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特許7519182空間的にまたは時間的に変化する光学的性質を備えた超薄型の可撓性薄膜フィルタおよびその作製方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-10
(45)【発行日】2024-07-19
(54)【発明の名称】空間的にまたは時間的に変化する光学的性質を備えた超薄型の可撓性薄膜フィルタおよびその作製方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/28 20060101AFI20240711BHJP
   B29C 55/02 20060101ALI20240711BHJP
   B29C 55/06 20060101ALI20240711BHJP
   G02C 7/10 20060101ALI20240711BHJP
   G01J 3/26 20060101ALN20240711BHJP
【FI】
G02B5/28
B29C55/02
B29C55/06
G02C7/10
G01J3/26
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019563462
(86)(22)【出願日】2018-05-16
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-16
(86)【国際出願番号】 US2018032871
(87)【国際公開番号】W WO2018213379
(87)【国際公開日】2018-11-22
【審査請求日】2021-05-17
(31)【優先権主張番号】62/507,432
(32)【優先日】2017-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518169772
【氏名又は名称】エヴェリックス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100123630
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】バナエイ エスマエイル
(72)【発明者】
【氏名】ドメンゲ パトリシア シメナ コロナド
(72)【発明者】
【氏名】ボガ ジャスティン
【審査官】横川 美穂
(56)【参考文献】
【文献】特開昭49-053963(JP,A)
【文献】特開昭49-053962(JP,A)
【文献】特表2002-509270(JP,A)
【文献】特開2004-338390(JP,A)
【文献】特表2008-542080(JP,A)
【文献】特開昭52-047070(JP,A)
【文献】特開2010-186189(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20-5/28、5/30
B29C 55/02
B29C 55/06
G02C 7/10
G01J 3/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
様々な光学的性質を備えた光フィルタ膜を作製する方法であって、前記方法は、多層ポリマープリフォームを延伸して光フィルタの状態にするステップと、熱、圧力、張力、および延伸速度から成る群の要素である少なくとも1つの環境条件を変化させるステップとを含み、前記少なくとも1つの環境条件は、時間の経過につれてもしくはある距離にわたってまたはこれら両方によって変えられ、そして前記光フィルタ内の層厚さの変化を生じさせるステップを更に含み、
前記少なくとも1つの環境条件は、熱であり、前記プリフォームは、炉を通りながら延伸され、前記炉は、前記プリフォームに前記炉の幅全体にわたりもしくは経時的にまたは前記幅全体にわたりかつ経時的に変化する加熱パワーを加え、
延伸して光フィルタの状態にされた前記光フィルタは、電気的に加熱される透明な導体コーティングを周囲に備えたガラス基板と積層されることにより、前記加熱パワーが与えられる、方法。
【請求項2】
前記プリフォームが前記炉を通って延伸されている間、前記炉の前記加熱パワーを少なくとも局所的に経時的に変化させるステップをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記延伸速度は、前記炉の前記幅の一方の側の方が反対側よりも高い、請求項記載の方法。
【請求項5】
前記延伸速度は、前記炉の前記幅の中央部分の方が横方向側部よりも高い、請求項記載の方法。
【請求項6】
前記延伸速度は、低い延伸速度と高い延伸速度との間で経時的に交番する、請求項記載の方法。
【請求項7】
前記薄い膜層を備えた前記ゾーンのうちの1つから前記厚い膜層を備えた前記ゾーンのうちの1つまでの移行領域を形成する境界領域で少なくとも1つの片を前記多層膜から切り出すステップをさらに含む、請求項記載の方法。
【請求項8】
