(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-10
(45)【発行日】2024-07-19
(54)【発明の名称】蒸着装置
(51)【国際特許分類】
C23C 14/24 20060101AFI20240711BHJP
【FI】
C23C14/24 J
(21)【出願番号】P 2023175252
(22)【出願日】2023-10-10
【審査請求日】2023-12-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】300075751
【氏名又は名称】株式会社オプトラン
(74)【代理人】
【識別番号】100133411
【氏名又は名称】山本 龍郎
(74)【代理人】
【識別番号】100067677
【氏名又は名称】山本 彰司
(72)【発明者】
【氏名】黄 新偉
(72)【発明者】
【氏名】呉 博尋
【審査官】富永 泰規
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-304497(JP,A)
【文献】特開平02-305956(JP,A)
【文献】特開2015-096641(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00 - 14/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部が所定の圧力に減圧可能となっている真空チャンバと、
前記真空チャンバ内に回転自在に設けられた1つの円形の基板ホルダと、
前記基板ホルダの下面に保持された複数の基板と、
蒸着材料の蒸気を噴出する複数の真空蒸着源と、を有し、
前記基板ホルダは、前記真空蒸着源の蒸着材料の蒸気を噴出する方向に前記基板の膜形成面が臨むように、前記複数の基板を保持するようになっており、
前記基板ホルダが、前記真空蒸着源のそれぞれに対して、前記複数の基板の前記真空蒸着源からの距離と角度が最適となるように、前記基板を保持
し、
前記基板ホルダには、前記複数の基板のそれぞれが個別に載置されるように、独立した複数の基板載置部が設けられており、前記それぞれの基板載置部は、前記複数の基板の前記真空蒸着源からの距離と角度が最適となるように、その高さと下面の傾きが異なっており、
前記真空蒸着源が、第1真空蒸発源および第2真空蒸着源の2つからなり、
前記基板載置部は、前記蒸着材料の蒸気の飛翔分布を考慮して、断面上で前記第1真空蒸発源および前記第2真空蒸着源のそれぞれから、前記各基板までの距離と角度が同じになるように、その高さと下面の傾きが異なって形成されている蒸着装置。
【請求項2】
前記基板ホルダは、前記真空蒸着源のそれぞれに臨む下面が凹状になっており、その下面に、前記複数の基板が配列して設置されている請求項1に記載の蒸着装置。
【請求項3】
前記基板ホルダは、成膜処理において、駆動モータにより回転駆動される請求項1に記載の蒸着装置。
【請求項4】
前記蒸着装置が、前記基板ホルダを保持するホルダ支持部を有しており、前記ホルダ支持部が、前記真空チャンバの上部に突出して設けられた駆動モータより前記真空チャンバ内の下方に伸びる回転軸の下部に取り付けられ、前記ホルダ支持部の下面に、前記基板の膜形成面が前記真空蒸着源側に臨むように、前記基板を保持する前記基板ホルダが設けられている請求項1に記載の蒸着装置。
【請求項5】
前記基板ホルダの断面は、各第1真空蒸発源および第2真空蒸着源側に臨むそれぞれの下面が凹状に形成された緩やかなM型となる請求項1に記載の蒸着装置。
【請求項6】
内部が所定の圧力に減圧可能となっている真空チャンバと、
前記真空チャンバ内に回転自在に設けられた1つの円形の基板ホルダと、
前記基板ホルダの下面に保持された複数の基板と、
蒸着材料の蒸気を噴出する複数の真空蒸着源と、を有し、
前記基板ホルダは、前記真空蒸着源の蒸着材料の蒸気を噴出する方向に前記基板の膜形成面が臨むように、前記複数の基板を保持するようになっており、
