(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-10
(45)【発行日】2024-07-19
(54)【発明の名称】研掃装置
(51)【国際特許分類】
E01H 1/00 20060101AFI20240711BHJP
B24C 1/00 20060101ALI20240711BHJP
B24C 3/06 20060101ALI20240711BHJP
B24C 3/32 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
E01H1/00 B
B24C1/00 Z
B24C3/06 B
B24C3/32 Z
(21)【出願番号】P 2020174160
(22)【出願日】2020-10-15
【審査請求日】2023-05-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(74)【代理人】
【識別番号】100101971
【氏名又は名称】大畑 敏朗
(72)【発明者】
【氏名】石井 敏之
(72)【発明者】
【氏名】栗本 雅裕
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-157391(JP,A)
【文献】特開2005-076194(JP,A)
【文献】米国特許第05004156(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01H 1/00-15/00
E21D 11/00-19/06
E21D 23/00-23/26
B24C 1/00
B24C 3/06
B24C 3/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
研掃装置本体と、
前記研掃装置本体を搭載する架台と、を備え、
前記研掃装置本体は、
壁面を研掃する研掃ヘッドと、
前記研掃ヘッドを昇降する第1の昇降手段と、
前記第1の昇降手段に接続された状態で前記第1の昇降手段に並んで設置され、前記第1の昇降手段を昇降する第2の昇降手段とを備え、
前記第1の昇降手段および前記第2の昇降手段のうちの一方の前記昇降手段は、中空状の保持フレーム、および前記保持フレームの中空内に上下動自在の状態に設置されて駆動源である
エアコンプレッサから供給される圧縮空気で伸長するエアシリンダであり、他方の前記昇降手段は、中空状の保持フレーム、および鉛直方向に沿って起立したネジ軸と前記ネジ軸の外周に螺合されるとともに前記エアシリンダと機械的に接続されたナットとを備えて前記保持フレームの中空内に設置されて駆動源である
モータにより回転するボールネジである、
ことを特徴とする研掃装置。
【請求項2】
前記モータは、電動式モータにより構成されていることを特徴とする請求項1記載の研掃装置。
【請求項3】
前記架台は、
前記壁面に対して接近および離間する第1の水平方向および前記第1の水平方向に交差する第2の水平方向に移動する移動手段と、
前記研掃装置本体を該研掃装置本体の搭載面内に沿って回動させる回動手段と、
前記移動手段および前記回動手段を搭載する基台と、を備えることを特徴とする請求項1または2記載の研掃装置。
【請求項4】
前記移動手段および前記回動手段を駆動する駆動体が電動式モータで構成されていることを特徴とする請求項3記載の研掃装置。
【請求項5】
前記移動手段、前記回動手段および前記基台を構成する躯体は、平面視で矩形枠状に形成されていることを特徴とする請求項3または4記載の研掃装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研掃装置に関し、例えば、トンネルの補修工事に適用して有効な研掃装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
高速道路や一般道に構築されているトンネルにおいては、供用開始から所定期間経過したならば、トンネル補修工事が実行される。トンネル補修工事においては、劣化したトンネル表面を削り取って目荒しや塗膜除去を行う下地処理を施した後、下地処理後のトンネル表面にコンクリート改質剤を塗布する表面処理を行う。
【0003】
ここで、トンネル補修工事における下地処理作業においては、作業箇所に高所作業台を設置し、当該作業台に作業員が乗って人力で行っていた。しかしながら、人力での作業は、重量のある工具を用いて上向き姿勢で行わなければならないために作業効率が低く、時間がかかるのみならず費用も嵩むことになる。
【0004】
そこで、例えば、特許文献1(特開2017-040103号公報)に記載のように、人力によらず、自動的にトンネル天井面の研掃を行うトンネル天井面研掃装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
トンネル補修工事における下地処理においては、トンネル研掃装置が搭載されたトラック等をトンネル内の研掃位置まで走行させて停車した後、トンネル研掃装置の研掃ヘッドをトンネル研掃装置の昇降装置によってトンネル内壁面の研掃位置まで上昇させ、トンネル内壁面に押し当ててからトンネル内壁面に沿って水平に移動(走行)することでトンネル内壁面を研掃している。
【0007】
研掃ヘッドは、トンネル内壁面を研掃するための機器であり、鉛直棒状の支持ロッドによって支持されている。この支持ロッドは、上下動自在の状態で保持フレーム内に収納されている。研掃ヘッドを昇降させる昇降装置は、保持フレーム内に設置されたエアシリンダで構成されている。このエアシリンダのシリンダロッドは支持ロッドの下部と接続されており、エアシリンダに供給されるエアの量を調節することにより研掃ヘッドを昇降させている。
【0008】
このようなトンネル研掃装置により、湾曲したトンネル内壁面に沿って研掃ヘッドを走行(水平に移動)させてトンネル内壁面を研掃する。そして、走行端まで到達したならば、研掃ヘッドをトンネル内壁面から離れる方向に移動(横行)させておいてエアシリンダを伸長させ、研掃ヘッドを上昇させて次の研掃高さに移動させ、新たな研掃ラインを走行して研掃を行う。このような研掃ヘッドの走行方向への移動による研掃と横行方向への移動による研掃ラインの変更とを繰り返しなら研掃作業が行われる。
【0009】
ここで、横行に際しては、研掃が終了した研掃ラインとこれから研掃を行う研掃ラインの2つのラインの間隔が開いて研掃されない領域が発生することのないように、ライン変更時において研掃ヘッドを伸長させるエアシリンダのロッドのストローク管理が重要になる。
【0010】
しかしながら、エアシリンダに対するエアの供給を制御することでロッドのストロークを精度よく制御することは困難である。一方、エアシリンダに換えてモータで昇降装置を構成すれば、モータの回転数を制御することでストロークを高精度に制御することができるものの、ロッドを必要な高さまで伸長させるには一定の時間を要することから、横行後に直ちに研掃ヘッドを走行させて次の研掃ラインの作業を開始することができない。
【0011】
また、大断面で頂部が高い位置になったトンネルの内壁面を研掃するためには、研掃ヘッドを昇降させるための昇降装置の高さが高くなってしまう。そのため、研掃ヘッドをトンネル内壁面の高い位置まで到達させることができるコンパクトな昇降装置が望まれている。
【0012】
本発明は、上述の技術的背景からなされたものであって、トンネル研掃装置に設けられた研掃ヘッドの研掃高さを精度よく且つ速やかに変更することができる研掃装置を提供することを目的とする。
【0013】
また、本発明は、高さ方向にコンパクトな昇降機構としつつ、研掃ヘッドをトンネル内壁面の高い位置まで到達させることが可能な研掃装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の本発明の研掃装置は、研掃装置本体と、前記研掃装置本体を搭載する架台と、を備え、前記研掃装置本体は、壁面を研掃する研掃ヘッドと、前記研掃ヘッドを昇降する第1の昇降手段と、前記第1の昇降手段に接続された状態で前記第1の昇降手段に並んで設置され、前記第1の昇降手段を昇降する第2の昇降手段とを備え、前記第1の昇降手段および前記第2の昇降手段のうちの一方の前記昇降手段は、中空状の保持フレーム、および前記保持フレームの中空内に上下動自在の状態に設置されて駆動源であるエアコンプレッサから供給される圧縮空気で伸長するエアシリンダであり、他方の前記昇降手段は、中空状の保持フレーム、および鉛直方向に沿って起立したネジ軸と前記ネジ軸の外周に螺合されるとともに前記エアシリンダと機械的に接続されたナットとを備えて前記保持フレームの中空内に設置されて駆動源であるモータにより回転するボールネジである、ことを特徴とする。
【0016】
請求項2に記載の本発明の研掃装置は、上記請求項1記載の発明において、前記モータは、電動式モータにより構成されていることを特徴とする。
【0017】
請求項3に記載の本発明の研掃装置は、上記請求項1または2記載の発明において、前記架台は、前記壁面に対して接近および離間する第1の水平方向および前記第1の水平方向に交差する第2の水平方向に移動する移動手段と、前記研掃装置本体を該研掃装置本体の搭載面内に沿って回動させる回動手段と、前記移動手段および前記回動手段を搭載する基台と、を備えることを特徴とする。
