(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-10
(45)【発行日】2024-07-19
(54)【発明の名称】超音波トランスデューサ
(51)【国際特許分類】
H04R 17/00 20060101AFI20240711BHJP
B06B 1/06 20060101ALI20240711BHJP
【FI】
H04R17/00 330J
B06B1/06 Z
H04R17/00 330G
(21)【出願番号】P 2020166938
(22)【出願日】2020-10-01
【審査請求日】2023-07-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】滝 辰哉
(72)【発明者】
【氏名】豊島 光希
(72)【発明者】
【氏名】丸山 俊樹
【審査官】冨澤 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-318742(JP,A)
【文献】中国特許第114273192(CN,B)
【文献】実開昭60-136599(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 17/00
H04R 1/00-1/06
B06B 1/00-3/04
G01S 15/00-15/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケースと、
前記ケース内に配置された板状の圧電振動子と、
前記ケース内において前記圧電振動子に重ねられ、外部から受け付けた前記圧電振動子を発振させる信号を前記圧電振動子に入力する配線部材と、
前記配線部材に設けられ、前記圧電振動子の厚さ方向から見て前記圧電振動子に隣接するダンパー部と
を備え
、
前記圧電振動子を発振させる信号を前記配線部材に入力する外部配線を備え、
前記外部配線が、前記圧電振動子の厚さ方向に沿う方向に延在しており、
前記配線部材が、前記圧電振動子の厚さ方向から見て前記ダンパー部より外側において前記外部配線と接する接触部を有する、超音波トランスデューサ。
【請求項2】
前記ダンパー部が、前記圧電振動子の厚さ方向から見て前記接触部と前記圧電振動子との間に位置している、請求項
1に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項3】
前記ダンパー部が、前記圧電振動子の厚さ方向から見て前記接触部と前記圧電振動子との間を横断して延びている、請求項
2に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項4】
前記ダンパー部が前記配線部材の接触部より薄い、請求項
1~3のいずれか一項に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項5】
前記配線部材における前記ダンパー部の形成領域の面積が、前記配線部材と前記外部配線との接触面積より大きく、かつ、前記配線部材と前記圧電振動子との接触面積より大きい、請求項
1~4のいずれか一項に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項6】
前記ダンパー部が前記圧電振動子の厚さ方向に関して撓んでいる、請求項1~
5のいずれか一項に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項7】
ケースと、
前記ケース内に配置された板状の圧電振動子と、
前記ケース内において前記圧電振動子に重ねられ、外部から受け付けた前記圧電振動子を発振させる信号を前記圧電振動子に入力する配線部材と、
前記配線部材に設けられ、前記圧電振動子の厚さ方向から見て前記圧電振動子に隣接するダンパー部と
を備え
、
前記配線部材に開口が設けられており、該開口の縁部と前記圧電振動子とが接している、超音波トランスデューサ。
【請求項8】
前記圧電振動子を発振させる信号を前記配線部材に入力する外部配線を備える、請求項
7に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項9】
前記外部配線が、前記圧電振動子の厚さ方向に沿う方向に延在している、請求項
8に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項10】
前記配線部材が、前記圧電振動子の厚さ方向から見て前記ダンパー部より外側において前記外部配線と接する接触部を有する、請求項
9に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項11】
