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  • 特許-複合成形品の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-10
(45)【発行日】2024-07-19
(54)【発明の名称】複合成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 65/02 20060101AFI20240711BHJP
   B29C 45/14 20060101ALI20240711BHJP
   B29C 45/16 20060101ALI20240711BHJP
   B29C 65/70 20060101ALI20240711BHJP
   B29K 23/00 20060101ALN20240711BHJP
   B29K 59/00 20060101ALN20240711BHJP
【FI】
B29C65/02
B29C45/14
B29C45/16
B29C65/70
B29K23:00
B29K59:00
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020125748
(22)【出願日】2020-07-22
(65)【公開番号】P2022021882
(43)【公開日】2022-02-03
【審査請求日】2023-02-13
(73)【特許権者】
【識別番号】523168917
【氏名又は名称】グローバルポリアセタール株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】303060664
【氏名又は名称】日本ポリエチレン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】藤本 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】松本 律哉
【審査官】小山 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/045467(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/021413(WO,A1)
【文献】特開2003-191387(JP,A)
【文献】特開平10-029276(JP,A)
【文献】特開2003-220667(JP,A)
【文献】特開2002-192663(JP,A)
【文献】特開平11-091040(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 65/00-65/82
B29C 45/00-45/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアセタール樹脂と無水マレイン酸変性されたポリエチレン樹脂とを含み、前記ポリアセタール樹脂と前記無水マレイン酸変性されたポリエチレン樹脂との質量比率が20~49:80~51である樹脂組成物aから形成された部材Aと、
ポリアセタール樹脂を含む樹脂組成物bから形成された部材Bを加熱により接合すること、および、
少なくとも前記部材Aを、110~150℃でアニール処理を行うことを含み、
前記樹脂組成物bに含まれるポリアセタール樹脂は2価のオキシメチレン基のみを構成単位として含むホモポリマー、および/または、2価のオキシメチレン基と、2価のオキシエチレン基のみを構成単位として含むコポリマーである、複合成形品の製造方法。
【請求項2】
前記アニール処理の温度が、前記ポリエチレン樹脂の融解ピーク温度よりも高く、かつ、前記樹脂組成物aに含まれるポリアセタール樹脂の融解ピーク温度よりも低い温度である、請求項1に記載の複合成形品の製造方法。
【請求項3】
前記無水マレイン酸変性されたポリエチレン樹脂のマレイン酸変性率が0.01質量%以上である、請求項1または2に記載の複合成形品の製造方法。
【請求項4】
前記部材Aの前記アニール処理を行った後、前記部材Bと接合することを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の複合成形品の製造方法。
【請求項5】
前記部材Aと前記部材Bを接合した後、前記アニール処理を行う、請求項1~3のいずれか1項に記載の複合成形品の製造方法。
【請求項6】
前記接合を、溶着、インサート成形または多色成形により行う、請求項1~5のいずれか1項に記載の複合成形品の製造方法。
【請求項7】
さらに、ポリエチレン樹脂を含む樹脂組成物cから形成された部材Cを、部材Aと接合することを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の複合成形品の製造方法。
【請求項8】
前記複合成形品が燃料タンク接続用部品である、請求項1~7のいずれか1項に記載の複合成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジニアリングプラスチックであるポリアセタール樹脂は、機械的特性、電気的特性、摺動性および耐薬品性に優れているため、自動車部品、電気・電子機器部品、OA部品などに広く利用されている。これらの中で、特にポリアセタール樹脂の優れた耐薬品性を生かした用途として、自動車の燃料タンクに接続されるフランジ、バルブ、チューブ等、ガソリンなどの燃料と直接接触する燃料タンク接続用部品が挙げられる。
【0003】
