(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-10
(45)【発行日】2024-07-19
(54)【発明の名称】太陽電池の製造方法及び太陽電池
(51)【国際特許分類】
H01L 31/0749 20120101AFI20240711BHJP
H10K 39/15 20230101ALI20240711BHJP
H10K 30/40 20230101ALI20240711BHJP
H01L 31/0725 20120101ALI20240711BHJP
【FI】
H01L31/06 460
H10K39/15
H10K30/40
H01L31/06 410
(21)【出願番号】P 2023185841
(22)【出願日】2023-10-30
【審査請求日】2023-12-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523111201
【氏名又は名称】株式会社PXP
(73)【特許権者】
【識別番号】322009206
【氏名又は名称】株式会社SOLABLE
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】杉本 広紀
(72)【発明者】
【氏名】平井 義晃
(72)【発明者】
【氏名】深澤 一仁
【審査官】山本 元彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-518032(JP,A)
【文献】特開2013-084664(JP,A)
【文献】国際公開第2004/090995(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0303328(US,A1)
【文献】特開2002-217213(JP,A)
【文献】特開2014-154760(JP,A)
【文献】特開2014-17426(JP,A)
【文献】特開2003-179238(JP,A)
【文献】特開2003-318424(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/02-31/078
H01L 31/18-31/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
InGaSe層と、CuSe層と、InSe層と、を有する前駆体を形成する前駆体形成工程と、
前記前駆体を加熱することにより結晶化させた光吸収層を得る結晶化工程と、を備え
、
前記前駆体形成工程において、前記InGaSe層及び前記InSe層をスパッタリング法及び/又は蒸着法により200℃以下で形成し、
形成された前記InGaSe層及び前記InSe層は非晶質である、
太陽電池の製造方法
。
【請求項2】
前記前駆体形成工程において、前記InSe層を前記InGaSe層より受光面側へ形成する、
請求項1に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項3】
前記前駆体形成工程において、前記InSe層を最も受光面側へ形成する、
請求項1に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項4】
前記前駆体形成工程において、前記InGaSe層と、前記CuSe層と、をそれぞれ2層以上形成する、
請求項1に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項5】
前記InGaSe層において、In元素とGa元素の合計物質量に対するGa元素の物質量の比の値(Ga/(In+Ga))は、0.3以上0.6以下である、
請求項1に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項6】
前記InSe層の中のIn元素の物質量Xに対する、前記InGaSe層の中のIn元素とGa元素の合計物質量Y(Y/X)の比の値が、1.0以上1.5以下である、
請求項1に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項7】
前記前駆体において、
In元素とGa元素の合計物質量に対するGa元素の物質量の比の値(Ga/(In+Ga))が0.15以上0.40以下であり、
In元素とGa元素の合計物質量に対するCu元素の物質量の比の値(Cu/(In+Ga))が0.75以上0.95以下であり、
Cu元素とIn元素とGa元素の合計物質量に対するSe元素の物質量の比の値(Se/(Cu+In+Ga))が1.0以上である、
請求項1に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項8】
前記InGaSe層及び前記InSe層において、In元素とGa元素の合計物質量に対するSe元素の物質量の比の値(Se/(In+Ga))が1.25以上1.75以下である、
請求項1に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項9】
前記CuSe層が前記前駆体の最表層に形成される場合、前記CuSe層において、Cu元素の物質量に対するSe元素の物質量の比の値(Se/Cu)は、2.0以上3.0以下である、
請求項1に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項10】
前記CuSe層が前記前駆体の最表層に形成されない場合、前記CuSe層において、Cu元素の物質量に対するSe元素の物質量の比の値(Se/Cu)は、0.5以上2.0以下である、
請求項1に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項11】
前記結晶化工程において、300℃以上600℃以下の不活性雰囲気下で加熱する、
請求項1に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項12】
前記結晶化工程の後、350℃以上600℃以下の硫黄雰囲気下で前記光吸収層の表面を処理する表面処理工程をさらに備える、
請求項1に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項13】
請求項1~1
2のいずれか一項に記載の方法により製造され、
前記光吸収層において、受光面側から深さ方向200nmまでの区間におけるバンドギャップが1.1eV以上1.4eV以下であり、
受光面側からの深さ方向200nmから深さ方向400nmまでの区間におけるバンドギャップが0.9eV以上1.2eV以下であり、
受光面側からの深さ方向400nm以降の区間におけるバンドギャップが1.2eV以上1.7eV以下である、
太陽電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池の製造方法及び太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池として、単結晶や多結晶のシリコン等の材料を用いて製造するシリコン太陽電池があるが、耐久性に優れている一方、製造コストが高く、厚みがあるため、大型発電施設に使用される。また、ガラスや金属等の基板上に薄い膜上の光吸収層を形成して太陽電池とする薄膜太陽電池がある。薄膜太陽電池は製造コストが安価であり、非常に薄いため、フレキシブルな態様で利用することも可能である。このような特徴から、近年では、薄膜太陽電池の応用に向けて変換効率や耐久性等について様々な検討がされている。
