(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-10
(45)【発行日】2024-07-19
(54)【発明の名称】容器用蓋材
(51)【国際特許分類】
B65D 77/20 20060101AFI20240711BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20240711BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
B65D77/20 L
B65D65/40 A
B32B27/18 Z
(21)【出願番号】P 2020122448
(22)【出願日】2020-07-16
【審査請求日】2023-07-03
(73)【特許権者】
【識別番号】399054321
【氏名又は名称】東洋アルミニウム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105821
【氏名又は名称】藤井 淳
(72)【発明者】
【氏名】寺澤 侑哉
(72)【発明者】
【氏名】東 清久
【審査官】杉田 剛謙
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-254377(JP,A)
【文献】特開2019-031015(JP,A)
【文献】特開2019-034462(JP,A)
【文献】特開2016-084158(JP,A)
【文献】特開2015-027887(JP,A)
【文献】特開2016-199310(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 77/20
B65D 65/40
B32B 27/00-27/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の一方の表面上に下地層及び付着防止層を順に含む蓋材であって、
(1)下地層は、熱可塑性樹脂及び充填粒子を含み、
(1-1)充填粒子は平均粒径
30~40μmであり、
(1-2)下地層中の充填粒子の含有量は乾燥重量で
30~50質量%であり、
(1-3)下地層の付着量が乾燥重量で
3.0~4.5g/m
2であり、
(2)付着防止層は、疎水性酸化物微粒子を含み、
(2-1)疎水性酸化物微粒子の一次平均粒子径が3~100nmであり、
(2-2)付着防止層の付着量が乾燥重量で0.3~1.0g/m
2であり、
(2-3)付着防止層は、複数の疎水性酸化物微粒子が凝集して形成された三次元網目構造を有し、
(3)(3a)基材及び下地層の層間に形成されている印刷層及び/又は(3b)基材表面の凹凸により形成されている文字・図柄形状部を含む、
ことを特徴とする容器用蓋材。
【請求項2】
前記熱可塑性樹脂は、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂及びビニル系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の透明性樹脂である、請求項1に記載の蓋材。
【請求項3】
充填粒子は、a)透明性アクリル系樹脂粒子、b)透明性ポリオレフィン系樹脂粒子及びc)メラミン樹脂とシリカを含む透明性複合粒子の少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の蓋材。
【請求項4】
カップ状容器に内容物が充填されており、請求項1~3のいずれかに記載の蓋材の付着防止層が容器内側に向いた状態で前記容器の開口部を密封してなる包装製品。
【請求項5】
前記容器の開口部と前記蓋材の下地層とが熱接着される領域上にある付着防止層が、熱接着時に下地層に埋め込まれることによって前記蓋材の下地層とが熱接着されている、請求項4に記載の包装製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な容器用蓋材に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばヨーグルト、ゼリー、プリン、アイスクリーム、豆腐、茶碗蒸し等の食品を収容する容器においては、その容器開口部に蓋材がヒートシールされることで食品の密閉保存がなされている。
【0003】
このような蓋材としては、内容物である食品を弾いて蓋材に付着しないように疎水性粒子を用いて表面処理を施す技術が提案されている。
【0004】
例えば、熱可塑性樹脂を含有する層の表面の少なくとも一部に一次粒子平均径3~100nmの疎水性酸化物微粒子が付着している包装材料が知られている(特許文献1)。
【0005】
また例えば、基材層にバインダー層、ヒートシール層、疎水性層が順次積層され、前記バインダー層は、熱硬化性樹脂に平均粒径1~100μmの混合粒子が分散されていて、該混合粒子により前記ヒートシール層側に凹凸面が形成され、前記ヒートシール層は前記凹凸面に積層された熱可塑性樹脂からなり、疎水性層は平均粒径5nm~1μmの疎水性微粒子と無機バインダーからなることを特徴とする内容物非付着性包材が知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2011-93315号公報
【文献】特開2015-34038号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、これら従来の技術では、疎水性粒子による光散乱が生じるために、表面処理された面は外観が白く濁った状態となる。そのため、表面処理された面の下地(例えば蓋材の裏面)に広告、内容物に関する情報等を印刷しても視認することが困難である。すなわち、印刷を施した基材に上記のような疎水性粒子による表面処理を施すと、印刷の色味、濃さ等によってはその印刷内容を読みにくくなる問題がある。このために、疎水性粒子により表面処理された蓋材の裏面は無地にせざるを得ないというのが実情である。
