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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-10
(45)【発行日】2024-07-19
(54)【発明の名称】培養液自動採取装置
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20240711BHJP
   C12M 1/26 20060101ALI20240711BHJP
   G01N 1/00 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
C12M1/00 C
C12M1/26
G01N1/00 101F
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020055331
(22)【出願日】2020-03-26
(65)【公開番号】P2021153432
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-02-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000141303
【氏名又は名称】株式会社丸菱バイオエンジ
(74)【代理人】
【識別番号】100094802
【弁理士】
【氏名又は名称】佐伯 健兒
(72)【発明者】
【氏名】山縣 敏彦
【審査官】伊達 利奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-097952(JP,A)
【文献】特開2005-227070(JP,A)
【文献】特開2019-134725(JP,A)
【文献】特開2003-344236(JP,A)
【文献】実開昭51-051760(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00
C12M 1/26
G01N 1/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
培養槽の培養液を自動採取する培養液自動採取装置であって、計量器と、エアポンプと、サンプル注入貯蔵器とを備えており、
前記計量器にはサンプル導入部と、エア吸排気部と、サンプル移送部が設けられ、
前記サンプル導入部にはサンプル導入管が形成され、
前記エア吸排気部には、レベルセンサーを有するレベルパイプが形成され、
前記サンプル移送部にはサンプル移送管が形成され、
前記エアポンプはエアチューブによって前記計量器と接続され、
前記エアポンプによるエアの吸引により、前記培養槽から前記計量器内へ培養液サンプルを導入し、
前記エアポンプによるエアの排気により、前記計量器の培養液サンプルを排出し、前記サンプル導入管の前記計量器内の取付け位置に応じて計量管の底部に一定量残留する培養液サンプルを前記サンプル注入貯蔵器に移送し、
前記サンプル注入貯蔵器では前記サンプル移送管で前記計量器に接続され、計量された培養液サンプルをサンプル容器に注入貯蔵する培養液自動採取装置であって、
前記サンプル導入管が前記サンプル導入部に下方に角度をつけて形成されている培養液自動採取装置。
【請求項2】
前記サンプル注入貯蔵器にはサンプル容器と、サンプル注入ノズルと、ノズル昇降具と蓋開閉手段を備え、
前記サンプル注入ノズルは前記ノズル昇降具のアームに取り付けられ、
前記蓋開閉手段は前記アームに取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載の培養液自動採取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物及び動・植物細胞を利用した食品、医薬品等の製造、培養実験及び研究に用いられる培養装置に使用される培養液の自動採取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、培養実験を行う主な目的には培養する菌体の増殖の具合や菌体の生産物の定性及び定量の調査研究を行うことが挙げられる。その場合、各種センサーなどでは得られない情報は培養開始後から経時ごとに培養液を採取し、直後又は冷蔵保存の後に必要な分析を行っている。菌体の増殖の経時変化や生産物の生産動向を詳細に調査するには頻繁な採取が求められるが、現状は夜間や祝休日の作業を避けるため培養開始時間の調整を行い、それでもなお夜間や祝休日の採取を断念せざるを得ない事が多かった。
【0003】
