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特許7519157標識ヌクレオチド組成物および核酸の配列を決定するための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-10
(45)【発行日】2024-07-19
(54)【発明の名称】標識ヌクレオチド組成物および核酸の配列を決定するための方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6806 20180101AFI20240711BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALI20240711BHJP
   C12Q 1/6876 20180101ALI20240711BHJP
【FI】
C12Q1/6806 Z ZNA
C12Q1/6869 Z
C12Q1/6876 Z
【請求項の数】 13
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022096209
(22)【出願日】2022-06-15
(62)【分割の表示】P 2018560905の分割
【原出願日】2017-05-20
(65)【公開番号】P2022126734
(43)【公開日】2022-08-30
【審査請求日】2022-06-27
(31)【優先権主張番号】62/339,790
(32)【優先日】2016-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/426,144
(32)【優先日】2016-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516144164
【氏名又は名称】クアンタム-エスアイ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】QUANTUM-SI INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】ロスバーグ、ジョナサン エム.
(72)【発明者】
【氏名】ラッキー、ジェレミー
(72)【発明者】
【氏名】リード、ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】シー、シンホア
(72)【発明者】
【氏名】ホワン、ハイドン
(72)【発明者】
【氏名】ドッド、デイビッド
【審査官】西村 亜希子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0233302(US,A1)
【文献】特表2009-518009(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0293022(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0050659(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/
C12Q
C07H
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸リンカーを介して1つまたは複数のヌクレオシドポリリン酸に接続されている1つまたは複数の発光標識を含む発光標識ヌクレオチドであって、
前記核酸リンカーが保護要素を含み、
前記保護要素が少なくとも1つのエネルギー吸収性修飾を含み、
前記少なくとも1つのエネルギー吸収性修飾が、三重項状態クエンチャー、単糖-TEG、二糖、およびN-アセチル単糖のうちの1つまたは複数を含む、発光標識ヌクレオチド。
【請求項2】
前記核酸リンカーが一本鎖である、請求項1に記載の発光標識ヌクレオチド。
【請求項3】
前記核酸リンカーが二本鎖である、請求項1に記載の発光標識ヌクレオチド。
【請求項4】
前記核酸リンカーが、
第1のオリゴヌクレオチド鎖であって、前記第1のオリゴヌクレオチド鎖に沿ったいずれの側にも1つまたは複数のヌクレオチドを有する内部位置において付着している前記1つまたは複数の発光標識を含む、第1のオリゴヌクレオチド鎖と、
前記1つまたは複数のヌクレオシドポリリン酸を含む第2のオリゴヌクレオチド鎖であって、前記第2のオリゴヌクレオチド鎖が前記第1のオリゴヌクレオチド鎖にアニーリングされている、第2のオリゴヌクレオチド鎖とを含む、請求項3に記載の発光標識ヌクレオチド。
【請求項5】
2つ以上の前記ヌクレオシドポリリン酸の末端リン酸が、複数のチミジンヌクレオチドを含むチミジンリンカーを介して前記核酸リンカーに付着している、請求項1~4のいずれか一項に記載の発光標識ヌクレオチド。
【請求項6】
前記チミジンリンカーが分岐チミジンリンカーを含む、請求項5に記載の発光標識ヌクレオチド。
【請求項7】
前記少なくとも1つのエネルギー吸収性修飾がさらにデンドロン修飾を含み、前記デンドロン修飾がグリセロールデンドリマーである、請求項1~6のいずれか一項に記載の発光標識ヌクレオチド。
【請求項8】
前記少なくとも1つのエネルギー吸収性修飾が三重項状態クエンチャーを含み、前記三重項状態クエンチャーがTEMPO-TEG、またはトロロックス-TEGである、請求項1~6のいずれか一項に記載の発光標識ヌクレオチド。
【請求項9】
前記核酸リンカーが、前記第1および第2のオリゴヌクレオチド鎖のうちの少なくとも1つにアニーリングされた第3のオリゴヌクレオチド鎖をさらに含む、請求項4および請求項5~8(ただし、請求項4を引用する部分に限る)のいずれか1項に記載の発光標識ヌクレオチド。
【請求項10】
前記核酸リンカーが、前記第1、第2、および第3のオリゴヌクレオチド鎖のうちの少なくとも1つにアニーリングされた第4のオリゴヌクレオチド鎖をさらに含む、請求項9に記載の発光標識ヌクレオチド。
【請求項11】
前記オリゴヌクレオチド鎖がホリデイジャンクションを形成する、請求項10に記載の発光標識ヌクレオチド。
【請求項12】
鋳型核酸の配列を決定するための方法であって、
(i)標的容積部中の複合体を複数のタイプの発光標識ヌクレオチドに曝露する工程であって、前記複合体が、鋳型核酸、プライマー、および重合酵素を含み、少なくとも1つのタイプの発光標識ヌクレオチドが、請求項1~11のいずれか一項に記載の発光標識ヌクレオチドを含む工程、
(ii)1つまたは複数の励起エネルギーの一連のパルスを、前記標的容積部の近傍へと向かわせる工程、
(iii)前記鋳型核酸に相補的な前記プライマーを含む成長中の核酸内へのヌクレオチドの順次組み込み中に、前記発光標識ヌクレオチドからの複数の放射光子を検出する工程、ならびに
(iv)前記検出された放射光子のタイミングを、各発光標識ヌクレオチドの発光特性として決定することにより、前記成長中の核酸の配列を識別する工程を備える方法。
【請求項13】
前記検出する工程が、前記検出された放射光子のタイミングおよび周波数を決定することにより、前記成長中の核酸の配列を識別する工程を備える、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、概して、生物学的試料および化学的試料の少なくとも一方の迅速な超並列定量分析を実施するための方法、組成物、およびデバイス、ならびに上記デバイスを製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生物学的試料の検出および分析は、生物学的アッセイ(「バイオアッセイ」)を使用して実施され得る。従来法では、バイオアッセイには、大型で高価な実験装置が関与し、そのような装置には、装置を操作し、バイオアッセイを実施するように訓練された研究者が必要とされる。さらに、バイオアッセイは、従来法ではバルクで実施されるため、検出および定量化には、大量の特定のタイプの試料が必要である。
【0003】
いくつかのバイオアッセイは、特定の波長の光を放射する発光マーカーを用いて試料をタグ付けすることにより実施される。マーカーが光源で照射されて発光を引き起こし、その発光光が光検出器で検出されて、マーカーにより放射された発光光の量を定量する。発光マーカーを使用するバイオアッセイには従来、試料を照射するための高価なレーザー光源、および複雑な発光検出光学系、および照射された試料からの発光を収集するための電子機器系が関与する。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1】核酸配列決定のための種々の構成要素を含有する試料ウェルの非限定的な概略図を表す図。
図2】4段階の核酸配列決定の非限定的な例示的な実験を表す図;(A)発光標識ヌクレオチドの組み込み前;(B)第1組み込み事象;(C)第1組み込み事象と第2組み込み事象との間の期間;および(D)第2組み込み事象;ならびに(A)段階~(D)段階の間の対応する生データおよび処理データの例。
図3】異なる発光寿命を有する4つの発光分子についての非制限的なシグナル対放射時間、および減衰の確率についての正規化された累積分布関数を示す図。
図4】例示的な発光標識ヌクレオチドについての非限定的な発光寿命のチャートおよび発光強度のチャートを表す図。
図5】4つの発光標識ヌクレオチドを用いた非限定的な配列決定実験を示す図:(A)緑色および赤色パルスからの検出された発光のトレース;(B)各ヌクレオチド組み込みの発光寿命および強度に基づいて緑色パルスからのデータの減少;ならびに(C)実験的に決定された配列と鋳型配列とのアライメント。
図6】4つの発光標識ヌクレオチドを用いた非限定的な配列決定実験を示す図:(A)緑色パルスからの検出された発光のトレース;(B)各ヌクレオチド組み込みの発光寿命および強度に基づいた緑色パルスからのデータの減少;ならびに(C)実験的に決定された配列と鋳型配列とのアライメント。
図7】配列決定反応に組み込まれる塩基を識別するために発光標識ヌクレオチドの発光特性が使用される非限定的な配列決定実験を示す図。
図8A】核酸保護分子によって隔てられた発光分子およびヌクレオチドの非限定的な例を示す図。
図8B】核酸保護分子によって隔てられた発光分子およびヌクレオチドの非限定的な例を示す図。
図8C】ポリメラーゼ活性部位にドッキングされた核酸保護分子を含む非限定的な発光標識ヌクレオチドを示す図。示されているように、色素分子が5’-アミン-色素リンカーを介して核酸に付着しており、ヌクレオチドは、アジド-プロパノールリンカーを介して核酸に付着したヌクレオシド六リン酸を含む。
図8D-1】核酸保護分子の非限定的な例を示す図。
図8D-2】核酸保護分子の非限定的な例を示す図。
図8E】15塩基対の核酸保護分子を含む発光標識されたデオキシチミジン六リン酸を用いて行われた配列決定反応の非限定的な例を示す図。
図8F】各々が25塩基対の核酸保護分子を含むCy3標識アデノシンおよびAlexaFluor-546標識シチジンを用いて行われた配列決定反応の非限定的な例を示す図。
図8G】20塩基対の核酸保護分子に対して内部発光標識または外部発光標識を使用して得られた強度トレースの非限定的な比較を示す図。
図8H】同じオリゴヌクレオチド鎖の反対側にある両末端に付着した発光標識およびヌクレオチドを有する核酸保護分子の非限定的な例を示す図。
図8I】異なるオリゴヌクレオチド鎖に付着した発光標識およびヌクレオチドを有する核酸保護分子の非限定的な例を示す図。
図8J】核酸保護分子の鎖に複数の色素を付着させる非限定的な方法を示す図。
図8K】オリゴヌクレオチド鎖の骨格内に付着した3つのステムループおよび2つのCy3.5色素を含む非限定的な一本鎖核酸保護分子を示す図。
図8L】ポリメラーゼを色素から保護するために色素とヌクレオシドポリリン酸との間に距離および/またはバルク構造を提供することができるステムループ構造を含む、非限定的な二本鎖オリゴヌクレオチド保護分子を示す図。
図8M】ホリデイジャンクションを形成する核酸保護分子の非限定的な例を示す図。
図8N】二本鎖核酸保護分子を含む発光標識ヌクレオシドポリリン酸の非限定的な構成を示す図。
図8O】分岐チミジンオリゴヌクレオチドリンカーを介してヌクレオチドドメイン内に1つを超えるヌクレオチド(Nu)を有する非限定的な非標識鎖構成を示す図。
図8P】複数のエネルギー吸収性修飾を有する(修飾の非限定的な例は、オリゴヌクレオチド鎖の5’末端に付着したかたちで示されている)非限定的なオリゴヌクレオチド構造を示す図。
図8Q】複数のエネルギー吸収性修飾を有する(修飾の非限定的な例は、オリゴヌクレオチド鎖の5’末端に付着したかたちで示されている)非限定的なオリゴヌクレオチド構造を示す図。
図9】ヌクレオチドリンカー合成の非限定的な反応スキームおよび例示的な構造を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0005】
数ある態様の中でもとりわけ、本開示は、核酸を介して1つまたは複数のヌクレオシドポリリン酸に接続されている1つまたは複数の発光標識を含む発光標識ヌクレオチドであって、上記核酸が保護要素を含む発光標識ヌクレオチドを提供する。いくつかの実施形態では、保護要素は、1つまたは複数のヌクレオシドポリリン酸のうちのあるヌクレオシドポリリン酸がポリメラーゼの活性部位内またはその近くにあるときに、1つまたは複数の発光標識による損傷効果からポリメラーゼを保護する、核酸の1つまたは複数の特徴および/または核酸に対する修飾に関する。
【0006】
いくつかの実施形態では、核酸は、一本鎖である。いくつかの実施形態では、核酸は、二本鎖である。いくつかの実施形態では、本開示による二本鎖核酸は、第1のオリゴヌクレオチド鎖であって、上記第1のオリゴヌクレオチド鎖に沿ったいずれの側にも1つまたは複数のヌクレオチドを有する内部位置において付着している1つまたは複数の発光標識を含む、第1のオリゴヌクレオチド鎖と、1つまたは複数のヌクレオシドポリリン酸を含む第2のオリゴヌクレオチド鎖であって、第2のオリゴヌクレオチド鎖が第1のオリゴヌクレオチド鎖にアニーリングされている、第2のオリゴヌクレオチド鎖とを含む。
【0007】
いくつかの実施形態では、本開示の発光標識ヌクレオチドは、複数のチミジンヌクレオチドを含むリンカーを介して核酸に付着している2つ以上のヌクレオシドポリリン酸を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、分岐リンカー、例えば、分岐チミジンリンカーを含む。いくつかの実施形態では、分岐リンカーは、分岐チミジンリンカーを含む。例えば、いくつかの実施形態では、各ヌクレオシドポリリン酸は、式Nu-T(T)T-Rのチミジンリンカーを含み、式中、Nuは、ヌクレオシドポリリン酸を表し、Tは、チミジンヌクレオチドを表し、nは、1から30の間の値をとる整数であり、Rは、1つまたは複数の追加のヌクレオシドポリリン酸を接続する分岐点を表す。いくつかの実施形態では、分岐点はさらに、核酸のオリゴヌクレオチド鎖に直接的に付着している。いくつかの実施形態では、分岐点はさらに、例えば、さらなるチミジンリンカーおよび/またはさらなる分岐点を通じて、オリゴヌクレオチド鎖に間接的に付着している。
【0008】
いくつかの実施形態では、核酸の保護要素は、少なくとも1つのエネルギー吸収性修飾を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのエネルギー吸収性修飾は、三重項状態クエンチャーを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのエネルギー吸収性修飾は、デンドロン修飾を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのエネルギー吸収性修飾は、単糖-TEG、二糖、N-アセチル単糖、TEMPO-TEG、トロロックス-TEG、またはグリセロールデンドリマーを含む。いくつかの実施形態では、保護要素は、1つまたは複数のステムループを含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のステムループは非標識であり、例えば、1つまたは複数のステムループは、ステムループのループおよび/またはステムにおいて付着した発光標識を含まない。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のステムループは、核酸において1つまたは複数の発光標識と1つまたは複数のヌクレオシドポリリン酸との間の位置にある。そのような実施形態では、1つまたは複数の非標識ステムループは、ポリメラーゼ保護効果をもたらす立体障壁および/または吸収壁を提供することができる。
【0009】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数の発光標識が、少なくとも1つまたは複数のステムループのループにおいて付着していてもよい。しかしながら、いくつかの実施形態では、保護要素、例えば1つまたは複数の非標識ステムループが、1つまたは複数の発光標識を1つまたは複数のヌクレオシドポリリン酸から隔てる。
【0010】
いくつかの実施形態では、発光標識ヌクレオチドの核酸は、第1および第2のオリゴヌクレオチド鎖のうちの少なくとも1つにアニーリングされた第3のオリゴヌクレオチド鎖をさらに含む。いくつかの実施形態では、核酸は、第1、第2、および第3のオリゴヌクレオチド鎖のうちの少なくとも1つにアニーリングされた第4のオリゴヌクレオチド鎖をさらに含む。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチド鎖はホリデイジャンクションを形成する。
【0011】
いくつかの態様では、本開示は、鋳型核酸の配列を決定するための方法を提供する。いくつかの実施形態では、上記方法は、標的容積部中の複合体を複数のタイプの発光標識ヌクレオチドに曝露することを含む工程であって、上記複合体が、鋳型核酸、プライマー、および重合酵素を含む工程を含む。いくつかの実施形態では、各タイプの発光標識ヌクレオチドは、核酸を介して1つまたは複数のヌクレオシドポリリン酸に接続されている1つまたは複数の発光標識を含む。いくつかの実施形態では、核酸は、保護要素を含む。したがって、いくつかの態様では、本開示は、本明細書に記載の発光標識ヌクレオシドポリリン酸組成物のうちのいずれかを利用する核酸配列決定の方法を提供する。
【0012】
いくつかの実施形態では、上記方法は、1つまたは複数の励起エネルギーの一連のパルスを、標的容積部の近傍へと向かわせる工程をさらに備える。いくつかの実施形態では、上記方法は、プライマーを含む核酸内への順次組み込み中に、発光標識ヌクレオチドからの複数の放射光子を検出する工程をさらに備える。いくつかの実施形態では、上記方法は、放射光子のタイミングおよび任意選択で周波数を決定することにより、組み込まれたヌクレオチドの配列を識別する工程をさらに備える。
【0013】
いくつかの実施形態では、反応混合物中の4つの異なるタイプのヌクレオチド(例えば、アデニン、グアニン、シトシン、チミン/ウラシル)は各々が、1つまたは複数の発光分子(例えば、1つまたは複数の発光標識)で標識されていてもよい。いくつかの実施形態では、各タイプのヌクレオチドは、1つを超える同じ発光分子に接続されていてもよい(例えば、2つ以上の同じ蛍光色素がヌクレオチドに接続されている)。いくつかの実施形態では、各発光分子は、1つを超えるヌクレオチド(例えば、2つ以上の同じヌクレオチド)に接続されていてもよい。いくつかの実施形態では、1つを超えるヌクレオチドが、1つを超える発光分子に(例えば、1つまたは複数の保護要素を含む核酸リンカーを介して)接続されていてもよい。いくつかの実施形態では、4つのヌクレオチドは全て、同じスペクトル範囲(例えば、520~570nm)内で吸収および放射する発光分子で標識されている。
【0014】
いくつかの実施形態では、1組の4つのヌクレオチド中の発光標識は、芳香族化合物またはヘテロ芳香族化合物を含む色素から選択されることが可能であり、ピレン、アントラセン、ナフタレン、アクリジン、スチルベン、インドール、ベンズインドール、オキサゾール、カルバゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、フェナントリジン、フェノキサジン、ポルフィリン、キノリン、エチジウム、ベンズアミド、シアニン、カルボシアニン、サリチラート、アントラニラート、クマリン、フルオロセイン(fluoroscein)、ローダミン、または他の類似化合物であってもよい。例示的な色素としては、フルオレセイン色素またはローダミン色素等のキサンテン色素、ナフタレン色素、クマリン色素、アクリジン色素、シアニン色素、ベンゾオキサゾール色素、スチルベン色素、ピレン色素、フタロシアニン色素、フィコビリタンパク質色素、スクアライン色素、およびBODIPY色素等が挙げられる。
【0015】
いくつかの実施形態では、1組の4つのヌクレオチド中の発光標識は、アレクサフルオル(Alexa Fluor)(登録商標)546、Cy(登録商標)3B、Alexa
Fluor(登録商標)555、およびAlexa Fluor(登録商標)555、ならびにFRET対であるAlexa Fluor(登録商標)555およびCy(登録商標)3.5を含む。いくつかの実施形態では、1組の4つのヌクレオチド中の発光標識は、Alexa Fluor(登録商標)555、Cy(登録商標)3.5、Alexa
Fluor(登録商標)546、およびディライト(DyLight)(登録商標)554-R1を含む。いくつかの実施形態では、1組の4つのヌクレオチド中の発光標識は、Alexa Fluor(登録商標)555、Cy(登録商標)3.5、アットロー(ATTO Rho)6G、およびDyLight(登録商標)554-R1を含む。いくつかの実施形態では、1組の4つのヌクレオチド中の発光標識は、Alexa Fluor(登録商標)555、Cy(登録商標)3B、ATTO Rho6G、およびDyLight(登録商標)554-R1を含む。いくつかの実施形態では、1組の4つのヌクレオチド中の発光標識は、Alexa Fluor(登録商標)555、Cy(登録商標)3B、ATTO542、およびDyLight(登録商標)554-R1を含む。いくつかの実施形態では、1組の4つのヌクレオチド中の発光標識は、Alexa Fluor(登録商標)555、Cy(登録商標)3B、ATTO542、およびAlexa Fluor(登録商標)546を含む。いくつかの実施形態では、1組の4つのヌクレオチド中の発光標識は、Cy(登録商標)3.5、Cy(登録商標)3B、ATTO Rho6G、およびDyLight(登録商標)554-R1を含む。
【0016】
ある実施形態では、発光標識ヌクレオチドのタイプのうちの、少なくとも1つのタイプ、少なくとも2つのタイプ、少なくとも3つのタイプ、または少なくとも4つは、6-TAMRA、5/6-カルボキシローダミン(Carboxyrhodamine)6G、Alexa Fluor(登録商標)546、Alexa Fluor(登録商標)555、Alexa Fluor(登録商標)568、Alexa Fluor(登録商標)610、Alexa Fluor(登録商標)647、アベリオスター(Aberrior Star)635、アット(ATTO)425、ATTO465、ATTO488、ATTO495、ATTO514、ATTO520、ATTO ロー(Rho)6G、ATTO542、ATTO647N、ATTO Rho14、クロミクス(Chromis)630、Chromis654A、クロメオ(Chromeo)(商標)642、CF(商標)514、CF(商標)532、CF(商標)543、CF(商標)546、CF(商標)546、CF(商標)555、CF(商標)568、CF(商標)633、CF(商標)640R、CF(商標)660C、CF(商標)660R、CF(商標)680R、Cy(登録商標)3、Cy(登録商標)3B、Cy(登録商標)3.5、Cy(登録商標)5、Cy(登録商標)5.5、ディオミクス(Dyomics)-530、Dyomics-547P1、Dyomics-549P1、Dyomics-550、Dyomics-554、Dyomics-555、Dyomics-556、Dyomics-560、Dyomics-650、Dyomics-680、DyLight(登録商標)554-R1、DyLight(登録商標)530-R2、DyLight(登録商標)594、DyLight(登録商標)635-B2、DyLight(登録商標)650、DyLight(登録商標)655-B4、DyLight(登録商標)675-B2、DyLight(登録商標)675-B4、DyLight(登録商標)680、ハイライト(HiLyte)(商標)フルオル(Fluor)532、HiLyte(商標)Fluor555、HiLyte(商標)Fluor594、ライトサイクラ(LightCycler)(登録商標)640R、セタ(Seta)(商標)555、Seta(商標)670、Seta(商標)700、Seta(商標)u647、およびSeta(商標)u665からなる群から選択される発光色素を含むか、または本明細書に記載の式(色素101)、(色素102)、(色素103)、(色素104)、(色素105)、もしくは(色素106)である。
【0017】
いくつかの実施形態では、発光標識ヌクレオチドのタイプのうちの、少なくとも1つのタイプ、少なくとも2つのタイプ、少なくとも3つのタイプ、または少なくとも4つは各々、Alexa Fluor(登録商標)546、Alexa Fluor(登録商標)555、Cy(登録商標)3B、Cy(登録商標)3.5、DyLight(登録商標)554-R1、Alexa Fluor(登録商標)546、ATTO Rho6G、ATTO425、ATTO465、ATTO488、ATTO495、ATTO514、ATTO520、ATTO Rho6G、およびATTO542からなる群から選択される発光色素を含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、第1のタイプの発光標識ヌクレオチドは、Alexa Fluor(登録商標)546を含み、第2のタイプの発光標識ヌクレオチドは、Cy(登録商標)3Bを含み、第3のタイプの発光標識ヌクレオチドは、2つのAlexa Fluor(登録商標)555を含み、第4のタイプの発光標識ヌクレオチドは、Alexa Fluor(登録商標)555およびCy(登録商標)3.5を含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、第1のタイプの発光標識ヌクレオチドは、Alexa Fluor(登録商標)555を含み、第2のタイプの発光標識ヌクレオチドは、Cy(登録商標)3.5を含み、第3のタイプの発光標識ヌクレオチドは、Alexa Fluor(登録商標)546を含み、第4のタイプの発光標識ヌクレオチドは、DyLight(登録商標)554-R1を含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、第1のタイプの発光標識ヌクレオチドは、Alexa Fluor(登録商標)555を含み、第2のタイプの発光標識ヌクレオチドは、Cy(登録商標)3.5を含み、第3のタイプの発光標識ヌクレオチドは、ATTO Rho6Gを含み、第4のタイプの発光標識ヌクレオチドは、DyLight(登録商標)554-R1を含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、第1のタイプの発光標識ヌクレオチドは、Alexa Fluor(登録商標)555を含み、第2のタイプの発光標識ヌクレオチドは、Cy(登録商標)3Bを含み、第3のタイプの発光標識ヌクレオチドは、ATTO Rho6Gを含み、第4のタイプの発光標識ヌクレオチドは、DyLight(登録商標)554-R1を含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、第1のタイプの発光標識ヌクレオチドは、Alexa Fluor(登録商標)555を含み、第2のタイプの発光標識ヌクレオチドは、Cy(登録商標)3Bを含み、第3のタイプの発光標識ヌクレオチドは、ATTO542を含み、第4のタイプの発光標識ヌクレオチドは、DyLight(登録商標)554-R1を含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、第1のタイプの発光標識ヌクレオチドは、Alexa Fluor(登録商標)555を含み、第2のタイプの発光標識ヌクレオチドは、Cy(登録商標)3Bを含み、第3のタイプの発光標識ヌクレオチドは、ATTO542を含み、第4のタイプの発光標識ヌクレオチドはAlexa Fluor(登録商標)546を含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、第1のタイプの発光標識ヌクレオチドは、Cy(登録商標)3.5を含み、第2のタイプの発光標識ヌクレオチドは、Cy(登録商標)3Bを含み、第3のタイプの発光標識ヌクレオチドは、ATTO Rho6Gを含み、第4のタイプの発光標識ヌクレオチドは、DyLight(登録商標)554-R1を含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、発光標識ヌクレオチドのタイプのうちの、少なくとも1つのタイプ、少なくとも2つのタイプ、少なくとも3つのタイプ、または少なくとも4つは、Alexa Fluor(登録商標)532、Alexa Fluor(登録商標)546、Alexa Fluor(登録商標)555、Alexa Fluor(登録商標)594、Alexa Fluor(登録商標)610、CF(商標)532、CF(商標)543、CF(商標)555、CF(商標)594、Cy(登録商標)3、DyLight(登録商標)530-R2、DyLight(登録商標)554-R1、DyLight(登録商標)590-R2、DyLight(登録商標)594、DyLight(登録商標)610-B1からなる群から選択される発光色素を含むか、または式(色素101)、(色素102)、(色素103)、(色素104)、(色素105)、もしくは(色素106)である。