【0008】
これに対し、このような表面処理が施された面であっても、その下地を透視することで視認することができれば、蓋材の裏面等にも種々の文字、色彩、模様等を表示してもその内容が確認することが可能となるため、蓋材の利便性、意匠性等を高めることができる。
【0009】
従って、本発明の主な目的は、優れた付着防止性を発揮しつつ、付着防止層の下方に位置する文字、図柄等の表示内容を視認することができる蓋材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、従来技術の問題点に鑑みて鋭意研究を重ねた結果、特定の構成を有する蓋材が上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、下記の容器用蓋材に係る。
1. 基材の一方の表面上に下地層及び付着防止層を順に含む蓋材であって、
(1)下地層は、熱可塑性樹脂及び充填粒子を含み、
(1-1)充填粒子は平均粒径10~40μmであり、
(1-2)下地層中の充填粒子の含有量は乾燥重量で20~70質量%であり、
(1-3)下地層の付着量が乾燥重量で2.0~6.0g/m2であり、
(2)付着防止層は、疎水性酸化物微粒子を含み、
(2-1)疎水性酸化物微粒子の一次平均粒子径が3~100nmであり、
(2-2)付着防止層の付着量が乾燥重量で0.3~1.0g/m2であり、
(3)(3a)基材及び下地層の層間に形成されている印刷層及び/又は(3b)基材表面の凹凸により形成されている文字・図柄形状部を含む、
ことを特徴とする容器用蓋材。
2. 前記熱可塑性樹脂は、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂及びビニル系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の透明性樹脂である、前記項1に記載の蓋材。
3. 充填粒子は、a)透明性アクリル系樹脂粒子、b)透明性ポリオレフィン系樹脂粒子及びc)メラミン樹脂とシリカを含む透明性複合粒子の少なくとも1種である、前記項1又は2に記載の蓋材。
4. カップ状容器に内容物が充填されており、前記項1~3のいずれかに記載の蓋材の付着防止層が容器内側に向いた状態で前記容器の開口部を密封してなる包装製品。
5. 前記容器の開口部と前記蓋材の下地層とが熱接着される領域上にある付着防止層が、熱接着時に下地層に埋め込まれることによって前記蓋材の下地層とが熱接着されている、前記項4に記載の包装製品。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、優れた付着防止性を発揮しつつ、付着防止層の下方に位置する文字、図柄等の表示内容を視認することができる蓋材を提供することができる。特に、本発明の蓋材では、下地層及び付着防止層の構成が透明性を発揮できる構成となっているので、文字、図柄等が下地層及び付着防止層で覆われた状態になっているにもかかわらず、文字、図柄等の表示内容を正確に視認し、あるいは読み取ることができる。それと同時に、付着防止層が最表面に配置されているので、高い付着防止効果(撥水性)を発揮することができる。
【0013】
このような特徴を有する本発明蓋材は、例えば食品、化粧品、医薬品、医薬部外品等を収容する容器の蓋材として有利に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の蓋材の層構成の具体例を示す図である。
【
図2】本発明の蓋材の層構成の具体例を示す図である。
【
図3】本発明の蓋材で密封された容器(カップ状容器)の断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
1.容器用蓋材
本発明の容器用蓋材(本発明蓋材)は、基材の一方の表面上に下地層及び付着防止層を順に含む蓋材であって、
(1)下地層は、熱可塑性樹脂及び充填粒子を含み、
(1-1)充填粒子は平均粒径10~40μmであり、
(1-2)下地層中の充填粒子の含有量は乾燥重量で20~70質量%であり、
(1-3)下地層の付着量が乾燥重量で2.0~6.0g/m2であり、
(2)付着防止層は、疎水性酸化物微粒子を含み、
(2-1)疎水性酸化物微粒子の一次平均粒子径が3~100nmであり、
(2-2)付着防止層の付着量が乾燥重量で0.3~1.0g/m2であり、
(3)(3a)基材及び下地層の層間に形成されている印刷層及び/又は(3b)基材表面の凹凸により形成されている文字・図柄形状部を含む、
ことを特徴とする。
【0016】
図1には、本発明蓋材の基本的な層構成例を示す。本発明蓋材10は、基材11の上面に印刷層12aが形成されている。印刷層12aには、文字、図形、模様等が印刷されている。印刷層12aの上面には下地層13が形成されている。
【0017】
下地層13は、
図1のように、印刷層12aに直に接した状態で積層されていることが望ましい。下地層13は、熱可塑性樹脂13a及び充填粒子13bを含む。これにより、下地層13の上面は、充填粒子13bに由来する凹凸表面となっている。そして、下地層13の上面には付着防止層14が形成されている。
【0018】
付着防止層14は、前記の凹凸表面上に疎水性酸化物微粒子14aの複数が堆積した状態で形成されている。疎水性酸化物微粒子14aは、下地層表面13又は別の疎水性酸化物微粒子に接触した状態で付着して固定されている。複数の疎水性酸化物微粒子14aが凝集して三次元網目構造を形成していても良い。
【0019】
また、
図2には、本発明蓋材の別の基本的な層構成例を示す。本発明蓋材10は、基材11において下地層13が形成される側の表面に凹凸による文字・図柄形状部12bが形成されている。そして、文字・図柄形状部12bの上面には下地層13が形成されている。下地層13は、