【0003】
例えば、特許文献1において、Cu、In、Ga等の金属成分をスパッタリング法により積層し、その後H2SeやH2Sの雰囲気で加熱しながら光吸収層を形成する方法を用いることにより、製造コストを低減できる旨が記載されている。さらに、特許文献2においては、上記方法に加えて、基板を結晶化温度以上に加熱しながら光吸収層を形成することにより薄膜の内部欠陥を低減できる旨が記載されているが、高温加熱とスパッタリングを同時に行うため、装置のコストが高くなることが懸念される。
【0004】
特許文献3において、Cu、In、Ga、Seのそれぞれの単体又は合金を同時にスパッタリングし、その後さらにアニールして結晶化する方法が試みられたが、その発電性能が十分ではなかった。そこで、特許文献4においては、I族系セレンであるCuSeとIII族系セレンのInGaSeをそれぞれ積層し、Se蒸気又はH2Seガスの雰囲気下で結晶化を行うことで、発電性能を向上できる旨が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平10-135495号公報
【文献】特表第2012-513127号公報
【文献】国際公開第2011/052574号
【文献】国際公開第2011/090959号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び特許文献2に記載の方法では、H2SeやH2Sの雰囲気で加熱しながら反応させる際に、光吸収層の体積膨張が大きく、膜中において欠陥が多く現れ、表面の凹凸も多くなることが懸念される。さらに、特許文献3及び特許文献4に記載の方法によれば、膜における欠陥や表面の凹凸はある程度抑えられるものの、Se蒸気やH2Seガスの雰囲気下でアニールする必要があるため環境や安全面を考慮した設備が必要になり、コストが高くなる上、結晶粒は小さく発電性能も未だ十分とはいえないものであった。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、高性能と高生産性を両立させた太陽電池の製造方法及び太陽電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施形態にかかる太陽電池の製造方法は、InGaSe層と、CuSe層と、InSe層と、を有する前駆体を形成する前駆体形成工程と、前駆体を加熱することにより結晶化させた光吸収層を得る結晶化工程と、を備える。
【0009】
太陽電池の製造において、前駆体がInGaSe層と、CuSe層と、InSe層と、を有することにより、太陽電池の生産性が向上し、得られる太陽電池が高性能のものとなる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高性能と高生産性を両立させた太陽電池及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る光吸収層の前駆体の概略断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る光吸収層の前駆体の概略断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る光吸収層の前駆体の概略断面図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る太陽電池の概略断面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る光吸収層に含まれる各層のX線回折パターンを示す図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係るInSe層の形成温度によるX線回折パターンの変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右などの位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0013】
1.光吸収層形成工程
本実施形態の太陽電池の製造方法は、光吸収層の形成工程において、InGaSe層と、CuSe層と、InSe層と、を有する前駆体を形成する前駆体形成工程と、前駆体を加熱することにより結晶化させた光吸収層を得る結晶化工程と、を備える。
【0014】
従来、Cu、In、Ga、Seを含むCIGS型カルコパイライト太陽電池の製造方法としては、I族系のCuSeとIII族系のInGaSeを分けて積層し、その後Se蒸気又はH2Seガス雰囲気下でアニールして結晶化させることで発電性能を向上させる方法が開発されていた。しかしながら、上記のような方法により得られる太陽電池は、光吸収層における結晶粒が小さく、結晶品質が不十分となる課題があり、その発電性能が十分とはいえないものであった。そして、上記のような方法は、製造においてSe蒸気又はH2Seガス雰囲気下でアニールを行う必要があるため、環境や安全面を考慮した設備が必要になり、コストが膨大になることが懸念される。
【0015】
そこで、本願発明者らは、カルコパイライト光吸収層の前駆体として、InGaSe層と、CuSe層と、InSe層と、をそれぞれ分けて積層した後、前駆体を加熱して結晶化させることにより、光吸収層の結晶粒を大きくし、結晶品質を向上させることができ、高性能である太陽電池が得られ、さらに、Se元素を含む雰囲気下で加熱する工程を必ずしも必要としないため、高生産性を有する太陽電池の製造が可能なことを見出した。
上記方法が優れる要因は、必ずしも明らかではないが、InGaSe層と、CuSe層と、InSe層を別途形成してから結晶化させることにより、CuSe層とInSe層の界面において、良好な種結晶が優先的に形成されることで、結晶粒が増大し、結晶品質が向上したと考えられる。また、膜内のSe元素が結晶化する際に好適な配列の元素プロファイルとなることで結晶のひずみが緩和したことも相乗的に寄与したと推定される。ただし、要因は上記に限られない。
【0016】
なお、本明細書において「太陽電池が高性能である」とは、太陽電池の発電性能に関係する電池特性が少なくとも1つのパラメータにおいて優れることを意味する。また、本明細書において「太陽電池が高生産性を有する」とは、太陽電池の生産コストが低く、製造方法の信頼性が高いことを意味する。以下において、本実施形態の太陽電池の製造方法について詳述する。
【0017】
1.1.前駆体形成工程
本実施形態の前駆体形成工程は、InGaSe層と、CuSe層と、InSe層と、を有する前駆体を形成する工程である。上記各層を有する前駆体を形成することにより、得られる光吸収層の結晶粒が増大し、結晶品質が向上することで、発電性能が向上する。
【0018】
図1に光吸収層の前駆体の一つの例となる概略断面図を示す。
図1に示すとおり、本実施形態の前駆体は、少なくとも、InGaSe層、CuSe層と、InSe層を一層ずつ有するものである。
【0019】
前駆体形成工程において、InGaSe層又はInSe層を非晶質にすると好ましく、InGaSe層及びInSe層の両方を非晶質にするとより好ましい。InGaSe層又はInSe層が非晶質であることにより、CuSe層との界面以外における意図しない種結晶の発生を抑制することで、得られる光吸収層の結晶粒が増大し、結晶品質が向上することで、発電性能が一層向上する傾向にある。
