(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-10
(45)【発行日】2024-07-19
(54)【発明の名称】自走式ストレッチャ
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20240711BHJP
A61B 6/04 20060101ALI20240711BHJP
A61B 5/055 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
A61B6/03 523D
A61B6/04 532
A61B5/055 366
(21)【出願番号】P 2020124521
(22)【出願日】2020-07-21
【審査請求日】2023-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001380
【氏名又は名称】弁理士法人東京国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森安 健太
(72)【発明者】
【氏名】金田 明義
【審査官】永田 浩司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0281818(US,A1)
【文献】特開2013-106676(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00 - 6/58
A61B 5/055
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台と、
前記基台に設けられ、前記基台を移動可能な可動部と、
前記基台に設けられ、被検体を配置可能な天板と、
前記基台又は前記天板に設けられ、医用画像診断装置の架台装置に対する距離を計測する距離計測部と、
前記計測された距離に基づいて、前記架台装置に対する前記基台の位置を制御する位置制御部と、
前記架台装置のスキャン中心から前記架台装置の前面側壁までの距離である第2の距離を記憶するメモリと、
を備え、
前記距離計測部は、前記医用画像診断装置としての第1の医用画像診断装置を用いて第1のスキャンを行った場合の、前記架台装置の前面側壁から前記基台までの距離である第3の距離を計測し、
前記位置制御部は、前記医用画像診断装置としての第2の医用画像診断装置を用いて第2のスキャンを行う場合に、前記第2の距離と前記第3の距離とに基づいて、前記第2の医用画像診断装置の前記架台装置の前面側壁から前記基台までの距離を求める、
自走式ストレッチャ
。
【請求項2】
前記位置制御部は、前記第1のスキャンを行う場合と前記第2のスキャンを行う場合とで、前記第1の医用画像診断装置のスキャン中心から前記基台までの距離と、前記第2の医用画像診断装置のスキャン中心から前記基台までの距離とが一定になるように、前記基台の位置を制御する、
請求項
1に記載の自走式ストレッチャ
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、自走式ストレッチャに関する。
【背景技術】
【0002】
被検体の体内組織が画像化された医用画像データを生成する医用画像診断装置が存在する。医用画像診断装置としては、X線CT(Computed Tomography)装置、核医学診断装置、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置等が挙げられる。
【0003】
病院の院内に、複数の医用画像診断装置を備える場合がある。例えば、核種の集積、分布状態を表す機能画像データとしてPET(Positron Emission Tomography)画像データが挙げられる。しかし、PET画像データは、核種の集積等が人体内組織のどこに存在するかを示すものではない。そこで、PET画像データを、CT画像データ等の形態画像データに融合して融合画像データを生成する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、天板のたわみ量を制御することである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係る自走式ストレッチャは、基台と、天板と、距離計測部と、位置制御部とを備える。天板は、基台に設けられ、被検体を配置可能である。距離計測部は、基台又は天板に設けられ、医用画像診断装置の架台装置に対する距離を計測する。位置制御部は、計測された距離に基づいて、架台装置に対する基台の位置を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る自走式ストレッチャを備える医用画像診断システムの構成を示す概略図。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係る自走式ストレッチャの構成を示す概略図。
