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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-10
(45)【発行日】2024-07-19
(54)【発明の名称】遺伝子発現促進用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9789 20170101AFI20240711BHJP
   A61K 36/746 20060101ALI20240711BHJP
   A61K 36/752 20060101ALI20240711BHJP
   A61P 17/16 20060101ALI20240711BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
A61K8/9789
A61K36/746
A61K36/752
A61P17/16
A61P43/00 121
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020089375
(22)【出願日】2020-05-22
(65)【公開番号】P2021183571
(43)【公開日】2021-12-02
【審査請求日】2021-08-02
【審判番号】
【審判請求日】2022-12-20
(73)【特許権者】
【識別番号】595048544
【氏名又は名称】ちふれホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149032
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 敏明
(72)【発明者】
【氏名】川名 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】武智 貴之
(72)【発明者】
【氏名】加藤 亜希子
【合議体】
【審判長】井上 典之
【審判官】瀬良 聡機
【審判官】冨永 保
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第111066927(CN,A)
【文献】特開2010-90093(JP,A)
【文献】特開2016-222558(JP,A)
【文献】国際公開第2019/078370(WO,A1)
【文献】特開2011-190185(JP,A)
【文献】特開2008-7412(JP,A)
【文献】特開2019-52126(JP,A)
【文献】ID:6450283、Mintel GNPD、2019年4月、成分、商品説明、訴求内容
【文献】ID:7298599、Mintel GNPD、2020年2月、成分、商品説明、訴求内容
【文献】ID:6017119、Mintel GNPD、2018年10月、成分、商品説明、訴求内容
【文献】ID:1702109、Mintel GNPD、2011年12月、成分、商品説明、訴求内容
【文献】ID:2306061、Mintel GNPD、2014年2月、成分、商品説明、訴求内容
【文献】ID:6691391、Mintel GNPD、2019年7月、成分、商品説明、訴求内容
【文献】ID:1075502、Mintel GNPD、2009年4月、成分、商品説明、訴求内容
【文献】ID:1701886、Mintel GNPD、2011年12月、成分、商品説明、訴求内容
【文献】ID:5372077、Mintel GNPD、2018年1月、成分、商品説明、訴求内容
【文献】ID:6254231、Mintel GNPD、2019年1月、成分、商品説明、訴求内容
【文献】ID:1797527、Mintel GNPD、2012年5月、成分、商品説明、訴求内容
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K8/00-8/99
A61Q1/00-90/00
MINTEL GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヤエヤマアオキの果実抽出物及びマンダリンオレンジ果皮抽出物であるチンピエキスを含む、トランスグルタミナーゼ-1遺伝子発現促進用組成物。
【請求項2】
前記トランスグルタミナーゼ-1は、角化細胞のトランスグルタミナーゼ-1である、請求項1に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として肌のキメを整えることが可能である、美容のための組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
肌のキメとは、肌の表面にある皮溝と呼ばれる細かい溝の部分と、皮溝に囲まれた、三角形状及び四角形状の皮丘と呼ばれる盛り上がった部分とで構成される。「肌のキメが整っている」状態の肌では、皮溝及び皮丘が鮮明かつ均質に見られる。
【0003】
表皮では、最下層にあたる基底層において日々新しい細胞が生まれ、少しずつ形を変えながら有棘層、顆粒層、角層へ押し上げられて、最終的には古くなった細胞が垢として表皮表面から剥がれ落ちる。これが表皮のターンオーバーであり、健康な表皮は約28日の周期でターンオーバーが繰り返される。
【0004】
このターンオーバーが正常に起こらずに、新しい細胞が生まれなくなると、肌のキメに乱れが生じ得る。そして、肌のキメの乱れは、肌のハリ、弾力、ツヤなどの見た目の印象に悪影響を及ぼす。
【0005】
また、表皮の正常なターンオーバーが恒常的に繰り返されることにより、角層保湿機能が維持される。角層保湿機能は角層バリアによるバリア機能と、角層細胞内にある、アミノ酸及びその誘導体、有機酸、ミネラルなどの水溶性の低分子物質といった天然保湿因子(natural moisturizing factor;NMF)などによる水分保持機能とに大別できる。角層バリアは、角化細胞(keratinocyte;cornified cell)から分化した角層細胞(corneocyte)と、角層細胞の間を埋める細胞間脂質(角層細胞間脂質)とから主として構成される。細胞間脂質は、主要な構成成分がセラミドであり、規則正しく配置されたラメラ構造を呈する。セラミドは、表皮細胞の分化過程において、セリンパルミトイルトランスフェラーゼなどによる数種類の酵素反応を経て合成される。
【0006】
角層細胞の細胞膜は厚く、その内側には、周辺帯ともよばれるコーニファイドエンベロープ(cornified cell envelope;CE)という裏打ち構造がある。CEを構成するタンパク質は物理的及び化学的刺激に対して非常に安定であり、細胞膜を補強する役割を果たす。また、CEの外側にはリピッドエンベロープ(corneocyte-bound lipid envelope;CLE)がある。CLEは、その外側に細胞間脂質のラメラ構造を構築する足場として機能する。このように角層細胞は、細胞膜内側にあるCE、さらにはその外側にあるCLE及び細胞間脂質を介して、互いの細胞とともに膜状構造を呈し、角層バリアが構築される。角層バリアは、外部からの異物の侵入を防ぐとともに、体内の水分の蒸散を防ぐバリア機能を発揮し、生体内部を保護する。
【0007】
表皮の正常なターンオーバーが繰り返されると、基底層における角化細胞が有棘層、顆粒層、角層へと順に押し上げられ、角層バリアを担うタンパク質を発現及び産生し、それによりCEをはじめとする構造体が形成され、これら細胞及び構造体によって角層バリアが構築される。また、角層バリアが構築されるのと並行して、プロフィラグリンの分解によりNMFの産生などが行われる。その結果として、角層における水分量の低下が抑制され、細胞は正常な大きさ及び形状の細胞を維持し、ハリ、弾力、ツヤのあるキメの整った肌が得られる。