一方、近年、車体を軽量化して燃費を向上させる目的で、自動車の燃料タンクの材料としてポリエチレン樹脂が使用されるようになっている。
【0004】
ここで、ポリエチレン樹脂を使用した燃料タンクに上記のポリアセタール樹脂製の燃料タンク接続用部品を取り付ける方法としては、例えばポリアセタール樹脂とポリエチレン樹脂とを溶接させる方法等が知られている。しかしながら、ポリアセタール樹脂とポリエチレン樹脂との界面の溶着性は通常は低く、溶着部分が外力によって容易に剥離し、樹脂間の界面から揮発燃料が漏洩してしまうという問題があった。特に、燃料は高い揮発性を有し、大気汚染の原因となり得るため、このような燃料の漏洩は世界的に規制されつつある。そこで、ポリアセタール樹脂成形体と、ポリエチレン樹脂成形体とを接着して一体化することができる技術の開発が検討されている(特許文献1、特許文献2)。具体的には、特許文献1および特許文献2では、ポリアセタール樹脂成形体とポリエチレン樹脂成形体を接合する中間層を用いている。かかる中間層は、ポリアセタール樹脂と無水マレイン酸変性されたポリエチレン樹脂を含む樹脂組成物から形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2014/021413号
【文献】国際公開第2020/045467号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の通り、中間層を用いて、ポリアセタール樹脂成形体と、ポリエチレン樹脂成形体とを接着して一体化することができる技術は種々検討されているが、技術革新に伴い、さらなる飛躍が求められている。具体的には、ポリアセタール樹脂と無水マレイン酸変性されたポリエチレン樹脂とを含む樹脂組成物aから形成された部材Aとポリアセタール樹脂を含む樹脂組成物bから形成された部材Bの接着強度のさらなる向上が求められている。
本発明はかかる課題を解決することを目的とするものであって、ポリアセタール樹脂と無水マレイン酸変性されたポリエチレン樹脂とを含む樹脂組成物aから形成された部材Aとポリアセタール樹脂を含む樹脂組成物bから形成された部材Bの接着強度が高い複合成形品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題のもと、本発明者が検討を行った結果、ポリアセタール樹脂と無水マレイン酸変性されたポリエチレン樹脂とを含む樹脂組成物aから形成された部材Aをアニール処理することにより、上記課題を解決しうることを見出した。
具体的には、下記手段により、上記課題は解決された。
<1>ポリアセタール樹脂と、無水マレイン酸変性されたポリエチレン樹脂とを含み、前記ポリアセタール樹脂と前記無水マレイン酸変性されたポリエチレン樹脂との質量比率が20~49:80~51である樹脂組成物aから形成された部材Aと、ポリアセタール樹脂を含む樹脂組成物bから形成された部材Bを加熱により接合すること、および、少なくとも前記部材Aを、110~150℃でアニール処理を行うことを含む、複合成形品の製造方法。
<2>前記アニール処理の温度が、前記ポリエチレン樹脂の融解ピーク温度よりも高く、かつ、前記樹脂組成物aに含まれるポリアセタール樹脂の融解ピーク温度よりも低い温度である、<1>記載の複合成形品の製造方法。
<3>前記無水マレイン酸変性されたポリエチレン樹脂のマレイン酸変性率が0.01質量%以上である、<1>または<2>に記載の複合成形品の製造方法。
<4>前記部材Aの前記アニール処理を行った後、前記部材Bと接合することを含む、<1>~<3>のいずれか1つに記載の複合成形品の製造方法。
<5>前記部材Aと前記部材Bを接合した後、前記アニール処理を行う、<1>~<3>のいずれか1つに記載の複合成形品の製造方法。
<6>前記接合を、溶着、インサート成形または多色成形により行う、<1>~<5>のいずれか1つに記載の複合成形品の製造方法。
<7>さらに、ポリエチレン樹脂を含む樹脂組成物cから形成された部材Cを、部材Aと接合することを含む、<1>~<6>のいずれか1つに記載の複合成形品の製造方法。
<8>前記複合成形品が燃料タンク接続用部品である、<1>~<7>のいずれか1つに記載の複合成形品の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、ポリアセタール樹脂と無水マレイン酸変性されたポリエチレン樹脂とを含む樹脂組成物aから形成された部材Aとポリアセタール樹脂を含む樹脂組成物bから形成された部材Bの接着強度が高い複合成形品の製造方法を提供可能になった。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の複合成形品の製造方法で製造される複合成形品の一実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という)について詳細に説明する。なお、以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明は本実施形態のみに限定されない。
なお、本明細書において「~」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本明細書において、各種物性値および特性値は、特に述べない限り、23℃におけるものとする。
【0011】
