(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-10
(45)【発行日】2024-07-19
(54)【発明の名称】エアロゲル積層構造体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 5/32 20060101AFI20240711BHJP
B32B 5/24 20060101ALI20240711BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20240711BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20240711BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20240711BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240711BHJP
B32B 27/42 20060101ALI20240711BHJP
B32B 27/34 20060101ALI20240711BHJP
B60R 13/08 20060101ALI20240711BHJP
B60R 13/02 20060101ALN20240711BHJP
【FI】
B32B5/32
B32B5/24
B32B27/32 Z
B32B27/40
B32B27/30 A
B32B27/00 101
B32B27/42 102
B32B27/34
B60R13/08
B60R13/02 A
(21)【出願番号】P 2020171488
(22)【出願日】2020-10-09
【審査請求日】2023-02-13
(31)【優先権主張番号】P 2020004720
(32)【優先日】2020-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000127307
【氏名又は名称】株式会社イノアック技術研究所
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100105315
【氏名又は名称】伊藤 温
(72)【発明者】
【氏名】夛田 亮佑
(72)【発明者】
【氏名】大田 英生
【審査官】岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-512022(JP,A)
【文献】特表2019-504779(JP,A)
【文献】特開2016-074841(JP,A)
【文献】特開2007-045098(JP,A)
【文献】特開2019-077134(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
C08J 9/00-9/42
B60R 13/01-13/04,13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の発泡体の内部にエアロゲルを充填したエアロゲル複合材と、前記エアロゲル複合材の少なくとも片面側に設けられた、第2の発泡体及び/または繊維体と、を含むエアロゲル積層構造体であって、
前記第1の発泡体は、連続気泡樹脂発泡体であり、且つ、密度が0.015~0.300g/cm
3であ
り、
前記第1の発泡体は、連続気泡を有する発泡体層と、前記発泡体層の対向する二つの表面に形成された通気性を有する表皮層と、を有する表皮付き連続気泡樹脂発泡体であり、
前記表皮層は、前記表皮層の表面に到達する連続気泡を含み、
前記表皮層の表面を、前記表皮層の表面の法線方向から観察した連続気泡の平均セル径RAと、前記表皮層の表面と垂直な断面における前記発泡体層の連続気泡の平均セル径RBと、の比(RA/RB)が、1/1000~1/2であることを特徴とする、エアロゲル積層構造体。
【請求項2】
前記第1の発泡体の通気度が0.01~300cm
3/cm
2/secである、請求項1に記載のエアロゲル積層構造体。
【請求項3】
前記第1の発泡体が、ポリオレフィン発泡体、ポリウレタン発泡体、アクリル発泡体、アクリロニトリル-ブタジエンゴム発泡体、及びシリコーン発泡体から選択される、請求項
1又は2に記載のエアロゲル積層構造体。
【請求項4】
第1の発泡体の内部にエアロゲルを充填したエアロゲル複合材と、前記エアロゲル複合材の少なくとも片面側に設けられた、第2の発泡体及び/または繊維体と、を含むエアロゲル積層構造体であって、
前記第1の発泡体は、連続気泡樹脂発泡体であり、且つ、密度が0.015~0.300g/cm
3
であり、
前記繊維体が炭素繊維織物であることを特徴とする、エアロゲル積層構造体。
【請求項5】
前記繊維体が
前記炭素繊維織物に熱硬化性樹脂が含浸して硬化した繊維補強材である、請求項
4に記載のエアロゲル積層構造体。
【請求項6】
請求項
4又は5に記載のエアロゲル積層構造体を熱成形した、エアロゲル成形物。
【請求項7】
第1の発泡体の内部にエアロゲルを充填したエアロゲル複合材と、前記エアロゲル複合材の少なくとも片面側に設けられ、エアロゲルが充填されていない、第2の発泡体及び/または繊維体と、を含むエアロゲル積層構造体であって、
前記第1の発泡体は、連続気泡樹脂発泡体であり、且つ、密度が0.015~0.300g/cm
3
あることを特徴とする、エアロゲル積層構造体。
【請求項8】
請求項1~
5、7のいずれか一項に記載のエアロゲル積層構造体を含む、天井材。
【請求項9】
第1の発泡体の内部にエアロゲルを充填したエアロゲル複合材と、前記エアロゲル複合材の少なくとも片面側に設けられた、第2の発泡体及び/または繊維体と、を含むエアロゲル積層構造体を含み、
前記第1の発泡体は、連続気泡樹脂発泡体であり、且つ、密度が0.015~0.300g/cm
3
であり、
乗り物の屋根の内側に設けられることを特徴とする、天井材。
【請求項10】
エアロゲル積層構造体を含む天井材の製造方法であって、
前記エアロゲル積層構造体は、
第1の発泡体の内部にエアロゲルを充填したエアロゲル複合材と、前記エアロゲル複合材の少なくとも片面側に設けられた、第2の発泡体及び/または繊維体と、を含み、
前記第1の発泡体は、連続気泡樹脂発泡体であり、且つ、密度が0.015~0.300g/cm
3
であり、
前記エアロゲル複合材の少なくとも片面側に、前記第2の発泡体及び/又は前記繊維体を積層する工程を含むことを特徴とする、天井材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアロゲル積層構造体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車や鉄道車両、航空機、船舶の屋根の内部には、天井材が取り付けられている。この天井材は、断熱性、遮熱性、吸遮音性、装飾性といった様々な機能が求められるため、素材単独ではなく、発泡体や繊維体といった複数の素材を積層している。
【0003】
例えば自動車用途では、ポリウレタン発泡体や繊維体とを組み合わせた天井材があり、成形天井と呼ばれている。
【0004】
天井材の断熱材料としては、特許文献1~3に開示されたポリウレタン発泡体や、特許文献4に開示された真空断熱材等が使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5626904号
【文献】特開2007-331673号公報
【文献】特開2003-260718号公報
【文献】特表2011-5693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、汎用のポリウレタン発泡体は吸遮音性には優れるものの、断熱性能や遮熱性能はあまり高くないため、積層体全体での断熱性能は低い。高断熱性能を発現するには、発泡体や繊維体を厚くする必要があるため、車室空間が狭くなる。また、断熱性能に優れた硬質ポリウレタン発泡体は柔軟性に欠けるため、加工の自由度に制限がある。
【0007】
さらに、高断熱性能を有する真空断熱材は、柔軟性または成形加工性に欠け、経時で真空度が低下し、断熱性能が劣化するという課題がある。
【0008】
そこで、本発明は、断熱性と、柔軟性乃至は成形加工性とに優れたエアロゲル積層構造体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意研究を行い、特定のエアロゲル複合材料を含むエアロゲル積層構造体により、上記課題を解決可能なことを見い出し、本発明を完成させた。即ち、本発明は以下の通りである。
【0010】
本発明(1)は、
第1の発泡体の内部にエアロゲルを充填したエアロゲル複合材と、前記エアロゲル複合材の少なくとも片面側に設けられた、第2の発泡体及び/または繊維体と、を含むエアロゲル積層構造体であって、
前記第1の発泡体は、連続気泡樹脂発泡体であり、且つ、密度が0.015~0.300g/cm3であることを特徴とする、エアロゲル積層構造体である。
本発明(2)は、
前記第1の発泡体は、連続気泡を有する発泡体層と、前記発泡体層の対向する二つの表面に形成された通気性を有する表皮層と、を有する表皮付き連続気泡樹脂発泡体であり、
前記表皮層は、前記表皮層の表面に到達する連続気泡を含み、
前記表皮層の表面を、表皮層の表面の法線方向から観察した連続気泡の平均セル径RAと、前記表皮層の表面と垂直な断面における前記発泡体層の連続気泡の平均セル径RBと、の比(RA/RB)が、1/1000~1/2である、前記発明(1)のエアロゲル積層構造体である。
本発明(3)は、
前記第1の発泡体の通気度が0.01~300cm3/cm2/secである、前記発明(2)のエアロゲル積層構造体である。
本発明(4)は、
前記第1の発泡体が、ポリオレフィン発泡体、ポリウレタン発泡体、アクリル発泡体、アクリロニトリル-ブタジエンゴム発泡体、及びシリコーン発泡体から選択される、前記発明(2)又は(3)のエアロゲル積層構造体である。
本発明(5)は、
前記第1の発泡体が、メラミン発泡体、ポリイミド発泡体または圧縮成形によって得られるポリウレタン発泡体から選択される連続気泡樹脂発泡体であり、
前記第1の発泡体は、密度が0.015~0.200g/cm3であり、通気度が0.5~300cm3/cm2/secである、前記発明(1)のエアロゲル積層構造体である。
本発明(6)は、
前記第1の発泡体の厚みが、0.03~50.0mmである、前記発明(1)~(5)のいずれかのエアロゲル積層構造体である。
本発明(7)は、
前記繊維体が炭素繊維織物である、前記発明(1)~(6)のいずれかのエアロゲル積層構造体である。
本発明(8)は、
前記繊維体が炭素繊維織物に熱硬化性樹脂が含浸して硬化した繊維補強材である、前記発明(7)のエアロゲル積層構造体である。
本発明(9)は、
前記発明(7)~(8)のいずれかのエアロゲル積層構造体を熱成形した、エアロゲル成形物である。
本発明(10)は、
前記発明(1)~(8)のいずれかのエアロゲル積層構造体を含む、天井材である。
本発明(11)は、
前記発明(9)のエアロゲル積層構造体を含む天井材の製造方法であって、
前記エアロゲル複合材の少なくとも片面側に、前記第2の発泡体及び/又は前記繊維体を積層する工程を含むことを特徴とする、天井材の製造方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、断熱性と、柔軟性乃至は成形加工性とに優れたエアロゲル積層構造体を提供することが可能である。本発明によれば、初期的に優れた断熱性を有するのみならず、柔軟性乃至は成形加工性に優れることから、製品形状への加工時や、製品への実装後の経時での断熱性能の劣化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】表皮付き連続気泡樹脂発泡体の断面写真である。
【
図2】表皮付き連続気泡樹脂発泡体の表皮層表面の法線方向からの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明にかかるエアロゲル積層構造体及びその製造方法について詳述する。
【0014】
本発明において、常圧下とは、特に減圧も、加圧も行っていない圧力を示す。また、減圧下とは、人為的に大気圧よりも減圧された状態を示す。
【0015】
本発明において、密度は、JIS K7222:2005「発泡プラスチック及びゴム-見掛け密度の求め方」に準拠して測定された見掛け密度である。
【0016】
本発明において、エアロゲル複合材は、発泡基材にエアロゲルが充填されたものであるが、エアロゲルを充填する前の発泡基材と、エアロゲルを充填した後の発泡基材とを、同じものと取扱い、どちらか一方の説明を省略するまたは他方の説明に読み替える場合がある。
【0017】
以下において、発泡体、樹脂発泡体、発泡基材等を区別なく使用する場合がある。
【0018】
粉落ちとは、通常、エアロゲル積層構造体の製造工程においてエアロゲル複合材からエアロゲルの粉末が脱離することを意味するが、エアロゲル積層構造体自体からエアロゲルの粉末が脱離することを意味してもよい。
【0019】
<<<<<エアロゲル積層構造体>>>>>
エアロゲル積層構造体は、エアロゲル複合材と、エアロゲル複合材の少なくとも片面側に設けられた、第2の発泡体及び/または繊維体と、を含む。以下、エアロゲル積層構造体に含まれる第2の発泡体及び/または繊維体を、外部層とする。
【0020】
エアロゲル積層構造体に含まれる各層は、接着剤層等を介して積層されていてもよいし、接着剤層等を介さず、直接積層されていてもよい。例えば、ある層が熱可塑性材料からなる場合には、当該ある層の一部を熱熔融等させた上で別の層を接触させることで、層同士を直接積層させること等が可能である。
【0021】
エアロゲル積層構造体の各層が接着剤層を介して積層されている場合、接着剤層を構成する接着剤としては、従来公知のものを使用可能である。
【0022】
エアロゲル複合材の両面に、外部層が設けられていてもよい。
【0023】
エアロゲル積層構造体は、第1の発泡体を複数含んでいてもよい。
【0024】
エアロゲル積層構造体は、本発明の効果を阻害しない範囲内で、その他の層を有していてもよい。
【0025】
<<<<エアロゲル複合材>>>>
エアロゲル複合材は、第1の発泡体と、第1の発泡体の内部に充填されたエアロゲルと、を含む。
【0026】
エアロゲルは、低密度の乾燥ゲルであれば、特に限定されない。超臨界流体乾燥法を用いて得られたエアロゲルだけでなく、通常の乾燥過程によるキセロゲル、凍結乾燥によるクライオゲル等も含む。
【0027】
エアロゲルとしては、任意の好適なエアロゲル成分を使用することができる。例えば、シリカエアロゲルやアルミナエアロゲルのような無機エアロゲル、レゾルシノール・ホルムアルデヒド・エアロゲル(RFエアロゲル)、セルロースナノファイバー・エアロゲル(CNFエアロゲル)のような有機エアロゲル、炭素エアロゲル、及びそれらの混合物から選択することができる。エアロゲルは、シリカ(SiO2)を含有するシリカエアロゲルを好適に用いることができる。
【0028】
エアロゲルは、エアロゲルの前駆体であるゾル溶液を、連続気泡樹脂発泡体に充填し、前記発泡体内でゲル化、乾燥してエアロゲルを形成する。
【0029】
エアロゲルの、第1の発泡体に含まれる個々の気泡(セル)を占める平均充填率(充填されたエアロゲルが気泡内に占める体積の割合)は、特に限定されないが、50%~100%とすることができ、70%~100%がより好ましく、90%~100%がより好ましい。エアロゲルの平均充填率が、かかる範囲にある場合には、エアロゲル複合材は優れた断熱性を有する。
【0030】
エアロゲル複合材を構成する第1の発泡体は、連続気泡樹脂発泡体であり、且つ、密度が0.015~0.300g/cm3である。
【0031】
第1の発泡体は、連続気泡構造を有する、連続気泡樹脂発泡体である。第1の発泡体を連続気泡樹脂発泡体とすることで、発泡体内部に十分にエアロゲルを充填することが可能となり、優れた断熱性を奏することができる。より具体的には、第1の発泡体の通気度量が、0.01cm3/cm2/sec以上、0.5cm3/cm2/sec以上、10cm3/cm2/sec以上、または、25cm3/cm2/sec以上であることが好ましい。第1の発泡体の通気度量の上限は、例えば300cm3/cm2/secである。このような通気度量は、後述する方法によって測定することができる。
