(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-10
(45)【発行日】2024-07-19
(54)【発明の名称】溶断シール用二軸延伸ポリプロピレン系フィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 27/32 20060101AFI20240711BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20240711BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
B32B27/32 E
B32B27/18 C
B65D65/40 D
(21)【出願番号】P 2020074192
(22)【出願日】2020-04-17
【審査請求日】2023-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000220099
【氏名又は名称】アールエム東セロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100165021
【氏名又は名称】千々松 宏
(72)【発明者】
【氏名】田村 大知
(72)【発明者】
【氏名】橋本 修
(72)【発明者】
【氏名】大寺 俊也
【審査官】石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-054919(JP,A)
【文献】国際公開第2019/230416(WO,A1)
【文献】特開2019-119169(JP,A)
【文献】国際公開第2018/163836(WO,A1)
【文献】特開2018-065267(JP,A)
【文献】特開2009-051135(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B65D 65/00-65/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層と、該基材層の片面又は両面に設けられたスキン層とを備える溶断シール用二軸延伸ポリプロピレン系フィルムであって、
前記基材層は、ポリプロピレン系樹脂(A)を主成分として含み、
前記スキン層は、ポリプロピレン系樹脂(B)を60質量%以上80質量%以下、プロピレン-エチレン共重合体を20質量%以上40質量%以下含み、
前記ポリプロピレン系樹脂(B)は、メルトフローレートが230℃において3g/10分以上20g/10分以下、融点が120℃以上130℃未満であり、
前記プロピレン-エチレン共重合体は、メルトフローレートが230℃において1g/10分以上2g/10分以下、融点が130℃以上150℃以下であ
り、
さらに基材層に防曇剤を添加した、溶断シール用二軸延伸ポリプロピレン系フィルム。
【請求項2】
前記ポリプロピレン系樹脂(A)が、プロピレン単独共重合体、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-ブテン-1共重合体、及びプロピレン-エチレン-ブテン-1共重合体からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の溶断シール用二軸延伸ポリプロピレン系フィルム。
【請求項3】
前記ポリプロピレン系樹脂(B)が、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-ブテン-1共重合体、及びプロピレン-エチレン-ブテン-1共重合体からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の溶断シール用二軸延伸ポリプロピレン
系フィルム。
【請求項4】
前記スキン層の厚みが0.5~1.0μmである、請求項1~3のいずれか1項に記載の溶断シール用二軸延伸ポリプロピレン
系フィルム。
【請求項5】
前記基材層及びスキン層が共に結晶化核剤を含有しない、請求項1~
4のいずれか1項に記載の溶断シール用二軸延伸ポリプロピレン系フィルム。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか1項に記載の溶断シール用二軸延伸ポリプロピレン
系フィルムを溶断して形成された溶断シール袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶断シール用二軸延伸ポリプロピレン系フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
二軸延伸ポリプロピレン系フィルム(OPPフィルム)は、透明性、剛性、表面硬度、耐衝撃性、防湿性などに優れ、食品、日用品、及び雑貨などの包装袋として多用されている。