本明細書において、「非晶質である」とは、X線回折測定の2θ-θパターンにおいて、ベースラインを中心として上下のノイズ幅の2倍となる領域を超えるピークが現れないことをもって判断されるものである。
【0020】
各層を形成する方法は、特に限定されず、量産性や信頼性の観点から、スパッタリング法及び/又は蒸着法により形成することが好ましく、スパッタリング法のみを用いてもよい。
前駆体を形成する際、被スパッタ基板の表面温度は、好ましくは、300℃以下であり、250℃以下であり、200℃以下であり、室温(RT)である。被スパッタ基板の温度を上記範囲とすることにより、InGaSe層及びInSe層が非晶質層になる傾向にあり、これにより得られる太陽電池が一層高性能になり高生産性を有する傾向にある。なお、本明細書において、被スパッタ基板とは、スパッタリングを行う際のステージ上の基板であって、スパッタリングターゲット由来の化合物がその上に積層する、基板のことである。
【0021】
スパッタリングに用いるターゲットとしては、特に限定されず、各層の形成にあたり、例えば、InGaSe層の場合はIn、In4Se3、InSe、In2Se3、GaSe、Ga2Se3、Seの単体又は混合物、CuSe層の場合はCu、Cu2Se、CuSe2、Seの単体又は混合物、InSe層の場合はIn、In4Se3、InSe、In2Se3、Seの単体又は混合物を用いてもよい。この中でも、InGaSe層の場合はIn2Se3、Ga2Se3の混合物であり、Ga2Se3の割合が30%以上60%以下の混合物、CuSe層の場合はCuSe2単体、InSe層の場合はIn2Se3単体を用いると好ましい。
スパッタリング行う際に供給するガスとして、Ar又はHe等の不活性ガスの他、例えば、H2又はH2Se、H2S等が挙げられる。この中でも、本発明の効果を一層確実に奏する観点からは、不活性ガスとしてはArが好ましく、その他のガスとしては、H2が好ましい。
【0022】
前駆体形成工程において、InSe層をInGaSe層よりも受光面側へ形成すると好ましい。InSe層をInGaSe層より受光面側へ形成することで、得られる太陽電池の発電性能が一層向上する傾向にある。
【0023】
前駆体形成工程において、InSe層を最も受光面側へ形成すると好ましい。InSe層を最も受光面側へ形成すると、得られる太陽電池の発電性能が一層向上する傾向にある。同様の観点から、InSe層を最も受光面側へ形成し、CuSe層を2層目に受光面側へ形成することが好ましい。
【0024】
図2に光吸収層の前駆体の別の一例になる概略断面図を示す。
図2に示すとおり、本実施形態の前駆体は、InGaSe層と、CuSe層と、InSe層と、を有し、かつ、InSe層をInGaSe層よりも受光面側へ形成すると好ましい。また、
図2に示すとおり、本実施形態の前駆体は、InGaSe層と、CuSe層と、InSe層と、を有し、かつ、InSe層を最も受光面側へ形成すると好ましい。
【0025】
前駆体形成工程において、好ましくは、InGaSe層と、CuSe層と、をそれぞれ2層以上、3層以上、5層以上形成する。InGaSe層とCuSe層をそれぞれ2層以上にすることで、得られる太陽電池の発電性能が一層向上する傾向にある。
【0026】
図3に光吸収層の前駆体の別の一例になる概略断面図を示す。
図3に示すとおり、本実施形態の前駆体は、InGaSe層と、CuSe層と、InSe層と、を有し、かつ、InGaSe層と、CuSe層と、をそれぞれ2層以上形成すると好ましい。また、
図3に示すとおり、本実施形態の前駆体は、InGaSe層と、CuSe層と、InSe層と、を有し、かつ、InSe層を最も受光面側へ形成すると好ましい。
【0027】
形成する前駆体の全体において、In元素とGa元素の合計物質量に対するGa元素の物質量の比の値(Ga/(In+Ga))は、好ましくは、0.10以上0.50以下であり、0.15以上0.40以下であり、0.20以上0.40以下である。前駆体全体における(Ga/(In+Ga))の物質量比を上記範囲内とすることで、得られる太陽電池の発電性能が一層向上する傾向にある。
また、形成する前駆体全体において、In元素とGa元素の合計物質量に対するCu元素の物質量の比の値(Cu/(In+Ga))は、好ましくは、0.50以上1.0以下であり、0.75以上0.95以下であり、0.80以上0.90以下である。前駆体全体における(Cu/(In+Ga))の物質量比を上記範囲内とすることで、得られる太陽電池の発電性能が一層向上する傾向にある。
そして、形成する前駆体全体において、Cu元素とIn元素とGa元素の合計物質量に対するSe元素の物質量の比の値(Se/(Cu+In+Ga))は、好ましくは、0.5以上であり、0.8以上であり、1.0以上である。(Se/(Cu+In+Ga))の物質量比を上記範囲にすることで、前駆体内のSe元素の量が十分なものとなり、得られる太陽電池の発電性能と生産性が一層向上する傾向にある。また、(Se/(Cu+In+Ga))の物質量比の上限は、特に限定されず、例えば、10.0以下であってもよく、7.5以下であってもよく、5.0以下であってもよく、3.0以下であってもよい。
【0028】
InGaSe層において、In元素とGa元素の合計物質量に対するGa元素の物質量の比の値(Ga/(In+Ga))は、好ましくは、0.1以上0.8以下であり、0.2以上0.7以下であり、0.3以上0.6以下である。InGaSe層における(Ga/(In+Ga))の物質量比を上記範囲内とすることで、得られる太陽電池の発電性能が一層向上する傾向にある。
【0029】
InSe層におけるIn元素の物質量Xに対する、InGaSe層におけるIn元素とGa元素の合計物質量Y(Y/X)の比の値は、好ましくは、0.5以上2.5以下であり、1.0以上1.5以下である。物質量比(Y/X)を上記範囲内にすることで、得られる太陽電池の発電性能が一層向上する傾向にある。
【0030】
InGaSe層及びInSe層において、In元素とGa元素の合計物質量に対するSe元素の物質量の比の値(Se/(In+Ga))は、好ましくは、0.8以上2.0以下であり、1.0以上1.75以下である。
CuSe層が前駆体の最表層に形成される場合、InGaSe層及びInSe層における(Se/(In+Ga))の値は、好ましくは、1.0以上2.0以下であり、1.25以上1.75以下である。
CuSe層が前駆体の最表層に形成されない場合、InGaSe層及びInSe層における(Se/(In+Ga))の値は、好ましくは、1.0以上2.0以下であり、1.0以上1.5以下である。
InGaSe層及びInSe層における(Se/(In+Ga))の値を上記の範囲内にすると、得られる太陽電池の発電性能が一層向上する傾向にある。
なお、本明細書において前駆体の最表層とは、最も受光面側にある層を意味する。
【0031】
CuSe層内の(Se/Cu)物質量比は、好ましくは、0.5以上4.0以下であり、0.5以上3.0以下である。
CuSe層が前駆体の最表層に形成される場合、CuSe層において、Cu元素の物質量に対するSe元素の物質量の比の値(Se/Cu)は、好ましくは、1.5以上5.0以下であり、2.0以上3.0以下である。
CuSe層が前駆体の最表層に形成されない場合、CuSe層において、Cu元素の物質量に対するSe元素の物質量の比の値(Se/Cu)は、好ましくは、0.3以上2.5以下であり、0.5以上2.0以下である。
