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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-10
(45)【発行日】2024-07-19
(54)【発明の名称】フレアガス燃焼処理システム
(51)【国際特許分類】
   F23G 7/08 20060101AFI20240711BHJP
   F23J 7/00 20060101ALI20240711BHJP
   F23J 15/00 20060101ALN20240711BHJP
【FI】
F23G7/08 Z
F23C99/00 317
F23J7/00
F23J15/00 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023036953
(22)【出願日】2023-03-09
【審査請求日】2023-04-12
(73)【特許権者】
【識別番号】521284750
【氏名又は名称】株式会社アプリコット
(74)【代理人】
【識別番号】100075410
【弁理士】
【氏名又は名称】藤沢 則昭
(74)【代理人】
【識別番号】100135541
【弁理士】
【氏名又は名称】藤沢 昭太郎
(72)【発明者】
【氏名】森田 侑
(72)【発明者】
【氏名】福島 寛
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-234723(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0013900(KR,A)
【文献】特開平07-265661(JP,A)
【文献】特開平08-332341(JP,A)
【文献】特開2023-014441(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23G 7/06 - 7/08
F23J 7/00
F23J 15/00
F23C 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレアガスを燃焼処理するフレアガス燃焼処理システムであって、
前記フレアガス燃焼処理システムは、
フレアガスを燃焼する炉と、
前記システムを制御する制御手段と、
前記炉内の温度を検出する温度検出手段と、
アンモニアガスの濃度を検出する第1検出手段と、
窒素酸化物の濃度を検出する第2検出手段を有し、
前記制御手段は、前記温度検出手段を通じて、前記炉内の温度が、無触媒脱硝が可能な温度に保持されていると認識すると、前記第1検出手段を通じて、前記炉から排出されるガス中のアンモニアガスの濃度を検出させると共に、第2検出手段を通じて、前記炉から排出されるガス中の窒素酸化物の濃度を検出させ、これらの濃度に基づき、最適な脱硝ガスの量を演算し、当該最適な量の脱硝ガスを、前記炉内に供給することを特徴とする、フレアガス燃焼処理システム。
【請求項2】
フレアガスを燃焼処理するフレアガス燃焼処理システムであって、
前記フレアガス燃焼処理システムは、
フレアガスを燃焼する炉と、
前記システムを制御する制御手段と、
前記炉内の温度を検出する温度検出手段と、
アンモニアガスの濃度を検出する第1検出手段と、
前記制御手段は、前記温度検出手段を通じて、前記炉内の温度が、無触媒脱硝が可能な温度に保持されていると認識すると、前記第1検出手段を通じて、前記炉から排出されるガス中のアンモニアの濃度を検出させ、検出された濃度と前記炉内の温度変化に基づき、最適な脱硝ガスの量を演算し、当該最適な量の脱硝ガスを、前記炉内に供給することを特徴とする、フレアガス燃焼処理システム。
【請求項3】
前記炉には、フレアガスが供給されるフレアガスラインの一端、パイロット燃料が供給される燃料ラインの一端、脱硝ガスが供給される脱硝ガスラインの一端が接続され、
前記脱硝ガスラインの他端は、前記フレアガスライン及び前記燃料ラインに接続され、
