(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-10
(45)【発行日】2024-07-19
(54)【発明の名称】自閉症スペクトラム障害の診断方法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/68 20060101AFI20240711BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20240711BHJP
G01N 30/88 20060101ALI20240711BHJP
G01N 30/72 20060101ALI20240711BHJP
G01N 27/62 20210101ALI20240711BHJP
【FI】
G01N33/68
G01N33/53 D
G01N30/88 F
G01N30/72 G
G01N27/62 V
G01N27/62 X
(21)【出願番号】P 2020541777
(86)(22)【出願日】2019-02-11
(86)【国際出願番号】 GB2019050362
(87)【国際公開番号】W WO2019155233
(87)【国際公開日】2019-08-15
【審査請求日】2022-02-10
(32)【優先日】2018-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】520277047
【氏名又は名称】カタール ユニバーシティ
【氏名又は名称原語表記】QATAR UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】Office of Innovation and Intellectual Property P.O. Box 2713 Doha Qatar
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラバニ,ナイラ
(72)【発明者】
【氏名】ソーナリー,ポール ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ラジプート,カシーフ マフムード
(72)【発明者】
【氏名】マリーニ,マリーナ
(72)【発明者】
【氏名】アブルッツォ,プロヴィデンツァ マリア
(72)【発明者】
【氏名】ボロッタ,アレッサンドラ
【審査官】高田 亜希
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2010/0210582(US,A1)
【文献】特表2014-506244(JP,A)
【文献】Attia Anwar et al,Quantitation of plasma thiamine,related metabolites and plasma protein oxidative damage markers in children with autism spectrum disorder and healthy control,Free Radical Research,2016年11月01日,vol.50, no.51,S85-S90
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48 -33/98
G01N 27/60 -27/92
G01N 30/88
G01N 30/72
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自閉症スペクトラム障害(ASD)を診断するための方法であって:
a.総血漿タンパク質中の4つの糖化及び酸化されたアミノ酸の濃度を検出するステップであって、前記アミノ酸は、Nε-カルボキシメチル-リジン(CML:mmol/mol lys)、Nω-カルボキシメチル-アルギニン(CMA:mmol/mol arg)、ジチロシン(DT:mmol/mol tyr)、及び、3-デオキシグルコソン由来ヒドロイミダゾロン(3DG-H:mmol/mol arg)である、前記検出するステップと;
b.アルゴリズムの訓練と試験において、CML、CMA、DT、及び3DG-Hの前記濃度を組み合わせて、発達が正常の被験者とASDを有する被験者を分類するステップと;
c.訓練されたアルゴリズムを適用して、CML、CMA、DT、及び3DG-Hの総血漿タンパク質含有量の入力が与えられた場合、被験者である5歳から12歳の年齢の範囲内の子供がASDを有する確率を出力するステップと;を備える、
自閉症スペクトラム障害(ASD)を診断するための方法。
【請求項2】
自閉症スペクトラム障害(ASD
)の処置に適する療法を識別するための方法であって:
a.候補の療法を施用された被験者から
単離された血液のサンプルを提供するステップと;
b.前記サンプルの総タンパク質中のCML、CMA、DT、及び3DG-Hの濃度を検出するステップと;
c.ステップ(b)で決定された被検物質のレベルを、訓練及び試験されたアルゴリズムの特徴として使用して、前記候補の療法の施用前にASDの有無を推定するステップと;を備え、
前記被験者が定義された閾値より大きい又は等しいASDの確率を有することを前記アルゴリズムが示す場合、前記候補の療法はASDの処置に適しており、
前記被験者が定義された閾値より小さいASDの確率を有することを前記アルゴリズムが示す場合、前記候補の療法はASDの処置に適していないとする、
自閉症スペクトラム障害(ASD
)の処置に適する療法を識別するための方法。
【請求項3】
自閉症スペクトラム障害(ASD
)の療法の有効性をモニタリングするための方法であって:
a.前記療法を施用された被験者から単離された血液のサンプルを提供するステップと;
b.前記サンプルの総タンパク質中のCML、CMA、DT、及び3DG-Hの濃度を検出するステップと;
c.ステップ(b)で決定された被検物質のレベルを、訓練され試験されたアルゴリズムの特徴として使用して、療法初期前にASDが存在する確率を推定するステップと;
ASDの存在確率の変化が検出された場合、有効性の存在を確認するステップと;
ASDの存在確率の変化が検出されない場合、有効性の非存在を確認するステップと;を備える、
自閉症スペクトラム障害(ASD
)の療法の有効性をモニタリングするための方法。
【請求項4】
診断アルゴリズムを用いて行われ、
前記診断アルゴリズムは、サンプル中で検出されたアミノ酸の前記濃度に基づき、前記ASDの有無を診断するように構成されており、
前記診断アルゴリズムは、1つ又は複数の参照標準中の、すなわち正常な小児期発達を有する被験者及び既知のASDを有する被験者における、同じアミノ酸についての対応する濃度に関して訓練される、
請求項1から請求項3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
血液サンプルは、血漿、及び、血清から選択される、
請求項1から請求項4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
総血漿又は血清タンパク質中の、アミノ酸(CML、CMA、DT、3DG-H)、及び、正規化アミノ酸(リジン、アルギニン、チロシン)は、安定同位体希釈分析液体クロマトグラフィ-タンデム質量分析、反応モニタリング(SRM)質量分析、又は、これらの被検物質を特定するのに適切な他の方法によって検出される;
請求項1から請求項5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記自閉症スペクトラム障害
(ASD)は、自閉症、アスペルガ症候群、特定不能な広汎性発達障害(PDD-NOS)、及び幼児期崩壊性障害のうちの1種又は複数種から選択される、
請求項1から請求項6の何れか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミノ酸付加物の使用を含む、自閉症スペクトラム障害(ASD)を診断するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自閉症スペクトラム障害(自閉的スペクトラム障害、自閉スペクトラム症、ASD)は、主として社会的相互作用及び関心の範囲に影響を及ぼし、言語障害、反復及び/又は脅迫行動、多動性、不安及び新しい環境への適応困難性など、広い範囲の他の障害を引き起こす発達障害であると定義され、認知機能障害を伴うこともあれば伴わないこともある。臨床所見の不均一性が高いため、特に成長の初期段階では、ASDの診断は困難で不確実である。自閉症は小児の約1%に及び、その有病率は、通常、女児(0.5%)よりも男児(1.5%)の方が高い。
【0003】
ASDは、今では、患者の症状に関する臨床医の知見に基づいて診断される。標準化された活動での患者の成績を評価することから導き出された各種スコアが使われるが、それには、自閉症診断観察スケジュール(Autism Diagnostic Observation Schedule、ADOS)スコア、小児自閉症評定尺度(Childhood Autism Rating Scale、CARS)、乳幼児期自閉症チェックリスト(Checklist for Autism in Toddlers、CHAT)、及び対人コミュニケーション質問紙(Social Communication Questionnaire、SCQ)が含まれる。しかし、これらの評価は主観的であり、より重篤な症状への進行リスクの評価や療法に対する反応の評価に関する情報は提供されない。これらの方法の能力はよいものではなく、その感度は20%から70%、及び、50%から80%に過ぎない。また、実施には、専門家、即ち経験豊富な医療従事者が必要となる。したがって、患者の自閉症を診断する改善された方法に対する必要性が存在する。
【0004】
現在、自閉症のための臨床化学も画像検査も存在しない。診断は、上記のように、社会的相互作用の障害と関心の範囲とについての臨床評価に基づいている。ASDの診断のために、トランスクリプトーム、プロテオーム、及びメタボロームプロファイリングが提案されており、受信者(レシーバ)動作特性の曲線下面積(AUROC)プロットによって判断される診断能は、0.73から0.91である。しかし、こうした先行技術の方法は、特異度が低い。最近のこうした展開にもかかわらず、高い感度と特異度でASD被験者を診断する安価で侵襲性の低い試験に対する必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、血漿タンパク質中の化学的に定義された酸化、ニトロ化及び糖化アミノ酸残基並びに血漿及び尿中の関連する酸化、ニトロ化、及び糖化アミノ酸の痕跡レベル(例えば、発達が正常で、ASD児と年齢及び性別が一致する小児における)の検出に基づく診断方法を提供することにより、上記の問題の少なくとも1つを解決する。更に、ASDを持つ小児と持たない小児を判別するための機械学習ステップ(アルゴリズムにおけるこれらの代謝産物の最適な組合せのデータドリブン(データ駆動)選択)が提供される。
【0006】
本発明者らは、ASD児と健全な対象の血漿タンパク質中のタンパク質糖化、酸化、及びニトロ化付加物と、血漿及び尿中の関連する遊離付加物との濃度を定量化することが、ASDに対する確固たる診断的有用性を有することを発見した。
【0007】
有利なことに、今では、ASDの診断を血液又は尿サンプルの測定によって行うことができる。本診断方法は客観的であり、感度及び/又は特異度及び/又は精度が高い。短時間(例えば、30分)の決められた臨床化学訓練を受けた非専門家が実施してもよい。この試験は、小児(例えば、ASDの疑いがある、又はASDの素因がある小児)のスクリーニングに適している。
【発明を実施するための形態】
【0008】
従って、本発明は、一の態様において、自閉的スペクトラム障害(ASD)を診断するための方法を提供し、前記方法は:
a.被験者から取得したサンプル中のアミノ酸付加物の濃度を検出するステップであって、前記アミノ酸付加物は、糖化アミノ酸付加物、酸化アミノ酸付加物、又はニトロ化アミノ酸付加物である、前記検出するステップと;
b.サンプル中のアミノ酸付加物の濃度を参照標準中の同じアミノ酸付加物の濃度と比較するステップと;
c.参照標準に対するサンプル中のアミノ酸付加物の濃度差の有無を識別するステップと;を備え、
濃度差の有無はASDの有無と相関する。
【0009】
有利なことに、前記アミノ酸付加物の濃度の変化は、ASDの有無と相関する。
【0010】
ASDの有無を検出するステップは、更に、予後が良好であるか不良であるかを判定できるようにしてもよい。ASDが有ることは、不良な予後の判定を可能とする一方、ASDが無いことは、良好な予後の判定を可能とする。したがって、一の態様において、本発明は、自閉的スペクトラム障害(ASD)の予後を判定するための方法を更に提供し、前記方法は:
a.被験者から取得したサンプル中のアミノ酸付加物の濃度を検出するステップであって、アミノ酸付加物は、糖化アミノ酸付加物、酸化アミノ酸付加物、又はニトロ化アミノ酸付加物である、前記検出するステップと;
b.サンプル中のアミノ酸付加物の濃度を参照標準中の同じアミノ酸付加物の濃度と比較するステップと;
c.参照標準に対するサンプル中のアミノ酸付加物の濃度差の有無を識別するステップと;を備え、
濃度差の有無は、良好な予後又は不良な予後と相関する。
【0011】
用語「自閉的スペクトラム障害」又は「自閉症スペクトラム障害」(ASD)は、本明細書で用いられる場合、典型的には社会的相互作用と関心の範囲に影響を及ぼし、言語障害、反復及び/又は脅迫行動、多動性、不安及び新しい環境への適応困難性などの広範囲の他の障害を引き起こす発達障害の多様な群を含み、認知機能障害を伴うことも伴わないこともある。こうした障害として、自閉症、アスペルガ症候群、特定不能な広汎性発達障害(PDD-NOS)、及び幼児期崩壊性障害が挙げられる。好ましくは、用語ASDは自閉症を意味する。
【0012】
用語「被験者」、「個体」及び「患者」は、本明細書においては互いに交換可能に用いられ、哺乳類の被験者を指す。一の実施の形態において、「被験者」はヒト、コンパニオンアニマル(例えば、イヌ、ネコ、及びウサギなどのペット)、家畜(例えば、ブタ、ヒツジ、ウシ、及びヤギ)、並びにウマである。好ましい実施の形態において、被験者はヒト、例えば小児(human child)、である。本発明の方法において、被験者は、以前に、ASDであると診断されたことがなくてもよく、被験者は、以前に、ASDであると診断されたことがあってもよい。被験者は、疾患リスク因子を呈する者であってもASDの症状がない者であってもよい。被験者は、ASDに罹患していてもASDを発症するリスクを負っていてもよい。一の実施の形態において、被験者は定型発達(Typically Developing)被験者である。当業者は理解することであるが、定型発達被験者は、ASDを有する又は発症するリスクが高い被験者である。したがって、一の実施の形態において、本発明の方法を用いて被験者にASDが有ることを確認してもよい。例えば、被験者は、以前に、被験者が呈する症状の分析を通じてASDが有ると診断されたことがあってもよい。
【0013】
検出するステップ(例えば、アミノ酸付加物の)は、当該技術分野で公知である適切で任意な方法を用いて実行してもよい。例えば、質量分析を用いてもよい。一の実施の形態において、検出するステップは、安定同位体希釈分析液体クロマトグラフィ-タンデム質量分析(LC-MS/MS)などの液体クロマトグラフィ-タンデム質量分析を用いて実行される。別の実施の形態において、検出するステップは、免疫学的検定によって実行される。前記免疫学的検定は、本明細書で述べるアミノ酸付加物のうちの1種又は複数種に結合する1種又は複数種の抗体の使用を採用してもよい。したがって、一の態様において、被験者における自閉的スペクトラム障害の診断に用いるための抗体組成物が提供され、前記抗体組成物は、本明細書で述べるアミノ酸付加物の1種又は複数種に結合させる。本発明の方法は、本発明のキット又はその一部の使用を含んでもよい。例えば、本方法は、本明細書で述べる試薬(好ましくは同位体試薬)の使用を含んでもよく、好ましくは、本明細書で述べる標準(例えば、同位体標準)の使用を含む。
【0014】
サンプル中のアミノ酸付加物の濃度を検出するステップは、好ましくは、例えばその相対量又は絶対量を特定することによってアミノ酸付加物を定量化するステップを含む。言うまでもなく、本発明の多くの用途には相対値で十分な場合があるため、解析方法は、所望されない限り、アミノ酸付加物の絶対濃度の測定を必ずしも必要としない。したがって、「濃度」は、サンプル中に検出されるアミノ酸付加物の(絶対)総濃度とすることもでき、「相対」濃度、例えば、サンプル中に検出されるアミノ酸付加物と、例えばサンプルの別の構成物質との差とすることもできる。実施の形態によっては、アミノ酸付加物の濃度を、サンプル中のその濃度によって、又はアミノ酸付加物を検出する試薬の濃度によって表してもよい。一の実施の形態において、本発明の方法は、サンプル中のクレアチニンの濃度を検出するステップを更に含んでもよい。したがって、本発明の方法でアミノ酸付加物の濃度を検出する場合、アミノ酸付加物の濃度を、サンプル中に検出されるクレアチニンの濃度に正規化してもよい。
【0015】
本発明の方法又は使用は、濃度の増加又は減少を検出するステップを含んでもよい。本発明の方法又は使用は、濃度の不変(又は実質的に不変)を検出するステップを更に含んでもよい。
【0016】
増加は、参照標準と比較して、アミノ酸付加物の濃度の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%、100%、110%、120%、130%、140%又は150%の増加であってもよい。前記アミノ酸付加物の濃度の増加は、好ましくは統計的に有意である。実施の形態によっては、前記増加は、濃度の倍率変化(例えば、log2で表される)によって識別してもよい。一の実施の形態において、濃度の増加は、参照標準と比較して、少なくとも約1.1倍、1.2倍、1.25倍、又は1.5倍、高くてもよい。
【0017】