CuSe層において、Cu元素の物質量に対するSe元素の物質量の比の値(Se/Cu)を上記範囲内にすることで、得られる太陽電池の発電性能が一層向上する傾向にある。
【0032】
前駆体の各層内において、元素の含有量を調べる方法としては、特に限定されず、例えば、誘導結合プラズマ(ICP)による発光分光分析法、エネルギー分散型X線分析(EDX又はEDS)、二次イオン質量分析法(SIMS)等を使用することができる。
【0033】
前駆体形成工程において、各層における元素の含有量を調整する方法としては、例えば、スパッタリングや蒸着時に、使用する原料(ターゲット)における元素の含有量を調整する方法、成膜圧力又は印加電力制御する方法等が挙げられる。
【0034】
形成する前駆体の厚さは、太陽電池の構成や目的等の必要に応じて調整すればよい。前駆体全体の厚さを、700nm以上3200nm以下、又は1500nm以上2700nm以下にするとよい。
形成するInGaSe層の厚さは、好ましくは1層当たり、300nm以上1300nm以下であり、600nm以上1200nm以下である。
形成するCuSe層の厚さは、好ましくは1層当たり、100nm以上700nm以下であり、300nm以上600nm以下である。
形成するInSe層の厚さは、好ましくは1層当たり、300nm以上1200nm以下であり、600nm以上1100nm以下である。
前駆体形成工程における各層の厚さを上記のとおりとすることで、得られる太陽電池の発電性能を一層確実に向上させることができる。
【0035】
1.2.結晶化工程
本実施形態の結晶化工程は、形成された前駆体を加熱することにより結晶化させて光吸収層を得る工程である。なお、加熱は1回のみ行ってもよく、2回以上に分けて段階的に行ってもよい。
【0036】
結晶化工程における加熱温度は、好ましくは、300℃以上600℃以下であり、400℃以上600℃以下である。加熱温度を上記範囲内とすることで、光吸収層の結晶粒が増大し、結晶品質が向上することで、得られる太陽電池の発電性能が一層向上する傾向にある。
【0037】
結晶化工程は、不活性雰囲気化又はSe元素を含む雰囲気化で行ってもよく、不活性雰囲気下で行うことが好ましい。不活性雰囲気下で結晶化を行うことで、太陽電池の発電性能を一層確実に向上させることができる。不活性ガスとしては、例えば、窒素(N2)、アルゴン(Ar)が挙げられ、好ましくは窒素を用いる。
【0038】
1.3.表面処理工程
本実施形態の太陽電池の製造方法は、上記結晶化工程の後、350℃以上600℃以下の硫黄雰囲気下で上記光吸収層の表面を処理する表面処理工程をさらに備えると好ましい。表面処理工程を行うことにより、光吸収層の受光面側におけるバンドギャップを制御できるため、太陽電池が一層高性能のものとなる傾向にある。
【0039】
表面処理時の雰囲気の温度は、400℃以上600℃以下であってもよく、500℃以上600℃以下であってもよい。上記の温度範囲内で表面処理工程を行うことで、太陽電池が一層高性能のものとなる傾向にある。
【0040】
表面処理工程の時間は、例えば、1分以上60分以下であってもよく、3分以上30分以下であってもよい。表面処理工程を行う時間を上記範囲内にすることで、太陽電池が一層高性能のものとなる傾向にある。
【0041】
2.太陽電池
本実施形態の太陽電池は、上述の方法により製造される光吸収層104を含むものであり、後述する構成を有する。上述の製造方法により製造される光吸収層104を含む太陽電池は、変換効率に優れ高性能であり、製造プロセスを簡略化できるため生産性にも優れる。
【0042】
図4に、本実施形態の太陽電池の断面構造の一例を示す。
太陽電池10は、例えば、
図4に示すように、基板107と、基板107上に設けられた第1電極層106と、第1電極層106上に設けられた正孔輸送層105と、正孔輸送層105上に設けられた光吸収層104と、光吸収層104上に設けられた電子輸送層103と、電子輸送層103上に設けられた第2電極層102と、第2電極層102上に設けられたグリッド電極101とを備える。太陽電池10は、第2電極層102側からの光を受光して発電する。
【0043】
以下に、太陽電池10を構成する各層について説明する。
【0044】
2.1.基板
基板107としては、特に限定されず、例えば、青板ガラス、低アルカリガラス等のガラス基板、ステンレス箔、アルミ箔、チタン箔等の金属基板、ポリイミド樹脂フィルム、エポキシ樹脂フィルム等の樹脂基板を用いることができる。基板107の厚さは、特に限定されず、例えば、10μm以上500μm以下であり、20μm以上250μm以下であり、30μm以上100μm以下である。基板107の厚さが上記範囲内であると、太陽電池の軽量化やフレキシブル化ができる点で好ましい。
【0045】
2.2.第1電極層
第1電極層106は、後述の光吸収層104で生じた正孔による電流を取り出すために設けられることが一般的である。第1電極層106としては、導電性を有するものであれば特に限定されず、例えば、Mo、Cr、又はTi等の金属を材料とする金属導電層;金属以外の導電性無機化合物を材料とする導電性無機化合物導電層;導電性有機化合物を材料とする導電性有機化合物導電層を用いることができる。第1電極層106の厚さは、特に限定されず、例えば、200nm以上800nm以下、又は300nm以上700nm以下である。第1電極層106の厚さが上記範囲内であると、電流をロスなく十分に取り出しつつ、太陽電池の軽量化やフレキシブル化ができる点で好ましい。
【0046】
2.3.正孔輸送層
正孔輸送層105は、例えば、後述の光吸収層104で生じた正孔を光吸収層104から効率的に取り出し、後述の光吸収層104で成功と同時に生じる電子と正孔とが再結合することを防ぐ機能を有する。正孔輸送層105は、p型半導体であると好ましい。p型半導体に含まれる物質としては、特に限定されず、例えば、ポリ(3,4-エチレン-ジオキシチオフェン):ポリスチレンスルフォネート(PEDOT:PSS)、ポリ(3-ヘキシルチオフェン)(P3HT)、及びポリ(3-オクチルチオフェン)(P3OT)等のポリチオフェン誘導体;2,2’-7,7’-テトラキス-(N,N-ジ-p-メトキシフェニルアミン)-9,9’-スピロビフルオレン(spiro-MeO-TAD)等のフルオレン誘導体;ポリビニルカルバゾール等のカルバゾール誘導体;トリフェニルアミン誘導体;ジフェニルアミン誘導体;ポリシラン誘導体;ポリアニリン誘導体等の有機化合物、並びに、酸化ニッケル、酸化モリブデン、酸化ガリウム銅、酸化アルミニウム銅、セレン化モリブデン、及びセレン化硫化モリブデン等の無機化合物が挙げられる。正孔輸送層105におけるp型半導体は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、太陽電池において、正孔輸送層105の形成を省略してもよい。
【0047】
2.4.光吸収層
2.4.1.本実施形態の光吸収層
光吸収層104は、近赤外光、可視光、紫外光等の光を吸収して電子と正孔とを生じる機能を有するものであり、そのような光として、例えば、太陽光が挙げられる。
本実施形態の太陽電池における光吸収層104は、上述の前駆体形成工程及び結晶化工程により得られる、CIGS型カルコパイライトを含むものである。なお、得られた光吸収層104に上述の表面処理工程を追加で行った場合、硫黄成分をさらに含むため、CIGSS型(Cu、In、Ga、Se、Sを含む)カルコパイライトを含む光吸収層104ともいえる。