前記フレアガスラインには、アンモニアガスの濃度を検出する第3検出手段が設けられ、
前記制御手段は、前記第3検出手段を通じて、フレアガス中のアンモニアガスの濃度が、脱硝ガスとして使用可能な所定の値以上であると認識した場合には、前記フレアガスライン及び前記脱硝ガスラインを通じて、脱硝ガスとしてフレアガスを供給させ、
フレアガス中のアンモニアガスの濃度が、脱硝ガスとして使用可能な所定の値より低いと認識した場合には、前記燃料ライン及び前記脱硝ガスラインを通じて、脱硝ガスとしてパイロット燃料を供給させることを特徴とする、請求項1又は2に記載のフレアガス燃焼処理システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製油所・製鉄プラント・化学プラント・ガス貯蔵施設から発生する、フレアガス(「炭化水素ガス」、「ハイドロカーボン」とも言う)を燃焼処理するフレアガス燃焼処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
製油所・製鉄プラント・化学プラント・ガス貯蔵施設では、メタン等のフレアガスが発生する。フレアガスは、可燃性で毒性があり、臭気もあるため、そのまま大気中に排出するのではなく、燃焼させ、ある程度無害化された状態で排出する必要がある。
【0003】
ところで、フレアガス中に含まれる窒素等の不活性ガスが多いフレアガスの燃焼処理方法の1つとして、VDU(Vapor Destruction Unit)がある。
【0004】
従来型VDUでは、助燃バーナが設けられている。フレアガスの可燃分濃度に関係なく燃焼処理を可能とするため、助燃バーナは、可燃分の発火点以上の雰囲気を保持するべく、投入する助燃料の量及び外気(空気)の吸い込み量を調節しながら、VDU内の温度を所定の範囲に保持(維持)する。また、VDUでは、フレアガスバーナのフレアガス点火用にパイロットバーナが設けられている。即ち、VDUでは、十分な燃焼空気が存在する高温雰囲気下で、フレアガス中に含有する可燃分を酸化燃焼させ、フレアガスを二酸化炭素と水に変換させて、大気に放出する。VDUには、発熱量の低い自燃不能なフレアガスを、燃焼できるメリットがある。
【0005】
ところで、フレアガス中には、アンモニア(NH)ガス等の窒素分を含むガスを含有している場合がある。窒素分を含むガスを燃焼させると、燃焼生成物の中に、窒素酸化物(NOX)が発生し、環境汚染につながるおそれがある。そのため、脱硝ガスを用いて、窒素酸化物(NOX)を無害な窒素(N)と水(HO)に還元する脱硝処理を行う必要がある。なお、脱硝処理には、「選択的触媒脱硝処理」(SCR)と、触媒を使用することなく行う「無触媒脱硝処理」(SNCR)がある。そのうち、「無触媒脱硝処理」は、設備が簡易で、排気ガスを触媒に通すための減温が不要である等のメリットがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2020-034172号公報
【0007】
例えば、特許文献1では、脱硝効率が高く、リークアンモニア濃度を低く抑えることができる無触媒脱硝処理が開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、フレアガスに含まれているアンモニアガスの量は一定ではなく、高濃度のアンモニアガスが含まれている場合がある。そのため、従来のVDUでは、変動するアンモニアガスの含有量に追従して、脱硝ガスを供給できず、無触媒脱硝処理を効果的に行うことができなかった。また、アンモニアガスが高濃度の場合には、無触媒脱硝後の窒素酸化物の濃度を十分低減できなかった。
【0009】
そこで、本発明は、上記問題点に対処するため、アンモニアガスの含有量に追従して、脱硝ガスを供給し、無触媒脱硝処理を効果的に行うことが可能なフレアガス燃焼処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、