【0008】
表皮の組織構造及び肌質を維持及び改善することに寄与し得る原料として、種々のものが知られている。例えば、「ノニ果汁」としても知られているヤエヤマアオキ果汁は、CEの形成に関与しているインボルクリン及びトランスグルタミナーゼ-1の産生促進作用があることが知られている(特許文献1を参照)。また、「チンピエキス」としても知られているマンダリンオレンジの果皮抽出物は、角層を透明にする化粧料の有効成分として有用であることが知られている(特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特許第5860579号
【文献】特許第6268148号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1及び2に記載のノニ果汁及びチンピエキスは、それら単独では、肌のキメを整える作用が十分ではない。また、肌のキメを整える作用が優れている有効成分はあまり知られていない。
【0011】
そこで、本発明は、優れた肌のキメを整える作用を有する組成物を提供することを、発明が解決しようとする課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記の課題を解決しようとして、数百種類ある美容成分を含む原料の中から、まずは90種類の候補原料を選抜し、次いでこの中から医薬部外品に対応可能な42種類の原料を選抜した。さらに、これらについて鋭意検討を進めた結果、ヒトのin vivo試験で実績のある24種類の原料に絞り、次いで肌のキメに改善する可能性があるものとして16種類の原料を選抜し、最終的には表皮に有益なものとして8種類の原料を選定するに至った。
【0013】
この選定した8種類の原料について、単独の効果及び組み合わせの効果を試行錯誤したところ、ノニ果汁及びチンピエキスの両方を含む組成物は、角化細胞における角層保湿機能を担うタンパク質の発現及び産生を促進し、角層バリアの一端を担うCEの成熟化を促進することで、表皮の正常な構造及びターンオーバーを誘導し得ることを本発明者らは見出した。
【0014】
そして、驚くべきことに、ノニ果汁及びチンピエキスの両方を含む組成物は、実際にヒトの皮膚に適用した場合、角層の水分量及び細胞の形態を維持するように働き、肌のキメを整え、さらに肌のハリ、弾力、化粧ノリ、ツヤなどに好影響を与えることを見出した。
【0015】
そして、これらの知見を基にして、本発明者らは、遂に、本発明の課題を解決するものとして、ヤエヤマアオキの果実抽出物及び柑橘類の果皮抽出物を含む組成物を創作することに成功した。本発明は、これらの本発明者らによって初めて認められた知見及び成功例に基づき完成された発明である。
【0016】
したがって、本発明の一態様によれば、以下の組成物が提供される。
[1]ヤエヤマアオキの果実抽出物及び柑橘類の果皮抽出物を含む、美容用組成物。
[2]ヤエヤマアオキの果実抽出物及び柑橘類の果皮抽出物を含む、皮膚外用組成物。
[3]ヤエヤマアオキの果実抽出物及び柑橘類の果皮抽出物を含む、セリンパルミトイルトランスフェラーゼ、フィラグリン、ヒアルロン酸合成酵素3、インボルクリン、ロリクリン、トランスグルタミナーゼ-1、クローディン-1、オクルディン及びアクアポリン3からなる群から選ばれる少なくとも1種のタンパク質の遺伝子発現促進用組成物。
[4]前記タンパク質は、角化細胞内のタンパク質である、[3]に記載の組成物。
[5]ヤエヤマアオキの果実抽出物及び柑橘類の果皮抽出物を含む、コーニファイドエンベロープ形成促進用組成物。
[6]ヤエヤマアオキの果実抽出物及び柑橘類の果皮抽出物を含む、角層保湿機能改善用組成物。
[7]ヤエヤマアオキの果実抽出物及び柑橘類の果皮抽出物を含む、肌のキメ改善用組成物。
[8]前記柑橘類の果皮抽出物は、チンピエキスである、[1]~[7]のいずれか1項に記載の組成物。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一態様の組成物によれば、角化細胞における角層保湿機能を担うタンパク質の発現及び産生を促進し、CEの成熟化を促進することができる。これらを通じて、本発明の一態様の組成物によれば、使用者の表皮の正常な角層バリア及びターンオーバーを誘導し、肌のキメを整えることが可能である。
【0018】
また、本発明の一態様の組成物は、ヤエヤマアオキの果実抽出物及び柑橘類の果皮抽出物が化粧品原料として人体への使用実績が豊富であることから、使用者に日常的かつ安全に利用することができる。
【0019】
本発明の一態様である組成物は、利用態様に応じて、広く汎用的に利用することが期待される。例えば、本発明の一態様である組成物は、化粧水、美容液、乳液、クリームなどの態様をとることにより、スキンケア化粧品として利用することが期待される。また、例えば、本発明の一態様である組成物は、肌質維持効果、肌質改善効果、保湿効果、細胞保護効果、抗老化効果(アンチエイジング)、美白効果などの生理的な美容効果、及び/又は「肌を整える」効果、「肌のキメを整える」効果、「皮膚をすこやかに保つ」効果、「肌荒れを防ぐ」効果、「肌をひきしめる」効果、「皮膚にうるおいを与える」効果、「皮膚の水分を補い保つ」効果、「皮膚の柔軟性を保つ」効果、「皮膚を保護する」効果、「皮膚の乾燥を防ぐ」効果、「肌にはりを与える」効果、「肌にツヤを与える」効果を有する、化粧料として利用することが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、コーニファイドエンベロープ(CE)の生成過程を模式的に表した図である。
図2図2は、実施例に記載されているとおりの、CE未成熟度の測定結果を表した図である。
図3図3は、実施例に記載されているとおりの、角層水分量の変化量及び変化率を評価した図である。
図4図4は、実施例に記載されているとおりの、角層細胞の撮影写真である。
図5図5は、実施例に記載されているとおりの、肌のキメの経時的な変化を評価した図である。
図6図6は、実施例に記載されているとおりの、肌のキメを観察した撮影写真である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一態様の組成物の詳細について説明するが、本発明の技術的範囲は本項目の事項によってのみに限定されるものではなく、本発明はその目的を達成する限りにおいて種々の態様をとり得る。
【0022】
本明細書における各用語は、別段の定めがない限り、当業者により通常用いられている意味で使用され、不当に限定的な意味を有するものとして解釈されるべきではない。また、本明細書においてなされている理論や推測は、本発明者らのこれまでの知見や経験によってなされたものであることから、本発明の技術的範囲はこのような理論や推測のみによって拘泥されるものではない。
【0023】
「組成物」は、通常用いられている意味のものとして特に限定されないが、例えば、2種以上の物質が組み合わさってなる物であり、具体的には、有効成分と別の物質とが組み合わさってなるもの、有効成分の2種以上が組み合わさってなるものなどが挙げられ、より具体的には、有効成分の1種以上と固形成分又は溶媒成分の1種以上とが組み合わさってなる固形組成物及び液性組成物などが挙げられる。
「及び/又は」との用語は、列記した複数の関連項目のいずれか1つ、又は2つ以上の任意の組み合わせ若しくは全ての組み合わせを意味する。