図1のように、文字・図柄形状部12bに直に接した状態で積層されていることが望ましい。下地層13は、熱可塑性樹脂13a及び充填粒子13bを含む。これにより、下地層13の上面は、充填粒子13bに由来する凹凸表面となっている。そして、下地層13の上面には付着防止層14が形成されている。その他の構成は、
図1の蓋材と同様である。
【0020】
本発明蓋材では、上記のように、付着防止層の下層に印刷層12a及び/又は文字・図柄形状部12b(以下、印刷層及び文字・図柄形状部を総称して「表示層」ともいう。)が配置されているところ、表示層の表示内容が下地層及び付着防止層を介して視認することができる。例えば、
図1に示すように、付着防止層の上方Aから蓋材を見た場合、付着防止層及び下地層を透視し、表示層の表示内容を視認することができる。従って、例えば表示層に文字情報が印字されている場合は、その文字情報を読み取ることができる。特に、本発明蓋材では、下地層の充填粒子の含有量及び平均粒径とともに、付着防止層における疎水性酸化物微粒子の付着量及び一次平均粒子径を特定の範囲に制御することによって、表示層の表面が付着防止層及び下地層に覆われているにもかかわらず、優れた付着防止効果を達成するとともに、より高い視認性を得ることができる。
【0021】
本発明蓋材の厚みは、例えば内容物の種類、容器の形状等に応じて適宜設定することができ、例えば50~150μm程度の範囲とすることができるが、これに限定されない。
【0022】
基材
本発明において基材は、容器蓋材の芯材として機能するものである。特に、容器蓋材にコシ(剛性)を付与し、容器蓋材に突き破り等に対する耐久性を付与するとともに、容器蓋材が容器に接着されている状態で容器蓋材を引き剥がすにあたって容器蓋材が不用意に破れないように強度を持たせることができる。
【0023】
また、容器に充填される内容物が光、空気等に晒されることを嫌う場合には、基材には光の透過を抑制するほか、外気の侵入あるいは内容物の匂いの容器外への漏洩を防ぐために気体透過の抑制機能(ガスバリア性)を有することも望ましい。
【0024】
基材としては、上記のような機能を有する限り、特に限定されず、例えばプラスチックス、ゴム、金属、ガラス、セラミックス、紙等の各種の材料を用いることができる。従って、例えば公知又は市販の容器のる蓋材で使用されている基材も使用することができる。
【0025】
基材の形状は、通常はシート状又はフィルム状であれば良い。従って、例えば紙、合成紙、樹脂フィルム、蒸着層付き樹脂フィルム、合成樹脂板、アルミニウム箔、その他の金属箔、金属板、織布、不織布、皮、合成皮革、木材、ガラス板等の単体又はこれらの複合材料又は積層材料を基材として好適に用いることができる。この中でも、光又は気体の透過を防ぎつつ、所定の強度も得られるという点で、アルミニウム箔又は蒸着層付き樹脂フィルムを基材に用いることが好ましい。蒸着層付き樹脂フィルムとしては、アルミニウム等の金属が表面に蒸着された樹脂フィルム(ポリエステルフィルム等)を好適に用いることができる。
【0026】
基材がシート状又はフィルム状である場合、その厚みは限定されないが、通常は9~50μm程度であり、特に12~38μmとすることが好ましい。これらの範囲内に設定することによって、蓋材としての機能を効果的に発揮することができる。
【0027】
表示層
表示層としては、(3a)基材及び下地層の層間に形成されている印刷層及び/又は(3b)基材表面の凹凸により形成されている文字・図柄形状部から構成される。
図1に示すように、印刷層12a単独で構成されている場合、
図2のように文字・図柄形状部12b単独で構成されている場合、印刷層と文字・図柄形状部の両者を含む場合のいずれも包含される。
【0028】
表示層は、基材の一方表面に備えられる。より詳細には、基材のうち蓋裏に相当する側の面に施される。また表示層は、蓋裏に備えられるものとは別に、基材のもう一方の面側に備えられていても良いが、本発明において表示層は、容器蓋材が容器の蓋として使用される状態において内容物と接する側、すなわち後述する付着防止層を備える側の基材表面に備えられるものである。
【0029】
a)印刷層
印刷層は、例えばグラビア印刷、フレキソ印刷、インクジェット、シルクスクリーン等の公知の印刷法によってインクを所定パターンとなるように印刷することによって形成することができる。すなわち、基材の表面にインク等を用いて印刷が施されて印刷層を形成することができる。
【0030】
印刷層の形成は、限定的でなく、例えばa)基材そのものに直接印刷を施す方法、b)予め印刷が施されたシール等を基材に貼り付ける方法等のいずれであっても良い。
【0031】
インクを使用する場合、その色は限定されず、例えば白、黒、赤、緑、黄等の各種の色のインクを適宜用いることができる。特に、容器に充填する内容物が食品等である場合には、より高い安全性が確保できるという点で、可食性インクを用いることが好ましい。また、インクは、油性インキ又は水性インクのいずれであっても良い。
【0032】
b)文字・図柄形状部
文字・図柄形状部は、基材表面に凹凸を付与することで文字、図柄等が表示されるものである。
図2に示すように、基材11において下地層13が積層される面に凹凸を形成することで文字・図柄形状部12bが形成される。文字、図柄等は、基材表面の凹部で表示しても良いし、基材表面の凸部で表示しても良い。なお、蓋材外部から文字・図柄形状部を視認できる限り、基材11において下地層13が積層される面の反対面に凹凸を付与して文字・図柄層を形成することもできる。
【0033】
基材表面に凹凸を形成する方法は、特に限定されず、例えばa)レーザー等により基材表面に刻印を設けることにより形成する方法、b)表面に文字・図柄形状部が形成された状態で成形された基材を用いる方法、c)基材に予め文字、図柄等のパターン化した材料を接合する方法等のいずれも採用することができる。
【0034】
下地層
下地層は、後述する付着防止層を基材に積層するために、付着防止層の下地すなわち接着剤のようにして仲介する層である。
