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特許7519233ポリオレフィン系樹脂発泡ブロー成形体の製造方法
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  • 特許-ポリオレフィン系樹脂発泡ブロー成形体の製造方法 図1
  • 特許-ポリオレフィン系樹脂発泡ブロー成形体の製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-10
(45)【発行日】2024-07-19
(54)【発明の名称】ポリオレフィン系樹脂発泡ブロー成形体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/04 20060101AFI20240711BHJP
   B29C 49/04 20060101ALI20240711BHJP
   B29C 44/00 20060101ALI20240711BHJP
   B29K 23/00 20060101ALN20240711BHJP
【FI】
C08J9/04 101
C08J9/04 CES
B29C49/04
B29C44/00 E
B29K23:00
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020142372
(22)【出願日】2020-08-26
(65)【公開番号】P2022038080
(43)【公開日】2022-03-10
【審査請求日】2023-04-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000131810
【氏名又は名称】株式会社ジェイエスピー
(74)【代理人】
【識別番号】100077573
【弁理士】
【氏名又は名称】細井 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100123009
【弁理士】
【氏名又は名称】栗田 由貴子
(72)【発明者】
【氏名】野呂 仁一朗
(72)【発明者】
【氏名】五味渕 正浩
【審査官】芦原 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-093562(JP,A)
【文献】特開2011-173941(JP,A)
【文献】特開2015-096588(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00-9/42
B29C 49/00-49/46,49/58-49/68,49/72-49/80
B29C 44/00-44/60,67/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系樹脂を基材樹脂とする樹脂組成物(A)に物理発泡剤を含有させた発泡性樹脂溶融物をダイから押出して発泡パリソンを形成し、軟化状態にある前記発泡パリソンをブロー成形して発泡ブロー成形体を製造する方法であって、
前記樹脂組成物(A)は、
230℃での溶融張力5cN以上であるポリプロピレン系樹脂を主成分として含むポリオレフィン系樹脂(a)と、
ポリプロピレン系樹脂を主成分として含むポリオレフィン系樹脂と融点80℃以上200℃以下のハロゲン系難燃剤(y)とを含み、前記ハロゲン系難燃剤(y)の配合量(y1)が0.1重量%以上5重量%以下であるポリオレフィン系樹脂組成物(b)と、
ポリプロピレン系樹脂を主成分として含むポリオレフィン系樹脂と融点80℃以上200℃以下のハロゲン系難燃剤(x)とを含み、前記ハロゲン系難燃剤(x)の配合量(x1)が5重量%超である難燃剤マスターバッチ(c)と、を混錬してなり、
前記ポリオレフィン系樹脂組成物(b)の配合量(b1)は前記ポリオレフィン系樹脂(a)100重量部に対して200重量部以上950重量部以下であり、
前記難燃剤マスターバッチ(c)の配合量(c1)は前記ポリオレフィン系樹脂(a)100重量部に対して1重量部以上20重量部以下であり、
前記樹脂組成物(A)中の前記ハロゲン系難燃剤(x)と前記ハロゲン系難燃剤(y)の合計配合量が0.1重量%以上5重量%以下であり、
前記発泡ブロー成形体の見掛け密度が150kg/m 3 以上450kg/m 3 以下であることを特徴とするポリオレフィン系樹脂発泡ブロー成形体の製造方法。
【請求項2】
前記難燃剤マスターバッチ(c)の配合量(c1)に対する前記ポリオレフィン系樹脂組成物(b)の配合量(b1)の配合比(b1/c1)が20以上200以下である、請求項1に記載のポリオレフィン系樹脂発泡ブロー成形体の製造方法。
【請求項3】
前記ハロゲン系難燃剤(x)の配合量(x1)(重量%)に対する前記ハロゲン系難燃剤(y)の配合量(y1)(重量%)の比(y1/x1)が0.01以上0.1以下である、請求項1または2に記載のポリオレフィン系樹脂発泡ブロー成形体の製造方法。
【請求項4】
前記ポリオレフィン系樹脂()として、回収材を用いる、請求項1から3のいずれか一項に記載のポリオレフィン系樹脂発泡ブロー成形体の製造方法。
【請求項5】
前記ポリオレフィン系樹脂(a)がポリプロピレン系樹脂を主成分として含み、
前記ポリオレフィン系樹脂組成物(b)中のポリオレフィン系樹脂がポリプロピレン系樹脂を主成分として含み、
前記ポリオレフィン系樹脂(a)の230℃、剪断速度100sec-1の条件下における溶融粘度(ηa)が300Pa・s以上700Pa・s以下であり、
前記溶融粘度(ηa)に対する、前記ポリオレフィン系樹脂組成物(b)の230℃、剪断速度100sec-1の条件下における溶融粘度(ηb)の比(ηb/ηa)が0.3以上2以下である、請求項1から4のいずれか一項に記載のポリオレフィン系樹脂発泡ブロー成形体の製造方法。
【請求項6】
前記ポリオレフィン系樹脂組成物(b)中のポリオレフィン系樹脂がポリプロピレン系樹脂を主成分として含み、
前記難燃剤難燃剤マスターバッチ(c)中のポリオレフィン系樹脂がポリプロピレン系樹脂を主成分として含み、
前記ポリオレフィン系樹脂組成物(b)の230℃、剪断速度100sec-1の条件下における溶融粘度(ηb)が250Pa・s以上600Pa・s以下であり、
前記溶融粘度(ηb)に対する、前記難燃剤マスターバッチ(c)の230℃、剪断速度100sec-1の条件下における溶融粘度(ηc)の比(ηc/ηb)が0.2以上2.0以下である、請求項1から5のいずれか一項に記載のポリオレフィン系樹脂発泡ブロー成形体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィン系樹脂発泡ブロー成形体の製造方法に関し、より詳しくは、難燃性を示すポリオレフィン系樹脂発泡ブロー成形体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン系樹脂発泡ブロー成形体は、自動車などの車両に用いられる車両用部材、種々の容器、断熱ダクト、エネルギー吸収材、各種構造材等の様々な分野に使用されている。
【0003】
たとえば下記特許文献1には、所定の物性を備えるポリプロピレン系樹脂を用い、発泡パリソンを金型内に配置し当該金型を閉鎖して製造された発泡ブロー成形体が開示されている。
【0004】
また、下記特許文献2には、所定の物性を備えるポリオレフィン系樹脂から形成され、平均見掛け密度が0.1g/cm以上0.4g/cm以下の発泡ブロー成形体からなるダクトに関する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-122488号公報
【文献】特開2014-240743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
さらに近年では、難燃性を有するポリオレフィン系樹脂発泡ブロー成形体が求められている。ところが、本発明者らの検討によれば、ハロゲン系難燃剤を含有させたポリオレフィン系樹脂を用いて発泡ブロー成形体を製造すると、発泡ブロー成形体の厚みがバラついたり、難燃剤を多量に添加しないと安定して難燃性を発揮させることが難しい場合があることがわかった。
【0007】
