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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-10
(45)【発行日】2024-07-19
(54)【発明の名称】運動具
(51)【国際特許分類】
   A63B 23/04 20060101AFI20240711BHJP
   A63B 23/12 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
A63B23/04 Z
A63B23/12
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020003214
(22)【出願日】2020-01-10
(65)【公開番号】P2021108980
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】501118624
【氏名又は名称】並木 敏貴
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(72)【発明者】
【氏名】並木 敏貴
【審査官】野田 洋平
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-174868(JP,A)
【文献】特開2006-144938(JP,A)
【文献】特開2009-028210(JP,A)
【文献】実開平05-007274(JP,U)
【文献】特開2015-126858(JP,A)
【文献】特開2003-000752(JP,A)
【文献】再公表特許第2008/026336(JP,A1)
【文献】実開平07-013362(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 1/00-26/00、69/00-69/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用面に接地される接地部を有するベース部と、
前記ベース部の上側に、磁力によって着脱可能に保持される可動部と、
前記ベース部に保持されている状態の前記可動部を、三次元にフレキシブルに可動するように支持する三次元可動支持手段と、
前記可動部に手または足を直接的にまたは間接的に着脱可能に装着させる装着部と、を備え、
前記装着部は、片手または片足を前記可動部に保持可能であり、
前記三次元可動支持手段は、前記ベース部の上面から半球状に突出し該ベース部に一体成形された半球状の球面軸部と、前記可動部に設けられ前記球面軸部に摺動自在に嵌合する凹面軸受部と、を含む、運動具。
【請求項2】
前記ベース部は、前記使用面に対して前記接地部を滑動可能にさせる滑動手段を有する、請求項1に記載の運動具。
【請求項3】
前記滑動手段は、前記使用面に対する接点となるボールベアリングを含む、請求項に記載の運動具。
【請求項4】
前記ベース部は、前記滑動手段とベース部本体とを含み、
前記滑動手段は、前記ベース部本体に着脱可能に装着される、請求項またはに記載の運動具。
【請求項5】
前記ベース部と前記可動部とを連結し、前記可動部の動きを緩衝するとともに、前記ベース部に対する前記可動部の相対位置を基準位置に復帰させる弾性部材を有する、請求項1~のいずれかに記載の運動具。
【請求項6】
前記弾性部材は、前記ベース部および前記可動部の双方に、磁力によって、着脱可能、かつ、前記ベース部に設定される所定の中心軸線の周りに摺動可能、に保持される、請求項に記載の運動具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、舗装面や床面等の使用面に接地させた状態で身体の運動や筋力トレーニング等を行うための運動具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、床面に沿って一方向にスライド可能に設置される板状の部材に足を置き、その部材がスライドするように肢体を動かすことにより、筋力トレーニングや健康増進を図る運動具が提供されている。
【0003】
