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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-10
(45)【発行日】2024-07-19
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 13/00 20060101AFI20240711BHJP
【FI】
B60C13/00 D
B60C13/00 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020023844
(22)【出願日】2020-02-14
(65)【公開番号】P2021127047
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐野 伸悟
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-072511(JP,A)
【文献】特開平08-282215(JP,A)
【文献】国際公開第00/009348(WO,A1)
【文献】特開2012-056416(JP,A)
【文献】特開平09-323513(JP,A)
【文献】特開2013-001222(JP,A)
【文献】特開2014-180947(JP,A)
【文献】特開2015-000613(JP,A)
【文献】国際公開第2012/029239(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 13/00-13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ径方向に延びるサイドウォールを備え、
前記サイドウォールは、外表面であってタイヤ最大幅位置を含むタイヤ径方向の一定領域に装飾部を備え、
前記装飾部は、タイヤ周方向に延びる複数の線状突起と、間隔をあけて並列される複数のリッジを有する装飾領域と、を備え、
前記装飾部は、タイヤ周方向に沿って延びる円弧状をしており、前記線状突起の端部は、前記装飾部の内周縁又は外周縁に接続されており、
前記線状突起は、タイヤ径方向外側へ凸となる第1凸部と、タイヤ径方向内側へ凸となる第2凸部とのうち少なくとも一方を有し、
前記第1凸部は、タイヤ径方向の最外の突出端から前記装飾部の内周縁に近づくように第1周方向に向かって延びる部分と、タイヤ径方向の最外の突出端から前記装飾部の内周縁に近づくように第2周方向に向かって延びる部分とを備え、前記第2凸部は、タイヤ径方向の最内の突出端から前記装飾部の外周縁に近づくように第1周方向に向かって延びる部分と、タイヤ径方向の最内の突出端から前記装飾部の外周縁に近づくように第2周方向に向かって延びる部分とを備え、
一つの前記線状突起における前記第1凸部と前記第2凸部は、タイヤ径方向に見て、タイヤ周方向に連なり、一つの前記線状突起の前記第1凸部は、タイヤ径方向に見て、他の前記線状突起の前記第2凸部に部分的に重なり、又は一つの前記線状突起の前記第2凸部は、タイヤ径方向に見て、他の前記線状突起の前記第1凸部に部分的に重なる、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記リッジの端部は、前記線状突起、又は前記装飾部の外縁に接続される、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記線状突起は、前記タイヤ最大幅位置を横切って延びる、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記線状突起は、前記第1凸部と前記第2凸部が互いに連なって構成され、前記装飾部の内周縁から前記装飾部の外周縁まで延びる、請求項1~3の何れか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記装飾領域は、前記リッジがタイヤ径方向に延びる径方向リッジ領域と、前記リッジがタイヤ周方向に延びる周方向リッジ領域と、を備え、前記径方向リッジ領域の面積は、前記周方向リッジ領域の面積よりも大きい、請求項1~4の何れか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記装飾部は、前記装飾部の全体に、前記サイドウォールの外表面の基準面から凹む凹部を備え、