前記基板ホルダが、前記真空蒸着源のそれぞれに対して、前記複数の基板の前記真空蒸着源からの距離と角度が最適となるように、前記基板を保持し、
前記基板ホルダが、リングドーナツ形状であり、
前記基板ホルダには、前記複数の基板のそれぞれが個別に載置されるように、独立した複数の基板載置部が設けられており、前記それぞれの基板載置部は、前記複数の基板の前記真空蒸着源からの距離と角度が最適となるように、その高さと下面の傾きが異なって
おり、
前記真空蒸着源が、第1真空蒸発源および第2真空蒸着源の2つからなり、
前記基板載置部は、前記蒸着材料の蒸気の飛翔分布を考慮して、断面上で前記第1真空蒸発源および前記第2真空蒸着源のそれぞれから、前記各基板までの距離と角度が同じになるように、その高さと下面の傾きが異なって形成されている蒸着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空蒸着源よりの蒸着材料を、基板ホルダに配置された基板に蒸着させる蒸着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基板に蒸着材料を蒸着させて成膜し、基板に所定の膜を形成する蒸着装置が知られており、三次元基板に機能性多層膜を堆積させる手法として遊星回転子機構が提案されている。
このような蒸着装置では、1ロット当りの基板登載数を増やすことが求められていた。
【0003】
このような蒸着装置としては、真空チャンバ内に、公転させながらその公転軌道上で遊星歯車や伝動ベルトなどの自転手段にて自転させる基板ホルダ(遊星回転子)を設け、その基板ホルダに複数の基板を設置し、基板ホルダを自公転させながら、真空蒸着源により加熱気化された蒸着材料を基板上に堆積されて成膜されるものが提案されていた。(例えば、文献1、文献2参照)。
【0004】
【文献】特開2017-110260号公報
【文献】WO2022/040240号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような、従来の蒸着装置においては、稼働効率を上げ生産性を向上させるため、1ロット当たりの基板搭載数を増やしたい要望があった。
その要望に叶えるためには、基板を設置する基板ホルダのサイズを大きくする、基板ホルダの数を増やすといった対策が考えられる。
しかしながら、基板ホルダのサイズを大きくしたり、基板ホルダの数を増やしたりすると、以下のような技術的課題が起こってしまうものであった。
基板ホルダのサイズを大きくすると、膜厚の均一性を確保するために基板ホルダと蒸発源の距離を長くしなければならず、蒸着速度が低くなってしまい、チャンバも高く大きな構成しなければならなくなる。
基板ホルダのサイズを大きくすると、基板ホルダの重量が大きくなるために、基板ホルダの回転部のベアリングや駆動部の消耗が激しく、故障し易くなる。
基板ホルダの数を増やすと、基板ホルダの回転機構がより複雑になり、故障し易くなる。
基板ホルダのサイズを大きくして重量が増すと、基板ホルダの駆動部で発生した摩耗粉が膜の中に混入してしまうリスクがある。
基板ホルダのサイズを大きくすると、原料原子が大角度で斜入射することとなり、膜形成において陰になる部分ができ易くなり、膜厚が均一とはならずに島状構造が形成されてしまう。それにより、隣り合う島同士が合体するときに引っ張り応力が生じ、圧縮応力の膜が作り難くなる。
【0006】
本発明は前記のような従来の問題点に着目してなされたものであり、基板ホルダの基板登載数を増やしつつ、蒸着速度を高くすることができ、より高い生産性を達成することができる蒸着装置を得ることを目的とする。
本発明の他の目的は、膜厚の均一性を確保しつつ、成膜速度の高い成膜処理を達成することができる蒸着装置を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的達成のために、本発明に係る蒸着装置は、内部が所定の圧力に減圧可能となっている真空チャンバと、前記真空チャンバ内に回転自在に設けられた1つの円形の基板ホルダと、前記基板ホルダの下面に保持された複数の基板と、蒸着材料の蒸気を噴出する複数の真空蒸着源と、を有し、前記基板ホルダは、前記真空蒸着源の蒸着材料の蒸気を噴出する方向に前記基板の膜形成面が臨むように、前記複数の基板を保持するようになっており、前記基板ホルダが、前記真空蒸着源のそれぞれに対して、前記複数の基板の前記真空蒸着源からの距離と角度が最適となるように、前記基板を保持することを特徴とする。