【
図3】
図3は、各医用画像診断装置のスキャン中心から、第1の実施形態に係る自走式ストレッチャまでの距離(第1の距離)と、各医用画像診断装置のスキャン中心から当該装置の架台装置の前面側壁までの距離(第2の距離)とを表として示す図。
【
図4】
図4は、第1の実施形態に係る自走式ストレッチャの機能を示すブロック図。
【
図5】
図5(A),(B)は、複数の医用画像診断装置の間における、第1の実施形態に係る自走式ストレッチャの天板の送り量が一定になるような制御を説明するための図。
【
図6】
図6(A),(B)は、第1の実施形態に係る自走式ストレッチャの接近を補助する機構を説明するための図。
【
図7】
図7(A),(B)は、医用画像診断装置間における、第1の実施形態に係る自走式ストレッチャの天板の送り量を説明するための図。
【
図8】
図8は、第1の実施形態に係る自走式ストレッチャの制御方法をフローチャートとして示す図。
【
図9】
図9は、第1の実施形態に係る自走式ストレッチャの制御方法をフローチャートとして示す図。
【
図10】
図10は、各医用画像診断装置の架台装置の前面側壁から第1の実施形態に係る自走式ストレッチャまでの距離(第3の距離)を表として示す図。
【
図11】
図11は、第2の実施形態に係る自走式ストレッチャの構成を示す概略図。
【
図12】
図12は、第2の実施形態に係る自走式ストレッチャの機能を示すブロック図。
【
図13】
図13は、第2の実施形態に係る自走式ストレッチャにおいて、検査の順序の最適化方法を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、自走式ストレッチャの実施形態について詳細に説明する。
【0009】
なお、第1の実施形態に係る自走式ストレッチャ(又は、自走式寝台装置)は、架台装置(いわゆるガントリ)を備える複数の医用画像診断装置を備える医用画像診断システムにおいて、複数の医用画像診断装置に兼用の寝台装置として機能する。そのため、第1の実施形態に係る自走式ストレッチャは、医用画像診断システムが設置された院内を自由に自走可能な移動機構を備える。
【0010】
医用画像診断システムは、架台装置を備える複数の医用画像診断装置として、異なる種類の複数の医用画像診断装置を備える。例えば、医用画像診断システムが、第1の医用画像診断装置としてX線CT装置を備え、第2の医用画像診断装置として核医学診断装置を備える場合である。核医学診断装置は、PET装置や、SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)装置等を含む。しかしながら、その場合に限定されるものではない。例えば、医用画像診断システムは、第1の医用画像診断装置としてX線CT装置を備え、第2の医用画像診断装置としてMRI装置を備える場合もある。
【0011】
また、医用画像診断システムは、架台装置を備える複数の医用画像診断装置として、同一種類の複数の医用画像診断装置を備える。例えば、医用画像診断システムが、第1の医用画像診断装置として第1のX線CT装置を備え、第2の医用画像診断装置として第2のX線CT装置を備える場合である。しかしながら、その場合に限定されるものではない。例えば、医用画像診断システムは、第1の医用画像診断装置として第1のMRI装置を備え、第2の医用画像診断装置として第2のMRI装置を備える場合もある。
【0012】
さらに、医用画像診断システムは、架台装置を備える複数の医用画像診断装置として、2個の医用画像診断装置を備える場合に限定されるものではなく、2個以上の医用画像診断装置を備える場合であればよい。
【0013】
以下、医用画像診断システムが、複数の医用画像診断装置として、架台装置を備える第1の医用画像診断装置としてX線CT装置を備え、架台装置を備える第2の医用画像診断装置としてPET装置を備える場合を例にとって説明する。
【0014】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る自走式ストレッチャを備える医用画像診断システムの構成を示す概略図である。
【0015】
図1は、第1の実施形態に係る自走式ストレッチャを備える医用画像診断システム1を示す。医用画像診断システム1は、第1の医用画像診断装置としてのX線CT装置10と、第2の医用画像診断装置としてのPET装置20と、第1の実施形態に係る自走式ストレッチャ30とを備える。X線CT装置10と、PET装置20とは、ネットワークNを介して相互に通信可能に接続される。
【0016】
