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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-10
(45)【発行日】2024-07-19
(54)【発明の名称】セラミックス部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 37/00 20060101AFI20240711BHJP
   C04B 35/645 20060101ALI20240711BHJP
   C04B 41/88 20060101ALI20240711BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
C04B37/00 Z
C04B35/645
C04B41/88 N
H01L21/68 N
H01L21/68 R
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018171651
(22)【出願日】2018-09-13
(65)【公開番号】P2020040865
(43)【公開日】2020-03-19
【審査請求日】2021-06-16
【審判番号】
【審判請求日】2023-02-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】檜野 誠
【合議体】
【審判長】河本 充雄
【審判官】小野 久子
【審判官】金 公彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-093467(JP,A)
【文献】特開2003-152062(JP,A)
【文献】特開2000-208597(JP,A)
【文献】特開2011-086919(JP,A)
【文献】特開2004-335151(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B37/00-37/04
H01L21/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックス原料粉末を冷間等方圧加圧法を用いて成形することにより厚さ2mm以上6mm以下の板状の複数のセラミックス成形体および/又は前記複数のセラミックス成形体を仮焼したセラミックス仮焼体を作製する工程と、
前記複数のセラミックス成形体又は前記複数のセラミックス仮焼体の少なくとも1枚に電極を配置する工程と、
前記電極を配置する、前記複数のセラミックス成形体又は前記複数のセラミックス仮焼体の少なくとも1枚に前記電極と接する導電性の塊状の接続部材を配置する工程と、
前記セラミックス成形体又は前記セラミックス仮焼体を複数枚積層した状態で、前記積層方向に加圧しながら加熱してセラミックス焼結体を形成する工程と、
前記セラミックス焼結体の一の面から前記接続部材に達する穴を形成する工程と、
前記接続部材に電気的に接続され、前記穴内に少なくとも一部が位置する接続端子を設ける工程とを備え、
前記電極が配置された少なくとも1枚の前記複数のセラミックス成形体又は前記複数のセラミックス仮焼体の厚さ方向に沿った上下にそれぞれ少なくとも2枚の前記セラミックス成形体又は前記セラミックス仮焼体を積層することを特徴とするセラミックス部材の製造方法。
【請求項2】
前記複数のセラミックス成形体又は前記複数のセラミックス仮焼体の少なくとも1枚に形成された凹部又は穴部に前記電極を配置する工程を備えることを特徴とする請求項1に記載のセラミックス部材の製造方法。
【請求項3】
前記電極を配置する、前記複数のセラミックス成形体又は前記複数のセラミックス仮焼体の少なくとも1枚に形成された凹部又は穴部に前記電極及び前記電極と接する導電性の接続部材を配置する工程を備えることを特徴とする請求項1に記載のセラミックス部材の製造方法。
【請求項4】
前記凹部又は穴部が形成された少なくとも1枚の前記セラミックス成形体又は前記セラミックス仮焼体の厚さ方向に沿った上下にそれぞれ少なくとも2枚の前記セラミックス成形体又は前記セラミックス仮焼体を積層することを特徴とする請求項2又は3に記載のセラミックス部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックス部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置において、ウエハなどの基板を表面に保持する静電チャックや、表面に載置された基板を加熱するヒータ、サセプタなどは、セラミックス焼成体からなる基材の内部に電極を内蔵したセラミックス部材を備えている。