前記ダンパー部が、前記圧電振動子の厚さ方向から見て前記接触部と前記圧電振動子との間に位置している、請求項
10に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項12】
前記ダンパー部が、前記圧電振動子の厚さ方向から見て前記接触部と前記圧電振動子との間を横断して延びている、請求項
11に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項13】
前記ダンパー部が前記配線部材の接触部より薄い、請求項
10~12のいずれか一項に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項14】
前記配線部材における前記ダンパー部の形成領域の面積が、前記配線部材と前記外部配線との接触面積より大きく、かつ、前記配線部材と前記圧電振動子との接触面積より大きい、請求項
10~13のいずれか一項に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項15】
前記ダンパー部が前記圧電振動子の厚さ方向に関して撓んでいる、請求項
7~14のいずれか一項に記載の超音波トランスデューサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波トランスデューサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ケース内に圧電振動子が配置された超音波トランスデューサが知られている。たとえば、下記特許文献1には、両主面に電極が形成された板状の圧電振動子と、圧電振動子の各電極に信号を入力する配線とを備えた超音波トランスデューサが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
超音波トランスデューサにおいては、超音波成分の残響のさらなる低減が求められている。しかしながら、上述した従来の超音波トランスデューサでは、超音波成分の残響が十分に低減されていなかった。
【0005】
本発明の一態様は、超音波成分の残響の低減が図られた超音波トランスデューサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態に係る超音波トランスデューサは、ケースと、ケース内に配置された板状の圧電振動子と、ケース内において圧電振動子に重ねられ、外部から受け付けた圧電振動子を発振させる信号を圧電振動子に入力する配線部材と、配線部材に設けられ、圧電振動子の厚さ方向から見て圧電振動子に隣接するダンパー部とを備える。
【0007】
上記超音波トランスデューサにおいては、圧電振動子に隣接して設けられたダンパー部が、圧電振動子の発振によって配線部材を伝わる振動を抑制する。そのため、上記超音波トランスデューサは、超音波成分の残響を低減することができる。
【0008】
他の形態に係る超音波トランスデューサは、圧電振動子を発振させる信号を配線部材に入力する外部配線を備える。
【0009】
他の形態に係る超音波トランスデューサは、外部配線が、圧電振動子の厚さ方向に沿う方向に延在している。
【0010】
他の形態に係る超音波トランスデューサは、配線部材が、圧電振動子の厚さ方向から見てダンパー部より外側において外部配線と接する接触部を有する。
【0011】
他の形態に係る超音波トランスデューサは、ダンパー部が、圧電振動子の厚さ方向から見て接触部と圧電振動子との間に位置している。
【0012】
他の形態に係る超音波トランスデューサは、ダンパー部が、圧電振動子の厚さ方向から見て接触部と圧電振動子との間を横断して延びている。
【0013】
他の形態に係る超音波トランスデューサは、ダンパー部が配線部材の接触部より薄い。
【0014】
他の形態に係る超音波トランスデューサは、配線部材におけるダンパー部の形成領域の面積が、配線部材と外部配線との接触面積より大きく、かつ、配線部材と圧電振動子との接触面積より大きい。
【0015】
他の形態に係る超音波トランスデューサは、ダンパー部が圧電振動子の厚さ方向に関して撓んでいる。
【0016】
他の形態に係る超音波トランスデューサは、配線部材に開口が設けられており、該開口の縁部と圧電振動子とが接している。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一態様によれば、超音波成分の残響の低減が図られた超音波トランスデューサが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る超音波トランスデューサの斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1の超音波トランスデューサの分解斜視図である。