本発明は上記問題を鑑みなされたものである。即ち、本発明は、難燃性に優れるとともに成形体の外観も良好なポリオレフィン系樹脂発泡ブロー成形体を容易に製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のポリオレフィン系樹脂発泡ブロー成形体の製造方法は、ポリオレフィン系樹脂を基材樹脂とする樹脂組成物(A)に物理発泡剤を含有させた発泡性樹脂溶融物をダイから押出して発泡パリソンを形成し、軟化状態にある上記発泡パリソンをブロー成形して発泡ブロー成形体を製造する方法であって、上記樹脂組成物(A)は、230℃での溶融張力5cN以上であポリプロピレン系樹脂を主成分として含むポリオレフィン系樹脂(a)と、ポリプロピレン系樹脂を主成分として含むポリオレフィン系樹脂と融点80℃以上200℃以下のハロゲン系難燃剤(y)とを含み、上記ハロゲン系難燃剤(y)の配合量(y1)が0.1重量%以上5.0重量%以下であるポリオレフィン系樹脂組成物(b)と、ポリプロピレン系樹脂を主成分として含むポリオレフィン系樹脂と融点80℃以上200℃以下のハロゲン系難燃剤(x)とを含み、上記ハロゲン系難燃剤(x)の配合量(x1)が5.0重量%超である難燃剤マスターバッチ(c)と、を混錬してなり、上記ポリオレフィン系樹脂組成物(b)の配合量(b1)は上記ポリオレフィン系樹脂(a)100重量部に対して200重量部以上950重量部以下であり、上記難燃剤マスターバッチ(c)の配合量(c1)は上記ポリオレフィン系樹脂(a)100重量部に
対して1重量部以上20重量部以下であり、上記樹脂組成物(A)中の上記ハロゲン系難燃剤(x)と上記ハロゲン系難燃剤(y)の合計配合量が0.1重量%以上5.0重量%以下であり、前記発泡ブロー成形体の見掛け密度が150kg/m 3 以上450kg/m 3 以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のポリオレフィン系樹脂発泡ブロー成形体の製造方法は、難燃性に優れるとともに外観も良好なポリオレフィン系樹脂発泡ブロー成形体の製造を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】(1A)は、発泡パリソンが金型の間に配置された状態を示す断面概略図であり、(1B)は、発泡パリソンが金型に挟まれ、気体により内側から拡幅された状態を示す断面概略図である。
図2】試験片が設置された状態の燃焼試験装置の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明のポリオレフィン系樹脂発泡ブロー成形体の製造方法について説明する。
本発明は、優れた難燃性を発揮するとともに外観にも優れたオレフィン系樹脂発泡ブロー成形体の製造方法を提供するものである。
【0012】
本発明者らは、難燃性のポリオレフィン系樹脂発泡ブロー成形体を製造する場合には、発泡ブロー成形体を形成する樹脂組成物(A)において、難燃剤を均一に分散させることが肝要であることに着眼し、本発明を完成した。
【0013】
より具体的には、本発明のポリオレフィン系樹脂発泡ブロー成形体の製造方法(以下、単に本発明の製造方法ともいう)は、ポリオレフィン系樹脂を基材樹脂とする樹脂組成物(A)を用い、上記樹脂組成物(A)に物理発泡剤を含有させた発泡性樹脂溶融物をダイから押し出して発泡パリソンを形成し、軟化状態にある上記発泡パリソンをブロー成形して発泡ブロー成形体を製造する方法に関する。
本発明において、上記樹脂組成物(A)は、ポリオレフィン系樹脂(a)と、下記ポリオレフィン系樹脂組成物(b)と、下記難燃剤マスターバッチ(c)と、を含む。ここで、ポリオレフィン系樹脂組成物(b)は、ポリオレフィン系樹脂と、融点80℃以上200℃以下のハロゲン系難燃剤(y)とを含み、上記ハロゲン系難燃剤(y)の配合量(y1)が0.1重量%以上5.0重量%以下である。また難燃剤マスターバッチ(c)は、ポリオレフィン系樹脂と、融点80℃以上200℃以下のハロゲン系難燃剤(x)とを含み、上記ハロゲン系難燃剤(x)の配合量(x1)が5.0重量%超の範囲である。つまり本発明では、ポリオレフィン系樹脂組成物(b)に含有される上記ハロゲン系難燃剤(y)の配合量(y1)は、難燃剤マスターバッチ(c)に含有される上記ハロゲン系難燃剤(x)の配合量(x1)よりも少ない。
上記樹脂組成物(A)において、ポリオレフィン系樹脂組成物(b)の配合量はポリオレフィン系樹脂(a)100重量部に対して200重量部以上950重量部以下であり、難燃剤マスターバッチ(c)の配合量はポリオレフィン系樹脂(a)100重量部に対して1重量部以上20重量部以下となる。そしてこれらの配合により、さらに上記樹脂組成物(A)中のハロゲン系難燃剤(x)とハロゲン系難燃剤(y)の合計配合量は0.1重量%以上5.0重量%以下となるよう配合される。
【0014】
次に、本発明に用いられる樹脂組成物(A)について説明する。
上記樹脂組成物(A)は、ポリオレフィン系樹脂を基材樹脂とするものである。より具体的には、樹脂組成物(A)中のポリオレフィン系樹脂の含有量が50重量%以上であり、好ましくは60重量%以上、より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは75重量%以上である。その上限は、概ね90重量%であり、好ましくは85重量%である。なお、上記樹脂組成物(A)が後記回収材を含有する場合、当該樹脂組成物(A)におけるポリオレフィン系樹脂の含有量は、回収材中のポリオレフィン系樹脂を含む値である。
【0015】
また、上記樹脂組成物(A)は、ポリオレフィン系樹脂(a)と、ポリオレフィン系樹脂と融点80℃以上200℃以下のハロゲン系難燃剤(y)を含み、上記ハロゲン系難燃剤(y)の配合量(y1)が0.1重量%以上5.0重量%以下であるポリオレフィン系樹脂組成物(b)と、ポリオレフィン系樹脂と上記融点80℃以上200℃以下のハロゲン系難燃剤(x)を含み、上記ハロゲン系難燃剤の配合量(x1)が5.0重量%超である難燃剤マスターバッチ(c)とを含む。
このように、本発明の製造方法は、ポリオレフィン系樹脂(a)と、相対的に低濃度の難燃剤を含むポリオレフィン系樹脂組成物(b)と、相対的に高濃度の難燃剤を含む難燃剤マスターバッチ(c)とを、特定の配合比率で配合された樹脂組成物(A)を用いる。
【0016】
ポリオレフィン系樹脂(a):
ポリオレフィン系樹脂(a)として用いられる樹脂としては、オレフィン成分構造単位がそのポリオレフィン系樹脂に対するモル比率で、50モル%以上の割合で存在するもの、好ましくは60モル%以上の割合で存在するもの、より好ましくは80モル%以上100モル%以下の割合で存在するものが用いられる。ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、オレフィンの単独重合体、オレフィン同士の共重合体、オレフィン成分とオレフィンと共重合可能なその他の重合性モノマー成分との共重合体のうちオレフィン成分構造単位の存在量の割合(モル%)が上記の範囲を満足するもの、オレフィン重合体と他の重合体との混合物のうちオレフィン成分構造単位の存在量の割合(モル%)が上記の範囲を満足するものが挙げられる。より具体的には、ポリオレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン系樹脂、または高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン等のポリエチレン系樹脂が挙げられる。
【0017】
上記ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレン単独重合体、プロピレンに由来する構造単位が50重量%以上のプロピレン系共重合体が挙げられる。該共重合体としては、プロピレンーエチレン共重合体、プロピレンーブテン共重合体、プロピレンーエチレンーブテン共重合体などのプロピレンとエチレン又は炭素数4以上のαオレフィンとの共重合体や、プロピレンーアクリル酸共重合体、プロピレン-無水マレイン酸共重合体等が例示される。なお、これらの共重合体は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体のいずれでもよい。さらに、ポリプロピレン系樹脂には、プロピレン単独重合体中又はプロピレンーエチレンランダム共重合体などのプロピレン共重合体中に、エチレンープロピレンージエン共重合体などが分散している耐衝撃性ポリプロピレンも包含される。
【0018】
上記ポリプロピレン系樹脂の曲げ弾性率は、その曲げ弾性率が800MPa以上2500MPa以下であることが好ましい。曲げ弾性率は、JIS K7171:2016に基づき測定することができる。
【0019】
上記ポリオレフィン系樹脂(a)の溶融粘度(ηa)は、後述するポリオレフィン系樹脂組成物(b)、及び難燃剤マスターバッチ(c)との混錬性の観点から、100Pa・s以上800Pa・s以下であることが好ましく、200Pa・s以上600Pa・s以下であることがより好ましい。
【0020】
上記溶融粘度は、ポリオレフィン系樹脂(a)がポリプロピレン系樹脂である場合には、230℃、剪断速度100sec-1の条件下における溶融粘度を採用し、ポリオレフィン系樹脂(a)がポリエチレン系樹脂である場合には、190℃、剪断速度100sec-1の条件下における溶融粘度を採用することとする。
【0021】
また、上記ポリオレフィン系樹脂(a)は、発泡ブロー成形における発泡性の観点から溶融張力が0.5cN以上であることが好ましく、1cN以上であることがさらに好ましい。上記溶融張力の上限は、概ね30cNである。