【0003】
このようなセラミックス部材は、例えば特許文献1に示されるように、冷間等方圧加圧法(CIP)によりセラミックス成形体を成形し、セラミック成形体に形成した溝内に電極を収容し、複数のセラミックス成形体を重ね合わせ、重ね合わせ方向に加圧しながら焼成することにより、電極が内蔵されたセラミックス焼成体を得ることにより製造されることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6148845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のようにセラミックス部材を得た場合、その表面に色調差又は色むらが生じることが多いという課題がある。
【0006】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、表面における色調差又は色むらの抑制を図ることが可能なセラミックス部材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のセラミックス部材の製造方法は、セラミックス原料粉末を冷間等方圧加圧法を用いて成形することにより厚さ2mm以上6mm以下の板状の複数のセラミックス成形体および/又は前記複数のセラミックス成形体を仮焼したセラミックス仮焼体を作製する工程と、前記セラミックス成形体又は前記セラミックス仮焼体を複数枚積層した状態で、前記積層方向に加圧しながら加熱してセラミックス焼結体を形成する工程とを備えることを特徴とする。
【0008】
発明者は、上記特許文献1に開示されているように、厚さの厚い(上記特許文献1では厚さが15mm、25mm)セラミックス成形体又はセラミックス仮焼体(以下、合わせてセラミックス成形体等ともいう。)を焼成すると、均一に焼成されず、色調差が生じるおそれが高いことを見出した。
【0009】
一方、本発明のセラミックス部材の製造方法においては、セラミックス成形体等の積層体の積層界面は脱脂や焼成等の加熱時の炉内雰囲気の影響を受けやすいが、セラミックス成形体の厚さが2mm以上6mm以下と薄いので、厚さの厚いセラミックス成形体等を用いる場合と比べて所定厚みのセラミックス焼結体を得る際に形成される積層界面が増える。これにより、焼成時の複数のセラミックス成形体等の間での物質移動やセラミックス成形体の脱脂が促進されると考えられる。その結果、各セラミックス成形体等は均一に焼成されるので、セラミックス部材の表面における色調差発生の抑制を図ることが可能となる。
【0010】
セラミックス成形体等の厚さが2mmより薄いとセラミックス成形体等の取り扱いが難しく、セラミックス成形体等の積層体を容易に得ることが困難になる。また、セラミックス成形体等の厚さが6mmを超えると、所定厚みのセラミックス焼結体を得る際に必要なセラミックス成形体等の積層数が相対的に少なくなる。その結果、脱脂や焼成等の加熱時における積層界面からのガスの放出や積層界面での物質移動が相対的に抑制されるために均一に焼成されず、セラミックス部材が均質となり難く、その表面の色調の不均一さを招くおそれがある。
【0011】
さらに、発明者は、積層方向に加圧しながら加熱してセラミックス焼結体を形成する際に、内部のセラミックス成形体等に割れが加熱途中で生じ易く、その後の加熱によって割れの発生箇所が一体化されたとしても割れが存在したことに起因する色むらが完成品であるセラミックス部材の表面に生じるおそれが高いことも見出した。
【0012】
一方、本発明のセラミックス部材の製造方法においては、セラミックス焼結体を形成する際に、セラミックス成形体等に割れが生じても、この割れは当該セラミックス成形体等に留まり、他のセラミックス成形体等に影響を与えない。そして、割れが生じたセラミックス成形体等が焼成後のセラミックス部材の内部に位置していれば、セラミックス部材の表面における色むら発生の抑制を図ることが可能となる。
【0013】
本発明のセラミックス部材の製造方法において、前記複数のセラミックス成形体又は前記複数のセラミックス仮焼体の少なくとも1枚に電極を配置する工程を備える。
【0014】
