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特許7519061貼り合わせ体製造方法、貼り合わせ体および微細構造形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-10
(45)【発行日】2024-07-19
(54)【発明の名称】貼り合わせ体製造方法、貼り合わせ体および微細構造形成方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20240711BHJP
   B29C 59/02 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
B29C59/02 Z
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2021524851
(86)(22)【出願日】2020-06-02
(86)【国際出願番号】 JP2020021727
(87)【国際公開番号】W WO2020246457
(87)【国際公開日】2020-12-10
【審査請求日】2023-04-29
(31)【優先権主張番号】P 2019105755
(32)【優先日】2019-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504097823
【氏名又は名称】SCIVAX株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131657
【弁理士】
【氏名又は名称】奥田 律次
(72)【発明者】
【氏名】谷口 豊
(72)【発明者】
【氏名】田中 覚
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0183831(US,A1)
【文献】特表2004-504718(JP,A)
【文献】特表2010-517300(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027
B29C 59/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モールドと被成形物の貼り合わせ体製造方法であって、
前記モールドと前記被成形物を貼り合わせた時に前記被成形物の被成型面を囲えるように前記モールドと前記被成形物のいずれか一方又は両方にシール材を配置するシール材配置工程と、
前記モールドと前記被成形物を離間した状態で前記モールドと前記被成形物の周りの雰囲気を減圧する減圧工程と、
前記モールドと前記被成形物を重ねて、前記モールドと前記被成形物の間を前記シール材で密封する密封工程と、
前記モールドと前記被成形物の間を密封した状態で、当該モールドと被成形物を流体によって加圧し密接させる第1加圧工程と、
を有し、前記シール材は、少なくとも前記密封工程において流動性を有すると共に、前記モールドと前記被成形物の離型時に前記モールドと前記被成形物のいずれか一方にのみ接着するように構成されることを特徴とする貼り合わせ体製造方法。
【請求項2】
前記シール材配置工程の前に、前記モールドおよび前記被成形物のいずれか一方に前記シール材との接着力を向上させる第1表面処理部を形成する第1表面処理工程を有することを特徴とする請求項1記載の貼り合わせ体製造方法。
【請求項3】
前記第1表面処理部は、前記シール材と前記モールド又は前記被成形物との間の接着力を向上させるプライマーであることを特徴とする請求項2記載の貼り合わせ体製造方法。
【請求項4】
前記第1表面処理部は、前記シール材と前記モールド又は前記被成形物との間の接着力を向上させるプラズマ処理又はコロナ処理を施したものであることを特徴とする請求項2記載の貼り合わせ体製造方法。
【請求項5】
前記第1表面処理部は、前記シール材と前記モールド又は前記被成形物との間の接着力を向上させる凹凸を形成したものであることを特徴とする請求項2記載の貼り合わせ体製造方法。
【請求項6】
前記シール材配置工程の前に、前記モールドおよび前記被成形物のいずれか一方に前記シール材との接着力を低下させる第2表面処理部を形成する第2表面処理工程を有することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の貼り合わせ体製造方法。
【請求項7】
前記シール材は、水溶性樹脂からなるものであることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の貼り合わせ体製造方法。
