(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-10
(45)【発行日】2024-07-19
(54)【発明の名称】電気錠
(51)【国際特許分類】
E05B 65/10 20060101AFI20240711BHJP
E05B 47/00 20060101ALI20240711BHJP
E05B 49/00 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
E05B65/10 J
E05B47/00 J
E05B49/00 J
(21)【出願番号】P 2020168451
(22)【出願日】2020-10-05
【審査請求日】2023-09-04
(73)【特許権者】
【識別番号】397011111
【氏名又は名称】株式会社マースウインテック
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】弁理士法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】本山 直樹
(72)【発明者】
【氏名】山▲ざき▼ 翔太
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-196322(JP,A)
【文献】特開2003-97126(JP,A)
【文献】特開平9-303027(JP,A)
【文献】特開2016-108756(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00-85/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉に取り付け可能な電気錠であって、
施錠位置から開錠位置の間を移動可能な閂と、
前記閂を移動させる駆動部と、
前記駆動部に電力を供給する電源部と、
前記駆動部、前記閂、および管理者のキー操作により前記駆動部もしくは前記閂を押動するレバーを有し、前記キー操作により、非動作状態の前記駆動部および前記閂の両者が、前記閂による施錠位置と開錠位置との間で連れ立って移動可能なキーロック機構と、
を具備することを特徴とする電気錠。
【請求項2】
前記キーロック機構により前記駆動部および前記閂を該閂による施錠状態となる位置に移動させた位置において、前記駆動部の電気駆動により前記閂を施錠位置と開錠位置との間で移動可能なことを特徴とする請求項1記載の電気錠。
【請求項3】
前記駆動部もしくは前記閂を、該閂の開錠位置方向に付勢するスプリングを有し、前記キー操作により、非動作状態の前記駆動部もしくは前記閂を前記スプリングの付勢力に抗して前記閂による施錠位置まで移動させた位置において、前記駆動部の電気駆動により前記閂を施錠位置と開錠位置との間で移動可能なことを特徴とする請求項2記載の電気錠。
【請求項4】
前記レバーが、円弧の軌跡を描いて前記駆動部もしくは前記閂を押動可能に設けられていることを特徴とする請求項1~3いずれか1項記載の電気錠。
【請求項5】
前記駆動部はモータであり、該モータの回転軸にピニオンが固定され、前記閂には前記ピニオンに噛合するラックが形成されていることを特徴とする請求項1~4いずれか1項記載の電気錠。
【請求項6】
送受信部と、
外部との通信により、前記駆動部をオン、オフ制御する制御部を有することを特徴とする請求項1~5いずれか1項記載の電気錠。
【請求項7】
休眠状態から起動させる起動スイッチを有することを特徴とする請求項6記載の電気錠。
【請求項8】
前記閂による施錠状態と前記閂による開錠状態を検知する検知部を有し、前記検知部により前記閂が施錠位置に移動したことが検知された際、および前記検知部により前記閂が開錠位置に移動したことが検知された際、前記制御部は、前記駆動部を停止することを特徴とする請求項6または7記載の電気錠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気を駆動源とする電気錠に関する。
【背景技術】
【0002】
電気を駆動源として施錠開錠を行う電気錠が知られている。この電気錠においては、電気的駆動部に何らかのトラブルがあって開錠しないことを想定して、一般的にメカニカルな非常用開錠部が設けられている(例えば特許文献1:特開2016-108756号公報)。
【0003】