本実施形態の複合成形品の製造方法は、ポリアセタール樹脂と、無水マレイン酸変性されたポリエチレン樹脂とを含み、ポリアセタール樹脂と無水マレイン酸変性されたポリエチレン樹脂との質量比率が20~49:80~51である樹脂組成物aから形成された部材Aと、ポリアセタール樹脂を含む樹脂組成物bから形成された部材Bを加熱により接合すること、および、少なくとも部材Aを、110~150℃でアニール処理を行うことを含むことを特徴とする。このような構成とすることにより、得られる複合成形品の接着強度を高くすることが可能になる。
【0012】
<部材A>
本実施形態における部材Aは、ポリアセタール樹脂と無水マレイン酸変性されたポリエチレン樹脂とを含み、ポリアセタール樹脂と無水マレイン酸変性されたポリエチレン樹脂との質量比率が20~49:80~51である樹脂組成物aから形成された部材である。
部材Aは、部材B(ポリアセタール樹脂成形体)と部材C(ポリエチレン樹脂成形体)を接着するための中間層として好ましく用いられる。
部材Aは、樹脂組成物aを射出成形、押出成形等の公知の成形方法によって成形することにより得られる。
部材Aは、アニール処理した後の部材Aは厳密に元の形状を保っていなくてもよく、部材Bや必要により接合される部材Cとの接合に影響がない程度に形状が崩れていてもよい。
【0013】
樹脂組成物aは、ポリアセタール樹脂と無水マレイン酸変性されたポリエチレン樹脂とを、ポリアセタール樹脂と無水マレイン酸変性されたポリエチレン樹脂との質量比率が20~49:80~51となる割合で含む。
【0014】
本実施形態で用いる無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂は、無水マレイン酸で変性されたポリエチレン樹脂であれば、特に制限されることなく用いることができる。無水マレイン酸変性されるポリエチレン樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン樹脂、中密度ポリエチレン樹脂、高圧法低密度ポリエチレン樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂あるいは超低密度ポリエチレン樹脂などを用いることができる。これらは1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂としては、下記式(1)で表される2種の構成単位を含むポリエチレン樹脂が例示される。本実施形態における無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂は、下記式(1)で表される2種の以外の構成単位を含んでいてもよいが、下記式(1)で表される2種の構成単位の合計が無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂を構成する全構成単位の90モル%以上を占めることが好ましい。
式(1)
【化1】
式(1)において、mおよびnは、それぞれ、0を超える数である。mとnの範囲は特に定めるものではないが、一例をあげると、mは0.02~5.5であり、nは830~970である。
本実施形態における無水マレイン酸基とは、ポリエチレン樹脂に結合している、無水マレイン酸基をいう。
【0015】
無水マレイン酸変性されたポリエチレン樹脂における無水マレイン酸の変性率は特に制限されるものではないが、前記無水マレイン酸変性率が、無水マレイン酸変性されたポリエチレン樹脂(無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂)の0.01質量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.05質量%以上であり、さらに好ましくは0.10質量%以上であり、一層好ましくは0.15質量%以上であり、さらに一層好ましくは、0.19質量%以上である。また、無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂の無水マレイン酸変性率は、1.0質量%以下であることが好ましく、0.8質量%以下であることがより好ましく、0.50質量%以下であることがさらに好ましく、0.30質量%以下であることが一層好ましい。無水マレイン酸変性率を上記下限値以上とすることにより、部材Aが、部材Bに対してより優れた接着性を有するため、部材Bと部材Aとの剥離をより十分に抑制することができる。無水マレイン酸の変性率が上限値以下であることで、モールドデポジットやホルムアルデヒド発生を効果的に抑制できる。さらに、後述するとおり、樹脂組成物aにメラミンを配合する場合、メラミンの作用と相まって、モールドデポジット性やホルムアルデヒドの発生を効果的に抑制することができる。
樹脂組成物aが2種以上の無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂を含む場合、無水マレイン酸変性率は、無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂の混合物の無水マレイン酸変性率とする。
【0016】
上記無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂は、ポリエチレン樹脂と、無水マレイン酸と、ラジカル発生剤とを均一混合しポリエチレン樹脂に対して無水マレイン酸をグラフト変性することにより製造できる。このような製造方法としては、具体的には、押出機やバンバリーミキサー、ニーダーなどを用いる溶融混練法、適当な溶媒に溶解させる溶液法、適当な溶媒中に懸濁させるスラリー法、あるいはいわゆる気相グラフト法等が挙げられる。処理温度としては、ポリエチレン樹脂の劣化、酸または酸無水物の分解、使用する過酸化物の分解温度などを考慮して適宜選択されるが、前記の溶融混練法を例に挙げると、処理温度は通常190~350℃であり、とりわけ200~300℃であることが好適である。