【0022】
上記溶融張力は、ポリオレフィン系樹脂(a)がポリプロピレン系樹脂である場合には、230℃の条件下における溶融張力を採用し、ポリオレフィン系樹脂(a)がポリエチレン系樹脂である場合には、190℃の条件下における溶融張力を採用することとする。
【0023】
上述するポリオレフィン系樹脂の溶融張力(MT)は、公知の方法で計測することができ、たとえば、株式会社東洋精機製作所製のキャピログラフ1Dによって測定することができる。
【0024】
本発明においては、上記ポリオレフィン系樹脂(a)として、分子構造中に自由末端長鎖分岐を有するポリプロピレン系樹脂(a1)を主成分として含むことが好ましい。上記ポリプロピレン系樹脂(a1)は、溶融張力が大きく発泡性に優れているので、良好な発泡ブロー成形体を得ることができる。
本明細書において、ポリプロピレン系樹脂(a1)を主成分とするとは、ポリオレフィン系樹脂(a)中のポリプロピレン系樹脂(a1)の含有量が50重量%以上であることをいい、好ましくは60重量%以上である。その上限は、概ね90重量%であり、好ましくは85重量%である。
該ポリプロピレン系樹脂(a1)の具体例としては、ボレアリス社製の分岐状ホモポリプロピレン(商品名:Daploy WB130、WB135、WB140)、サンアロマー社製の分岐状ホモポリプロピレン(商品名:PF814)等が挙げられる。
【0025】
ポリプロピレン系樹脂(a1)を用いることで、発泡成形時に必要な溶融物性が維持されやすく、良好な外観の発泡ブロー成形体を得られやすくなる。かかる観点からは、ポリプロピレン系樹脂(a1)は、230℃での溶融張力が5cN以上であることが好ましい。より外観の良好な発泡ブロー成形体を得るという観点からは、ポリプロピレン系樹脂(a1)は、上記溶融張力が8cN以上であることがより好ましく、上記溶融張力が15cN以上であることがさらに好ましい。一方、上記溶融張力の上限は、概ね50cNであり、好ましくは40cNである。
【0026】
また、上記ポリプロピレン系樹脂(a1)の230℃、剪断速度100sec-1の条件下における溶融粘度(ηa1)は、後述するポリオレフィン系樹脂組成物(b)、及び難燃剤マスターバッチ(c)との混錬性の観点から、300Pa・s以上700Pa・s以下であることが好ましく、400Pa・s以上650Pa・s以下であることがより好ましい。
【0027】
またポリオレフィン系樹脂(a)として、5cN以上の高い溶融張力を示すポリプロピレン系樹脂(a1)を主成分とする場合には、他のポリプロピレン系樹脂(a2)を混合して用いることができる
このようなポリプロピレン系樹脂(a2)としては、230℃、剪断速度100sec-1の条件下における溶融粘度(ηa2)が、200Pa・s以上600Pa・s以下であることが好ましく、250Pa・s以上500Pa・s以下であることがより好ましく、ポリオレフィン系樹脂(a1)よりも流動性の高いポリプロピレン系樹脂がより好ましい。このようなポリプロピレン系樹脂としては、たとえば、プライムポリマー社製のホモポリプロピレン系樹脂(商品名:J106G)が挙げられる。
【0028】
さらに、製造される発泡ブロー成形体の耐衝撃性を向上させるという観点からは、ポリオレフィン系樹脂(a)中に、本発明の目的効果を阻害しない範囲で、その他の樹脂成分としてポリスチレン系樹脂等の熱可塑性樹脂や、その他のエラストマーとしてオレフィン系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー等の熱可塑性エラストマー(TPE)を配合することができる。特に、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)を添加することにより、低温度の発泡成形体の耐衝撃性を向上させることができる。但し、熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマーなどのポリオレフィン系樹脂以外の重合体の配合量は、好ましくは30重量%以下、より好ましくは20重量%以下である。一方、その下限は、好ましくは5重量%、より好ましくは15重量%である(ただし、ポリオレフィン系樹脂と、その他樹脂成分とエラストマー成分の合計が100重量%である)。
なお、上記エラストマーの曲げ弾性率は、柔軟性等の観点から、10MPa以上50MPa以下であることが好ましく、15MPa以上40MPa以下であることがより好ましく、20MPa以上35MPa以下であることが更に好ましい。曲げ弾性率は、JIS K7171:2016に準拠して測定することができる。
【0029】
市販品として入手可能なオレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、商品名「サーモラン」(三菱化学社製)、商品名「ミラストマー」(三井化学社製)、商品名「住友TPE」(住友化学工業社製)、商品名「インフューズ」(ダウ・ケミカル社製)、商品名「キャタロイ;Q100F」(サンアロマー社製)などが挙げられる。
【0030】
ポリオレフィン系樹脂(a)として、上述する高い溶融張力を示すポリプロピレン系樹脂(a1)と、上述する好ましい範囲の溶融粘度を示す流動性の高いポリプロピレン系樹脂(a2)と、ポリオレフィン系エラストマーとを含む場合には、これらの配合比率は、ポリオレフィン系樹脂(a1):ポリプロピレン系樹脂(a2):ポリオレフィン系エラストマー=40~70:10~45:10~20であることが好ましい(ただし、ポリプロピレン系樹脂(a1)とポリプロピレン系樹脂(a2)とポリオレフィン系エラストマーの合計が100重量%である)。
【0031】
ポリオレフィン系樹脂組成物(b):
本発明の製造方法に用いられる樹脂組成物(A)に含まれるポリオレフィン系樹脂組成物(b)は、ポリオレフィン系樹脂を含み、ポリオレフィン系樹脂を50重量%以上含むことが好ましく、ポリオレフィン系樹脂を70重量%以上含むことがより好ましい。一方、ポリオレフィン系樹脂組成物(b)に含まれるポリオレフィン系樹脂は、95質量%以下である。
ポリオレフィン系樹脂組成物(b)に含まれるポリオレフィン系樹脂は、ポリオレフィン系樹脂(a)に含まれる組成として上述したものから適宜選択することができる。ポリオレフィン系樹脂組成物(b)に含まれる樹脂は、ポリオレフィン系樹脂(a)として用いられた樹脂と同じでもよく、また異なっていても良いが、ポリオレフィン系樹脂(a)として用いられた樹脂と同じである方が、互いの相溶性が良好であり、樹脂組成物における難燃剤の分散性も良好となるため好ましい。
【0032】
またポリオレフィン系樹脂組成物(b)は、オレフィン系樹脂とともに、融点80℃以上200℃以下のハロゲン系難燃剤(y)を含み、ハロゲン系難燃剤(y)の配合量(y1)が0.1重量%以上5重量%以下である。このように少量のハロゲン系難燃剤(y)を含むポリオレフィン系樹脂組成物(b)を用いることによって、上述するポリオレフィン系樹脂(a)と、ポリオレフィン系樹脂組成物(b)と、後述する、ポリオレフィン系樹脂組成物(b)よりも多く難燃剤が含まれる難燃剤マスターバッチ(c)とを用いてなる樹脂組成物(A)において、樹脂組成物(A)中の難燃剤の分散性の改善を図り得る。その結果、難燃性が良好で、かつ厚みのバラつきやコルゲートの発生が防止され成形性に優れた発泡ブロー成形体を十分に製造することができる。
また、ハロゲン系難燃剤(y)の配合量(y1)は、より好ましくは0.2重量%以上3重量%以下であり、さらに好ましくは0.3重量%以上1重量%以下である。
【0033】
ポリオレフィン系樹脂組成物(b)に含まれるハロゲン系難燃剤(y)として、融点が80℃以上のものを用いることによれば、製造された発泡ブロー成形体の使用環境によらず当該発泡ブロー成形体の表面から難燃剤がブリードアウトすることを良好に防止することができる。
また、上記融点が200℃以下であるハロゲン系難燃剤(y)を用いることによれば、発泡成形時にハロゲン系難燃剤(y)を十分に溶融させることができ、該ハロゲン系難燃剤(y)を均一に樹脂組成物中に分散させることができるとともに、発泡成形時に固体状態で該ハロゲン系難燃剤が残存することを抑制することができる。樹脂組成物中に固体状態で残存するハロゲン系難燃剤(y)は、発泡時に気泡形成の核剤となり得るため、細かい気泡が多く形成され、厚みの不均一や外観内面の不良といった発泡ブロー成形体の成形不良が発生する虞がある。上記観点から、ハロゲン系難燃剤(y)の融点は、90℃以上150℃以下であることが好ましく、95℃以上130℃以下であることがさらに好ましく、100℃以上115℃以下であることがさらに好ましい。上記難燃剤の融点は、例えば、JIS K 7122(1987年)に記載されている熱流束示差走査熱量測定法に準拠して得られるDSC曲線に基づいて求めることができる。
【0034】