【0035】
下地層は、熱可塑性樹脂及び充填粒子を含む。特に、下地層では、熱可塑性樹脂を含むマトリックス中に充填粒子が分散した構造を好適に採用することができる。
【0036】
下地層に含まれる熱可塑性樹脂は、熱接着性を有することが好ましい。これによって、下地層が熱接着層として機能することができる結果、上記のように付着防止層(特に疎水性酸化物微粒子)を基材に強固に固定することができる。
【0037】
下地層を構成する熱可塑性樹脂としては、上記のような観点より、熱接着性を有する樹脂であれば限定的でなく、例えばポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、ビニル系樹脂等の接着剤等を挙げることができる。より具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状(線状)低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマ-樹脂、エチレン-アクリル酸共重合体、アクリル-塩酢ビ共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メタクリル酸メチル共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、メチルペンテンポリマ-、ポリブテンポリマ-、ポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂をアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマ-ル酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸で変性した酸変性ポリオレフィン樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、その他の熱可塑性樹脂のほか、これらのブレンド樹脂、これらを構成するモノマーの組合せを含む共重合体、変性樹脂等を例示することができる。従って、例えばアクリル樹脂と塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体との混合物等も好適に用いることができる。
【0038】
本発明では、下地層は透明であることが望ましいので、上記熱可塑性樹脂も透明性を有するものであることが好ましく、特に無色透明であることがより好ましい。従って、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂及びビニル系樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の透明性樹脂を好適に用いることができる。
【0039】
下地層の形成に際しては、上記のような熱可塑性樹脂を含む組成物を好適に採用することができる。例えば、公知のシーラントフィルムの成分のほか、ラッカータイプ接着剤、イージーピール接着剤、ホットメルト接着剤等の接着剤により形成される層を採用することができる。すなわち、熱可塑性樹脂には、樹脂成分を含有する公知の熱接着剤も含む。本発明では、この中でも、ラッカータイプ接着剤又はホットメルト接着剤を採用するのが好ましく、特にラッカータイプ接着剤により形成される熱接着層を好適に採用することができる。ホットメルト層を形成する場合には、ホットメルト接着剤を溶融状態で塗布した後、疎水性酸化物微粒子を付与すれば 熱接着層に疎水性酸化物微粒子をそのまま付着させることができるため、本発明の容器蓋材の連続的な生産が容易となる。
【0040】
下地層中における熱可塑性樹脂の含有量は、通常は40~80質量%とし、特に50~70質量%とすることが好ましい。これにより、高い付着防止効果を達成しつつ、表示層の視認性を確実に確保することができる。
【0041】
なお、本発明の効果を妨げない範囲内で、必要に応じて他の添加剤を下地層中に適宜配合することができる。例えば、分散剤、着色剤、沈降防止剤、粘度調整剤、脱泡剤、フィラー、帯電防止剤、紫外線吸収剤、酸素吸収剤等を配合することができる。
【0042】
下地層に含まれる充填粒子は、主として、下地層の表面(上面)に凹凸形状を付与するために用いられる。
図1に示すように、下地層13中に含まれる充填粒子13bにより、下地層13の表面(疎水性酸化物微粒子14aが付着する面)がその断面視において凹凸状になり、その凹部にも疎水性酸化物微粒子14aが好ましくは凝集状態で入り込むことにより、付着防止効果を長期間維持すると考えられる。すなわち、内容物のほか、工程中の機器又は装置との接触が生じても、当該凹部に入り込んだ疎水性酸化物微粒子14aは当該凹部に入り込んで固定された状態を維持することによって疎水性酸化物微粒子の脱落を効果的に抑制ないしは防止できる結果、優れた非付着性を持続的に発揮することができる。換言すれば、良好な非付着性を比較的長期にわたり発揮することができる。
【0043】
充填粒子としては、有機成分及び無機成分の少なくとも1種を含む充填粒子を採用することができる。本発明では、下地層は透明であることが望ましいので、充填粒子も透明性を有するものであることが好ましく、特に無色透明であることがより好ましい。
【0044】
無機成分としては、例えば1)アルミニウム、銅、鉄、チタン、銀、カルシウム等の金属又はこれらを含む合金又は金属間化合物、2)酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化鉄等の酸化物、3)リン酸カルシウム、ステアリン酸カルシウム等の無機酸塩又は有機酸塩、4)ガラス、5)窒化アルミニウム、窒化硼素、炭化珪素、窒化珪素等のセラミック等を好適に用いることができる。
【0045】
