IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本サニパック株式会社の特許一覧

特許7519218ポリエチレン系樹脂組成物の製造方法、及びポリエチレン系包装材の製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-10
(45)【発行日】2024-07-19
(54)【発明の名称】ポリエチレン系樹脂組成物の製造方法、及びポリエチレン系包装材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/04 20060101AFI20240711BHJP
   B65D 30/02 20060101ALI20240711BHJP
   C08J 3/22 20060101ALI20240711BHJP
   C08K 3/26 20060101ALI20240711BHJP
   C08L 31/04 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
C08L23/04
B65D30/02
C08J3/22 CES
C08K3/26
C08L31/04 S
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020109337
(22)【出願日】2020-06-25
(65)【公開番号】P2022006831
(43)【公開日】2022-01-13
【審査請求日】2023-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】399010936
【氏名又は名称】日本サニパック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(72)【発明者】
【氏名】堀籠 良博
(72)【発明者】
【氏名】大崎 学
(72)【発明者】
【氏名】山本 圭輔
(72)【発明者】
【氏名】中川 康弘
【審査官】藤原 研司
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-206004(JP,A)
【文献】特開平07-196861(JP,A)
【文献】特開平07-206006(JP,A)
【文献】特開平09-227731(JP,A)
【文献】特開平08-311772(JP,A)
【文献】特表2019-513578(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D
B65F
C08J
C08K
C08L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレン系樹脂に炭酸カルシウムが配合されたポリエチレン系樹脂組成物の製造方法であって、
少なくとも、平均粒径が0.1~5.0μmである炭酸カルシウムとエチレン-酢酸ビニル樹脂とを含有するペレット状のEVA系マスターバッチと、平均粒径が0.1~5.0μmである炭酸カルシウムとエチレン-酢酸ビニル樹脂以外のポリエチレン系樹脂とを含有するPE系マスターバッチと、ポリエチレン系樹脂とを混合し、
前記ポリエチレン系樹脂組成物中の炭酸カルシウムの合計含有量に対する、前記EVA系マスターバッチ由来の炭酸カルシウムの割合を30質量%以上とする、ポリエチレン系樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
ペレット状のエチレン-酢酸ビニル樹脂と、炭酸カルシウムとを混合し、ペレット化して前記EVA系マスターバッチを得る、請求項に記載のポリエチレン系樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
粉末状のエチレン-酢酸ビニル樹脂と、炭酸カルシウムとを混合し、ペレット化して前記EVA系マスターバッチを得る、請求項に記載のポリエチレン系樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
前記ポリエチレン系樹脂組成物中の炭酸カルシウムの合計含有量を50~75質量%とする、請求項のいずれか一項に記載のポリエチレン系樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
請求項のいずれか一項に記載の製造方法によりポリエチレン系樹脂組成物を製造し、前記ポリエチレン系樹脂組成物を成形する、ポリエチレン系包装材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリエチレン系樹脂組成物の製造方法及びポリエチレン系包装材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレン系樹脂包装材は、ゴミ袋、レジ袋、ファッションバッグ等のほか、多くの用途で使用されている。近年、地球温暖化に伴い、二酸化炭素の発生量の削減が強く求められており、樹脂使用量を抑えることが重要である。樹脂使用量を低減する方法としては、樹脂に無機物を添加する方法が知られている。例えば、特許文献1~3には、炭酸カルシウムを樹脂に添加することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3366942号公報
