(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-10
(45)【発行日】2024-07-19
(54)【発明の名称】眼鏡
(51)【国際特許分類】
G02C 1/04 20060101AFI20240711BHJP
G02C 5/16 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
G02C1/04
G02C5/16
(21)【出願番号】P 2023218649
(22)【出願日】2023-12-25
【審査請求日】2023-12-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】399037933
【氏名又は名称】株式会社シャルマン
(74)【代理人】
【識別番号】100103805
【氏名又は名称】白崎 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100126516
【氏名又は名称】阿部 綽勝
(74)【代理人】
【識別番号】100132104
【氏名又は名称】勝木 俊晴
(72)【発明者】
【氏名】水野 忠佳
【審査官】吉川 陽吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-194629(JP,A)
【文献】特開平08-015652(JP,A)
【文献】特開平09-090284(JP,A)
【文献】特開2023-102916(JP,A)
【文献】中国実用新案第214375635(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第112658177(CN,A)
【文献】特開2001-290107(JP,A)
【文献】特開平11-249082(JP,A)
【文献】特開2014-059544(JP,A)
【文献】米国特許第05987653(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 1/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対のブロー部、両方の前記ブロー部の端部同士を架橋するブリッジ部、及び、前記ブロー部又はブリッジ部に取り付けられたレンズ部、を有するフロント部と、
該フロント部の両端から後方に延出するテンプル部と、
を備え、
前記ブリッジ部及び前記ブロー部が、何れも、線材からなるものであり、且つ、弾性変形可能であり、
前記ブロー部が、少なくとも、前方に位置する第1ブロー線材と、該第1ブロー線材の後方に位置する第2ブロー線材とを有し、
前記第1ブロー線材及び前記第2ブロー線材が、何れも、弾性変形可能であり、
前記第1ブロー線材及び前記第2ブロー線材が、前記ブリッジ部側の端部、及び、前記テンプル部側の端部、で互いに固定されており、
上面視で、前記第1ブロー線材及び前記第2ブロー線材の間には隙間が設けられている眼鏡。
【請求項2】
一対のブロー部、両方の前記ブロー部の端部同士を架橋するブリッジ部、及び、前記ブロー部又はブリッジ部に取り付けられたレンズ部、を有するフロント部と、
該フロント部の両端から後方に延出するテンプル部と、
を備え、
前記ブリッジ部及び前記ブロー部が、何れも、線材からなるものであり、且つ、弾性変形可能であり、
前記ブリッジ部が、少なくとも、前方に位置する第1ブリッジ線材と、該第1ブリッジ線材の後方に位置する第2ブリッジ線材とを有し、
前記ブロー部が、少なくとも、前方に位置する第1ブロー線材と、該第1ブロー線材の後方に位置する第2ブロー線材とを有し、
前記第1ブリッジ線材、前記第2ブリッジ線材、前記第1ブロー線材及び前記第2ブロー線材が、何れも、弾性変形可能な上面視弓状であり、
前記第1ブリッジ線材と、前記第1ブロー線材とが連続する線材であり、
前記第2ブリッジ線材と、前記第2ブロー線材とが連続する線材であり、
前記第1ブリッジ線材及び前記第2ブリッジ線材が、左右の端部でそれぞれ互いに固定されており、
上面視で、前記第1ブリッジ線材及び前記第2ブリッジ線材の間には第1隙間が設けられ、
前記第1ブロー線材及び前記第2ブロー線材が、前記ブリッジ部側の端部、及び、前記テンプル部側の端部、で互いに固定されており、
上面視で、前記第1ブロー線材及び前記第2ブロー線材の間には第2隙間が設けられている眼鏡。
【請求項3】
一対のブロー部、両方の前記ブロー部の端部同士を架橋するブリッジ部、及び、前記ブロー部又はブリッジ部に取り付けられたレンズ部、を有するフロント部と、
該フロント部の両端から後方に延出するテンプル部と、
前記テンプル部の後方に設けられた耳当て部と、
を備え、
前記ブリッジ部、前記ブロー部及び前記テンプル部が、何れも、線材からなるものであり、且つ、弾性変形可能であり、
前記テンプル部が、少なくとも、外方に位置する第1テンプル線材と、該第1テンプル線材の内方に位置する第2テンプル線材とを有し、
前記第1テンプル線材及び前記第2テンプル線材が、何れも、弾性変形可能な上面視弓状であり、
前記第1テンプル線材及び前記第2テンプル線材が、前記フロント部側の端部、及び、前記耳当て部側の端部、で互いに固定されており、
上面視で、前記第1テンプル線材及び前記第2テンプル線材の間には隙間が設けられている眼鏡。
【請求項4】
前記線材が、金属であり、直径0.5~1.5mmの丸線状である請求項1~
3のいずれか1項に記載の眼鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼鏡に関し、更に詳しくは、軽量でフィット感に優れる眼鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
眼鏡は、一般に、レンズが取り付けられたフロント部と、フロント部の両側に設けられたヒンジ部と、ヒンジ部に回動可能に取り付けられたテンプル部とを備えている。
そして、眼鏡は、フロント部が目の前に位置するように配置され、テンプル部で装着者の頭部を挟み込むことにより装着される。
【0003】
ところで、眼鏡においては、フロント部の重量が大きいため、装着者の運動等により、眼鏡のフロント部が上下にズレ易いという問題がある。
一方で、眼鏡のずれを抑制するために、テンプル部で強く頭部を挟み込む方法も考えられるが、この場合、頭部が締め付けられることになるので、頭痛等を引き起こす原因となる。このため、眼鏡においては、眼鏡のズレが生じ難く、且つ、フィット感に優れるものが求められている。
【0004】
これに対し、フィット感を向上させる目的で開発された眼鏡が知られている。