有機成分としては、例えばアクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、アミノ樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロース系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリビニルアルコール、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリアミド等の有機高分子成分(又は樹脂成分)を好適に用いることができる。
【0046】
充填粒子は、無機成分からなる粒子あるいは有機成分からなる粒子のほか、無機成分及び有機成分の両者を含む粒子を用いることができる。この中でも特に、アクリル系樹脂粒子、ポリエチレン系粒子、親水性シリカ粒子、リン酸カルシウム粒子、炭粉、焼成カルシウム粒子、未焼成カルシウム粒子、ステアリン酸カルシウム粒子等の少なくとも1種を用いることがより好ましい。特に、a)透明性アクリル系樹脂粒子、b)透明性ポリオレフィン系樹脂粒子及びc)メラミン樹脂とシリカを含む透明性複合粒子の少なくとも1種を好適に用いることができる。
【0047】
充填粒子の大きさは、上記のように、下地層表面に充填粒子に由来する凹凸を付与するのに十分な大きさであれば良いが、通常は平均粒子径(レーザー回折式粒度分布計による)が10~40μmとし、特に12~30μmとすることが好ましい。充填粒子の平均粒子径が10μm未満であると、下地層の凹凸状の形状が不十分であり、内容物の付着防止性に劣る。充填粒子の平均粒子径が40μm以上であると蓋裏側の表面に大きなざらつきが生じ、表示層が明瞭に視認しにくくなる。
【0048】
充填粒子の形状は限定的でなく、例えば球状、回転楕円体状、不定形状、涙滴状、扁平状、中空状、多孔質状等のいずれであっても良い。特に、球状の充填粒子を好適に用いることもできる。
【0049】
充填粒子の含有量(乾燥重量)は、下地層中20~70質量%とし、特に30~50質量%とすることが好ましい。上記含有量が20質量%未満であると、下地層の表面の凹凸形状の数が少なくなり、付着防止機能が低下する。また70質量%を超える場合、蓋裏側の表面にざらつきが生じ、表示層を明確に視認することが困難となる。
【0050】
下地層の付着量(乾燥付着量)は、2.0~6.0g/m2とし、特に2.5~4.5g/m2とすることが好ましい。下地層の乾燥付着量が2.0g/m2未満であると、充填粒子の含有量が20質量%以上70質量%以下の範囲において、残部における熱可塑性樹脂量が少なくなり、容器との接着力が低下するおそれがある。また。下地層乾燥付着量が6.0g/m2を超える場合は、蓋裏側の表面の色調が濁り、表示層が明瞭に視認しにくくなる。
【0051】
下地層の厚みは、上記の付着量の範囲内で適宜設定することができ、例えば15~45μm程度とすることができるが、これに限定されない。なお、下地層の厚みは、基材との境界から下地層表面の凹凸の最も高い凸部の頂点までの距離をいう。
【0052】
下地層の形成方法としては、限定的ではないが、特に熱可塑性樹脂及び充填粒子を含む塗工液(塗工液)を基材の一方の面に塗布し、乾燥する工程を含む方法によって好適に実施することができる。
【0053】
上記塗工液は、特に限定されないが、例えば有機溶剤に熱可塑性樹脂が溶解又は分散してなる溶液又は分散液中に充填粒子が分散した混合液を好適に用いることができる。
【0054】
有機溶剤としては、用いる熱可塑性樹脂の種類等に応じて適宜選択することができる。例えば、アルコール(メタノール、エタノール)、シクロヘキサン、トルエン、酢酸エチル、メチルエチルケトン(MEK)、メチルシクロヘキサン(MCH)、アセトン、イソプロピルアルコール(IPA)、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、ブチルジグリコール、ペンタメチレングリコール、ノルマルペンタン、ノルマルヘキサン、ヘキシルアルコール等の有機溶剤の中から適宜選択することができる。
【0055】
塗工液中における熱可塑性樹脂の含有量は、限定的ではないが、通常は5~40重量%程度とし、好ましくは10~30重量%とすれば良い。
【0056】
また、塗工液中における充填粒子の含有量は、塗布・乾燥後の含有量が上記で示した範囲内となるようにすれば良い。従って、例えば塗工液中3~30重量%とすることもできる。
【0057】
なお、塗工液中には、本発明の効果を妨げない範囲内で、前記のように、必要に応じて他の添加剤を適宜配合することができる。例えば、分散剤、着色剤、沈降防止剤、粘度調整剤、脱泡剤等を配合することができる。
【0058】
塗工液を塗布する方法も、特に限定されず、例えばロールコーティング、各種グラビアコーティング、バーコート、ドクターブレードコーティング、コンマコーター、刷毛塗り等の公知の方法をいずれも採用することができる。
【0059】
また、塗工液を塗布する領域は、少なくとも付着防止層が形成される面を含むように設定すれば良く、特に付着防止層が形成される面の全面を塗布することが好ましい。この場合、付着防止層が形成されない領域に塗布しても良い。
【0060】
塗布後は、塗布面を乾燥することにより、基材上に下地層を形成することができる。乾燥方法は、特に制限されず、自然乾燥又は加熱乾燥のいずれであっても良い。加熱乾燥する場合は、通常は80~200℃、特に100~160℃とすれば良い。加熱時間は、加熱温度等に応じて適宜設定すれば良いが、通常は3~30秒程度とすれば良い。得られたフィルムは、必要に応じて、熱成型しやすいように、塗膜を形成する前又は後で予め特定の形状に加工(裁断等)を行っても良い。
【0061】
付着防止層