【0032】
また、第1の発泡体は、密度が0.015~0.300g/cm3である。第1の発泡体の密度は、0.020g/cm3以上、0.030g/cm3以上、0.040g/cm3以上、0.050g/cm3以上、0.075g/cm3以上、0.100g/cm3以上、0.120g/cm3以上としてもよく、また、0.275g/cm3以下、0.250g/cm3以下、0.240g/cm3以下、0.230g/cm3以下、0.220g/cm3以下、0.210g/cm3以下、0.200g/cm3以下としてもよい。第1の発泡体の密度をこの範囲とすることで、優れた断熱性を奏するようにエアロゲルの充填量を制御しつつも、柔軟性に優れたエアロゲル複合材とすることができる。
【0033】
第1の発泡体を構成する樹脂成分は、特に限定されないが、オレフィン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、エポキシ系樹脂、ゴム、シリコーン樹脂、メラミン樹脂、イミド樹脂等の公知の樹脂成分とすることができる。
【0034】
エアロゲル複合材(又は、第1の発泡体)の厚みは、0.03mm~50.0mmとすることができる。この厚みは、0.05mm以上、0.10mm以上、0.20mm以上、0.50mm以上、0.75mm以上、1.00mm以上としてもよく、また、40.0mm以下、30.0mm以下、20.0mm以下、10.0mm以下、5.00mm以下、4.00mm以下、3.00mm以下、2.00mm以下としてもよい。
【0035】
なお、後述する発泡体形成工程にて、水分散性樹脂を原料とする場合は、0.2mm~2.0mmが好ましく、0.5mm~1.5mmがより好ましい。また、水分散性樹脂を原料としない場合は、0.5mm~50.0mmが好ましく、1.0mm~30.0mmがより好ましい。エアロゲル複合材の厚みがかかる範囲にある場合には、製造時にピンポール等の欠陥が生じにくく、また、可撓性を高くすることができる。
【0036】
第1の発泡体が後述する表皮層を含む場合には、エアロゲル複合材の厚みは、表皮層の厚みと発泡体層の厚みとの和を示す。
【0037】
以下、粉落ちが少なく、より断熱性等の向上が見込めるエアロゲル複合材として、第1の好ましい形態(第I形態)と、第2の好ましい形態(第II形態)と、についてを詳細に説明する。なお、第I形態に係るエアロゲル複合材について説明された事項と、第II形態に係るエアロゲル複合材について説明された事項とを適宜組み合わせた構成についても、本発明に含まれるものとする。
【0038】
<<<第I形態に係るエアロゲル複合材>>>
第I形態に係るエアロゲル複合材は、連続気泡を有する発泡体層と、該発泡体層の対向する二つの表面に形成された、通気性を有する表皮層と、を有する、表皮付き連続気泡樹脂発泡体(以降、単に『樹脂発泡体』と略す場合がある)において、前記表皮層は、該表皮層の表面に到達する連続気泡を含み、前記表皮層の表面を法線方向から観察した連続気泡の平均セル径RAと、前記表皮層の表面と垂直な断面における前記発泡体層の連続気泡の平均セル径RBと、の比(RA/RB)が、1/1000~1/2であり、前記表皮付き連続気泡樹脂発泡体の連続気泡内部にエアロゲルが充填されているエアロゲル複合材である。
【0039】
前記平均セル径比は、後述する配合条件(添加される起泡剤としてのアニオン性界面活性剤の配合量、主剤と硬化剤の配合比率、有機発泡剤や発泡助剤、核剤の配合量)や成形条件(撹拌速度、乾燥温度)等を変更することで、調整することができる。例えば、起泡剤であるアニオン性界面活性剤の配合量を減らすと、前記表皮層の表面と垂直な断面における前記発泡体層の連続気泡の平均セル径RBが大きくなるため、平均セル径比(RA/RB)が小さくなる傾向がある。一方、成形時の乾燥温度を上げると、前記表皮層の表面を法線方向から観察した連続気泡の平均セル径RAが大きくなるため、平均セル径比(RA/RB)が大きくなる傾向がある。また、核剤の配合量を増やすことで、平均セル径比(RA/RB)が大きくなる傾向がある。前記平均セル径比が、かかる範囲にある場合には、エアロゲル複合材は、優れた粉落ち防止性を有することにより、優れた断熱性を有する。即ち、粉落ちが少ない場合には、断熱材であるエアロシリカゲルが発泡体内から脱落することが少なく、エアロゲル複合材として、高い断熱性を維持することができる。平均セル径比の詳細は後述する。
【0040】
前記核剤としては、湿式シリカ、乾式シリカ、タルク、マイカ、珪藻土のような無機化合物の粉末;酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カリウム、硫酸バリウム、ガラスビーズ、ポリテトラフルオロエチレン、第3リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムのような金属石鹸;エチレンビスステアリン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、ステアリン酸アミド、12-ヒドロキシステアリン酸アミドのようなアミド化合物;ステアリン酸トリグリセリド、ステアリン酸モノグリセリドのような脂肪酸グリセリド等が挙げられる。これらの核剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0041】
また、粉落ちが少ない場合において、断熱効果が維持できるため、難燃性の向上にも寄与するものと考えられる。
【0042】
<<表皮付き連続気泡樹脂発泡体>>
表皮付き連続気泡樹脂発泡体は、上述したように連続気泡を有する発泡体層と、該発泡体層の対向する二つの表面に形成された、通気性を有する表皮層を含む。また前記表皮付き連続気泡樹脂発泡体は、本発明の効果を阻害しない限りにおいて、市販のものを用いることができる。
【0043】
発泡体層と、表皮層とは、例えば、非ポリオレフィン発泡体を用いたエアロゲル複合材の製造方法における、発泡体形成工程において、発泡した水系液体媒体(発泡水系液体媒体)、又は、混合したシリコーン樹脂発泡体原料を離型処理されたPET製シート上に供給し、例えば、ドクターナイフ、ドクターロール等の公知の手段により、所望の樹脂発泡体の厚みに合わせたシート状等に成形される。このとき、PET製シート及びドクターナイフ等の塗工器具に接触する発泡体層の表面が変質して、表皮層が形成される。従って、発泡体層と表皮層は一体のものである。
【0044】
このため、発泡体層に含まれる連続気泡と、表皮層に含まれる連続気泡とは、連通しており、発泡体層も通気性を有する。即ち、表皮付き連続気泡樹脂発泡体としても、通気性を有する。通気性については後述する。
【0045】
また、表皮層は、連続気泡を有する発泡体層を作製したのち、連続気泡を有する発泡体層に、熱プレス機や熱ロール機による加熱処理を施すことによっても形成することができる。
【0046】
表皮付き連続気泡樹脂発泡体の、形状、大きさ、厚みは、前記エアロゲル複合材と同様である。
【0047】
また、表皮付き連続気泡樹脂発泡体の材質は、オレフィン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、酢酸ビニル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、エポキシ系樹脂、ゴム、シリコーン樹脂の少なくとも1つを含むことができる。
材質についての詳細は後述する製造方法の説明において詳述する。
【0048】
より詳細には、表皮付き連続気泡樹脂発泡体は、ポリオレフィン発泡体、ポリウレタン発泡体、アクリル発泡体、アクリロニトリル-ブタジエンゴム発泡体、及びシリコーン発泡体から選択されることが好ましい。
【0049】
表皮付き連続気泡樹脂発泡体は、柔軟性や耐薬品性に優れることから、ポリオレフィン発泡体を用いることが好適である。また、柔軟性が優れ、圧縮残留歪みが低くなることからポリウレタン発泡体も好適である。さらに、強度に優れるとともに軽量性、断熱性に優れていることから、アクリル発泡体を用いることも好適である。加えて、難燃性、耐熱性に優れていることから、シリコーン樹脂発泡体、及びシリコーンゴム発泡体を用いることも好適である。
【0050】
表皮付き連続気泡樹脂発泡体の空隙率は、発泡後の表皮付き連続気泡樹脂発泡体の見掛けの密度を未発泡の原料樹脂の密度で割り、1からこの除数を引き、百分率とすることによって算出する。見掛けの密度の測定は、JIS K7222:2005「発泡プラスチック及びゴム-見掛け密度の求め方」に準拠する。
【0051】
前記空隙率は、エアロゲル複合材に含まれるエアロゲルの充填量を増やすことができるため、高いほうが好ましい。断熱性の高いエアロゲルの充填量が多いほど、エアロゲル複合材としての断熱性を高くすることができる。
【0052】
前記空隙率は、本発明の効果を阻害しない限りにおいて、特に限定されないが、例えば、前記空隙率は50~99%とすることができ、65~99%であることが好ましく、85~99%であることがより好ましい。前記空隙率がかかる範囲にある場合には、表皮付き連続気泡樹脂発泡体に対し、十分な量のエアロゲルを充填することができるため、エアロゲル複合材を、軽量で、優れた断熱性を有するものとすることができる。
【0053】
<発泡体層>
発泡体層は、連続気泡を有する。また、連続気泡は、セル同士が、連通貫通孔によって結合している。
【0054】
前記連続気泡の、表皮層表面と垂直な断面における平均セル径(RB)は、特に限定されないが、例えば、5μm~300μmとすることができ、5μm~200μmであることが好ましく、5μm~100μmであることがより特に好ましい。発泡体層に含まれる連続気泡の平均セル径がかかる範囲にある場合には、後述するゾル溶液充填工程において、常圧下であっても、毛細管現象により、ゾル溶液が充填しやすくなり、工程時間が短縮される。
【0055】
さらに、連続気泡内に内包されるエアロゲルの大きさがこの連続気泡の平均セル径に制約され、エアロゲルの大きさも同等の大きさとなる。
【0056】
エアロゲルは、極めて脆性的であるため、クラック等の欠陥が存在していた場合には破損しやすい。エアロゲルの大きさが小さい程、前記欠陥が存在する確率が低下するため、形成されたエアロゲルが破損しにくい。
【0057】
従って、前記連続気泡の平均セル径がかかる範囲にある場合には、エアロゲルの大きさは小さくできるので、エアロゲルが欠陥を有する確率を低くすることができ、エアロゲルの破損、即ち、粉落ちを低減することが可能となる。
【0058】
また、連続気泡樹脂発泡体の見掛けの密度が同じであれば、セル径が小さいほど障壁数を増大させることができる。障壁数の増大は輻射に対して有効となり、連続気泡樹脂発泡体の熱伝導率が低くなるので、エアロゲル複合材の熱伝導率も低くなる。
【0059】
発泡体層の平均セル径の測定は以下の方法で行うことができる。
走査型電子顕微鏡(SEM、株式会社キーエンス製、VHXD-500)を用いて、樹脂発泡体の断面のセル写真を撮影する。その後、画像処理ソフトImage-ProPLUS(MediaCybernetics社製、6.3ver)を用いて、各セル径を計測する。より具体的には、SEM画像を読み取り、コントラストでセルを認識するため、コントラストを調節する。次に、画像処理でセルの形状を読み取る(真円ではなく、形状をそのまま認識する)。次に、測定項目として「直径(平均)」を選択する。次に、オブジェクトの重心を通る径を2度刻みで測定しそれを平均した値として、各セル径を算出する。
【0060】
連通貫通孔の平均径は、ゲルの原料溶液を充填させるためには大きいほうが好ましいが、エアロゲルの粉落ちを抑えるためには小さいほうが好ましい。連通貫通孔の平均径は、30μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることがさらに好ましい。連通貫通孔の平均径の下限値は、ゲルの原料溶液を充填させることが可能である限りにおいて、特に限定されないが、例えば、0.5μm以上とすることができる。連通貫通孔の平均径がかかる範囲にある場合には、エアロゲル複合材を裁断もしくはエアロゲル複合材を屈曲した場合に、エアロゲルの脱落が起こらず、粉落ち防止性も向上することができる。
【0061】
連通貫通孔の平均径は、西華デジタルイメージ販売の貫通細孔径測定装置(パームポロメータ)を用いて測定することができる。連通貫通孔の平均径は、具体的には、無作為に選択した少なくとも20個以上の連通貫通孔の直径について、前記測定装置で測定した値を平均することで得ることができる。
【0062】
発泡体層の、表皮層表面と垂直な断面におけるセル密度は、特に限定されないが、10個/mm2~200個/mm2とすることができ、20個/mm2~170個/mm2が好ましく、40個/mm2~150個/mm2がより好ましい。前記発泡体層のセル密度が、かかる範囲にある場合に、エアロゲル複合材は、エアロゲルが十分に充填されることが可能となり、優れた断熱性を有する。
【0063】
ここで、前記セル密度は、表皮層表面と垂直な断面の任意の面積に含まれる、単位断面積当あたりのセル数(連続気泡数)である。
【0064】
前記発泡体層の表皮層表面と垂直な断面におけるセル密度の測定は以下の方法で行うことができる。
走査型電子顕微鏡(SEM、例えば、株式会社キーエンス製、VHXD-500)を用いて、樹脂発泡体の断面のセル写真を撮影する。その後、画像処理ソフト(例えば、Image-ProPLUS(MediaCybernetics社製、6.3ver))を用いて、セルの個数を計測する。より具体的には、SEM画像を読み取り、コントラストでセルを認識するため、コントラストを調節する。次に、画像処理でセルの個数を読み取る。観察に用いた断面写真の樹脂発泡体の断面の面積で、測定したセルの個数を除した値をセル密度とする。
【0065】
<表皮層>
表皮層は、発泡体層の対向する二つの表面に存在する。前述したように、表皮層は、発泡した水系液体媒体を剥離シート上に供給し、シート状等に成形される際に、PET製シート及び塗工器具に接触する発泡体層の表面が変質して形成される。
【0066】
表皮層の厚みは、特に限定されないが、例えば、0.01~30μmとすることができ、0.01~15μmが好ましく、0.01~10μmがより好ましい。表皮層の厚みがかかる範囲にある場合には、粉落ち防止性が高まる。
【0067】
また、表皮層は、連続気泡を含み、前記連続気泡は、表皮層の表面に到達しているものを含む。従って、表皮層は外気を透過することができる。即ち、通気性を有する。
【0068】
また、表皮層に含まれる連続気泡と、発泡体層に含まれる連続気泡は、連通貫通孔によって接続されており、外気などの流体は、表皮層に含まれる連続気泡と、発泡体層に含まれる連続気泡とを、行き来することができる。
【0069】
ここで、表皮層単独の通気性は測定できないが、表皮層表面を介して、表皮付き連続気泡樹脂発泡体の通気度量を測定することで、表皮層が通気性を有するか判定できる。表皮付き連続気泡樹脂発泡体の通気度量の測定方法は、公知の方法で測定することができ、特に限定されない。例えば、JIS L1096-7:2010「織物及び編物の生地試験方法:A法(フラジール形法)」に記載の方法を用いて測定することができる。
【0070】
通気性を有するとは、測定された表皮付き連続気泡樹脂発泡体の通気度量(又は通気度)が、0.01cm3/cm2/sec以上であることとする。この場合に、表皮層も通気性を有するものとする。
【0071】
表皮付き連続気泡樹脂発泡体の通気度量は、0.1cm3/cm2/sec以上、0.5cm3/cm2/sec以上、または、10cm3/cm2/sec以上が好ましい。特に10cm3/cm2/sec以上の場合、エアロゲル複合材は、後述するゾル溶液充填工程において、時間のかかる真空引きを行う必要がなく、効率的な製造方法とすることが可能である。また、通気度量の上限は、高ければ高いほど良いため、特に限定されないが、一般に連続気泡樹脂発泡体の場合には300cm3/cm2/secとすることができる。
【0072】