例えば特許文献1には、床面に置かれる長板の上面にレールを介して一対の脚置板が水平方向にスライド自在に設けられ、それら脚置板を両足によってそれぞれ左右にスライドさせることで、両足を開いたり閉じたりする運動を行うことができる健康器具が記載されている。この健康器具は、身体をうつ伏せにして一方の脚置板に両手を置き、他方の脚置板に両膝を置いた状態で各脚置板を前後にスライドさせることにより、腰を伸ばしたり縮めたりして腹筋のトレーニングも行うことができるものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実用新案登録第3162539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の健康器具においては、手や脚の動きは脚置板のスライド方向に応じた動きに限定されるため、負荷が付与される部位も限定的である。このため、運動や筋力トレーニングのバリエーショが少ないという不満を使用者が持つ場合がある。また、脚置板が停止した状態では、例えば身体の特定部位に負荷がかかるような姿勢を保持するといった静的な筋力トレーニングは可能であるが、手首や足首を動かすことに基づく動的な筋力トレーニングは行いにくいものである。このため、停止した状態であってもバリエーション豊かな運動や筋力トレーニングを行うことができる運動具が望まれている。
【0006】
そこで本発明は、舗装面や床面等の使用面上において停止した状態であってもバリエーション豊かな運動や筋力トレーニングを行うことができる運動具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明の運動具は、使用面に接地される接地部を有するベース部と、前記ベース部の上側に、磁力によって着脱可能に保持される可動部と、前記ベース部に保持されている状態の前記可動部を、三次元にフレキシブルに可動するように支持する三次元可動支持手段と、前記可動部に手または足を直接的にまたは間接的に着脱可能に装着させる装着部と、を備える。
本発明でいう使用面は屋外の地面に限られず、例えば、屋外であれば舗装面等を含み、また、屋内の床面等を含む。
また、本発明でいう接地部は、三次元において、点状の場合、線状の場合、面状の場合のいずれの場合もあり得る。例えば、使用面が幾何学上の平面で完全剛体であり、接地部が完全球体の場合には、接地部は点状となる。
【0008】
(2)(1)において、前記三次元可動支持手段は、前記ベース部および前記可動部のうちのいずれか一方に設けられる球面軸部と、他方に設けられて前記球面軸部に摺動自在に嵌合する凹面軸受部と、を含んでもよい。
【0009】
(3)(1)または(2)において、前記ベース部は、前記使用面に対して前記接地部を滑動可能にさせる滑動手段を有してもよい。
【0010】
(4)(3)において、前記滑動手段は、前記使用面に対する接点となるボールベアリングを含んでもよい。
【0011】
(5)(3)または(4)において、前記ベース部は、前記滑動手段とベース部本体とを含み、前記滑動手段は、前記ベース部本体に着脱可能に装着されてもよい。
【0012】
(6)(1)~(5)のいずれかにおいて、前記ベース部と前記可動部とを連結し、前記可動部の動きを緩衝するとともに、前記ベース部に対する前記可動部の相対位置を基準位置に復帰させる弾性部材を有してもよい。
【0013】
(7)(6)において、前記弾性部材は、前記ベース部および前記可動部の双方に、磁力によって、着脱可能、かつ、前記ベース部に設定される所定の中心軸線の周りに摺動可能、に保持されてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、舗装面や床面等の使用面上において停止した状態であってもバリエーション豊かな運動や筋力トレーニングを行うことができる運動具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る運動具を示す側面図である。
図2】一実施形態の運動具を上側から見た分解斜視図である。
図3】一実施形態の運動具を下側から見た分解斜視図である。
図4】一実施形態の運動具であって可動部が傾斜した状態を示す側面図である。
図5】一実施形態の運動具を使用者が足に装着して立った状態を示す図である。
図6】一実施形態の運動具を装着した足を側方から見た図である。