付着防止層は、容器蓋材の蓋裏において最表面に備えられた層である。すなわち、容器蓋材を容器と接着した場合において、内容物と接触し得る層である。付着防止層には疎水性酸化物微粒子を含む。付着防止層には、疎水性酸化物微粒子を含んでいれば良く、疎水性酸化物微粒子同士を接合するバインダー樹脂を備えていても良い。好ましくは、付着防止層の一部が、下地層中の熱可塑性樹脂に埋没して、疎水性酸化物微粒子どうしを接合していることが好ましい。
【0062】
疎水性酸化物微粒子としては、疎水性を有するものであれば特に限定されず、表面処理により疎水化されたものであっても良い。例えば、親水性酸化物微粒子をシランカップリング剤等で表面処理を施し、表面状態を疎水性とした微粒子を用いることもできる。
【0063】
上記酸化物の種類も、疎水性を有するものであれば限定されない。例えばシリカ(二酸化ケイ素)、アルミナ、チタニア等の少なくとも1種を用いることができる。これらの微粒子は、公知又は市販のものを採用することができる。例えば、シリカとしては、製品名「AEROSIL R972」、「AEROSIL R972V」、「AEROSIL R972CF」、「AEROSIL R974」、「AEROSIL RX200」、「AEROSIL RY200」(以上、日本アエロジル株式会社製)、「AEROSIL R202」、「AEROSIL R805」、「AEROSIL R812」、「AEROSIL R812S」、(以上、エボニック デグサ社製)等が挙げられる。チタニアとしては、製品名「AEROXIDE TiO2 T805」(エボニック デグサ社製)等が例示できる。アルミナとしては、製品名「AEROXIDE Alu C」(エボニック デグサ社製)等をシランカップリング剤で処理して粒子表面を疎水性とした微粒子が例示できる。
【0064】
この中でも、疎水性シリカ微粒子を好適に用いることができる。とりわけ、より優れた付着防止性が得られるという点において、表面にトリメチルシリル基を有する疎水性シリカ微粒子が好ましい。これに対応する市販品としては、例えば前記「AEROSIL R812」、「AEROSIL R812S」(いずれもエボニック デグサ社製)等が挙げられる。
【0065】
付着防止層に含まれる疎水性酸化物微粒子は、一次平均粒子径が3~100nmであり、特に5~20nmであることが好ましい。一次粒子平均径を上記範囲とすることにより、疎水性酸化物微粒子が適度な凝集状態となり、その凝集体中にある空隙に空気等の気体を保持することができる結果、優れた付着防止性を得ることができる。すなわち、この凝集状態は、下地層に付着した後も維持されるので、優れた付着防止性を発揮することができる。
【0066】
なお、本発明において、一次粒子平均径の測定は、走査型電子顕微鏡(FE-SEM)で実施することができ、走査型電子顕微鏡の分解能が低い場合には透過型電子顕微鏡等の他の電子顕微鏡を併用して実施しても良い。具体的には、粒子形状が球状の場合はその直径、非球状の場合はその最長径と最短径との平均値を直径とみなし、走査型電子顕微鏡等による観察により任意に選んだ20個分の粒子の直径の平均を一次粒子平均径とする。
【0067】
下地層に付着させる疎水性酸化物微粒子の付着量(乾燥後重量)は0.3~1.0g/m2とする。上記範囲内に設定することによって、より優れた非付着性が長期にわたって得ることができる上、疎水性酸化物微粒子の脱落抑制、コスト等の点でもいっそう有利となる。熱接着層に付着した疎水性酸化物微粒子は、三次元網目構造を有する多孔質層を形成していることが好ましい。従って、例えば0.4~0.8g/m2と設定することもできる。
【0068】
また、疎水性酸化物微粒子は、下地層の全面(基材層側と反対側の面の全面)に付着していても良いし、下地層が熱接着される領域(いわゆる接着しろ)を除いた領域に付着していても良い。本発明では、下地層の全面に付着している場合でも、下地層が熱接着される領域上に存在する疎水性酸化物微粒子のほとんど又は全部が当該下地層中に埋没するので熱接着が阻害されることはなく、工業的生産上でも下地層の全面に付着している方が望ましい。
【0069】
付着防止の厚みは、上記の付着量の範囲内で適宜設定することができ、例えば0.1~5μm程度とすることができるが、これに限定されない。
【0070】
付着防止層の形成方法は、特に限定されないが、特に溶媒中に疎水性酸化物微粒子が分散した分散液を下地層の表面の一部又は全部に塗布し、乾燥する工程を含む方法によって好適に実施することができる。
【0071】
分散液に使用される溶媒は特に制限されず、例えば水、エタノール等のように食品製造で使用されている溶媒を1種又は2種以上で使用することができる。
【0072】
分散液中における疎水性酸化物微粒子の含有量は、特に制限されないが、一般的には5~200g/L(リットル)程度の範囲内で適宜設定することが好ましい。
【0073】
また、分散液中には、本発明の効果を妨げない範囲内において、必要に応じて分散剤、着色剤、沈降防止剤、粘度調整剤、バインダー、脱泡剤等が含まれていても良い。
【0074】
分散液を下地層上に塗布する方法は、特に限定されず、例えばロールコーティング、各種グラビアコーティング、バーコート、ドクターブレードコーティング、コンマコーター、刷毛塗り等の公知の方法を適宜採用することができる。なお、疎水性酸化物微粒子が分散媒中に分散して混ぜられていると、より均一に塗工することができる。
【0075】
塗布量(乾燥後重量)は、所望の撥水性又は撥油性に応じて適宜設定できるが、通常は0.3~1.0g/m2程度とし、特に0.4~0.6g/m2とすることが好ましい。上記範囲内に設定することによって、より確実に付着防止性粒子からなる多孔質層を形成することができる結果、より優れた非付着性が長期にわたって得ることができる上、微粒子の脱落抑制、コスト等の点でもいっそう有利となる。
【0076】
塗布後は、塗布面を乾燥することにより、樹脂基材フィルム上に付着防止性粒子が付着してなるフィルムを得る。乾燥方法は、特に制限されず、自然乾燥又は加熱乾燥のいずれであっても良い。加熱乾燥する場合は、通常は60~190℃程度とし、特に80~150℃とすることが好ましい。加熱時間は、加熱温度等に応じて適宜設定すれば良いが、通常は3~30秒程度とすれば良い。