例えば、テンプル部材とモダン部材との弾力性を異なるものとすることで、眼鏡フレームを顔にフィットさせる機能と、眼鏡フレームをその位置に固定する(外れないようにする)機能とを同時に果たすことが可能な眼鏡が知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、左右一対のレンズと、前記各レンズの外側端部に接続されたヨロイ部材と、ヒンジ構造を介して前記ヨロイ部材に回動可能にその基端部が接続されたテンプル部材とを備え、前記テンプル部材が金属線材からなるものであり、開いた状態において、上下方向から視て左右方向に変位するように段状に屈曲した第1段曲げ部と、左右方向から視て上下方向に変位するように段状に屈曲した第2段曲げ部とが形成されている眼鏡が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-150040号公報
【文献】特開2023-102916号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1及び2に記載の眼鏡においては、フィット感について一定の効果は認められるものの、未だ改善の余地はあり、十分に優れるとまでは言えない。
また、装着者の頭部の形状には個人差があるところ、上記特許文献1及び2に記載の眼鏡においては、十分なフィット感が得られる場合が限定されている。
また、上記特許文献1及び2に記載の眼鏡においては、眼鏡のズレについては、十分に抑制できるとは言えない。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、多くの装着者の頭部の形状に対応して、十分なフィット感を発揮することができ、且つ、眼鏡のズレを十分に抑制することができる眼鏡を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討したところ、ブリッジ部及びブロー部を線材からなるものとすると共に、何れも弾性変形可能とすることにより、上記問題点を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
本発明は、一対のブロー部、両方のブロー部の端部同士を架橋するブリッジ部、及び、ブロー部又はブリッジ部に取り付けられたレンズ部、を有するフロント部と、該フロント部の両端から後方に延出するテンプル部と、を備え、ブリッジ部及びブロー部が、何れも、線材からなるものであり、且つ、弾性変形可能である眼鏡である。
【0010】
本発明の眼鏡においては、ブリッジ部が、少なくとも、前方に位置する第1ブリッジ線材と、該第1ブリッジ線材の後方に位置する第2ブリッジ線材とを有し、第1ブリッジ線材及び第2ブリッジ線材が、何れも、弾性変形可能であり、第1ブリッジ線材及び第2ブリッジ線材が、左右の両端部で互いに固定されていることが好ましい。
このとき、第1ブリッジ線材及び第2ブリッジ線材が、何れも、上面視弓状であることが好ましい。
また、上面視で、第1ブリッジ線材及び第2ブリッジ線材の間に隙間が設けられていることが好ましい。
【0011】
本発明の眼鏡においては、ブロー部が、少なくとも、前方に位置する第1ブロー線材と、該第1ブロー線材の後方に位置する第2ブロー線材とを有し、第1ブロー線材及び第2ブロー線材が、何れも、弾性変形可能であり、第1ブロー線材及び第2ブロー線材が、ブリッジ部側の端部、及び、テンプル部側の端部、で互いに固定されていることが好ましい。
このとき、第1ブロー線材及び第2ブロー線材が、何れも、上面視弓状であることが好ましい。
また、上面視で、第1ブロー線材及び第2ブロー線材の間に隙間が設けられていることが好ましい。
【0012】
本発明の眼鏡においては、第1ブリッジ線材と、第1ブロー線材とが連続する線材であり、第2ブリッジ線材と、第2ブロー線材とが連続する線材であることが好ましい。
【0013】
本発明の眼鏡においては、テンプル部の後方に設けられた耳当て部を更に備え、テンプル部が、線材からなるものであり、弾性変形可能であることが好ましい。
【0014】
本発明の眼鏡においては、テンプル部が、少なくとも、外方に位置する第1テンプル線材と、該第1テンプル線材の内方に位置する第2テンプル線材とを有し、第1テンプル線材及び第2テンプル線材が、何れも、弾性変形可能な上面視弓状であり、第1テンプル線材及び第2テンプル線材が、フロント部側の端部、及び、耳当て部側の端部、で互いに固定されており、上面視で、第1テンプル線材及び第2テンプル線材の間には隙間が設けられていることが好ましい。
【0015】
本発明の眼鏡においては、線材が、金属であり、直径0.5~1.5mmの丸線状であることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の眼鏡においては、ブリッジ部及びブロー部が弾性変形可能となっているので、テンプル部が装着者の頭部を挟持する際に生じる左右方向の負荷が、ブロー部及びブリッジ部の湾曲により吸収されることになる。
その結果、多くの装着者の頭部の形状に応じて、眼鏡を十分にフィットさせることが可能となる。
【0017】
これに加え、テンプル部も弾性変形可能となっている場合、装着者の頭部がいわゆる弾性体で囲まれることになる。
この場合の眼鏡は、テンプル部自体が装着者の頭部の形状に沿うことで、ブリッジ部及びブロー部だけでなく、テンプル部も頭部を挟持する際に生じる左右方向の負荷を吸収するので、より十分なフィット感を発揮させることが可能となる。
また、フィット感が向上するため、頭部を挟み込む負荷も極力小さくすることができる。
【0018】
本発明の眼鏡においては、ブリッジ部及びブロー部が、線材からなるので、フロント部を極めて軽量とすることができる。これにより、眼鏡のズレが生じることを抑制することができる。
また、ブリッジ部及びブロー部が線材からなるため、頭部の傾斜面へのフィッティングがし易くなる。
また、ブリッジ部及びブロー部が線材からなるため、意匠性(審美性)にも優れるものとなる。
【0019】
これに加え、テンプル部も線材からなる場合、眼鏡全体としても、極めて軽量なものとすることができる。
また、ブリッジ部、ブロー部及びテンプル部に一体感があり、意匠性にもより優れるものとなる。
【0020】
本発明の眼鏡においては、ブリッジ部が、少なくとも、第1ブリッジ線材及び第2ブリッジ線材を有する場合、これらの左右の両端部がそれぞれ互いに固定されることで、剛性を向上させることができる。
これにより、あらゆる方向に撓み変形し過ぎてしまうことで眼鏡のズレ等が発生することを抑制し、眼鏡としての形態を維持する安定性が向上する。
【0021】
また、第1ブリッジ線材及び第2ブリッジ線材を上面視弓状とすることにより、装着者の頭部に沿う形状とすることができ、所定の方向(例えば、テンプル部の開閉方向)に適度な弾性を付与することが可能となる。