様々な光学的性質を備えた光フィルタ膜を作製する方法であって、前記方法は、多層ポリマープリフォームを延伸して光フィルタの状態にするステップと、熱、圧力、張力、および延伸速度から成る群の要素である少なくとも1つの環境条件を変化させるステップとを含み、前記少なくとも1つの環境条件は、時間の経過につれてもしくはある距離にわたってまたはこれら両方によって変えられ、そして前記光フィルタ内の層厚さの変化を生じさせるステップを更に含み、
前記少なくとも1つの環境条件は、熱および張力であり、前記プリフォームは、炉を通って延伸され、前記炉は、前記プリフォームに加熱パワーを加えて中間フィルタ膜を形成し、前記方法は、前記中間フィルタ膜を特定の場所で熱に、そして前記中間フィルタ膜の少なくとも長手方向または横方向に張力にさらすステップ、および局所的に減少した層厚さを有する前記光フィルタを形成するように、前記層厚さが前記特定の場所で小さくされるまで前記中間フィルタ膜を延伸するステップをさらに含み、
延伸して光フィルタの状態にされた前記光フィルタは、電気的に加熱される透明な導体コーティングを周囲に備えたガラス基板と積層されることにより、加熱される、方法。
【請求項9】
前記中間フィルタ膜を延伸する前記ステップは、前記中間フィルタ膜が前記炉の通過後、依然として高温である間に実施される、請求項記載の方法。
【請求項10】
前記多層ポリマープリフォームは、一様ではない厚さのプリフォーム層を含む、請求項1記載の方法。
【請求項11】
様々な光学的性質を備えた光フィルタ膜を作製する方法であって、前記方法は、多層ポリマープリフォームを延伸して光フィルタの状態にするステップと、熱、圧力、張力、および延伸速度から成る群の要素である少なくとも1つの環境条件を変化させるステップとを含み、前記少なくとも1つの環境条件は、時間の経過につれてもしくはある距離にわたってまたはこれら両方によって変えられ、そして前記光フィルタ内の層厚さの変化を生じさせるステップを更に含み、
前記少なくとも1つの環境条件は、熱を含み、延伸して光フィルタの状態にされた前記光フィルタは、電気的に加熱される透明な導体コーティングを周囲に備えたガラス基板と積層されることにより、加熱され、
前記多層ポリマープリフォームは、くさび形または台形の断面を有する、方法。
【請求項12】
前記多層ポリマープリフォームを延伸することによって作製された前記光フィルタは、中間光フィルタであり、少なくとも1つの環境条件を変化させる前記ステップは、前記中間光フィルタをカスタマイズされたモールドまたはプレス内に配置することによりかつ前記フィルタ膜を加熱することによって前記延伸ステップ後に実施される、請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記モールドまたはプレスにより空間的に漸変する圧力を前記中間光フィルタの種々の部分に加えるステップおよび厚さの変化を生じさせて最終の光フィルタを形成するステップをさらに含む、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記モールドまたはプレスは、湾曲面を有し、前記方法は、前記モールドまたはプレスにより圧力を前記中間光フィルタに加えるステップおよび形状の変化を生じさせて曲げられたまたはドーム状の最終光フィルタを形成するステップをさらに含む、請求項12記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、少なくとも長さもしくは幅にわたってまたは時間の経過につれて変化する光学的性質を有する薄膜フィルタを製作する方法およびかかるフレキシブル薄膜フィルタを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マルチスペクトルイメージングおよびハイパースペクトルイメージングは、幾つかの分野における用途、例えば薬剤開発および安全性試験、生体顕微鏡法、法医学的分析、セキュリティ、環境モニタリング、繊維生産、食品安全性および品質管理、および廃棄物リサイクリングおよびソーティングについて成長している比較的新しいイメージング方法である。
【0003】
ハイパースペクトルイメージング(HSI)は、イメージング(画像化)とスペクトロスコピー(分光法)を組み合わせて状況を調査して詳細な情報を抽出する技術である。また、イメージングスペクトロスコピーとも呼ばれるHSIは、システムの視野内の数百から数千の狭い波長の標的の特性に関する情報を含む「データキューブ(data cube )」を作る強力なデータ処理集約型の方法である。
【0004】
ハイパースペクトルイメージングは、主として波長域の数および波長域がどのように狭いかについて、関連技術であるマルチスペクトルイメージングとは異なっている。マルチスペクトル技術は、典型的には、各々が数十ナノメートルをカバーする数個から百個の波長域の2‐D画像を作る。マルチスペクトルイメージングは、比較的広い帯域幅の2~5個のスペクトルイメージング帯を組み合わせて単一の光学系にする。