上記特許文献1における電気錠は、施錠位置および解錠位置の一方から他方に移動可能なカムと、前記カムを前記施錠位置および前記解錠位置の一方から他方に移動させるツマミと、前記ツマミを回動不能にする規制状態、および前記ツマミを回動可能にする許容状態の一方から他方に移行可能な施解錠機構と、前記施解錠機構に電力を供給する電源部と、前記施解錠機構に前記電力が供給されていない状態において、前記施解錠機構を前記規制状態から前記許容状態に移行可能な非常解錠機構とを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示される電気錠では、非常時において、メカニカルな機構により開錠可能となっている。
しかしながら、特許文献1のものでは、非常時における開錠機構に、複雑なカム機構およびリンク機構を採用しており、部品点数が増すことにより故障などの不具合が生じたり、コストアップを招いているという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明は上記課題を解決すべくなされたもので、その目的とするところは、非常時の開錠機構として簡易な構成を採用して、部品点数の減少、コストの低減を図ることのできる電気錠を提供することにある。
【0007】
本発明に係る電気錠は、扉に取り付け可能な電気錠であって、施錠位置から開錠位置の間を移動可能な閂と、前記閂を移動させる駆動部と、前記駆動部に電力を供給する電源部と、前記駆動部、前記閂、および管理者のキー操作により前記駆動部もしくは前記閂を押動するレバーを有し、前記キー操作により、非動作状態の前記駆動部および前記閂の両者が、前記閂による施錠位置と開錠位置との間で連れ立って移動可能なキーロック機構と、を具備することを特徴とする。
【0008】
前記キーロック機構により前記駆動部および前記閂を該閂による施錠状態となる位置に移動させた位置において、前記駆動部の電気駆動により前記閂を施錠位置と開錠位置との間で移動可能な電気錠とすることができる。
【0009】
前記駆動部もしくは前記閂を、該閂の開錠位置方向に付勢するスプリングを設け、前記キー操作により、非動作状態の前記駆動部もしくは前記閂を前記スプリングの付勢力に抗して前記閂による施錠位置まで移動させた位置において、前記駆動部の電気駆動により前記閂を施錠位置と開錠位置との間で移動可能な電気錠とすることができる。
【0010】
前記レバーを、円弧の軌跡を描いて前記駆動部もしくは前記閂を押動可能に設けることができる。
前記駆動部としてモータを用い、該モータの回転軸にピニオンが固定し、前記閂に前記ピニオンに噛合するラックを形成して閂の移動機構とすることができる。
【0011】
送受信部と、外部との通信により、前記駆動部をオン、オフ制御する制御部を有することを特徴とする。
休眠状態から起動させる起動スイッチを設けるようにするとよい。
また、前記閂による施錠状態と前記閂による開錠状態を検知する検知部を設け、前記検知部により前記閂が施錠位置に移動したことが検知された際、および前記検知部により前記閂が開錠位置に移動したことが検知された際、前記制御部により、前記駆動部を停止するようにできる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、非常用開錠部としてのキーロック機構に、閂をレバー機構によって駆動部の移動に伴って移動させる簡易な機構を採用し、従来のような複雑なカム機構、リンク機構としていないので、部品点数を減らし、コストの低減化を図れ、また故障の低減も図れる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】キーロック機構による開錠状態を示す、カバーを外した本体部の正面図である。
【
図2】キーロック機構による施錠状態(電気錠としての使用時における施錠状態でもある)を示す、カバーを外した本体部の正面図である。
【
図3】電気錠としての使用時における開錠状態を示す、カバーを外した本体部の正面図である。
【
図4】カバーを取り付けた電気錠10の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下本発明の好適な実施の形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1~
図3は、本実施の形態に係る電気錠10のカバーを取り外した状態の正面図であり、
図1はキーロック機構による開錠状態、
図2はキーロック機構による施錠状態(電気錠としての使用時における施錠状態でもある)、