このとき、これらの間に隙間を設けることにより、一方の線材の弾性変形を他方の線材が阻害することを防止することができる。
すなわち、ブリッジ部が十分に弾性変形することを担保することができる。
【0022】
同様に、ブロー部が、少なくとも、第1ブロー線材及び第2ブロー線材を有する場合、これらのブリッジ部側の端部、及び、テンプル部側の端部、が互いに固定されることで、剛性を向上させることができる。
これにより、あらゆる方向に撓み変形し過ぎてしまうことで眼鏡のズレ等が発生することを抑制し、眼鏡としての形態を維持する安定性が向上する。
【0023】
また、第1ブロー線材及び第2ブロー線材を上面視弓状とすることにより、装着者の頭部に沿う形状とすることができ、所定の方向(例えば、テンプル部の開閉方向)に適度な弾性を付与することが可能となる。
このとき、これらの間に隙間を設けることにより、一方の線材の弾性変形を他方の線材が阻害することを防止することができる。すなわち、ブロー部が十分に弾性変形することを担保することができる。
【0024】
同様に、テンプル部が、少なくとも、第1テンプル線材及び第2テンプル線材を有する場合、これらのフロント部側の端部、及び、耳当て部の端部、が互いに固定されることで、剛性を向上させることができる。
これにより、あらゆる方向に撓み変形し過ぎてしまうことで眼鏡のズレ等が発生することを抑制し、眼鏡としての形態を維持する安定性が向上する。
【0025】
また、第1テンプル線材及び第2テンプル線材を上面視弓状とすることにより、装着者の頭部に沿う形状とすることができ、所定の方向(例えば、テンプル部の開閉方向)に適度な弾性を付与することが可能となる。
このとき、これらの間に隙間を設けることにより、一方の線材の弾性変形を他方の線材が阻害することを防止することができる。
すなわち、テンプル部が十分に弾性変形することを担保することができる。
【0026】
本発明の眼鏡においては、第1ブリッジ線材と第1ブロー線材とを連続する線材とし、第2ブリッジ線材と第2ブロー線材とを連続する線材とすることにより、製造における工程数を減らすことができる。
また、これらの連続性を有する点が、意匠性をより一層際立てるものとすることができる。
【0027】
また、上述した線材の形状として、丸線状を選択することにより、容易に湾曲させることが可能となり、また、弾性変形する方向が、テンプル部が回動する回動面、若しくは回動面に平行な面(以下「回動平行面」という。)における任意の方向(以下「回動平行面方向」という。)だけでなく、線材のねじれ方向にも弾性力を発揮することが可能となる。
これにより、仮に、予期しない方向から負荷が加わったとしても、それを吸収することが可能となり、眼鏡が破損等し難くなる。
また、この場合の眼鏡は、回動平行面方向及びねじれ方向に弾性変形が可能となるので、より多くの装着者の頭部の形状に応じて、十分にフィットさせることが可能となる。
【0028】
このとき、上述した線材を金属とし、その直径を上記範囲内とすることにより、適度な剛性を付与することができる。これにより、あらゆる方向に撓み変形し過ぎてしまうことで眼鏡のズレ等が発生することを抑制し、眼鏡としての形態を維持する安定性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1は、本発明に係る眼鏡の一実施形態を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る眼鏡において、フロント部を弾性変形させた状態を説明するための平面図である。
【
図3(a)】
図3(a)は、本実施形態に係る眼鏡を示す平面図である。
【
図3(b)】
図3(b)は、
図3(a)に示す眼鏡の正面図である。
【
図3(c)】
図3(c)は、
図3(a)に示す眼鏡の側面図である。
【
図4】
図4は、本実施形態に係る眼鏡において、テンプル部の開閉の状態を説明するための平面図である。
【
図5】
図5は、本実施形態に係る眼鏡において、フロント部及びテンプル部を弾性変形させた状態を説明するための平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。
また、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0031】
図1は、本発明に係る眼鏡の一実施形態を示す斜視図である。
図1に示すように、本実施形態に係る眼鏡100は、フロント部Fと、該フロント部の両端の智部Tから後方に延出するテンプル部4と、テンプル部4の後方に設けられた耳当て部5と、ブリッジ部2に取り付けられた一対の鼻パッド部6とを備える。
そして、フロント部Fは、一対のブロー部1と、両方のブロー部1の内側の端部同士を架橋するブリッジ部2と、ブロー部1に取り付けられたレンズ部8とを備える。
なお、眼鏡100は、ブリッジ部2を中心に、左右対称な構造となっている。
【0032】
ここで、本明細書においては、眼鏡100を装着した場合の顔側を「前」、後頭部側を「後」、正面視における顔の幅方向を「左右方向」としている。
また、眼鏡100を装着した場合のテンプル部に対して、装着者の頭部側を「内」、その反対側を「外」としている。
また、ヒンジ部3より前方の部分、すなわち、少なくとも、ブロー部1、ブリッジ部2、レンズ部8及び鼻パッド部6を有する部分をフロント部Fという。
また、「上面視弓状」とは、上面からみて全体的に弓状となっているものである。
すなわち、線材自体が波状やジグザグ状であっても、全体的に弓状であればこれに含まれる。
また、単に「線材」という場合、少なくとも、ブロー部1を構成する線材(第1ブロー線材1a及び第2ブロー線材1b)、及び、ブリッジ部2を構成する線材(第1ブリッジ線材2a及び第2ブリッジ線材2b)を指し、テンプル部3も線材(第1テンプル線材4a及び第2テンプル線材4b)で構成されている場合、これも含まれる。
また、本実施形態に係る眼鏡100においては、智部Tに、ヒンジ部3が設けられている場合について説明する。
【0033】
(フロント部)
眼鏡100においては、ブリッジ部2及びブロー部1が線材からなり、且つ、弾性変形可能な上面視弓状となっている。なお、ブリッジ部2及びブロー部1の詳細については、後述する。
眼鏡100においては、ブリッジ部2及びブロー部1が線材からなるものであるので、フロント部Fを極めて軽量とすることができる。これにより、眼鏡のズレが生じることを抑制することができる。
また、ブリッジ部及びブロー部が線材からなるため、頭部の傾斜面へのフィッティングがし易くなる。
また、ブリッジ部及びブロー部が線材からなるため、意匠性(審美性)にも優れるものとなる。
【0034】
図2は、本実施形態に係る眼鏡において、フロント部を弾性変形させた状態を説明するための平面図である。
