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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-10
(45)【発行日】2024-07-19
(54)【発明の名称】保護メガネ及び眼球保護方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 9/02 20060101AFI20240711BHJP
   A61F 9/008 20060101ALI20240711BHJP
   G02C 7/16 20060101ALI20240711BHJP
   G02C 7/10 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
A61F9/02 374
A61F9/008 120Z
A61F9/02 350
G02C7/16
G02C7/10
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022150578
(22)【出願日】2022-09-21
(65)【公開番号】P2024044820
(43)【公開日】2024-04-02
【審査請求日】2023-06-06
(73)【特許権者】
【識別番号】393025851
【氏名又は名称】株式会社トイパッククリエーション
(73)【特許権者】
【識別番号】304021831
【氏名又は名称】国立大学法人千葉大学
(73)【特許権者】
【識別番号】303005621
【氏名又は名称】株式会社アサヒ
(74)【代理人】
【識別番号】100121658
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 昌義
(72)【発明者】
【氏名】松代 行雄
(72)【発明者】
【氏名】三川 信之
(72)【発明者】
【氏名】秋田 新介
(72)【発明者】
【氏名】林 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】日上 忍
【審査官】黒田 正法
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-283564(JP,A)
【文献】特開平03-153210(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1815982(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 9/02
A61F 9/008
G02C 7/16
G02C 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー光を受光する受光部と、
前記受光部の出力に基づき遮光周期及び遮光時間を定める遮光制御部と、
前記遮光制御部が定めた前記遮光周期及び前記遮光時間で遮光する液晶表示装置を備えた遮光レンズ部と、を有する保護メガネであって、
前記遮光制御部は、前記レーザー光の発光開始のタイミングにおける使用者の操作で自発的な遮光状態を形成し、前記遮光状態の期間内に、前記受光部が受光した前記レーザー光の発光周期及び発光時間を算出し、前記発光周期及び前記発光時間に基づき前記遮光周期及び前記遮光時間を定める保護メガネ。
【請求項2】
前記遮光制御部は、受光する前記レーザー光の前記発光周期が変動した場合に、前記遮光周期も変動させる請求項1記載の保護メガネ。
【請求項3】
前記遮光レンズ部が遮光状態である場合に、可視波長領域におけるOD値は6以上である請求項1記載の保護メガネ。
【請求項4】
前記遮光レンズ部は、可視波長領域以外の領域におけるOD値が6以上である請求項1記載の保護メガネ。
【請求項5】
前記遮光周期は、20ms以上5s以下の範囲にある請求項1記載の保護メガネ。
【請求項6】
前記遮光時間が0.1ms以上50ms以下の範囲にある請求項1記載の保護メガネ。
【請求項7】
前記遮光レンズ部は、前記液晶表示装置を複数備え、それぞれが左又は右の眼球を保護する一対の眼球保護部となっており、更に、前記液晶表示装置を保持するフレーム部を備えており、