【0017】
上記無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂を製造するにあたっては、加熱や洗浄などによって未反応モノマー(不飽和カルボン酸やその誘導体)や副生する諸成分などを除去する方法を採用することができる。
【0018】
グラフト変性に用いるラジカル発生剤としては、ジクミルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、ラウロイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシベンゾエート、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、α,α'-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン、ジ-t-ブチルジパーオキシイソフタレート、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルパーオキシ)バレレート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-ブチルパーオキシアセテート、シクロヘキサノンパーオキサイド、t-ブチルパーオキシラウレート、アセチルパーオキサイドなどの有機過酸化物が挙げられる。これらの中でも、半減期1分を得るための分解温度が、160~200℃のものが好ましい。分解温度が160℃以上であると、原料のポリエチレン樹脂が押出機内で十分可塑化しないうちに分解反応が始まるということを十分に抑制できるため、反応率がより高くなり、逆に分解温度が200℃以下であると、押出機内等で反応が完結しやすくなる。
【0019】
上記無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂の密度は、0.970g/cm3以下であることが好ましく、0.954g/cm3以下であることがより好ましい。0.970g/cm3以下とすることにより、部材Aが、部材Bに対してより優れた接着性を有することが可能となる。また、上記無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂の密度は、0.912g/cm3以上であることが好ましく、0.925g/cm3以上であることがより好ましい。ここで、上記無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂の密度は、JIS K7112に準拠した方法により測定される値をいう。
樹脂組成物aが2種以上の無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂を含む場合、前記密度は、無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂の混合物の密度とする。
【0020】
上記無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂は、融解ピーク温度が100℃以上であることが好ましく、105℃以上であることがより好ましく、110℃以上であることがさらに好ましく、115℃以上であることが一層好ましく、120℃以上であることがより一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、前記部材Aと前記部材Bや前記部材Cとの間の接着性がより良好になる傾向にある。また、前記融解ピーク温度の上限値は、140℃以下であることが好ましく、135℃以下であることがより好ましく、130℃以下であることがさらに好ましい。前記上限値以下とすることにより、アニール処理による接着強度がより向上する傾向にある。
樹脂組成物aが2種以上の無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂を含む場合、前記融解ピーク温度は、最も融解ピーク温度が高い無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂の融解ピーク温度とする。融解ピーク温度は後述する実施例に記載の方法で測定される。
【0021】
上記無水マレイン酸変性されたポリエチレン樹脂のASTM-D1238規格に従い、190℃、2.16kg荷重の条件で測定されるメルトフローレイトは、10g/分以下であることが好ましく、2.5g/10分以下であることがより好ましく、2.0g/10分以下であることがさらに好ましく、1.0g/10分以下であることが一層好ましく、0.7g/10分以下であることがより一層好ましい。ポリエチレン樹脂のメルトフローレイトの下限値は、特に定めるものではないが、好ましくは0g/10分超であり、より好ましくは0.1g/10分以上であり、さらに好ましくは0.2g/10分以上である。特に、ポリエチレン樹脂の190℃、2.16kg荷重の条件で測定されるメルトフローレイトを上記上限値以下とすることでこれを超える場合に比べて、樹脂組成物aの靭性が向上し、部材Bに対する優れた接着性を示す傾向にある。
樹脂組成物aが2種以上の無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂を含む場合、前記メルトフローレイトは、無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂の混合物のメルトフローレイトとする。