減少は、参照標準と比較した場合、アミノ酸付加物の濃度の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、又は99%であってもよい。前記アミノ酸付加物の濃度差は、好ましくは統計的に有意である。実施の形態によっては、前記減少は、濃度の倍率変化(例えば、log2で表される)によって識別してもよい。一の実施の形態において、濃度の減少は、参照標準と比較して、少なくとも約-1.1倍、-1.2倍、-1.25倍、又は-1.5倍であってもよい。
【0018】
本発明の方法は、好ましくは、診断アルゴリズム又は他のデータドリブン組合せアプローチの使用を含む。一の実施の形態において、アミノ酸付加物の検出された濃度は、診断アルゴリズム(例えば、一の態様において本発明により提供され得るコンピュータソフトウェアプログラムの一部としての)に入力され、前記診断アルゴリズムは、ASDの有無を指し示す。一の態様において、本発明の診断アルゴリズム又は診断方法を提供するように適合させたソフトウェアが提供される。本発明は、前記ソフトウェア、診断アルゴリズム、及び/又は診断方法を提供するように適合されたプロセッサにも及ぶ。
【0019】
当業者は理解することであるが、任意の適切なアルゴリズム(本明細書で述べるアルゴリズムの何れかを含む)を用いることができる。一の実施の形態において、診断アルゴリズムは、ランダムフォレスト、ロジスティック回帰、アンサンブル分類器、サポートベクターマシン(SVM)、一般線形モデル(GLM)、及びGLMNET、のうちから選択される1種又は複数種である。好ましくは、アルゴリズムはSVMである。
【0020】
一の実施の形態において、ステップ(b)及び/又はステップ(c)は、サンプル中に検出されたアミノ酸付加物の濃度に基づきASDの有無を診断するように構成された診断アルゴリズムを用いて行われ、前記診断アルゴリズムは、1又は複数(好ましくは複数)の参照標準中の同じアミノ酸付加物についての対応する濃度に関して訓練される。参照標準は、好ましくはASD及び非ASDの参照標準であってもよい。実施の形態によっては、アルゴリズムは、診断方法の特異度及び/又は感度及び/又は精度を向上させるため、異なるアミノ酸付加物に異なる予測重み付けを提供する。前記実施の形態は、予後を特定するための方法などの他の方法に適用できる。
【0021】
したがって、一の態様において、自閉的スペクトラム障害(ASD)を診断するための方法が提供され、前記方法は:
a.被験者から取得したサンプル中のアミノ酸付加物の濃度を検出するステップであって、前記アミノ酸付加物は、糖化アミノ酸付加物、酸化アミノ酸付加物、又はニトロ化アミノ酸付加物である、前記検出するステップと;
b.サンプル中に検出されたアミノ酸付加物の濃度に基づきASDの有無を診断するために、診断アルゴリズムを用いるステップであって、前記診断アルゴリズムは、1つ又は複数(好ましくは複数)の参照標準における同じアミノ酸付加物についての対応する濃度に関して訓練される、前記用いるステップと;を含む。
【0022】
同様に、予後を特定するため、ASDの処置に適する療法を識別するため、及びASD療法の有効性をモニタリングするための方法も提供される。
【0023】
ASD療法を識別するための方法に関する実施の形態において、ASDが無いことを検出することは、ASDの処置に適した候補療法の指標となる可能性があり、一方、ASDの有ることを検出することは、ASDの処置に適さない候補療法の指標となる可能性がある。
【0024】
ASD療法の有効性をモニタリングするための方法に関する実施の形態において、ASDが無いことを検出することは、有効性が有ることの指標となる可能性があり、一方、ASDの有ることを検出することは、有効性が無いことの指標となる可能性がある。
【0025】
一の実施の形態において、ステップ(b)及び/又は(c)は、前記診断アルゴリズムによってサンプル中に検出されたアミノ酸付加物の濃度に基づき、被験者の健康状態を分類するように構成された診断アルゴリズムによって/を用いて行われ、前記診断アルゴリズムは、既知の疾病状態を有する被験者の母集団から取得した同じアミノ酸付加物(即ち、参照標準)についての対応する濃度に関して訓練される。実施の形態によっては、アルゴリズムは、本発明の特異度及び/又は感度及び/又は精度を向上させるため、異なるアミノ酸付加物に異なる予測重み付けを提供する。
【0026】
本発明のために用いられるサンプルは、アミノ酸付加物を含有する可能性のある任意のサンプルである。適切には、サンプルは、ASDの疑いがある被験者から単離されてもよい。実施の形態によっては、サンプルは、ASDであると診断された被験者から単離される。適切には、サンプルは、血液、尿、眼液、リンパ液、唾液、滑液、精液、脳脊髄液、皮脂腺分泌物、及び/又は痰のうちの1種又は複数種から選択されてもよい。当業者は理解することであるが、前記サンプルは、本明細書で述べられ当業者に公知であるような従来手法によって、分析のために前処理されてもよい。例えば、サンプルを、検出に先立って加水分解してもよい。一の実施の形態において、加水分解は酵素的に実行される。酵素消化によるタンパク質の加水分解は、分析前処理中のサンプルの被検物質含有量を損なうことがある酸加水分解の厳しい条件を回避するため、有利である。一の実施の形態において、酵素消化は、ペプシンによる処理と、任意の選択でそれに続くプロナーゼE、プロリダーゼ、及びアミノペプチダーゼによる処理とを含んでもよい。限定するものではないが、加えて、特に、解析すべきタンパク質が細胞外基質中に存在する場合、コラゲナーゼを用いてもよい。自動化された完全な酵素加水分解により、厳しい分析前処理を回避してもよい。一の実施の形態において、加水分解に先立って、先ず、タンパク質を限外ろ過によって洗浄して遊離アミノ酸を除去してもよく、残ったタンパク質を加水分解用に収集する。一の実施の形態において、残ったタンパク質を脱脂してから加水分解してもよい。
【0027】
好ましくは、サンプルは血液サンプルである。用語「血液サンプル」は、全血だけでなく、血液を1つ又は複数の処理ステップ(例えば、血液画分を得るための分画)に供した後に取得されるサンプルも含んでいる。例えば、血液は、血漿であっても血清サンプルであってもよい。前記サンプルは、タンパク質(任意選択でアミノ酸を除く)を含有する血液サンプル(例えば、血清タンパク質サンプル)であってもよく、タンパク質が除去された血液サンプル(例えば、限外ろ過液などのろ液)であってもよい。一の実施の形態において、サンプルは血漿サンプルであり、前記血漿サンプルは、好ましくはポリペプチド配列に含まれるアミノ酸付加物を含み、遊離アミノ酸付加物を欠く。
【0028】
本発明の方法において血液、血漿、血清及び/又は尿を用いる重要な利点は、これらのサンプルを容易に入手可能であり、低侵襲手法を用いて取得できることである。これは、敏感な被験者(例えば、小児)に対してASDの診断を試みる場合は特に有利である。
【0029】
一の実施の形態において、サンプルは、サンプル中の前記アミノ酸付加物の濃度を検出する前に、限外ろ過により処理してサンプルから遊離アミノ酸付加物を単離してもよい。限外ろ過液サンプル(遊離アミノ酸付加物を含有する)は、本発明に従って収集し、用いることができる。
【0030】
一の実施の形態において、酸化、ニトロ化、及び糖化遊離付加物は、マイクロスピン限外ろ過によって収集される。少なくとも約10kDaの分画分子量(molecular weight cut off)を限外ろ過ステップに用いてもよい。一の実施の形態において、分画分子量は、少なくとも約5kDa(例えば、少なくとも約6kDa、7kDa、8kDa、9kDa、10kDa、11kDa、12kDa、13kDa、14kDa、又は15kDa)である。限外ろ過ステップは、約2℃と10℃との間の温度、例えば約4℃、で実行してもよい。
【0031】
したがって、用語「血漿限外ろ過液」は、本明細書において用いられる場合、血漿を限外ろ過に供して(例えば、上記のように)遊離アミノ酸付加物を単離することによって得られるサンプルを指す。同様に、用語「尿限外ろ過液」は、本明細書において用いられる場合、尿を限外ろ過に供して遊離アミノ酸付加物を単離することによって得られるサンプルを指す。
【0032】
本明細書において用いられる場合、用語「アミノ酸付加物」は、酸化、ニトロ化、又は糖化されたアミノ酸を指す。アミノ酸付加物は、ポリペプチド配列(例えば、「付加物残基」)に含まれていてもよい。或いは、アミノ酸付加物は、「遊離付加物」(例えば、ポリペプチド配列に含まれていない)であってもよい。実施の形態によっては、「遊離付加物」は、アミノ酸付加物を含むポリペプチド配列のタンパク質分解後に被験者の体液(例えば、血液及び/又は尿)中に放出されるタンパク質分解消化産物であってもよい。実施の形態によっては、遊離付加物の濃度が検出される。これに代えて、又はこれに加えて、ポリペプチド配列中に存在するアミノ酸付加物の濃度が検出される。
【0033】
本発明は、アミノ酸付加物又はその任意の異性体(例えば、構造異性体)の検出を包含する。例えば、3DG-Hは、3種の構造異性体として存在し、一の実施の形態において、3種の構造異性体全てが検出される。MG-H1及びG-H1も、3種の構造異性体として存在する。一の実施の形態において、MG-H1及びG-H1の3種の構造異性体全てが検出され、好ましくは、MG-H1及びG-H1の異性体1が検出される。
【0034】
タンパク質毒性ストレス及び折りたたみ不全タンパク質応答(Unfolded Protein Response、UPR)の活性化につながるタンパク質恒常性の障害は、ASDの存在に関連することが発見されている。タンパク質の質を悪化させる要因は、糖化、酸化、及びニトロ化による自発的修飾の増加である。タンパク質の糖化は、タンパク質と、グルコース、反応性ジカルボニル代謝産物、グリオキサル、メチルグリオキサル(MG)、及び3-デオキシグルコソン(3-DG)、並びに、他の単糖類及び単糖誘導体との自然反応によって生ずる。タンパク質糖化付加物は、グルコースによるタンパク質の糖化によって形成されるNε-フルクトシル-リジン(FL)残基などの初期段階の糖化付加物と;FL残基の分解によって形成されるNε-カルボキシメチル-リジン(CML)及びグルコセパン(GSP)残基、グリオキサル由来ヒドロイミダゾロン(G-H1)、メチルグリオキサル由来ヒドロイミダゾロン(MG-H1)及び3-デオキシグルコソン由来ヒドロイミダゾロン(3DG-H)(それぞれグリオキサルMG及び3-DGによるアルギニン残基の修飾によって形成される)、Nω-カルボキシメチルアルギニン(CMA)(同様にグリオキサルとアルギニン残基との反応によって形成される)、並びにメチルグリオキサル由来リジン架橋体(MOLD)などの糖化最終産物(AGE)として公知の後期段階の付加物と;に分類される。タンパク質の酸化は、タンパク質と活性酸素種(ROS)との反応によって生じ、酸化的ストレス中で増加する。タンパク質酸化付加物の例は、ジチロシン(DT)、N-ホルミルキヌレニン(NFK)、α-アミノアジピン酸セミアルデヒド(AASA)、及びグルタミン酸セミアルデヒド(GSA)残基である。酸化ストレス及び神経炎症に伴う酸化的損傷の増加は、ASD(例えば、小児における)の一般的な特徴となり得る。タンパク質のニトロ化は、タンパク質と、ペルオキシ亜硝酸などの反応性窒素種との反応によって生ずる。タンパク質のニトロ化によって形成される主な付加物は、3-ニトロチロシン(3-NT)残基(
図1B)である。これらのメカニズムによるタンパク質損傷の増加は、タンパク質毒性の脅威及び関連する炎症反応に抗するためのUPRの活性化につながり得る。糖化、酸化、及びニトロ化タンパク質は、タンパク質分解を受けて関連する糖化、酸化、及びニトロ化アミノ酸を形成し、これらは、糖化、酸化、及びニトロ化遊離付加物とも呼ばれる。糖化、酸化、及びニトロ化アミノ酸は血漿中に放出され、尿に排せつされる。糖化、酸化、及びニトロ化遊離付加物の尿中排せつは、それぞれタンパク質の糖化、酸化、及びニトロ化の全身フラックスのおおよその尺度である。アミノ酸の直接糖化、酸化、及びニトロ化、並びに消化後の食品からの損傷タンパク質の吸収、によるこれらの代謝産物の貯蔵へのわずかな寄与も存在する。
【0035】
一の実施の形態において、アミノ酸付加物は糖化アミノ酸付加物である。
【0036】
糖化アミノ酸付加物は、Nε-フルクトシル-リジン(FL)、グリオキサル由来ヒドロイミダゾロン(G-H1)、Nε-(1-カルボキシエチル)リジン(CEL)、3-デオキシグルコソン由来ヒドロイミダゾロン(3DG-H)、Nε-カルボキシメチル-リジン(CML)、Nω-カルボキシメチルアルギニン(CMA)、メチルグリオキサル由来ヒドロイミダゾロン(MG-H1)、ピラリン、グルコセパン(GSP)、及びメチルグリオキサル由来リジン二量体(MOLD)から選択される1種又は複数種であってもよい。
【0037】
一の実施の形態において、アミノ酸付加物は酸化アミノ酸付加物である。
【0038】
酸化アミノ酸付加物は、ジチロシン(DT)、N-ホルミルキヌレニン(NFK)、α-アミノアジピン酸セミアルデヒド(AASA)、及びグルタミン酸セミアルデヒド(GSA)から選択される1種又は複数種(好ましくはNFK、AASA、及びGSAから選択される1種又は複数種)であってもよい。
【0039】
一の実施の形態において、アミノ酸付加物はニトロ化アミノ酸付加物である。ニトロ化アミノ酸付加物は、3-ニトロチロシン(3-NT)であってもよい。
【0040】
実施の形態によっては、本発明は、糖化アミノ酸、酸化アミノ酸、及び/又はニトロ化アミノ酸の濃度を検出するステップを含む。好ましくは、本発明は、糖化アミノ酸及び酸化アミノ酸の濃度を検出するステップを含む。実施の形態によっては、従来の(標準的)アミノ酸の濃度を検出してもよい(例えば、本明細書における「従来のアミノ酸」の項に記載されているように)。前記従来のアミノ酸は、アラニン、システイン、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、リジン、ロイシン、メチオニン、アスパラギン、ピロリシン、プロリン、グルタミン、アルギニン、セリン、トレオニン、セレノシステイン、バリン、トリプトファン、及びチロシンから選択される1種又は複数種であってもよい。
【0041】
好ましくは、アミノ酸付加物は、Nε-カルボキシメチル-リジン(CML)、3-デオキシグルコソン由来ヒドロイミダゾロン(3DG-H)、Nω-カルボキシメチルアルギニン(CMA)、ジチロシン(DT)、グルタミン酸セミアルデヒド(GSA)、グリオキサル由来ヒドロイミダゾロン(G-H1)、ピラリン、メチルグリオキサル由来ヒドロイミダゾロン(MG-H1)、Nε-フルクトシル-リジン(FL)、Nε-(1-カルボキシエチル)リジン(CEL)、α-アミノアジピン酸セミアルデヒド(AASA)、及びメチルグリオキサル由来リジン二量体(MOLD)から選択される1種又は複数種(より好ましくはCML、3DG-H、CMA、GSA、G-H1、ピラリン、MG-H1、FL、CEL、AASA、及びMOLDから選択される1種又は複数種)である。
【0042】
より好ましくは、アミノ酸付加物は、Nε-カルボキシメチル-リジン(CML)、3-デオキシグルコソン由来ヒドロイミダゾロン(3DG-H)、Nω-カルボキシメチルアルギニン(CMA)、ジチロシン(DT)、グルタミン酸セミアルデヒド(GSA)、グリオキサル由来ヒドロイミダゾロン(G-H1)、及びピラリンから選択される1種又は複数種(更により好ましくはCML、3DG-H、GSA、G-H1、及びピラリンから選択される1種又は複数種)である。
【0043】
一の実施の形態において、非ASD参照標準と比較した場合、
a.CML、CMA、DT、及びGSA(好ましくはCML、CMA、及び/又はGSA)から選択される1種又は複数種(好ましくは全て)の濃度は増加し;及び/又は(好ましくは、及び)、
b.3DG-H及びG-H1(遊離付加物)から選択される1種又は複数種(好ましくは全て)の濃度は減少し;
好ましくは、ASDの存在を指し示す(例えば、前記濃度プロファイルがASDの存在と相関がある)。当業者は理解することであるが、先に詳述したアミノ酸付加物濃度プロファイルが検出されない場合、それは、好ましくはASDの非存在を指し示す。好ましくは、サンプルは血液サンプルである。
【0044】
別の実施の形態において、ASD参照標準と比較した場合、
a.CML、CMA、DT、及びGSA(好ましくはCML、CMA、及び/又はGSA)から選択される1種又は複数種(好ましくは全て)の濃度は、同じであるか増加し;及び/又は(好ましくは、及び)、
b.3DG-H及びG-H1(遊離付加物)から選択される1種又は複数種(好ましくは全て)の濃度は、同じであるか減少し;
好ましくは、ASDの存在を指し示す(例えば、前記濃度プロファイルがASDの存在と相関する)。当業者は理解することであるが、先に詳述したアミノ酸付加物濃度プロファイルが検出されない場合、それは、好ましくはASDの非存在を指し示す。好ましくは、サンプルは血液サンプルである。
【0045】
一の実施の形態において、非ASD参照標準と比較した場合、
a.CML、CMA、及びDT(好ましくはCML及び/又はCMA)から選択される1種又は複数種(好ましくは全て)の濃度は増加し;及び/又は(好ましくは、及び)、
b.3DG-Hの濃度は減少し;
好ましくは、ASDの存在を指し示す(例えば、前記濃度プロファイルがASDの存在と相関する)。当業者は理解することであるが、先に詳述したアミノ酸付加物濃度プロファイルが検出されない場合、それは、好ましくはASDの非存在を指し示す。好ましくは、サンプルは血漿タンパク質サンプルである。
【0046】
一の実施の形態において、ASD参照標準と比較した場合、
a.CML、CMA、及びDT(好ましくはCML及び/又はCMA)から選択される1種又は複数種(好ましくは全て)の濃度は同じであるか増加し;及び/又は(好ましくは、及び)、
b.3DG-Hの濃度は同じであるか減少し;
