(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-10
(45)【発行日】2024-07-19
(54)【発明の名称】遠心式送風機
(51)【国際特許分類】
F04D 29/28 20060101AFI20240711BHJP
F04D 29/66 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
F04D29/28 J
F04D29/28 N
F04D29/66 M
(21)【出願番号】P 2020148590
(22)【出願日】2020-09-03
【審査請求日】2023-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111970
【氏名又は名称】三林 大介
(72)【発明者】
【氏名】中谷 立好
【審査官】中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-031664(JP,A)
【文献】米国特許第05591008(US,A)
【文献】実開昭55-015386(JP,U)
【文献】特開昭54-030516(JP,A)
【文献】実開昭63-054893(JP,U)
【文献】特開2006-322325(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/28
F04D 29/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚の羽根板が一体形成された樹脂製の羽根車をケーシング内に収容すると共に、モータを用いて前記羽根車を回転させることによって空気を送風する遠心式送風機において、
前記羽根車は、
前記複数枚の羽根板が円周上に立設された回転円板と、
前記回転円板の中心に形成されて前記モータの回転軸が接続される接続部と、
前記複数枚の羽根板の上端と一体に形成された円環形状の天板と
を備えており、
前記天板には、バランスウェイトが取り付けられる複数の貫通孔が、前記天板の中心から等距離の位置に等間隔で形成されて
おり、
前記天板の前記貫通孔は、前記羽根板の上端が一体に形成された位置に、前記羽根板を跨いだ状態で形成されており、
前記バランスウェイトは、前記貫通孔から前記羽根板の両側に挿入される一対の脚部を備える
ことを特徴とする遠心式送風機。
【請求項2】
請求項1に記載の遠心式送風機において、
前記バランスウェイトは弾性部材によって形成されており、
前記一対の脚部は、前記貫通孔から挿入されると、前記羽根板の両面に当接する
ことを特徴とする遠心式送風機。
【請求項3】
請求項2に記載の遠心式送風機において、
前記一対の脚部の少なくとも一方は、先端が折り返されることによって抜止部が形成されている
ことを特徴とする遠心式送風機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数枚の羽根板が一体形成された樹脂製の羽根車をケーシング内に収容しておき、モータを用いてケーシング内で羽根車を回転させることによって空気を送風する遠心式送風機に関する。
【背景技術】
【0002】
複数枚の羽根板を有する羽根車をケーシングの内部で回転させることによって、空気を送風する遠心式送風機が知られている。複数枚の羽根板は回転円板の円周上から立設されており、複数枚の羽根板の上端は円環形状の天板に接続されている。回転円板の中心にはモータの回転軸が接続されており、モータを回転させるとケーシング内で羽根車を回転させることができる。その結果、羽根板と羽根板との間に存在する空気に遠心力が作用して、外側に向かう空気の流れが発生し、この空気の流れによって羽根車の外側とケーシングの内側との間に生じた圧力で、ケーシングの側面に形成された送風口から空気が流出する。また、これに伴って羽根車の内側は負圧となるため、円環形状の天板の中央に形成された空気取入口から羽根車の内側に空気が流入するようになっている。
【0003】
このような遠心式送風機は、羽根車を高速で回転させることによって空気を送風しており、回転に伴って振動や騒音が発生する。この振動や騒音を抑制するためには、羽根車が回転軸に対してアンバランスが出来るだけ小さくなるように、十分に高い精度で製造されている必要がある。更には、モータに羽根車を組み付ける際にも、羽根車の回転軸とモータの回転軸とが出来るだけ一致するように組み付ける必要があるが、組付け時に多少の誤差が生じることは避けがたい。