一般に、青果物などの食品の包装袋は、OPPフィルムを用いて、自動包装方式、あるいは溶断シール方式などを適用して製造されている。近年、溶断シール方式においてシール速度が高速化されてきており、溶断シール温度が高温を維持できず低下して、溶断シール強度が低下したり、溶断シール強度にバラツキが生じるという問題が生じている。
【0003】
溶断シール強度が高いOPPフィルムとして、特許文献1では、「プロピレン単独重合体で形成された中間層と、前記中間層を挟むように表裏面に設けられた、プロピレン系ランダム共重合体で形成されたスキン層とを備え、前記中間層には、プロピレン単独重合体100質量部に対し、結晶化核剤が0.005~0.1重量部含まれていることを特徴とする溶断シール用OPPフィルム」に関する発明が開示されている。
該特許文献1に記載の発明では、中間層(基材層)に結晶化核剤を用いることで、結晶化速度を速くして、溶断シール強度を向上させている。また、スキン層としては、融点130℃~140℃のランダムポリプロピレンを単独で用いた態様が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のOPPフィルムは、溶断シール強度が20N/15mm以上と高い溶断シール強度を示すことが記載されている。しかしながら、本発明者らの検討によれば、防曇剤を配合した場合であっても、水蒸気の排出量が多い青果物などを収容して密封すると、フィルムの内面に水滴が付着して曇り易くなり、外観が低下する(すなわち、防曇性が悪い)傾向があることが分かった。
そこで本発明は、溶断シール強度が高く、さらには防曇性にも優れる溶断シール用二軸延伸ポリプロピレン系フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、基材層と、該基材層の片面又は両面に設けられたスキン層とを備える溶断シール用二軸延伸ポリプロピレンフィルムであって、基材層にポリプロピレン系樹脂を含み、スキン層にメルトフローレート及び融点の異なる2種類のポリプロピレン系樹脂を特定量含有するフィルムにより、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成させた。
本発明は、以下の[1]~[7]を提供する。
【0007】
[1]基材層と、該基材層の片面又は両面に設けられたスキン層とを備える溶断シール用二軸延伸ポリプロピレン系フィルムであって、前記基材層は、ポリプロピレン系樹脂(A)を主成分として含み、前記スキン層は、ポリプロピレン系樹脂(B)を60質量%以上80質量%以下、プロピレン-エチレン共重合体を20質量%以上40質量%以下含み、前記ポリプロピレン系樹脂(B)は、メルトフローレートが230℃において3g/10分以上20g/10分以下、融点が120℃以上130℃未満であり、前記プロピレン-エチレン共重合体は、メルトフローレートが230℃において1g/10分以上2g/10分以下、融点が130℃以上150℃以下である、溶断シール用二軸延伸ポリプロピレン系フィルム。
[2]前記ポリプロピレン系樹脂(A)が、プロピレン単独共重合体、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-ブテン-1共重合体、及びプロピレン-エチレン-ブテン-1共重合体からなる群から選択される少なくとも1種である、上記[1]に記載の溶断シール用二軸延伸ポリプロピレン系フィルム。
[3]前記ポリプロピレン系樹脂(B)が、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-ブテン-1共重合体、及びプロピレン-エチレン-ブテン-1共重合体からなる群から選択される少なくとも1種である、上記[1]又は[2]に記載の溶断シール用二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
[4]前記スキン層の厚みが0.5~1.0μmである、上記[1]~[3]のいずれかに記載の溶断シール用二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
[5]さらに防曇剤を含む、上記[1]~[4]のいずれかに記載の溶断シール用二軸延伸ポリプロピレン系フィルム。
[6]前記基材及びスキン層が共に結晶化核剤を含有しない、上記[1]~[5]のいずれかに記載の溶断シール用二軸延伸ポリプロピレン系フィルム。