【0008】
本発明の他の特徴は、蒸着装置が、内部が所定の圧力に減圧可能となっている真空チャンバと、前記真空チャンバ内にホルダ支持部を介して回転自在に設けられ、成膜処理において、駆動モータにより回転駆動される1つの円形の基板ホルダと、前記基板ホルダの下面に保持された複数の基板と、蒸着材料の蒸気を噴出する複数の真空蒸着源と、を有し、前記基板ホルダは、前記真空蒸着源のそれぞれに臨む下面が凹状になっており、その下面に、前記複数の基板が配列して設置されており、前記基板ホルダには、前記複数の基板のそれぞれが個別に載置されるように、独立した複数の基板載置部が設けられており、前記蒸着材料の蒸気の飛翔分布を考慮して、前記真空蒸着源のそれぞれに対して、前記複数の基板の前記真空蒸着源からの距離と角度が最適となるように、前記基板載置部に前記基板が保持されることである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、基板ホルダと蒸発源の距離を短くすることにより、基板ホルダの基板登載数を増やしつつ、蒸着速度を高くすることができ、より高い生産性を達成することができるようになる。
さらに、本発明によれば、膜厚の均一性を確保しつつ、成膜速度の高い成膜処理を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る蒸着装置の内部構成を示す図であり、
図2のI-I’線からの断面図である。
【
図4】
図4は、
図3に示した蒸着装置のII-II’線からの断面図である。
【
図6】
図6は、
図5に示した基板ホルダのIII-III’線からの拡大断面図である。
【
図8】
図8は、第1真空蒸発源に対して、複数の基板が、それぞれ最適な位置および角度となるように配置されるようすを示した説明図である。
【
図9】
図9は、複数の真空蒸発源の配置されるようすを示した説明図である。
【
図10】
図10は、基板ホルダ7のM型断面形状を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の蒸着装置の実施の形態について、図面に関連付けて説明する。
【0012】
図1は、本発明の実施形態に係る蒸着装置の内部構成を示す図であり、
図2のI-I’線からの断面図であり、
図2は、
図1に示した蒸着装置の上面図であり、
図3は、
図1に示した蒸着装置の正面図であり、
図4は、
図3に示した蒸着装置のII-II’線からの断面図である。
【0013】
図1~
図4に示すように、本実施形態の蒸着装置1は、たとえば、成膜チャンバである真空チャンバ2に、図示しない排気管および真空ポンプが接続されており、内部が所定の圧力に減圧可能となっている。真空蒸着による成膜時における真空チャンバ2内の背圧は、たとえば10-2~10-5Pa程度である。
【0014】
真空チャンバ2の内部下方には、成膜材料供給部3として、第1真空蒸発源4および第2真空蒸着源5が配置されている。第1真空蒸発源4の内部に第1蒸着材料が収容されており、また、第2真空蒸発源5の内部に第2蒸着材料が収容されている。
なお、蒸着材料としては、種々のものが使用される。
各真空蒸着源4、5には、たとえば不図示の抵抗加熱、電子ビーム加熱、レーザービーム加熱、電子銃などの加熱手段が設けられており、真空蒸発源において蒸着材料が加熱されて気化すると蒸着材料の蒸気が噴出する。
なお、この実施形態では、複数の蒸着源として真空蒸着源を2つ設けているが、後述するように、真空蒸着源の数は限定されるものではなく、真空蒸着源を3つ設ける等、種々の態様が可能である(
図9参照)。
【0015】
次に、真空チャンバ2内には、第1真空蒸発源4および第2真空蒸着源5の蒸着材料の蒸気を噴出する方向(