フレアガスを燃焼処理するフレアガス燃焼処理システムであって、
前記フレアガス燃焼処理システムは、
フレアガスを燃焼する炉と、
前記システムを制御する制御手段と、
前記炉内の温度を検出する温度検出手段と、
アンモニアガスの濃度を検出する第1検出手段と、
窒素酸化物の濃度を検出する第2検出手段を有し、
前記制御手段は、前記温度検出手段を通じて、前記炉内の温度が、無触媒脱硝が可能な温度に保持されていると認識すると、前記第1検出手段を通じて、前記炉から排出されるガス中のアンモニアガスの濃度を検出させると共に、第2検出手段を通じて、前記炉から排出されるガス中の窒素酸化物の濃度を検出させ、これらの濃度に基づき、最適な脱硝ガスの量を演算し、当該最適な量の脱硝ガスを、前記炉内に供給する、フレアガス燃焼処理システムとした。
【0011】
また、請求項2に係る発明は、
フレアガスを燃焼処理するフレアガス燃焼処理システムであって、
前記フレアガス燃焼処理システムは、
フレアガスを燃焼する炉と、
前記システムを制御する制御手段と、
前記炉内の温度を検出する温度検出手段と、
アンモニアガスの濃度を検出する第1検出手段と、
前記制御手段は、前記温度検出手段を通じて、前記炉内の温度が、無触媒脱硝が可能な温度に保持されていると認識すると、前記第1検出手段を通じて、前記炉から排出されるガス中のアンモニアの濃度を検出させ、検出された濃度と前記炉内の温度変化に基づき、最適な脱硝ガスの量を演算し、当該最適な量の脱硝ガスを、前記炉内に供給する、フレアガス燃焼処理システムとした。
【0012】
また、請求項3に係る発明は、
前記炉には、フレアガスが供給されるフレアガスラインの一端、パイロット燃料が供給される燃料ラインの一端、脱硝ガスが供給される脱硝ガスラインの一端が接続され、
前記脱硝ガスラインの他端は、前記フレアガスライン及び前記燃料ラインに接続され、
前記フレアガスラインには、アンモニアガスの濃度を検出する第3検出手段が設けられ、
前記制御手段は、前記第3検出手段を通じて、フレアガス中のアンモニアガスの濃度が、脱硝ガスとして使用可能な所定の値以上であると認識した場合には、前記フレアガスライン及び前記脱硝ガスラインを通じて、脱硝ガスとしてフレアガスを供給させ、
フレアガス中のアンモニアガスの濃度が、脱硝ガスとして使用可能な所定の値より低いと認識した場合には、前記燃料ライン及び前記脱硝ガスラインを通じて、脱硝ガスとしてパイロット燃料を供給させる、請求項1又は2に記載のフレアガス燃焼処理システムとした。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、フレアガス中のアンモニアガスの含有量に合わせて、量を変動させながら脱硝ガスを供給するため、無触媒脱硝処理を効果的に行うことができる。また、そもそもフレアガスに対し、無触媒脱硝処理を行うことで、フレアガス中に含まれている窒素酸化物(NOX)を、無害な窒素(N)と水(HO)に還元することができ、環境汚染を減少させることができる。
【0014】
また特に、請求項3に係る発明のように、フレアガスを燃焼するために用いられているフレアガス、あるいはパイロット燃料を、脱硝ガスとして利用する構成とすれば、炉に、別途脱硝ガスを供給する必要がなく、便宜である。更に、脱硝ガスとして利用可能であるか否かを判定しながら、フレアガスか、パイロット燃料を選択的に利用する構成であるため、無触媒脱硝処理の質を低下させることがない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態例1のフレアガス燃焼処理システムの概略構成図である。
図2】本発明の実施の形態例1のフレアガス燃焼処理システムの処理の流れを示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施の形態例1)
以下、添付図面を参照して本発明に係る実施の形態例1を詳細に説明する。ただし、本実施の形態例に記載されている構成要素はあくまでも例示であり、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0017】