【請求項8】
前記シール材は、光の照射により接着力が低減する材料からなるものであることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の貼り合わせ体製造方法。
【請求項9】
前記シール材配置工程は、前記モールドと前記被成形物を平行にした場合に、前記モールドと前記被成形物の被成形面の間の距離よりも、前記シール材を配置した位置における前記モールドと前記被成形物の間の距離から前記シール材の厚みを除いた距離が同じか小さくなるように配置することを特徴とする請求項1ないし8のいずれかに記載の貼り合わせ体製造方法。
【請求項10】
前記第1加圧工程は、大気圧で加圧するものであることを特徴とする請求項1ないし9のいずれかに記載の貼り合わせ体製造方法。
【請求項11】
前記減圧工程は、前記モールドと前記被成形物の周りの雰囲気を50Pa以下に減圧するものであることを特徴とする請求項1ないし10のいずれかに記載の貼り合わせ体製造方法。
【請求項12】
成型面を有するモールドと、当該成型面に貼り合わされた被成型面を有する被成形物の貼り合わせ体であって、
前記被成型面を囲うように前記モールドと前記被成形物の間を接着したシール材を具備し、前記シール材は、前記モールドと前記被成形物を離型する際に前記モールドと前記被成形物のいずれか一方にのみ接着するように構成されていることを特徴とする貼り合わせ体。
【請求項13】
前記モールドおよび前記被成形物のいずれか一方に前記シール材との接着力を向上させる第1表面処理部を有することを特徴とする請求項12記載の貼り合わせ体。
【請求項14】
前記第1表面処理部は、前記シール材と前記モールド又は前記被成形物との間の接着力を向上させるプライマーであることを特徴とする請求項13記載の貼り合わせ体。
【請求項15】
前記第1表面処理部は、前記シール材と前記モールド又は前記被成形物との間の接着力を向上させるプラズマ処理又はコロナ処理された表面であることを特徴とする請求項13記載の貼り合わせ体。
【請求項16】
前記第1表面処理部は、前記シール材と前記モールド又は前記被成形物との間の接着力を向上させる凹凸であることを特徴とする請求項13記載の貼り合わせ体。
【請求項17】
前記モールドおよび前記被成形物のいずれか一方に前記シール材との接着力を低下させる第2表面処理部を有することを特徴とする請求項12ないし16のいずれかに記載の貼り合わせ体。
【請求項18】
前記シール材は、水溶性樹脂からなるものであることを特徴とする請求項12ないし17のいずれかに記載の貼り合わせ体。
【請求項19】
前記シール材は、光の照射により接着力が低減する材料からなるものであることを特徴とする請求項12ないし17のいずれかに記載の貼り合わせ体。
【請求項20】
前記シール材は、前記モールドと前記被成形物の間を50Pa以下の雰囲気で密封するものであることを特徴とする請求項12ないし19のいずれかに記載の貼り合わせ体。
【請求項21】
被成形物に微細構造を形成する微細構造形成方法であって、
請求項12ないし20のいずれかに記載の貼り合わせ体の前記被成形物から前記モールドを離型する離型工程を有することを特徴とする微細構造形成方法。
【請求項22】
前記貼り合わせ体を大気圧より大きい圧力で流体によって加圧する第2加圧工程を有することを特徴とする請求項21記載の微細構造形成方法。
【請求項23】
前記貼り合わせ体に光を照射して被成形物を硬化させる光照射工程を有することを特徴とする請求項21又は22記載の微細構造形成方法。
【請求項24】
前記シール材を前記モールド又は前記被成形物から除去するシール材除去工程を有することを特徴とする請求項21ないし23のいずれかに記載の微細構造形成方法。
【請求項25】
前記シール材除去工程は、前記被成型面のエッチングによって前記被成形物から除去するものであることを特徴とする請求項24記載の微細構造形成方法。
【請求項26】
前記シール材除去工程は、前記シール材を溶解して除去するものであることを特徴とする請求項24記載の微細構造形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モールドと被成形物の間の気体を除去した状態で貼り合わせることを特徴とする貼り合わせ体製造方法、貼り合わせ体および微細構造形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、マイクロオーダ、ナノオーダの超微細なパターンを形成する方法として、ナノインプリント技術が注目されている。これは、樹脂等の被成形物に微細なパターンを有するモールドを加圧して、当該パターンを被成形物に転写するものである。このインプリント技術においては、転写面積の拡大を図るために、流体圧を利用したインプリント装置が考えられている。