【文献】特開2018-21121号公報
【文献】特許第2665843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1~3のように、炭酸カルシウムを添加した場合、炭酸カルシウムの含有量が多くなるほど樹脂組成物の成形性が低下し、また成形したフィルムの強度及び2次加工性(ヒートシール性)が低下する。
【0005】
本発明は、炭酸カルシウムが多量に添加されていても、優れた成形性、フィルム強度、及び2次加工性(ヒートシール性)を兼ね備えたポリエチレン系樹脂組成物、ポリエチレン系包装材、及びそれらの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、ポリエチレン系樹脂組成物において、EVA系マスターバッチ由来の炭酸カルシウムの割合と、その平均粒径を特定の範囲に制御することで、優れた成形性、フィルム強度、及び2次加工性(ヒートシール性)を兼ね備えることが可能であることを見出して本発明に至った。
【0007】
本発明は、以下の態様を有する。
[1]ポリエチレン系樹脂に炭酸カルシウムが配合されたポリエチレン系樹脂組成物であって、前記ポリエチレン系樹脂組成物中の炭酸カルシウムの少なくとも一部が、炭酸カルシウムとエチレン-酢酸ビニル樹脂とを含有するEVA系マスターバッチ由来の平均粒径が0.1~5.0μmである炭酸カルシウムであり、前記ポリエチレン系樹脂組成物中の炭酸カルシウムの合計含有量に対する、前記EVA系マスターバッチ由来の炭酸カルシウムの割合が30質量%以上である、ポリエチレン系樹脂組成物。
[2]前記ポリエチレン系樹脂組成物中の炭酸カルシウムの合計含有量が50~75質量%である、[1]に記載のポリエチレン系樹脂組成物。
[3][1]又は[2]に記載のポリエチレン系樹脂組成物が成形されたポリエチレン系包装材。
[4]ゴミ袋、レジ袋又はファッションバッグである、[3]に記載のポリエチレン系包装材。
[5]ポリエチレン系樹脂に炭酸カルシウムが配合されたポリエチレン系樹脂組成物の製造方法であって、少なくとも、平均粒径が0.1~5.0μmである炭酸カルシウムとエチレン-酢酸ビニル樹脂とを含有するペレット状のEVA系マスターバッチと、ポリエチレン系樹脂とを混合し、前記ポリエチレン系樹脂組成物中の炭酸カルシウムの合計含有量に対する、前記EVA系マスターバッチ由来の炭酸カルシウムの割合を30質量%以上とする、ポリエチレン系樹脂組成物の製造方法。
[6]ペレット状のエチレン-酢酸ビニル樹脂と、炭酸カルシウムとを混合し、ペレット化して前記EVA系マスターバッチを得る、[5]に記載のポリエチレン系樹脂組成物の製造方法。
[7]粉末状のエチレン-酢酸ビニル樹脂と、炭酸カルシウムとを混合し、ペレット化して前記EVA系マスターバッチを得る、[5]に記載のポリエチレン系樹脂組成物の製造方法。
[8]前記ポリエチレン系樹脂組成物中の炭酸カルシウムの合計含有量を50~75質量%とする、[5]~[7]のいずれかに記載のポリエチレン系樹脂組成物の製造方法。
[9][5]~[8]のいずれかに記載の製造方法によりポリエチレン系樹脂組成物を製造し、前記ポリエチレン系樹脂組成物を成形する、ポリエチレン系包装材の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、炭酸カルシウムが多量に添加されていても、優れた成形性、フィルム強度、及び2次加工性(ヒートシール性)を兼ね備えたポリエチレン系樹脂組成物、ポリエチレン系包装材、及びそれらの製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[ポリエチレン系樹脂組成物]
本発明のポリエチレン系樹脂組成物(以下、「PE系樹脂組成物」と記す。)は、ポリエチレン系樹脂(以下、「PE系樹脂」と記す。)に炭酸カルシウムが配合された樹脂組成物である。
【0010】
PE系樹脂としては、特に限定されず、例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、エチレン-酢酸ビニル樹脂(EVA)、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)、エチレン-プロピレン共重合体を例示できる。なかでも、フィルム成形後の柔軟性と硬さのバランスの点から、HDPE、LDPE、LLDPEが好ましく、HDPE、LLDPEがより好ましい。また、本発明のPE系樹脂組成物は、後述のようにEVA系マスターバッチを用いるため、少なくともEVAを含有する。PE系樹脂としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0011】