[7]上記[1]~[6]のいずれかに記載の溶断シール用二軸延伸ポリプロピレンフィルムを溶断して形成された溶断シール袋。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、溶断シール強度が高く、さらには防曇性にも優れる溶断シール用二軸延伸ポリプロピレンフィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[溶断シール用二軸延伸ポリプロピレン系フィルム]
本発明は、基材層と、該基材層の片面又は両面に設けられたスキン層とを備える溶断シール用二軸延伸ポリプロピレン系フィルムであって、
前記基材層は、ポリプロピレン系樹脂(A)を主成分として含み、
前記スキン層は、ポリプロピレン系樹脂(B)を60質量%以上80質量%以下、プロピレン-エチレン共重合体を20質量%以上40質量%以下含み、
前記ポリプロピレン系樹脂(B)は、メルトフローレートが230℃において3g/10分以上20g/10分以下、融点が120℃以上130℃未満であり、
前記プロピレン-エチレン共重合体は、メルトフローレートが230℃において1g/10分以上2g/10分以下、融点が130℃以上150℃以下である、溶断シール用二軸延伸ポリプロピレン系フィルムである。
【0010】
本発明の溶断シール用二軸延伸ポリプロピレン系フィルムは、スキン層に、低融点かつ高MFR(メルトフローレート)のポリプロピレン樹脂(B)と、高融点かつ低MFRのプロピレン-エチレン共重合体とを一定の配合量で併用している。これにより、溶断シール強度及び防曇性を向上させることができる。より詳細には、以下のように推定している。
ポリプロピレン樹脂(B)は、低融点(低結晶性)であり、かつ高MFR(低分子量)であるため、フィルム中に含まれる防曇剤がフィルム表面にブリードアウトしやすくなり、防曇性が高まりやすい。プロピレン-エチレン共重合体は、高融点(高結晶性)であり、かつ低MFR(高分子量)であるため、溶断シール時においてフィルム溶融部の分子鎖の絡み合い及び結晶化のしやすさなどを通じて、溶断シール強度が向上すると考えられる。ポリプロピレン樹脂(B)及びプロピレン-エチレン共重合体のうち、いずれか一方の樹脂のみを使用した場合は、溶断シール強度及び防曇性のいずれかの物性が悪くなるが、両者を特定割合で併用することで、溶断シール強度及び防曇性の両方の物性に優れるフィルムとなる。
【0011】
本発明において、二軸延伸ポリプロピレンフィルムとは、MD(machine direction)及びTD(transverse direction)の両方に延伸したポリプロピレンフィルムのことを意味する。
また、溶断シールとは、公知のシール方式であり、例えば、丸棒状ヒーターで加熱したシール刃にて、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを溶かしてシールしながら切断するシール方式を意味する。
【0012】
<スキン層>
本発明においてスキン層は、ポリプロピレン系樹脂(B)とプロピレン-エチレン共重合体とを特定の配合割合で含有する。
【0013】
(ポリプロピレン系樹脂(B))
スキン層に含まれるポリプロピレン系樹脂(B)は、メルトフローレート(MFR)が230℃において3g/10分以上20g/10分以下である。該MFRが3g/10分未満であると、フィルムの防曇性が低下しやすくなる。一方、該MFRが20g/10分を超えると、フィルムの溶断シール強度が低下しやすくなる。
ポリプロピレン系樹脂(B)のMFRは、防曇性及び溶断シール強度を共に良好にする観点から、好ましくは3g/10分以上15g/10分以下であり、より好ましくは4g/10分以上10g/10分以下である。
なお、本明細書においてメルトフローレート(MFR)は、JIS K 7210に準拠して230℃において荷重2.16kgにて測定した値である。
【0014】
ポリプロピレン系樹脂(B)の融点は120℃以上130℃未満である。ポリプロピレン系樹脂(B)の融点が130℃以上であると、フィルムの防曇性が低下しやすくなる。一方、ポリプロピレン系樹脂(B)の融点が120℃未満であると、フィルムの溶断シール強度が低下しやすくなる。
ポリプロピレン系樹脂(B)の融点は、防曇性及び溶断シール強度を共に良好にする観点から、123℃以上128℃以下であることが好ましい。
なお、本明細書において融点は、示差走査熱量計を用いた昇温の際の吸熱曲線において最大吸熱を示したピークのピークトップ温度である。
【0015】
ポリプロピレン系樹脂(B)は、プロピレンモノマーを主モノマーとする重合体であり、好ましくはプロピレンモノマーを50モル%以上、より好ましくは70モル%以上含む重合体である。
【0016】