【0026】
いくつかの実施形態では、第1および第2のタイプの発光標識ヌクレオチドは、Alexa Fluor(登録商標)532、Alexa Fluor(登録商標)546、Alexa Fluor(登録商標)555、CF(商標)532、CF(商標)543、CF(商標)555、Cy(登録商標)3、DyLight(登録商標)530-R2、DyLight(登録商標)554-R1からなる群から選択される発光色素を含み、第3および第4のタイプの発光標識ヌクレオチドは、Alexa Fluor(登録商標)594、Alexa Fluor(登録商標)610、CF(商標)594、DyLight(登録商標)590-R2、DyLight(登録商標)594、DyLight(登録商標)610-B1からなる群から選択される発光色素を含むか、または式(色素101)、(色素102)、(色素103)、(色素104)、(色素105)、もしくは(色素106)である。
【0027】
ある実施形態では、発光標識ヌクレオチド分子のタイプのうちの、少なくとも1つのタイプ、少なくとも2つのタイプ、少なくとも3つのタイプ、または少なくとも4つは、TagBFP、mTagBFP2、アズライト(Azurite)、EBFP2、mKalama1、シリウス(Sirius)、サファイア(Sapphire)、T-Sapphire、ECFP、セルリーン(Cerulean)、SCFP3A、mTurquoise、mTurquoise2、単量体Midoriishi-Cyan、TagCFP、mTFP1、EGFP、エメラルド(Emerald)、スーパーフォルダ(Superfolder)GFP、単量体アズミグリーン(Azami Green)、TagGFP2、mUKG、mWasabi、クローバ(Clover)、mNeonGreen、EYFP、シトリン(Citrine)、ヴィーナス(Venus)、SYFP2、TagYFP、単量体クサビラ-オレンジ(Kusabira-Orange)、mKOK、mKO2、mOrange、mOrange2、mRaspberry、mCherry、mStrawberry、mTangerine、tdTomato、TagRFP、TagRFP-T、mApple、mRuby、mRuby2、mPlum、HcRed-Tandem、mKate2、mNeptune、NirFP、TagRFP657、IFP1.4、iRFP、mKeima Red、LSS-mKate1、LSS-mKate2、mBeRFP、PA-GFP、PAmCherry1、PATagRFP、カエデ(Kaede)(緑色)、カエデ(Kaede)(赤色)、KikGR1(緑色)、KikGR1(赤色)、PS-CFP2、mEos2(緑色)、mEos2(赤色)、PSmOrange、またはドロンパ(Dronpa)からなる群から選択される発光タンパク質を含む。
【0028】
本出願の態様は、識別しようとする分子(例えば、発光標識ヌクレオシドポリリン酸)に励起エネルギーを加え、励起後の放射光子を検出するための方法を提供する。ある実施形態では、検出は、各検出された発光について、発光と事前の励起エネルギーのパルスとの間の経過時間を記録することを含む。ある実施形態では、検出は、複数の検出された発光の各々について、発光と事前の励起エネルギーのパルスとの間の経過時間を記録することを含む。ある実施形態では、励起エネルギーの複数のパルスが加えられる。識別しようとする分子の発光マーカー(例えば、1つまたは複数の発光標識)は、上記パルスの各パルスまたはその部分により励起されることが可能である。ある実施形態では、複数の発光が、1つまたは複数のセンサにより検出される。識別しようとする分子の発光マーカーは、各励起または励起の部分の後で発光を放射してもよい。発光をもたらす励起事象の割合は、マーカーの発光量子収量に基づく。いくつかの実施形態では、発光標識の数を増加させると、量子収量を増加させることができる(例えば、発光放射の数を増加させることができる)。加えて、マーカーにより放射された発光が全て検出されるとは限らないだろう。例えば、いくつかの発光は、センサから遠ざかるように向かうだろう。ある実施形態では、1つまたは複数の励起エネルギーは、吸収スペクトル、および所与のスペクトル範囲での励起後にマーカーが光子を放射する波長を含む、発光マーカーの発光特性に基づいて選択される。
【0029】
ある実施形態では、パルス励起エネルギーの周波数は、検出しようとする発光標識分子(例えば、発光標識ヌクレオシドポリリン酸)の発光特性(例えば、発光寿命)に基づいて選択される。いくつかの実施形態では、パルス間の間隔は、励起されている1つまたは複数の発光標識分子の発光寿命よりも長い。いくつかの実施形態では、間隔は、励起されている1つまたは複数の発光標識分子の発光寿命よりも、約2倍~約10倍、約10倍~約100倍、または約100倍から約1000倍長い。いくつかの実施形態では、間隔は、励起されている1つまたは複数の発光標識分子の発光寿命よりも約10倍長い。
【0030】
ある実施形態では、パルス励起エネルギーの周波数は、モニターされている化学プロセスに基づいて選択される。配列決定反応の場合、発光標識ヌクレオチドの組み込み中に標的容積部に加えられるパルスの数は、検出される放射光子の数を部分的に決定することになる。いくつかの実施形態では、周波数は、発光標識ヌクレオチドの組み込み中に十分な数の光子が検出されることができるように選択され、十分な数とは、複数のタイプの発光標識ヌクレオチドの中から、その発光標識ヌクレオチドを判別するのに必要な光子の数である。いくつかの実施形態では、発光標識ヌクレオチドは、放射光子の波長に基づいて判別される。いくつかの実施形態では、発光標識ヌクレオチドは、発光放射寿命、例えば、パルス励起と放射検出との間の時間に基づいて判別される。いくつかの実施形態では、発光標識ヌクレオチドは、放射光子の波長および発光放射寿命に基づいて判別される。いくつかの実施形態では、発光標識ヌクレオチドは、放射シグナルの発光強度に基づいて(例えば、放射の周波数またはある期間内の放射事象の総数に基づいて)判別される。いくつかの実施形態では、発光標識ヌクレオチドは、放射シグナルの発光強度および発光寿命に基づいて判別される。いくつかの実施形態では、発光標識ヌクレオチドは、発光強度および波長に基づいて判別される。いくつかの実施形態では、発光標識ヌクレオチドは、発光強度、波長、および発光寿命に基づいて判別される。
【0031】
本出願の別の態様によると、標的核酸を配列決定するための方法が提供される。いくつかの実施形態では、標的核酸を配列決定するための方法は、以下の工程を備える:(i)(a)前記標的核酸、(b)前記標的核酸に相補的なプライマー、(c)核酸ポリメラーゼ、および(d)前記標的核酸に相補的な成長中の核酸鎖に組み込むためのヌクレオチドを含む混合物を用意する工程であって、前記ヌクレオチドが、異なるタイプの発光標識ヌクレオチドを含み、前記発光標識ヌクレオチドが、前記成長中の核酸鎖への順次組み込み中に検出可能なシグナルを産出し、前記異なるタイプの発光標識ヌクレオチドからの検出可能なシグナルが、時間領域で互いに区別可能である(例えば、検出可能なシグナルのタイミングおよび/または周波数を決定することにより)、工程、(ii)前記プライマーを伸長させることにより前記成長中の核酸鎖を産出するのに十分な条件下で、(i)の前記混合物を重合反応に供する工程、(iii)前記成長中の核酸鎖への順次組み込み中に、前記発光標識ヌクレオチドからの前記検出可能なシグナルを測定する工程、ならびに(iv)前記成長中の核酸鎖への順次組み込み時に前記発光標識ヌクレオチドからの前記測定された検出可能なシグナルのタイミングおよび/または周波数を決定して、前記成長中の核酸鎖への前記発光標識ヌクレオチドの組み込みの時系列を識別し、それにより前記標的核酸の配列を決定する工程。
【0032】
いくつかの実施形態では、標的核酸または核酸ポリメラーゼは、支持体に付着している。いくつかの実施形態では、組み込みの時系列は、(i)の混合物を重合反応に供した後で識別される。いくつかの実施形態では、検出可能なシグナルは、光学的シグナルである。いくつかの実施形態では、光学的シグナルは、発光シグナルである。いくつかの実施形態では、測定された検出可能なシグナルのタイミングおよび/または周波数の決定は、(i)前記検出可能なシグナルを1つまたは複数のセンサで受信する工程、および(ii)前記1つまたは複数のセンサで受信した前記検出可能なシグナルに応答して生成される複数の電荷担体の電荷担体を、前記電荷担体が生成された時間に基づいて、少なくとも1つの電荷担体保管領域内へと選択的に向かわせる工程を備える。
【0033】
いくつかの実施形態では、前記測定された検出可能なシグナルのタイミングおよび/または周波数は、減衰寿命の測定値を含む。いくつかの実施形態では、測定された検出可能なシグナルのタイミングおよび/または周波数は、検出可能なシグナルを検出する1つまたは複数のセンサにおける、検出可能なシグナルの到着時間の測定値を含む。いくつかの実施形態では、上記方法は、検出可能なシグナルにより生成された電荷担体を、検出可能なシグナルの到達時間に基づいて、1つまたは複数のセンサと関連付けられているビンに分離する工程をさらに備える。いくつかの実施形態では、測定された検出可能なシグナルのタイミングおよび/または周波数は、非スペクトル測定値である。
【0034】
当業者であれば、本明細書に記載されている図面は図示のためにすぎないことを理解するであろう。ある場合には、本発明の理解を容易にするために、本発明の様々な態様を誇張してまたは拡大して表すことがあると理解されたい。図面では、同様の参照符号は、一般に、様々な図を通して、同様の特色、機能的に類似および/または構造的に類似の要素を指す。図面は必ずしも縮尺ではなく、むしろ教示の原理を図示することに重点が置かれている。図面は、決して、本教示の範囲を限定する意図はない。
【0035】
本発明の特色および利点は、図面と併せれば、以下に述べる詳細な説明からさらに明らかになるであろう。
図面を参照して実施形態を説明する場合、方向の参照(「上」、「下」、「頂部」、「底部」、「左」、「右」、「水平」、「垂直」など)を使用してもよい。そのような参照は単に、読者が図面を通常の向きで見ることを助けることを意図するものにすぎない。これらの指向性の参照は、具現化されたデバイスの好ましい向きまたは唯一の向きを記述することを意図するものではない。デバイスは、他の向きで具現化されてもよい。
【0036】
詳細な説明から明らかなように、図面(例えば、図1図9)に示され、本出願を通して図示の目的でさらに説明されている例は、非限定的な実施形態を記載しており、場合によっては、より明確に図示する目的のために、ある一定のプロセスを単純化するか、または特色もしくはステップを省略し得る。
【0037】
(詳細な説明)
本開示の態様は、ヌクレオシドポリリン酸に対する発光標識の付着のための核酸リンカーに関する。そのような組成物は、有利なことには、反応基質としてのヌクレオシドポリリン酸の使用を含む技術において使用され得る。例えば、あるDNA配列決定技術は、合成による配列決定(sequencing-by-synthesis)反応におけるポリメラーゼ酵素の使用を含む場合があり、これにより、成長中の鎖における特定のタイプの標識ヌクレオチドの組み込みに起因し得る固有のシグナルに基づいて配列情報が得られることが可能である。いくつかの実施形態では、ポリメラーゼ活性は、配列決定結果のロバスト性を決定するものであり得る。したがって、多くの場合、適切な機能性および全体的な活性を保つために、例えば、解読長および正確性等の読み出しパラメータを最適化する目的で、光誘導損傷からポリメラーゼを保護することが望ましい。したがって、本明細書に記載の核酸リンカーは、それがなければ発光標識ヌクレオチドがポリメラーゼ活性部位の極近傍にくることから生じ得る光誘導損傷を排除するかまたは最小限に抑えるポリメラーゼ保護機能性をもたらす。
【0038】
いくつかの態様では、本開示は、核酸リンカーを介してヌクレオシドポリリン酸に付着した発光標識を含む発光標識ヌクレオチドを提供する。いくつかの実施形態では、ヌクレオシドポリリン酸は、合成反応中のポリメラーゼ基質としての役割を果たし、核酸リンカーは、発光標識ヌクレオチドに対してポリメラーゼ保護特性を与える。いくつかの実施形態では、核酸リンカーは、発光標識とヌクレオシドポリリン酸との間に隔離距離を設け、ヌクレオシドポリリン酸が関与する酵素触媒反応中の標識とポリメラーゼまたは他の酵素との間の相互作用の程度を最小限に抑える。しかしながら、本発明者らは、保護効果をもたらすことができる核酸リンカーの追加の特徴をさらに認識し、理解している。いくつかの実施形態では、核酸リンカーは、ヌクレオシドポリリン酸が関与する酵素触媒反応中にポリメラーゼまたは他の酵素をさらに保護するために、発光標識とヌクレオシドポリリン酸との間にある1つまたは複数の保護要素を含む。例えば、いくつかの実施形態では、核酸リンカーは、さらなるポリメラーゼ保護効果をもたらすために、1つまたは複数の構造モチーフ(例えば、ステムループ、ホリデイジャンクション)、複数のハイブリダイゼーションされたオリゴヌクレオチド鎖、ハイブリダイゼーションされた領域内(例えば、発光標識をヌクレオシドポリリン酸に対して接続する2つ以上のオリゴヌクレオチド鎖同士の間)の1つまたは複数の架橋した塩基対、および/または、1つまたは複数のエネルギー吸収性修飾(例えば、三重項状態クエンチャー、分岐した高分子構造、分岐した樹状構造)を含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の核酸リンカー(および関連付けられた標識ヌクレオチド)は、材料の粒子に付着していない(例えば、金属材料、磁性材料、高分子材料、または他の材料の粒子に付着していない)。いくつかの実施形態では、核酸リンカーは、線状分子である。いくつかの実施形態では、核酸リンカーは、環状分子である。いくつかの実施形態では、核酸リンカーは、一本鎖(例えば、ステムループ構造ありまたはなし)である。いくつかの実施形態では、核酸リンカーは、二本鎖(例えば、ステムループ構造ありまたはなし)である。いくつかの実施形態では、二本鎖核酸リンカーの2つの鎖は(相補的配列に起因して)ハイブリダイゼーションされており、共有結合で付着していない。しかしながら、いくつかの実施形態では、二本鎖リンカーの2つの鎖を共有結合で付着させるために、1つまたは複数の共有結合が(例えば、1つまたは複数の化学的リンカーを使用して)導入されてもよい。いくつかの実施形態では、核酸リンカーは、本明細書に記載されている1つまたは複数の追加の部分を含んでもよい。いくつかの実施形態では、核酸リンカーは、i)糖リン酸骨格内または末端にある1つまたは複数の追加の部分、ii)1つまたは複数の修飾(例えば、1つまたは複数の修飾塩基または糖)、またはi)およびii)の組合せを含む。しかしながら、いくつかの実施形態では、核酸リンカーは、i)、ii)、またはi)もしくはii)のいずれも含まない。
【0039】
いくつかの実施形態では、核酸リンカーは、発光標識とヌクレオシドポリリン酸との間の立体障壁をもたらすステムループ等の1つまたは複数の構造モチーフを含む。ステムループまたはヘアピンループは、オリゴヌクレオチド鎖がフォールディングして同じ鎖の別のセクションと塩基対を形成するときに形成される、オリゴヌクレオチド鎖上のヌクレオチドの不対ループである。いくつかの実施形態では、ステムループの不対ループは、3個から10個のヌクレオチドを含む。したがって、ステムループは、ハイブリダイゼーションしてステムを形成する逆位の相補的配列を有するオリゴヌクレオチド鎖の2つの領域によって形成される場合があり、この2つの領域は、不対ループを形成する3個から10個のヌクレオチドによって隔てられている。いくつかの実施形態では、ステムは、1つまたは複数のG/Cヌクレオチドを有するように設計されてもよく、これにより、形成される付加水素結合の相互作用において、A/Tヌクレオチドと比較してさらに安定性をもたらすことができる。いくつかの実施形態では、ステムは、不対ループ配列に対してすぐ近隣にあるG/Cヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、ステムは、不対ループ配列に隣接している初めから2、3、4、または5つのヌクレオチドの中にG/Cヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の発光標識がステムループの不対ループに付着しており、ステム領域は、1つまたは複数の発光標識とヌクレオシドポリリン酸との間に強剛性および距離を提供する。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の発光標識は、ステムループのステムに付着している。いくつかの実施形態では、核酸リンカーのステムループは、発光標識を含まない。いくつかの実施形態では、核酸リンカーのステムループは、ステム内に不対領域(例えば、「バルジ」)を含む。いくつかの実施形態では、ステムループ等の1つまたは複数の非標識構造モチーフは、核酸リンカー内に(例えば、核酸リンカーにおいて1つまたは複数の発光標識と、1つまたは複数のヌクレオシドポリリン酸との間にある位置に)含まれている。そのような実施形態では、1つまたは複数の非標識構造モチーフは、ポリメラーゼ保護効果をもたらす立体障壁および/または吸収壁を提供することができる。
【0040】
いくつかの実施形態では、核酸リンカーは、ポリメラーゼに対する光誘導損傷を吸収またはさもなければ軽減するために、クエンチング部分等の1つまたは複数のエネルギー吸収性修飾を含む。いくつかの実施形態では、核酸リンカーは、ポリメラーゼ保護効果をもたらす追加の特徴を含むことができる。例えば、いくつかの実施形態では、核酸リンカーに対する発光標識の付着の位置は、ポリメラーゼ保護効果をもたらすように選択されることが可能である。いくつかの実施形態では、発光標識は、標識が、末端で連結された標識と比べてより大きな程度まで核酸リンカーの近傍に保持されるように、核酸リンカーの内部位置で付着している。そのような実施形態では、発光標識は、空間内でポリメラーゼと相互作用するその利用可能性が比較的制限されている。
【0041】
いくつかの実施形態では、核酸リンカーは、二本鎖である。いくつかの実施形態では、二本鎖核酸リンカーは、発光標識に付着した第1のオリゴヌクレオチド鎖と、ヌクレオシドポリリン酸に付着した第2のオリゴヌクレオチド鎖とを含む。いくつかの実施形態では、第2のオリゴヌクレオチド鎖は、アニーリングされた第1のオリゴヌクレオチド鎖の発光標識に隣接した1つまたは複数のエネルギー吸収性修飾をさらに含む。例えば、いくつかの実施形態では、核酸リンカーの1つまたは複数のエネルギー吸収性修飾は、ヌクレオシドポリリン酸よりも発光標識の近傍にある。したがって、そのような実施形態では、1つまたは複数のエネルギー吸収性修飾は、発光分子により放射される放射性崩壊および/または非放射性崩壊を妨げる立体障壁および/または吸収壁としての役割を果たす。
【0042】
本明細書で使用されるとき、「核酸リンカー」とは、発光標識をヌクレオシドポリリン酸に接続する核酸を指す。いくつかの実施形態では、核酸リンカーは、ポリメラーゼ保護効果をもたらす。したがって、いくつかの実施形態では、核酸リンカーは、「核酸保護分子」、またはより一般には「保護分子」と代替的に呼ばれる。いくつかの実施形態では、核酸およびオリゴヌクレオチドという用語は、文脈によって同義的に使用される場合がある。このように、核酸リンカー、オリゴヌクレオチドリンカー、核酸保護分子、およびオリゴヌクレオチド保護分子は、同じまたは同様の概念を指すことがある。
【0043】
核酸リンカー(例えば、オリゴヌクレオチドダイマー)の文脈において、それに付着した「ヌクレオチド」または「ヌクレオシドポリリン酸」とは、成長中の核酸鎖へと(例えば、配列決定反応中に)組み込まれるように構成されている1つまたは複数のヌクレオチド(例えば、ヌクレオシドリン酸)を指すことを理解されたい。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のヌクレオチドは、1つまたは複数のヌクレオシド一リン酸もしくはヌクレオシドポリリン酸(例えば、ヌクレオシド二リン酸もしくは三リン酸、または3つを超える5’リン酸を有するヌクレオシド等)を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のヌクレオシドリン酸(例えば、ヌクレオシドポリリン酸)は、本出願に記載のように保護分子の一部を形成するオリゴヌクレオチド(例えば、非標識オリゴヌクレオチド鎖)に対して末端リン酸を通じて付着していてもよい。本出願に記載の組成物または方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、ヌクレオシドリン酸の(例えば、ヌクレオシドポリリン酸の)リン酸部分(例えば、ポリリン酸部分)は、1つもしくは複数のリン酸またはそれらの改変体を含む。例えば、いくつかの実施形態では、ヌクレオシドリン酸の(例えば、ヌクレオシドポリリン酸の)リン酸部分(例えば、ポリリン酸部分)は、リン酸エステル連結、チオエステル連結、ホスホルアミデート連結、アルキルホスホナート連結、他の適切な連結、または1つを超えるそのような修飾、またはそれらの2つ以上の組合せを含むことができる。いくつかの実施形態では、核酸リンカーの標識鎖および非標識鎖は、互いに対して(例えば、二量体化ドメイン内の鎖が、例えば、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の相補性を互いに対して有し得る、二量体化ドメインの長さにわたって)実質的に相補的である。
【0044】
本明細書に記載されているように、本開示の諸態様は、ポリメラーゼ保護効果を有する組成物に関する。実行者がポリメラーゼ保護効果を評価することを可能にする様々なパラメータがあることが理解されるべきである。概して、保護要素の効果は、保護要素を有する組成物と保護要素を欠いている組成物との間の比較評価を行うことによって評価されることができる。例えば、いくつかの実施形態では、ポリメラーゼ保護要素は、配列解読長を増大させることができる(例えば、1つまたは複数の保護要素を欠いているがそれ以外は同様または同一である核酸リンカーを除いては同じ条件および同じ試薬で行われた配列決定反応と比べて10%~25%、25~50%、50~75%、75~100%、または100%超、例えば約2倍、3倍、4倍、または5倍以上)。いくつかの実施形態では、保護要素は、配列の正確性を増大させることができる(例えば、上述の比較条件下で行われた配列決定反応と比べて約5%、約10%、または約15%以上)。いくつかの実施形態では、ポリメラーゼの保護は、上述の比較条件下で評価されたとき、鎖合成中にポリメラーゼが光誘導損傷によって不活性化される程度の減少(例えば、約10%、20%、30%、40%、または50%以上)によって測定され得る。
【0045】
いくつかの実施形態では、本開示は、単一分子を、その分子の1つまたは複数の発光特性に基づいて識別するための新しい方法および組成物を提供する。いくつかの実施形態では、分子(例えば、発光標識ヌクレオシドポリリン酸)は、その発光寿命、吸収スペクトル、放射スペクトル、発光量子収量、発光強度、またはそれらの2つ以上の組合せに基づいて識別される。識別は、分子の正確な分子同一性を帰属させることを意味してもよく、または1組の考え得る分子から特定の分子を判別または区別することを意味してもよい。いくつかの実施形態では、分子は、異なる発光寿命、吸収スペクトル、放射スペクトル、発光量子収量、発光強度、またはそれらの2つ以上の組合せに基づいて、互いに判別されることが可能である。いくつかの実施形態では、単一分子は、分子を一連の個別の光パルスに曝露し、分子から放射される各光子のタイミングまたは他の特性を評価することにより識別される(例えば、他の分子と判別される)。いくつかの実施形態では、単一分子から順次放射される複数の光子の情報が統合および評価されて分子が識別される。いくつかの実施形態では、分子の発光寿命は、分子から順次放射される複数の光子から決定され、発光寿命は、分子を識別するために使用されることが可能である。いくつかの実施形態では、分子の発光強度は、分子から順次放射される複数の光子から決定され、発光強度は、分子を識別するために使用されることが可能である。いくつかの実施形態では、分子の発光寿命および発光強度は、分子から順次放射される複数の光子から決定され、発光寿命および発光強度は、分子を識別するために使用されることが可能である。
【0046】
本出願の一態様は、1つまたは複数の生物学的または化学的分子を検出および/または識別するのに有用である。いくつかの実施形態では、化学的または生物学的反応は、1つまたは複数の時点にて、1つまたは複数の試薬または産物の存在または非存在を決定することにより評価されることが可能である。
【0047】
本出願の一態様では、分子を光に曝露し、分子から放射される1つまたは複数の光子の1つまたは複数の特性を決定することにより分子を調査する。本出願のある態様では、分子を光のパルスに曝露し、分子から放射される光子の1つまたは複数の特性を決定することにより、分子が調査される。いくつかの実施形態では、分子を複数の個別の光パルス事象に曝露し、個別の光パルス事象の後で放射される個別の光子の1つまたは複数の特性が決定される。いくつかの実施形態では、分子は、各光パルスに応答して光子を放射しない。しかしながら、複数の放射光子は、分子を一連の個別の光パルスに曝露し、光パルス事象のサブセットの後で放射される個別の光子(例えば、パルス事象の約10%の後で放射される光子、またはパルス事象の約1%の後で放射される光子)を評価することにより評価されることが可能である。
【0048】