【0018】
請求項4に記載の本発明の研掃装置は、上記請求項3に記載の発明において、前記移動手段および前記回動手段を駆動する駆動体が電動式モータで構成されていることを特徴とする。
【0019】
請求項5に記載の本発明の研掃装置は、上記請求項3または4に記載の発明において、前記移動手段、前記回動手段および前記基台を構成する躯体は、平面視で矩形枠状に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、研掃ヘッドを走行方向に移動してトンネル内壁面を研掃する際に、モータを用いた昇降機器で構成された昇降手段が上昇動作を行うと、エアコンプレッサを用いた昇降機器で構成された昇降手段は、エア圧が一定に保たれながら縮む。そして、トンネル内壁面から離間する横行方向に研掃ヘッドが移動すると、エアコンプレッサからエア圧を一定に保つための圧縮空気がエアコンプレッサを用いた昇降機器に供給されて上昇する。よって、当該昇降機器に取り付けられた研掃ヘッドは、トンネル内壁面に押圧されたままで、トンネル内壁面に沿って上昇して次の研掃高さに移動する。
【0021】
これにより、トンネル研掃装置に設けられた研掃ヘッドの研掃高さを精度よく且つ速やかに変更することが可能になる。
【0022】
また、研掃ヘッドを昇降する第1の昇降手段と、第1の昇降手段を昇降する第2の昇降手段とを備えているので、高さ方向にコンパクトな昇降機構としつつ、研掃ヘッドをトンネル内壁面の高い位置まで到達させることが可能な研掃装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】(a)は本発明の一実施の形態であるトンネル研掃装置が取り付けられたトンネル研掃システムを示す概念図、(b)は
図1(a)のトンネル研掃システムを構成する高所作業車のデッキ部上昇時の概念図である。
【
図2】本発明の一実施の形態であるトンネル研掃装置の正面図である。
【
図4】
図2のトンネル研掃装置に設けられた研掃ヘッドの主面の平面図である。
【
図5】(a)は
図2のトンネル研掃装置の研掃ヘッドの昇降機構部を説明するためのトンネル研掃装置の要部正面図、(b)は
図5(a)のトンネル研掃装置の要部側面図である。
【
図6】(a)は研掃ヘッドを最下部に設置した状態を示したトンネル研掃装置の要部正面図、(b)は研掃ヘッドを第1の昇降機構部で上昇させた状態を示したトンネル研掃装置の要部正面図、(c)は研掃ヘッドを第2の昇降機構部で上昇させた状態を示したトンネル研掃装置の要部正面図である。
【
図7】
図2および
図3のトンネル研掃装置の架台の平面図である。
【
図8】(a)は
図7の架台の固定フレームの平面図、(b)は
図7の架台の回動フレームおよびスライドフレームの平面図である。
【
図9】(a)は
図7のI-I線の断面図、(b)は
図7のII-II線の断面図である。
【
図10】
図7の架台における回動フレームの回動時の平面図である。
【
図11】
図7の架台におけるスライドフレームのスライド時の平面図である。
【
図12】(a),(b)は
図2のトンネル研掃装置の研掃作業準備時の架台の平面図である。
【
図13】(a)は
図12(b)の後のトンネル研掃装置の研掃作業準備時の架台の平面図、(b)は
図13(a)の後のトンネル研掃装置の研掃作業時の架台の平面図である。
【
図14】本発明の他の実施の形態であるトンネル研掃装置が取り付けられたトンネル研掃システムを示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一例としての実施の形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための図面において、同一の構成要素には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0025】
(第1の実施の形態)
【0026】
図1(a)は本発明の一実施の形態であるトンネル研掃装置が取り付けられたトンネル研掃システムを示す概念図、
図1(b)は
図1(a)のトンネル研掃システムを構成する高所作業車のデッキ部上昇時の概念図である。なお、
図1(a),(b)においては、説明を分かり易くするためにトンネル研掃装置10の下部も透かして見せている。
【0027】
本実施の形態のトンネル研掃システムSは、例えば、曲面状に形成されたトンネルの内壁面を研掃可能なシステムであり、高所作業車Vと、トンネル研掃装置10とを備えている。
【0028】
高所作業車Vは、トンネル研掃装置10を所定の場所に移動するとともに、トンネル研掃装置10の高さを所定の高さに設定することが可能な特殊車両であり、その荷台側には、パンタグラフ部Vpと、その上に設置されたデッキ部Vbとを備えている。パンタグラフ部Vpは、デッキ部Vbを昇降させるための昇降機構部であり、これによりデッキ部Vb上に搭載されたトンネル研掃装置10を所定の高さに設定することでトンネル研掃装置10によるトンネルの研掃作業を行うことが可能になっている。
【0029】
この
図1の高所作業車Vにおいては、トンネル研掃装置10を搭載したときに低振動数の揺れがなく、たわみも15mm程度に抑えることができるので、トンネル研掃装置10の搭載車両として適用できる。また、
図1の高所作業車Vの場合、トンネル研掃装置10を安定した状態で搭載でき、トンネル研掃装置10が搭載されたデッキ部Vb上を上昇させたままでも走行移動することができるので、研掃作業を効率的に実施することができる。
【0030】
このような高所作業車Vのデッキ部Vb上に搭載されたトンネル研掃装置10は、例えば、曲面状に形成されたトンネルの内壁面に対して研削材を吹き付けることで当該内壁面を研掃する研削材噴射型の研掃装置である。このトンネル研掃装置10の研掃装置本体は、例えば、昇降機構部12と、その昇降機構部12に支持されたロッド15と、そのロッド15の先端に着脱自在および揺動自在の状態で支持された研掃ヘッド17とを備えており、架台18上に搭載されている。
【0031】
まず、本実施の形態のトンネル研掃装置10の研掃ヘッド17について
図2~
図4を参照して説明する。
図2は本発明の一実施の形態であるトンネル研掃装置の正面図、
図3は
図2のトンネル研掃装置の側面図、
図4は
図2のトンネル研掃装置に設けられた研掃ヘッドの主面の平面図である。
【0032】
図2および
図3に示すように、本実施の形態のトンネル研掃装置10の研掃ヘッド17は、トンネルの内壁面WSを研掃するための手段であり、取付部17aと、アーム部17rと、ロータリーアクチュエータ17ra(
図3参照)と、エアシリンダ17p(
図3参照)とを備えている。
【0033】
研掃ヘッド17の取付部17aは、取付台17a-1と、回動板17a-2と、背面板17a-3とを備えている。取付台17a-1は、トンネルの内壁面WSに対向する主面(第1面)と、その裏側の裏面(第2面)とを有している。この取付台17a-1の主面には、
図2~
図4に示すように、研掃機(研掃部)17bと、キャスタ17cと、第1のリングブラシ17s-1と、第2のリングブラシ17s-2とが設置され、取付台17a-1の裏面側において取付台17a-1の長手方向の両端には、2枚の回動板17a-2が取付台17a-1と一体的に立設されている。
【0034】
研掃機17bは、トンネルの内壁面WSの劣化部分を研削するために、その内壁面WSに研削材を吹き付ける研削材噴射部である。ここでは、
図3および
図4に示すように、研掃機17bが、例えば、2台設置されている。各研掃機17bには、
図4に示すように、内側から外側に向かって、噴射口(噴射口部)17b-1と、吸引口(吸引口部)17b-2と、第1のリングブラシ17s-1とが同心円状に配置されている。
【0035】
研掃機17bの噴射口17b-1は、上記した研削材を噴射するための開口部であり、平面視で、例えば、円形状に形成されている。噴射口17b-1の直径は、例えば、80mm程度である。噴射口17b-1の平面形状は円形状に限定されるものではなく、例えば、楕円形や長円等、種々変更可能である。取付台17a-1の裏面において噴射口17b-1の後方には、
図2および
図3に示すように、研掃ヘッド17に研削材を供給する吐出ホース(研削材供給管)17b-3が機械的に接続されている。この吐出ホース17b-3を通じて送られた研削材は、噴射口17b-1(
図4参照)から噴射されてトンネルの内壁面WSに吹き付けられるようになっている。
【0036】
図4に示すように、研掃機17bの吸引口17b-2は、研掃処理によりトンネルの内壁面WSから剥がれた剥離片や吹き付け後の研削材を負圧吸引する開口部であり、例えば、噴射口17b-1の外周を取り囲むように平面視で円環状に形成されている。取付台17a-1の裏面において吸引口17b-2の後方には、吸引口17b-2から吸引された剥離片や研削材を流す吸引ホース(吸引管)17b-4(
図2参照)が機械的に接続されている。なお、
図3では図面を見易くするため吸引ホース17b-4の図示を省略した。
【0037】
このような2台の研掃機17bは、
図2~