前記受光部は、前記フレーム部の前記一対の眼球保護部の間に配置されている請求項1記載の保護メガネ。
【請求項8】
液晶表示装置を備えた保護メガネを装着させるステップ、
レーザー光を受光し、前記レーザー光の遮光周期及び遮光時間を定めるステップ、
前記遮光周期及び前記遮光時間に従い液晶表示装置を遮光するステップ、を備える保護メガネを用いた手術時の眼球保護方法であって、
前記レーザー光を受光し、前記レーザー光の遮光周期及び遮光時間を定めるステップは、
前記レーザー光の発光開始のタイミングで前記液晶表示装置の遮光状態を形成し、前記遮光状態の期間内に、前記レーザー光の発光周期及び発光時間を算出し、前記発光周期及び前記発光時間に基づき前記遮光周期及び前記遮光時間を定める眼球保護方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護メガネ及び眼球保護方法に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆるレーザー治療とは、レーザー光を疾患の原因となっている施術対象部位に照射し、その施術対象部位の細胞を破壊することで原因を除去し治療する方法であり、非接触かつ低侵襲という利点があり、我が国においては1980年頃から主に眼科で導入が開始され、その後多くの医療分野で利用されている。
【0003】
レーザー治療は、上記のようにレーザー光を照射して対象となる細胞を破壊するものであり、この光が人の目に入ると、眼球の角膜や結膜の炎症、水晶体混濁等の障害を生じさせてしまうおそれがある。そのため、レーザー治療を行う場合、施術を受ける者(以下「施術対象者」という。)だけでなく、施術を行う者(以下「施術者」という。)もレーザーの光が目に入らないよう眼球を保護する保護メガネを装着することが義務付けられている。
【0004】
これに対し、公知の保護メガネの技術として、下記特許文献1には、光センサーを設け、有害閃光を感知した場合に、LCDレンズを作動させて遮光しようとする技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6524482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1では、光センサーが有害閃光を感知した場合に遮光されるものにすぎず、感知した時点でLCDレンズを駆動開始するのではすでに遅く、施術者の目にレーザー光が照射されてしまう等、レーザー光の照射との同期が十分ではないといった課題がある。
【0007】
そこで、本発明は、より遮光効果の高い保護メガネ及びこれを用いた眼球保護方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明の一観点に係る保護メガネは、レーザー光を受光する受光部と、受光部の出力に基づき遮光周期を定める遮光制御部と、遮光制御部が定めた遮光周期で遮光する液晶表示装置を備えた遮光レンズ部と、を有するものである。
【0009】
また、本観点において、限定されるわけではないが、遮光制御部は、受光するレーザー光の周期が変動した場合に、遮光周期も変動させることが好ましい。
【0010】
また、本観点において、限定されるわけではないが、遮光レンズ部が遮光状態である場合に、可視波長領域におけるOD値は6以上であることが好ましい。
【0011】
また、本観点において、限定されるわけではないが、遮光レンズ部は、可視波長領域以外の領域におけるOD値が6以上であることが好ましい。
【0012】
また、本観点において、限定されるわけではないが、遮光周期は、20ms以上5s以下の範囲にあることが好ましい。
【0013】
また、本観点において、限定されるわけではないが、遮光期間が0.1ms以上50ms以下の範囲にあることが好ましい。
【0014】
また、本観点において、限定されるわけではないが、遮光レンズ部は、液晶表示装置を複数備え、それぞれが左又は右の眼球を保護する一対の眼球保護部となっており、更に、液晶表示装置を保持するフレーム部を備えており、受光部は、フレーム部の一対の眼球保護部の間に配置されていることが好ましい。
【0015】
また、本発明の他の一観点に係る眼球保護方法は、液晶表示装置を備えた保護メガネを装着させるステップ、レーザー光を受光し、レーザー光の遮光周期を定めるステップ、遮光周期に従い液晶表示装置を遮光するステップ、を備えるものである。