【0004】
そこで、モータに羽根車を組付けた状態で、天板の中央に開口した空気取入口から羽根板にバランスウェイトを取り付けることによって、モータおよび羽根車の全体でバランスを調整する技術が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した提案されている技術では、遠心式送風機に搭載された羽根車の空気取入口が小径であった場合には、羽根板にバランスウェイトを取り付けることが難しく、作業性が悪化するという問題がある。
【0007】
この発明は、従来の技術が有する上述した課題を解決するためになされたものであり、羽根車の空気取入口が小径の場合でも、容易にバランスを調整することが可能な遠心式送風機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するために、本発明の遠心式送風機は次の構成を採用した。すなわち、
複数枚の羽根板が一体形成された樹脂製の羽根車をケーシング内に収容すると共に、モータを用いて前記羽根車を回転させることによって空気を送風する遠心式送風機において、
前記羽根車は、
前記複数枚の羽根板が円周上に立設された回転円板と、
前記回転円板の中心に形成されて前記モータの回転軸が接続される接続部と、
前記複数枚の羽根板の上端と一体に形成された円環形状の天板と
を備えており、
前記天板には、バランスウェイトが取り付けられる複数の貫通孔が、前記天板の中心から等距離の位置に等間隔で形成されており、
前記天板の前記貫通孔は、前記羽根板の上端が一体に形成された位置に、前記羽根板を跨いだ状態で形成されており、
前記バランスウェイトは、前記貫通孔から前記羽根板の両側に挿入される一対の脚部を備える
ことを特徴とする。
【0009】
かかる本発明の遠心式送風機においては、複数枚の羽根板が一体形成された樹脂製の羽根車がケーシング内に収容されており、羽根車がモータの回転軸に接続されている。そして、ケーシング内で羽根車を回転させることによって空気を送風する。羽根車の複数枚の羽根板は回転円板から立設されており、羽根板の上端は円環形状の天板に接続されている。更に、天板には、天板の中心から等距離の位置に、バランスウェイトが取り付けられる複数の貫通孔が、等間隔で形成されている。そして、これらの貫通孔は、天板に対して羽根板の上端が一体に形成された位置に、羽根板を跨いだ状態で形成されており、バランスウェイトには、貫通孔から羽根板の両側に挿入される一対の脚部が設けられている。
【0010】
こうすれば、羽根車をモータに取り付けた状態で、天板に形成された貫通孔にバランスウェイトを取り付けることで、羽根車およびモータ全体としてのバランスを調整することができる。また、貫通孔は天板に形成されているので、天板の中央に形成された空気取入口が小径の羽根車であっても、バランスウェイトを容易に取り付けることができ、容易にバランス調整することが可能となる。
【0011】
また、貫通孔が天板に設けられているので、貫通孔にバランスウェイトを取り付けることで発生するモーメントが大きくなる。このため、軽量なバランスウェイトを用いてバランス調整することが可能となり、遠心式送風機の重量増加を防止することができる。更に、バランスウェイトを小さくすることができるので、羽根車を回転させたときにバランスウェイトが空気の抵抗になって回転に必要なトルクを増加させることもない。加えて、貫通孔にバランスウェイトを取り付けると、バランスウェイトの脚部が羽根板の両側に挿入されることになる。このため、バランスウェイトが傾こうとした場合でも、羽根板の左右に挿入された脚部が羽根板に接触するためバランスウェイトが傾きにくくなり、貫通孔に取り付けた時のバランスウェイトの姿勢を安定させることができる。更に加えて、バランスウェイトは、脚部が貫通孔に上方から挿入されることによって取り付けられているので、羽根車が回転しても、遠心力でバランスウェイトが外れてしまうこともない。
【0014】
