(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-10
(45)【発行日】2024-07-19
(54)【発明の名称】発光ダイオード照明装置
(51)【国際特許分類】
H05B 45/12 20200101AFI20240711BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20240711BHJP
F21V 23/00 20150101ALI20240711BHJP
H05B 47/155 20200101ALI20240711BHJP
F21Y 113/13 20160101ALN20240711BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20240711BHJP
【FI】
H05B45/12
F21S2/00 311
F21S2/00 390
F21V23/00 113
F21V23/00 140
H05B47/155
F21Y113:13
F21Y115:10
(21)【出願番号】P 2020126010
(22)【出願日】2020-07-25
【審査請求日】2023-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】593160529
【氏名又は名称】応用電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136928
【氏名又は名称】高宮 章
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 良蔵
【審査官】塩治 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-152081(JP,A)
【文献】特開2008-090423(JP,A)
【文献】特開2019-204707(JP,A)
【文献】特開2015-162807(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21K 9/00- 9/90
F21S 2/00-45/70
F21V 23/00-99/00
H05B 39/00-39/10
H05B 45/00-45/59
H05B 47/00-47/29
F21Y 113/13
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピーク波長が異なる複数の発光ダイオードを有する照明部と、 該照明部からの照射光を受光する受光部と、 該受光部で受けた照明光の照明スペクトルを取得する分光部と、 該分光
部で取得した照明スペクトルと、予め設定される所望の設定スペクトルと、を比較する比較部と、 比較部の比較結果に基づいて、照明部からの照射光が設定スペクトルに一致又は近似するように複数の発光ダイオードのそれぞれの発光強度を制御する制御手段と、を備え
、 比較部は、照射スペクトルと設定スペクトルとの複数の波長値における光強度の比較差分をそれぞれ計算し、 制御手段は、比較部によって計算した光強度の比較差分の二乗の和がより小さく又は最小となるように、複数の発光ダイオードの発光強度を制御し、 さらに、制御手段による発光ダイオードの発光強度の調整制御と、比較部での比較差分の二乗の和の演算を含むフィードバック制御を所定の回数繰り返して行い、 制御手段は、所定の回数のフィードバック制御のうち、該比較部での光強度の比較差分の二乗の和が最小となる複数の発光ダイオードの発光強度の組み合わせを選択することにより、最終的な複数の発光ダイオードの発光強度を決定することを特徴とする発光ダイオード照明装置。
【請求項2】
照明部は、複数の発光ダイオードからの光を所定の照射対象位置に導く光学系を有し、 該光学系からの照射光の照射位置に受光部が設定されたことを特徴とする請求項1記載の発光ダイオード照明装置。
【請求項3】
比較部は、複数の発光ダイオードのそれぞれのピーク波長に対応した波長値で、照明スペクトルと設定スペクトルとの光強度の比較差分を計算することを特徴とする請求項
1又は2記載の発光ダイオード照明装置。
【請求項4】
制御手段は、ピーク波長が異なる複数の発光ダイオードの発光強度をそれぞれ独立して制御可能なことを特徴とする請求項1ないし
3のいずれかに記載の発光ダイオード照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、固体撮像素子等の光学デバイスのテストや、顕微鏡、その他種々の照明光源として利用可能な発光ダイオード照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
