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特許7519198藻類の増殖促進用の液体、及び藻類の増殖方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-10
(45)【発行日】2024-07-19
(54)【発明の名称】藻類の増殖促進用の液体、及び藻類の増殖方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/12 20060101AFI20240711BHJP
【FI】
C12N1/12 B
C12N1/12 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020055960
(22)【出願日】2020-03-26
(65)【公開番号】P2021153452
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2023-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103539
【弁理士】
【氏名又は名称】衡田 直行
(74)【代理人】
【識別番号】100111202
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 周彦
(74)【代理人】
【識別番号】100162145
【弁理士】
【氏名又は名称】村地 俊弥
(72)【発明者】
【氏名】佐野 浩希
(72)【発明者】
【氏名】西城 晶子
(72)【発明者】
【氏名】神谷 隆
【審査官】伊達 利奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-022740(JP,A)
【文献】特開平08-173139(JP,A)
【文献】太平洋セメント技術情報誌CEM’S,2016年,pp.8-11
【文献】太平洋セメント技術情報誌CEM’S,2013年,pp.12-15
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00- 7/08
AO1G 33/00-33/02
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭酸ガス含有水、及び、多孔質ケイ酸カルシウム水和物であるケイ酸カルシウム含有材料からなる粒体を含む、藻類の増殖促進用の液体であって、上記炭酸ガス含有水の中の炭酸ガスの量が、500~3,000mg/リットルであり、
上記ケイ酸カルシウム含有材料からなる粒体が、1~4mmの範囲内の粒度を有する粒体を50質量%以上の割合で含むものであり、上記炭酸ガス含有水に対する上記ケイ酸カルシウム含有材料からなる粒体の量が、8~100g/リットルである藻類の増殖促進用の液体を用いた、藻類の増殖方法であって、
藻類の生長可能な水と、藻類を、貯水可能な収容手段に収容して、藻類増殖部を形成させる藻類増殖部形成工程と、
上記藻類の生長可能な水を補充するための補充水、及び、ケイ酸カルシウム含有材料からなる粒体を、貯水可能な収容手段に収容して、補充水収容部を形成させ、上記補充水収容部に、炭酸ガスを5体積%以上の割合で含む気体を供給して、炭酸ガスの量が500~3,000mg/リットルである炭酸ガス含有水を得る炭酸ガス含有水調製工程と、
上記炭酸ガス含有水調製工程で得た上記炭酸ガス含有水を、上記藻類増殖部形成工程で形成した上記藻類増殖部に供給する炭酸ガス含有水供給工程、を含むことを特徴とする藻類の増殖方法。
【請求項2】
上記炭酸ガス含有水調製工程において、上記ケイ酸カルシウム含有材料からなる粒体の量を調整することで、上記炭酸ガス含有水中の炭酸ガスの量が所望の量となるように調整する請求項1に記載の藻類の増殖方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、藻類の増殖促進用の液体、及び藻類の増殖方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エビ等の水棲生物の養殖において、養殖地や養殖槽等で繁茂する珪藻等の藻類は、水棲生物の餌等として利用されている。