【0003】
ここで、流体圧を利用したインプリント装置においては、モールドと被成形物の間に存在する気体が転写時の加圧むらの原因となり、転写不良を生じることがあった。そこで、モールドと被成形物の周りの雰囲気を減圧し、モールドと被成形物との間の気体を除去する脱気手段を設けている(例えば、特許文献1)。
【0004】
【文献】国際公開番号WO2012/165310
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、当該装置においては、モールドと被成形物の間に気体を入り込まないように、転写が終わるまで密閉手段でモールドと被成形物の間を閉じておく必要があったため、枚葉処理ができないという問題があった。
【0006】
そこで本発明では、モールドと被成形物の間の気体を確実に除去した状態にすることができ、インプリント法における枚葉処理が可能な貼り合わせ体製造方法、貼り合わせ体および微細構造形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の貼り合わせ体製造方法は、モールドと被成形物の貼り合わせ体製造方法であって、前記モールドと前記被成形物を貼り合わせた時に前記被成形物の被成型面を囲えるように前記モールドと前記被成形物のいずれか一方又は両方にシール材を配置するシール材配置工程と、前記モールドと前記被成形物を離間した状態で前記モールドと前記被成形物の周りの雰囲気を減圧する減圧工程と、前記モールドと前記被成形物を重ねて、前記モールドと前記被成形物の間を前記シール材で密封する密封工程と、前記モールドと前記被成形物の間を密封した状態で流体によって加圧する第1加圧工程と、を有し、前記シール材は、少なくとも前記密封工程において流動性を有すると共に、前記モールドと前記被成形物の離型時に前記モールドと前記被成形物のいずれか一方にのみ接着するように構成されることを特徴とする。
【0008】
この場合、前記シール材配置工程の前に、前記モールドおよび前記被成形物のいずれか一方に前記シール材との接着力を向上させる第1表面処理部を形成する第1表面処理工程を有していてもよい。前記第1表面処理部は、前記シール材と前記モールド又は前記被成形物との間の接着力を向上させるプライマーとすることができる。また、前記第1表面処理部は、前記シール材と前記モールド又は前記被成形物との間の接着力を向上させるプラズマ処理又はコロナ処理を施したものとすることもできる。また、前記第1表面処理部は、前記シール材と前記モールド又は前記被成形物との間の接着力を向上させる凹凸を形成したものとすることもできる。
【0009】
また、前記シール材配置工程の前に、前記モールドおよび前記被成形物のいずれか一方に前記シール材との接着力を低下させる第2表面処理部を形成する第2表面処理工程を有していてもよい。
【0010】
前記シール材は、前記モールドと前記被成形物を離型する際に前記被成形物にのみ接着させるように構成され、前記被成型面のエッチングによって除去可能な材料からなるものであってもよい。また、前記シール材は、水溶性樹脂からなるものであってもよい。また、前記シール材は、光の照射により接着力が低減する材料からなるものであってもよい。
【0011】
また、前記シール材配置工程は、前記モールドと前記被成形物を平行にした場合に、前記モールドと前記被成形物の被成形面の間の距離よりも、前記シール材を配置した位置における前記モールドと前記被成形物の間の距離から前記シール材の厚みを除いた距離が同じか小さくなるように配置する方が好ましい。
【0012】
また、前記第1加圧工程は、大気圧で加圧するものである方が好ましい。
【0013】
また、本発明の貼り合わせ体は、成型面を有するモールドと、当該成型面に貼り合わされた被成型面を有する被成形物の貼り合わせ体であって、前記被成型面を囲うように前記モールドと前記被成形物の間を接着したシール材を具備し、前記シール材は、前記モールドと前記被成形物を離型する際に前記モールドと前記被成形物のいずれか一方にのみ接着するように構成されていることを特徴とする。
【0014】