【0048】
本実施形態の光吸収層104のバンドギャップは、好ましくは、深さ方向における最小値を基準に、2.0eV以下であり、1.8eV以下であり、1.5eV以下であり、1.2eV以下であり、1.1eV以下である。また、バンドギャップの下限は、例えば、0.5eVであってもよく、0.8eV以上であってもよい。光吸収層104のバンドギャップが上記範囲を満たすと、太陽電池が高性能となる。
【0049】
バンドギャップの測定方法としては、公知の手法を用いることができる。具体的には、例えば、分光透過率測定や分光量子効率測定等により測定できる。
【0050】
本実施形態の光吸収層104において、受光面側から深さ方向200nmまでの区間におけるバンドギャップは、好ましくは、1.1eV以上1.4eV以下であり、深さ方向200nmから深さ方向400nmまでの区間におけるバンドギャップは、好ましくは、0.9eV以上1.2eV以下であり、深さ方向400nm以降は1.2eV以上1.7eV以下である。バンドギャップを上記範囲内にすることで、光の吸収により発生した電子と正孔が再結合することを防ぐことが可能となる傾向にある。
【0051】
本実施形態の光吸収層104の1層あたりの厚さは、好ましくは、0.5μm以上5μm以下であり、0.8μm以上4μm以下であり、1μm以上3μm以下である。光吸収層104の1層あたりの厚さを上記範囲内にすることで、太陽電池の生産性が一層向上し、かつ、軽量化やフレキシブル化が容易になる傾向にある。
【0052】
本実施形態の光吸収層104の比率は、特に限定されず、光吸収層104の総質量に対して、例えば、50質量%以上100質量%以下であり、60質量%以上100質量%以下であり、70質量%以上100質量%以下であり、80質量%以上100質量%以下であり、90質量%以上100質量%以下である。
【0053】
2.4.2.追加の光吸収層
太陽電池は、光吸収層104と異なる、追加の光吸収層を有していてもよい。そのような追加の光吸収層は、例えば、既に光吸収層を有する太陽電池の第2電極層102上にさらに正孔輸送層を有し、追加の光吸収層を有する態様が考えられ、さらなる正孔輸送層を有しない場合は、第2電極層102上に追加の光吸収層を有してもよい。
追加の光吸収層となる化合物として、例えば、ペロブスカイト化合物、カルコパイライト化合物又はケステライト化合物を含むものが挙げられる。それぞれの化合物は、単独で用いてもよく、2種以上のペロブスカイト、カルコパイライト、又はケステライトを併用してもよい。
【0054】
ペロブスカイト化合物としては、例えば、有機-無機ペロブスカイト化合物が挙げられ、特にハライド系有機-無機ペロブスカイト化合物が挙げられる。具体例としては、CH3NH3PbI3、CH3NH3PbBr3、CH3NH3PbCl3、CH3NH3SnI3、CH3NH3SnBr3、CH3NH3SnCl3、CH3NH3PbI(3-x)Clx、CH3NH3PbI(3-x)Brx、CH3NH3PbBr(3-x)Clx、CH3NH3Pb(1-y)SnyI3、CH3NH3Pb(1-y)SnyBr3、CH3NH3Pb(1-y)SnyCl3、CH3NH3Pb(1-y)SnyI(3-x)Clx、CH3NH3Pb(1-y)SnyI(3-x)Brx、及びCH3NH3Pb(1-y)SnyBr(3-x)Clx、並びに、上記の化合物においてCH3NH3の代わりにCFH2NH3、CF2HNH3、CF3NH3、又はNH2CH=NH2を用いたもの等が挙げられる。なお、上記式中、xは0以上3以下、yは0以上1以下の任意の値を示す。
【0055】
カルコパイライト化合物として、本発明の製造方法により得られるCIGS型カルコパイライト化合物とは異なるものは、例えば、CuAlS2、CuAlSe2、CuAlTe2、CuGaS2、CuGaSe2、CuGaTe2、CuInS2、CuInSe2、CuInTe2、AgAlS2、AgAlSe2、AgAlTe2、AgGaS2、AgGaSe2、AgGaTe2、AgInS2、AgInSe2、AgInTe2、及びこれらの組み合わせが挙げられる。「これらの組み合わせ」とは、特に限定されず、例えば、CuGaS2及びCuInSe2を組み合わせたときのCu(InxGa1-x)(SeyS1-y)2(0≦x≦1、0≦y≦1)が挙げられる。
【0056】
ケステライト化合物としては、例えば、I2-II-IV-VI4族ケステライト化合物があり、より具体的に、Cu2ZnSnS4、Cu2ZnSnSe4、Cu2ZnGeS4、Cu2ZnGeSe4、Cu2MnSnS4、Cu2MnSnSe4、Cu2MnGeS4、Cu2MnGeSe4、Ag2ZnSnS4、Ag2ZnSnSe4、Ag2ZnGeS4、Ag2ZnGeSe4、Ag2MnSnS4、Ag2MnSnSe4、Ag2MnGeS4、Ag2MnGeSe4、及びこれらの組み合わせが挙げられる。「これらの組み合わせ」としては、特に限定されず、例えば、Cu2ZnSnS4及びAg2ZnSnSe4を組み合わせたときの(CuxAg1-x)2ZnSn(SySe1-y)4(0≦x≦1)が挙げられる。
【0057】
2.5.電子輸送層
電子輸送層103は、例えば、光吸収層104で生じた電子を光吸収層104から効率的に取り出し、光吸収層104で電子と同時に生じる正孔とが再結合することを防ぐ機能を有する。電子輸送層103は、n型半導体であると好ましい。n型半導体に含まれる物質としては、特に限定されず、例えば、C60、2,9‐ジメチル‐4,7‐ジフェニル‐1,10‐フェナントロリン(BCP)等のフェナントロリン誘導体、 4,6-ビス(3,5-ジ-4-ピリジニルフェニル)-2-メチルピリミジン(B4PymPm)やトリス(2,4,6-トリメチル-3-(ピリジン-3-イル)フェニル)ボラン(3TPYMB)等のフェニルピリジン誘導体等の有機化合物、並びに、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化チタン、酸化硫化亜鉛、酸化マグネシウム亜鉛、酸化スズ亜鉛、又は酸化チタン亜鉛から実質的になるn型酸化物半導体、並びに、硫化カドミウム、硫化インジウム又は酸素元素やアルカリ金属元素が添加された硫化インジウムを含むn型半導体が挙げられる。電子輸送層103におけるn型半導体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。電子輸送層103の厚さは、例えば、50nm以上200nm以下であり、60nm以上150nm以下であり、75nm以上135nm以下である。電子輸送層103の厚さが上記範囲内であると、上記機能を有しつつ、太陽電池の軽量化やフレキシブル化ができる点で好ましい。
【0058】
2.6.第2電極層
第2電極層102は、例えば、光吸収層104で生じた電子による電流を取り出すために設けられる。太陽電池において、典型的には、第2電極層102を通過した光を光吸収層104が吸収するため、光吸収層104が吸収する光量を増大させるため、第2電極層102を透明電極層にすることが好ましい。透明電極の材料としては、公知の材料を用いることができ、例えば、酸化インジウムスズ(ITO)、水素含有酸化インジウム(IOH)、フッ素含有酸化スズ(FTO)、ホウ素含有酸化亜鉛(ZnO:B)、アルミニウム含有酸化亜鉛(ZnO:Al)等が挙げられる。第2電極層102の厚さは、特に限定されず、例えば、100nm以上1500nm以下であり、200nm以上1000nm以下である。第2電極層102の厚さを上記範囲内にすると、電流をロスなく十分に取り出しつつ、太陽電池の軽量化やフレキシブル化ができる点で好ましい。