図2に示すように、眼鏡100においては、ブリッジ部2及び一対のブロー部1が何れも弾性変形可能であるので、テンプル部4の弾性(剛性)に拘らず、フロント部Fを湾曲させることで、テンプル部4をより外方に広げることが可能となる。
これにより、テンプル部4が装着者の頭部を挟持する際に生じる回動平行面における左右方向の負荷が、ブロー部1及びブリッジ部2の湾曲により吸収されることになる。
その結果、多くの装着者の頭部の形状に応じて、眼鏡を十分にフィットさせることが可能となる。
また、テンプル部4の左右の可動幅が増大するので、装着者の頭部の幅がより広い場合であっても、頭部を過度に締め付けることなく、テンプル部4を外側に広げて装着させることが可能となる。
【0035】
図3(a)は、本実施形態に係る眼鏡を示す平面図であり、
図3(b)は、
図3(a)に示す眼鏡の正面図であり、
図3(c)は、
図3(a)に示す眼鏡の側面図である。
図3(a)、
図3(b)及び
図3(c)に示すように、眼鏡100において、ブリッジ部2は、フロント部Fの中央に位置する。換言すると、ブリッジ部2は、両方のブロー部1の内側の端部同士を架橋している。
ブリッジ部2は、全体として、前方に凸な上面視弓状となっている。
また、ブリッジ部2は、弾性変形可能な線材からなる。このため、ブリッジ部2は、両端に力を加え、両端間の距離を小さくしたり、大きくすることで、変形させることが可能となっており、当該力を開放することで、元の位置に復元するようになっている。
これにより、ブリッジ部2は、装着者の頭部に沿う形状とすることができ、所定の方向(例えば、テンプル部の開閉方向)に適度な弾性を付与することが可能となる。
【0036】
ブリッジ部2は、少なくとも、前方に位置する第1ブリッジ線材2aと、当該第1ブリッジ線材2aの後方に位置する第2ブリッジ線材2bとの2本の線材を有する。
そして、第1ブリッジ線材2a及び第2ブリッジ線材2bは、それぞれが、弾性変形可能であり、それぞれが、前方に凸な上面視弓状となっている。
【0037】
ブリッジ部2において、第1ブリッジ線材2a及び第2ブリッジ線材2bは、両側の端部(両端部)で、互いに当接された状態で固定されている。
かかる固定の方法としては、特に限定されない。例えば、固定具を用いて固定してもよく、ロウ付け、レーザー溶接等で線材同士を直接固定してもよい。
眼鏡100においては、第1ブリッジ線材2a及び第2ブリッジ線材2bを互いの両端で固定することにより、ブリッジ部2の剛性を向上させることができる。
【0038】
これにより、ブリッジ部2は、あらゆる方向に撓み変形し過ぎてしまうことで眼鏡のズレ等が発生することを抑制し、眼鏡100としての形態をより十分に維持できる形態安定性を有するものとなる。
また、第1ブリッジ線材2a及び第2ブリッジ線材2bとして、ヤング率の低い材質を採用した場合であっても、眼鏡のズレ等が発生することを抑制し、眼鏡100としての形態をより十分に維持できる形態安定性を有するものとなる。
【0039】
ブリッジ部2において、第1ブリッジ線材2a及び第2ブリッジ線材2bの間には隙間S1(以下「第1隙間」ともいう。)が設けられている(
図3(a)参照)。すなわち、第1ブリッジ線材2a及び第2ブリッジ線材2bは、互いに当接固定された両側の端部以外は、乖離している。
ブリッジ部2においては、第1隙間S1により、第1ブリッジ線材2a及び第2ブリッジ線材2bの弾性変形に自由度が生じるため、回動平行面方向やねじれ方向に弾性変形させる場合、これらが互いに衝突したり擦れ合うことで一方の線材の弾性変形を他方の線材が阻害することを防止することができる。
また、第1隙間S1のサイズ、形状を変えること、すなわち、第1ブリッジ線材2a及び第2ブリッジ線材2bの線長を変えることにより、剛性(弾性)の調整をすることができる。
【0040】
ブリッジ部2において、第1ブリッジ線材2a及び第2ブリッジ線材2bは、回動平行面の前後に並設されている。また、第1ブリッジ線材2a及び第2ブリッジ線材2bは、同一の回動平行面に並設されていることが好ましい。
これにより、第1ブリッジ線材2a及び第2ブリッジ線材2bは、回動平行面において弾性変形し易くなる。
その結果、テンプル部4は、智部Tのヒンジ部3に負荷が付与され易いところ、ブリッジ部2が回動平行面において弾性変形することで、当該負荷を吸収することが可能となる。
【0041】
ブリッジ部2において、第1ブリッジ線材2a及び第2ブリッジ線材2bは、丸線状となっている。これにより、回動平行面方向だけでなく、線材のねじれ方向にも弾性力を発揮することが可能となる。すなわち、あらゆる方向に弾性変形することが可能となる。
その結果、仮に、予期しない方向から負荷が加わったとしても、それを吸収することが可能となり、眼鏡100が破損等し難くなる。
また、この場合の眼鏡100は、より多くの装着者の頭部の形状に応じて、十分にフィットさせることが可能となる。
【0042】
ブリッジ部2において、第1ブリッジ線材2a及び第2ブリッジ線材2bの材質は、チタン(チタン合金を含む)、洋白(銅亜鉛ニッケル合金)、NT合金(ニッケルチタン合金)、ステンレス、アルミニウム等の金属、セルロイド、セルロースアセテート、プロピオン酸セルロース、木材、竹、べっ甲等の天然素材、ポリアミド(ナイロンを含む)、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、エラストマー等の合成樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、ブリッジ部2は、弾性に優れる金属を採用することが好ましく、軽量であり、且つ弾性に優れるチタン合金(βチタン)を採用することがより好ましい。
【0043】
第1ブリッジ線材2a及び第2ブリッジ線材2bが金属である場合、その直径が0.5~1.5mmであることが好ましい。
これらの線材は、その直径が0.5mm未満であると、直径が上記範囲内にある場合と比較して、破損し易くなる欠点が有り、その直径が1.5mmを超えると、直径が上記範囲内にある場合と比較して、回動平行面方向、及び、線材のねじれ方向において、弾性変形する度合いが小さくなるという欠点が有る。
なお、第1ブリッジ線材2a及び第2ブリッジ線材2bの直径は、意匠性の観点から、同じであることが好ましい。
【0044】
弾性第1ブリッジ線材2a及び第2ブリッジ線材2bのヤング率は1GPa以上であることが好ましく、50GPa以上であることがより好ましい。
この場合、眼鏡のズレ等が発生することを抑制し、眼鏡100としての形態をより十分に維持できる形態安定性を有するものとなる。
【0045】
ここで、眼鏡100においては、フィット感向上としてねじれ方向の弾性を発揮するために、上記範囲内であれば、細い線径や低ヤング率の材質を採用することができる。