「含有量」は、濃度と同義であり、組成物の全体量に対する成分の量の割合を意味する。ただし、成分の含有量の総量は、100%を超えることはない。本明細書では、別段の定めがない限り、含有量の単位は「質量%(wt%)」を意味する。
数値範囲の「~」は、本明細書において、その前後の数値を含む範囲であり、例えば、「0質量%~100質量%」は、0質量%以上であり、かつ、100質量%以下である範囲を意味する。
【0024】
「保湿機能因子」は、角化細胞における角層バリアを担うタンパク質、及び/又は天然保湿因子などの水分保持を担うタンパク質を意味し、具体的にはセリンパルミトイルトランスフェラーゼ、フィラグリン、ヒアルロン酸合成酵素3、インボルクリン、ロリクリン、トランスグルタミナーゼ-1、クローディン-1、オクルディン及びアクアポリン3のいずれか1種、2種、3種、4種、5種、6種、7種、8種又は9種全てのタンパク質をいう。
「遺伝子発現促進作用」は、遺伝子の発現量の増加を促進する作用、遺伝子産物(タンパク質)の翻訳量の増加を促進する作用、及び遺伝子産物の産生量の増加を促進する作用のうち少なくともいずれか1つの作用をいう。
「コーニファイドエンベロープ形成促進作用」は、コーニファイドエンベロープの形成を促進する作用、及び/又は形成されたコーニファイドエンベロープの維持が阻害されることを抑制する作用を意味する。
「角層保湿機能改善作用」は、角層の水分量及び/又は細胞面積が低下することを抑制する作用を意味する。
「肌のキメ改善作用」は、皮溝及び皮丘が鮮明に確認できる作用を意味する。
保湿機能因子の遺伝子発現促進作用、コーニファイドエンベロープ形成促進作用、角層保湿機能改善作用及び肌のキメ改善作用を総称して「有効作用」とよぶ。有効作用は、これらの作用のいずれか1種、2種、3種又は4種全ての作用をいう。
【0025】
本発明の一態様の組成物は、美容、好ましくは肌の美容のために用いられる、ヤエヤマアオキの果実抽出物及び柑橘類の果皮抽出物を有効成分として含有する。本発明の一態様の組成物の具体例は、皮膚外用組成物である。
【0026】
ヤエヤマアオキの果実抽出物は、ヤエヤマアオキの果実に含まれる成分を含む。ヤエヤマアオキ(Morinda citrifolia)は、ノニともよばれる、アカネ科(Rubiaceae)の植物である。ヤエヤマアオキは、インドネシア、太平洋諸島、オーストラリア、フィリピン、台湾、中国、インドなどに分布しており、日本では沖縄県、小笠原諸島などに分布しており、これらの地域から容易に入手可能である。
【0027】
ヤエヤマアオキ果実の抽出部位は特に限定されず、例えば、全果、果肉、果皮及び種などが挙げられるが、アントラキノン類、アルカロイド類、テルペン類、フラボノイド類などの生理活性成分を多く含む果肉を含む部位であることが好ましく、果汁であることがより好ましい。ヤエヤマアオキ果汁は、抽出原料として使用してもよいし、そのまま抽出物として使用してもよい。
【0028】
ヤエヤマアオキの果実抽出物は、ヤエヤマアオキ果実を常法の抽出処理に供して得たヤエヤマアオキの果実抽出物であってもよいし、市販のヤエヤマアオキの果実抽出物であってもよく、特に限定されない。
【0029】
ヤエヤマアオキの果実抽出物を得る方法としては、例えば、特許文献1に記載の方法などが挙げられる。ヤエヤマアオキの果実抽出物を得る方法の具体例としては、ヤエヤマアオキ果実を圧搾して果汁を抽出して、果汁としてヤエヤマアオキの果実抽出物を得る方法;得られた果汁を凍結乾燥して、凍結乾燥物としてヤエヤマアオキの果実抽出物を得る方法;ヤエヤマアオキ果実を含水エタノールなどの抽出溶媒に浸漬して、40℃~90℃にて30分間~4時間で穏やかに撹拌し、次いで得られた抽出液をろ過及び減圧乾燥に供して、濃縮乾燥物としてヤエヤマアオキの果実抽出物を得る方法などが挙げられる。
【0030】
市販のヤエヤマアオキの果実抽出物としては、例えば、丸善製薬社より「和ism(登録商標)<ノニ果汁>」(ヤエヤマアオキ果汁 20.0wt%、1,3-ブチレングリコール 50.0wt%、水 30.0wt%)として販売されている。
【0031】
ヤエヤマアオキの果実抽出物の含有量は、有効作用が認められる程度の量であれば特に限定されず、例えば、組成物の形態及び使用態様、期待する作用の程度などによって適宜設定することができるが、本発明の一態様の組成物を皮膚外用組成物として用いる場合は、果汁として、好ましくは0.01質量%~10質量%であり、より好ましくは0.05質量%~5質量%であり、より好ましくは約0.2質量%である。例えば、ヤエヤマアオキの果実抽出物として「和ism(登録商標)<ノニ果汁>」を用いる場合、「和ism(登録商標)<ノニ果汁>」を1質量%で含む組成物は、ヤエヤマアオキの果実抽出物を0.2質量%で含むことになる。
【0032】
柑橘類の果皮抽出物は、柑橘類の果皮に含まれる成分を含む。柑橘類としては、例えば、マンダリンオレンジ、ウンシュウミカン、タチバナ、コウジ(柑橘類)、大津四号、カラマンシー、甘平、紀州ミカン、桜島ミカン、藤中みかん、ポンカンなどのミカン類;キノット、ジャッファ・オレンジ、ジョッパ、ネーブルオレンジ、バレンシアオレンジ、福原オレンジ、ブラッドオレンジ、ベルガモットなどのオレンジ類;オランジェロ、グレープフルーツなどのグレープフルーツ類;カボス、清岡橙、コブミカン、三宝柑、シークヮーサー、シトロン、スダチ、ダイダイ、新姫、ブッシュカン、ゆうこう、柚柑、ユズ、ライム、レモンなどの香酸柑橘類;カクテルフルーツ、カワノナツダイダイ、黄蜜柑、ジャバラ、湘南ゴールド、スウィーティー、夏ミカン、八朔(ハッサク)、はるか、媛小春、日向夏などの雑柑類;安芸の輝き(デコポン)、伊予柑、愛媛果試第28号、清見、佐賀果試34号(デコポン)、師恩の恵、シラヌヒ(デコポン)、せとか、せとみ、大将季(デコポン)、タンカン、はるみ、肥の豊(デコポン)、マーコット、麗紅などのタンゴール類;アグリフルーツ、サマーフレッシュ、スイートスプリング、セミノール、タンジェロ、ミネオラなどのタンジェロ類;安政柑、河内晩柑、晩白柚、ブンタン(ザボン)などのブンタン類;カラタチなどのカラタチ属;長葉金柑、長実金柑、寧波金柑、福州金柑、香港金柑、丸実金柑などのキンカン属などが挙げられるが、好ましくはミカン類であり、より好ましくはマンダリンオレンジ(Citrus reticulata)、ウンシュウミカン(C.unshiu)、タチバナ(C.tachibana)、コウジ(C.leiocarpa)などであり、さらに好ましくはマンダリンオレンジ及びウンシュウミカンである。柑橘類は上記したものを単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよく、上記具体例として挙げた柑橘類の交配種であってもよい。
【0033】
柑橘類の果皮抽出物は、柑橘類の果皮を、生のまま又は乾燥したものを、任意に粉砕した後、抽出溶媒で抽出した物である。柑橘類の果皮は、柑橘類の成熟した果実から採取した果皮であることが好ましい。マンダリンオレンジ及びウンシュウミカンの成熟した橙赤色の果実から採取した果皮を乾燥したものは「チンピ」とよばれ、チンピの抽出物は「チンピエキス」とよばれる。柑橘類の果皮抽出物はチンピエキスであることが好ましい。
【0034】
柑橘類の果皮抽出物は、柑橘類果皮を常法の抽出処理に供して得た柑橘類の果皮抽出物であってもよいし、市販の柑橘類の果皮抽出物であってもよく、特に限定されない。
【0035】