図4に示すように、各々の研掃機17bの噴射口17b-1および吸引口17b-2を、トンネルの内壁面WSに対向させることが可能な状態で取付台17a-1に設置されている。また、2台の研掃機17bは、
図4に示すように、研掃方向に沿って並んで配置されている。そして、
図4の左側または右側から取付台17a-1の側面を見たときに、2台の研掃機17b,17bは、その各々の噴射口17b-1,17b-1同士が一部重なり(オーバーラップし)つつも、研掃機17b,17bの並設方向に対して交差(直交)する方向に互いにずれた状態で配置されている。この噴射口17b-1,17b-1の位置ずれにより、研削材の噴射幅が設定されている。本実施の形態では、2台の研掃機17b,17bの噴射口17b-1,17b-1のオーバーラップ寸法が、例えば、40mmとなっているので、トンネルの内壁面WSに対して研削材が120mm(=80mm×2-40mm)の幅で噴射されることになる。但し、これらの数値は例示に過ぎず、本発明がこれらの数値に拘束されるものではない。
【0038】
なお、研掃機17bの設置台数は自由に設定でき、1台でも3台以上でもよい。また、研掃機17bを3台以上設ける場合、研掃機17bの並設方向に沿って研掃機17bを千鳥状に配置してもよいし、相互にずらして配置しなくてもよい。さらに、研掃機17bは、本実施の形態のような研削材噴射型ではなく、加圧された水流でトンネルの内壁面WSを研掃するウォータージェット型などでもよい。
【0039】
また、
図2~
図4に示すように、キャスタ17cは、研掃作業に際して、取付台17a-1の主面とトンネルの内壁面WSとの間に一定の間隔を確保するとともに、研掃ヘッド17を内壁面WSに沿って移動させる部材であり、
図4に示すように、例えば、取付台17a-1の主面の四隅に配置されている。研掃作業時には、当該キャスタ17cがトンネルの内壁面WSと接することで取付台17a-1とトンネルの内壁面WSとが一定の間隔に保たれつつ、研掃ヘッド17の移動に伴って当該キャスタ17cがトンネルの内壁面WSに沿って回転するようになっている。
【0040】
キャスタ17cの車輪部は、例えば、ゴムまたはウレタンやナイロン等のようなプラスチックで構成されている。これにより、キャスタ17cが内壁面WSに接触したときに内壁面WSに損傷等を生じさせない上、キャスタ17cを軽量化できるので研掃ヘッド17を軽量化することができる。また、キャスタ17cは、取付台17a-1の主面内(すなわち、内壁面WSの研掃面内)において360°回転自在な構成になっている。これにより、研掃時に研掃ヘッド17の移動方向の自由度を向上させることができる。さらに、キャスタ17cには荷重計(図示せず)が装着されており、研掃作業時にキャスタ17cに加わる荷重を計測することが可能になっている。なお、キャスタ17cの個数、取付位置または材料等は、上記したものに限定されるものではなく、種々変更可能である。
【0041】
また、
図4に示すように、第1のリングブラシ17s-1は、剥離片や研削材等のような飛散物が、取付台17a-1の主面内より外方に漏れるのを遮蔽するための遮蔽部材であり、各研掃機17bの外周を取り囲むように平面視で円環状に形成されている。また、
図2~
図4に示すように、第2のリングブラシ17s-2は、上記飛散物が取付台17aの主面より外方に漏れるのを遮蔽するための遮蔽部材であり、
図4に示すように、2台の研掃機17b,17bを取り囲むように平面視で、例えば、矩形枠状に形成されている。このように第2のリングブラシ17s-2を設けることで、上記飛散物が外部に漏れるのをより一層抑制または防止することができる。
【0042】
このような第1のリングブラシ17s-1および第2のリングブラシ17s-2は、着脱自在の状態で取付台17a-1に取り付けられている。したがって、第1のリングブラシ17s-1や第2のリングブラシ17s-2が劣化したら交換すればよいので、第1のリングブラシ17s-1や第2のリングブラシ17s-2の寿命によって研掃ヘッド17の寿命が決められてしまうこともない。なお、
図2および
図3においては、研掃機17bを見易くするため、第1のリングブラシ17s-1の図示を省略し、第2のリングブラシ17s-2を断面で示した。
【0043】
図2および
図3に示すように、上記した背面板17a-3は、主に研掃機17bを固定する板材であり、取付台17a-1の裏面に対向する主面とその裏側の裏面とを有している。この背面板17a-3は、その主面を取付台17a-1の裏面に対向させた状態で取付台17a-1の長手方向両端の2枚の回動板17a-2間に設置されている。
【0044】
また、上記したアーム部17rは、取付部17aを揺動自在の状態で支持する揺動部であり、ベース板17r-1を備えている。ベース板17r-1は、取付台17a-1の裏面に対向する主面と、その裏側のロッド15の先端面に対向する裏面とを有している。ベース板17r-1の主面においてベース板17r-1の長手方向の両端には、ベース板17r-1の主面に対して直交する方向に延びる2枚の第1の支持板17r-2が設けられ、ベース板17r-1の裏面においてベース板17r-1の長手方向の中央には、ベース板17r-1の裏面に対して直交する方向に延びる2枚の第2の支持板17r-3が設けられている。
【0045】
このアーム部17rの2枚の第1の支持板17r-2は、ロッド15に対して斜め方向に延在し、その延在端部が上記した取付台17a-1の2枚の回動板17a-2と平面視で重なっている。このアーム部17rの第1の支持板17r-2と、取付台17a-1の回動板17a-2とは、それらを貫通するように設けられた締結部材17x-1によって互いに回動自在の状態で接続されている。これにより、取付部17aは、第1の揺動方向PR1(
図2参照)に揺動自在の状態でアーム部17rに取り付けられている。なお、
図3に示したロータリーアクチュエータ17raは、取付部17aの第1の揺動方向PR1(
図2参照)の揺動角度を制御するための機器であり、研掃ヘッド17の片側側面に設置されている。
【0046】
また、上記したようにアーム部17rの第1の支持板17r-2をロッド15の延在方向に対して斜め方向に延在させたことにより取付台17a-1がロッド15に対して斜め上方に取り付けられている。これにより、研掃作業時に曲面形状のトンネルの内壁面WSに対して研掃ヘッド17の研掃面を大きな力で押し付けることができるようになっている。
【0047】
一方、アーム部17rのベース板17r-1の裏面の2枚の第2の支持板17r-3の先端面は弧状に形成されている。この2枚の第2の支持板17r-3の間には、ロッド15の先端面に形成された1枚の凸部15-1が介在されている。この凸部15-1の先端面も弧状に形成されている。そして、ベース板17r-1の裏面の2枚の第2の支持板17r-3と、ロッド15の凸部15-1とは、それらを貫通するように設けられた締結部材17x-2(
図2参照)によって互いに回動自在の状態で接続されている。これにより、研掃ヘッド17(取付台17a-1およびアーム部17r)は、第1の揺動方向PR1(
図2参照)に対して交差(直交)する第2の揺動方向PR2(
図3参照)に揺動自在の状態でロッド15に取り付けられている。このベース板17r-1の第2の支持板17r-3とロッド15の凸部15-1とを締結する締結部材17x-2は、取り外しが可能になっており、この締結部材17x-2を取り外すことで研掃ヘッド17を取り外すことが可能になっている。
【0048】
このように本実施の形態によれば、曲面形状に形成されたトンネルの内壁面WSに追従して研掃ヘッド17を第1の揺動方向PR1(
図2参照)およびこれに交差(直交)する第2の揺動方向PR2(
図3参照)に揺動させることができるので、曲面形状に形成されたトンネルの内壁面WSであっても良好に研掃することができる。
【0049】
図3に示すように、上記したエアシリンダ17pは、研掃機17bを上下動可能な状態で支持する部材である。このエアシリンダ17pは、そのシリンダロッド17p-1の先端部を背面板17a-3の裏面側に固定させた状態で、支持フレーム17eの長手方向の中央に取り付けられている。これにより、エアシリンダ17pは、反力をとるように設置されている。
【0050】
また、この支持フレーム17eの長手方向の両端部と取付台17a-1の裏面との間には、例えば、2本の伸縮ロッド17d,17dが設置されている。この2本の伸縮ロッド17d,17dにより、エアシリンダ17pから2台の研掃機17bに対して適切な圧力が加わるように調整され、2台の研掃機17bの主面内に対して均一な圧力が加わるように調整されている。
【0051】
また、
図4に示すように、2本の伸縮ロッド17d,17dは、取付台17a-1の裏面内においてエアシリンダ17pを中央にして互いに斜めになるように配置されている。このような配置にすることで2本の伸縮ロッド17d,17dでも2台の研掃機17bに対して充分な圧力を加えられるようにできる。すなわち、伸縮ロッド17d,17dを2本で済ませることができるので、研掃ヘッド17を軽量化することができる。
【0052】
研掃作業時には、
