(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-10
(45)【発行日】2024-07-19
(54)【発明の名称】取出しロボット
(51)【国際特許分類】
B23D 33/00 20060101AFI20240711BHJP
B25J 15/08 20060101ALI20240711BHJP
B23D 19/06 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
B23D33/00 L
B25J15/08 M
B23D19/06 E
(21)【出願番号】P 2022060994
(22)【出願日】2022-03-31
【審査請求日】2023-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000238946
【氏名又は名称】株式会社エイチアンドエフ
(74)【代理人】
【識別番号】100103805
【氏名又は名称】白崎 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100126516
【氏名又は名称】阿部 綽勝
(74)【代理人】
【識別番号】100132104
【氏名又は名称】勝木 俊晴
(74)【代理人】
【識別番号】100211753
【氏名又は名称】岡崎 紳吾
(72)【発明者】
【氏名】新田 高士
【審査官】野口 絢子
(56)【参考文献】
【文献】特許第5329728(JP,B1)
【文献】特開2021-142573(JP,A)
【文献】特開2020-131317(JP,A)
【文献】特開平08-090476(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2009-0019603(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23D33/00-35/00
B23D19/00-19/08
B25J 1/00-21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スリッター装置のアーバー軸に取り付けて用いられる円筒体を取り出すための取出しロボットであって、
本体部と、該本体部に取り付けられたアーム部と、該アーム部の先端に設けられた基部と、
前記基部の短手方向に突出するように前記基部に取り付けられた一対の支持用柱部と、該支持用柱部を直動させるための直動駆動部と、該支持用柱部を回動させるための回動駆動部と、を備え、
前記円筒体が、刃物、又は、刃物同士の間に設置されるスペーサーであり、
前記支持用柱部が、中心角が
15°以上180°未満の
円弧状の当接曲面部を有し、
前記直動駆動部が、前記円筒体の中空部に挿入された前記支持用柱部を直動させて前記当接曲面部を円筒体の内壁に当接させ、
前記回動駆動部が、前記支持用柱部を周方向に回動させ、前記円筒体を取り出すものである取出しロボット。
【請求項2】
前記基部に取り付けられ、前記円筒体を押し出すための板状のプッシャと、
該プッシャを、前記支持用柱部の突出方向に直動させるためのプッシャ直動部と、を更に備え、
前記プッシャ直動部が、前記直動駆動部と独立して駆動するものであり、
前記プッシャが中央に前記支持用柱部が通過可能な孔を有するものである請求項1記載の取出しロボット。
【請求項3】
前記基部に取り付けられ、前記直動駆動部による支持用柱部の直動をガイドするためのガイド部を更に備え、
該ガイド部が、レール部と該レール部に沿って直動可能となるよう取り付けられたブロック部とよりなり、
一対の前記支持用柱部が前記ブロック部を介して、互いに離接する方向に直動するものである請求項1
又は2に記載の取出しロボット。
【請求項4】
前記回動駆動部が、一対の前記支持用柱部を同期して同一の軸を中心に回動させるものである請求項1~
3いずれか1項に記載の取出しロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スリッター装置のアーバー軸に取り付けて用いられる円筒体を取り出すための取出しロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、コイル状の板材を切断加工するためのスリット装置が知られている。
かかるスリット装置においては、上下に設置されたアーバー軸に、それぞれ、刃物及びスペーサーを取り付け、当該刃物で板材を挟み込むようにして、これを切断している。
なお、このとき切断される板材の幅寸法は、刃物同士の間に設置されるスペーサーのサイズにより決定される。
【0003】