【0005】
これとは対照的に、ハイパースペクトルイメージングは、各々の範囲がほんの数ナノメートルに過ぎない寸法(x,y,λ)を備えた百個またはそれどころか数千の画像の大きな3‐Dキューブを得る。マルチスペクトルイメージングは、この小さなデータセットについて処理するのが迅速でありかつ容易であり、他方、ハイパースペクトルイメージングは、データの非常に高い複雑さ、高い解像度スペクトルを提供し、かつ用途が広く、衛星を利用したイメージングを超えて用途が多く生じている。
【0006】
ハイパースペクトルがイメージングとマルチスペクトルイメージングの両方に関する大抵の技術は、空間的にか時間的にかのいずれかにおいて変化するフィルタを必要とする。
【0007】
幾つかの形態は、多数の検出器アレイ上に固定されたフィルタを用いて種々のスペクトル帯内に多数の画像フレームを同時に捕捉する。幾つかの他の形態は、単一の検出器アレイの前にフィルタホイールまたは直線ステージを用いて画像フレームを順次捕捉し、種々のフィルタが検出器アレイを順次カバーする。幾つかの形態は、液晶を利用したフィルタを用い、かかる液晶を利用したフィルタは、液晶キャビティ屈折率の電気的刺激を用いてチューニングされてその通過帯域波長をずらす。
【0008】
トレンドになっている方法は、別々にまたは連続して変化する直線フィルタを利用し、スペクトルは、フィルタの一方の端から別の端に次第にシフトする。これらフィルタは、通常は、エッジフィルタ(ショートパスまたはロングパス)または帯域通過フィルタであり、エッジまたは中心波長は、単一フィルタ上の広いスペクトル範囲の端から端までスイープする。
【0009】
先行技術
【0010】
可変フィルタは、率直に言って高価である真空蒸着プロセスの高度なバリエーションによって作られ、それによりこれらフィルタが同等の一様なフィルタよりも著しく高価になる。高性能の一様なフィルタ作製は、非常に費用が高くつくしスケーラビリティが限られているが、可変フィルタ作製は、蒸着プロセスに加えられる複雑精巧な動作またはリソグラフィステップに起因してそれ以上に費用が高くつく。加うるに、伝統的な可変フィルタは、厚いガラス基板上に製造され、それにより軽量またはコンパクトさを必要とする光学系にとってこれら可変フィルタを次善のものとする。
【0011】
米国特許第9,597,829号明細書および米国特許出願公開第2017/0144915号明細書は、構造化プリフォームのサーマルドローイング(thermal drawing:加熱延伸)を用いて薄膜光フィルタを作製する方法を記載している。この方法は、全てプラスチックで作られたフレキシブル超薄型膜およびシートの形態をした薄膜干渉光フィルタの作製を可能にする。この方法は、著しく高いスケーラビリティを提供するとともにかなりコンパクトであることに加えて曲がって湾曲面に同形化することができる超薄型フィルタを提供することによって伝統的な真空めっき薄膜フィルタの2つの大きな欠点を解決する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】米国特許第9,597,829号明細書
【文献】米国特許出願公開第2017/0144915号明細書
【発明の概要】
【0013】
本発明の第1の観点によれば、様々な光学的性質を備えた光フィルタ膜を作製する方法は、多層ポリマープリフォームを延伸して光フィルタの状態にするステップと、熱、圧力、張力、および延伸速度から成る群の要素である少なくとも1つの環境条件を変化させるステップとを含み、少なくとも1つの環境条件は、時間の経過につれてもしくはある距離にわたってまたはこれら両方によって変えられ、そして光フィルタ内の層厚さの変化を生じさせるステップを更に含むことを特徴とする。具体化例としては、以下の特徴のうちの1つまたは2つ以上が挙げられる。
【0014】
少なくとも1つの環境条件は、熱であるのが良く、プリフォームは、炉を通って延伸され、炉は、プリフォームに炉の幅全体にわたりもしくは経時的にまたは幅全体にわたりかつ経時的に変化する加熱パワーを加える。この目的のため、本方法は、ヒータをプリフォームの互いに反対側に位置決めするステップをさらに含むのが良く、プリフォームの反対側の側面は、プリフォームの延伸方向に沿って延び、炉の幅は、延伸方向を横切って延び、本方法は、プリフォームを延伸方向で炉中で延伸するステップをさらに含む。
【0015】
ヒータのうちの少なくとも1つは、プリフォームに炉の幅に沿って変化する加熱パワーを加えるのが良い。例えば、加熱パワーは、少なくとも1つのヒータを該ヒータがプリフォームと鋭角をなすよう位置決めすることによって変えられるのが良い。
【0016】
追加的にまたは代替的に、加熱パワーは、少なくとも1つのヒータを炉の幅に沿って互いに異なる温度に加熱することによって変えられても良い。追加的にまたは代替的に、プリフォームが炉を通って延伸されている間、炉の加熱パワーを少なくとも局所的に経時的に変化させても良い。