珪藻の増殖を促進することができる培養液として、特許文献1には、水、及び、ケイ酸カルシウム水和物を主成分として含む粉粒状のケイ酸質材料を含み、かつ、上記ケイ酸質材料の量が、水100質量部当たり0.001~2質量部であることを特徴とする珪藻の増殖促進用の培養液が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-167538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
藻類は、光合成を行う際に、水中に溶解した炭酸ガス(二酸化炭素)を利用している。水中に炭酸ガスを溶解させる方法として、連続的に炭酸ガスを水中に送り込む方法が知られている。しかし、該方法の場合、水のpHが酸性になることで、炭酸ガスの溶解量が小さくなったり、藻類の生長阻害が起こるという問題がある。
また、水中に炭酸ガスを溶解させる他の方法として、水に炭酸塩を添加する方法が知られている。しかし、該方法の場合、水のpHが強アルカリ性になるため、藻類や養殖の対象となる水棲生物に適する生長環境にするために、水のpHを調整する必要があるという問題がある。
本発明の目的は、炭酸ガスの量が大きくかつpHが中性領域内で安定している藻類の増殖促進用の液体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、炭酸ガスの量が500mg/リットル以上である炭酸ガス含有水、及び、ケイ酸カルシウム含有材料からなる粒体を含む、藻類の増殖促進用の液体によれば、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の[1]~[4]を提供するものである。
[1] 炭酸ガス含有水、及び、ケイ酸カルシウム含有材料からなる粒体を含む、藻類の増殖促進用の液体であって、上記炭酸ガス含有水の中の炭酸ガスの量が、500mg/リットル以上であることを特徴とする藻類の増殖促進用の液体。
[2] 上記ケイ酸カルシウム含有材料が、多孔質ケイ酸カルシウム水和物である前記[1]に記載の藻類の増殖促進用の液体。
[3] 上記ケイ酸カルシウム含有材料からなる粒体が、1~4mmの範囲内の粒度を有する粒体を50質量%以上の割合で含むものであり、かつ、上記炭酸ガス含有水に対する上記ケイ酸カルシウム含有材料からなる粒体の量が、1g/リットル以上である前記[1]又は[2]に記載の藻類の増殖促進用の液体。
[4] 前記[1]~[3]のいずれかに記載の藻類の増殖促進用の液体を用いた、藻類の増殖方法であって、藻類の生長可能な水と、藻類を、貯水可能な収容手段に収容して、藻類増殖部を形成させる藻類増殖部形成工程と、上記藻類の生長可能な水を補充するための補充水、及び、ケイ酸カルシウム含有材料からなる粒体を、貯水可能な収容手段に収容して、補充水収容部を形成させ、上記補充水収容部に、炭酸ガスを供給して、炭酸ガスの量が500mg/リットル以上である炭酸ガス含有水を得る炭酸ガス含有水調製工程と、上記炭酸ガス含有水調製工程で得た上記炭酸ガス含有水を、上記藻類増殖部形成工程で形成した上記藻類増殖部に供給する炭酸ガス含有水供給工程、を含むことを特徴とする藻類の増殖方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明の藻類の増殖促進用の液体は、液体中の炭酸ガスの量が大きく、液体のpHが中性領域内で安定していることから、上記液体によれば、藻類の増殖を促進することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の藻類の増殖促進用の液体は、炭酸ガス含有水、及び、ケイ酸カルシウム含有材料からなる粒体を含む、藻類の増殖促進用の液体であって、炭酸ガス含有水の中の炭酸ガスの量が、500mg/リットル以上であるものである。