ポリプロピレン系樹脂(B)の種類は、上記したMFR及び融点を満足するものであれば、特に限定されないが、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-ブテン-1共重合体、プロピレン-エチレン-ブテン-1共重合体からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。これらの中でも、ポリプロピレン系樹脂(B)は、プロピレン-エチレン-ブテン-1共重合体が特に好ましい。
【0017】
スキン層中のポリプロピレン系樹脂(B)の含有量は、60質量%以上80質量%以下である。ポリプロピレン系樹脂(B)の含有量が60質量%未満であると、フィルムの防曇性が低下しやすくなる。一方、ポリプロピレン系樹脂(B)の含有量が80質量%を超えると、フィルムの溶断シール強度が低下しやすくなる。
ポリプロピレン系樹脂(B)の含有量は、防曇性及び溶断シール強度を共に良好にする観点から、好ましくは65質量%以上80質量%以下であり、より好ましくは70質量%以上80質量%以下である。
【0018】
(プロピレン-エチレン共重合体)
スキン層に含まれるプロピレン-エチレン共重合体は、メルトフローレート(MFR)が230℃において1g/10分以上2g/10分以下である。該MFRが1g/10分未満であると、フィルムの防曇性が低下しやすくなる。一方、該MFRが2g/10分を超えると、フィルムの溶断シール強度が低下しやすくなる。
プロピレン-エチレン共重合体のMFRは、230℃において、好ましくは1.1g/10分以上1.6g/10分以下であり、より好ましくは1.2g/10分以上1.5g/10分以下である。
【0019】
プロピレン-エチレン共重合体の融点は130℃以上150℃以下である。プロピレン-エチレン共重合体の融点が150℃を超えると、フィルムの防曇性が低下しやすくなる。一方、プロピレン-エチレン共重合体の融点が130℃未満であると、フィルムの溶断シール強度が低下しやすくなる。
プロピレン-エチレン共重合体の融点は、138℃以上145℃以下であることが好ましい。
【0020】
プロピレン-エチレン共重合体は、プロピレンモノマーを主モノマーとした共重合体であることが好ましく、プロピレンモノマーの含有量が50モル%以上である共重合体がより好ましく、プロピレンモノマーの含有量が70モル%以上である共重合体であることがより好ましい。
【0021】
スキン層中のプロピレン-エチレン共重合体の含有量は、20質量%以上40質量%以下である。プロピレン-エチレン共重合体の含有量が20質量%未満であると、フィルムの溶断シール強度が低下しやすくなる。一方、プロピレン-エチレン共重合体の含有量が40質量%を超えると、フィルムの防曇性が低下しやすくなる。
プロピレン-エチレン共重合体の含有量は、好ましくは20質量%以上35質量%以下であり、より好ましくは20質量%以上30質量%以下である。
【0022】
スキン層には、本発明の効果を阻害しない範囲において、上記したポリプロピレン系樹脂(B)、及びプロピレン-エチレン共重合体以外のその他の樹脂を含有させてもよい。その他の樹脂としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、石油樹脂などが挙げられる。スキン層中のその他の樹脂の含有量は、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは5質量%以下である。
【0023】
本発明におけるスキン層の厚みは、好ましくは0.5~1.0μmである。厚みが0.5μm以上であると、フィルムの防曇性が向上し、厚みが1.0μm以下であると溶断シール強度が高くなる。防曇性及び溶断シール強度のバランスをより優れたものとする観点から、スキン層の厚みは、より好ましくは0.5~0.7μmである。
なお、スキン層を後述する基材層の両面に設ける場合は、上記スキン層の厚みは、両面に設けられるそれぞれのスキン層の厚みを意味し、それぞれのスキン層の厚みは、同一であっても異なっていてもよい。
【0024】
<基材層>
本発明において基材層は、ポリプロピレン系樹脂(A)を主成分として含む。ここで、主成分として含むとは、基材層におけるポリプロピレン系樹脂(A)の含有量が80質量%以上、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上であることを意味する。
ポリプロピレン系樹脂(A)の230℃におけるMFRは、特に限定されないが、好ましくは1g/10分以上5g/10分以下であり、より好ましくは1.5g/10分以上3g/10分以下である。MFRがこれら下限値以上であると、防曇剤を基材層に含有させた場合に、防曇剤のスキン層への移行を促進しやすくなり、その結果防曇性が高まる。MFRがこれら上限値以下であると、分子鎖の絡み合いにより、溶断シール強度が高まりやすくなる。
【0025】