CCDやCMOS等の半導体の集積回路で設けられる固体撮像素子(イメージセンサ)は、光を電気信号に変換する特性を利用して、デジタルスチルカメラやビデオカメラ、携帯電話、自動車の先進運転支援システム等の各種センサ、その他種々の産業機器等に広く活用されている。固体撮像素子は、ウエハ完成後や製品出荷前にその光電特性が正常か否かの検査が必要であるが、固体撮像素子の検査を行うための照明光を照射する照明装置が種々開発されており、本出願人も先の出願で光源装置として提案している(特許文献1参照)。従来の照明装置は、光源と、光源からの光を照度分布の均一な光として生成する多数のレンズやフィルタを有した照明光学系と該照明光学系を通過した照明光を検査対象の固体撮像素子に対して投影する投影光学系とを含む光学系と、を有しており、検査対象の固体撮像素子の受光面に均一な照明光を照射するようになっている。従来の固体撮像素子は、太陽光下や室内の蛍光灯下での環境で使用されるものが広く利用されていたことから、該固体撮像素子の検査用の照射装置でも、該太陽光等に対応したテスト用の光を固体撮像素子に照射しないと正確な特性検査が行えないため、太陽光等に近似した照度や色等の諸条件の照射光を均一的に照射する性能が要求される。従来では、固体撮像素子の照明装置の光源としては、可視光範囲で太陽光と近似した分光スペクトルが比較的簡単に得られるハロゲンランプが多く使用されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近時では、環境負荷が高く寿命が比較的短いハロゲンランプや白熱電球は、社会的な要請からも需要及び製造販売もともに減少する傾向にある一方で、二酸化炭素の排出が少なく寿命が長い発光ダイオードの利用が、一般家庭や製造業に限らず各種産業、例えば、医療、農業、セキュリティ分野等の様々な分野で急増している。これに伴い、種々の産業分野で、それぞれに特徴を有する波長範囲・色等の発光ダイオードや様々な光源が利用されているが、それらの多様化した発光ダイオード等の光条件に対応して受光・検知可能なイメージセンサ等もまた多様化して開発、実用されている。したがって、これらの多様化したイメージセンサを製造段階又は出荷前にテストする際には、それぞれのイメージセンサに対応した発光ダイオード等の光源の光と同一又は近似した照度や色等の条件にほぼ一致するように正確に設定されたテスト光を照射する照明装置を用意する必要がある。そのためイメージセンサの種類に対応した正確なテスト光を照射するために、そのセンサの種類の数と同じ数の照明装置を用意する必要があったが、煩雑で多大なコストもかかる問題があった。また、したがって、多様化するイメージセンサの種類に対応して照射するテスト光を所望の分光スペクトルに適宜変更しながら照明することができる照明装置の開発が強く望まれている。
【0005】
本発明は上記従来の課題に鑑みてなされたものであり、その一つの目的は、例えば、多種多様なイメージセンサ等の照射対象に対応した条件の照明光を照射することができるように、発光ダイオードを光源としながら分光スペクトルを適宜変更調整可能な発光ダイオード照明装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明は、ピーク波長が異なる複数の発光ダイオード12を有する照明部14と、該照明部14からの照射光を受光する受光部16と、該受光部16で受けた照明光の照明スペクトルSを取得する分光部18と、該分光部18で取得した照明スペクトルSと、予め設定される所望の設定スペクトルTと、を比較する比較部20と、比較部20の比較結果に基づいて、照明部14からの照射光が設定スペクトルTに一致又は近似するように複数の発光ダイオード12のそれぞれの発光強度を制御する制御手段22と、を備え、比較部20は、照射スペクトルSと設定スペクトルTとの複数の波長値における光強度IS
i
、IT
i
の比較差分D
i
をそれぞれ計算し、制御手段は、比較部20によって計算した光強度の比較差分の二乗の和Zが最小となるように、複数の発光ダイオード12の発光強度を制御し、さらに、制御手段22による発光ダイオード12の発光強度IDの調整制御と、比較部20での比較差分の二乗の和Zの演算を含むフィードバック制御を所定の回数繰り返して行い、制御手段22は、所定の回数(M)のフィードバック制御のうち、該比較部20での光強度の比較差分の二乗の和Zがより小さく又は最小となる複数の発光ダイオード12の発光強度IDの組み合わせを選択することにより、最終的な複数の発光ダイオードの発光強度IDを決定する発光ダイオード照明装置10から構成される。