<フレアガス燃焼処理システムの構成>
図1は、本実施の形態例1に係るフレアガス燃焼処理システムの概略構成図である。フレアガス燃焼処理システムは、VDU1を有している。VDU1は、筒体10を有しており、円柱形状である。なお、本実施の形態例1では、VDU1について円柱形状の構成を示したが、これは例示であり、例えば、角柱形状でも良く、形状が限定されるわけではない。VDU1は、供給されたフレアガスを燃焼させる炉(≒燃焼室)の役割を果たす。そのため、以下では、「VDU1」は、燃焼処理方法としてVDUを実行する炉を指す。
【0018】
<VDU1の構成>
VDU1には、下方部に空気取入れ孔(図示省略)が複数設けられており、各孔を、空気取入れダンパー11が覆っている。なお、本実施の形態例1では、空気取入れ孔を複数設け、それらの孔を覆うため複数の空気取入れダンパー11を設ける構成を示したが、この構成に限定されるものではない。単数の外気取入れ孔を設け、その孔を空気取入れダンパー11で覆う構成としても良い。
【0019】
VDU1には、燃料を供給するために、燃料ラインの一端が接続されている。詳しくは、VDU1のパイロットバーナ12にパイロット燃料を供給する燃料ライン31と、助燃バーナ13に助燃料を供給する助燃料ライン32の2つの燃料ラインがVDU1に接続されている。燃料ライン31の途中には、VDU1に向かうパイロット燃料の流れを開放/遮断する自動弁41が設けられている。また、助燃料ライン32の途中には、VDU1に向かう助燃料の流れを開放/遮断、流量を調整(制御)できる助燃料流量調節弁42が設けられている。
【0020】
また、VDU1には、フレアガスを供給するために、フレアガスライン51の一端が接続されている。詳しくは、フレアガスライン51の一端は、VDU1内部の、フレアガスを燃焼させるフレアガスバーナ14付近に配置されている。そして、フレアガスライン51の途中には、VDU1に向かうフレアガスの流れを開放/遮断する自動弁43が設けられている。自動弁41と43はどちらか一方のみを開放するように自動選択される。
【0021】
また、VDU1の上部には、脱硝ガスの供給を受けるために、脱硝ガスライン61の一端が接続されている。詳しくは、脱硝ガスラインの一端には、吹出しノズル611が設けられており、この吹出しノズル611から、脱硝ガスがVDU1から排出されるガスに対し、噴霧される。脱硝ガスライン61の他端は、燃料ライン31及びフレアガスライン51に接続されている。脱硝ガスライン61の途中には、VDU1に向かう脱硝ガスの流量を調整(制御)できる調節弁44が設けられている。調節弁44は、燃料ライン31を通じて流入してきたパイロット燃料の流量の調節、又はフレアガスライン51を通じて流入してきたフレアガスの流量の調節を行う。
【0022】
ところで、脱硝ガスとしては、例えば、フレアガス中のアンモニア(NH)ガス、及びパイロット燃料として用いる天然ガス(CH、C)、LPG(液化石油ガス)、あるいは水素(H)ガスを使用することができる。そして例えば、無触媒脱硝反応に係る総括反応式は、以下の通りである。窒素酸化物(NO)が、無触媒脱硝処理によって、主として、無害な水(HO)と窒素(N)に還元される。
【0023】
【数1】
【0024】
上述したように、脱硝ガスライン61の他端は、燃料ライン31及びフレアガスライン51に接続されている。また、脱硝ガスライン61の途中には、調節弁44が設けられている。従って、脱硝ガスライン61は、脱硝ガスとして利用するために、燃料ライン31を通じてパイロット燃料の供給を受けることができる。また、脱硝ガスライン61は、脱硝ガスとして利用するために、フレアガスライン51を通じてフレアガスの供給を受けることができる。
【0025】
VDU1の内部には、例えば、熱電対(TC)等の温度検出装置71(温度検出手段の一例)が設けられられている。温度検出装置71は、VDU1内部の温度を検出する。