【
図3】
図3は、
図1のIII-III線に沿った断面図である。
【
図4】
図4は、ケース及び圧電振動子の平面図である。
【
図8】
図8は、
図3に示した断面図の要部を拡大した要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には、同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0020】
図1~3を参照して、本実施形態に係る超音波トランスデューサ1の構成を説明する。
【0021】
超音波トランスデューサ1は、超音波を送受信できる構成を有し、具体的には、収容空間S1を画成するケース10を備え、ケース10の収容空間S1内に収容された圧電振動子20、配線部材30、一対の第1のピン41,43、複数のスリーブ46,47、吸音材50、基板60、一対の第2のピン65,67、および、防振材70を備えた構成を有する。
【0022】
ケース10は、一端に開口を有する有底筒状の部材であり、収容空間S1を画成する底壁11と側壁13とを有する。側壁13は底壁11と交差する方向に延在しており、側壁13は底壁11に対して直交する方向に延在していてもよい。本実施形態において、底壁11と側壁13とは、一体形成されており、同一材料で構成されている。ケース10は、たとえば、アルミニウム(Al)からなる。ケース10は、Al以外の金属からなっていてもよい。ケース10は、たとえば、アルミニウム合金、ステンレス鋼、又は銅合金からなっていてもよい。アルミニウム合金は、たとえば、ジュラルミンを含む。銅合金は、たとえば真鍮を含む。
【0023】
ケース10の底壁11は、収容空間S1側を向いた底面12を有する。底面12は、底面12と交差する方向から見て、長径と短径とを有する円形状を呈している。本実施形態では、底面12は、長円形状を呈している。底面12では、長径に沿う方向と短径に沿う方向とが互いに交差している。長径に沿う方向と短径に沿う方向とは、たとえば、直交している。底壁11の厚さは、たとえば、0.7mm以上1.5mm以下である。本実施形態では、底壁11の厚さは、0.9mmである。
【0024】
以下では、底面12の長径に沿う方向をX方向、底面12の短径に沿う方向をY方向、底面12に直交する方向をZ方向とする。
【0025】
底面12は、直線状を呈する一対の縁12aと、円弧状を呈する一対の縁12bとで規定されている。一対の縁12aは、X方向に延在していると共に、Y方向で離間している。一対の縁12aは、互いに略平行である。縁12bは、各縁12aの端同士を接続している。長径と短径とを有する円形状は、楕円形状であってもよい。底面12と交差する方向は、たとえば、底面12と直交する方向であってもよい。底面12と交差する方向は、底壁11と交差する方向と一致してもよい。
【0026】
側壁13は、内側面14を有している。底面12及び内側面14は、ケース10の内面を構成している。内側面14には、複数の段差部15が形成されている。本実施形態では、3つの段差部15が形成されている。一つの段差部15は、一方の縁12aに沿って延在している。残りの二つの段差部15は、他方の縁12aに沿って互いに離間して設けられている。段差部15は、ケース10に対する防振材70の位置決めに用いられる。
【0027】
圧電振動子20は、
図4、5に示されるように、圧電素体21と、圧電素体21に対して電圧を印加するための一対の電極23,25とを有する。圧電振動子20は、底壁11上に配置されている。圧電振動子20は、たとえば、接着により底壁11上に固定されている。
【0028】
圧電素体21は、直方体形状を呈し、平面視で正方形状を有する。本明細書での「直方体形状」は、角部及び稜線部が面取りされている直方体の形状、及び、角部及び稜線部が丸められている直方体の形状を含む。圧電素体21は、互いに対向する正方形状の一対の主面21a,21bと、互いに対向する一対の側面21c、21dとを有する。側面21c、21dは、一対の主面21a,21bを連結するように、一対の主面21a,21bが対向する方向(Z方向)に延在している。主面21bは、底面12と対向している。圧電振動子20は、主面21bと底面12とが対向するように、底壁11上に配置されている。一対の主面21a,21bが対向している方向は、底壁11(底面12)と交差する方向である。一対の主面21a,21bが対向している方向は、底壁11(底面12)と直交する方向であってもよい。
【0029】