【0059】
2.7.グリッド電極
グリッド電極101は、例えば、第2電極層102から電気を取り出すために設けられる。グリッド電極101の材料としては、導電性を有する者であれば特に限定されず、例えば、Mo、Cr、Ag、Cu、Ni、Al又はTi等の金属;金属以外の導電性無機化合物;導電性有機化合物を用いることができる。グリッド電極101の厚さは、特に限定されず、例えば、5μm以上50μm以下である。グリッド電極101の厚さを上記範囲内にすると、太陽電池の軽量化やフレキシブル化ができる点で好ましい。
【0060】
2.8.変更例
図4に示す太陽電池10は、本発明の太陽電池を説明するための例示であり、本発明をその実施形態のみに限定する趣旨ではなく、本発明の太陽電池は、その要旨を逸脱しない限り、様々な変形が可能である。
【0061】
例えば、太陽電池10は、必要に応じて各層の間、グリッド電極101の上、又は基板107の下に他の層を有していてもよい。具体的には、正孔輸送層105が、それぞれ異なる材料を含む2以上の正孔輸送層を有していてもよく、グリッド電極101上に、外部からの汚染を防ぐための汚染防止層を有していてもよい。また、第2電極層102の上にグリッド電極101の代わりに正孔輸送層をもう一層有し、その上に追加の光吸収層を有していてもよく、電子輸送層103が、それぞれ異なる材料を含む2以上の電子輸送層103を有していてもよい。ただし、光吸収層のうち少なくとも一つの層は、本実施形態の製造方法により得られる光吸収層104である。
【0062】
太陽電池10は、図示しないが、正孔輸送層105と、正孔輸送層105の上に設けられた光吸収層104と、光吸収層の上に設けられた電子輸送層103と、電子輸送層103の上に設けられた第2電極層102と、を1セットとして、第1電極層106の上に、上記セットを2セット積層してもよく、3セット積層してもよい。また、最上部の第2電極層の上にグリッド電極を有していてもよい。
【0063】
各層101~107のいずれかが複数存在する場合、当該複数の層は互いに同じであってよく、異なっていてよい。例えば、光吸収層104を複数備える場合、各光吸収層は、吸収スペクトルが異なる化合物を含んでいてよく、各光吸収層に接する電子輸送層及び正孔輸送層は、接している光吸収層の性質に応じて選択されてよい。ただし、光吸収層のうち少なくとも一つの層は、上述の製造方法により得られる光吸収層104である。
【0064】
本実施形態の太陽電池は、従来の太陽電池と同様に、太陽電池の温度が45~85℃程度となる、通常の温度環境下で用いることができる。例えば、建物や移動手段の窓、壁面に貼り付け発電デバイスとして、街灯やセンサー用の独立電源デバイスとして、モバイルエネルギーデバイスとして、及び宇宙又は成層圏における発電デバイスとして、好適に用いることができる。
【0065】
本実施形態の太陽電池は、高い変換効率を有する。本実施形態の太陽電池の変換効率としてより具体的に、好ましくは、14%以上を有し、15%以上を有し、16%以上を有する。上記範囲の変換効率を有することは、高性能の太陽電池が得られたことを示す。
【0066】
基板107を除いた太陽電池の厚さは、特に限定されず、例えば、1.0μm以上10.0μm以下であり、1.1μm以上8.0μm以下であり、1.2μm以上6.0μm以下である。本発明の太陽電池は、各層を十分に薄く形成することで、薄膜太陽電池を構成し得る。
【0067】
3.太陽電池の製造方法
次いで、
図4に示す本実施形態の太陽電池の製造方法について説明する。
【0068】
3.1.第1電極層形成工程
まず、例えば、基板107上に第1電極層106を形成する。第1電極層106を形成する手法としては、ドライプロセス及びウェットプロセスが挙げられるが、ドライプロセスが好ましい。ドライプロセスとしては、特に限定されず、例えば、スパッタリング法により、金属導電層である第1電極層106を形成する手法が挙げられる。スパッタリング法の成膜条件としては、特に限定されず、例えば、印加電力:1.0~3.0W/cm2、成膜雰囲気:アルゴン雰囲気、成膜圧力:0.5~3.0Paとしてもよい。第1電極層形成工程においては、例えば、基板107を被スパッタ基板としてもよい。なお、本明細書において、被スパッタ基板とは、スパッタリングを行う際のステージ上の基板であって、スパッタリングターゲット由来の化合物がその上に積層する、基板のことである。
【0069】
3.2.正孔輸送層形成工程
次に、例えば、第1電極層106上に正孔輸送層105を形成する。正孔輸送層105を形成する手法としては、ドライプロセス及びウェットプロセスが挙げられるが、ドライプロセスが好ましい。ドライプロセスとしては、特に限定されず、例えば、スパッタリング法により、有機化合物又は無機化合物を含むp型半導体である正孔輸送層105を形成する手法が挙げられる。スパッタリング法の成膜条件としては、特に限定されず、例えば、印加電力:0.5~3.0W/cm2、成膜雰囲気:アルゴン雰囲気又はアルゴンと酸素の混合雰囲気、成膜圧力:0.5~3.0Paとしてもよい。また、光吸収層104を形成する際に、第1電極層106の元素と、光吸収層104に含まれる元素との化合物を形成し、第1電極層106と光吸収層104の間に、正孔輸送層105を形成してもよい。
【0070】
3.3.光吸収層形成工程
次に、正孔輸送層105上に、光吸収層104を形成する。光吸収層104の形成方法については、「1.光吸収層形成工程」で述べた通りである。
【0071】
3.4.電子輸送層形成工程
次に、光吸収層104上に電子輸送層103を形成する。例えば、酸素源及び水素源を含むガスを供給しながらスパッタリング法によりn型酸化物半導体を成膜することで、光吸収層104を含む被スパッタ基板上に電子輸送層103を形成してもよく、水素源を含まないガスを供給しながらスパッタリング法によりn型酸化物半導体を成膜してもよい。スパッタリング法の成膜条件としては、特に限定されず、例えば、印加電力:0.5~3.0W/cm2、成膜雰囲気:酸素を含み得るアルゴン雰囲気、成膜圧力:0.5~3.0Paとしてもよい。また、スパッタリング中において、被スパッタ基板を加熱すると好ましい。
【0072】
3.5.第2電極層形成工程
次に、電子輸送層103上に第2電極層102を形成する。第2電極層102を形成する手法としては、ドライプロセス及びウェットプロセスが挙げられるが、ドライプロセスが好ましい。ドライプロセスとしては、特に限定されず、例えば、スパッタリング法により、透明電極層である第2電極層102を形成する手法が挙げられる。スパッタリング法の成膜条件としては、特に限定されず、例えば、印加電力:0.5~3.0W/cm2、成膜雰囲気:アルゴン雰囲気又はアルゴン、酸素、水素の混合雰囲気、成膜圧力:0.5~3.0Paとしてもよい。
【0073】
3.6.グリッド電極形成工程
次に、第2電極層102上にグリッド電極101を形成する。グリッド電極101を形成する手法としては、ドライプロセス及びウェットプロセスが挙げられる。具体的には、例えば、スパッタリング法や蒸着法、ペースト状の導電材料を第2電極層102上に印刷する手法、または導電性ワイヤーを圧着する方法が挙げられる。