この場合、前記モールドおよび前記被成形物のいずれか一方に前記シール材との接着力を向上させる第1表面処理部を有する方が好ましい。前記第1表面処理部は、前記シール材と前記モールド又は前記被成形物との間の接着力を向上させるプライマーであってもよい。また、前記第1表面処理部は、前記シール材と前記モールド又は前記被成形物との間の接着力を向上させるプラズマ処理又はコロナ処理された表面であってもよい。前記第1表面処理部は、前記シール材と前記モールド又は前記被成形物との間の接着力を向上させる凹凸であってもよい。
【0015】
また、前記モールドおよび前記被成形物のいずれか一方に前記シール材との接着力を低下させる第2表面処理部を有する方が好ましい。
【0016】
また、前記シール材は、前記モールドと前記被成形物を離型する際に前記被成形物にのみ接着させるように構成され、前記被成型面のエッチングによって除去可能な材料からなるものであってもよい。また、前記シール材は、水溶性樹脂からなるものであってもよい。また、前記シール材は、光の照射により接着力が低減する材料からなるものであってもよい。
【0017】
また、本発明の微細構造形成方法は、被成形物に微細構造を形成する微細構造形成方法であって、上述した本発明の貼り合わせ体の前記被成形物から前記モールドを離型する離型工程を有することを特徴とする。
【0018】
この場合、前記貼り合わせ体を大気圧より大きい圧力で流体によって加圧する第2加圧工程を有していてもよい。
【0019】
また、前記貼り合わせ体に光を照射して被成形物を硬化させる光照射工程を有していてもよい。
【0020】
また、前記シール材を前記モールド又は前記被成形物から除去するシール材除去工程を有していてもよい。
【0021】
また、前記シール材除去工程は、前記シール材を溶解して除去するものであってもよい。また、前記シール材除去工程は、前記被成型面のエッチングによって前記被成形物から除去するものであってもよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、シール材を用いることによって、モールドと被成形物の間の気体を確実に除去した状態にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明に係るシール材と被成形物を示す平面図である。
図2】本発明に係るシール材配置工程を示す一部端面図である。
図3】本発明に係る別のシール材配置工程を示す一部端面図である。
図4】本発明に係る別のシール材配置工程を示す一部端面図である。
図5】本発明に係る別のシール材配置工程を示す一部端面図である。
図6】本発明に係る密封工程を示す一部端面図である。
図7】本発明に係る別の密封工程を示す一部端面図である。
図8】本発明にの貼り合わせ体を示す一部端面図である。
図9】本発明に係る離型工程示す一部端面図である。
図10】本発明に係る別の離型工程示す一部端面図である。
図11】本発明に係るシール材除去工程示す一部端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の貼り合わせ体製造方法について、図1図9を用いて説明する。本発明の貼り合わせ体製造方法は、モールド1と被成形物2の貼り合わせ体を製造するためのものであって、シール材配置工程と、減圧工程と、密封工程と、第1加圧工程と、で主に構成される。
【0025】
なお、本明細書中で、モールド1とは、例えば「ニッケル等の金属」、「セラミックス」、「ガラス状カーボン等の炭素素材」、「シリコン」などから形成されており、その一端面(成型面15)に所定のパターンを有するものを指す。このパターンは、その成型面15に精密機械加工を施すことで形成することができる。また、シリコン基板等にエッチング等の半導体微細加工技術によって形成したり、このシリコン基板等の表面に電気鋳造(エレクトロフォーミング)法、例えばニッケルメッキ法によって金属メッキを施し、この金属メッキ層を剥離して形成したりすることもできる。また、インプリント技術等を用いて作製した樹脂製のモールドを用いることも可能である。この場合、モールド1は、被成形物2の被成形面に対して可撓性のあるフィルム状に形成しても良い。もちろんモールド1は、微細パターンが形成できるものであれば材料やその製造方法が特に限定されるものではない。
【0026】
また、モールド1に形成される成型パターンは、凹凸からなる幾何学的な形状のみならず、例えば所定の表面粗さを有する鏡面状態の転写のように所定の表面状態を転写するためのものや、所定の曲面を有するレンズ等の光学素子を転写するためのものも含む。また、成型パターンは、平面方向の凸部の幅や凹部の幅の最小寸法が100μm以下、10μm以下、2μm以下、1μm以下、100nm以下、10nm以下等種々の大きさに形成される。また、深さ方向の寸法も、10nm以上、100nm以上、200nm以上、500nm以上、1μm以上、10μm以上、100μm以上等種々の大きさに形成される。