X線CT装置10は、架台装置であるCT架台装置11と、CTコンソール装置12とを備える。CT架台装置11は、X線管やX線検出器等を備え、後述する自走式ストレッチャ30に配置された被検体(例えば、患者)Pに関するX線の検出データ(「生データ」とも呼ばれる)を取得する。CTコンソール装置12は、コンピュータとしての構成を備える。CTコンソール装置12は、CT架台装置11の動作を制御するとともに、CT架台装置11から出力された複数ビュー分の検出データに対して前処理を施すことで投影データを生成し、投影データに対して再構成処理を施すことでCT画像データを再構成して表示する。
【0017】
CTコンソール装置12は、ネットワークN上の外部装置と情報の送受信を行なう。例えば、CTコンソール装置12は、RIS(Radiology Information System)等の外部装置(図示省略)からネットワークNを介してCTスキャンに係る検査オーダを受信し、また、X線CT装置10によって取得された検出データや、生成された生データ又は再構成画像データを、ネットワークNを介して外部装置に送信する。
【0018】
なお、CT架台装置11の鉛直方向をy軸と定義し、CT架台装置11に対する天板33の挿入方向をz軸方向と定義し、y軸とz軸とに直交する方向をx軸方向と定義する。
【0019】
PET装置20は、架台装置であるPET架台装置21と、コンソール装置であるPETコンソール装置22とを備える。PET架台装置21は、ガンマ線検出器等を備え、後述する自走式ストレッチャ30に配置された患者Pに投与されたテクネシウム等のRI(放射性同位元素)から放射されるガンマ線の検出データ(「生データ」とも呼ばれる)を取得する。PETコンソール装置22は、コンピュータとしての構成を備える。PETコンソール装置22は、PET架台装置21の動作を制御するとともに、検出データに対して前処理を施すことで投影データを生成し、投影データからPET画像データを生成する。
【0020】
PETコンソール装置22は、ネットワークN上の外部装置と情報の送受信を行なう。例えば、PETコンソール装置22は、RIS等の外部装置(図示省略)からネットワークNを介してPETスキャンに係る検査オーダを受信し、また、PET装置20によって取得された検出データや、生成された生データ又は再構成画像データを、ネットワークNを介して外部装置に送信する。
【0021】
なお、PET架台装置21の鉛直方向をy軸と定義し、PET架台装置21に対する天板33の挿入方向をz軸方向と定義し、y軸とz軸とに直交する方向をx軸方向と定義する。
【0022】
ここで、PET画像は、核種の集積、分布状態を表すものであり、それらが人体内組織のどこに存在するかを示すものではない。そこで、人体内の組織の形状を求めるものとしてPET画像とCT画像を重ね合わせて合成された融合画像を生成するために、X線CT装置10によるスキャンと、PET装置20によるスキャンとが併用される意義がある。
【0023】
しかし、X線CT装置とPET装置とでは、又は、複合機であるPET-CT装置のX線CT装置成分とPET装置成分とでは、固定寝台からそれぞれのスキャン中心までの距離が異なるため、固定寝台から送り出される天板の送り量が異なってしまう。天板の送り量が異なると、天板のたわみ量が異なってくるので、CTスキャンにおける天板のたわみ量とPETスキャンにおける天板のたわみ量とにずれが発生する。そのため、CT画像データとPET画像データとを融合する際の位置合わせが困難である。
【0024】
そこで、X線CT装置とPET装置とに適用可能な自走式ストレッチャ30を採用する。自走式ストレッチャ30によれば、CTスキャンの場合と、PETスキャンの場合とで基台32から送り出される天板33の送り量を一定とするので、天板33のたわみ量を一定とすることができる。それにより、CT画像データとPET画像データとを融合する際の位置合わせが容易になる。
【0025】
図2は、自走式ストレッチャ30の構成を示す概略図である。
【0026】
自走式ストレッチャ30は、制御回路31と、基台32と、天板33と、距離計測部34と、駆動部35と、可動部36とを備える。自走式ストレッチャ30は、スキャン対象の患者Pを配置し、制御回路31による制御の下、患者Pを移動させる装置である。
【0027】
制御回路31は、処理回路とメモリ等を備える。制御回路31の処理回路は、専用又は汎用のCPU(central processing unit)、MPU(Micro Processing Unit)、又はGPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサの他、ASIC、プログラマブル論理デバイス等を意味する。プログラマブル論理デバイスとしては、例えば、単純プログラマブル論理デバイス(SPLD:simple programmable logic device)、複合プログラマブル論理デバイス(CPLD:complex programmable logic device)、及び、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA:field programmable gate array)等が挙げられる。なお、制御回路31は、制御部の一例である。