ポリプロピレン系樹脂(A)の融点は、好ましくは140℃以上170℃以下、より好ましくは150℃以上165℃以下である。融点がこのような範囲であると、基材としての耐熱性が良好になり、かつ溶断シール強度も高くなる。
【0026】
ポリプロピレン系樹脂(A)は、プロピレンモノマーを主モノマーとする重合体であり、好ましくはプロピレンモノマーを80モル%以上、より好ましくは90モル%以上含む重合体である。
【0027】
ポリプロピレン系樹脂(A)の種類は、特に限定されないが、プロピレン単独共重合体、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-ブテン-1共重合体、及びプロピレン-エチレン-ブテン-1共重合体からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
これらの中でも、ポリプロピレン系樹脂(A)は、耐熱性及び溶断シール性を良好にする観点から、プロピレン単独重合体及びプロピレン-エチレン共重合体からなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましく、プロピレン-エチレン共重合体がさらに好ましい。さらに、該プロピレン-エチレン共重合体は、エチレン含有量が0.1~2モル%であることが好ましく、0.1~1モル%であることがより好ましい。このように、エチレン含有量の少ないプロピレン-エチレン共重合体を用いることで、基材としての耐熱性を維持しつつ、基材が比較的伸びやすくなり、これにより溶断シール強度が向上しやすくなる。
【0028】
基材層は、本発明の効果を阻害しない限りにおいて、上記したポリプロピレン系樹脂(A)以外のその他の樹脂を含有してもよい。その他の樹脂としては、特に限定されないが、例えば、スキン層に含まれる樹脂として説明したポリプロピレン系樹脂(B)、プロピレン-エチレン共重合体などが挙げられ、これら以外にも、例えば、ポリスチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、石油樹脂などが挙げられる。基材層中のポリプロピレン系樹脂(A)以外の樹脂の含有量は、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは5質量%以下である。
【0029】
基材層の厚さは、特に限定されないが、フィルムの機械的強度を一定以上に確保する観点などから、好ましくは10~100μmであり、より好ましくは15~50μmである。
【0030】
<防曇剤>
本発明の溶断シール用二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、防曇剤を含有する。本発明においては、上記したようにスキン層に特定の樹脂を特定割合で使用しているため、防曇剤がブリードアウトし易く、そのため防曇性が向上する。
防曇剤は、基材層及びスキン層の少なくともいずれかの層に含まれていればよいが、基材層に含まれることが好ましい。
防曇剤の含有量は、防曇剤が含まれる層(基材層又はスキン層)において、好ましくは0.4~1.0質量%であり、より好ましくは0.6~0.8質量%である。
【0031】
防曇剤の種類は、一般のポリオレフィンフィルムに用いられる防曇剤であれば特に制限されないが、例えば、グリセリン、ポリエチレングリコール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ポリプロピレングリコール等の多価アルコールとラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸等の高級脂肪酸とのエステル、高級脂肪族アミンのエチレンオキサイド付加物、高級脂肪族アルカノールアミド、高級アルコールリン酸エステル塩、及びその混合物等が挙げられる。
【0032】
<結晶化核剤>
本発明の溶断シール用二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、結晶化核剤を含んでもよいが、含まないことが好ましい。すなわち、上記した基材層及びスキン層が共に結晶化核剤を含有しないことが好ましい。結晶化核剤を含有しないことにより、フィルムの製膜性が向上する。また、結晶化核剤を用いなくても、上記したようにスキン層に異なる2種の樹脂を配合しているため、溶断シール強度を高くでき、かつ防曇性にも優れる。
【0033】
<添加剤>
本発明の溶断シール用二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、上記した防曇剤及び結晶化核剤以外のその他添加剤を含有させてもよい。その他の添加剤としては、例えば、酸化防止剤、滑剤、ブロッキング防止剤、塩素捕捉剤、帯電防止剤等を挙げることができる。その他の添加剤は、基材層に含有させてもよいし、スキン層に含有させてもよいし、基材層及びスキン層に含有させてもよい。