又、従来の手作業による培養液の採取作業は、培養装置本体への雑菌汚染防止や正確な結果を得るため手順の遵守が求められることから採取技術の習得を必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前記のような培養液の手作業による採取の手作業はテクニックを必要とし、採取の分量や採取の時期等に正確さを欠いたり、誤って培養槽内の培養液を汚染し実験を終了せざるを得ない等の不都合な問題点があった。
【0005】
又、夜間や祝休日の作業を避けるため、培養開始時間の調整を行う必要があり、それにより必要な時間の培養液の採取を断念せざるを得ず、その結果正確な培養データが取れないなどの問題があった。
【0006】
そして、培養液の性状の違いや経時変化に関わらず専用計量器で定量的に培養液サンプルを採取することができ、また捨てサンプルなしでしかも培養槽内の汚染もなく、培養液サンプルを蓋付きのサンプル容器へ移送し、冷蔵保存できる培養液自動採取装置の開発が期待されている。
【0007】
本発明は、前記した従来の問題点を解決し、培養液の採取作業をタイマーやシーケンス回路等の電気回路を用いて自動で行うものであり、作業者の労力軽減、不注意による採取の失敗、培養槽内の汚染を防止する培養液の自動採取装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、煩雑な手作業による培養液の採取作業を自動化するための装置として本発明者が新たに製造した培養液の自動採取装置を用いることにより目的が達成できることを見出し、本発明を完成するにいたった。
【0009】
すなわち、本発明の培養液の自動採取装置は
【0010】
培養槽の培養液を自動採取する培養液自動採取装置であって、計量器と、エアポンプと、サンプル注入貯蔵器とを備えており、
前記計量器にはサンプル導入部と、エア吸排気部と、サンプル移送部が設けられ、
前記サンプル導入部にはサンプル導入管が形成され、
【0011】
前記エア吸排気部には、レベルセンサーを有するレベルパイプが形成され、
前記サンプル移送部にはサンプル移送管が形成され、
【0012】
前記エアポンプはエアチューブによって前記計量器と接続され、
前記エアポンプによるエアの吸引により、前記培養槽から前記計量器内へ培養液サンプルを導入し、
前記エアポンプによるエアの排気により、前記計量器の培養液サンプルを排出し、前記サンプル導入管の前記計量器内の取付け位置に応じて計量管の底部に一定量残留する培養液サンプルを前記サンプル注入貯蔵器に移送し、
前記サンプル注入貯蔵器では前記サンプル移送管で前記計量器に接続され、計量された培養液サンプルを前記サンプル容器に注入貯蔵する培養液自動採取装置を提供する。
【0013】
そして、本発明は前記サンプル導入管が前記サンプル導入部に角度をつけて形成されていることを特徴とする請求項1記載の培養液自動採取装置を提供する。
【0014】
又、本発明は前記サンプル導入管が前記サンプル導入部で上下移動可能に形成されていることを特徴とする請求項1記載の培養液自動採取装置を提供する。
【0015】
そして、本発明は前記サンプル注入貯蔵器にはサンプル容器と、サンプル注入ノズルと、ノズル昇降具と蓋開閉手段を備え、前記サンプル注入ノズルは前記ノズル昇降具のアームに取り付けられ、前記蓋開閉手段は前記アームと同一のアームに取付けられてることを特徴とする前記(1)、(2)又は(3)のいずれかに記載の培養液自動採取装置を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の培養液自動採取装置を用いれば、
【0017】
前記した従来の問題点を解決し、培養液の採取作業を自動で行うものであり、夜間や祝休日の採取作業が可能となり、培養開始時間の調整を不要とするものである。
【0018】
又、採取技術習得者の労力軽減、不注意による採取の失敗、破損を防止する培養液の自動採取装置を提供することが可能となった。
【0019】
又、採取技術習得者でなくとも雑菌汚染防止ができ、採取の分量や採取の時期等に正確な結果を得ることができる。
【0020】
又、作業者の労力軽減、不注意による採取の失敗、培養槽内の汚染を防止することができる。
【0021】
又、必要な量を培養液の性状の違いや経時変化に関わらず専用計量器で定量的に採取でき、また捨てサンプルなしでしかも培養槽内の汚染もなく、蓋付きのサンプル容器へ移送、冷蔵保存できる。
【0022】
特に、培養液の性状の違いや経時変化に関わらず専用計量器で定量的に採取でき、そして捨てサンプルなしでしかも培養槽内の汚染もなく、蓋付きの容器への移送、冷蔵保存できる
又、熟練した作業者によらなくても、正確な採取の分量や採取の時期等が可能であり、誤って培養槽内を汚染する等の不都合な問題点が解決できる。
【0023】
又、蓋開閉手段に蓋開閉棒を用いたので、蓋の開閉とノズルの容器への抜き差しがアームの上昇、下降の動作、即ち単一の動力源により、時間差で同期させる機構としたため装置の簡素軽量化を達成できた。