本発明における増殖促進の対象である藻類とは、海域、汽水域、淡水域を問わず広く生息する藻類である。中でも、珪酸質の殻を有する単細胞の真核藻類である珪藻は、水圏生態系における基礎生産者であり、水圏生物の栄養源となる最も重要な植物プランクトンであるため、魚などの生長には重要な生物である。また、珪藻は、生物(特に、動物)の成長に必要な酸素を、水中に溶解した炭酸ガス(二酸化炭素)を利用して、光合成により作り出すという重要な役割も担っている。
【0008】
炭酸ガス含有水とは、炭酸ガス(二酸化炭素)を含む水である。
炭酸ガス含有水中の炭酸ガスの量は、500mg/リットル以上、好ましくは550mg/リットル以上、より好ましくは600mg/リットル以上、さらに好ましくは700mg/リットル以上、さらに好ましくは800mg/リットル以上、さらに好ましくは1,000mg/リットル以上、特に好ましくは1,200mg/リットル以上である。上記量が500mg/リットル未満であると、藻類の増殖を促進する効果が小さくなる。上記量の上限値は、製造の容易性等の観点から、好ましくは3,000mg/リットル、より好ましくは2,800mg/リットル、特に好ましくは2,500mg/リットルである。
【0009】
炭酸ガス含有水は、通常、水に、炭酸ガス(二酸化炭素)を供給すること(後述の炭酸ガス含有水調製工程参照)によって得られたものである。
上記水としては、藻類の生長が可能な水であれば特に限定されるものではなく、淡水、汽水、又は海水である。また、上記水として、自然界に存在する海水、河川水、又は湖沼水等を用いてもよい。
【0010】
ケイ酸カルシウム含有材料とは、ケイ酸カルシウム水和物等のケイ酸とカルシウムを含む化合物を含有する材料である。
ケイ酸カルシウム含有材料の存在下で、水(藻類の生長可能な淡水、海水等)に炭酸ガスを供給することで、水中の炭酸ガスの量をより多くし、かつ、水のpHを中性領域内で安定させる(例えば、pH6.0~8.0の範囲内にする)ことができる。また、水中において、ケイ酸カルシウム含有材料は、該材料に含まれているケイ酸及びカルシウムを溶出する。ケイ酸及びカルシウムは藻類(特に、珪藻)の増殖や生長に重要な成分であるため、ケイ酸及びカルシウムが水中に溶出されることで、藻類(特に、珪藻)の生長をより安定させて、増殖をより促進させることができる。
【0011】
ケイ酸とカルシウムを含む化合物の例としては、トバモライト、ゾノトライト、CSHゲル、フォシャジャイト、ジャイロライト、ヒレブランダイト、及びウォラストナイト等が挙げられる。
トバモライトとは、結晶性のケイ酸カルシウム水和物であり、Ca・(Si18)・4HO(板状の形態)、Ca・(Si18)(板状の形態)、Ca・(Si18)・8HO(繊維状の形態)等の化学組成を有するものである。
ゾノトライトとは、結晶性のケイ酸カルシウム水和物であり、Ca・(Si17)・(OH)(繊維状の形態)等の化学組成を有するものである。
CSHゲルとは、αCaO・βSiO・γHO(ただし、α/β=0.7~2.3、γ/β=1.2~2.7である。)の化学組成を有するものである。具体的には、3CaO・2SiO・3HOの化学組成を有するケイ酸カルシウム水和物等が挙げられる。
フォシャジャイトとは、Ca(SiO)3(OH)等の化学組成を有するものである。
ジャイロライトとは、(NaCa)Ca14(Si23Al)O60(OH)・14HO等の化学組成を有するものである。
ヒレブランダイトとは、CaSiO(OH)等の化学組成を有するものである。
ウォラストナイトとは、CaO・SiO(繊維状又は柱状の形態)等の化学組成を有するものである。
ケイ酸カルシウム含有材料は、上述した化合物を単独で含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0012】
また、ケイ酸カルシウム含有材料として、トバモライトを主成分とする軽量気泡コンクリート(ALC)や、ゾノトライトを含む保温材等の、ケイ酸カルシウムを含む建築材料(特に、端材や廃材)を用いてもよい。