【0017】
追加的にまたは代替的に、少なくとも1つの環境条件は、延伸速度であるのが良く、プリフォームは、炉を通ってプリフォームを延伸する延伸速度が炉の幅全体にわたりもしくは経時的にまたは幅全体にわたりかつ経時的に変化している間、炉を通って延伸され、それにより、低い延伸速度にさらされていて厚い膜層を有するゾーンにおけるよりも高い延伸速度にさらされるゾーン内において薄い膜層を備えた多層膜を生じさせる。
【0018】
例えば、延伸速度は、炉の幅の一方の側の方が反対側よりも高いのが良く、あるいは延伸速度は、炉の幅の中央部分の方が横方向側部よりも高いのが良い。
【0019】
追加的にまたは代替的に、延伸速度は、低い延伸速度と高い延伸速度との間で経時的に交番するのが良い。
【0020】
本方法は、薄い膜層を備えたゾーンのうちの1つから厚い膜層を備えたゾーンのうちの1つまでの移行領域を形成する境界領域で少なくとも1つの片を多層膜から切り出すステップをさらに含むのが良い。
【0021】
漸変層厚さもまた、熱および張力によって達成され、この場合、プリフォームは、このプリフォームに加熱パワーを加える炉を通って延伸されて中間フィルタ膜を形成し、中間フィルタ膜は、次に、指定された場所で熱および中間フィルタ膜の少なくとも長手方向または横方向に張力にさらされ、その結果、中間フィルタ膜を引き伸ばして層厚さが指定された場所で永続的に小さくされ、それにより局所的に減少した層厚さを有する光フィルタを形成する。
【0022】
それ以上の細部および利点は、添付の図面により種々の実施例についての以下の説明から明らかになろう。図面は、純粋に例示目的で本明細書に添付して提供されており、図面は、本発明の範囲を限定することを意図していない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】多層薄膜フィルタを熱的に延伸する装置の第1の略図である。
図2A】炉の幅にわたって発熱体を分布する第1の実施例を示す図である。
図2B】炉の幅にわたって発熱体を分布する第2の実施例を示す図である。
図3A】炉の幅にわたって漸変する熱を提供する別の装置を示す図である。
図3B】炉の幅にわたって漸変する熱を提供する別の装置を示す図である。
図3C】炉の幅にわたって漸変する熱を提供する別の装置を示す図である。
図4A】炉の幅にわたって漸変する厚さを提供する別の装置を示す図である。
図4B】炉の幅にわたって漸変する厚さを提供する別の装置を示す図である。
図4C】炉の幅にわたって漸変する厚さを提供する別の装置を示す図である。
図5A】多層薄膜フィルタの概略断面図である。
図5B】多層薄膜フィルタの部分拡大断面図のうちの1つを示す図である。
図5C】多層薄膜フィルタの部分拡大断面図の別の例を示す図である。
図5D】多層薄膜フィルタの部分拡大断面図の別の例を示す図である。
図6A】薄膜フィルタの厚さを変化させる装置の2つの実施例のうちの1つの略図である。
図6B】薄膜フィルタの厚さを変化させる装置の2つの実施例のうちの別の略図である。
図7A】炉を通って動かされるフィルタ膜の速度を変化させることによってフィルタ膜の少なくとも厚さまたは幅を変化させる実施例を示す図である。
図7B】炉を通って動かされるフィルタ膜の速度を変化させることによってフィルタ膜の少なくとも厚さまたは幅を変化させる実施例を示す図である。
図8A】熱および張力を加えることによって薄膜フィルタの少なくとも厚さまたは幅を変化させる装置の略図である。
図8B】熱および張力を加えることによって薄膜フィルタの少なくとも厚さまたは幅を変化させる装置の略図である。
図8C】熱および張力を加えることによって薄膜フィルタの少なくとも厚さまたは幅を変化させる装置の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本願は、可変フィルタを作製するよう薄膜光フィルタを熱的に延伸する種々のバリエーションを記載している。本願はまた、かかる加熱延伸法により作られた一様なフィルタを改造して様々なフィルタを作製する種々の加工後方法を開示している。
【0025】
加熱延伸プロセス中に可変フィルタを作製する方法
【0026】
今、図1を参照すると、薄膜多層フィルタ膜を熱的に延伸するため、プリフォーム10が炉12を通って長手方向に動かされており、この長手方向は、図1では、画像平面に垂直な方向に対応している。「プリフォーム」という用語は、最終のフィルタ膜の光学層を含むが、フィルタ膜の結果として得られる層の最終厚さよりも何倍も大きい層厚さを有するポリマーブロックを説明するために用いられている。
【0027】