【0024】
特にマグネットを車輪状にし、一方の蓋のフィンガーを湾曲させた形状にしたのでスムーズな蓋開閉動作が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施態様である培養液自動採取装置の全体の構成を示す図である。
図2】本発明の別の一実施態様である培養液自動採取装置の全体の構成を示す図である。
図3】本発明の一実施態様である計量器の構造と動作を説明する図である。
図4】本発明の別の一実施態様である計量器の構造と動作を説明する図である。
図5】本発明の別の一実施態様である計量器のサンプル導入管の動作を説明する図である。
図6】本発明の一実施態様であるサンプル注入貯蔵器の構造と動作を説明する図である。
図7】本発明の一実施例である培養液自動採取装置の全体と各部の参考図である。
図8】本発明の一実施例である培養液自動採取装置の全体と各部の参考図である。
図9】本発明の一実施例である培養液自動採取装置の操作方法を説明する図である。
図10】本発明の一実施例である培養液自動採取装置の操作方法を説明する図である。
図11】本発明の一実施例である培養液自動採取装置の操作方法を説明する図である。
図12】本発明の一実施例である計量器の導入管の取付角度と動作を説明する参考図である。
図13】本発明の一実施態様である計量器と培養液の動作を説明する参考図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
まず、本発明の一実施例である本発明の培養液自動採取装置の全体の構成について図1を参照して説明する。
【0027】
(培養液220)
【0028】
図1において、培養槽200内には培養液220が収容されている。本発明の培養液自動採取装置では高粘度又は高粘性の培養液220や泥状(スラッジ)の培養液220のような様々な性状の培養液220を対象とすることができる。
【0029】
(計量器300)
次に、計量器300は硝子製又は耐熱透明樹脂製の管状の形状をしており、上部は耐熱ゴム製のキャップ302により封止されていて気密となっている。
又、底部はロート状の形状をしており、サンプル移送部330が形成されている。
【0030】
(計量器-サンプル導入)
【0031】
計量器300と培養槽200とは接続チューブ360で接続されており、培養液220は、接続チューブ360を通ってサンプル導入管350に導かれる。計量器のサンプル導入部310にはサンプル導入管350が形成されている。すなわち、サンプル導入管350は、接続チューブ360によって培養槽200に接続されており、培養槽200の培養液サンプル230が計量器300に導入される。
【0032】
計量器300のサンプル導入部310は、計量器300の胴部又は底部に形成されており、サンプル導入部310にはサンプル導入管350が形成されている。
後記する図4で説明するように、サンプル導入管350の計量器300への取付け位置に応じて計量器300の底部に一定量の培養液サンプル230が残留し、これによって一定量の培養液サンプル320が計量されてサンプル容器500に移送することができる。
【0033】
(計量器-エア吸排気)
【0034】
計量器300のエア吸排気部320には、レベルパイプ340が取付られており、レベルパイプ340にはエアチューブ322が接続されている。本発明でのレベルパイプ340とは、液面レベルセンサーを備えた中空管のことである。
本実施態様の一態様では、このエアチューブ322の他端はチュービングポンプ324を経て培養槽200の培養槽エア吸排気部240に接続されている。
後記する別の実施態様では、このエアチューブ322の他端は培養槽200のエア吸排気部320に接続されることなく、エアフィルター326を経て大気に開放されている。
【0035】
計量器300のエア吸排気部320に接続するエアチューブ322は他端をチュービングポンプ324に接続されている。本発明で用いられるエアポンプは、実施態様ではチュービングポンプ324を用いているが、計量器300からのエアの吸入排出ができるものであれば他のエアポンプを適宜使用することができる。
【0036】
(計量器-サンプル移送)
【0037】
計量器300のサンプル移送部330には計量器300で計量された培養液サンプル230をサンプル注入貯蔵器400に移送する移送チューブ334が接続されている。
【0038】
(計量器-培養液サンプルの動作)
【0039】
以下に図13を参照して、本発明の実施態様である計量器を用いて定量の培養液サンプルを自動採取する仕組みについて説明する。
【0040】