なお、細い線径や低ヤング率の材質を採用すると開き方向の弾性が弱くなってしまうと考えられるが、眼鏡100においては、上述したように、両端部を固定することで剛性を向上させ、開き方向にも適度な弾性が発揮されるようにしている。
【0046】
眼鏡100において、ブロー部1は、ブリッジ部2の左右にそれぞれ設けられる。すなわち、ブロー部1は、ブリッジ部2の両側の端部からそれぞれの外方に向けて延設されている。
なお、一対のブロー部1(左側のブロー部1及び右側のブロー部1)は、左右対称な構造となっているので、一方側のブロー部1についてのみ説明する。
ブロー部1は、全体として、前方に凸な上面視弓状となっている。
また、ブロー部1は、弾性変形可能な線材からなる。このため、ブロー部1は、両端に力を加え、両端間の距離を小さくしたり、大きくすることで、変形させることが可能となっており、当該力を開放することで、元の位置に復元するようになっている。
これにより、ブロー部1は、装着者の頭部に沿う形状とすることができ、所定の方向(例えば、テンプル部の開閉方向)に適度な弾性を付与することが可能となる。
【0047】
眼鏡100においては、少なくとも、ブリッジ部2及び一対のブロー部1を共に弾性変形可能なものとすることにより、テンプル部4の回動の際に智部Tのヒンジ部3に付与される負荷を、ブリッジ部2及び一対のブロー部1に分散させることができる。
この場合、各部が担当する負荷の量が軽減されるので、当該負荷を容易に吸収することが可能となる。
【0048】
ブロー部1は、少なくとも、前方に位置する第1ブロー線材1aと、当該第1ブロー線材1aの後方に位置する第2ブロー線材1bとの2本の線材を有する。
そして、第1ブロー線材1a及び第2ブロー線材1bは、それぞれが、弾性変形可能であり、それぞれが、前方に凸な上面視弓状となっている。
【0049】
ブロー部1において、第1ブロー線材1a及び第2ブロー線材1bは、ブリッジ部2側の端部で、互いに当接された状態で固定され、テンプル部4側の端部に位置するヒンジ部3で、互いに固定されている。なお、ブリッジ部2の両側の端部と、ブロー部1のブリッジ部2側の端部とは、共通した部分となっている。
かかる固定の方法としては、特に限定されない。例えば、固定具を用いて固定してもよく、ロウ付け、レーザー溶接等で線材同士を直接固定してもよい。
眼鏡100においては、第1ブロー線材1a及び第2ブロー線材1bを互いの両端で固定することにより、ブロー部1の剛性を向上させることができる。
【0050】
これにより、ブロー部1は、あらゆる方向に撓み変形し過ぎてしまうことで眼鏡のズレ等が発生することを抑制し、眼鏡100としての形態をより十分に維持できる形態安定性を有するものとなる。
また、第1ブロー線材1a及び第2ブロー線材1bとして、ヤング率の低い材質を採用した場合であっても、眼鏡のズレ等が発生することを抑制し、眼鏡100としての形態をより十分に維持できる形態安定性を有するものとなる。
【0051】
このように、眼鏡100においては、ブリッジ部2の第1ブリッジ線材2a及び第2ブリッジ線材2bの両側の端部が固定され、且つ、一対のブロー部1の第1ブロー線材1a及び第2ブロー線材1bの両側の端部が固定されているので、フロント部Fの形態安定性をより向上させることができる。
【0052】
ブロー部1において、第1ブロー線材1a及び第2ブロー線材1bの間には隙間S2(以下「第2隙間」ともいう。)が設けられている(
図3(a)参照)。
すなわち、第1ブロー線材1a及び第2ブロー線材1bは、少なくとも、互いに固定された両側の端部以外は、乖離している。
ブロー部1においては、第2隙間S2により、第1ブロー線材1a及び第2ブロー線材1bの弾性変形に自由度が生じるため、回動平行面方向やねじれ方向に弾性変形させる場合、これらが互いに衝突したり、擦れ合うことで一方の線材の弾性変形を他方の線材が阻害することを防止することができる。
また、第2隙間S2のサイズ、形状を変えること、すなわち、第1ブロー線材1a及び第2ブロー線材1bの線長を変えることにより、剛性(弾性)の調整をすることができる。
【0053】
ブロー部1において、第1ブロー線材1a及び第2ブロー線材1bは、回動平行面の前後に並設されている。
また、第1ブロー線材1a及び第2ブロー線材1bは、同一の回動平行面に並設されていることが好ましい。なお、第1ブリッジ線材2a及び第2ブリッジ線材2bが並設された回動平行面と、第1ブロー線材1a及び第2ブロー線材1bが並設された回動平行面とは、同一面であっても異なる面であっていてもよい。
これにより、第1ブロー線材1a及び第2ブロー線材1bは、回動平行面において弾性変形し易くなる。
その結果、テンプル部4は、智部Tのヒンジ部3に負荷が付与され易いところ、ブロー部1が回動平行面において弾性変形することで、当該負荷を吸収することが可能となる。
【0054】
このように、眼鏡100においては、ブリッジ部2の第1ブリッジ線材2a及び第2ブリッジ線材2bが回動平行面の前後に並設され、且つ、一対のブロー部1の第1ブロー線材1a及び第2ブロー線材1bが回動平行面の前後に並設されているので、フロント部Fは、回動平行面方向により変形し易くなる。
これにより、テンプル部4の回動の際に智部Tのヒンジ部3に付与される負荷をより容易に吸収することが可能となる。
【0055】
ブロー部1において、第1ブロー線材1a及び第2ブロー線材1bは、ブリッジ部2と同様に、丸線状となっている。これにより、回動平行面方向だけでなく、線材のねじれ方向にも弾性力を発揮することが可能となる。すなわち、あらゆる方向に弾性変形することが可能となる。
その結果、仮に、予期しない方向から負荷が加わったとしても、それを吸収することが可能となり、眼鏡100が破損等し難くなる。
また、この場合の眼鏡100は、より多くの装着者の頭部の形状に応じて、十分にフィットさせることが可能となる。
【0056】
これにより、眼鏡100においては、少なくとも、ブリッジ部2及び一対のブロー部1を共に丸線状とすることにより、フロント部Fは、よりあらゆる方向に弾性変形することが可能となり、予期しない方向から負荷が加わったとしても、それをブリッジ部2及び一対のブロー部1に分散させて吸収することが可能となる。
また、眼鏡100は、より一層多くの装着者の頭部の形状に応じて、十分にフィットさせることが可能となる。
【0057】
ここで、眼鏡100においては、第1ブリッジ線材2aと第1ブロー線材1aとが、連続する線材であり、第2ブリッジ線材2bと第2ブロー線材1bとが連続する線材となっている。
これにより、製造における工程数を減らすことができる。すなわち、2本の線材を適所で互いに固定させることで、ブリッジ部2及びブロー部1を製造することができる。