炉12は、プリフォーム10が炉12を通って図1の画像平面の内外に移動しているときにプリフォーム10を加熱するためにプリフォーム10の互いの反対側で炉12の幅全体にわたって配置されたヒータ14を有する。一様なスペクトル形状を有する膜またはシートを製造するため、炉12は、炉12を横切って対応して一様な熱密度を提供する。しかしながら、熱密度を炉12の幅全体にわたって延びるヒータ14に沿って変更することは、可変フィルタを作製するのを助けることができる。延伸速度が同一である場合に、低い温度と比較して、高い温度は、ポリマー材料の流れを増大させ、しかも延伸された膜の厚さを増大させる。この場合、厚さのこの変化は、主として同一のスペクトル形状を有するシフトされたスペクトルの形態で、フィルタ内のスペクトル特性の変化を生じさせる。
【0028】
図1に示されているA‐A′線に沿って見た図2Aおよび図2Bに示されている2つの実施例では、ヒータ14は、コイルとして示されている発熱体16を有する。特に、コイルとしての発熱体16の図示は、他形式の発熱体16、例えば互いに異なる形状の抵抗型発熱体を排除することを意図していない。図示の実施例では、ヒータ14は、炉12の幅全体にわたって漸変熱密度を有し、この幅方向を水平方向という。この関連で、炉12の幅を水平方向に配置して重力がプリフォーム10に影響を及ぼし、炉12の幅全体にわたって一様に結果として生じる膜および軟化されたポリマー材料は、一方の側に流れ去ることがないようになっている。
【0029】
図2Aおよび図2Bでは、それぞれのヒータ14によって加えられる大量の熱は、幅を横切る共通の場所のところに示された2つの発熱体16によって表され、少量の熱は、所与の場所でたった1つの発熱体16によって表されている。この表示は、純粋に象徴的であり、多量の熱の発生および少量の熱の発生は、各々、単一の発熱体16または多くの発熱体16によって達成できる。配置は、低い加熱温度が望まれる場所よりも高い温度が望まれる高い熱出力を示しているに過ぎない。
【0030】
図2Aは、装置の略図の下に再現された炉の幅W全体にわたって温度Tの交互に並んでいる山部と谷部を有する正弦波温度曲線によって表された交番熱密度を示し、図2Bは、ヒータ14の一方の側がヒータ14の他方の側よりも高い温度状態にある形態を示し、この形態は、左側に山部を有するとともに右側に谷部を有する温度曲線によって指示されている。特に、温度曲線の谷部でさえも、周囲室温よりも高い温度を表しており、その理由は、これらパワーの低い加熱ゾーンは、温度Tを周囲温度よりも上昇させる発熱体16を依然として含んでいるからである。プリフォーム10の種々の場所の熱密度の振幅(加熱パワーが特定の場所ではプリフォームに達している)および炉12の幅全体にわたるヒータ14の単位長さ当たりの密度変化率は、層厚さおよび結果として得られるフィルタ膜の層厚さの変化を求めることによって結果として得られたフィルタ膜またはシートの特定のスペクトルプロフィールおよび寸法を定める。互いに異なる加熱パワーのゾーン相互間の移行領域のフィルタ膜またはシートのセグメントは、結果として得られる膜から切り抜かれて可変フィルタとして使用されるべき小さな形状にされるのが良い。フィルタ変化の空間プロフィールは、加熱ゾーンの温度曲線を辿り、この場合、高温加熱ゾーンは、低温加熱ゾーンよりも大きなフィルタ膜厚さを提供する。
【0031】
別の実施例では、加熱ゾーンは、所定の局所加熱パワー密度を設定するよう個々に制御可能な発熱体16によって実現でき、それにより炉12を横切って種々の加熱プロフィールを作ることができる。全ての加熱ゾーンがプリフォームに達する同一の温度(加熱パワー密度)に設定されている場合、一様なフィルタ膜またはシートが結果として得られることになる。
【0032】
図3A図3B、および図3Cに示された別の実施例では、加熱延伸炉12は、ヒータ14のうちの少なくとも1つのプリフォーム10とのなす角度を変更するオプションを有する。図3A図3B、および図3Cは、炉12内の角度が付けられたまたは傾斜したヒータ14の互いに異なる形態を示している。プリフォーム10の距離をヒータ14のそれぞれの幅を横切って一様なヒータ温度を提供するヒータ14のうちの1つからプリフォーム10の距離を変化させると、プリフォームの配置場所の加熱パワー密度の変化が生じ、かくしてプリフォーム10に加えられる変化する有効温度が生じる。かくして、ヒータ14の位置をプリフォーム10に対して傾けることによって、プリフォーム10中の材料粘度は、炉12の幅全体にわたって変化する。したがって、プリフォーム10が炉12を通って延伸されているとき、結果として得られるフィルタ膜またはシートは、様々な層厚さに起因して炉12の幅全体にわたって様々な光学的性質を有することになる。
【0033】