前記線状突起及び前記リッジは、前記凹部の底部から突出して形成されている、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気入りタイヤは、タイヤ径方向に延びるサイドウォールを備え、サイドウォールは、外表面に装飾部が形成されている。例えば、下記特許文献1には、サイドウォールは、タイヤ径方向の一定領域に、外表面に凸のリッジがタイヤ周方向に隣接して配置されたセレーションが形成された第1装飾部と、第1装飾部のタイヤ周方向の端部に隣接して配置され、外表面に凸のリッジがタイヤ周方向に隣接して配置されたセレーションが形成された第2装飾部と、第2装飾部に隣接して配置され、第2装飾部よりもタイヤ幅方向内側に凹んだ凹部と、を有する空気入りタイヤが開示されている。
【0003】
ところで、空気入りタイヤは、荷重がかかることで、サイドウォールが繰り返し撓む。繰り返して撓むことにより、サイドウォールにクラックが発生することがある。特許文献1では、凹部によって、第1装飾部のタイヤ周方向端部で発生したクラックが成長することを抑制しているが、凹部が第1装飾部よりもタイヤ幅方向内側に凹んだ形状であるため、凹部によるクラックの成長を抑制する効果が不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-210132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の目的は、サイドウォールの撓みを抑えてクラックの発生を抑制することができる空気入りタイヤを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の空気入りタイヤは、タイヤ径方向に延びるサイドウォールを備え、
前記サイドウォールは、外表面であってタイヤ最大幅位置を含むタイヤ径方向の一定領域に装飾部を備え、
前記装飾部は、タイヤ周方向に延びる線状突起と、間隔をあけて並列される複数のリッジを有する装飾領域と、を備え、
前記線状突起は、タイヤ径方向外側へ凸となる第1凸部と、タイヤ径方向内側へ凸となる第2凸部と、を有し、
前記第1凸部と前記第2凸部は、タイヤ径方向に見て、タイヤ周方向に連なる又は部分的に重なる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態に係る空気入りタイヤのタイヤ子午面における要部断面図
図2】本実施形態に係る空気入りタイヤの正面図
図3図2のIII領域拡大図
図4図3のIV-IV線の要部拡大断面図
図5A】他の実施形態に係る空気入りタイヤの要部拡大断面図
図5B】他の実施形態に係る空気入りタイヤの要部拡大断面図
図6】他の実施形態に係る空気入りタイヤの線状突起の模式図
図7】他の実施形態に係る空気入りタイヤの線状突起の模式図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、空気入りタイヤにおける一実施形態について、図1図4を参照しながら説明する。なお、各図(図5A図5B図6、及び図7も同様)において、図面の寸法比と実際の寸法比とは、必ずしも一致しておらず、また、各図面の間での寸法比も、必ずしも一致していない。
【0009】
図1に示すように、本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、ビードコア1aを有する一対のビード1b,1bと、各ビード1bからタイヤ径方向D2の外側に延びる一対のサイドウォール2,2とを備えている。また、空気入りタイヤ1は、一対のサイドウォール2,2のタイヤ径方向D2の外端部に連接されるトレッド1cを備えている。
【0010】
各図において、タイヤ幅方向D1とは、空気入りタイヤ1の回転中心であるタイヤ回転軸1dと平行な方向であり、タイヤ径方向D2とは、空気入りタイヤ1の直径方向であり、タイヤ周方向D3とは、タイヤ回転軸1d周りの方向である。また、タイヤ赤道面S1とは、タイヤ回転軸1dに直交する面であって、空気入りタイヤ1のタイヤ幅方向D1の中心に位置する面のことであり、タイヤ子午面とは、タイヤ回転軸1dを含む面であり、タイヤ赤道面S1と直交する面である。なお、タイヤ周方向D3の一方向は、第1周方向D31といい、他方向は、第2周方向D32という。