ところで、スリット装置においては、板材の厚さ、材質等に応じて、使用される刃物が交換され、また、求める板材の幅寸法に応じて、使用されるスペーサーが交換される。そのため、複数のタイプの刃物やスペーサーを所持していることが通常であり、これらは所定の保管場所に保管される。そして、使用時においては、必要な刃物やスペーサーが、保管場所から、ロボットにより把持され、取り出されるようになっている。
【0004】
このようなロボットとしては、例えば、保管台の1または複数の丸刃および/またはスペーサーを把持するフィンガーを有するハンドリングロボットが知られている(例えば、特許文献1参照)。
かかるハンドリングロボットにおいては、丸刃の内側に、3つのフィンガーを挿入した後、3つのフィンガーを丸刃の内壁に当接させ、丸刃を3点で支持するようになっている。
すなわち、ハンドリングロボットは、丸刃の内壁の部分を拡縮方式のフィンガーでクランプすることにより支持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1記載のハンドリングロボットにおいて、フィンガーは円筒体の内部に線的に接触して押圧する。このため、円筒体の内壁には局所的に力が加わることになり、円筒体を変形させる恐れがある。
また、特許文献1記載のハンドリングロボットにおいては、取り出す円筒体とこれに隣接する円筒体と、を両者が接触した状態での直動動作により分離している。
このため、取出しの際にいずれか一方の円筒体の角が他方に接触し、円筒体に傷が付く恐れがある。
【0007】
本発明は、上述の課題を受けて開発されたものである。すなわち、本発明は円筒体の内壁の変形を抑制し、かつ直動動作によって円筒体が分離される際に円筒体の角が他の円筒体に接触することを防止して円筒体を取り出すことが可能な取出しロボットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は鋭意検討の結果、支持用柱部に弧状の当接曲面部を有するものとすることにより取り出しそうとする円筒体を面的に支持し、回動動作によって目的外の円筒体と分離することで円筒体の角が他の円筒体接触を抑制することが可能であることを見出した。本発明はこの知見に基づく。
【0009】
本発明は、スリッター装置のアーバー軸に取り付けて用いられる円筒体を取り出すための取出しロボットであって、本体部と、本体部に取り付けられたアーム部と、アーム部の先端に設けられた基部と、基部の短手方向に突出するように基部に取り付けられた一対の支持用柱部と、支持用柱部を直動させるための直動駆動部と、支持用柱部を回動させるための回動駆動部と、を備え、円筒体が、刃物、又は、刃物同士の間に設置されるスペーサーであり、支持用柱部が、中心角が15°以上180°未満の円弧状の当接曲面部を有し、直動駆動部が、円筒体の中空部に挿入された支持用柱部を直動させて当接曲面部を円筒体の内壁に当接させ、回動駆動部が、支持用柱部を周方向に回動させ、円筒体を取り出すものである取出しロボットに存する。
【0010】
本発明は、基部に取り付けられ、円筒体を押し出すための板状のプッシャと、プッシャを、支持用柱部の突出方向に直動させるためのプッシャ直動部と、を更に備え、プッシャ直動部が、直動駆動部と独立して駆動するものであり、プッシャが中央に支持用柱部が通過可能な孔を有するものである上記記載の取出しロボットに存する。
【0011】
本発明は、基部に取り付けられ、直動駆動部による支持用柱部の直動をガイドするためのガイド部を更に備え、ガイド部が、レール部とレール部に沿って直動可能となるよう取り付けられたブロック部とよりなり、一対の支持用柱部がブロック部を介して、互いに離接する方向に直動するものである上記記載の取出しロボットに存する。
【0012】
本発明は、回動駆動部が、一対の支持用柱部を同期して同一の軸を中心に回動させるものである上記記載の取出しロボットに存する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の取出しロボットは、支持用柱部が、中心角が180°未満の弧状の当接曲面部を有することにより、当該当接曲面部が面的に円筒体の内壁を支持することができる。このため、円筒体の内壁に局所的に力が加わることを防止でき、円筒体の内壁の変形を抑制することが可能となる。
また、回動駆動部が、支持用柱部を円筒体の周方向に回動させ、円筒体を取り出すものであることにより、仮に円筒体同士が接触して載置されている場合、円筒体同士を回動動作により分離することができる。
そのため、円筒体の角が空間内で移動せずに円筒体同士が分離されるので、円筒体の角が他の円筒体に接触して変形が生じることを防ぐことが可能となる。