図3Aでは、2つのヒータ14のうちの一方だけがプリフォーム10の表面18と鋭角αをなすよう位置決めされている場合、大抵の場合、これら材料層は、厚さが変化し、これら材料層は、傾斜したヒータ14に向いているプリフォーム10の一方の表面18の近くに配置される。図3Bでは、熱勾配が2つのヒータ14の各々をこれがそれぞれプリフォーム10の表面18,20と角度α,βをなすよう位置決めすることによって両方の表面18,20から利用される。角度α,βは、互いに別個独立に選択されても良く、あるいは図3Bに示されているように互いに同一でありかつ鏡像関係をなしていても良い。図3Cでは、一方の表面20の近くの膜層は、左から右に減少した厚さを有し、反対側の表面18の近くに位置する膜層は、左から右に増大した厚さを有し、その理由は、ヒータ14のうちの一方が角度αをなして左から右にプリフォームからのその距離を増大させ、他方のヒータ14が角度αをなして左から右にプリフォームからのその距離を減少させるからである。ヒータ14とプリフォームとのなす角度α,βは、個々の炉12に特有であり、較正によってこれら角度を経験的に求めることができる。例えば、角度α,βは、ヒータからの熱の放散量に依存し、この熱放散量は、炉12の幾何学的形状および材料によって影響を受け、そしてプリフォーム10に加えられる有効温度に影響を及ぼす。
【0034】
炉12を横切る有効温度または熱加熱パワー密度を変化させる別の実施例は、ヒータ14からプリフォームに伝達される熱放射のプロフィールを制御するよう一様な発熱体16の前に配置された非一様な断熱または熱導体材料を含む。この非一様性を作るには、ヒータ14とプリフォームとの間に配置された材料の1つまたは2つ以上の特性、例えば厚さ、有孔度、またはフェース寸法を変化させるのが良い。
【0035】
炉12に対して変更をもたらさないで、プリフォーム10に対する変更を行って可変フィルタを作るのが良い。考えられる一形態は、図4A図4Dに示され、別の1つが図5Aおよび図5Bに示されている。プリフォーム10を炉12に通して延伸させる速度およびプリフォーム全体に加わる張力を不変に保ちながら非対称開始幾何学的形状を有するプリフォーム10を延伸すると、結果として得られるフィルタ膜は、異なる厚さのものであり、したがって漸変するスペクトル形状のものである。くさび形幾何学的形状を有するプリフォームの実施例を図4A図4B、および図4Cに見ることができる。この場合、プリフォーム10のくさび形幾何学的形状は、一方の横方向側部が厚い膜を生じさせ、次第に変化する厚さは、他方の横方向側部の方が薄く、と言うのは、くさびの厚い方の側部には元のプリフォーム10の材料が多いからである。この場合、厚さの漸次変化は、フィルタ全体にわたる様々な光学的特性になる。くさびの形態は、図4Aに示されているようにそれぞれの隣接のヒータ14とその表面18,20の2つの鋭角α,βをなすようまたはヒータのうちの1つに平行であって一方の表面18とその隣のヒータ14との間にたった1つの鋭角αをなすよう炉内に配置されるのが良い。さらに、図4Cが示すように、くさび形プリフォーム10の断面は、台形であるのが良く、この場合、くさびの頂点は、切り取られる。
【0036】
特に、図4A図4B、または図4Cのくさび形プリフォームを例えば図3Aまたは図3Bに示されているように互いに対して角度をなしているヒータ14と組み合わせるのが良く、その結果、ヒータ14は両方とも、それぞれの表面18,20に平行になることができまたはヒータは、プリフォームの厚い方の側部よりもプリフォームの薄い側部の方が互いに広い間隔を置いて配置されるようになっており、その理由は、薄い方の側部が必要とする加熱パワー密度が低いのが良いからである。
【0037】
幾何学的形状に対する別の改造をプリフォーム内に見受けられる層に利用することができる。図5Aは、多層プリフォーム10の断面図であり、図5B図5C、および図5Dは、図5Aに印付けられた長方形細部を表す拡大図で非一様層形態の3つの実施例を示しており、この場合、2つの互いに異なるハッチングは、結果として得られる薄膜フィルタの多層構造体の2つの層を構成する2つの互いに異なる交互に配置された材料の層22,24を表している。多層構造体の残部は、同一の交互に並んだ材料または互いに異なる材料の積み重ね層で形成されるのが良い。湾曲インターフェース面のところで互いに接触する層22,24を含むプリフォーム10に一様な熱を加えると、結果として、厚さがプリフォーム10の厚い層22,24と互いに同一の比率を有する層を備えたフィルタ膜が得られる。しかしながら、層厚さは、プリフォーム10の層厚さに対して大幅に小さくされている。
【0038】
可変フィルタを生じさせるために膜を横切って膜全体にわたって膜の厚さに対する影響を及ぼすよう変更可能な別の延伸パラメータは、炉全体にわたる延伸の張力および/または延伸速度である。図6Aおよび図6Bは、炉12全体にわたる2つの考えられる張力プロフィールを示しており、この場合、延伸速度が大きいと、加熱され軟化されたプリフォーム10の張力が大きくなり、かくして薄い膜26が作られ、またその逆の関係が成り立つ。図6Aは、膜の一方の側面を他方の側面に対して早く引くことによって達成することができる直線プロフィールを示しており、その結果、左側から右側に厚さの漸次増加が得られ、したがって膜全体にわたり漸変スペクトル形状が得られる。同様な仕方で、図6Bは、膜が中間区分から迅速に引かれ、エッジのところで遅く引かれ、その結果、中間部に薄い膜が生じるとともに厚さがエッジに近づくにつれて厚さが次第に増加する張力プロフィールを示している。