図7】一実施形態の運動具を装着した足を前方から見た図である。
図8】一実施形態の運動具を装着した使用者が脚を開く状態を示す図である。
図9】一実施形態の運動具を装着した使用者が左足の足首を前方に曲げて傾斜させた時の状態を示し、(a)は前方から見た図、(b)は後方から見た図である。
図10】一実施形態の運動具を装着した使用者が左足の足首を後方に曲げて傾斜させた時の状態を示し、(a)は前方から見た図、(b)は後方から見た図である。
図11】一実施形態の運動具を使用者が手に装着してうつ伏せの姿勢になった状態を斜め前方から見た図である。
図12図11に示す状態において、使用者が可動部を前方に傾斜させた場合を示す図である。
図13図11に示す状態において、使用者が可動部を内側に傾斜させた場合を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1図3は、一実施形態に係る運動具1を示している。図1に示すように、運動具1は、使用面Fに接地される接地部11を有するベース部10と、可動部40と、三次元可動支持手段50と、装着部60と、コイルスプリング70と、を備える。
【0017】
本実施形態に係る運動具1は、屋外または屋内のいずれかで使用され得る。具体的には、屋外は例えば公園や広場等であり、その場合の使用面Fは例えば地面や舗装面等となる。また、屋内は例えばトレーニングルームやスタジオ、体育館等であり、その場合の使用面Fは例えば床面等である。したがって本実施形態に係る運動具1の接地部11は、接地対象面である使用面Fが屋外のいわゆる地面に制限されるわけではなく、上記の舗装面や床面に接する部分をいう。
【0018】
ベース部10は、ベース部本体20と、ベース部本体20に着脱可能に装着されるスライド板部30と、を有する。図2に示すように、ベース部本体20は、円板状の支持板部21と、支持板部21の上面の中心部に設けられた球面軸部22と、第1の磁石23と、を有する。球面軸部22は、後述するように三次元可動支持手段50を構成する。球面軸部22は、その上面が球面状に形成されている。球面軸部22は、ベース部本体20の上面から上方に突出する状態にベース部本体20に一体成形されている。図1に示すように、球面軸部22の頂点はベース部本体20の中心を通る中心軸線A上に位置している。第1の磁石23は、可動部40が有する第4の磁石43と吸着し合う永久磁石であって、球面軸部22の内部に埋設されている。中心軸線Aは、本発明のベース部に設定される所定の中心軸線の一例である。
【0019】
図2および図3に示すように、ベース部本体20は、さらに下側リング24と、4つの第2の磁石25と、を有する。下側リング24は、コイルスプリング70の下端部を磁力で保持する機能を有するもので、磁性を有する金属(例えば、鉄、ステンレス等)からなる環状の板材で構成される。下側リング24は、ベース部本体20の上面20aの外周部に形成された環状溝20cの内部に嵌合して固定されている。下側リング24は、ベース部本体20と同心状に配置されている。
【0020】
第2の磁石25は、ベース部本体20とスライド板部30とを着脱可能に結合させる機能、および下側リング24に磁力を付与する機能を有する。図3に示すように、第2の磁石25は、ベース部本体20の下面20bの外周部に、周方向に等間隔をおいて配置されている。第2の磁石25は、その下面が露出する状態にベース部本体20に埋設されている。第2の磁石25の露出面は、ベース部本体20の下面20bと同一面となるか、もしくは下面20bから僅かに凹んだ状態とされる。第2の磁石25は下側リング24に近接しており、これにより第2の磁石25から下側リング24に磁力が付与される。なお、第2の磁石25の数は4つに限定されず任意であり、例えば2~3つ、あるいは5つ以上あってもよい。
【0021】
接地部11は、ベース部本体20の下面20bと、スライド板部30と、を含んで構成される。これらベース部本体20の下面20bおよびスライド板部30は、それぞれ本発明の滑動手段の一例を構成する。スライド板部30は、ベース部本体20の下面20bに着脱可能に装着される。スライド板部30は、ベース部本体20の下面20bに着脱可能に装着される底板31と、底板31の下面31bに設けられた5つのボールベアリング32と、底板31の上面31a側に露出する4つの第3の磁石35と、を有する。