図3に示すように、エアシリンダ17pのシリンダロッド17p-1を伸長させると、取付台17a-1の主面のキャスタ17cがトンネルの内壁面WSに適切な圧力で押し付けられるとともに、取付台17a-1の主面の第1のリングブラシ17s-1および第2のリングブラシ17s-2が内壁面WSに適切な圧力で押し付けられるようになっている。
【0053】
次に、トンネル研掃装置10のロッド15および昇降機構部12について
図2、
図3、
図5および
図6を参照して説明する。
図5(a)は
図2のトンネル研掃装置の研掃ヘッドの昇降機構部を説明するためのトンネル研掃装置の要部正面図、
図5(b)は
図5(a)のトンネル研掃装置の要部側面図、
図6(a)は研掃ヘッドを最下部に設置した状態を示したトンネル研掃装置の要部正面図、
図6(b)は研掃ヘッドを第1の昇降機構部で上昇させた状態を示したトンネル研掃装置の要部正面図、
図6(c)は研掃ヘッドを第2の昇降機構部で上昇させた状態を示したトンネル研掃装置の要部正面図である。なお、
図5おおび
図6では、説明を分かり易くするため昇降機構部12の内部を透かして見せているとともに、エアシリンダのシリンダを断面で示しハッチングを付した。また、
図5および
図6では、図面を見易くするため架台18(
図2および
図3参照)を省略した。また、
図5(b)では図面を見易くするためロータリーアクチュエータ17ra(
図3参照)を省略した。
【0054】
図2に示すように、昇降機構部12は、第1の昇降機構部(第1の昇降手段)12aと、その隣に並んで設置された第2の昇降機構部(第2の昇降手段)12bとを備えている。
【0055】
図5に示すように、第1の昇降機構部12aは、中空状の保持フレーム12afと、その中空内に上下動自在の状態で設置されたエアシリンダ12acとを備えている。エアシリンダ12acは、図示しないエアコンプレッサを駆動源とし、当該エアコンプレッサから供給される圧縮空気によって研掃ヘッド17を上下動させるための昇降機器であり、そのシリンダロッド12arを上に向け、起立した状態で設置されている。そのシリンダロッド12arの先端は、上記したロッド15の取付板15fに機械的に接続されている。これにより、
図6に示すように、エアシリンダ12acのシリンダロッド12arを上方に延ばすとロッド15および研掃ヘッド17が上昇し(
図6(b)参照)、シリンダロッド12arを下方に縮めるとロッド15および研掃ヘッド17が下降する(
図6(a)参照)ようになっている。なお、上記したロッド15の下部側は、保持フレーム12afの中空内に挿入された状態で設置されている。また、ロッド15の側面と、保持フレーム12afの中空内側面との間に、ロッド15の側面部を支持するローラ対(図示せず)を設けても良い。これにより、ロッド15をローラ対により安定させた状態で上下動させることができる。
【0056】
一方、
図5に示すように、第2の昇降機構部12bは、中空状の保持フレーム12bfと、その中空内に設置されたボールネジ12bnと、保持フレーム12bfの外部に設置されたスクリューモータ12bmとを備えている。ボールネジ12bnは、エアシリンダ12ac自体を上下動させることで研掃ヘッド17を上下動させるための昇降機器であり、ネジ軸12bn1と、ナット12bn2とを備えている。
【0057】
ネジ軸12bn1は、鉛直方向に沿って起立した状態で設置されている。ナット12bn2は、上下動自在の状態でネジ軸12bn1の外周に螺合されている。このネジ軸12bn1とナット12bn2との間には、図示しない、複数個のボールと、ボールを循環させる循環部品(デフレクタおよびリターンプレート等)とが介在されている。また、ナット12bn2は、支持部12bn3と一体的に接続されている。この支持部12bn3は、エアシリンダ12acを支持するようにエアシリンダ12acと機械的に接続されている。
【0058】
スクリューモータ12bmは、ボールネジ12bnのネジ軸12bn1を回転させるための駆動手段であり、例えば、電動式モータで構成されている。これにより、トンネル研掃装置10を軽量化することができるので、トンネル研掃装置10を運搬し易くすることができる。このスクリューモータ12bmによってネジ軸12bn1を回転させると、その回転方向に応じてナット12bn2が上下に移動するようになっている。そして、ナット12bn2が上下動するとエアシリンダ12acも上下動するようになっている。これにより、
図6に示すように、ボールネジ12bnのネジ軸12bn1を回転させてナット12bn2を上昇させると、エアシリンダ12ac、ロッド15および研掃ヘッド17が上昇し(
図6(c)参照)、ボールネジ12bnのネジ軸12bn1を回転させてナット12bn2を下降させると、エアシリンダ12ac、ロッド15および研掃ヘッド17が下降する(
図6(b)参照)ようになっている。
【0059】
このように第1の昇降機構部12aおよび第2の昇降機構部12bによって研掃ヘッド17の高さ位置を調整することにより、研掃ヘッド17のキャスタ17cをトンネルの内壁面WSに押し付けることができる。ここで、研掃ヘッド17のキャスタ17cをロッド15の上昇のみで内壁面WSに押し付ける場合には、上記した研掃ヘッド17のエアシリンダ17p(
図3参照)を省略することができる。但し、ロッド15の上下動で研掃ヘッド17の大まかな高さを調節し、エアシリンダ17pで研掃ヘッド17のキャスタ17cをトンネルの内壁面WSに押し付けるようにすれば、研掃ヘッド17の押圧精度を向上させることができるので、トンネルの内壁面WSに対して研掃ヘッド17をより適切な圧力で押し付けることができる。
【0060】
ここで、本実施の形態では、一方の昇降機構部12である第1の昇降機構部12aをエアシリンダ12acで構成し、もう一方の昇降機構部12である第2の昇降機構部12bをボールネジ12bnで構成している。これにより、ある高さの研掃位置からそれより高い研掃位置に移動する際の研掃ヘッド17の移動(つまり、研掃ヘッド17の研掃高さの変更)を精度よく且つ速やかに行うことができる。
【0061】
すなわち、研掃ヘッド17の高さを同一にした状態で研掃ヘッド17を走行方向に移動してトンネル内壁面を研掃する際に、第2の昇降機構部12b(ボールネジ12bn)を伸長させる。第1の昇降機構部12a(エアシリンダ12ac)のシリンダロッド12ar先端の研掃ヘッド17はトンネル内壁面WSに押圧されていることから、第2の昇降機構部12b(ボールネジ12bn)が伸長した分だけシリンダロッド12arが後退し、第1の昇降機構部12a(エアシリンダ12ac)が縮む。このとき、シリンダロッド12arが後退してシリンダ室の容積が減少した分のエアが図示しないリリーフ式減圧弁(またはリリーフ弁)から大気へ放出され、第1の昇降機構部12a(エアシリンダ12ac)内のエア圧が一定に保たれる。
【0062】
そして、研掃ヘッド17が横行方向(つまり、トンネル内壁面WSから離間する方向)に移動して第1の昇降機構部12a(エアシリンダ12ac)内のエア圧が低下しそうになると、エアコンプレッサからエア圧を一定に保つための圧縮空気が供給されて当該第1の昇降機構部12a(エアシリンダ12ac)が上昇する。よって、第1の昇降機構部12aの先端に取り付けられた研掃ヘッド17は、トンネル内壁面WSに押圧されたままで(つまり、トンネル内壁面WSに対する押圧力が維持された状態で)、トンネル内壁面WSに沿って上昇して次の研掃高さに移動する。
【0063】
これにより、トンネル研掃装置に設けられた研掃ヘッド17の研掃高さを精度よく且つ速やかに変更することが可能になる。なお、この観点からは、例えば、第1の昇降機構部12aをボールネジで構成し、第2の昇降機構部12bをエアシリンダで構成しても良い。
【0064】
なお、湾曲したトンネル内壁面WSのトンネル横断方向内側へと研掃ラインを移動させながら研掃する場合、ある研掃位置と次の研掃位置との高さの差は徐々に小さくなることから、横行時における研掃ヘッド17の上昇量は徐々に小さくなる。したがって、走行時においての第2の昇降機構部12b(ボールネジ12bn)の伸長量も、それに合わせて徐々に小さくするようにする。具体的には、横行時における第1の昇降機構部12a(エアシリンダ12ac)のストローク長をストローク計で計測し、次の走行時における第2の昇降機構部12b(ボールネジ12bn)の伸長量を、計測したストローク長の所定割合(例えば、ストローク長の3/8)とする。
【0065】
なお、大断面で頂部が高い位置になったトンネルの内壁面WSを研掃するためには、研掃ヘッド17を高い位置まで上昇させる関係上、研掃ヘッドを1つの昇降機構部のみで昇降させる構成の場合においては装置の高さが高くなってしまう。
【0066】
これに対して、本実施の形態においては、研掃ヘッド17を昇降する昇降機構部を第1の昇降機構部12aと第2の昇降機構部12bとで構成し、これらを横方向に沿って並べて設置したことにより、
図6(a),(b),(c)に示すように、研掃ヘッド17を低い位置から高い位置まで広範囲に設定することができる。これにより、高さ方向にコンパクトな昇降機構としつつ、研掃ヘッド17をトンネル内壁面WSの高い位置まで到達させることが可能になる。
【0067】
次に、トンネル研掃装置10の架台18について
図2、
図3および
図7~
図11を参照して説明する。