図3は電気錠としての使用時における開錠状態を示す。
図4は、カバーを取り付けた電気錠10の正面図である。
電気錠10は、扉(図示せず)の開閉側端部に取り付けられ、扉の相手側(固定部)に対して扉の閉状態をロックし(施錠)、また開錠して扉の開け閉めを可能とするものである。
【0015】
図1~
図3において、14は閂であり、本体部12に図の左右方向に移動可能(本体部12に突出入可能)に設けられている。15はそのガイド部である。閂14は板状をなし、その後端部にはラック16が形成されている。閂14は、本体部12から突出した際、扉の相手側の係止孔内に進入し、扉をロックする。
【0016】
18は駆動部たるモータである。
本実施の形態では、モータ18も、閂14の移動方向と同方向に一定の姿勢を保って移動可能に本体部12内に設けられていることを特徴としている。19はそのガイド部である。
モータ18の出力軸にはピニオン20が固定され、ピニオン20は閂14のラック16に噛合している。したがって、
図2、
図3に示すように、モータ18が駆動されることにより、閂14が左右方向に移動し、施錠(
図2)、開錠(
図3)が可能となる。
【0017】
モータ18は、電池ボックス(図示せず)に収納された電池(電源部:図示せず)から電力が供給され、駆動される。電池ボックスはメイン基板21の裏面側となる本体部12内に設けられている。メイン基板21にはモータ18駆動等のための配線がなされており、また制御部となるCPU36(
図8)が搭載されている。
なお、電源部は電池に限らず、商用電源を適宜降圧して電源として用いてもよい。
【0018】
モータ18は、本体部12の固定部との間に介設されたスプリング22によって
図1上右方に付勢されている。
24はキーロック機構におけるキー挿入部である。キー挿入部24には挿入したキー(図示せず)を回すことによって、
図1上90°の角度範囲で回動されるレバー26が設けられている。レバー26は回動されることによってその先端がモータ18に当接し、モータ18をスプリング22の付勢力に抗して
図1上左方に移動させることが可能となっている。
【0019】
図5はカバー30の正面図である。
図6はその右側面図、
図7は左側面図である。また、
図8は回路のブロック図である。
なお、上記キー挿入部24およびレバー26はカバー30側に設けられている。
図1~
図3では、理解を容易にするために、キー挿入部24およびレバー26を本体部12に重ねて記載している。
カバー30にはアンテナ基板32が設けられ、アンテナ基板32上に押しボタン34が設けられている(
図8)。押しボタン34を押圧するとアンテナ基板32上のスイッチ(図示せず)が投入され、回路全体が休眠状態から起動され、本体部12側のメイン基板21におけるCPU(制御部)36もオン状態となる。
【0020】
本体部12側には送受信部38が設けられている。送受信部38には、例えば、Bluetoothモジュールが搭載され、利用者の使用するICカード(図示せず)等の媒体とデータの送受信が行われる。
また、本体部12内には、閂14による施錠状態と閂14による開錠状態を検知する検知部が設けられている。検知部は例えば2個のマイクロスイッチSW1、SW2で構成される。マイクロスイッチSW1は、閂14が施錠位置に移動した際に投入され、マイクロスイッチSW2は閂14が開錠位置に移動した際に投入される。これら両位置に閂14がそれぞれ移動した際にモータ18の駆動が停止される。
【0021】
なお、カバー30には、閂14による施錠状態および開錠状態を表示する表示部42が設けられている。表示部42は、LEDランプが点灯することによって、施錠状態、開錠状態がわかるようになっている。表示部42は、音や振動などによって施錠状態、開錠状態を知らせるようにしてもよい。
【0022】
次に、
図1、
図2によってまずメカ的に動作するキーロック機構について説明する。
キーロック機構は、モータ18、閂14、および管理者のキー操作によりモータ18を押動するレバー26等から構成される。
図1はキーロック機構による開錠状態(工場出荷時の製品における初期状態でもある)、
図2はキーロック機構による施錠状態を示す。
図1において、モータ18はスプリング22に付勢されて本体部12内で右方に移動した状態であり、レバー26もモータ18に非当接状態である。また、この状態において閂14は本体部12内に突入しており、したがって、キーロックによる開錠状態である。
【0023】