また、上述した本発明の遠心式送風機においては、バランスウェイトを弾性部材で形成して、バランスウェイトの一対の脚部を貫通孔から挿入すると、一対の脚部が羽根板の両面に当接するようにしてもよい。
【0015】
こうすれば、貫通孔にバランスウェイトを取り付けると、一対の脚部が弾性によって羽根板を両面側から挟んだ状態となるので、バランスウェイトをしっかりと固定した状態で取り付けることが可能となる。
【0016】
また、上述した本発明の遠心式送風機において、一対の脚部の少なくとも一方については、先端を折り返すことによって抜止部を形成してもよい。
【0017】
抜止部は脚部の先端が折り返されて形成されているため、脚部を貫通孔に挿入する際には抜止部が弾性変形して貫通孔を通過することができるので、抜止部があっても容易にバランスウェイトを貫通孔に取り付けることができる。ところが、挿入した脚部を抜こうとすると、(意図して弾性変形させない限り)抜止部は貫通孔を通過することができないため、脚部が抜けることはない。このため、脚部に抜止部を設けておくことで、貫通孔に取り付けたバランスウェイトが勝手に抜けることを防止することができる。また、抜止部を押さえるなどして、貫通孔を通過できるように弾性変形させれば、貫通孔に取り付けたバランスウェイトを取り外すことも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施例の遠心式送風機1の大まかな構造を示した説明図である。
【
図2】本実施例の遠心式送風機1の羽根車10をモータ4に取り付けるための構造を示した分解組立図である。
【
図3】本実施例の羽根車10の天板13に貫通孔16が形成された部分を拡大して示した説明図である。
【
図4】本実施例の羽根車10に貫通孔16にバランスウェイト20が取り付けられる様子を示した断面図である。
【
図5】第1変形例のバランスウェイト20についての説明図である。
【
図6】第2変形例のバランスウェイト20についての説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本実施例の遠心式送風機1の大まかな構造を示した説明図である。
図1(a)には遠心式送風機1の外観形状が示されており、
図1(b)には遠心式送風機1の内部構造が示されている。図示されるように本実施例の遠心式送風機1は、ケーシング2の内部に羽根車10が収容された構造となっている。
【0020】
ケーシング2は板金部材を組み合わせて形成されており、ケーシング2の側面には空気を噴き出すための送風口2bが形成され、ケーシング2の上面の中央には空気を吸い込むための吸引口2aが形成されている。また、羽根車10は、外観形状が短い円筒形状の部材であり、円板形状で羽根車10よりも大径の取付板3の上に回転自在に取り付けられている。取付板3に羽根車10を取り付けた状態で、取付板3を、ケーシング2の下方から取付ネジ3sを用いてケーシング2にネジ止めすると、羽根車10がケーシング2内に収容された状態となる。後述するように羽根車10はモータ4(
図2参照)を用いて回転可能となっており、ケーシング2内で羽根車10を回転させると、吸引口2aからケーシング2内に空気が吸い込まれ、送風口2bから空気が送風されるようになっている。
【0021】
図2は、本実施例の羽根車10をモータ4に取り付けるための構造を示した分解組立図である。図示されるように、モータ4は円柱形状に形成されており、円柱形状の同軸上には回転軸4aが突設されて、回転軸4aが突設された側の端面には、モータ4よりは大径で円板形状のフランジ部4bが形成されている。そして、フランジ部4bには3箇所に取付孔4cが形成されており、取付ネジ4sを用いて、3箇所の取付孔4cでモータ4を取付板3に取り付けるようになっている。
【0022】
取付板3は、板金部材で形成された円環形状の部材であり、中央に開口する円形の開口部3aは、モータ4のフランジ部4bよりも小径に形成されている。このため、モータ4のフランジ部4bで開口部3aを塞いでネジ止めすることで、モータ4を取付板3に取り付けることができる。こうしてモータ4を取付板3に取り付けると、モータ4の回転軸4aは、開口部3aの中心から突出した状態となる。また、取付板3の外径は、羽根車10よりも大径に形成されている。
【0023】