【0011】
なお、タイヤ幅方向D1において、内側とは、タイヤ赤道面S1に近い側のことであり、外側とは、タイヤ赤道面S1から遠い側のことである。また、タイヤ径方向D2において、内側とは、タイヤ回転軸1dに近い側のことであり、外側とは、タイヤ回転軸1dから遠い側のことである。
【0012】
空気入りタイヤ1は、一対のビードコア1a,1aの間に架け渡されるカーカス1eと、カーカス1eの内側に配置され、空気圧を保持するために、気体の透過を阻止する機能に優れるインナーライナー1fとを備えている。カーカス1e及びインナーライナー1fは、ビード1b、サイドウォール2及びトレッド1cに亘って、タイヤ内周に沿って配置されている。
【0013】
サイドウォール2は、カーカス1eのタイヤ幅方向D1の外側に配置されるサイドウォールゴム2aを備えている。図2に示すように、サイドウォールゴム2aは、外表面2bの一部の領域に配置される装飾部3を備えている。装飾部3は、サイドウォール2の外表面2bであってタイヤ最大幅位置2cを含むタイヤ径方向D2の一定領域に形成されている。
【0014】
本実施形態においては、装飾部3は、タイヤ周方向D3に沿って延びる円弧状をしている。これにより、装飾部3は、タイヤ周方向D3に延びる内周縁3a及び外周縁3bと、内周縁3a及び外周縁3bの端部同士を接続する第1側端縁3c及び第2側端縁3dとを備えている。なお、本実施形態では、第1側端縁3c及び第2側端縁3dが曲線状となっているが、第1側端縁3c及び第2側端縁3dの形状は、特に限定されず、例えば、直線状でもよい。
【0015】
また、装飾部3は、図2のようにサイドウォール2のタイヤ周方向D3の一部のみに形成されてもよく、サイドウォール2のタイヤ周方向D3の全周に亘って形成されてもよい。また、装飾部3は、サイドウォール2のタイヤ周方向D3に沿って複数形成されてもよい。複数の装飾部3を形成する場合、装飾部3をタイヤ周方向D3に等間隔で配置するのが好ましい。本実施形態では、2つの装飾部3がタイヤ回転軸1dを挟んで対向する位置に配置されている。
【0016】
タイヤ子午面断面において、装飾部3は、タイヤ最大幅位置2cを中央としてタイヤ断面高さHの20%となるタイヤ径方向D2の範囲内に位置するのが好ましい。また、装飾部3のタイヤ径方向D2の中央位置がタイヤ最大幅位置2cとなるのが好ましい。すなわち、装飾部3の内周縁3a及び外周縁3bが、タイヤ最大幅位置2cからタイヤ径方向D2に同じ距離にそれぞれ位置するのが好ましい。
【0017】
装飾部3は、外表面2bの基準面(基準プロファイルとも称される)から凹む凹部4を備えている。凹部4は、装飾部3の全体に形成されている。凹部4の深さは、例えば、0.3~1.5mmである。
【0018】
装飾部3は、タイヤ周方向D3に延びる線状突起5を備えている。本実施形態では、線状突起5は、タイヤ周方向D3に並べられた第1の線状突起51と、第2の線状突起52と、第3の線状突起53とを備える。
【0019】
線状突起5は、凹部4の底部から突出して形成されている。なお、図4において、破線は、外表面2bの基準面S2を示している。本実施形態において、外表面2bの基準面S2は、装飾部3が形成されていない部分のサイドウォール2の外表面2bとタイヤ幅方向D1に同じ位置である。
【0020】
線状突起5は、断面略台形状である。線状突起5の頂部5aの位置は、外表面2bの基準面S2に対して同じ位置であっても、異なる位置であってもよい。図4は、線状突起5の頂部5aの位置が、外表面2bの基準面S2から突出する位置である例を示す。
【0021】
線状突起5は、タイヤ径方向D2外側へ凸となる第1凸部と、タイヤ径方向D2内側へ凸となる第2凸部と、を有している。具体的には、第1の線状突起51は、タイヤ径方向D2外側へ凸となる第1凸部51aと、タイヤ径方向D2内側へ凸となる第2凸部51bと、を有している。また、第2の線状突起52は、タイヤ径方向D2外側へ凸となる第1凸部52aを有している。また、第3の線状突起53は、タイヤ径方向D2内側へ凸となる第2凸部53bを有している。線状突起5を装飾部3内に形成することで、タイヤ最大幅位置2c付近を線状突起5により補強することができるため、サイドウォール2の撓みを抑えてクラックの発生を抑制することができる。また、線状突起5が第1凸部と第2凸部を有することで、例えば直線状の線状突起に比べ、補強効果が高く、さらに後述するカモフラージュ効果が高い。