本出願の一態様は、1つまたは複数の時点にて、1つまたは複数の試薬、中間体、および/または産物の存在または非存在を決定することにより、化学的または生物学的反応をモニターするのに有用である。いくつかの実施形態では、経時的な反応の進行は、反応試料を一連の個別の光パルスに曝露し、各光パルスの後で検出される任意の放射光子を分析することにより分析されることが可能である。
【0049】
したがって、本出願のいくつかの態様では、反応試料を複数の個別の光パルスに曝露し、一連の放射光子が検出および分析される。いくつかの実施形態では、一連の放射光子は、反応試料に存在し、実験時間にわたって変化しない単一分子に関する情報を提供する。しかしながら、いくつかの実施形態では、一連の放射光子は、異なる時点にて(例えば、反応またはプロセスが進行すると共に)反応試料中に存在する一連の異なる分子に関する情報を提供する。
【0050】
いくつかの実施形態では、本出願の一態様は、生物学的試料を分析するために、例えば、試料中の1つまたは複数の核酸またはポリペプチドの配列を決定するために、および/または試料中の1つまたは複数の核酸またはポリペプチド変異体(例えば、目的の遺伝子の1つまたは複数の突然変異)の存在または非存在を決定するために使用されることが可能である。いくつかの実施形態では、診断、予後、および/もしくは治療のために、核酸配列情報を提供するため、または1つまたは複数の目的核酸の存在または非存在を決定するために、患者試料(例えば、ヒト患者試料)に対して検査が実施される。いくつかの例では、診断検査には、例えば、対象の生物学的試料中の無細胞デオキシリボ核酸(DNA)分子および/または発現産物(例えば、リボ核酸(RNA))を配列決定することにより、対象の生物学的試料中の核酸分子を配列決定することを含む。
【0051】
いくつかの実施形態では、発光寿命および/または強度を使用して分析中の(例えば、調査および/または識別中の)1つまたは複数の分子は、標識分子(例えば、1つまたは複数の発光マーカーで標識されている分子)でもよい。いくつかの実施形態では、生体分子の個々のサブユニットが、マーカーを使用して識別されてもよい。いくつかの例では、発光マーカーが、生体分子の個々のサブユニットを識別するために使用されてもよい。いくつかの実施形態では、発光マーカー(本明細書では「マーカー」とも呼ばれる)が使用される。発光マーカーは、外因性マーカーであってもよくまたは内因性マーカーであってもよい。外因性マーカーは、発光標識用のリポーターおよび/またはタグとして使用される外部発光マーカーであってもよい。外因性マーカーの例としては、これらに限定されないが、蛍光分子、フルオロフォア、蛍光色素、蛍光染色剤、有機色素、蛍光タンパク質、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)に寄与する種、酵素、および/または量子ドットを挙げることができる。当技術分野では他の外因性マーカーも公知である。そのような外因性マーカーは、特定の標的または成分と特異的に結合するプローブまたは官能基(例えば、分子、イオン、および/またはリガンド)とコンジュゲートされていてもよい。外因性タグまたはリポーターをプローブと付着させることにより、外因性タグまたはリポーターの存在の検出による標的の識別が可能になる。プローブの例としては、タンパク質、核酸(例えば、DNA、RNA)分子、脂質、および抗体プローブを挙げることができる。外因性マーカーおよび官能基を組み合わせると、分子プローブ、標識プローブ、ハイブリダイゼーションプローブ、抗体プローブ、タンパク質プローブ(例えば、ビオチン結合プローブ)、酵素標識、蛍光プローブ、蛍光タグ、および/または酵素リポーターを含む、検出に使用される任意の好適なプローブ、タグ、プローブ、および/または標識を形成することができる。
【0052】
本開示では、発光マーカーが参照されているが、本明細書で提供されているデバイス、システム、および方法と共に、他のタイプのマーカーが使用されてもよい。そのようなマーカーは、質量タグ、静電気タグ、電気化学標識、またはそれらの任意の組合せであってもよい。
【0053】
外因性マーカーは、試料に添加されてもよく、内因性マーカーは、既に試料の一部であってもよい。内因性マーカーとしては、励起エネルギーの存在下で発光または「自己蛍光」することができる、存在するあらゆる発光マーカーを挙げることができる。内因性フルオロフォアの自己蛍光は、外因性フルオロフォアの導入を必要とせず、無標識で非侵襲性の標識を提供することができる。そのような内因性フルオロフォアの例としては、ヘモグロビン、オキシヘモグロビン、脂質、コラーゲンおよびエラスチン架橋、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)、酸化型フラビン(FADおよびFMN)、リポフスチン、ケラチン、ならびに/またはポルフィリンを挙げることができるが、これらは例として挙げられており、限定ではない。
【0054】
本発明者らは、単一分子検出および/または核酸配列決定を実施するための単純でより簡単な装置が必要とされていることを認識したうえで、複数の組の発光タグ(例えば、発光マーカー、発光標識)を使用して異なる分子を標識する、単一分子を検出するための技法に想到した。そのような単一分子は、タグを有するヌクレオチドまたはアミノ酸であってもよい。タグは、単一分子と結合されている状態で検出されてもよく、その単一分子から放出される際に検出されてもよく、または単一分子と結合されている状態でおよび単一分子から放出される際に検出されてもよい。いくつかの例では、タグは、発光タグである。選択された組の各発光タグは、それぞれの分子と関連付けられている。例えば、1組の4つのタグは、DNAに存在する核酸塩基を「標識」するために使用されてよい。この組の各タグは、異なる核酸塩基と関連付けられており、例えば、第1のタグはアデニン(A)と関連付けられており、第2のタグは、シトシン(C)と関連付けられており、第3のタグは、グアニン(G)と関連付けられており、第4のタグは、チミン(T)と関連付けられている。さらに、この組のタグの発光タグの各々は、この組の第1のタグをこの組の他のタグと判別するために使用されることができる異なる特性を有する。このようにして、各タグは、こうした判別特徴の1つまたは複数を使用して一意的に識別可能である。例として挙げられているものであり、限定ではないが、1つのタグを別のタグと判別するために使用されることが可能なタグの特徴としては、励起エネルギーに応答してタグにより放射される光の放射エネルギーおよび/または波長、特定のタグにより吸収されて、そのタグを励起状態にする励起光の波長、および/またはそのタグの放射寿命を挙げることができる。
【0055】
配列決定
本出願のいくつかの態様は、核酸およびタンパク質等の生物学的ポリマーの配列決定に有用である。いくつかの実施形態では、本出願に記載されている方法、組成物、およびデバイスは、核酸またはタンパク質に組み込まれる一連のヌクレオチドモノマーまたはアミノ酸モノマーを識別するために使用されてよい(例えば、一連の標識ヌクレオチドモノマーまたは標識アミノ酸モノマーの組み込みの時間的経過を検出することにより)。いくつかの実施形態では、本出願に記載されている方法、組成物、およびデバイスは、ポリメラーゼ酵素により合成される鋳型依存性核酸配列決定反応産物に組み込まれている一連のヌクレオチドを識別するために使用されてよい。
【0056】
ある実施形態では、鋳型依存性核酸配列決定産物は、天然核酸ポリメラーゼにより実施される。いくつかの実施形態では、ポリメラーゼは、天然ポリメラーゼの突然変異体または修飾変異体である。いくつかの実施形態では、鋳型依存性核酸配列産物は、鋳型核酸鎖に相補的な1つまたは複数のヌクレオチドセグメントを含むことになる。1つの態様では、本出願は、その相補的な核酸鎖の配列を決定することにより、鋳型(または標的)核酸鎖の配列を決定するための方法を提供する。
【0057】
本明細書で使用される「ポリメラーゼ」という用語は、一般に、重合反応を触媒し得る任意の酵素(または重合酵素)を指す。ポリメラーゼの例としては、限定するものではないが、核酸ポリメラーゼ、転写酵素またはリガーゼが挙げられる。ポリメラーゼは重合酵素であってもよい。
【0058】
単一分子核酸伸長(例えば、核酸配列決定のための)に関する実施形態は、標的核酸分子に相補的な核酸を合成することができる任意のポリメラーゼを使用してもよい。いくつかの実施形態では、ポリメラーゼは、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、逆転写酵素、および/またはそれらの1つ以上の変異体もしくは改変型であってもよい。
【0059】
ポリメラーゼの例としては、限定するものではないが、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、熱安定性ポリメラーゼ、野生型ポリメラーゼ、修飾ポリメラーゼ、E.coli DNAポリメラーゼI、T7 DNAポリメラーゼ、バクテリオファージT4 DNAポリメラーゼψ29(プサイ29)DNAポリメラーゼ、Taqポリメラーゼ、Tthポリメラーゼ、Tliポリメラーゼ、Pfuポリメラーゼ、Pwoポリメラーゼ、VENTポリメラーゼ、DEEP VENTポリメラーゼ、EX-Taqポリメラーゼ、LA-Taqポリメラーゼ、Ssoポリメラーゼ、Pocポリメラーゼ、Pabポリメラーゼ、Mthポリメラーゼ、ES4ポリメラーゼ、Truポリメラーゼ、Tacポリメラーゼ、Tneポリメラーゼ、Tmaポリメラーゼ、Tcaポリメラーゼ、Tihポリメラーゼ、Tfiポリメラーゼ、Platinum Taqポリメラーゼ、Tbrポリメラーゼ、Tflポリメラーゼ、Tthポリメラーゼ、Pfuturbo ポリメラーゼ、Pyrobest ポリメラーゼ、Pwoポリメラーゼ、KODポリメラーゼ、Bstポリメラーゼ、Sacポリメラーゼ、クレノウ断片、3’→5’エキソヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼ、およびそれらの改変体、改変生成物および誘導体が挙げられる。いくつかの実施形態では、ポリメラーゼは、単一サブユニットポリメラーゼである。DNAポリメラーゼの非限定的な例およびそれらの特性は、とりわけ、DNA複製第2版、KornbergおよびBaker、W.H. Freeman、New York、N.Y.(1991)に詳細に記載されている。
【0060】
標的核酸の核酸塩基と相補的なdNTPとの間の塩基対合の際に、ポリメラーゼは、新たに合成された鎖の3’ヒドロキシル末端と、dNTPのαリン酸との間にホスホジエステル結合を形成することにより、dNTPを、新たに合成された核酸鎖に組み込む。dNTPにコンジュゲートされた発光タグがフルオロフォアである例では、その存在は、励起によってシグナル伝達され、組み込みの工程中または工程後に放射のパルスが検出される。dNTPの末端(ガンマ)リン酸にコンジュゲートされる検出標識については、新たに合成された鎖へのdNTPの組み込みにより、βおよびγリン酸塩ならびに試料ウェル中で自由に拡散する検出標識が放出されて、フルオロフォアから検出される放射が減少する。
【0061】
いくつかの実施形態では、ポリメラーゼは高い加工性を有するポリメラーゼである。しかし、いくつかの実施形態では、ポリメラーゼは加工性が低下したポリメラーゼである。ポリメラーゼ加工性とは、一般に、核酸鋳型を解放することなくdNTPを核酸鋳型に連続的に組み込むポリメラーゼの能力を指す。いくつかの実施形態では、ポリメラーゼは、低5’-3’エキソヌクレアーゼ活性および/または3’-5’エキソヌクレアーゼを有するポリメラーゼである。いくつかの実施形態では、ポリメラーゼは、対応する野生型ポリメラーゼと比較して5’-3’エキソヌクレアーゼ活性および/または3’-5’活性が低下するように(例えば、アミノ酸置換によって)修飾される。DNAポリメラーゼのさらなる非限定的な例としては、9°Nm(商標)DNAポリメラーゼ(New England Biolabs)およびクレノウエキソポリメラーゼのP680G変異体が挙げられる(Tuskeら(2000)JBC 275(31):23759~23768)。いくつかの実施形態では、減少した加工性を有するポリメラーゼは、1つ以上のヌクレオチドリピートのストレッチ(例えば、同じ種類の2つ以上の連続塩基)を含む配列決定する鋳型の精度を高める。いくつかの実施形態では、ポリメラーゼは、標識されていない核酸よりも標識されたヌクレオチドに対して高い親和性を有するポリメラーゼである。
【0062】
別の態様では、本出願は、複数の核酸断片を配列決定することにより標的核酸を配列決定するための方法であって、標的核酸が上記断片を含む方法を提供する。ある実施形態では、上記方法は、複数の断片配列を組み合わせて、親標的核酸の配列または部分配列を提供する工程を備える。いくつかの実施形態では、組合せ工程は、コンピュータハードウェアおよびソフトウェアにより実施される。本明細書に記載の方法は、染色体全体またはゲノム等の、1組の関連標的核酸の配列決定を可能にすることができる。
【0063】
配列決定中、重合酵素は、標的核酸分子のプライミング位置にカップリングしてもよい(例えば、付着してもよい)。プライミング位置は、標的核酸分子の部分に相補的なプライマーであってもよい。その代わりとして、プライミング位置は、標的核酸分子の二本鎖セグメント内に提供されているギャップまたはニックである。ギャップまたはニックは、長さが、0個から少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、20、30、または40個ヌクレオチドまでであってもよい。ニックは、二本鎖配列の一方の鎖の切れ目を提供することができ、例えば、鎖置換ポリメラーゼ酵素等の重合酵素のプライミング位置を供給することができる。
【0064】
いくつかの場合、配列決定用プライマーは、固体支持体に固定されていてもよくまたは固定されなくともよい標的核酸分子にアニーリングされることが可能である。固体支持体は、例えば、核酸配列決定に使用されるチップ上の試料ウェル(例えば、ナノ開口部(反応チャンバ))を備えていてもよい。いくつかの実施形態では、配列決定用プライマーは、固体支持体に固定されていてもよく、標的核酸分子がハイブリダイゼーションすると、標的核酸分子も固体支持体に固定される。いくつかの実施形態では、ポリメラーゼは、固体支持体に固定されており、可溶性プライマーおよび標的核酸が、ポリメラーゼと接触する。しかしながら、いくつかの実施形態では、ポリメラーゼ、標的核酸、およびプライマーを含む複合体が、溶液中で形成され、この複合体が、固体支持体に固定されている(例えば、ポリメラーゼ、プライマー、および/または標的核酸を固定することにより)。いくつかの実施形態では、試料ウェル(例えば、ナノ開口部(反応チャンバ))中の成分はいずれも、固体支持体に固定されていない。例えば、いくつかの実施形態では、ポリメラーゼ、標的核酸、およびプライマーを含む複合体が溶液中で形成され、この複合体は、固体支持体に固定されていない。
【0065】
適切な条件下では、アニーリングされたプライマー/標的核酸と接触したポリメラーゼ酵素は、1つまたは複数のヌクレオチドをプライマーに追加または組み込むことができ、ヌクレオチドは、5’から3’へと鋳型依存的様式でプライマーに追加されることが可能である。プライマーへのヌクレオチドのそのような組み込み(例えば、ポリメラーゼの作用による)は、一般的に、プライマー伸長反応と呼ばれる場合がある。各ヌクレオチドは、核酸伸長反応中に検出および識別されることが可能であり(例えば、その発光寿命および/または他の特徴に基づいて)、伸長されたプライマーおよびしたがって新たに合成された核酸分子の配列に組み込まれた各ヌクレオチドを決定するために使用されることが可能である検出可能なタグと関連付けられることが可能である。また、標的核酸分子の配列は、新たに合成された核酸分子の配列相補性により決定されることが可能である。いくつかの場合、配列決定用プライマーの標的核酸分子とのアニーリングおよびヌクレオチドの配列決定用プライマーへの組み込みは、同様の反応条件(例えば、同じまたは同様の反応温度)で生じる場合もあり、または異なる反応条件(例えば、異なる反応温度)で生じる場合もある。いくつかの実施形態では、合成法による配列決定は、標的核酸分子の集団(例えば、標的核酸のコピー)を存在させる工程、および/または標的核酸を増幅して、標的核酸の集団を達成する工程を備える。しかしながら、いくつかの実施形態では、合成による配列決定が、評価中の各反応中の単一分子の配列を決定するために使用される(配列決定用の標的鋳型の調製には核酸増幅は必要とされない)。いくつかの実施形態では、複数の単一分子配列決定反応が、本出願の一態様に従って並列で実施される(例えば、単一チップ上で)。例えば、いくつかの実施形態では、複数の単一分子配列決定反応は各々、単一チップ上の個別の反応チャンバ(例えば、ナノ開口部、試料ウェル)で実施される。
【0066】
実施形態では、少なくとも約50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、99.99%、99.999%、もしくは99.9999%の正確性および/または約10塩基対(bp)、50bp、100bp、200bp、300bp、400bp、500bp、1000bp、10,000bp、20,000bp、30,000bp、40,000bp、50,000bp、もしくは100,000bp以上の解読長等の、高い正確性および長い解読長で単一核酸分子の配列決定が可能である。いくつかの実施形態では、単一分子配列決定に使用される標的核酸分子は、試料ウェルの底部または側壁等の固体支持体に固定または付着されている配列決定反応の少なくとも1つの追加成分(例えば、DNAポリメラーゼ等ポリメラーゼ、配列決定用プライマー)を含有する試料ウェル(例えば、ナノ開口部)に追加または固定される一本鎖標的核酸(例えば、デオキシリボ核酸(DNA)、DNA誘導体、リボ核酸(RNA)、RNA誘導体)鋳型である。標的核酸分子またはポリメラーゼは、試料ウェルの底部または側壁等の試料壁に直接的にまたはリンカーを介して付着されていてもよい。また、試料ウェル(例えば、ナノ開口部)は、例えば、好適な緩衝剤、コファクター、酵素(例えば、ポリメラーゼ)、および例えば、フルオロフォア等の発光タグを含むデオキシアデノシン三リン酸(dATP)dNTP、デオキシシチジン三リン酸(dCTP)dNTP、デオキシグアノシン三リン酸(dGTP)dNTP、デオキシウリジン三リン酸(dUTP)dNTP、およびデオキシチミジン三リン酸(dTTP)dNTP等のデオキシリボヌクレオシド三リン酸等の、プライマー伸長反応による核酸合成に必要な任意の他の試薬を含有していてもよい。いくつかの実施形態では、タグから放射された光の検出が、新たに合成された核酸に組み込まれたdNTPの同一性を示すように、各クラスのdNTP(例えば、アデニン含有dNTP(例えば、dATP)、シトシン含有dNTP(例えば、dCTP)、グアニン含有dNTP(例えば、dGTP)、ウラシル含有dNTP(例えば、dUTP)、およびチミン含有dNTP(例えば、dTTP))が、異なる発光タグにコンジュゲートされている。発光タグからの放射光は、本明細書の他所に記載されている検出デバイスおよび検出方法を含む、任意の好適なデバイスおよび/または方法により検出されることが可能であり、その適切な発光タグ(およびしたがって関連dNTP)に帰属させることができる。発光タグは、発光タグの存在が、新たに合成された核酸鎖へのdNTPの組み込みまたはポリメラーゼの活性を阻害しないような任意の位置でdNTPにコンジュゲートされることが可能である。いくつかの実施形態では、発光タグは、dNTPの末端リン酸(例えば、ガンマリン酸)にコンジュゲートされる。
【0067】
いくつかの実施形態では、一本鎖標的核酸鋳型は、配列決定用プライマー、dNTP、ポリメラーゼ、および核酸合成に必要な他の試薬と接触することができる。いくつかの実施形態では、dNTPの組み込みが連続的に生じ得るように、全ての適切なdNTPが同時に一本鎖標的核酸鋳型と接触してもよい(例えば、全てのdNTPが同時に存在する)。他の実施形態では、dNTPは、一本鎖標的核酸鋳型と順次接触してもよく、その場合、一本鎖標的核酸鋳型は、異なるdNTPを一本鎖標的核酸鋳型と接触させる間に洗浄ステップを設けることにより、各適切なdNTPと別々に接触する。一本鎖標的核酸鋳型を各dNTPと別々に接触させ、その後洗浄を行うそのようなサイクルは、識別しようとする一本鎖標的核酸テンプレートの各連続塩基位置にわたって繰り返されることが可能である。
【0068】
いくつかの実施形態では、配列決定用プライマーは、一本鎖標的核酸鋳型にアニーリングし、ポリメラーゼは、一本鎖標的核酸鋳型に基づいて、dNTP(または他のデオキシリボヌクレオシドポリリン酸)を連続してプライマーに組み込む。各組み込まれたdNTPに関連付けられた固有な発光タグは、プライマーへのdNTPの組み込み中にまたは組み込み後に、適切な励起光で励起されることが可能であり、その後、その放射は、本明細書の他所に記載されている検出デバイスおよび方法を含む任意の好適なデバイスおよび/または方法を使用して検出されることが可能である。特定の光の放射(例えば、特定の放射寿命、強度、スペクトル、および/またはそれらの組合せを有する)の検出は、組み込まれた特定のdNTPに帰属させることが可能である。その後、検出された一群の発光タグから得られる配列は、一本鎖標的核酸鋳型の配列を配列相補性により決定するために使用されることが可能である。
【0069】
本開示では、本明細書で提供されているdNTP、デバイス、システム、および方法が参照されているが、リボヌクレオチドおよびデオキシリボヌクレオチド等の種々のタイプのヌクレオチド(例えば、少なくとも4、5、6、7、8、9、または10個のホスフェート基を有するデオキシリボヌクレオシドポリリン酸)と共に使用されることが可能である。そのようなリボヌクレオチドおよびデオキシリボヌクレオチドは、種々のタイプのタグ(またはマーカー)およびリンカーを含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、本開示は、各々の内容が参照により本願明細書に援用される同時係属中の米国特許出願第14/543,865号、同第14/543,867号、同第14/543,888号、同第14/821,656号、同第14/821,686号、同第14/821,688号、同第15/161,067号、同第15/161,088号、同第15/161,125号、同第15/255,245号、同第15/255,303号、同第15/255,624号、同第15/261,697号、同第15/261,724号、同第62/289,019号、同第62/296,546号、同第62/310,398号、同第62/339,790号、同第62/343,997号、同第62/344,123号、および同第62/426,144号に記載の技術において有利なことに利用され得る方法および組成物を提供する。
【0070】
核酸配列決定の例
以下の例は、本明細書に記載されている方法、組成物、およびデバイスのいくつかを例示するためのものである。例の全ての態様は非限定的である。図1には、一分子核酸配列決定法のセットアップが模式的に例示されている。1-110は、核酸ポリメラーゼ1-101、配列決定しようとする標的核酸1-102、およびプライマー1-104を含む単一複合体を含有するように構成されている試料ウェル(例えば、ナノ開口部、反応チャンバ)である。この例では、試料ウェル1-110の底部領域は、標的容積部(例えば、励起領域)1-120として図示されている。
【0071】
本明細書の他所に記載されているように、標的容積部は、励起エネルギーが向けられる容積部(volume)である。いくつかの実施形態では、容積部は、試料ウェル容積部および試料ウェルへの励起エネルギーのカップリングの両方の特性である。標的容積部は、標的容積部に限局される分子または複合体の数を制限するように構成されていてもよい。いくつかの実施形態では、標的容積部は、単一分子または単一複合体を限局するように構成されている。いくつかの実施形態では、標的容積部は、単一ポリメラーゼ複合体を限局するように構成されている。図1では、ポリメラーゼ1-101を含む複合体が、標的容積部1-120に限局されている。複合体は、任意選択で、試料ウェルの表面に付着させることにより固定されていてもよい。試料ウェル表面調製および官能化の例示的なプロセスは、本出願の他所でさらに詳細に考察されている。この例では、複合体は、ポリメラーゼ1-101にリンカーを付着させるのに好適な1つまたは複数の生体分子(例えば、ビオチン)を含むリンカー1-103により固定されている。
【0072】
また、開口部の容積部は、好適な溶媒、緩衝剤、およびポリメラーゼ複合体が核酸鎖を合成するのに必要な他の添加剤を有する反応混合物を含有する。また、反応混合物は、複数のタイプの発光標識ヌクレオチドを含有する。各タイプのヌクレオチドは、*-A、@-T、$-G、#-Cという記号で表されており、A、T、G、およびCは、ヌクレオチド塩基を表し、記号*、@、$、および#は、リンカー「-」を介して各ヌクレオチドに付着している固有の発光標識を表す。図1では、#-Cヌクレオチドが、相補鎖1-102に組み込まれているところである。組み込まれたヌクレオチドは、標的容積部1-120内に存在する。
【0073】
また、図1には、標的容積部の近傍に加えられている励起エネルギーおよび検出器に向かって放射されている発光が概念的に矢印で示されている。矢印は模式的であり、励起エネルギーを加える特定の向きまたは発光の特定の向きを示す意図はない。いくつかの実施形態では、励起エネルギーは、発光源からの光のパルスである。励起エネルギーは、発光源と標的容積部の近傍との間を、導波路またはフィルター等の1つまたは複数のデバイス部品を通って移動してもよい。また、放射エネルギーは、発光分子と検出器との間を、導波路またはフィルター等の1つまたは複数のデバイス部品を通って移動してもよい。いくつかの発光は、検出器に(例えば、試料ウェルの側壁に)向かわず、検出されることができないベクトルで放射する場合がある。
【0074】
図2には、単一の試料ウェル(例えば、ナノ開口部)での経時的な配列決定プロセスが模式的に例示されている。段階AからDに、図1のような、ポリメラーゼ複合体を有する試料ウェルが図示されている。段階Aには、任意のヌクレオチドがプライマーに付加される前の初期状態が図示されている。段階Bには、発光標識ヌクレオチド(#-C)の組み込み事象が図示されている。段階Cには、組み込み事象の間の期間が図示されている。この例では、ヌクレオチドCが、プライマーに付加されており、発光標識ヌクレオチド(#-C)にそれまで付着していた標識およびリンカーは切断されている。段階Dには、発光標識ヌクレオチド(*-A)の第2の組み込み事象が図示されている。段階D後の相補鎖は、プライマー、Cヌクレオチド、およびAヌクレオチドからなる。
【0075】
段階AおよびCの両方には、組み込み事象前または組み込み事象の間の期間が図示されており、この例では約10ミリ秒間継続することが示されている。段階AおよびCでは、ヌクレオチドが組み込み中ではないため、標的容積部に(図2には描かれていない)発光標識ヌクレオチドは存在しないが、バックグラウンド発光および組み込み中ではない発光標識ヌクレオチドからの疑似発光が検出される場合がある。段階BおよびDには、異なるヌクレオチド(それぞれ、#-Cおよび*-A)の組み込み事象が表示されている。また、この例では、これら事象は、約10ミリ秒間継続するように示されている。
【0076】
「生ビン(raw bin)データ」と表記されている行には、各段階中に生成されたデータが図示されている。実験例の全体にわたって、複数の光のパルスが、標的容積部の近傍に加えられている。検出器は、検出器により受信されるあらゆる放射光子を、各パルス毎に記録するように構成されている。放射光子は、検出器により受信されると、複数の時間ビンの1つに分離される。この例では、そのうち3つが存在している。いくつかの実施形態では、検出器は、2~16個の時間ビンを有するように構成されている。「生ビンデータ」は、それぞれ最短ビン、中間ビン、および最長ビンに対応する、1(最短のバー)、2(中間のバー)、または3(最長のバー)の値を記録する。各バーは、放射光子の検出を示す。
