので、その片側のみの構造で、2個のワークWを同時に把持及び開放可能なワーク台とすることができるものである。
【0023】
台座31は、バイスの基台11に摺動自在に嵌合するガイド部を備え、上縁両側に座板33を摺動自在に案内するガイドレール35を備えている。台座31の上面中央には、幅方向(長手直角方向)の切り欠き36が設けられて、仕切ジョー32をこの切り欠き36内にキー37で位置決めして固定し、この仕切ジョー32にワークWbの寸法に応じて交換できるようにして、仕切口金4が固定されている。台座31の一部となる仕切ジョー32を分割構造で設けたのは、長手方向のガイドレール35の機械加工を可能にするためである。
【0024】
座板33は、ワークWの受座となる部材で、台座31のガイドレール35に摺動自在に装着されている。座板33の上面に設けた仕切板34は、2個のワーク、特に把持面が円弧状のワークWを安定に把持可能にするために設けられたものである。
【0025】
台座31及び座板33は、座板33上に長手方向の寸法が最小のワーク(
図5の寸法Bが最小のワーク)を載置したときにもそのワークの端縁Eが台座31及び座板33から突出する長さにしなければならない。換言すれば、バイス1で座板33上のワークWを把持したとき、ジョー2が台座31や座板33に当接する前にワークWに当接する長さにしなければならない。
【0026】
座板33には、仕切口金4側を大径のバネ収納部43にした長手方向の貫通孔44が設けられており、この貫通孔に押棒41がその大径の凸部46をバネ収納部43に収納した状態で摺動自在に挿通されている。バネ収納部43には、押棒の基端と台座31の一部となっている仕切ジョー32との間に両者を離隔方向に付勢する圧縮バネ42が収納されている。
【0027】
圧縮バネ42は、伸張したとき、押棒41をその先端47が座板33上のワークWaの端縁Eを若干超える位置まで押動し、その押動途中で押棒の凸部46がバネ収納部43の底面となっている係合面45に当接して、座板33を押し動かす。座板33の押動量により、仕切口金4側のワークWbの開量が設定され、押棒の先端47がワークWaの端縁Eを超える程度によって固定ジョー2a及び中間ジョー2c側のワークWaの開放量が設定される。ここで言う開放量は、ワークWを座板33上から着脱するのに要する隙間寸法に対応する寸法である。
【0028】
上記構造のワーク台3は、
図3に示すように、バイス1の固定ジョー2aと可動ジョー2bとの間の基台11上に装着される。複数のワーク台3を装着するときは、相互の間に中間ジョー2cを装着する。中間ジョー2c及び中間ジョー2cより可動ジョー2b側のワーク台3は、長手方向すなわちワークWの把持及び開放方向に移動可能にして基台11に装着する必要がある。
【0029】
図3のバイス1は、工作機械のワークテーブルに固定される細長い角柱状の基台11と、基台11の一端に固定された固定ジョー2aと、固定ジョー2aに対向して進退する可動ジョー2bと位置決め台12とを備えている。基台11は、その両側面にガイド溝13が設けられている。位置決め台12、可動ジョー2b、ワーク台3及び中間ジョー2cは、基台11と摺動自在に嵌合するガイド部を備えている。
【0030】
位置決め台12は、基台11の側面に設けた複数の基台側ピン穴14・・・の一つと位置決め台12に設けた位置決め台側ピン穴15とを一致させた円穴にピンを挿入することにより、所望の位置で基台11に固定可能である。可動ジョー2bは、位置決め台12に軸方向移動不能かつ回動可能に設けられたネジ杆16と螺合しており、ネジ杆16を回動することにより、位置決め台12に対して相対的に進退してワークW(Wa、Wb)の把持及び開放を行う。この進退ストロークを基台側ピン穴14の配置ピッチより大きくすることで、固定ジョーと可動ジョーの間隔を連続的に変えることができる。
【0031】
図3のバイス装置において、2個のワーク台3の仕切板34とジョー2(2a、2b、2c)及び仕切口金4の間にワークWを挿入して、可動ジョー2bをワーク把持方向に進出させると、まず押棒41の先端47が可動ジョー2b、中間ジョー2c及び固定ジョー2aに当接して圧縮バネ42を圧縮し、これらのジョー2側のワークWaの端縁Eに当接する。そして更に可動ジョー2bが進出すると、可動ジョー2b、中間ジョー2c及び固定ジョー2a側のワークWaを介して仕切板34、従って座板33が押され、仕切口金4側のワークWbが仕切口金4に当接し、この状態で可動ジョー2bに所望の把持力を加えることにより、2個のワーク台上のすべてのワークが固定される。
【0032】
ワークを加工した後、可動ジョー2bを開くと、圧縮バネ42の付勢力で押棒41が進出して可動ジョー2b、中間ジョー2c及び固定ジョー2a側のワークWaを開放し、次いで押棒41の凸部46がバネ収納部43の底面となっている係合面45に当接して座板33が押し動かされ、仕切口金4側のワークWbが開放され、ワークWの把持面とジョー2、4との間にワークの着脱に必要な間隙が形成される。
【0033】
把持方向の寸法(
図5の寸法B)が異なるワークを把持するときは、仕切口金4の交換ないし仕切口金4に例えば
図4に示すようなスペーサ48を嵌着することにより、ワークの着脱に必要な上記間隙を一定にできる。すなわち、ワークを把持したときの仕切口金4の中心から仕切板34迄の距離が一定になるような寸法の仕切口金4とすれば良い。
【0034】
この発明のワーク台及びバイス装置は、多数のワークを一操作で同時に把持及び開放でき、構造も簡単で比較的安価に提供できる。そして、ワークの把持を開放したときのワークと仕切板やジョーなどとの間の間隙を比較的正確に設定できるので、ワークの着脱を自動化する場合にも確実な着脱動作が可能になる。また、
図5に示しだ端縁が円弧状のワークでも安定に把持して固定することができる。
【0035】
実施例に示したワーク台3は、仕切口金4の両側に2個ずつの4個のワークを把持できるようにしたものであるが、例えば仕切口金4の中心で分割した構造にすれば、2個のワークの把持に使用するワーク台とすることができる。また、図の実施例では1個の圧縮バネで押棒と座板を進退させるようにしているが、それぞれを別個の圧縮バネで進退させるようにすることも可能である。
【符号の説明】
【0036】
1 バイス
2(2a、2b、2c) ジョー
3 ワーク台
4 仕切口金
11 基台
31 台座
32 仕切ジョー
33 座板
34 仕切板
41 押棒
42 圧縮バネ
43 バネ収納部
44 貫通孔
46 凸部
W(Wa、Wb) ワーク