【0028】
また、処理回路は、単一の回路によって構成されてもよいし、複数の独立した回路要素の組み合わせによって構成されてもよい。後者の場合、メモリは回路要素ごとに個別に設けられてもよいし、単一のメモリが複数の回路要素の機能に対応するプログラムを記憶するものであってもよい。
【0029】
制御回路31のメモリは、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ(Flash Memory)等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等によって構成される。メモリは、USB(Universal Serial Bus)メモリ及びDVD(Digital Video Disk)等の可搬型メディアによって構成されてもよい。
【0030】
メモリは、各医用画像診断装置のスキャン中心から自走式ストレッチャ30までの距離を第1の距離Aとして予め記憶する。第1の距離Aは、天板33の送り量W(
図7に図示)に対応する。第1の距離Aは、天板33のたわみ量を一定とするために、固定値である。スキャン中心から自走式ストレッチャ30までの第1の距離Aは、スキャン中心から自走式ストレッチャ30の基準位置(例えば、距離計測部34のセンシング位置)までの距離とすればよい。また、メモリは、各医用画像診断装置のスキャン中心から当該装置の架台装置の前面側壁までの距離を第2の距離Bとして予め記憶する。第2の距離Bは、装置固有のものであり、同一種類の複数のX線CT装置であっても、第2の距離Bが異なる場合がある。
【0031】
図3は、各医用画像診断装置のスキャン中心から自走式ストレッチャ30までの距離(第1の距離)Aと、各医用画像診断装置のスキャン中心から当該装置の架台装置の前面側壁までの距離(第2の距離)Bとを表として示す図である。
【0032】
図3に示すように、医用画像診断システム1におけるX線CT装置10の第1の距離Aは、「a」と設定され、第2の距離Bは、「b1」と設定される。一方で、医用画像診断システム1におけるPET装置20の第1の距離Aは、「a」と設定され、第2の距離Bは、「b1」と設定される。X線CT装置10の第1の距離Aと、PET装置20の第1の距離Aとを同一の「a」とすることで、X線CT装置10とPET装置20とで同一部位をスキャンする場合に、天板33の送り量を一定とすることができる。ただし、CT架台装置11と、PET架台装置21とでz軸方向の厚みが異なるので、両者で第2の距離Bは異なり、また、CT架台装置11と自走式ストレッチャ30との距離(
図5(A)に図示する「a-b1」)と、PET架台装置21と自走式ストレッチャ30との距離(
図5(B)に図示する「a-b2」)とが異なってくる。
【0033】
図2の説明に戻って、基台32は、上部に天板33を配置する筐体である。基台32は、制御回路31による制御により駆動する駆動部35の動力により、上部の天板33を下部に対してy軸正方向及び負方向に昇降可能である。
【0034】
天板33は、基台32の上部に設けられ、患者Pを配置可能な形状を有する板である。天板33は、制御回路31による制御により駆動する駆動部35の動力により、基台32に対してz軸正方向及び負方向に移動可能である。
【0035】
距離計測部34は、基台32又は天板33に設けられ、CT架台装置11(及び、PET架台装置21)に対する距離を計測する。距離計測部34は、CT架台装置11(及び、PET架台装置21)に対して、基台32がz軸正方向に移動して近づいている場合に、CT架台装置11の正面側壁からの距離を計測するものである。これにより、CT架台装置11の正面側壁からの所定の位置で、自走式ストレッチャ30を停止させることができる。
【0036】
例えば、距離計測部34は、光学カメラである。CT架台装置11の正面側壁に、目印となるような模様等を設けておけば、光学カメラが捉えた模様の大きさに基づいて、CT架台装置11の正面側壁からの距離を計測することができる。なお、距離計測部34は、光学カメラに限定されるものではなく、例えば、レーザ距離センサ、又は、超音波センサ等であってもよい。
【0037】
駆動部35は、モータ又はアクチュエータ等の駆動機構を備える。駆動部35は、制御回路31による制御により駆動して、基台32の上部を下部に対して昇降させ、天板33を基台32に対して移動させ、又は、可動部36を可動させて基台32全体を移動させる。
【0038】