【0077】
標的容積部には発光標識ヌクレオチドが存在しないため、段階AまたはCでは、光子は検出されない。段階BおよびDの各々では、複数の光子放射事象(発光事象、または本明細書で使用される場合は「発光」)が、組み込み事象中に検出される。発光標識「#」は、発光標識「*」よりも短い発光寿命を有する。したがって、段階Bデータは、ビン値がより高い段階Dよりも、より低い平均ビン値を記録したように図示されている。
【0078】
「加工データ」と表記されている行には、各パルスに関する複数時点での放射光子の数(カウント)を示すように加工されている生データが図示されている。各バーは、特定の時間ビンの光子カウントに対応するため、加工データを図示する例示的な曲線は、図に記載されている3つの時間ビンを超える数の時間ビンを含む生ビンデータに対応する。この例では、データは、発光寿命を決定するために加工されるだけではなく、データは、発光強度または吸収光子もしくは放射光子の波長等の、他の発光特性について評価されてもよい。例示的な加工データは、標的容積部中の発光標識の発光寿命の指数関数的な崩壊曲線の特徴に近似する。発光標識「#」は、発光標識「*」よりも短い発光寿命を有するため、段階Bの加工データは、より長い経過時間でより少数のカウントを有するが、段階Dの加工データは、より長い経過時間で比較的より多くのカウントを有する。
【0079】
図2の実験例では、相補鎖に付加された最初の2つのヌクレオチドがCAとして識別されることになる。したがって、DNAの場合、プライマーにアニーリングした領域の直後の標的鎖の配列がGTであると識別されることになる。この例では、ヌクレオチドCおよびAは、発光寿命のみに基づいて、複数のC、G、T、およびAの中から判別されることが可能である。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の特定のヌクレオチドを判別するためには、発光強度または吸収光子または放射光子の波長等の他の特性が必要である場合がある。
【0080】
ヌクレオチドの組み込み時に放射されるシグナルは、標的核酸テンプレートの配列を決定するために、メモリに格納され、後の時点で加工される。これは、シグナルを参照シグナルと比較して、組み込まれたヌクレオチドの同一性を時間の関数として決定することを含む。その代わりにまたはそれに加えて、ヌクレオチドの組み込み時の放射されるシグナルは、標的核酸鋳型の配列をリアルタイムに決定するために収集され、リアルタイムに(例えば、ヌクレオチドの組み込み時に)加工されることが可能である。
【0081】
用語「核酸」は、本明細書で使用される場合、一般的に、1つまたは複数の核酸サブユニットを含む分子を指す。核酸としては、アデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)、チミン(T)、およびウラシル(U)、またはそれらの変異体から選択される1つまたは複数のサブユニットを挙げることができる。いくつかの例では、核酸は、デオキシリボ核酸(DNA)、またはリボ核酸(RNA)、またはそれらの誘導体である。核酸は、一本鎖であってもよく、または二本鎖であってもよい。核酸は、環状であってもよい。
【0082】
用語「ヌクレオチド」は、本明細書で使用される場合、一般的に、A、C、G、T、またはUを含んでいてもよい核酸サブユニット、またはその変異体もしくは類似体を指す。ヌクレオチドは、成長中の核酸鎖に組み込まれることが可能なあらゆるサブユニットを含んでいてもよい。そのようなサブユニットは、A、C、G、T、またはUであってもよく、あるいは1つもしくは複数の相補的なA、C、G、TもしくはUに特異的な、またはプリン(例えば、AもしくはG、またはそれらの変異体もしくは類似体)もしくはピリミジン(例えば、C、T、もしくはU、またはそれらの変異体もしくは類似体)に相補的な任意の他のサブユニットであってもよい。サブユニットは、個々の核酸塩基または塩基のグループ(例えば、AA、TA、AT、GC、CG、CT、TC、GT、TG、AC、CA、またはそれらのウラシル相当物質)を見分けることを可能にすることができる。
【0083】
ヌクレオチドは、一般的に、ヌクレオシドおよび少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10個以上のリン酸(PO)基を含む。ヌクレオチドは、核酸塩基、五炭糖(リボースまたはデオキシリボースのいずれか)、および1つまたは複数のホスフェート基を含んでいてもよい。リボヌクレオチドは、糖がリボースであるヌクレオチドである。デオキシリボヌクレオチドは、糖がデオキシリボースであるヌクレオチドである。ヌクレオチドは、ヌクレオシド一リン酸またはヌクレオシドポリリン酸であってもよい。ヌクレオチドは、例えば、発光タグまたはマーカー(例えば、フルオロフォア)等の検出可能なタグを含むデオキシアデノシン三リン酸(dATP)dNTP、デオキシシチジン三リン酸(dCTP)dNTP、デオキシグアノシン三リン酸(dGTP)dNTP、デオキシウリジン三リン酸(dUTP)dNTP、およびデオキシチミジン三リン酸(dTTP)dNTPから選択されることが可能なデオキシリボヌクレオシド三リン酸等の、デオキシリボヌクレオシドポリリン酸であってもよい。
【0084】
ヌクレオシドポリリン酸は、「n」個のホスフェート基を有していてもよく、「n」は、2、3、4、5、6、7、8、9、または10以上の数である。ヌクレオシドポリリン酸の例としては、ヌクレオシド二リン酸およびヌクレオシド三リン酸が挙げられる。ヌクレオチドは、末端リン酸標識ヌクレオシドポリリン酸等の、末端リン酸標識ヌクレオシドであってもよい。そのような標識は、発光(例えば、蛍光または化学発光)標識、蛍光発生標識、有色標識、発色性標識、質量タグ、静電気標識、または電気化学標識であってもよい。標識(またはマーカー)は、リンカーを介して末端リン酸とカップリングされていてもよい。リンカーは、例えば、少なくとも1つまたは複数のヒドロキシル基、スルフヒドリル基、アミノ基、またはハロアルキル基を含んでいてもよく、これらは、例えば、天然または修飾ヌクレオチドの末端リン酸でのリン酸エステル連結、チオエステル連結、ホスホルアミデート連結、またはアルキルホスホナート連結の形成に好適であってもよい。リンカーは、重合酵素等により、末端リン酸から標識を分離するように切断可能であってもよい。ヌクレオチドおよびリンカーの例は、米国特許第7,041,812号明細書に提供されており、この文献は、その全体が参照により本願明細書に援用される。
【0085】
ヌクレオチド(例えば、ヌクレオチドポリリン酸)は、メチル化核酸塩基を含んでいてもよい。例えば、メチル化ヌクレオチドは、核酸塩基に付着している(例えば、核酸塩基の環に直接付着している、核酸塩基の環の置換基に付着している)1つまたは複数のメチル基を含むヌクレオチドであってもよい。例示的なメチル化核酸塩基としては、1-メチルチミン、1-メチルウラシル、3-メチルウラシル、3-メチルシトシン、5-メチルシトシン、1-メチルアデニン、2-メチルアデニン、7-メチルアデニン、N6-メチルアデニン、N6,N6-ジメチルアデニン、1-メチルグアニン、7-メチルグアニン、N2-メチルグアニン、およびN2,N2-ジメチルグアニンが挙げられる。
【0086】
用語「プライマー」は、本明細書で使用される場合、一般的に、A、C、G、T、および/またはU、またはそれらに変異体もしくは類似体を含む配列を含んでいてもよい核酸分子(例えば、オリゴヌクレオチド)を指す。プライマーは、DNA、RNA、PNA、またはそれらの変異体もしくは類似体を含む合成オリゴヌクレオチドであってもよい。プライマーは、そのヌクレオチド配列が標的鎖に相補的であるように設計されていてもよく、またはプライマーは、ランダムヌクレオチド配列を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、プライマーは、尾部(例えば、ポリA尾部、インデックスアダプター、分子バーコード等)を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、プライマーは、5~15個の塩基、10~20個の塩基、15~25個の塩基、20~30個の塩基、25~35個の塩基、30~40個の塩基、35~45個の塩基、40~50個の塩基、45~55個の塩基、50~60個の塩基、55~65個の塩基、60~70個の塩基、65~75個の塩基、70~80個の塩基、75~85個の塩基、80~90個の塩基、85~95個の塩基、90~100個の塩基、95~105個の塩基、100~150個の塩基、125~175個の塩基、150~200個の塩基、または200個を超える塩基を含んでいてもよい。
【0087】
発光特性
本明細書に記載されているように、発光分子は、1つまたは複数の光子を吸収し、その後、1つまたは複数の経過時間後に1つまたは複数の光子を放射することができる分子である。分子の発光は、これらに限定されないが、発光寿命、吸収スペクトル、放射スペクトル、発光量子収量、および発光強度を含む、いくつかのパラメータにより記述される。「吸収」および「励起」という用語は、本出願の全体にわたって同義的に使用される。典型的な発光分子は、複数の波長の光を吸収することができるか、または複数の波長の光で励起を起こすことができる。ある波長でのまたはあるスペクトル範囲内での励起は、発光放射事象により緩和し得るが、ある他の波長でのまたはスペクトル範囲での励起は、発光放射事象により緩和しない場合がある。いくつかの実施形態では、発光分子は、単一の波長でまたは単一のスペクトル範囲内でのみ、適切に励起されて発光する。いくつかの実施形態では、発光分子は、2つ以上の波長でまたは2つ以上のスペクトル範囲内で適切に励起されて発光する。いくつかの実施形態では、分子は、励起光子の波長または吸収スペクトルを測定することにより識別される。
【0088】
発光放射事象からの放射光子は、考え得る波長のスペクトル範囲内の波長で放射することになる。典型的には、放射光子は、励起光子の波長と比較して、より長い波長を有する(例えば、より少ないエネルギーを有するか、または赤色側にシフトする)。ある実施形態では、分子は、放射光子の波長を測定することにより識別される。ある実施形態では、分子は、複数の放射光子の波長を測定することにより識別される。ある実施形態では、分子は、発光スペクトルを測定することにより識別される。
【0089】
発光寿命は、励起事象と放射事象との間の経過時間を指す。いくつかの実施形態では、発光寿命は、指数関数的崩壊の数式の定数として表現される。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のパルス事象により励起エネルギーが加えられ、経過時間は、そのパルスとその後の放射事象との間の時間である。
【0090】
分子の「発光寿命の決定」は、任意の好適な方法で実施されることが可能である(例えば、好適な技法を使用して寿命を測定することにより、または放射の時間依存的特徴を決定することにより)。いくつかの実施形態では、分子の発光寿命の決定は、1つまたは複数の分子(例えば、配列決定反応では、異なる発光標識ヌクレオチド)についての寿命を決定することを含む。いくつかの実施形態では、分子の発光寿命の決定は、基準物についての寿命を決定することを含む。いくつかの実施形態では、分子の発光寿命の決定は、寿命(例えば、蛍光寿命)を測定することを含む。いくつかの実施形態では、分子の発光寿命の決定は、寿命を指し示す1つまたは複数の時間的特徴を決定することを含む。いくつかの実施形態では、分子の発光寿命は、励起パルスについての、1つまたは複数の時間ゲート窓にわたって生じる複数の放射事象の分布に基づいて決定されることが可能である(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、30、40、50、60、70、80、90、または100回以上の放射事象)。例えば、単一分子の発光寿命は、励起パルスに関して測定された光子到達時間の分布に基づき、異なる発光寿命を有する複数の分子から判別されることが可能である。
【0091】
単一分子の発光寿命は、単一分子が励起状態に達した後で放射される光子のタイミングを指し示し、単一分子は、光子のタイミングを指し示す情報により判別されることが可能であることが理解されるべきである。いくつかの実施形態は、分子を、その分子により放射される光子と関連付けられる時間を測定することにより、その分子の発光寿命に基づいて複数の分子から判別することを含んでいてもよい。時間の分布は、その分布から決定されることが可能な発光寿命の指標を提供することができる。いくつかの実施形態では、単一分子は、時間の分布を既知分子に対応する基準分布と比較すること等により、時間の分布に基づいて複数の分子から判別可能である。いくつかの実施形態では、発光寿命の値は、時間の分布から決定される。
【0092】
発光量子収量は、放射事象に結び付く、所与の波長でのまたは所与のスペクトル範囲内の励起事象の割合を指し、典型的には、1未満である。いくつかの実施形態では、本明細書に記述されている分子の発光量子収量は、0~約0.001、約0.001~約0.01、約0.01~約0.1、約0.1~約0.5、約0.5~0.9、または約0.9~1である。いくつかの実施形態では、分子は、発光量子収量を決定または推定することにより識別される。
【0093】
本明細書で使用される場合、単一分子の発光強度は、パルス励起エネルギーを加えることにより励起されている分子により放射される単位時間当たりの放射光子の数を指す。いくつかの実施形態では、発光強度は、パルス励起エネルギーを加えることにより励起されている分子により放射され、特定のセンサまたは特定の組のセンサにより検出される単位時間当たりの放射光子の検出数を指す。
【0094】
発光寿命、発光量子収量、および発光強度は、異なる条件下での所与の分子に応じて様々であり得る。いくつかの実施形態では、単一分子で観察される発光寿命、発光量子収量、または発光強度は、分子の集合体の場合とは異なるだろう。いくつかの実施形態では、試料ウェル(例えば、ナノ開口部)に限局されている分子で観察される発光寿命、発光量子収量、または発光強度は、試料ウェルに限局されていない分子の場合とは異なるだろう。いくつかの実施形態では、別の分子に付着している発光標識または発光分子は、別の分子に付着していない発光標識または発光分子とは異なる発光寿命、発光量子収量、または発光強度を有するだろう。いくつかの実施形態では、巨大分子複合体(例えば、タンパク質複合体(例えば、核酸ポリメラーゼ))と相互作用する分子は、巨大分子複合体と相互作用しない分子とは異なる発光寿命、発光量子収量、または発光強度を有するだろう。
【0095】
ある実施形態では、本出願に記載されている発光分子は、1つの光子を吸収し、ある経過時間後に1つの光子を放射する。いくつかの実施形態では、分子の発光寿命は、経過時間を測定することにより決定または推定されることが可能である。いくつかの実施形態では、分子の発光寿命は、複数のパルス事象および放射事象の複数の経過時間を測定することにより決定または推定されることが可能である。いくつかの実施形態では、分子の発光寿命は、経過時間を測定することにより、複数のタイプの分子の発光寿命と区別されることが可能である。いくつかの実施形態では、分子の発光寿命は、複数のパルス事象および放射事象の複数の経過時間を測定することにより、複数のタイプの分子の発光寿命と区別されることが可能である。ある実施形態では、分子は、分子の発光寿命を決定または推定することにより、複数のタイプの分子から識別または区別される。ある実施形態では、分子は、その分子の発光寿命を複数のタイプの分子の複数の発光寿命と区別することにより、複数のタイプの分子から識別または区別される。
【0096】
ある実施形態では、発光放射事象は、蛍光である。ある実施形態では、発光放射事象は、リン光である。本明細書で使用される場合、用語「発光」は、蛍光およびリン光の両方を含む全ての発光事象を包含する。
【0097】
1つの態様では、本出願は、単一発光分子の発光寿命を決定するための方法であって、標的容積部中に発光分子を準備する工程、標的容積部の近傍に励起エネルギーの複数のパルスを加える工程、および発光分子からの複数の発光を検出する工程を備える方法を提供する。いくつかの実施形態では、上記方法は、各対のパルスおよび発光間の複数の経過時間の分布を評価する工程をさらに備える。いくつかの実施形態では、上記方法は、標的容積部中に単一発光分子を固定する工程をさらに備える。
【0098】
別の態様では、本出願は、複数の分子の発光寿命を決定するための方法であって、標的容積部中に複数の発光分子を準備する工程、標的容積部の近傍に励起エネルギーの複数のパルスを加える工程、および発光分子からの複数の発光を検出する工程を備える方法を提供する。いくつかの実施形態では、上記方法は、各対のパルスおよび発光間の複数の経過時間の分布を評価する工程をさらに備える。いくつかの実施形態では、上記方法は、標的容積部中に複数の発光分子を固定する工程をさらに備える。いくつかの実施形態では、複数は、2個~約10個の分子、約10個~約100個の分子、または約100個~1000個の分子で構成される。いくつかの実施形態では、複数は、約1000~約10個の分子、約10~約10個の分子、約10~約1012個の分子、約1012~約1015個の分子、または約1015~約1018個の分子で構成される。いくつかの実施形態では、複数の分子は、全て同じタイプの分子である。 図3には、異なる発光寿命(最長から最短、上から下)を有する4つの発光分子の例示的な減衰プロファイル3-1が表示されている。多数の分子を含む試料からの発光の強度は、振幅と呼ばれる場合がある。振幅は、初期励起後、発光寿命に従って指数関数的に経時減少する。あるいは、振幅は、例えば単一分子に対する励起エネルギーの複数のパルス後のある経過時間後に検出される放射の数またはカウントを指す場合がある。異なる発光寿命(最短から最長、上から下)を有する4つの発光分子の場合、正規化された累積分布関数3-2は、3-1に対応する。CDFは、発光振幅が、初期励起後に発光寿命に従って経時的にゼロに到達する正規化確率を表すことができる(例えば、発光した全ての励起分子の累積確率)。あるいは、CDFは、励起エネルギーの単一パルス後または複数のパルスの各々後のある経過時間で発光を放射する単一分子の正規化確率を表すことができる。
【0099】
1つの態様では、本出願は、単一発光分子の発光強度を決定するための方法であって、標的容積部中に発光分子を準備する工程、標的容積部の近傍に励起エネルギーの複数のパルスを加える工程、および発光分子からの複数の発光を検出する工程を備える方法を提供する。いくつかの実施形態では、上記方法は、単位時間当たりの複数の検出発光の数を決定する工程をさらに備える。いくつかの実施形態では、上記方法は、標的容積部中に単一発光分子を固定する工程をさらに備える。
【0100】
別の態様では、本出願は、複数の分子の発光強度を決定するための方法であって、標的容積部中に複数の発光分子を準備する工程、標的容積部の近傍に励起エネルギーの複数のパルスを加える工程、および発光分子からの複数の発光を検出する工程を備える方法を提供する。いくつかの実施形態では、上記方法は、単位時間当たりの複数の検出発光の数を決定する工程をさらに備える。いくつかの実施形態では、上記方法は、標的容積部中に複数の発光分子を固定する工程をさらに備える。いくつかの実施形態では、複数は、2個~約10個の分子、約10個~約100個の分子、または約100個~1000個の分子で構成される。いくつかの実施形態では、複数は、約1000~約10個の分子、約10~約10個の分子、約10~約1012個の分子、約1012~約1015個の分子、または約1015~約1018個の分子で構成される。いくつかの実施形態では、複数の分子は、全て同じタイプの分子である。 励起エネルギー
本明細書に記載されている方法の1つの態様では、1つまたは複数の励起エネルギーが、(例えば、配列決定反応中に)識別または判別しようとする分子の発光標識を励起させるために使用される。いくつかの実施形態では、励起エネルギーは、可視スペクトル内である。いくつかの実施形態では、励起エネルギーは、紫外スペクトル内である。いくつかの実施形態では、励起エネルギーは、赤外スペクトル内である。いくつかの実施形態では、1つの励起エネルギーが、発光標識分子を励起させるために使用される。いくつかの実施形態では、2つの励起エネルギーが、発光標識分子を励起させるために使用される。いくつかの実施形態では、3つ以上の励起エネルギーが、発光標識分子を励起させるために使用される。いくつかの実施形態では、各発光標識分子は、加えられる励起エネルギーの1つのみにより励起される。いくつかの実施形態では、発光標識分子は、加えられる励起エネルギーの2つ以上により励起される。ある実施形態では、励起エネルギーは、単色であってもよく、またはスペクトル範囲に限局されていてもよい。いくつかの実施形態では、スペクトル範囲は、約0.1nm~約1nm、約1nm~約2nm、または約2nm~約5nmの範囲を有する。いくつかの実施形態では、スペクトル範囲は、約5nm~約10nm、約10nm~約50nm、または約50nm~約100nmの範囲を有する。
【0101】
ある実施形態では、励起エネルギーは、光のパルスとして加えられる。ある実施形態では、励起エネルギーは、光の複数のパルスとして加えられる。ある実施形態では、発光標識分子を励起させるために、2つ以上の励起エネルギーが使用される。いくつかの実施形態では、各励起エネルギーは、同時に加えられる(例えば、各パルスで)。いくつかの実施形態では、各励起エネルギーは異なる時点で加えられる(例えば、各エネルギーの個別のパルスで)。異なる励起エネルギーは、標的分子からの発光の検出を可能にするのに十分な任意のパターンで加えられることが可能である。いくつかの実施形態では、各パルスで2つの励起エネルギーが加えられる。いくつかの実施形態では、第1の励起エネルギーおよび第2の励起エネルギーが、交互のパルスで加えられる。いくつかの実施形態では、第1の励起エネルギーは、一連の順次パルスで加えられ、第2の励起エネルギーは、その後の一連の順次パルスで、またはそのような一連の交互パターンで加えられる。
【0102】
ある実施形態では、光のパルスの周波数は、発光標識分子の発光特性に基づいて選択される。ある実施形態では、光のパルスの周波数は、複数の発光標識ヌクレオチドの発光特性に基づいて選択される。ある実施形態では、光のパルスの周波数は、複数の発光標識ヌクレオチドの発光寿命に基づいて選択される。いくつかの実施形態では、周波数は、パルス間の間隔が、1つまたは複数の発光標識ヌクレオチドの発光寿命より長くなるように選択される。いくつかの実施形態では、周波数は、複数の発光標識ヌクレオチドの最長発光寿命に基づいて選択される。例えば、4つの発光標識ヌクレオチドの発光寿命が、0.25、0.5、1.0、および1.5nsである場合、光のパルスの周波数は、パルス間の間隔が1.5nsより大きくなるように選択されてもよい。いくつかの実施形態では、間隔は、励起されている1つまたは複数の発光標識分子の発光寿命よりも、約2倍~約10倍、約10倍~約100倍、または約100倍から約1000倍だけ長い。いくつかの実施形態では、間隔は、励起されている1つまたは複数の発光標識分子の発光寿命よりも約10倍だけ長い。いくつかの実施形態では、間隔は、約0.01ns~約0.1ns、約1ns~約5ns、約5nsから約15ns、約15ns~約25ns、または約25ns~約50nsである。いくつかの実施形態では、間隔は、パルスにより励起された分子が発光減衰することになる確率または励起状態が別の機序で緩和することになる確率が、50%、75%、90%、95%、または99%になるように選択される。
【0103】
ある実施形態では、複数の励起エネルギーが存在する場合、各励起エネルギーのパルスの周波数は同じである。ある実施形態では、複数の励起エネルギーが存在する場合、各励起エネルギーのパルスの周波数は異なっている。例えば、0.2nsおよび0.5nsの寿命を有する発光分子を励起させるために赤色レーザーが使用され、5nsおよび7nsの寿命を有する発光分子を励起させるために緑色レーザーが使用される場合、各赤色レーザーパルス後の間隔は、各緑色レーザーパルス後の間隔(例えば、20ns)よりも短くともよい(例えば、5ns)。
【0104】
ある実施形態では、パルス励起エネルギーの周波数は、モニター中の化学プロセスに基づいて選択される。配列決定反応の場合、周波数は、いくつかのパルスが加えられて、検出しようとする十分な数の放射光子の検出が可能になるように選択されることが可能である。光子検出の文脈における十分な数とは、発光標識ヌクレオチドを、複数の発光標識ヌクレオチドから識別または判別するのに必要な光子の数を指す。例えば、DNAポリメラーゼは、追加のヌクレオチドを、平均で20ミリ秒毎に組み込むことができる。発光標識ヌクレオチドが複合体と相互作用する時間は、約10ミリ秒であってもよく、発光マーカーが切断されてから、次の発光標識ヌクレオチドが相互作用し始めるまでの時間は、約10ミリ秒であってもよい。その後、パルス励起エネルギーの周波数は、十分な数の放射光子が、発光標識ヌクレオチドの組み込み中の10ミリ秒間で検出されるように、10ミリ秒間にわたって十分なパルスを加えるように選択されることが可能である。例えば、100MHzの周波数では、10ミリ秒間(組み込み事象のおおよその長さ)のパルスは100万回となる。これらパルスの0.1%が、光子検出に結び付く場合、組み込み中の発光標識ヌクレオチドの同一性を決定するために分析されることが可能な発光データポイントは1,000個になるだろう。上記の値はいずれも、非限定的である。いくつかの実施形態では、組み込み事象は、1ms~20ms、20ms~100ms、または100ms~500msの時間を要する場合がある。複数の励起エネルギーが時間的に隔てられているパルスで加えられるいくつかの実施形態では、発光標識ヌクレオチドは、パルスの部分によってのみ励起されてもよい。いくつかの実施形態では、複数の励起エネルギーのパルスの周波数およびパターンは、パルスの数が、複数の発光標識ヌクレオチドのいずれか1つを励起させて、検出しようとする十分な数の放射光子の検出を可能にするのに十分であるように選択される。
【0105】
いくつかの実施形態では、パルスの周波数は、約1MHz~約10MHzである。いくつかの実施形態では、パルスの周波数は、約10MHz~約100MHzである。いくつかの実施形態では、パルスの周波数は、約100MHz~約1GHzである。いくつかの実施形態では、パルスの周波数は、約50MHz~約200MHzである。いくつかの実施形態では、パルスの周波数は、約100MHzである。いくつかの実施形態では、周波数は、確率論的である。
【0106】
ある実施形態では、励起エネルギーは、約500nm~約700nmである。いくつかの実施形態では、励起エネルギーは、約500nm~約600nm、または約600nm~約700nmである。いくつかの実施形態では、励起エネルギーは、約500nm~約550nm、約550nm~約600nm、約600nm~約650nm、または約650nm~約700nmである。
【0107】
ある実施形態では、本明細書に記載の方法は、2つの励起エネルギーを加える工程を備える。いくつかの実施形態では、2つの励起エネルギーは、約5nm~約20nm、約20nm~約40nm、約40nm~約60nm、約60nm~約80nm、約80nm~約100nm、約100nm~約150nm、約150nm~約200nm、約200nm~約400nm、または少なくとも約400nmだけ隔てられている。いくつかの実施形態では、2つの励起エネルギーは、約20nm~約80nmまたは約80nm~約160nmだけ隔てられている。