まず、培養槽のサンプリングパイプ内の培養液をポンプのエアにより培養槽内に吹き戻す。(図13(A))
【0041】
次に、ポンプによりサンプル液を計量器に吸引、導入し、レベルセンサーに説するまで吸い上げる。(図13(B))
【0042】
次に、計量器内の余剰サンプル液をポンプのエアにより培養槽内へ吹き戻す。(図13(C))
【0043】
そして、計量器に残ったサンプル液をピンチバルブを開きポンプのエアによりサンプル容器に押し出す。(図13(D)) これにより計量された定量の培養液サンプルが採取できる。
【0044】
(サンプル注入貯蔵器400)
【0045】
計量された培養液サンプルは、サンプル注入貯蔵器400に移送チューブ334によって移送され、好ましくは冷蔵保存される。サンプル注入貯蔵器400の詳細については後記で説明する。
【0046】
(培養液自動採取装置の別の実施態様)
【0047】
図2は本発明の培養液自動採取装置の別の実施態様である。
この実施態様ではエアチューブ322の一端が培養槽200のエア吸排気部320に接続されることなく、エアフィルター326を経て大気に開放されている。
【0048】
(計量器の計量動作)
【0049】
次に、図3によって本発明の培養液自動採取装置の計量器300の計量の構造及び動作について更に説明する。
【0050】
図3(A)において、計量器300は硝子製又は耐熱透明樹脂製の円筒管で製作されている。計量器300の上側は耐熱性のゴム製のキャップ302で封止されている。
【0051】
図3(C)において、計量器300のサンプル導入部310にはサンプル導入管350が下方に角度をつけて設けられている。このため、高粘度又は高粘性の培養液220や泥状(スラッジ)の培養液220でも採取が可能である。
【0052】
すなわち、 図3(C)において、 計量器300内の 高粘度又は高粘性又は泥状(スラッジ)のサンプル余剰液を培養槽に戻すためサンプル導入管350を通して逆流させるが、サンプル導入管350が下向きに角度がある方が流れ易く(戻し易く)、サンプル導入管350が水平の場合にはサンプル導入管350の根元の部分に固形物が堆積し閉塞することを本発明者は実験により見出した。
【0053】
これは、水平の導入管の場合はポンプから送られる空気の圧力のみで戻すのに対し、斜め下向きの導入管の場合には空気圧力に加えて重力も作用するためであると考えられる(図12の右上参照)。
【0054】
又、更に導入管の付け根の断面積が斜め下向きの導入管の方が大きいことも流れ易さに起因していると考えられる(図12の右下参照)。
【0055】
又、図3(B)において、計量器300のエア吸排気部320にはレベルパイプ340が設けられている。このレベルパイプ340はレベルセンサーを兼ねており、余剰の培養液サンプル230を検知して培養槽200に戻すタイミングを制御することができる。
【0056】
(定量計量方法)
【0057】
本実施態様における計量器300による培養液サンプル230の一定量を計量する方法は次のとおりである。
【0058】
すなわち、図3(A)では、図示しない電子制御回路によりチュービングポンプ324の吸引をオンとすることにより、培養槽200から培養液220が計量器300に吸引される。
【0059】
そして、図3の(B)では、培養液サンプル230の液面がレベルパイプ340に到達したときにレベルセンサーが感知して、検知信号を電子制御回路に送り、チュービングポンプ324の吸引を停止する。
【0060】
そして、図3の(C)では、チュービングポンプ324によりエアが計量器300に送られ、培養液サンプル230の液面が低下していき余剰の培養液サンプル230が培養槽200に戻される。
【0061】
そして、図3の(D)では、計量器300の底部に一定量の培養液サンプル230が残存する。この一定量の培養液サンプル230はピンチバルブ332を開放してサンプル注入貯蔵器400へ移送される。ピンチバルブ332の開閉は図示しない電子制御回路からの指令信号によりタイミング良くバルブの開閉を自動で行う。
【0062】
(計量器の別の実施態様)
【0063】
次に、図4及び図5により、本発明の培養液自動採取装置の別の態様の計量器300の実施態様を説明する。
【0064】
本実施態様では計量器300の上下を耐熱ゴム製のキャップ302で封止している。サンプル導入管350は下側キャップ303に取付けられている。サンプル導入管350は上下の移動を可能に設置されている。
【0065】
図4の(A)では、培養槽200からの培養液サンプル230がチュービングポンプ324の吸引をオンとすることにより計量器300に吸引される。
【0066】
そして、図4の(B)では、培養液サンプル230の液面がレベルパイプ340に到達したときにレベルセンサーが検知して、チュービングポンプ324の吸引を停止する。
