(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-10
(45)【発行日】2024-07-19
(54)【発明の名称】切削具
(51)【国際特許分類】
B23C 5/28 20060101AFI20240711BHJP
B23C 5/18 20060101ALI20240711BHJP
B23C 5/06 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
B23C5/28
B23C5/18
B23C5/06 Z
(21)【出願番号】P 2020138302
(22)【出願日】2020-08-18
【審査請求日】2023-04-17
(73)【特許権者】
【識別番号】520314087
【氏名又は名称】経澤 秀之
(73)【特許権者】
【識別番号】520314098
【氏名又は名称】田中 冨美雄
(74)【代理人】
【識別番号】100140866
【氏名又は名称】佐藤 武史
(72)【発明者】
【氏名】経澤 秀之
(72)【発明者】
【氏名】田中 冨美雄
【審査官】荻野 豪治
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-194775(JP,A)
【文献】特開2006-281378(JP,A)
【文献】特表2003-522038(JP,A)
【文献】実開平6-50722(JP,U)
【文献】特開2002-321114(JP,A)
【文献】特開2000-5924(JP,A)
【文献】国際公開第2015/104151(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2015-16682(KR,A)
【文献】特表2017-513725(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/291227(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/100783(US,A1)
【文献】特表2017-526544(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23C 5/06
B23C 5/18 - 5/24
B23C 5/28
B23Q 11/10
B23B 51/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
後端面と、前端面と、前記後端面及び前記前端面を繋ぐ外周面と、を有し、前記後端面及び前記前端面の中心を通る中心軸の周りに回転可能なツールヘッドと、
前記ツールヘッドの前記外周面の前記前端面側において周方向に配置された切削刃と、を備えた切削具であって、
前記ツールヘッドに、前記後端面から前記前端面に向けて貫通し、前記ツールヘッドの回転方向に沿って、湾曲して延びる流体流通孔が設けられ、
前記ツールヘッドの周囲の流体を、前記流体流通孔内において、前記後端面から前記前端面に向けて流通させ、前記切削刃を冷却
し、
前記流体流通孔は、前記ツールヘッドの前記後端面に長円弧状の開口を有し、
前記開口は、前記ツールヘッドの回転方向に沿って、湾曲して延びていることを特徴とする切削具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削具に関する。さらに詳細には、本発明は、後端面と、前端面と、前記後端面及び前記前端面を繋ぐ外周面と、を有し、前記後端面及び前記前端面の中心を通る中心軸の周りに回転可能なツールヘッドと、前記ツールヘッドの前記外周面の前記前端面側において周方向に配置された切削刃(チップ)と、を備え、主として、フライス加工、ボーリング加工、リーマ加工等に使用される切削具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の切削具としては、例えば、特許文献1等で提案されているものが知られている。
特許文献1に開示された切削具は、中心軸周りに回転可能であり、前側の端面及び周面を有するツールヘッドと、周方向に分布するように前記周面に配置された、複数の切削要素(切削刃(チップ))及び関連する溝と、前記ツールヘッドを通って延び、前記切削要素に冷却剤を供給するチャネルシステムと、を備えている。前記ツールヘッドの前記端面は冷却剤グルーブを有し、前記冷却剤グルーブのそれぞれは、前記チャネルシステムの出口から前記溝の口へと導かれ、前記冷却剤グルーブの長手開口が、前記ツールヘッドの前記端面に固定されたバッフルディスクによって覆われている。