図7は
図2のトンネル研掃装置の架台の平面図、
図8(a)は
図7の架台の固定フレームの平面図、
図8(b)は
図7の架台の回動フレームおよびスライドフレームの平面図、
図9(a)は
図7のI-I線の断面図、
図9(b)は
図7のII-II線の断面図、
図10は
図7の架台における回動フレームの回動時の平面図、
図11は
図7の架台におけるスライドフレームのスライド時の平面図である。
【0068】
なお、
図7、
図8、
図10および
図11は平面図であるが、図面を見易くするためハッチングを付した。また、
図7、
図8、
図10および
図11において符号D1はトンネルの内壁面WSに交差する第1の水平方向を示し、符号D2はトンネルの内壁面WSに沿う第2の水平方向を示している。さらに、
図9では図面を見易くするために簡略化して示すとともに、走行フレーム18D、ベースプレート18Eおよびそれらの移動に関係する移動手段の図示を省略した。
【0069】
図2および
図3に示すように、トンネル研掃装置10の架台18は、下方から順に、固定フレーム18Aと、回動フレーム18Bと、スライドフレーム18Cと、走行フレーム18Dと、ベースプレート18Eとを備えている。
【0070】
固定フレーム18Aは、
図8(a)に示すように、回動フレーム18B、スライドフレーム18Cおよび走行フレーム18Dを搭載するための基台の躯体であり、例えば、平面視で矩形枠状のメタルフレームで構成されている。この固定フレーム18Aは、第1の水平方向D1に延びる一対の短枠部18A1と、一対の短枠部18A1の長手方向両端部に一対の短枠部18A1間を橋渡すように設けられた一対の長枠部18A2と、
図7および
図8(a)に示すように、一対の長枠部18A2の長手方向中央に一対の長枠部18A2間を橋渡すように設けられた梁枠部18A3と、一方の長枠部18A2の長手方向一端側の近傍に接合された支持部18A4とを一体的に備えている。
図8(a)および
図9(a)に示すように、固定フレーム18Aの梁枠部18A3の長手方向中央(平面視で固定フレーム18Aの面内中央)には、回動軸受部18A5が設けられている。
【0071】
この固定フレーム18A上には、
図2および
図3に示すように、回転支承体18Rを介して回動フレーム18Bが搭載されている。回動フレーム18Bは、回動手段の躯体(回動体)であり、
図7および
図8(b)に示すように、例えば、平面視で矩形枠状のメタルフレームで構成されている。この回動フレーム18Bは、第1の水平方向D1に延びる一対の短枠部18B1と、一対の短枠部18B1の長手方向両端部に一対の短枠部18B1間を橋渡すように設けられた一対の長枠部18B2と、一対の長枠部18B2の長手方向中央に一対の長枠部18B2間を橋渡すように設けられた梁枠部18B3とを一体的に備えている。
図7、
図8(b)および
図9(a)に示すように、回動フレーム18Bの梁枠部18B3の長手方向中央(平面視で回動フレーム18Bの面内中央)には、回動軸部18B4が設けられている。この回動軸部18B4は、
図9(a)に示すように、固定フレーム18Aの回動軸受部18A5に篏合されている。
【0072】
回動フレーム18Bは、
図9に示すように、定位置のときに平面視で固定フレーム18Aに一致した状態で重なるように配置されている。すなわち、回動フレーム18Bが定位置のときに、回動フレーム18Bの一対の短枠部18B1は、固定フレーム18Aの一対の短枠部18A1上に、その各々の一対の短枠部18A1に平面視で重なるように配置されている。また、回動フレーム18Bが定位置のときに、回動フレーム18Bの一対の長枠部18B2は、固定フレーム18Aの一対の長枠部18A2上に、その各々の一対の長枠部18A2に平面視で重なるように配置されている。
【0073】
この回動フレーム18Bは、回動軸部18B4を中心にして回動フレーム18Bの搭載面内に沿って正逆両方向に回動自在の状態で固定フレーム18A上に搭載されている。本実施の形態においては、上記したように固定フレーム18Aおよび回動フレーム18Bを枠体としたことにより、トンネル研掃装置10を軽量化することができる。このためトンネル研掃装置10を運搬し易くすることができる。また、回動フレーム18Bを軽量化することができるとともに、回動フレーム18Bの回動時に固定フレーム18Aとの接触面積を低減することができるので、回動フレーム18Bをより一層滑らかに回動させることができる。なお、回動フレーム18Bを回動させると、回動フレーム18B上のスライドフレーム18C、走行フレーム18D、ベースプレート18Eおよび上記研掃装置本体も一緒に回動するようになっている。
【0074】
ここで、トンネルの内壁面WSを研掃するために、トンネル研掃装置10を搭載した高所作業車V(
図1参照)をトンネルの内壁面WSに横付けしたときに高所作業車Vがトンネルの内壁面に対して若干斜めに配置されてしまう場合がある。この場合、トンネルの内壁面WSの研掃処理に際し、当該内壁面WSに対してトンネル研掃装置10の研掃ヘッド17の研掃面が斜めに傾いてしまうので、トンネルの内壁面WSに対して研掃ヘッド17を適度に押し付けた状態で移動させることができなくなり、トンネルの内壁面WSに対して良好な研掃処理を施すことができなくなる場合がある。これに対して本実施の形態においては、回動フレーム18Bを回動させることにより、トンネルの内壁面WSに対して研掃ヘッド17の研掃面が平行になるように設定することができる。このため、トンネルの内壁面WSに対して研掃ヘッド17を適度に押し付けた状態で移動させることができるので、トンネルの内壁面WSの研掃処理を良好に実施することができる。
【0075】
図7および
図9に示すように、回動フレーム18Bの一方の短枠部18B1の内側近傍には、ジャッキ18Jが、そのロッド部18J1を回動フレーム18Bの一方の長枠部18B2に向けた状態で、固定フレーム18Aの支持部18A4に固定されている。ジャッキ18Jは、回動フレーム18Bを回動させるための回動手段であり、例えば、電動式ジャッキで構成されている。ジャッキ18Jを電動式ジャッキで構成したことにより、ジャッキ18Jを油圧式ジャッキで構成した場合に比べて、トンネル研掃装置10を軽量化することができる。
【0076】
ジャッキ18Jのロッド部18J1の先端部は、回動フレーム18Bの一方の長枠部18B2の内側に揺動自在の状態で接合されている。ジャッキ18Jのモータ部18J2を正逆方向に回動するとロッド部18J1が第1の水平方向D1に沿って伸縮するようになっており、このロッド部18J1の伸縮により回動フレーム18Bが回動するようになっている。
【0077】
例えば、
図10に示すように、高所作業車V(
図1参照)がトンネルの内壁面WSに対して若干右に傾斜して横付けされてしまった場合(トンネルの内壁面WSがトンネル研掃装置10に対して左に傾斜している場合)は、ジャッキ18Jのロッド部18J1を矢印A1に示す方向に所定長さだけ延ばす。すると、回動フレーム18Bは、ジャッキ18Jのロッド部18J1に押されて矢印A2に示す方向に所定回動量だけ回動し、回動フレーム18Bの長枠部18B2(研掃ヘッド17の研掃面)がトンネルの内壁面WSに対してほぼ平行になったところで停止する。
【0078】
一方、回動フレーム18Bを元の位置に戻す場合は、ジャッキ18Jのロッド部18J1を矢印A3に示す方向に所定長さだけ縮める。すると、回動フレーム18Bは、ジャッキ18Jに引かれて
図10の矢印A4に示す方向に所定回動量だけ回動し、回動フレーム18Bは元の位置に戻る。また、高所作業車Vがトンネルの内壁面WSに対して若干左に傾斜して横付けされてしまった場合(トンネルの内壁面WSはトンネル研掃装置10に対して右に傾斜している場合)は、ジャッキ18Jのロッド部18J1を矢印A3に示す方向にさらに所定長さだけ縮める。すると、回動フレーム18Bは、ジャッキ18Jに引かれて
図10の矢印A4に示す方向にさらに所定回動量だけ回動し、回動フレーム18Bの長枠部18B2(研掃ヘッド17の研掃面)がトンネルの内壁面WSに対してほぼ平行になったところで停止する。
【0079】
また、
図7に示すように、回動フレーム18Bにおいて、トンネルの内壁面WSに対向する長枠部18B2の長手方向両端部近傍には、センサSL1,SL2が設置されている。このセンサSL1,SL2は、回動フレーム18Bの回動量やスライドフレーム18Cおよびベースプレート18Eの移動量を算出するために、各センサSL1,SL2からトンネルの内壁面WSまでの距離を測定するのに使用される非接触型のセンサである。すなわち、トンネル研掃装置10は、各センサSL1,SL2の発光部からトンネルの内壁面WSにレーザ光LLを照射したときに、トンネルの内壁面WSから反射された反射光RLをセンサSL1,SL2の受光部で受光することで得られた検出情報に基づいて、各センサSL1,SL2からトンネルの内壁面WSまでの距離を算出することが可能になっている。そして、その算出結果に基づいてトンネル研掃装置10と内壁面WSとの平行度を算出し、さらにその算出結果に基づいて回動フレーム18Bの回動量を算出することが可能になっている。また、各センサSL1,SL2からトンネルの内壁面WSまでの距離の算出結果に基づいて、スライドフレーム18Cおよびベースプレート18Eの移動量を算出することが可能になっている。