好ましくは、ASDの存在を指し示す(例えば、前記濃度プロファイルがASDの存在と相関する)。当業者は理解することであるが、先に詳述したアミノ酸付加物濃度プロファイルが検出されない場合、それは、好ましくはASDの非存在を指し示す。好ましくは、サンプルは血漿タンパク質サンプルである。
【0047】
一の実施の形態において、非ASD参照標準と比較した場合、CML及び/又はCMA(好ましくはCML及びCMA)の濃度は増加する。好ましくは、サンプルは血漿限外ろ過液サンプルである。
【0048】
一の実施の形態において、ASD参照標準と比較した場合、CML及び/又はCMA(好ましくはCML及びCMA)の濃度は同じであるか増加する。好ましくは、サンプルは血漿限外ろ過液サンプルである。
【0049】
一の実施の形態において、非ASD参照標準と比較した場合、GSA及び/又はピラリン(好ましくはGSA及びピラリン)の濃度は増加する。一の実施の形態において、ASD参照標準と比較した場合、GSA及び/又はピラリン(好ましくはGSA及びピラリン)の濃度は同じであるか増加する。好ましくは、サンプルは尿サンプルである。
【0050】
一の実施の形態において、先に示したアミノ酸付加物濃度プロファイルは、ASDの存在を指し示す(例えば、前記濃度プロファイルは、ASDの存在と相関する)。当業者は理解することであるが、先に詳述したアミノ酸付加物濃度プロファイルが検出されない場合、それは、好ましくはASDの非存在を指し示す。
【0051】
一の実施の形態において、用語「1種又は複数種」は、本明細書で述べるアミノ酸付加物の文脈において用いられる場合、アミノ酸付加物のうちの少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、又は11種を意味する。
【0052】
一の実施の形態において、用語「1種又は複数種」は、本明細書で述べるアミノ酸付加物の文脈において用いられる場合、アミノ酸付加物のうちの少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、又は15種を意味する。
【0053】
好ましい実施の形態において、用語「1種又は複数種」は、本明細書で述べるアミノ酸付加物の文脈において用いられる場合、アミノ酸付加物のうちの少なくとも2種を意味する。
【0054】
特に好ましい実施の形態において、用語「1種又は複数種」は、本明細書で述べるアミノ酸付加物の文脈において用いられる場合、アミノ酸付加物の全て(例えば、アミノ酸付加物のそれぞれの組合せ)を意味する。
【0055】
本発明者らは、ある特定のアミノ酸付加物は、それと相関するアミノ酸付加物によって代用できることを発見した(
図17から
図21参照)。アミノ酸付加物間の正の相関は、アミノ酸付加物の一方の濃度が増加すると、他方のアミノ酸付加物の濃度も増加することを指し示し;アミノ酸付加物間の負の相関は、アミノ酸付加物の一方の濃度が増加すると他方が減少することを指し示す。したがって、当業者は、相関する適切なアミノ酸付加物を選んで上記と代用することができ、正又は負の相関によって指し示されるように、参照標準に対して前記アミノ酸の濃度が増加するか減少するかを特定できる。一の実施の形態において、適切なスケーリング定数が決定され、代用されるアミノ酸付加物に適用される。
【0056】
例えば、アミノ酸付加物は、以下の表に示すように相関する(代用される):
【0057】
参照標準は、ASD参照標準であっても非ASD参照標準であってもよい。
【0058】
「非ASD参照標準」は、ASDではない被験者(例えば、健全な被験者)から取得したサンプルを指す。例えば、「非ASD参照標準」は、ASDであると診断されたことがなく、ASDの症状を呈していない被験者から取得してもよい。
【0059】
或いは、「ASD参照標準」は、ASDである被験者から取得したサンプルを指す。例えば、「ASD参照標準」は、ASDであると診断されたことがあり、1つ又は複数のASD症状を呈する被験者から得てもよい。こうした診断は、患者の症状に関する臨床医の知見に基づくなど、1つ又は複数の従来方法を用いて実行されてきたものでもよく、そこでは、標準化された活動における患者の成績(能力)の評価から導き出されるスコアが用いられ、それには、自閉症診断観察スケジュール(ADOS)スコア、小児自閉症評定尺度(CARS)、乳幼児期自閉症チェックリスト(CHAT)、及び対人コミュニケーション質問紙(SCQ)が含まれる。
【0060】
本発明の方法において用いられる参照標準は、本発明の方法に用いられるサンプルを取得する被験者と一致する年齢及び/又は性別であってもよい。
【0061】
一の実施の形態において、本発明の方法は、先に参照した従来のASD診断方法のうちの1つと組み合わせて実行される。
【0062】
参照標準中の検出されたアミノ酸付加物の濃度は、本発明の方法に先立って取得されていた(例えば、定量化されていた)ものであってもよい。
【0063】
参照標準は、好ましくは、試験をするサンプルの種類と同じサンプルの種類に由来するものであり、そうすれば、その2つ(又はそれ以上)の適切な比較が可能となる。したがって、例として、サンプルが尿に由来する場合、参照標準も尿に由来するものである。或いは、サンプルが血液サンプル(例えば、血漿又は血清サンプル)である場合、参照標準も血液サンプル(例えば、必要に応じて血漿サンプル又は血清サンプル)とする。
【0064】
サンプルと参照標準を比較する場合、濃度を表す方法は、サンプルと参照標準とで一致させる。したがって、絶対濃度は絶対濃度と比較でき、相対濃度は相対濃度と比較できる。同様に、診断アルゴリズムによる分類のための濃度を表す方法(以下に記載するような)は、診断アルゴリズムを訓練するための濃度を表す方法と一致させる。
【0065】
一の実施の形態において、アミノ酸付加物の濃度は、同じサンプルで検出されたクレアチニンの濃度対して正規化される。
【0066】
一の実施の形態において、アミノ酸付加物の濃度は、それらのアミノ酸残基(例えば、未修飾アミノ酸残基)前駆体に対して正規化され、好ましくは、アミノ酸1モル当たりのアミノ酸付加物のmmol(mmol/mol)として表される。
【0067】
参照標準は、本発明の方法の範囲内で取得する(即ち、本発明の方法のステップを構成する)ものとしても、本発明の方法の外部で取得する(即ち、本発明の方法のステップを構成しない)ものとしてもよい。一の実施の形態において、本発明の方法は、参照標準を取得するステップを含んでもよい。一の実施の形態において、参照標準は、本発明の方法の外部で取得され、本発明の比較するステップの際にアクセスされる。
【0068】
一の実施の形態において、参照標準は、一人の被験者に由来する1つ又は複数のサンプル中のアミノ酸付加物の濃度である。或いは、参照標準は、多数(複数)の被験者から取得したデータを蓄積し、各アミノ酸付加物について平均(例えば、平均値又は中央値)濃度を計算することによって得られるものであってもよい。したがって、参照標準は、多数(複数)の被験者におけるアミノ酸付加物の平均濃度を反映し得る。
【0069】
実施の形態によっては、サンプル中のアミノ酸付加物の濃度を検出するステップは、サンプル中のアミノ酸付加物の非存在を検出するステップを含む。
【0070】
アミノ酸付加物(又はアミノ酸)の濃度差の有無を検出することは、ASDの有無に相関する。
【0071】
参照標準が非ASD参照標準である実施の形態において、濃度差の存在を検出することは、ASDの存在を指し示し得るものであり、濃度差の非存在を検出することは、ASDの非存在を指し示し得るものである。しかし、非ASD参照標準と比較した場合のアミノ酸付加物の濃度増加がASDの存在と相関することが確立されている場合、当業者は理解することであるが、非ASD参照標準と比較した場合の前記濃度の減少(又は不変)は、ASDの存在を指し示し得ていない場合がある。同様に、非ASD参照標準と比較した場合のアミノ酸付加物の濃度減少がASDの存在と相関することが確立されている場合、当業者は理解することであるが、非ASD参照標準と比較した場合の前記濃度の増加(又は不変)は、ASDの存在を指し示し得ていない場合がある。
【0072】
参照標準がASD参照標準である実施の形態において、濃度差の存在を検出することは、ASDの非存在を指し示し得るものであり、濃度差の非存在を検出することは、ASDの存在を指し示し得るものである。しかし、非ASD参照標準と比較した場合のアミノ酸付加物(又はアミノ酸)の濃度増加がASDの存在と相関することが確立されている場合、当業者は理解することであるが、ASD参照標準と比較した場合の前記濃度の(更なる)増加は、依然としてASDの存在を指し示している場合がある。同様に、非ASD参照標準と比較した場合のアミノ酸付加物(又はアミノ酸)の濃度減少がASDの存在と相関することが確立されている場合、当業者は理解することであるが、ASD参照標準と比較した場合の前記濃度の(更なる)減少は、依然としてASDの存在を指し示している場合がある。
【0073】
関連する態様において、自閉的スペクトラム障害(ASD)を診断するための方法が提供され、前記方法は:
a.被験者から取得したサンプル中のアミノ酸付加物の濃度を検出するステップであって、前記アミノ酸付加物は、糖化アミノ酸付加物、酸化アミノ酸付加物、又はニトロ化アミノ酸付加物である、前記検出するステップと;
b.サンプル中に検出されたアミノ酸付加物の濃度に基づき、診断アルゴリズムによって被験者の健康状態を分類するステップであって、診断アルゴリズムは、既知の疾病状態を有する被験者の母集団から取得した同じアミノ酸付加物についての対応する濃度に関して訓練され、それにより被験者におけるASDの有無を診断する、前記分類するステップと;を含む。
【0074】
一の実施の形態において、本発明のこの態様は、機械学習アプローチを介して展開される診断アルゴリズムを用い、診断アルゴリズムは2分割交差検証によって訓練され、例えば、50%のASD及び非ASD(対照、Control)被験者(訓練部分集合)において検出されたアミノ酸付加物の濃度に基づいて訓練され、その後、残りの50%の被験者(試験集合)について疾病状態を予測するために用いられる-例えば
図2を参照。
【0075】
一の実施の形態において、本発明のこの態様は、機械学習アプローチを介して展開される2クラス診断アルゴリズムを用い、診断アルゴリズムは、既知のASD被験者及び既知の非ASD被験者からのサンプル中のアミノ酸付加物の濃度に基づいて訓練され、その後、試験被験者の健康状態を分類するために用いられる。
【0076】
異なるアミノ酸付加物の一団の試験を行うことにより、本発明者らは、被験者におけるASDの有無の高感度で特異的な特定を提供するアミノ酸付加物の様々な部分集合を識別した。実施例5並びに
図13及び
図14に示すように、本発明のこの方法は、高レベルの感度と特異度で被験者におけるASDの有無の診断を可能とする。
【0077】
用語「疾病状態」は、「ASD状態」(即ち、被験者におけるASDの有無の状態)と同義に用いられる場合がある。
【0078】
本明細書で用いられる場合、「サンプル中に検出されたアミノ酸の濃度に基づき、診断アルゴリズムによって被験者の健康状態を分類する」というフレーズは、統計プロセス又は機械学習分類プロセスを指し、そのプロセスにより、試験サンプル中のアミノ酸付加物の濃度が、診断アルゴリズム、典型的には、統計アルゴリズム又は機械学習分類アルゴリズムによって健康状態のカテゴリを特定するために用いられる。用語「被験者の健康状態を分類する」は、本明細書で用いられる場合、被験者をASDであると分類すること、或いは、被験者をASDではないと分類することを指す。
【0079】
診断アルゴリズムによる分類は、それぞれの可能性があるカテゴリに属するアミノ酸付加物濃度の一団の尤度を採点すること、及び、最高得点のカテゴリを特定することを含んでもよい。診断アルゴリズムによる分類は、距離関数によってアミノ酸付加物濃度の一団を以前の観察値と比較するステップを含んでもよい。分類に適する診断アルゴリズムの例としては、サポートベクターマシン、アンサンブル分類器アルゴリズム、ランダムフォレスト、ロジスティック回帰(例えば、多クラス又は多項ロジスティック回帰、及び/又はスパースロジスティック回帰に適合させたアルゴリズム)が挙げられる。当業者に公知のように、分類に適する多種多様な他の診断アルゴリズムを用いてもよい。
【0080】
一の実施の形態において、「診断アルゴリズムを訓練する」というフレーズは、既知のASD健康状態を有する被験者の母集団から取得した各アミノ酸付加物についての濃度に基づく診断アルゴリズムの管理された(supervised)学習を指す場合がある。「診断アルゴリズムを訓練する」というフレーズは、既知のASD健康状態を有する被験者の母集団から取得した各アミノ酸付加物についての濃度に基づく統計的モデルにおける変数選択を指す場合がある。診断アルゴリズムを訓練することは、例えば、各カテゴリのための特徴空間において重み付けベクトルを特定すること、又は、関数又は関数パラメータを特定することを含む。
【0081】
本明細書で用いられる場合、用語「被験者の母集団」は、1人又は複数の被験者を意味する。一の実施の形態において、被験者の母集団は、1人の被験者からなる。一の実施の形態において、被験者の母集団は、多数の被験者を含む。本明細書で用いられる場合、用語「多数」は、少なくとも2人(例えば、少なくとも4、6、8、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28、又は30人)の被験者を意味する。一の実施の形態において、被験者の母集団は、少なくとも30人の被験者を含む。
【0082】
診断アルゴリズムの訓練は、本発明の方法の範囲内で取得する(即ち、本発明の方法のステップを構成する)ものとしても、本発明の方法の外部で取得する(即ち、本発明の方法のステップを構成しない)ものとしてもよい。一の実施の形態において、本発明の方法は、診断アルゴリズムを訓練するステップを含んでもよい。一の実施の形態において、診断アルゴリズムは、本発明の方法の外部で訓練され、本発明の分類するステップの間にアクセスされる。
【0083】
診断アルゴリズムは、健全な被験者(複数可)の母集団から取得したサンプル中のアミノ酸付加物の濃度を検出することによって訓練されてもよい。本明細書で用いられる場合、用語「健全な被験者」は、ASDの症状を何ら示したことがない、ASDであると診断されたことがない、及び/又はASDを発症する可能性が低い、個々の被験者又は被験者群を指す。好ましくは、前記健全な被験者(複数可)は、疾患に影響を与える投薬を受けておらず、他の疾患があると診断されたことがない。1人又は複数の健全な被験者は、試験被験者と比較して、性別、年齢、及び体格指数(BMI)が類似していてもよい。
【0084】
診断アルゴリズムは、ASDに罹患している被験者(複数可)の母集団から取得したサンプル中のアミノ酸付加物の濃度を検出することによって訓練されてもよい。より好ましくは、こうした被験者(複数可)は、試験被験者と比較して、性別、年齢、及び体格指数(BMI)が類似していてもよい。
【0085】
ASDに特徴的なアミノ酸付加物濃度プロファイルが特定されると(参照プロファイルを提供することとなり)、被験者から取得したサンプルからの濃度のプロファイルをこの参照プロファイルと比較して、試験被験者もASDであるか否か特定してもよい。診断アルゴリズムがASDを分類するために訓練されたら、被験者から取得したサンプルからの濃度のプロファイルを診断アルゴリズムによって分類して、試験被験者もASDであるか否か特定してもよい。
【0086】
一の実施の形態において、ASDを診断するための方法を実行する場合、診断アルゴリズム用の参照標準を取得するために用いられる被験者の母集団、及び/又は診断アルゴリズムを訓練するために用いられる被験者の母集団は、ASDではない少なくとも1人の(健全な)被験者、及び/又はASDである少なくとも1人の被験者を含んでもよい。一の実施の形態において、被験者の母集団は、ASDではない複数(例えば、少なくとも10人)の(健全な)被験者、及び/又はASDである複数(例えば、少なくとも10人)の被験者を含んでもよい。
【0087】
試験の被験者から取得したサンプル中のアミノ酸付加物の濃度を、既知のASD健康状態を有する(例えば、ASDであることが既知、及び/又はASDでないことが既知の)被験者の母集団から取得した参照標準用のアミノ酸付加物の濃度と比較することによって、被験者のASD健康状態を特定することが可能となる。
【0088】
既知の健康状態を有する被験者の母集団から取得した対応する濃度に関して訓練された診断アルゴリズムによって、アミノ酸付加物の濃度に基づき健康状態を分類することにより、被験者がASDであるか否か特定することが可能となる。方法は、被験者が参照母集団に属するか否かの分類が可能である(即ち、被験者におけるアミノ酸付加物の濃度が、統計的に参照母集団に類似しているか、又は参照母集団から統計的に逸脱しているか特定することによって)。したがって、被験者の濃度プロファイル(即ち、検出された濃度について観察された変化の全体的パターン)が特定の参照母集団に由来するプロファイルに対応するという分類は、被験者が参照母集団に該当する(又は該当しない)ことを予測する。
【0089】
一の実施の形態において、被験者は、検出されたアミノ酸付加物の濃度がASDの被験者の母集団において検出された対応するアミノ酸付加物濃度について特定された濃度に統計的に類似する場合、ASDであると診断されてもよい。一の実施の形態において、被験者は、検出されたアミノ酸付加物の濃度がASDではない被験者の母集団において検出された対応するアミノ酸付加物濃度について特定された量に統計的に類似している場合、ASDでないと診断されてもよい。
【0090】
本明細書で用いられる場合、用語「統計的に類似」は、試験の被験者について検出されたアミノ酸付加物濃度が、参照母集団について検出されたものと統計的に有意なレベルまで類似していることを意味する。用語「統計的に有意」は、偶然によってのみ起こる(例えば、p=<0.05)と予想されるよりも変化が大きいことを意味する。統計的有意性は、当該技術分野で公知の任意の方法によって特定することができる。