柑橘類の果皮抽出物を得る方法としては、例えば、特許文献2に記載の方法などが挙げられる。柑橘類の果皮抽出物を得る方法の具体例としては、柑橘類果皮の乾燥物を粉砕し、次いで水を用いて、25℃~90℃、2時間~10時間の抽出処理に供し、次いでろ過することにより、抽出液として柑橘類の果皮抽出物を得る方法;柑橘類果皮の乾燥物を粉砕し、次いで1,3-ブチレングリコール、エタノール、プロピレングリコールなどの有機溶媒を含む含水溶媒を用いて、室温(約20℃)にて、2日間~10日間の抽出処理に供し、次いでろ過することにより、抽出液として柑橘類の果皮抽出物を得る方法などが挙げられる。
【0036】
市販の柑橘類の果皮抽出物としては、例えば、一丸ファルコス社より「マンダリンクリア」(チンピエキス 3.0wt%、1,3-ブチレングリコール 67.9wt%、水 29.1wt%)として販売されているものや、丸善製薬社より「チンピ抽出液-J」(チンピエキス 6.26wt%、エタノール 46.87wt%、水 46.87wt%)として販売されているものなどがある。
【0037】
柑橘類の果皮抽出物の含有量は、有効作用が認められる程度の量であれば特に限定されず、例えば、組成物の形態及び使用態様、期待する作用の程度などによって適宜設定することができるが、本発明の一態様の組成物を皮膚外用組成物として用いる場合は、乾燥質量として、好ましくは0.0001質量%~5質量%であり、より好ましくは0.01質量%~1質量%であり、より好ましくは約0.03質量%である。例えば、柑橘類の果皮抽出物として「マンダリンクリア」を用いる場合、「マンダリンクリア」を1質量%で含む組成物は、柑橘類の果皮抽出物を0.03質量%で含むことになる。
【0038】
本発明の一態様の組成物は、ヤエヤマアオキの果実抽出物及び柑橘類の果皮抽出物を含むことによって、保湿機能因子の遺伝子発現促進作用、コーニファイドエンベロープ形成促進作用、角層保湿機能改善作用及び肌のキメ改善作用からなる群から選ばれる少なくとも1種の有効作用を発揮し得る。そして、本発明の一態様の組成物は、有効作用を有することにより、代表的には保湿機能因子の遺伝子発現促進用組成物、コーニファイドエンベロープ形成促進用組成物、角層保湿機能改善用組成物及び肌のキメ改善用組成物の態様をとり、さらにはこれらの応用として細胞保護用組成物、肌質維持用組成物、肌質改善用組成物などの態様をとり得る。本発明の別の一態様は、使用個体にヤエヤマアオキの果実抽出物及び柑橘類の果皮抽出物を適用して、肌のキメを改善する方法である。
【0039】
後述する実施例に示される事実から導き得る事項は以下のとおりである。
ヤエヤマアオキの果実抽出物及び柑橘類の果皮抽出物を含む組成物を適用した場合、角化細胞内における、保湿機能因子であるインボルクリン、ロリクリン、トランスグルタミナーゼ-1、セリンパルミトイルトランスフェラーゼ、フィラグリン、ヒアルロン酸合成酵素3、クローディン-1、オクルディン及びアクアポリン3をコードする9遺伝子の発現量は促進される。
【0040】
上記遺伝子がコードするタンパク質のうち、インボルクリン、ロリクリン及びトランスグルタミナーゼ-1はコーニファイドエンベロープの形成に関与する。そして、これらをコードする遺伝子の発現量が増加することに関連して、ヤエヤマアオキの果実抽出物及び柑橘類の果皮抽出物を含む組成物を角層に適用した場合、コーニファイドエンベロープの形成は促進する。
【0041】
また、上記遺伝子がコードするタンパク質のうち、セリンパルミトイルトランスフェラーゼは細胞間脂質、フィラグリン及びヒアルロン酸合成酵素3は水分保持機能、クローディン-1及びオクルディンはタイトジャンクション、アクアポリン3は水チャネルの形成及び機能にそれぞれ関与する。そして、これらをコードする遺伝子の発現量が増加することに関連して、ヤエヤマアオキの果実抽出物及び柑橘類の果皮抽出物を含む組成物を適用した皮膚における角層は、水分量の低下が抑制し、細胞面積の減少が抑制する。
【0042】
これらの結果を統合すると、ヤエヤマアオキの果実抽出物及び柑橘類の果皮抽出物を含む組成物を適用した皮膚では、保湿機能因子の遺伝子の発現量が増加し、コーニファイドエンベロープを含む角層保湿機能の構築を担う構造体の形成が促進し、もって表皮の正常なターンオーバーが繰り返されて、角層保湿機能が構築する。最終的には、ヤエヤマアオキの果実抽出物及び柑橘類の果皮抽出物を含む組成物を適用した使用個体は、キメが整った肌が得られ、ハリ、弾力、ツヤのある肌を実感できる。
【0043】
本発明の一態様の組成物は、有効作用の程度については特に限定されないが、例えば、ヤエヤマアオキの果実抽出物及び柑橘類の果皮抽出物の両方を含まない組成物と比べて、同一条件で測定した場合に、有効作用が認められる程度の作用であるが、ヤエヤマアオキの果実抽出物及び柑橘類の果皮抽出物のいずれか一方を含む組成物と比べて、同一条件で測定した場合に、有効作用が認められる程度の作用であることが好ましい。
【0044】
本発明の一態様の組成物が有する有効作用は、後述の実施例に記載される方法によって評価する。それぞれの方法の概要は以下のとおりである。なお、「測定すること」には、定量的に確認すること及び定性的に観察することの両方が含まれる。
【0045】
保湿機能因子の遺伝子発現促進作用は、ヤエヤマアオキの果実抽出物及び柑橘類の果皮抽出物を含むKBMを適用した正常ヒト新生児表皮角化細胞(NHEK)における保湿機能因子の遺伝子発現量(mRNA量)を測定することにより評価する。
【0046】
コーニファイドエンベロープ形成促進作用は、ヤエヤマアオキの果実抽出物及び柑橘類の果皮抽出物を含む組成物を、ヒトの顔面頬部より採取した角層に適用し、次いで抗インボルクリン抗体、抗インボルクリン抗体に対する緑色蛍光標識化抗体及びナイルレッドを用いて染色して、緑色蛍光発色及び赤色発色を測定することにより評価する。
【0047】
角層保湿機能改善作用は、ヤエヤマアオキの果実抽出物及び柑橘類の果皮抽出物を含む組成物を、ヒトの顔面頬部に8週間適用して、次いで適用前(0週間;0W)、適用後2週間(2W)、適用後4週間(4W)及び適用後8週間(8W)に皮膚計測器を用いて角層水分量を測定すること、及び/又は、0W及び8Wに適用部位から角層細胞を採取しデジタルマイクロスコープを用いて角層細胞面積を測定することにより評価する。
【0048】
肌のキメ改善作用は、ヤエヤマアオキの果実抽出物及び柑橘類の果皮抽出物を含む組成物を、ヒトの顔面頬部に4週間適用して、次いで0W、2W及び4Wに適用部位に対してマイクロスコープを用いて観察し、肌のキメのグレードを測定することにより評価する。
【0049】
本発明の一態様の組成物の使用個体については特に限定されず、例えば、使用個体は動物、中でも哺乳類が挙げられ、哺乳類としてはヒト、イヌ、ネコ、ウシ、ウマなどが挙げられ、これらの中でもヒトであることが好ましい。
【0050】
本発明の一態様の組成物の1回の使用量、1日の使用量、使用期間、使用間隔などの用法及び用量は特に限定されず、使用態様、使用個体の状態などに応じて適宜設定され得る。1日の使用量は、例えば、本発明の一態様の組成物がローションである場合、0.1g以上であり、好ましくは0.2g以上であり、より好ましくは0.4g以上であり、さらに好ましくは0.6g以上である。使用間隔は、例えば、1日に1回、2回、3回又は複数回を、一定期間、すなわち1日以上、好ましくは1週間以上、より好ましくは2週間以上、さらに好ましくは1ヶ月以上にわたって継続的に適用することなどが挙げられる。本発明の一態様の組成物の適用は、毎日行うことが好ましいが、期間中継続的に適用する限り、本発明の一態様の組成物を毎日適用しなくてもよい。