可動部36は、基台32の下部に設けられる。例えば、可動部36は、車輪である。可動部36は、制御回路31による制御により駆動する駆動部35の動力により回転し、床面上で基台32を移動可能である。
【0039】
図4は、自走式ストレッチャ30の機能を示すブロック図である。
【0040】
制御回路31は、メモリ(図示省略)に記憶されたコンピュータプログラムを実行することで、位置制御機能F1と、高さ制御機能F2と、天板送り制御機能F3とを実現する。なお、機能F1~F3の全部又は一部は、自走式ストレッチャ30のコンピュータプログラムの実行により実現される場合に限定されるものではなく、自走式ストレッチャ30にASIC等の回路として備えられる場合であってもよい。また、機能F1~F3の全部又は一部は、自走式ストレッチャ30のみならず、コンソール装置12,22側の制御回路(図示省略)によって実現される場合もある。
【0041】
位置制御機能F1は、距離計測部34によって計測された距離に基づいて可動部36のための駆動部35を制御して可動部36を動作させることで、CT架台装置11(及び、PET架台装置21)に対する、基台32(又は、自走式ストレッチャ30全体)に位置を制御する機能を含む。位置制御機能F1は、基台32(又は、自走式ストレッチャ30全体)を院内で移動させ、目的とする医用画像診断装置の架台装置の前面に配置することができる。なお、位置制御機能F1は、位置制御部の一例である。
【0042】
図5は、複数の医用画像診断装置の間における、自走式ストレッチャ30の天板33の送り量が一定になるような制御を説明するための図である。
【0043】
図5(A)は、CT架台装置11に対する、自走式ストレッチャ30のz軸方向の位置を示す図である。位置制御機能F1は、
図3に示す第1の距離A「a」と、第2の距離B「b1」とにより、送り量Wを一定とする場合のCT架台装置11の前面側壁から自走式ストレッチャ30の基準位置(例えば、距離計測部34のセンシング位置)との距離を、「a-b1」と求めることができる。そこで、位置制御機能F1は、距離計測部34で計測された距離に基づいて、CT架台装置11の前面側壁から距離計測部34のセンシング位置との距離が「a-b1」となるように、可動部36の駆動部35を制御して基台32(又は、自走式ストレッチャ30自身)の位置を制御する。この制御により、位置制御機能F1は、CT架台装置11のスキャン中心から自走式ストレッチャ30までの距離を、固定値「a」とすることができる。
【0044】
また、
図5(B)は、PET架台装置21に対する、自走式ストレッチャ30のz軸方向の位置を示す図である。位置制御機能F1は、
図3に示す第1の距離A「a」と、第2の距離B「b2」とにより、送り量Wを一定とする場合のPET架台装置21の前面側壁から自走式ストレッチャ30の基準位置(例えば、距離計測部34のセンシング位置)との距離を、「a-b2」と求めることができる。そこで、位置制御機能F1は、距離計測部34で計測された距離に基づいて、PET架台装置21の前面側壁から距離計測部34のセンシング位置との距離が「a-b2」となるように、可動部36の駆動部35を制御して基台32(又は、自走式ストレッチャ30自身)の位置を制御する。この制御により、位置制御機能F1は、PET架台装置21のスキャン中心から自走式ストレッチャ30までの距離を、固定値「a」とすることができる。
【0045】
また、医用画像診断システム1は、CT架台装置11(及び、PET架台装置21)に対する自走式ストレッチャ30の接近を補助する機構を設けてもよい。
【0046】
図6は、自走式ストレッチャ30の接近を補助する機構を説明するための図である。
【0047】
図6(A)は、CT架台装置11(及び、PET架台装置21)の前面の床面に設けられる突起部Uを示す。また、自走式ストレッチャ30の下部には突起部Uに対する受けとなり、z軸方向に延設されるガイド孔を形成するガイドGが設けられる。自走式ストレッチャ30がCT架台装置11に接近し、自走式ストレッチャ30のガイドGが突起部Uを挟み込むことで、自走式ストレッチャ30の左右方向(x軸方向)のずれを防止することができる。
【0048】
図6(B)は、CT架台装置11(及び、PET架台装置21)の前面の床面に設けられる可動部36(例えば、車輪)のz軸方向の移動をガイドする4本のガイドレールRを示す。自走式ストレッチャ30がCT架台装置11に接近し、自走式ストレッチャ30の可動部36が2本のガイドレールRの間の溝にそれぞれ進入することで、自走式ストレッチャ30の左右方向(x軸方向)のずれを防止することができる。
【0049】
図4の説明に戻って、高さ制御機能F2は、基台32を駆動させるための駆動部35を制御して基台32の上部を下部に対して昇降させることで、基台32の上部に設けられた天板33の高さを制御する機能を含む。なお、高さ制御機能F2は、高さ制御部の一例である。