【0022】
線状突起5の第1凸部と第2凸部は、タイヤ径方向D2に見て、タイヤ周方向D3に連なる又は部分的に重なるように構成されている。具体的には、第1の線状突起51において、第1凸部51aと第2凸部51bは、タイヤ径方向D2に見て、タイヤ周方向D3に連なっている。また、第1の線状突起51の第2凸部51bと第2の線状突起52の第1凸部52aは、タイヤ径方向D2に見て、タイヤ周方向D3に部分的に重なっている。また、第2の線状突起52の第1凸部52aと第3の線状突起53の第2凸部53bは、タイヤ径方向D2に見て、タイヤ周方向D3に部分的に重なっている。第1凸部と第2凸部がタイヤ周方向D3に連なる又は部分的に重なるようにすることで、第1凸部のみ又は第2凸部のみの場合に比べ、タイヤ径方向D2内側からの力、及びタイヤ径方向D2外側からの力に対してバランスよく補強することができる。
【0023】
第1の線状突起51は、第1凸部51aと第2凸部51bが連なって全体として波形状をしている。また、第1の線状突起51は、装飾部3の内周縁3aから外周縁3bまで延びている。すなわち、第1の線状突起51の一方の端部51cは、装飾部3の内周縁3aに接続され、第1の線状突起51の他方の端部51dは、装飾部3の外周縁3bに接続されている。これにより、第1の線状突起51は、タイヤ最大幅位置2cを横切って延びるため、タイヤ最大幅位置2c付近の撓みを効果的に抑えることができる。
【0024】
第1凸部51aは、突出端51eから内周縁3aへ近づくように第1周方向D31に向かって延びる部分と、突出端51eから内周縁3aへ近づくように第2周方向D32に向かって延びる部分とを備える。第1凸部51aの突出端51eは、タイヤ最大幅位置2cよりタイヤ径方向D2内側に位置している。ただし、第1凸部51aの突出端51eをタイヤ最大幅位置2cよりタイヤ径方向D2外側に配置し、第1凸部51aがタイヤ最大幅位置2cを横切るようにして補強効果を高めてもよい。
【0025】
第2凸部51bは、突出端51fから外周縁3bへ近づくように第1周方向D31に向かって延びる部分と、突出端51fから外周縁3bへ近づくように第2周方向D32に向かって延びる部分とを備える。なお、本実施形態では、第2凸部51bの突出端51fは、装飾部3の内周縁3aに接続されているが、これに限定されない。第2凸部51bの突出端51fが装飾部3の内周縁3aに接続されないようにしてもよい。
【0026】
第2の線状突起52の両方の端部52c,52dは、装飾部3の内周縁3aに接続されている。第1凸部52aは、突出端52eから内周縁3aへ近づくように第1周方向D31に向かって延びる部分と、突出端52eから内周縁3aへ近づくように第2周方向D32に向かって延びる部分とを備える。第1凸部52aの突出端52eは、タイヤ最大幅位置2cよりタイヤ径方向D2内側に位置している。ただし、第1凸部52aの突出端52eをタイヤ最大幅位置2cよりタイヤ径方向D2外側に配置し、第1凸部52aがタイヤ最大幅位置2cを横切るようにして補強効果を高めてもよい。
【0027】
第3の線状突起53の両方の端部53c,53dは、装飾部3の外周縁3bに接続されている。第2凸部53bは、突出端53fから外周縁3bへ近づくように第1周方向D31に向かって延びる部分と、突出端53fから外周縁3bへ近づくように第2周方向D32に向かって延びる部分とを備える。第2凸部53bの突出端53fは、タイヤ最大幅位置2cよりタイヤ径方向D2外側に位置している。ただし、第2凸部53bの突出端53fをタイヤ最大幅位置2cよりタイヤ径方向D2内側に配置し、第2凸部53bがタイヤ最大幅位置2cを横切るようにして補強効果を高めてもよい。
【0028】