【0022】
底板31は、ベース部本体20と概ね同じ外径を有する円板状の部材であり、ベース部本体20に対し略同心状に配置される。
【0023】
図3に示すように、ボールベアリング32は、底板31の円形状の下面31bに固定される軸受(不図示)と、該軸受に転動可能に支持されるボール33と、を有する。ボール33は、使用面Fに対する接点を構成する。ボールベアリング32は、底板31の下面31bの中心部の1箇所と、底板31の下面31bの外周部の周方向等分4箇所にそれぞれ配置されている。
【0024】
ボールベアリング32は、ボール33の一部が底板31の下面31bから下向きに僅かに突出するように底板31に設けられている。各ボール33の下面31bからの突出量は均等とされ、これにより全てのボール33が使用面Fに転動可能に接地し、その状態でベース部10全体が使用面Fと略平行となる。なお、本実施形態のスライド板部30は5つのボールベアリング32を有するが、ボールベアリング32の数は5つに限定されず、その数は任意である。
【0025】
第3の磁石35は、ベース部本体20側の第2の磁石25と吸着し合い、ベース部本体20とスライド板部30とを着脱可能に結合させる機能を有する。4つの第3の磁石35は、底板31の下面31bの外周部に、周方向に等間隔をおいて配置されている。各第3の磁石35は、底板31がベース部本体20と略同心状に配置された状態において、各第2の磁石25に対応する位置にそれぞれ配置されている。
【0026】
ベース部10は、ベース部本体20の下面20b側にスライド板部30の底板31を同心状に配置し、第2の磁石25と第3の磁石35とを磁力によって互いに吸着させてスライド板部30をベース部本体20に装着させることにより構成される。ベース部10においては、中心軸線Aが底板31の下面31bに略直交する。第2の磁石25と第3の磁石35との吸着力(磁力)に抗して底板31をベース部本体20から離間させることにより、底板31をベース部本体20から分離させることができる。
【0027】
可動部40は、ベース部10の上側に、磁力によって着脱可能に保持される。可動部40は、上記ベース部本体20および底板31と概ね同じ外径を有する円板状の可動板部41と、可動板部41の下面41bの中心部に設けられた凹面軸受部42と、第4の磁石43と、上側リング44と、4つの第5の磁石45と、を有する。凹面軸受部42は、後述するように三次元可動支持手段50を構成する。凹面軸受部42は、ベース部本体20の球面軸部22に摺動自在に嵌合する凹みにより構成されている。第4の磁石43は、ベース部10の第1の磁石23と吸着し合う永久磁石であって、可動板部41の内部の中心部に埋設されている。
【0028】
上側リング44は、上述した下側リング24と対をなすもので、コイルスプリング70の上端部を磁力で保持する機能を有する。上側リング44は下側リング24と同様に、磁性を有する金属(例えば、鉄、ステンレス等)からなる環状の板材で構成される。上側リング44は、可動板部41の下面41bの外周部に形成された環状溝41cの内部に嵌合して固定されている。上側リング44は、可動板部41と同心状に配置されている。
【0029】
第5の磁石45は永久磁石からなる。第5の磁石45は、可動板部41の外周部の周方向等分4箇所に埋設されている。本実施形態では、可動板部41の上面41aの外周部に形成された凹部41dの底部に第5の磁石45がそれぞれ固定されている。第5の磁石45は上側リング44に近接し、上側リング44に磁力を付与する機能を有する。
【0030】
可動部40は、凹面軸受部42をベース部本体20の球面軸部22に近接させると、第4の磁石43が第1の磁石23に吸着するとともに、凹面軸受部42が球面軸部22に摺動自在に嵌合し、これにより可動部40がベース部10に装着される。第4の磁石43と第1の磁石23との吸着力(磁力)に抗して凹面軸受部42を球面軸部22から離間させることにより、可動部40をベース部10から分離させることができる。
【0031】