【0027】
また、被成形物2とは、インプリント可能な被成型面25を有するものであればどのようなものでも良い。例えば、樹脂、無機化合物又は金属等からなる基板21上又はフィルム上に流動性のある被成形層22を形成したものや、単に基板状のもの、可撓性のあるフィルム状のものがある。また、モールド1の上に流動性のある被成形層22を形成しておき、基板21とモールド1を加圧する際に基板21側に被成形層22を接合するものであっても良い。また、被成形物2は、平面状のものに限られるものではなく、例えばレンズのように、被成形面が曲面のものも含まれる。
【0028】
被成形物2の材質は、例えば、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、あるいは熱可塑性樹脂を用いることができる。
【0029】
光硬化性樹脂又は熱硬化性樹脂としては、エポキシド含有化合物類、(メタ)アクリル酸エステル化合物類、ビニルエーテル化合物類、ビスアリルナジイミド化合物類のようにビニル基・アリル基等の不飽和炭化水素基含有化合物類等を用いることができる。この場合、熱的に重合するために重合反応性基含有化合物類を単独で使用することも可能であるし、熱硬化性を向上させるために熱反応性の開始剤を添加して使用することも可能である。更に光反応性の開始剤を添加して光照射により重合反応を進行させて成型パターンを形成できるものでもよい。熱反応性のラジカル開始剤としては有機過酸化物、アゾ化合物が好適に使用でき、光反応性のラジカル開始剤としてはアセトフェノン誘導体、ベンゾフェノン誘導体、ベンゾインエーテル誘導体、キサントン誘導体等が好適に使用できる。また、反応性モノマーは無溶剤で使用しても良いし、溶媒に溶解して塗布後に脱溶媒して使用しても良い。
【0030】
また、熱可塑性樹脂としては、環状オレフィン開環重合/水素添加体(COP)や環状オレフィン共重合体(COC)等の環状オレフィン系樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ビニルエーテル樹脂、パーフルオロアルコキシアルカン(PFA)やポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂、ポリスチレン、ポリイミド系樹脂、ポリエステル系樹脂等を用いることができる。
【0031】
シール材配置工程は、モールド1と被成形物2を貼り合わせた時に被成形物2の被成型面25を囲えるようにモールド1と被成形物2のいずれか一方又は両方にシール材4を配置するものである。被成形物2側にシール材4を配置した場合を図1図2に示す。また、モールド1側に配置した場合を図3に示す。また、モールド1と被成形物2の両方にシール材4を配置した場合を図4に示す。
【0032】
シール材4は、後述する密封工程で被成形面に悪影響を及ぼさない限りは、どのように配置してもよい。例えば、シール材4のコスト面から、なるべく最短距離で囲めばよい。また、被成型面25との間にシール材4が配置された部分を切断するための間隔を空けて囲んでもよい。
【0033】
また、シール材4は、後述する密封工程でモールド1と被成形物2の間を確実に密封できる厚みで配置する。具体的には、図2図5に示すように、モールド1と被成形物2を平行にした場合に、モールド1の成型面と被成形物2の被成形面の間の距離Aよりも、シール材4を配置した位置におけるモールド1と被成形物2(基板21)の間の距離からシール材4の厚みを除いた距離Bが同じか小さくなるように配置する方が好ましい。このように構成すれば、後述する密封工程で、シール材4とモールド1および被成形物2の間を確実に接触させて密封することができる(図6,7参照)。
【0034】
減圧工程は、貼り合わせ時に気泡の原因となるモールド1と被成形物2間の気体を除去するために、モールド1と被成形物2を離間した状態でモールド1と被成形物2の周りの雰囲気を減圧するものである。当該減圧は少なくともモールド1の成型パターンを被成形物2に転写する際に、残存する気体によって転写不良が生じることのない圧力以下とする。これは、被成形物2の材料にもよるが、例えば、50Pa以下、好ましくは10P以下にすればよい。減圧方法は、モールド1と被成形物2の周りの雰囲気を減圧できればどのようなものでもよいが、例えば、モールド1と被成形物2を内包する真空チャンバー内の気体を真空ポンプ等で脱気するものを用いればよい。