本発明のPE系樹脂組成物中のPE系樹脂の合計含有量は、PE系樹脂組成物の総質量に対して、20~80質量%が好ましく、25~50質量%がより好ましい。PE系樹脂組成物中のPE系樹脂の合計含有量が前記範囲の下限値以上であれば、十分なフィルム強度が得られやすい。PE系樹脂組成物中のPE系樹脂の合計含有量が前記範囲の上限値以下であれば、樹脂使用量の低減効果が高い。
【0012】
炭酸カルシウムとしては、石灰石を機械的に粉砕した、いわゆる重質炭酸カルシウムであってもよく、炭酸ガス化合法により得られる、いわゆる沈降性炭酸カルシウムであってもよい。炭酸カルシウムは、表面処理を施したものであってもよく、表面処理を施していないものであってもよい。炭酸カルシウムとしては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0013】
本発明のPE系樹脂組成物中の炭酸カルシウムの少なくとも一部は、炭酸カルシウムとEVAとを含有するEVA系マスターバッチ由来の炭酸カルシウムである。本発明のPE系樹脂組成物中の炭酸カルシウムは、全部がEVA系マスターバッチ由来の炭酸カルシウムであってもよく、一部がEVA系マスターバッチ由来の炭酸カルシウムであり、残部がEVA系マスターバッチ以外に配合された炭酸カルシウムであってもよい。
【0014】
EVA系マスターバッチ由来の炭酸カルシウムの平均粒径は、0.1~5.0μmである。炭酸カルシウムの平均粒径が前記範囲の上限値以下であれば、優れた成形性を確保でき、フィルム成形時に凝集や粒子自体の大きさに起因する穴、外観不良等の欠陥が生じにくい。また、成形したフィルムにおいて、フィルム強度及び2次加工性が両立される。炭酸カルシウムの平均粒径が前記範囲の下限値以上であれば、炭酸カルシウム自身の凝集が少ないマスターバッチを作製できる。炭酸カルシウムの平均粒径の上限は、好ましくは3.0μmであり、より好ましくは1.5μmである。炭酸カルシウムの平均粒径の下限は、好ましくは0.3μmであり、より好ましくは0.5μmである。
【0015】
なお、炭酸カルシウムの平均粒径は、空気透過法によって測定される。
EVA系マスターバッチ由来の炭酸カルシウムのトップカット粒径は、好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下である。EVA系マスターバッチ由来の炭酸カルシウムの45μm篩残渣は、0.01質量%以下であることが好ましい。トップカット粒径は、X線透過式粒度分布測定器によって測定される。45μm篩残渣は、JIS標準ふるいによって測定される。
【0016】
EVA系マスターバッチ以外に配合される炭酸カルシウムの平均粒径は、EVA系マスターバッチ由来の炭酸カルシウムと同様に、0.1~5.0μmが好ましく、0.3~3.0μmがより好ましく、0.5~1.5μmがさらに好ましい。
【0017】
EVA系マスターバッチのベース樹脂であるEVA中の酢酸ビニルに基づく構成単位(以下、「酢酸ビニル単位」と記す。)の割合は、EVAの全構成単位に対して、5~25モル%が好ましく、10~20モル%がより好ましい。酢酸ビニル単位の割合が前記範囲の上限値以下であれば、ペレット成形時にペレット同士が引っつきにくくなり、EVA系マスターバッチのペレットの保管性が良好になる。酢酸ビニル単位の割合が前記範囲の下限値以上であれば、安定したヒートシール強度が得られる。
EVAの製造方法は、特に限定されず、例えば、高圧重合法、気相法を例示できる。
【0018】
PE系樹脂組成物中の炭酸カルシウムの合計含有量に対する、EVA系マスターバッチ由来の炭酸カルシウムの割合は、30質量%以上である。これにより、成形性に優れたPE系樹脂組成物となり、また成形されるフィルムにおいてフィルム強度と2次加工性(ヒートシール性)を両立することができる。前記EVA系マスターバッチ由来の炭酸カルシウムの割合の下限は、好ましくは35質量%、より好ましくは50質量%である。前記EVA系マスターバッチ由来の炭酸カルシウムの割合の上限は、100質量%である。
【0019】
PE系樹脂組成物中の炭酸カルシウムの合計含有量は、PE系樹脂組成物の総質量に対して、20~80質量%が好ましく、50~75質量%がより好ましい。炭酸カルシウムの合計含有量が前記範囲の下限値以上であれば、樹脂使用量の低減効果が高い。炭酸カルシウムの合計含有量が前記範囲の上限値以下であれば、十分なフィルム強度が得られやすい。
【0020】
本発明のPE系樹脂組成物は、必要に応じて、PE系樹脂及び炭酸カルシウム以外の他の成分を含有していてもよい。他の成分としては、例えば、酸化防止剤、光安定剤、滑剤、分散剤、顔料、帯電防止剤、動物等の忌避剤等の添加剤を例示できる。他の成分は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
本発明のPE系樹脂組成物中の他の成分の含有量は、PE系樹脂組成物の総質量に対して、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましい。