三次元可動支持手段50は、ベース部10の上側に磁力によって着脱可能に保持される可動部40を、三次元にフレキシブルに可動するように支持する。本実施形態の三次元可動支持手段50は、上述したように、ベース部10のベース部本体20に設けられた球面軸部22と、可動部40に設けられた凹面軸受部42と、を含んで構成される。凹面軸受部42の深さは球面軸部22の高さよりも小さく、球面軸部22の一部が凹面軸受部42内に摺動自在に嵌合する。これによりベース部本体20と可動板部41との間には空間が空き、可動部40が三次元にフレキシブルに可動する。
【0032】
可動部40の凹面軸受部42がベース部本体20の球面軸部22に対して摺動することで可能となる三次元動作は、図4に示すように、可動部40の中心軸線Bを回転軸として360°回転する「回転」、ベース部10の中心軸線Aに対して可動部40の中心軸線Bが傾斜する「傾斜」、傾斜した状態で可動部40の中心軸線Bが360°旋回する「旋回」が挙げられる。運動具1の使用者は、これら可動部40の3つの動作をベース部10上で行わせることができる。
【0033】
装着部60は、可動部40に足または手を直接的に着脱可能に装着させる。また、装着部60は、可動部40に足または手を間接的に着脱可能に装着させる。ここでいう間接的とは、例えば、靴を履いた状態の足における靴や手袋をはめた手における手袋を着脱可能に装着させることを含む。
【0034】
本実施形態の装着部60は、可動部40に設けられたバンド61を含む。バンド61は、その両端部が可動部40の外周縁部にそれぞれ係合されて可動部40の上側にアーチ状に設けられている。例えば足を可動部40に装着する場合には、バンド61と可動部40との間に足を差し入れ、足の甲にバンド61が当たる状態でバンド61と可動部40との間に足を挟持することにより、足を可動部40に装着することができる。バンド61は、長さが調整可能な構成(伸縮性を有する構成を含む)であると、足や手の大きさに対応可能となり、かつ、足や手を適度に締め付けて確実な装着状態を得られるため好ましい。
【0035】
コイルスプリング70は、本発明の弾性部材の一例を構成する。すなわちコイルスプリング70は、ベース部10と可動部40とを連結し、可動部40の動きを緩衝するとともに、ベース部10に対する可動部40の相対位置を基準位置に復帰させる。コイルスプリング70は、ベース部10および可動部40の双方に、磁力によって、着脱可能、かつ、底板31の下面31bに略直交するベース部10の中心軸線Aの周りに摺動可能に保持される。そのため、コイルスプリング70は、磁性を有する金属(例えば、鉄、ステンレス等)で構成されている。
【0036】
コイルスプリング70は、上述の下側リング24および上側リング44と概ね同径である。図2および図3に示すように、コイルスプリング70は、下端リング部71と、上端リング部72と、下端リング部71と上端リング部72との間のスプリング部73と、を有する。コイルスプリング70は、ベース部10と可動部40との間に例えば無負荷の自然状態からやや伸びた状態で配置される。
【0037】
コイルスプリング70は、下端リング部71がベース部10の下側リング24の上面に摺動可能に当接し、上端リング部72が可動部40の上側リング44の下面に摺動可能に当接する。下端リング部71は、第2の磁石25により磁力が付与されている下側リング24に吸着し、上端リング部72は、第5の磁石45により磁力が付与されている上側リング44に吸着する。ここでいう「吸着」とは、連結や固定あるいは保持の一態様である。
【0038】
このようにコイルスプリング70が装着された状態で、可動部40の可動板部41は、コイルスプリング70の引っ張り力によってベース部10のベース部本体20と略平行な状態に保持される。ベース部本体20に対し可動板部41が略平行となる状態が、上記基準位置とされる。なお、この基準位置は、あくまで任意である。また、その基準位置は、コイルスプリング70の引っ張り力等に応じてある程度の範囲を有するものであってよく、厳密に設定されるものでなくてよい。
【0039】
可動部40は、コイルスプリング70を介してベース部10に連結された状態で、三次元動作が可能である。可動部40が傾斜した場合、傾斜した側のコイルスプリング70は部分的に圧縮され、その傾斜動作を解除すると、コイルスプリング70が元の状態に復帰することにより、可動部40は上記基準位置に復帰する。
【0040】