【0035】
密封工程は、図6,7に示すように、モールド1と被成形物2を重ねて、モールド1と被成形物2の間をシール材4で密封するものである。これにより、モールド1、被成形物2およびシール材4で閉鎖空間5を形成できればよい。なお、モールド1の成型面15と被成形物2の被成型面25が接触していても構わない。
【0036】
第1加圧工程は、図8に示すように、モールド1と被成形物2の間を密封した状態で流体によって加圧するものである。これにより、気泡が存在しない状態でモールド1と被成形物2を貼り合わせることができる。第1加圧工程は、モールド1、被成形物2およびシール材4で形成された閉鎖空間5内の圧力よりも高く、モールド1と被成形物2を密接させることができればどのような圧力でもよく、例えば、大気圧で加圧すればよい。
【0037】
また、本発明の貼り合わせ体製造方法において、上述したシール材4は、少なくとも密封工程において流動性を有するものを用いる。これにより、モールド1や被成形物2の表面に凹凸等があっても、流動により確実に密閉することができる。当該シール材としては、例えば、光硬化性樹脂や熱硬化性樹脂を用いればよい。また、当該シール材として機能するのであれば、被成形物と同じ材料を用いてもよい。
【0038】
また、シール材4は、モールド1と被成形物2の離型時にモールド1と被成形物2のいずれか一方にのみ接着するように構成される。これにより、モールド1と被成形物2を離型した後、シール材4の除去を簡単にすることができる。例えば、離型時に被成形物2側にシール材4が接着するように構成し、被成形物2からシール材4の接着している部分をダイシングにより除去すればよい。離型後の工程で被成形物2をダイシングする工程がある場合には、当該除去をダイシング工程で併せて行うことができる。
【0039】
シール材4は、モールド1と被成形物2を離型する際に被成形物2にのみ接着させるように構成され、被成型面25のエッチングによって除去可能な材料からなってもよい。こうすることにより、シール材4の除去をエッチング時に同時に行うことができ、工程の簡略化が行える。
【0040】
モールド1と被成形物2の離型時に、シール材4をモールド1と被成形物2のいずれか一方にのみ接着させる方法としては、シール材4を接着させる側の接着力を接着させたくない側の接着力より大きくすればよい。もちろん、シール材4を接着させたくない側の接着力は、シール材4が破損する力よりは小さくする。
【0041】
例えば、シール材配置工程の前に、モールド1および被成形物2のいずれか一方にシール材4との接着力を向上させる第1表面処理部を形成する第1表面処理工程を行う。第1表面処理部としては、化学的に接着力を向上させるものであっても、物理的に接着力を向上させるものがあってもよい。
【0042】
この場合、第1表面処理部としては、例えば、シール材4とモールド1又は被成形物2との間の接着力を向上させるプライマーを用いることができる。また、第1表面処理部としては、シール材4とモールド1又は被成形物2との間の接着力を向上させるプラズマ処理又はコロナ処理を施したものであってもよい。更に、第1表面処理部としては、シール材4とモールド1又は被成形物2との間の接着力を向上させる凹凸を形成したものであってもよい。もちろん、これらの2以上を組み合わせて用いることも可能である。
【0043】
また、シール材配置工程の前に、モールド1および被成形物2のいずれか一方にシール材4との接着力を低下させる第2表面処理部を形成する第2表面処理工程を行うものであってもよい。この場合、第2表面処理部としては、例えば、離型剤を用いることができる。
【0044】
シール材4は、上述したように、ダイシング等によって除去してもよいが、離型後に除去し易い材料を用いてもよい。例えば、モールド1と被成形物2を離型する際に被成形物2にのみ接着させるように構成され、被成型面25のエッチングによって除去可能な材料からなってもよい。こうすることにより、シール材4の除去を被成形物2のエッチング時に同時に行うことができる。
【0045】
また、シール材4を水溶性樹脂とすることもできる。これにより、簡単に洗浄することができる。
【0046】
また、シール材4を所定波長の光の照射により接着力が低減する材料とすることもできる。この場合、前記所定波長が、光インプリントに用いる光の波長とは異なる場合には、光インプリントによるパターン転写を確実に行った後に、所定の光をシール材4に照射してシール材4を除去すればよい。また、前記所定波長が、光インプリントに用いる光の波長と同じ場合には、光インプリントの光照射と同時にシール材4の接着力を低減することができる。