そして、特許文献1に開示された切削具の構成によれば、当該切削具の端面において冷却剤を偏向させて、被加工物に削り屑が残らないようにすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示された切削具は、切削刃を冷却する冷却剤を内部から供給するものであるため、切削具や被加工物が配置された環境によっては、被加工物とのコンタクトポイントにおける切削刃の状態の変動を抑えることが困難であるという課題がある。
【0005】
本発明は、従来技術における前記課題を解決するためになされたものであり、環境による切削刃の状態の変動を抑えつつ、切削刃を効率良く冷却することを可能にする切削具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明に係る切削具の構成は、
(1)後端面と、前端面と、前記後端面及び前記前端面を繋ぐ外周面と、を有し、前記後端面及び前記前端面の中心を通る中心軸の周りに回転可能なツールヘッドと、
前記ツールヘッドの前記外周面の前記前端面側において周方向に配置された切削刃と、を備えた切削具であって、
前記ツールヘッドに、前記後端面から前記前端面に向けて貫通する流体流通孔が設けられ、
前記ツールヘッドの周囲の流体を、前記流体流通孔内において、前記後端面から前記前端面に向けて流通させ、前記切削刃を冷却することを特徴とする。
【0007】
本発明の切削具の上記(1)の構成によれば、ツールヘッドに、後端面から前端面に向けて貫通する流体流通孔を設けるだけで、前記ツールヘッドを回転させることにより、当該ツールヘッドの周囲の流体を、前記流体流通孔内において、前記後端面から前記前端面に向けて流通させ、切削刃を冷却することができる。
従って、本発明の切削具の上記(1)の構成によれば、切削具の周囲の流体(切削刃が配置されている環境の流体)を利用して、切削刃を冷却するので、環境による切削刃の状態の変動を抑えつつ、切削刃を効率良く冷却することを可能にする切削具を提供することができる。
【0008】
本発明の切削具の上記(1)の構成においては、以下の(2),(3)のような構成にすることが好ましい。
【0009】
(2)前記流体流通孔は、前記ツールヘッドの回転方向に沿って延びている。
【0010】
上記(2)の好ましい構成によれば、ツールヘッドを回転させることで、前記ツールヘッドの後端面から流体流通孔内に流入した流体を、前記ツールヘッドの前端面から当該前端面上の円周の接線方向に流出させることができる。このため、前記ツールヘッドの外周面の前記前端面側において周方向に配置された切削刃に前記流体をうまく当てて、当該切削刃を効率良く冷却することができる。
また、流体を切削刃に当てる際に、削り屑を吹き飛ばし、被加工物に削り屑が残らないようにすることができる。
【0011】
(3)前記流体流通孔は、前記ツールヘッドの前記後端面に長円弧状の開口を有し、当該長円弧状の開口部分での深さが場所ごとに異なっている。
【0012】
上記(3)の好ましい構成によれば、ツールヘッドを回転させることで、流体流通孔内が負圧になり、前記ツールヘッドの周囲の流体を前記流体流通孔内に引き込む(吸引する)ことが可能となる。そして、このようにして前記流体流通孔内に引き込まれた前記流体は、前記ツールヘッドの前端面から流出し、上記のようにして切削刃を冷却する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、環境による切削刃の状態の変動を抑えつつ、切削刃を効率良く冷却することを可能にする切削具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態における切削具の構成を示す平面図(上面図)である。
【
図2】本発明の一実施形態における切削具の構成を示す底面図(下面図)である。
【
図3】本発明の一実施形態における切削具の構成(切削装置の回転駆動軸に装着された状態)を示す側面図である。
【
図4】
図1のIV-IV線矢視断面図(切削装置の回転駆動軸に装着された状態)である。
【
図5】(イ)は
図1のA-A線矢視拡大断面図、(ロ)は
図1のB-B線矢視拡大断面図である。
【
図6】本発明の一実施形態における切削具の作用効果を説明するための拡大部分底面図(下面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、好適な実施形態を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し、下記の実施形態は本発明を具現化した例に過ぎず、本発明はこれに限定されるものではない。