羽根車10は、回転円板11の円周上から複数枚の羽根板12が立設されると共に、複数枚の羽根板12の上端が、円環形状の天板13と一体に形成された形状となっている。天板13の内径側には短い円筒形状の内壁13aが上方に向けて突設されており、内壁13aの内側に空気取入口13bが形成されている。この空気取入口13bは、
図1に示したように羽根車10をケーシング2内に収容すると、ケーシング2の吸引口2aに向かい合う状態となる。
【0024】
また、複数枚の羽根板12は回転円板11の円周上から立設されるだけでなく、回転円板11から外側に向かっても延設されている。そして、延設された部分の羽根板12の下端は、円環形状のリング板14と一体に形成されている。尚、リング板14の内径は、天板13の外径よりも大きな値に設定されており、尚且つ、天板13の内径は、回転円板11の外径よりも大きな値に設定されている。このため羽根車10は、樹脂材料を射出成形することによって一体形成されている。
【0025】
更に、回転円板11の中心位置には円板形状の接続部15が突設されており、回転円板11および接続部15の中心位置には、モータ4の回転軸4aが挿通される挿通孔15aが貫通している。また、接続部15の上面には、六角形状の凹部15bが形成されており、凹部15bには、ゴムなどの制振材料で形成された六角形状のインシュレータ5が嵌め込まれる。
【0026】
インシュレータ5の中央にも、モータ4の回転軸4aが挿通される挿通孔5bが貫通しており、更に、インシュレータ5の上面には、六角形状の凹部5aが形成されている。このインシュレータ5の凹部5aには、六角形状に形成された金属製のワッシャ6が嵌め込まれる。そして、ワッシャ6の中央にも、モータ4の回転軸4aが挿通される挿通孔6aが貫通している。
【0027】
羽根車10をモータ4の回転軸4aに取り付ける際には、羽根車10の挿通孔15aにモータ4の回転軸4aを挿通させ、挿通孔15aから突出した回転軸4aを、インシュレータ5の挿通孔5bに挿通させた後、インシュレータ5を接続部15の凹部15bに嵌め込む。続いて、インシュレータ5の挿通孔5bから突出した回転軸4aを、ワッシャ6の挿通孔6aに挿通させた後、ワッシャ6をインシュレータ5の凹部5aに嵌め込む。そして最後に、ワッシャ6の挿通孔6aから突出した回転軸4aに、ナット7を取り付ける。こうすることによって、羽根車10をモータ4の回転軸4aに取り付けることができる。図示されるように、モータ4の回転軸4aは側面が平坦に切削されたDカット形状となっており、ワッシャ6の挿通孔6aも、回転軸4aに合わせてDカット形状となっている。このため、ワッシャ6がナット7の回転に引きずられて回転することがないので、インシュレータ5に捩じるような力が加わることなく、羽根車10を回転軸4aに取り付けることができる。
【0028】
ここで、羽根車10は一体形成によって高い寸法精度で形成されているため、挿通孔15aの中心軸周りのアンバランスは十分に小さくなっている。しかし、羽根車10をモータ4の回転軸4aに取り付ける際に、羽根車10の挿通孔15aの中心軸と、モータ4の回転軸4aの中心軸とを完全に一致させることは困難であり、多少の位置ずれが生じることは避けにくい。そして、羽根車10をモータ4の回転軸4aに取り付ける際の位置ずれが大きくなると、モータ4の回転軸4a周りのアンバランスが大きくなり、羽根車10を回転させた時に大きな振動や騒音が発生する。
【0029】
そこで、本実施例の羽根車10には、天板13の外周部分に複数の貫通孔16が等間隔に形成されている。ここで、天板13の外周部分とは、天板13の中心からの距離が、円環形状の天板13の内周までの距離と、天板13の外周までの距離とを平均した距離よりも大きくなる部分である。このような位置に形成された貫通孔16に、後述するバランスウェイト20を装着することで、羽根車10をモータ4の回転軸4aに取り付けた後から、回転軸4a周りのバランスを調整することが可能となる。
【0030】
図3は、羽根車10の天板13に貫通孔16が形成された部分を拡大して示した説明図である。
図3では、貫通孔16に斜線を付して表示されている。図示されるように貫通孔16は矩形形状となっており、天板13を貫通して形成されている。また、天板13には下方から羽根板12が接続されているが、貫通孔16は羽根板12を跨いで形成されている。このため貫通孔16を上方から見ると、貫通孔16が羽根板12によって2つに分割された状態となっている。