【発明の効果】
【0016】
以上、本発明によって、より遮光効果の高い保護メガネ及びこれを用いた眼球保護方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態に係る保護メガネの概略を示す図である。
図2】実施形態に係る保護メガネの機能ブロックを示す図である。
図3】実施形態に係る保護メガネの遮光制御部における制御のイメージを示す図である。
図4】実施形態に係る保護メガネの遮光制御部における制御のイメージを示す図である。
図5】実施形態に係る保護メガネの遮光制御部における制御のイメージを示す図である。
図6】実施形態に係る保護メガネの遮光制御部における制御のイメージを示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は多くの異なる形態による実施が可能であり、以下に示す実施形態及び実施例における具体的な例示にのみ限定されるわけではない。
【0019】
図1は、本実施形態に係る保護メガネ(以下「本メガネ」という。)1の概略を示す図であり、図2は、本メガネ1の機能ブロックを示す図である。
【0020】
これらの図で示すように、本メガネ1は、レーザー光を受光する受光部2と、受光部2の出力に基づき遮光周期を定める遮光制御部3と、遮光制御部3が定めた遮光周期で遮光する液晶表示装置41を備えた遮光レンズ部4と、を有するものである。
【0021】
本メガネ1は、上記の構成によって、受光したレーザー光の発光期間、好ましくは発光周期及び発光期間(以下、合わせて「発光周期等」ともいう。)を判別し、遮光周期等を定め、レーザー光の照射と遮光の周期を十分に対応付け、より遮光効果の高い保護メガネ及びこれを用いた眼球保護方法を提供することが可能となる。
【0022】
まず、本メガネ1は、レーザー光を受光する受光部2を備える。受光部2としては、レーザー光を受光し、この受光に応じて信号として出力することができる限りにおいて限定されず、光エネルギーを電気信号に転換することのできる光電変換素子等公知の半導体素子であることが好ましいが、上記の通りこれに限定されない。
【0023】
本メガネ1は、上記の通りレーザー光を受光部2によって受光し、所定の駆動を行うものであって、この駆動の前提として、別途レーザー治療装置が存在する。レーザー治療装置は、本メガネ1とは独立した別の装置であって、所定の波長範囲のレーザー光を照射することが可能である。レーザー治療装置から照射されるレーザー光は、施術対象者の施術対象部位に照射され、その施術対象部位の細胞を破壊することで、その疾病の原因を除去し治療することができる。レーザー治療装置としては上記の機能を有する限りにおいて限定されず、市販されているレーザー治療装置を用いることが可能である。
【0024】
また、本メガネ1の受光部2が受光するレーザー光の波長範囲としては、特に限定されるわけではないが、いわゆるレーザー治療として用いるレーザー光であることが好ましい。この範囲としては、例えば紫外領域、可視領域、又は赤外領域の波長範囲であることが好ましく、より具体的には紫外領域である場合は200nm以上400nm以下の範囲、可視領域である場合は300nm以上800nm以下の範囲、赤外領域である場合は700nm以上1500nm以下の範囲であることが好ましい。
【0025】
また、本メガネ1の受光部2が受光可能なレーザー光の出力範囲としては、上記と同様、レーザー治療として用いるレーザー光の出力範囲に対応可能であることが好ましく、具体的には、1.0×10-4J/m以上0.1×10-4J/m以下の光を受光可能であることが好ましい。
【0026】
また、本メガネ1は、上記の通り、受光部2の出力に基づき遮光周期を定める遮光制御部3を有する。具体的に、遮光制御部3は、受光部2がレーザー光を受光した際出力する電気信号の入力を受け付け、このレーザー光の発光周期等を求め、これに対応させて遮光周期、好ましくは遮光周期及び遮光期間(以下「遮光周期等」という。)を定め、遮光レンズ部4の液晶表示装置41の駆動を制御するための制御信号を出力する。なお、遮光制御部3による駆動の制御内容については後に詳述する。
【0027】