圧電素体21は、圧電セラミック材料からなる。圧電セラミック材料は、たとえば、PZT[Pb(Zr、Ti)O3]、PT(PbTiO3)、PLZT[(Pb,La)(Zr、Ti)O3]、又はチタン酸バリウム(BaTiO3)を含む。圧電素体21は、たとえば、上述した圧電セラミック材料を含むセラミックグリーンシートの焼結体により構成される。圧電素体21の厚さは、たとえば、150~500μmである。本実施形態では、圧電素体21の厚さは、200μmである。
【0030】
圧電振動子20は、
図4に示されるように、圧電素体21の側面21c、21dがY方向に沿うように、底壁11(底面12)上に配置されている。圧電振動子20は、たとえば、底面12での、X方向及びY方向での略中央に配置されている。
【0031】
一方の電極23は、主面21bの略全域を覆うとともに、側面21cおよび側面21c側の主面21aの一部を連続的に覆っている。主面21bを覆う部分の電極23は、底壁11(底面12)に接合されている。他方の電極25は、主面21aの略全域を覆っている。電極25は、主面21aを覆う部分の電極23とは離間しており、電極23との絶縁が図られている。このように、圧電素体21は、一対の電極23、25でZ方向において挟まれる領域を有し、この領域が圧電的に活性な領域を構成する。
【0032】
各電極23,25は、圧電素体21の各面21a~21cと直接的に接している。各電極23,25の厚さは、1.5μm以下である。各電極23,25は、たとえば、クロム(Cr)層、ニッケル銅合金(Ni-Cu)層、及び金(Au)層からなる積層体を含む。各電極23,25は、銀(Ag)、チタン(Ti)、白金(Pt)、銀パラジウム合金(Ag-Pd)、又はニッケルクロム合金(Ni-Cr)を含んでいてもよい。各電極23,25は、たとえば、スパッタリング法により圧電素体21の表面に形成される。
【0033】
配線部材30は、収容空間S1内において、圧電振動子20上に重ねられるようにして配置されている。配線部材30は、シート状を呈しており、平面視で底面12と略同形状を有する。より詳しくは、配線部材30は、平面視で底面12よりも一回り小さくなるように設計されており、ケース10の内側面14から離間して配置されている。配線部材30は、たとえば、フレキシブルプリント基板(FPC)又はフレキシブルフラットケーブル(FFC)である。すなわち、配線部材30は、複数の配線を備えている。配線部材30は、複数の配線により、第1のピン41,43と圧電振動子20とをそれぞれ電気的に接続する。本実施形態では、配線部材30は、ポリイミド樹脂等の樹脂からなる樹脂シート内に一対の配線31、32が設けられた構成を有する。
【0034】
図5~7に示すように、配線部材30は、ベース部33と一対の接触部34、35とを有する。
【0035】
ベース部33は、配線部材30の中央に位置する平板部分であり、Z方向において互いに対向する一対の主面33a,33bを有する。配線部材30は、ベース部33の主面33bが圧電素体21と対向するように、収容空間S1に配置されている。
【0036】
ベース部33の中央領域には矩形状の開口33cが設けられており、開口33cから圧電振動子20が一部露出している。開口33cは、配線部材30が圧電振動子20の振動を抑制しないために設けられ得る。配線部材30は、Y方向に沿って延在する開口33cの縁33dにおいて圧電振動子20の電極23、25と重なっている。
【0037】
接触部34,35は、ベース部33から連続して延びており、X方向においてベース部33を挟む位置に設けられている。各接触部34、35は、Y方向に延びる長尺平板状を呈し、ベース部33の厚さよりも主面33b側に厚くなるように設計されている。一方の接触部34は、圧電素体21の側面21c側に位置し、他方の接触部35は、圧電素体21の側面21d側に位置している。各接触部34,35と底壁11との間には圧電振動子20は介在しておらず、各接触部34、35は底面12と直接接している。
【0038】
一対の配線31、32は、圧電振動子20と重なるベース部33の開口33cの縁33dから各接触部34、35まで配設されている。一対の配線31、32は、第1の端部31a、32aと、第2の端部31b、32bとを有する。一方の配線31の第1の端部31aは、圧電振動子20の電極23と重なるベース部33の開口33cの縁33dの全幅に亘って設けられており、その縁33dの下面(主面33b)において樹脂シートから露出して、圧電振動子20の電極23と電気的に接続されている。一方の配線31の第2の端部31bは、接触部34に位置しており、接触部34の上面において樹脂シートから露出して、後述する第1のピン41と電気的に接続されている。他方の配線32の第1の端部32aは、圧電振動子20の電極25と重なるベース部33の開口33cの縁33dの全幅に亘って設けられており、その縁33dの下面(主面33b)において樹脂シートから露出して、圧電振動子20の電極25と電気的に接続されている。他方の配線32の第2の端部32bは、接触部35に位置しており、接触部35の上面において樹脂シートから露出して、後述する第1のピン43と電気的に接続されている。