【0074】
なお、光吸収層104を形成した後、グリッド電極を形成する前に、追加の光吸収層形成工程を設けてもよい。そのような追加の光吸収層形成工程として、例えば、第2電極層102上にさらに正孔輸送層を形成した上で、追加の光吸収層を形成することが考えられ、正孔輸送層を有しない場合は、第2電極層上に追加の光吸収層を形成してもよい。追加の光吸収層を形成する手法としては、ドライプロセス及びウェットプロセスが挙げられるが、ドライプロセスが好ましい。ドライプロセスとしては、特に限定されず、例えば、スパッタリング法により、ペロブスカイト化合物、カルコパイライト化合物、ケステライト化合物を含む追加の光吸収層を形成する手法が挙げられる。スパッタリング法の成膜条件としては、特に限定されず、例えば、印加電力:0.5~3.0W/cm2、成膜雰囲気:アルゴン雰囲気、成膜圧力:0.2~3.0Paとしてもよい。また、スパッタリング後に、窒素又はヨウ素雰囲気中で、80℃以上200℃以下でアニールする工程を含んでも良い。又は、スパッタリング後に、窒素又はセレン及び硫黄雰囲気中で、350℃以上650℃以下でアニールする工程を含んでもよい。
【0075】
<付記>
本開示の実施形態は、以下の態様を包含する。
[1]
InGaSe層と、CuSe層と、InSe層と、を有する前駆体を形成する前駆体形成工程と、
前記前駆体を加熱することにより結晶化させた光吸収層を得る結晶化工程と、を備える、
太陽電池の製造方法。
[2]
前記前駆体形成工程において、前記InGaSe層及び前記InSe層は非晶質である、
[1]に記載の太陽電池の製造方法。
[3]
前記前駆体形成工程において、各層をスパッタリング法及び/又は蒸着法により200℃以下で形成する、
[1]又は[2]に記載の太陽電池の製造方法。
[4]
前記前駆体形成工程において、前記InSe層を前記InGaSe層より受光面側へ形成する、
[1]~[3]のいずれか1つに記載の太陽電池の製造方法。
[5]
前記前駆体形成工程において、前記InSe層を最も受光面側へ形成する、
[1]~[4]のいずれか1つに記載の太陽電池の製造方法。
[6]
前記前駆体形成工程において、前記InGaSe層と、前記CuSe層と、をそれぞれ2層以上形成する、
[1]~[5]のいずれか1つに記載の太陽電池の製造方法。
[7]
前記InGaSe層において、In元素とGa元素の合計物質量に対するGa元素の物質量の比の値(Ga/(In+Ga))は、0.3以上0.6以下である、
[1]~[6]のいずれか1つに記載の太陽電池の製造方法。
[8]
前記InSe層の中のIn元素の物質量Xに対する、前記InGaSe層の中のIn元素とGa元素の合計物質量Y(Y/X)の比の値が、1.0以上1.5以下である、
[1]~[7]のいずれか1つに記載の太陽電池の製造方法。
[9]
前記前駆体において、
In元素とGa元素の合計物質量に対するGa元素の物質量の比の値(Ga/(In+Ga))が0.15以上0.40以下であり、
In元素とGa元素の合計物質量に対するCu元素の物質量の比の値(Cu/(In+Ga))が0.75以上0.95以下であり、
Cu元素とIn元素とGa元素の合計物質量に対するSe元素の物質量の比の値(Se/(Cu+In+Ga))が1.0以上である、
[1]~[8]のいずれか1つに記載の太陽電池の製造方法。
[10]
前記InGaSe層及び前記InSe層において、In元素とGa元素の合計物質量に対するSe元素の物質量の比の値(Se/(In+Ga))が1.25以上1.75以下である、
[1]~[9]のいずれか1つに記載の太陽電池の製造方法。
[11]
前記CuSe層が前記前駆体の最表層に形成される場合、前記CuSe層において、Cu元素の物質量に対するSe元素の物質量の比の値(Se/Cu)は、2.0以上3.0以下である、
[1]~[10]のいずれか1つに記載の太陽電池の製造方法。
[12]
前記CuSe層が前記前駆体の最表層に形成されない場合、前記CuSe層において、Cu元素の物質量に対するSe元素の物質量の比の値(Se/Cu)は、0.5以上2.0以下である、
[1]~[11]のいずれか1つに記載の太陽電池の製造方法。
[13]
前記結晶化工程において、300℃以上600℃以下の不活性雰囲気下で加熱する、
[1]~[12]のいずれか1つに記載の太陽電池の製造方法。
[14]
前記結晶化工程の後、350℃以上600以下の硫黄雰囲気下で前記光吸収層の表面を処理する表面処理工程をさらに備える、
[1]~[13]のいずれか1つに記載の太陽電池の製造方法。
[15]
[1]~[14]のいずれか1つに記載の方法により製造され、
前記光吸収層において、受光面側から深さ方向200nmまでの区間におけるバンドギャップが1.1eV以上1.4eV以下であり、
受光面側からの深さ方向200nmから深さ方向400nmまでの区間におけるバンドギャップが0.9eV以上1.2eV以下であり、
受光面側からの深さ方向400nm以降の区間におけるバンドギャップが1.2eV以上1.7eV以下である、
太陽電池。
【実施例】
【0076】
以下、実施例及び比較例を用いて本実施形態をより具体的に説明する。本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0077】
<太陽電池の作製方法>
図4に示すような、電子輸送層が1層である太陽電池を作製した。基板として厚さ50μmのチタン箔を用いた。この基板上にスパッタリング法を用いて、金属モリブデンを含む第1電極層を厚さ600nm形成した。その上に本実施形態の光吸収層を後述する条件のとおり形成した。ここで、光吸収層の結晶が形成される際、光吸収層と上記第1電極層との間において正孔輸送層である50nmのMoSe層がともに形成された。さらに、得られた光吸収層を硫黄雰囲気下において、500℃以上600℃以下で、3分以上30分以下でアニールし表面処理を行った。
【0078】
次いで、光吸収層の上に、スパッタリング法により、水素元素と硫黄元素が添加された酸化チタン亜鉛を含むn型電子輸送層を厚さ70nm以上120nm以下で形成し、n型電子輸送層の上に第2の電極層として水素含有酸化インジウムを300nm形成し、その表面に幅50μmの銀のグリッド電極を形成して、最終的に太陽電池を得た。
【0079】
以下の実施例及び比較例において、光吸収層以外の構成については全て上記と同様の構成により太陽電池を作製し、評価を行った。
【0080】
1.InSe層の導入
1.1.光吸収層の形成
(実施例1)
実施例1は、
図1に示すような前駆体の構造を採用したものである。実施例1では、スパッタリング法により、InGaSe層、CuSe層、及びInSe層をそれぞれ形成した。実施例1では、InGaSe層、CuSe層、及びInSe層を順に、900nm、800nm、400nmになるまで形成し、前駆体を作製した。この前駆体を窒素雰囲気において400℃以上600℃以下で加熱することで結晶化させ、さらに前記結晶化工程の後、500℃以上600℃以下の硫黄雰囲気下で上記光吸収層の表面を処理する表面処理を施すことで、光吸収層を得た。
<スパッタリングの成膜時条件>
・印加電力:0.5~3.0W/cm
2
・成膜雰囲気:アルゴン
・成膜時の圧力:0.2Pa以上3.0Pa以下
・基板温度:室温
・ターゲット種:InGaSe層はIn
