(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-10
(45)【発行日】2024-07-19
(54)【発明の名称】ブース
(51)【国際特許分類】
E04H 1/12 20060101AFI20240711BHJP
【FI】
E04H1/12 302Z
(21)【出願番号】P 2020110330
(22)【出願日】2020-06-26
【審査請求日】2023-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000001351
【氏名又は名称】コクヨ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000108627
【氏名又は名称】タカノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085338
【氏名又は名称】赤澤 一博
(72)【発明者】
【氏名】村上 利造
(72)【発明者】
【氏名】日下 篤
(72)【発明者】
【氏名】松本 忍
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-020070(JP,A)
【文献】特開平11-247316(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0253920(US,A1)
【文献】特開昭48-088752(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/00-1/36
E04B 1/62-1/99
E04B 9/00-9/36
E04H 1/00-1/14
E04H 9/00-9/16
A47C 27/00-27/22
A47C 31/00-31/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部空間から隔離された内部空間を形成するブースであって、
前記内部空間に臨む構造物の中に、空気を方向転換させながら案内する空気流路を形成し、その空気流路の一端を前記外部空間に連通させるとともに、他端を前記内部空間に連通させて
おり、
前記構造物が、上面に座を有するボックス状の椅子であり、この椅子の中に前記空気流路が形成されているブース。
【請求項2】
前記空気流路の内壁面に吸音材が添設されている請求項1記載のブース。
【請求項3】
前記構造物が、空気を流通させる以外の機能をも有するものである請求項1又は2記載のブース。
【請求項4】
前記空気流路の一端を建築床に対向する底面に開口させている請求項1又は2記載のブース。
【請求項5】
前記空気流路の一端を建築天井に対向する頂面に開口させている請求項1又は2記載のブース。
【請求項6】
外部空間から隔離された内部空間を形成するブースであって、
前記内部空間に臨む構造物の中に、空気を方向転換させながら案内する空気流路を形成し、その空気流路の一端を前記外部空間に連通させるとともに、他端を前記内部空間に連通させており、
前記構造物が、ボックス状をなすテーブルであり、このテーブルの中に前記空気流路が形成されているブース。
【請求項7】
前記構造物が、二重壁構造をなす天井であり、この天井の中に前記空気流路が形成されている請求項5記載のブース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、執務や打ち合わせ等に使用されるブースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外部の騒音や人声の侵入を抑制して内部空間での集中度を高めることができるブースが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところが、この種のブースは、内部空間の換気を行う必要から、周壁やドア等に通気口を設けている。そのため、その通気口を通して外部の騒音等が直接内部空間内に侵入し易い(課題1)。
【0004】
また、周壁やドア等に通気口を設けると目立ち易く、通気口を通して内部の様子を外部から直接視認することも可能になる(課題2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、課題1、課題2を解消することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明に係るブースは、外部空間から隔離された内部空間を形成するブースであって、前記内部空間に臨む構造物の中に、空気を方向転換させながら案内する空気流路を形成し、その空気流路の一端を前記外部空間に連通させるとともに、他端を前記内部空間に連通させており、前記構造物が、上面に座を有するボックス状の椅子であり、この椅子の中に前記空気流路が形成されているものである。
【0008】
請求項2記載の発明に係るブースは、請求項1記載のものであって、前記空気流路の内壁面に吸音材が添設されているものである。