【0108】
励起エネルギーが、特定の範囲にあると参照されている場合、励起エネルギーは、波長が範囲の間にあるかまたは範囲の終点であるような単一波長を含んでいてもよく、または励起エネルギーは、最大強度が範囲の間にあるかまたは範囲の終点であるような最大強度を有する波長のスペクトルを含んでいてもよい。
【0109】
ある実施形態では、第1の励起エネルギーは、450nm~500nmの範囲であり、第2の励起エネルギーは、500nm~550nm、550nm~600nm、600nm~650nm、または650nm~700nmの範囲である。ある実施形態では、第1の励起エネルギーは、500nm~550nmの範囲であり、第2の励起エネルギーは、450nm~500nm、550nm~600nm、600nm~650nm、または650nm~700nmの範囲である。ある実施形態では、第1の励起エネルギーは、550nm~600nmの範囲であり、第2の励起エネルギーは、450nm~500nm、500nm~550nm、600nm~650nm、または650nm~700nmの範囲である。ある実施形態では、第1の励起エネルギーは、600nm~650nmの範囲であり、第2の励起エネルギーは、450nm~500nm、500nm~550nm、550nm~600nm、または650nm~700nmの範囲である。ある実施形態では、第1の励起エネルギーは、650nm~700nmの範囲であり、第2の励起エネルギーは、450nm~500nm、500nm~550nm、550nm~600nm、または600nm~650nmの範囲である。
【0110】
ある実施形態では、第1の励起エネルギーは、450nm~500nmの範囲であり、第2の励起エネルギーは、500nm~550nmの範囲である。ある実施形態では、第1の励起エネルギーは、450nm~500nmの範囲であり、第2の励起エネルギーは、550nm~600nmの範囲である。ある実施形態では、第1の励起エネルギーは、450nm~500nmの範囲であり、第2の励起エネルギーは、600nm~670nmの範囲である。ある実施形態では、第1の励起エネルギーは、500nm~550nmの範囲であり、第2の励起エネルギーは、550nm~600nmの範囲である。ある実施形態では、第1の励起エネルギーは、500nm~550nmの範囲であり、第2の励起エネルギーは、600nm~670nmの範囲である。ある実施形態では、第1の励起エネルギーは、550nm~600nmの範囲であり、第2の励起エネルギーは、600nm~670nmの範囲である。ある実施形態では、第1の励起エネルギーは、470nm~510nmの範囲であり、第2の励起エネルギーは、510nm~550nmの範囲である。ある実施形態では、第1の励起エネルギーは、470nm~510nmの範囲であり、第2の励起エネルギーは、550nm~580nmの範囲である。ある実施形態では、第1の励起エネルギーは、470nm~510nmの範囲であり、第2の励起エネルギーは、580nm~620nmの範囲である。ある実施形態では、第1の励起エネルギーは、470nm~510nmの範囲であり、第2の励起エネルギーは、620nm~670nmの範囲である。ある実施形態では、第1の励起エネルギーは、510nm~550nmの範囲であり、第2の励起エネルギーは、550nm~580nmの範囲である。ある実施形態では、第1の励起エネルギーは、510nm~550nmの範囲であり、第2の励起エネルギーは、580nm~620nmの範囲である。ある実施形態では、第1の励起エネルギーは、510nm~550nmの範囲であり、第2の励起エネルギーは、620nm~670nmの範囲である。ある実施形態では、第1の励起エネルギーは、550nm~580nmの範囲であり、第2の励起エネルギーは、580nm~620nmの範囲である。ある実施形態では、第1の励起エネルギーは、550nm~580nmの範囲であり、第2の励起エネルギーは、620nm~670nmの範囲である。ある実施形態では、第1の励起エネルギーは、580nm~620nmの範囲であり、第2の励起エネルギーは、620nm~670nmの範囲である。
【0111】
標的容積部へと励起エネルギーパルスを加えるための励起エネルギー源およびデバイスのある実施形態は、本明細書の他所に記載されている。
発光標識ヌクレオチド
1つの態様では、本明細書に記載の方法および組成物は、1つまたは複数の発光標識ヌクレオチド(例えば、1つまたは複数の保護要素を含む核酸リンカーを介して1つまたは複数の標識に接続されている1つまたは複数のヌクレオシドポリリン酸)を含む。ある実施形態では、1つまたは複数のヌクレオチドは、デオキシリボースヌクレオシドを含む。ある実施形態では、ヌクレオチドは全て、デオキシリボースヌクレオシドを含む。ある実施形態では、1つまたは複数のヌクレオチドは、リボースヌクレオシドを含む。ある実施形態では、ヌクレオチドは全て、リボースヌクレオシドを含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のヌクレオチドは、修飾リボース糖またはリボース類似体(例えば、ロックド核酸)を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のヌクレオチドは、天然塩基(例えば、シトシン、グアニン、アデニン、チミン、ウラシル)を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のヌクレオチドは、シトシン、グアニン、アデニン、チミン、またはウラシルの誘導体または類似体を含む。
【0112】
ある実施形態では、方法は、ポリメラーゼ複合体を、複数の発光標識ヌクレオチドに曝露する工程を備える。ある実施形態では、組成物またはデバイスは、複数の発光標識ヌクレオチドを含む反応混合物を含む。いくつかの実施形態では、複数のヌクレオチドは、4つのタイプのヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、4つのタイプのヌクレオチドは各々、シトシン、グアニン、アデニン、およびチミンの1つを含む。いくつかの実施形態では、4つのタイプのヌクレオチドは各々、シトシン、グアニン、アデニン、およびウラシルの1つを含む。
【0113】
ある実施形態では、反応混合物中の各タイプの発光標識ヌクレオチドの濃度は、約50nM~約200nM、約200nM~約500nM、約500nM~約1μM、約1μM~約50μM、または約50μM~250μMである。いくつかの実施形態では、反応混合物中の各タイプの発光標識ヌクレオチドの濃度は、約250nM~約2μMである。いくつかの実施形態では、反応混合物中の各タイプの発光標識ヌクレオチドの濃度は、約1μMである。
【0114】
ある実施形態では、反応混合物は、配列決定反応に使用される追加の試薬を含有する。いくつかの実施形態では、反応混合物は、緩衝剤を含む。いくつかの実施形態では、緩衝剤は、3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)を含む。いくつかの実施形態では、緩衝剤は、約1mM~約100mMの濃度で存在する。いくつかの実施形態では、MOPSの濃度は、約50mMである。いくつかの実施形態では、反応混合物は、1つまたは複数の塩を含む。いくつかの実施形態では、塩は、酢酸カリウムを含む。いくつかの実施形態では、酢酸カリウムの濃度は、約140mMである。いくつかの実施形態では、塩は、約1mM~約200mMの濃度で存在する。いくつかの実施形態では、反応混合物は、マグネシウム塩(例えば、酢酸マグネシウム)を含む。いくつかの実施形態では、酢酸マグネシウムの濃度は、約20mMである。いくつかの実施形態では、マグネシウム塩は、約1mM~約50mMの濃度で存在する。いくつかの実施形態では、反応混合物は、還元剤を含む。いくつかの実施形態では、還元剤は、ジチオトレイトール(DTT)である。いくつかの実施形態では、還元剤は、約1mM~約50mMの濃度で存在する。いくつかの実施形態では、DTTの濃度は、約5mMである。いくつかの実施形態では、反応混合物は、1つまたは複数の光安定剤を含む。いくつかの実施形態では、反応混合物は、抗酸化剤、脱酸素剤、または三重項状態クエンチャーを含む。いくつかの実施形態では、光安定剤は、プロトカテク酸(PCA)を含む。いくつかの実施形態では、光安定剤は、4-ニトロベンジルアルコール(NBA)を含む。いくつかの実施形態では、光安定剤は、約0.1mM~約20mMの濃度で存在する。いくつかの実施形態では、PCAの濃度は、約3mMである。いくつかの実施形態では、NBAの濃度は、約3mMである。また、光安定剤(例えば、PCA)を有する混合物は、光安定剤を再生するための酵素(例えば、プロトカテク酸ジオキシゲナーゼ(PCD))を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、PCDの濃度は、約0.3mMである。
【0115】
本出願には、ヌクレオチドを複数のヌクレオチドと区別するための様々な方法が企図されている。ある実施形態では、発光標識ヌクレオチドの各々は、異なる発光寿命を有する。ある実施形態では、発光標識ヌクレオチドの2つ以上は、同じ発光寿命または実質的に同じ発光寿命(例えば、上記方法またはデバイスにより判別されることができない寿命)を有する。
【0116】
ある実施形態では、発光標識ヌクレオチドの各々は、異なるスペクトル範囲の励起エネルギーを吸収する。ある実施形態では、発光標識ヌクレオチドの2つは、同じスペクトル範囲の励起エネルギーを吸収する。ある実施形態では、発光標識ヌクレオチドの3つは、同じスペクトル範囲の励起エネルギーを吸収する。ある実施形態では、発光標識ヌクレオチドの4つ以上は、同じスペクトル範囲の励起エネルギーを吸収する。ある実施形態では、発光標識ヌクレオチドの2つは、異なるスペクトル範囲の励起エネルギーを吸収する。ある実施形態では、発光標識ヌクレオチドの3つは、異なるスペクトル範囲の励起エネルギーを吸収する。ある実施形態では、発光標識ヌクレオチドの4つ以上は、異なるスペクトル範囲の励起エネルギーを吸収する。
【0117】
ある実施形態では、発光標識ヌクレオチドの各々は、異なるスペクトル範囲の光子を放射する。ある実施形態では、発光標識ヌクレオチドの2つは、同じスペクトル範囲の光子を放射する。ある実施形態では、発光標識ヌクレオチドの3つは、同じスペクトル範囲の光子を放射する。ある実施形態では、発光標識ヌクレオチドの4つ以上は、同じスペクトル範囲の光子を放射する。ある実施形態では、発光標識ヌクレオチドの2つは、異なるスペクトル範囲の光子を放射する。ある実施形態では、発光標識ヌクレオチドの3つは、異なるスペクトル範囲の光子を放射する。ある実施形態では、発光標識ヌクレオチドの4つ以上は、異なるスペクトル範囲の光子を放射する。
【0118】
ある実施形態では、4つの発光標識ヌクレオチドの各々は、異なる発光寿命を有する。ある実施形態では、2つ以上の発光標識ヌクレオチドは、異なる発光寿命を有し、第1のスペクトル範囲の光子を吸収および/または放射し、1つまたは複数の発光標識ヌクレオチドは、第2のスペクトル範囲の光子を吸収および/または放射する。いくつかの実施形態では、3つの発光標識ヌクレオチドの各々は、異なる発光寿命を有し、第1のスペクトル範囲の発光を放射し、第4の発光標識ヌクレオチドは、第2のスペクトル範囲の光子を吸収および/または放射する。いくつかの実施形態では、2つの発光標識ヌクレオチドの各々は、異なる発光寿命を有し、第1のスペクトル範囲の発光を放射し、第3および第4の発光標識ヌクレオチドは各々、異なる発光寿命を有し、第2のスペクトル範囲の発光を放射する。
【0119】
ある実施形態では、4つの発光標識ヌクレオチドの各々は、異なる発光強度を有する。ある実施形態では、2つ以上の発光標識ヌクレオチドは、異なる発光強度を有し、第1のスペクトル範囲の発光を放射し、1つまたは複数の発光標識ヌクレオチドは、第2のスペクトル範囲の光子を吸収および/または放射する。いくつかの実施形態では、3つの発光標識ヌクレオチドの各々は、異なる発光強度を有し、第1のスペクトル範囲の発光を放射し、第4の発光標識ヌクレオチドは、第2のスペクトル範囲の光子を吸収および/または放射する。いくつかの実施形態では、2つの発光標識ヌクレオチドの各々は、異なる発光強度を有し、第1のスペクトル範囲の発光を放射し、第3および第4の発光標識ヌクレオチドは各々、異なる発光強度を有し、第2のスペクトル範囲の発光を放射する。
【0120】
ある実施形態では、4つの発光標識ヌクレオチドの各々は、異なる発光寿命または発光強度を有する。ある実施形態では、2つ以上の発光標識ヌクレオチドは、異なる発光寿命または発光強度を有し、第1のスペクトル範囲の発光を放射し、1つまたは複数の発光標識ヌクレオチドは、第2のスペクトル範囲の光子を吸収および/または放射する。いくつかの実施形態では、3つの発光標識ヌクレオチドの各々は、異なる発光寿命または発光強度を有し、第1のスペクトル範囲の発光を放射し、第4の発光標識ヌクレオチドは、第2のスペクトル範囲の光子を吸収および/または放射する。いくつかの実施形態では、2つの発光標識ヌクレオチドの各々は、異なる発光寿命または発光強度を有し、第1のスペクトル範囲の発光を放射し、第3および第4の発光標識ヌクレオチドは各々、異なる発光寿命または発光強度を有し、第2のスペクトル範囲の発光を放射する。
【0121】
ある実施形態では、2つ以上の発光標識ヌクレオチドは、異なる発光寿命を有し、第1のスペクトル範囲の励起エネルギーを吸収し、1つまたは複数の発光標識ヌクレオチドは、第2のスペクトル範囲の励起エネルギーを吸収する。いくつか実施形態では、3つの発光標識ヌクレオチドの各々は、異なる発光寿命を有し、第1のスペクトル範囲の励起エネルギーを吸収し、第4の発光標識ヌクレオチドは、第2のスペクトル範囲の励起エネルギーを吸収する。いくつか実施形態では、2つの発光標識ヌクレオチドの各々は、異なる発光寿命を有し、第1のスペクトル範囲の励起エネルギーを吸収し、第3および第4の発光標識ヌクレオチドは各々、異なる発光寿命を有し、第2のスペクトル範囲の励起エネルギーを吸収する。
【0122】
ある実施形態では、2つ以上の発光標識ヌクレオチドは、異なる発光寿命または発光強度を有し、第1のスペクトル範囲の励起エネルギーを吸収し、1つまたは複数の発光標識ヌクレオチドは、第2のスペクトル範囲の励起エネルギーを吸収する。いくつか実施形態では、3つの発光標識ヌクレオチドの各々は、異なる発光寿命または発光強度を有し、第1のスペクトル範囲の励起エネルギーを吸収し、第4の発光標識ヌクレオチドは、第2のスペクトル範囲の励起エネルギーを吸収する。いくつか実施形態では、2つの発光標識ヌクレオチドの各々は、異なる発光寿命または発光強度を有し、第1のスペクトル範囲の励起エネルギーを吸収し、第3および第4の発光標識ヌクレオチドは各々、異なる発光寿命または発光強度を有し、第2のスペクトル範囲の励起エネルギーを吸収する。
【0123】
配列決定中、ヌクレオチドを識別するための方法は、配列の種々の塩基対間で様々であってもよい。ある実施形態では、2つのタイプのヌクレオチドは、第1の励起エネルギーを吸収するように標識されていてもよく、それら2つのタイプのヌクレオチド(例えば、A、G)は、異なる発光強度に基づいて判別され、2つの追加のタイプのヌクレオチド(例えば、C、T)は、第2の励起エネルギーを吸収するように標識されていてもよく、それら2つの追加のタイプのヌクレオチドは、異なる発光寿命に基づいて判別される。そのような実施形態の場合、配列決定中、配列のあるセグメントは、発光強度のみに基づいて決定されてもよく(例えば、AおよびGのみが組み込まれているセグメント)、その配列の他のセグメントは、発光寿命にのみに基づいて決定されてもよい(例えば、CおよびTのみが組み込まれているセグメント)。いくつかの実施形態では、2~4つの発光標識ヌクレオチドは、発光寿命に基づいて区別されることになる。いくつかの実施形態では、2~4つの発光標識ヌクレオチドは、発光強度に基づいて区別される。いくつかの実施形態では、2~4つの発光標識ヌクレオチドは、発光寿命および発光強度に基づいて区別される。
【0124】
図4には、例示的な発光標識ヌクレオチドの発光寿命4-1および同じ例示的なヌクレオチドの発光強度4-2が表示されている。例えば、第4の行には、フルオロフォアAlexa Fluor(登録商標)555(AF555)に連結されているデオキシチミジン六リン酸(dT6P)ヌクレオチドのデータが表示されている。この発光標識ヌクレオチドは、およそ0.25nsの寿命を有し、およそ20000カウント/秒の発光強度を呈する。任意の発光標識ヌクレオチドの観察される発光寿命および発光強度は、一般的に、4-1および4-2のもの等の他のより典型的な条件と比べて、組み込み条件下のヌクレオチドでは異なる場合がある(例えば、ナノ開口部中の単一分子複合体)。
【0125】
発光検出
本明細書に記載の方法の1つの態様では、放射光子(発光)または複数の放射光子は、1つまたは複数のセンサにより検出される。複数の発光標識分子またはヌクレオチドは、分子の各々が、単一のスペクトル範囲の光子を放射してもよく、または分子の部分は、第1のスペクトル範囲の光子を放射してもよく、分子の別の部分は、第2のスペクトル範囲の光子を放射してもよい。ある実施形態では、放射光子は、単一のセンサにより検出される。ある実施形態では、放射光子は、複数のセンサにより検出される。いくつかの実施形態では、第1のスペクトル範囲で放射される光子は、第1のセンサにより検出され、第2のスペクトル範囲で放射される光子は、第2のセンサにより検出される。いくつかの実施形態では、複数のスペクトル範囲の各々で放射される光子は、異なるセンサにより検出される。
【0126】
ある実施形態では、各センサは、励起エネルギーと放射光子との間の経過時間に基づいて、時間ビンを放射光子に帰属させるように構成されている。いくつかの実施形態では、より短い経過時間後に放射された光子には、より初期の時間ビンに帰属され、長い所要期間後に放射された光子は、後期の時間ビンに帰属されるだろう。
【0127】
いくつかの実施形態では、励起エネルギーの複数のパルスが標的容積部の近傍に加えられ、光子放射事象を含んでいてもよい複数の光子が検出される。いくつかの実施形態では、複数の発光(例えば、光子放射事象)が、核酸産物への発光標識ヌクレオチドの組み込みに対応する。いくつかの実施形態では、発光標識ヌクレオチドの組み込みは、約1ms~約5ms間、約5ms~約20ms間、約20ms~約100ms間、または約100ms~約500ms間継続する。いくつかの実施形態では、約10~約100回、約100~約1000回、約1000~約10000回、または約10000~約100000回の発光が、発光標識ヌクレオチドの組み込み中に検出される。
【0128】
ある実施形態では、発光標識ヌクレオチドが組み込み中でない場合、発光は検出されない。いくつかの実施形態では、発光バックグラウンドが存在する。いくつかの実施形態では、発光標識ヌクレオチドが組み込み中でない場合、疑似発光が検出される。励起エネルギーのパルス中に、1つまたは複数の発光標識ヌクレオチドが標的容積部中に存在するが(例えば、標的容積部へと拡散するか、またはポリメラーゼと相互作用するが組み込まれない)、配列決定反応により組み込み中ではない場合、そのような疑似発光が生じる場合がある。いくつかの実施形態では、標的容積部中に存在するが組み込み中ではない発光標識ヌクレオチドから検出される複数の発光は、発光標識ヌクレオチドからの複数の発光よりも低い(例えば、10倍、100倍、1000倍、10000倍)。
【0129】
いくつかの実施形態では、発光標識ヌクレオチドの組み込みに対応する複数の検出された発光は各々、パルスと放射光子との間の経過時間に基づいて時間ビンに帰属させる。このように組み込み事象が複数生じることは、本明細書では「バースト」と称される。いくつかの実施形態では、バーストは、ベースライン(例えば、ノイズ閾値)を超える一連のシグナル(例えば、測定値)を指す。この場合、シグナルは、発光標識ヌクレオチドが励起領域内に存在する場合に生じる複数の放射事象に対応する。いくつかの実施形態では、バーストは、ベースラインを表すシグナルの時間間隔だけ、その前および/またはその後のバーストと隔てられる。いくつかの実施形態では、バーストは、複数の経過時間に基づいて発光寿命を決定することにより分析される。いくつかの実施形態では、バーストは、単位時間当たりに検出された発光の数に基づいて発光強度を決定することにより分析される。いくつかの実施形態では、バーストは、検出された発光のスペクトル範囲を決定することにより分析される。いくつかの実施形態では、バーストデータの分析は、組み込まれた発光標識ヌクレオチドの同一性の帰属を可能にするか、または1つもしくは複数の発光標識ヌクレオチドが複数の発光標識ヌクレオチドと区別されることを可能にするだろう。帰属または区別は、発光寿命、発光強度、放射光子のスペクトル範囲、またはそれらの任意の組合せのいずれか1つに依存してもよい。
【0130】
図5には、例示的な鋳型核酸の配列決定が図示されている。配列決定実験は、4つの発光標識ヌクレオチド:Alexa Fluor(登録商標)647に連結されたデオキシアデノシン(A-AF647)、Alexa Fluor555に連結されたデキソイチミジン(dexoythymidine)(T-AF555)、DyLight(登録商標)554-R1に連結されたデオキシグアニジン(deoxyguanidine)(G-D554R1)、およびDyLight(登録商標)530-R2に連結されたデキソイシチジン(dexoycytidine)(C-D530R2)を用いて行われた。ヌクレオチドA-AF647は、赤色スペクトル範囲の励起エネルギーにより励起され、T、G、およびCヌクレオチドは、緑色スペクトル範囲の励起により励起される。約200秒間の配列決定反応にわたって検出された光子の数は、強度トレース5-1に表示されている。各スパイクは、検出された発光のバーストに対応し、点で標示されている。各バーストは、発光標識ヌクレオチドの組み込みに対応する場合があり、数千の検出された発光を含む。異なる色のトレースは、異なる励起パルスを標記するために利用されることが可能である。例えば、紫色トレースは、緑色励起パルスに使用されてもよく、青色トレースは、赤色励起パルスに使用されてもよい。青色トレースのバーストは、ヌクレオチドA-AF647(この例では、赤色発光分子を有する唯一のヌクレオチド)の組み込みに帰属されることが可能である。
【0131】
図5には、強度対寿命プロット5-2を使用して、同じ色のバーストを区別するために(例えば、T、G、およびC間の紫色トレース)、生データを低減させる1つの方法が表示されている。各円は、紫色トレースのバーストを表す。各バーストは、パルスと各検出光子の放射との間の経過時間に基づいて、発光標識ヌクレオチドの発光寿命を決定するために分析された。加えて、各バーストは、1秒間に検出された光子の数に基づいて発光標識ヌクレオチドの発光強度を決定するために分析された。組み込み事象は、3つの発光標識ヌクレオチドの各々に対応する3つのグループにクラスター化される。プロットの下部分(点線より下のプロット区域)の暗色クラスターは、最長の発光寿命および最小の発光強度を有するC-D530R2に帰属される。プロットの下部分(点線より下のプロット区域)の明色クラスターは、中間の寿命および強度を有するG-D554R1に帰属される。また、プロットの上部分(点線より上のプロット区域)の明色クラスターは、最短の寿命および最大の強度を有するT-AF555に帰属される。図5には、データから決定された配列と鋳型核酸の既知配列とのアラインメント5-3が表示されている。縦線は、実験的に決定された塩基と標的配列とが合致していることを示している。ダッシュは、決定配列ではヌクレオチドが帰属されなかった鋳型配列の位置、または鋳型配列のどの位置にも対応しない決定配列中の余分な位置を示している。
【0132】
図6には、鋳型核酸の配列決定の第2の例が図示されている。配列決定実験は、4つの発光標識ヌクレオチド:Alexa Fluor(登録商標)647に連結されたデオキシアデノシン(A-AF647)、Alexa Fluor555に連結されたデキソイチミジン(T-AF555)、Alexa Fluor(登録商標)647に連結されたデオキシグアニジン(G-AF647)、およびAlexa Fluor(登録商標)546に連結されたデキソイシチジン(C-AF546)を用いて行われた。ヌクレオチドA-AF647およびG-AF647は、赤色スペクトル範囲の励起エネルギーにより励起され、TおよびCヌクレオチドは、緑色スペクトル範囲の励起により励起される。この実験では、AおよびGは、同じ発光マーカーを有しており、分別されない。図6には、約300秒間の配列決定反応にわたって検出された光子の数が強度トレース6-1に表示されている。各スパイクは、検出された発光のバーストに対応し、点で標示されている。各バーストは、発光標識ヌクレオチドの組み込みに対応する場合があり、数千の検出された発光を含む。トレースには、緑色励起パルスで検出された発光が表示されている(塩基TおよびCに対応する)。
【0133】
図6には、強度対寿命プロット6-2を使用してTおよびCを区別するために生データを低減する1つの方法が表示されている。各円は、強度トレース6-1のバーストを表す。各バーストは、パルスと各検出光子の放射との間の経過時間に基づいて発光標識ヌクレオチドの発光寿命を決定するために分析された。加えて、各バーストは、1秒間に検出された光子の数に基づいて発光標識ヌクレオチドの発光強度を決定するために分析された。組み込み事象は、2つの発光標識ヌクレオチドの各々に対応する2つのグループにクラスター化される。プロットの右部分(点線の右側のプロット区域)の暗色クラスターは、最長の発光寿命および最小の発光強度を有するC-AF546に帰属される。プロットの右部分(点線の右側のプロット区域)の明色クラスターは、最短の寿命および最大の強度を有するT-AF555に帰属される。図6には、データから決定された配列と鋳型核酸の既知配列とのアラインメント6-3が表示されている。縦の線は、実験的に決定された塩基と標的配列とが合致していることを示している。横の線は、決定配列ではヌクレオチドが帰属されなかった鋳型配列の位置、または鋳型配列のどの位置にも対応しない決定配列中の余分な位置を示している。
【0134】
発光標識
「発光タグ」、「発光標識」、および「発光マーカー」という用語は、全体にわたって同義的に使用され、1つまたは複数の発光分子を含む分子に関する。ある実施形態では、組み込まれる分子は、例えば、異なる発光標識が付着されていない発光分子である。典型的なヌクレオチドおよびアミノ酸は、発光性ではないか、または好適な範囲内の励起エネルギーおよび放射エネルギーで発光しない。ある実施形態では、組み込まれる分子は、発光標識を含む。ある実施形態では、組み込まれる分子は、発光標識ヌクレオチドである。ある実施形態では、組み込まれる分子は、発光標識アミノ酸または発光標識tRNAである。いくつかの実施形態では、発光標識ヌクレオチドは、ヌクレオチドおよび発光標識を含む。いくつかの実施形態では、発光標識ヌクレオチドは、ヌクレオチド、発光標識、およびリンカーを含む。いくつかの実施形態では、発光標識は、フルオロフォアである。
【0135】
ある実施形態では、発光標識および任意選択でリンカーは、組み込まれた分子に付着したままである。ある実施形態では、発光標識および任意選択でリンカーは、組み込みのプロセス中またはプロセス後に分子から切断される。
【0136】
ある実施形態では、発光標識は、シアニン色素またはその類似体である。いくつかの実施形態では、シアニン色素は、以下の式:
【0137】
【化1】
【0138】
またはその塩、立体異性体、もしくは互変異性体であり、
式中、AおよびAは一緒になって、任意選択で置換されている芳香族または非芳香族の単環式または多環式のヘテロ環式環を形成し、
およびBは一緒になって、任意選択で置換されている芳香族または非芳香族の単環式または多環式のヘテロ環式環を形成し、