また、これらの連続性を有する点が、意匠性をより一層際立てるものとすることができる。
【0058】
ブロー部1において、第1ブロー線材1a及び第2ブロー線材1bの直径及びヤング率は、上述した第1ブリッジ線材2a及び第2ブリッジ線材2bと同じ範囲である。
なお、意匠性の観点から、第1ブロー線材1a及び第2ブロー線材1bの直径は同じであり、且つ、第1ブリッジ線材2a及び第2ブリッジ線材2bの直径とも同じであることが好ましい。
また、第1ブロー線材1a及び第2ブロー線材1bの材質も、上述した第1ブリッジ線材2a及び第2ブリッジ線材2bの材質で例示したものと同じものを採用できる。なお、第1ブロー線材1a、第2ブロー線材1b、第1ブリッジ線材2a及び第2ブリッジ線材2bの材質は、同じであることが好ましい。
【0059】
眼鏡100において、鼻パッド部6は、ブリッジ部2の第2ブリッジ線材2bの中央から一定の距離をおいた左右に、互いに対称構造となるように一対設けられる。
なお、一対の鼻パッド部6は、左右対称な構造となっているので、一方側の鼻パッド部6についてのみ説明する。
鼻パッド部6は、第2ブリッジ線材2bに取り付けられた支持線材61と、支持線材61に支持されたパッド部62とからなる。
支持線材61は、その上端が、ブリッジ部2に当接された状態で固定されている。
ここで、かかる固定の方法としては、特に限定されない。例えば、固定具を用いて固定してもよく、ロウ付け、レーザー溶接等で線材同士を直接固定してもよい。
【0060】
このとき、支持線材61の上端の取付部分と、第1ブリッジ線材2a及び第2ブリッジ線材2bとは、回動平行面の前後方向に並設された状態となっている。すなわち、当該取付部分は、回動平行面において、第2ブリッジ線材2bの後側(背面側)に取り付けられている。
【0061】
鼻パッド部6において、支持線材61は、線材からなり、丸線状となっている。
支持線材61は、上述した第1ブリッジ線材2a、第1ブロー線材1a、第1ブロー線材1a及び第2ブロー線材1bと同じ直径であり、同じ材質のものを採用することが好ましい。
これにより、眼鏡100は、意匠性を更に際立てるものとすることができる。
【0062】
パッド部62は、支持線材61の下端に取り付けられている。
かかるパッド部の素材や形状は、特に限定されず、市販の一般的なものを適宜採用することができる。
【0063】
眼鏡100において、レンズ部8は、ブリッジ部2の左右の端部(ブロー部1のブリッジ部2側の端部)それぞれに設けられる。なお、一対のレンズ部8は、左右対称な構造となっているので、一方側のレンズ部8についてのみ説明する。
眼鏡100においては、レンズ部8をブリッジ部2の左右の端部に設けることにより、レンズ部8をブリッジ部2の中央に設ける場合よりも安定性に優れ、レンズ部8をブロー部1に設ける場合よりも、フロント部Fの変形がレンズ部8に伝わり、レンズ部8が逆に反ってしまう、いわゆる逆ゾリが生じることを防止できる。
【0064】
レンズ部8は、ブリッジ部2の端部に取り付けられた連結具8aと、当該連結具8aに支持されたレンズ体8bとからなる。
そして、連結具8aは、板状の台座部8a1と、該台座部8a1に対向するように設けられる板状の押さえ部8a2と、台座部8a1及び押さえ部8a2を連結する一対のピン部8a3とからなる。
【0065】
レンズ部8において、台座部8a1は、ブリッジ部2の端部に当接された状態で固定されている。
ここで、かかる固定の方法としては、特に限定されない。例えば、固定具を用いて固定してもよく、ロウ付け、レーザー溶接等で線材同士を直接固定してもよい。
【0066】
このとき、台座部8a1と、第1ブリッジ線材2a及び第2ブリッジ線材2bとは、回動平行面の前後方向に並設された状態となっている。すなわち、台座部8a1は、回動平行面において、第2ブリッジ部2bの後側(背面側)の両端部に取り付けられている。
上述したように、台座部8a1は、レンズ体8bの後側に当接されているので、ブリッジ部2の端部と、レンズ体8bとに挟持された状態となっている。
【0067】
ピン部8a3は、台座部8a1の背面に一定の間隔をおいて左右に1つずつ設けられている。
一対のピン部8a3は、何れも、台座部8a1から後方に突出するピン状であり、レンズ体8に設けられた一対の貫通孔8b1にそれぞれ嵌入される。
したがって、レンズ体8bは、レンズ体8bの貫通孔8b1にピン部8a2が嵌入されることで、左右にズレないように支持されている。
【0068】
ピン部8a3は、レンズ体8bの前方に突出した部分が押さえ部8a2に埋設されている。
また、かかる押さえ部8a2は、レンズ体8bの背面に当接されている。
したがって、レンズ体8bは、台座部8a1と押さえ部8a2とに挟持されることで、前後にズレないように固定されている。
【0069】
ここで、レンズ体8bは、プラスチック製であっても、ガラス製であってもよい。
また、レンズ体8bとしては、近視用、遠視用、乱視用、老視用、これらの両用、色覚補正用等の矯正用レンズ、紫外線カット用、ブルーライトカット用、遮光用(カラーレンズ)、防塵用等の目を保護するためのレンズ、伊達眼鏡用等のレンズ等の一般のレンズを採用することができる。
【0070】
レンズ体8bにおいては、上述したように、連結具8aを取り付けるための前後に貫通した貫通孔8b1が一対設けられている。なお、レンズ体8bにおいて、貫通孔8b1を設ける位置は、特に限定されないが、眼鏡100を装着した場合に視界に入らず、且つ、目に対して適切な位置にレンズ体8bを配置できる位置であることが好ましい。
【0071】
(智部)
眼鏡100において、智部Tは、フロント部の両端に位置している。
そして、智部Tのフロント部F側にヒンジ部3が形成されている。すなわち、フロント部の両端にヒンジ部3が形成されている。
ヒンジ部3は、一般的な構造となっており、上下方向に軸(上下軸)を有するように配置される。これにより、ヒンジ部3に取り付けられたテンプル部4は、ヒンジ部3の上下軸に垂直な面において、開閉可能となっている。
すなわち、回動平行面は、ヒンジ部3の上下軸に垂直な面に相当する。
【0072】
図4は、本実施形態に係る眼鏡において、テンプル部の開閉の状態を説明するための平面図である。
図4に示すように、テンプル部4は、フロント部に対して略前後方向に配置された装着位置から、ヒンジ部3で折り畳まれ、フロント部に対して略左右方向に配置された保管位置まで移動することが可能となっている。
なお、通常、テンプル部4が装着位置にある場合に、眼鏡100が装着され、テンプル部4が保管位置にある場合に、眼鏡100がケース等に収容され保管される。
【0073】
(テンプル部及び耳当て部)