【0091】
一の実施の形態において、被験者は、検出されたアミノ酸付加物の濃度がASDでない被験者の母集団から取得した対応する濃度について特定された量から統計的に逸脱している場合、ASDであると診断されてもよい。一の実施の形態において、被験者は、検出されたアミノ酸付加物の濃度がASDである被験者の母集団から取得した対応するアミノ酸付加物について特定された濃度から統計的に逸脱している場合、ASDでないと診断されてもよい。
【0092】
本明細書で用いられる場合、用語「統計的に逸脱」は、試験の被験者について検出されたアミノ酸付加物の濃度が、参照母集団について検出されたものと統計的に有意なレベルまで異なることを意味する。マーカー存在度の偏差は、増加でも減少でもよい。
【0093】
したがって、本発明の方法における被験者の分類は、診断アルゴリズムを用いて実行してもよい。本発明の方法に用いられる診断アルゴリズムは、分類アルゴリズムである。一の実施の形態において、分類アルゴリズムは、サポートベクターマシンアルゴリズムを含む。一の実施の形態において、分類アルゴリズムは、様々な種類の分類アルゴリズムを含むアンサンブルアルゴリズムである。一の実施の形態において、分類アルゴリズムは、決定木(デシジョンツリー)に基づくアルゴリズムを含む。回帰アルゴリズム及びニューラルネットワークなどの他の種類のアルゴリズムを用いることもできる。一の実施の形態において、分類アルゴリズムは、ランダムフォレストアルゴリズムを含む。
【0094】
診断アルゴリズムによる被験者の分類は、完璧な分類を必要としない。分類は、その「感度」を特徴としてもよい。分類の「感度」は、ASDであると正しく識別された被験者のパーセンテージに関する。「感度」は、本技術分野において、真陽性と偽陰性との合計で除した真陽性の数と定義される。
【0095】
本発明の方法の感度は、少なくとも約65%、70%、75%、77%、80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、又は92%であってもよい。
【0096】
本発明の方法の「特異度」は、ASDではないと正しく識別された患者のパーセンテージであると定義される。「特異度」は、真陰性と偽陽性の合計で除した真陰性の数に関する。本発明の方法の特異度は、少なくとも約67%、70%、75%、80%、84%、86%、87%、88%、89%、又は90%であってもよい。
【0097】
本発明は、サンプル中に検出されたアミノ酸付加物の濃度に基づき、診断アルゴリズムによって被験者の健康状態を分類するように適合させた診断アルゴリズムに基づく計算モデルを更に提供し、前記診断アルゴリズムは、既知の疾病状態を有する被験者の母集団から取得したアミノ酸付加物についての対応する濃度に関して訓練される。本発明は、前述のような計算モデルを生成するように適合させたソフトウェアにも及ぶ。本発明は、前述のような計算モデルを生成するように適合させたプロセッサにも及ぶ。
【0098】
更なる態様において、本発明は、被験者における自閉的スペクトラム障害(ASD)を処置するための方法を提供し、前記方法は:
a.被験者から取得したサンプル中のアミノ酸付加物の濃度を検出するステップであって、前記アミノ酸付加物は、糖化アミノ酸付加物、酸化アミノ酸付加物、又はニトロ化アミノ酸付加物である、前記検出するステップと;
b.サンプル中のアミノ酸付加物の濃度を参照標準中の同じアミノ酸付加物の濃度と比較するステップと;
c.参照標準に対するサンプル中の前記アミノ酸付加物の濃度差の有無を識別するステップであって、濃度差の有無がASDの有無と相関する、前記識別するステップと;
d.ASDであると診断された被験者に、ASDに対する療法を施用するステップと;を含む。
【0099】
本発明は、被験者における自閉的スペクトラム障害(ASD)を処置するための方法を更に提供し、前記方法は:
a.被験者から取得したサンプル中のアミノ酸付加物の濃度を検出するステップであって、前記アミノ酸付加物は、糖化アミノ酸付加物、酸化アミノ酸付加物、又はニトロ化アミノ酸付加物である、前記検出するステップと;
b.サンプル中に検出されたアミノ酸付加物の濃度に基づき、診断アルゴリズムによって被験者の健康状態を分類するステップであって、診断アルゴリズムは、既知の疾病状態を有する被験者の母集団から取得した同じアミノ酸付加物についての対応する濃度に関して訓練され、それにより被験者におけるASDの有無を診断する、前記分類するステップと;
c.ASDであると診断された被験者に、ASD対する療法を施用するステップと;を含む。
【0100】
一の実施の形態において、本発明のこの態様は、機械学習アプローチを介して展開される診断アルゴリズムを用い、診断アルゴリズムは、2分割交差検証によって訓練され、例えば、50%のASD及び非ASD(対照、Control)被験者(訓練部分集合)において検出されたアミノ酸付加物の濃度に基づいて訓練され、その後、残りの50%の被験者(試験集合)について疾病状態を予測するために用いられる-例えば
図2参照。
【0101】
一の実施の形態において、前記方法は、機械学習アプローチを介して展開される2クラス診断アルゴリズムを用い、診断アルゴリズムは、既知のASD被験者及び既知の非ASD被験者からのサンプル中のアミノ酸付加物の濃度に基づいて訓練され、その後、試験被験者の健康状態を分類するために用いられる。
【0102】
異なるアミノ酸付加物の一団の試験を行うことにより、本発明者らは、被験者におけるASDの有無の高感度で特異的な特定を提供するマーカーの様々な部分集合を識別した。実施例5並びに
図13及び
図14に示すように、本発明のこの方法は、高レベルの感度と特異度で被験者におけるASDの有無の診断を可能とする。
【0103】
本発明の方法は、ASDに対する公知の処置全てを包含することを意図している。当業者は、ASDに対する処置に精通しているはずである。
【0104】
一の態様において、本発明は、ASDの処置に適する療法を識別するための方法を提供し、前記方法は:
a.候補の療法を施用された被験者からの単離サンプルを提供するステップと;
b.前記サンプル中のアミノ酸付加物の濃度を検出するステップであって、前記アミノ酸付加物は、糖化アミノ酸付加物、酸化アミノ酸付加物、又はニトロ化アミノ酸付加物である、前記検出するステップと;
c.ステップ(b)で検出されたアミノ酸付加物の濃度を、候補の療法の施用前の被験者からの単離サンプル中のアミノ酸付加物の濃度と比較することによって、アミノ酸付加物の相対濃度変化を特定するステップと;を含み、
候補療法を施用した後に濃度変化が検出された場合、候補療法はASDの処置に適しており、
候補療法を施用した後に濃度変化が検出されない場合、候補療法はASDの処置に適していない。
【0105】
別の態様は、ASD療法の有効性をモニタリングするための方法を提供し、前記方法は:
a.前記療法を施用された患者からの単離サンプルを提供するステップと;
b.前記サンプル中のアミノ酸付加物の濃度を検出するステップであって、前記アミノ酸付加物は、糖化アミノ酸付加物、酸化アミノ酸付加物、又はニトロ化アミノ酸付加物である、前記検出するステップと;
c.ステップ(b)で検出されたアミノ酸付加物の濃度を、以前の時点での被験者からの単離サンプル中のアミノ酸付加物の濃度と比較することによって、アミノ酸付加物の相対濃度変化を特定し、
濃度変化が検出された場合、有効性の存在を確認し、
濃度変化が検出されない場合、有効性の非存在を確認する、ステップと;を含む。
【0106】
用語「以前の時点」は、少なくとも24時間、少なくとも48時間、少なくとも72時間、少なくとも96時間、少なくとも120時間、少なくとも1週、少なくとも2週、少なくとも3週、少なくとも4週、少なくとも8週、少なくとも12週、少なくとも16週、少なくとも20週、少なくとも30週、少なくとも40週、少なくとも52週、少なくとも2年、少なくとも3年、又は少なくとも4年以前の時点を指してもよい。
【0107】
本発明は、別の態様において、
a.ASDを診断すること;
b.ASDの予後を特定すること;
c.ASDの処置に適する療法を識別すること;
d.ASD療法の有効性をモニタリングすること;及び/又は、
e.ASD診断アルゴリズムにおける特徴としての使用;のために、糖化アミノ酸付加物、酸化アミノ酸付加物、ニトロ化アミノ酸付加物、又はこれらの組合せの使用を提供する。
【0108】
一の実施の形態において、アミノ酸付加物は、Nε-フルクトシル-リジン(FL)、グリオキサル由来ヒドロイミダゾロン(G-H1)、3-デオキシグルコソン由来ヒドロイミダゾロン(3DG-H)、Nε-カルボキシメチル-リジン(CML)、Nω-カルボキシメチルアルギニン(CMA)、メチルグリオキサル由来ヒドロイミダゾロン(MG-H1)、ピラリン及び/又はメチルグリオキサル由来リジン二量体(MOLD)、ジチロシン(DT)、N-ホルミルキヌレニン(NFK)、α-アミノアジピン酸セミアルデヒド(AASA)、並びにグルタミン酸セミアルデヒド(GSA)から選択される1種又は複数種(好ましくはFL、G-H1、3DG-H、CML、CMA、MG-H1、ピラリン及び/又はMOLD、NFK、AASA、並びにGSAから選択される1種又は複数種)である。
【0109】
一の実施の形態において、アミノ酸付加物は、3-デオキシグルコソン由来ヒドロイミダゾロン(3DG-H)、Nε-カルボキシメチル-リジン(CML)、Nω-カルボキシメチルアルギニン(CMA)、ジチロシン(DT)、及びグルタミン酸セミアルデヒド(GSA)から選択される1種又は複数種(好ましくは3DG-H、CML、CMA、及びGSAから選択される1種又は複数種)である。
【0110】
一の実施の形態において、非ASD参照標準と比較した場合、サンプル中のNε-カルボキシメチル-リジン(CML)、Nω-カルボキシメチルアルギニン(CMA)、メチルグリオキサル由来ヒドロイミダゾロン(MG-H1)、α-アミノアジピン酸セミアルデヒド(AASA)、グリオキサル由来ヒドロイミダゾロン(G-H1)、メチルグリオキサル由来リジン二量体(MOLD)、ピラリン、N-ホルミルキヌレニン(NFK)、α-アミノアジピン酸セミアルデヒド(AASA)、グルタミン酸セミアルデヒド(GSA)、及びジチロシン(DT)から選択される1種又は複数種(好ましくはCML、CMA、MG-H1、AASA、G-H1、MOLD、ピラリン、NFK、AASA、及びGSAから選択される1種又は複数種)のアミノ酸付加物の濃度が増加する。当業者は理解することであるが、検出された濃度が非ASD参照標準中の濃度と同じかそれ未満である場合、ASDは診断されない。
【0111】
一の実施の形態において、非ASD参照標準と比較した場合、サンプル中の3-デオキシグルコソン由来ヒドロイミダゾロン(3DG-H)、Nε-フルクトシル-リジン(FL)、グリオキサル由来ヒドロイミダゾロン(G-H1)、N-ホルミルキヌレニン(NFK)、及びグルコセパン(GSP)から選択される1種又は複数種のアミノ酸付加物の濃度は減少する。当業者は理解することであるが、検出された濃度が非ASD参照標準中の濃度と同じであるかそれを超える場合、ASDは診断されない。
【0112】
実施例5並びに
図13及び
図14に示すように、本明細書で述べる複数種のアミノ酸付加物が、本発明のアルゴリズムの診断能を確実にするのに特に有用であることが識別されている。
【0113】
したがって、一の実施の形態において、アミノ酸付加物は、グリオキサル由来ヒドロイミダゾロン(G-H1)、3-デオキシグルコソン由来ヒドロイミダゾロン(3DG-H)、Nε-カルボキシメチル-リジン(CML)、Nω-カルボキシメチルアルギニン(CMA)、ピラリン、ジチロシン(DT)、α-アミノアジピン酸セミアルデヒド(AASA)、及びグルタミン酸セミアルデヒド(GSA)から選択される1種又は複数種(好ましくはG-H1、3DG-H、CML、CMA、ピラリン、AASA、及びGSAから選択される1種又は複数種)である。
【0114】
一の実施の形態において、アミノ酸付加物は、Nε-カルボキシメチル-リジン(CML)、Nω-カルボキシメチルアルギニン(CMA)、3-デオキシグルコソン由来ヒドロイミダゾロン(3DG-H)、及びジチロシン(DT)から選択される1種又は複数種(好ましくはCML、CMA、及び3DG-Hから選択される1種又は複数種)である。
【0115】
一の実施の形態において、アミノ酸付加物は、Nε-カルボキシメチル-リジン(CML)及びNω-カルボキシメチルアルギニン(CMA)から選択される1種又は複数種である。
【0116】
一の実施の形態において、アミノ酸付加物は、Nε-カルボキシメチル-リジン(CML)、Nω-カルボキシメチルアルギニン(CMA)、3-デオキシグルコソン由来ヒドロイミダゾロン(3DG-H)、グリオキサル由来ヒドロイミダゾロン(G-H1)、ジチロシン(DT)、及びグルタミン酸セミアルデヒド(GSA)から選択される1種又は複数種(好ましくはCML、CMA、3DG-H、G-H1、及びGSAから選択される1種又は複数種)である。
【0117】
一の実施の形態において、アミノ酸付加物は、ピラリン及びグルタミン酸セミアルデヒド(GSA)から選択される1種又は複数種である。
【0118】
実施例2並びに
図4及び
図12Aに示すように、本明細書で述べるポリペプチド配列内に含まれる複数種のアミノ酸付加物が、血漿サンプル中に検出された場合、ASDの診断において特定の統計的有意性を有すると識別される。
【0119】
したがって、一の実施の形態において、非ASD参照標準と比較した場合、サンプル中のNε-フルクトシル-リジン(FL)、Nε-カルボキシメチル-リジン(CML)、グリオキサル由来ヒドロイミダゾロン(G-H1)、メチルグリオキサル由来ヒドロイミダゾロン(MG-H1)、Nω-カルボキシメチルアルギニン(CMA)、グルコセパン(GSP)、ジチロシン(DT)、及びグルタミン酸セミアルデヒド(GSA)から選択される1種又は複数種(好ましくはFL、CML、G-H1、MG-H1、CMA、GSP、及びGSAから選択される1種又は複数種)のアミノ酸付加物の濃度は増加する。
【0120】
一の実施の形態において、非ASD参照標準と比較した場合、サンプル中のNε-カルボキシメチル-リジン(CML)、Nω-カルボキシメチルアルギニン(CMA)、メチルグリオキサル由来ヒドロイミダゾロン(MG-H1)、及びジチロシン(DT)から選択される1種又は複数種(好ましくはCML、CMA、及びMG-H1から選択される1種又は複数種)のアミノ酸付加物の濃度は増加する。
【0121】
一の実施の形態において、非ASD参照標準と比較した場合、サンプル中のNε-カルボキシメチル-リジン(CML)、Nω-カルボキシメチルアルギニン(CMA)、及びジチロシン(DT)から選択される1種又は複数種(好ましくはCML及びCMAから選択される1種又は複数種)のアミノ酸付加物の濃度は増加する。
【0122】
一の実施の形態において、非ASD参照標準と比較した場合、サンプル中のNε-(1-カルボキシエチル)リジン(CEL)、3-デオキシグルコソン由来ヒドロイミダゾロン(3DG-H)、メチルグリオキサル由来リジン二量体(MOLD)、N-ホルミルキヌレニン(NFK)、α-アミノアジピン酸セミアルデヒド(AASA)、又は3-ニトロチロシン(3-NT)から選択される1種又は複数種のアミノ酸付加物の濃度は減少する。
【0123】
一の実施の形態において、非ASD参照標準と比較した場合、サンプル中のアミノ酸付加物3-デオキシグルコソン由来ヒドロイミダゾロン(3DG-H)の濃度は減少する。
【0124】
一の実施の形態において、非ASD参照標準と比較した場合、サンプル中のNε-カルボキシメチル-リジン(CML)、Nω-カルボキシメチルアルギニン(CMA)、メチルグリオキサル由来ヒドロイミダゾロン(MG-H1)、及びジチロシン(DT)から選択される1種又は複数種(好ましくはCML、CMA、及びMG-H1から選択される1種又は複数種)のアミノ酸付加物の濃度は増加し、非ASD参照標準と比較した場合、サンプル中のアミノ酸付加物3-デオキシグルコソン由来ヒドロイミダゾロン(3DG-H)の濃度は減少する。
【0125】
一の実施の形態において、非ASD参照標準と比較した場合、サンプル中のNε-カルボキシメチル-リジン(CML)、Nω-カルボキシメチルアルギニン(CMA)、及びジチロシン(DT)から選択される1種又は複数種(好ましくはCML及びCMAから選択される1種又は複数種)のアミノ酸付加物の濃度は増加し、非ASD参照標準と比較した場合、サンプル中のアミノ酸付加物3-デオキシグルコソン由来ヒドロイミダゾロン(3DG-H)の濃度は減少する。
【0126】
実施例3並びに
図5及び
図12Bに示すように、本明細書で述べる複数種のアミノ酸付加物が、血漿サンプル(例えば、血漿限外ろ過液)中に検出された場合、ASDの診断において特定の統計的有意性を示すものと識別される。
【0127】
一の実施の形態において、非ASD参照サンプルと比較した場合、サンプル中のNε-カルボキシメチル-リジン(CML)、Nε-(1-カルボキシエチル)リジン(CEL)、メチルグリオキサル由来ヒドロイミダゾロン(MG-H1)、Nω-カルボキシメチルアルギニン(CMA)、グルコセパン(GSP)、ジチロシン(DT)、α-アミノアジピン酸セミアルデヒド(AASA)、グルタミン酸セミアルデヒド(GSA)、及び3-ニトロチロシン(3-NT)から選択される1種又は複数種(好ましくはCML、CEL、MG-H1、CMA、GSP、AASA、GSA、及び3-NTから選択される1種又は複数種)のアミノ酸付加物の濃度は増加する。
【0128】
一の実施の形態において、非ASD参照サンプルと比較した場合、サンプル中のNω-カルボキシメチルアルギニン(CMA)、α-アミノアジピン酸セミアルデヒド(AASA)、及びグルタミン酸セミアルデヒド(GSA)から選択される1種又は複数種のアミノ酸付加物の濃度は増加する。
【0129】
一の実施の形態において、非ASD参照サンプルと比較した場合、サンプル中のアミノ酸Nω-カルボキシメチルアルギニン(CMA)の濃度は増加する。