以上が本実施形態に係る運動具1の構成である。次いでこの運動具1の使用方法を例示する。運動具1は、足に装着して履いた状態で使用するか、手に装着した状態で使用する。
【0041】
(1)足に装着して使用する場合
図5は、使用者Mが両方の足M1に運動具1を履き使用面Fに立った状態を示している。運動具1は、図6および図7に示すように、足M1を可動部40とバンド61との間に差し入れることで、足M1に装着される。運動具1は、各ボールベアリング32のボール33が使用面Fに転動可能に接地して使用者Mを支える。
【0042】
(1―1)停止した状態で使用する場合
使用者Mが使用面Fを移動せずに立ったままの状態で、例えば肢体を動かして足首M2が屈曲したり回転したりするような運動を行うと、可動部40には、その足首M2の動きに追従して、回転、傾斜または旋回のうちの少なくとも一つの動作が惹起される。
【0043】
使用者Mは、可動部40の凹面軸受部42がベース部10の球面軸部22を摺動する感覚を足M1で感じながら運動することになり、その感覚や、不安定な可動部40の三次元の動きを感じながら、足首M2を屈曲または回転させる運動を行う。使用者Mは、三次元に動く可動部40に様々な動作が生じるように肢体を能動的に動かすことで、足首M2とともに肢体の一部あるいは肢体全体を様々に動かしながら、運動や筋力トレーニングを行うことができる。したがって、使用面F上において停止した状態で、バリエーション豊かな運動や筋力トレーニングを行うことができる。
【0044】
使用者Mは、例えば、片足で立った状態で可動部40が回転するように身体全体を回転させることができる。また、膝M3の屈伸とともに、可動部40を傾斜させることにより足首M2を様々な方向に屈曲させると、使用面Fに直接足M1を置いて立った状態と比べると足首M2の可動範囲が大きいため、肢体への負荷がかかる部位が多様となり、複合的な筋力トレーニングを行うことができる。肢体の動きに応じて可動部40が三次元に動作可能であり、そのパターンの動作が妨げられにくい。
【0045】
一方、使用者Mが可動部40の上で静止しようとした場合において、肢体の僅かな挙動が可動部40に伝わることにより、可動部40が僅かにぐらぐらと動く。使用者Mはその可動部40の動きに抵抗して元の姿勢に戻ろうとすることで、静的な筋力トレーニングを行うことができる。
【0046】
ボールベアリング32のボール33が使用面Fに転動可能に接地することにより、運動や筋力トレーニング中において運動具1が移動する場合があるが、運動具1を元の位置に戻したり、あるいは任意の位置にスライドさせたりすることによっても筋力トレーニングを行うことができる。
【0047】
運動具1は、スライド板部30をベース部本体20から外して使用することができる。その場合には、ベース部本体20の下面20bが使用面Fに直接接地する。この状態で運動具1はボールベアリング32のボール33が使用面Fに接地している場合と比べると安定して停止するため、運動具1のスライドに影響を受けずに運動や筋力トレーニングを行うことができる。
【0048】
(1―2)スライドさせて使用する場合
使用者Mは、使用面F上をスライドするように肢体を動かすことにより、ボールベアリング32のボール33が転動して運動具1を使用面F上でスライドさせることができる。図8に示すように、使用者Mは立った状態から、両方または片方の脚M4を前後、左右、斜めのあらゆる方向に運動具1をスライドさせて広げることにより、脚M4に対して負荷を与える筋力トレーニングを行ったり、ダンスのようなパフォーマンスを行ったりすることができる。
【0049】
使用者Mは、可動部40が旋回するように足首M2をぐるぐる回転させることができる。図9および図10は、そのような足首M2の回転の状態を示しており、図9は、左側の足M1の足首M2を前方に曲げて傾斜させた時の状態を示し、図10は、左側の足M1の足首M2を後方に反らして傾斜させた時の状態を示している。屈曲する足首M2に追従して可動部40が三次元に動くことにより、足首M2への負担が小さくなり、かつ、足首M2が曲がる可動範囲が広くなる。したがって、運動や筋力トレーニングの種類の幅が広くなり、遊戯といった要素も付加される。なお、図8図10では、可動部40の動きをより明らかに示すためにコイルスプリング70の図示を省略している。