眼鏡100において、テンプル部4は、開いた状態(装着時の状態)において、フロント部Fの両端から後方に延出しており、左右の智部Tのヒンジ部3にそれぞれ取り付けられる。なお、左右のテンプル部4は、左右対称な構造となっているので、一方側のテンプル部4についてのみ説明する。
テンプル部4は、全体として、外方に凸な上面視弓状となっている。
また、テンプル部4は、弾性変形可能な線材からなる。このため、テンプル部4は、両端に力を加え、両端間の距離を小さくしたり、大きくすることで、変形させることが可能となっており、当該力を開放することで、元の位置に復元するようになっている。
これにより、テンプル部4は、装着者の頭部に沿う形状とすることができ、所定の方向(例えば、テンプル部の開閉方向)に適度な弾性を付与することが可能となる。
【0074】
眼鏡100においては、ブリッジ部2及び一対のブロー部1に加え、一対のテンプル部4も線材からなるものであるので、眼鏡100全体としても極めて軽量とすることができる。これにより、眼鏡のズレが生じることを抑制することができる。
また、ブリッジ部2、ブロー部1及びテンプル部4が線材からなるため、より一体感があり、意匠性(審美性)にもより優れるものとなる。
【0075】
図5は、本実施形態に係る眼鏡において、フロント部及びテンプル部を弾性変形させた状態を説明するための平面図である。
図5に示すように、眼鏡100においては、ブリッジ部2、一対のブロー部1及び一対のテンプル部4が何れも弾性変形可能であるので、フロント部及びテンプル部4を湾曲させることで、テンプル部4を更に外方に広げることが可能となる。
【0076】
このとき、テンプル部4が装着者の頭部を挟持する際に生じる回動平行面における左右方向の負荷は、ブリッジ部2、一対のブロー部1及び一対のテンプル部4が回動平行面方向に弾性変形することで、分担して吸収されることになる。
その結果、より多くの装着者の頭部の形状に応じて、眼鏡をより十分にフィットさせることが可能となる。
また、フィット感が向上するため、装着者の頭部を挟み込む力も極力小さくすることができる。
また、テンプル部4の可動幅がより増大するので、装着者の頭部の幅がより広い場合であっても、頭部を過度に締め付けることなく、テンプル部4を外側に広げて装着させることが可能となる。
【0077】
図3(a)、
図3(b)及び
図3(c)に戻り、テンプル部4は、外方に位置する第1テンプル線材4aと、当該第1テンプル線材4aの内方に位置する第2テンプル線材4bとを有する。
そして、第1テンプル線材4a及び第2テンプル線材4bは、それぞれが、弾性変形可能であり、それぞれが、外方に凸な上面視弓状となっている。
【0078】
テンプル部4において、第1テンプル線材4a及び第2テンプル線材4bは、前方のフロント部F側の端部に位置するヒンジ部3で、互いに固定され、後方の耳当て部5側の端部で、互いに当接された状態で固定されている。
かかる固定の方法としては、特に限定されない。例えば、固定具を用いて固定してもよく、ロウ付け、レーザー溶接等で線材同士を直接固定してもよい。
眼鏡100においては、第1テンプル線材4a及び第2テンプル線材4bを互いの両端で固定することにより、テンプル部4の剛性を向上させることができる。
【0079】
これにより、テンプル部4は、あらゆる方向に撓み変形し過ぎてしまうことで眼鏡のズレ等が発生することを抑制し、眼鏡100としての形態をより十分に維持できる形態安定性を有するものとなる。
また、第1テンプル線材4a及び第2テンプル線材4bとして、ヤング率の低い材質を採用した場合であっても、眼鏡のズレ等が発生することを抑制し、眼鏡100としての形態をより十分に維持できる形態安定性を有するものとなる。
したがって、眼鏡100においては、フロント部だけでなく、眼鏡100全体として十分な形態安定性を有するものとなる。
【0080】
テンプル部4において、第1テンプル線材4a及び第2テンプル線材4bの間には隙間S3(以下「第3隙間」ともいう。)が設けられている(
図3(a)参照)。
すなわち、第1テンプル線材4a及び第2テンプル線材4bは、少なくとも、互いに固定された両側の端部以外は、乖離している。
テンプル部4においては、第3隙間S3により、第1テンプル線材4a及び第2テンプル線材4bの弾性変形に自由度が生じるため、回動平行面方向やねじれ方向に弾性変形させる場合、これらが互いに衝突したり、擦れ合うことで一方の線材の弾性変形を他方の線材が阻害することを防止することができる。
また、第3隙間S3のサイズ、形状を変えること、すなわち、第1テンプル線材4a及び第2テンプル線材4bの線長を変えることにより、剛性(弾性)の調整をすることができる。
【0081】
テンプル部4において、第1テンプル線材4a及び第2テンプル線材4bは、回動平行面の左右に並設されている。また、第1テンプル線材4a及び第2テンプル線材4bは、同一の回動平行面に並設されていることが好ましい。なお、第1ブリッジ線材2a及び第2ブリッジ線材2bが並設された回動平行面と、第1ブロー線材1a及び第2ブロー線材1bが並設された回動平行面と、第1テンプル線材4a及び第2テンプル線材4bが並設された回動平行面とは、互いに同一面であっても異なる面であってもよい。
これにより、第1テンプル線材4a及び第2テンプル線材4bは、回動平行面において弾性変形し易くなる。
その結果、装着者の頭部の幅に応じて、テンプル部4を容易に変形させることができる。
【0082】
テンプル部4において、第1テンプル線材4a及び第2テンプル線材4bは、ブリッジ部2と同様に、丸線状となっている。これにより、回動平行面方向だけでなく、線材のねじれ方向にも弾性力を発揮することが可能となる。すなわち、あらゆる方向に弾性変形することが可能となる。
その結果、仮に、予期しない方向から負荷が加わったとしても、それを吸収することが可能となり、眼鏡100が破損等し難くなる。
また、この場合の眼鏡100は、より多くの装着者の頭部の形状に応じて、十分にフィットさせることが可能となる。
【0083】
これにより、眼鏡100においては、ブリッジ部2、一対のブロー部1及び一対のテンプル部4を全て丸線状とすることにより、よりあらゆる方向に弾性変形することが可能となり、予期しない方向から負荷が加わったとしても、それをブリッジ部2、一対のブロー部1及び一対のテンプル部4に分散させて吸収することが可能となる。
したがって、眼鏡100は、より一層多くの装着者の頭部の形状に応じて、十分にフィットさせることが可能となる。
【0084】
テンプル部4において、第1テンプル線材4a及び第2テンプル線材4bの直径及びヤング率は、上述した第1ブリッジ線材2a及び第2ブリッジ線材2bと同じ範囲である。なお、意匠性の観点から、第1テンプル線材4a及び第2テンプル線材4bの直径は同じであり、第1ブリッジ線材2a及び第2ブリッジ線材2b、並びに、第1ブロー線材1a及び第2ブロー線材1bの直径とも同じであることが好ましい。