【0067】
そして、図4の(C)では、チュービングポンプ324からのエアが計量器300に送られ、培養液サンプル230の液面が低下していき余剰の培養液サンプル230が培養槽200に戻される。
【0068】
そして、図4の(D)では、計量器300の底部に一定量の培養液サンプル230が残存する。この一定量の培養液サンプル230はピンチバルブ332が開放されてサンプル注入貯蔵器400へ移送される。
【0069】
次に、図5を参照して計量器300内へのサンプル導入管350の挿入長さにより、培養液サンプル230の採取量の調節ができることを説明する。
すなわち、図5(A)のように、サンプル導入管350を計量器300に対して下方に引けばサンプル量は小となり、図5(B)のように、サンプル導入管350を計量器300に対して上方に押込めばサンプル量は増える。このようにサンプル導入管350の計量器300への取付位置を調整して、例えば挿入長さを調整してサンプル量を増減することができる。
【0070】
すなわち、前記サンプル導入管350の前記計量器300内の取付け位置によって、計量器300の底部に残留する培養液サンプル320の量は一定量に規定される。そして計量器300に残留する培養液サンプル320が定量された培養液サンプル320としてサンプル注入貯蔵器400に移送される。
【0071】
(サンプル注入貯蔵器400)
【0072】
次に、図6を参照してサンプル注入貯蔵器400を説明する。
培養液は計量器300で計量後、移送チューブ334を経てテーブル430にあらかじめセットされているサンプル容器500に注入される。
サンプル注入貯蔵器400には、サンプル容器500とこれを載置するテーブル430と冷却ブロック420と、モーター412aにより駆動され上下方向にサンプル注入ノズル434を昇降させるアーム411から構成されるノズル昇降具410と、サンプル容器500の蓋510の開閉を行う蓋開閉棒470を備えている。
【0073】
蓋開閉棒470は上端部に脱落防止の鍔414を備え下部にはマグネットホイール415を懸架している。
【0074】
一方、アーム411には貫通孔が形成されており蓋開閉棒470がアーム411の貫通孔で上下に摺動可能に取付けられている。
【0075】
そして、蓋開閉棒470はサンプル容器500の蓋510がヒンジピン512を支点にフィンガー520が押し下げられると蓋510が開くようにフィンガー520が取り付けられている(図6(B)及び図6(C))。
【0076】
すなわち、マグネットホイール415が下降してフィンガー520に磁着しながらフィンガー520を押し下げて蓋が押し上がる機構としている。
マグネットホイール415は回転する車輪状の磁石である。又、蓋510のフィンガー520は鉄製で湾曲させた形状のものを採用した。これによりスムーズな蓋開閉動作が得られた。
【0077】
図6(A)において、サンプル容器500はテーブル430に形成された円周に沿って配置された孔に挿入され支持されている。サンプル容器500の数は適宜増減することができる。
サンプル容器500には培養液サンプル230の蒸発防止の鉄製の蓋510がついており、蓋510を閉めた状態で冷却ブロック420内に支持されている。
【0078】
図6(B)において、サンプル注入ノズル434がアーム411と共に降下し、同時にアーム411から懸垂したマグネットホイール415も降下し、サンプル注入ノズル434が蓋510よりも先にマグネットホイール415がサンプル容器500の蓋510のフィンガー520に接触する。
【0079】
図6(C)において、蓋510のフィンガー520の形状は湾曲させた形状にしている。マグネットホイール415がフィンガー520を磁力により吸着しながら下に押し下げ蓋を開く。マグネットホイール415がフィンガー520を下押しして、蓋が開いた後にサンプル注入ノズル434がサンプル容器500内に挿入される。
【0080】
サンプル注入ノズル434も蓋開閉棒470もいずれもアーム411に取り付けられているため、マグネットホイール415が下降しながら蓋を開ける動作と、サンプル注入ノズル434がアーム411と共に降下しサンプル容器500に挿入される動作は同期されており蓋510がサンプル注入ノズル434に干渉することはない。
【0081】
図6(D)において、培養液サンプル注入後、アーム411が上昇し、この場合は先にサンプル注入ノズル434が上昇を始める。次にアーム411が蓋開閉棒4 7 0上端の鍔414に接触したときにマグネットホイール415の上昇が開始されフィンガー520を磁着させヒンジピン512を支点に蓋を閉める。このためサンプル注入ノズル434が蓋に干渉することはない。
【0082】