【0015】
本発明の取出しロボットは、板状のプッシャを備えることにより、円筒体を取り出す際及び円筒体を取出しロボットから取り外す際に、円筒体を整列させることができる。
これにより、所定の位置で支持用柱部が円筒体を支持することができ、確実に円筒体を取出し、及び取出しロボットから円筒体を取り外すことができる。
本発明の取出しロボットは、プッシャが中央に支持用柱部が通過可能な孔を有するものであることにより、プッシャが円筒体と干渉しない。また、プッシャ直動部が板状のプッシャを直動して円筒体に当接させることで、円筒体を均等に当接して押し出すことができ、円筒体の一部に力が加わって変形することを抑制することが可能となる。
【0016】
本発明の取出しロボットは、アーム部に取り付けられたシリンダ部を備えることにより、目的外の円筒体を押さえ、目的とする円筒体を分離して取り出すことが可能となる。
【0017】
本発明の取出しロボットは、基部が、直動駆動部による支持用柱部の直動をガイドするためのガイド部を有することにより、支持用柱部を確実に円筒体の内壁に当接させ、円筒体を支持することが可能となる。
【0018】
本発明の取出しロボットは、一対の支持用柱部が、同期して同一の軸を中心に回動するものであることにより、各支持用柱部の当接曲面部が円筒体に対して相対的な位置を維持したまま回動する。
そのため、当接曲面部が円筒体の内壁とこすれることを防止して、取り出そうとする円筒体と目的外の円筒体とを分離することができる。
【0019】
本発明の取出しロボットは、当接曲面部が円弧状であり、且つ、それぞれ中心角15°以上180°未満の領域で円筒部の内壁に接するものであることにより、円筒体と当接曲面部との間に十分な摩擦力が生じ、支持用柱部が確実に円筒体を把持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、本発明に係る取出しロボットの一実施形態を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明に係る取出しロボットの第4アームの先端部分を拡大して示す斜視図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係る取出しロボットの第4アームの先端部分を拡大して示す正面図である。
【
図4】
図4は、本実施形態に係る取出しロボットのプッシャを示す斜視図である。
【
図5】
図5は、本実施形態に係る取出しロボットの第4アームの先端部分を拡大して示す上面図である。
【
図6】
図6は、本実施形態に係る取出しロボットの直動駆動部の動作を示す正面図である。
【
図7】
図7は、本実施形態にかかる取出しロボットの回動駆動部の動作を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。 なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。
また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。
更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0022】
本発明の取出しロボットは、スリッター装置のアーバー軸に取り付けて用いられる円筒体を載置棚から取り出すためのものである。
ここで、円筒体としては、刃物、又は、該刃物同士の間に設置されるスペーサーが挙げられる。
すなわち、刃物及びスペーサーはいずれも、アーバー軸に取り付けて用いられるものであり、円筒状である。
【0023】
図1は、本発明に係る取出しロボット1の一実施形態を示す斜視図である。
図1に示すように、本実施形態に係る取出しロボット1は、後述する支持用柱部20が載置棚Bに届くように、当該載置棚Bの近傍に配置される。
また、取出しロボット1においては、支持用柱部20が把持した円筒体Xを引き渡すためのアーバー軸Aも支持用柱部20が届く範囲の近傍に設置されている。
これにより、本実施形態に係る取出しロボット1においては、円筒体Xを載置棚Bから離脱させると共に搬送し、アーバー軸Aに引き渡すことが可能となっている。
【0024】
取出しロボット1は、架台に取り付け固定された本体部11と、本体部11に取り付けられたアーム部12と、アーム部12の先端に設けられた基部13と、基部13に取り付けられた一対の支持用柱部20と、基部13に取り付けられた直動駆動部30及び回動駆動部31と、を備える。
なお、架台10は載置棚B及びアーバー軸Aの近傍の地面に設置され、取出しロボット1を取り付けるためのいわゆる基礎土台である。