【0034】
[溶断シール用二軸延伸ポリプロピレン系フィルムの製造方法]
本発明の溶断シール用二軸延伸ポリプロピレン系フィルムの製造方法は特に限定されず、インラインラミ法、共押出法などを適用して製造することができる。
【0035】
インラインラミ法においては、まず、上記した基材層の原料となるポリプロピレン系樹脂(A)を含む樹脂組成物をTダイにより押出して、無延伸シートを成形する。次に、該無延伸シートをロールの速度差によるMDロール延伸を行い、MD延伸シートを得る。次いで、別途設置した押出機を用いて、スキン層の原料となるポリプロピレン系樹脂(B)及びプロピレン-エチレン共重合体を含む樹脂組成物をTダイから押出し、該MD延伸シートの片面もしくは両面に、溶融ラミネートを行い、スキン層が積層された積層MD延伸シートを得る。次に、該積層MD延伸シートをテンターへ導き、該積層MD延伸シートの両端をクリップで掴み、テンターオーブン内で所定の幅にTD延伸を行い、二軸延伸ポリプロピレン系フィルムを得る。
なお、上記した基材層の原料となるポリプロピレン系樹脂(A)を含む樹脂組成物や、スキン層の原料となるポリプロピレン系樹脂(B)、及びプロピレン-エチレン共重合体を含む樹脂組成物の少なくとも一方には、防曇剤が配合される。また、必要に応じて防曇剤以外の各種添加剤を配合してもよい。
【0036】
共押出法においては、基材層の原料となるポリプロピレン系樹脂(A)を含む樹脂組成物、及びスキン層の原料となるポリプロピレン系樹脂(B)及びプロピレン-エチレン共重合体を含む樹脂組成物を、それぞれ共押出ダイスから共押出し、積層無延伸シートを成形する。次に、該積層無延伸シートをロールの速度差によるMDロール延伸を行い、積層MD延伸シートを得る。次いで、該積層MD延伸シートをテンター導き、該積層MD延伸シートの両端をクリップで掴み、テンターオーブン内で所定の幅にTD延伸を行い、二軸延伸ポリプロピレン系フィルムを得る。
【0037】
[溶断シール袋]
本発明の溶断シール袋は、上記した溶断シール用二軸延伸ポリプロピレン系フィルムを溶断することにより形成される。溶断シール袋は、市販のサイドウェルダー(溶断機)を用いて、公知の方法によって製造することができる。溶断条件としては、シール刃の温度を、例えば260~450℃とし、製袋速度を例えば60~200ショット/分とすればよい。
【0038】
本発明の溶断シール用二軸延伸ポリプロピレン系フィルム及び溶断シール袋の用途は特に限定されず、例えば、食品、日用品、及び雑貨などの包装袋として使用することができる。これらの中でも、溶断シール強度及び防曇性に優れるため、特に食品の包装用途として使用することが好ましく、中でも青果物の包装用途として使用することがより好ましい。
【実施例】
【0039】
以下、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0040】
[評価]
(1)溶断シール強度
溶断シール機(キョウエイ(株)製 PP500-4AC)を用いて、刃先角度90°のシール刃、380℃のシール刃温度、200ショット/分の速度で製袋を行い、溶断シール袋を得た。得られた溶断シール袋から、シール方向と垂直な方向への長さが150mm、幅が15mmの短冊状にサンプルを切り出した。ここでサンプルは、溶断シール部分が短冊形の末端に位置するように切り出した。
この短冊サンプルにつき、溶断シール部が中央に位置するように180°開いて両端をチャックに挟み、溶断シール部を剥離するように引張試験を行った。引張試験機としては、(株)島津製作所製、型番:AG―Xplusを用い、引張速度300mm/分にて試験を行い、溶断シール部分が破断するときの強度を溶断シール強度(単位:N/15mm)とした。
上記の手順により、溶断シール袋10枚の両端部を測定し、その平均値を溶断シール強度とした。20N/15mm以上で、溶断シール強度が良好と判断した。
【0041】
(2)防曇性
120mm×120mmにフィルムを切り出し、100mLのビーカーに水道水(23±0.5℃)を60mL入れ、前記フィルムをビーカーにかぶせ、5℃の冷蔵庫に放置し、15分後のフィルム内面の水滴の付着状況を目視にて観察し、以下のように評価した。◎又は〇の場合を、防曇性が良好と判断した。
◎:結露した水が表面で滑らかに濡れていてフィルムが全く曇っていない
○:結露した水が表面で大粒になっており、フィルムが曇っていない
△:結露した水が表面で小粒になっており、フィルムに曇った部分がある
×:結露した水が表面で極小粒になっており、フィルムが真っ白に曇っている
【0042】
(3)製膜性