2Se
3、Ga
2Se
3の混合物であり、Ga
2Se
3の割合が30%以上60%以下の混合物、CuSe層はCuSe
2単体、InSe層はIn
2Se
3単体
【0081】
(比較例1)
比較例1は、非特許文献である(Zhu, X. L., & Wang, L. K. (2014),13.6%-efficient Cu(In,Ga)Se2 solar cell with absorber fabricated by RF sputtering of (In,Ga)2Se3 and CuSe targets, Solar Energy Materials and Solar Cells, 124, 21-25.)に記載の方法と同様にしてスパッタリングを行い、InGaSe層、CuSe層を順に、それぞれ1700nm、400nm形成して前駆体を作製した。この前駆体を窒素雰囲気において400℃以上600℃以下で加熱することで結晶化させ、さらに前記結晶化工程の後、500℃以上600℃以下の硫黄雰囲気下で上記光吸収層の表面を処理する表面処理を施すことで、比較例1の光吸収層を得た。
【0082】
1.2.評価
得られた光吸収層に対して、浜松ホトニクス社製の近赤外蛍光寿命想定装置を用いてフォトルミネッセンス強度(PL強度)及びバンドギャップ[eV]の測定を行った。入射光の波長は532nmを用いた。得られた結果を表1に示す。一般的にPL強度が高いほど結晶品質が高いことが示唆され、実施例1の光吸収層は、結晶品質が飛躍的に向上していることが示唆される。
【表1】
【0083】
2.前駆体の態様
2.1.光吸収層の形成
(実施例2及び実施例3)
実施例2,3は、それぞれ
図2,3に示すような前駆体の構造を採用したものである。実施例2,3では、上述の実施例1と同様のスパッタリング条件を用いて、積層する順番を変更した。
実施例2では、実施例1とCuSe層をInSe層より基板側に形成し、その厚さはInGaSe層、CuSe層、InSe層がそれぞれ900nm、400nm、800nmとなるようにした。実施例3では、InGaSe層及びCuSe層を繰り返し形成した後、InSe層を形成した。厚さは、InGaSe層、CuSe層、InSe層がそれぞれ450nm、200nm、800nmとなり、同じ化合物の層は、同じ厚さで積層した。各例の前駆体を窒素雰囲気において400℃以上600℃以下で加熱することで結晶化させ、さらに前記結晶化工程の後、500℃以上600℃以下の硫黄雰囲気下で上記光吸収層の表面を処理する表面処理を施すことで、光吸収層を得た。
【0084】
2.2.電池特性の評価
(変換効率)
上述のとおり太陽電池を作製し、I-V曲線を標準試験条件下(分光スペクトルAM1.5の光を放射照度1kW/m
2で入射し太陽電池温度が25℃である試験条件)で測定した。各太陽電池の変換効率及び曲線因子を以下の式により算出した。なお、変換効率は、I-V曲線における最適動作点での出力(最大出力:Pmax)を太陽電池が受ける光エネルギーEで除した値であり、曲線因子は、上記最大出力Pmaxを、開放電圧(Voc)と短絡電流(Isc)の積で割った値である。測定により得られた値を表2に示す。
変換効率(%)=(Pmax/E)×100
曲線因子(%)=Pmax/(Voc×Isc)
【表2】
【0085】
3.InGaSe層及びInSe層におけるIII族元素の量
3.1.光吸収層の形成
(III族元素量が異なる光吸収層の形成)
上記実施例1と同様にして光吸収層を形成する場合において、InGaSe層とInSe層に含まれるIn元素とGa元素の含有量について検討するため、表3に示すようなIn元素とGa元素の割合を規定した。表3の各行では、InGaSe層におけるIn元素とGa元素の合計物質量に対するGa元素の比の値を規定した。そして、各列では、InSe層の中のIn元素の物質量Xに対するInGaSe層の中のIn元素とGa元素の合計物質量Y(Y/X)の比を規定した。その結果、光吸収層全体においてのGa/(In+Ga)の値は、表3に示すとおりとなる。
示した条件のうち、(1)~(6)の番号を付与した条件に対応する光吸収層の作製を行った。
【表3】
【0086】
3.2.電池特性の評価
(変換効率の相対比)
上記(1)~(7)の条件を満たす光吸収層を用いて太陽電池を作製し、変換効率の測定を行った。変換効率の測定は上記2.2.と同様の方法により行った。(3)及び(5)の条件より得られる太陽電池の変換効率が最も大きく、これらを基準にして、各条件により測定される変換効率の比を求めた。その結果を表4に示す。
【表4】
【0087】
4.各層におけるSe元素の量
4.1.光吸収層の形成
I族系のCuSe層と、III族系のInGaSe層及びInSe層に含まれるSe元素の量の影響について検討するため、CuSe層内のCu元素に対するSe元素の物質量比(Se/Cu)を、表5及び表6に示すとおり設定した。さらに、InGaSe層・InSe層における、III族元素(In+Ga)の合計量に対するSe元素の物質量比(Se/(In+Ga))を、表5及び表6に示すとおり設定した。それぞれの設定しているS元素の物質量比に対して、実施例1と同様に積層して前駆体を形成した場合(表5)と、実施例2と同様に積層して前駆体を形成した場合(表6)を、それぞれ7つの異なる組成を持つ光吸収層を作製した((7)~(20))。
【0088】
4.2.電池特性の評価
(変換効率)
(7)~(20)の光吸収層を用いて太陽電池を作製し、変換効率の測定を行った結果を表5及び表6に示す。
【表5】
【表6】
【0089】
5.各層の結晶性評価
上述の実施例1の前駆体形成工程における各層の形成方法と同様にして、InGaSe層、CuSe層、及びInSe層を各々Ti金属の基板上に形成し、X線回折測定を行った。測定は、Malvern Panalytical社製のX線回折装置を使用し、Cu-Kα線を用いた2θ-θ測定である。得られた回折測定の結果を
図5に示す。
CuSe層については、27°及び45°付近において、(111)面及び(220)面の成長が確認できた。そして、InGaSe層及びInSe層では、結晶性を示す有意味なピークは確認されなかった。
【0090】
6.InSe層の形成温度
基板の表面温度を変えた以外は、上述の実施例1の前駆体形成工程と同様の形成方法を用いて、Ti金属の基板上にInSe層を形成した。形成する際の基板の表面温度を室温(RT)、200℃、250℃、300℃に設定して4回成膜を行った。
上述したX線回折装置と測定条件を用いて、X線回折測定を行った。得られた回折測定の結果を
図6に示す。
図6に示す結果から、基板の表面温度が高いほど、形成するInSe層の結晶性が高いことがわかった。
さらに、InGaSe層についても、同様の試験を行った結果、InSe層よりもさらに高い表面温度を設定した場合において結晶化が進みやすくなることがわかった。
【符号の説明】
【0091】
10…太陽電池、101…グリッド電極、102…第2電極層、103…電子輸送層、104…光吸収層、105…正孔輸送層、106…第1電極層、107…基板。
【要約】
【課題】太陽電池を高性能とする、高生産性の太陽電池製造方法を提供する。
【解決手段】
InGaSe層と、CuSe層と、InSe層と、を有する前駆体を形成する前駆体形成工程と、上記前駆体を加熱することにより結晶化させた光吸収層を得る結晶化工程と、を備える、太陽電池の製造方法。
【選択図】
図1