【0022】
一方、本実施形態で用いるポリアセタール樹脂は、ポリアセタール樹脂は2価のオキシメチレン基のみを構成単位として含むホモポリマーであっても、2価のオキシメチレン基と、2価のオキシエチレン基とを構成単位として含むコポリマーであってもよいが、2価のオキシメチレン基と、2価のオキシエチレン基を構成単位として含むコポリマーであることが好ましい。ポリアセタール樹脂が2価のオキシメチレン基と、2価のオキシエチレン基を構成単位として含むコポリマーであると、熱安定性に優れるため、複合成形品もより熱安定性に優れる。
【0023】
上記ポリアセタール樹脂が2価のオキシメチレン基と、2価のオキシエチレン基とを構成単位として含むコポリマーである場合、ポリアセタール樹脂において、オキシメチレン基100molに対するオキシエチレン基の割合(コモノマー量)は特に制限されるものではないが、1.0mol以上であることが好ましい。この場合、オキシメチレン基100molに対してオキシエチレン基が1.0mol未満の割合で含まれている場合と比べて、より接着性が向上する傾向にある。オキシメチレン基100molに対するオキシエチレン基の割合はさらに好ましくは1.2mol以上であり、特に好ましくは1.4mol以上である。また、オキシメチレン基100molに対するオキシエチレン基の割合は5.5mol以下であることが好ましく、4.0mol以下であることがより好ましく、3.0mol以下であってもよい。
樹脂組成物aが2種以上のポリアセタール樹脂を含む場合、前記キシメチレン基100molに対するオキシエチレン基の割合は、ポリアセタール樹脂の混合物における割合とする。
【0024】
上記ポリアセタール樹脂を製造するためには通常、主原料としてトリオキサンが用いられる。また、ポリアセタール樹脂中にオキシエチレン基を導入するには、例えば1,3-ジオキソランまたはエチレンオキシド等をコモノマーとして用いればよい。
【0025】
上記ポリアセタール樹脂は、融解ピーク温度が145℃以上であることが好ましく、150℃以上であることがより好ましく、155℃以上であることがさらに好ましく、160℃以上であることが一層好ましい。前記下限値以上とすることにより、アニール処理時に形状をより保持し易くなる。また、前記融解ピーク温度の上限値は、175℃以下であることが好ましく、170℃以下であることがより好ましい。前記上限値以下とすることにより、部材の接着強度がより上昇する傾向にある。
樹脂組成物aが2種以上のポリアセタール樹脂を含む場合、前記融解ピーク温度は、最も融解ピーク温度が高いポリアセタール樹脂の融解ピーク温度とする。融解ピーク温度は後述する実施例に記載の方法で測定される。
【0026】
ポリアセタール樹脂の190℃、2.16kg荷重の条件で測定されるメルトフローレイト(MFR)は特に制限されるものではないが、70g/10分以下であることが好ましく、50g/10分以下であることがより好ましく、20g/10分以下であることがさらに好ましく、10g/10分以下であることが一層好ましく、3.0g/10分以下であることが特に一層好ましい。ポリアセタール樹脂のメルトフローレイトの下限値は、特に定めるものではないが、好ましくは0.02g/10分以上であり、より好ましくは1.0g/10分以上であり、さらに好ましくは1.3g/10分以上である。
ポリアセタール樹脂のメルトフローレイトを上記上限値以下とすることにより、部材Aとしたときに、ポリエチレン樹脂成形体および部材B(ポリアセタール樹脂成形体)に対してより優れた接着性を発揮し得る。
樹脂組成物aが2種以上のポリアセタール樹脂を含む場合、前記メルトフローレイトは、ポリアセタール樹脂の混合物のメルトフローレイトとする。
【0027】
本実施形態で用いる樹脂組成物aにおいては、ポリアセタール樹脂と無水マレイン酸変性されたポリエチレン樹脂との質量比率が20~49:80~51である。前記質量比率は、ポリアセタール樹脂と無水マレイン酸変性されたポリエチレン樹脂の合計を100としたときの比率である。前記比率は、ポリアセタール樹脂と無水マレイン酸変性されたポリエチレン樹脂の合計を100としたときに、ポリアセタール樹脂の質量比率が、25以上であることが好ましく、28以上がより好ましく、また、45以下であることが好ましく、40以下であることがより好ましく、35以下であることがさらに好ましい。
前記樹脂組成物aは、ポリアセタール樹脂および無水マレイン酸変性されたポリエチレン樹脂をそれぞれ1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
前記樹脂組成物aにおいて、ポリアセタール樹脂および無水マレイン酸変性されたポリエチレン樹脂の合計量が、樹脂組成物aの85質量%以上を占めることが好ましく、90質量%以上を占めることがより好ましく、95質量%以上を占めることがさらに好ましい。前記ポリアセタール樹脂および無水マレイン酸変性されたポリエチレン樹脂の合計量の上限は100質量%であることが好ましい。
【0028】
前記樹脂組成物aは、上記各成分以外の他の成分を含んでいてもよい。具体的には、他の成分として、官能基含有化合物、無機充填剤、熱安定剤、酸化防止剤、耐候安定剤、離型剤、潤滑剤、結晶核剤、帯電防止剤、着色剤(顔料、染料)等が挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を組み合せて用いることができる。