【0021】
(製造方法)
以下、本発明のPE系樹脂組成物の製造方法について説明する。
本発明のPE系樹脂組成物の製造方法では、少なくとも、平均粒径が0.1~5.0μmである炭酸カルシウムとEVAとを含有するペレット状のEVA系マスターバッチと、PE系樹脂とを混合してPE系樹脂組成物を調製する。このとき、PE系樹脂組成物中の炭酸カルシウムの合計含有量に対する、EVA系マスターバッチ由来の炭酸カルシウムの割合を30質量%以上とする。EVA系マスターバッチ以外にも炭酸カルシウムを配合する場合は、EVA系マスターバッチ、炭酸カルシウム及びPE系樹脂を混合する。また、PE系樹脂組成物中の炭酸カルシウムの合計含有量は、前述の範囲を満たすように調節することが好ましい。
【0022】
EVA系マスターバッチ中の炭酸カルシウムの含有量は、EVA系マスターバッチの総質量に対して、50~90質量%が好ましく、60~85質量%がより好ましい。EVA系マスターバッチ中の炭酸カルシウムの含有量が前記範囲の下限値以上であれば、ベースとなるポリエチレン本来のフィルム強度や加工性に影響が出にくい。EVA系マスターバッチ中の炭酸カルシウムの含有量が前記範囲の上限値以下であれば、炭酸カルシウムの凝集が少ないマスターバッチを作製できる。
【0023】
EVA系マスターバッチ以外にも炭酸カルシウムを配合する場合、EVA系マスターバッチ以外の炭酸カルシウムとPE系樹脂は、それぞれ別々に用意したものをEVA系マスターバッチとの混合に用いてもよく、EVA以外のPE系樹脂をベース樹脂として炭酸カルシムと混合したPE系マスターバッチをEVA系マスターバッチとの混合に用いてもよい。
【0024】
EVA系マスターバッチ及びPE系樹脂を混合する方法としては、特に限定されず、例えば、単軸押出機、多軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダー等を例示できる。
EVA系マスターバッチ及びPE系樹脂の混合時の樹脂温度は、適宜調整でき、例えば、150~190℃とすることができる。
【0025】
EVA系マスターバッチは、例えば、ペレット状又は粉末状のEVAと、炭酸カルシウムとを混合し、ペレット化することで得られる。EVAと炭酸カルシウムとを混合する方法は、特に限定されず、例えば、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、リボンミキサー、タンブラーミキサー等の混合機を例示できる。EVA系マスターバッチをペレット化する方法は、特に限定されず、例えば、押出機からストランド状に押し出して所定の長さごとに切断する方法を例示できる。
EVA系マスターバッチ製造時の樹脂温度は、適宜調整でき、例えば、130~150℃とすることができる。
【0026】
[ポリエチレン系包装材]
本発明のポリエチレン系包装材(以下、「PE系包装材」と記す。)は、本発明のPE系樹脂組成物が成形されて得られる包装材である。本発明のPE系包装材の態様は、本発明のPE系樹脂組成物を用いる以外は、公知の態様を採用できる。
PE系包装材の用途としては、特に限定されず、例えば、ゴミ袋、レジ袋、ファッションバッグを例示できる。
【0027】
本発明のPE系包装材の製造方法は、本発明のPE系樹脂組成物を用いる以外は、公知の方法を採用できる。例えば、本発明のPE系樹脂組成物をフィルム状に成形し、ヒートシールによって製袋する方法を例示できる。フィルム状に成形する方法は、例えば、インフレーション成形、Tダイ押出成形等を例示できる。
【0028】
成形温度(押出温度)は、適宜調整でき、例えば、150~190℃とすることができる。
フィルムの厚さは、用途に応じて適宜設定すればよく、例えば、10~70μmとすることができる。
【0029】
以上説明したように、本発明では、PE系樹脂組成物中の炭酸カルシウムの少なくとも一部がEVA系マスターバッチ由来の平均粒径が特定の範囲の炭酸カルシウムであり、PE系樹脂組成物中の炭酸カルシウムの合計含有量に対するEVA系マスターバッチ由来の炭酸カルシウムの割合が30質量%以上である。これにより、樹脂使用量を低減する目的で炭酸カルシウムを多量に添加しても、優れた成形性が得られ、インフレーション成形、Tダイ押出成形等の通常の成形方法で安定して成形することができる。また、十分なフィルム強度が得られるため、袋に成形したときには重量物の包装運搬に耐えることができる。また、2次加工性にも優れるため、ヒートシールによる製袋も容易である。
【0030】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能であり、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【実施例
【0031】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の記載によっては限定されない。
【0032】