これにより、内部に電極が埋設されたセラミックス部材を得ることが可能になる。さらに、電極が配置されたセラミックス成形体等は、積層方向に加圧しながら加熱してセラミックス焼結体を形成する際に、割れが生じ易い。しかし、この割れが生じ易いセラミックス成形体等が複数のセラミックス成形体等の積層体の内部に存在していれば、セラミックス部材の表面に色むらは発生せず、色むらの抑制を図ることが可能となる。
【0015】
また、本発明のセラミックス部材の製造方法において、前記電極を配置する、前記複数のセラミックス成形体又は前記複数のセラミックス仮焼体の少なくとも1枚に前記電極と接する導電性の塊状の接続部材を配置する工程と、前記セラミックス焼結体の一の面から前記接続部材に達する穴を形成する工程と、前記接続部材に電気的に接続され、前記穴内に少なくとも一部が位置する接続端子を設ける工程とを備える。
【0016】
これにより、内部に電極及びこの電極に電気的に接続された接続部材が埋設されたセラミックス部材を得ることが可能になる。さらに、セラミックス成形体等に電極又は接続部材を収容するための穴又は凹部を形成する場合、このような穴又は凹部が形成されたセラミックス成形体等を積層方向に加圧しながら加熱してセラミックス焼結体を形成する際に、割れが生じ易い。しかし、この割れが生じ易いセラミックス成形体等は複数のセラミックス成形体等の積層体の内部に存在していれば、セラミックス部材の表面に色むらが発生せず、色むらの抑制を図ることが可能となる。
【0017】
また、本発明のセラミックス部材の製造方法において、前記電極が配置された少なくとも1枚の前記複数のセラミックス成形体又は前記複数のセラミックス仮焼体の厚さ方向に沿った上下にそれぞれ少なくとも2枚の前記セラミックス成形体又は前記セラミックス仮焼体を積層する。
【0018】
これにより、電極が配置されたセラミックス成形体等は、積層方向に加圧しながら加熱してセラミックス焼結体を形成する際に、割れが生じ易いが、この割れが生じ易いセラミックス成形体等は複数のセラミックス成形体等の積層体の内部に存在しているので、セラミックス部材の表面に色むらが発生せず、色むらの抑制を図ることが可能となる。
【0019】
特に、セラミックス成形体等の加熱途中での割れは、セラミックス成形体等と電極等の他部材との境界近傍で発生することが多い。しかしながら、電極から離れたセラミックス成形体等にまで割れが伝播しないため、セラミックス部材の表面に色むらが発生せず、色むらの抑制を図ることが可能となる。
【0020】
また、本発明のセラミックス部材の製造方法において、前記複数のセラミックス成形体又は前記複数のセラミックス仮焼体の少なくとも1枚に形成された凹部又は穴部に前記電極を配置する工程を備えることが好ましい。
【0021】
この場合、セラミックス成形体等に電極を収容するための穴又は凹部を形成しており、このような穴又は凹部が形成されたセラミックス成形体等は、積層方向に加圧しながら加熱してセラミックス焼結体を形成する際に、割れが生じ易い。しかし、この割れが生じ易いセラミックス成形体等は複数のセラミックス成形体等の積層体の内部に存在していれば、セラミックス部材の表面に色むらが発生せず、色むらの抑制を図ることが可能となる。
【0022】
特に、セラミックス成形体等を加圧しながら加熱する場合、セラミックス成形体等の加熱途中での割れは、セラミックス成形体等と電極等の他部材との境界近傍で発生することが多い。しかしながら、電極から離れたセラミックス成形体等にまで割れが伝播しないため、セラミックス部材の表面に色むらが発生せず、色むらの抑制を図ることが可能となる。
【0023】
また、本発明のセラミックス部材の製造方法において、前記複数のセラミックス成形体又は前記複数のセラミックス仮焼体の少なくとも1枚に形成された凹部又は穴部に電極及び前記電極と接する導電性の接続部材を配置する工程を備えることが好ましい。
【0024】
この場合、セラミックス成形体等に電極及び接続部材を収容するための穴又は凹部を形成しており、このような穴又は凹部が形成されたセラミックス成形体等は、積層方向に加圧しながら加熱してセラミックス焼結体を形成する際に、割れが生じ易い。しかし、この割れが生じ易いセラミックス成形体等は複数のセラミックス成形体等の積層体の内部に存在していれば、セラミックス部材の表面に色むらが発生せず、色むらの抑制を図ることが可能となる。
【0025】