【0130】
一の実施の形態において、非ASD参照サンプルと比較した場合、サンプル中のNε-フルクトシル-リジン(FL)、グリオキサル由来ヒドロイミダゾロン(G-H1)、3-デオキシグルコソン由来ヒドロイミダゾロン(3DG-H)、メチルグリオキサル由来リジン二量体(MOLD)、及びN-ホルミルキヌレニン(NFK)から選択される1種又は複数種のアミノ酸付加物の濃度は減少する。
【0131】
一の実施の形態において、非ASD参照サンプルと比較した場合、サンプル中のNε-フルクトシル-リジン(FL)、グリオキサル由来ヒドロイミダゾロン(G-H1)、及びN-ホルミルキヌレニン(NFK)から選択される1種又は複数種のアミノ酸付加物の濃度は減少する。
【0132】
一の実施の形態において、非ASD参照標準と比較した場合、サンプル中のアミノ酸付加物グリオキサル由来ヒドロイミダゾロン(G-H1)の濃度は減少する。
【0133】
一の実施の形態において、非ASD参照標準と比較した場合、サンプル中のNω-カルボキシメチルアルギニン(CMA)、α-アミノアジピン酸セミアルデヒド(AASA)、及びグルタミン酸セミアルデヒド(GSA)から選択される1種又は複数種のアミノ酸付加物の濃度は増加し、非ASD参照標準と比較した場合、サンプル中のNε-フルクトシル-リジン(FL)、グリオキサル由来ヒドロイミダゾロン(G-H1)、及びN-ホルミルキヌレニン(NFK)から選択される1種又は複数種のアミノ酸付加物の濃度は減少する。
【0134】
一の実施の形態において、非ASD参照標準と比較した場合、サンプル中のNε-カルボキシメチル-リジン(CML)及びNω-カルボキシメチルアルギニン(CMA)から選択される1種又は複数種のアミノ酸付加物の濃度は増加し、非ASD参照標準と比較した場合、サンプル中のアミノ酸付加物グリオキサル由来ヒドロイミダゾロン(G-H1)の濃度は減少する。
【0135】
実施例4並びに
図6及び
図12Cに示すように、本明細書で述べる複数種のアミノ酸付加物が、尿サンプル(例えば、尿限外ろ過液)中に検出された場合、ASDの診断において特定の統計的有意性を示すものと識別される。
【0136】
一の実施の形態において、非ASD参照標準と比較した場合、サンプル中のNε-フルクトシル-リジン(FL)、Nε-カルボキシメチル-リジン(CML)、Nε-(1-カルボキシエチル)リジン(CEL)、グリオキサル由来ヒドロイミダゾロン(G-H1)、メチルグリオキサル由来ヒドロイミダゾロン(MG-H1)、3-デオキシグルコソン由来ヒドロイミダゾロン(3DG-H)、Nω-カルボキシメチルアルギニン(CMA)、メチルグリオキサル由来リジン二量体(MOLD)、ジチロシン(DT)、N-ホルミルキヌレニン(NFK)、α-アミノアジピン酸セミアルデヒド(AASA)、グルタミン酸セミアルデヒド(GSA)、及び3-ニトロチロシン(3-NT)から選択される1種又は複数種(好ましくはFL、CML、CEL、G-H1、MG-H1、3DG-H、CMA、MOLD、NFK、AASA、GSA、及び3-NTから選択される1種又は複数種)のアミノ酸付加物の濃度は増加する。
【0137】
一の実施の形態において、非ASD参照標準と比較した場合、サンプル中のNε-カルボキシメチル-リジン(CML)、グリオキサル由来ヒドロイミダゾロン(G-H1)、Nω-カルボキシメチルアルギニン(CMA)、メチルグリオキサル由来リジン二量体(MOLD)、ピラリン、ジチロシン(DT)、N-ホルミルキヌレニン(NFK)、α-アミノアジピン酸セミアルデヒド(AASA)、及びグルタミン酸セミアルデヒド(GSA)から選択される1種又は複数種(好ましくはCML、G-H1、CMA、MOLD、ピラリン、NFK、AASA、及びGSAから選択される1種又は複数種)のアミノ酸付加物の濃度は増加する。
【0138】
一の実施の形態において、非ASD参照標準と比較した場合、サンプル中のジチロシン(DT)及びグルタミン酸セミアルデヒド(GSA)から選択される1種又は複数種のアミノ酸付加物(好ましくはGSA)の濃度は増加する。
【0139】
一の実施の形態において、非ASD参照標準と比較した場合、サンプル中のアミノ酸付加物グルコセパン(GSP)は減少する。
【0140】
一の実施の形態において、非ASD参照標準と比較した場合、サンプル中のNε-カルボキシメチル-リジン(CML)、グリオキサル由来ヒドロイミダゾロン(G-H1)、Nω-カルボキシメチルアルギニン(CMA)、メチルグリオキサル由来リジン二量体(MOLD)、ピラリン、ジチロシン(DT)、N-ホルミルキヌレニン(NFK)、α-アミノアジピン酸セミアルデヒド(AASA)、及びグルタミン酸セミアルデヒド(GSA)から選択される1種又は複数種(好ましくはCML、G-H1、CMA、MOLD、ピラリン、NFK、AASA、及びGSAから選択される1種又は複数種)のアミノ酸付加物の濃度は増加し、非ASD参照標準と比較した場合、サンプル中のアミノ酸付加物グルコセパン(GSP)の濃度は減少する。
【0141】
一の実施の形態において、先に示したアミノ酸付加物濃度プロファイルは、ASDの存在を指し示す(例えば、前記濃度プロファイルは、ASDの存在と相関する)。当業者は理解することであるが、先に詳述したアミノ酸付加物濃度プロファイルが検出されない場合、それは、好ましくは、ASDの非存在を指し示す。
【0142】
腎臓によるアミノ酸の腎処理への洞察は、血漿及び尿中のアミノ酸濃度から腎クリアランス(CL)を推定することによって得られる。アミノ酸などの低分子量代謝産物の場合、CLは、アミノ酸膜輸送体が仲介するアミノ酸の腎尿細管再摂取に主に影響されると考えられる。
【0143】
一の実施の形態において、腎クリアランスアミノ酸付加物は、下記の等式に従って、血漿及び尿サンプル中に検出されるアミノ酸付加物の濃度から推定される:CL(μl/mgクレアチニン、又は、ml/mgクレアチニン)=[被検物質]尿(nmol/mgクレアチニン)/[被検物質]血漿(pmol/ml、又は、nmol/ml)。
【0144】
したがって、一の実施の形態において、アミノ酸付加物の腎クリアランスが測定される。
【0145】
実施例4並びに
図9及び
図12Dに示すように、前記アミノ酸の腎クリアランスが検出された場合、本明細書で述べる複数種のアミノ酸付加物が、ASDの診断において特定の統計的有意性を有すると識別される。
【0146】
一の実施の形態において、非ASD参照標準と比較した場合、アミノ酸付加物Nω-カルボキシメチルアルギニン(CMA)の腎クリアランスは減少する。
【0147】
一の実施の形態において、非ASD参照標準と比較した場合、ジチロシン(DT)及びN-ホルミルキヌレニン(NFK)から選択されるアミノ酸付加物(好ましくはNFK)の腎クリアランスは増加する。
【0148】
したがって、一の実施の形態において、非ASD参照標準と比較した場合、アミノ酸付加物Nω-カルボキシメチルアルギニン(CMA)の腎クリアランスは減少し、非ASD参照標準と比較した場合、ジチロシン(DT)及びN-ホルミルキヌレニン(NFK)から選択されるアミノ酸付加物(好ましくはNFK)の腎クリアランスは増加する。
【0149】
一の実施の形態において、先に示したアミノ酸付加物濃度プロファイルは、ASDの存在を指し示す(例えば、前記濃度プロファイルは、ASDの存在と相関する)。当業者は理解することであるが、先に詳述したアミノ酸付加物濃度プロファイルが検出されない場合、それは、好ましくは、ASDの非存在を指し示す。
【0150】
好ましくは、本発明の方法は、in vitro法(例えば、ex vivo法)であってもよい。したがって、本発明は、被験者から事前に取得された単離サンプルに対してin vitroで実行してもよい。
【0151】
適切には、本発明の方法又は使用は、適切なデータ記録媒体に、サンプル中のアミノ酸付加物及び/又はアミノ酸(以下に記載するような)の濃度を検出するステップで取得されるデータを記録するステップを更に含んでもよい。
【0152】
一の態様において、本発明は、本発明の方法又は使用による、サンプル中のアミノ酸付加物及び/又はアミノ酸の濃度を検出するステップで取得されるデータを含むデータ記録媒体を提供する。好ましくは、前記データ記録媒体は、ASDを診断するための方法に用いられてもよい。
【0153】
別の態様において、本発明は、サンプル中のアミノ酸付加物の濃度を検出するための試薬であって、前記アミノ酸付加物は、糖化アミノ酸付加物、酸化アミノ酸付加物、ニトロ化アミノ酸付加物又はこれらの組合せから選択される1種又は複数種である、前記試薬と;その使用説明書(例えば、ASDを診断する際の)と;を含むキットを提供する。
【0154】
一の実施の形態において、本発明のキットは、サンプル中のクレアチニンの濃度を検出するための試薬を更に含む。
【0155】
一の実施の形態において、本発明のキットは、安定同位体希釈分析液体クロマトグラフィ-タンデム質量分析、反応モニタリング(SRM)質量分析、ウエスタンブロット法、酵素結合免疫吸着検査法(ELISA)、液体クロマトグラフィ質量分析(LC-MS)、逆相質量分析、表面増強レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析(SELDI-TOF)、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析(MALDI-TOF)、液体クロマトグラフィ-タンデム質量分析、同位体希釈質量分析、サイズ透過(ゲルろ過)、イオン交換、親和性、高速液体クロマトグラフィ、超速液体クロマトグラフィ、一次元ゲル電気泳動(1-DE)、及び/又は二次元ゲル電気泳動(2-DE)から選択される方法によってアミノ酸付加物の濃度を検出するための試薬を含む。好ましくは、本発明のキットは、液体クロマトグラフィ-タンデム質量分析によってアミノ酸付加物の濃度を検出するための試薬を含む。より好ましくは、本発明のキットは、液体クロマトグラフィ-タンデム質量分析によってアミノ酸付加物の濃度を検出するための試薬を含む。
【0156】
一の実施の形態において、試薬は、同位体希釈分析によってサンプル中のアミノ酸付加物の濃度を検出するためのものである。
【0157】
一の実施の形態において、NFKを定量化するための試薬は、[15N2]NFKである。一の実施の形態において、DTを定量化するための試薬は、ring-[2H6]DTである。一の実施の形態において、3-NTを定量化するための試薬は、ring-[2H3]3-NTである。一の実施の形態において、CELを定量化するための試薬は、リシル-[13C6]CELである。一の実施の形態において、CMLを定量化するための試薬は、リシル-[13C6]CMLである。一の実施の形態において、FLを定量化するための試薬は、リシル-[13C6]FLである。一の実施の形態において、CMAを定量化するための試薬は、カルボキシメチル-[13C2]CMAである。一の実施の形態において、G-H1を定量化するための試薬は、グアニジノ[15N2]G-H1である。一の実施の形態において、MG-H1を定量化するための試薬は、グアニジノ-[15N2]MG-H1である。一の実施の形態において、3DG-Hを定量化するための試薬は、グアニジノ-[15N2]3DG-Hである。一の実施の形態において、AASAを定量化するための試薬は、[2H3]α-アミノアジピン酸である。一の実施の形態において、GSAを定量化するための試薬は、[2H3]α-アミノアジピン酸である。一の実施の形態において、GSPを定量化するための試薬は、[13C6]グルコセパンである。一の実施の形態において、ピラリンを定量化するための試薬は、[13C6,15N2]ピラリンである。一の実施の形態において、メチルグリオキサル由来リジン二量体(MOLD)を定量化するための試薬は、[2H8]MOLD、例えば、重水素-MOLDである。安定同位体希釈分析の当業者によって選択されるように、これらの化合物において、代替的な安定同位体置換を用いてもよい。
【0158】
一の実施の形態において、同位体希釈分析のための試薬は、[15N2]NFK、ring-[2H6]DT;ring-[2H3]3-NT;リシル-[13C6]CEL、リシル-[13C6]CML、リシル-[13C6]FL、カルボキシメチル-[13C2]CMA、グアニジノ[15N2]G-H1、グアニジノ-[15N2]MG-H1、グアニジノ-[15N2]3DG-H、[2H3]α-アミノアジピン酸、[13C6]グルコセパン、及び[13C6,15N2]ピラリンからなる群から選択される少なくとも1種(例えば、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、又は13種)の試薬を含んでもよい。
【0159】
本発明のキットは、標準(例えば、参照標準)として用いるための既知の量又は濃度の本明細書で述べるアミノ酸付加物(又はその関連する安定アイソタイプ置換化合物(同位体異性体))を更に含んでもよい。
【0160】
本発明のキットは、本明細書で述べる本発明の方法及び使用を実行するための使用説明書を更に含んでもよい。キットは、本明細書で述べるソフトウェアを使用するためのソフトウェアライセンス又はキーを更に含んでもよく、さもなければ、前記キットが、本明細書で述べるソフトウェアを含んでもよい。
【0161】
従来のアミノ酸
本発明者らは、ASDの診断に有用であるとして、複数のアミノ酸(例えば、従来のアミノ酸又は未修飾アミノ酸)の識別もした。前記従来のアミノ酸を、上記のアミノ酸付加物に代えて、又は加えて採用してもよい。
【0162】
アミノ酸付加物に関する態様、実施の形態及び定義は全て、下記の態様/実施の形態にも適用可能であり、そこでは、用語「アミノ酸付加物」は、単に「アミノ酸」で置き換えられている。
【0163】
したがって、一の態様において、本発明は、自閉的スペクトラム障害(ASD)を診断するための方法を提供し、前記方法は:
a.被験者から取得したサンプル中のアミノ酸の濃度を検出するステップであって、前記アミノ酸は、アスパラギン、グルタミン酸塩、グルタミン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、バリン、又はこれらの組合せから選択される1種又は複数種である、前記検出するステップと;
b.サンプル中のアミノ酸の濃度を参照標準中の同じアミノ酸の濃度と比較するステップと;
c.参照標準に対するサンプル中の前記アミノ酸の濃度差の有無を識別するステップであって、濃度差の有無がASDの有無と相関する、前記識別するステップと;を含む。
【0164】
別の態様において、自閉的スペクトラム障害(ASD)の予後を特定するための方法が提供され、前記方法は:
a.被験者から取得したサンプル中のアミノ酸の濃度を検出するステップであって、前記アミノ酸は、アスパラギン、グルタミン酸塩、グルタミン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、バリン、又はこれらの組合せから選択される1種又は複数種である、前記検出するステップと;
b.サンプル中のアミノ酸の濃度を参照標準中の同じアミノ酸の濃度と比較するステップと;
c.参照標準に対するサンプル中の前記アミノ酸の濃度差の有無を識別するステップであって、濃度差の有無が良好な予後又は不良な予後と相関する、前記識別するステップと;を含む。
【0165】
別の態様において、自閉的スペクトラム障害(ASD)を診断するための方法が提供され、前記方法は:
a.被験者から取得したサンプル中のアミノ酸の濃度を検出するステップであって、前記アミノ酸は、アスパラギン、グルタミン酸塩、グルタミン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、バリン、又はこれらの組合せから選択される1種又は複数種である、前記検出するステップと;
b.サンプル中に検出されたアミノ酸の濃度に基づき、診断アルゴリズムによって被験者の健康状態を分類するステップであって、診断アルゴリズムは、既知の疾病状態を有する被験者の母集団から取得した同じアミノ酸についての対応する濃度に関して訓練され、それにより被験者におけるASDの有無を診断する、前記分類するステップと;を含む。
【0166】
別の態様において、被験者における自閉的スペクトラム障害(ASD)を処置するための方法が提供され、前記方法は:
a.被験者から取得したサンプル中のアミノ酸の濃度を検出するステップであって、前記アミノ酸は、アスパラギン、グルタミン酸塩、グルタミン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、バリン、又はこれらの組合せから選択される1種又は複数種である、前記検出するステップと;
b.サンプル中のアミノ酸の濃度を、参照標準中の同じアミノ酸の濃度と比較するステップと;
c.参照標準に対するサンプル中の前記アミノ酸の濃度差の有無を識別するステップであって、濃度差の有無はASDの有無と相関する、前記識別するステップと;
d.ASDであると診断された被験者に、ASDに対する療法を施用するステップと;を含む。
【0167】
別の態様において、被験者における自閉的スペクトラム障害(ASD)を処置するための方法が提供され、前記方法は:
a.被験者から取得したサンプル中のアミノ酸の濃度を検出するステップであって、前記アミノ酸は、アスパラギン、グルタミン酸塩、グルタミン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、バリン、又はこれらの組合せから選択される1種又は複数種である、前記検出するステップと;
b.サンプル中に検出されたアミノ酸の濃度に基づき、診断アルゴリズムによって被験者の健康状態を分類するステップであって、診断アルゴリズムは、既知の疾病状態を有する被験者の母集団から取得した同じアミノ酸についての対応する濃度に関して訓練され、それにより被験者におけるASDの有無を診断する、前記分類するステップと;
c.ASDであると診断された被験者に、ASDに対する療法を施用するステップと;を含む。
【0168】