【0039】
配線部材30には、さらに一対のダンパー部37、39が、圧電振動子20に隣接して設けられている。各ダンパー部37、39は、配線部材30のベース部33の主面33b上に設けられており、配線部材30と底壁11との間に介在している。各ダンパー部37、39は、圧電振動子20と接触部34、35との間の主面33bにそれぞれ設けられている。一方のダンパー部37は、圧電振動子20と接触部34との間に設けられ、他方のダンパー部39は、圧電振動子20と接触部35との間に設けられている。換言すると、Z方向から見て、配線部材30の接触部34、35は、ダンパー部37、39より外側に位置している。各ダンパー部37、39は、絶縁材料で構成されており、たとえば絶縁性樹脂で構成されている。本実施形態では、各ダンパー部37、39は熱圧着樹脂フィルム(一例として、ニトリルゴム系樹脂フィルム)で構成されており、この場合、各ダンパー部37、39は表層部分が加熱溶融された状態で圧着形成される。本実施形態では、各ダンパー部37、39は、配線部材30の主面33bおよび底壁11の底面12の両方に接着されており、それにより配線部材30を底壁11に固定している。
【0040】
各ダンパー部37、39は、
図7に示すように、長尺平板状を呈し、Y方向に沿って配線部材30の全幅に亘って延びている。各ダンパー部37、39は、Z方向から見て、配線部材30の接触部34、35と圧電振動子20との間を横断して延びている。各ダンパー部37、39は、
図8に示すように、上部がベース部33に接するとともに、下部が底壁11に接している。すなわち、各ダンパー部37、39の厚さd1は、ベース部33と底壁11との離間距離d2と同一である。本実施形態では、ダンパー部37、39を構成するホットメルト樹脂を加熱溶融し、ダンパー部37、39を介して配線部材30を底壁11に貼付した後、ホットメルト樹脂が冷却固化される。そのため、冷却固化したときの厚さ寸法がベース部33と底壁11との離間距離d2と同一となるように、加熱溶融される前のホットメルト樹脂の厚さ寸法を設計または選択することが好ましい。配線部材30における各ダンパー部37、39の形成領域の面積S1は、配線部材30の接触部34、35とピン41、43との接触面積S2より大きく、かつ、配線部材30と圧電振動子20との接触面積S3より大きくなるように設計されている。
【0041】
一対の第1のピン41,43(外部配線)は、略四角柱状を有する導電部材であり、Z方向に沿って延在している。一対の第1のピン41,43は、配線部材30の配線31、32のそれぞれの第2の端部31b、32bに接続されるように、位置合わせされている。各ピン41、43と端部31b、32bとははんだまたは導電性接着剤により接続される。各ピン41,43は、たとえば金属からなる。各ピン41,43は、たとえば、真鍮からなる。各ピン41,43の表面には、めっき層(不図示)が形成されていてもよい。めっき層は、たとえば、ニッケルめっき及び錫めっきにより形成されていてもよい。この場合、めっき層は二層構造である。
【0042】
一対の第1のピン41,43の配線部材30側の部分は、それぞれスリーブ45、47に保持されている。各スリーブ45,47は、両端にフランジを有する円筒部材である。本実施形態では、スリーブ45,47は、互いに同形状を呈している。各スリーブ45,47は、樹脂からなる。各スリーブ45,47は、たとえば、リン脱酸銅(PDC)、又は黄銅などの金属からなる。スリーブ45,47が金属からなる場合、ピン41,43だけではなくスリーブ45,47も配線部材30の導体層と接合させることができるので、接続信頼性が増す。各スリーブ45,47は、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂(PBT樹脂)又はポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂からなってもよい。
【0043】
各スリーブ45,47の一端側のフランジは、配線部材30と接合されている。各スリーブ45、47は、軸方向(Z方向)から見て、接触部34、35と重なる位置に配置されている。各スリーブ45,47の軸方向の長さは、各ピン41,43の軸方向の長さよりも短い。
【0044】
吸音材50は、圧電振動子20上に配置されている。吸音材50は、一対の第1のピン41,43の間に配置されている。吸音材50は、収容空間S1に配置されている。吸音材50は、たとえば、直方体形状を呈している。吸音材50は、