また、本発明のセラミックス部材の製造方法において、前記凹部又は穴部が形成された少なくとも1枚の前記セラミックス成形体又は前記セラミックス仮焼体の厚さ方向に沿った上下にそれぞれ少なくとも2枚の前記セラミックス成形体又は前記セラミックス仮焼体を積層することが好ましい。
【0026】
この場合、電極又は接続部材を収容するために穴又は凹部が形成されたセラミックス成形体等は、積層方向に加圧しながら加熱してセラミックス焼結体を形成する際に、割れが生じ易いが。この割れが生じ易いセラミックス成形体等は複数のセラミックス成形体等の積層体の内部に存在しているので、セラミックス部材の表面に色むらが発生せず、色むらの抑制を図ることが可能となる。
【0027】
特に、セラミックス成形体等の加熱途中での割れは、凹部又は穴の近傍で発生することが多い。しかしながら、凹部又は穴から離れたセラミックス成形体等にまで割れが伝播しないため、セラミックス部材の表面に色むらが発生せず、色むらの抑制を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明の実施形態に係るセラミックス部材の製造方法を示すフローチャート。
図2】複数枚のセラミックス成形体等を示す模式断面図。
図3】セラミックス積層体を示す模式断面図。
図4】セラミックス部材を示す模式断面図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の実施形態に係るセラミックス部材100の製造方法について図面を参照して説明する。なお、各図面は、セラミックス部材100及び構成要素などを明確化するためにデフォルメされており、実際の比率を表すものではなく、上下などの方向、セラミックス成形体等10の個数も単なる例示である。
【0030】
本発明の実施形態に係るセラミックス部材100の製造方法は、図1に示すように、セラミックス成形体等作製工程(STEP1)、電極配置工程(STEP2)、接続部材配置工程(STEP3)、積層工程(STEP4)、脱脂工程(STEP5)、焼成工程(STEP6)、接続穴形成工程(STEP7)及び接続端子設置工程(STEP8)を備えている。
【0031】
まず、図2に示すように、セラミックス成形体等作製工程(STEP1)においては、セラミックス原料を冷間等方圧加圧法(CIP:Cold Isostatic Pressing)を用いて成形することにより板状の複数枚のセラミックス成形体10を作製する。具体的には、窒化アルミニウム(AlN)などのセラミックス粉末にバインダ、可塑剤、焼結助剤、分散剤などを添加し、溶剤を用いて混合した後、スプレードライ乾燥をすることで、セラミックス顆粒を得る。そして、このセラミックス顆粒をCIP成形することによりインゴットを得て、このインゴットを機械加工して所定の外形に形成することによりセラミックス成形体10を作製する。
【0032】
セラミックス成形体等作製工程(STEP1)には、得られたセラミックス成形体10を脱脂してセラミックス仮焼体を作製する脱脂工程が含まれていてもよい。以下、セラミックス成形体等作製工程(STEP1)において作製されるセラミックス成形体又はセラミックス仮焼体を合わせて、セラミックス成形体等10ともいう。
【0033】
セラミックス成形体等10の厚さは、2mm以上6mm以下、より好ましくは2mm以上5mm以下であり、全体に亘って一定であることが好ましい。
【0034】
電極配置工程(STEP2)においては、セラミックス成形体等10の少なくとも1枚に電極20を配置する。
【0035】
電極20の配置は、予めセラミックス成形体等作製工程(STEP1)において、セラミックス成形体等10の一の表面(図2における上面)11に凹部12を機械加工によって形成し、この凹部12にモリブデン(Mo)、タングステン(W)又はこれらの合金などの導電性材料からなる箔、メッシュ状などの電極20を収容することによって行う。また、図示しないが、セラミックス成形体等10の一の表面に導電性ペーストの印刷などによって塗布することにより電極を形成してもよい。
【0036】
なお、後述する積層工程(STEP4)において、電極20が形成されたセラミックス成形体等10の上下には別のセラミックス成形体等10が少なくとも1層以上、好ましくは2層以上配置されていてもよい。
【0037】
さらに、図示しないが、セラミックス成形体等10に貫通孔を形成して、後述する積層工程(STEP4)においてセラミックス成形体等10を積層してセラミックス積層体40(図3参照)を形成する際に、この貫通孔内に箔、メッシュ状などの電極20を収容してもよい。