別の態様において、ASDの処置に適する療法を識別するための方法が提供され、前記方法は:
a.候補療法を施用された被験者からの単離サンプルを提供するステップと;
b.前記サンプル中のアミノ酸の濃度を検出するステップであって、前記アミノ酸は、アスパラギン、グルタミン酸塩、グルタミン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、又はバリンから選択される、前記検出するステップと;
c.ステップ(b)で検出されたアミノ酸の濃度を、候補療法の施用前の被験者からの単離サンプル中のアミノ酸の濃度と比較することによって、アミノ酸の相対濃度変化を特定するステップであって、
候補療法を施用した後に濃度変化が検出される場合、候補療法はASDの処置に適しており、
候補療法を施用した後に濃度変化が検出されない場合、候補療法はASDの処置に適していない、前記特定するステップと;を含む。
【0169】
別の態様において、ASD療法の有効性をモニタリングするための方法が提供され、前記方法は:
a.前記処置又は療法を施用された患者からの単離サンプルを提供するステップと;
b.前記サンプル中のアミノ酸の濃度を検出するステップであって、前記アミノ酸は、アスパラギン、グルタミン酸塩、グルタミン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、又はバリンである、前記検出するステップと;
c.ステップ(b)で検出されたアミノ酸の濃度を、以前の時点での被験者からの単離サンプル中のアミノ酸の濃度と比較することによって、アミノ酸の相対濃度の変化を特定し、
濃度変化が検出される場合、有効性の存在を確認し、
濃度変化が検出されない場合、有効性の非存在を確認する、ステップと;を含む。
【0170】
別の態様において、
a.ASDを診断すること;
b.ASDの予後を特定すること;
c.ASDの処置に適する療法を識別すること;
d.ASD療法の有効性をモニタリングすること;及び/又は、
e.ASD診断アルゴリズムにおける特徴としての使用;のために、アスパラギン、グルタミン酸塩、グルタミン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、バリン、又はこれらの組合せから選択される1種又は複数種のアミノ酸の使用が提供される。
【0171】
有利なことに、前記アミノ酸の濃度の変化は、ASDの有無と相関する。
【0172】
実施例3及び
図7に示すように、本明細書で述べる複数種のアミノ酸が、血漿限外ろ過液サンプル中に検出された場合、ASDの診断において特定の統計的有意性を示していると識別される。
【0173】
したがって、好ましい実施の形態において、アミノ酸は、グルタミン、グルタミン酸塩、及び/又はトレオニンから選択される。一の実施の形態において、アミノ酸はトリプトファンである。
【0174】
実施例4並びに
図8及び
図12Cに示すように、本明細書で述べる複数種のアミノ酸が、尿サンプル中に検出された場合、ASDの診断において特定の統計的有意性有していると識別される。
【0175】
一の実施の形態において、アミノ酸は、アスパラギン、プロリン、セリン、トリプトファン、及び/又はバリンから選択される。好ましくは、アミノ酸は、アスパラギン、プロリン、セリン、及び/又はバリンから選択されてもよい。
【0176】
実施例4並びに
図9及び12Dに示すように、本明細書で述べる複数のアミノ酸付加物は、前記アミノ酸の腎クリアランスが検出された場合、ASDの診断において特定の統計的有意性を示していると識別される。
【0177】
一の実施の形態において、アミノ酸は、アルギニン、グルタミン、ロイシン、フェニルアラニン、プロリン、又はトレオニンである。一の実施の形態において、アミノ酸は、グルタミン、ロイシン、フェニルアラニン、プロリン、又はトレオニンである。別の実施の形態において、アミノ酸はトリプトファンである。好ましい実施の形態において、アミノ酸はアルギニンである。
【0178】
別段に定めのない限り、本明細書において用いられる技術的及び科学的用語は全て、本開示が属する技術分野の当業者が一般に理解するものと同じ意味を有する。Singleton他、DICTIONARY OF MICROBIOLOGY AND MOLECULAR BIOLOGY、第20版、John Wiley and Sons、New York(1994)、及びHale&Marham、THE HARPER COLLINS DICTIONARY OF BIOLOGY、Harper Perennial、NY(1991)は、本開示に用いられる用語の多くの一般的な辞書を当業者に提供している。
【0179】
本開示は、本明細書に開示の例示的な方法及び材料によって限定されず、本明細書で述べるものと同様又は均等の方法及び材料はいずれも、本開示の実施の形態の実践又は試験に用いることができる。数値範囲は、範囲を規定する数値を含む。本明細書において提供される見出しは、本開示の様々な態様又は実施の形態を限定するものではない。
【0180】
アミノ酸は、本明細書において、アミノ酸の名称、3文字略語又は1文字略語を用いて引用される。用語「タンパク質」は、本明細書で用いられる場合、タンパク質、ポリペプチド、及びペプチドを含む。本明細書で用いられる場合、用語「アミノ酸配列」は、用語「ポリペプチド」及び/又は用語「タンパク質」と同義である。場合によっては、用語「アミノ酸配列」は、用語「ペプチド」と同義である。場合によっては、用語「アミノ酸配列」は、用語「酵素」と同義である。用語「タンパク質」及び「ポリペプチド」は、本明細書においては交換可能に用いられる。本開示及び特許請求の範囲において、アミノ酸残基に対して従来の1文字及び3文字コードを用いることがある。アミノ酸用の3文字コードは、IUPACIUB Joint Commission on Biochemical Nomenclature (JCBN)に準拠して定義される。同様に理解されることであるが、ポリペプチドは、遺伝暗号の縮重のために、2以上のヌクレオチド配列によってコード化される場合もある。
【0181】
用語の他の定義が、本明細書を通じて出現する場合がある。例示的実施の形態についてより詳細に述べる前に、理解すべきことであるが、本開示は、記載する特定の実施の形態に限定されないので、変化し得る。同様に理解すべきことであるが、本開示の範囲は付帯する特許請求の範囲によってのみ定義されるため、本明細書で用いられる用語の目的は、単に特定の実施の形態の説明のためであり、限定を意図するものではない。
【0182】
値の範囲が提供される場合、理解されることであるが、その範囲の上限と下限の間に介在する各値は、文脈上明確に他の指示がある場合を除き、下限の単位の10分の1まで具体的に開示される。記載された範囲内の任意の記載された値又は仲介値とその記載された範囲内の任意の他の記載された値又は仲介値との間のより小さなそれぞれの範囲も、本開示の範囲に包含される。これらのより小さな範囲の上限値及び下限値は、独立してその範囲に含まれても範囲から除外されてもよく、そのより小さな範囲内に限界値のどちらか一方が含まれる、どちらも含まれない、又は両方とも含まれるそれぞれの範囲も、記載された範囲内に具体的に除外される限定値がない限り、この開示の範囲内に包含される。記載された範囲が限界値の一方又は両方を含む場合、それらの含まれた限界値の一方又は両方を除外する範囲も、この開示に含まれる。
【0183】
留意すべきことであるが、本明細書及び付帯する特許請求の範囲で用いられる場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈上明確に他の指示がある場合を除き、複数の指示対象を含む。したがって、例えば「アミノ酸付加物」についての言及は、複数のそうしたアミノ酸付加物を含み、「そのアミノ酸付加物」についての言及は、1種又は複数種のアミノ酸付加物及び当業者に公知であるその均等物などについての言及を含む。
【0184】
本明細書において論じられた出版物は、単に本願の出願日以前にそれらが開示されているというだけの理由で提供されたものである。本明細書において、何ものも、こうした出版物が本明細書に付帯する特許請求の範囲に対する先行技術を構成することを認めるものと解釈すべきではない。
【0185】
略語
AASA、α-アミノアジピン酸セミアルデヒド;ADOS、自閉症診断観察スケジュール;AGE、糖化最終産物;ASD、自閉症スペクトラム障害;AUROC、受信者動作特性の曲線下面積のプロット;b0,+AT、溶質キャリア7、メンバー9;CARS、小児自閉症評定尺度;CAT-3、カチオン性アミノ酸輸送体-3;CD98hs、分化重鎖サブユニットのクラスタ;CEL、Nε-(1-カルボキシエチル)リジン;CL、腎クリアランス;CMA、Nω-カルボキシメチルアルギニン;CML、Nε-カルボキシメチル-リジン;3-DG、3-デオキシグルコソン;3DG-H、3-デオキシグルコソンに由来するヒドロイミダゾロンAGE;DT、ジチロシン;DUOX、デュアルオキシダーゼ;EDTA、エチレンジアミン四酢酸;FL、Nε-フルクトシル-リジン;G-H1、グリオキサルに由来するヒドロイミダゾロンAGE;GSA、グルタミン酸セミアルデヒド;GSP、グルコセパン;hLAT-1、大型中性アミノ酸輸送体サブユニット-1;LC-MS/MS、液体クロマトグラフィ-タンデム質量分析;Leiter-R、リーター国際作業スケール改訂版;MG、メチルグリオキサル;MG-H1、メチルグリオキサルに由来するヒドロイミダゾロンAGE;MOLD、メチルグリオキサル由来リジン架橋体;MRM、多重反応モニタリング;NFK、N-ホルミルキヌレニン;3-NT、3-ニトロチロシン;PEP-3、心理教育プロフィール-3;rBAT、中性及び塩基性アミノ酸輸送タンパク質;ROS、活性酸素種;SLC7A5、溶質キャリアファミリー7、メンバー5;SVM、サポートベクターマシン;TD、定型発達;UPR、折りたたみ不全タンパク質応答;y+LAT-1、溶質キャリアファミリー7メンバー7;y+LAT-2、溶質キャリアファミリー7メンバー6。
【図面の簡単な説明】
【0186】
図
本発明の実施の形態を、下記の図及び実施例を参照して、単なる例として説明する。
【
図1C】
図1Cは、糖化最終産物CML、CEL、ピラリン、G-H1、MG-H1、3DG-H、CMA、グルコセパン、及びMOLDの構造を示す。
【
図1D】
図1Dは、酸化付加物DT、NFK、3-NT、AASA、及びGSAの構造を示す。
【
図2】
図2は、自閉的スペクトラム障害を検出するための診断アルゴリズムの訓練群及び検証対象群のスキームを示す。
【
図3-1】
図3は、自閉症児群の人口統計学的及び臨床的特徴を示す。†発症パターンは、Ozonoff他(Autism Journal:Official journal of the International Society for Autism Research.2008;1(6):320-8)に従って定義した。‡実験バイオマーカーデータより導出した診断アルゴリズムから推定した被験者が自閉症である確率(アルゴリズム性能は
図14に示す)。
【
図4】
図4は、血漿タンパク質の糖化、酸化、及びニトロ化付加物残基含有量を示す。データは、中央値(下位-上位四分位点)である;健全な対照、n=21、及びASD、n=27。有意性(マンホイットニーU);*、**、及び***、14のボンフェローニ補正適用後P<0.05、P<0.01、及びP<0.001。
【
図5】
図5は、血漿ろ液中の血漿糖化、酸化、及びニトロ化遊離付加物含有量を示す。データは、中央値(下位-上位四分位点)である;健全な対照、n=21から31、及びASD、n=27から38。有意性(マンホイットニーU);*、15のボンフェローニ補正適用後P<0.05。
【
図6】
図6は、尿中糖化、酸化、及びニトロ化遊離付加物含有量を示す。データは、中央値(下位-上位四分位点)である;健全な対照、n=21から31、及びASD、n=27から38。有意性(マンホイットニーU);*、15のボンフェローニ補正適用後P<0.05。
【
図7】
図7は、血漿アミノ酸メタボローム含有量を示す。データは、平均値±SD又は中央値(下位-上位四分位点)である;健全な対照、n=21、及びASD、n=27。有意性:パラメトリックデータの場合はt-検定、ノンパラメトリックデータの場合はマンホイットニーU。*、p<0.05、**、20のボンフェローニ補正適用後P<0.01。
【
図8】
図8は、尿中アミノ酸メタボローム含有量を示す。データは、平均値±SD又は中央値(下位-上位四分位点)である;健全な対照、n=21、及びASD、n=27。有意性:パラメトリックデータの場合はt-検定、ノンパラメトリックデータの場合はマンホイットニーU。*、p<0.05、**、20のボンフェローニ補正適用後P<0.01。
【
図9】
図9は、糖化、酸化、及びニトロ化遊離付加物の腎クリアランス値を示す。データは、平均値±SD又は中央値(下位-上位四分位点)である;健全な対照、n=21、及びASD、n=27。有意性:パラメトリックデータの場合はt-検定、ノンパラメトリックデータの場合はマンホイットニーU。*、14のボンフェローニ補正適用後p<0.05。#、ml/mgクレアチニン。
【
図10】
図10は、アミノ酸の腎クリアランス値を示す。データは、平均値±SD又は中央値(下位-上位四分位点)である;健全な対照、n=21、及びASD、n=27。有意性:パラメトリックデータの場合はt-検定、ノンパラメトリックデータの場合はマンホイットニーU。*、20のボンフェローニ補正適用後p<0.05。
【
図11】
図11Aは、血漿及び尿中の糖化、酸化、及びニトロ化付加物とアミノ酸メタボロームの濃度変化を示すヒートマップを提供する。
図11Bは、血漿及び尿中のアミノ酸メタボロームの変化を示すヒートマップである。
図11Aに示す凡例(Δlog
2)が同様に
図11Bにも適用される。
【
図12A】
図12は、ボンフェローニ補正後の、ASD研究群における変化が有意に異なるバイオマーカーのデータ分布を示す。
図12Aは、タンパク質付加物残基CML、CMA及びDTである。有意性:アスタリスク1つ、アスタリスク2つ、及びアスタリスク3つは、それぞれP<0.05、P<0.01、及びP<0.001を示す。
【
図12B】
図12は、ボンフェローニ補正後の、ASD研究群における変化が有意に異なるバイオマーカーのデータ分布を示す。
図12Bは、血漿遊離付加物CMAである。有意性:アスタリスク1つ、アスタリスク2つ、及びアスタリスク3つは、それぞれP<0.05、P<0.01、及びP<0.001を示す。
【
図12C】
図12は、ボンフェローニ補正後の、ASD研究群における変化が有意に異なるバイオマーカーのデータ分布を示す。
図12Cは、尿遊離付加物DT及びGSA;並びにアミノ酸Asn、Pro、Ser及びValである。有意性:アスタリスク1つ、アスタリスク2つ、及びアスタリスク3つは、それぞれP<0.05、P<0.01、及びP<0.001を示す。
【
図12D】
図12は、ボンフェローニ補正後の、ASD研究群における変化が有意に異なるバイオマーカーのデータ分布を示す。
図12Dは、CMA及びArgの腎クリアランスである。有意性:アスタリスク1つ、アスタリスク2つ、及びアスタリスク3つは、それぞれP<0.05、P<0.01、及びP<0.001を示す。
【
図13】
図13は、タンパク質糖化及び酸化付加物による自閉的スペクトラム障害の検出のための診断アルゴリズムの受信者動作特性プロットを示す。(A)アルゴリズム-1、血漿タンパク質付加物残基。AUROC=0.96。(B)アルゴリズム-2、血漿遊離アミノ酸付加物。AUROC=0.78。(C)アルゴリズム-3、血漿タンパク質付加物残基及び遊離付加物。AUROC=0.99.(D)アルゴリズム-4、尿遊離アミノ酸付加物。AUROC=0.78。ROCプロットは、分類実験1回の実行からの代表的な結果である。無作為の結果は、AUROC=0.50である。
【
図14】
図14は、血漿及び尿の被検物質から自閉的スペクトラム障害用に展開された診断アルゴリズムの詳細を示す。SVMを用いた2分割交差検証(頑健性のため、ランダム化した繰り返し試行10回)の場合のアルゴリズムの結果(95%CIを括弧内に示す)。
【
図15】
図15は、ASDにおいてタンパク質損傷及びアミノ酸に見られる変化を概略説明する。(A)血漿タンパク質糖化及び酸化付加物に見られる観察された変化の提案されたメカニズム。(B)腎尿細管上皮を横断するArg及びCMAの輸送と腎CLの増加(Arg及びCMAの再取り込みの増加)の提案メカニズム。凡例:灰色に塗られた矢印はプロセスを示す;黒色に塗られた矢印は、ASDにおいて観察された変化(A)と予想される変化(B)を示す。
【
図16-1】
図16は、タンパク質糖化、酸化、及びニトロ化付加物と、アミノ酸の質量分析多重反応モニタリング検出を示す。
【
図17】
図17は、血漿タンパク質糖化、酸化、及びニトロ化付加物残基の相関分析を示す。相関係数;スピアマン(P<0.01)。
【
図18】
図18は、血漿タンパク質糖化、酸化、及びニトロ化遊離付加物の相関分析を示す。相関係数;スピアマン(P<0.01)。
【
図19】
図19は、血漿アミノ酸の相関分析を示す。相関係数;スピアマン(P<0.01)。
【
図20】
図20は、尿中タンパク質糖化、酸化及びニトロ化遊離付加物の相関分析を示す。相関係数;スピアマン(P<0.01)。
【
図21】
図21は、尿中アミノ酸の相関分析を示す。相関係数;スピアマン(P<0.01)。
【
図22】
図22は、自閉的スペクトラム障害を識別するためのアルゴリズムの混同行列を示す。図示の混同行列は、実行1回の分類実験からの代表的な結果である。
【実施例】
【0187】
実施例
材料及び方法
被験者の採用
合計で69人の小児が採用された。このうち、38人がASDと診断され(男性29人、女性9人)、31人が定型発達(TD)児に分類された(男性23人、女性8人)-