【0007】
また、照明部14は、複数の発光ダイオード12からの光を所定の照射対象位置に導く光学系26を有し、該光学系26からの照射光の照射位置Pに受光部16が設定されたこととしてもよい。
【0008】
また、比較部20は、複数の発光ダイオード12のそれぞれのピーク波長に対応した波長値で、照明スペクトルSと設定スペクトルTとの光強度ISi、ITiの比較差分Diを計算することとしてもよい。
【0009】
また、制御手段は、ピーク波長が異なる複数の発光ダイオード12の発光強度をそれぞれ独立して制御可能なこととしてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の発光ダイオード照明装置によれば、ピーク波長が異なる複数の発光ダイオードを有する照明部と、該照明部からの照射光を受光する受光部と、該受光部で受けた照明光の照明スペクトルを取得する分光部と、該分光部で取得した照明スペクトルと、予め設定される所望の設定スペクトルと、を比較する比較部と、比較部の比較結果に基づいて、照明部からの照射光が設定スペクトルに一致又は近似するように複数の発光ダイオードのそれぞれの発光強度を制御する制御手段と、を備えたことから、発光ダイオードを光源としながら照射光のスペクトルを適宜変更調整しながら、多種多様な照射対象に対応した条件のスペクトル分布に極めて近似した照明光を照射することができ、確実性及び実用性が高い照明装置を実現できる。
【0011】
また、照明部は、複数の発光ダイオードからの光を所定の照射対象位置に導く光学系を有し、該光学系からの照射光の照射位置に受光部が設定された構成とすることにより、照明対象位置に向けて所望のスペクトルに極めて近似した照明光を照射することができる。
【0012】
また、比較部は、照射スペクトルと設定スペクトルとの複数の波長値における光強度の比較差分をそれぞれ計算し、制御手段は、比較部によって計算した光強度の比較差分の二乗の和がより小さく又は最小になるように、複数の発光ダイオードの発光強度を制御する構成とすることにより、所望のスペクトルに極めて近似した照明光を照射することができる。
【0013】
また、比較部は、複数の発光ダイオードのそれぞれのピーク波長に対応した波長値で、照明スペクトルと設定スペクトルとの光強度の比較差分を計算する構成とすることにより、照明光の調整の正確性を損なうことなく、所望の設定スペクトルに極めて近似した照明光へ調整制御する時間を比較的短時間化して、実用性を向上しうる。
【0014】
また、制御手段による発光ダイオードの発光強度の調整制御と、比較部での比較差分の二乗の和の演算を含むフィードバック制御を所定の回数繰り返して行い、制御手段は、所定の回数のフィードバック制御のうち、該比較部での光強度の比較差分の二乗の和が最小となる複数の発光ダイオードの発光強度の組み合わせを選択することにより、最終的な複数の発光ダイオードの発光強度を決定する構成とすることにより、所望のスペクトルに極めて近似した又はほぼ一致する照明光をより確実に照射することができる。
【0015】
また、制御手段は、ピーク波長が異なる複数の発光ダイオードの発光強度をそれぞれ独立して制御可能な構成とすることにより、複数の発光ダイオードの制御を簡単に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る発光ダイオード照明装置の概略説明図である。
【
図2】
図1の発光ダイオード照明装置のピーク波長が異なる発光ダイオードのそれぞれのスペクトル分布を説明したグラフである。
【
図3】
図1の発光ダイオード照明装置の分光部で取得する照明スペクトルと所望の設定スペクトルを比較したグラフである。
【
図4】
図1の発光ダイオード照明装置の作用を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下添付図面を参照しつつ本発明の発光ダイオード照明装置の実施形態について説明する。本発明に係る発光ダイオード照明装置は、例えば、固体撮像素子であるイメージセンサ等の光学デバイスをテストための照明光や、顕微鏡の照明光、その他種々の照明に利用することができ、利用状況に応じて所望のスペクトル分布の照明光に調整して照射することができる発光ダイオード照明装置である。
図1ないし
図3は、本発明の発光ダイオード照明装置の一実施形態を示している。