ポリオレフィン系樹脂組成物(b)に含まれるハロゲン系難燃剤(y)は、たとえば、臭素系難燃剤、塩素系難燃剤等のハロゲン原子を含む難燃剤が挙げられ、臭素系難燃剤が好ましく、特に臭素含有量が60%重量以上である臭素系難燃剤がより好ましく、63%以上であることがより好ましい。
上記臭素系難燃剤としては、2,2-ビス[3,5-ジブロモ-4-(2,3-ジブロモプロポキシ)フェニル]プロパン、トリアリルイソシアヌレート6臭化物、ビス[3,5-ジブロモ-4-(2,3-ジブロモプロポキシ)フェニル]スルホン、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールAビス(2,3-ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールAビス(2-ブロモエチルエーテル)、2,2-ビス[4-(2,3-ジブロモ-2-メチルプロポキシ)-3,5-ジブロモフェニル]プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)プロパン、トリス(2,3-ジブロモプロピル)イソシアヌレート、トリブロモフェノール、デカブロモジフェニルオキサイド、テトラブロモビスフェノールAビス(アリルエーテル)、テトラブロモビスフェノールAビス(2-ヒドロキシエチル)エーテル、テトラブロモビスフェノールAホスゲンポリマー、臭素化ビスフェノールエーテル誘導体、テトラブロモビスフェノールS誘導体などが挙げられ、2,2-ビス[3,5-ジブロモ-4-(2,3-ジブロモプロポキシ)フェニル]プロパン、トリアリルイソシアヌレート6臭化物、ビス[3,5-ジブロモ-4-(2,3-ジブロモプロポキシ)フェニル]スルホンがより好ましい。
なお、該臭素含有率は、JIS K7392:2009に基づき求めることができる。
【0035】
また、ポリオレフィン系樹脂組成物(b)の溶融粘度(ηb)は、250Pa・s以上600Pa・s以下であることが好ましく、300Pa・s以上500Pa・s以下であることがより好ましい。上記範囲内であれば、上述するポリオレフィン系樹脂(a)と、ポリオレフィン系樹脂組成物(b)と、後述する難燃剤マスターバッチ(c)とを良好に混錬して樹脂組成物を調製することができ、当該樹脂組成物中の難燃剤を容易かつ良好に分散させることができる。
【0036】
上記ポリオレフィン系樹脂組成物(b)の溶融粘度は、ポリオレフィン系樹脂組成物(b)がポリプロピレン系樹脂組成物である場合には、230℃、剪断速度100sec-1の条件下における溶融粘度を採用し、ポリオレフィン系樹脂組成物(b)がポリエチレン系樹脂組成物である場合には、190℃、剪断速度100sec-1の条件下における溶融粘度を採用することとする。
【0037】
ポリオレフィン系樹脂組成物(b)は、未使用の材料を用いてもよいが、その一部または全部が回収材であってもよい。回収材とは、発泡ブロー成形体を製造した際に発生するバリなどの不要樹脂部分を回収し、適宜粉砕したもの(以下、回収材Iともいう)、又は上記バリやその粉砕物などである回収材Iを押出機において溶融混錬して混錬物とし、この混錬物を押出して適当な寸法に調製したもの(以下、回収材IIともいう)をいう。
特には、本発明の製造方法に従って発泡ブロー成形体を製造し、このときに発生したバリ等をペレット化したものを回収材としてポリオレフィン系樹脂組成物(b)として使用することができる。またポリオレフィン系樹脂組成物(b)は、上記回収材と、未使用のポリオレフィン系樹脂および/またはハロゲン系難燃剤(y)とを用いて調製されてもよい。
【0038】
上記回収材Iおよび回収材IIは、生産工程において、いずれも加熱、溶融、混錬の工程を経ているため、これらに含有されるハロゲン系難燃剤(y)が回収材において均一に分散されることになるため好ましい。特に回収材IIは、回収材Iを用いて、さらに溶融混錬して得た混錬物である。そのため、当該回収材IIは、これに含有されるハロゲン系難燃剤(y)の分散がより均一となるため好ましい。
さらに、ポリプロピレン系樹脂の場合には、上記の加熱、溶融、混錬の工程によって回収材を構成する樹脂の溶融粘度が低下する傾向にあることから、ポリプロピレン系樹脂を基材樹脂として含む回収材をポリオレフィン系樹脂組成物(b)として用いることによって、上述するポリオレフィン系樹脂(a)と、当該ポリオレフィン系樹脂組成物(b)と、後述する難燃剤マスターバッチ(c)とを良好に混錬して樹脂組成物(A)を調製することができ、当該樹脂組成物(A)中の難燃剤を容易かつ良好に分散させることができる。その結果、難燃性が良好で、かつ厚みのバラつきが防止された発泡ブロー成形体を十分に製造することができる。特にポリオレフィン系樹脂(a)が高溶融張力のポリプロピレン系樹脂(a1)を含む場合、ポリオレフィン系樹脂(a)の粘度は高くなる傾向にあり、難燃剤マスターバッチ(c)との混錬がスムーズではなくなる場合があるが、ポリプロピレン系樹脂を基材樹脂として含むポリオレフィン系組成物(b)を用いることで、上記樹脂組成物(A)の混錬性を改善し得る。
【0039】
換言すると、樹脂組成物(A)を構成するポリオレフィン系樹脂は、成形性を向上させるために発泡性に優れる樹脂を用いることが好ましいが、その反面、発泡性に優れる樹脂は流動性に劣る傾向があるところ、回収材を用いてポリプロピレン系樹脂を基材樹脂として含むポリオレフィン系樹脂組成物(b)を用いる場合には、高粘度を示し得る高い溶融張力を示す樹脂を含むポリオレフィン系樹脂(a)を用いることによって高い発泡性を担保しつつ、樹脂組成物(A)の混錬性を向上させ、ひいては難燃剤の分散性をも良好なものとすることができる。
【0040】
難燃剤マスターバッチ(c):
次に難燃剤マスターバッチ(c)について説明する。
難燃剤マスターバッチ(c)は、ポリオレフィン系樹脂と融点80℃以上200℃以下のハロゲン系難燃剤(x)とを含み、ハロゲン系難燃剤(x)の配合量が5重量%超の範囲である。
難燃剤マスターバッチ(c)に含まれるポリオレフィン系樹脂は、ポリオレフィン系樹脂(a)に含まれる組成として上述したものから適宜選択された一以上の樹脂である。難燃剤マスターバッチ(c)に含まれる樹脂は、ポリオレフィン系樹脂(a)と同種の樹脂であることが好ましい。具体的には、ポリオレフィン系樹脂(a)がポリプロピレン系樹脂である場合には、難燃剤マスターバッチ(c)に含まれる樹脂もポリプロピレン系樹脂であることが好ましい。
上記難燃剤マスターバッチ(c)に含まれるポリオレフィン系樹脂は、50重量%以上95重量%未満であることが好ましい。
【0041】
難燃剤マスターバッチ(c)に含まれるハロゲン系難燃剤(x)は、ポリオレフィン系樹脂組成物(b)に含まれ得るハロゲン系難燃剤(y)から適宜選択された一以上の難燃剤である。ポリオレフィン系樹脂組成物(b)に含まれるハロゲン系難燃剤(y)と、難燃剤マスターバッチ(c)に含まれるハロゲン系難燃剤(x)とは、同じでもよく、また異なっていても良いが、両者の相溶性の観点からは、同じであることが好ましい。
【0042】
難燃剤マスターバッチ(c)に含まれるハロゲン系難燃剤(x)の配合量(x1)は、5重量%を超える。即ち、難燃剤マスターバッチ(c)は、ポリオレフィン系樹脂組成物(b)よりも高い割合でハロゲン系難燃剤を含む。このようにハロゲン系難燃剤の濃度の高い難燃剤マスターバッチ(c)を用いることによって、発泡ブロー成形体を形成する樹脂組成物(A)全体に含まれるハロゲン系難燃剤の含有量を調整し、難燃性の良好な発泡ブロー成形体を提供可能である。
より好ましくは、難燃剤マスターバッチ(c)に含まれるハロゲン系難燃剤(x)の配合量(x1)は、6重量%以上50重量%以下であることがより好ましく、7重量%以上20重量%以下であることがさらに好ましい。
【0043】
上記難燃剤マスターバッチ(c)の230℃、剪断速度100sec-1の条件下における溶融粘度(ηc)は、ポリオレフィン系樹脂(a)及びポリオレフィン系樹脂組成物(b)との混錬性の観点から、150Pa・s以上400Pa・s以下であることが好ましく、170Pa・s以上350Pa・s以下であることがより好ましい。
上記溶融粘度(ηc)は、上記難燃剤マスターバッチ(c)に含有されるポリオレフィン系樹脂がポリプロピレン系樹脂である場合には、230℃、剪断速度100sec-1の条件下における溶融粘度を採用し、上記難燃剤マスターバッチ(c)に含有されるポリオレフィン系樹脂がポリエチレン系樹脂である場合には、190℃、剪断速度100sec-1の条件下における溶融粘度を採用することとする。
【0044】
具体的には、本発明の製造方法において、ポリオレフィン系樹脂(a)、ポリオレフィン系樹脂組成物(b)、難燃剤マスターバッチ(c)を含む、発泡ブロー成形体を形成する樹脂組成物は、融点80℃以上200℃以下のハロゲン系難燃剤(x)と融点80℃以上200℃以下のハロゲン系難燃剤(y)の合計配合量が、全体として0.1重量%以上5重量%以下となる。