【0038】
接続部材配置工程(STEP3)においては、セラミックス成形体等10の少なくとも1枚に接続部材30を配置する。
【0039】
接続部材30の配置は、予めセラミックス成形体等作製工程(STEP1)において、セラミックス成形体等10の一の表面(図2における上面)11に凹部13を機械加工によって形成し、この凹部13にモリブデン(Mo)、タングステン(W)又はこれらの合金などの導電性材料からなる塊状の接続部材30を収容することによって行う。
【0040】
図2に示すように、凹部12を形成したセラミックス成形体等10に凹部13を形成してもよく、この場合、凹部12,13は一体化している。そして、凹部13に接続部材30が配置され、その後、凹部12に電極20が配置されることにより、電極20と接続部材30は接触して配置されることになる。
【0041】
なお、図示しないが、セラミックス成形体等10に貫通孔を形成して、後述する積層工程(STEP4)においてセラミックス成形体等10を積層してセラミックス積層体40(図3参照)を形成する際に、この貫通孔内に接続部材を収容してもよい。また、電極20を収容する孔と接続部材30を収容する孔とが一体化されてなる貫通孔を形成してもよい。
【0042】
積層工程(STEP4)においては、セラミックス成形体等10を複数枚厚み方向(上下方向)に積層してセラミックス積層体40を得る。
【0043】
このとき、電極20を配置したセラミックス成形体等10と接続部材30を配置したセラミックス成形体等10が別個である場合には、電極20と接続部材30とが接触するように、電極20が配置されたセラミックス成形体等10と接続部材30が配置されたセラミックス成形体等10とが隣接するように積層する。さらに、電極20又は接続部材30が配置されたセラミックス成形体等10の厚さ方向に沿った上下にそれぞれ少なくとも2枚のセラミックス成形体等10が存在するように積層する。
【0044】
脱脂工程(STEP5)においては、セラミックス積層体40からバインダ成分を脱脂してセラミックス仮焼体(不図示)を得る。具体的には、セラミックス積層体40を焼成炉内に入れ、炉内を大気雰囲気とした所定温度で常圧焼成して脱脂する。
【0045】
なお、STEP1に脱脂工程を設け、この脱脂工程において各セラミックス成形体10を脱脂(仮焼)してセラミックス仮焼体を得てもよい。この場合、STEP2以降の工程におけるセラミックス成形体等10はセラミックス仮焼体となる。さらに、この場合、STEP5を省略することができる場合がある。
【0046】
焼成工程(STEP6)においては、セラミックス積層体40から得られるセラミックス仮焼体をホットプレスにより焼成する。具体的には、セラミックス仮焼体をホットプレス焼成炉に入れ、セラミックス仮焼体40を積層方向(上下方向)に所定圧力で加圧しながら不活性雰囲気又は真空雰囲気において所定温度で所定時間加熱する。これにより、図4に示すように、セラミックス仮焼体は一体化してセラミックス焼結体50となる。そして、このセラミックス焼結体50には、互い接続された電極20及び接続部材30が埋設されている。
【0047】
なお、セラミックス積層体40を同じ炉で加熱することにより、脱脂工程(STEP5)と焼成工程(STEP6)とを連続的に行ってもよい。例えば、湿潤水素ガス雰囲気での脱脂の後、還元雰囲気で常圧焼成することにより、脱脂工程(STEP5)と焼成工程(STEP6)とを連続的に行うことができる。
【0048】
接続穴形成工程(STEP7)においては、セラミックス焼結体50の接続部材30側の面51(図4における下面)から接続部材30に達する接続穴52を機械加工によって形成する。すなわち、接続穴52を形成することにより接続部材30の端面の少なくとも一部を露出させる。なお、セラミックス焼結体50の外形を適宜所望の形状とするために機械加工をしてもよい。
【0049】
接続端子設置工程(STEP8)においては、接続部材30に電気的に接続され、接続穴52内に少なくとも一部が位置する接続端子60を設ける。接続端子60は、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)などの耐熱性、耐酸性及び導電性の優れた金属から形成されており、本実施形態では、丸棒状となっている。接続部材30と接続端子60とは例えばろう付けなどによって接続される。また、タングステンやモリブデン又はこれらの合金からなる第2の接続部材を接続部材30と接続端子60との間に介在させることによりろう付け時の残留応力を緩和させてもよい。