図1に示すように、本実施形態に係る発光ダイオード照明装置10は、複数の発光ダイオード12を有する照明部14と、照明部14からの照明光の受光部16と、受光部16で受けた光を分光する分光部18と、分光部18からの分光した照射スペクトルと所望の設定スペクトルを比較する比較部20と、比較部20での比較結果に基づいて発光ダイオード12を制御する制御手段22と、を備える。本実施形態では、発光ダイオード照明装置10は、例えば、CCDやCMOS等の固体撮像素子であるイメージセンサの光学テストに利用される光学テスト用照明装置の態様で説明する。
【0018】
照明部14は、ピーク波長の異なる複数の発光ダイオード12を光源24として有しており、照射対象へ照明光を照射する照明手段である。本実施形態では、照明部14は、複数の発光ダイオード12を組み合わせて構成された光源24と、光源24からの光を所定の照射対象位置に照射する光学系26と、を有する。
【0019】
複数の発光ダイオード12は、例えば、ピーク波長が異なる複数の種類(色)の発光ダイオードで構成され、光源24は、それらのピーク波長が複数の発光ダイオード12からの光を合成光として照射しうる。複数の発光ダイオード12は、後述の制御手段22から信号を受けてそれぞれ発光強度IDが変更されるようになっており、複数の発光ダイオード12の発光強度を調整することにより、主として可視光波長範囲で合成光のスペクトル分布を変更させうる。なお、本実施形態では、発光ダイオードの発光強度とは、ピーク波長での光の強度とする。本実施形態では、発光ダイオード12(12-1、12-2、12-3、・・・、12-10)のピーク波長λは、具体的には、10種類(10色)で設定されており、例えば、λ
1=429nm、λ
2=446nm、λ
3=465nm、λ
4=475nm、λ
5=505nm、λ
6=525nm、λ
7=550nm、λ
8=595nm、λ
9=638nm、λ
10=660nmで設定され、それぞれ
図2に示すようなスペクトル分布(S1、S2、S3、・・・、S10)で発光する。なお、発光ダイオード12は、1つのピーク波長の発光ダイオードの個数は任意でよい。例えば、それぞれのピーク波長の発光ダイオードを1個ずつ並設することとしてもよいし、同一のピーク波長の発光ダイオードを複数個と設置することとしてもよい。例えば、ピーク波長が429nmの発光ダイオードを2個、ピーク波長が446nmの発光ダイオードを2個、ピーク波長の465nmの発光ダイオードを3個、ピーク波長が475nmの発光ダイオードを5個、・・・というように、所定の個数で組み合わせることしてもよい。また、各ピーク波長の発光ダイオードの個数を同一としてもよい。例えば、光源24の複数の発光ダイオード12は、一方を開口し内部が楕円鏡からなる筐体内に所定の配列されており、一方向(
図1上、横方向)に光軸Xを向けて発光ダイオード12からの光を照射する。
図1上では、複数の発光ダイオード12(12-1~12-10)は、個数や配列を特定するものではなく、説明のために示したものである。なお、発光ダイオードのピーク波長の数値や種類の数の組み合わせは任意でよい。また、複数の発光ダイオードは、可視光範囲を実現できるような複数のピーク波長の発光ダイオードの組み合わせで構成するとよいが、色度座標の色を実現できるとともに制御が簡単なようにピーク波長の種類は7~20個程度に設定にすると好適である。
【0020】
本実施形態では、光学系26は、例えば、光源24から照射された光を照射対象位置に向けて、適度な照度でかつ照度分布が均一な光として照射する。光学系26は、種々のレンズ、フィルタ等の光学素子が組み合わされて構成されており、接続光学系部28と、照明光学系部30と、投影光学系部32と、を有する。接続光学系部28は、複数のレンズで構成されたリレーレンズであり、光源24からの光を照明光学系30に導入する。照明光学系30は、例えば、外部からの光を遮るような筐体内に光源24からの光を照度が均一な光とするためのフライアイ、ホモジナイザ、減光フィルタ等の光学素子が組み合わせられて構成され、検査対象のイメージセンサに必要な光学条件を満たすある広がりを持った平行光として生成する。また、照明光学系部30は、光源24からの光軸Xを下方向に折り曲げるミラーを有しており、光学素子で生成した平行光を下方向に照射する。投影光学系部32は、鏡筒内に複数の投影レンズ系が収容されており、照明光学系部30で生成した照度が均一な平行光を照射光として照射対象位置に向けて照射する。光学系26から照射された照射光の照射対象位置に、検査対象のイメージセンサが設置されて、該イメージセンサの光電特性検査等の光学テストを行えるようになっている。
【0021】