線状突起5の幅5wは、例えば、1~10mmである。線状突起5の幅5wは、線状突起5の延びる方向に直交する方向の頂部5aの幅である。また、線状突起5の幅5wは一定であることが好ましい。なお、幅5wが一定とは、幅が完全に一定値となる形態のみならず、幅の最大値が最小値の85%以内で変動する形態も含む。本実施形態では、線状突起5の幅5wは3mmである。また、凹部4の底部からの線状突起5の突出高さ5hは、例えば、0.3~3.5mmである。線状突起5の幅5wは、線状突起5の突出高さ5hの0.28~33倍である。線状突起5において、補強効果を高める観点から、幅5wが突出高さ5hよりも大きいことが好ましい。
【0029】
装飾部3は、間隔をあけて並列される複数のリッジ6を有する装飾領域7を備えている。装飾領域7は、装飾部3のうち線状突起5以外の領域である。本実施形態では、装飾領域7は、第1~第5の装飾領域71~75を備える。
【0030】
第1の装飾領域71は、装飾部3の内周縁3a、外周縁3b、第1側端縁3c、及び第1の線状突起51で囲まれる領域である。第2の装飾領域72は、装飾部3の内周縁3a、外周縁3b、第2側端縁3d、第1の線状突起51、第2の線状突起52、及び第3の線状突起53で囲まれる領域である。第3の装飾領域73は、装飾部3の内周縁3a及び第1の線状突起51で囲まれる領域である。第4の装飾領域74は、装飾部3の内周縁3a及び第2の線状突起52で囲まれる領域である。第5の装飾領域75は、装飾部3の外周縁3b及び第3の線状突起53で囲まれる領域である。
【0031】
リッジ6の端部は、線状突起5、又は装飾部3の外縁に接続される。装飾部3の外縁とは、内周縁3a、外周縁3b、第1側端縁3c、及び第2側端縁3dである。すなわち、装飾領域7のすべての領域にリッジ6が形成されている。これにより、装飾領域7で発生したクラックの成長を線状突起5及び装飾部3の外縁(内周縁3a、外周縁3b、第1側端縁3c、及び第2側端縁3d)によって抑制することができる。また、タイヤ最大幅位置2cを横切って延びるリッジ6は、少なくとも一方の端部が線状突起5に接続されるように構成されている。なお、第1の装飾領域71及び第2の装飾領域72において、両端部の何れもが線状突起5に接続されないリッジ6も存在するが、これらのリッジ6は、タイヤ最大幅位置2cを横切らないため、この付近でのクラックの発生は少なく、仮にクラックが発生しても成長しにくい。
【0032】
複数のリッジ6は、第1~第5の装飾領域71~75でそれぞれ所定の方向へ延びている。リッジ6の延びる方向は、特に限定されないが、サイドウォール2を補強する観点からタイヤ径方向D2を含むことが好ましい。
【0033】
リッジ6の延びる方向は、それぞれの装飾領域71~75で異なってもよい。本実施形態では、第1の装飾領域71及び第2の装飾領域72において、リッジ6はタイヤ径方向D2に延びており、第3~第5の装飾領域73~75において、リッジ6はタイヤ周方向D3に延びている。このように複数の方向に延びるリッジ6を設けることにより、単一の方向のみに延びるリッジ6を設ける場合に比べ、カーカスプライ1e等の部材によるサイドウォール2の凹凸形状をカモフラージュする効果がある。また、タイヤ径方向D2とタイヤ周方向D3のように互いに直交する方向に延びるリッジ6を設けることにより、前述のカモフラージュ効果が高まる。なお、第1の装飾領域71及び第2の装飾領域72において、リッジ6がタイヤ径方向D2に傾斜する第1の方向に延び、第3~第5の装飾領域73~75において、リッジ6が第1の方向に直交する第2の方向に延びるようにしてもよい。
【0034】
本実施形態において、装飾領域7は、リッジ6がタイヤ径方向D2に延びる径方向リッジ領域と、リッジ6がタイヤ周方向D3に延びる周方向リッジ領域と、を備え、径方向リッジ領域の面積が、周方向リッジ領域の面積よりも大きいことが好ましい。径方向リッジ領域の面積を周方向リッジ領域の面積よりも大きくすることで、サイドウォール2の撓みを効果的に抑制できる。ここで、径方向リッジ領域とは、タイヤ径方向D2±30度の方向に延びるリッジ6が形成される装飾領域であり、例えば、本実施形態においては第1の装飾領域71及び第2の装飾領域72が該当する。また、周方向リッジ領域とは、タイヤ周方向D3±30度の方向に延びるリッジ6が形成される装飾領域であり、例えば、本実施形態においては第3~第5の装飾領域73~75が該当する。なお、周方向リッジ領域では、タイヤ周方向D3に延びる曲線状のリッジ6もあり得るが、この場合、タイヤ径方向D2との交点におけるリッジ6の接線がタイヤ周方向D3±30度の方向に延びている。