表皮層に含まれる連続気泡の表皮層表面の法線方向から観察した平均セル径RAと、表皮層表面と垂直な断面における発泡体層の連続気泡の平均セル径RBとの比(RA/RB)は、1/1000~1/2であり、好ましくは、1/100~1/2、1/30~1/2、1/10~1/2、又は、1/10~1/3である。前記平均セル径の比がかかる範囲にある場合には、エアロゲル複合材は、粉落ち防止性が高く、優れた断熱性と難燃性を有する。
【0073】
また、表皮層に含まれる連続気泡の表皮層表面の法線方向から観察した平均セル径(RA)は、特に限定されないが、例えば、1μm~150μmとすることができ、1μm~100μmが好ましく、1μm~50μmがより好ましい。表皮層に含まれる連続セル径が、前記の比及び前記範囲にある場合には、エアロゲルの粉落ちが防止でき、断熱性を低下させることがない。
【0074】
ここで、表皮層に含まれる連続気泡の表皮層表面の法線方向から観察した平均セル径は、以下の方法で測定することができる。
走査型電子顕微鏡(SEM、例えば、株式会社キーエンス製、VHXD-500)を用いて、樹脂発泡体の断面のセル写真を撮影する。その後、画像処理ソフト(例えば、Image-ProPLUS(MediaCybernetics社製、6.3ver))を用いて、各セル径を計測する。より具体的には、SEM画像を読み取り、コントラストでセルを認識するため、コントラストを調節する。次に、画像処理でセルの形状を読み取る(真円ではなく、形状をそのまま認識する)。次に、測定項目として「直径(平均)」を選択する。次に、オブジェクトの重心を通る径を2度刻みで測定しそれを平均した値として、各セル径を算出する。
【0075】
<<エアロゲル複合材の特性>>
<見掛けの密度>
エアロゲル複合体の見掛けの密度は、公知の方法で測定することができ、特に限定されない。例えば、JIS K7222-2005「発泡プラスチック及びゴム―見掛け密度の求め方」に準ずる方法で測定することができる。
【0076】
<粉落ち率>
エアロゲル複合材の粉落ち率は、公知の方法で測定することができ、特に限定されない。例えば、JIS K6404-6:1999「ゴム引布・プラスチック引布試験方法-第6部:もみ試験」に記載されているもみ試験を行い、試験前後に質量を測定することで測定が可能である。
【0077】
具体的には、試験片は10mm×50mm、厚みは任意とし、試験片間隔を20mm、ストローク間隔40mm、圧縮荷重200gfとして1200回(往復速度120回/分)揉んだ前後の試験片重量から粉落ち率を算出する。粉落ち率(%)は(試験前重量(g)-試験後重量(g))/試験前重量(g)×100で計算する。粉落ち率が大きいほど、エアロゲルの脱落が多いことを示す。
【0078】
<熱伝導率>
エアロゲル複合体の熱伝導率は、公知の方法で測定することができ、特に限定されない。例えば、JIS A1412-1:1999「熱絶縁材の熱抵抗及び熱伝導率の測定方法-第1部:保護熱板法(GHP法)」、JIS A1412-2:1999「熱絶縁材の熱抵抗及び熱伝導率の測定方法-第2部:熱流計法(HFM法)」に準ずる方法で測定することができる。
【0079】
具体的には、熱伝導率は熱流束計を用いて、上板温度を15℃とし、下板温度を35℃として熱伝導率を測定する。環境温度は、特に制限はないが常温、常圧とする。試験時に用いるサンプルの厚みは5mm以上とし、5mmに試験サンプル厚みが満たない場合には、試験サンプルを積層して熱伝導率を測定し、断熱性能の評価を実施する。
【0080】
熱伝導率が、0.020W/m・K以下であることが好ましく、0.018W/m・K以下であることがより好ましく、0.016W/m・K以下であることがさらに好ましい。
【0081】
<<<第I形態に係るエアロゲル複合材の製造方法>>>
第I形態に係るエアロゲル複合材は、以下のように製造することができる。
【0082】
エアロゲル複合材の製造方法は、前記表皮付き連続気泡樹脂発泡体に、常圧下、又は減圧下において、エアロゲルの原料であるゾル溶液を充填するゾル溶液充填工程と、前記充填されたゾル溶液をゲル化するゲル化工程と、前記湿潤ゲルを乾燥する乾燥工程とを、含む。以下に各工程について詳述する。なお、エアロゲルの説明に関しては、好適例であるシリカエアロゲルを例として詳述する。また、エアロゲル複合材の製造方法として、下記に説明した工程以外の工程を、さらに含むことができる。
【0083】
<<発泡体形成工程>>
下記には、発泡体形成工程について詳述するが、表皮付き連続気泡樹脂発泡体は、本発明の効果を阻害しない限りにおいて、市販の表皮付き連続気泡樹脂発泡体を用いることができる。従って、エアロゲル複合材の製造方法において、発泡体形成工程を必ずしも含む必要はない。以下では、オレフィン樹脂を原料とする場合の発泡体形成工程、および非ポリオレフィン発泡体において、水分散性樹脂を原料とする場合の発泡体形成工程と、水分散性樹脂を原料としない場合の発泡体形成工程とについて、それぞれ好適例の方法について詳述する。
【0084】
<オレフィン樹脂を原料とする場合の発泡体形成工程>
(原料)
表皮付き連続気泡樹脂発泡体の原料であるオレフィン樹脂は、特に限定されず、公知のものを用いることができる。さらに、本発明の効果を阻害しない限りにおいて、その他添加物を添加することができる。以下、ポリオレフィン発泡体の製造方法の一例について説明する。
【0085】
ポリオレフィン発泡体は、(A)(A1)ポリオレフィン(ただし、エチレン-プロピレンゴムを除く)と(A2)エチレン-プロピレンゴム及び/又はスチレン系熱可塑性エラストマー、(B)ノニオン系界面活性剤とを含有する組成物に、常温常圧で気体である物質を、高温、高圧下における超臨界状態で含浸した後に、圧力を解放して発泡することで得られる。
【0086】
(A1)ポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン-1、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-α-オレフィン共重合体、及びこれら相互のポリマーブレンドが例示される。ポリエチレンは、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、低密度ポリエチレンなどのいずれでもよく、ポリプロピレンは、アタクチック、イソタクチック、シンジオタクチック、ランダムなどのいずれでもよい。また、発泡に適するとされる主鎖骨格中に長鎖分岐を有するポリプロピレン(HMS-PP)や高分子量成分を含んで分子量分布の広いポリプロピレンなどの伸張粘度が高いポリプロピレンを使用しても良い。共重合体は、ランダム共重合体でもブロック共重合体でもよく、熱可塑性樹脂でも熱可塑性エラストマーでもよい。これらのうち、得られる発泡体に耐熱性を付与でき、また得られる発泡体の柔軟性を維持できることから、ランダム系ポリプロピレンが好ましい。ガス抜けがなく、発泡が容易なことから、(A1)成分のメルトフローレートは、230℃、2.16kgfにおいて0.1~5g/10minが好ましく、0.3~2g/10minがさらに好ましい(JISK7210:1999準拠)。なお、エチレン-プロピレン共重合体には、硬化してゴム状弾性体となるエチレン-プロピレン共重合体(EPR)があるが、これは(A2)成分に包含されるので(A1)からは除外され、(A1)としては、樹脂状のエチレン-プロピレン共重合体が包含される。また、本形態の連続気泡発泡体の性質を損ねない範囲で、他の熱可塑性ポリマーが存在してもよい。
【0087】
(A2)のエチレン-プロピレンゴムとしては、硬化してゴム状弾性体となる、エチレンとプロピレンの共重合体であるEPR(EPM)と;エチレン、プロピレン及び少量の非共役ジエンの共重合体であるEPDMが包含される。非共役ジエンとしては、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン及び1,4-ヘキサジエンが例示され、本発明においては、そのいずれを用いたものでもよい。
【0088】
また、(A2)のスチレン系熱可塑性エラストマーとしては、炭化水素鎖からなるポリマーの一端又は両端にスチレンが結合したブロックコポリマーであればよく、例えば、スチレンとブタジエン、イソプレン、イソブチレンなどとのブロックコポリマー、あるいはそれらのブロックコポリマーをさらに水素添加したものが挙げられ、例えば、スチレンブタジエンスチレンブロックコポリマー(SBS)、及びSBSを水素添加したスチレンエチレンブチレンスチレンブロックコポリマー(SEBS)、スチレンイソプレンスチレンブロックコポリマー(SIS)、及びSISを水素添加したスチレンエチレンプロピレンスチレンブロックコポリマー(SEPS)、スチレンイソプレンブタジエンイソプレンスチレンブロックコポリマー、及びそれを水素添加したスチレンエチレンエチレンプロピレンスチレンブロックコポリマー(SEEPS)、スチレンビニルイソプレンスチレンブロックコポリマー、及びその水素添加物、スチレンイソブチレンスチレンブロックコポリマー、スチレンブタジエンブロックコポリマー、及びその水素添加物、スチレンイソブチレンブロックコポリマー、及びその水素添加物などが挙げられ、単独で用いてもよいが、混合して用いることもできる。
【0089】
上記(A2)成分については、その平均分子量は、高い方が好ましい。また、プロセス
オイルなどで油展して用いてもよい。(A2)成分は、架橋反応を行わずにそのまま用いられる。
【0090】
(B)ノニオン系界面活性剤としては、ポリオキシエチレン(ポリオキシプロピレン)アルキルエーテルなどのアルキルポリエーテル類、ポリオキシエチレン(ポリオキシプロピレン)脂肪酸エステルなどの脂肪酸ポリエーテルエステル類、ジポリオキシエチレン(ジポリオキシプロピレン)アルキルアミン、例えばジ(ジオキシエチレン)ステアリルアミンなど、ポリオキシエチレン(ポリオキシプロピレン)ジアルキルアミン、ポリオキシエチレン(ポリオキシプロピレン)アルキルアルキレンジアミンなどのアルキルポリエーテルアミン類、ポリオキシエチレン(ポリオキシプロピレン)ソルビタンエステル、ソルビタンアルキルエステルなどのソルビタンエステル類、ポリオキシエチレン(ポリオキシプロピレン)アルキルグリセリルエーテル、脂肪酸(ポリ)グリセリル、例えばステアリン酸モノグリセリル、ポリオキシエチレン(ポリオキシプロピレン)脂肪酸グリセリルなどのアルキルグリセリルポリエーテル又はエステル類、脂肪酸(ジ)エタノールアミドなどのアルカノールアミド類や、それら複数の混合物などが挙げられる。上記アルキル、脂肪酸、及びアルキレンの炭素数は、ポリオレフィン系ポリマー組成物との相溶性の点から、10以上の炭素数が好ましく、例えばC12(ラウリル又はラウリレートなど)、C18(ステアリル又はステアレートなど)、C22(ベヘニル又はベヘニレートなど)などが挙げられる。また、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレンなどのオキシアルキルの繰返し単位数は、1~20が好ましく、更には10以下である。ポリグリセリルの繰り返し単位数も、1~20が好ましく、更には10以下である。更には、アルキルポリエーテルアミン、脂肪酸グリセリル、脂肪酸(ジ)エタノールアミドから選ばれた1種又は混合物が好ましく使用でき、またステアリルアルコールなどの高級アルコールなどを添加してもよい。
【0091】
本形態で用いられる(A)成分は、(A1)ポリオレフィン(ただし、エチレン-プロピレンゴムを除く)50~95重量%、好ましくは60~90重量%、さらに好ましくは65~85重量%、及び(A2)エチレン-プロピレンゴム及び/又はスチレン系熱可塑性エラストマー5~50重量%、好ましくは10~40重量%、さらに好ましくは15~35重量%を含むポリマー組成物である。(A1)の割合が95重量%を越え、(A2)の割合が5重量%未満では、発泡体が充分な柔軟性を得にくいばかりか、高発泡体を得にくい問題がある。一方、(A1)の割合が50重量%未満で、(A2)の割合が50重量%を越えると、やはり高発泡体を得にくいうえ、得られる発泡体の収縮が大きくなる問題がある。
【0092】
(B)成分の配合量は、(A)ポリマー組成物100重量部当たり0.2~10重量部が必要であり、好ましくは0.3~5重量部、さらに好ましくは0.5~3重量部である。(B)成分が0.2重量部未満では、必要な連続気泡化が得られず、通気性の低い発泡体しか得られない。一方、10重量部を越えると、破泡が進行しすぎて、発泡体が収縮する。
【0093】
本発明においては、(A1)、(A2)、(B)成分、及び場合によって任意に配合する成分を、高分子材料の混合に適した混合手段によって混合して、発泡性組成物を調製する。この際、任意に配合する成分として、得られる発泡体に適切な性質を与え、又は発泡体の作製や加工を容易にするために、この発泡性組成物に、使用目的に応じて、流動パラフィン、炭化水素系プロセスオイル、高級脂肪酸グリセリンエステル、高級脂肪酸アミドのような滑剤;湿式シリカ、乾式シリカ、タルク、マイカ、珪藻土、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カリウム、硫酸バリウム、ガラスビーズ、ポリテトラフルオロエチレン、第3リン酸カルシウム、ピロリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、エチレンビスステアリン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド等のビスアミド化合物、ステアリン酸アミド、12-ヒドロキシステアリン酸アミド、ステアリン酸トリグリセリド、ステアリン酸モノグリセリドのような核剤;リン酸エステル、リン酸メラミン又はリン酸ピペラジン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化アンチモン、炭酸亜鉛、塩素化パラフィン、ヘキサクロロシクロペンタジエンのような難燃剤;芳香族アミン類、ベンゾイミダゾール類、ジチオカルバミン酸塩類、フェノール化合物、亜リン酸エステル類のような老化防止剤;2,6-ジ-t-ブチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール、4,4′-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタンのような酸化防止剤;導電性カーボンブラック、銅粉、ニッケル粉、酸化スズのような導電材;カーボンブラック、有機顔料、染料、それらを含有するマスターバッチのような着色剤;ならびにシリカ、アルミナ、酸化チタン及び上記の各種添加剤のうち充填剤の機能を有するもののような充填剤などを配合することができる。
【0094】
前記発泡性組成物に超臨界状態で含浸させる、常温・常圧で気体である物質としては、この超臨界状態で発泡性組成物中のポリマーに浸透するものであればよく、窒素、ヘリウム、二酸化炭素、プロパン、ブタンなど、及びそれらの混合ガスが例示され、取扱いが容易で、安全性が高く、作業環境が優れていることから、二酸化炭素及び窒素が好ましく、二酸化炭素が特に好ましい。
【0095】
(発泡工程)
下記の条件で、常温・常圧で気体である物質を発泡性組成物中のポリマーに含浸させた後、圧力を解放することで連続気泡となるように発泡させる。圧力を、減少速度を通常10~30MPa/sで減少させることにより、連続気泡となるように発泡させることができる。発泡工程において連続気泡発泡体が直接に得られるので、後工程で機械的応力により独立気泡を破泡させて連続気泡化させる工程の必要はない。
【0096】
常温・常圧で気体である物質を発泡性組成物に含浸させる温度は、効率的に機能性の発泡体が得られることから、該物質を超臨界状態にさせる温度であり、示差走査熱量計による測定によって得られた発泡性組成物中のポリマーの結晶化ピーク温度より20~40℃高い温度であることが、特に好ましい。ここで、超臨界状態とは、気体状態と液体状態との中間の性質を示す状態である。
【0097】
また、含浸圧力は、含浸が完全に行われ、また微細なセルを得るために、含浸された常温・常圧で気体である物質を超臨界状態にするように、8~15MPaが好ましく、特にガス抜けしにくくするために、10~15MPaがより好ましい。