【0009】
請求項3記載の発明に係るブースは、請求項1又は2記載のものであって、前記構造物が、空気を流通させる以外の機能をも有するものである。
【0010】
請求項4記載の発明に係るブースは、請求項1又は2記載のものであって、前記空気流路の一端を建築床に対向する底面に開口させているものである。
【0011】
請求項5記載の発明に係るブースは、請求項1又は2記載のものであって、前記空気流路の一端を建築天井に対向する頂面に開口させているものである。
【0012】
請求項6記載の発明に係るブースは、外部空間から隔離された内部空間を形成するブースであって、前記内部空間に臨む構造物の中に、空気を方向転換させながら案内する空気流路を形成し、その空気流路の一端を前記外部空間に連通させるとともに、他端を前記内部空間に連通させており、前記構造物が、ボックス状をなすテーブルであり、このテーブルの中に前記空気流路が形成されているものである。
【0013】
請求項7記載の発明に係るブースは、請求項5記載のものであって、前記構造物が、二重壁構造をなす天井であり、この天井の中に前記空気流路が形成されているものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、通気口を通して外部の騒音等が直接内部空間内に侵入し易いという不具合の発生を抑制することができる。また、空気流路の存在を視認しにくくなり、通気口を通して内部の様子を外部から直接視認できるという不具合の発生を防止または抑制することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係るブースを示す斜視図。
【
図5】同実施形態に係るブースの底盤を示す分解斜視図。
【
図8】同実施形態に係るブースの側壁を示す分解斜視図。
【
図10】同実施形態に係るブースの天井を示す分解斜視図。
【
図15】本発明の他の実施形態に係るブースを示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態を
図1~
図14を参照して説明する。
【0017】
この実施形態は、本発明を2人用のブースBに適用した場合のものである。
【0018】
このブースBは、
図1~
図4に示すように、内部空間ISの下面側を塞ぐ底盤1と、内部空間ISの周囲を囲む周壁(前壁2、側壁3、背壁4)と、内部空間ISの上面側を閉塞する天井5とを備えたものであり、その内部空間ISの中央にテーブル6が配されているとともに、そのテーブル6を挟んで両側に椅子7が設けられている。
【0019】
底盤1は、
図4、
図5及び
図9に示すように、外郭を構成する例えば板金製のベース本体11と、このベース本体11の内面に剛結された補強材(左右に延びる横補強材12、前後に延びる横補強材13、及び縦補強材14)と、補強材12~14により補強されたベース本体11上に載設された床板15と、床板15上に敷設された敷物16とを具備してなる。なお、この実施形態の底盤1は、左底ユニットLと、中間底ユニットMと、右底ユニットNとに分断して運搬が可能であり、設置時に各底ユニットL、M、Nのベース本体11同士及び左右に延びる横補強材12同士をブラケット10等を介して接続することにより一体化される。すなわち、ベース本体11は、左底ユニットLに属するベース本体11(L)と、中間底ユニットMに属するベース本体11(M)と、右底ユニットNに属するベース本体11(N)とに分断されている。また、床板15は、左底ユニットL上に載置される1枚の床板15(L)と、概ね中間底ユニットM上に載置される2枚の床板15(M)と、右底ユニットN上に載置される1枚の床板15(N)とに分断されている。図中17は、底盤1を建築床Fに沿って移動させるためのキャスタ、18は移動後に底盤1の四隅の高さ位置を調整するためのアジャスタ、19は、高さ調整を終えた後に当該底盤1を建築床F上に固定するための固定具である。この固定具19は、この底盤1を図示しないアンカーボルトを介して建築床Fに固定するためのものである。
【0020】
周壁たる前壁2は、内部空間ISの前面を塞ぐもので、
図1、
図2、
図7及び
図9に示すように、前述した左床ユニットLに対応する幅寸法を有した左固定パネル21と、中間床ユニットMに対応する幅寸法を有したドアパネル22と、右床ユニットNに対応する幅寸法を有した右固定パネル23とを備えている。左右の固定パネル21、23は、枠体21a、23aにガラス等の透明板21b、23bをはめ込んだものである。ドアパネル22は、固定枠22aに蝶着されたドア縁枠22bと、このドア縁枠22bに嵌め込まれた透明板22cとを備えている。図中22dは蝶番、22eは取手である。
【0021】
周壁たる側壁3は、
図6~