遮光制御部3の具体的な構成としては上記の機能を有する限りにおいて限定されるわけではないが、電気配線がプリントされた絶縁基板上に抵抗、コンデンサ、トランジスタ、集積回路等を配置して上記所望の動作を実現できるプリント回路基板であることは好ましい一例である。これに上記受光部2及び液晶表示装置41が電気的に接続され、所望の駆動を行うことができる。
【0028】
また、本メガネ1は、上記の通り、遮光制御部3が定めた遮光周期等に基づき遮光する液晶表示装置41を備えた遮光レンズ部4を有する。遮光レンズ部4は、本メガネ1を使用する者が装着した場合に、眼前に液晶表示装置41を配置するために設けられており、通常のメガネのレンズ部分に該当する。ただし、一般的にメガネの「レンズ」とは、所望の度数を実現するために、入射される光を屈折させて発散又は収束する光学素子を意味するが、本メガネ1の「レンズ」は、レーザー光が使用者の目に入ってしまわないよう使用者の目を覆うものであるため、光路を変更せず単に入射した光を透過させる又は光を遮断させる液晶表示装置41のような光学素子も含むものであり、広義の意味のレンズである。
【0029】
また、本メガネ1の遮光レンズ部4では、上記の通り液晶表示装置41を備える。液晶表示装置41は、レーザー光の透過と遮断を行ういわゆる光シャッター、眼球保護部として機能する部材である。液晶表示装置41の構造としては、遮光制御部3が定める遮光期間及び遮光周期に合わせて出力される電気信号に応じて光を透過、遮光することができる限りにおいて限定されず公知の液晶表示装置を用いることができる。なお、液晶表示装置41は、一般に、少なくとも一方に電極が形成されている一対の基板と、この一対の基板の間に配置される液晶材料を含む液晶材料層と、一対の基板を挟む一対の偏光板と、を備えて構成されており、電極に電圧をかけることで電場を生じさせて液晶材料の配向を変化させることで光の透過、遮光を実現することができる。なお、液晶表示装置41には、電圧をかけた場合に光を透過させ、電圧をかけていない場合に光を遮断する方式(いわゆるノーマリーブラック)、電圧をかけていない場合に光を透過させ、電圧をかけている場合に光を遮断する方式(いわゆるノーマリーホワイト)のいずれであってもよい。ただし、電圧をかけた場合の液晶の応答速度の方が速く、また制御しやすく、さらに、電圧をかけていない場合に光透過状態であるため使いやすいため、電圧をかけた際に遮光状態となるいわゆるノーマリーホワイトであることが好ましい。
【0030】
また、本メガネ1の遮光レンズ部4における液晶表示装置41としては、使用者の左右の目を一体で覆うように一つの液晶表示装置とする構成としてもよいが、左右の目それぞれに独立して配置されるよう複数の液晶表示装置、より具体的には二つの液晶表示装置を設ける構成としておくことが好ましい。
【0031】
また、本メガネ1の液晶表示装置41において、その液晶表示装置41が光を透過させる状態(以下「光透過状態」という。)から光を遮断する状態(以下「遮光状態」という。)に至るまでの応答時間としては、光透過状態と遮光状態を十分に実現することができる限りにおいて限定されず、例えば3ms以下のものであることが好ましく、より好ましくは1ms以下の範囲であることが好ましい。この範囲とすることで、十分に短い期間で遮光状態及び光透過状態を実現することが可能となるとともに、遮光時間を人間の目の時間分解能以下に抑えてちらつきを感じにくくすることができる。なお本明細書で「応答時間」は、上記の通り、光透過状態から遮光状態に至るまでの基準となる時間であって、光透過状態の安定した光の透過量を1、遮光状態の安定した光の透過量を0とした場合に、0.8から0.2に至るまでの時間と定義する。
【0032】