【0016】
[切削具の構成]
まず、本発明の一実施形態における切削具の構成について、
図1~
図5を参照しながら説明する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態における切削具の構成を示す平面図(上面図)、
図2は、当該切削具の構成を示す底面図(下面図)、
図3は、当該切削具の構成(切削装置の回転駆動軸に装着された状態)を示す側面図、
図4は、
図1のIV-IV線矢視断面図(切削装置の回転駆動軸に装着された状態)、
図5の(イ)は、
図1のA-A線矢視拡大断面図、
図5の(ロ)は、
図1のB-B線矢視拡大断面図である。
【0018】
図1~
図4に示すように、本実施形態の切削具1は、ツールヘッド2と、当該ツールヘッド2に固着された矩形板状の切削刃(チップ)3と、を備えている。
ツールヘッド2は、後端面(上端面)4と、前端面(下端面)5と、後端面4及び前端面5を繋ぐ外周面6と、を有している。そして、ツールヘッド2は、後端面4及び前端面5の中心を通る中心軸の周りに回転可能となっている。また、ツールヘッド2には、中心軸に沿って、切削装置(図示せず)の回転駆動軸7に装着するための装着孔2aが形成されている。
切削刃3は、ツールヘッド2の外周面6の前端面5側において周方向に複数配置されている。
【0019】
本実施形態の切削具1にあっては、ツールヘッド2に、後端面4から前端面5に向けて貫通する流体流通孔8が設けられている。そして、ツールヘッド2を回転させることにより(
図1,
図3の矢印a、
図2の矢印bを参照)、当該ツールヘッド2の周囲の流体を、流体流通孔8内において、後端面4から前端面5に向けて流通させ(
図1の矢印c,d,e、
図2の矢印f,g,hを参照)、切削刃3を冷却するようにされている。
【0020】
ツールヘッド2の周囲の流体としては、例えば、乾式切削の場合にあっては空気が、冠水式切削の場合にあっては冷却水等が、湿式切削の場合にあってはミスト状の切削液がそれぞれ用いられる。
【0021】
以上説明した、本実施形態の切削具1の構成によれば、ツールヘッド2に、後端面4から前端面5に向けて貫通する流体流通孔8を設けるだけで、ツールヘッド2を回転させることにより、当該ツールヘッド2の周囲の流体を、流体流通孔8内において、後端面4から前端面5に向けて流通させ、切削刃3を冷却することができる。
従って、本実施形態の切削具1の構成によれば、切削具1の周囲の流体(切削刃3が配置されている環境の流体)を利用して、切削刃3を冷却するので、環境による切削刃の状態の変動を抑えつつ、切削刃3を効率良く冷却することを可能にする切削具を提供することができる。
【0022】
以下、さらに詳細に説明する。
ツールヘッド2の後端面(上端面)4は、後方(上方)に凸の凸面であり、緩やかな傾斜の第1円錐台面4aと、第1円錐台面4aの底縁に接合された、当該第1円錐台面4aよりも比較的急な傾斜の第2円錐台面4bと、からなっている。また、ツールヘッド2の前端面(下端面)5は、後方(上方)に凹の凹面であり、第1円錐台面4aと略同じ傾斜の第3円錐台面5aと、第3円錐台面5aの底縁に接合された平坦な円環状面5bと、からなっている。
このように、ツールヘッド2の前端面(下端面)5を、後方(上方)に凹の凹面としたことにより、冠水式切削の場合に、凹面に冷却水等の流体を滞留させて、ツールヘッド2の温度を一定に保つことが可能となる。また、凹面に流体を滞留させことで、ツールヘッド2と被加工物との間に隙間を生じさせることが可能となる。そして、この隙間は、ツールヘッド2の振動を抑制するためのダンパーとして機能する。
【0023】
ツールヘッド2の後端面4の、緩やかな傾斜の第1円錐台面4aには、比較的急な傾斜の第2円錐台面4bとの境界側の円周α上に、3つの長円弧状の開口8aが120°間隔で形成されている。また、ツールヘッド2の前端面5の第3円錐台面5aには、円周αと同じ半径の円周β上に、3つの楕円状の開口8bが120°間隔で形成されている。そして、1つの開口8aからそれに対応する開口8bに延びる形で、1つの流体流通孔8が形成されている。なお、開口8a、開口8b及び流体流通孔8の数は、3つに限らず、2つ以上の複数箇所であれば、任意の数とすることができる。この場合、複数の開口8a、開口8b及び流体流通孔8の互いの間隔は、等間隔であることが望ましい。