発泡ブロー成形体を形成する樹脂組成物(A)中のハロゲン系難燃剤の合計配合量を0.1重量%以上とすることで、製造される発泡ブロー成形体の難燃性を十分なものとすることができ、上記合計配合量を、5重量%以下とすることで、過剰なハロゲン系難燃剤が気泡形成時の核剤となって発泡ブロー成形体の成形不良の要因となることを抑制することができ、外観が良好なものとなる。上記合計配合量は、0.2重量%以上2重量%以下であることが好ましく、0.3重量%以上1重量%以下であることがより好ましい。
【0045】
本発明の製造方法では、上述するポリオレフィン系樹脂(a)、ポリオレフィン系樹脂組成物(b)、および難燃剤マスターバッチ(c)の配合量は、ポリオレフィン系樹脂(a)100重量部に対して、ポリオレフィン系樹脂組成物(b)が200重量部以上950重量部以下であり、且つ難燃剤マスターバッチ(c)が1重量部以上20重量部以下となる。このようにして、発泡ブロー成形体を形成する樹脂組成物(A)中のハロゲン系難燃剤の合計配合量を所定範囲とするとともに、難燃剤の配合量が少ないポリオレフィン系樹脂組成物(b)を多く配合し、かつ難燃剤の配合量が多い難燃剤マスターバッチ(c)と上記ポリオレフィン系樹脂(a)とを特定割合で配合することによって、難燃剤を均一に分散させることができる。
より好ましくは、上述するポリオレフィン系樹脂(a)、ポリオレフィン系樹脂組成物(b)、および難燃剤マスターバッチ(c)の配合量は、ポリオレフィン系樹脂(a)100重量部に対して、ポリオレフィン系樹脂組成物(b)が250重量部以上650重量部以下であり、難燃剤マスターバッチ(c)が2重量部以上10重量部以下とし、さらには、ポリオレフィン系樹脂(a)100重量部に対して、ポリオレフィン系樹脂組成物(b)が300重量部以上500重量部以下であり、難燃剤マスターバッチ(c)が3重量部以上8重量部以下とすることが好ましい。
【0046】
発泡ブロー成形に用いられる樹脂組成物(A)において難燃剤の分散性が向上することにより、難燃剤が密になった領域では相対的に、難燃剤が発泡時の気泡の核剤として作用して気泡径の小さい気泡が多く形成されることが防止され、難燃剤が疎になった領域では、相対的に、気泡径の大きい気泡が少なく形成されることが防止される。この結果、1つの成形体における膜厚の厚薄のばらつきが防止され、さらには、成形体間においても特定箇所の厚みのバラつきが少なくなるので、発泡ブロー成形体の成形不良が防止されると考えられる。
なお、上述する成形性の問題は、外観上の問題だけでなく、成形体の厚みのバラつきに起因して難燃性が安定しない(つまり、部分ごとに難燃性にバラつきが生じる)という問題も解決することができる。
【0047】
また、押出機から押し出される発泡パリソンが管状である成形体の場合には、管状の発泡パリソンの周方向において凸部と凹部とが交互に現れる、所謂ひだ状のコルゲートの発生し、得られた発泡ブロー成形体(成形体)の外面および/または内面に凹凸、盛り上がり部、または肉厚の厚薄が顕著な領域が発生するおそれがある。
上記コルゲートが顕著化する理由は、以下のように推測される。つまり、樹脂組成物(A)がダイから押出され発泡パリソンが形成される際、難燃剤が局在した領域では細かい気泡が形成され周囲とは気泡の形成速度が異なるものと推測される。このように発泡パリソン形成時、気泡の形成速度が部分ごとにばらつくことで、コルゲートの形成が促されるものと考えられる。
また特に、高い溶融張力を示すポリオレフィン系樹脂を含むポリプロピレン系樹脂(a1)と、回収材を含むポリオレフィン系樹脂組成物(b)と、難燃剤マスターバッチ(c)とを用いる態様の本発明によれば、ポリプロピレン系樹脂(a1)および難燃剤の濃度の高い難燃剤マスターバッチ(c)は、樹脂組成物(A)全体における配合比率が高く且つ粘度の低いポリオレフィン系樹脂組成物(b)によって、樹脂組成物(A)が良好に混錬されるとともに難燃剤の良好な分散性が確保される。その結果、樹脂組成物(A)中において難燃剤を均一に分散させることによって、局所的な気泡径の形成速度のばらつきや発泡時の樹脂の伸びが不均一になることなどによる、気泡膜厚の厚薄のばらつきがさらに防止されるという観点からも、安定して十分な難燃性が発揮されないという問題がさらに防止される。
【0048】
また本発明における樹脂組成物(A)おいて、難燃剤マスターバッチ(c)の配合量(重量部)(c1)に対するポリオレフィン系樹脂組成物(b)の配合量(重量部)(b1)の配合比(b1/c1)は、難燃剤の分散性の観点から20以上200以下であることが好ましく、40以上150以下であることがより好ましく、60以上100以下であることがさらに好ましい。
【0049】
また本発明において、難燃剤マスターバッチ(c)に含まれる難燃剤の配合量(x1)(重量%)に対するポリオレフィン系樹脂組成物(b)に含まれる難燃剤の配合量(y1)(重量%)の比(y1/x1)が0.01以上0.1以下であることが好ましい。上記比(y1/x1)の所定範囲に示されるとおり、ポリオレフィン系樹脂組成物(b)における難燃剤の配合量(y1)(重量%)を、難燃剤マスターバッチ(c)における難燃剤の配合量(x1)(重量%)よりも有意に少なくすることによって、樹脂組成物に(A)おける難燃剤の分散性を非常に良好にすることができる。
【0050】
ポリオレフィン系樹脂(a)、ポリオレフィン系樹脂組成物(b)、難燃剤マスターバッチ(c)の溶融粘度の観点からは以下の態様が好ましい。
即ち、本発明の一態様として、ポリオレフィン系樹脂(a)がポリプロピレン系樹脂を主成分として含み、ポリオレフィン系樹脂組成物(b)中のポリオレフィン系樹脂がポリプロピレン系樹脂を主成分として含む態様において、ポリオレフィン系樹脂(a)の溶融粘度(ηa)が300Pa・s以上700Pa・s以下であり、当該溶融粘度(ηa)に対する、ポリオレフィン系樹脂組成物(b)の溶融粘度(ηb)の比(ηb/ηa)が0.3以上2.0以下であることが、樹脂組成物の混錬を良好に行う観点から好ましい。上記観点から、上記比(ηb/ηa)は、0.4以上1.2以下であることがより好ましく、0.5以上1.0以下であることがさらに好ましい。
また、本発明の一態様として、ポリオレフィン系樹脂組成物(b)中のポリオレフィン系樹脂がポリプロピレン系樹脂を主成分として含み、難燃剤難燃剤マスターバッチ(c)中のポリオレフィン系樹脂がポリプロピレン系樹脂を主成分として含む態様において、ポリオレフィン系樹脂組成物(b)の溶融粘度(ηb)が250Pa・s以上600Pa・s以下であり、当該溶融粘度(ηb)に対する、難燃剤難燃剤マスターバッチ(c)の溶融粘度(ηc)の比(ηc/ηb)が0.2以上2.0以下であることが好ましい。上記比(ηc/ηb)をかかる範囲とすることによって、難燃剤の分散性の観点から好ましい。上記観点から、上記比(ηc/ηb)は、0.3以上1.5以下であることがより好ましく、0.4以上1.2以下であることがさらに好ましい。
【0051】
本発明における基材樹脂には、通常、シリカ、タルク、クエン酸ナトリウム、重曹等の気泡調整剤が基材樹脂100重量部に対して0.1重量部~3重量部程度添加されることが好ましい。その他に所望に応じて、例えば、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、流動性向上剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、耐候剤、着色剤、抗菌剤、防黴剤、無機充填材、顔料等の添加剤を添加することができる。
【0052】
本発明で用いられる顔料としては、黒色顔料が好ましく、無機系の顔料や、有機系の顔料が挙げられる。無機系の顔料としては、例えば、鉄黒等の酸化物化、着色用カーボンブラックなどが挙げられ、その他に、黄鉛、亜鉛黄、バリウム黄、クロム酸塩、紺青等のフェロシアン化物、カドミミウムイエロー、カドミウムレッド等の硫化物、弁柄等の酸化物、群青等のケイ酸塩、酸化チタン等を2色以上混合して黒色顔料として使用することもできる。また有機系の顔料としては、アニリンブラック等が挙げられ、その他に、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、アゾレーキ、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料、またはフタロシアニン系、アントラキノン系、ペリレン系、ペリノン系、チオインジゴ系、キナクドリン系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、等の多環式顔料等を2色以上混合して黒色に発色させて使用することもできる。なお、本発明でいう黒色顔料は、発泡ブロー成形体としたとき、黒色を呈しているものも含まれる。上記黒色顔料の中でも、少量で濃い色調が得られることから着色用カーボンブラックが好ましい。これらカーボンブラックとしては、例えば、ガスファーネスブラック、オイルファーネスブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ローラーブラック、サーマルブラック、ケッチェンブラック等が挙げられる。少量で良好な色調の黒色化された発泡ブロー成形体が得られることから、カーボンブラックのジブチルフタレート(DBP)吸油量は、好ましくは150ml/100g未満、より好ましくは130ml/100g以下、さらに好ましくは120ml/100g以下である。なお、DBP吸油量の下限値は、好ましくは20ml/100gである。