【0051】
本発明の一態様の組成物を皮膚外用組成物として用いる場合は、予めヤエヤマアオキの果実抽出物及び柑橘類の果皮抽出物を水溶性の溶剤に溶解し、次いで所望の含有量になるように添加することにより、液状の組成物とすることができる。
【0052】
本発明の一態様の組成物は、それ自体として、又は他の成分とともに含有することにより、非経口用又は経口用の化粧品、医薬部外品、飲食品、医薬品、動物飼料などのための組成物の形態をとり得るが、有効作用を発揮する対象部位に直接的に適用できることから、非経口用組成物であることが好ましく、化粧品及び医薬部外品のための組成物であることがより好ましい。したがって、本発明の具体的な一態様は、ヤエヤマアオキの果実抽出物及び柑橘類の果皮抽出物を有効成分として含む、化粧品用組成物又は医薬部外品用組成物である。ただし、インナーコスメのために、本発明の一態様の組成物を、経口用の美容用組成物として用いてもよい。
【0053】
化粧品用組成物は、皮膚に適用される態様であれば、その使用態様については特に限定されず、例えば、スキンケア化粧品、メイクアップ化粧品、フレグランス化粧品、ボディケア化粧品、オールインワン化粧品などが挙げられ、より具体的には化粧水、美容液、乳液、ローション、クリーム、ファンデーション、サンスクリーン、パック、BBクリーム、フェースパウダー、ハンドクリーム、クレンジング、洗顔料、化粧下地、コンシーラー、ほほ紅、アイシャドウ、アイライナー、アイブロー、リップ、マスカラ、口紅などが挙げられ、固形状、パウダー状、液状、ゲル状、スプレー状などの形態を取り得る。化粧品用組成物は、有効作用を示すことを通じて、細胞保護効果、肌質維持効果、肌質改善効果などの生理的な美容効果、及び/又は化粧品として認められている「肌を整える」効果、「肌のキメを整える」効果、「皮膚をすこやかに保つ」効果、「肌荒れを防ぐ」効果、「肌をひきしめる」効果、「皮膚にうるおいを与える」効果、「皮膚の水分を補い保つ」効果、「皮膚の柔軟性を保つ」効果、「皮膚を保護する」効果、「皮膚の乾燥を防ぐ」効果、「肌にはりを与える」効果、「肌にツヤを与える」効果を有する、化粧水、美容液、乳液、ローション及びクリームであることが好ましい。
【0054】
化粧品用組成物は、本発明の課題を解決し得る限り、ヤエヤマアオキの果実抽出物及び柑橘類の果皮抽出物に加えて、化粧品に通常用いられ得るその他の成分を含有してもよい。
【0055】
化粧品に通常用いられ得るその他の成分は特に限定されず、例えば、水や有機溶媒などの基剤、油性成分、保湿剤、清涼剤、防腐剤、キレート剤、pH調整剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤、増粘剤、乳化剤、可溶化剤、美白剤、ビタミン類、その他各種薬効成分、粉体、香料、色材などが挙げられる。化粧品に通常用いられ得るその他の成分の含有量は、本発明の課題解決を妨げない限り、当業者により適宜設定し得る。その他の成分のいくつかについて以下に列挙するが、これらはあくまでも例示であり、限定されるものではない。
【0056】
油性成分としては、例えば、ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、トリエチルヘキサノイン、パルミチン酸エチルヘキシル、パルミチン酸イソプロピル、テトライソステアリン酸ペンタエリスリチル、2-エチルヘキサン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、セバシン酸ジイソプロピル、テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、コハク酸ジエチルヘキシル、炭素数12~15のアルキルベンゾエートなどのエステル油;オクチルドデカノール、オレイルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、ヘキシルデカノール、2-デシルテトラデシノール、などの高級アルコール;ジメチコン、メチルシクロポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、高級アルコール変性シリコーン油などのシリコーン油;水添ポリイソブテン、流動パラフィン、軽質イソパラフィン、ワセリン、スクワラン、スクワレン、イソヘキサデカン、イソドデカンなどの直鎖及び分岐鎖の炭化水素油;ウンデシレン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、イソステアリン酸などの高級脂肪酸;液状ラノリンなどの動物油;フルオロポリエーテル、パーフルオロアルキルエーテルシリコーンなどのフッ素油;オリーブ油、ホホバ油、ラベンダー油、月見草油、アボガド油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、コムギ胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エゴマ油、大豆油、ピーナッツ油、チャ実油、カヤ種子油、コメヌカ油、コメ胚芽油などの天然油性成分などが挙げられ、これらの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。油性成分の含有量は、0質量%~40質量%程度が好ましい。
【0057】
保湿剤としては、例えば、グリセリン、ジグリセリン、トレハロース、ブチレングリコール(BG)、ジプロピレングリコール(DPG)、キシリトール、マルチトール、マルトース、ソルビトール、ブドウ糖、果糖、加水分解エラスチン、乳酸ナトリウム、シクロデキストリン、ピロリドンカルボン酸などが挙げられ、これらの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。保湿剤の含有量は、0質量%~15質量%程度が好ましい。
【0058】
清涼剤としては、例えば、エタノールなどの低級アルコール、L-メントール、カンフル、メントキシプロピルジオールなどが挙げられ、これらの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。清涼剤の含有量は、0質量%~10質量%程度が好ましい。
【0059】
防腐剤としては、例えば、プロピルパラベン、メチルパラベン、安息香酸、サリチル酸、石炭酸、ソルビン酸、パラクロロメタクレゾール、ヘキサクロロフェン、塩化ベンザルコニウム、塩化クロルヘキシジン、トリクロロカルバニリド、感光素、フェノキシエタノール、エチルヘキシルグリセリン、アルカンジオールなどが挙げられ、これらの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。防腐剤の含有量は、0質量%~5質量%程度が好ましい。
【0060】
キレート剤としては、例えば、アラニン、エデト酸2ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、フィチン酸ナトリウム、リン酸3ナトリウムなどが挙げられ、これらの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。キレート剤の含有量は、0質量%~1質量%程度が好ましい。
【0061】
pH調整剤としては、例えば、乳酸、クエン酸、グリコール酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸、リンゴ酸ナトリウム、エチドロン酸、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アルギニン、トリエタノールアミン、モノエタノールアミンなどが挙げられ、これらの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。pH調整剤の含有量は、0質量%~1質量%程度が好ましい。