【0047】
次に、本発明の貼り合わせ体について図8を用いて説明する。本発明の貼り合わせ体は、成型面15を有するモールド1と、当該成型面15に貼り合わされた被成型面25を有する被成形物2の貼り合わせ体であって、被成型面25を囲うようにモールド1と被成形物2の間を接着したシール材4を備える。また、当該シール材4は、モールド1と被成形物2を離型する際にモールド1と被成形物2のいずれか一方にのみ接着するように構成されている。なお、上述した本発明の貼り合わせ体製造方法において説明した部分と同一の部分には同一符号を付して説明は省略する。
【0048】
ここで、本発明の貼り合わせ体製造方法で説明したように、モールド1および被成形物2のいずれか一方は、シール材4との接着力を向上させる第1表面処理部を有してもよい。この場合、第1表面処理部は、シール材4とモールド1又は被成形物2との間の接着力を向上させるプライマーを用いることができる。また、第1表面処理部は、シール材4とモールド1又は被成形物2との間の接着力を向上させるプラズマ処理又はコロナ処理された表面であってもよい。また、第1表面処理部は、シール材4とモールド1又は被成形物2との間の接着力を向上させる凹凸であってもよい。
【0049】
また、本発明の貼り合わせ体製造方法で説明したように、モールド1および被成形物2のいずれか一方は、シール材4との接着力を低下させる第2表面処理部を有していてもよい。この場合、第2表面処理部としては、例えば、離型剤を用いることができる。
【0050】
また、シール材4は、離型後に除去し易い材料を用いてもよい。例えば、モールド1と被成形物2を離型する際に被成形物2にのみ接着させるように構成され、被成型面25のエッチングによって除去可能な材料からなってもよい。また、シール材4を水溶性樹脂とすることもできる。また、シール材4を所定波長の光の照射により接着力が低減する材料とすることもできる。
【0051】
また、本発明の微細構造形成方法について説明する。本発明の微細構造形成方法は、被成形物2に微細構造を形成するためのものであって、少なくとも上述した本発明の貼り合わせ体の被成形物2からモールド1を離型する離型工程を有する。当該離型工程では、図9に示すように、被成形物2側にのみシール材4が接着するように離型されるか、あるいは、図10に示すように、モールド1側にのみシール材4が接着するように離型される。離型方法は、従来から用いられている方法を用いればよい。
【0052】
また、本発明の微細構造形成方法は、離型工程の前に、貼り合わせ体を大気圧より大きい圧力で流体によって加圧する第2加圧工程を有していてもよい。これにより、モールド1のパターンを被成形物2に確実に転写することができる。なお、上述した貼り合わせ体製造方法の第1加圧工程によって、モールド1のパターンが被成形物2に転写されている場合には、当該第2加圧工程は行わなくてもよい。
【0053】
また、本発明の微細構造形成方法を光インプリントに適用する場合には、貼り合わせ体に光を照射して被成形物2を硬化させる光照射工程を有する。この場合、照射する光は、被成形物2を硬化させることができる波長を用いる。
【0054】
シール材除去工程は、シール材4をモールド1又は被成形物2から除去するものである。例えば、離型時に被成形物2側にシール材4が接着するように構成しておき、離型後に、図11に示すように、被成形物2からシール材4の接着している部分をダイシングにより除去すればよい。離型後の工程で被成形物2をダイシングする工程がある場合には、当該除去をダイシング工程で併せて行うことができる。また、シール材除去工程は、シール材4を溶解して除去するものであってもよい。この場合、シール材4を水溶性樹脂とすれば、シール材4を水で簡単に洗浄することができる。また、シール材除去工程は、被成型面25のエッチングによって被成形物2から除去するものであってもよい。離型後の工程で被成形物2をエッチングする工程がある場合には、当該除去をエッチングと同時に行うことができる。
【0055】
また、シール材4を所定波長の光の照射により接着力が低減する材料とする場合には、シール材除去工程は、当該シール材4に所定波長の光を照射して接着力を低減した後に除去することもできる。
【符号の説明】
【0056】
1 モールド
2 被成形物
4 シール材
5 閉鎖空間
21 基板
22 被成形層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11