【0080】
なお、トンネル研掃装置10と内壁面WSとの平行度は、平面視でトンネルの内壁面WSに対するトンネル研掃装置10(具体的には、例えば、長枠部18B2)の傾き角度で表される。また、センサSL1,SL2の数は2個に限定されるものではなく、例えば、3個以上でも良い。また、センサSL1,SL2の設置箇所も上記箇所に限定されるものではなく種々変更可能である。
【0081】
この回動フレーム18B上には、
図2および
図3に示すように、スライド用リニアガイド18LSを介してスライドフレーム18Cが搭載されている。スライドフレーム18Cは、移動手段の躯体であり、
図7に示すように、例えば、平面視で矩形枠状のメタルフレームで構成されている。このスライドフレーム18Cは、第1の水平方向D1に延びる一対の短枠部18C1と、一対の短枠部18C1の長手方向両端部に一対の短枠部18C1間を橋渡すように設けられた一対の長枠部18C2とを一体的に備えている。スライドフレーム18Cの一対の短枠部18C1は、回動フレーム18Bの一対の短枠部18B1に平面視で重なった状態で一対の短枠部18B1上に配置されている。
【0082】
図2および
図3に示すように、このスライドフレーム18Cの一対の短枠部18C1と、回動フレーム18Bの一対の短枠部18B1との間には、上記したスライド用リニアガイド18LSが設置されている。このスライド用リニアガイド18LSは、ガイドレール18LS1と、その上に設けられた2個のブロック18LS2とを備えている。
図2に示すように、ガイドレール18LS1は、回動フレーム18Bの一対の短枠部18B1上に第1の水平方向D1に沿って配置されている。
図2および
図3に示すように、ブロック18LS2は、ガイドレール18LS1に取り付けられている。ブロック18LS2の内部には、複数のボール(図示せず)が組み込まれており、この複数のボールの転がりにより、ブロック18LS2はガイドレール18LS1に沿って水平に移動することが可能になっている。
図2に示すように、ガイドレール18LS1の長手方向の両端近傍側には、ブロック18LS2の移動を制限(阻止)するリミットスイッチ18S1が設置されている。
【0083】
このスライド用リニアガイド18LSのブロック18LS2はスライドフレーム18Cの一対の短枠部18C1と接合されている。これにより、スライドフレーム18Cは、第1の水平方向D1(すなわち、トンネルの内壁面WSに接近する方向および内壁面から離間する方向)に往復移動することが可能になっている。本実施の形態においては、上記したようにスライドフレーム18Cおよび回動フレーム18Bを枠体としたことにより、トンネル研掃装置10を軽量化することができる。このためトンネル研掃装置10を運搬し易くすることができる。また、スライドフレーム18Cを軽量化することができるとともに、スライドフレーム18Cの移動時に回動フレーム18Bとの接触面積を低減することができるので、スライドフレーム18Cをより一層滑らかに移動させることができる。なお、スライドフレーム18Cを第1の水平方向D1に沿って往復移動させると、スライドフレーム18C上の走行フレーム18D、ベースプレート18Eおよび上記研掃装置本体も一緒に第1の水平方向D1に沿って往復移動するようになっている。
【0084】
ここで、本発明者が検討したトンネル研掃装置においては、スライドフレーム18Cが無いので、トンネルの内壁面WSの研掃処理に際して、研掃ヘッドをトンネルの内壁面に押し当てるために、トンネル研掃装置の架台に設けられた水平移動台の水平移動により研掃ヘッドをトンネルの内壁面の近くまで送り高所作業車V(
図1参照)の荷台の幅方向一端側に配置している。このため、高所作業車V(
図1参照)の荷台の面内に重量の偏りが生じ、トンネル研掃装置の設置上の安定性が損なわれる虞がある。これに対して、本実施の形態においては、トンネル研掃装置10のスライドフレーム18C自体を水平に移動させてトンネルの内壁面WSに近づけることができるので、高所作業車V(
図1参照)の荷台の面内の重量の偏りを緩和することができ、トンネル研掃装置10の設置上の安定性を向上させることができる。
【0085】
また、スライドフレーム18Cが無い場合、高所作業車V(
図1参照)をトンネルの内壁面WSの近傍に横付けするときに、高所作業車Vの位置がトンネルの内壁面WSに近すぎても遠すぎても、その修正のために高所作業車V自体を移動させなければならず作業効率が下がるので、高所作業車Vの停車位置に高い精度が求められる場合がある。これに対して、本実施の形態においては、高所作業車Vの位置がトンネルの内壁面WSに近すぎたり遠すぎたりしたとしてもトンネル研掃装置10のスライドフレーム18Cのスライド(水平移動)により、作業効率を下げることなく、トンネル研掃装置10とトンネルの内壁面WSとの距離を調整することができるので、高所作業車Vの停車位置の精度を緩和することができる。
【0086】
図7および
図8(b)に示すように、スライドフレーム18Cの一方の短枠部18C1の外側において短枠部18C1の長手方向のトンネル中央側の端近傍には、正逆両方向に回動自在のモータ18MSが設置されている。モータ18MSは、スライドフレーム18Cを第1の水平方向D1に沿って往復移動させるための移動手段であり、例えば、電動式モータで構成されている。モータ18MSを電動式モータで構成したことにより、モータ18MSを油圧モータで構成した場合に比べて、トンネル研掃装置10を軽量化することができる。
【0087】
図8(b)に示すように、スライドフレーム18Cの一対の短枠部18C1の各々の内側においてトンネルの内壁面WS側の端部近傍の各々には、互いに対向するように一対の回動軸受部18BP1,18BP1が設けられている。この一対の回動軸受部18BP1,18BP1の間には、スライドフレーム18Cの長枠部18C2に沿うように延在する連結棒18CR1が中心軸を中心にして回動可能な状態で設置されている。この連結棒18CR1の長手方向両端近傍の各々には、一対の鎖歯車18CG1,18CG1が取り付けられている。
【0088】
一方、スライドフレーム18Cの一対の短枠部18C1の内側においてトンネルの中央側の端部近傍の一方には、上記モータ18MSの回動軸部が配置されている。また、スライドフレーム18Cの一対の短枠部18C1の内側においてトンネルの中央側の端部近傍の他方(モータ18MSの回動軸部に対向する位置)には、回動軸受部18BP2が設けられている。このモータ18MSの回転軸部と回動軸受部18BP2との間には、スライドフレーム18Cの長枠部18C2に沿うように延在する連結棒18CR2が中心軸を中心にして回動可能な状態で設置されている。この連結棒18CR2の一端部はモータ18MSの回動軸部と接続されている。したがって、モータ18MSの回動軸部が回動するとそれに合わせて連結棒18CR2も回動するようになっている。この連結棒18CR2の長手方向の両端近傍の各々には、一対の鎖歯車18CG2,18CG2が取り付けられている。
【0089】
そして、
図8(b)および
図9(b)に示すように、連結棒18CR1,18CR2の長手方向両端近傍の鎖歯車18CG1,18CG2の各々には、一対のチェーン18SCが無端状に架け渡されている。各チェーン18SCは、各チェーン18SCの一部に接合された連結体18SJを介してスライドフレーム18Cの短枠部18C1と接合されている。このため、モータ18MSを回動すると、チェーン18SCが回動し、チェーン18SCに接合された連結体18SJが第1の水平方向D1に沿って往復移動することにより、スライドフレーム18Cが第1の水平方向D1に沿って往復移動するようになっている。
【0090】
例えば、
図11に示すように、モータ18MSの回転軸部を矢印A5に示す方向に所定回動量だけ回動させると、チェーン18SCの連結体18SJがトンネルの内壁面WSに接近する方向に所定長さだけ移動するので、連結体18SJに接合されたスライドフレーム18C(すなわち、研掃ヘッド17の研掃面)がトンネルの内壁面WSに接近する方向(矢印A6に示す方向)に所定長さだけ移動して停止する。
【0091】
一方、モータ18MSの回転軸部を矢印A5とは反対の矢印A7に示す方向に所定回動量だけ回動させると、チェーン18SCの連結体18SJが所定長さだけトンネルの内壁面WSから離間する方向に移動するので、連結体18SJに接合されたスライドフレーム18C(すなわち、研掃ヘッド17の研掃面)がトンネルの内壁面WSから離間する方向(矢印8に示す方向)に所定長さだけに移動して停止する。なお、スライドフレーム18Cがトンネルの内壁面WSに向かって水平移動するときの移動量は、上記したセンサSL1,SL2で測定された各センサSL1,SL2からトンネルの内壁面WSまでの距離に基づいて設定される。
【0092】
このスライドフレーム18C上には、
図2および
図3に示すように、走行用リニアガイド18LLを介して走行フレーム18Dが搭載されている。走行フレーム18Dは、移動手段の躯体(移動体)であり、