【0062】
酸化防止剤としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、d-δ-トコフェロールなどのビタミンE及びその誘導体;チオタウリン、メマツヨイグサ抽出液、βカロチン、カテキン化合物、フラボノイド化合物、ポリフェノール化合物などが挙げられ、これらの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。酸化防止剤の含有量は、0質量%~1質量%程度が好ましい。
【0063】
増粘剤としては、例えば、水溶性高分子が挙げられ、具体的にはヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、アセチル化ヒアルロン酸、アセチル化ヒアルロン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム、フコイダン、チューベロース多糖体、キサンタンガムなどの水溶性多糖類;カラギーナン、アルギン酸などの天然高分子;クインスシード、チューベロースエキスなどの植物抽出物;カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルデンプンリン酸などの半合成高分子;カルボマー、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキル共重合体などのアクリル酸系ポリマーなどの合成高分子などが挙げられる。増粘剤は、これらの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。増粘剤の含有量は、0質量%~1質量%であることが好ましい。
【0064】
乳化剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤などが挙げられ、より具体的にはステアリン酸ソルビタン、ジイソステアリン酸ポリグリセリル-10、トリイソステアリン酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンセチルエーテル、自己乳化型モノステアリン酸グリセリル、モノミリスチン酸デカグリセリル、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、水素添加大豆リン脂質、ステアロイルグルタミン酸ナトリウム、モノステアリン酸ポリエチレングリコールなどが挙げられ、これらの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。乳化剤の含有量は、0質量%~5質量%程度が好ましい。
【0065】
可溶化剤としては、例えば、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンフィトステロール、ポリオキシエチレンコレステロールなどが挙げられ、これらの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。可溶化剤の含有量は、0質量%~5質量%程度が好ましい。
【0066】
化粧品用組成物には、ヤエヤマアオキの果実抽出物及び柑橘類の果皮抽出物以外の美肌用成分が含まれていてもよい。美肌用成分としては、例えば、リンゴポリフェノール、胎盤抽出液、グルタチオン、ユキノシタ抽出物、油溶性甘草エキス、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体、アルブチン、コウジ酸、トラネキサム酸、システイン、カミツレエキス、リノール酸、ルシノール、α-ヒドロキシ酸などの美白剤;ロイヤルゼリー、感光素、コレステロール誘導体、幼牛血液抽出液などの細胞賦活剤;肌荒れ改善剤;ノニル酸ワレニルアミド、ニコチン酸ベンジルエステル、ニコチン酸β-ブトキシエチルエステル、カプサイシン、ジンゲロン、カンタリスチンキ、イクタモール、カフェイン、α-ボルネオール、ニコチン酸トコフェロール、イノシトールヘキサニコチネート、シクランデレート、シンナリジン、トラゾリン、アセチルコリン、ベラパミル、セファランチン、γ-オリザノールなどの血行促進剤;酸化亜鉛などの皮膚収斂剤;イオウ、チアントロールなどの抗脂漏剤などが挙げられ、これらの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0067】
医薬部外品は、通常知られているとおりのものであれば特に限定されないが、例えば、人体に対する作用が緩和なものであり、医療機器ではなく、かつ、厚生労働大臣の指定するものということができ、具体的には育毛剤、染毛剤、ビタミン剤などが挙げられる。
【0068】
医薬部外品用組成物は、本発明の課題を解決し得る限り、ヤエヤマアオキの果実抽出物及び柑橘類の果皮抽出物に加えて、医薬部外品に通常用いられ得るその他の成分を含有し得る。その他の成分としては、前述の化粧品成分の他に、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、安定化剤、流動化剤、界面活性剤、着色剤、甘味剤、滑沢剤などの通常の医薬部外品の加工に使用される添加物などを挙げることができる。添加物の使用量は、本発明の課題の解決を妨げない限り特に限定されず、適宜設定され得る。
【0069】
本発明の一態様の組成物のその他の具体的態様は、薬用化粧品用組成物である。薬用化粧品は、医薬部外品に属す、いわゆる薬用化粧品をいう。薬用化粧品用組成物の使用態様、その他の成分の種類及び含有量などは、化粧品用組成物、医薬部外品用組成物と同様に、当業者により適宜設定し得る。
【0070】
本発明の一態様の組成物は、その製造方法について特に限定されず、例えば、化粧品、医薬部外品などの使用態様に応じて、当業者に知られる方法により、ヤエヤマアオキの果実抽出物及び柑橘類の果皮抽出物と任意にその他の成分とを混合することなどにより、製造することができる。
【0071】
本発明の一態様の組成物は、その使用方法について特に限定されず、例えば、化粧品、医薬部外品などの使用態様に応じて、通常使用される方法を採用することができる。
【0072】
本発明の一態様の組成物は、容器に詰めて密封した容器詰組成物とすることができる。容器は特に限定されないが、例えば、アルミなどの金属、紙、PE、PP、PET、PBT、PVCなどのプラスチック、及び/又はガラスなどを、単層又は積層(ラミネート)の状態で使用した、袋、パウチ、パック、箱、ボトル容器、チューブ容器、瓶、缶などの包装容器が挙げられる。容器詰組成物は、製造して得られた組成物を、分注、充填及び/又は個装して、それ自体で独立して、流通におかれて市販され得るものであることが好ましい。
【0073】
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではなく、本発明の課題を解決し得る限り、本発明は種々の態様をとることができる。
【実施例
【0074】
[例1.In vitro評価(mRNA発現促進作用)]
(1-1)評価方法
正常ヒト新生児表皮角化細胞(NHEK;「KK-4009」;KURABO社製)を正常ヒト表皮角化細胞増殖培地(KGM;「HuMedia KG2 KK-2150S」;KURABO社製)を用いて培養した後、トリプシン処理により細胞を回収した。KGMを用いて35mmシャーレに30×10cells/2mLずつ播き、37℃、5%CO下で一晩培養した。