また、本実施形態における樹脂組成物aは、無機充填剤を実質的に含まない構成とすることができる。実質的に含まないとは、本実施形態における樹脂組成物aの無機充填剤の含有量が1質量%未満であることをいう。
【0029】
上記官能基含有化合物としては、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基およびカルボジイミド基からなる群より選択される少なくとも1種が例示され、ヒンダードアミン化合物、カルボジイミド化合物、トリアジン化合物および尿素化合物から選択される少なくとも1種が好ましく、トリアジン化合物がさらに好ましく、メラミン化合物が一層好ましい。官能基含有化合物としては、特開2019-038990号公報の段落0030~0034の記載を参酌することができ、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0030】
前記メラミン化合物としては、メラミン、メラミンシアヌレート、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、メラミン縮合体(メラム、メレム、メロン)、メチロールメラミン等が挙げられ、中でもメラミンが好ましい。
樹脂組成物aにおけるメラミン化合物の含有量は、特に限定されないが、0.005質量%以上であることが好ましく、0.01質量%以上であることがより好ましく、0.02質量%以上であることがさらに好ましい。上限としては、1質量%以下であることが好ましく、0.8質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることがさらに好ましい。
樹脂組成物aは、メラミン化合物を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0031】
<部材B>
本実施形態における部材Bは、ポリアセタール樹脂を含む樹脂組成物bから形成された部材である。
前記樹脂組成物bは、ポリアセタール樹脂を含む。ポリアセタール樹脂は、前記樹脂組成物aに含まれるポリアセタール樹脂と同義であり、好ましい範囲も同様である。すなわち、樹脂組成物bに含まれるポリアセタール樹脂の190℃、2.16kg荷重の条件で測定されるメルトフローレイト(MFR)は特に制限されるものではないが、70g/10分以下であることが好ましく、50g/10分以下であることがより好ましく、30g/10分以下であることがさらに好ましく、20.0g/10分以下であることが一層好ましく、10.0g/10分以下であることが特に一層好ましい。ポリアセタール樹脂のメルトフローレイトの下限値は、特に定めるものではないが、好ましくは0.02g/10分以上であり、より好ましくは1.0g/10分以上であり、さらに好ましくは1.3g/10分以上である。
前記樹脂組成物bにおいて、ポリアセタール樹脂は、樹脂組成物bの85質量%以上を占めることが好ましく、90質量%以上を占めることがより好ましく、95質量%以上を占めることがさらに好ましい。前記含有量の上限は100質量%である。
前記樹脂組成物bは、ポリアセタール樹脂を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0032】
前記樹脂組成物bは、ポリアセタール樹脂以外の成分を含んでいてもよい。具体的には、他の成分として、ポリアセタール樹脂以外の他の熱可塑性樹脂、官能基含有化合物(メラミン化合物等)、無機充填剤、熱安定剤、酸化防止剤、耐候安定剤、離型剤、潤滑剤、結晶核剤、帯電防止剤、着色剤(顔料、染料)等が挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を組み合せて用いることができる。
また、本実施形態における樹脂組成物bは、無機充填剤を実質的に含まない構成とすることができる。実質的に含まないとは、本実施形態における樹脂組成物bの無機充填剤の含有量が1質量%未満であることをいう。
【0033】
次に、本実施形態の複合成形品の製造方法の好ましい実施形態を、図1を参照しつつ説明する。図1は、本実施形態の複合成形品の製造方法で製造される複合成形品の一例であって、10は部材B(ポリアセタール樹脂成形体)を示し、20は部材A(中間層)を示し、30は部材C(ポリエチレン樹脂成形体)を示し、100は複合成形品を示す。
本実施形態の製造方法においては、部材Aと部材Bを加熱により接合することを含む。さらに、ポリエチレン樹脂を含む樹脂組成物cから形成された部材Cを、部材Aと接合することを含むことが好ましい。前記部材Cと部材Aの接合も通常は、加熱によって行われる。
すなわち、複合成形品100の製造方法は、部材B 10と、部材C 30と、部材A 20とを、部材B 10と部材C 30との間に部材A 20が配置されるように加熱により接合して複合成形品100を得ることが好ましい。
【0034】
具体的には、複合成形品100は、部材B 10および部材A 20を加熱により接合した後、さらに、部材C 30を加熱により接合する方法、部材C 30および部材A 20を加熱により接合した後、さらに、部材B 10を加熱により接合する方法、部材B 10、部材A 20および部材C 30を加熱により同時に接合する方法が例示される。
【0035】
ここで、加熱による接合の手段は、加熱によって、部材Aと部材Bを接合できる限り、特に定めるものではない。具体的には、加熱による接合は、溶着、インサート成形または多色成形により行うことができる。
【0036】