【0050】
なお、図示しないが、接続部材30の露出した表面にニッケル(Ni)などのメッキを行ってメッキ層を設け、このメッキ層にろう付けなどによって接続端子60を接続してもよい。そして、図示しないが、接続端子には、その下端側に図示しない電源が電気的に接続される。
【0051】
これにより、図4に示すようなセラミックス部材100が完成する。
【0052】
発明者は、上記特許文献1に開示されているように、厚さの厚い(上記特許文献1では厚さが15mm、25mm)セラミックス成形体を焼成すると、均一に焼成されず、色調差が発生するおそれが高いことを見出した。
【0053】
一方、本実施形態においては、セラミックス成形体等10の厚さが2mm以上6mm以下と薄く、これらは均一に焼成されるので、セラミックス部材100の表面における色調差の発生の抑制を図ることが可能となる。
【0054】
さらに、発明者は、焼成工程(STEP6)におけるホットプレスの際に、セラミックス成形体等10に割れが生じ易く、その後の焼成過程において一体化されたとしても割れが存在したことに起因する色むらが完成品であるセラミックス部材100の表面に生じるおそれが高いことも見出した。
【0055】
一方、本実施形態においては、焼成工程(STEP6)において、電極20や接続部材30を収容するための凹部12,13や孔が形成されているセラミックス成形体等10に割れが生じても、この割れは当該セラミックス成形体等10に留まり、他のセラミックス成形体等10に影響を与えない。そして、割れが生じたセラミックス成形体等10はセラミックス部材100の表面ではなく内部に位置している。これらにより、セラミックス部材100の表面における色むら発生の抑制を図ることが可能となる。
【実施例
【0056】
以下、本発明の実施例及び比較例を具体的に挙げて、図1などを参照して本発明を説明する。
【0057】
(実施例1)
まず、図2に示すように、セラミックス成形体等作製工程(STEP1)として、窒化アルミニウム(AlN)粉末95質量%に焼結助剤として酸化イットリウム(Y)を5質量%添加し、溶剤を用いて混合した後、スプレードライ乾燥して、セラミックス顆粒を得た。そして、このセラミックス顆粒を、1ton/cmの圧力でCIP成形することにより、セラミックス成形体のインゴットを得た。そして、このインゴットを機械加工して、直径340mm、厚さ5mmの円板状のセラミックス成形体10を複数枚得た。
【0058】
そして、1枚のセラミックス成形体10の一の表面11に、その中心を中心とした直径300mm、深さ1mmの凹部12を機械加工によって形成した。さらに、この凹部12の中心を中心とした直径8mm、深さ0.5mmの凹部13を機械加工によって形成した。
【0059】
次に、電極配置工程(STEP2)及び接続部材配置工程(STEP3)として、凹部13に、直径8mm、厚さ0.5mmの円板状のタングステンペレットからなる接続部材30を配置すると共に、凹部12に、線径0.1mmのモリブデンワイヤを平織してなるメッシュを直径294mmの円形状に裁断してなる電極20を配置した。メッシュサイズは#50であった。
【0060】
次に、積層工程(STEP4)として、合計10枚のセラミック成形体10を厚さ方向に積層してセラミックス積層体40を得た。電極20及び接続部材30を配置したセラミックス成形体等10の上に3枚、下に6枚、それぞれセラミックス成形体10を積層した。
【0061】
次に、脱脂工程(STEP5)として、セラミックス積層体40を脱脂炉内に入れ、大気雰囲気で炉内温度500℃を1時間維持して脱脂して、セラミックス仮焼体の積層体を得た。
【0062】
次に、焼成工程(STEP6)として、セラミックス仮焼体の積層体をカーボン型内に移設し、これをホットプレス炉内に入れ、積層方向に1MPa以上の圧力で加圧しながらアルゴン雰囲気において炉内温度1800℃を2時間維持して焼成し、セラミックス焼結体50を得た。
【0063】
次に、セラミックス焼結体50の外形全面に対して研削加工及び研磨加工を行う、直径320mm厚さ25mmの円板状に形成した。このとき、電極20の上面からセラミックス焼結体50の上面までの距離(絶縁体厚さ)は0.3mmであった。そして、セラミックス焼結体50の上面はウエハ載置面であり、その表面粗さRaは0.4μmであった。