【0075】
培養後、増殖因子を添加していない培地(KBM;「HuMedia KG2 KK-2350S」;KURABO社製)に交換した。24時間後に培養液を廃棄し、KBMでチンピエキス及びノニ果汁を下記表1に示す濃度になるように溶解して調製した被験試料1-1~1-8及びコントロールを各シャーレに2mLずつ添加し、37℃、5%CO下で24時間培養した。なお、チンピエキスにはマンダリンオレンジ果皮からエタノールを用いて抽出し、次いで凍結乾燥して溶媒を揮散したものを用いた。ノニ果汁には、「和ism(登録商標)<ノニ果汁>」(ヤエヤマアオキ果汁 20.0wt%、1,3-ブチレングリコール 50.0wt%、水 30.0wt%;丸善製薬社製)を凍結乾燥して溶媒を揮散させたものを用いた。
【0076】
【表1】
【0077】
培養後、培養液を廃棄し、ISOGEN II(Cat.no.311-07361;NIPPON GENE社製)を用いてtotal RNAを抽出し、それぞれのRNA 量を分光光度計(「Varioskan LUX」、Thermo Fisher社製)にて測定し、200ng/μLになるようにtotal RNA量を調整した。
【0078】
調整後のtotal RNAを鋳型とし、フィラグリン(FLG)、セリンパルミトイルトランスフェラーゼ(SPT)、アクアポリン3(AQP3)、ヒアルロン酸合成酵素3(HAS3)、ロリクリン(LOR)、インボルクリン(IVL)、トランスグルタミナーゼ-1(TGM-1)、クローディン-1(CLDN1)及びオクルディン(OCLN)の各遺伝子及び内部標準であるGAPDH遺伝子のmRNAの発現量を測定した。
【0079】
測定はリアルタイムPCR装置「Thermal Cycler DIce(登録商標) Real Time System III」(TaKaRa社製)を用いて、「PrimeScriptTM RT Master Mix(Perfect Real Time)」及び「TB Green(登録商標) Fast qPCR Mix」(ともにTaKaRa社製)によるリアルタイム2ステップRT-PCR反応により行った。
【0080】
各遺伝子のmRNA発現量は、GAPDH mRNAの発現量で補正し算出した。各遺伝子のmRNA発現促進率の計算方法は以下のとおりである。また、使用したプライマーセットを表2に示す。
mRNA発現促進率(%)=A/B×100
A:被験試料1-1~1-8添加時の補正値
B:被験試料無添加時(コントロール)の補正値
【0081】
【表2】
【0082】
(1-2)評価結果
各遺伝子のmRNA発現促進率の測定結果を表3に示す。また、表3の結果より、ノニ果汁、チンピエキス並びにノニ果汁及びチンピエキスについて、各遺伝子のmRNA発現促進効果の有無を評価してまとめたものを表4に示す。なお、表4において、「-」は発現抑制効果を、「+」は発現促進効果を、「++」は有意な発現促進効果を、「+-」は抑制及び促進のいずれの効果か判断がつかなかったことを示す。
【0083】
【表3】
【0084】
【表4】
【0085】
表3及び表4が示すとおり、ノニ果汁及びチンピエキスの両方を添加した場合、全ての遺伝子の発現量がコントロールに対して増加した。しかも、セリンパルミトイルトランスフェラーゼ、フィラグリン、ロリクリン及びクローディン-1については、ノニ果汁及びチンピエキスのそれぞれ単独添加では遺伝子発現促進効果が認められず、むしろいずれか一方の添加では抑制効果が認められた。また、インボルクリン、トランスグルタミナーゼ-1、オクルディン及びアクアポリン3については、ノニ果汁及びチンピエキスの両方を添加することにより、相加的というよりも、相乗的に遺伝子発現促進効果が認められた。これらの結果は、本発明者らによって初めて見出された驚くべき知見である。
【0086】
以上の結果より、ノニ果汁及びチンピエキスを含む組成物は、水分保持機能及びバリア機能に係る保湿機能因子の遺伝子の発現促進作用を有することがわかった。
【0087】
[例2.Ex vivo評価(角層コーニファイドエンベロープ成熟化促進作用)]
(2-1)試料採取方法
普段よりスキンケアをしていない健全な成人男性の顔面頬部より角層をテープストリッピングにより採取した。採取後、大きさを揃えたテープ上の角層を、蒸留水でチンピエキス(75μg/ml)及びノニ果汁(25μg/ml)を溶解して調製した被験試料及びコントロール(蒸留水)に浸し、23℃、1日間の条件で処理した。チンピエキス及びノニ果汁は例1と同じものを用いた。処理後、角層を以下のコーニファイドエンベロープ(CE)成熟度評価法により、CEの成熟度を測定した。
【0088】
(2-2)CE成熟度評価法
図1に示すとおり、CEは、角層細胞の辺縁にある疎水性の膜状構造体である。CEは、インボルクリン、ロリクリンなどのタンパク質が架橋及び不溶化して形成され、細胞間脂質とともに皮膚のバリア機能に寄与する。
【0089】
成熟したCEが形成されると、抗インボルクリン抗体はCEを透過できずに、細胞質内のインボルクリンと結合できない。それに対してCEが未成熟である場合は、抗インボルクリン抗体は細胞質内のインボルクリンと結合する。この場合、抗インボルクリン抗体に対する緑色蛍光標識化抗体を用いることにより、緑色蛍光が発色する。これとは逆に、疎水性染色剤を用いれば、成熟したCEは染色し、未成熟CEは染色しない。このことを利用して、以下の手順によりCE成熟度を評価した。
【0090】
角層が接着したテープを細切りにし、2ml遠心チューブに入れたdissociation buffer(2% SDS、20mmol/L dithiothretiol、5mmol/L EDTA、0.1mol/L Tris-HCl;pH8.5)に浸し100℃で10分間の加熱処理に供した。
【0091】
加熱後、テープを取り除いた遠心チューブを遠心分離(4,000×g、10分間)に供し、上清を廃棄した。次いで沈殿物に新しいdissociation bufferを加えて、前述の加熱処理及び遠心分離を合計4回繰り返して、可溶性物質を除去して得られた沈殿物をCEとした。
【0092】
CEに適当量のdissociation bufferを加えて分散し、スライドガラスに滴下して、風乾した。風乾後のスライドガラスを冷アセトン(-20℃、10分間)にて固定した。固定後のスライドガラスをPBSで水和した後に、3%BSA-PBSで希釈したマウス由来抗インボルクリン抗体(SIGMA社製、SY5)及びAlexaFluor488標識抗マウスIgG抗体(Invitrogen社製、Ex-Max495nm/Em-Max519nm)にて順次免疫染色した。
【0093】
免疫染色後のスライドガラスにNile red染色液(3μg/mL in 75% glycerol、SIGMA社製、Ex-Max552nm/Em-Max636nm)を数滴滴下して封入し、オールインワン蛍光顕微鏡(「BZ-X800」;キーエンス社製)にて観察及び写真撮影した。
【0094】
未熟CEはインボルクリン陽性で緑色蛍光(BZ-XフィルタGFP、Ex:470/40、Em:525/50)を発し、成熟CEはNile red陽性で赤色蛍光(BZ-XフィルタTexasRed、Ex:560/40、Em:630/75)を発する。未熟CE及び成熟CEの割合を画像解析ソフト「BZ-X800 Analyzer」(キーエンス社製)により算出した。CE未成熟度の計算方法は以下のとおりである。
CE未成熟度(%)=A/B×100