【0026】
円柱形状のVDU1の上面には、ガスを排出する排出孔15が設けられている。この排出孔15付近に、アンモニア(NH)ガスの濃度を検出するガス検出装置81(第1検出手段の一例)と、窒素酸化物(NO)の濃度を検出するガス検出装置82(第2検出手段の一例)が設けられている。ガス検出装置81は、排出孔15から排出されるガス中のアンモニアガスの濃度を検出する。また、ガス検出装置82は、排出孔15から排出されるガス中の窒素酸化物の濃度を検出する。
【0027】
本実施の形態例1に係るフレアガス燃焼処理システムは、サーバ等の情報処理装置を用いて、全体制御される。以下、詳しく説明する。
【0028】
VDU1には、情報処理装置として、助燃料調節演算装置73及び空気取入れダンパー開度調節装置72が設けられている。助燃料調節演算装置73、空気取入れダンパー開度調節装置72及び温度検出装置71は、相互に通信可能に接続されている。また、助燃料調節演算装置73は、助燃料流量調節弁42と相互に通信可能に接続されている。更に、空気取入れダンパー開度調節装置72は、各空気取入れダンパー11と相互に通信可能に接続されている。
【0029】
助燃料調節演算装置73は、温度検出装置71を通じて、VDU1内の温度を検出させ、当該温度に基づき、助燃料流量調節弁42を操作して、助燃バーナ13に供給する助燃料の量を調節する。また、空気取入れダンパー開度調節装置72は、温度検出装置71を通じて、VDU1内の温度を検出させ、当該温度に基づき、各空気取入れダンパー11の開度を調節する。VDU1内の温度は、アンモニアガス等の窒素分を含むガスの燃焼量の増減に対応して変化する。助燃料調節演算装置73及び空気取入れダンパー開度調節装置72は、この変化するVDU1内の温度を、助燃バーナ13に供給する助燃料の量及び空気取入れダンパー11の開度を調節することで、無触媒脱硝が可能な温度(例えば、800~1000℃)に保持(維持)させるように、相互通信を行いながら、協調して動作する。
【0030】
また、VDU1には、情報処理装置として、脱硝ガス調節演算装置74が設けられている。脱硝ガス調節演算装置74、ガス検出装置81、ガス検出装置82、パイロット燃料の流れを開放/遮断する自動弁41、フレアガスの流れを開放/遮断する自動弁43及び脱硝ガスの流量を調節できる調節弁44は、相互に通信可能に接続されている。
【0031】
脱硝ガス調節演算装置74は、ガス検出装置81を通じて、VDU1から排出されるガス中のアンモニア(NH)ガスの濃度を検出し、またガス検出装置82を通じて、VDU1から排出されるガス中の窒素酸化物の濃度を検出させ、これらの濃度に基づき、最適な脱硝ガスの量を演算する。そして、脱硝ガス調節演算装置74は、パイロット燃料の流れを開放/遮断する自動弁41、フレアガスの流れを開放/遮断する自動弁43及び脱硝ガスの流量を調節できる調節弁44を操作して、脱硝ガスの量を調節し、最適な量の脱硝ガスを、脱硝ガスライン61を通じてVDU1内に供給する。作業者等のユーザは、脱硝ガス調節演算装置74に対し、脱硝ガスとして燃料ライン31、あるいはフレアガスライン51のどちらから脱硝ガスライン61が供給を受けるのか等を任意に設定することができる。
【0032】
従って、例えば、フレアガスライン51の途中のいずれかの箇所に、アンモニア(NH)ガスの濃度を検出するガス検出装置83(第3検出手段の一例)を設ける。脱硝ガス調節演算装置74は、ガス検出装置83と相互に通信を行い、検出されたフレアガス中のアンモニアガスの濃度が、脱硝ガスとして使用可能な所定の値以上の場合には、パイロット燃料の流れを開放/遮断する自動弁41を遮断し、フレアガスの流れを開放/遮断する自動弁43を開放し、フレアガスライン51からフレアガスの供給を受ける。一方、検出されたフレアガス中のアンモニアガスの濃度が、脱硝ガスとして使用可能な所定の値より低い場合には、パイロット燃料の流れを開放/遮断する自動弁41を開放し、フレアガスの流れを開放/遮断する自動弁43を遮断し、燃料ライン31からパイロット燃料の供給を受ける構成としても良い。