【0031】
図3には、貫通孔16に取り付けられるバランスウェイト20も表示されている。バランスウェイト20は、細板状のバネ材を、長手方向の中央付近で曲げ加工することによって形成されており、曲げ加工された位置の両側から、ほぼ同じ方向に向かって延びる一対の脚部20aを備えている。また、一対の脚部20aの一方は、先端が折り返されることによって抜止部20bが形成されている。尚、
図3では、一対の脚部20aの一方に抜止部20bが形成されているものとしているが、両方の脚部20aに形成してもよい。
【0032】
バランスウェイト20を貫通孔16に取り付ける際には、バランスウェイト20の一方の脚部20aを、羽根板12によって分割された貫通孔16の一方の側に挿入し、他方の脚部20aを、貫通孔16の他方の側に挿入する。これらの脚部20aを貫通孔16内に挿入する際には、脚部20aの先端に形成された抜止部20bが貫通孔16の内壁面に当接して変形することによって、脚部20aを挿入可能となる。そして、抜止部20bが貫通孔16を通過した後は、変形していた抜止部20bが元の形状に復帰する。その状態から、バランスウェイト20を羽根板12の上端に接触するまで挿入することで、バランスウェイト20の取り付けが完了する。
【0033】
図4は、天板13の貫通孔16に取り付けられたバランスウェイト20の断面図である。断面位置は、
図3中にA-Aで表示された位置である。図示されるように、バランスウェイト20は貫通孔16に取り付けられると、羽根板12の両面に一対の脚部20aが当接した状態となるため、バランスウェイト20が安定する。そして、バランスウェイト20は、天板13の貫通孔16に上方から挿入して取り付けられているので、羽根車10を高速で回転させた場合でもバランスウェイト20が遠心力で外れてしまうことを防止することができる。また、バランスウェイト20は、天板13に形成された貫通孔16に取り付けられるので、取り付けられたバランスウェイト20は貫通孔16内に収容された状態となっており、バランスウェイト20が天板13から突出することもない。このため、羽根車10を回転させたときに、バランスウェイト20が空気抵抗になって回転に要するトルクが増加することもない。
【0034】
加えて、バランスウェイト20は細板状のバネ材によって形成されており、バランスウェイト20を取り付けると、一対の脚部20aがバネ力によって羽根板12に押し付けられた状態となる。このため、貫通孔16に取り付けたバランスウェイト20を、よりしっかりと安定させることができる。更に、脚部20aの一方は、先端が折り返されることによって抜止部20bが形成されているので、貫通孔16に取り付けたバランスウェイト20が、上方に抜けてしまうこともない。それでいながら、マイナスドライバー等を用いて上方から抜止部20bを押さえて変形させれば、貫通孔16に取り付けたバランスウェイト20を容易に取り外すことも可能となる。
【0035】
本実施例の遠心式送風機1は、このようなバランスウェイト20を、羽根車10の天板13に形成された貫通孔16に取り付けることができる。このため、モータ4の回転軸4aに羽根車10を取り付けた後に、バランスウェイト20を用いてバランス調整することができる。そして、上述したように、バランスウェイト20を取り付ける貫通孔16は、羽根車10の天板13に形成されているので、天板13の内側に形成された空気取入口13bの内径が小さくなっても、バランスウェイト20を容易に取り付けることができる。加えて、バランスウェイト20を取り付ける貫通孔16は、天板13の外周部分に形成されているので、モータ4の回転軸4aからバランスウェイト20までの距離を長くすることができる。このため、小さなバランスウェイト20を用いてバランス調整することが可能となる。
【0036】
上述した実施例では、バランスウェイト20に設けられた一対の脚部20aを、羽根板12の両側に当接させることによって、バランスウェイト20を貫通孔16に安定した状態で取り付けるものとして説明した。しかし、バランスウェイト20は、必ずしも一対の脚部20aを羽根板12の両側に当接させなくても、貫通孔16に安定した状態で取り付けることができる。以下では、このような変形例について簡単に説明する。