【0039】
横方向に変化する延伸速度を達成するには、膜26を引く対向したローラ相互間のプリフォーム幅全体にわたって一様ではない圧力を加えるのが良い。一様ではない圧力は、ローラを一方の側の方が他方の側よりも大きな力で互いに加圧することによって、一方の横方向側部の方が反対側の横方向側部よりも圧力が高いのが良い。プリフォーム10の横方向側部よりも中央部の方において異なる延伸速度を達成するため、特に完全に真っ直ぐではないローラが用いられる。ローラのコアが僅かに曲げられるかあるいはローラ上のゴムが任意の恣意的な厚さプロフィールを作るようそぎ落とされるのが良く、その結果、幅全体にわたって整合した圧力(および速度)プロフィールが得られる。延伸速度の異なるかつ変更可能な分布を達成するため、ローラの幅全体にわたりかつ炉全体にわたる異なる圧力分布を達成するには、幅全体にわたってローラまたは複数のローラセグメントを形成する個々に調節可能な圧力および/または延伸速度で形成するのが良い。一般に、ローラまたは個々のローラセグメントは、圧力分布具合を良くするために弾性的に圧縮可能な材料で作られるのが良い。ローラまたはローラセグメントは、漸変するまたは互いに異なるローラ直径を有するのが良く、その結果、直径の大きな場所で、大きな圧力がプリフォームに及ぼされ、長いローラ周長に起因して、さらに、局所的に大きな延伸速度が達成される。
【0040】
別の実施例では、経時的な延伸速度および張力の増大を用いることにより、延伸されたフィルタ膜26またはシートに沿ってスペクトルのシフトをもたらすことができる。図7Aは、延伸速度を第1の速度V1と第2の速度V2との間で経時的に変化させる延伸プロセスを示している。図7Bは、この揺れ動く延伸速度が膜内にもたらす作用効果を実証している。炉全体にわたる張力の変化とは対照的に、延伸速度を経時的に変化させることにより、横方向ではなく長手方向に膜26の厚さに対する作用効果が得られる。
【0041】
図7Bは、結果として得られるフィルタ膜26の厚さを示す断面図である。各時間間隔で水平方向を横切って同一の張力を加えながら延伸速度を次第に増大させ、次にこの速度を次第に減少させると、その結果、膜26の長手方向における厚さの増減が生じる。膜厚さの変化が膜を構成する層の厚さに比例的に影響を及ぼすので、膜厚さの変化はまた、膜のスペクトル特性を変化させる。
【0042】
膜厚さのこの変化は、可変フィルタを作製するための追加のオプションの別法を提供する。種々の延伸速度相互間の移行領域は、垂直方向に沿って様々なフィルタを形成する。プリフォームに適用される供給速度または抵抗に対して延伸速度を変化させる勾配またはステップサイズは、結果として得られる膜26に沿って長さを定め、この膜上において、スペクトルシフトが起こる。遅い速度変化の結果として、ゆっくりと変化するフィルタが得られ、またその逆の関係が成り立つ。結果として得られるフィルタ膜26の幅もまた、漸変する延伸速度につれて変化する場合があるが、この作用効果は、厚さの変化よりも非常に小さな比率のものである。
【0043】
可変フィルタを作製する加工後方法
【0044】
様々な特性を持つフィルタを作製することは、一様なフィルタ膜26またはシートのかかる加工後処理の一実施例が図8A図8B、および図8Cに示されている。プリフォーム10を延伸して中間フィルタ膜26またはシート(これはそれ自体、すでに平べったい光フィルタを形成している場合がある)にした後、次に、膜26またはシートのゾーン28を材料のガラス転移温度に近い温度まで加熱して、永久ひずみを生じさせるのに十分膜26を軟化させるのが良い。膜材料が依然として高温である間、引く力Fを膜26の互いに反対側の横方向または長手方向端部に加えるのが良く、その結果、図8Aで理解されるように膜の引き伸ばしが生じる。膜を一方向に引き伸ばすと、その結果として、図8Bおよび図8Cに示されているように引く力Fの引き伸ばし方向に垂直な他の2つの寸法方向において寸法が減少する。移行が膜26の引き伸ばし部分と非引き伸ばし部分との間で起こる加熱領域28の境界領域30は、層厚さが変化し、かくしてフィルタ膜26の光学的性質が変化した領域を形成する。加熱ゾーン28の幾何学的形状、加熱ゾーン28の温度、およびフィルタ膜からの熱発生器の距離は、単位長さ当たりのフィルタスペクトルシフト率を定める。例えば、フィルタ膜の表面からの熱発生器の距離が大きいと、フィルタ特性の変化が一層緩やかになり、したがって、非常に局所化された熱を加える僅かな距離よりも広い境界領域30が生じる。
【0045】