図2。2つの被験者群の年齢に有意差はなかった。被験者年齢は、ASD群、7.6±2.0歳、5歳から12歳の範囲、TD群、8.6歳±2.0歳、5歳から12歳の範囲であった。ASD被験者は全て、Child Neurology and Psychiatry Unit of the Bellaria Hospital of Bologna(IRCCS Institute of Neurological Sciences)の幼児の発育についての専門家2人により、精神疾患の診断・統計マニュアルV(DSM5基準)、自閉症診断観察スケジュール(ADOS)、小児自閉症評定尺度(CARS)及び先に定義したASDの発症パターンの特徴に従ってASDとの診断を受けた。発達及び認知レベルを、心理教育プロフィール-3(PEP-3)及びリーター国際作業スケール改訂版(Leiter-R)によって評価した。ASD及びTD被験者両方に対し、除外基準は、炎症性又は感染性疾患の存在、及び調査時点の抗酸化サプリメントの摂取であった。血液と尿の採取前4カ月に何らかの外科的インターベンションを受けた被験者はいなかった。血液と尿のサンプリング時に活動性てんかんを起こしたASD被験者はいなかった。医学的及び神経学的共存疾患が確認された被験者は、脳波記録(覚醒中及び睡眠中に記録)、脳磁気共鳴イメージング、標準的な臨床及び神経学的検査、神経代謝及び遺伝子検査(比較ゲノムハイブリダイゼーションアレイ、脆弱X及びMECP2に対する分子解析を含む)を含む医学的精密検査を通じて除外された。この研究のために採用された被験者は、薬剤投与を受けていなかった。TD小児は、地域社会で採用され、認知的、学習的及び精神医学的関与の兆候はなかった。彼らは普通学校に通っていて、ストレスの多い出来事にさらされてはいなかった。食習慣を、Emilia-Romagna保健局が発行したガイドラインに従って構築された食物質問票によって評価した。グルテン又はカゼインを含まない食事をしているASD児はいなかった。患者と対照の両方が、単炭水化物と複合炭水化物の両方が多いこと、オリーブ油の使用、及び多量の果実によって定義されるような典型的な地中海式の食事をしていた。患者及び対照の両方で、野菜の消費は所望未満であったが、野菜摂取は、ASD患者の方が少なかった。ASDの人口統計学的及び臨床的特徴を、
図3に要約する。被験者は全て、Child Neurology and Psychiatry Unit of the Bellaria Hospital of Bologna、Bologna、Italy(イタリア、ボローニャにあるボローニャのベッラリア病院の小児神経及び精神科病棟)にて採用された。
【0188】
38人のASD児がこの研究のために採用された。この被験者群におけるASDの重症度の分布(症例数)は、軽度(6)、中程度(6)、及び重度(26)であった。認知/発達障害の分布(症例数)は、正常/境界線IQ(11)、軽度(3)、中程度(12)、及び重度(12)であった。ASDの発症パターンの分布(症例数)は、初期(22)、退行(6)、及び混合(10)であった。ADOSスコア範囲は13から22であり、CARS合計スコア範囲は31.5から48.5であった。
【0189】
血液と尿のサンプリング
血液は、空腹時の小児から朝に採取した。随時尿(スポット尿)サンプルは、朝の最初の尿であった。血液サンプルは、抗凝血剤としてのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)を用いて収集した。血漿と血液細胞を遠心分離(2000g、10分)によって即座に分離し、血漿サンプルは、分析まで-80℃で保存し、連携する実験室間をドライアイスに載せて移動した。
【0190】
タンパク質糖化、酸化、及びニトロ化のマーカーの解析
血漿タンパク質中の糖化、酸化、及びニトロ化付加物残基の含有量を、安定同位体希釈分析液体クロマトグラフィ-タンデム質量分析(LC-MS/MS)により、完全酵素消化物中で定量化し、加水分解酵素の自己加水分解について補正した。血漿及び尿中の関連する糖化、酸化、及びニトロ化アミノ酸遊離付加物(糖化、酸化、及びニトロ化アミノ酸)の濃度を、血漿及び尿の限外ろ過液でそれぞれ同様に特定した。血漿の限外ろ過液(50μl)は、4℃でマイクロスピン限外ろ過(10kDa分画)によって収集した。保持されたタンパク質を水で500μlに希釈し、マイクロスピン限外ろ過装置上で50μlへの濃縮と水での500μlへの希釈を4℃で4サイクル行うことにより、洗浄した。最終的な洗浄したタンパク質(100μl)は、記載されているように(Rabbani他、Biochem Soc Trans.2014;42(2):511-7;Ahmed他、Sci Rep.2015;5:9259)脱脂し、酵素的に加水分解した。尿の限外ろ過液(50μl)は、4℃でマイクロスピン限外ろ過(3kDa分画)によって収集した。
【0191】
タンパク質加水分解物(25μl、32μg当量)又は限外ろ過液(5μl)を安定同位体標準被検物質と混合し、Xevo-TQSタンデム質量分光計(Waters、Manchester、英国)を備えたAcquity(商標)UPLCシステムを用いてLC-MS/MSによって分析した。バッチ分析中、サンプルをオートサンプラで4℃に維持する。カラムは、2.1×50mm及び2.1mm×250mm、粒径5μmのHypercarb(商標)(Thermo Scientific)であり、プログラムされたスイッチングと直列に配置され、30℃であった。酸化した被検物質をそのアミノ酸前駆体から分離して質量分析検出器のエレクトロスプレーイオン化源における後者の部分的酸化による干渉を回避するため、クロマトグラフ保持が用いられた。被検物質は、エレクトロスプレー陽イオン化及び質量分析多重反応モニタリング(MRM)モードによって検出され、このモードでは、被検物質検出反応が、被検物質分子イオンと質量分光計の衝突セルにおける衝突誘起解離によって生成される主要フラグメントイオンとの質量/電荷比に対して特異的であった。イオン化源と脱溶媒和ガスの温度はそれぞれ120℃及び350℃であり、コーンガスと脱溶媒和ガスの流量は、99l/h及び900l/hであり、キャピラリ電圧は、0.60kVであった。アルゴンガス(5.0×10-3mbar)が、衝突セルに入っていた。MRM検出では、それぞれ±0.1Da及び±1eVに最適化された分子イオンとフラグメントイオンの質量及び衝突エネルギーがプログラムされた-
図16。
【0192】
特定された被検物質は、以下の通りである:
・ 糖化付加物-FL、並びにAGE、CML、CEL、ピラリン、CMA、G-H1、MG-H1、3DG-H、MOLD、及びGSP;
・ 酸化付加物-DT、NFK、AASA、GSA;
・ ニトロ化付加物、3-NT;並びに
・ 全ての主要なアミノ酸。
【0193】
酸化、ニトロ化、及び糖化付加物残基は、それらのアミノ酸残基前駆体に正規化され、mmol/mol修飾アミノ酸として与えられ;関連する遊離付加物は、nMで与えられる。これらの被検物質の化学構造と生化学的及び臨床的重要性は、他の文献に記載されている(Thornalley&Rabbani、Biochim Biophys Acta.2014;1840(2):818-29;及びAhmed他、Sci Rep.2015;5(9259):9251-7)。糖化、酸化、及びニトロ化遊離付加物と未修飾アミノ酸の腎クリアランス(CL)は、血漿及び随時尿の収集物から推定された:CL(μl/mgクレアチニン又はml/mgクレアチニン)=[被検物質]尿(nmol/mgクレアチニン)/[被検物質]血漿(pmol/ml又はnmol/ml)。
【0194】
機械学習分析
目的は、ASD児と健全な対照とを判別することであった。全ての症例において、診断アルゴリズムは、症例の50%と対照(訓練部分集合)に関して訓練され、その後、残りの被験者(試験集合)における各サンプルについて疾患クラスを予測することに、2分割交差検証として用いられた。その結果は、各試験集合サンプルについて、ASD群/対照群のそれぞれに対応する一組の確率を割り当てることであった-前記群の割り当ては、確率が最も高くなるものであった。試験データはアルゴリズム訓練とは別に保持され;アルゴリズムの設定は、試験集合データの分析が開始されてからは、調整しなかった-これにより過剰適合から保護され、そのため、予測性能の正確な推定が得られた。
【0195】
性能について、ランダムフォレスト、ロジスティック回帰、アンサンブル分類器、及びサポートベクターマシン(SVM)の4種類のアルゴリズムの試験が行われた。
【0196】
アルゴリズムの訓練中、タンパク質糖化、酸化、及びニトロ化付加物の完全な一団を特徴として用い、各被検物質の種類、即ち、血漿タンパク質付加物残基、血漿遊離付加物及び尿中遊離付加物についてアルゴリズムを展開した。後者の2つについては、未修飾アミノ酸も特徴として含まれている。訓練中の目的は、最高の性能を達成する特徴の集合を選択することであった。機械学習実験は当初、全ての代謝産物の特徴を用いて研究された。有利なことに、それに続く判別バイオマーカー特徴の部分集合の選択が、アルゴリズム性能を向上させた(
図14参照)。バイオマーカー(例えば、アミノ酸付加物)の選択には、逐次特徴選択アプローチが用いられた。バイオマーカー特徴の選択と分類子の選択は、分類精度、感度、特異度、受信者動作特性曲線の曲線下面積(AUROC)、陽性尤度比、陰性尤度比、陽性的中率、陰性的中率、及びF値によって定義されるアルゴリズム性能に基づいてなされた。各性能測定基準について、平均値及び95%CIが特定され、報告された。アルゴリズムパラメータを変更することなく、50%データ分割でアルゴリズムの訓練及び試験を10回繰り返し、データ分割の偏りに対するアルゴリズムの頑健性の試験を行った。MATLAB(登録商標)のStatistics and Machine Learning のツールボックス(MathWorks,Inc.、Natick,米国)を用い、線形カーネルSVMと逐次最小問題最適化法(SMO)によってコンピュータプログラムを展開した。
【0197】
統計分析
データは、パラメトリック分布の場合は平均値±SDとして、ノンパラメトリック分布の場合は中央値(下位-上位四分位点)として提示される。適用されたデータ分布の正規性検定は、コルモゴルフ・スミルノフ検定であった。有意性は、パラメトリック又はノンパラメトリック分布のデータについて、それぞれスチューデントt-検定又はマンホイットニーU検定によって評価した。多数(複数)の被検物質の分析には、仮説を立てることなくボンフェローニ補正を行った。連続型変数を用い、スピアマンのロー法によって相関分析を行った。6カテゴリ以上の臨床カテゴリ変数には、連続型変数への近似を仮定してスピアマン相関を行い;他のカテゴリ変数の場合は、カテゴリ間のバイオマーカーデータ分布の差の有意性を、パラメトリックデータ用の一元配置ANOVAとクラスカル・ワリスH検定によって評価した。SPSS、バージョン24.0を用いてデータを分析した。
【0198】
研究設計時の検定力分析のため、血漿タンパク質中の不可逆的酸化的損傷マーカーDTのレベルを選択した。健全なヒト被験者では、血漿タンパク質DTは、以前の研究では、0.0287±0.0027mmol/mol tyr(n=29)であった。この研究は、血漿タンパク質DTの50%の増加を0.01%の有意水準で検出するように設計されており、それには、18以上の症例と対照サンプルが必要であった。事後の分析で、27の症例と21の対照での14のボンフェローニ補正後、P=0.00017で88%の増加が明らかとなり、この研究は、この重要な標的となる分析物に対して十分な検定力を有することを指し示した。
【0199】
実施例1
この研究のために採用された自閉的スペクトラム障害児
38人のASD児がこの研究のために採用された。この被験者群におけるASDの重症度の分布(症例数)は、軽度(6)、中程度(6)、及び重度(26)であった。認知/発達障害の分布(症例数)は、正常/境界線IQ(11)、軽度(3)、中程度(12)、及び重度(12)であった。ASDの発症パターンの分布(症例数)は、初期(22)、退行(6)、及び混合(10)であった。ADOSスコア範囲は13から22であり、CARS合計スコア範囲は31.5から48.5であった。
【0200】
実施例2
血漿タンパク質の糖化、酸化、及びニトロ化
血漿タンパク質中、ASD児では、健全な対照に関してAGE-CML、MG-H1、及びCMA-のタンパク質含有量は増加し;一方、ASD児では、健全な対照に関してAGEである3DG-Hの血漿タンパク質含有量は減少した。ASD児では、健全な対照に関して酸化的損傷付加物DTの血漿タンパク質含有量は増加した。有利なことに、CML、CMA、及びDTの変化は、多数(複数)の被検物質の測定のためのボンフェローニ補正後も有意なままであった(
図4)。相関分析において、高度に有意な正の相関(P<0.01、スピアマン)が、CMLとDT、G-H1とMG-H1及びDT、MG-H1とCMA、CMAとDT、並びにAASAとGSAに存在した-
図17。糖化、酸化、及びニトロ化付加物残基の人口統計学的及び臨床的特徴との相関又は関連は認められなかった。ASDの有無に関わらず、性別の異なる被験者群間で、これらの変数に有意差はなかった。
【0201】
実施例3
血漿糖化、酸化、及びニトロ化アミノ酸とアミノ酸メタボローム
血漿中の糖化、酸化、及びニトロ化アミノ酸濃度については、ASD児では、健全な対照に関してFL、G-H1及びNFKは減少した一方、CMA、AASA、及びGSAは増加した。有利なことに、CMAの増加は、ボンフェローニ補正後も有意なままであった(
図5)。相関分析において、高度に有意な正の相関が、ピラリンとMG-H1及び3DG-H;FLとCML、G-H1及びMG-H1;CELとMG-H1及びCMA、MG-H1と3DG-H、並びに、CMAとAASAに存在した。ピラリンとNFK;CMAとMOLD;及びMOLDとAASAに高度に有意な負の相関が存在した-
図18。
【0202】
従来のアミノ酸メタボロームについては、ASD児では、健全な対照に関してarg、gln、glu及びthrの増加と、trpの減少とが存在した。血漿アミノ酸濃度間には、多くの高度に有意な正の相関が存在した-
図19。糖化、酸化、及びニトロ化遊離付加物とアミノ酸の人口統計学的及び臨床的特徴との相関又は関連は認められなかった。性別間でこれらの変数に有意差はなかった。
【0203】
実施例4
尿中の糖化、酸化、及びニトロ化アミノ酸とアミノ酸メタボローム、並びに腎クリアランス
糖化、酸化、及びニトロ化アミノ酸の尿フラックスについては、ASD児は、CML、G-H1、CMA、MOLD、ピラリン、DT、NFK、AASA及びGSAの尿中排せつの増加を示した。有利なことに、DT及びGSAの尿中排せつは、ボンフェローニ補正後も有意なままであった(
図6)。未修飾アミノ酸の尿フラックスについては、ASD児は、asp、cys、lys、phe、及びtyrを除く全てのアミノ酸の尿中排せつの増加を示した。有利なことに、asn、pro、ser、及びvalの尿中排せつの増加は、ボンフェローニ補正後も有意なままであった(
図8)。糖化、酸化、及びニトロ化付加物とアミノ酸の尿中排せつとの間には、いくつかの高度に有意な正の相関が存在した-
図20及び
図21参照。
【0204】
ASD児では、健全な対照に関してCMA、GSP、DT、arg、glu、leu、phe、及びthrの腎クリアランスは減少し、NFK及びtrpの腎クリアランスは増加した。有利なことに、arg及びCMAの腎クリアランスの減少は、ボンフェローニ補正後も有意なままであり:ASD児では、健全な対照と比較してCL
argは32%減少し、CL
CMAは50%減少した;P<0.001(
図9及び10)。これらの糖化、酸化、及びニトロ化遊離付加物とアミノ酸変数の人口統計学的及び臨床的特徴との相関又は関連は認められなかった。性別間でこれらの変数に有意差はなかった。
【0205】
血漿及び尿中の糖化、酸化、及びニトロ化付加物とアミノ酸メタボロームの変化を、ヒートマップ(
図11A及び
図11B)に要約する。
図12A-Dに、ボンフェローニ補正後のASD研究群で変化が有意に異なるバイオマーカー(アミノ酸付加物及びアミノ酸)のデータ分布を示す。
【0206】
実施例5
自閉的スペクトラム障害用の診断アルゴリズムの展開
ASDに対するタンパク質糖化、酸化、及びニトロ化測定の診断的有用性を探求するため、血漿及び尿中アミノ酸被検物質データを機械学習アプローチによって分析した。SVMは、調査した4つのアルゴリズムの中で、最も性能の良い方法であった。2分割交差検証から最適化されたアルゴリズムは、以下の通りである:
(i)アルゴリズム-1、血漿タンパク質糖化、酸化、及びニトロ化付加物残基の被検物質から展開。
以下の特徴を有する:CML、3DG-H、CMA、及びDT;分類精度は88%であった;感度は92%;特異度は84%;AUROCは0.94。無作為の結果は0.50である。
(ii)アルゴリズム-2、血漿糖化、酸化、及びニトロ化アミノ酸と、従来のアミノ酸メタボロームから展開。
以下の特徴を有する:CML及びCMA;分類精度は75%であった;感度は81%;特異度は67%;AUROCは0.80。
(iii)アルゴリズム-3、血漿タンパク質糖化、酸化、及びニトロ化付加物残基と、血漿糖化、酸化、及びニトロ化アミノ酸並びに従来のアミノ酸メタボロームとの組合せから展開。
以下の特徴を有する:血漿タンパク質CML、3DG-H、CMA、及びDT残基、並びに、血漿G-H1及びGSA遊離付加物;分類精度は89%であった。感度は90%;特異度は87%;AUROCは0.95。
(iv)アルゴリズム-4、尿中糖化、酸化、及びニトロ化アミノ酸から展開。
以下の特徴を有する:GSA及びピラリン遊離付加物;分類精度は77%であった;感度は77%;特異度は76%;AUROCは0.79(
図13、
図14、及び
図22)。
【0207】
臨床症状によってASDであると診断された各患者について、診断アルゴリズムを用いてASDである確率を推定した(
図3)。これらの確率と臨床的特徴との関連及び相関について探求した。これらの確率と臨床的特徴(年齢、ADOS、合計CARS、CARS多動性及びCARS身体使用スコア、自閉症重症度、認知/発達障害、及びASD発症パターン)との有意な関連又は相関は認められなかった。