照明部14の光学系26からの照射光の照射対象位置P、すなわちテスト対象のイメージセンサが設置される位置またはその近傍位置に、該照明部14から射出された照射光を受光する受光部16が設置される。受光部16には分光部18が接続されており、受光した光は分光される。分光部18は、受光部16で受けた照明光の波長順に光強度の分布を配列した照明スペクトルを取得する。分光部18は、例えば、取得した照射スペクトルを横軸に波長λ、縦軸に光の強度分布Iを配列(図3参照)した電子データを取得する。
【0022】
比較部20は、該分光部18で取得した照明スペクトルSと、予め設定される所望の設定スペクトルTと、を比較する比較手段である。本実施形態では、所望の設定スペクトルTは、例えば、テスト対象のイメージセンサのテスト光源として要求される分光スペクトルであり、波長ごとの光の強度分布を配列した電子データとして記憶されている。図3に示すように、設定スペクトルTは、横軸に波長λ、縦軸に光の強度分布Iを配列される態様でデータベースに保存されている。比較部20に入力された照明スペクトルS及び設定スペクトルTの分布を図示しないモニタ等の出力画面で確認できるようにしてもよい。比較部20は、例えば、コンピュータプログラムに沿って制御される電子計算機PCで実現され、電子データの形式で入力された照明スペクトルSと設定スペクトルTを比較演算する。具体的には、比較部20には、10種類の発光ダイオード12のそれぞれのピーク波長に対応した波長値λ1、λ2、・・・、λ10における照明スペクトルSの光強度IS1、IS2、・・・、IS10と、設定スペクトルTの光強度IT1、IT2、・・・、IT10とが入力され、それらの各波長値での光強度の比較差分Di=ISi-ITi(iは1~10の整数値、以下同様)を計算し、各比較差分Diを制御手段22に出力する。なお、比較部20は、照射スペクトルSと設定スペクトルTとを、所定の間隔の複数の波長値(例えば、波長が5nm、10nmごと)における光強度の比較差分をそれぞれ計算することとしてもよく、その他任意の波長値における光強度の比較差分を計算することとしてもよい。比較する波長値を多くすると精度があがるが後段階の制御手段22による発光ダイオードの制御に時間がかかることとなる。また、比較部20で比較する10個の波長値λ1、λ2、・・・λ10における照明スペクトルSの光強度ISiのみを取得し、10個の波長値λ1、λ2、・・・λ10における設定スペクトルTの光強度ITiのみを予め保存しておいて、それぞれ10個のデータのみを比較部20に入力して比較差分を計算することとしてもよい。
【0023】
制御手段22は、比較部20の比較結果に基づいて、照明部14からの照射光が設定スペクトルTに一致又は近似するように複数の発光ダイオード12のそれぞれの発光強度を制御する光源制御手段である。本実施形態では、制御手段22は、例えば、電子計算機PCで実現されており、比較部20からの比較結果のデータを受け取り、所定のプログラムで演算して、複数の発光ダイオード12の発光強度の強弱を変更調整する。制御手段22は、複数の発光ダイオード12の発光強度をそれぞれ独立して制御しうる。詳細には、まず制御手段22は、比較部20によって計算した光強度の比較差分Diの二乗の和Zを計算する。すなわち照明スペクトルと設定スペクトルの発光ダイオードのピーク波長に対応した光強度の比較差分の二乗の和Z=Σ(Di)2=Σ(ISi-ITi)2を計算し、その演算結果(二乗和Z)と複数の発光ダイオードの発光強度IDの組み合わせCbを電子計算機PCの記憶部に記憶する。そして制御手段22は、この比較差分Diの二乗の和Zがより小さくなるようにまたは最小値となるような光強度を演算し、該演算結果の光強度に基づいて対応する各ピーク波長の発光ダイオード12の発光強度IDを変更調整する。制御手段22によって発光強度を調整された状態でそれぞれのピーク波長の発光ダイオード12からの光を光学系26を介して再度照射し、前述と同様に照射対象位置の受光部16で受けて分光部18で測定スペクトルSに分光し、比較部20で測定スペクトルSと設定スペクトルTの光強度の比較差分Diを比較して、制御手段22で光強度の比較差分Diの二乗の和Zを演算しその二乗和Zと複数の発光ダイオードの発光強度IDの組み合わせCbを記憶する。さらに、該二乗の和Zがさらに小さくなるように該演算結果の光強度に基づいて対応する各ピーク波長の発光ダイオード12の発光強度IDiを変更調整し、このような制御手段22による発光ダイオードの発光強度IDの調整制御と、比較部での比較差分の二乗の和Zの演算を含むフィードバック制御を所定の回数繰り返して行う。j回目(jは1~Mの整数)で演算した二乗和Zjとすると、このフィードバック制御をM回繰り返した後、そのうち記憶された二乗和Zjのうち最小の値となる各ピーク波長の発光ダイオードの発光強度IDiの組み合わせCbのものを、最終的な複数の発光ダイオードの発光強度として選択する。