【0033】
なお、本実施の形態例1では、脱硝ガス調節演算装置74が、VDU1から排出されるガス中のアンモニアガスの濃度と、窒素酸化物の濃度に基づき、VDU1内に供給する、最適な脱硝ガスの量を演算する構成を示したが、この構成に限定されるものではない。例えば、総合情報処理装置(後述)が、助燃料調節演算装置73及び脱硝ガス調節演算装置74を通じて、アンモニアガスの燃焼量の変化とみなすことができるVDU1内の温度変化と、VDU1から排出されるガス中のアンモニアガスの濃度に基づき、最適な脱硝ガスの量を演算する構成としても良い。
【0034】
助燃料調節演算装置73、空気取入れダンパー開度調節装置72及び脱硝ガス調節演算装置74は夫々、総合情報処理装置(図示省略、制御手段の一例)と、相互に通信可能に接続されている。総合情報処理装置は、助燃料調節演算装置73、空気取入れダンパー開度調節装置72、脱硝ガス調節演算装置74より上位で、本実施の形態例1に係るフレアガス燃焼処理システムを統括して制御する役割を果たすものである。そのため、総合情報処理装置は、助燃料調節演算装置73、空気取入れダンパー開度調節装置72、脱硝ガス調節演算装置74から情報や命令を受信し、また、助燃料調節演算装置73、空気取入れダンパー開度調節装置72、脱硝ガス調節演算装置74に対し、情報や命令を出力する。
【0035】
<フレアガス燃焼処理システムの処理の流れ>
次に、図2を用いて、本実施の形態例1に係るフレアガス燃焼処理システムの処理の流れについて説明する。図2に示すように、総合情報処理装置は、助燃料調節演算装置73を通じて、助燃料流量調節弁42を操作し、助燃料ライン32を通じて、VDU1に設けられている助燃バーナ13に助燃料を供給させて、点火・燃焼させる。また、総合情報処理装置は、助燃料調節演算装置73を通じて、温度検出装置71を通じて、VDU1内の温度を継続的に検出させて、VDU1を常温から設定温度1まで昇温させるように、助燃料を供給させる(ステップS201)。なお、ここで、「設定温度1」とは、フレアガス中の可燃分が着火する温度(例えば、約400~600℃)を指している。総合情報処理装置は、温度検出装置71から受信した情報によって、VDU1が設定温度1に達したことを認識すると、フレアガスライン51を通じて、VDU1内にフレアガスを供給させ、フレアガスバーナ14に流入したフレアガスをパイロットバーナ12で点火・燃焼させる。
【0036】
総合情報処理装置は、助燃料調節演算装置73を通じて、フレアガスの供給・燃焼を継続させながら、助燃料流量調節弁42を操作し、フレアガスバーナ14に供給する助燃料の量を調節させると共に、温度検出装置71を通じて、VDU1内の温度を継続的に検出させて、VDU1の温度を設定温度1以上に維持するように昇温させる(ステップS202)。例えば、800~1000℃を維持するように昇温させる。これを、「設定温度2」とする。この「設定温度2」は、フレアガスが分解燃焼する温度(=未燃分の発生を極小にでき、燃焼筒である筒体10の劣化が生じない最適な燃焼条件となる温度)であり、かつ、「無触媒脱硝が可能な温度」である。
【0037】
総合情報処理装置は、供給されるフレアガス中の可燃分の濃度(=フレアガス中の可燃ガスの量)が増加し、温度検出装置71を通じて、VDU1の温度が設定温度2から上昇したことを認識すると(ステップS203で「NO」)、助燃料調節演算装置73を通じて、助燃料流量調節弁42を操作し、助燃バーナ13に供給する助燃料の量を削減させ、VDU1内の温度を、設定温度2まで低下させる(ステップS204)。
【0038】