およびRの各々は、独立して水素、任意選択で置換されているアルキルであり、
およびLの各々は、独立して水素、任意選択で置換されているアルキルであるか、またはLおよびLは一緒になって、任意選択で置換されている芳香族または非芳香族の単環式または多環式の炭素環式環を形成する。
【0139】
ある実施形態では、発光標識は、ローダミン色素またはその類似体である。いくつかの実施形態では、ローダミン色素は、以下の式:
【0140】
【化2】
【0141】
またはその塩、立体異性体、もしくは互変異性体であり、
式中、AおよびAの各々は、独立して、水素、任意選択で置換されているアルキル、任意選択で置換されている芳香族もしくは非芳香族ヘテロシクリル、任意選択で置換されている芳香族もしくは非芳香族カルボシクリル、または任意選択で置換されているカルボニルであるか、あるいはAおよびAは一緒になって、任意選択で置換されている芳香族または非芳香族の単環式または多環式の炭素環式環を形成する。
【0142】
およびBの各々は、独立して、水素、任意選択で置換されているアルキル、任意選択で置換されている芳香族もしくは非芳香族ヘテロシクリル、任意選択で置換されている芳香族もしくは非芳香族カルボシクリル、または任意選択で置換されているカルボニルであるか、あるいはBおよびBは一緒になって、任意選択で置換されている芳香族または非芳香族の単環式または多環式のヘテロ環式環を形成し、
およびRの各々は、独立して、水素、任意選択で置換されているアルキル、任意選択で置換されているアリール、または任意選択で置換されているアシルであり、
は、独立して、水素、任意選択で置換されているアルキル、任意選択で置換されている芳香族もしくは非芳香族ヘテロシクリル、任意選択で置換されている芳香族もしくは非芳香族カルボシクリル、または任意選択で置換されているカルボニルである。
【0143】
いくつかの実施形態では、Rは、任意選択で置換されているフェニルである。いくつかの実施形態では、Rは、任意選択で置換されているフェニルであり、その場合、少なくとも1つの置換基は、任意選択で置換されているカルボニルである。いくつかの実施形態では、Rは、任意選択で置換されているフェニルであり、その場合、少なくとも1つの置換基は、任意選択で置換されているスルホニルである。
【0144】
典型的には、発光標識は、芳香族化合物またはヘテロ芳香族化合物であり、ピレン、アントラセン、ナフタレン、アクリジン、スチルベン、インドール、ベンズインドール、オキサゾール、カルバゾール、チアゾール、ベンゾチアゾール、フェナントリジン、フェノキサジン、ポルフィリン、キノリン、エチジウム、ベンズアミド、シアニン、カルボシアニン、サリチラート、アントラニラート、クマリン、フルオロセイン、ローダミン、または他の類似化合物であってもよい。例示的な色素としては、5-カルボキシフルオレセイン(FAM)、2’7’-ジメトキシ-4’5’-ジクロロ-6-カルボキシフルオレセイン(JOE)、テトラクロロフルオレセイン(TET)、6-カルボキシローダミン(R6G)、N,N,N’,N’-テトラメチル-6-カルボキシローダミン(TAMRA)、6-カルボキシ-X-ローダミン(ROX)を含む、フルオレセインまたはローダミン色素等のキサンテン色素が挙げられる。また、例示的な色素としては、アルファ位またはベータ位にアミノ基を有するナフチルアミン色素が挙げられる。例えば、ナフチルアミノ化合物としては、1-ジメチルアミノナフチル-5-スルホナート、1-アニリノ-8-ナフタレンスルホナート、および2-p-トルイジニル-6-ナフタレンスルホナート、5-(2’-アミノエチル)アミノナフタレン-1-スルホン酸(EDANS)が挙げられる。他の例示的な色素としては、以下のものが挙げられる:3-フェニル-7-イソシアナトクマリン等のクマリン;9-イソチオシアナトアクリジンおよびアクリジンオレンジ等のアクリジン;N-(p-(2-ベンゾオキサゾリル)フェニル)マレイミド;インドジカルボシアニン3(Cy(登録商標)3)、(2Z)-2-[(E)-3-[3-(5-カルボキシペンチル)-1,1-ジメチル-6,8-ジスルホベンゾ[e]インドール-3-イウム-2-イル]プロパ-2-エニリデン]-3-エチル-1,1-ジメチル-8-(トリオキシダニルスルファニル)ベンゾ[e]インドール-6-スルホナート(Cy(登録商標)3.5)、2-{2-[(2,5-ジオキソピロリジン-1-イル)オキシ]-2-オキソエチル}-16,16,18,18-テトラメチル-6,7,7a,8a,9,10,16,18-オクタヒドロベンゾ[2’’,3’’]インドリジノ[8’’,7’’:5’,6’]ピラノ[3’,2’:3,4]ピリド[1,2-a]インドール-5-イウム-14-スルホナート(Cy(登録商標)3B)、インドジカルボシアニン5(Cy(登録商標)5)、インドジカルボシアニン5.5(Cy(登録商標)5.5)、3-(-カルボキシ-ペンチル)-3’-エチル-5,5’-ジメチルオキサカルボシアニン(CyA)等のシアニン;1H,5H,11H,15H-キサンテノ[2,3,4-ij:5,6,7-i’j’]ジキノリジン-18-イウム、9-[2(または4)-[[[6-[2,5-ジオキソ-1-ピロリジニル)オキシ]-6-オキソヘキシル]アミノ]スルホニル]-4(または2)-スルホフェニル]-2,3,6,7,12,13,16,17-オクタヒドロ-内塩(TRまたはテキサスレッド(Texas Red)(登録商標));ボディパイ(BODIPY)(登録商標)色素;ベンゾオキサゾール;スチルベン;およびピレン等。
【0145】
ヌクレオチド配列決定の場合、発光標識ヌクレオチドのある組合せが、好ましい場合がある。いくつかの実施形態では、発光標識ヌクレオチドの少なくとも1つは、シアニン色素またはその類似体を含む。いくつかの実施形態では、発光標識ヌクレオチドの少なくとも1つは、ローダミン色素またはその類似体を含む。いくつかの実施形態では、発光標識ヌクレオチドの少なくとも2つは各々、シアニン色素またはその類似体を含む。いくつかの実施形態では、発光標識ヌクレオチドの少なくとも2つは各々、ローダミン色素またはその類似体を含む。いくつかの実施形態では、発光標識ヌクレオチドの少なくとも3つは各々、シアニン色素またはその類似体を含む。いくつかの実施形態では、発光標識ヌクレオチドの少なくとも3つは各々、ローダミン色素またはその類似体を含む。いくつかの実施形態では、発光標識ヌクレオチドの少なくとも4つは各々、シアニン色素またはその類似体を含む。いくつかの実施形態では、発光標識ヌクレオチドの少なくとも4つは各々、ローダミン色素またはその類似体を含む。いくつかの実施形態では、3つの発光標識ヌクレオチドは、シアニン色素またはその類似体を含み、第4の発光標識ヌクレオチドは、ローダミン色素またはその類似体を含む。いくつかの実施形態では、2つの発光標識ヌクレオチドは、シアニン色素またはその類似体を含み、第3および任意選択で第4の発光標識ヌクレオチドは、ローダミン色素またはその類似体を含む。いくつかの実施形態では、3つの発光標識ヌクレオチドは、ローダミン色素またはその類似体を含み、第3および任意選択で第4の発光標識ヌクレオチドは、シアニン色素またはその類似体を含む。
【0146】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの標識ヌクレオチドは、2つ以上の色素(例えば、同じ色素の2つ以上のコピーおよび/または2つ以上の異なる色素)に連結されている。
【0147】
いくつかの実施形態では、少なくとも2つの発光標識ヌクレオチドは、第1の励起エネルギーを吸収し、その場合、発光標識ヌクレオチドの少なくとも1つは、シアニン色素またはその類似体を含み、発光標識ヌクレオチドの少なくとも1つは、ローダミン色素またはその類似体を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも2つの発光標識ヌクレオチドは、第2の励起エネルギーを吸収し、その場合、発光標識ヌクレオチドの少なくとも1つは、シアニン色素またはその類似体を含み、発光標識ヌクレオチドの少なくとも1つは、ローダミン色素またはその類似体を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも2つの発光標識ヌクレオチドは、第1の励起エネルギーを吸収し、その場合、発光標識ヌクレオチドの少なくとも1つは、シアニン色素またはその類似体を含み、発光標識ヌクレオチドの少なくとも1つは、ローダミン色素またはその類似体を含み、少なくとも2つの追加の発光標識ヌクレオチドは、第2の励起エネルギーを吸収し、その場合、発光標識ヌクレオチドの少なくとも1つは、シアニン色素またはその類似体を含み、発光標識ヌクレオチドの少なくとも1つは、ローダミン色素またはその類似体を含む。
【0148】
いくつかの実施形態では、少なくとも2つの発光標識ヌクレオチドは、第1の励起エネルギーを吸収し、その場合、発光標識ヌクレオチドの少なくとも1つは、約1ns未満の発光寿命を有し、発光標識ヌクレオチドの少なくとも1つは、1nsを超える発光寿命を有する。いくつかの実施形態では、少なくとも2つの発光標識ヌクレオチドは、第2の励起エネルギーを吸収し、その場合、発光標識ヌクレオチドの少なくとも1つは、約1ns未満の発光寿命を有し、発光標識ヌクレオチドの少なくとも1つは、1nsを超える発光寿命を有する。いくつかの実施形態では、少なくとも2つの発光標識ヌクレオチドは、第1の励起エネルギーを吸収し、その場合、発光標識ヌクレオチドの少なくとも1つは、約1ns未満の発光寿命を有し、発光標識ヌクレオチドの少なくとも1つは、1nsを超える発光寿命を有し、追加の少なくとも2つの発光標識ヌクレオチドは、第2の励起エネルギーを吸収し、その場合、発光標識ヌクレオチドの少なくとも1つは、約1ns未満の発光寿命を有し、発光標識ヌクレオチドの少なくとも1つは、1nsを超える発光寿命を有する。
【0149】
ある実施形態では、発光標識は、表1から選択される色素である。表1に列挙されている色素は、非限定的であり、本出願の発光標識は、表1に列挙されていない色素を含んでいてもよい。ある実施形態では、1つまたは複数の発光標識ヌクレオチドの発光標識は、表1から選択される。ある実施形態では、4つ以上の発光標識ヌクレオチドの発光標識が、表1から選択される。
【0150】
【表1-1】
【0151】
【表1-2】
【0152】
【表1-3】
【0153】
【表1-4】
【0154】
また、色素は、最大吸光または放射発光の波長に基づいて分類されることが可能である。表2には、例示的なフルオロフォアが提供されており、最大吸光のおおよその波長に従って列にグループ化されている。表2に列挙されている色素は、非限定的であり、本出願の発光標識は、表2に列挙されていない色素を含んでいてもよい。正確な最大吸光または放射波長は、示されているスペクトル範囲に対応していない場合がある。ある実施形態では、1つまたは複数の発光標識ヌクレオチドの発光標識は、表2に列挙されている「赤色」グループから選択される。ある実施形態では、1つまたは複数の発光標識ヌクレオチドの発光標識は、表2に列挙されている「緑色」グループから選択される。ある実施形態では、1つまたは複数の発光標識ヌクレオチドの発光標識は、表2に列挙されている「黄色/オレンジ色」グループから選択される。ある実施形態では、4つのヌクレオチドの発光標識は、全てが、表2に列挙されている「赤色」、「黄色/オレンジ色」、または「緑色」グループの1つから選択されるように選択される。ある実施形態では、4つのヌクレオチドの発光標識は、3つが、表2に列挙されている「赤色」、「黄色/オレンジ色」、および「緑色」グループの第1のグループから選択され、4つ目が、表2に列挙されている「赤色」、「黄色/オレンジ色」、および「緑色」グループの第2のグループから選択されるように選択される。ある実施形態では、4つのヌクレオチドの発光標識は、2つが、表2に列挙されている「赤色」、「黄色/オレンジ色」、および「緑色」グループの第1のグループから選択され、3つ目および4つ目が、表2に列挙されている「赤色」、「黄色/オレンジ色」、および「緑色」グループの第2のグループから選択されるように選択される。ある実施形態では、4つのヌクレオチドの発光標識は、2つが、表2に列挙されている「赤色」、「黄色/オレンジ色」、および「緑色」グループの第1のグループから選択され、3つ目が、表2に列挙されている「赤色」、「黄色/オレンジ色」、および「緑色」グループの第2のグループから選択され、4つ目が、表2に列挙されている「赤色」、「黄色/オレンジ色」、および「緑色」グループの第3のグループから選択されるように選択される。
【0155】
【表2-1】
【0156】
【表2-2】
【0157】
【表2-3】
【0158】
ある実施形態では、発光標識は、以下の式(NHSエステル形態)の(色素101)、(色素102)、(色素103)、(色素104)、(色素105)、もしくは(色素106)、またはそれらの類似体であってもよい。
【0159】
【化3-1】
【0160】
【化3-2】
【0161】
いくつかの実施形態では、各スルホナートまたはカルボキシラートは、独立して、任意選択でプロトン化されている。いくつかの実施形態では、上記の色素は、示されている付着地点でのアミド結合の形成によりリンカーまたはヌクレオチドに付着している。
【0162】
ある実施形態では、発光標識は、第1および第2の発色団を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、第1の発色団の励起状態は、第2の発色団へのエネルギー移動により緩和させることが可能である。いくつかの実施形態では、エネルギー移動は、フェルスター共鳴エネルギー転移(FRET)である。そのようなFRET対は、複数の発光標識との標識の区別をより容易にする特性を発光標識に提供するのに有用であり得る。ある実施形態では、FRET対は、第1のスペクトル範囲の励起エネルギーを吸収し、第2のスペクトル範囲の発光を放射することができる。
【0163】
1組の発光標識分子(例えば、発光標識ヌクレオチド)の場合、発光標識FRET対の特性は、複数の判別可能な分子(例えば、ヌクレオチド)の選択を可能にすることができる。いくつかの実施形態では、FRET対の第2の発色団は、複数の他の発光標識分子とは異なる発光寿命を有する。いくつかの実施形態では、FRET対の第2の発色団は、複数の他の発光標識分子とは異なる発光強度を有する。いくつかの実施形態では、FRET対の第2の発色団は、複数の他の発光標識分子とは異なる発光寿命および発光強度を有する。いくつかの実施形態では、FRET対の第2の発色団は、複数の他の発光標識分子とは異なるスペクトル範囲の光子を放射する。いくつかの実施形態では、FRET対の第1の発色団は、複数の他の発光標識分子とは異なる発光寿命を有する。ある実施形態では、FRET対は、複数の他の発光標識分子とは異なるスペクトル範囲の励起エネルギーを吸収することができる。ある実施形態では、FRET対は、複数の他の発光標識分子の1つまたは複数と同じスペクトル範囲の励起エネルギーを吸収することができる。
【0164】
いくつかの実施形態では、2つ以上のヌクレオチドは、発光標識に接続されていてもよく、その場合、ヌクレオチドは、発光標識の異なる位置に接続されている。非限定的な例としては、ヌクレオチド類似体の反応性部分と適合する2つの独立反応性化学部分(例えば、アジド基、アセチレン基、カルボキシル基、アミノ基)を含有する発光分子を挙げることができる。そのような実施形態では、発光標識は、独立したリンカーにより2つのヌクレオチド分子に接続されていてもよい。いくつかの実施形態では、発光標識は、2つ以上のヌクレオチドとの2つ以上の独立した接続を含んでいてもよい。
【0165】
いくつかの実施形態では、2つ以上のヌクレオチドは、リンカー(例えば、ヌクレオチドおよび/または色素が付着することが可能である2つ以上の反応部位を有する分岐リンカーまたはリンカー)により発光色素と接続されていてもよい。したがって、いくつかの実施形態では、2つ以上のヌクレオチド(例えば、同じタイプ)が、2つ以上の色素(例えば、同じタイプ)に連結されていてもよい。
【0166】
いくつかの実施形態では、発光標識は、発光特性を有するタンパク質を含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のヌクレオチドは、発光タンパク質に接続されている。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のヌクレオチドは、タンパク質の異なる部位との接続により発光タンパク質に接続されている。ある実施形態では、4つのヌクレオチドの発光標識は、1つのヌクレオチドが蛍光タンパク質で標識され、残りの3つのヌクレオチドが蛍光色素(例えば、表1および2の非限定的な例)で標識されるように選択される。ある実施形態では、4つのヌクレオチドの発光標識は、2つのヌクレオチドが蛍光タンパク質で標識され、残りの2つのヌクレオチドが蛍光色素(例えば、表1および2の非限定的な例)で標識されるように選択される。ある実施形態では、4つのヌクレオチドの発光標識は、3つのヌクレオチドが蛍光タンパク質で標識され、残りのヌクレオチドが蛍光色素(例えば、表1および2の非限定的な例)で標識されるように選択される。いくつかの実施形態では、4つのヌクレオチドの発光標識は、4つのヌクレオチドが全て蛍光タンパク質で標識されるように選択される。
【0167】
本出願のいくつかの態様によると、発光標識(例えば、色素、例えばフルオロフォア)は、励起光に曝露された配列決定反応のポリメラーゼを損傷する場合がある。いくつかの態様では、この損傷は、発光分子がポリメラーゼ酵素の極近傍に保持されている場合、発光標識ヌクレオチドの組み込み中に生じる。損傷反応の非限定的な例としては、ポリメラーゼと発光分子との共有結合の形成、および発光分子から酵素への放射性崩壊または非放射性崩壊の放射が挙げられる。これは、ポリメラーゼの有効性を短縮し、配列決定が実行される長さを低減する場合がある。
【0168】
いくつかの実施形態では、ヌクレオチドおよび発光標識は、標識ヌクレオチドの組み込み中に発光標識をポリメラーゼから離間させておくために、比較的長いリンカーまたはリンカー構成により接続されている。用語「リンカー構成」は、本明細書では、発光分子をヌクレオチドに接続する構造全体を指すために使用され、発光分子またはヌクレオチドを包含しない。
【0169】
いくつかの実施形態では、単一のリンカーにより、発光分子がヌクレオチドと接続されている。いくつかの実施形態では、リンカーは、2つ以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個以上)のヌクレオチドが、各発光分子に接続されるか、2つ以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個以上)の発光分子が、各ヌクレオチドに接続されるか、または2つ以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個以上)のヌクレオチドが、2つ以上(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個以上)の発光分子に接続されるように、1つまたは複数の分岐点を含有している。
【0170】
いくつかの実施形態では、リンカー構成は、発光標識とヌクレオチドとの距離を決定する。いくつかの実施形態では、距離は、約1nmまたは2nm~約20nmである。例えば、2nm超、5nm超、5~10nm、10nm超、10~15nm、15nm超、15~20nm、20nm超。しかしながら、発光標識は、ヌクレオチドが酵素の活性部位内に保持される際は照射容積内に存在する必要があるため、発光標識とヌクレオチドとの距離は長過ぎてはならない。したがって、いくつかの実施形態では、全体的なリンカー長さは、30nm未満、25nm未満、約20nm、または20nm未満である。
【0171】
いくつかの実施形態では、保護分子が、リンカー構成内に含まれている。保護分子は、酵素と発光標識との間に生じ得る損傷反応からポリメラーゼを保護することができる。保護分子の非限定的な例としては、核酸(例えば、デオキシリボ核酸、リボ核酸)、例えば1つまたは複数の保護要素を含む核酸が挙げられる。いくつかの実施形態では、保護分子は、オリゴヌクレオチド(例えば、DNAオリゴヌクレオチド、RNAオリゴヌクレオチド、またはそれらの変異体)である。
【0172】
いくつかの実施形態では、保護分子は、1つまたは複数の発光分子に、および1つまたは複数のヌクレオチド分子に接続されている。本明細書で使用されるとき、この文脈におけるヌクレオチドは、例えば配列決定反応の文脈において、成長中の核酸に組み込まれることが可能なヌクレオシドポリリン酸を指す。いくつかの実施形態では、発光分子は、ヌクレオチドと隣接していない。例えば、1つまたは複数の発光分子は、保護分子の第1の側に接続されていてもよく、1つまたは複数のヌクレオチドは、保護分子の第2の側に接続されていてもよく、保護分子の第1および第2の側は、互いに離れている。いくつかの実施形態では、それらは、保護分子のほぼ反対側にある。
【0173】
保護分子が発光標識と接続されている地点と、保護分子がヌクレオチドに接続されている地点との距離は、空間を通じた直線的な測定値であってもよく、または保護分子の表面に沿った非直線的な測定値であってもよい。保護分子における発光標識およびヌクレオチドの接続地点間の距離は、保護分子の三次元構造をモデル化することにより測定されることが可能である。いくつかの実施形態では、この距離は、2、4、6、8、10、12、14、16、18、または20nm以上であってもよい。あるいは、保護分子における発光標識およびヌクレオチドの相対的位置は、保護分子の構造を二次曲面(例えば、楕円体、楕円柱)として扱うことにより記述されることが可能である。いくつかの実施形態では、発光標識およびヌクレオチドは、保護分子を表す楕円形状の周囲の距離の少なくとも8分の1の距離だけ隔てられている。いくつかの実施形態では、発光標識およびヌクレオチドは、保護分子を表す楕円形状の周囲の距離の少なくとも4分の1の距離だけ隔てられている。いくつかの実施形態では、発光標識およびヌクレオチドは、保護分子を表す楕円形状の周囲の距離の少なくとも3分の1の距離だけ隔てられている。いくつかの実施形態では、発光標識およびヌクレオチドは、保護分子を表す楕円形状の周囲の距離の少なくとも2分の1の距離だけ隔てられている。
【0174】
いくつかの実施形態では、保護分子が核酸(例えば、1つまたは複数の保護要素を有する核酸リンカー)を含む場合、核酸における発光標識(例えば、1つまたは複数の発光標識)およびヌクレオチド(例えば、1つまたは複数のヌクレオシドポリリン酸)の結合点間の距離は、核酸内で発光標識とヌクレオチドとの間に生じる塩基の数に基づいて測定されることが可能である。いくつかの実施形態では、標識の結合点をヌクレオシドポリリン酸の結合点から隔てるリンカー内の核酸サブユニットの数(例えば、一本鎖リンカー内のヌクレオチドまたは二本鎖リンカー内の塩基対の数)は、10~100(例えば、10~25、25~50、50~75、75~100)またはそれ以上であってもよい。例えば、いくつかの実施形態では、核酸リンカーは二本鎖である。そのような実施形態では、発光標識およびヌクレオチドの結合点間の距離は、二本鎖核酸内で生じる塩基対(例えば、核酸リンカーの第1および第2のオリゴヌクレオチド鎖の核酸塩基間の塩基対合)の数によって測定されることが可能である。いくつかの実施形態では、核酸リンカー(例えば、線状核酸リンカー)における発光標識およびヌクレオチドの結合点は、少なくとも5塩基対、5~10塩基対、少なくとも10塩基対、10~15塩基対、少なくとも15塩基対、15~20塩基対、少なくとも20塩基対、20~25塩基対、少なくとも25塩基対、25~30塩基対、少なくとも30塩基対、30~35塩基対、少なくとも35塩基対、35~40塩基対、少なくとも40塩基対、40~45塩基対、少なくとも45塩基対、45~50塩基対、少なくとも50塩基対、50~75塩基対、少なくとも75塩基対、75~100塩基対、またはそれ以上の塩基対だけ隔てられている。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の構造モチーフ保護要素(例えば、ステムループ)を含めることにより、より多くの塩基および/または塩基対が発光標識とヌクレオチドとの間で生じ得ることが企図される。したがって、いくつかの実施形態では、核酸リンカーにおける発光標識およびヌクレオチドの結合点は、少なくとも50塩基対、50~60塩基対、少なくとも60塩基対、60~70塩基対、少なくとも70塩基対、70~80塩基対、少なくとも80塩基対、80~90塩基対、少なくとも90塩基対、90~100塩基対、少なくとも100塩基対、100~150塩基対、少なくとも150塩基対、150~200塩基対、少なくとも200塩基対、またはそれ以上の塩基対だけ隔てられている。いくつかの実施形態では、二本鎖核酸リンカー内の塩基対(または一本鎖核酸リンカー内のヌクレオチド)の数は、500未満、450未満、400未満、350未満、300未満、または250未満である。
【0175】
1つまたは複数の保護要素を含む核酸リンカー等の保護分子は、発光標識がポリメラーゼに接近することを防止する立体障壁を提供するのに有用であってもよい。保護分子は、発光分子により放射される放射性崩壊および非放射性崩壊を吸収するのに、またはそのような崩壊からポリメラーゼを保護するのに有用であってもよい。保護分子は、発光標識とポリメラーゼとの間の立体障壁および崩壊障壁の両方を提供するのに有用であってもよい。
【0176】
保護分子のサイズは、ヌクレオチドが酵素の活性部位内に保持される際に、発光標識がポリメラーゼと直接的に接触することができないかまたは接触しにくいような大きさであるべきである。また、保護分子のサイズは、ヌクレオチドが酵素の活性部位内に保持される際に、付着している発光標識が、励起させようとする照射容積内に存在するような大きさであるべきである。保護分子のサイズは、発光標識を保護分子に接続するために選択されているリンカーおよびヌクレオチドを保護分子に接続するために選択されているリンカーを考慮して選択されるべきである。保護分子ならびに発光標識およびヌクレオチド(例えば、ヌクレオシドポリリン酸)を接続するために使用されるリンカーは、リンカー構成を構成し、リンカー構成のサイズは、ヌクレオチドが酵素の活性部位内に保持される際に、発光標識がポリメラーゼと直接的に接触することができないような大きさであるべきである。
【0177】
保護分子(および/または保護分子を含むリンカー構成)は、好ましくは水溶性である。いくつかの実施形態では、保護分子(および/または保護分子を含むリンカー構成)は、正味負電荷を有することが好ましい。
【0178】
図7には、配列決定実験、および複数の発光標識ヌクレオチドから判別するために固有な発光特性がどのように使用されることが可能であるかの非限定的な例7-1がさらに例示されている。各塩基(チミン、アデニン、シトシン、グアニン)に接続されている発光標識は、各標識ヌクレオチドが複数の標識ヌクレオチドから判別されることを可能にする発光特性(例えば、発光寿命、発光強度、および/または放射波長)を有する。同じタイプの複数のヌクレオチドを介在させることは、配列決定反応の組み込み速度を加速させる機能を果たす。
【0179】
発光標識ヌクレオチドを利用する配列決定実験7-1は、例示的な反応槽7-2で実施されることが可能である。反応は、導波路上方のチャンバで起こり、導波路は、励起エネルギーの導管としての役割を果たし、導波路からのエバネッセント波により、反応チャンバの底部にある試料に励起エネルギーを加える。開口部は、導波路からバルク試料へと放散する光、ならびに周囲光および/またはセンサからの迷光を阻止するだけなく、反応チャンバの製造経路を提供する。反応チャンバは、底部に、および導波路のエバネッセント波からの高励起領域内に試料を配置するエッチング構造である。選択的な表面化学は、反応チャンバの底部および側壁に異なる組成物を提供するために使用されることが可能であり、そのため、試料は、反応チャンバの底部に選択的に限局されることが可能である。