図8に示すように、外側板31と、この外側板31の内面に添設された吸音材34と、この吸音材34の内面側に配設された内装用の吸音パネル35とを具備してなる。外側板31は、内部空間ISの側面全域を閉塞可能な面積を有するものである。外側板31は、例えば、板金製のもので、その内面には、前後方向に延びる複数本の補強材32と、上下方向に延びる例えば2本の補強材33とが、井桁状に交差させた状態で溶接等により剛結され補強されている。そして、これら補強材32、33により形成される格子状の空間に前述した吸音材34が配設されている。吸音材34は、吸音パネル35側の面に凹凸を有したもので、スラブウレタン等のクッション材により作られている。内装用の吸音パネル35は、例えば、木製の板状部材36と、この板状部材36の一面に添設したウレタン37と、このウレタン37を包持する非燃性の張地38とを備えてなるもので、吸音性が高く不燃性でありながら、外観も良い。非燃性の張地38とウレタン材37とは、ホットメルトにより接着されている。吸音パネル35は、上の吸音パネル35(U)と下の吸音パネル35(D)とに分断されている。下の吸音パネル35(D)は上の吸音パネル35(U)と比較して上下寸法が小さく設定されているが、構造は上の吸音パネル35(U)と同一である。なお、図中、34aは吸音材34の凹凸を有する面である。AGは吸音材34の凹凸を有する面34aと吸音パネル35の板状部材36との間に形成されたエアーギャップである。そして、36aは板状部材36のウレタン37が添接されている面と反対側の面に形成されたエアーギャップAGの容積を増大させるための凹陥部である。なお、板状部材36は、凹陥部36aのない比較的厚みのある(例えば15~17mm)板状のものであってもよい。この場合、吸音材34の凹凸を有する面34aと、吸音材34が板状部材36と接する部位との間にのみエアーギャップAGが形成される。
【0022】
周壁たる背壁4は、
図4及び
図7に示すように、左の側壁3の後縁を支持する図示しない支柱と中間支柱42との間に配設された左固定パネル41と、中間支柱42と右の側壁3の後縁を支持する図示しない支柱との間に配設された右固定パネル43とを備えてなる。
【0023】
天井5は、
図4、
図9~
図11及び
図14に示すように、外郭を構成する例えば板金製の天板本体51と、この天板本体51の内面に剛結された補強材(左右に延びる横補強材52、前後に延びる横補強材53、及び縦補強材54)と、補強材52、53、54により補強された天板本体51の下に配設された内装用の天井パネル56とを具備してなる。なお、この実施形態の天井5は、左天井ユニットPと、中間天井ユニットQと、右天井ユニットRとに分断して運搬が可能であり、組立時に各天井ユニットP、Q、Rの天井本体51同士及び左右に延びる横補強材52同士をブラケット55等を介して接続することにより一体化される。すなわち、天板本体51は、左天井ユニットPに属する天板本体51(P)と、中間天井ユニットQに属する天板本体51(Q)と、右天井ユニットRに属する天板本体51(R)とに分断されている。また、天井パネル56は、左天井ユニットPの下に配される天井パネル56(P)と、中間天井ユニットQの下に配される天井パネル56(Q)と、右天井ユニットRの下に配される天井パネル56(R)とに分断されている。そして、左右の天井ユニットP、Rの天板本体51(P)、51(R)には、例えば3台の換気扇57がそれぞれ設けられているとともに、中間天井ユニットQの天板本体51(Q)には、スプリンクラー58が装着されている。スプリンクラー58は、火災発生が検知された場合に消火用水を内部空間ISに噴射するためのもので、その噴射ノズル58aが中間の天井パネル56(Q)に設けられた開口56aを通して内部空間ISに臨ませてある。中間の天井パネル56(Q)には、内部空間IS内を照明するためのダウンライト59等も装備されている。
【0024】
内部空間ISに配されたテーブル6は、
図1及び
図4に示すように、基端を背壁4の中間支柱42に支持させた天板61と、この天板61の先端近傍部を支持する脚支柱62とを備えたもので、脚支柱62の下端には底盤1に支持された脚ベース63が設けられている。
【0025】
テーブル6の両側に配された椅子7は、
図1、
図4及び
図12に示すように、それぞれ、底盤1の敷物16上に載置された椅子ベース71と、この椅子ベース71上に配され下面が開放された箱状をなす椅子本体72と、この椅子本体72の奥部に立設された背凭れ79とを備えたものである。
【0026】
各椅子ベース71は、
図5に示すように、枠材を四角形に組み合わせた枠状のもので、各椅子ベース71の内側空間71Sは、
図4、
図12及び
図13に示すように、それぞれ敷物16の左右両端に形成された切欠部16a及び床板15に形成された切欠部15aを介してベース本体11(L)、11(N)に形成されたスリット状の通気口11aに連通しており、外部空間OSからの空気AIがこれら通気口11a及び切欠部15a、16aを通して各椅子ベース71の内側空間71Sに導入されるようになっている。なお、椅子ベース71の前枠材71aには、当該椅子ベース71の内側空間71SをブースBの内部空間ISに連通させる連通口71bが形成されている。