【0098】
常温・常圧で気体である物質を発泡性組成物に含浸させる時間は、必要な含浸量及び含浸温度・圧力によって異なるが、通常3~30分、好ましくは5~20分である。
【0099】
発泡性組成物を連続気泡となるように発泡させる際、発泡倍率を5倍以上とすることが好ましい。5倍未満であると、得られる発泡体に優れた柔軟性を付与できない問題が生じる。倍率の上限は特に制限されないが、機械強度の点から、100倍以下、好ましくは80倍以下、より好ましくは50倍以下である。
【0100】
前記の5倍以上の発泡倍率となるような発泡とともに、押出成形で成形して、表皮付き連続気泡発泡体の成形体を得ることができる。押出機としては、単軸タンデム型押出機を用い、場合によっては二軸押出機と組み合わせて用いてもよい。押出成形よって、接着又は融着工程を経ずに、発泡体層と表皮層とが一体化している表皮付き連続気泡発泡体を得ることができる。接着又は融着工程を経ないことから、封止に用いる材料の熱伝導率が影響して、断熱性を低下する恐れがなく、また、工数を増やさないために作業効率が低下しない。
【0101】
押出成形について述べる。本願発明の押出成形装置は、熱可塑性樹脂を含む成形材料を溶融する装置と、前記溶融時に、溶融する成形材料に常温常圧で気体の材料を超臨界状態で混入混合する装置と、常温常圧で気体の材料が混合された溶融状態の前記成形材料を加熱、圧縮しダイから押出す押出装置を備えている。上記混入混合する装置は、押出機の長手方向途中のバレルにもうけられた受け口に、超臨界状態の常温常圧で気体の材料が混入されるように設置される。
【0102】
すなわち、スクリューにより溶融押出される高分子材料に、受口から超臨界二酸化炭素を供給し、混合することにより単一相溶液とし、次いで、この単一相溶液を均一に分散する高分子材料の流体流とし、次いで、気泡の成長を抑制しつつ、高分子材料と非常に小さい気泡との液体混合物の状態で、高い温度でダイに通過させることにより、押出発泡成形する。
【0103】
(裁断)
得られた表皮付き連続気泡樹脂発泡体を所定のサイズに加工することができる。裁断面には、連続気泡構造の気泡が露出する。この露出した気泡から、前記ゾル溶液が充填される。
以上の発泡体形成工程により、連続気泡を有する表皮層が形成された、表皮付き連続気泡樹脂発泡体が得られる。
【0104】
<水分散性樹脂を原料とする場合の非ポリオレフィン発泡体の発泡体形成工程>
(原料)
表皮付き連続気泡樹脂発泡体は、原料として、水系樹脂分散体と、気泡剤としてのアニオン性界面活性剤とを、含む。さらに、本発明の効果を阻害しない限りにおいて、その他添加物を添加することができる。
【0105】
樹脂発泡体の製造方法に用いられる水分散性樹脂は、特に限定されず、公知のものを用いることができる。水分散性樹脂としては、安定分散型水分散性樹脂と不安定分散型水分散性樹脂を含む。本願発明においては、ポリマーの親水性が高く、真空工程等を経ることなく効率的にエアロゲル複合材を製造できるため、安定分散型水分散性樹脂が好適である。
【0106】
なお、安定分散型の水分散性樹脂とは析出率(析出率の具体的な算出方法に関しては以下の方法に従う)が10%未満である水分散性樹脂を示し、その構造や製造方法は何ら限定されない。また不安定分散型の水分散性樹脂とは析出率が10%以上である水分散性樹脂を示し、その構造や製造方法は何ら限定されない。
【0107】
水分散性樹脂の分散安定性を評価するために、水分散性樹脂に凝固剤水溶液(0.5質量%の硝酸カルシウム水溶液)を添加し、生成する析出物の量から析出率を算出することができる。具体的な析出率は下記式(1)によって求められる{なお、式(1)中、Aは析出物の乾燥質量(g)、Bは水分散性樹脂の質量(g)、Cは水分散性樹脂の固形分濃度(質量%)である}。
析出率(%)=A/{B×(C/100)}×100・・・(1)
【0108】
より具体的には、23℃の室内で、容量100mlの樹脂容器に、水分散性樹脂を10g入れ、撹拌しながら、凝固剤水溶液として濃度0.5質量%の硝酸カルシウム水溶液を10g滴下する。凝固剤水溶液の全量を滴下した後、1時間静置する。次に、全量をガラス濾過器(柴田科学株式会社製、吸引濾過瓶1L、柴田科学株式会社製、ガラスフィルターベースφ47mm用、有限会社桐山製作所製、桐山セパロート55Z)及び40メッシュフィルタ(株式会社ヤマニ製、T230LY-40)に投入し、減圧濾過して析出物を回収する。さらに、濾液が透明になるまで水洗したのち、110℃で3時間乾燥させる。析出物の乾燥質量を測定し、上記式(1)に基づいて析出率を計算し、当該析出率から水分散性樹脂の分散安定性を評価する。即ち、析出率が10%未満のものは樹脂粒子が凝集しにくいことを意味するため、「安定分散型の水分散性樹脂」と評価する。一方、析出率が10%以上のものは樹脂粒子が凝集しやすいことを意味するため、「不安定分散型の水分散性樹脂」と評価する。
【0109】
なお、水分散性樹脂としては、1種類の水分散性樹脂に限定されず、複数種類の水分散性樹脂を組み合わせて用いてもよい。このように、水分散性樹脂が、複数の水分散性樹脂からなる場合にも、水分散性樹脂全体において当該析出率を算出し、安定分散型であるか、不安定分散型であるか、を判別する。
【0110】
以下には、好適例である安定分散型水分散性樹脂について、説明する。
安定分散型水分散性樹脂としては、特に限定されないが、ウレタンエマルジョン、アクリルエマルジョン、酢酸ビニル系エマルジョン、塩化ビニル系エマルジョン、エポキシ系エマルジョン等を挙げることができる。これらの内、特に好適なウレタンエマルジョン、アクリルエマルジョンについて詳述する。なお、ウレタンエマルジョンを用いることで、得られるウレタン樹脂発泡体の柔軟性が優れ、圧縮残留歪みが低くなるため好適である。また、強度に優れるとともに軽量性、断熱性に優れていることから、アクリルエマルジョンを用いることも好適である。
【0111】
ウレタン樹脂の水分散体(ウレタンエマルジョン)の製造方法としては、下記方法(I)~(III)を挙げることができる。
【0112】
(I)活性水素含有化合物、親水性基を有する化合物、及び、ポリイソシアネートを反応させて得られた親水性基を有するウレタン樹脂の有機溶剤溶液又は有機溶剤分散液に、必要に応じ、中和剤を含む水溶液を混合し、ウレタン樹脂水分散体を得る方法。
【0113】
(II)活性水素含有化合物、親水性基を有する化合物、及び、ポリイソシアネートを反応させて得られた親水性基を有する末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーに、中和剤を含む水溶液と混合するか、又は、予めプレポリマー中に中和剤を加えた後水を混合して水に分散させた後、ポリアミンと反応させて、ウレタン樹脂水分散体を得る方法。
【0114】
(III)活性水素含有化合物、親水性基を有する化合物、及び、ポリイソシアネートを反応させて得られた親水性基を有する末端イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーに、中和剤及びポリアミンを含む水溶液と混合するか、又は、予めプレポリマー中に中和剤を加えた後、ポリアミンを含む水溶液を添加混合し、ウレタン樹脂水分散体を得る方法。
【0115】
前記ウレタン樹脂の製造において用いるポリイソシアネートとしては、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フフェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、3,3’-ジクロロ-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、1,5-テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3-シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4-シクロヘキシレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等を挙げることができる。また発明の効果を損なわない範囲において、3価以上のポリイソシアネートを併用してもよい。
【0116】
また、前記親水性基を有する化合物としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリアセタールポリオール、ポリアクリレートポリオール、ポリエステルアミドポリオール、ポリチオエーテルポリオール、ポリブタジエン系等のポリオレフィンポリオール等を挙げることができる。これら高分子量化合物は、2種以上を併用してもよい。前記ポリエステルポリオールとしては、公知のものを使用してもよい。
【0117】
上記方法(I)~(III)において、発明の効果を損なわない範囲で、さらに乳化剤を使用してもよい。かかる乳化剤としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシエチレンソルビトールテトラオレエート等のノニオン系乳化剤;オレイン酸ナトリウム等の脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、アルカンスルホネートナトリウム塩、アルキルジフェニルエーテルスルフォン酸ナトリウム塩等のアニオン系乳化剤;ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニル硫酸塩等のノニオンアニオン系乳化剤;等を挙げることができる。
【0118】
アクリル樹脂の水分散体(アクリルエマルジョン)の製法としては、重合開始剤、必要に応じて乳化剤及び分散安定剤の存在下に、(メタ)アクリル酸エステル系単量体を必須の重合性単量体成分とし、さらに必要に応じてこれらの単量体と共重合可能なその他の重合性単量体の混合物を共重合させることにより得ることができる。
【0119】
上記アクリル樹脂エマルジョンの製造に使用することができる重合性単量体としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アルリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体;アクリル酸、メタクリル酸、β-カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルプロピオン酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸ハーフエステル、マレイン酸ハーフエステル、無水マレイン酸、無水イタコン酸等のカルボキシル基を有する不飽和結合含有単量体;グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のグリシジル基含有重合性単量体;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート等の水酸基含有重合性単量体;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート、ジビニルベンゼン、アリル(メタ)アクリレート、等を挙げることができる。
【0120】
なお、アクリルエマルジョンの製造時に乳化剤を使用する場合には、上述の乳化剤等を使用すればよい。
【0121】
不安定分散型の水分散性樹脂としては、特に限定されないが、ゴムラテックス等を挙げることができる。ゴムラテックスは、発泡体の感触がよく弾性に優れるため好適である。次に、ゴムラテックスについて詳述する。
【0122】
ゴムの水分散体(ゴムラテックス)としては、天然ゴムラテックスであってもよいし、合成ゴムラテックスであってもよい。合成ゴムラテックスの製法としては、脂肪族共役ジエン系単量体と、共重合可能な他の重合性単量体と、を乳化重合することによって得られる。ここで、脂肪族共役ジエン系単量体としては、1,2-ブタジエン、1,3-ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、等を挙げることができる。
【0123】
共重合可能な他の重合性単量体としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アルリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸オクタデシル等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体;(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸及びその無水物、フマル酸、イタコン酸、不飽和ジカルボン酸モノアルキルエステル(例えばマレイン酸モノメチル、フマル酸モノエチル、イタコン酸モノノルマルブチル)等のカルボキシル基を有する不飽和結合含有単量体;スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、クロルスチレン、2,4-ジブロモスチレン等のエチレン性不飽和芳香族単量体;アクリロニトリル、メタクロニトリル等の不飽和ニトリル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の如きビニルエステル;塩化ビニリデン臭化ビニリデン等のビニリデンハライド;(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル等のエチレン性不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル;(メタ)アクリル酸グリシジル等のエチレン性不飽和カルボン酸のグリシジルエステル;(メタ)アクリルアミド、Nメチロール(メタ)アクリルアミド、ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルミド;等を挙げることができる。
【0124】
水分散性樹脂として使用可能なゴムラテックス(合成ゴムラテックス)は、乳化剤、フリーラジカル発生触媒等の存在下に水性媒体中で上記単量体を乳化重合することにより得ることができる。この際2段重合法を採用することもできる。乳化剤としては、各種の陰イオン性界面活性剤、非イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両イオン界面活性剤等を使用することができる。
【0125】
水系液体媒体の分散媒としては、水を必須成分とするが、水と水溶性溶剤との混合物であってもよい。水溶性溶剤とは、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチルカルビトール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のアルコール類、N-メチルピロリドン等の極性溶剤等であり、これらの1種又は2種以上の混合物等を使用してもよい。
【0126】
分散媒に対する、水分散性樹脂(固形分)の配合量としては、分散媒100質量部に対して、30~70質量部が好ましい。このような範囲とすることで、安定な発泡体を成形することができるという効果が得られる。
【0127】
アニオン性界面活性剤(起泡アニオン性界面活性剤)は、水系液体媒体の起泡剤として機能する。
【0128】
アニオン性界面活性剤の具体例としては、ラウリン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸アンモニウム、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム石鹸、ひまし油カリウム石鹸、やし油カリウム石鹸、ラウロイルサルコシンナトリウム、ミリストイルサルコシンナトリウム、オレイルサルコシンナトリウム、ココイルサルコシンナトリウム、やし油アルコール硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、アルキルスルホコハク酸ナトリウム、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、α-オレフィンスルホン酸ナトリウム、等が挙げられるが、特に、アルキルスルホコハク酸ナトリウムが好ましい。