【0180】
いくつかの実施形態では、例えば、例示的な反応槽7-2に概して図示されているような選択的表面化学が、選択的表面官能化および/または表面パッシベーションのための異なる技術を使用して達成され得る。例えば、反応槽7-2は、側壁表面における金属の曝露部分が金属酸化物を含む金属スタックを備え得る。いくつかの実施形態では、金属酸化物表面は、それを官能化剤および/または試料に対して不活性にするまたは反応性を最小限にするために、パッシベーションされてよい。示されているように、「酸化物」層は、いくつかの実施形態では、その曝露表面上のシリカからなる透明な層を指す場合がある。いくつかの実施形態では、酸化物またはシリカ表面は、反応槽7-2の底面またはその近くに試料を限局するように選択的に官能化されていてよい。
【0181】
特定のヌクレオチドの組み込みは、配列決定反応中に例示的なワークフロー7-3に従って4つの発光標識ヌクレオチドから判別されることが可能である。実験の経過全体にわたって、2つの異なる期間:パルス期間および検出期間がある。20ピコ秒間継続するパルス期間中、発光光は収集されない。パルス期間後、検出期間は10ナノ秒間継続し、4つの時間ビンにより、検出期間にわたって生じる放射事象が捕捉される(i)。パルス期間および検出期間は、1つのサイクルを構成する。放射事象は、100万サイクルの経過にわたって連続的にビンに分類され、蓄積される(ii)。時間ビンにわたる放射事象の全体的分布は、発光寿命を表し、特定の組のデータを既知の寿命分布と一致させるために使用されることが可能である(iii)。いくつかの実施形態では、放射事象の分布(例えば、発光寿命)では、1つの発光標識塩基は、複数の他の標識分子から判別されない。放射事象の分布に加えて、放射事象の量(例えば、発光強度)は、単一分子を複数の他のものから識別するために使用されることが可能である。
【0182】
図8Aには、非タンパク質(例えば、核酸)保護分子(101)により隔てられている発光分子およびヌクレオチドの非限定的な例である。非タンパク質保護分子の非限定的な例としては、核酸分子、例えば、デオキシリボ核酸、リボ核酸、およびそれらの組合せを挙げることができる。いくつかの実施形態では、核酸保護分子は(例えば、1つまたは複数のヌクレオチドおよび1つまたは複数の標識の結合部位間にある)1つまたは複数の保護要素を含む。表示されているように、発光分子およびヌクレオチドは、非タンパク質保護分子に直接的に付着している(例えば、共有結合で付着している)。いくつかの実施形態では、発光分子およびヌクレオチドは、非タンパク質保護分子の近接部分に直接的に付着している。例えば、いくつかの実施形態では、非タンパク質保護分子は核酸分子であり、発光分子および/またはヌクレオチドは、核酸分子のヌクレオチドに直接的に結合されている。いくつかの実施形態では、発光分子および/またはヌクレオチドは、非タンパク質保護分子の近接部分ではない非タンパク質保護分子にリンカーを介して付着している。例えば、いくつかの実施形態では、非タンパク質保護分子は核酸分子であり、発光分子および/またはヌクレオチドは、リンカーを介して核酸に付着している。
【0183】
いくつかの実施形態では、図8Bに図示されているように、発光分子およびヌクレオチドは、反応性部分を介して非タンパク質(例えば、核酸)保護分子に付着していてもよい。この例では、発光分子における反応性部分(550)は、非タンパク質保護分子の対応する反応性部分(500)を介して非タンパク質保護分子に共有結合で付着している。ヌクレオチドにおける反応性部分(551)は、非タンパク質保護分子の対応する反応性部分(501)を介して非タンパク質保護分子(101)に共有結合で付着している。いくつかの実施形態では、反応性部分500および/または反応性部分501は、非タンパク質保護分子の近接部分に直接的に付着している。いくつかの実施形態では、反応性部分500および/または反応性部分501は、非タンパク質保護分子の近接部分ではない非タンパク質保護分子にリンカーを介して付着している。
【0184】
いくつかの実施形態では、1つもしくは複数の発光標識および/または1つもしくは複数のヌクレオシドポリリン酸は、当技術分野で公知の化学カップリング技術を使用して核酸リンカー(例えば、非タンパク質保護分子)に付着されてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、1つまたは複数の発光標識および1つまたは複数のヌクレオシドポリリン酸を核酸に付着させるために、クリックケミストリー技術(例えば、銅触媒性、歪み促進型、銅不含クリックケミストリー等)が使用され得る。したがって、図8Bに図示されている反応性部分の対501/551および500/550は、いくつかの実施形態では、反応性アミン、アジド、アルキン、ニトロン、アルケン(例えば、シクロアルケン)、テトラジン、テトラゾール、ならびにクリック反応および同様のカップリング技術に適切な他の反応性部分を含み得る。
【0185】
いくつかの実施形態では、非タンパク質保護分子は、オリゴヌクレオチド(例えば、DNAオリゴヌクレオチド、RNAオリゴヌクレオチド、またはそれらの変異体)である。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、一本鎖である。いくつかの実施形態では、発光標識は、一本鎖オリゴヌクレオチドの一方の末端(例えば5’末端または3’末端)に直接的または間接的に付着しており、1つまたは複数のヌクレオチドは、一本鎖オリゴヌクレオチドの他方の末端(例えば、3’末端または5’末端)に直接的または間接的に付着している。例えば、一本鎖オリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの5’末端に付着した発光標識、およびオリゴヌクレオチドの3’末端に付着した1つまたは複数のヌクレオチド(例えば、同じタイプ)を含んでいてもよい。あるいは、いくつかの実施形態では、一本鎖オリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの3’末端に付着した発光標識、およびオリゴヌクレオチドの5’末端に付着した1つまたは複数のヌクレオチド(例えば、同じタイプ)を含んでいてもよい。
【0186】
いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、二本鎖である(例えば、オリゴヌクレオチドは、2つのアニーリングされた相補的なオリゴヌクレオチド鎖を含む)。いくつかの実施形態では、発光標識は、二本鎖オリゴヌクレオチドの一方の末端に直接的または間接的に付着しており、1つまたは複数のヌクレオチドは、二本鎖ヌクレオチドの他方の末端に直接的または間接的に付着している。いくつかの実施形態では、発光標識は、二本鎖オリゴヌクレオチドの一方の鎖に直接的または間接的に付着しており、1つまたは複数のヌクレオチド(例えば、同じタイプ)は、二本鎖ヌクレオチドの他方の鎖に直接的または間接的に付着している。例えば、二本鎖オリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの一方の鎖の5’末端に付着した発光標識、および他方の鎖の5’末端に付着した1つまたは複数のヌクレオチド(例えば、同じタイプ)を含んでいてもよい。あるいは、いくつかの実施形態では、二本鎖オリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの一方の鎖の3’末端に付着した発光標識、および他方の鎖の3’末端に付着した1つまたは複数のヌクレオチド(例えば、同じタイプ)を含んでいてもよい。
【0187】
いくつかの実施形態では、1つもしくは複数の発光標識および/または1つもしくは複数のヌクレオチド(例えば、同じタイプ)は、オリゴヌクレオチドの1つもしくは複数の末端位置および/または内部位置を含め、一本鎖または二本鎖オリゴヌクレオチドにおける1つまたは複数の異なる位置において付着していてもよい。
【0188】
発光標識ヌクレオチドがオリゴヌクレオチド保護分子を含む例示的な実施形態が図8Cに図示されている。示されているように、オリゴヌクレオチドは、ヌクレオチドがポリメラーゼに結合されると、発光標識(例えば、1つまたは複数の色素)とポリメラーゼとの間に、ある距離をもたらす。したがって、いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、発光標識とポリメラーゼとの間の相互作用を防止するか、またはその程度を限定する立体障壁として機能するのに有用であり得る。さらに、オリゴヌクレオチドは、発光分子により放射される放射性崩壊および/または非放射性崩壊を吸収することができる。そのような機能性は、有利なことには、劣化または機能損失からポリメラーゼを保護することができる。
【0189】
図8Cに示されている非限定的な例は、1つの鎖の1つの末端(例えば、5’末端)に付着した発光標識と、同じ鎖の他方の末端(例えば、3’末端)に付着したヌクレオチドとを含む二本鎖オリゴヌクレオチド保護分子を図示する。いくつかの実施形態では、二本鎖オリゴヌクレオチドは、図8Dに図示されているように、第1の鎖に付着した発光標識と、第2の鎖に付着した1つまたは複数のヌクレオチドとを含む。示されているように、核酸815(例えば、二本鎖オリゴヌクレオチド)は、15塩基対を含む。核酸815は、リンカー815-2を介して核酸の第1のオリゴヌクレオチド鎖に付着した発光標識815-1と、リンカー815-4を介して核酸の第2のオリゴヌクレオチド鎖に付着したヌクレオチド815-3(例えば、ヌクレオシド六リン酸として図示されているヌクレオシドポリリン酸)とを含む。ヌクレオチド815-3を核酸815に付着させるリンカー815-4の化学構造は図9-2に示されているが、本明細書の他のいずれかの箇所に記載されているリンカー分子に従って任意の適切なリンカーが設計され得る。
【0190】
図8Dには、20塩基対を有する二本鎖オリゴヌクレオチドを各々が含む核酸820および822がさらに図示されている。示されているように、核酸820は、外部発光標識820-1を含む。いくつかの実施形態では、「外部」発光標識とは、オリゴヌクレオチド鎖の末端(例えば、5’末端または3’末端)に付着している発光標識を指す。いくつかの実施形態では、外部発光標識は、オリゴヌクレオチド鎖の最も5’側または最も3’側の塩基において付着している。しかしながら、いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチド鎖は、追加の塩基が核酸の反対側の鎖と塩基対合しないオーバーハング領域として、追加の塩基を含んでいてもよい。そのような実施形態では、外部発光標識は、反対側の鎖と最も5’側または最も3’側の塩基対合を形成するオリゴヌクレオチド鎖上の塩基において付着していると言うことができる。核酸822は、内部発光標識822-1を含む。いくつかの実施形態では、「内部」発光標識とは、オリゴヌクレオチド鎖に沿ったいずれの側にも1つまたは複数の塩基対合したヌクレオチドを有するオリゴヌクレオチド鎖内のある位置において付着している発光標識を指す。したがって、鎖に沿って結合部位から上流にある少なくとも1つのヌクレオチドおよび結合部位から下流にある少なくとも1つのヌクレオチドが反対側の鎖と塩基対合した場合、発光標識は内部発光標識であると言うことができる。いくつかの実施形態では、内部発光標識は、脱塩基部位または核酸塩基を介してオリゴヌクレオチド鎖に付着している。いくつかの実施形態では、内部発光標識は、オリゴヌクレオチド骨格内に統合されている。
【0191】
オリゴヌクレオチド保護分子は、図8Dにおける様々な長さの例示的な構築物(例えば、15塩基対の核酸815、20塩基対の核酸820、30塩基対の核酸830、および45塩基対の核酸845)によって表されるように、任意の長さであってよいことが理解されるべきである。例えば、15塩基対および25塩基対からなる例示的なオリゴヌクレオチドが、配列決定実験の例示的な結果と共に、それぞれ図8Eおよび図8Fに示されている。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、約10以上、約20以上、約30以上、約40以上、約50以上、約60以上、約70以上、約80以上、約90以上、約100以上、約125以上、約150以上、約175以上、約200以上、約250以上、約300以上、約350以上、約400以上、約450以上、約500以上の長さを有していてもよい。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドは、20個未満、30個未満、40個未満、50個未満、60個未満、70個未満、80個未満、90個未満、100個未満、125個未満、150個未満、175個未満、200個未満、250個未満、300個未満、350個未満、400個未満、450個未満、500個未満、または600個未満の塩基の長さを有する。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチドリンカーは、オリゴヌクレオチドリンカーに付着している標識からの放射からポリメラーゼを保護するために十分に長いと同時に、標識が配列決定反応中に励起され検出されることを可能にするために十分に短い。
【0192】
発光標識および/または1つもしくは複数のヌクレオチドは、オリゴヌクレオチド内の任意の位置において付着していてよいことが理解されるべきである。いくつかの実施形態では、発光標識および/または1つもしくは複数のヌクレオチドは、5’もしくは3’末端またはその近辺において付着している。いくつかの実施形態では、発光標識は、オリゴヌクレオチドのより大きな部分の極近傍に発光標識があるように、オリゴヌクレオチドの内部位置において付着している。例えば、図8Gには、内部色素を含む例示的なオリゴヌクレオチド、および外部色素を含む例示的なオリゴヌクレオチドが、配列決定実験においていずれか1つを利用した例示的な結果と共に図示されている。いくつかの実施形態では、内部発光標識(例えば、内部色素)は、概して、外部発光標識(例えば、外部色素)と比較したとき、近傍にあるオリゴヌクレオチドのより大きな部分に取り囲まれた発光標識を指す。いくつかの実施形態では、発光標識を取り囲むオリゴヌクレオチドのより大きな部分は、発光標識により放射される放射性崩壊および/または非放射性崩壊を吸収するためのより大きな障壁をもたらす。
【0193】
オリゴヌクレオチド保護分子を含む発光標識ヌクレオチドは、当技術分野で公知の任意の方法を使用して生成されることが可能である。例えば、図8Hには、発光標識およびヌクレオチドが、オリゴヌクレオチドの同じ鎖の反対側にある両末端に付着している、1つの非限定的なアプローチが図示されている。この実施形態では、発光標識およびヌクレオチドが、反応基化学を使用して第1の鎖に付着しており、第2の相補鎖が、その後、第1の鎖にアニーリングされている。上記に示されているように、いくつかの実施形態では、発光標識および1つまたは複数のヌクレオチドは、オリゴヌクレオチド保護分子の異なる鎖に(例えば、3’および/または5’末端において)付着していてもよい。図8Iには、発光標識を含む第1の鎖が、ヌクレオチドを含む第2の相補鎖にアニーリングされている、例示的な方法が図示されている。
【0194】
本明細書に記載されているように、保護分子は、発光標識(例えば、1つまたは複数の色素を有する標識)を含み得る。いくつかの実施形態では、保護分子は、発光標識から放射される放射性崩壊および/または非放射性崩壊を吸収するのに有用な1つまたは複数の部分(例えば、エネルギー吸収部分)を含み得る。例えば、図8Jには、複数の色素を例示的なオリゴヌクレオチド保護分子の鎖に付着させる非限定的な方法が図示されており、ここで反応基化学が、オリゴヌクレオチド上のリンカーに2つの色素を共有結合で付着させるために使用されている。示されているように、リンカーは三重項状態クエンチャーを含み、これは、発光標識が励起されて高度に反応性の状態になることから生じる、潜在的に有害なあらゆる効果を吸収することができる。図8Jに示されている例では、エネルギー吸収部分は、発光標識(例えば、色素分子)と同じ鎖に共有結合で付着したかたちで示されている。いくつかの実施形態では、エネルギー吸収部分は、以下に記載されるように、発光標識に隣接しているが、発光標識を有する鎖にアニーリングされた相補鎖に付着していてもよい。
【0195】
ポリメラーゼ保護効果をもたらす化学的部分に加えて、オリゴヌクレオチド構造モチーフが本明細書において企図される。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の非標識構造モチーフ(例えば、安定なステムループまたは他の構造を形成することができるオリゴヌクレオチド配列)が、発光標識とヌクレオシドポリリン酸との間の核酸リンカー上にある(例えば、非標識ステム構造が、標識の位置とヌクレオシドポリリン酸の位置との間に存在する)。例えば、図8Kには、3つのステムループ構造を備えるオリゴヌクレオチド保護分子が図示されている。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチド保護分子は、1つまたは複数のステムループ構造(例えば、2、3、4、5、6、7、8、または9つ以上)を備えていてもよく、一本鎖であってもよい。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチド保護分子は、1つまたは複数のステムループ構造(例えば、2、3、4、5、6、7、8、または9つ以上)を備えていてもよく、二本鎖であってもよい。例えば、図8Lには、ステムループ構造を備える例示的な二本鎖オリゴヌクレオチド保護分子が図示されている。いくつかの実施形態では、ステムループによりもたらされる、発光標識と1つまたは複数のヌクレオチドとの間の領域における増大された構造は、より大きな面積をもたらし、ここでオリゴヌクレオチドは、発光標識とポリメラーゼとの間の相互作用を立体的に妨害することができる。
【0196】
いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチド保護分子は、1つのステムループ(例えば、ヘアピン構造)を備える。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチド保護分子は、2つのステムループを備える。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチド保護分子は、3つのステムループを備える。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチド保護分子は、4つのステムループを備える。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチド保護分子は、5、6、7、8、9、または10個以上のステムループを備える。
【0197】
本明細書に記載のオリゴヌクレオチド保護分子には、追加の核酸構造モチーフが企図される。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチド保護分子は、3つ以上の核酸鎖(例えば、3、4、5、6、7、または8つ以上の核酸鎖)を含む。いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチド保護分子は、4つの核酸鎖を含む。例えば、オリゴヌクレオチド保護分子は、図8Mに図示されているように、ホリデイジャンクションを含んでもよい。1つまたは複数の構造モチーフ(例えば、ステムループ、ホリデイジャンクション)は、いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチド保護分子の強剛性を増大させて、発光標識とポリメラーゼとの間の平均距離を最大にすることができる。いくつかの実施形態では、問題とする平均距離とは、標識に付着したヌクレオシドポリリン酸がポリメラーゼ活性部位内にあるとき(例えば、成長中の鎖への組み込み中)の発光標識とポリメラーゼとの間の距離を指す。
【0198】
いくつかの実施形態では、追加の構造モチーフ(例えば、オリゴヌクレオチド保護分子の配列により与えられる物理的特性に基づくもの、および/またはオリゴヌクレオチド保護分子の1つもしくは複数の部分の1つもしくは複数の化学修飾に基づくもの)が、例えば強剛性を増大させるため、または特定の3次元構成をもたらすために、一本鎖または二本鎖のオリゴヌクレオチド保護分子に含まれることが可能である。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のアニーリングされた領域(例えば、ステム構造、または2つのオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションされた相補性領域)は安定化されていてよい(例えば、共有結合的修飾によって)。
【0199】
いくつかの実施形態では、オリゴヌクレオチド保護分子上の1つまたは複数の位置が、1つまたは複数のエネルギー吸収部分を含むように修飾されてよい。いくつかの実施形態では、標識が付着しているのと同じ核酸鎖に対して、1つまたは複数のエネルギー吸収部分が付加されてもよい(非限定的な例として図8Jを参照のこと)。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のエネルギー吸収部分は、例えば以下により詳細に記載されるように、二本鎖オリゴヌクレオチド保護分子の文脈において、標識されている鎖とは異なる鎖に付加されてもよい(例えば、1つまたは複数のエネルギー吸収部分は、1つまたは複数のヌクレオチドに付着した相補鎖に含まれ得る)。
【0200】
したがって、いくつかの実施形態では、発光標識ヌクレオチドは、図8Nに図示されている一般的形態8-100として提示することが可能である。示されているように、発光標識ドメイン(星型形状、点線)は、二量体化ドメインを介し、ヌクレオチドドメイン(円形状、点線)に対して非共有結合で連結されている。いくつかの実施形態では、二量体化ドメインとは、発光標識ドメインとヌクレオチドドメインとの間に非共有結合連結をもたらす領域を指す。例えば、いくつかの実施形態では、一般的構造8-100は、発光標識ドメインを備える標識オリゴヌクレオチド鎖8-110と、ヌクレオチドドメインを備える非標識オリゴヌクレオチド鎖8-120とを備える、相補的オリゴヌクレオチドダイマーである。オリゴヌクレオチド保護分子(例えば、オリゴヌクレオチドダイマー)の文脈において、ヌクレオチドドメインとは、成長中の核酸鎖へと(例えば、配列決定反応中に)組み込まれるように構成されている1つまたは複数のヌクレオチド(例えば、ヌクレオシドリン酸)を指すことを理解されたい。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のヌクレオチドは、1つまたは複数のヌクレオシド一リン酸もしくはヌクレオシドポリリン酸(例えば、ヌクレオシド二リン酸もしくは三リン酸、または3つを超える5’リン酸を有するヌクレオシド等)を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のヌクレオシドリン酸(例えば、ヌクレオシドポリリン酸)は、本出願に記載のように保護分子の一部を形成するオリゴヌクレオチド(例えば、非標識オリゴヌクレオチド鎖)に対して末端リン酸を通じて付着していてもよい。本出願に記載の組成物または方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態では、ヌクレオシドリン酸の(例えば、ヌクレオシドポリリン酸の)リン酸部分(例えば、ポリリン酸部分)は、1つもしくは複数のリン酸またはそれらの改変体を含む。例えば、いくつかの実施形態では、ヌクレオシドリン酸の(例えば、ヌクレオシドポリリン酸の)リン酸部分(例えば、ポリリン酸部分)は、リン酸エステル連結、チオエステル連結、ホスホルアミデート連結、アルキルホスホナート連結、他の適切な連結、または1つを超えるそのような修飾、またはそれらの2つ以上の組合せを含むことができる。いくつかの実施形態では、標識鎖および非標識鎖は、互いに対して(例えば、二量体化ドメイン内の鎖が、例えば、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、少なくとも99%、または100%の相補性を互いに対して有し得る、二量体化ドメインの長さにわたって)実質的に相補的である。そのような実施形態では、標識鎖および非標識鎖は、二本鎖構築物を形成するようにアニーリングされてもよく、ここでアニーリングされた部分が二量体化ドメインを構成し、2つの鎖のアニーリングが発光標識ヌクレオチド8-100を生成する。いくつかの実施形態では、二量体化ドメインは、5~100塩基対、例えば10~50塩基対、15~45塩基対、または例えば以下の非限定的なサイズのうちのいずれかの組合せに基づく他の範囲の塩基対を含有する。いくつかの実施形態では、二量体化ドメインは、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも15、少なくとも20、少なくとも25、少なくとも30、少なくとも35、少なくとも45、少なくとも50、少なくとも55、少なくとも60、少なくとも65、少なくとも70、少なくとも75、少なくとも100、少なくとも250の塩基対を含有する。いくつかの実施形態では、二量体化ドメインは、500以下、300以下、200以下、150以下、100以下、75以下、70以下、65以下、60以下、55以下、50以下、45以下、40以下、35以下、30以下、25以下、20以下、15以下、10以下の塩基対を含有する。いくつかの実施形態では、二量体化ドメインは、15塩基対を含有する。いくつかの実施形態では、二量体化ドメインは、30塩基対を含有する。いくつかの実施形態では、二量体化ドメインは、45塩基対を含有する。
【0201】
いくつかの実施形態では、発光標識ドメインおよびヌクレオチドドメインは、有利なことには、二量体化ドメインによって隔てられていてよい。例えば、いくつかの実施形態では、一般的形態8-100が二本鎖オリゴヌクレオチド構築物を指す場合、発光標識ドメインおよびヌクレオチドドメインは、アニーリングされたオリゴヌクレオチドダイマーの反対の両末端において図示されている。したがって、いくつかの実施形態では、発光標識ドメインおよびヌクレオチドドメインは各々、それぞれ標識鎖および非標識鎖の3’末端またはその近くに付着している(例えば、最も3’側のヌクレオチドに付着している、オリゴヌクレオチド配列内の最も3’側のヌクレオチドの1%、2%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、または45%内にあるヌクレオチドに付着している)。いくつかの実施形態では、発光標識ドメインおよびヌクレオチドドメインは各々、それぞれ標識鎖および非標識鎖の5’末端またはその近くに付着している(例えば、最も5’側のヌクレオチドに付着している、オリゴヌクレオチド配列内の最も5’側のヌクレオチドの1%、2%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、または45%内にあるヌクレオチドに付着している)。
【0202】