本実施形態においては、少なくとも前記部材Aを、110~150℃でアニール処理を行うことを含む。アニール処理を行うことにより、部材Aと部材Bの接着強度を向上させることができる。これは、部材Aに含まれるポリアセタール樹脂と無水マレイン酸変性されたポリエチレン樹脂の親和性が向上することによって、接着強度が向上したと推測される。
【0037】
前記アニール処理の温度は、110℃以上であり、115℃以上であることが好ましく、120℃以上であることがより好ましい。前記下限値以上とすることにより、接着強度がより向上する傾向にある。前記アニール処理の温度は、150℃以下であり、145℃以下であることが好ましく、142℃以下であることがより好ましく、140℃以下であることがさらに好ましい。前記上限値以下とすることにより、アニール処理時の形状変化を抑制する傾向にある。
また、前記アニール処理の温度は、ポリエチレン樹脂の融解ピーク温度よりも高く、かつ、樹脂組成物aに含まれるポリアセタール樹脂の融解ピーク温度+20℃以下の温度であることが好ましい。より好ましくは、前記アニール処理の温度は、ポリエチレン樹脂の融解ピーク温度よりも高く、かつ、樹脂組成物aに含まれるポリアセタール樹脂の融解ピーク温度よりも低い温度である。前記下限値以上とすることにより、アニール処理により接着強度がより上昇する傾向にある。また、前記上限値以下とすることにより、アニール処理時の形状変化をより効果的に抑制できる傾向にある。
尚、部材Aをアニール処理する際に、無水マレイン酸変性されたポリエチレン樹脂の融解ピーク温度よりも高い温度でアニール処理することも可能である。これは、部材Aにはポリアセタール樹脂が含まれるため、ポリアセタール樹脂によってその形状が必要なレベルで保持されるためである。
【0038】
アニール処理時間の加熱が施される時間は、部材Aの形状や厚さ等に応じて適宜定めることができ、アニール処理が内部まで十分に施される時間を考慮して設定される。アニール処理時間は、通常、30分以上であり、3時間以上が好ましく、5時間以上がより好ましく、10時間以上がさらに好ましく、30時間以上が一層好ましく、80時間以上がより一層好ましい。アニール処理時間を長くすることにより、より接着強度が向上する傾向にある。また、上限は特に定めるものでないが、通常、2000時間以内であり、1500時間以内が好ましく、生産性の観点からは、200時間以内がより好ましい。
【0039】
本実施形態においては、部材Aのアニール処理を行った後、部材Bと接合してもよいし、部材Aと部材Bを接合した後、アニール処理を行ってもよい。さらに、本実施形態における複合成形品が部材Cを含む場合、部材Aのアニール処理を行った後、部材Bに加え、部材Cとも接合してもよいし、部材Aと部材Bを接合した後、アニール処理を行い、部材Cを接合してもよい。本実施形態においては、部材Aと部材B(さらに、必要に応じて部材C)と接合した後、アニールすることが好ましい。
【0040】
複合成形品の接合方法の詳細は、上記の他、国際公開第2014/021413号の段落0067~0087の記載、国際公開第2020/045467号の段落0045~0056の記載を参酌できこれらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0041】
本実施形態における複合成形品は、例えば、バルブ装置、リサーキュレーションライン、ベントライン、フューエルセンダーモジュール用フランジ、および、燃料タンクの内壁面に接着される旋回槽等の燃料タンク接続用部品などに適用することが可能である。
【0042】
燃料タンクの詳細は、特開2019-105253号公報、特許第6505289号、特許第6350781号等の記載を参酌でき、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【実施例
【0043】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
実施例で用いた測定機器等が廃番等により入手困難な場合、他の同等の性能を有する機器を用いて測定することができる。
【0044】
<原料>
ポリエチレン樹脂-1:
密度が0.933g/cm3(JIS K7112準拠)、メルトフローレイト(ASTM-D1238規格:190℃、2.16kg)が0.5g/10分であり、無水マレイン酸変性率0.22質量%、融解ピーク温度128℃である無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂
ポリエチレン樹脂-2:
密度が0.933g/cm3(JIS K7112準拠)、メルトフローレイト(ASTM-D1238規格:190℃、2.16kg)が0.5g/10分であり、無水マレイン酸変性率0.11質量%、融解ピーク温度126℃である無水マレイン酸変性ポリエチレン樹脂
ポリアセタール樹脂-1:
オキシエチレン基がオキシメチレン基100molに対して1.6molの割合で含まれており、メルトフローレイト(ISO1133規格:190℃、2.16kg)が2.5g/10分であり、融解ピーク温度が164℃であるアセタールコポリマー
ポリアセタール樹脂-2:
オキシエチレン基がオキシメチレン基100molに対して1.6molの割合で含まれており、メルトフローレイト(ISO1133規格:190℃、2.16kg)が52g/10分であり、融解ピーク温度が164℃であるアセタールコポリマー
メラミン:下記化合物
【化2】
ベンゾグアナミン:日本触媒社製
【0045】