すなわち、マグネットホイール415の上昇はアーム411が鍔414に接触した後に開始されるためサンプル注入ノズル434の上昇より遅れて上昇を開始する。そして、マグネットホイール415の上昇と共に磁力により吸着したフィンガー520を持ち上げ蓋510が閉じる。サンプル注入ノズル434の上昇後に蓋510が閉まるのでサンプル注入ノズル434が蓋510と干渉することはない。蓋510が完全に閉まった後もアーム411は上昇を続けるが蓋開閉機構を含むサンプル容器500の重量に磁力か負け、マグネットホイール415はフィンガー520を外れ定位置で停止する。
【0083】
マグネットホイール415による蓋510の開閉とサンプル注入ノズル434の容器への抜き差しがアーム411の上昇、下降の動作、即ち単一の動力源により時間差で同期させることにより達成できる。
【0084】
又、本実施態様の蓋開閉棒470では、磁石を車輪状にしたマグネットホイール415を採用し、蓋510のフィンガー520を湾曲させた形状にしたことによりスムーズな蓋開閉動作が達成できた。
【0085】
又、本実施態様ではサンプル容器500は1個しか図示されていないが、当然にサンプル容器500はサンプリングの必要数をあらかじめ又は適宜必要に応じてテーブル430に追加して載置することができる。
【0086】
又、テーブル430へのサンプル容器500の載置形態には特に制限がなく、
【0087】
ノズル昇降具410を搭載したア一ムべ一ス416をモーター412bで回転させることにより 培養液サンプル230を順次サンプル容器に充填することもできる。
【0088】
この反対に、テーブル430を回転テーブルとし、培養液サンプル230を順次サンプル容器500に注入することもできる。 。
【0089】
(自動採取)
【0090】
本実施態様においては、前記のチュービングポンプ324によるエアの吸排気、レベルセンサーによる液面の検知信号のオンオフ、ピンチバルブ332の開閉、モーター412a、412bのオンオフ、アームベース416の回転のタイミング等の動作及びタイミングは、図示しない電気回路を利用し、所定時刻を設定したタイマーとコンピュータ制御により人手をかけずに自動的に行うことができる。
【0091】
すなわち、プログラムタイマーのスイッチが投入されると、定まった時刻にタイマーからサンプリング信号が発せられる。その信号によってシーケンス回路が動作し、まずチュービングポンプ324が計量器300内にエアを送り込む動作を行うと、培養槽内のサンプル管と接続チューブ360内に残存する培養液は槽内にエアにより押し戻される。
【0092】
次に、チュ一ビングポンプ3 2 4が勤作し計量器300内のエアを吸引する動作を行う。そうすると、培養液サンプル320は接続チューブ360を通って計量器300に流入する。
【0093】
次に、培養液サンプル230が計量器300内に充填され液面がレベルパイプ340のレベルセンサー342に接触した際に検知信号が回路に送られ、チュービングポンプ324の吸引は停止される。
【0094】
そして、所定時間経過後、チュービングポンプ324を動作させ、エアを計量器300に導入し計量器300内の余剰の培養液サンプル230が計量器300からサンプル導入管350を経て培養槽200に戻される。
【0095】
その後、サンプル注入貯蔵器のモーター412aにスタート信号が送られ、サンプル注入ノズル434がサンプル容器500に進入するタイミングでチュービングポンプ324を動作させ、エアを計量器300に導入すると共にピンチバルブ332に電気信号が送られ、ピンチバルブ332が開かれ計量器300の底部に残留した培養液サンプル320がサンプル移送管を経てサンプル注入貯蔵器に移送される。
【0096】
(試作品の実施例)
【0097】
以下、本発明の培養液自動採取装置を製作したので、以下具体的に図7図11を最小して製造装置の詳細を説明する。なお、以下の説明では前記の実施例の図面の符号は用いずに、実際の装置の製造及び販売で使用される用語を用いて説明しているが、本発明の理解を妨げるものではない。
【0098】
本装置の部品構成及び機能は以下のとおりである。なお、図7の写真中の部品を指す丸囲み数字は本明細書の説明では括弧()の囲み数字に対応させて以下説明する。
【0099】
(1)サンプル計量器:サンプル採取量を計る。
(2)チュービングポンプ: サンプル液の吸引、吐出を行う。
(3)ピンチバルブ
(4)サンプルノズル:サンプル保存容器に挿入し周囲への飛散を防止しながらサンプル液をサンプル保存容器に送ります。
(5)サンプル保存容器:本実施例では最大8本のサンプル採取が可能。
(6)TFT3.8 インタッチスクリーン: サンプル採取回数、 時間を設定する。
(7)電子冷蔵庫:ぺリチェ方式 120W
(8)冷蔵温度表示器:サンプル液の冷蔵温度の設定と表示を行う。