【0077】
形成された付着防止層の撥水性は、通常は純水(25℃)の接触角が140度以上、特に150度以上であることが好ましい。
【0078】
その他の層
本発明蓋材では、本発明の効果を妨げない限り、他の層が形成されていても良い。例えば、層間に接着剤層を介在させることもできる。また、基材に下地層が形成される反対の面(すなわち、蓋材が外部に露出する側の表面)に例えば印刷層、オーバープリント層、クリア層等が形成されていても良い。
【0079】
2.容器用蓋材の使用
本発明蓋材は、各種の容器の蓋として使用することができる。より具体的には、本発明蓋材の最表面にある付着防止層を容器内側に配置された状態で容器開口部を閉じるために用いられる。すなわち、本発明蓋材は、基材(シート状基材)を備え、その両面は、容器蓋材が容器の蓋として使用されるに際して、容器の外側を向く面と容器の内側を向く面となる。
【0080】
図3には、内容物16が充填されたカップ状容器15の開口部が
図1の本発明蓋材10で閉じられている包装製品20を示す。カップ状容器15の開口部にフランジ部15aと蓋材の下地層13とが熱接着着(ヒートシール)により接合される結果、内容物16の密封を実現することができる。
【0081】
この場合、熱接着される前は、本発明蓋材の熱接着される領域上に疎水性酸化物微粒子が積層されているが、熱接着時には下地層13中に疎水性酸化物微粒子14bのように埋め込まれる。これにより、下地層13と容器開口部との強固な接合が実現される。熱接着される領域以外の部分には疎水性酸化物粒子14aが露出した状態になっているので、内容物として食品等が収容された場合において、その内容物が蓋材に接触しても、内容物が付着しにくくなる。
【0082】
本発明蓋材10において、容器の内側を向く面(蓋裏面)は、基材11から順に、印刷層12a、下地層13及び付着防止層14を備える。容器の外側に向く面には、必要に応じて、例えば第二の基材層、印刷層、印刷層を保護するための保護層等(図示せず)を設けることができる。また、
図2の蓋材10においては、容器の内側を向く面は、基材11から順に、文字・図柄形状部12b、下地層13及び付着防止層14を備える。容器の外側に向く面には、必要に応じて、例えば第二の基材層、印刷層、印刷層を保護するための保護層等(図示せず)を設けることができる。
【0083】
この場合、付着防止層14を備える側の基材表面に備える印刷層12a又は文字・図柄形状部12bを蓋裏印刷とも呼称し、もう一方の表面に施された印刷を表印刷とも呼称する。一般的には表印刷には容器に充填される内容物に関する、製品名、ロゴ、成分、賞味期限、内容物のイメージ図、バーコード等が印刷される。内容物付着防止機能を備えない一般的な蓋裏印刷には、製品に関する情報、キャンペーン情報、広告等が印刷されることがあるが、従来技術では蓋裏に内容物の付着防止機能を備える場合には、基材に印刷した場合にはその表面の付着防止機能の構造により光が乱反射して白くくすんで視認しにくいという理由から、蓋裏印刷は敬遠されている。
【0084】
これに対し、本発明蓋材は、例えば
図1に示すように、A方向から見た場合でも、付着防止層14及び下地層13を通して印刷層12a又は文字・図柄形状部12bの表示内容を視認(透視)できるため、その表示内容を確実かつ容易に理解することができる。このように、内容物付着防止機能を備えるものの蓋裏印刷を備えない容器蓋材、蓋裏印刷を備えるものの内容物付着防止機能を備えない容器蓋材はそれぞれ公知であるが、蓋裏印刷を備えかつ内容物付着防止機能を備える容器蓋材は、本来は容器蓋材を製造するうえでは相反する条件が要求されるものであるところ、その両立を実現したのが本発明蓋材である。
【0085】
図2では、カップ状容器を示したが、容器形状は本発明蓋材が適用できれば限定的でなく、トレイ状、ボトル状等のいずれにも適用することができる。
【0086】
また、容器に装填される内容物も、特に限定されず、例えばヨーグルト、プリン、氷菓子等の食品のほか、化粧品、医薬品等のいずれであっても良い。内容物の性状も限定的でなく、例えば固体材料のほか、流動性のある材料等にも適用することができる。また、内容物がゲル状物又は非ゲル状物のいずれであっても良い。さらに、内容物は、水分及び油分(油脂類)の少なくとも一方を含む材料であっても良いが、特に水分を含む内容物を好適に採用することができる。
【実施例】
【0087】
以下に実施例及び比較例を示し、本発明の特徴をより具体的に説明する。ただし、本発明の範囲は、実施例に限定されない。
【0088】
実施例1
基材シートとして、坪量55g/m2の紙にポリウレタン系ドライラミネート接着剤(乾燥後重量3.5g/m2;Dと略称)を用いて、アルミニウムを蒸着した厚み12μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(AL蒸着PETと略称)の蒸着面と貼り合わせたものを用意した。なお、AL蒸着PET面を容器蓋材の蓋裏側とした。グラビア印刷方式により、この紙/D/AL蒸着PETからなる基材両面に印刷及び紙側にはオーバープリント(印刷保護層、OPと略称)を施した。
なお、印刷は、視認性を比較しやすいように、二次元バーコードのデザインを施した。固形分が20wt%のヒートシールラッカー(主成分(アクリル樹脂+塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂+ポリエステル系樹脂)20重量部+溶剤(酢酸エチル+MEKの混合溶剤)80重量部)に、充填粒子としてアクリル樹脂ビーズ(平均粒子径:30μm)を20重量部加え、乾燥重量にして充填粒子量が50質量%となるように調製した。