【0129】
ここで、アニオン性界面活性剤は、水系液体媒体に分散しやすくするため、HLBが、10以上であることが好適であり、20以上であることがより好適であり、30以上であることが特に好適である。
【0130】
なお、HLB値とは、親水性-疎水性バランス(HLB)値を意味し、小田法により求められる。小田法によるHLB値の求め方は、「新・界面活性剤入門」第195~196頁及び1957年3月20日槙書店発行小田良平外1名著「界面活性剤の合成と其応用」第492~502頁に記載されており、HLB値=(無機性/有機性)×10で求めることができる。
【0131】
アニオン性界面活性剤は、水系分散体に含まれる樹脂固形分を100質量部とした場合に、1~10質量部とすることができる。
【0132】
その他の添加剤として、金属カチオン源、ゲル化剤、水分散性樹脂分散用界面活性剤(乳化剤)、硬化剤、水溶性ポリマー等を添加してもよい。
【0133】
金属カチオン源は、アニオン性界面活性剤と結合して水不溶性の塩を形成できる金属カチオンを水中に放出可能な成分である。このような成分を系に存在させることにより、アニオン性界面活性剤と結合し水不溶性の塩を形成する。その結果、気体を混入させた発泡体原料混合物にチキソ性を付与し流動性を低下させることにより、加熱時でも気泡の合一を抑制できる。
【0134】
このような、金属カチオン源としては、水中で溶解し金属イオンを生じる成分であれば特に限定されず、無機金属塩や有機金属塩のような金属塩、例えば、硝酸カルシウム;アルカリ、例えば、水酸化カルシウムや酸化カルシウム;金属単体、例えば、カルシウムが挙げられる。これらの内、水中での電離定数が比較的大きいという理由から、金属塩が好適である。
【0135】
前記成分としては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属イオン、及び、アルミニウムイオン、バリウムイオン、カルシウムイオン、銅イオン、鉄イオン、マグネシウムイオン、マンガンイオン、ニッケルイオン、スズイオン、チタンイオン、亜鉛イオン等の多価金属イオンと、無機酸(例えば、塩酸、臭酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、チオシアン酸等)、及び、有機酸(例えば、酢酸、蓚酸、乳酸、フマル酸、フマル酸、クエン酸、サリチル酸、安息香酸等の有機カルボン酸、及び、有機スルホン酸)等との塩等が挙げられる。
【0136】
具体例としては、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、硫酸ナトリウム、硝酸カリウム、酢酸ナトリウム、蓚酸カリウム、クエン酸ナトリウム、安息香酸カリウム等のアルカリ金属類の塩、及び、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸ナトリウムアルミニウム、硫酸カリウムアルミニウム、酢酸アルミニウム、塩化バリウム、臭化バリウム、ヨウ化バリウム、酸化バリウム、硝酸バリウム、チオシアン酸バリウム、塩化カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム、リン酸二水素カルシウム、チオシアン酸カルシウム、安息香酸カルシウム、酢酸カルシウム、サリチル酸カルシウム、酒石酸カルシウム、乳酸カルシウム、フマル酸カルシウム、クエン酸カルシウム、塩化銅、臭化銅、硫酸銅、硝酸銅、酢酸銅、塩化鉄、臭化鉄、ヨウ化鉄、硫酸鉄、硝酸鉄、蓚酸鉄、乳酸鉄、フマル酸鉄、クエン酸鉄、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、乳酸マグネシウム、塩化マンガン、硫酸マンガン、硝酸マンガン、リン酸二水素マンガン、酢酸マンガン、サリチル酸マンガン、安息香酸マンガン、乳酸マンガン、塩化ニッケル、臭化ニッケル、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、酢酸ニッケル、硫酸スズ、塩化チタン、塩化亜鉛、臭化亜鉛、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、チオシアン酸亜鉛、酢酸亜鉛、等の多価金属類の塩等が挙げられる。
【0137】
安定分散型の水分散性樹脂の存在する系では、金属カチオンの金属カチオン源となる成分が水溶性金属塩であるものの中でも、ゲル化強度が強く、ゲル化時間が短いため、溶解度が10g/100g水以上であることが好適であり、30g/100g水以上であることがより好適であり、100g/100g水以上であることが特に好適である。このような成分である電解質としては、例えば、硝酸カルシウム(溶解度138g/100g水)、硫酸アルミニウム(溶解度38.6g/100g水)、硫酸マグネシウム(溶解度36.3g/100g水)、等が挙げられる。
【0138】
不安定分散型の水分散性樹脂の存在する系では、金属カチオンの金属カチオン源となる成分が水難溶性金属塩であるものの中でも、凝集物等の異物が生成しにくいため、溶解度が10g/100g水未満であることが好適であり、3g/100g水未満であることがより好適であり、1g/100g水未満であることが特に好適である。なお、下限値は特に限定されないが、0.0001g/100g水以上である。このような成分である電解質としては、例えば、クエン酸カルシウム(溶解度25.9mg/100g水)、炭酸カルシウム(溶解度0.81g/100g水)、第1リン酸カルシウム(溶解度1.8g/100g水)、等が挙げられる。
【0139】
なお、金属カチオン(金属カチオン源)によるアニオン性界面活性剤の不溶化を行い、金属カチオン源として電解質を用いる場合、電解質の配合量としては、水分散性樹脂の混合物中において、水分散性樹脂(固形分)100質量部に対して1.0~10質量部が好ましく、2~5質量部がより好ましい。このような範囲とすることで、適切なゲル化強度、ゲル化時間となるため、微細なセル構造を成形できるという効果が得られる。
【0140】
なお、金属カチオン(金属カチオン源)によるアニオン性界面活性剤の不溶化を行う場合には、水分散性樹脂の混合物中において、不溶化する対象構成成分である金属カチオンの価数/不溶化する対象構成成分である前記アニオン性界面活性剤の価数は、0.1以上が好ましく、0.5以上がより好ましく、価数のモル当量である1.0以上が特に好ましい。このような範囲とすることで、適切なゲル化強度、ゲル化時間となるため、微細なセル構造を成形できるという効果が得られる。
【0141】
ゲル化剤は、エマルジョン組成物中において、乳濁液の状態、すなわちエマルジョンの状態で存在するポリマー粒子の化学的安定性を低下させるとともに、この粒子を凝集させて、所謂ゲル化状態とするための物質である。
【0142】
このようなゲル化剤としては、ゲル化方法に応じて適宜添加すればよく、例えば、ケイフッ化ナトリウム、ケイフッ化カリウム、ケイフッ化カルシウムのようなヘキサフルオロケイ酸塩;又はシクロヘキシルアミンの酢酸塩、スルファミン酸塩のようなシクロヘキシルアミン塩等を使用でき、一般には、これらの化合物を水溶液状態とした液状物が使用される。例えば、ケイフッ化ナトリウムを用いることで、ゲル化開始時間の制御等の反応制御が容易となる。
【0143】
ゲル化剤を配合する場合、その配合量は、特に限定されないが、水分散性樹脂の混合物中において、水分散性樹脂の固形分100質量部に対して1~10質量部程度が好適である。ゲル化剤の配合量が上記範囲外となると、好適なゲル化を発現できない、すなわち、長時間経過しても液状のままゲル化しなかったり、短時間でゲル化が進行して所望の形状への成形が困難になったりする。これにより、具体的にはゲル化の完了に必要な時間(ゲル化時間)が長くなり過ぎたり、短くなり過ぎたりしてしまうことにより、好適な樹脂発泡体が得られなくなってしまう。
【0144】
本水分散性樹脂分散用界面活性剤とは、水分散性樹脂を分散させるための界面活性剤である(アニオン性界面活性剤と異なり、起泡剤としての効果を有さずともよい)。このような界面活性剤は、選択する水分散性樹脂に応じて適宜選択すればよい。例えば、水分散性樹脂を、ウレタンエマルジョンとした場合、アクリルエマルジョンとした場合、ゴムラテックスとした場合の具体的な水分散性樹脂分散用界面活性剤に関しては、上述の通りである。
【0145】
硬化剤とは、水分散性樹脂用の架橋剤であり、用途等に応じて、必要量添加すればよい。硬化剤による架橋手法としては、例えば、物理架橋、イオン架橋、化学架橋があり、架橋方法は、水分散性樹脂の種類に応じて選択することができる。
【0146】
硬化剤としては、エポキシ系硬化剤、メラミン系硬化剤、イソシアネート系硬化剤、カルボジイミド系硬化剤、オキサゾリン系硬化剤等を、使用する樹脂配合系が含有する官能基の種類及び、官能基量に応じて適量使用することができる。
【0147】
なお、水分散性樹脂として、ゴムラテックスを用いる場合、樹脂発泡体の製造に慣用される架橋剤(ゴムポリマー同士を架橋するための添加剤であり、例えば、加硫剤)、架橋促進剤(架橋剤による架橋反応を促進するための添加剤であり、例えば、加硫促進剤)を添加してもよい。
【0148】
架橋剤としては、ゴムポリマーの種類及び架橋反応機構に応じて、硫黄、有機過酸化物、又はフェノール化合物等が用いられる。硫黄による架橋の場合、コロイド状硫黄及び微粉末硫黄の他、二塩化硫黄及びジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等の硫黄化合物等を用いることができる。有機過酸化物による架橋の場合、t-ブチルヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド等のヒドロペルオキシド;ベンゾイルペルオキシド、m-トルイルペルオキシド等のアシルペルオキシド;t-ブチルクミルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブトキシペルオキシ)ヘキサン等のアルキルペルオキシド;t-ブトキシペルオキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサノアート、t-ブトキシペルオキシベンゾアート等のペルオキシエステル;1,1-ビス(t-ブトキシペルオキシ)シクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブトキシペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサ等のペルオキシケタール;t-ブトキシペルオキシイソプロピルカルボナート、t-ブトキシペルオキシ-2-エチルヘキシルカルボナート等のペルオキシカルボナート、等の有機過酸化物を用いることができる。有機過酸化物は、そのまま配合してもよく、モレキュラーシーブ等の無機粉末に吸着させたり、炭化水素や可塑剤に溶解したり、ポリジメチルシロキサン等の不活性の液体に混和したりして安定化したものを、配合に使用してもよい。フェノール化合物による架橋の場合、アルキフェノール・ホルムアルデヒド樹脂、硫化-p-第三ブチルフェノール樹脂及びアルキルフェノール・スルフィド樹脂等を用いることができる。架橋剤の配合量は、ゴムポリマーの種類、架橋機構、及び架橋剤によっても異なるが、ゴムラテックスの混合物中において、ゴムポリマー100質量部に対して0.02~20質量部が好ましく、0.1~10質量部がより好ましい。
【0149】
架橋促進剤としては、各種物質が使用できるが、極性油に対する膨潤性を下げることから、ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジ-n-ブチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジベンジルジチオカルバミン酸亜鉛、エチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、N-ペンタメチレンジチオカルバミン酸亜鉛のようなジチオカルバミン酸亜鉛類;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、N,N’-ジメチル-N,N’-ジフェニルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィドのようなチウラム類;N,N-ジイソプロピル-2-ベンゾチアリルスルフェンアミド、N-t-ブチル-2-ベンゾチアリルスルフェンアミド、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド、N,N-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド、N-オキシジエチレン-2-ベンゾチアジルスルフェンアミドのようなスルフェンアミド類;2-メルカプトベンゾチアゾール及びその塩(ナトリウム塩、亜鉛塩、シクロヘキシルアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩等)、2-(4’-モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール、4-モルホリニル-2-ベンゾチアジルジスルフィド、2-(N,N-ジエチルチオカルバモイルチオ)ベンゾチアゾールのようなベンゾチアゾール類;並びにそれらの混合物が好ましい。これらのうち、ジチオカルバミン酸亜鉛類がさらに好ましく、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛が特に好ましい。架橋促進剤の配合量は、ゴムラテックスの混合物中において、ゴムポリマー100質量部に対して0.02~20質量部が好ましく、0.1~10質量部がより好ましい。
【0150】
なお、架橋剤、架橋促進剤及び老化防止剤については、ゴムラテックス中での分散性を向上させるため、これらの副原料を、予め分散剤等を用いて水中に分散させてペースト状にしたもの(加硫系ペースト)を調製し、この加硫系ペーストをゴムラテックス中に添加してもよい。
【0151】
水分散性樹脂として、ゴムラテックスを用いる場合、樹脂発泡体の製造に慣用される破泡抑制剤を添加してもよい。例えば、塩化エチル等の塩化アルキルを、ホルムアルデヒド及びアンモニアと反応させて得られる反応生成物、例えばエチルクロリド・ホルムアルデヒド・アンモニア反応生成物;アルキル第四級アンモニウムクロリド;アルキルアリールスルホン酸塩;及び高級脂肪酸アンモニウム、例えば、ポリエチレンイミン及び/又はポリエチレンイミン誘導体等が例示される。これらのうち、気泡安定効果が優れることから、塩化アルキル・ホルムアルデヒド・アンモニアの反応生成物がより好ましい。
【0152】
破泡抑制剤の配合量は、ゴムラテックス組成物中の固形分100質量部に対して、0.1~0.9質量部が好ましく、0.3~0.6質量部がより好ましい。
【0153】
水溶性ポリマーとは、溶解度が1g/100g水以上であるポリマーである。表皮付き連続気泡樹脂発泡体の親水性を高め、ゾル溶液を樹脂発泡体へ浸透しやすくするために、水溶性ポリマーを水系液体媒体中に添加して樹脂発泡体を成形することが好ましい。水溶性ポリマーとしては、本発明の効果を阻害しない限りにおいて、特に限定されず、-COOM基、-SO3M基(Mは水素原子、周期表第I、II、III族元素、アミン、アンモニウムを示す)、-NH2、-OHなどの親水基を有するポリマーが例示できる。水溶性ポリマーとしては、スルホニル基含有ポリマー及びカルボキシル基含有ポリマーが好適であるが、カルボキシル基と比較して、多価の電解質水溶液に対して官能基同士が架橋しにくいため吸水性を失いにくく、高い酸解離定数によってイオン濃度差が増し、高い吸水力が期待できるため、スルホニル基含有ポリマーであることがより好適である。また、前記水溶性ポリマーとしては、スルホニル基含有ポリマーとカルボキシル基含有ポリマーとの共重合体であることがさらに好適である。
【0154】