メルトフローレイト(MVR)は、ASTM-D1238(ISO1133規格)規格に従い、190℃、2.16kgに従って測定した値である。
【0046】
無水マレイン酸変性されたポリエチレン樹脂中の無水マレイン酸変性率の測定は、無水マレイン酸変性されたポリエチレン樹脂を180℃で熱プレスして、100μmのフィルムを作製し、赤外吸収スペクトルを測定する方法により得た。具体的には赤外吸収スペクトルの1790cm-1のピークの吸光度と4250cm-1のピークの吸光度との比を求め、予め準備しておいた赤外スペクトルによる吸光度比の値と1H-NMRによる無水マレイン酸変性率測定値との相関による検量線から得た。
【0047】
<部材A形成用樹脂組成物の調整>
ポリアセタール樹脂、無水マレイン酸変性されたポリエチレン樹脂、および、必要に応じメラミンを、表1~7に示す配合量にて川田製作所社製、スーパーミキサーで混合して混合物を得た。その後に、この混合物を2軸押出機(池貝社製「PCM-29」、スクリュー径29mm)で210℃溶融混練して押出を行い、押出機から吐出されるストランドを水槽で冷却しペレタイザーでカットして、部材A形成用樹脂組成物であるペレットをそれぞれ得た。
融解ピーク温度は、樹脂組成物ペレットをパーキンエルマー社製PYRIS Diamond DSCを用い20℃/分で昇温する方法により得られた融解曲線のピークが表れた温度を読み取ることにより得た。
【0048】
実施例1~22
上記で得られた部材A形成用樹脂組成物のペレットを、射出成形機(日精樹脂工業社製DCE-140)を用いて2色成形法にて複合成形品Aを得た。具体的には、上記で得られた部材A形成用樹脂組成物のペレットを、樹脂温度230℃、金型温度100℃の条件にて射出成形し、123mm×13mm×0.8mm(厚さ)の部材Aを成形し、続けて金型を回転した後に、その試験フィルムの上にポリアセタール樹脂成形体の一部である部材B(積層部)を部材Aに積層させ、残部(屈曲部)を積層部に対して90°屈曲させてL字型になるように形成した。積層部の寸法は63mm×13mm×2.0mm(厚さ)とし、屈曲部の寸法は15mm×13mm×2.0mm(厚さ)とした。また、積層部と部材Aとは、長手方向が一致するように積層した。
こうして得られた複合成形品Aを表1~5に示す条件にてアニールを行い、複合成形品Aを得た。
【0049】
実施例23
射出成形機(東芝機械製EC-100)を用いて樹脂温度200℃、金型温度80℃の条件にて射出成形し、123mm×13mm×0.8mm(厚さ)の部材Aを得た。その得られた部材Aを表1~5に示す温度のオーブン内で表1~5に示す時間アニール処理を行った。アニール後の部材A片側半分(62mm長)を厚さ0.03mmのポリイミドからなる耐熱シールで保護し、その状態の部材Aを123mm×13mm×4.0mm(厚さ)の金型キャビティにインサートし、そこへポリアセタール樹脂(オキシメチレン基およびオキシエチレン基の総質量に占めるオキシエチレン基の割合が1.7molであり、MFR(ASTM-D1238規格:190℃、2.16kg)が9g/10分であるアセタールコポリマー)を樹脂温度230℃、金型温度100℃の条件にて導入し部材Aの最も大きい表面のうち耐熱シールで保護されていない面上にポリアセタール樹脂成形体である部材Bを形成し、複合成形品Aを得た。
【0050】
比較例1~10
上記で得られた部材A形成用樹脂組成物のペレットを、射出成形機(日精樹脂工業社製DCE-140)を用いて2色成形法にて複合成形品Aを得た。具体的には、上記で得られた部材A形成用樹脂組成物のペレットを、樹脂温度230℃、金型温度100℃の条件にて射出成形し、123mm×13mm×0.8mm(厚さ)の部材Aを成形し、続けて金型を回転した後に、その試験フィルムの上にポリアセタール樹脂成形体の一部である部材B(積層部)を部材Aに積層させ、残部(屈曲部)を積層部に対して90°屈曲させてL字型になるように形成した。積層部の寸法は63mm×13mm×2.0mm(厚さ)とし、屈曲部の寸法は15mm×13mm×2.0mm(厚さ)とした。また、積層部と部材Aとは、長手方向が一致するように積層した。
【0051】
<接着強度>
上記で得られた複合成形品Aについて、引張試験機の上側治具(固定側)に部材B(ポリアセタール樹脂成形体)の屈曲部を固定し、下側治具(可動側)に部材Aを固定した。次いで、上側治具を上方向に速度200mm/minで変位させることにより複合成形品Aにおいて部材Aから部材Bを剥離させた。この時、引張試験機のロードセルに検出される最大引張力を部材Bに対する部材Aの接着強度とした。
引張試験機は、インストロン社製、製品名「5544」を用いた。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
【表3】
【0055】
【表4】
【0056】
【表5】
【0057】
【表6】
【0058】
【表7】
【0059】
表1~5におけるアニールタイミングの「接合後」とは、溶着してからアニール処理したことを意味し、表7における「接合前」とは、部材Aをアニール処理してから、溶着したことを意味している。
【0060】
上記結果から明らかなとおり、本発明の複合成形品の製造方法においては、接着強度が高かった(実施例1~23)。これに対し、アニール処理をしなかった場合、または、アニール温度が低かった場合、接着強度が劣っていた(比較例1~9)。
【符号の説明】
【0061】
10 部材B(ポリアセタール樹脂成形体)
20 部材A(中間層)
30 部材C(ポリエチレン樹脂成形体)
100 複合成形品
図1