また、本メガネ1の液晶表示装置41では、レーザー光を透過又は遮断させる必要があるため、このレーザー光の波長領域において透過及び遮断が可能であることが好ましい。具体的には、遮光状態において、レーザー光の波長においてOD値が5以上であることが好ましく、より好ましくは6以上である。より具体的には、遮光状態において、レーザー治療において用いるレーザー光の可視領域の代表的な波長である350nmでOD値が5以上であることが好ましく、より好ましくは6以上である。なお、理想的にはレーザー光の波長範囲が可視波長領域であっても、可視波長領域以外の領域(紫外領域、赤外領域)であっても、いずれの波長領域でもその遮光状態において、OD値が5以上であること、好ましくは6以上であることが、様々なレーザー治療装置への対応上の観点から好ましい。ここで「OD値」とは、光学濃度の値をいい、入射された光の減衰率を表す。例えばOD値が6の場合、入射した光の量を1とすると透過した光の量が1000000分の1(10の6乗分の1)になっていることを意味する。これにより、遮光状態において使用者の目の中に強いレーザー光が入ってしまうことを防止することが可能となる。
【0033】
また、本メガネ1の液晶表示装置41において、光透過状態においては、理想的にはOD値は可視領域において0であるが、液晶表示装置に偏光板を用いる関係上0にすることは現実的に不可能であるため、1以下であることが好ましい。またこの場合において、具体的には、OD値は、光透過状態において、レーザー治療において用いるレーザー光の代表的な波長である350nmでOD値が1以下であることが好ましい。なお、理想的には可視波長領域(波長300nm以上800nm以下)全体にわたって1以下である。
【0034】
また、本メガネ1の遮光レンズ部4では、上記液晶表示装置41のほか、使用者の眼前にこの液晶表示装置41を保持し固定するためのフレーム部42を備えていることが好ましい。また、本メガネ1では、フレーム部42に上記の受光部2及び遮光制御部3を固定することで通常のメガネと同様の簡便な構成とし、取り扱い及び装着がしやすくなるといった利点がある。
【0035】
また、本メガネ1の遮光レンズ部4のフレーム部42としては、一般的なメガネの構成を備えていることが好ましく、具体的には、レンズとして機能する液晶表示装置41を支持するリム部421、使用者の鼻に充てて本メガネ1がずれないようにするための鼻あて部422、リム部421に接続され、耳にかけるための一対のテンプル部423と、を有していることが好ましい。なお、テンプル部423とリム部421は、例えば蝶番424等を介して折り畳み可能となっていることが好ましい。
【0036】
またこの構成において、受光部2としては、限定されるわけではないが、リム部421の使用者の左右の目の間付近、具体的には、眼球保護部としての液晶表示装置の間(いわゆるブリッジ部分)に設けておくことが好ましい。目の近く、特に左右の目それぞれに等しく近い位置に受光部2を設けることで、より目の位置に近くして正確にレーザー光を検出し、レーザー光が目に入らないようにすることが可能となる。
【0037】
また、本メガネ1の遮光制御部3は、上記において、限定されるわけではないがテンプル部423に設けておくことで、使用者の視野を制限することなく効率的に配置することが可能である。
【0038】
ところで、本メガネ1の遮光制御部3及び液晶表示装置41は、駆動するために電力が必要となるが、この電力は導線によって、外部の電源に接続することで得てもよく、内部の電源として電池等に接続してもよい。なお、電源として電池を用いる場合、テンプル部423の一方に遮光制御部3を、他方に電池を設けることが好ましい。このようにしておくことで、一対のテンプル部423に接続する部材の重さのバランスをとることができるといった利点がある。
【0039】
以上、本メガネ1の物理的な構成について説明したところで、上記遮光制御部3の具体的な制御の流れについて説明する。図3は、遮光制御部3の制御のイメージを示す図である。本図において、横軸は時間、縦軸は液晶表示装置の液晶の遮光状態(又は光透過状態)及びレーザー光の照射状態(発光状態及び消光状態)をそれぞれ示している。なお、遮光制御部の制御方法にはいくつかのパターンが存在するため、それらのパターンごとに説明していく。
【0040】
(パターン1)
まず、本パターンの本メガネ1では、受光部2によってレーザー光を受光する。レーザー光はいわゆるパルス波となっており、一定周期で発光と消光を繰り返す。そして受光部2は、この発光と消光を検知し、この結果を電気信号として遮光制御部3に入力する。すなわち、本図において示されるレーザー光の照射状態は受光部2によって得られた出力信号を示している。また、遮光制御部3では、上記の出力信号に基づき、レーザー光の発光周期及び発光時間を推測する。ここで「発光周期」とは、レーザー光の一のパルス波が発せられたあと、次のパルス波が発せられるまでの時間間隔をいい、発光時間とは、その一のパルス波におけるレーザー光の発光の継続時間をいう。まず本メガネ1ではこの発光周期及び発光時間を把握することから始まる。