かかる架台10の形状およびサイズは特に限定されない。
【0025】
本実施形態に係る取出しロボット1においては、一対の支持用柱部20を備えているので、円筒体Xを2か所で支持することになる。このとき、いずれも円筒体Xを面的に支持するため、支持安定性をより向上させることが可能となる。
【0026】
取出しロボット1において、本体部は架台に取り付け固定される。
また、本体部は、その中心に鉛直方向の本体軸を内蔵している。
そして、取出しロボット1においては、本体部の本体軸にアーム部12が枢着されている。
これにより、アーム部12は、本体軸を中心に水平面に沿って回動可能となっている。
【0027】
アーム部12は、上述したように、本体部に回動可能となるように取り付けられる。
具体的には、アーム部12は、一端が本体部の本体軸に枢着された第1アーム12aと、当該第1アーム12aの他端に内蔵された水平方向の第1関節軸に、一端が枢着された第2アーム12bと、当該第2アーム12bの他端に内蔵された水平方向の第2関節軸に、一端が枢着された第3アーム12cと、当該第3アーム12cの他端に内蔵された水平方向の第3関節軸に、一端が枢着された第4アーム12dとを有する。
そして、第4アーム12dの他端(先端)には基部13が設けられている。
【0028】
アーム部12においては、第2アーム12bが第1アーム12aの第1関節軸を中心に鉛直面に沿って回動可能となっており、第3アーム12cが第2アーム12bの第2関節軸を中心に鉛直面に沿って回動可能となっており、第4アーム12dが第3アーム12cの第3関節軸を中心に鉛直面に沿って回動可能となっている。
また、アーム部12においては、第1アーム12aを駆動させるためのサーボモータM1が本体部11に取り付けられており、第2アーム12bを駆動させるためのサーボモータM2が第1関節軸に取り付けられており、第3アーム12cを駆動させるためのサーボモータM3が第2関節軸に取り付けられており、第4アーム12dを駆動させるためのサーボモータM4が第3アーム12cの端部に取り付けられている。
【0029】
取出しロボット1においては、これらのアームの回動を駆使することにより、一般的な制御に基づいて、特定の位置にある円筒体Xを取り出すことが出来、且つ、別の特定の位置まで当該円筒体Xを搬送することが可能となっている。
【0030】
図2は、本実施形態に係る取出しロボット1の第4アーム12dの先端部分を拡大して示す斜視図である。なお、以下の図面においては便宜のため円筒体Xを二点鎖線で示す。
なお、
図2においては、上下方向をZ方向、基部13の長手方向をX方向、支持用柱部20の長さ方向をY方向としている。Z方向、Y方向及びX方向は、互いに直交する。
基部13は第4アーム12dの先端に、連結部120を介して設けられている。
具体的には、下方を向いた第4アーム部12dの先端に、箱状の連結部120が後述する支持用柱部と反対側に取り付けられており、当該連結部120の側面(Y方向に垂直な面)から横方向(X方向)に取り付けられ、Ya矢視矩形状の板材からなる基部13が取り付けられている。
【0031】
基部13は、一方の面側に突出するように、一対の支持用柱部20が取り付けられており、他方の面側に、各支持用柱部20に対応する直動駆動部30及び回動駆動部31が取り付けられている。
ここで、基部13においては、一方の面側に連結部及び第4アーム12dが位置しているため、支持用柱部20と、連結部又は第4アーム12dとが互いに干渉しないように、両者間には一定の距離が設けられている。
【0032】
図3は、本実施形態に係る取出しロボット1の第4アーム12dの先端部分を拡大して示す正面図である。
基部13においては、水平方向に対向するように一対の支持用柱部20が取り付けられている。Ya矢視において、一対の支持用柱部20の上端を結ぶ線は基部13の長手方向(X方向)に平行となっている
【0033】
一対の支持用柱部20は、弧状の当接曲面部21を有する。支持用柱部20は、XZ平面に平行な面を底面とし、Y方向に突出する柱状であり、その外側の側壁が弧状の当接曲面部21となる。当該底面は、円弧の両端を直線で結んだ形状となっている。
当接曲面部21は、円筒体Xの内壁面と略一致する円弧で、中心角15°以上180°未満の弧状である。このとき、底面を構成する弧の中心角は30°~150°であることが好ましい。
当接曲面部21が上記形状を有することにより、支持用柱部20が円筒体Xの内壁を面的に支持することが可能となり、一転に力が集中して円筒体Xが変形することを抑制することが可能となる。また、支持用柱部20(当接曲面部21)と円筒体Xとの間に十分な摩擦力が生じ、支持用柱部20が確実に円筒体Xを把持することが可能となる。