【0027】
椅子本体72は、
図12に示すように、ブースBの内部空間ISに臨む前板73と、背凭れ79の下に位置する奥板74と、これら前板73及び奥板74の上端間に架設された座受板75と、前板73及び奥板74の側端間に蓋着された側板76と、これら側板76の中間部間に介設され当該椅子本体72内を奥側空間72Sと前側空間72Tとに区成する中間板77とを備えたもので、座受板75上に座78が形成されている。なお、中間板77の上端縁には、座受板75との間に隙間72Uを形成するための複数の切欠部77aが形成されており、その切欠部77aを通して椅子本体72の奥側空間72Sと前側空間72Tとが連通させてある。
【0028】
以上説明したようにこのブースBは、外部空間OSから隔離された内部空間ISを形成するものであって、
図4、
図12及び
図14に示すように、内部空間ISに臨む第1、第2の構造物V、W中に、空気AIを方向転換させながら案内する空気流路8(V)、8(W)を形成し、その空気流路8(V)、8(W)の一端を前記外部空間OSに連通させるとともに、他端を前記内部空間ISに連通させている。
【0029】
具体的には、
図4及び
図12に示すように、第1の構造物Vは上面に座78を有するボックス状の椅子7であり、椅子本体72の奥側空間72Sと前側空間72Tとを、中間板77の上端に設けられた切欠部77aを介して連通させることにより空気流路8(V)を形成している。この空気流路8(V)の一端は、椅子ベース71の内側空間71S、敷物16の切欠部16a、床板15の切欠部15a、及びベース本体11の通気口11aを通して外部空間OSに連通させてある。また、空気流路8(V)の他端は、前側空間72Tに連通する椅子ベース71の内側空間71Sと、当該椅子ベース71の前枠材71aに開設された連通口71bを通して内部空間ISに連通させてある。すなわち、この空気流路8(V)は、建築床Fに対向する当該ブースBの底面Baに開口させてある。そして、空気流路8(V)の内壁面には、吸音材70が添設されている。具体的には、椅子本体72の前板73、奥板74、座受板75、側板76の各内面と、中間板77の両面に、それぞれ吸音材70が添設されている。なお、側板76の内面に添設した吸音材70は図示を省略している。吸音材70は、空気流路8(V)に臨む一面に凹凸を有したもので、スラブウレタン等のクッション材により作られている。
【0030】
第2の構造物Wは前述した二重壁構造をなす天井5であり、
図4及び
図14に示すように、天井本体51(P)、(R)と天井パネル56(P)、(R)との間に、空気流路8(W)が形成されている。空気流路8(W)は、左右の天井ユニットP、Rの内部に形成されたもので、前後に延びる横補強材53には、空気AIの流通を許容する開口部53aが形成されている。しかして、空気流路8(W)の一端は、換気扇57を介して外部空間OSに連通させてあり、他端は、側壁3の吸音パネル35(U)の上端に形成された切欠部35aを通して内部空間ISに連通させてある。すなわち、この空気流路8(W)は、建築天井Eに対向する当該ブースBの頂面Bbに開口させてある。
【0031】
ここで、
図1は、ブースBを示す全体斜視図である。
図2は、ブースBを示す正面図であり、
図3は、同平面図である。
図4は、
図3におけるX-X線に沿った断面図である。
図5は、底盤1及び椅子ベース71を示す分解斜視図である。
図6は、
図4におけるY-Y線に沿った断面図である。
図7は、外側板31、上の吸音パネル35(U)、左の天板本体51(P)及び左の天井パネル56(P)を取り外した状態の分解斜視図である。
図8は、側壁3を示す分解斜視図である。
図9は、左の天板本体51(P)及び左の天井パネル56(P)を取り外した状態の底面側からの分解斜視図である。
図10は、天井5を示す底面側からの分解斜視図である。
図11は、天板本体51を取り外した状態の分解斜視図である。
図12は、
図4におけるA部拡大図である。
図13は、
図12におけるD部拡大図である。
図14は、
図4におけるC部拡大図である。なお、このブースBは左右対称の形状であり、
図12では左側の椅子7の内部の空気流路8(V)、
図14では左天井ユニットP内部の空気流路8(W)のみが示されているが、右側の椅子7の内部にも同様に空気流路8(V)が形成されており、右天井ユニットP内部にも同様に空気流路8(W)が形成されている。
【0032】