【0053】
発泡ブロー成形体の着色性の観点から、該カーボンブラックの総配合量は、上記基材樹脂100重量部に対して好ましくは0.1重量部以上2重量部以下が好ましく、0.2重量部以上1重量部以下がより好ましい。
【0054】
発泡ブロー成形法:
本発明の製造方法は、発泡ブロー成形法を用いる。発泡ブロー成形法とは、押出機から直接または間接に押し出された発泡パリソンを一対または複数の金型間に配置し、その後、金型を閉じて発泡パリソンを挟み込む。そして金型に挟み込まれた発泡パリソンの内部に気体を吹き込み、当該発泡パリソンを押し広げて金型内面に沿わせることで所望形状の発泡ブロー成形体を製造する方法である。図1に本発明の製造方法における発泡ブロー成形法の一例を示す。
【0055】
図示省略するが、発泡ブロー成形装置は、ホッパーを有する押出機およびダイを備える。ダイは、内部に樹脂充填空間を有するとともに、樹脂充填空間に充填された樹脂(発泡性溶融樹脂)を外部に押し出すためのピストンを有するアキュームレータを備えるとよい。
上述するポリオレフィン系樹脂(a)、ポリオレフィン系樹脂組成物(b)および難燃剤マスターバッチ(c)は、ホッパーから押出機に投入され、内部で溶融混錬されるとともに、図示省略する発泡剤導入口より樹脂充填空間に物理発泡剤が圧入され、発泡剤を含む発泡性樹脂溶融物が調製される。発泡剤の使用量は、特に限定されず、製造される発泡ブロー成形体の所望する見掛け密度等を考慮して適宜決定することができるが、概ね、樹脂組成物1kgに対し0.1mol以上1.0mol以下の割合で使用される。また、高発泡倍率の発泡ブロー成形体を得る場合には、樹脂組成物1kgに対し0.1mol以上0.5mol以下の割合で使用されることが好ましい。また、難燃剤の分解を考慮すると、押出機内の温度は180℃以上240℃以下であることが好ましく、185℃以上200℃以下であることがより好ましい。
【0056】
上述のとおり調製された発泡性樹脂溶融物は、押出機から流路管を介してアキュームレータを備えるダイに押し出され、アキュームレータの樹脂充填空間に充填される。樹脂充填空間に充填された発泡性樹脂溶融物は、高圧な状態で一時的に貯留されるため、押し出す前の状態において内部発泡が抑えられている。そして、高圧状態が保たれた発泡性樹脂溶融物は、吐出孔から間欠的に、ピストンにより瞬間的に低い圧力(一般的には大気圧)下に押だされて発泡し、これによって発泡パリソン40(図1参照)が形成される。
尚、上述ではアキュームレータに関し、ダイ内部に蓄圧機能が備わっている例について説明したが、本発明の製造方法はこれに限定されず、たとえばダイの外部にアキュームレータが設けられていてもよい。
【0057】
図1Aは、上述のとおり説明した発泡ブロー成形装置に設けられた管状の吐出孔26から発泡性樹脂溶融物を押出して発泡させ、発泡パリソン40を形成した状態を側面視方向から断面概略図として示している。吐出孔26の下方には一対の金型30が開いた状態で配置されており、発泡パリソン40は、自重によるドローダウンも伴いながら、この一対の金型30の間に配置される。続いて、図1Bに示すとおり、金型30を閉じることで一対の金型30間に発泡パリソン40を挟み、金型30の外部から発泡パリソン40の内部までブローピン32を挿入し、発泡パリソン40の内部にブローピン32からブローエア(パリソン40をブロー成形するための空気などの気体)を吹き込む。これによって発泡パリソン40は押し広げられ、その外面は金型30の内面に押し付けられる。これによって金型30の内面に沿った所望の形状の成形体42が形成される。尚、図1Bでは、ブローピン32は、閉じられた一対の金型30の下端から挿入される態様を示すが、ブローピンの挿入位置や本数などは適宜変更することができる。またブロー成形時、発泡パリソン40に対し、図示省略する金型に設けられた孔より吸引して発泡パリソン40の外面と金型30の内面との間の空間を減圧してもよい。
成形体42は、適宜冷却された後、金型30から取り出され、金型の食い切り部分より漏れ出た不要樹脂部分である所謂、バリが除去される。これによって発泡ブロー成形体が完成される。
【0058】
このように押出機から直接または間接に押し出されてなる発泡パリソン40は、自重によりドローダウンするため、相対的に下方の厚みが大きくなり、上方の厚みが薄くなる傾向にある。薄肉化した部分(即ち、上方部分)において、さらに樹脂組成物(A)の難燃剤の均一分散性が低下することに起因して厚みに薄厚が発生すると、穴開きや成形不良が発生し易い上、肉厚のバラつきによる難燃性のバラつきが発生する虞がある。また、成形体間におけるばらつきも発生し易くなる。しかしながら、本製造方法によれば、このような問題も改善し得る。
尚、上述では、管状(中空状)の発泡ブロー成形体を製造する例を用いて本発明の発泡ブロー成形法の一例を示したが、本発明はこれに限定されず、たとえば、板状体などの中実の発泡ブロー成形体を製造することもできる。
【0059】
物理発泡剤:
本発明において、上述する樹脂組成物(A)とともに用いられる物理発泡剤は、一般的に発泡ブロー成形体を製造する際に用いられる物理発泡剤から適宜選択して使用することができる。より具体的には、例えば、プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ノルマルヘキサン、イソヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素、塩化メチル、塩化エチル等の塩化炭化水素、1,1,1,2-テトラフロロエタン、1,1-ジフロロエタン等のフッ化炭化水素、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル等の脂肪族エーテル、メチルアルコール、エチルアルコール等の脂肪族アルコール、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のジアルキルカーボネートなどの有機系物理発泡剤、二酸化炭素、窒素、空気、水等の無機系物理発泡剤、炭酸水素ナトリウム、クエン酸ナトリウム、アゾジカルボンアミド等の分解型化学発泡剤が挙げられる。これらの発泡剤は、単独で又は混合して用いられる。より好ましくは、二酸化炭素、窒素、などの無機系物理発泡剤が好ましい。
【0060】
以上に説明する本発明の製造方法は、ポリオレフィン系樹脂と、融点80℃以上200℃以下のハロゲン系難燃剤と、を含み、ポリオレフィン系樹脂中の融点80℃以上200℃以下のハロゲン系難燃剤の配合量が0.1重量%以上5重量%以下であるポリオレフィン系樹脂発泡ブロー成形体を提供することができる。
かかるポリオレフィン系樹脂発泡ブロー成形体は、優れた難燃性を示すとともに外観も良好である。
【0061】
上述する本発明の製造方法により製造されたポリオレフィン系樹脂発泡ブロー成形体は、ポリオレフィン系樹脂(a)と、ポリオレフィン系樹脂を含み、融点80℃以上200℃以下のハロゲン系難燃剤(y)の配合量が0.1重量%以上5重量%以下であるポリオレフィン系樹脂組成物(b)と、ポリオレフィン系樹脂を含み、融点80℃以上200℃以下のハロゲン系難燃剤(x)の配合量(x1)が5重量%超である難燃剤マスターバッチ(c)と、を含み、ポリオレフィン系樹脂(a)とポリオレフィン系樹脂ポリオレフィン系樹脂組成物(b)と難燃剤マスターバッチ(c)の配合量が、ポリオレフィン系樹脂(a)100重量部に対して、ポリオレフィン系樹脂組成物(b)200重量部以上950重量部以下であり、且つ難燃剤マスターバッチ(c)1重量部以上20重量部以下であり、発泡ブロー成形体を形成する樹脂組成物(A)100重量%においてのハロゲン系難燃剤の合計配合量が0.1重量%以上5重量%以下である。
【0062】
本発明に関し、ポリオレフィン系樹脂発泡ブロー成形体の難燃性の評価は、Federal Motor Vehicle safety Standards No.302(FMVSS No.302)燃焼性試験に基づいて測定された難燃性により評価した。
【0063】
本発明の製造方法により製造されたポリオレフィン系樹脂発泡ブロー成形体の難燃性は、具体的な数値で特定されるものではないが、たとえば、より厳しい基準をもクリア可能であり、さらには規定の燃焼時間経過前に自消し得る。