【0050】
天板送り制御機能F3は、天板33を駆動させるための駆動部35を制御して天板33を基台32に対して移動させることで、天板33の架台装置への送りを制御する機能を含む。ここで、上述したように、天板送り制御機能F3は、架台装置を備える複数の医用画像診断装置の間で第1の距離A、つまり、送り量Wが一定となるように制御することで、当該複数の医用画像診断装置の間で天板33のたわみ量を一定にすることができる。
【0051】
図7は、医用画像診断装置間における、自走式ストレッチャ30の天板33の送り量を説明するための図である。
【0052】
図7(A)は、CT架台装置11に対する、自走式ストレッチャ30の天板33の送り量を示す図である。また、
図7(B)は、PET架台装置21に対する、自走式ストレッチャ30の天板33の送り量を示す図である。スキャン中心C1,C2から架台装置の前面側壁までの第2の距離Bが「b1」、「b2」で異なるCT架台装置11とPET架台装置21とで同一部位をスキャンする場合に、
図5に示す制御により、天板33の基台32に対する送り量を一定にすることができる。これにより、天板33のたわみ量の差異に起因する画像位置合せの困難性を解消することができる。
【0053】
また、医用画像診断システム1にPET装置20等の核医学診断装置が備えられる場合に、自走式ストレッチャ30を採用すると、看護婦等の操作者が、RIが投与された患者Pに付き添う必要なくスキャンが行われる。そのため、操作者が被ばくする危険を回避することもできる。
【0054】
図8及び
図9は、自走式ストレッチャ30の制御方法をフローチャートとして示す図である。
図8及び
図9において、「ST」に数字を付した符号はフローチャートの各ステップを示す。
【0055】
図8において、患者Pに対するCTスキャンと、PETスキャンとを指示する検査オーダを受け、看護婦等の操作者は、自走式ストレッチャ30の天板33上に患者Pを配置させる(ステップST1)。自走式ストレッチャ30の位置制御機能F1は、CT検査室まで基台32(又は、自走式ストレッチャ30自体)を移動させ、X線CT装置10のCT架台装置11に対する位置をセットする(ステップST2)。例えば、
図2に示す第1の距離A「a」と、第2の距離B「b1」とが予め設定されている場合、位置制御機能F1は、CT架台装置11からの距離が「a-b1」となる位置に自走式ストレッチャ30を配置する。
【0056】
ここで、自走式ストレッチャ30の院内での移動は、院内における自走式ストレッチャ30の位置情報に基づいて行われる。院内での移動は、病室から検査室、第1の検査室から第2の検査室(例えば、CT検査室からPET検査室)、検査室から病室等の移動を含む。そして、自走式ストレッチャ30の院内での位置情報は、例えば、マルチ衛星測位システム(GNSS:Global Navigation Satellite System Profile)、全地球測位システム(GPS:Global Positioning Satellite)、磁場センサ、Kinect(登録商標)等の画像センサ、又は、それらの組み合わせ等を利用して取得される。
【0057】
ステップST2により自走式ストレッチャ30が所定の位置にセットされると、高さ制御機能F2は、患者Pが配置された天板33を上昇させる(ステップST3)。ステップST3において、高さ制御機能F2は、CTコンソール装置12から無線によって受信された指示に基づいて天板33を上昇させてもよいし、予め設定されたCT架台装置11のボアの高さに基づいて天板33を上昇させてもよい。
【0058】
ステップST3により自走式ストレッチャ30の天板33が所定の高さにセットされると、天板送り制御機能F3は、患者Pのスキャン部位がスキャン中心に一致するまで、天板33を基台32に対して送り出す(ステップST4)。そして、CTコンソール装置12の制御により、スキャン部位のCTスキャンが行われる(ステップST5)。
【0059】
ステップST5によるCTスキャンが終了すると、天板送り制御機能F3は、ステップST4によって送り出された天板33をホーム位置まで戻す(ステップST6)。高さ制御機能F2は、患者Pが配置された天板33をホーム位置まで下降させる(ステップST7)。位置制御機能F1は、PET検査室まで基台32(又は、自走式ストレッチャ30自体)を移動させる。そして、患者Pに対してRIが投与される。
【0060】
図9に進んで、位置制御機能F1は、PET装置20のPET架台装置21に対する位置をセットする(ステップST12)。例えば、
図2に示す第1の距離A「a」と、第2の距離B「b2」とが予め設定されている場合、位置制御機能F1は、PET架台装置21からの距離が「a-b2」となる位置に自走式ストレッチャ30を配置する。
【0061】