図4にも示されるように、圧電振動子20の厚さ方向(Z方向)から見て、圧電振動子20の全体と重なっている。すなわち、圧電振動子20は、Z方向から見て、吸音材50の外縁51の内側に位置している。これにより、超音波成分の残響が更に低減される。圧電振動子20は、Z方向から見て、吸音材50のX方向及びY方向の略中央に位置している。吸音材50は、たとえば、熱可塑性樹脂を主体とする発泡体(気泡構造体)からなる。熱可塑性樹脂は、たとえば、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)を含む。
【0045】
基板60は、吸音材50を挟んで圧電振動子20と平行に配置されている。基板60は、収容空間S1内に配置されている。基板60は、板状部材である。基板60は、Z方向において互いに対向している一対の主面60a,60bを有している。主面60bは、吸音材50と対向している。
【0046】
各主面60a,60bは、長円形状を呈している。各主面60a,60bの長径方向は、Y方向に沿っている。各主面60a,60bの短径方向は、X方向に沿っている。各主面60a,60bの短径方向の一対の縁は、外側に膨らむように湾曲し、円弧状を呈している。基板60には、ピン41,43が挿通される挿通孔61,63が設けられている。挿通孔61,63は、基板60のX方向の両端部に形成され、円形状を呈している。各主面60a,60bの短径方向の一対の縁は、挿通孔61,63に沿って湾曲している。
【0047】
基板60は、一対の第1のピン41、43と電気的に接続されている。基板60は、たとえば、ガラスエポキシ基板からなる。基板60には、複数の導体層が配置されている。複数の導体層は、基板60に接着されている。本実施形態では、
図2に示すように、基板60には一対の導体層66、68が配置されている。一方の導体層66は第1のピン41と第2のピン65とを接続しており、他方の導体層68は第1のピン43と第2のピン67とを接続している。
【0048】
第1のピン41と第2のピン65とは、基板60の一方の導体層66にはんだまたは導電性接着剤により接続されており、導体層66を通じて互いに電気的に接続されている。第1のピン43と第2のピン67とは、基板60の他方の導体層68にはんだまたは導電性接着剤により接続されており、導体層68を通じて互いに電気的に接続されている。
【0049】
第2のピン65,67は、X方向において互いに離間した状態で主面60aに配置されている。第2のピン65,67は、主面60aからZ方向に延在し、防振材70を貫通している。第2のピン65,67は、X方向において第1のピン41,43の間に配置されている。本実施形態では、第2のピン65,67は、互いに同形状を呈している。第2のピン65,67は、たとえば、金属からなる。第2のピン65,67は、たとえば、真鍮からなる。各ピン65,67の表面には、めっき層(不図示)が形成されていてもよい。めっき層は、たとえば、ニッケルめっき及び錫めっきにより形成されていてもよい。この場合、めっき層は、二層構造である。
【0050】
防振材70は、ケース10の内面(内側面14)と接して配置され、ケース10の振動を抑制する。防振材70は、吸音材50の周囲に配置されている。防振材70は、蓋体71と、枠体73と、を有している。蓋体71は、圧電振動子20、配線部材30、第1のピン41,43、スリーブ45,47、吸音材50、及び基板60がケース10内に収容されている状態で、ケース10の開口を封止している。蓋体71は、収容空間S1を封止している。蓋体71からは、第2のピン65,67のそれぞれの先端が突出している。
【0051】
凹部71bの底面には、ピン41が収容される凹部71cと、ピン43が収容される凹部71dと、が設けられている。凹部71c,71dは、たとえば断面円形状を呈している。凹部71c,71dの直径は、ピン41,43の直径よりも長い。凹部71c,71dの内面は、ピン41,43から離間している。凹部71c,71dは、凹部71bの底面のX方向における両端部に設けられている。
【0052】
枠体73は、蓋体71と交差する方向に延在している。蓋体71と交差する方向は、たとえば、蓋体71と直交する方向であってもよい。蓋体71と枠体73とは、一体形成されている。防振材70は、軸方向の一端が塞がれ、他端が開口している筒状の部材である。防振材70は、ケース10の内部に嵌め込まれている。防振材70は、ケース10の内部に圧入されている。枠体73は、蓋体71からZ方向に沿ってケース10の内側に延在している。枠体73は、底面12から離間している。枠体73は、ケース10の内側面14と接している。
【0053】