【0064】
本発明の製造方法により製造されたポリオレフィン系樹脂発泡ブロー成形体は、該発泡ブロー成形体を形成する樹脂中に、上記ハロゲン系難燃剤が0.1重量%以上5重量%以下か配合されている。ハロゲン系難燃剤の配合量が上記範囲内であれば、成形性に影響を与えることなく、良好な難燃性能の発泡ブロー成形体が得られる。上記観点から、ハロゲン系難燃剤の配合量は、0.2重量%以上2重量%以下であることが好ましく、0.3重量%以上1重量%以下であることがさらに好ましい。
【0065】
本発明の製造方法により製造されたポリオレフィン系樹脂発泡ブロー成形体の見掛け密度は、特に制限はないが、好ましくは150kg/m以上450kg/m以下である。該見掛け密度が上記範囲内であると、圧縮応力等の機械的強度を維持しつつ、発泡体特有の軽量性、断熱性等に優れる発泡ブロー成形体となる。一般的に、見掛け密度が低いほど成形が難しくなり厚み厚薄が出やすくなるが、本発明の製造方法によれば、特に、より見掛け密度が低い範囲でも良好な発泡ブロー成形体が得られる。上記観点から、発泡ブロー成形体の見掛け密度は、より好ましくは160kg/m以上350kg/m以下、さらに好ましくは190kg/m以上250kg/m以下である。
【0066】
本発明の製造方法により製造されたポリオレフィン系樹脂発泡ブロー成形体の平均厚みは、目的とする発泡ブロー成形体の形状により異なるが、通常好ましくは1mm以上5mm以下であり、より好ましくは1.2mm以上4mm以下、さらに好ましくは1.4mm以上3mm以下、特に好ましくは1.5mm以上2.5mm以下である。平均厚みが上記範囲内であれば、軽量性と機械的強度とのバランスに優れる発泡成形体となる。
【0067】
また、本発明の製造方法により製造されたポリオレフィン系樹脂発泡ブロー成形体の平均厚みの変動係数Cvは、10%以下であることが好ましい。該変動係数Cvが小さいということは、発泡ブロー成形体の肉厚の均一性が優れることを意味する。発泡ブロー成形体の肉厚が不均一であると、発泡ブロー成形体に肉厚が薄い部分ができてしまい、相対的にその部分の強度は弱くなってしまう。また、発泡ブロー成形体の肉厚が不均一であると、安定した難燃性が得られなくなるおそれがある。したがって、発泡ブロー成形体の肉厚が不均一である場合には、発泡ブロー成形体の難燃性を一律の評価基準以上とするため、難燃剤を過剰に配合する必要がある。上記観点から、発泡ブロー成形体の肉厚の変動係数Cvは小さければ小さいほど望ましく、8%以下であることが好ましく、より好ましくは6%以下、である。
【0068】
本発明の製造方法により製造されたポリオレフィン系樹脂発泡ブロー成形体の独立気泡率は、断熱性や機械的物性等の面から、70%以上であることが好ましく、80%以上であることがより好ましく、85%以上であることがさらに好ましい。
【0069】
本発明による発泡ブロー成形体は自動車の空調用のダクトとして特に有用で有り、また保温容器、保冷容器、自動車部材、緩衝部材、断熱ダクト、構造部材等に有用である。
【実施例
【0070】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
実施例、比較例において、発泡ブロー成形体の製造に用いた樹脂、回収材、難燃剤、黒色顔料、タルクを以下に示す。
また、発泡成形時の発泡条件は表1、表2に示す。具体的には、各実施例、比較例に関し、押出機に圧入される発泡剤の量(mol/kg)、押出機内温度、ダイ(図1吐出孔26)から押し出される発泡性溶融樹脂の吐出速度(kg/hour)、アキューム内における樹脂の温度である樹脂温度(℃)を表1に示した。尚、発泡剤としては二酸化炭素を用いた。
【0071】
<ポリオレフィン系樹脂等>
・(PO1)高溶融張力ポリプロピレン系樹脂(a1)(商品名;Daploy WB140 HMS、Borealis社製)
・(PO2)ホモポリプロピレン系樹脂(a2)(商品名;J106G、プライムポリマー社製)
・(POE)オレフィン系熱可塑性エラストマー(商品名;キャタロイ;Adflex Q100F、サンアロマー社製)
尚、上記PO1、PO2、POEの物性は、表3に示す。
<回収材>
・回収材1は、ポリオレフィン系樹脂組成物(b)として表4に示す組成物1を用いたこと以外は実施例1と同様にポリオレフィン系樹脂発泡ブロー成形体を製造し、この際に発生したバリを230℃に設定した押出機で混錬して溶融樹脂とし、この溶融樹脂をストランド状に押出し、ペレタイザーでペレット化したものを用いた。
・回収材2は、ポリオレフィン系樹脂組成物(b)として表4に示す組成物2を用いたこと以外は実施例2と同様にポリオレフィン系樹脂発泡ブロー成形体を製造し、この際に発生したバリを230℃に設定した押出機で混錬して溶融樹脂とし、この溶融樹脂をストランド状に押出し、ペレタイザーでペレット化したものを用いた。
・回収材3は、ポリオレフィン系樹脂組成物(b)として表4に示す組成物3を用いたこと以外は実施例3と同様にポリオレフィン系樹脂発泡ブロー成形体を製造し、この際に発生したバリを230℃に設定した押出機で混錬して溶融樹脂とし、この溶融樹脂をストランド状に押出し、ペレタイザーでペレット化したものを用いた。
・回収材4は、ポリオレフィン系樹脂組成物(b)として表4に示す組成物4を用いたこと以外は比較例1と同様にポリオレフィン系樹脂発泡ブロー成形体を製造し、この際に発生したバリを230℃に設定した押出機で混錬して溶融樹脂とし、この溶融樹脂をストランド状に押出し、ペレタイザーでペレット化したものを用いた。
・回収材5は、ポリオレフィン系樹脂組成物(b)として表4に示す組成物5を用いたこと以外は比較例3と同様にポリオレフィン系樹脂発泡ブロー成形体を製造し、この際に発生したバリを230℃に設定した押出機で混錬して溶融樹脂とし、この溶融樹脂をストランド状に押出し、ペレタイザーでペレット化したものを用いた。
<難燃剤>
・2,2-ビス[3,5-ジブロモ-4-(2,3-ジブロモプロポキシ)フェニル]プロパン(商品名;FCP-680、株式会社鈴裕化学社製、融点105℃、臭素含有量68%)
・ビス[3,5-ジブロモ-4-(2,3-ジブロモプロポキシ)フェニル]スルホン(商品名;FCP-65、株式会社鈴裕化学社製、融点105℃、臭素含有量65%)
・トリアリルイソシアヌレート6臭化物(商品名;FCP-660、株式会社鈴裕化学社製、融点105℃、臭素含有量66%)
・2,4,6-トリス(2,4,6-トリブロモフェノキシ)-1,3,5-トリアジン(商品名;SR-245、第一工業製薬株式会社製、融点232℃、臭素含有量62%)
上記の難燃剤を含有し、基材樹脂をポリプロピレン系樹脂(a2)とした濃度10重量%のマスターバッチを予め押出機にて溶融混錬(200℃)して作製し、難燃剤マスターバッチとした。
<その他>
・気泡調整剤(タルク)(商品名「ハイフィラー#12」(松村産業製、メジアン径7.5μm))
・黒色顔料(カーボンブラック含有マスターバッチ)(商品名;PP Black Master Batch、BT920F-JSJ、B&Tech Corporation製、CB濃度45重量%)
【0072】
(実施例1~4、比較例1~5)
表1に示す条件を用い、以下のとおり実施例および比較例を実施した。即ち、表1、表2に示す種類、配合量のポリプロピレン系樹脂、オレフィン系熱可塑性エラストマー、回収材、難燃剤、カーボンブラックマスターバッチ及び気泡調整剤を口径65mmの押出機に供給し、押出機内にて溶融混練して溶融した樹脂組成物を得るとともに、押出機の途中から二酸化炭素(CO)を上記溶融樹脂1kg当たり表1、表2に示す量(mol/kg)となるように圧入し、さらに混練して発泡性樹脂溶融物とした。そして該発泡性樹脂溶融物を押出機に連結した、アキュームレータを備えるダイに充填し、ダイ先端に設けられた吐出孔より発泡性樹脂溶融物を常圧域に押出すことにより発泡させ、ダイ直下に開いた状態で配置された2分割式の金型間に、発泡パリソンを配置した。続いて、発泡パリソンにプリブローエアを吹き込みながら上記2分割式の金型を閉じ、その金型で発泡パリソンを挟み込んだ。挟み込まれた発泡パリソンの内部にブローピンからブローエアを吹き込むこと、及び金型に設けた孔より吸引して発泡パリソン外面と金型内面との間の空間を減圧することにより、発泡パリソンの外面を金型内面に押し付けて、発泡パリソンをブロー成形した。冷却後、金型を開き成形体を取り出し、バリなどを取り除くことにより、製品の最大周長さ370mm、最大幅170mm、上下方向長さ740mmの中空状の発泡ブロー成形体からなる車両用空調ダクトを得た。
得られた発泡ブロー成形体に関し、以下のとおり測定または評価した。評価結果は、いずれも表1、表2に示す。
【0073】
(溶融粘度の測定)
測定装置として株式会社東洋精機製作所のキャピログラフ1Dを用い、オリフィス径1mm、オリフィス長10mm、所定の温度、剪断速度100sec-1の条件にて測定した。サンプルがポリプロピレン系樹脂である場合、測定温度230℃に設定した。