また、第1テンプル線材4a及び第2テンプル線材4bの材質も、上述した第1ブリッジ線材2a及び第2ブリッジ線材2bの材質で例示したものと同じものを採用できる。なお、第1ブロー線材1a、第2ブロー線材1b、第1ブリッジ線材2a、第2ブリッジ線材2b、第1テンプル線材4a及び第2テンプル線材4bの材質は、同じであることが好ましい。
【0085】
眼鏡100において、耳当て部5は、テンプル部4の後方の端部に取り付けられる。
具体的には、耳当て部5は、その前端面から後方に中空部が設けられており、第1テンプル線材4a及び第2テンプル線材4bが互いに固定された端部の一部を中空部に嵌入させることにより、テンプル部4に取り付けられる。
耳当て部5は、装着者の側頭部に沿うように、外方に凸な上面視弓状となっており、上方に凸な側面視弓状となっている。すなわち、耳当て部は、斜め下方に湾曲している。
また、耳当て部5の素材としては、特に限定されないが、例えば、セルロイド、セルロースアセテート、プロピオン酸セルロース、木材、竹、べっ甲等の天然素材、ポリアミド(ナイロンを含む)、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、エラストマー等の合成樹脂等が好適に用いられる。
【0086】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0087】
本実施形態に係る眼鏡100において、ブリッジ部1、それを構成する第1ブリッジ線材1a及び第2ブリッジ線材1b、ブロー部2、それを構成する第1ブロー線材2a及び第2ブロー線材2b、テンプル部4、並びに、それを構成する第1テンプル線材4a及び第2テンプル線材4b、が何れも上面視弓状となっているが、これに限定されない。
【0088】
本実施形態に係る眼鏡100において、ブリッジ部2は、第1ブリッジ線材2aと、第2ブリッジ線材2bとの2本の線材からなっているが、1本の線材からなるものであってもよく、3本以上の線材からなるものであってもよい。
同様に、ブロー部1は、第1ブロー線材1aと、第2ブロー線材1bとの2本の線材からなっているが、1本の線材からなるものであってもよく、3本以上の線材からなるものであってもよい。
同様に、テンプル部4は、第1テンプル線材4aと、第2テンプル線材4bとの2本の線材からなっているが、1本の線材からなるものであってもよく、3本以上の線材からなるものであってもよい。
【0089】
本実施形態に係る眼鏡100において、第1ブリッジ線材2a及び第2ブリッジ線材2bは、回動平行面の前後方向に並設されているが必須ではなく、例えば、第1ブリッジ線材2a及び第2ブリッジ線材2bが上下に配置されていてもよい。
同様に、第1ブロー線材1a及び第2ブロー線材1bは、回動平行面の前後方向に並設されているが必須ではなく、例えば、第1ブロー線材1a及び第2ブロー線材1bが上下に配置されていてもよい。
同様に、第1テンプル線材4a及び第2テンプル線材4bは、回動平行面の左右方向に並設されているが必須ではなく、例えば、第1テンプル線材4a及び第2テンプル線材4bが上下に配置されていてもよい。
なお、鼻パッド部6の支持線材61の取付部分、レンズ部8の台座部8a1についても同様である。
【0090】
本実施形態に係る眼鏡100において、第1ブリッジ線材2a、第2ブリッジ線材2b、第1ブロー線材1a、第2ブロー線材1b、第1テンプル線材4a及び第2テンプル線材4bは、何れも丸線状となっているが、これに限定されず、例えば、三角柱状、四角柱状(板状)、五角柱状、六角柱状等であってもよい。
また、線材は、中実状であっても、中空状であってもよい。例えば、線材としては、いわゆる一体成形(中抜き)された樹脂からなるものも含まれる。
また、表面に撚り(例えば撚り線)や凹凸(例えばハンマートーン)等の模様が付されていてもよい。
なお、鼻パッド部6の支持線材61についても同様である。
また、第1ブリッジ線材2aと第1ブロー線材1aとが、連続する線材であり、第2ブリッジ線材2bと第2ブロー線材1bとが連続する線材となっているが、連続させることは必須ではない。
【0091】
本実施形態に係る眼鏡100は、鼻パッド部6を備えているが必須ではない。すなわち、いわゆる鼻パッドレスの眼鏡であってもよい。
また、本実施形態に係る眼鏡100は、智部Tがヒンジ3を有しているが必須ではない。すなわち、いわゆるヒンジレスの眼鏡であってもよい。
【0092】
本実施形態に係る眼鏡100においては、レンズ部8が、ブロー部1に取り付けられているが、これに限定されず、例えば、ブリッジ部2に取り付けられていてもよい。
また、レンズ部8において、レンズ体8bは、連結具8aにより、ブロー部1に取り付けられているが、取り付け方法はこれに限定されない。
【0093】
本実施形態に係る眼鏡100においては、テンプル部4及び耳当て部5の構造は、特に限定されない。
また、テンプル部4が後方に延出しており、耳当て部5を兼ねた構造であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明の眼鏡は、矯正用の眼鏡、目を保護するための眼鏡、ファッション用の眼鏡等、一般的に用いられる眼鏡として利用可能である。
本発明の眼鏡によれば、多くの装着者の頭部の形状に対応して、十分なフィット感を発揮することができ、且つ、眼鏡のズレを十分に抑制することができる。
【符号の説明】
【0095】
1・・・ブロー部
100・・・眼鏡
1a・・・第1ブロー線材
1b・・・第2ブロー線材
2・・・ブリッジ部
2a・・・第1ブリッジ線材
2b・・・第2ブリッジ線材
3・・・ヒンジ部
4・・・テンプル部
4a・・・第1テンプル線材
4b・・・第2テンプル線材
5・・・耳当て部
6・・・鼻パッド部
61・・・支持線材
62・・・パッド部
8・・・レンズ部
8a・・・連結具
8a1・・・台座部
8a2・・・押さえ部
8a3・・・ピン部
8b・・・レンズ体
8b1・・・貫通孔
F・・・フロント部
S1・・・第1隙間
S2・・・第2隙間
S3・・・第3隙間
T・・・智部
【要約】
【課題】多くの装着者の頭部の形状に対応して、十分なフィット感を発揮することができ、且つ、眼鏡のズレを十分に抑制することができる眼鏡を提供すること。
【解決手段】本発明は、一対のブロー部1、両方のブロー部1の端部同士を架橋するブリッジ部2、ブロー部1又はブリッジ部2に取り付けられたレンズ部8、を有するフロント部Fと、該フロント部Fの両端から後方に延出するテンプル部4と、を備え、ブリッジ部2及びブロー部1が、何れも、線材からなるものであり、且つ、弾性変形可能である眼鏡眼鏡100である。
【選択図】
図1