枠体73は、吸音材50の周りを取り囲んでいる。吸音材50は、圧電振動子20の厚さ方向(Z方向)において、防振材70(枠体73)よりも圧電振動子20側に突出している。枠体73と圧電振動子20との間のZ方向における距離は、吸音材50と圧電振動子20との間のZ方向における距離よりも長い。
【0054】
枠体73は、一対の側部75と、一対の側部77とを有している。一対の側部75は、吸音材50を挟んでX方向において互いに対向している。一対の側部77は、吸音材50を挟んでY方向において互いに対向している。各側部75は、吸音材50の各側面50cと互いに対向している。各側部75は、吸音材50から離間している。
【0055】
一対の側部77は、吸音材50を挟み込んで保持している。一対の側部77の間には、吸音材50がはめ込まれている。一対の側部77は、吸音材50を圧縮している。吸音材50は、圧縮に対する反発力によって一対の側部77を押圧している。各側部77は、吸音材50の各側面50dと接している。
【0056】
防振材70は、蓋体71から内側面14側に張り出す複数の張出部79を更に有している。張出部79は、蓋体71において、ケース10の段差部15に対応する位置に設けられている。張出部79は、対応する段差部15に配置される。防振材70は、張出部79が段差部15に係止されることで、ケース10に対して位置決めされている。
【0057】
防振材70は、弾性体であり、弾性により残響を抑制する。防振材70は、樹脂からなる。防振材70は、非発泡体であり、吸音材50の密度よりも高い密度を有している。防振材70は、たとえば、シリコーンゴムからなる。防振材70は、たとえば、RTV(Room Temperature Vulcanizing)シリコーンゴムからなる。
【0058】
上述した超音波トランスデューサ1は、出力波を発信し、検査対象物から跳ね返ってきた出力波を受信する。超音波センサが検査対象物に近接し、超音波トランスデューサ1から検査対象物までの距離がわずかである場合、出力波の発信時に生じる残響成分の電圧と、検査対象物から跳ね返ってきた出力波の受信電圧とが干渉する。これにより、超音波トランスデューサ1では、受信電圧を検出することが困難になる場合がある。
【0059】
超音波トランスデューサ1は、ケース10と、ケース10内に配置された圧電振動子20と、ケース10内において圧電振動子20に重ねられ、外部から受け付けた圧電振動子20を発振させる信号を圧電振動子20に入力する配線部材30と、配線部材30に設けられ、圧電振動子20の厚さ方向(Z方向)から見て圧電振動子20に隣接するダンパー部37、39とを備える。超音波トランスデューサ1においては、圧電振動子20に隣接して設けられたダンパー部37、39が、圧電振動子20の発振によって配線部材30を伝わる振動を抑制する。ダンパー部37、39は、縦振動(Z方向に関する振動)および横振動(X方向に関する振動)を抑制し得る。ダンパー部37、39による振動抑制により、超音波トランスデューサ1は、超音波成分の残響を低減することができる。
【0060】
ダンパー部37、39は、圧電振動子20に接しないように、圧電振動子20から所定距離だけ離間させることで、ダンパー部37、39が圧電振動子20の振動を阻害することを防いでいる。また、ダンパー部37、39は、配線部材30の接触部34、35に接しないように、接触部34、35から所定距離だけ離間させることができる。この場合、圧電振動子20の振動がダンパー部37、39から接触部34、35へ直接伝播する事態が抑制され、超音波成分の残響がさらに低減される。
【0061】
各ダンパー部37、39の厚さd1は、ベース部33と底壁11との離間距離d2と同一であってもよく、離間距離d2より薄くてもよい。厚さd1が離間距離d2より薄い場合には、各ダンパー部37、39および配線部材30のベース部33がZ方向に対して撓む。
【0062】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0063】
たとえば、超音波トランスデューサ1は、超音波の送信のみをおこなってもよい。また、圧電振動子20は、圧電素体21内に配置される一つ又は複数の内部電極を有していてもよい。この場合、圧電素体21は複数の圧電体層を有していてもよく、内部電極と圧電体層とが交互に配置されていてもよい。
【0064】
さらに、圧電素体21は、Z方向から見て、正方形状ではなく、長方形状や円形状であってもよい。また、配線部材30の開口33cは、四角形状に限らず、U字状であってもよい。
【符号の説明】
【0065】
1…超音波トランスデューサ、10…ケース、20…圧電振動子、30…配線部材、33…ベース部、33c…開口、34、35…接触部、37、39…ダンパー部、41、43…第1のピン、S1…収容空間。