A:緑色蛍光の面積
B:全CE(緑色発光及び赤色発光)の面積
【0095】
(2-3)評価結果
チンピエキス及びノニ果汁を含む被験試料及びこれらを含まないコントロールのCE未成熟度の測定結果及び免疫染色撮影写真を図2に示す。図2に示すとおり、ノニ果汁及びチンピエキスを添加することにより、CEの未成熟度が有意に低下した。これらの結果より、ノニ果汁及びチンピエキスを含む組成物は、CEの成熟化を促進する、CE形成促進作用を有することがわかった。
【0096】
[例3.In vivo評価(長期適用による皮膚改善作用)]
(3-1)被験試料の適用方法
下記表5に示す成分を混合して、ローション状の被験試料及びコントロールを調製した。
【0097】
【表5】
【0098】
被験者である26歳~56歳の一般女性18名に対して、被験試料及びコントロールを適用した。なお、被験者は、普段からスキンケアをしており、敏感肌ではなく、肌のキメ、色、乾燥、ツヤ、透明感、ハリ及び化粧ノリのいずれかに問題を有する者とした。
【0099】
適用方法として、被験者に対して、1日2回(0.6g以上/日)、半顔右側に被験試料を塗布し、半顔左側にコントロールを塗布した。ただし、被験者には被験試料及びコントロールを知らせず、ブラインドテストとして実施した。
【0100】
適用期間は8週間として、適用前(0週間;0W)、適用後2週間目(2W)、4週間目(4W)及び8週間目(8W)に、両頬について角層水分量を測定及び評価した。角層細胞面積については、0W及び8Wに測定及び評価した。キメについては、0W、2W及び4Wに測定及び評価した。
【0101】
各測定は、被験者がメークをしている場合はメークを落とした後、全顔を洗浄し、流水(38℃)ですすぎ、水分をやさしく丁寧に拭いた。20℃~22℃、湿度40%~60%に温湿度を設定した肌測定室内にて20分間馴化(待機)した後に実施した。測定部位は、頬の黒目の下あたりの鼻の横の頬で、平らな箇所とした。測定範囲は1.5cm×1.5cmの範囲内とした。
【0102】
(3-2)角層水分量
測定部位について、皮膚計測器「Corneometer CM825」(COURAGE-KHAZAKA electronic GmbH社製)を用いて、製造業者の指示に従って角層水分量を測定した。1か所につき、5秒毎に範囲内を移動させながら4点にて測定し、その平均値を測定結果とした。測定結果について、対応のあるt検定にて統計解析を行った。ただし、被験者18名のうち、被験試料の適用量の少なかった1名を除き、17名について評価した。
【0103】
(3-3)角層細胞面積
測定部位よりテープストリッピングにて角層細胞を2層分採取した。2層目を採取したテープの一部を塩化ビニル製透明プレート「ユニサンデー(エンビシート)」(品番EB231-1、300mm×200mm、厚み1mmタイプ;Hikari社製)に貼付し、室温で一晩ヘキサン(特級グレード;関東化学社製)に浸して角層細胞をプレートに転写した。転写された角層細胞をデジタルマイクロスコープ「VHX-6000」(キーエンス社製)を用いて観察及び撮影した。ただし、被験者18名のうち、角層細胞をプレートに転写できなかった4名を除き、14名について評価した。
【0104】
(3-4)キメ
測定部位にマイクロスコープ「DG-3X」(スカラ社製)をあて、スコープが水平になり、かつスコープの面が皮膚にぴったりと接触するように被験者の頭の向きを調節し、1箇所につき2回撮影した。撮影した画像について、3名の事前に訓練を受けた社内評価者が目視で肌のキメのグレードを以下の基準(悪い:1←→良い:5)により評価した。
評価基準 5:皮溝と皮丘が鮮明に確認でき、均質である
4:皮溝と皮丘が鮮明に確認できるが、均質でない
3:皮溝と皮丘が確認できるが、鮮明でない
2:皮溝と皮丘がほぼ確認できない
1:皮溝と皮丘が全く確認できない
【0105】
(3-5)評価結果
測定した角層水分量について、0Wの測定結果からの水分量の変化量(減少量)及び変化率をまとめたものを図3に示す。図3に示すとおり、ノニ果汁及びチンピエキスを含む被験試料を使用することにより、角層水分量の減少は抑制された。この結果より、ノニ果汁及びチンピエキスを含む組成物は、角層水分量の減少を抑制する作用を有することがわかった。
【0106】
角層細胞の撮影写真を図4に示す。図4に示すとおり、0Wではともに丸状に近い形状の細胞が見られたところ、8Wではコントロール群はほとんど変化がみられなかったが、被験試料群は多角形に近い形状に変化していた。これらの結果より、ノニ果汁及びチンピエキスを含む組成物は、角層細胞の面積減少を抑制する作用を有することがわかった。
【0107】
角層水分量及び角層細胞面積の測定結果を総合すると、ノニ果汁及びチンピエキスを含む組成物は、角層のターンオーバーを改善して角層保湿機能を維持又は改善する作用を有することがわかった。
【0108】
測定したキメについて、0Wのキメのグレードから、2W及び4Wのキメのグレードが向上した者、変わらなかった者及び低下した者の数をまとめたものを図5に示す。また、0Wのキメのグレードから、2W及び4Wのキメのグレードが向上した者について、肌のキメを観察した撮影写真を図6に示す。コントロール群と比べて、被験試料群は、2W及び4Wにおいてキメのグレードが向上した人数が多かった。この結果より、ノニ果汁及びチンピエキスを含む組成物は、肌のキメ改善作用を有することがわかった。
【0109】
[例4.アンケート評価]
In vivo評価の被験者18名に対し、0W及び8Wにアンケート調査を行った。各項目について、0Wの肌状態を3とし、8Wの肌状態を5段階(悪い:1←→良い:5)で評価し、結果を集計して平均値を算出した。また、算出した平均値から、以下の基準により評価した。結果を表6に示す。
評価=(8Wの被験試料群の平均値)-(8Wのコントロール群の平均値)
「○」:評価≧0.05
「△」:-0.05<評価<0.05
「×」:評価≦-0.05
【0110】
【表6】
【0111】
表6に示すとおり、キメに関連する「ハリ・弾力」について、被験試料群は、コントロール群に比べて評価が高かった。また、評価した10項目のうち、9項目で被験試料群は、コントロール群に比べて評価が高く、又は同程度であった。この結果より、ノニ果汁及びチンピエキスを含む組成物は、使用者が実感できる肌のキメ改善作用を有することがわかった。
【0112】
以上の結果より、ノニ果汁及びチンピエキスを含む組成物は、セリンパルミトイルトランスフェラーゼ、フィラグリン、ヒアルロン酸合成酵素3、インボルクリン、ロリクリン、トランスグルタミナーゼ-1、クローディン-1、オクルディン、アクアポリン3といった水分保持機能及びバリア機能に係る保湿機能因子の遺伝子の発現促進作用;コーニファイドエンベロープ(CE)形成促進作用;角層保湿機能改善作用;肌のキメ改善作用を有することがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明の一態様に係る組成物は、水分保持機能及びバリア機能に係る保湿機能因子の遺伝子の発現促進作用、コーニファイドエンベロープ形成促進作用、角層保湿機能改善作用及び/又は肌のキメ改善作用を通じて、細胞保護効果、肌質の維持効果及び改善効果を期待する、特にキメが整った肌を期待する使用個体の美容及び健康に資することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【配列表】
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