図1の点線の矢印)に、光学基板である成膜対象としての基板6を膜形成面が成膜材料供給部3側に臨むように保持する基板ホルダ7が設けられている。
なお、
図1においては、第1真空蒸発源4および第2真空蒸着源5の蒸着材料の蒸気を噴出する方向が、点線の矢印にて示されている。
また、
図1では、基板6は、その一部のみが簡略して記載されている(詳細は、
図4および
図6を参照)。
【0016】
基板ホルダ7は、真空チャンバ2内において、その上方からホルダ支持部8により回転自在に支持されており、成膜処理において、真空チャンバ2の上部に設けられた駆動モータ9により、矢印A方向に回転駆動される。
すなわち、ホルダ支持部8は、真空チャンバ2の上部に突出して設けられた駆動モータ9から真空チャンバ2内の下方に伸びる回転軸10の下部10aに取り付けられ、ホルダ支持部8の下面8aに、基板6を膜形成面が成膜材料供給部3側に臨むように保持する基板ホルダ7が設けられている。
なお、ホルダ支持部8の構成は、この実施形態に限定されず、以下に詳しく説明する基板ホルダ7を回転自在に支持するものであれば、いかなる形状のものでも良い。
【0017】
次に、ホルダ支持部8の下面8aに取り付けられた基板ホルダ7について説明する。
本願発明の特徴は、基板ホルダ7が、複数の真空蒸着源4、5の蒸着材料の蒸気を噴出する方向に基板6の膜形成面が臨むように、複数の基板6を保持するようになっていると共に、基板ホルダ7が、蒸着材料の蒸気の飛翔分布を考慮して、真空蒸着源4、5のそれぞれに対して、複数の基板6の真空蒸着源4、5からの距離と角度が最適となるように、基板6を保持するようになっていることである。
そのため、本実施形態では、後述するように、この基板ホルダ7を、平面上で円形に形成して設け、その円形の中心点7xの両側の下面7a、すなわち、それぞれ各第1真空蒸発源4および第2真空蒸着源5側に臨む下面7aを、断面上で凹状にして、その下面7aに、複数の基板6を配列して設置している。
これにより、基板ホルダ7の断面形状は、
図1もしくは
図6に示すように、緩やかなM型を形成するようになる。
【0018】
すなわち、
図1に示す断面図の場合では、基板ホルダ7の円形の中心点7xの左側の第1真空蒸発源4側に臨む下面7a1が、凹状に形成されると共に、基板ホルダ7の円形の中心点7xの右側の第2真空蒸発源5側に臨む下面7a2が、凹状に形成されている。
当然、基板ホルダ7は、成膜時に、ホルダ支持部8と共に回転されるので、基板ホルダ7の円周全てに渡って同様な断面形状となっている。すなわち、基板ホルダ7の中心点7xを通るどの断面形状も、
図1もしくは
図6に示す断面形状となる。
【0019】
そして、この実施形態では、
図6に示すように、基板ホルダ7の凹状の下面7a1の真下、すなわち、凹状の下面7a1の中心点7a3より下方向に伸びた点線上に、第1真空蒸発源4が設けられる。
同様に、基板ホルダ7の凹状の下面7a2の真下、すなわち、凹状の下面7a2の中心点7a4より下方向に伸びた点線上に、第2真空蒸発源5が設けられる。
なお、この実施形態では、基板ホルダ7は、いわゆる円形の真ん中を丸く抜いて輪(トーラス)にしたリングドーナツ状に形成して設けられている。
このような構成とすることにより、基板ホルダ7に保持された基板6は、複数(この場合2個)の真空蒸発源4、5からの気化された蒸着材料を連続して受けるので、基板ホルダ7と成膜材料供給部3の間の距離を短くすることができ、それにより、基板ホルダ7の基板登載数を増やしつつ、蒸着速度を速くして、より高い生産性を達成することができるようになる。
【0020】
次に、
図5~
図7を参照して、基板ホルダ7について詳細に説明する。
図5は、
図1に示した基板ホルダ7の上面図であり、
図6は、
図5に示した基板ホルダ7のIII-III’線からの拡大断面図であり、
図7は、
図4に示した基板ホルダ7の下面図である。
まず、
図1に示すように、基板ホルダ7は、ホルダ支持部8の下面8aに取り付けられている。
そして、