【0041】
また、このレーザー光の発光周期及び発光時間は、レーザー治療装置によっても異なり、また同じレーザー治療装置であっても、その出力等の調整によって異なってくるものである。そのため、本メガネ1では、この発光周期と発光時間を把握することでどのような場合でも対応ができるようになっている。
【0042】
また、レーザー光の発光周期及び発光時間の算出は、いずれの算出の仕方でも可能である。例えば複数回のレーザー光の発光及び消光を確認し、その発光時間及び発光周期の平均を算出することとしてもよく、また、直前の二つのレーザー光の発光(パルス波)の間の時間を単純に発光周期とし、直前のレーザー光の発光継続時間を発光時間としておくこととしてもよい。
【0043】
一方で、遮光制御部3は、受光部2の出力に基づき、レーザー光の遮光時間及び遮光周期を定める。具体的には、上記のようにレーザー光の発光周期及び発光時間を推定し、液晶表示装置を駆動するよう電気信号を出力し、レーザー光が照射される発光期間において、液晶表示装置が遮光状態となっているようにし、レーザー光が消光している期間は光透過状態となっているようにする。遮光周期等の用語については改めて後述する。
【0044】
またこの場合において、液晶表示装置41では、液晶の応答に時間がかかるため、この応答時間より十分長い時間を定めて液晶の制御開始時刻として設定し、液晶の応答が完了したときにレーザー光が照射されるようタイミングを調整する。この制御開始時刻は、あらかじめ液晶表示装置の応答時間を記録しておき、これに十分に安定して対応させるためのマージン(時間)を加え、レーザー光の発光期間の開始時刻から逆算して定める。なお、液晶表示装置の制御開始時刻からレーザー光の発光期間の開始時刻までの時間を「液晶立ち上がり期間」とする。
【0045】
また、液晶が十分に応答してレーザー光を遮光し、レーザー光が消光した後、遮光制御部3は、液晶表示装置の駆動を制御し、液晶表示装置が光透過状態となるよう制御する。具体的には、発光期間の開始時刻から遮光期間(好ましくはマージンを加えた分)だけ液晶表示装置を遮光状態とし、その後、液晶表示装置が光透過状態となるよう制御する。
【0046】
そして、遮光制御部3は、上記処理をレーザー光の遮光周期に従い繰り返すことで使用者の目を保護することができるようになる。なお、遮光制御部3が制御する液晶表示装置の遮光周期は、限定されるわけではないが10ms以上5s以下の範囲にあることが好ましく、また、遮光期間としても適宜調整可能であるが、0.1ms以上50ms以下の範囲にあることが好ましい。ここで「遮光期間」とは、液晶表示装置が遮光状態にある期間をいい、「遮光周期」とは、この遮光状態が繰り返される期間をいう。
【0047】
また、上記の記載からも明らかなように、本メガネ1において、遮光制御部3は、受光するレーザー光の発光周期や発光時間が変動した場合に、遮光周期も変動させることが好ましい。レーザー光は、その施術の種類や装置の種類によってその発光周期が異なる。そのため、遮光周期が変動した場合は、これに追従するように変更させることが好ましい。
【0048】
(パターン2)
本パターンでは、パターン1とほぼ同様ではあるが、遮光制御部3が発光時間の推定及び遮光時間の設定を省略している点が異なる。図4は、本パターンにおける遮光制御部3の制御のイメージを示す図である。
【0049】
本パターンにおいて、受光部2の働きは同じである。一方で、上記の通り遮光制御部3では、レーザー光発光時間についての推定及び遮光時間の設定は行わないことができる。具体的には、受光部2は常時レーザー光を受光しているため、レーザー光が発光状態にあるか消光状態にあるかをリアルタイムに把握することができる。すなわち、遮光制御部3が、レーザー光の発光周期及びその発光開始時刻を推定し、上記パターン1と同様の制御開始時刻の設定を行う一方、一度遮光状態とした場合はその遮光状態を維持しつつ受光部2の出力を確認し、受光部2の出力が消光状態となった場合、液晶表示装置を光透過状態となるよう制御する。本パターンではこれにより、仮に、発光開始時刻のずれや発光周期及び発光時間の誤差があったとしても確実にレーザー光を遮断することができるようになるといった利点がある。