すなわち、1つの流体流通孔8は、ツールヘッド2に、後端面4から前端面5に向けて貫通するように設けられている。また、1つの流体流通孔8は、ツールヘッド2の円周方向(回転方向)に沿って延びている。より具体的には、1つの流体流通孔8は、後端面4から前端面5に向けて、ツールヘッド2の回転方向の向き(
図1の矢印aを参照)と逆向きに延びている。
【0024】
このように流体流通孔8がツールヘッド2の回転方向に沿って延びていることにより、ツールヘッド2を回転させることで(
図1,
図3の矢印a、
図2の矢印bを参照)、ツールヘッド2の後端面4上の開口8aから流体流通孔8内に流入した流体(
図1の矢印c,d,eを参照)を、ツールヘッド2の前端面5上の開口8bから当該前端面5上の円周βの接線方向に流出させることができる(
図2の矢印f,g,h、
図6の矢印g,jを参照)。このため、ツールヘッド2の外周面6の前端面5側において周方向に複数配置された切削刃3に前記流体をうまく当てて、当該切削刃3を効率良く冷却することができる。
また、流体を切削刃3に当てる際に、削り屑を吹き飛ばし、被加工物に削り屑が残らないようにすることができる。
【0025】
ツールヘッド2の外周面6には、当該ツールヘッド2をその中心軸に平行に貫通する12個の略三角柱状の切欠き2bが30°間隔で形成されている。各切欠き2bは、ツールヘッド2の半径に平行な面2dと、当該面2dに対してツールヘッド2の回転方向(
図1の矢印a、
図2の矢印bを参照)に略45°の角度で開いた面2eと、を有している。そして、矩形板状の切削刃3は、ツールヘッド2の半径に平行な面2dにビス止め固着されている。
ここで、切削刃3は、ツールヘッド2の前端面5の平坦な円環状面5bから前方(下方)に若干突出した状態となっており、また、ツールヘッド2の外周面6から側方(半径方向)に若干突出した状態となっている。
【0026】
かかる構成によれば、ツールヘッド2を回転させながら、当該ツールヘッド2の前端面(下端面)5あるいは外周面6を被加工物に接触させることにより、被加工物を切削加工することができる。
また、各切欠き2bが、ツールヘッド2の半径に平行な面2dと、当該面2dに対してツールヘッド2の回転方向に開いた面2eと、を有し、切削刃3が、ツールヘッド2の半径に平行な面2dに固着されているため、被加工物の切削加工中に切削刃3が外れてしまうことを防止することができる。
なお、切欠き2bは、省略してもよい。この場合、切削刃3は、外周面6や、前端面5の円環状面5bに、固着されてもよい。
【0027】
図2に示すように、ツールヘッド2の前端面(下端面)5の第3円錐台面5aには、各切欠き2bごとに流体案内溝2cが設けられている。流体案内溝2cは、三角錐状に形成され、切欠き2bの面2eに略垂直な状態で、かつ、切欠き2bと連通した状態で形成されている。そして、流体案内溝2cの延長線上に切削刃3が位置するようにされている。
【0028】
かかる構成によれば、上記のようにしてツールヘッド2の前端面5上の開口8bから当該前端面5上の円周βの接線方向に流出させた流体(
図6の矢印jを参照)を、流体案内溝2cを介して外周方向に移動させ(
図6の矢印k,l,m,nを参照)、切削刃3によりうまく当てることができるので、当該切削刃3をさらに効率良く冷却することが可能となる。
【0029】
図1,
図5に示すように、流体流通孔8のうち、ツールヘッド2の後端面4の長円弧状の開口8a部分は、その内面が断面円弧状の凹面となるように形成されている。そして、流体流通孔8は、開口8a部分での深さが場所ごとに異なっている。より具体的には、流体流通孔8は、開口8a部分での深さが、流体の流れる方向(
図1の矢印c,d,eの方向)に沿って徐々に深くなっている。
【0030】
流体流通孔8の形状を、このような形状とすることにより、ツールヘッド2を回転させることで(
図1の矢印aを参照)、流体流通孔8内が負圧になり、ツールヘッド2の周囲の流体を、当該ツールヘッド2の後端面(上端面)4上の開口8aから流体流通孔8内に引き込む(吸引する)ことが可能となる(
図1の矢印c,d,eを参照)。そして、このようにして流体流通孔8内に引き込まれた流体は、ツールヘッド2の前端面(下端面)5上の開口8bから流出し(
図2の矢印f,g,hを参照)、上記のようにして切削刃3を冷却する。
【0031】
[切削装置の使用方法]
次に、本発明の一実施形態における切削具を備えた切削装置の使用方法について、切削形態が湿式切削である場合を例に挙げて、
図6をも参照しながら説明する。
【0032】