【0035】
リッジ6は、凹部4の底部から突出して形成されている。リッジ6は、断面略三角形状である。ただし、リッジ6は、先端が平坦となった断面略台形状であってもよい。リッジ6の頂部6aの位置は、外表面2bの基準面S2に対して同じ位置であっても、異なる位置であってもよい。図4は、リッジ6の頂部6aの位置が、外表面2bの基準面S2から凹む位置である例を示す。
【0036】
凹部4の底部からのリッジ6の突出高さ6hは、例えば、0.3~0.6mmである。線状突起5の突出高さ5hは、リッジ6の突出高さ6h以上であるのが好ましい。また、線状突起5の突出高さ5hは、リッジ6の突出高さ6hより高いのがより好ましい。
【0037】
本実施形態では、リッジ6の頂部6aの位置が、外表面2bの基準面S2から凹む位置であり、且つ線状突起5の頂部5aの位置が、外表面2bの基準面S2から突出する位置であり、線状突起5の突出高さ5hが、リッジ6の突出高さ6hよりも高くなっている。これにより、線状突起5は、装飾領域7で発生したクラックの成長を効果的に抑制することができる。
【0038】
並列されるリッジ6のピッチ6pは、例えば、0.8~1.2mmである。本実施形態では、リッジ6のピッチ6pは1.0mmである。リッジ6のピッチ6pは、線状突起5の幅5wよりも小さいのが好ましい。
【0039】
以上のように、本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、タイヤ径方向D2に延びるサイドウォール2を備え、
サイドウォール2は、外表面2bであってタイヤ最大幅位置2cを含むタイヤ径方向の一定領域に装飾部3を備え、
装飾部3は、タイヤ周方向D3に延びる線状突起5と、間隔をあけて並列される複数のリッジ6を有する装飾領域7と、を備え、
線状突起5は、タイヤ径方向D2外側へ凸となる第1凸部51a,52aと、タイヤ径方向D2内側へ凸となる第2凸部51b,53bと、を有し、
第1凸部51a,52aと第2凸部51b,53bは、タイヤ径方向D2に見て、タイヤ周方向D3に連なる又は部分的に重なるものである。
【0040】
この空気入りタイヤ1によれば、第1凸部と第2凸部を有する線状突起5を装飾部3内に設けることで、タイヤ最大幅位置2c付近を線状突起5により補強することができるため、サイドウォール2の撓みを抑えてクラックの発生を抑制することができる。
【0041】
また、本実施形態に係る空気入りタイヤ1において、リッジ6の端部は、線状突起5、又は装飾部3の外縁に接続されるものでもよい。この構成によれば、装飾領域7で発生したクラックの成長を線状突起5、又は装飾部3の外縁によって抑制することができる。
【0042】
また、本実施形態に係る空気入りタイヤ1において、線状突起5は、タイヤ最大幅位置2cを横切って延びるものでもよい。この構成によれば、タイヤ最大幅位置2c付近の撓みを効果的に抑えることができる。
【0043】
また、本実施形態に係る空気入りタイヤ1において、第1の線状突起51は、第1凸部51aと第2凸部51bが互いに連なって構成され、装飾部3の内周縁3aから装飾部3の外周縁3bまで延びるものでもよい。この構成によれば、タイヤ最大幅位置2c付近の撓みを効果的に抑えることができる。
【0044】
また、本実施形態に係る空気入りタイヤ1において、装飾領域7は、リッジ6がタイヤ径方向D2に延びる径方向リッジ領域と、リッジ6がタイヤ周方向D3に延びる周方向リッジ領域と、を備え、前記径方向リッジ領域の面積は、前記周方向リッジ領域の面積よりも大きいものでもよい。この構成によれば、径方向リッジ領域の面積を周方向リッジ領域の面積よりも大きくすることで、サイドウォール2の撓みを効果的に抑制できる。
【0045】
なお、上述した各寸法値、位置関係及び大小関係等は、空気入りタイヤ1を正規リムに装着して正規内圧を充填した無負荷の正規状態で測定したものである。例えば、タイヤ最大幅位置2cは、空気入りタイヤ1を正規リムに装着し、正規内圧を充填した無負荷状態のときの、サイドウォール2の外表面2bから突出する模様や文字等の構造物を除いたタイヤ幅方向D1における寸法が最大となる位置のタイヤ径方向D2における位置である。正規リムは、空気入りタイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、当該規格が空気入りタイヤ1ごとに定めるリムであり、例えば、JATMAであれば標準リム、TRA及びETRTOであれば「Measuring Rim」となる。