具体例として、-COOM基又は-SO3M基含有ポリウレタン、-COOM基又は-SO3M基含有ポリウレタン、-COOM基又は-SO3M基含有ポリエステル、-COOM基又は-SO3M基含有エポキシ化合物、-COOM基又は-SO3M基含有ポリアミド酸、-COOM基又は-SO3M基含有アクリロニトリル-ブタジエンコポリマー、-COOM基又は-SO3M基含有スチレン-ブタジエンコポリマー、-COOM基又は-SO3M基含有ポリブタジエン、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルアルコール(PVA)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシエチルセルロース(MRC)、メチルセルロース(MC)、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレンイミン、及び該化合物誘導体等が使用できるが、これらに限定されるものではない。
【0155】
水溶性ポリマーは、高親水性を発現するために、溶解度が1g/100g水以上であることが好ましく、10g/100g水以上であることがより好ましい。なお、上限値としては特に限定されないが、例えば500g/100g水以下である。また、水溶性ポリマーは、重量平均分子量は500以上1000000以下が好ましく、1000以上100000以下がより好ましく、1000以上10000以下がさらに好ましく、3000以上5000以下が特に好ましい。また、水溶性ポリマーは、水系分散体に含まれる樹脂の固形分を100質量部とした場合に、1~15質量部が好ましく、3~8質量部がより好ましい。このような範囲とすることで、高親水性が発現し、発泡時の液粘度上昇が抑制できる。
【0156】
任意に配合する成分として、得られる発泡体に適切な性質を与え、又は発泡体の作製や加工を容易にするために、この水系樹脂分散体に、使用目的に応じて、流動パラフィン、炭化水素系プロセスオイル、高級脂肪酸グリセリンエステル、高級脂肪酸アミドのような滑剤;リン酸エステル、リン酸メラミン又はリン酸ピペラジン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化アンチモン、炭酸亜鉛、塩素化パラフィン、ヘキサクロロシクロペンタジエンのような難燃剤;芳香族アミン類、ベンゾイミダゾール類、ジチオカルバミン酸塩類、フェノール化合物、亜リン酸エステル類のような老化防止剤;2,6-ジ-t-ブチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール、4,4′-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタンのような酸化防止剤;導電性カーボンブラック、銅粉、ニッケル粉、酸化スズのような導電材;カーボンブラック、有機顔料、染料、それらを含有するマスターバッチのような着色剤;ならびにシリカ、アルミナ、酸化チタン及び上記の各種添加剤のうち充填剤の機能を有するもののような充填剤等を配合することができる。
【0157】
(原料調製)
原料調製では、以上説明したような各原料を混合することで、表皮付き連続気泡樹脂発泡体の原料混合物である水系液体媒体を調製する。この際の混合方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、各成分を混合する混合タンク等の容器内で撹拌しながら混合すればよい。
【0158】
(撹拌、発泡工程)
攪拌、発泡工程では、上記原料調製工程で得られた水系液体媒体に所定の発泡用気体を添加し、これらを充分に混合させて水系液体媒体中に気泡が多数存在する状態(発泡水系液体媒体)にする。この攪拌、発泡工程は、通常は、原料調製工程で得られた液状の樹脂発泡体の原料混合物と、発泡用気体とをミキシングヘッド等の混合装置により充分に混合することで実施される。
【0159】
攪拌、発泡工程で水系液体媒体に混合される発泡用気体は、樹脂発泡体中の気泡(セル)を形成するものであり、この発泡用気体の混入量によって、得られる樹脂発泡体の発泡倍率及び見掛けの密度が決まる。
【0160】
樹脂発泡体の見掛けの密度を調整するためには、所望の樹脂発泡体の見掛けの密度と、樹脂発泡体の原料の体積(例えば、樹脂発泡体の原料が注入される成形型の内容積)とから、必要な樹脂発泡体の原料の重量を算出し、この重量において所望の体積となるように発泡用気体の量を決定すればよい。また、発泡用気体の種類としては、主に空気が使用されるが、その他にも、窒素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガスを使用することもできる。
【0161】
本形態にかかる樹脂発泡体の製造方法で使用される発泡方法としては、発泡体の製造で一般的に使用される方法であれば特に制限されないが、例えば、メカニカルフロス(機械発泡)法を使用することができる。
【0162】
メカニカルフロス法は、水系液体媒体を攪拌羽根等で攪拌することにより、大気中の空気を水系液体媒体に混入させて発泡させる方法である。撹拌装置としては、メカニカルフロス法に一般に用いられる撹拌装置を特に制限なく使用可能であるが、例えば、ホモジナイザー、ディゾルバー、メカニカルフロス発泡機等を使用することができる。このメカニカルフロス法によれば、水系液体媒体と空気との混合割合を調節することによって、種々の用途に適した見掛けの密度の樹脂発泡体を得ることができる。
【0163】
水系液体媒体と空気との混合時間は特に制限されないが、通常は1~10分、好ましくは2~6分である。混合温度も特に制限されないが、通常は常温である。また、上記の混合における攪拌速度は、気泡を細かくするために200rpm以上が好ましく(500rpm以上がより好ましく)、発泡機からの発泡物の吐出をスムーズにするために2000rpm以下が好ましい(800rpm以下がより好ましい)。
【0164】
(成形)
以上のようにして発泡した水系液体媒体(発泡水系液体媒体)は、例えば、ドクターナイフ、ドクターロール等の公知の手段により、所望の樹脂発泡体の厚みに合わせたシート状等に成形される。
【0165】
(加熱工程)
加熱工程は、成形された発泡水系液体媒体中の分散媒を蒸発させる。この際の乾燥方法としては特に制限されるものではないが、例えば、熱風乾燥等を用いればよい。また、乾燥温度及び乾燥時間についても特に制限されるものではないが、例えば、80℃程度で1~3時間程度とすればよい。
【0166】
また、この加熱工程において、分散媒が発泡水系液体媒体中から蒸発するが、この蒸気が抜ける際の通り道が、樹脂発泡体の内部から外部まで連通されることとなる。従って、本形態にかかる樹脂発泡体では、この水蒸気が抜ける際の通り道が連続気泡として残るため、樹脂発泡体中に存在する気泡の少なくとも一部が連続気泡となる。ここで、攪拌、発泡工程で混入された発泡用気体がそのまま残存している場合には、得られた樹脂発泡体中では独立気泡となり、混入された発泡用気体が、本工程において蒸気が抜ける際に連通された場合には、得られた樹脂発泡体中では連続気泡となる。また、本形態においては、樹脂発泡体中の気泡の一部が連続気泡であり、残りの気泡が独立気泡であってもよく、あるいは、全ての気泡が連続気泡であってもよい。
【0167】
硬化剤を添加した場合には、加熱工程では、原料の硬化(架橋)反応を進行及び完了させる。具体的には、上述した硬化剤により原料同士が架橋され、硬化した樹脂発泡体が形成される。この際の加熱手段としては、原料に充分な加熱を施し、原料を硬化(架橋)させ得るものであれば特に制限はされないが、例えば、トンネル式加熱炉等を使用することができる。また、加熱温度及び加熱時間も、原料を硬化(架橋)させることができる温度及び時間であればよく、例えば、80~150℃(特に、120℃程度が好適)で1時間程度とすればよい。
【0168】
図1は、表皮層表面に垂直な断面の写真である。
図1に示すように、連続気泡を有する発泡体層の表面に、連続気泡を含む表皮層が形成される。発泡体形成工程において、発泡した水系液体媒体(発泡水系液体媒体)をPET製シート上に供給し、例えば、ドクターナイフ、ドクターロール等の公知の手段により、所望の樹脂発泡体の厚みに合わせたシート状等に成形されることにより、PET製シートダイに接触する発泡体層の表面が変質して表皮層を形成する。
図2には、表皮層表面の法線方向から観察した表皮層表面の写真を示した。
図2によれば、表皮層表面に連続気泡が到達していることが理解できる。
【0169】
この表皮層に含まれる連続気泡の一部は、表皮層の表面に到達しており、外気を透過する。そのため、後述するゾル溶液充填工程において、常圧下で、ゾル溶液は、この連続気泡を介して前記発泡体内部に充填することが可能となる。
【0170】
(裁断)
得られた表皮付き連続気泡樹脂発泡体を所定のサイズに加工することができる。裁断面には、連続気泡構造の気泡が露出する。この露出した気泡から、前記ゾル溶液が充填される。
以上の発泡体形成工程により、連続気泡を有する表皮層が形成された、表皮付き連続気泡樹脂発泡体が得られる。
【0171】
<水分散性樹脂を原料としない場合の非ポリオレフィン発泡体の発泡体形成工程>
(原料)
本実施形態にかかる発泡体の材質としては、特に限定されないが、難燃性、耐熱性の観点からシリコーン樹脂、シリコーンゴムが好適である。
【0172】
以下に、シリコーン樹脂、又はシリコーンゴムを用いた発泡体形成工程の例について説明する。
【0173】
シリコーン樹脂発泡体原料は、特に限定されないが、含有される成分の反応により発生する水素ガスで発泡するシリコーン樹脂を原料として用いることができる。
【0174】
この水素ガスにより発泡させることができる原料としては、自己発泡反応タイプの液状シリコーン樹脂が挙げられ、この液状シリコーン樹脂であれば、主剤と硬化剤との2液を混合し、撹拌することにより反応が開始され、短時間のうちに反応が進行し、効率よく、シリコーン樹脂発泡体を形成することができる。
【0175】
シリコーン樹脂発泡体原料としては、原料配合のうちの主剤がアルケニル基を有するシロキサン化合物であり、硬化剤がSi-H基を有するシロキサン化合物である。これらのシロキサン化合物の付加反応により、水素ガスが発生し、シリコーン樹脂発泡体が形成される。
【0176】
アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペテニル基、ヘキセニル基等が挙げられ、ビニル基が好ましい。
【0177】
前記2液の混合攪拌の効率を高めるため、発泡剤、界面活性剤、粘度調整剤、乳化剤、希釈剤等、その他の添加剤を必要に応じて用いることができる。
【0178】
また、反応には、周期表の第8~10族の遷移金属及びその錯体が触媒として使用することができ、白金化合物が好適である。これらの触媒により反応が促進され、シリコーン樹脂発泡体をより効率よく形成することができる。
【0179】
さらに、シリコーン樹脂発泡体原料には、付加反応を制御するための不飽和アルコール類、含窒素化合物、リン系化合物等の反応制御剤、シリコーン樹脂発泡体の物性を向上させるためのシリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム等の充填剤などの各種の添加剤等を配合することもできる。
【0180】
(原料調製)
以上説明したような各原料を混合することで、表皮付き連続気泡樹脂発泡体の原料混合物を調製する。この際の混合方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、各成分を混合する混合タンク等の容器内で撹拌しながら混合すればよい。
【0181】
主剤と、硬化剤との配合量は、特に限定されず、発泡体の物性値に応じて決めることができるが、例えば、主剤と、硬化剤の配合比を、100:0.1~100:50とすることができ、100:1~100:30が好ましく、100:5~100:20がより好ましい。
【0182】
(撹拌、発泡工程)
攪拌、発泡工程では、上記原料調製工程で得られた液状の樹脂発泡体の原料混合物をミキシングヘッド等の混合装置により充分に混合することで実施される。
【0183】
(成形)
以上のようにして発泡した樹脂発泡体の原料混合物は、例えば、ドクターナイフ、ドクターロール等の公知の手段により、所望の樹脂発泡体の厚みに合わせたシート状等に成形される。
【0184】
(加熱工程)
加熱工程では、原料の硬化(架橋)反応を進行及び完了させる。シリコーン発泡体原料は、室温(例えば、20~30℃)でも反応させることができるが、加熱して反応を促進することが好ましい。具体的には、上述した硬化剤により原料同士が架橋され、硬化した樹脂発泡体が形成される。この際の加熱手段としては、原料に充分な加熱を施し、原料を硬化(架橋)させ得るものであれば特に制限はされないが、例えば、トンネル式加熱炉等を使用することができる。また、加熱温度及び加熱時間も、原料を硬化(架橋)させることができる温度及び時間であればよく、例えば、30~200℃とすることができ、30~170℃とすることが好ましく、加熱時間は1時間程度とすればよい。加熱速度は、室温から緩やかに昇温させることが好ましく、反応温度は広い温度範囲で管理することができる。
【0185】
また、この発泡工程・加熱工程において、発生した水素が樹脂発泡体原料を抜ける際の通り道が、樹脂発泡体の内部から外部まで連通されることとなる。従って、本形態にかかる樹脂発泡体では、この水素が抜ける際の通り道が連続気泡として残るため、樹脂発泡体中に存在する気泡の少なくとも一部が連続気泡となる。
【0186】
ここで、攪拌、発泡工程で混入された発泡用気体がそのまま残存している場合には、得られた樹脂発泡体中では独立気泡となり、混入された発泡用気体が、本工程において蒸気が抜ける際に連通された場合には、得られた樹脂発泡体中では連続気泡となる。また、本形態においては、樹脂発泡体中の気泡の一部が連続気泡であり、残りの気泡が独立気泡であってもよく、あるいは、全ての気泡が連続気泡であってもよい。
【0187】
本実施形態においても、
図1に示すような連続気泡を有する発泡体層の表面に、連続気泡を含む表皮層が形成される。発泡体形成工程において、発泡した水系液体媒体(発泡水系液体媒体)をPET製シート上に供給し、例えば、ドクターナイフ、ドクターロール等の公知の手段により、所望の樹脂発泡体の厚みに合わせたシート状等に成形されることにより、PET製シートダイに接触する発泡体層の表面が変質して表皮層を形成する。
図2の様に、表皮層表面に連続気泡が到達していることが理解できる。
【0188】
この表皮層に含まれる連続気泡の一部は、表皮層の表面に到達しており、外気を透過する。特に、連続気泡樹脂発泡体の通気度量が10cm3/cm2/sec以上の場合、後述するゾル溶液充填工程において、常圧下で、ゾル溶液は、この連続気泡を介して前記発泡体内部に充填することが可能となる。
【0189】
(裁断)
得られた表皮付き連続気泡樹脂発泡体を所定のサイズに加工することができる。裁断面には、連続気泡構造の気泡が露出する。この露出した気泡から、前記ゾル溶液が充填される。
以上の発泡体形成工程により、連続気泡を有する表皮層が形成された、表皮付き連続気泡樹脂発泡体が得られる。
【0190】
<シリコーンゴムを用いる場合の発泡体形成工程>
(原料)
シリコーンゴム発泡体原料は、特に限定されないが、生ゴム(高重合度ジオルガノポリシロキサン)であるアルケニル基を有するシロキサン化合物と、Si-H基を有するシロキサン化合物、有機過酸化物、及び有機発泡剤の混合物である。これらのシロキサン化合物の付加反応、又はアルケニル基を有するシロキサン化合物と有機過酸化物の反応により架橋し、有機発泡剤の分解により、シリコーンゴム発泡体が形成される。
【0191】
アルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペテニル基、ヘキセニル基等が挙げられ、ビニル基が好ましい。
【0192】
有機発泡剤は、分解温度が50~250℃であり、シリコーンゴム中で、加熱により分解し気体を発生させ、シリコーンゴム発泡体を形成させるものである。有機発泡剤の分解温度が50℃未満では、貯蔵安定性や取り扱い性に劣り、250℃を超えると、成形性や生産性に劣る。