その後、基材のAL蒸着PET面に、下地層として上記のヒートシールラッカーを乾燥後重量約3g/m2(乾燥条件は120℃×10秒)となるように塗布した。これによって、「OP/印刷/紙/D/AL蒸着PET/印刷/下地層」からなる構成の積層体を得た。
次いで、付着防止層として、疎水性酸化物微粒子(製品名「AEROSIL R812S」エボニック デグサ社製、BET比表面積:220m2/g、一次粒子平均径:7nm)5gをエタノール100mLに分散させてコート液を調製した。このコート液を上記積層体の下地層表面に乾燥後重量で0.5g/m2になるようにバーコート方式で付与した後、100℃で10秒程度をかけて乾燥させてエタノールを蒸発させることにより、容器蓋材サンプルを得た。
【0089】
実施例2
アクリル樹脂ビーズの半量を、メラミン樹脂とシリカからなる平均粒子径3.3μmの市販の複合球状粒子に置き換えた以外は実施例1と同様にして容器蓋材サンプルを得た。
【0090】
実施例3
アクリル樹脂ビーズを平均粒子径25μmの市販の超高分子量ポリオレフィン粉体に変え、下地層としてのヒートシールラッカーの乾燥後重量を約2.8g/m2となるように塗布した以外は実施例1と同様にして容器蓋材サンプルを得た。
【0091】
実施例4
紙/D/AL蒸着PETからなる基材のAL蒸着PET面に、CO2レーザーマーカーを用いて二次元バーコードを印字した以外は、実施例1と同様にして容器蓋材サンプルを得た。
【0092】
比較例1
下地層としてのヒートシールラッカーに充填粒子を加えなかった以外は実施例1と同様にして容器蓋材サンプルを得た。
【0093】
比較例2
付着防止層として、疎水性酸化物微粒子の塗布量を、乾燥後重量で3.0g/m2になるようにした以外は実施例1と同様にして容器蓋材サンプルを得た。
【0094】
比較例3
アクリル樹脂ビーズを平均粒子径8μmのアクリル樹脂ビーズとし、ヒートシールラッカーの塗布量を乾燥後重量で3.1g/m2になるようにした以外は実施例1と同様にして容器蓋材サンプルを得た。
【0095】
比較例4
下地層における乾燥重量にして充填粒子量が10質量%となるようにヒートシールラッカーへのアクリル樹脂ビーズの添加量を5重量部とし、ヒートシールラッカーの塗布量を乾燥後重量で2.5g/m2になるようにした以外は実施例1と同様にして容器蓋材サンプルを得た。
【0096】
比較例5
下地層における乾燥重量にして充填粒子量が80質量%となるようにヒートシールラッカーへのアクリル樹脂ビーズの添加量を80重量部とし、ヒートシールラッカーの塗布量を乾燥後重量で4.9g/m2になるようにした以外は実施例1と同様にして容器蓋材サンプルを得た。
【0097】
比較例6
付着防止層の疎水性酸化物微粒子を、一次平均粒子径2.7μmの疎水性シリカ粒子であるサイロホービック-100(富士シリシア社製)とした以外は実施例1と同様にして容器蓋材サンプルを得た。
【0098】
比較例7
ヒートシールラッカーの塗布量を乾燥後重量で6.8g/m2になるようにし、付着防止層の疎水性酸化物微粒子の塗布量を乾燥後重量で1.5g/m2になるようにした以外は実施例1と同様にして容器蓋材サンプルを得た。
【0099】
比較例8
充填粒子であるアクリル樹脂ビーズを、メラミン樹脂とシリカからなる平均粒子径3.3μmの市販の複合球状粒子に代え、付着防止層の疎水性酸化物微粒子の塗布量を乾燥後重量で2.5g/m2になるようにした以外は実施例1と同様にして容器蓋材サンプルを得た。
【0100】
比較例9
アクリル樹脂ビーズを平均粒子径50μmのアクリル樹脂ビーズとし、ヒートシールラッカーの塗布量を乾燥後重量で5.10g/m2になるようにした以外は実施例1と同様にして容器蓋材サンプルを得た。
【0101】
試験例1(蓋裏印刷の視認性)
各実施例及び比較例で得られたサンプルについて、蓋裏印刷の視認性を評価した。スマートフォン(サムスン電子社製Galaxy SC-04J)のカメラを用い、印刷した二次元バーコードの読み取り性評価を実施した。評価方法は、二次元バーコード全体がカメラを介してスマートフォンの視野全体に表示されるように、カメラを10~15cmの距離に近づけて即座に読み取り可能なサンプルを「〇」、読み取りに数秒時間を要するか又は読み取り不可のサンプルを「×」とした。その評価結果を表1に示す。
【0102】
試験例2(付着防止性)
各包装材料サンプルから蓋材の形状(タブ付きの縦62mm×横67mmの矩形)に切り抜いた蓋材を用いて包装体を作製した。具体的には、フランジ付きポリスチレン製容器(フランジ幅4mm、フランジ外径60mm×65mm□、高さ約48mm、内容積約100cm3になるように成形したもの)中に市販のヨーグルト(製品名「ビヒダス アロエヨーグルト」森永乳業株式会社製(無脂乳固形分8.0% 乳脂肪分0.1%))85gをそれぞれ充填した後、フランジ上に前記蓋材をヒートシールすることによって包装体をそれぞれ作製した。ヒートシール条件は、温度225℃及び圧力3kgf/cm2にて1.2秒間で2mm幅のリング(凹状)シールとした。
作製した各包装体を振動試験機(アイデックス株式会社製 TRANSPORTATION TESTER BF-30U)を用いて1分40秒間(10Hz-10秒・15Hz-10秒・20Hz-10秒・25Hz-10秒・30Hz-10秒を2回繰り返して上下往復振動)、2.2mm振幅(上下方向)、加速度約2Gの条件にて振動させた後、蓋材を手指で開封し、各蓋材に付着したヨーグルトの量(付着面積)を目視で判定した。内容物が接する面(付着防止層)において、付着領域が0%以上10%未満のサンプルを「〇」とし、10%以上30%未満のサンプルを「△」とし、30%以上100%以下のサンプルを「×」とした。その評価結果を表1に示す。
【0103】
【0104】
表1の結果からも明らかなように、本発明の容器蓋材は、蓋裏において内容物の付着防止機能を有しながら、なおかつ、蓋裏の印刷層の色味又は濃さに限らず、明瞭に印刷層の印刷内容が認識可能となることがわかる。