図5に示すように、基板ホルダ7は、上面から見て、中心点7xを中心として、円形の真ん中を丸く抜いて輪(トーラス)にしたリングドーナツ形状をしており、外円部7cと内円部7dとを有している。
【0021】
この実施形態では、
図6の拡大断面図に示すように、基板ホルダ7の断面としては、基板ホルダ7の円形の中心点7xの左側の第1真空蒸発源4側に臨む下面7a1および中心点7xの右側の第2真空蒸発源5側に臨む下面7a2が、それぞれ凹状に形成されている。
そして、
図6の拡大断面図に示すように、この実施形態では、基板ホルダ7の下面7a1および下面7a2は、それぞれ弧を描いた凹状になっており、その下面7a1、7a2を形成すべく、複数の基板6のそれぞれを載置するための独立した複数の基板載置部7eが設けられている。
すなわち、
図6の拡大断面図に示すように、この実施形態では、基板ホルダ7には、複数の基板6のそれぞれが個別に載置されるように、独立した複数の基板載置部7eが設けられており、それぞれの基板載置部7eは、その高さと下面の傾きが異なっている。
それにより、下面7a1および下面7a2が、気化された蒸着材料の飛翔分布を考慮して、それぞれ弧を描く凹状に形成されて、複数の基板6の真空蒸着源4、5からの距離と角度が最適となるようになっている。
このように、独立した複数の基板載置部7eとすることによって、基板6の位置および角度を個別に設定することができるようになる。
なお、この実施形態では、複数の基板6のそれぞれが個別に載置されるように、独立した複数の基板載置部7eが設けられていたが、これに限定されず、複数のリング状の基板載置部を設け、そのリング状の基板載置部に基板6を一列に配置するようにしても良い。この場合、その一列の基板6は、すべて同じ位置および角度を持つようになる。
また、複数の基板載置部7eの全てを繋げて1つの曲面を形成し、その曲面上に基板6を並べて配置するようにしても良い。
【0022】
図6の拡大断面図に示すように、基板ホルダ7の下面7aが凹状に形成されているが、これは、複数の基板6が、真空蒸発源に対して、それぞれ最適な位置および角度となるようにするためであり、そのために、それぞれの基板載置部7eが、その高さと下面の傾きが異なって形成されている。
この実施形態では、上述した最適な位置および角度となるように調節する前提として、
図6に示すように、基板ホルダ7の凹状の下面7a1の真下、すなわち、凹状の下面7a1の中心点7a3より下方向に伸びた点線上に、第1真空蒸発源4が設けられ、同様に、基板ホルダ7の凹状の下面7a2の真下、すなわち、凹状の下面7a2の中心点7a4より下方向に伸びた点線上に、第2真空蒸発源5が設けられている。
そして、上述した複数の基板6が、真空蒸発源に対して、それぞれ最適な位置および角度となる一例として、この実施形態では、
図6に示す断面において、第1真空蒸発源4および第2真空蒸着源5のそれぞれから、各基板6までの距離と角度が同じになるように、それぞれの基板載置部7eが、その高さと下面の傾きが異なって形成されている。
【0023】
図8は、第1真空蒸発源4に対して、複数の基板6が、それぞれ最適な位置および角度となるように配置されるようすを示した説明図である。
この実施形態では、基板6は、突レンズ6からなっている。
各突レンズ6は、その表面に、膜厚が均一な所定の薄膜が形成されるために、その配列される位置に応じて、第1真空蒸発源4からの最適な距離と角度を取る必要がある。
そのため、各基板載置部7eは、
図8に示すように、その下面に載置される各突レンズ6の第1真空蒸発源4からの距離と角度が最適となるように、その高さと下面の傾きが異なって設計されるようになっている。
なお、基板ホルダ7の回転速度等のパラメータによっても、各基板載置部7eの高さと下面の傾きが異なって設計される。
【0024】
以上のように、本実施形態によれば、基板ホルダ7を、平面上で円形に形成して設け、その円形の中心点7xの両側の下面7a、すなわち、それぞれ各第1真空蒸発源4および第2真空蒸着源5側に臨む下面7a1、7a2を凹状にして、緩やかなM型となるように形成し、その下面7a1、7a2に、複数の基板6を配列して設置し、複数の基板を、真空蒸発源4、5に対して、それぞれ最適な位置および角度となるようにしたので、基板ホルダ7と真空蒸発源4、5の距離を画期的に短くすることができる。