【0064】
次に、接続穴形成工程(STEP7)として、セラミックス焼結体50の接続部材30側の面51から接続部材30に達する、直径5mmの断面円形状の接続穴52を機械加工によって形成した。
【0065】
次に、接続端子設置工程(STEP8)として、直径5mm、厚さ2mmの円板状のコバール製の緩衝部材(不図示)、及び直径5mm、長さ30mmの円柱状のニッケル製の接続端子60を準備した。
【0066】
そして、接続部材30と緩衝部材との間及び緩衝部材と接続端子60との間にAu-Ni系ろう材を介在させ、この状態で真空炉内に入れて、炉内を1050℃まで加熱させた。これにより、接続部材30、緩衝部材及び接続端子60が接続され、セラミックス部材100が完成した。
【0067】
そして、セラミックス部材100の上面(ウエハ載置面)における10か所の色差は3.0であった。ここで、色差は、国際照明委員会(CIE)が定義したL*a*b*色空間における色差ΔE*を用いており、コニカミノルタ社製のCM-700dを用いてDE2000色差式の値を計測した。
【0068】
また、実験者による目視によっては、セラミックス部材100の何れの表面にも色むらは確認できなかった。
【0069】
(実施例2)
STEP1において機械加工後に500℃、4時間以上の脱脂工程を追加し、STEP5の脱脂工程を省略した点を除いて実施例1と同一の工程でセラミックス部材100を作製した。セラミックス部材100の上面(ウエハ載置面)における10か所の式差は2.4であった。また、実験者による目視によっては、セラミックス部材100の何れの表面にも色むらは確認できなかった。
【0070】
(比較例)
まず、セラミックス成形体等作製工程(STEP1)として、実施例と同じセラミックス顆粒を用いて、1ton/cmの圧力でCIP成形することにより、セラミックス成形体のインゴットを得た。そして、このインゴットを機械加工して、直径340mm、厚さ15mmの円板状の第1のセラミックス成形体と、直径340mm、厚さ25mmの円板状の第2のセラミックス成形体とを得た。
【0071】
そして、第1のセラミック成形体の一の表面に、その中心を中心とした直径300mm、深さ1mmの第1の凹部を機械加工によって形成した。さらに、この第1の凹部の中心を中心とした直径8mm、深さ0.5mmの第2の凹部を機械加工によって形成した。
【0072】
次に、電極配置工程(STEP2)及び接続部材配置工程(STEP3)として、第2の凹部に、実施例1と同じ接続部材30を配置すると共に、第1の凹部に実施例1と同じ電極20を配置した。
【0073】
次に、積層工程(STEP4)として、第1及び第2のセラミック成形体を厚さ方向に積層してセラミックス積層体を得た。
【0074】
次に、脱脂工程(STEP5)及び焼成工程(STEP6)として、実施例と同じ上限でセラミックス積層体を加熱し、セラミックス焼結体を得た。
【0075】
次に、セラミックス焼結体の外形全面に対して研削加工及び研磨加工を行う、直径320mm厚さ25mmの円板状に形成した。このとき、電極20の上面からセラミックス焼結体50の上面までの距離(絶縁体厚さ)は0.3mmであった。そして、セラミックス焼結体50の上面はウエハ載置面であり、その表面粗さRaは0.4μmであった。
【0076】
次に、接続穴形成工程(STEP7)として、実施例と同じ接続穴52を機械加工によってセラミックス焼結体を形成した。さらに、接続端子設置工程(STEP8)として、実施例と同じ緩衝部材及び接続端子60を、実施例と同じようにしてセラミックス焼結体50に設け、セラミックス部材が完成した。
【0077】
そして、セラミックス部材の上面における10か所の色差を実施例と同様に測定したところ、5.2であり、実施例と比較して大きかった。また、実験者によるセラミックス部材を目視したところ、上面に線状の色むらが確認された。
【符号の説明】
【0078】
10…セラミックス成形体等(セラミックス成形体、セラミックス仮焼体)、 11…一の表面、上面、 12,13…凹部、 20…電極、 30…接続部材、 40…セラミックス積層体、 50…セラミックス焼結体、 51…接続部材側の面、下面、 52…接続穴(穴)、 60…接続端子、 100…セラミックス部材。
図1
図2
図3
図4