図6は、本発明の一実施形態における切削具の作用効果を説明するための拡大部分底面図(下面図)である。
【0033】
まず、
図3,
図4に示すように、ツールヘッド2の中心軸に沿って形成された装着孔2aに、切削装置の回転駆動軸7を嵌挿する。これにより、ツールヘッド2が、切削装置の回転駆動軸7に当該回転駆動軸7と一体に回転可能な状態で装着され、切削装置が組み立てられる。
【0034】
次いで、切削装置の電源をオンにし、回転駆動軸7を回転駆動させて(
図3の矢印iを参照)、ツールヘッド2を中心軸の周りに回転させる(
図1,
図3の矢印a、
図2の矢印bを参照)。これにより、切削刃3によって被加工物を切削加工可能な状態となる。すなわち、ツールヘッド2を回転させながら、当該ツールヘッド2の前端面(下端面)5あるいは外周面6を被加工物に接触させることにより、被加工物を切削加工することが可能になる。
【0035】
被加工物の切削加工中においては、ツールヘッド2を回転させることで(
図1の矢印aを参照)、流体流通孔8内が負圧になり、ツールヘッド2の周囲のミスト状の切削液が当該ツールヘッド2の後端面(上端面)4上の開口8aから流体流通孔8内に引き込まれる(
図1の矢印c,d,eを参照)。流体流通孔8内に引き込まれた切削液は、ツールヘッド2の前端面(下端面)5上の開口8bから当該前端面5上の円周βの接線方向に流出する(
図2の矢印f,g,h、
図6の矢印g,jを参照)。そして、このようにして前端面5上の開口8bから当該前端面5上の円周βの接線方向に流出した切削液は、流体案内溝2cを介して外周方向に移動し(
図6の矢印k,l,m,nを参照)、切削刃3にうまく当たる。これにより、切削刃3が効率良く冷却される。
【0036】
このような上記実施形態のツールヘッド2によれば、様々な技術分野において、被加工物を切削し、被加工物を微粒子化することも可能となる。例えば、放射性物質によるデブリは、体積が大きいと、温度が上昇し、冷却水を供給し続けないと、放射性物質が活性化してしまうが、微粒子化することで、温度の上昇を抑え、活性化を抑えることが可能となる。すなわち、上記実施形態のツールヘッド2により、放射性物質によるデブリを切削し、微粒子化することで、温度の上昇を抑え、活性化を抑えることが可能となる。さらに、上記実施形態のツールヘッド2によれば、放射性物質によるデブリに供給され続けている冷却水を効率よく切削刃3に導き、切削刃3を冷却することが可能となる。
【0037】
なお、上記実施形態においては、流体流通孔8が、ツールヘッド2の円周方向(回転方向)に沿って延びている場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明は必ずしもこのような構成に限定されるものではない。流体流通孔8は、ツールヘッド2に、後端面4から前端面5に向けて貫通するように設けられていれば十分であり、これにより、ツールヘッド2の周囲の流体を、流体流通孔8内において、後端面4から前端面5に向けて流通させ、切削刃3を冷却することができる。
【0038】
また、上記実施形態においては、ツールヘッド2の前端面(下端面)5に、流体を切削刃3に案内する流体案内溝2cが設けられている場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明は必ずしもこのような構成に限定されるものではない。流体案内溝2cを設けるか否かは任意である。流体流通孔8の配置や向きを工夫すること等により、切削刃3に流体をうまく当ててることができれば、流体案内溝は不要である。
【0039】
また、上記実施形態においては、流体流通孔8の長円弧状の開口8a部分での深さが、流体の流れる方向(
図1の矢印c,d,eの方向)に沿って徐々に深くなる場合を例に挙げて説明した。しかし、本発明は必ずしもこのような構成に限定されるものではない。流体流通孔の長円弧状の開口部分での深さは、場所ごとに異なっていればよい。そして、かかる形状の流体流通孔を採用することにより、ツールヘッドを回転させることで、流体流通孔内が負圧になり、ツールヘッドの周囲の流体を流体流通孔内に引き込むことが可能となる。
【符号の説明】
【0040】
1 切削具
2 ツールヘッド
2a 装着孔
2b 切欠き
2c 流体案内溝
2d,2e 切欠きを形成する面
3 切削刃(チップ)
4 後端面(上端面)
4a 第1円錐台面
4b 第2円錐台面
5 前端面(下端面)
5a 第3円錐台面
5b 平坦な円環状面
6 外周面
7 切削装置の回転駆動軸
8 流体流通孔
8a 長円弧状の開口
8b 楕円状の開口