それにより、以下のような効果を得ることができるようになった。
基板ホルダの基板登載数を増やしつつ、蒸着速度を高くすることができ、より高い生産性を達成することができる。
膜厚の均一性を確保しつつ、成膜速度の高い成膜処理を達成することができる。
基板ホルダの駆動部で発生する摩耗粉を著しく低減して、駆動部安定性を保つことができる。
真空チャンバの高さを低く設計することができる。
各基板6の真空蒸発源4、5からの距離と角度が最適となるようにしたので、圧縮応力の優れた膜を成膜することができる。
【0025】
なお、本実施の形態を記載したが、この開示の一部をなす記載及び図面は、限定するものと理解すべきでない。ここで記載していない様々な実施の形態等が含まれる。
例えば、本実施形態では、
図1および
図9(a)に示すように、真空蒸着源を2つ設ける構成を説明したが、これに限定されず、
図9(b)に示すように、3つの真空蒸着源を設けるようにしても良いし、
図9(c)に示すように、4つの真空蒸着源を設けるようにしても良い。
図9は、基板ホルダ7を真空蒸着源を含めて下側から見て、複数の真空蒸発源の配置されるようすを示した説明図であり、
図9(a)は、真空蒸着源を2つ設ける構成を示し、
図9(b)は、3つの真空蒸着源を設ける構成を示し、
図9(c)は、4つの真空蒸着源を設ける構成を示している。
このように、真空蒸着源の数を増やせば、その分コストはかかるが、より蒸着速度をアップさせることができ、生産性を向上させることができるようになる。
【0026】
また、本実施形態では、基板ホルダ7が、
図10(a)に示すようなM型断面形状となっていたが、これに限定されず、
図10(b)に示すようなM型断面形状になるように構成しても良い。
すなわち、前述した実施形態では、基板ホルダ7は、円形の真ん中を丸く抜いて輪(トーラス)にしたリングドーナツ形状となっており、その断面形状が
図10(a)に示すようになっていたが、円形の真ん中を丸く抜く必要はなく、
図10(b)に示すような円形のM型断面形状になるようにしても良い。
図10(b)に示す基板ホルダ7の場合、円形の真ん中を丸く抜かない円形としている。
なお、この実施形態では、複数の基板6のそれぞれが個別に載置されるように、独立した複数の基板載置部7eが設けられていたが、これに限定されず、複数のリング状の基板載置部を設け、そのリング状の基板載置部に基板6を一列に配置するようにしても良い。この場合、その一列の基板6は、すべて同じ位置および角度を持つようになる。
また、複数の基板載置部7eの全てを繋げて1つの曲面を形成し、その曲面上に基板6を並べて配置するようにしても良い。
また、例えば、真空チャンバ2内に酸素イオンなどのイオンを成膜対象基板に照射するイオンソースを設け、イオンビームアシスト真空蒸着を行うようにしても良い。
【符号の説明】
【0027】
1・・・蒸着装置、2・・・真空チャンバ、4・・・第1真空蒸着源、
5・・・第2真空蒸着源、6・・・基板、7・・・基板ホルダ、8・・・ホルダ支持部、9・・・駆動モータ、10…回転軸
【要約】 (修正有)
【課題】基板ホルダの基板登載数を増やしつつ、蒸着速度を高くすることができ、より高い生産性を達成することができると共に、膜厚の均一性を確保しつつ、成膜速度の高い成膜処理を達成することができる。
【解決手段】蒸着装置が、内部が所定の圧力に減圧可能となっている真空チャンバ2と、真空チャンバ内に回転自在に設けられた1つの円形の基板ホルダ7と、基板ホルダの下面に保持された複数の基板6と、蒸着材料の蒸気を噴出する複数の真空蒸着源4、5と、を有し、基板ホルダは、真空蒸着源の蒸着材料の蒸気を噴出する方向に基板の膜形成面が臨むように、複数の基板を保持するようになっており、基板ホルダが、真空蒸着源のそれぞれに対して、複数の基板の真空蒸着源からの距離と角度が最適となるように、基板を保持する構成となっている。
【選択図】
図1