図1の状態から、キー挿入部24にキーロック用のキー(管理人等が所有)を挿入し、キーを回して(左回転)レバー26を回動させる。これによりレバー26の先端部がモータ18に当接し、スプリング22の付勢力に抗してモータ18を
図1上左方に押動する。レバー26が
図1の状態から90°回転した状態でレバー26によりモータ18の移動が停止し、モータ18はこの位置でロックされる(図示しないストッパで移動をロックしてもよい)。
【0024】
モータ18は非通電状態(非動作状態)であり、モータ側の磁気的抵抗によりピニオン20とラック16とがロック状態であるから、閂14はモータ18の移動に伴い
図1上左方に移動し、本体部12から突出し、相手側(図示せず)の係止孔内に進入し、施錠状態(
図2)となる。キーを反対側に回すと(右回転)、レバー26が右方に回動し、モータ18はレバー26からの規制が解除され、スプリング22の付勢力によって右方に移動し、これに伴い閂14も右方に移動して本体部12内に突入して開錠状態となる(
図1:初期状態に復帰する)。
【0025】
このように、モータ18の非通電時は、キーロック機構によって、通常のメカキーとしても機能する。
なお、本実施の形態に係る電気錠10は、もちろん電気錠として用いられるのであり、メカキーが主用途ではない。
本実施の形態における電気錠10は、初期設定において、キーロック機構により、
図1の状態から
図2の状態(施錠状態)にセットし、この状態をホームポジションとして、電気錠として使用される。
【0026】
そして、モータ18の故障あるいは電池切れなどにより、施錠状態のままで開錠できない時、上記のようにキーロック機構により
図2の状態から
図1の状態に開錠できるので、キーロック機構は主として非常用開錠部として機能する。この非常用開錠部としてのキーロック機構は、閂14をレバー機構によってモータ18の移動に伴って移動させる簡易な機構を採用し、従来のような複雑なカム機構、リンク機構としていないので、部品点数を減らし、コストの低減化を図れ、また故障の低減も図れる。
【0027】
本実施の形態では、
図2の施錠状態をホームポジションとして電気錠として使用できる。
図2の状態から開錠するには、利用者はまず押しボタン34を押す。すると各部が休眠状態から起動され、表示部42では施錠状態であることが表示される。次いで所定のICカードを送受信部38にかざすことによって、所要のデータが送受信され、CPU36によりモータ18への駆動信号が発せられ、モータ18が回転駆動され、これにより閂14が開錠方向へ移動する。閂14に設けられた凸部がマイクロスイッチSW2を押すことによってモータ18が停止され、閂14が開錠位置で停止する。なお、この状態でメイン基板21への電力供給も停止され、休眠状態となって電池の消耗が防止される。
【0028】
再び施錠するときは、押しボタン34を押す。これにより各部が休眠状態から再び起動される。表示部42で開錠状態を確認してから、ICカードを送受信部38にかざす。これによりモータ18が駆動され、閂14が施錠方向に移動し、所定位置でマイクロスイッチSW1がオンすることによって、モータ18が停止し、閂14が施錠位置で停止し、施錠状態となる。
なお、
図2の状態をホームポジションとしたが、銭湯やゴルフ場のロッカーなどでは、
図3の開錠位置をホームポジションとするとよい。電気錠10の使用状況に合わせてホームポジションを決めればよい。
【0029】
上記実施の形態では、レバー26によりモータ18を押動するようにしたが、場合によっては閂14をレバー26によって押動し、これに伴ってモータ18が移動するように構成することも可能である。
なお、上記では、送受信部38と送受信する媒体として読み書き可能なICカードの例で説明したが、送受信部38にBluetoothモジュールなどを用いれば、スマホなどの管理端末との通信が可能となり、より広汎な機能を有する電気錠としても使用可能となる。スマホやPCなどの管理端末を用いれば、設定変更機能、ログ取得機能、ダウンロード機能(ファームウェアの更新を行うなど)の機能を持たせることができる。
【符号の説明】
【0030】
10 電気錠
12 本体部
14 閂
15 ガイド部
16 ラック
18 モータ
19 ガイド部
20 ピニオン
21 メイン基板
22 スプリング
24 キー挿入部
26 レバー
30 カバー
32 アンテナ基板
34 押しボタン
36 CPU
38 送受信部
40 Bluetoothモジュール
42 表示部
SW1 SW2 マイクロスイッチ