ステップST12により自走式ストレッチャ30が所定の位置にセットされると、高さ制御機能F2は、患者Pが配置された天板33を上昇させる(ステップST13)。ステップST13において、高さ制御機能F2は、PETコンソール装置22から無線によって受信された指示に基づいて天板33を上昇させてもよいし、予め設定されたPET架台装置21のボアの高さに基づいて天板33を上昇させてもよい。
【0062】
ステップST13により自走式ストレッチャ30の天板33が所定の高さにセットされると、天板送り制御機能F3は、患者Pのスキャン部位がスキャン中心に一致するまで、天板33を基台32に対して送り出す(ステップST14)。そして、PETコンソール装置22の制御により、スキャン部位のPETスキャンが行われる(ステップST15)。
【0063】
ステップST15によるPETスキャンが終了すると、天板送り制御機能F3は、ステップST14によって送り出された天板33をホーム位置まで戻す(ステップST16)。高さ制御機能F2は、患者Pが配置された天板33をホーム位置まで下降させる(ステップST17)。そして、患者Pを、自走式ストレッチャ30の天板33から降ろす(ステップST18)。
【0064】
以上のように、複数の医用画像診断装置に寝台装置として適用できる自走式ストレッチャ30によれば、複数の架台装置のz軸方向の厚みが異なる場合であっても、天板33の送り量を一定にすることで、天板33のたわみ量を一定にすることができる。それにより、複数の医用画像診断装置でそれぞれ生成された医用画像データを融合する際の位置合せが容易になる。
【0065】
(第1の変形例)
ここまで、天板33の送り量、つまり、スキャン中心から自走式ストレッチャ30までの距離を予め設定された固定値とする場合について説明したが、その場合に限定されるものではない。第1の医用画像診断装置でスキャン中心から自走式ストレッチャ30までの距離を任意に設定し、第2の医用画像診断装置でスキャンする場合に、第1の医用画像診断装置の場合に設定された当該距離に合わせるように距離が制御されてもよい。
【0066】
制御回路31のメモリは、第1の距離B(
図3に図示)を予め記憶している。
【0067】
図10は、各医用画像診断装置の架台装置の前面側壁から自走式ストレッチャまでの距離(第3の距離)を表として示す図である。
【0068】
距離計測部34は、第1の医用画像診断装置であるX線CT装置10を用いて第1のスキャンを行った場合の、CT架台装置11から基台32までの距離である第3の距離C「c1」を計測する。位置制御機能F1は、第2の医用画像診断装置であるPET装置20を用いて第2のスキャンを行う際、予め設定された第2の距離B「b1」,「b2」と第3の距離C「c1」とに基づいて、CT架台装置11のスキャン中心から基台32までの距離A「c1+b1」と、PET架台装置21から基台32までの距離C「c1+b1-b2」を求める。
【0069】
そして、位置制御機能F1は、PET装置20で第2のスキャンを行う際、PET架台装置21から基台32までの距離Cが「c1+b1-b2」となるように基台32の位置を制御する。これにより、CT架台装置11のスキャン中心から基台32までの距離Aと、PET架台装置21のスキャン中心から基台32までの距離Aとが、「c1+b1」で一定となる。なお、CT架台装置11固有の第2の距離B「b1」と、CT架台装置11でスキャンした際の第3の距離C「c1」とは、CTスキャンにより得られたCT画像データに付帯情報として付加させておけばよい。例えば、CT画像データを含むDICOM(Digital Imaging and Communications in Medicine)ファイルのプライベートタグに第2の距離B「b1」と第3の距離C「c1」を付加させる。そして、PET架台装置21に自走式ストレッチャ30をセットする際、位置制御機能F1は、画像サーバ(図示省略)からネットワークNを介してDICOMファイルを取得し、そのDICOMファイルに付加された第2の距離B「b1」と第3の距離C「c1」とを取得する。そして、位置制御機能F1は、取得されたそれらとPET架台装置21固有の第2の距離「b2」とに基づいて、PET架台装置21から基台32までの第3の距離C「c1+b1-b2」を求める。
【0070】
以上のように、複数の医用画像診断装置に寝台装置として適用できる自走式ストレッチャ30の変形例によれば、上述の効果に加え、第1の医用画像診断装置を用いたスキャンにおいて、スキャン中心から自走式ストレッチャ30までの距離A(つまり、天板33の送り量)を任意に設定することができる。
【0071】
(第2の実施形態)
図11は、第2の実施形態に係る自走式ストレッチャの構成を示す概略図である。
【0072】