総合情報処理装置は、助燃料を、助燃バーナ13が燃焼可能な最低限の量まで削減させた状態(=最少流量)で、VDU1の温度が設定温度2から上昇したことを認識すると(ステップS203で「NO」)、空気取入れダンパー開度調節装置72を通じて、各空気取入れダンパー11の開度を調節させ、外部からVDU1内に空気を取り入れ、VDU1内の温度を、設定温度2まで低下させる(ステップS204)。なお、バーナの特性として、最大流量(最大燃焼量)に対して、何%が最少流量であるというように、通常は、各バーナによって決まっている。
【0039】
一方、総合情報処理装置は、所定の期間「設定温度2」が保持されていることを認識すると(ステップS203で「YES」)、脱硝ガス調節演算装置74及びガス検出装置81を通じて、VDU1から排出されるガス中のアンモニアガスの濃度を検出し、またガス検出装置82を通じて、VDU1から排出されるガス中の窒素酸化物の濃度を検出させ、これらの濃度に基づき、最適な脱硝ガスの量を演算する(ステップS205)。そして、総合情報処理装置は、脱硝ガス調節演算装置74を通じて、脱硝ガスの流量を調節する調節弁44を操作して、脱硝ガスの量を調節し、最適な量の脱硝ガスを、燃料ライン31、又はフレアガスライン51から脱硝ガスライン61を通じてVDU1内に供給する(ステップS206)。
【0040】
総合情報処理装置は、脱硝ガス調節演算装置74を通じて、所定の期間が経過する毎に、最適な脱硝ガスの量を演算し、最適な量の脱硝ガスを、脱硝ガスライン61を通じてVDU1内に供給するという、ステップS205からステップS206を繰り返す。
【0041】
このように、本実施の形態例1に係るフレアガス燃焼処理システムは、フレアガス中のアンモニアガスの含有量に合わせて、量を変動させながら脱硝ガスを供給するため、無触媒脱硝処理を効果的に行うことができる。また、そもそもフレアガスに対し、無触媒脱硝処理を行うことで、フレアガス中に含まれている窒素酸化物(NO)を、無害な窒素(N)と水(HO)に還元することができ、環境汚染を減少させることができる。
【0042】
なお、本実施の形態例1に係るフレアガス燃焼処理システムでは、総合情報処理装置、空気取入れダンパー開度調節装置72、助燃料調節演算装置73、脱硝ガス調節演算装置74といった4つの情報処理装置を夫々独立して設ける構成を示したが、この構成に限定されるものではない。例えば、空気取入れダンパー開度調節装置72及び助燃料調節演算装置73の機能を有する単一の情報処理装置を用いる構成としても良い。または、総合情報処理装置、空気取入れダンパー開度調節装置72、助燃料調節演算装置73、脱硝ガス調節演算装置74の機能を有する単一の情報処理装置を用いる構成としても良い。
【符号の説明】
【0043】
1:VDU、10:筒体、11:空気取入れダンパー、12:パイロットバーナ、13:助燃バーナ、14:フレアガスバーナ、15:排出孔、
31:燃料ライン、32:助燃料ライン、
41:自動弁、42:助燃料流量調節弁、43:自動弁、44:調節弁、
51:フレアガスライン、
71:温度検出装置、72:空気取入れダンパー開度調節装置、73:助燃料調節演算装置、74:脱硝ガス調節演算装置、
81:ガス検出装置、82:ガス検出装置、83:ガス検出装置

【要約】
【課題】アンモニアガスの含有量に追従して、脱硝ガスを供給し、無触媒脱硝処理を効果的に行うことが可能なフレアガス燃焼処理システムを提供する。
【解決手段】フレアガスを燃焼処理するフレアガス燃焼処理システムであって、フレアガスを燃焼するVAU1と、前記システムを制御する総合情報処理装置と、温度検出装置71と、ガス検出装置81と、ガス検出装置82を有し、総合情報処理装置は、温度検出装置71を通じて、VDU1内の温度が、無触媒脱硝が可能な温度に保持されていると認識すると、ガス検出装置81を通じて、VDU81から排出されるガス中のアンモニアガスの濃度を検出させると共に、ガス検出装置82を通じて、VDU1から排出されるガス中の窒素酸化物の濃度を検出させ、これらの濃度に基づき、最適な脱硝ガスの量を演算し、当該最適な量の脱硝ガスを、VDU1内に供給する構成とした。
【選択図】図1
図1
図2