【0034】
一対の支持用柱部20は、それぞれ直動駆動部30に取り付けられており、直動駆動部30に駆動されることで、互いに離接する方向に直動する。このとき、ガイド部6に案内されることで、直動駆動部30の軌道が安定する。
また、一対の支持用柱部20はそれぞれ回動駆動部31に取り付けられており、同期して円筒体Xの周方向に回動するようになっている。このとき、支持用柱部20の回動は、円筒体Xの軸を中心に行われる。
すなわち、一対の支持用柱部20が、同一の軸を中心に回動する。
【0035】
本実施形態に係る取出しロボット1においては、一対の支持用柱部20が、同期して同一の軸を中心に回動するものであることにより、各支持用柱部20の当接曲面部21が円筒体Xに対して相対的な位置を維持したまま回動する。
そのため、当接曲面部21が円筒体Xの内壁とこすれることを防止して、取り出そうとする円筒体Xと目的外の円筒体Xとを分離することができる。
また、当該回動動作によって円筒体Xとこれに隣接する円筒体Xとが分離される。
このとき、回動動作は円筒状の円筒体Xの軸を中心に行われるため、円筒体Xの角部が空間内で移動しない。
したがって、円筒体X同士の取り外しの際に、円筒体Xの角が他の円筒体Xの端部に接触し変形が生じることを防止することが出来る。
【0036】
直動駆動部30には、公知のエアシリンダを好適に利用することができる。本実施形態においては、直動駆動部30である、摺動方向に直列に配置された2つのエアシリンダの端部に支持用柱部20が取り付けられている。
【0037】
基部13には、レール部62とレール部62に直動可能に取り付けられたブロック部61とよりなるガイド部6が取り付けられている。
レール部62は直線状であり、一対のブロック部61が独立して直動可能に取り付けられている。ブロック部61には前述したように、それぞれ支持用柱部20が取り付けられている。
ブロック部61がレール部62を直動することで、ブロック部61に取り付けられた支持用柱部20の直動がガイドされ、軌道が安定する。
また、一対の支持用柱部20がレールを共有してガイドされることにより、両者を対称的に動かすことが可能となり、円筒体Xの内壁に均等に力を加えられる。
このため、円筒体Xに歪みが生じることを防止でき、かつ支持用柱部20による円筒体Xの支持が安定する。
ガイド部6には、公知のLMガイドを好適に用いることができる。
【0038】
アーム部には、シリンダ部5が取り付けられている。シリンダは、ピストンとこれを駆動する駆動源とよりなる。
ピストンは、
図3に示すように、支持用柱部20に対して斜めに往復運動するように取り付けられている。
ピストンは、通常時は、後退した状態に維持されている。支持用柱部20が円筒体Xを取り出す際には、駆動源によりピストンが直動して前進し、目的外の円筒体Xに当接する。
シリンダ部5は、支持用柱部20が回動動作を行う際に、取り出す円筒体Xに隣接し、且つ、支持用柱部20が取り出さない目的外の円筒体Xを押さえる。この状態で支持用柱部20が回動し、円筒体Xを隣接する円筒体Xから取り外す。
その後、シリンダ部5が後退し、支持用柱部が一定距離、直動動作を行った後、シリンダ部5が短時間での前進及び後退を行うことにより、シリンダ部5が取り出そうとする円筒体Xに隣接する円筒体Xを叩く。これにより、負圧や静電気等により円筒体Xが接着している場合であっても、取り出そうとする円筒体Xと目的外の円筒体Xとを確実に分離することが出来る。
すなわち、シリンダ部5は取り出そうとする円筒体Xに隣接する円筒体Xを押さえる又は叩くことにより、円筒体X同士の分離を補助するものである。
シリンダ部5が斜め方向に取り付けられていることにより、上下又は水平方向のスペースを節約することが可能となり、取出しロボット1と他の装置との干渉を防止することができる。
【0039】
図4は、本実施形態に係る取出しロボット1のプッシャ40を示す斜視図である。
基部13には板状のプッシャ40が取り付けられており、プッシャ40の略中央には、円筒体Xが通過可能な孔が設けられている。
取出し用ロボットは、プッシャ40を支持用柱部20の突出方向において直動させるためのプッシャ直動部41(
図5参照)を備える。
【0040】
プッシャ40は、支持用柱部20が支持した円筒体Xを、円筒体Xの取出し及び支持用柱部Xからの円筒体Xの取り外しの際に、円筒体Xを整列するためのものである。
具体的には、取出しロボット1による取出しの際には、プッシャ40が長手方向に前進した状態で、載置棚に複数が隣接して載置された円筒体Xに、支持用柱部20が挿入される。この状態で支持用柱部20が離接することで、円筒体Xが把持される。