各実施例及び比較例において、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを製造する際の製膜性を以下の基準により評価した。〇の場合を、製膜性が良好と判断した。
〇・・・製膜時、横延伸機出口にて、正常にフィルムが出てきた。
×・・・製膜時、横延伸機出口にて、フィルム破れが発生した。
【0043】
(4)メルトフローレート
JIS K 7210に準拠して、荷重2.16kg、温度230℃の条件で測定した。
【0044】
(5)融点
樹脂試料約4mgを精秤後アルミパンに封入し、これを示差走査熱量計(PerkinElmer,Inc.製、型式「DSC8500AS」)に装着し、20mL/分の窒素気流中、230℃まで昇温し、この温度において5分間保持した後、降温速度10℃/分で-10℃まで冷却し、次いで昇温速度10℃/分で230℃まで昇温する際に得られた吸熱曲線において、最大吸熱を示したピーク温度を融点とした。
【0045】
<基材層に使用した樹脂>
(1)ポリプロピレン系樹脂(A)
PP1:プロピレン-エチレン共重合体(サンアロマー(株)製「PC412A」、MFR2.3g/10分、融点158℃)
【0046】
<スキン層に使用した樹脂>
(2)ポリプロピレン系樹脂(B)
PP2:プロピレン-エチレン-ブテン-1共重合体(日本ポリプロ(株)製「FX4G」、MFR5.1g/10分、融点126℃)
PP3:プロピレン-エチレン共重合体(日本ポリプロ(株)製「WFX4R」、MFR7.0g/10分、融点124℃)
PP4:プロピレン-エチレン共重合体((株)プライムポリマー製「F730NV」、MFR6.0g/10分、融点140℃)
(3)プロピレン-エチレン共重合体
PP4:プロピレン-エチレン共重合体((株)プライムポリマー製「F730NV」、MFR6.0g/10分、融点140℃)
PP5:プロピレン-エチレン共重合体(日本ポリプロ(株)製「EG6D」、MFR2.0g/10分、融点140℃)
PP6:プロピレン-エチレン共重合体(日本ポリプロ(株)製「EG7F」、MFR1.3g/10分、融点143℃)
【0047】
(4)添加剤
防曇剤・・東邦化学工業(株)製「CBシリーズ」
結晶化核剤・・新日本理化(株)製「ゲルオールD」
【0048】
[実施例1]
表1に記載の基材層の原料およびスキン層の原料を用い、3台の押出機のうち、基材層の原料は第1の押出機より、スキン層の原料は第2、第3の押出機により、それぞれ250℃で溶融混錬を行い押し出し、Tダイ内にて基材層の両面にスキン層を積層し、30℃の金属ロール上に3層共押出をして、積層シートを得た。
得られた積層シートを縦延伸機にて130℃に加熱後、縦方向(MD)に5倍延伸した。引き続き、横延伸機にて190℃に加熱後、横方向(TD)に10倍に延伸して、スキン層、基材層、スキン層がこの順に積層された溶断シール用二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。各層の厚みは表1に示す通りであった。また、各種評価結果を表1に示した。
得られた二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、本発明の要件を満足するものであり、優れた溶断シール強度を有し、且つ優れた防曇性を有するものとなった。
【0049】
[実施例2~5、7]
表1に記載の原料を用いた以外は、実施例1と同様にして、溶断シール用二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
得られた二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、本発明の要件を満足するものであり、優れた溶断シール強度を有し、且つ優れた防曇性を有するものとなった。実施例7については、他の実施例よりも製膜性が劣る結果となった。
【0050】
[実施例6]
表1に記載の厚みにした以外は、実施例1と同様にして、溶断シール用二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
得られた二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、本発明の要件を満足するものであり、優れた溶断シール強度を有し、且つ優れた防曇性を有するものとなった。
【0051】
[比較例1~6]
表2に記載の原料を用いた以外は、実施例1と同様にして、溶断シール用二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
得られた二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、溶断シール強度が低いか、又は防曇性に劣るものであった。
【0052】
【0053】