【0074】
(独立気泡率の測定)
上述する実施例、比較例により製造された発泡ブロー成形体から試験片を切り出し、ASTM D2856-70(1976年再認定)の(手順C)によりVxを測定し、次式(1)により独立気泡率を算出した。尚、気泡の潰れた部分は測定の対象から除くこととした。
[数1]
独立気泡率(%)=(Vx-W/ρ)×100/(Va-W/ρ)・・・(1)
Vx;試験片の真の体積(独立気泡部分の体積と樹脂組成物の体積との和)(cm
Va;試験片の外形寸法から求められる試験片の見掛けの体積(独立気泡部分の体積と連続気泡部分の体積と樹脂組成物の体積との和)(cm
W;試験片の重量(g)
ρ;試験片を構成する樹脂組成物の密度(g/cm
【0075】
(見掛け密度の測定)
本発明において、見掛け密度の測定は次のように行った。
見掛け密度は、発泡ブロー成形体から採取した試験片の重量(g)を、試験片の体積(cm)で割り、単位換算をして求められる。試験片の体積は、試験片を水の入った目盛り線の付いた容器中に沈めて水位の上昇を測定する方法(水没法)により求めた。
【0076】
(成形・発泡性評価)
実施例・比較例における、成形体見掛け密度と独立気泡率により、以下の評価基準で判定した。
〇・・・成形体の見掛け密度が250kg/m以上、且つ独立気泡率が70%超
×・・・成形体の見掛け密度が250kg/m未満、又は独立気泡率が70%以下
【0077】
(外面および内面の外観評価)
得られた発泡ブロー成形体の表面状態を観察し、以下の評価基準で評価した。
〇・・・外面および内面のいずれの表面にも凹凸が無く、平滑である
×・・・外面または内面の表面にガススポットや、成形不良に起因する凹凸が見られる
【0078】
(最大燃焼速度の測定)
FMVSS No.302燃焼性試験に準拠して各実施例および各比較例により製造された発泡ブロー成形体の最大燃焼速度を測定した。
試験片15が設置された燃焼試験装置50の上面図である図2を用いて、以下に最大燃焼速度の測定方法について具体的に説明する。
各実施例および各比較例において得られた発泡ブロー成形体の押出方向中央部分の平坦部から縦120mm×横100mm×成形体厚みの寸法で切り出された試験片15を準備した。
幅w1(25mm)の略U字型の挟持具52を備える燃焼試験装置50を準備した。挟持具52は、略同形のU字型の挟持片2片が上下方向に重ねられ水平に設置されており、この2片の間に試験片15を挟持した。尚、U字の辺と辺との間の距離w2は50mmである。
そして試験片15の一端を図3に示すように燃焼開始位置Sに合わせて設置した。そして、燃焼点54において、38mm炎を15秒間接炎し、標線Aから標線Bまでの燃焼時間を測定し、これを燃焼速度とした。また、炎が標線Bまで到達せずに消えた場合には「自消」と評価した。
尚、接炎は、38mm炎の下端から19mmの高さ位置が、試験片15の高さ位置と同高さとなるよう調整した。また燃焼開始位置Sから標線Aまでの距離d1は38mm、標線Aから標線Bまでの距離d2は、50mmとした。
上記の測定方法を、15個の発泡ブロー成形体について行い、その燃焼速度の最大値を最大燃焼速度とした。
【0079】
(平均厚み)
厚さの測定部位は上記燃焼試験前の試験片の標線A(試験片から端部38mmの位置)、標線B(端部から88mmの位置)及び、標線Aと標線Bの中点の計3箇所を測定した。上記最大燃焼速度の測定前の試験片15個に対して厚みを計測し、平均厚みを求めた。
【0080】
(厚みの変動係数の算出)
本願明細書における発泡ブロー成形体の肉厚の変動係数Cvとは、該成形体肉厚の標準偏差(mm)を該成形体の平均肉厚(mm)で割った値の百分率をいい、平均値からのばらつき度合を表す指標である。なお、該成形体肉厚の標準偏差Vは次式(2)により求めるものとした。
[数2]
V={Σ(Ti-Tav)/(n-1)}1/2・・・(2)
上記(1)式においてTiは上記30箇所の個々の肉厚の測定値を、Tavは上記平均肉厚を、nは測定数(具体的には「30」である)をそれぞれ表し、Σは個々の測定値について計算した(Ti-Tav)を全て足し算することを示す。
変動係数Cvは下記(3)式によって求めた。
[数3]
Cv(%)=(V/Tav)×100・・・(3)
【0081】
【表1】
【0082】
【表2】
【0083】
【表3】
【0084】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明の製造方法は、高い難燃性を示すとともに外観に優れる発泡ブロー成形体を製造することが可能である。そのため、本発明の製造方法は、たとえば、車両用空調ダクトなどの中空であって複雑な形状であり、かつ高い難燃性が求められる車両用部材を製造することに適している。換言すると、本発明の製造方法によって製造された発泡ブロー成形体は、種々の工業製品や車両用部材に好適に用いられる。
【0086】
上記実施形態は、以下の技術思想を包含するものである。
(1)ポリオレフィン系樹脂を基材樹脂とする樹脂組成物(A)に物理発泡剤を含有させた発泡性樹脂溶融物をダイから押出して発泡パリソンを形成し、軟化状態にある前記発泡パリソンをブロー成形して発泡ブロー成形体を製造する方法であって、
前記樹脂組成物(A)は、
ポリオレフィン系樹脂(a)と、
ポリオレフィン系樹脂と融点80℃以上200℃以下のハロゲン系難燃剤(y)とを含み、前記ハロゲン系難燃剤(y)の配合量(y1)が0.1重量%以上5重量%以下であるポリオレフィン系樹脂組成物(b)と、
ポリオレフィン系樹脂と融点80℃以上200℃以下のハロゲン系難燃剤(x)とを含み、前記ハロゲン系難燃剤(x)の配合量(x1)が5重量%超である難燃剤マスターバッチ(c)と、を混錬してなり、
前記ポリオレフィン系樹脂組成物(b)の配合量(b1)は前記ポリオレフィン系樹脂(a)100重量部に対して200重量部以上950重量部以下であり、
前記難燃剤マスターバッチ(c)の配合量(c1)は前記ポリオレフィン系樹脂(a)100重量部に対して1重量部以上20重量部以下であり、
前記樹脂組成物(A)中の前記ハロゲン系難燃剤(x)と前記ハロゲン系難燃剤(y)の合計配合量が0.1重量%以上5重量%以下であることを特徴とするポリオレフィン系樹脂発泡ブロー成形体の製造方法。
(2)前記難燃剤マスターバッチ(c)の配合量(c1)に対する前記ポリオレフィン系樹脂組成物(b)の配合量(b1)の配合比(b1/c1)が20以上200以下である、上記(1)に記載のポリオレフィン系樹脂発泡ブロー成形体の製造方法。
(3)前記ハロゲン系難燃剤(x)の配合量(x1)(重量%)に対する前記ハロゲン系難燃剤(y)の配合量(y1)(重量%)の比(y1/x1)が0.01以上0.1以下である、上記(1)または(2)に記載のポリオレフィン系樹脂発泡ブロー成形体の製造方法。
(4)前記ポリオレフィン系樹脂(a)として、230℃での溶融張力5cN以上のポリプロピレン系樹脂を用いる、上記(1)から(3)のいずれか一項に記載のポリオレフィン系樹脂発泡ブロー成形体の製造方法。
(5)前記ポリオレフィン系樹脂(a)がポリプロピレン系樹脂を主成分として含み、
前記ポリオレフィン系樹脂組成物(b)中のポリオレフィン系樹脂がポリプロピレン系樹脂を主成分として含み、
前記ポリオレフィン系樹脂(a)の230℃、剪断速度100sec-1の条件下における溶融粘度(ηa)が300Pa・s以上700Pa・s以下であり、
前記溶融粘度(ηa)に対する、前記ポリオレフィン系樹脂組成物(b)の230℃、剪断速度100sec-1の条件下における溶融粘度(ηb)の比(ηb/ηa)が0.3以上2以下である、上記(1)から(4)のいずれか一項に記載のポリオレフィン系樹脂発泡ブロー成形体の製造方法。
(6)前記ポリオレフィン系樹脂組成物(b)中のポリオレフィン系樹脂がポリプロピレン系樹脂を主成分として含み、
前記難燃剤難燃剤マスターバッチ(c)中のポリオレフィン系樹脂がポリプロピレン系樹脂を主成分として含み、
前記ポリオレフィン系樹脂組成物(b)の230℃、剪断速度100sec-1の条件下における溶融粘度(ηb)が250Pa・s以上600Pa・s以下であり、
前記溶融粘度(ηb)に対する、前記難燃剤マスターバッチ(c)の230℃、剪断速度100sec-1の条件下における溶融粘度(ηc)の比(ηc/ηb)が0.2以上2.0以下である、上記(1)から(5)のいずれか一項に記載のポリオレフィン系樹脂発泡ブロー成形体の製造方法。
【符号の説明】
【0087】
20・・・アキュームレータ
21・・・ダイ
26・・・吐出孔
30・・・金型
32・・・ブローピン
34・・・(空間)
40・・・発泡パリソン
42・・・成形体
50・・・燃焼試験装置
52・・・挟持金具
54・・・燃焼点
S・・・燃焼開始位置
A、B・・・標線
d1、d2・・・距離
w1、w2、w3・・・寸法

図1
図2