図7に示すように、例えば、平面視で矩形枠状のメタルフレームで構成されている。この走行フレーム18Dは、第1の水平方向D1に延びる一対の長枠部18D1と、一対の長枠部18D1の長手方向両端部に一対の長枠部18D1間を橋渡すように設けられた一対の短枠部18D2とを一体的に備えている。走行フレーム18Dの平面寸法は、上記したスライドフレーム18Cの平面寸法より小さい。走行フレーム18Dの一対の短枠部18D2は、スライドフレーム18Cの一対の長枠部18C2に平面視で重なった状態で一対の長枠部18C2上に配置されている。
【0093】
図2および
図3に示すように、この走行フレーム18Dの一対の短枠部18D2と、スライドフレーム18Cの一対の長枠部18C2との間には、上記した走行用リニアガイド18LLが設置されている。この走行用リニアガイド18LLは、上記したスライド用リニアガイド18LSと同様に、ガイドレール18LL1と、その上に設けられた2個のブロック18LL2とを備えている。ガイドレール18LL1は、スライドフレーム18Cの一対の長枠部18C2上に第2の水平方向D2に沿って配置されている。ガイドレール18LL1の長手方向の両端近傍側には、ブロック18LL2の移動を制限(阻止)するリミットスイッチ18S2(
図3参照)が設置されている。
【0094】
この走行用リニアガイド18LLのブロック18LL2は走行フレーム18Dの一対の短枠部18D2と接合されている。これにより、走行フレーム18Dは、第2の水平方向D2(すなわち、トンネルの内壁面WSに沿う方向)に沿って往復移動することが可能になっている。本実施の形態においては、上記したようにスライドフレーム18Cおよび走行フレーム18Dを枠体とすることにより、トンネル研掃装置10を軽量化することができる。このためトンネル研掃装置10を運搬し易くすることができる。また、走行フレーム18Dを軽量化することができるとともに、走行フレーム18Dの往復走行時にスライドフレーム18Cとの接触面積を低減することができるので、走行フレーム18Dをより一層滑らかに移動させることができる。
【0095】
また、
図7に示すように、スライドフレーム18Cにおいてトンネルの内壁面WSに沿う長枠部18C2の長さを短枠部18C1の長さより長くしたことにより、走行フレーム18D(すなわち、研掃ヘッド17)の走行距離を長くすることができるので、トンネルの内壁面WSの研掃距離を長くすることができる。これにより、トンネル研掃装置10の研掃作業効率を向上させることができるので、研掃作業時間を短縮することができる。なお、走行フレーム18Dを第2の水平方向D2に往復走行させると、走行フレーム18D上のベースプレート18Eおよび上記研掃装置本体も一緒に第2の水平方向D2に往復走行するようになっている。
【0096】
この走行フレーム18Dの長手方向(第1の水平方向D1)の一端側には、正逆両方向に回動自在のモータ18MLが設置されている。このモータ18MLは、走行フレーム18Dを往復移動させるための移動手段であり、例えば、電動式モータで構成されている。モータ18MLを電動式モータで構成したことにより、モータ18MLを油圧式モータで構成した場合に比べて、トンネル研掃装置10を軽量化することができる。
【0097】
この走行フレーム18D上には、
図2および
図3に示すように、横行用リニアガイド18LWを介してベースプレート18Eが搭載されている。ベースプレート18Eは、
図7に示すように、例えば、平面視で略正方形状のメタルプレートで構成されている。ベースプレート18Eの平面寸法は、走行フレーム18Dの平面寸法より小さい。ベースプレート18Eにおいて第2の水平方向D2の両端部は、走行フレーム18Dの一対の長枠部18D1に平面視で重なった状態で一対の長枠部18D1上に配置されている。
【0098】
図2および
図3に示すように、このベースプレート18Eと、走行フレーム18Dの一対の長枠部18D1との間には、上記した横行用リニアガイド18LWが設置されている。この横行用リニアガイド18LWは、上記した走行用リニアガイド18LLと同様に、ガイドレール18LW1と、その上に設けられた2個のブロック18LW2とを備えている。ガイドレール18LW1は、走行フレーム18Dの一対の長枠部18D1上に第1の水平方向D1に沿って配置されている。ガイドレール18LW1の長手方向の両端近傍側には、ブロック18LW2の移動を制限(阻止)するリミットスイッチ18S3(
図2参照)が設置されている。
【0099】
この横行用リニアガイド18LWのブロック18LW2はベースプレート18Eと接合されている。これにより、ベースプレート18Eは、第1の水平方向D1(すなわち、トンネルの内壁面WSに接近する方向および内壁面WSから離間する方向)に沿って往復移動自在の状態で走行フレーム18D上に設置されている。本実施の形態においては、ベースプレート18Eは略正方形状のメタルプレートで形成されているが、上記したようにベースプレート18Eはその平面寸法が走行フレーム18Dの平面寸法より小さいので、トンネル研掃装置10を軽量化することができる。このためトンネル研掃装置10を運搬し易くすることができる。また、ベースプレート18Eを軽量化することができるとともに、ベースプレート18Eの往復横行時に走行フレーム18Dとの接触面積を低減することができるので、ベースプレート18Eをより一層滑らかに移動させることができる。なお、ベースプレート18Eを往復横行させると、ベースプレート18E上の上記研掃装置本体も一緒に往復横行するようになっている。
【0100】
このベースプレート18Eの1つの角部の近傍には、正逆両方向に回動自在のモータ18MWが設置されている。このモータ18MWは、ベースプレート18Eを往復移動させるための移動手段であり、例えば、電動式モータで構成されている。モータ18MWを電動式モータで構成したことにより、モータ18MWを油圧式モータで構成した場合に比べて、トンネル研掃装置10を軽量化することができる。
【0101】
次に、本実施の形態のトンネル研掃装置10によるトンネルの内壁面WSの研掃例について
図1~
図3、
図12および
図13を用いて説明する。
図12(a),(b)は本実施の形態のトンネル研掃装置の研掃作業準備時の架台の平面図、
図13(a)は
図12(b)の後のトンネル研掃装置の研掃作業準備時の架台の平面図、
図13(b)は
図13(a)の後のトンネル研掃装置の研掃作業時の架台の平面図である。
【0102】
まず、
図1(a)に示した高所作業車Vにトンネル研掃装置10を搭載した状態で高所作業車Vを研掃エリアまで移動してトンネルの内壁面WSに横付けし、トンネル研掃装置10を研掃エリアまで運ぶ。このとき、トンネル研掃装置10が搭載されたデッキ部Vbを下降状態とする。また、トンネル研掃装置10の研掃ヘッド17を最も低い位置に設定した状態とする(
図6(a)参照)。これにより、本実施の形態においては、トンネル研掃装置10を研掃エリアまで安定した状態で運搬することができる。なお、
図2に示すように、トンネル研掃装置10は、その研掃ヘッド17の研掃面(トンネルの内壁面WSに対向する面であって研掃機17b等が設置された取付台17a-1の主面)がトンネルの内壁面WSを向いている。また、上記した第1の水平方向D1はトンネルの内壁面WSに交差し、第2の水平方向D2はトンネルの延伸方向(走行方向)に沿っている。
【0103】
続いて、
図1(b)に示すように、高所作業車Vのデッキ部Vbを上昇させてトンネル研掃装置10を所定の高さに設定した後、
図12(a)に示すように、センサSL1,SL2によってセンサSL1,SL2からトンネルの内壁面WSまでの各々の距離を計測する。ここで、その各々の距離の測定値に基づいてトンネル研掃装置10の研掃ヘッド17の研掃面がトンネルの内壁面WSに対して傾いていると判断された場合は、上記した回動フレーム18Bを回動させてトンネル研掃装置10の研掃ヘッド17の研掃面がトンネルの内壁面WSに対して平行になるように設定する。なお、ここではトンネル研掃装置10の研掃ヘッド17の研掃面がトンネルの内壁面WSに対して傾いていない場合を例示している。
【0104】
その後、上記したセンサSL1,SL2で得られた距離の情報に基づいて、
図12(b)に示すように、スライドフレーム18Cをトンネルの内壁面WSに接近する方向にスライド(水平移動)して所定位置で止める。ここで、スライドフレーム18Cのスライドでトンネル研掃装置10の研掃ヘッド17の研掃面がトンネルの内壁面WSに当接できる場合は、そのまま研掃処理に移行する。一方、スライドフレーム18Cのスライドのみではトンネル研掃装置10の研掃ヘッド17の研掃面がトンネルの内壁面WSに当接されない場合は、
図13(a)に示すように、上記したセンサSL1,SL2で得られた距離の情報に基づいてベースプレート18Eをトンネルの内壁面WSに接近する方向に動かしてトンネル研掃装置10の研掃ヘッド17の研掃面がトンネルの内壁面WSに当接される位置で止める。
【0105】
次いで、トンネル研掃装置10の研掃ヘッド17を第1の昇降機構部12a、第2の昇降機構部12bまたはその両方によって上昇させ、さらにエアシリンダ17pにより2台の研掃機17bを押圧して、研掃ヘッド17の研掃面をトンネルの内壁面WSに押し付ける。このとき、研掃ヘッド17の研掃面のキャスタ17cがトンネルの内壁面WSに押し付けられるが、上記したように研掃ヘッド17がトンネルの内壁面WSの曲面形状に追従して揺動することで、その研掃ヘッド17の研掃面がトンネルの内壁面WSに対して最適な状態で当接され向き合うようになる。