【0193】
有機発泡剤としては、分解温度が50~250℃で、分解温度以上の温度に加熱されると分解して窒素ガスもしくは炭酸ガスを発生させるものであれば特に制限されず、例えば、アゾビスイソプチロニトリル、1,1’―アゾビス(1―アセトキシ―1―フェニルエタン)、アゾジカルボンアミド等のアゾ系化合物;ジニトロソペンタメチレンテ卜ラミン、N,N-ジメチル-N,N-ジニトロソテレフタルアミド等のニトロソ化合物等が挙げられる。これらの化合物は分解温度以上の温度に加熱されると分解して窒素ガスもしくは炭酸ガスを発生する。また、これらの有機発泡剤に尿素や有機酸のような調整剤を併用して発泡温度を調整することができる。
【0194】
これらのうちでも、成形性や取り扱い性の観点から、分解温度が80~200℃の有機発泡剤が好ましく用いられる。有機発泡剤の配合量は、アルケニル基を有するシロキサン化合物100質量部に対して0.02~20質量部が好ましく、0.1~10質量部がより好ましい。
【0195】
有機過酸化物は、発泡時に架橋をさらに進行させて、より強度の優れたシリコーンゴム発泡体にするものである。有機過酸化物としては、分解温度が有機発泡剤の分解温度以上であれば特に制限されず、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、2,4-ジクロロベンゾイルパーオキサイド、p―クロロベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5-ビス(t―ブチルパーオキシ)-2,5-ジメチルへキサン、2,5―ビス(t―ブチルパーオキシ)―2,5―ジメチルへキシン、ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ビス(4―t―ブチルシクロへキシル)―パーオキシジカーボネートなどが挙げられる。
【0196】
これらの有機過酸化物は、用いられる有機発泡剤の分解温度により適宜選択されるが、成形性や取り扱い性の観点から、該分解温度より10~60℃高いことが好ましい。有機過酸化物の配合量は、アルケニル基を有するシロキサン化合物100質量部に対して0.1~20質量部が好ましく、1~10質量部がより好ましい。
【0197】
シリカ粉末、金属炭酸塩、クレイ、タルク、マイカ、酸化チタン等の補強性無機充填剤、シリコーンオイル等の加工助剤、カーボンブラック等の導電性充填剤、顔料、粘度調整剤、酸化防止剤等、その他の添加剤を必要に応じて用いることができる。
【0198】
また、反応には、周期表の第8~10族の遷移金属及びその錯体が触媒として使用することができる。白金化合物を好適に用いることができる。これらの触媒により反応が促進され、シリコーンゴム発泡体をより効率よく形成することができる。
【0199】
(原料調製)
原料調製では、以上説明したような各原料を混合することで、表皮付き連続気泡樹脂発泡体の原料混合物を調製する。この際の混合方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、万能混練機、ニーダー等の混合手段によって均一に混練して調製することができる。
【0200】
また、発泡や触媒に関与する成分を混練したマスターバッチやベースコンパウンド等を予め別々に調製し、使用直前にこれらを混合して使用してもよい。
【0201】
(成形)
均一な厚さのシ一卜状や三次元形状等のシリコーンゴム発泡体とする方法としては、押出成形、カレンダー成形、モールド成形等の成形方法が挙げられる。
【0202】
(発泡/加熱)
以上のようにして得られた樹脂発泡体原料を有機発泡剤の分解温度以上の温度で加熱処理することで、表皮付きシリコーンゴム発泡体が得られる。加熱処理の温度は、有機発泡剤の分解温度以上であれば特に制限されないが、該分解温度より50~150℃高い温度が好ましい。加熱処理の方法としては、オープン等で加熱処理する方法が挙げられる。
【0203】
(表皮層形成工程)
前述の発泡体形成工程にて、連続気泡を有する発泡体層の表面に、連続気泡を含む表皮層が形成されていない、又は表皮層の形成が不十分でエアロゲルの脱落が容易な場合、次工程であるゾル溶液充填工程の前に、発泡体に表皮層を形成させることができる。
【0204】
本工程における表皮層の形成方法としては、例えば、連続気泡を有する発泡体層の熱プレス機や熱ロール機による加熱処理を挙げることができる。表皮層の形成条件は、材質などによって適宜選択することができるが、例えば、加熱した熱プレス機を用いて、連続気泡を有する発泡体層をプレス処理することで、連続気泡を有する発泡体層の表面に表皮層を形成することができる。プレス条件の例としては、プレス機を250℃に加熱し、圧力を200kg/cm2かけて、5分間プレスする条件を挙げることができる。
【0205】
(裁断)
得られた表皮付き連続気泡樹脂発泡体を所定のサイズに加工することができる。裁断面には、連続気泡構造の気泡が露出する。この露出した気泡から、前記ゾル溶液が充填される。
以上の発泡体形成工程により、連続気泡を有する表皮層が形成された、表皮付き連続気泡樹脂発泡体が得られる。
【0206】
<<ゾル溶液充填工程>>
以下には、好適例であるシリカエアロゲルの製造方法を一例として詳細を説明するが、本発明は、シリカエアロゲルにのみ限定されるものではない。
【0207】
<ゾル溶液>
(ゾル溶液の原料)
シリカエアロゲルのシリコーン原料として、シリコーンアルコキシドもしくはその誘導体やケイ酸アルカリ金属塩を用いることができ、水系溶媒に混合してゾル溶液とする。
【0208】
シリコーン原料は、本発明の効果を阻害しない限りにおいて、特に限定されない。シリコーンアルコキシドやその誘導体としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシランオリゴマー、テトラエトキシシランオリゴマー、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、モノヘキシルトリエトキシシラン等を挙げることができる。ケイ酸アルカリ金属塩としては、ケイ酸カリウム、ケイ酸ナトリウム等が挙げることができる。前記シリコーン原料は、複数を組み合せて用いることができる。複数を用いる場合には、その組み合わせ及び配合比率は、目的に応じて選択することができる。
【0209】
シリコーン原料の加水分解には、水と、水に相溶性を有し、シリコーン原料を溶解する溶媒を用いることが好ましい。溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコールや、エタンジオール、プロパンジオール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の脂肪族ジオール、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールA、シクロヘキサンジオール等の芳香族ジオール又は脂環式ジオール、グリセリン、ジグリセリン、トリメチロールプロパン、トリスヒドロキシメチルアミノペンタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ヘキサメチロールメラミン等の多価アルコール、ヘキサン、トルエン、クロロホルム、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、アセトン、アセトニトリル等が挙げられる。これらの溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0210】
シリコーン原料を効率良く加水分解するためには、反応系に予め触媒を添加しておくことが好ましい。触媒としては、本発明の効果を阻害しない限りにおいて、特に限定されず、例えば、酸性触媒としては、ギ酸、酢酸、コハク酸、リンゴ酸、クエン酸、塩酸、硝酸、ホウ酸、硫酸、炭酸、リン酸等が、塩基性触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の金属酸化物及び/又は水酸化物、ジメチルアミン、トリエチルアミン、N,N-ジメチルベンジルアミン、アニリン、1,5-ナフタレンジアミン等の脂肪族及び/又は芳香族アミン、アンモニア、2価金属のナフテン酸、2価金属の水酸化物などが挙げられる。これらの触媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0211】
(充填方法)
ゾル溶液の充填方法は、常圧下、又は減圧下で行われる限りにおいて、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、上述した方法により得られた表皮付き連続気泡樹脂発泡体を、減圧下で、調製したゾル溶液に完全に含浸することで充填する方法等が挙げられる。特に、通気度量が10cm3/cm2/sec以上の場合、常圧下での充填が可能である。
【0212】
具体的には、ゾル溶液を、テトラメトキシシラン(以下TMOSとする):メタノール:水:触媒(アンモニア)をモル比1:7.2:4:0.01で混合したゾル溶液を例にすると、セパラブルフラスコ内に発泡体を設置し、徐々に前記ゾル溶液を導入することで、発泡体を完全にゾル溶液内に浸漬し、ゾル溶液を発泡体に充填することができる。そのままゲル化まで2~3時間放置する。
【0213】
連続気泡樹脂発泡体中に残存する、未反応の水酸基やカルボキシル基、アミノ基等の反応性官能基は後述する疎水化処理剤と反応する場合がある。反応性官能基が多量に存在すると湿潤ゲルの疎水化反応を阻害する恐れがあるため、ゾル溶液充填工程の前工程にて、連続気泡樹脂発泡体中に残存する反応性官能基を不活性化してもよい。反応性官能基の不活性化方法は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。
【0214】
(ゲル化)
前記発泡体に充填されたゾル溶液は、ゾル-ゲル反応によって、TMOSが水、触媒により加水分解され、ゾル状態を経て、湿潤ゲルを形成する。ここで湿潤ゲルとは、ゲル化後のゾル溶液の残液等の液体を含んだまま固体状になったものを示す。
【0215】
シリコーンアルコキシドもしくはその誘導体の加水分解によるゾル-ゲル反応により前記発泡体内の連続気泡内部に湿潤ゲルが形成される。
【0216】
湿潤ゲルを形成した後に、湿潤ゲル中の水や未反応物を除去する工程を有してもよい。この工程で用いられる溶媒は、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコールやアセトン、アセトニトリル等が挙げられる。湿潤ゲルが充填された発泡体を、前記溶媒に浸漬し、数回溶媒を新しいものに入れ替えることで、工程が完了する。
【0217】
親水性を持つシラノール基に対して反応する官能基と疎水基を有する疎水化処理剤によって、シリカエアロゲル表面のOH基を疎水化する工程を有してもよい。該疎水化処理剤は、シラノール基に対して反応する官能基と疎水基を有するものを用いる。シラノール基に対して反応する官能基としては、例えば、ハロゲン、アミノ基、イミノ基、カルボキシル基、アルコキシル基、及び水酸基が挙げられる。疎水基としては、例えばアルキル基、フェニル基、及びそれらのフッ化物等が挙げられる。疎水化処理剤は、上記官能基及び疎水基を、それぞれ1種のみを有してもよいし、2種以上を有してもよい。例えば、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルジシロキサン、トリメチルクロロシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、ジメチルジクロロシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン等の有機シラン化合物が挙げられ、これ以外にも、酢酸、蟻酸、コハク酸等のカルボン酸や、メチルクロリド等のハロゲン化アルキル等の有機化合物が挙げられる。疎水化処理剤は1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0218】
エアロゲルと連続樹脂発泡体の密着性を上げて、エアロゲルの脱落を抑制するために、カップリング剤を添加してもよい。カップリング剤としては、エアロゲル表面のシラノール基と、連続樹脂発泡体に残存する水酸基やカルボキシル基、アミノ基等の反応性官能基の両方と反応できるものであれば特に制限されず、任意の好適なカップリング剤を使用することができる。カップリング剤としては、シランカップリング剤を用いることが好適で、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)―3―アミノプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートなどが挙げられる。
【0219】
(乾燥工程)
本発明においては、湿潤ゲルを乾燥させる乾燥工程を含む。乾燥方法としては公知の方法を用いることができ、特に限定されない。湿潤ゲルを乾燥させる場合には、シリカエアロゲルが壊れ難いため、超臨界流体乾燥が好ましい。超臨界流体乾燥としては、例えば、80℃、20MPa程度の条件で溶媒の全部を、この溶媒より臨界点の低い二酸化炭素に置換しながら除去する方法が挙げられる。
【0220】
<<<第II形態に係るエアロゲル複合材>>>
第II形態に係るエアロゲル複合材の、第1の発泡体に含まれる個々の気泡(セル)を占める平均充填率(充填されたエアロゲルが気泡内に占める体積の割合)は、好ましくは50%~100%であり、より好ましくは70%~100%であり、特に好ましくは90%~100%である。平均充填率をこのような範囲とすることにより、高い断熱性能を発言できる。
【0221】
第II形態に係るエアロゲル複合材の厚みは、例えば、0.03~50.0mmであり、好ましくは0.1~20.0mmであり、より好ましくは0.5~10.0mmであり、特に好ましくは0.5~4.0mmである。
【0222】
エアロゲル複合材の発泡基材の性質等を所定の範囲とすることにより、柔軟性と粉落ちの抑制とを両立させることができる。
【0223】
また、粉落ちが少ない場合において、断熱効果が維持できるため、難燃性の向上にも寄与するものと考えられる。
【0224】
<<発泡基材>>
第II形態に係る発泡基材は、所定の物性を満たす、連続気泡を有するメラミン発泡体、ポリイミド発泡体または圧縮成形によって得られるポリウレタン発泡体である。ポリウレタン発泡体は、第I形態に係る発泡基材としても第II形態に係る発泡基材としても好ましく使用することができる。
【0225】
メラミン発泡体は、通常、メラミンとホルムアルデヒドとの重縮合によって得られる熱硬化性のメラミン樹脂からなる発泡体である。
【0226】
また、ポリイミド発泡体とは、通常、酸二無水物とアミン化合物との重縮合によって得られる熱硬化性のポリイミド樹脂からなる発泡体である。
【0227】
熱圧縮成形により得られるポリウレタン発泡体は、換言すれば、後述する熱圧縮工程が実施されたポリウレタン発泡体である。ポリウレタン発泡体を熱圧縮成形することで、気泡の形状(平均サイズ、アスペクト比)や気泡の均一性を調整することができる。
【0228】
メラミン発泡体、ポリイミド発泡体、ポリウレタン発泡体としては、所定の性質を有する限りにおいては特に限定されず、一般的な製造方法によって得られたものを使用可能である。なお、メラミン発泡体、ポリイミド発泡体、ポリウレタン発泡体(特に、熱圧縮成形により得られるポリウレタン発泡体)の一般的な製造方法については後述する。
【0229】
連続気泡を有するとは、発泡体内部に連通した気泡を有することを示す。発泡体が連続気泡を有することで、一方の表面から他方の表面に通気することが可能となり、発泡体中にエアロゲル原料を充填させることが可能となる。発泡基材中の一部の気泡が独立気泡であってもよい。
【0230】
発泡基材としては、後述する熱圧縮工程を実施して得られる、熱圧縮されたメラミン発泡体、またはポリイミド発泡体であることが好ましい。
【0231】
発泡基材の密度は、好ましくは0.015~0.200g/cm3であり、より好ましくは0.040~0.150g/cm3であり、特に好ましくは0.050~0.10g/cm3である。