【0050】
ところで、本メガネ1では、レーザー光が十分な回数パルス波として照射されている場合は上記図3、4のように安定的に遮光状態を形成することが可能であるが、レーザー治療を開始する時点、最初の数回のパルス波を発生させる場合、未だ十分なレーザー光の発光時間及び発光期間を検知することができない。そのため、本メガネ1では、使用者がレーザー光の発光を開始しようとするタイミング(治療を開始しようとするタイミング)で、光遮断ボタン等を押すことで、使用者側の意思で一定期間遮光状態を形成する(以下この遮光状態を「自発的な遮光状態」ともいう。)こととするのが好ましい。すなわち、本メガネ1では、一定期間遮光状態を形成する光遮断ボタンを備えることが好ましい。このようにすることで、一定期間使用者側の意思で遮光状態を形成し、この期間内にレーザー光を照射することで受光部2において数回ほどレーザー光を受光し、その発光周期及び発光時間を計測し、その後は上記の通り、遮光状態、光透過状態を実現することができるようになる。なお上記の自発的な遮光状態の長さとしては、使用者が遮光状態であることを認識し、レーザー光の照射を開始することができる程度に十分に長い時間であることが好ましく、0.5秒以上60秒以下であることが好ましい。なおこの自発的な遮光状態は、複数回レーザー光を受光し、十分に発光周期が確認できた場合、当初設定の遮光期間より短く終了させ、あとは上記説明したとおりの遮光状態、光透過状態を繰り返させてもよい。念のためこの場合のイメージを図5に示しておく。縦軸及び横軸は上記図3と同様である。
【0051】
また上記自発的な遮光状態は、光透過状態を挟んで繰り返し行うことが好ましい。このようにしておくことで、使用者が常時遮光状態となってしまうという不便な状態を回避しつつタイミングを計りやすくなるといった利点がある。つまり、使用者はこの明滅を感じながら、レーザー光を照射するタイミングを計ることができる。なおこの光透過状態の長さとしては、上記自発的な遮光期間と同じ程度である。またこの場合において、自発的な遮光状態と光透過状態において、レーザー光の発光周期等を十分に確認できた場合、この自発的な遮光状態を終了させて上記説明した通常動作としての遮光状態及び光透過状態を繰り返すことになる。
【0052】
また、この場合において、自発的な遮光状態の遮光時間、光透過状態の時間は、複数パターン備えていることが好ましい。上記の自発的な遮光時間は、主要なレーザー治療装置が発するレーザー光の発光時間及び発光周期を含むよう広く設定することで使用者の細かな設定を不要とすることができるが、例外的に上記の発光時間及び発光周期から大きくずれるようなものも存在する。そのため、上記とは別の周期パターンを備えることで、このような例外的な場合にも対応することができるといった利点がある。
【0053】
なお、自発的な遮断状態に最初のレーザー光の照射が間に合ったが、二つめのレーザー光の照射が当初の自発的な遮断期間に間に合わないような状態も存在することがある。つまり、自発的な遮断状態において、レーザー光のパルス波一つのみを検出している状態の場合、この自発的な遮断状態を二つめ以後のパルス波を検出するまで継続させることとし、その後は通常の遮光状態、光透過状態を繰り返すようにする。これにより、二つめのパルス波が使用者の目に入ってしまうことを防止することができる。この場合のイメージを図6に示しておく。
【0054】
一方で、どうしてもタイミングが合わず、光透過状態にレーザー光を照射してしまう場合がある。このような場合は、強制的に液晶表示装置41を遮光状態にし、レーザー光の複数のパルス波を観測し、その後上記した通常の遮光状態、光透過状態を繰り返し行うことが好ましい。
【0055】
以上、本メガネ1によって、より遮光効果の高い保護メガネ及びこれを用いた眼球保護方法を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明は、保護メガネ及びこれを用いた眼球保護方法として産業上の利用可能性がある。


図1
図2
図3
図4
図5
図6