このように複数の発光ダイオード12の発光強度を調整制御することにより、所望の設定スペクトルTに極めて近似したスペクトルの照射光を得ることができる。上記のフィードバック制御を繰り返す回数Mは、2以上の任意の値でよいが、数回~10回程度繰り返して行うと所望の設定スペクトルTに極めて近似したスペクトル分布の照明光を得ることができる。フィードバック制御の回数を増加すると、より近似した照明光を得ることができるが、調整時間がかかることとなる。なお、制御手段22での複数の発光ダイオードの調整制御は上記実施形態のものに限らない。例えば、制御手段22は、比較部での比較差分Di=ISi-ITiを発光ダイオードの発光強度IDiに足す等の演算を施した値や最小二乗法により求めた値をもとに、発光ダイオードの発光強度を調整制御することとしてもよい。
【0024】
次に、本実施形態に係る発光ダイオード照明装置10の作用及び照明光設定方法について
図4のフローチャートをも参照しつつ説明する。まず、ステップSP10では、例えば、ピーク波長が異なる複数の発光ダイオード12の発光強度の初期値としてそれらの合成光がCIE(国際照明委員会)の標準光源Aのスペクトルに近似するようにそれぞれの発光ダイオードの発光強度を予め調整制御しておく。なお、複数の発光ダイオード12の発光強度のそれぞれの初期値は任意でもよい。検査対象のイメージセンサに対応したテスト光の基準となる所望の設定スペクトルTのデータを予め記憶しておく。ステップSP12で、複数の発光ダイオード12からの合成光は、光学系26の接続光学系部28、照明光学系部30を通過して、イメージセンサに対応して均一的な平行光として生成され、投影光学系部32を介して照明部14から外部に射出され照射対象位置に照射される。該照射対象位置に設置された受光部16で受けた照射光は、分光部18で分光されて照明スペクトルSとして取得され、比較部20に出力される。ステップSP14では、比較部20で分光部18からの照明スペクトルSと設定スペクトルTとの発光ダイオード12のピーク波長の波長値λ
iにおけるそれぞれの光強度の比較差分D
i=IS
i-IT
iを計算する。ステップSP16では、比較部20で計算された比較差分D
iは、制御手段22に入力され、その比較差分の二乗の和Z
1=Σ(D
i)
2を計算する。ステップSP18では、比較部での比較がM回目かどうか判定され、NOの場合にはステップSP20へ進む。ステップSP20では、制御手段22は、該比較差分の二乗の和Z
1が最小となるように10個のピーク波長が異なる発光ダイオード12のそれぞれの発光強度ID
iを演算し、それぞれの発光ダイオードの発光強度を調整制御調整する。複数の発光ダイオード12を調整制御した後に、再びステップSP12に戻って、上記同様にステップSP14、SP16、SP18を行って、比較差分の二乗の和Z
2が最小となるように10個のピーク波長が異なる発光ダイオード12のそれぞれの発光強度ID
iを演算し、それぞれの発光ダイオードの発光強度を制御調整する。これらをM回まで繰り返し、ステップSP18で、比較がM回目となったら、ステップSP22に進み、制御手段22は、M個の比較差分の二乗の和Z
jのうち最小の値となる比較差分の二乗の和を構成する発光ダイオード12の発光強度ID
iの組み合わせCbを選択して照明光が決定される。これにより照明部14から照射対象位置に照射される最終的な照射光は、所望の設定スペクトルTと極めて近似したスペクトルとなる。照明光が決定されたら照明対象位置Pに検査対象のイメージセンサを設置して該イメージセンサのテストを行う。これにより、発光ダイオード照明装置10により、検査対象のイメージセンサに対応した照明光を照射して、正確なイメージセンサのテストを行うことができるとともに、必要とする照明光の波長・色等の条件が変わっても照明光を適宜調整することができ、幅広く使用することができる。
【0025】
以上説明した本発明の発光ダイオード照明装置は、上記した実施形態のみの構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の本質を逸脱しない範囲において、任意の改変を行ってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明の発光ダイオード照明装置は、例えば、固体撮像素子やレンズ等の光学素子のテスト、顕微鏡等の光学機器類の利用またはテスト、その他種々の照明装置として利用することができる。
【符号の説明】
【0027】
10 発光ダイオード照明装置 12 発光ダイオード 14 照明部 16 受光部 18 分光部 20 比較部 22 制御手段 24 光源 26 光学系