別の実施例では、一様であっても良くまたは非一様な厚さを有するよう製造されても良いフィルタ膜の一区分をカスタマイズされたモールドまたはプレス内に配置されるのが良く、かかるモールドまたはプレスは、フィルタ膜を僅かに加熱する。このモールドまたはプレスは、漸変圧力をフィルタ膜の種々の部分に加えることができ、その結果、フィルタ膜厚さおよびそのスペクトル特徴に僅かな変化が生じる。この方法を二次元バリエーションを有するモールドとともに用いて2つの寸法的に異なるフィルタを作ることができる。例えば、レンズの曲率を複製するモールドプレスを用いると、2つの目的、すなわち、(1)膜に応力を生じさせないでフィルタをレンズ表面に同形化するためにフィルタ膜を僅かに曲げて引き伸ばす目的、(2)レンズの種々の部分に種々の角度で当たる光のためにフィルタのスペクトル形状に対する入射角の作用効果を補償する半径方向パターンでフィルタのスペクトル特性を僅かにシフトする目的に役立つ。
【0046】
別の実施例では、一様のフィルタ膜またはシートを僅かに加熱されるのが良い表面上に配置するのが良い。この表面は、くさび形の斜面(または種々の深さプロフィールを備えた一様ではない表面)を有するのが良く、フィルタ膜を周囲の区分が扁平でありかつ容易である状態でこの斜面上に配置するのが良い。次に、低温または加熱状態のローラがフィルタ膜またはシート上を転動し、ローラが勾配の付いた領域を領域の長さに沿って進んでいるときにフィルタ膜またはシートを種々の角度に次第に圧縮する。フィルタがその材料の軟化点の近くにある状態でフィルタに加わるこの一様ではない圧力は、フィルタ層厚さに変化を生じさせ、従って基板表面の一様ではない(勾配付き)区分と同一の深さプロフィールを辿るスペクトルシフトを引き起こすことができる。
【0047】
フィルタを時間的に変化させる方法
【0048】
上記において開示した全ての方法および実施例は、フィルタの物理的寸法、すなわち、長手方向もしくは横方向寸法またはこれら両方の寸法を横切って様々なスペクトル特徴を備えた空間的に変化するフィルタの作製に関する。
【0049】
フィルタの特性を変化させる別の方法は、加熱による方法である。全ての材料は、有限の熱膨張率(CTE)を備えている。これにより、薄膜層の厚さの変化が生じ、その結果、透過スペクトル曲線のシフト(熱スペクトルドリフト)が生じる。ハードコーティングされた伝統的なフィルタでは、この作用効果は、ハードコーティングされた薄膜フィルタで用いられる硬質酸化物および他の物質の低いCTEに起因してスペクトル特性に対する影響が最小限である。しかしながら、フィルタ膜およびシートを熱的に延伸するために用いられる大抵の熱可塑性ポリマーは、比較的高いCTEを有し、その結果、温度変動に起因して顕著なスペクトルドリフトが生じる。この作用効果をフィルタ特性を時間的に変化させるととともにそのスペクトルをシフトする方法として使用される制御下に置くのが良い。フィルタ特性は、局所温度に応じて変化し、その結果、光学的性質は、フィルタ膜の使用中、一時的でありかつ変化可能である。
【0050】
これは、種々の仕方で達成できる。一形態では、フィルタ膜またはシートを小型温度制御式ホルダ内に設けるのが良く、このホルダは、フィルタの周囲の温度を制御可能に変化させることができる。別の形態では、フィルタ膜またはシートを温度制御されているガラス基板に当てて配置するのが良い(またはガラス基板上に積層するのが良い)。この温度制御は、加熱および冷却プレート(例えば、熱電発生器またはモジュール)をフィルタの開口の外部のガラス周囲に取り付けることによって達成できる。これはまた、表面電流発生による加熱を生じさせることができる高い抵抗を有する透明な導体コーティング(例えば、インジウム錫酸化物、ITO)を有するガラス基板上にフィルタを積層することによって達成できる。フィルタ膜をホルダもしくはフレーム内にまたは基板上に設ける仕方の例が国際公開第2017/180828号パンフレットに記載されており、この国際公開を参照により引用し、その記載内容全体を本明細書の一部とする。
【0051】
これら一時的な熱誘導フィルタ改造を一様なフィルタと可変フィルタの両方に適用することができる。一時的に変化する光学的性質を有するフィルタは、光学的性質の迅速な変化を必要としない用途で特に有用である。迅速な変化のため、空間的に変化する特性を有するフィルタを可動的に取り付けることができ、その結果、観察方向に垂直にフィルタを動かすことによって光学的性質を変化させる。
【0052】
以上要するに、様々な光学的性質を有する多層フィルタ膜を製造する種々のオプションを提供した。さらに、延伸プロセス後に光フィルタを改造する方法を説明した。これらオプションおよび方法のうちの2つまたは3つ以上を組み合わせると、所望ならばより複雑な改造を行うことができる。例えば、理解されるべきこととして、加工後手順を特性が膜の延伸段階中に改変される膜に適用することができる。また、熱を加えることによる永久ひずみに続き、一時的改造を行うことができる。したがって、提供したプロセスの全ては、相互に排他的ではなく、互いに補完する。
【0053】
上記説明は、本発明の好ましい実施形態に関するが、本発明は、添付の特許請求の範囲に記載された本発明の適正な範囲および公平な意味から逸脱しないで、改造、変形および変更が可能であることは理解されよう。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A-8B】
図8C