図8Nに示されているように、標識鎖8-110は、発光標識ドメイン(星型形状、点線)を備える。いくつかの実施形態では、発光標識ドメインとは、1つまたは複数の発光分子を有する標識鎖の領域を指す。例えば、いくつかの実施形態では、標識鎖8-111の発光標識ドメインは、1つの発光分子(星型形状、実線)からなる。いくつかの実施形態では、標識鎖8-112の発光標識ドメインは、2つの発光分子からなる。構造8-112に図示されているように、1つを超える発光分子を有する発光標識ドメインは、分岐構造に似ている場合がある。単一の標識鎖に含まれることになる発光分子の数は、所望の特性(例えば、寿命、強度、量子収量等のような発光特性)に基づいて、実行者に委ねられてよいことが理解されるべきである。発光標識ドメインに付着される発光分子の数の非限定的な例としては、2~10(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10)、10~15、15~20、または他の適切な数が挙げられる。発光分子は、線状構成、分岐構成、線状および分岐の組合せ、または他の構成で付着していてよい。したがって、一般的標識鎖8-113は、第1の発光分子と、2つの追加の分岐した発光標識部分(点線)とを有する発光標識ドメインと共に示されており、各発光標識部分は、1つまたは複数の発光分子を有する。
【0203】
いくつかの実施形態では、非標識鎖のヌクレオチドドメインが、同様の様式で設計され得る。例えば、図8Nに示されているように、いくつかの実施形態では、非標識鎖8-120は、ヌクレオチドドメイン(円形状、点線)を備える。いくつかの実施形態では、ヌクレオチドドメインとは、1つまたは複数のヌクレオチド(例えば、1つまたは複数のヌクレオシドポリリン酸)を有する非標識鎖の領域を指す。いくつかの実施形態では、非標識鎖8-121のヌクレオチドドメインは、1つのヌクレオチド(円形状、実線)からなる。いくつかの実施形態では、非標識鎖8-122のヌクレオチドドメインは、2つのヌクレオチドからなる。構造8-122に図示されているように、1つを超えるヌクレオチドを有するヌクレオチドドメインは、分岐構造に似ている場合がある。単一の非標識鎖上のヌクレオチドドメインに含まれることになるヌクレオチドの数は、所望の特性(例えば、反応速度論、解読長、重合酵素に対する近傍性等のような、核酸配列決定反応における特性)に基づいて、実行者に委ねられてよいことが理解されるべきである。ヌクレオチドドメインに付着されるヌクレオチドの数の非限定的な例としては、2~10(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10)、10~15、15~20、または他の適切な数が挙げられる。ヌクレオチドは、線状構成、分岐構成、線状および分岐の組合せ、または他の構成で付着していてよい。したがって、一般的非標識鎖8-123は、第1のヌクレオチドと、2つの追加の分岐したヌクレオチド部分(点線)とを有するヌクレオチドドメインと共に示されており、各ヌクレオチド部分は、1つまたは複数のヌクレオチドを有する。分岐ヌクレオチドの非限定的な例は図8Oに示されており、この図には、分岐チミジンオリゴヌクレオチドリンカーを介してヌクレオチドドメイン内に1つを超えるヌクレオチド(Nu)を有する様々な非標識鎖構成が図示されている。例としてチミジンがリンカー内に図示されているが、いくつかの実施形態では、代替的なオリゴヌクレオチドリンカーが使用され得る(例えば、シチジン、ウリジン、アデノシン、グアノシン、またはそれらの任意の組合せ)。いくつかの実施形態では、非標識鎖は、例えば核酸配列決定反応において有用であり得る、追加の修飾を含み得る。
【0204】
図8Nに図示されているように、ヌクレオチドドメインを備える非標識鎖8-131は、エネルギー吸収性修飾(正方形形状、実線)をさらに含んでいてもよい。いくつかの実施形態では、エネルギー吸収性修飾とは、核酸配列決定反応の完全性を(例えば、標識の励起状態によって生成される反応性種のポリメラーゼに対する損傷効果から)保護する任意の化学的部分を指す。例えば、いくつかの実施形態では、エネルギー吸収性修飾は、次の、反応性種(例えば、反応性酸素種、フリーラジカル、または任意の三重項状態分子)を吸収すること、クエンチングすること、またはさもなければその効果を軽減すること;発光標識ドメインとヌクレオチドドメインとの間に立体障壁を提供すること;配列決定反応における解読長をエネルギー吸収性修飾の非存在下で行われた反応と比較して増大させること;配列決定反応における解読の正確性をエネルギー吸収性修飾の非存在下で行われた反応と比較して増大させること;またはそれらの任意の組合せのうちのいずれかにより、配列決定反応の完全性を保護する。
【0205】
示されているように、いくつかの実施形態では、エネルギー吸収性修飾は、ヌクレオチドドメインから反対側にある非標識鎖の末端またはその近くにある。一般的オリゴヌクレオチドダイマー8-100から理解されるべきであるが、非標識鎖8-131におけるエネルギー吸収性修飾は、有利なことには、アニーリングされた構築物において発光標識ドメインに隣接して配置され得る。したがって、いくつかの実施形態では、発光標識ドメインおよびヌクレオチドドメインがそれらのそれぞれの鎖の3’末端またはその近くに付着している場合、エネルギー吸収性修飾は、非標識鎖の5’末端またはその近くに付着している(例えば、最も5’側のヌクレオチドに付着している、オリゴヌクレオチド配列内の最も5’側のヌクレオチドの1%、2%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、または45%内にあるヌクレオチドに付着している)。いくつかの実施形態では、発光標識ドメインおよびヌクレオチドドメインが、それらのそれぞれの鎖の5’末端またはその近くに付着している場合、エネルギー吸収性修飾は、非標識鎖の3’末端またはその近くに付着している(例えば、最も3’側のヌクレオチドに付着している、オリゴヌクレオチド配列内の最も3’側のヌクレオチドの1%、2%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、または45%内にあるヌクレオチドに付着している)。いくつかの実施形態では、非標識鎖は、1つを超えるエネルギー吸収性修飾を含み得る。いくつかの実施形態では、エネルギー吸収性修飾は、相補的二量体化ドメインの一部ではないオリゴヌクレオチドオーバーハング(例えば、3’または5’オーバーハング)内に含まれていてもよい。オーバーハングは、任意の適切な長さ、例えば1~10(例えば、約5)、または10~20ヌクレオチド長(または他の適切な長さ)であってよい。
【0206】
例えば、いくつかの実施形態では、非標識鎖8-132は、2つのエネルギー吸収性修飾を含む。構造8-132に図示されているように、1つを超えるエネルギー吸収性修飾を有する非標識鎖は、分岐構造に似ている場合がある。非標識鎖は、例えば、所与のエネルギー吸収性修飾の特性または発光標識ドメイン内の発光分子の特性および/もしくは数によって異なり得る、任意の数のエネルギー吸収性修飾を含み得ることが理解されるべきである。エネルギー吸収性修飾(例えば、いずれか1つまたは両方の鎖に付着したもの)の数の非限定的な例としては、2~10(例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10)、10~15、15~20、または他の適切な数が挙げられる。エネルギー吸収性修飾は、線状構成、分岐構成、線状および分岐の組合せ、または他の構成で付着していてよい。したがって、一般的非標識鎖8-133は、第1のエネルギー吸収性修飾、および2つの追加の分岐したエネルギー吸収ドメイン(点線)と共に示されており、各エネルギー吸収ドメインは、1つまたは複数のエネルギー吸収性修飾を有する。
【0207】
いくつかの実施形態では、図8P図8Qに図示されている非限定的な構造に従って、1つまたは複数のエネルギー吸収性修飾が非標識鎖に対して行われてもよい。いくつかの実施形態では、以下に図示されている非限定的な構造に従って、1つまたは複数のエネルギー吸収性修飾が非標識鎖に対して行われてもよい。これらの例において、1つまたは複数のエネルギー吸収性修飾は、オリゴヌクレオチド鎖(例えば、非標識オリゴヌクレオチド鎖)の5’末端に付着したかたちで示されている。
【0208】
いくつかの実施形態では、核酸リンカーは、1つまたは複数のエネルギー吸収性修飾を含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のエネルギー吸収性修飾は、複数のクエンチング部分(例えば、三重項状態クエンチャー)を含む。クエンチング部分は、本明細書に記載の1つまたは複数の発光標識からの放射を検出可能にクエンチングすることができる任意の色素分子を含み得る。適切なクエンチング部分は、1つまたは複数の発光標識の色素分子の特定のタイプに基づいて選択されてよい。例えば、いくつかの実施形態では、適切なクエンチング部分は、発光標識の放射帯域と少なくともいくらかのスペクトルの重複を呈する吸収帯域を有する。いくつかの実施形態では、この重複は、十分なスペクトルの重複が存在することを条件として、クエンチング部分の最大吸光波長よりも低いかまたはさらには高い最大放射波長でドナーの放射が起こるかたちで生じ得る。いくつかの実施形態では、エネルギー移動は、ドナーの放射の、より高い電子状態のアクセプターへの移動を通じて起こる場合もある。いくつかの実施形態では、適切なクエンチング部分は、ポリメラーゼを損傷し得る1つまたは複数の発光標識からの特定のエネルギーレベルの放射を吸収することができる。そのような実施形態では、クエンチング部分は、放射スペクトルの中でシグナルとして(例えば、配列決定反応中に)検出されている部分を吸収することなく、放射スペクトルの中でポリメラーゼを損傷する可能性のある放射エネルギーレベルを含む部分を優先的に(例えば、選択的に)吸収するように選択されることが可能である。
【0209】
クエンチング部分として使用するのに適切な多様な化学反応性色素およびフルオロフォアは、当技術分野で公知である(例えば、MOLECULAR PROBES HANDBOOK、第6版、Richard P.Haugland編(1996年)、特に第1~3章;MOLECULAR PROBES HANDBOOK、第7版、Richard P.Haugland編;BIOPROBES 26(1997年10月);BIOPROBES 27(1998年2月);BIOPROBES 28(1998年5月);BIOPROBES 29(1998年11月);BIOPROBES 30(1999年1月);BIOPROBES 31(1999年5月):BIOPROBES 32(1999年12月);およびBIOPROBES 33(2000年2月)を参照のこと;これらは全て参照により本願明細書に援用される)。溶液中またはオリゴヌクレオチドにコンジュゲートされたときの候補色素のスペクトル特性は公知であるか、または分光蛍光光度計を使用して容易に測定される。
【0210】
いくつかの実施形態では、クエンチング部分は、ピレン、アントラセン、ナフタレン、アクリジン、スチルベン、インドールもしくはベンズインドール、オキサゾールもしくはベンゾオキサゾール、チアゾールもしくはベンゾチアゾール、4-アミノ-7-ニトロベンゾ-2-オキサ-1,3-ジアゾール(NBD)、シアニン、カルボシアニン、カルボスチリル、ポルフィリン、サリチラート、アントラニラート、アズレン、ペリレン、ピリジン、キノリン、クマリン(ヒドロキシクマリンおよびアミノクマリンならびにそれらのフッ素化誘導体およびスルホン化誘導体(参照により本願明細書に援用される、ギーら(Gee et al.)に対する米国特許第5,830,912号(1998年)およびワンら(Wang et al.)に対する米国特許第5,696,157号(1997年)に記載されている)を含む、ポリアザインダセン(例えば、全て参照により本願明細書に援用される、ハウグランドら(Haugland,et al.)に対する米国特許第4,774,339号(1988年);カンら(Kang,et al.)に対する米国特許第5,187,288号(1993年);ハウグランドら(Haugland,et al.)に対する米国特許第5,248,782号(1993年);カンら(Kang,et al.)に対する米国特許第5,274,113号(1993年);カンら(Kang,et al.)に対する同第5,433,896号(1995年);ウーら(Wu et al.)に対する米国特許第6,005,113号(1999年))、キサンテン、オキサジンもしくはベンゾオキサジン、カルバジン(参照により援用される、コリー(Corey)に対する米国特許第4,810,636号(1989年))、またはフェナレノンもしくはベンズフェナレノン(参照により援用される、米国特許第4,812,409号、バッブら(Babb et al.)(1989年))である。
【0211】
いくつかの実施形態では、クエンチング部分は非蛍光色素である。例えば、いくつかの実施形態では、クエンチング部分は、アゾ色素(例えばDABCYLまたはDABSYL色素およびそれらの構造類似体)、トリアリールメタン色素、例えばマラカイトグリーンまたはフェノールレッド、4’,5z-ジエーテル置換フルオレセイン(米国特許第4,318,846号(1982年))、または非対称シアニン色素クエンチャー(PCT国際出願第WO9937,717号(1999年))から選択されることが可能である。
【0212】
いくつかの実施形態では、核酸リンカーは、2つ以上の(例えば、3つの)クエンチング部分を有する非標識鎖を含む。例えば、いくつかの実施形態では、非標識鎖は、以下に図示されるトリス-トロロックス修飾鎖を含む。しかしながら、他の同様の構造が使用され、核酸リンカーに(例えば、発光標識とヌクレオシドポリリン酸との間の位置において)組み込まれてもよい。
【0213】
【化4】
【0214】
いくつかの実施形態では、3つのクエンチング部分を含む非標識鎖は、トリス-TEMPO修飾鎖:
【0215】
【化5】
【0216】
である。
いくつかの実施形態では、核酸リンカーは、発色団として機能しない1つまたは複数のエネルギー吸収性修飾を含む。そのような実施形態では、1つまたは複数のエネルギー吸収性修飾は、発光標識がポリメラーゼと相互作用することを防止する立体障壁を、発光標識とヌクレオシドポリリン酸との間に提供することによって機能することができる。いくつかの実施形態では、核酸リンカーは、立体障壁として機能する分岐高分子構造を備える。いくつかの実施形態では、分岐高分子構造は、2つ以上のポリエーテル系構造を備える。例えば、いくつかの実施形態では、分岐高分子構造は、非標識鎖の末端修飾を図示する以下の構造に示されているように、ポリエチレングリコール(PEG)系構造を備える。しかしながら、他の同様の分岐構造が使用され、核酸リンカーに(例えば、発光標識とヌクレオシドポリリン酸との間の位置において)組み込まれてもよいことが理解されるべきである。
【0217】
【化6】
【0218】
いくつかの実施形態では、核酸リンカーは、立体障壁として機能する樹状構造を備える。例えば、いくつかの実施形態では、核酸リンカーは、末端修飾された非標識鎖を図示する以下の構造に示されるように、ポリエステル-16-ヒドロキシルビス-MPAデンドロン修飾を有する非標識鎖を含む。分岐の数は、特定の標識ヌクレオチド構成に従って最適化され得るため、任意の数の分岐が、これらおよび同様の実施形態における使用のために想定されることが理解されるべきである。例えば、いくつかの実施形態では、複数の発光標識を有する核酸リンカーは、単一の発光標識を有する同様のリンカーと比べてより大きな立体障壁を提供するために、より多くの数の分岐を必要とする場合がある。
【0219】
【化7】
【0220】
いくつかの実施形態では、末端修飾された非標識鎖は、ポリエステル-8-ヒドロキシルビス-MPAデンドロン修飾鎖:
【0221】
【化8】
【0222】
である。
上記のように、いくつかの実施形態では、エネルギー吸収性修飾は、配列決定反応の完全性を保護する非標識鎖に対する修飾である。本開示において提供される技術によれば、核酸配列決定反応は、ヌクレオチドの発光特性が、あるタイプのヌクレオチドに固有である、複数のタイプの発光標識ヌクレオチドを使用して行われてもよい。したがって、いくつかの実施形態では、これらの固有の発光特性のうちの1つまたは複数の検出は、特定のタイプのヌクレオチドの識別を可能にする。このように、いくつかの実施形態では、1つまたは複数の発光標識ヌクレオチドに対して行われたいかなるエネルギー吸収性修飾も、それぞれの固有の発光特性に基づいて特定のタイプのヌクレオチドを検出する能力に干渉してはならない。例えば、様々な色素(Chromis530N、Dylight554R1、およびCy3B)が各々、標識鎖に付着され、各標識鎖が、6-グリコース-オーバーハングのエネルギー吸収性修飾または6-グリセロールデンドリマーオーバーハングのエネルギー吸収性修飾のいずれかを有する非標識鎖にアニーリングされ、発光強度および寿命値が、各オリゴヌクレオチドダイマーに関して測定された。表3に提示されている結果に示されているように、エネルギー吸収性修飾に起因する発光特性のあらゆる変化が、色素分子間で近似的な規模であった。したがって、発光標識オリゴヌクレオチドダイマーは、混合物中の各々の識別を可能にする固有の発光特性を保持した。
【0223】
【表3】
【0224】
したがって、発光標識は、分子に直接的に、例えば結合により付着していてもよく、またはリンカーもしくはリンカー構成を介して付着していてもよい。ある実施形態では、リンカーは、1つまたは複数のリン酸を含む。いくつかの実施形態では、ヌクレオチドは、1つまたは複数のリン酸を含むリンカーにより発光標識に接続されている。1つまたは複数のリン酸を有すると記載されているリンカーは、リンカー構造内に存在する(ヌクレオチドの1つまたは複数のリン酸に直接的に付着していない)1つまたは複数のリン酸を含むリンカーを指す。いくつかの実施形態では、ヌクレオチドは、3つ以上のリン酸を含むリンカーにより発光標識に接続されている。いくつかの実施形態では、ヌクレオチドは、4つ以上のリン酸を含むリンカーにより発光標識に接続されている。
【0225】
ある実施形態では、リンカーは、脂肪族鎖を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、-(CH-を含み、式中、nは、1以上20以下の整数である。いくつかの実施形態では、nは、1以上10以下の整数である。ある実施形態では、リンカーは、ヘテロ脂肪族鎖を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、ポリエチレングリコール部分を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、ポリプロピレングリコール部分を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、-(CHCHO)-を含み、式中、nは、1以上20以下の整数である。いくつかの実施形態では、リンカーは、-(CHCHO)-を含み、式中、nは、1以上10以下の整数である。ある実施形態では、リンカーは、-(CHCHO)-を含む。ある実施形態では、リンカーは、1つまたはアリーレンを含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、1つまたは複数のフェニレン(例えば、パラ置換フェニレン)を含む。ある実施形態では、リンカーは、キラル中心を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、プロリンまたはその誘導体を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、プロリンヘキサマーまたはその誘導体を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、クマリンまたはその誘導体を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、ナフタレンまたはその誘導体を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、アントラセンまたはその誘導体を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、ポリフェニルアミドまたはその誘導体を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、クロマノンまたはその誘導体を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、4-アミノプロパルギル-L-フェニルアラニンまたはその誘導体を含む。ある実施形態では、リンカーは、ポリペプチドを含む。
【0226】
いくつかの実施形態では、リンカーは、オリゴヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、2つのアニーリングされたオリゴヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のオリゴヌクレオチドは、デオキシリボースヌクレオチド、リボースヌクレオチド、またはロックドリボースヌクレオチドを含む。
【0227】
ある実施形態では、リンカーは、光安定剤を含む。いくつかの実施形態では、リンカーは、以下の式:
【0228】
【化9】
【0229】
であり、式中、Pは光安定剤であり、dと表記されている位置は、発光標識に付着しており、bと表記されている位置は、ヌクレオチドに付着している。いくつかの実施形態では、dと表記されている位置は、本明細書に記載されているリンカーにより発光標識に付着している。いくつかの実施形態では、bと表記されている位置は、本明細書に記載されているリンカーによりヌクレオチドに付着している。
【0230】
ある実施形態では、リンカーは1つまたは複数のリン酸、脂肪族鎖、ヘテロ脂肪族鎖、および1つまたは複数のアミド(例えば、-C(=O)NH-)を含む。ある実施形態では、1つまたは複数のリン酸および脂肪族鎖を含むリンカーは、図9に図示されている例示的な反応スキーム9-1を介して合成されることが可能である。ある実施形態では、リンカーは、1つまたは複数の官能化可能な反応性部分(例えば、アセチレン基、アジド基)を含有する。
【0231】
等価物と範囲
本出願の様々な態様は、単独で、組み合わせて、または前述の実施形態で具体的に考察されていない様々な配置で使用されてもよく、したがって、その適用において、前述の詳細な説明に示されるか、または図面に図示される構成要素の詳細および配置に対するその適用には限定されない。例えば、一実施形態に記載される態様は、他の実施形態に記載される態様と任意の方式で組み合わされてもよい。
【0232】
また、本発明は、少なくとも1つの実施例が提供された方法として具体化されてもよい。方法の一部として実行される行為は、任意の適切な方法で順序付けされてもよい。したがって、図示されている実施形態では連続的な行為として表されているが、いくつかの行為を同時に実行することを含み得る、図示されていない順序で行為が行われる実施形態が構築されてもよい。
【0233】
特許請求の範囲の要素を修飾する、特許請求の範囲における「第1」、「第2」、「第3」などのような序数の用語の使用は、それ自身では、ある方法の行為を行う際、1つのクレーム要素の任意の順序的優先順位、重要性優先順位、または順序が、別の順序または時間的順序を上回っていることを暗示するのではなく、クレーム要素を識別するために同じ名前を有する(ただし、序数の用語の使用について)別の要素から、ある一定の名称を有する1つのクレーム要素を識別するための標識としてのみ使用される。
【0234】
また、本明細書で使用される専門用語および用語は、説明のためのものであり、限定的であると見なされるべきではない。「含む、包含する、が挙げられる(including)」、「含む、包含する(comprising)」、または「有する(having)」、「含む、備える(containing)」、「含む、包含する、備える(involving)」、およびそれらの変形とは、その後に列挙された項目およびその等価物ならびに追加の項目を包含することを意味する。
(付記)
好ましい実施形態として、上記実施形態から把握できる技術的思想について、以下に記載する。
[項目1]
核酸を介して1つまたは複数のヌクレオシドポリリン酸に接続されている1つまたは複数の発光標識を含む発光標識ヌクレオチドであって、前記核酸が保護要素を含む発光標識ヌクレオチド。
[項目2]
前記核酸が一本鎖である、項目1に記載の発光標識ヌクレオチド。
[項目3]
前記核酸が二本鎖である、項目1に記載の発光標識ヌクレオチド。
[項目4]
前記核酸が、
第1のオリゴヌクレオチド鎖であって、前記第1のオリゴヌクレオチド鎖に沿ったいずれの側にも1つまたは複数のヌクレオチドを有する内部位置において付着している前記1つまたは複数の発光標識を含む、第1のオリゴヌクレオチド鎖と、
前記1つまたは複数のヌクレオシドポリリン酸を含む第2のオリゴヌクレオチド鎖であって、前記第2のオリゴヌクレオチド鎖が前記第1のオリゴヌクレオチド鎖にアニーリングされている、第2のオリゴヌクレオチド鎖とを含む、項目3に記載の発光標識ヌクレオチド。
[項目5]
2つ以上の前記ヌクレオシドポリリン酸が、複数のチミジンヌクレオチドを含むリンカーを介して前記核酸に付着している、項目1乃至4のいずれか1項に記載の発光標識ヌクレオチド。
[項目6]
前記リンカーが分岐リンカーを含む、項目5に記載の発光標識ヌクレオチド。
[項目7]
前記保護要素が、少なくとも1つのエネルギー吸収性修飾を含む、項目1乃至6のいずれか1項に記載の発光標識ヌクレオチド。
[項目8]
前記少なくとも1つのエネルギー吸収性修飾が、三重項状態クエンチャーを含む、項目7に記載の発光標識ヌクレオチド。
[項目9]
前記少なくとも1つのエネルギー吸収性修飾が、デンドロン修飾を含む、項目7に記載の発光標識ヌクレオチド。
[項目10]
前記少なくとも1つのエネルギー吸収性修飾が、単糖-TEG、二糖、N-アセチル単糖、TEMPO-TEG、トロロックス-TEG、またはグリセロールデンドリマーを含む、項目7に記載の発光標識ヌクレオチド。
[項目11]
前記保護要素が、1つまたは複数の非標識ステムループを含む、項目1乃至10のいずれか1項に記載の発光標識ヌクレオチド。
[項目12]
前記1つまたは複数の発光標識のうちの少なくとも1つが、前記1つまたは複数の非標識ステムループによって前記1つまたは複数のヌクレオシドポリリン酸から隔てられているステムループのループにおいて付着している、項目11に記載の発光標識ヌクレオチド。
[項目13]
前記第1および第2のオリゴヌクレオチド鎖のうちの少なくとも1つにアニーリングされた第3のオリゴヌクレオチド鎖をさらに含む、項目4乃至12のいずれか1項に記載の発光標識ヌクレオチド。
[項目14]
前記第1、第2、および第3のオリゴヌクレオチド鎖のうちの少なくとも1つにアニーリングされた第4のオリゴヌクレオチド鎖をさらに含む、項目13に記載の発光標識ヌクレオチド。
[項目15]
前記オリゴヌクレオチド鎖がホリデイジャンクションを形成する、項目13に記載の発光標識ヌクレオチド。
[項目16]
鋳型核酸の配列を決定するための方法であって、
(i)標的容積部中の複合体を複数のタイプの発光標識ヌクレオチドに曝露する工程であって、前記複合体が、鋳型核酸、プライマー、および重合酵素を含み、各タイプの発光標識ヌクレオチドが、項目1に記載の発光標識ヌクレオチドを含む工程、
(ii)1つまたは複数の励起エネルギーの一連のパルスを、前記標的容積部の近傍へと向かわせる工程、
(iii)前記プライマーを含む核酸内への順次組み込み中に、発光標識ヌクレオチドからの複数の放射光子を検出する工程、ならびに
(iv)前記放射光子のタイミングおよび任意選択で周波数を決定することにより、組み込まれたヌクレオチドの配列を識別する工程を備える方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D-1】
図8D-2】
図8E
図8F
図8G
図8H
図8I
図8J
図8K
図8L
図8M
図8N
図8O
図8P
図8Q
図9