【0208】
理論によって拘束されることを望むものではないが、本発明者らの発見は、ASDにおける糖化最終産物(AGE)のジカルボニル前駆体の代謝障害及びデュアルオキシダーゼ(DUOX)の活性化を暗示している。本明細書に示す最初の証拠は、血漿タンパク質AGEとジチロシン(DT)の濃度の組合せの検出が、ASDの診断に最適な血液ベースの試験を提供し得ることを指し示す。アルギニンとCMAの腎クリアランスの減少は、ASD発症の要因としてのニューロンのアミノ酸の可用性の証拠の増加を踏まえ、ASDにおけるアミノ酸輸送体の機能障害に関連していることが提案される。
【0209】
上記の説明で言及した出版物は全て、参照することにより本明細書に組み込まれる。記載した本発明の方法及びシステムの様々な改変及び変形は、本発明の範囲及び主旨から逸脱することなく、当業者には明らかであろう。特定の好ましい実施の形態に関連して本発明を説明してきたが、当然ながら、請求される本発明は、そうした特定の実施の形態に過度に限定すべきではない。実際、生化学及び生命工学又は関連する分野の当業者にとっては明らかな、記載した本発明を実施するための形態の様々な改変は、下記の特許請求の範囲内にあることが意図されている。
[第1の局面]
自閉症スペクトラム障害(ASD)を診断するための方法であって:
a.被験者から取得したサンプル中のアミノ酸付加物の濃度を検出するステップであって、前記アミノ酸付加物は、糖化アミノ酸付加物、酸化アミノ酸付加物、又はニトロ化アミノ酸付加物である、前記検出するステップと;
b.前記サンプル中の前記アミノ酸付加物の前記濃度を参照標準中の同じアミノ酸付加物の濃度と比較するステップと;
c.前記参照標準に対する前記サンプル中の前記アミノ酸付加物の濃度差の有無を識別するステップであって、前記濃度差の有無はASDの有無と相関する、前記識別するステップと;を備える、
自閉症スペクトラム障害(ASD)を診断するための方法。
[第2の局面]
自閉症スペクトラム障害(ASD)の予後を特定するための方法であって:
a.被験者から取得したサンプル中のアミノ酸付加物の濃度を検出するステップであって、前記アミノ酸付加物は、糖化アミノ酸付加物、酸化アミノ酸付加物、又はニトロ化アミノ酸付加物である、前記検出するステップと;
b.前記サンプル中の前記アミノ酸付加物の前記濃度を参照標準中の同じアミノ酸付加物の濃度と比較するステップと;
c.前記参照標準に対する前記サンプル中の前記アミノ酸付加物の濃度差の有無を識別するステップであって、前記濃度差の有無は、良好な予後又は不良な予後と相関する、前記識別するステップと;を備える、
自閉症スペクトラム障害(ASD)の予後を特定するための方法。
[第3の局面]
自閉症スペクトラム障害(ASD)を診断するための方法であって:
a.被験者から取得したサンプル中のアミノ酸付加物の濃度を検出するステップであって、前記アミノ酸付加物は、糖化アミノ酸付加物、酸化アミノ酸付加物、又はニトロ化アミノ酸付加物である、前記検出するステップと;
b.前記サンプル中に検出された前記アミノ酸付加物の前記濃度に基づき、診断アルゴリズムによって、前記被験者の健康状態を分類するステップであって、前記診断アルゴリズムは、既知の疾病状態を有する被験者の母集団から取得した同じアミノ酸付加物についての対応する濃度に関して訓練され、それにより前記被験者におけるASDの有無を診断する、前記分類するステップと;を備える、
自閉症スペクトラム障害(ASD)を診断するための方法。
[第4の局面]
自閉症スペクトラム障害(ASD)を処置するための方法であって:
a.第1の局面又は第3の局面の方法の成績を要求する、又は、第1の局面又は第3の局面の方法の結果を取得するステップと;
b.ASDであると診断された被験者に、ASDに対する療法を施用するステップと;を備える、
自閉症スペクトラム障害(ASD)を処置するための方法。
[第5の局面]
ASDの処置に適する療法を識別するための方法であって:
a.候補の療法を施用された被験者からの単離サンプルを提供するステップと;
b.前記サンプル中のアミノ酸付加物の濃度を検出するステップであって、前記アミノ酸付加物は、糖化アミノ酸付加物、酸化アミノ酸付加物、又はニトロ化アミノ酸付加物である、前記検出するステップと;
c.ステップ(b)で検出された前記アミノ酸付加物の前記濃度を、前記候補の療法の施用前の前記被験者からの単離サンプル中のアミノ酸付加物の濃度と比較することによって、前記アミノ酸付加物の相対的な濃度変化を特定するステップと;を備え、
前記候補の療法を施用した後に濃度変化が検出される場合、前記候補の療法はASDの処置に適しており、
前記候補の療法を施用した後に濃度変化が検出されない場合、前記候補の療法はASDの処置に適していないとする、
ASDの処置に適する療法を識別するための方法。
[第6の局面]
ASD療法の有効性をモニタリングするための方法であって:
a.前記療法を施用された患者からの単離サンプルを提供するステップと;
b.前記サンプル中のアミノ酸付加物の濃度を検出するステップであって、前記アミノ酸付加物は、糖化アミノ酸付加物、酸化アミノ酸付加物、又はニトロ化アミノ酸付加物である、前記検出するステップと;
c.ステップ(b)で検出された前記アミノ酸付加物の前記濃度を、以前の時点での被験者からの単離サンプル中のアミノ酸付加物の濃度と比較することによって、アミノ酸付加物の相対的な濃度変化を特定し、
濃度変化が検出された場合、有効性の存在を確認し、
濃度変化が検出されなかった場合、有効性の非存在を確認するステップと;を備える、
ASD療法の有効性をモニタリングするための方法。
[第7の局面]
第1の局面若しくは第2の局面のステップ(b)及び/若しくは(c)、又は、第5の局面若しくは第6の局面のステップ(c)は、診断アルゴリズムによって/診断アルゴリズムを用いて行われるステップであり、
好ましくは、前記診断アルゴリズムは、前記サンプル中に検出された前記アミノ酸付加物の前記濃度に基づき、前記ASDの有無を診断するように構成されており、前記診断アルゴリズムは、1つ又は複数(好ましくは複数)の参照標準中の同じアミノ酸付加物についての対応する濃度に関して訓練される、又は、
好ましくは、前記診断アルゴリズムは、前記サンプル中に検出された前記アミノ酸付加物の前記濃度に基づき、前記被験者の健康状態を分類するように構成されており、前記診断アルゴリズムは、既知の疾病状態を有する被験者の母集団から取得した前記同じアミノ酸付加物についての前記対応する濃度に関して訓練される、
第1の局面から第2の局面又は第5の局面から第6の局面に記載の方法。
[第8の局面]
a.ASDを診断すること;
b.ASDの予後を特定すること;
c.ASDの処置に適する療法を識別すること;
d.ASD療法の有効性をモニタリングすること;及び/又は、
e.ASD診断アルゴリズムにおける特徴としての使用;のための、糖化アミノ酸付加物、酸化アミノ酸付加物、ニトロ化アミノ酸付加物、又はこれらの組合せの使用。
[第9の局面]
前記サンプルは、血液、血漿、血漿限外ろ過液、尿、血清、滑液、及び/又は痰のうちの1種又は複数種から選択される、
第1の局面から第8の局面の何れかに記載の方法又は使用。
[第10の局面]
前記アミノ酸付加物は、Nε-カルボキシメチル-リジン(CML)、3-デオキシグルコソン由来ヒドロイミダゾロン(3DG-H)、Nω-カルボキシメチルアルギニン(CMA)、グルタミン酸セミアルデヒド(GSA)、グリオキサル由来ヒドロイミダゾロン(G-H1)、ピラリン、メチルグリオキサル由来ヒドロイミダゾロン(MG-H1)、Nε-フルクトシル-リジン(FL)、Nε-(1-カルボキシエチル)リジン(CEL)、α-アミノアジピン酸セミアルデヒド(AASA)、及びメチルグリオキサル由来リジン二量体(MOLD)から選択される1種又は複数種である、
第1の局面から第9の局面の何れかに記載の方法又は使用。
[第11の局面]
前記アミノ酸付加物は、Nε-カルボキシメチル-リジン(CML)、3-デオキシグルコソン由来ヒドロイミダゾロン(3DG-H)、Nω-カルボキシメチルアルギニン(CMA)、ジチロシン(DT)、グルタミン酸セミアルデヒド(GSA)、グリオキサル由来ヒドロイミダゾロン(G-H1)、ピラリン、メチルグリオキサル由来ヒドロイミダゾロン(MG-H1)、Nε-フルクトシル-リジン(FL)、Nε-(1-カルボキシエチル)リジン(CEL)、α-アミノアジピン酸セミアルデヒド(AASA)、及びメチルグリオキサル由来リジン二量体(MOLD)から選択される少なくとも2種である、
第1の局面から第10の局面の何れかに記載の方法又は使用。
[第12の局面]
非ASD参照標準と比較したときに、
a.CML、CMA、及びGSAから選択される1種又は複数種の前記濃度は増加し;及び/又は、
b.3DG-H及びG-H1(遊離付加物)から選択される1種又は複数種の前記濃度は減少し;
ASDの存在を指し示す、
第1の局面から第11の局面の何れかに記載の方法又は使用。
[第13の局面]
ASD参照標準と比較したときに、
a.CML、CMA、及びGSAから選択される1種又は複数種の前記濃度は同じである又は増加し;及び/又は、
b.3DG-H及びG-H1(遊離付加物)から選択される1種又は複数種の前記濃度は同じである又は減少し;
ASDの存在を指し示す、
第1の局面から第12の局面の何れかに記載の方法又は使用。
[第14の局面]
非ASD参照標準と比較したときに、
a.CML、CMA、DT、及びGSAから選択される2種以上の前記濃度は増加し;
ASDの存在を指し示す、
第1の局面から第13の局面の何れかに記載の方法又は使用。
[第15の局面]
ASD参照標準と比較したときに、
a.CML、CMA、DT、及びGSAから選択される2種以上の前記濃度は同じである又は増加し;
ASDの存在を指し示す、
第1の局面から第14の局面の何れかに記載の方法又は使用。
[第16の局面]
非ASD参照標準と比較したときに、
a.CML、及びCMAから選択される1種又は複数種の前記濃度は増加し;及び/又は、
b.3DG-Hの前記濃度は減少し;
ASDの存在を指し示す、
第1の局面から第15の局面の何れかに記載の方法又は使用。
[第17の局面]
ASD参照標準と比較したときに、
a.CML、及びCMAから選択される1種又は複数種の前記濃度は同じである又は増加し;及び/又は、
b.3DG-Hの前記濃度は同じである又は減少し;
ASDの存在を指し示す、
第1の局面から第16の局面の何れかに記載の方法又は使用。
[第18の局面]
非ASD参照標準と比較したときに、
a.CML、CMA、及びDTから選択される2種以上の前記濃度は増加し;
ASDの存在を指し示す、
第1の局面から第17の局面の何れかに記載の方法又は使用。
[第19の局面]
ASD参照標準と比較したときに、
a.CML、CMA、及びDTから選択される2種以上の前記濃度は同じである又は増加し;
ASDの存在を指し示す、
第1の局面から第18の局面の何れかに記載の方法又は使用。
[第20の局面]
非ASD参照標準と比較したときに、
CML及び/又はCMAの前記濃度は増加し;
ASDの存在を指し示す、
第1の局面から第19の局面の何れかに記載の方法又は使用。
[第21の局面]
ASD参照標準と比較したときに、
CML及び/又はCMAの前記濃度は同じである又は増加し;
ASDの存在を指し示す、
第1の局面から第20の局面の何れかに記載の方法又は使用。
[第22の局面]
前記サンプルは、血液サンプルである、
第12の局面から第21の局面の何れかに記載の方法又は使用。
[第23の局面]
非ASD参照標準と比較したときに、
GSA及び/又はピラリンの前記濃度は増加し;
ASDの存在を指し示す、
第1の局面から第22の局面の何れかに記載の方法又は使用。
[第24の局面]
ASD参照標準と比較したときに、
GSA及び/又はピラリンの前記濃度は同じである又は増加し;
ASDの存在を指し示す、
第1の局面から第23の局面の何れかに記載の方法又は使用。
[第25の局面]
前記サンプルは、尿サンプルである、
第23の局面又は第24の局面に記載の方法又は使用。
[第26の局面]
前記アミノ酸付加物は、安定同位体希釈分析液体クロマトグラフィ-タンデム質量分析、反応モニタリング(SRM)質量分析、ウエスタンブロット法、酵素結合免疫吸着検査法(ELISA)、液体クロマトグラフィ質量分析(LC-MS)、逆相質量分析、表面増強レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析(SELDI-TOF)、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析(MALDI-TOF)、液体クロマトグラフィ-タンデム質量分析、同位体希釈質量分析、サイズ透過(ゲルろ過)、イオン交換、親和性、高速液体クロマトグラフィ、超速液体クロマトグラフィ、一次元ゲル電気泳動(1-DE)、及び/又は二次元ゲル電気泳動(2-DE)によって検出される、
第1の局面から第25の局面の何れかに記載の方法又は使用。
[第27の局面]
前記アミノ酸付加物は、質量分析によって検出される、
第1の局面から第26の局面の何れかに記載の方法又は使用。
[第28の局面]
前記アミノ酸付加物は、液体クロマトグラフィ-タンデム質量分析によって検出される、
第1の局面から第27の局面の何れかに記載の方法又は使用。
[第29の局面]
前記自閉症スペクトラム障害は、自閉症、アスペルガ症候群、特定不能な広汎性発達障害(PDD-NOS)、及び幼児期崩壊性障害のうちの1種又は複数種から選択される、
第1の局面から第28の局面の何れかに記載の方法又は使用。
[第30の局面]
サンプル中のアミノ酸付加物の濃度を検出するステップで取得されるデータを、適切なデータ記録媒体に記録するステップ;を更に備える、
第1の局面から第29の局面の何れかに記載の方法又は使用。
[第31の局面]
アミノ酸付加物の前記検出された濃度が診断アルゴリズムに入力され、前記診断アルゴリズムがASDの有無を指し示す、
第1の局面から第30の局面の何れかに記載の方法又は使用。
[第32の局面]
第1の局面から第31の局面の何れかに記載の方法又は使用に従ってサンプル中のアミノ酸付加物の濃度を検出するステップにおいて取得されるデータを含む、
データ記録媒体。
[第33の局面]
自閉症スペクトラム障害を診断するための方法に用いるための、
第32の局面に記載のデータ記録媒体。
[第34の局面]
サンプル中のアミノ酸付加物の濃度を検出するための試薬であって、前記アミノ酸付加物は、糖化アミノ酸付加物、酸化アミノ酸付加物、ニトロ化アミノ酸付加物又はこれらの組合せから選択される1種又は複数種である、試薬と;前記試薬の使用説明書と;を備える、
キット。
[第35の局面]
前記アミノ酸付加物は、Nε-フルクトシル-リジン(FL)、グリオキサル由来ヒドロイミダゾロン(G-H1)、3-デオキシグルコソン由来ヒドロイミダゾロン(3DG-H)、Nε-カルボキシメチル-リジン(CML)、Nω-カルボキシメチルアルギニン(CMA)、メチルグリオキサル由来ヒドロイミダゾロン(MG-H1)、ピラリン、メチルグリオキサル由来リジン二量体(MOLD)、N-ホルミルキヌレニン(NFK)、α-アミノアジピン酸セミアルデヒド(AASA)、グルタミン酸セミアルデヒド(GSA)、及び3-ニトロチロシン(3-NT)から選択される1種又は複数種である、
第34の局面に記載のキット。
[第36の局面]
前記アミノ酸付加物は、Nε-フルクトシル-リジン(FL)、グリオキサル由来ヒドロイミダゾロン(G-H1)、3-デオキシグルコソン由来ヒドロイミダゾロン(3DG-H)、Nε-カルボキシメチル-リジン(CML)、Nω-カルボキシメチルアルギニン(CMA)、メチルグリオキサル由来ヒドロイミダゾロン(MG-H1)、ピラリン、メチルグリオキサル由来リジン二量体(MOLD)、ジチロシン(DT)、N-ホルミルキヌレニン(NFK)、α-アミノアジピン酸セミアルデヒド(AASA)、グルタミン酸セミアルデヒド(GSA)、及び3-ニトロチロシン(3-NT)から選択される2種以上である、
第34の局面又は第35の局面に記載のキット。
[第37の局面]
サンプル中のアミノ酸の濃度を検出するための試薬であって、前記アミノ酸は、アスパラギン、グルタミン酸塩、グルタミン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、バリン、又はこれらの組合せのうちの1種又は複数種から選択される、前記試薬と;
任意選択で前記試薬の使用説明書と;を更に備える、
第34の局面から第36の局面の何れかに記載のキット。
[第38の局面]
サンプル中のクレアチニンの濃度を検出するための試薬;を更に備える、
第34の局面から第37の局面の何れかに記載のキット。
[第39の局面]
前記試薬は、選択反応モニタリング(SRM)質量分析、ウエスタンブロット法、酵素結合免疫吸着検査法(ELISA)、液体クロマトグラフィ質量分析(LC-MS)、逆相質量分析、表面増強レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析(SELDI-TOF)、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析(MALDI-TOF)、液体クロマトグラフィ-タンデム質量分析、同位体希釈質量分析、サイズ透過(ゲルろ過)、イオン交換、親和性、高速液体クロマトグラフィ、超速液体クロマトグラフィ、一次元ゲル電気泳動(1-DE)、及び/又は二次元ゲル電気泳動(2-DE)によってアミノ酸付加物及び/又はアミノ酸の濃度を検出するための試薬である、
第34の局面から第38の局面の何れかに記載のキット。
[第40の局面]
前記試薬は、液体クロマトグラフィ-タンデム質量分析によってアミノ酸付加物の前記濃度を検出するための試薬である、
第34の局面から第39の局面の何れかに記載のキット。
[第41の局面]
液体クロマトグラフィ-タンデム質量分析によるアミノ酸付加物の前記濃度の検出に用いるための標準;を更に備える、
第34の局面から第40の局面の何れかに記載のキット。