中でも、入手の容易性および経済性の観点から、トバモライトを主成分とする軽量気泡コンクリート(ALC)を用いることが好ましい。また、廃棄物の利用促進の観点から、軽量気泡コンクリートの製造工程や建設現場で発生する軽量気泡コンクリートの端材を用いることが、より好ましい。
【0013】
ここで、軽量気泡コンクリートとは、トバモライト、および、未反応の珪石からなるものであり、かつ、80体積%程度の空隙率を有するものである。ここで、空隙率とは、コンクリートの全体積中の、空隙の体積の合計の割合をいう。
軽量気泡コンクリート中のトバモライトの割合は、軽量気泡コンクリートの内部の空隙部分を除く固相の全体を100体積%として、65~80体積%である。
軽量気泡コンクリートは、例えば、珪石粉末、セメント、生石灰粉末、発泡剤(例えば、アルミニウム粉末)、水等を含む原料(例えば、これらの混合物からなる硬化体)をオートクレーブ養生することによって得ることができる。
【0014】
また、ケイ酸カルシウム含有材料は多孔質であることが好ましい。ケイ酸カルシウム含有材料が多孔質である場合、該材料を水中に添加した際に、該材料の多孔質部分に存在する空気が、水中に連行されることによって、水中の溶存酸素量の低下を防ぐことができる。
【0015】
本発明で用いるケイ酸カルシウム含有材料からなる粒体の粒度は、より多くのケイ酸を水中に溶出させる観点から、好ましくは6mm以下、より好ましくは5mm以下、特に好ましくは4mm以下である。該粒度の下限値は、粉砕に要するエネルギー削減の観点や、ケイ酸カルシウム含有材料の流出や水面への浮き上がりを防ぐ観点から、好ましくは0.01mm、より好ましくは0.05mm、特に好ましくは0.1mmである。
ケイ酸カルシウム含有材料からなる粒体の粒度分布は、より多くのケイ酸を水中に溶出させる観点から、好ましくは1~4mm範囲内の粒度を有する粒体を50質量%以上(好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上)の割合で含むものである。
なお、本明細書中、粒度の値は、篩の目開き寸法に対応する値である。
【0016】
炭酸ガス含有水に対するケイ酸カルシウム含有材料からなる粒体の量は、好ましくは1g/リットル以上、より好ましくは5g/リットル以上、さらに好ましくは8g/リットル以上、さらに好ましくは20g/リットル以上、特に好ましくは40g/リットル以上である。上記量の上限値は、材料にかかるコストの観点から、好ましくは100g/リットル、より好ましくは80g/リットル、特に好ましくは70g/リットルである。
【0017】
本発明の藻類の増殖促進用の液体によれば、炭酸ガス含有水中の炭酸ガスの量をより大きくすることができる。また、炭酸ガス含有水中の炭酸ガスの量が大きくなっても、上記液体のpHを安定化させることができる。
上記液体のpHは、藻類の種類によっても異なるが、藻類の増殖をより促進する観点から、好ましくは6.0~8.0、より好ましくは6.2~7.8、さらに好ましくは6.3~7.7、特に好ましくは6.4~7.6である。
【0018】
本発明の藻類の増殖促進用の液体を用いた、藻類の増殖方法の例としては、藻類の生長可能な水と、藻類を、貯水可能な収容手段に収容して、藻類増殖部を形成させる藻類増殖部形成工程と、藻類の生長可能な水を補充するための補充水、及び、ケイ酸カルシウム含有材料からなる粒体を、貯水可能な収容手段に収容して、補充水収容部を形成させ、該補充水収容部に、炭酸ガスを供給して、炭酸ガスの量が500mg/リットル以上である炭酸ガス含有水を得る炭酸ガス含有水調製工程と、炭酸ガス含有水調製工程で得た炭酸ガス含有水を、藻類増殖部形成工程で形成した藻類増殖部に供給する炭酸ガス含有水供給工程を含む方法が挙げられる。
【0019】
炭酸ガス含有水調製工程において、補充水収容部に炭酸ガスを供給する方法としては、例えば、上記補充水収容部内に設置された炭酸ガス供給手段(例えば、炭酸ガスを供給するための排気管等)を用いて、上記収容手段に収容された上記補充水中に炭酸ガスを吹き込む方法等が挙げられる。得られる炭酸ガス含有水中の炭酸ガスの量を多くしたり、処理効率の向上等の観点から、上記吹き込みは加圧下で行ってもよい。