【0100】
(サンプル計量ユニット)
【0101】
図8において、サンプル計量ユニットは耐熱強化硝子製の計量器、 サンプル液検知管、 空気フイルター、サンプルノズルとそれらをつなぐシリコンチューブから構成されている。
【0102】
サンプル計量器には、横斜め下方向又は底部に差し込まれているステンレス製L字形のサンプル液誘導管(図の(1)、 底部についている又は下部中心に差し込まれているステンレス製のサンプル液排出管(図の(2)、 上部のステンレス製の加減圧管(図中(3)の3つの分岐管がついている。
【0103】
サンプル液は培養装置のサンプリングパイプと接続したサンプル誘導管から計量器に加減圧管に接続したチュービングポンプにより加減圧管又は加減圧管に付属している液検知管に接触するまで導入される。 加減圧管又は加減圧管に付属している液検知管は液検知センサーの機能を持ち、 サンプル液が触れるとポンプは停止し、 その後、逆転を始め計量器のサンプル誘導管の先端又は付け根から上のサンプル液(余剰液)を培養槽内に戻す。余剰液の戻しが完了後、ピンチバルブが開きサンプル排出管からサンプル誘導管先端又は付け根から下に溜まった一定量のサンプル液がサンプル保存容器に送られる。
【0104】
(サンプル保存容器)
本装置では、最大8サンプルの保存が可能である。 またオートクレーブによる滅菌ができ、 容器上部の蓋はサンプル液の蒸発や落下菌の侵入を防止する。
【0105】
蓋はサンプル液の容器への送液の前後に自動的に開閉される。最初は蓋を閉じたままの状態にし、 容器はヒンジリング下の位置合わせピンが冷却ブロックの穴に合うよう正しい位置にセットする(ピンが穴の位置に合つていないと蓋の開閉が正常に行われない)。 なお、サンプル容器のセット方法は後記する。
【0106】
(自動サンプリングの準備)
【0107】
(あ) 培養装置サンプリングパイプと計量器のサンプル誘導管をシリコンチューブでつなぐ。
【0108】
(い) 前記(あ)のシリコンチューブの培養装置サンプリングパイプに近いところをピンチコックで止める。
【0109】
(う) 液検知管又は加減圧管先のシリコンチューブに空気フイルターを接続するか又は培養槽上蓋の丿ズルに直接接続する。
【0110】
(え) サンプル排出管の先端をアルミホイルでカバーする。
【0111】
(お) サンプリングユニットを培養槽と一緒にオートクレーブ滅菌をする。
【0112】
(か) 滅菌終了後、サンプル計量管を計量器ホルダーに取り付ける。
【0113】
(き) 液検知管使用の場合は液検知管ホルダーにセットする。
【0114】
(く) 液検知管又は加減圧管接続のシリコンチューブをチュービングポンプにセッ トする。
【0115】
(け) 計量管のサンプル液排出管接続のシリコンチューブをピンチバルブにセット後閉じる。
【0116】
(こ) アルミホイルを外したサンプルノズルをアームに取付ける。
【0117】
(さ) 上記(い)のピンチコックを開放する。
【0118】
(し) 滅菌後のサンプル保存容器を冷却ブロックの正しい位置にセットする。
【0119】
(す) コンソール背面にある電源を入れる。
【0120】
(せ)冷却を開始する。 所定の冷却温度(5℃):に到達するのに2~3時間(室温によって変わる)を要するので事前の電源投入をするする。
【0121】
(自動サンプリングの開始)
【0122】
予めサンプル数、サンプル時問及びエンジニアリングパラメータの設定を次頁のサンプリング動作表に従って行い、開始スイツチを押す。図9図11を参照。
【0123】
( 後片づけ)
【0124】
サンプル採取終了後はピンチバルブを手動で開き、 シリコンチューブを外し、 サンプリングユニットをコンソールボックスから取り外す。 必要に応じ培養槽と共にオートクレーブ滅菌後、洗浄し乾燥させ保管する。
【符号の説明】
【0125】
200 培養槽
220 培養液
230 培養液サンプル
300 計量器
302 キャップ
303 下側キャップ
310 サンプル導入部
320 エア吸排気部
322 エアチューブ
324 チュービングポンプ
326 エアフィルター
330 サンプル移送部
332 ピンチバルブ
334 移送チューブ
340 レベルパイプ
350 サンプル導入管
360 接続チューブ
400 サンプル注入貯蔵器
410 ノズル昇降具
411 アーム
412a、412b モーター
414 マグネットホイール
416 アームベース
420 冷却ブロック
430 テーブル
434 サンプル注入ノズル
470 蓋開閉棒
500 サンプル容器
510 蓋
512 支点
520 フィンガー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13