【0050】
使用者Mは、使用面F上の一定箇所にとどまらず、ボールベアリング32のボール33を転動させて運動具1により使用面F上を滑走して、前進、後退、左右あるいは斜めへの移動を行うことができる。使用者Mは、足首M2を動かして可動部40を回転、傾斜または旋回させることにより、滑走しながら、上述したような運動や筋力トレーニング、あるいはダンスのようなパフォーマンス等を行うことができる。
【0051】
使用面Fが滑りやすく加工されているような場合には、スライド板部30を使用することなく、ベース部本体20からスライド板部30を外してベース部本体20の下面20bをそのような使用面Fに直接接地させることにより、運動具1を滑走させることができる。すなわちこの場合、ベース部本体20の下面20bが滑動手段を構成する。したがってベース部本体20の下面20bは、平滑度および滑り性が高い状態に加工されていると好ましい。
【0052】
(2)手に装着して使用する場合
図11に示すように、使用者Mは、両方の手M5に運動具1を装着してうつ伏せになり、運動具1を使用面Fに接地して使用することができる。運動具1は、手M5を可動部40の可動板部40とバンド61との間に差し入れることで、手M5に装着される。運動具1は、ボールベアリング32のボール33が使用面Fに転動可能に接地して使用者Mを支える。
【0053】
使用者Mは、図11に示すように、うつ伏せの姿勢で両方または片方の腕M6を前後、左右、斜めのあらゆる方向に運動具1をスライドさせて広げることにより、腕M6に対して負荷を与える筋力トレーニングを行うことができる。
【0054】
また、使用者Mは、腕立て伏せを行う場合において、可動部40が回転、傾斜または旋回するように手首M7を回転させることができる。図12に示すように可動部40を前方に傾斜させることで手首M7を前方に曲げたり、図13で示す右手のように可動部40を内側に傾斜させることで手首M7を内側に曲げたりすることができる。可動部40とともに手首M7を三次元に回転させることにより、手M5を使用面Fに直接置いて運動や筋力トレーニングを行う場合と比べると、手首M7が曲がる可動範囲が広くなり、多様な運動や筋力トレーニングを行うことができる。
【0055】
上述した使用方法は、本実施形態に係る運動具1の使用方法のうちの幾つかの例に過ぎず、運動具1は他の多様な使用方法の可能性を含んでいる。
【0056】
以下に、本実施形態に係る運動具1の効果について説明する。本実施形態に係る運動具1は、使用面Fに接地される接地部11を有するベース部10と、ベース部10の上側に、磁力によって着脱可能に保持される可動部40と、ベース部10に保持されている状態の可動部40を、三次元にフレキシブルに可動するように支持する三次元可動支持手段50と、可動部40に手または足を直接的にまたは間接的に着脱可能に装着させる装着部60と、を備える。
【0057】
これにより、運動具1の使用者Mは、使用面F上において停止した状態であってもバリエーション豊かな運動や筋力トレーニングを行うことができる。
【0058】
本実施形態に係る運動具1は、三次元可動支持手段50は、ベース部10に設けられる球面軸部22と、可動部40に設けられて球面軸部22に摺動自在に嵌合する凹面軸受部42と、を含む。
【0059】
これにより、運動具1は、簡素な構造で確実に可動部40を三次元にフレキシブルに可動するようにベース部10に支持することができる。
【0060】
本実施形態に係る運動具1は、ベース部10は、使用面Fに対して接地部11を滑動可能にさせる滑動手段として、スライド板部30およびベース部本体20の下面20bを有する。
【0061】
これにより、運動具1の使用者は、スライド板部30またはベース部本体20の下面20bを介して使用面F上を滑動しながら移動することができ、移動しながら運動やトレーニング等を行うことができる。
【0062】
本実施形態に係る運動具1は、滑動手段として、使用面Fに対する接点となるボールベアリング32を含むスライド板部30を有する。
【0063】
これにより、運動具1はボールベアリング32によりスムーズに使用面F上を移動することができる。
【0064】
本実施形態に係る運動具1は、ベース部10は、滑動手段を構成するスライド板部30とベース部本体20とを含み、スライド板部30はベース部本体20に着脱可能に装着される。