【0046】
また、正規内圧は、空気入りタイヤ1が基づいている規格を含む規格体系において、各規格が空気入りタイヤ1ごとに定めている空気圧であり、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、ETRTOであれば「INFLATIONPRESSURE」である。
【0047】
なお、空気入りタイヤ1は、上記した実施形態の構成に限定されるものではなく、また、上記した作用効果に限定されるものではない。また、空気入りタイヤ1は、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、上記した複数の実施形態の各構成や各方法等を任意に採用して組み合わせてもよく、さらに、下記する各種の変更例に係る構成や方法等を任意に一つ又は複数選択して、上記した実施形態に係る構成や方法等に採用してもよいことは勿論である。
【0048】
(1)上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、線状突起5の頂部5aの位置が、外表面2bの基準面S2から突出する位置であるが、これに限定されない。図5Aは、線状突起5の頂部5aの位置が、外表面2bの基準面S2と同じ位置である例を示す。補強効果を確保する観点から、線状突起5の頂部5aの位置は、外表面2bの基準面S2と同じ位置または突出する位置であるのが好ましい。
また、図5Bは、線状突起5の頂部5aの位置が、外表面2bの基準面S2から凹む位置である例を示す。なお、図5Bに示す例では、線状突起5の頂部5aの位置が、リッジ6の頂部6aの位置と同じとなっている。
【0049】
(2)上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、第1の線状突起51は、第1凸部51aと第2凸部51bが曲線状であり、全体として図6(a)に示すような略正弦波状であるが、これに限定されない。第1の線状突起51は、例えば、図6(b)に示すような矩形波状、図6(c)に示すような三角波状等でもよい。また、第1の線状突起51は、第1凸部51aと第2凸部51bに連なるその他の第1凸部及び第2凸部をさらに備えてもよい。
【0050】
(3)上記実施形態に係る空気入りタイヤ1においては、リッジ6のすべての端部が線状突起5、又は装飾部3の外縁に接続されているが、これに限定されない。リッジ6の端部が装飾領域7内で終端していてもよい。
【0051】
(4)上記実施形態に係る空気入りタイヤ1では、第1の線状突起51において、第1凸部51aと第2凸部51bは、端部同士が接続されるようにしてタイヤ周方向D3に連なっているが、これに限定されない。「第1凸部と第2凸部が、タイヤ径方向に見て、タイヤ周方向に連なる」とは、図7に示すように、第1凸部54aと第2凸部54bが、タイヤ径方向D2に見たときに、端部同士が一致するようにタイヤ周方向D3に連なる形態も含む。具体的には、第2凸部51bと第1凸部52aが、図7と同様、タイヤ径方向D2に見て、タイヤ周方向D3に連なってもよく、或いは第1凸部52aと第2凸部53bが、図7と同様、タイヤ径方向D2に見て、タイヤ周方向D3に連なってもよい。
【符号の説明】
【0052】
1…空気入りタイヤ、2…サイドウォール、2a…サイドウォールゴム、2b…外表面、2c…タイヤ最大幅位置、3…装飾部、3a…内周縁、3b…外周縁、4…凹部、5…線状突起、6…リッジ、7…装飾領域、51…第1の線状突起、51a…第1凸部、51b…第2凸部、52…第2の線状突起、52a…第1凸部、53…第3の線状突起、53b…第2凸部、71…第1の装飾領域、72…第2の装飾領域、73…第3の装飾領域、74…第4の装飾領域、75…第5の装飾領域、D1…タイヤ幅方向、D2…タイヤ径方向、D3…タイヤ周方向、H…タイヤ断面高さ、S2…外表面の基準面

図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7