【0037】
図5は、一対の脚部20aを貫通孔16の両側の内壁面16aに当接させる第1変形例のバランスウェイト20についての説明図である。第1変形例のバランスウェイト20も、上述した実施例のバランスウェイト20と同様に、細板状のバネ材を曲げ加工することによって形成されているが、第1変形例のバランスウェイト20は、本体部20cの両側が折り曲げられることによって一対の脚部20aが形成されている。本体部20cの長さは、貫通孔16の両側の内壁面16aの間隔よりは短く形成されており、更に、一対の脚部20aの間隔は先端になるほど広くなった形状となっている。
【0038】
このような第1変形例のバランスウェイト20は、一対の脚部20aの先端を近づけるように変形させた状態で貫通孔16に挿入した後、変形していた力を解除すると、一対の脚部20aが広がることによって貫通孔16の内壁面16aに当接する。その状態でバランスウェイト20を貫通孔16内に押し込むと、バランスウェイト20の本体部20cが羽根板12の上端に当接する結果、
図5に示すように安定した状態で、バランスウェイト20の貫通孔16に取り付けることができる。
【0039】
図6は、一対の脚部20aを貫通孔16の両側の内壁面16aに当接させる第2変形例のバランスウェイト20についての説明図である。第2変形例のバランスウェイト20も、細板状のバネ材を曲げ加工することによって形成されており、本体部20cと、本体部20cの両側が折り曲げられることによって形成された一対の脚部20aとを備えている。但し、第2変形例では、本体部20cの長さが、貫通孔16の両側の内壁面16aの間隔よりは長くなっており、更に、本体部20cの両側に形成された一対の脚部20aは、先端に行くに従って次第に間隔が狭まった後、再び広がる形状(すなわち、内側に凸の形状)に形成されている。また、一対の脚部20aの先端は外側に折り返されることによって抜止部20bが形成されている。
【0040】
このような第2変形例のバランスウェイト20は、一対の脚部20aの先端を近づけるように変形させることによって、脚部20aの先端を貫通孔16に挿入した後、変形していた力を解除すると、一対の脚部20aが広がることによって貫通孔16の内壁面16aに当接する。上述したように一対の脚部20aは内側に凸の形状に形成されているので、一対の脚部20aが広がることによって、バランスウェイト20が貫通孔16に対して位置決めされる。また、バランスウェイト20の本体部20cは、貫通孔16の両側の内壁面16aよりも長めに形成されているので、バランスウェイト20を貫通孔16内に押し込むような力が作用しても、本体部20cが貫通孔16に干渉するため、それ以上に押し込まれてしまうことがない。更に、一対の脚部20aの先端には抜止部20bが形成されているので、貫通孔16に挿入したバランスウェイト20が上方に抜けてしまうこともない。
【0041】
また、
図6に例示した第2変形例のバランスウェイト20は、羽根板12がなくても貫通孔16に取り付けることができる。従って、貫通孔16を形成する位置は、天板13の外周部分であれば十分であり、必ずしも羽根板12が接続された位置である必要はない。このため、天板13に貫通孔16を設ける位置の自由度を増加させることが可能となる。
【0042】
以上、本実施例および各種の変形例の遠心式送風機1について説明したが、本発明は上記の実施例および各種の変形例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【符号の説明】
【0043】
1…遠心式送風機、 2…ケーシング、 2a…吸引口、 2b…送風口、
3…取付板、 3a…開口部、 3s…取付ネジ、 4…モータ、
4a…回転軸、 4b…フランジ部、 4c…取付孔、 4s…取付ネジ、
5…インシュレータ、 5a…凹部、 5b…挿通孔、 6…ワッシャ、
6a…挿通孔、 7…ナット、 10…羽根車、 11…回転円板、
12…羽根板、 13…天板、 13a…内壁、 13b…空気取入口、
14…リング板、 15…接続部、 15a…挿通孔、 15b…凹部、
16…貫通孔、 16a…内壁面、 20…バランスウェイト、
20a…脚部、 20b…抜止部、 20c…本体部。