【0065】
これにより、運動具1においては、スライド板部30をベース部本体20に装着して移動可能な状態と、スライド板部30をベース部本体20から外した停止状態のいずれかの状態で使用することができ、よりバリエーション豊かな運動や筋力トレーニングを行うことができる。
【0066】
本実施形態に係る運動具1は、ベース部10と可動部40とを連結し、可動部40の動きを緩衝するとともに、ベース部10に対する可動部40の相対位置を基準位置に復帰させるコイルスプリング70を有する。
【0067】
これにより、運動具1においては、コイルスプリング70によって手または足により可動部40を傾斜させる場合、コイルスプリング70が圧縮されることにより可動部40の動きが緩衝され、一方、コイルスプリング70の引っ張り力によって可動部40は基準位置に復帰しようとし、その力が手や足に伝わる。その結果、使用者は、コイルスプリング70の引っ張り力を感じながら良好な使用感が得られるとともに、軽微な力で可動部40を基準位置に復帰させることができる。
【0068】
本実施形態に係る運動具1においては、コイルスプリング70は、ベース部10および可動部40の双方に、磁力によって、着脱可能、かつ、底板31の下面31bに略直交する中心軸線Aの周りに摺動可能に保持される。
【0069】
これにより、運動具1においては、コイルスプリング70によってベース部10と可動部40とが連結された状態が保持されながら、可動部40がベース部10に対し360°自由に相対回転させることができる。このため、可動部40がベース部10から不用意に離脱したとしても、コイルスプリング70によって可動部40がベース部10に引き戻され、可動部40がベース部10に保持される状態が確保される。
【0070】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されることなく、種々の形態で実施することができる。
【0071】
例えば、可動部40は靴や手袋と一体化させ、可動部40を一体的に備える靴や手袋をベース部10のベース部本体20に磁力で保持するようにしてもよい。この場合、使用者の足や手は間接的に可動部40に装着される。換言すると、可動部40が、靴の形状および機能を有していたり手袋の形状および機能を有していたりする形態であってよい。
三次元可動支持手段50を構成する球面軸部22および凹面軸受部42は、上記実施形態とは逆に、球面軸部22が可動部40に設けられ、凹面軸受部42がベース部10に設けられてもよい。ただし、上記実施形態のように球面軸部22がベース部10に設けられ、凹面軸受部42が可動部40に設けられる方が、使用者Mから受ける負荷を安定して支持することができるため好ましい。
【0072】
本発明の滑動手段は、ベース部本体20に着脱可能に装着されず、ベース部本体20に固定的に設けられてもよい。その場合の滑動手段としては、例えばベース部本体20の下面20bにボールベアリング32を直接設けることで構成することができる。
ベース部10は滑動手段を有さず、ベース部本体20のみで構成されてもよい。この場合、ベース部本体20の下面20bが使用面Fに直接接地し、運動具1が停止状態で可動部40を動かすことにより運動や筋力トレーニングを行う。
コイルスプリング70は、ベース部10の下側リング24と可動部40の上側リング44とに磁力で吸着して保持されるために、磁性を有する金属で構成されているが、少なくとも、下側リング24に当接する下端リング部71と上側リング44に当接する上端リング部72とが、磁性を有する金属で構成されるものであってよい。この場合、スプリング部73は、樹脂等の材質とすることができる。
【符号の説明】
【0073】
1 運動具
10 ベース部
11 接地部
20 ベース部本体
20b ベース部本体の下面(滑動手段)
22 球面軸部
30 スライド板部(滑動手段)
32 ボールベアリング
40 可動部
42 凹面軸受部
50 三次元可動支持手段
60 装着部
70 コイルスプリング(弾性部材)
A 中心軸線
F 使用面
M1 足
M5 手
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13