炭酸ガスを供給する際に、炭酸ガスのみからなる気体を供給してもよいが、入手の容易性等の観点から、通常、炭酸ガスを、好ましくは2体積%以上、より好ましくは4体積%以上、さらに好ましくは5体積%以上、さらに好ましくは20体積%以上、さらに好ましくは40体積%以上、さらに好ましくは60体積%以上、特に好ましくは80体積%以上の割合で含む気体を供給してもよい。該割合が5体積%以上であれば、より短時間で炭酸ガス含有水を得ることができる。
炭酸ガスを含む気体の例としては、セメント製造工程において発生した排ガス(炭酸ガス濃度:約20体積%)、または、該排ガスからの分離回収ガス(炭酸ガス濃度:約100体積%)等が挙げられる。
【0020】
また、藻類増殖部に、ケイ酸カルシウム含有材料からなる粒体を収容してもよい。
また、収容手段に補充水と共に収容された、ケイ酸カルシウム含有材料からなる粒体の量と、炭酸ガス供給後の水(炭酸ガス含有水)中の炭酸ガスの量は正の相関関係にある。このため、炭酸ガス含有水調製工程において、収容手段に収容される、ケイ酸カルシウム含有材料からなる粒体の量を調整することで、炭酸ガス含有水中の炭酸ガスの量が所望の量となるように調整してもよい。
【0021】
また、本発明の藻類の増殖促進用の液体を用いた藻類の増殖方法の他の例としては、藻類の生長可能な水と、藻類と、ケイ酸カルシウム含有材料からなる粒体を、貯水可能な収容手段に収容した藻類増殖部において、上記水に炭酸ガスを供給して、上記水中の炭酸ガスの量を500mg/リットル以上に維持しながら、藻類を生育する方法が挙げられる。
【実施例
【0022】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1~3]
蒸留水1リットルに、Sigma社製の海塩30gを添加して、人工海水を得た後、ケイ酸カルシウム含有材料からなる粒体(表1~3中、「ケイ酸カルシウム」と示す。)として、表1~3に示す量の軽量気泡コンクリート(ALC)を粉砕した粒体(1~4mmの範囲内の粒度を有する粒体を95質量%以上の割合で含むもの)、を加えて、炭酸ガス供給前の藻類の増殖促進用の液体を得た。
上記液体に、炭酸ガス(二酸化炭素)の濃度が6体積%である気体を、エアポンプを用いて、0.5リットル/分間の量で供給した。炭酸ガス供給前(表1~3中、「0」と示す。)、1時間後、3時間後、6時間後、24時間後、48時間後の藻類の増殖促進用の液体のpH、炭酸ガスの量、及び、ケイ素の量を測定した。なお、炭酸ガスの測定は、東亜DKK社製のポータブル炭酸ガス濃度計を用いて行い、ケイ素の測定は、ICP発光分析を用いて行った。
[比較例1]
ケイ酸カルシウム含有材料からなる粒体を使用しない以外は、実施例1と同様にして、藻類の増殖促進用の液体に炭酸ガスを供給し、液体のpH、及び、炭酸ガスの量を測定した。
結果を表1~3に示す。
【0023】
【表1】
【0024】
【表2】
【0025】
【表3】
【0026】
表1から、実施例1~3における、炭酸ガス供給後1~48時間後の、藻類の増殖促進用の液体のpHは6.23~7.21であり、中性領域内で安定しているのに対して、比較例1(ケイ酸カルシウム含有材料を使用しないもの)における、pHは5.85~6.03であり、pHが酸性側に小さくなっていることがわかる。
また、表2から、炭酸ガス含有水中の炭酸ガスの量は、実施例1では6時間経過後、実施例2では3時間経過後、実施例3では1時間経過後に、500mg/リットル以上になっており、その後、時間の経過に伴って、炭酸ガスの量は大きくなっていることがわかる。
一方、比較例1(ケイ酸カルシウム含有材料を使用しないもの)では、炭酸ガス含有水中の炭酸ガスの量は、210~275mg/リットルであり、6時間経過時をピークとして、その後、上記量は小さくなっていることかわかる。
また、表3から、実施例1~3において、液体中のケイ素の量が大きくなっている(すなわち、液体中にケイ酸が溶出している。)ことから、本発明の藻類の増殖促進用の液体によれば、藻類(特に、珪藻)の生長を増殖し得ることがわかる。