このような構成のブースBであれば、オフィスや駅ナカなどのスペースに適宜設置して使用することができ、その内部空間IS内でテーブル6や椅子7を用いて執務や打ち合わせを行うことができる。その際、内部空間ISは底盤1、周壁および天井5に囲まれた空間であるため、建築床Fと建築天井Eとの間に形成されている外部空間OSと隔離された状態となり、執務や打ち合わせに集中することが可能となる。しかも、一端が外部空間OSに連通し他端が内部空間ISに連通する空気流路8(V)、8(W)を有するので、内部空間ISに空気が滞留することを抑止でき、良好な換気状態のもとで執務等を行うことができる。加えて、空気流路8(V)、8(W)は空気AIを方向転換させながら案内するものであるため、外部空間OSから内部空間ISに侵入する音を減衰させることができ、より快適に執務等を行うことができる。その上、これら空気流路8(V)、8(W)が構造物である椅子7、天井5の内部にそれぞれ設けられているので、空気流路8(V)、8(W)を形成するための格別なダクト等を設ける場合に比べて部品点数を無理なく削減することができるとともに、内部空間ISが煩雑になることを効果的に防止することができる。
【0033】
特に、この実施形態では、椅子7の内部に設けられた空気流路8(V)の内壁面に吸音材70が添設されているので、この空気流路8(V)を通して外部空間OSから内部空間ISに侵入する音成分を効果的に減衰させることができ、内部空間ISの静粛性を向上させることができる。
【0034】
また、椅子7の内部に設けられた空気流路8(V)の一端を建築床Fに対向するブースBの底面Baに開口させているとともに、天井5の内部に設けられた空気流路8(W)の一端を建築天井Eに対向するブースBの頂面Bbに開口させているので、外部から空気流路8(V)、8(W)の存在を視認しにくくなり、空気流路8(V)、8(W)を通して内部空間ISの様子を外部から直接視認できるという不具合の発生を防止できる。
【0035】
加えて、内部空間ISに臨む構造物Vとして上面78に座を有するボックス状の椅子7を利用しているので、容量の大きな空気流路8(V)を内部空間ISを狭めることなく形成することができ、音の減衰効果を無理なく向上させることが可能となる。
【0036】
また、内部空間ISに臨む構造物Wとして二重壁構造をなす天井5を利用しているので、格別なダクト等を設けることなく、対流により上昇した内部空間IS内の空気AIを円滑に外部空間OSに排出することが可能となる。
【0037】
そして、内部空間ISに臨む構造物V、Wとして空気を流通させる以外の機能をも有する椅子7及び天井5を利用しているので、空気流路8(V)、8(W)を形成するための格別なダクト等を設けることなく、ブースBの利用者が内部空間ISにおいて行う執務や打ち合わせ等を行う際に使用する椅子7、又は内部空間ISの上面を閉塞する構造物である天井5といった、既存のブースを構成する構造物の内部を無理なく空気流路8(V)、8(W)として利用できる。
【0038】
なお、本発明は以上に述べた実施形態に限らない。
【0039】
例えば、前述した実施形態は本発明を2人用のブースBに適用したものであるが、
図15に示すように4人用のブースB2に本発明を適用してもよい。
図15において、前述した実施形態に対応する部位には同一の符号を付して説明を省略する。また、内部空間ISに空気流路を形成可能な構造物が存在する場合には、1人用のブース等にも適用が可能である。内部空間にボックス状をなすテーブル等が存在する場合には、そのテーブルを利用して空気流路を形成することもできる。
【0040】
また、前述した実施形態では、外部空間から内部空間に侵入する音成分を効果的に減衰させ、内部空間ISの静粛性を向上させるべく、空気流路の内壁面に吸音材が添設されているが、場合によってはこのような吸音材を省略してもよく、空気流路の内壁面に吸音材を設ける場合であってもその材質、形状等は任意のものを採用してよい。
【0041】
さらに、前述した実施形態では、空気流路の一端を建築床に対向する底面や建築天井に対向する頂面に開口させているが、例えば、建築壁体とブースの背面又は側面との距離が小さい場合、ないし空気流路の一端を内部空間と異なる向きに開口した蓋体により被覆する場合には、空気流路の一端を建築壁体に対向する背面又は側面に開口させる態様であっても、空気流路の存在を視認しにくくなり、通気口を通して内部の様子を外部から直接視認できるという不具合の発生を防止または抑制できる。
【0042】
そして、空気を方向転換させながら案内する空気流路を形成すべく、その空気流路の一端を前記外部空間に連通させるとともに、他端を前記内部空間に連通させている空気流通用のダクトを本発明における内部空間に臨ませた構造物としても、本発明の最も主要な効果である、外部空間から内部空間に侵入する音を減衰させより快適に執務等を行うことができる、という効果を得ることはできる。但し、前述したように、空気を流通させる以外の機能をも有する構造物の中に空気流路を形成すれば、空気流路を形成するための格別な部材を内部空間に配置することなく、既存のブースを構成する構造物の内部を無理なく空気流路として利用できる。
【0043】
その他、本発明の趣旨を損ねない範囲で種々に変形してよい。
【符号の説明】
【0044】
B、B2…ブース
Ba…ブースの底面
Bb…ブースの頂面
5…天井(構造物)
7…椅子(構造物)
70…吸音材
78…座
8(V)…空気流路
8(W)…空気流路
V…構造物
W…構造物
F…建築床
E…建築天井