【0106】
その後、研掃ヘッド17の研掃機17bから噴射した研削材をトンネルの内壁面WSに吹き付けながら、
図13(b)に示すように、走行フレーム18Dをトンネルの延伸方向(走行方向)に動かすことにより当該研掃ヘッド17をトンネルの延伸方向に移動させる。これにより、トンネルの内壁面WSの劣化部分を研削することで当該内壁面WSを研掃する。なお、同時に剥離片や研削材が外部に漏れないように研掃ヘッド17の吸引口17b-2から剥離片や研削材を吸引する。本実施の形態においては、上記したように研掃ヘッド17の第1のリングブラシ17s-1および第2のリングブラシ17s-2が壁となり剥離片や研削材が外部に漏れないようになっている。
【0107】
このように本実施の形態によれば、研掃ヘッド17の高さを同一にした状態で研掃ヘッド17を走行方向に移動してトンネル内壁面を研掃する際に、第2の昇降機構部12b(ボールネジ12bn)を伸長させる。第1の昇降機構部12a(エアシリンダ12ac)のシリンダロッド12ar先端の研掃ヘッド17はトンネル内壁面WSに押圧されていることから、第2の昇降機構部12b(ボールネジ12bn)が伸長した分だけシリンダロッド12arが後退し、第1の昇降機構部12a(エアシリンダ12ac)が縮む。このとき、シリンダロッド12arが後退してシリンダ室の容積が減少した分のエアが図示しないリリーフ式減圧弁(またはリリーフ弁)から大気へ放出され、第1の昇降機構部12a(エアシリンダ12ac)内のエア圧が一定に保たれる。
【0108】
そして、研掃ヘッド17が横行方向(つまり、トンネル内壁面WSから離間する方向)に移動して第1の昇降機構部12a(エアシリンダ12ac)内のエア圧が低下しそうになると、エアコンプレッサからエア圧を一定に保つための圧縮空気が供給されて当該第1の昇降機構部12a(エアシリンダ12ac)が上昇する。よって、第1の昇降機構部12aの先端に取り付けられた研掃ヘッド17は、トンネル内壁面WSに押圧されたままで(つまり、トンネル内壁面WSに対する押圧力が維持された状態で)、トンネル内壁面WSに沿って上昇して次の研掃高さに移動する。
【0109】
これにより、トンネル研掃装置に設けられた研掃ヘッド17の研掃高さを精度よく且つ速やかに変更することが可能になる。
【0110】
また、研掃ヘッド17を昇降する昇降機構部を第1の昇降機構部12aと第2の昇降機構部12bとで構成し、これらを横方向に沿って並べて設置したことにより、研掃ヘッド17を低い位置から高い位置まで広範囲に設定することができる。これにより、高さ方向にコンパクトな昇降機構としつつ、研掃ヘッド17をトンネル内壁面WSの高い位置まで到達させることが可能になる。
【0111】
また、トンネル研掃装置10のスライドフレーム18C自体を水平移動させてトンネルの内壁面WSに近づけることができるので、高所作業車V(
図1参照)の荷台の面内の重量の偏りを緩和することができ、トンネル研掃装置10の設置上の安定性を向上させることができる。
【0112】
また、高所作業車Vの位置がトンネルの内壁面WSに近すぎたり遠すぎたりしたとしてもトンネル研掃装置10のスライドフレーム18Cのスライド(水平移動)により作業効率を下げることなくトンネル研掃装置10とトンネルの内壁面WSとの距離を調整することができるので、高所作業車Vの停車位置の精度を緩和することができる。
【0113】
また、曲面形状に形成されたトンネルの内壁面WSの研掃処理に際して、トンネルの内壁面WSの各研掃位置での曲面状態に応じてトンネル研掃装置10の研掃ヘッド17を揺動させて研掃ヘッド17の研掃面をトンネルの内壁面WSに適切な圧で押し付けながら研掃処理を施すことができるので、曲面形状に形成されたトンネルの内壁面WSを良好に研掃することができる。そして、曲面形状に形成されたトンネルの内壁面WSをトンネル研掃装置10により研掃することができるので、トンネルの内壁面WSを手作業で研掃する場合よりも簡単かつ効率的に研掃処理を実施することができ、研掃費用も大幅に削減することができる。
【0114】
(第2の実施の形態)
【0115】
図14は本実施の形態のトンネル研掃装置が取り付けられたトンネル研掃システムを示す概念図である。
【0116】
本実施の形態においては、高所作業車Vが前記実施の形態とは異なる。本実施の形態の高所作業車Vは、その荷台側に設けられたブームVaと、ブームVaの先端に、起伏および旋回、さらに直線的に伸縮可能な状態で設けられたデッキ部Vbとを備えている。デッキ部Vb上には上記トンネル研掃装置10が搭載されている。
【0117】
トンネルの内壁面の研掃処理に際しては、ブームVaの動作により、トンネル研掃装置10を所定の高さに設定するとともに、トンネル研掃装置10の研掃ヘッド17の研掃角度(研掃ヘッド17の研掃面とトンネルの内壁面との平行度を設定するための角度)を調整するようになっている。これ以外の構成は前記実施の形態と同じである。
【0118】
なお、高所作業車Vは、このような伸縮ブーム型ではなく、ブームが途中で屈折する屈折ブーム型でもよく、デッキ部Vbが垂直に昇降するリフタ型(マストブーム式・シザース式)でもよい。
【0119】
以上本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本明細書で開示された実施の形態はすべての点で例示であって、開示された技術に限定されるものではない。すなわち、本発明の技術的な範囲は、前記の実施の形態における説明に基づいて制限的に解釈されるものでなく、あくまでも特許請求の範囲の記載に従って解釈されるべきであり、特許請求の範囲の記載技術と均等な技術および特許請求の範囲の要旨を逸脱しない限りにおけるすべての変更が含まれる。
【0120】
例えば、上記した実施の形態では、回動フレーム18Bを回転させることでトンネルの内壁面WSに対する研掃ヘッド17の研掃角度を調整していたが、回動フレームに代えて、ベースプレート18Eを水平面内に沿って回転自在な構成として、ベースプレート18Eを回転させることでトンネルの内壁面WSに対する研掃ヘッド17の研掃角度を調整するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0121】
以上の説明では、本発明の研掃装置を、内壁面が曲面形状に形成されたトンネルの研掃に適用した場合が示されているが、内壁面が平面形状に形成されたトンネルの研掃や橋脚の橋壁の研掃に適用することもできる。
【符号の説明】
【0122】
10 トンネル研掃装置(研掃装置)
12 昇降機構部(昇降手段)
12a 第1の昇降機構部(第1の昇降手段)
12af 保持フレーム
12ac エアシリンダ(昇降機器)
12ar シリンダロッド
12b 第2の昇降機構部(第2の昇降手段)
12bf 保持フレーム
12bn ボールネジ(昇降機器)
12bn1 ネジ軸
12bn2 ナット
12bn3 支持部
12bm スクリューモータ
15 ロッド
15f 取付板
15-1 凸部
17 研掃ヘッド
17a 取付部
17a-1 取付台
17a-2 回動板
17a-3 背面板
17b 研掃機(研掃部)
17b-1 噴射口
17b-2 吸引口
17b-3 吐出ホース
17b-4 吸引ホース
17c キャスタ
17s-1 第1のリングブラシ
17s-2 第2のリングブラシ
17r アーム部(揺動部)
17r-1 ベース板
17r-2 第1の支持板(第1の揺動部)
17r-3 第2の支持版(第2の揺動部)
17x-1 締結部材
17x-2 締結部材
17p エアシリンダ
17p-1 シリンダロッド
17d 伸縮ロッド
17e 支持フレーム
17ra ロータリーアクチュエータ
18 架台
18A 固定フレーム(基台)
18A1 短枠部
18A2 長枠部
18A3 梁枠部
18A4 支持部
18A5 回動軸受部
18B 回動フレーム(回動手段)
18B1 短枠部
18B2 長枠部
18B3 梁枠部
18B4 回動軸部
18R 回転支承体
18J ジャッキ
18J1 ロッド部
18J2 モータ部
18C スライドフレーム(移動手段)
18C1 短枠部
18C2 長枠部
18LS スライド用リニアガイド
18LS1 ガイドレール
18LS2 ブロック
18S1,18S2 リミットスイッチ
18MS モータ
18BP1,18BP2 回動軸受部
18CR1,18CR2 連結棒
18CG1,18CG2 鎖歯車
18SC チェーン
18SJ 連結体
18D 走行フレーム(移動手段)
18D1 長枠部
18D2 短枠部
18LL 走行用リニアガイド
18LL1 ガイドレール
18LL2 ブロック
18ML モータ
18E ベースプレート(移動手段)
18LW 横行用リニアガイド
18LW1 ガイドレール
18LW2 ブロック
18MW モータ
S 研掃システム
SL1,SL2 センサ
WS 内壁面
V 高所作業車
Va ブーム
Vb デッキ部
Vp パンタグラフ部
SL1,SL2 センサ
PR1 第1の揺動方向
PR2 第2の揺動方向