自走式ストレッチャ30Aは、制御回路31と、基台32と、天板33と、距離計測部34と、駆動部35と、可動部36と、通信部37とを備える。自走式ストレッチャ30Aは、スキャン対象の患者Pを配置し、制御回路31による制御の下、患者Pを移動させる装置である。
【0073】
通信部37は、院内のネットワークと無線通信を行う構成を備える。なお、
図11において、
図2に示す自走式ストレッチャ30と同一部材には同一符号を付して説明を省略する。
【0074】
図12は、自走式ストレッチャ30Aの機能を示すブロック図である。
【0075】
制御回路31は、メモリ(図示省略)に記憶されたコンピュータプログラムを実行することで、位置制御機能F1と、高さ制御機能F2と、天板送り制御機能F3と、最適化処理機能F4とを実現する。なお、機能F1~F4の全部又は一部は、自走式ストレッチャ30Aのコンピュータプログラムの実行により実現される場合に限定されるものではなく、自走式ストレッチャ30AにASIC等の回路として備えられる場合であってもよい。また、機能F1~F4の全部又は一部は、自走式ストレッチャ30Aのみならず、コンソール装置12,22側の制御回路(図示省略)によって実現される場合もある。なお、
図12において、
図4に示す自走式ストレッチャ30と同一部材には同一符号を付して説明を省略する。
【0076】
最適化処理機能F4は、通信部37を介して患者Pに関する検査計画を取得して、検査計画に基づいて、院内の検査順序の最適化を行う機能を含む。なお、最適化処理機能F4は、最適化処理部の一例である。
【0077】
位置制御機能F1は、上述の機能に加え、最適化処理機能F4によって最適化された検査順序に従って、可動部36のための駆動部35を制御して、基台32(自走式ストレッチャ30自体)を移動させる機能を含む。
【0078】
自走式ストレッチャ30Aは院内ネットワークと無線通信でき、他の患者の検査内容を鑑みて、最適な検査計画に基づいて患者を検査室に移動させるように制御する機能を有する。
図13を用いて、検査計画に基づいて患者を検査室に移動させる場合について説明する。
【0079】
図13は、検査の順序の最適化方法を説明するための図である。
【0080】
例えば、
図13に示すように3名の患者(患者P1~P3)の検査計画が存在する場合について説明する。最適化処理機能F4は、以下の目標や制約条件に基づいて、3名の患者における検査の順序の最適化を行う。
【0081】
最適化処理機能F4は、3名の患者P1~P3のすべての待ち時間を最小化することを目標とし、「採血」は同時に2名まで受け付けられ、他は同時に1名まで受け付けられるという制約条件に基づいて、検査の順序を最適化する。
【0082】
また、3名に加え、途中で4人目の患者P4の検査計画が追加された場合には、最適化処理機能F4は、患者P1~P3で決定した最適化順序は変更しない、という制約条件を加える。
【0083】
患者P1と、患者P2とを優先したい場合がある。その場合、最適化処理機能F4は、患者P1,P2の待ち時間を最小化することを目標とし、「採血」は同時に2名まで受け付けられ、他は同時に1名まで受け付けられるという制約条件に基づいて、患者P1,P2の検査の順序を最適化する。その後、最適化処理機能F4は、患者P3の検査計画を最適化する。
【0084】
また、最適化処理機能F4は、3名の患者P1~P3のすべての待ち時間を最小化することを目標とし、「採血」は同時に2名まで受け付けられ、他は同時に1名まで受け付けられ、患者P1,P2で決定した最適化順序は変更しないという制約条件に基づいて、検査の順序を最適化する。
【0085】
さらに、3名の患者P1~P3のうち、患者P3のみを患者P1,P2から隔離したい場合がある。その場合、最適化処理機能F4は、患者P3が患者P1,P2と同じ時間に同じ場所に存在しない、という制約条件を加える。
【0086】
以上のように、自走式ストレッチャ30Aによれば、自走式ストレッチャ30の効果に加え、院内の検査を効率的に行うことができる。
【0087】
なお、移動制御機能F1は、移動制御部の一例である。高さ制御機能F2は、高さ制御部の一例である。天板送り制御機能F3は、天板送り制御部の一例である。最適化処理機能F4は、最適化処理部の一例である。
【0088】
以上説明した少なくとも1つの第1の実施形態によれば、天板のたわみ量を制御することができる。
【0089】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0090】
1 医用画像診断システム
10 X線CT装置
11 CT架台装置
20 PET装置
21 PET架台装置
30,30A 自走式ストレッチャ
31 制御回路
32 基台
33 天板
34 距離計測部
35 駆動部
36 可動部
37 通信部
F1 位置制御機能
F2 高さ制御機能
F3 天板送り制御機能
F4 最適化処理機能