すなわち、支持用柱部20はプッシャ40により隣接する円筒体Xに押し付けられた円筒体Xを支持する。
同様に、支持用柱部20からの円筒体Xの取り外しの際には、目的の箇所(アーバー軸)
においては、プッシャ40が前進した状態で取出し円筒体Xは隣接する円筒体Xに押し付けられた状態で、支持用柱部20の支持から解放される。
円筒体Xの取出し及び取り外しの際に、プッシャ40が円筒体Xを整列することにより、支持用柱部20と円筒体Xとが、所定の位置関係を保って動作することが可能になる。こにより、取出しロボット1による円筒体Xの取出し及び取り外し動作の安定性が向上する。
このとき、支持用柱部20はプッシャ40の略中央に設けられた孔を通過することで、プッシャ40は円筒体Xのみを押し出すことが可能となる。
さらに、円筒体Xには均等に圧力がかかり、円筒体Xが傷つくことを防止することができる。
【0041】
プッシャ40の円筒体Xに当接する面には、ウレタン等の柔軟性を有する素材が好適に用いられる。これにより、プッシャ40が円筒体Xに当接する際に、円筒体Xが破損することを防止することができる。
【0042】
本実施形態に係る取出しロボット1は、プッシャ40を備えるので、支持ロッド部が支持した円筒体Xを、取出しロボット1による円筒体Xの取出し及び取り外し動作の安定性を向上させることが出来る。
【0043】
図5は、本実施形態に係る取出しロボット1の第4アーム12dの先端部分を拡大して示す上面図である。
載置棚Bに載置された円筒体Xにおいては、一方側から中空部に支持用柱部20が挿入されるようになっており、他方側には別の円筒体Xが隣接されている。
ちなみに、隣接する別の円筒体Xの有無に関わらず、円筒体Xを取り出す際に支持用柱部20を挿入する側は、常に円筒体Xの一方側からとなる。
【0044】
支持用柱部20が円筒体Xに挿入される際、支持用柱部20は直動駆動部30により基部13の中央に向けて直動された状態となっている。このため、円筒体Xと支持用柱部20は干渉しない。
支持用柱部20が円筒体Xに挿入されると、支持用柱部20は直動駆動部30により互いに離れる方向、すなわち、円筒体Xの外側方向へ向けて直動される。これにより、当接曲面部21が円筒体Xの内壁に当接し、さらに円筒体Xの内壁を押圧する。
【0045】
円筒体Xに支持用柱部20が挿入される際には、アーム部を駆動することにより、支持用ロッドの先端が、取り出そうとする円筒体Xの端部に一致する位置まで支持用柱部20を挿入する。
これにより、複数枚の円筒体Xや、厚みの異なる円筒体Xであっても、取出しロボット1により取り出すことができる。
【0046】
図6は、本実施形態に係る取出しロボット1の直動駆動部30の動作を示す正面図である。
直動駆動部30の駆動により、一対の支持用柱部20は互いに離接する。支持用柱部20が互いに離れる方向に動作することで当接曲面部21が円筒体Xの内壁に当接し、支持用柱部20が円筒体Xを把持する。
図6は、支持用柱部20が互いに最も離れた状態である。直動駆動部30のシリンダ圧力を調整する8ことにより支持用柱部20が円筒体Xの内壁を押圧する押圧力を調整することが可能となる。
図3に戻って、
図3は支持用柱部20が互いに最も接近した状態である。支持用柱部20が互いに接近する方向に動作することで、当接曲面部21が円筒体Xの内壁から離れ、支持用柱部20による円筒体Xの把持が中断される。
また、この状態で支持用柱部20が円筒体Xに挿入されることで、支持用柱部20と円筒体Xの干渉を防止することが出来る。
【0047】
図7は、本実施形態にかかる取出しロボット1の回動駆動部31の動作を示す正面図である。
図7に示すように、回動駆動部31は、一対の支持用柱部20を同期して円筒体の周方向に回動させる。
なお、回動前の状態は
図3に示されている。
回動駆動部31は、エアシリンダとクロスローラーリングとよりなる。エアシリンダが伸長することでこれに接続されたクロスローラーリングが回動し、エアシリンダが縮むことでクロスローラーリングが逆向きに回動する。
回動駆動部31としては特に限定されないが、例えば、ロータリーアクチュエータ、サーボモータ等を採用すればよい。
【0048】
取出しロボット1による円筒体Xの取出し方法について説明する。
まず、取出しロボット1においては、支持用ロッドを円筒体Xの一方側から中空部に挿入する(第1状態)。
このとき、直動駆動部30によって、支持用柱部20が互いに接近する方向に直動されており、支持用柱部20と円筒体Xとは干渉しない。
【0049】
支持用柱部20を円筒体Xの中空部に挿入した後、直動駆動部30が、支持用柱部20を円筒体Xの離心方向へ直動させ、円筒体Xと支持用柱部20とが当接した当接状態(