[製造例1]
炭酸カルシウム(ライトンBS-0、平均粒径1.0μm、備北粉化工業社製)79.9質量%、エチレン-酢酸ビニル樹脂(N8038、酢酸ビニル単位:18モル%、ペレット状、TPI POLENE社製)20.0質量%、及びシリコーン油(フェニルメチル系)0.1質量%をスーパーミキサーで5分間混合した後、2軸押出機によりストランド状に押出し、ペレット状に切断してEVA系マスターバッチ(MB-A)を得た。
【0033】
[製造例2]
炭酸カルシウム(ライトンBS-0、平均粒径1.0μm、備北粉化工業社製)80.0質量%、及びエチレン-酢酸ビニル樹脂(PES-410、酢酸ビニル単位:15モル%、粉末状、株式会社NUC製)20.0質量%をスーパーミキサーで5分間混合した後、2軸押出機によりストランド状に押出し、ペレット状に切断してEVA系マスターバッチ(MB-B)を得た。
【0034】
[製造例3]
炭酸カルシウムとしてSS#30(平均粒径:7.4μm、日東粉化工業社製)を使用した以外は、製造例2と同様の方法でEVA系マスターバッチ(MB-C)を製造した。
【0035】
[実施例1]
インフレーション成形機として、シリンダーの内径が55mm、スクリューのL/Dが28の押出機(プラコー社製)と、ダイス径100mmφ、リップ3mmの環状ダイを使用した。
MB-Aが25質量%、PE系マスターバッチ(商品名GRANIC422、炭酸カルシウムの平均粒径:1.0μm、炭酸カルシウムの含有量:80質量%、ベース樹脂:LLDPE、GCR社製)が45質量%、LLDPE(商品名FS153S、SCA社製)が30質量%となるように、それらを計量しながら押出機に投入してPE系樹脂組成物を調製しつつ、インフレーション成形にて厚さ30μm、折幅460mmのチューブ状のフィルムを成形した。押出温度は170℃とし、ブロー比は約3.0とした。次いで、製袋機(野崎工業製)によって長さ方向に600mm間隔でヒートシール後にカットして袋体を作製した。ヒートシール温度は、160℃~180℃とした。フィルム(PE系樹脂組成物)中の炭酸カルシウムの合計含有量は56質量%であり、そのうちMB-A由来の炭酸カルシウムの割合は36質量%であった。
【0036】
[実施例2~7]
ポリエチレン系樹脂組成物の組成を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして袋体を作製した。
【0037】
[比較例1~3]
ポリエチレン系樹脂組成物の組成を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして袋体を作製した。
【0038】
[成形性]
各例のフィルム成形時のチューブの安定性を確認し、以下の基準に従って成形性を評価した。
(評価基準)
〇:チューブが安定している。
△:多少不安定であるがチューブを連続成形できる。
×:不安定でチューブを成形できない。
【0039】
[フィルム強度]
各例で成形したフィルムを親指で突き刺し、突き刺した穴に力をかけたときの破れの広がりを確認して、以下の基準に従ってフィルム強度を評価した。
(評価基準)
〇:突き刺した穴から破れが広がらない。
△:突き刺した穴から破れが広がる。
×:容易に突き刺せる。
【0040】
[ヒートシール強度]
各例で得た袋体から、ヒートシール部を含むように外縁から袋の中央部に向かって帯状の試験片を切り出し、前記試験片のヒートシール部の両側を左右に引っ張ってヒートシール部の剥がれを確認して、以下の評価基準に従ってヒートシール強度を評価した。
〇:ヒートシール部が剥がれない。
△:ヒートシール部は剥がれないがシールのエッジが切れる。
×:ヒートシール部が剥がれる。
【0041】
各例のPE系樹脂組成物の組成、フィルム(ポリエチレン系樹脂組成物)中の炭酸カルシウムの合計含有量、及びEVA系マスターバッチ由来の炭酸カルシウムの割合、及び評価結果を表1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
ただし、表1中の略号は、以下の意味を示す。
HDPE:高密度ポリエチレン(商品名F00851、SABIC社製)
LLDPE:直鎖状低密度ポリエチレン(商品名FS153S、SCA社製)
GRANIC422:PE系マスターバッチ(炭酸カルシウム含有量:80質量%、ベース樹脂:LLDPE、GCR社製)
【0044】
表1に示すように、EVA系マスターバッチ由来の特定の平均粒径の炭酸カルシウムを特定の割合で含有するPE系樹脂組成物を用いた実施例1~7では、成形性、フィルムの強度、2次加工性がいずれも優れていた。
【0045】
一方、PE系樹脂組成物中の炭酸カルシウムの合計含有量に対するEVA系マスターバッチ由来の炭酸カルシウムの割合が低い比較例1では、成形性、フィルムの強度、2次加工性が劣っていた。EVA系マスターバッチ由来の炭酸カルシウムの平均粒径が大きい比較例2、及びEVA系マスターバッチを用いていない比較例3も、成形性、フィルムの強度、2次加工性が劣っていた。