図6参照)とする。
このとき、支持用柱部20は、取り出そうとする円筒体Xの長さ(Y方向の長さ)だけ挿入される。
すなわち、支持用柱部20の当接曲面部21が、円筒体Xの内壁面の略全長にわたって当接する。
これにより、十分な摩擦力が生じ、支持用柱部20が円筒体Xを確実に支持することができる。
【0050】
回動駆動部31が回動することで、支持用ロッドが支持する円筒体Xと、これに隣接する円筒体Xとの間にせん断力が生じる。
これにより、例えば円筒体X同士の間に負圧が生じ両者が密着しているような場合であっても、確実に円筒体Xを分離することができる。
また、円筒体Xとこれに隣接する円筒体Xとは同形であるため、回動駆動部31が周方向に回動しても、円筒体Xの端部が他の円筒体Xに接触することがない。
これにより、円筒体Xの取出しによって円筒体Xに変形が生じることを防止することができる。
円筒体Xと目的がXとが分離されたのち、アーム部12を駆動することにより、円筒体Xが引き抜かれる。
【0051】
こうして、円筒体Xが取出しロボット1によりロボットにより載置棚Bから取り出される。
そして、回動駆動部31が一対の支持用柱部20を逆方向に回動させることで、支持用柱部20の向きを調整する(第2状態)。
【0052】
載置棚Bから取り出された円筒体Xは、取出しロボット1により搬送され、アーバー軸Aに引き渡される。
アーバー軸Aは、円筒状であり、その周面の上部から長さ方向に延出した延出部Aaを有している。
取出しロボット1は、支持している円筒体Xを延出部Aaに挿入する(第3状態)。
このとき、支持用柱部20同士の間にはスペースがあるので、延出部Aaと支持用柱部20とは互いに干渉しない。
そして、直動駆動部30が支持用柱部20を内側に向けて直動することで、当接曲面部21が円筒体Xの内壁から離脱し、円筒体Xがアーバー軸Aに引き渡される。
その後、取出しロボット1は延出部Aaから退避する。
このように、延出部Aaが設けられていることにより、太径のアーバー軸Aであっても、支持用柱部20と干渉することなく、円筒体Xを引き渡すことができる。
【0053】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0054】
本実施形態に係る取出しロボット1においては、本体部とアーム部とを備えているが、所定の位置の円筒体Xを取り出すことが可能であれば、本体部及びアーム部の構造は、上述したものに限定されない。
【0055】
本実施形態に係る取出しロボット1においては、一対の支持用柱部20が直動駆動部30、回動駆動部31及びガイド部6を共有しているが、それぞれに設けられたものとしてもよい。
【0056】
本実施形態に係る取出しロボット1においては、支持用柱部20の底面は円弧を直線で結んだ形状であるが、扇形等の形状であってもよい。
【0057】
本実施形態において、駆動源にはエアシリンダを用いているが、油圧シリンダ、水圧シリンダ等を用いてもよい。
【0058】
本実施形態に係る取出しロボット1において、基部13は連結部を介して第4アーム12dに取り付けられているが、この構造に限定されない。
また、本実施形態にかかるアーム部12は4つの軸を有するものであるが、軸の数はこれに限定されない。
【0059】
本実施形態に係る取出しロボット1は、載置棚Bから取り出した円筒体Xを、アーバー軸Aに引き渡しているが、円筒体Xを取り出すことができればよく、アーバー軸Aに引き渡すことまでは必須ではない。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明に係るロボットは、コイル状の板材を切断加工するための切断加工するためのスリット装置において、アーバー軸Aに取り付けて用いられる刃物及びスペーサーを載置棚Bから取り出すためのロボットとして利用できる。
本発明に係る取出しロボット1によれば、丸刃又はスペーサーを取り出す際に、これらを面的に支持することで変形を抑制することができる。
また、支持安定性にも優れる。
【符号の説明】
【0061】
1・・・取出しロボット
10・・・架台
11・・・本体部
12・・・アーム部
120・・・連結部
12a・・・第1アーム
12b・・・第2アーム
12c・・・第3アーム
12d・・・第4アーム
13・・・基部
20・・・支持用柱部
21・・・当接曲面部
30・・・直動駆動部
31・・・回動駆動部
40・・・プッシャ
41・・・プッシャ直動部
42・・・孔
5・・・シリンダ部
6・・・ガイド部
61・・・ブロック部
62・・・レール部
M1,M2,M3,M4・・・サーボモータ
A・・・アーバー軸
Aa・・・延出部
B・・・載置棚
X・・・円筒体