【0232】
発泡基材の通気度は、好ましくは0.5~300cm3/cm2/secであり、より好ましくは1~200cm3/cm2/secであり、更に好ましくは1~100cm3/cm2/secであり、特に好ましくは10~100cm3/cm2/secである。10cm3/cm2/sec以上の場合、エアロゲル複合材は、後述する充填工程において、時間のかかる真空引きを行う必要がなく、効率的な製造方法とすることが可能である。
【0233】
この通気度は、JIS L1096-7:2010「織物及び編物の生地試験方法:A法(フラジール形法)」に記載の方法を用いて測定することが可能である。
【0234】
発泡基材の、形状、大きさ、厚みは、エアロゲル複合材と同様である。
【0235】
発泡基材の密度は、後述する発泡素材形成工程における発泡倍率および後述する熱圧縮工程における熱圧縮率等を変更することにより調整可能である。
【0236】
通気度は、発泡基材の密度および厚み等を変更することにより調整することが可能である。また、メラミン発泡体およびポリイミド発泡体は、共に、後述する熱圧縮工程における熱プレス温度を向上させることで、セル形状が著しく変化し通気度を低減させることが可能な場合がある。
【0237】
<<エアロゲル>>
エアロゲルは、低密度の乾燥ゲルであれば、特に限定されない。超臨界流体乾燥法を用いて得られたエアロゲルだけでなく、通常の乾燥過程によるキセロゲル、凍結乾燥によるクライオゲル等も含む。
【0238】
エアロゲルとしては、任意の好適なエアロゲル成分を使用することができる。例えば、シリカエアロゲルやアルミナエアロゲルのような無機エアロゲル、レゾルシノール・ホルムアルデヒド・エアロゲル(RFエアロゲル)、セルロースナノファイバー・エアロゲル(CNFエアロゲル)のような有機エアロゲル、炭素エアロゲル、及びそれらの混合物から選択することができる。エアロゲルは、シリカ(SiO2)を含有するシリカエアロゲルを好適に用いることができる。
【0239】
<<エアロゲル複合材の物性、性質>>
<粉落ち率>
エアロゲル複合材の粉落ち率は、公知の方法で測定することができ、特に限定されない。例えば、JIS K6404-6:1999「ゴム引布・プラスチック引布試験方法-第6部:もみ試験」に記載されているもみ試験を行い、試験前後に質量を測定することで測定が可能である。
【0240】
具体的には、試験片は10mm×50mm、厚みは任意とし、試験片間隔を20mm、ストローク間隔40mm、圧縮荷重200gfとして1200回(往復速度120回/分)揉んだ前後の試験片重量から粉落ち率を算出する。粉落ち率(%)は(試験前重量(g)-試験後重量(g))/試験前重量(g)×100で計算する。粉落ち率が大きいほど、エアロゲルの脱落が多いことを示す。
【0241】
<熱伝導率>
エアロゲル複合体の熱伝導率は、公知の方法で測定することができ、特に限定されない。例えば、JIS A1412-1:1999「熱絶縁材の熱抵抗及び熱伝導率の測定方法-第1部:保護熱板法(GHP法)」、JIS A1412-2:1999「熱絶縁材の熱抵抗及び熱伝導率の測定方法-第2部:熱流計法(HFM法)」に準ずる方法で測定することができる。
【0242】
具体的には、熱伝導率は熱流束計を用いて、上板温度を15℃とし、下板温度を35℃として熱伝導率を測定する。環境温度は、特に制限はないが常温、常圧とする。試験時に用いるサンプルの厚みは5mm以上とし、5mmに試験サンプル厚みが満たない場合には、試験サンプルを積層して熱伝導率を測定し、断熱性能の評価を実施する。
【0243】
熱伝導率が、0.020W/m・K以下であることが好ましく、0.018W/m・K以下であることがより好ましく、0.016W/m・K以下であることがさらに好ましい。
【0244】
<<<第II形態に係るエアロゲル複合材の製造方法>>>
第II形態に係るエアロゲル複合材の製造方法は、好ましくは以下の工程を含む。
(1)発泡基材の前駆体である発泡素材を熱圧縮して発泡基材を得る熱圧縮工程
(2)発泡基材にエアロゲル原料を充填する充填工程
(3)発泡基材に充填されたエアロゲル原料を後乾燥させる乾燥工程
【0245】
充填工程に供される発泡基材が既に準備されている場合には、熱圧縮工程を実施せずともよい。
【0246】
また、エアロゲル複合材の製造方法は、以下の工程を含んでもよい。
(0)発泡素材を得る発泡素材形成工程
【0247】
以下、それぞれの工程について説明する。
【0248】
なお、エアロゲル複合材の製造方法は、上記工程以外の工程をさらに含んでもよい。
【0249】
また、以下の工程におけるエアロゲルの説明に関しては、好適例であるシリカエアロゲルを例として詳述する。
【0250】
<<発泡素材形成工程>>
発泡素材形成工程としては、発泡素材であるメラミン発泡体、ポリイミド発泡体またはポリウレタン発泡体を形成可能であれば特に限定されず、一般的なメラミン発泡体、またはポリイミド発泡体の製造方法等に基づいて実施できる。以下、メラミン発泡体、ポリイミド発泡体、およびポリウレタン発泡体の製造方法の一例について説明する。
【0251】
<メラミン発泡体>
メラミン発泡体は、主原料であるメラミンとホルムアルデヒド又はそれらの前縮合体に、発泡剤、触媒及び乳化剤などを配合し、混合した後、型に注入し、加熱、或いは電磁波の照射等、適宜の手段によって発泡原料を発熱させ、発泡、硬化させることにより調製することができる。
【0252】
前縮合体を生成させるためのメラミンとホルムアルデヒドとのモル比は、メラミン:ホルムアルデヒド=1:1.5~4、特に1:2~3.5とすることが好ましい。また、数平均分子量が200~1000、特に200~400の前縮合体が好ましい。尚、ホルムアルデヒドとしては、通常、その水溶液であるホルマリンが使用される。
【0253】
前縮合体を生成させるための単量体としては、メラミンとホルムアルデヒドの他に、これら単量体を100質量部(以下、部と略記する。)とした場合に、50部以下、特に、20部以下の各種の単量体を使用することができる。
【0254】
メラミンに対応する他の単量体としては、アルキル置換メラミン、尿素、ウレタン、カルボン酸アミド、ジシアンジアミド、グアニジン、スルフリルアミド、スルホン酸アミド、脂肪族アミン、フェノール及びその誘導体等を使用することができる。更に、アルデヒド類としては、アセトアルデヒド、トリメチロールアセトアルデヒド、アクロレイン、ベンズアルデヒド、フルフロール、グリオキサール、フタルアルデヒド及びテレフタルアルデヒド等を用いることができる。
【0255】
また、発泡剤としては、ペンタン、トリクロロフルオロメタン、トリクロロトリフルオロエタン等を使用することができる。
【0256】
触媒としては、通常、ギ酸が用いられ、乳化剤としては、スルホン酸ナトリウム等の陰イオン界面活性剤などを使用することができる。
【0257】
発泡原料の硬化反応を促進するために照射される電磁波は、その電力消費量が発泡原料に対して500~1000kW、特に600~800kWとなるように調整することが好ましい。
【0258】
<ポリイミド発泡体>
ポリイミド発泡体は、主原料である酸二無水物とアミン化合物又はそれらの前縮合体に、触媒などを配合し、混合した後、型に注入し、加熱、或いは電磁波の照射等、適宜の手段によって発泡原料を発熱させ、発泡、硬化させることにより調製することができる。
【0259】
前縮合体を生成させるため、エステル化溶媒と均一混合することが好ましく、エステル化溶媒としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、n-ブタノールなどの低級一級アルコール等が挙げられる。これらの溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0260】
触媒としては、1,2-ジメチルイミダゾール、ベンゾイミダゾール、イソキノリン、置換ピリジン等のイミド化触媒が挙げられる。
【0261】
発泡原料の硬化反応を促進するために照射される電磁波は、その電力消費量が発泡原料に対して500~1000kW、特に600~800kWとなるように調整することが好ましい。
【0262】
<ポリウレタン発泡体>
ポリウレタン発泡体は、例えば、ポリオール成分、ポリイソシアネート成分、発泡剤、その他の添加剤などを含む原料混合物を調製し、成形、発泡させることにより製造することができる。以下、ポリウレタン発泡体の製造方法の具体例を述べる。
【0263】
(原料調製工程)
ポリオール成分としては、アジピン酸、フタル酸等のポリカルボン酸を、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等のポリオールと反応させることによって得られる縮合系ポリエステルポリオール、ラクトン系ポリエステルポリオール、ポリカーボネート系ポリオールのようなポリエステル系ポリオール;ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、及びそれらの変性体のようなポリエーテルポリオール等が例示される。このポリオール成分は、原料成分の種類、分子量、縮合度等を調整することによって、水酸基の官能基数や水酸基価を変えることができ、それらを単独であるいは複数組み合わせて使用してもよい。
【0264】
ポリイソシアネート成分としては、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フフェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、3,3’-ジクロロ-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、1,5-テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3-シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4-シクロヘキシレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、3,3’-ジメチル-4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等を挙げることができる。また発明の効果を損なわない範囲において、3価以上のポリイソシアネートを併用してもよい。
【0265】
触媒としては、ポリオール成分とポリイソシアネート成分とのウレタン化反応を促進するものであれば特に限定されず、N,N,N-トリメチルアミノエチルピペラジン、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ジエタノールアミン、ジメチルアミノモルフォリン、N-エチルモルホリン、テトラメチルグアニジン等のアミン類;オクチル酸スズ、ジラウリル酸ジブチルスズ、フェニル水銀プロピオン酸塩あるいはオクテン酸鉛等の有機金属化合物が例示される。
【0266】
発泡剤としては、窒素、二酸化炭素、及びそれらの混合ガスのような無機ガス;プロパン、n-ブタン、i-ブタン、n-ペンタン、i-ペンタン、シクロペンタン、n―ヘキサン、シクロヘキサンのような飽和炭化水素;水等が例示される。この発泡剤としては、水のほかペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ジクロロメタン、炭酸ガス等が用いられる。
【0267】
任意に配合する成分として、使用目的に応じて、オルガノポリシロキサン等のシリコーン系化合物、含フッ素化合物のような整泡剤;リン酸エステル、リン酸メラミン又はリン酸ピペラジン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化アンチモン、炭酸亜鉛、塩素化パラフィン、ヘキサクロロシクロペンタジエンのような難燃剤;芳香族アミン類、ベンゾイミダゾール類、ジチオカルバミン酸塩類、フェノール化合物、亜リン酸エステル類のような老化防止剤;2,6-ジ-t-ブチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール、4,4′-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタンのような酸化防止剤;カーボンブラック、有機顔料、染料、それらを含有するマスターバッチのような着色剤などを配合することができる。
【0268】
前記ポリオール成分とポリイソシアネート成分とのウレタン化反応を行なう場合には、ワンショット法又はプレポリマー法などが採用される。ワンショット法は、ポリオール成分とポリイソシアネート成分とを直接反応させる方法である。プレポリマー法は、ポリオール成分とポリイソシアネート成分との各一部を事前に反応させて末端にイソシアネート基又は水酸基を有するプレポリマーを得、それにポリオール成分又はポリイソシアネート成分を反応させる方法である。ワンショット法はプレポリマー法に比べて製造工程が一工程で済み、製造条件の制約も少ないことから好ましい方法であり、製造コストを低減させることができる。
【0269】
発泡素材の厚み及び密度としては、熱圧縮工程の条件、および、所望の発泡基材の厚み及び密度にあわせて適宜設定すればよい。
【0270】
ここで、メラミン発泡体については、発泡素材中に、未反応のメチロール基を残存させ、後述する熱圧縮工程において、当該メチロール基を反応させることも可能である。
【0271】
得られた発泡体を所定のサイズに加工してもよい。
【0272】
<<熱圧縮工程>>
発泡素材形成工程により得られた発泡素材を熱圧縮し、発泡素材を塑性変形させ、所定の密度および通気度を有する発泡基材を得る。
【0273】
熱圧縮工程は、例えば、圧縮成形機の熱板間で加熱圧縮する方法によって実施できる。この際、熱板の温度(プレス温度)は、好ましくは100~250℃、より好ましくは120~200℃、更に好ましくは150~180℃である。特に、後述する復元防止方法として、硬化剤を含浸させる場合、プレス温度は硬化剤の硬化温度付近であればよく、好ましくは硬化剤の硬化温度±10℃である。プレス温度をこのような範囲とすることにより、発泡体を十分に塑性変形させつつも、各気泡の形状を望ましいものとし、得られる発泡基材の通気度等を所望の範囲とし易い。なお、熱圧縮の時間および荷重としては、所望の厚みの発泡基材となるように調整すればよい。
【0274】
なお、熱圧縮工程は、発泡基材の厚み/発泡素材の厚みが、1/2~1/15、又は1/3~1/10となるように熱圧縮を実施することが好ましい。このような範囲とすることで、熱圧縮成形により発泡基材のセルが緻密となりエアロゲルの脱落を抑制でき、エアロゲル複合材へ柔軟性を付与することも可能となる。
【0275】
発泡素材であるポリウレタン発泡体としては、ポリオール成分としてポリエステルポリオールを含む、ポリエステル系ポリウレタン発泡体が好ましい。このようなポリウレタン発泡体を用いることで、熱圧縮時にポリウレタン発泡体の樹脂成分が熱分解し、溶融残渣によりポリウレタン発泡体の表面に被膜を形成することができる。
【0276】
ここで、熱圧縮により発泡体を塑性変形させた場合に、熱圧縮のみであると、圧縮の荷重を除去した際に、発泡体に復元力が働く場合がある。そこで、追加的に、発泡体が熱圧縮された状態を維持させる方法(復元防止方法)を採用することが好ましい。
【0277】
復元防止方法としては、前述した、発泡素材に未反応のメチロール基を含むようにし、熱圧縮工程において当該メチロール基を反応させる方法が挙げられる。
【0278】
発泡素材に含まれる未反応のメチロール基は、フーリエ変換赤外分光器(FT-IR)での吸収スペクトルの測定により確認することができ、1000~1100cm-1付近での吸収スペクトルのピーク強度からメチロール基の含有量を推定することができる。また、発泡素材を熱圧縮した発泡基材にも、未反応のメチロール基は残存しており、同様の手法により、メチロール基の含有量を推定することができる。
【0279】
また、復元防止方法として、その他にも、熱圧縮工程前の発泡素材に、硬化剤を予め含浸させる硬化剤含浸工程を設け、熱圧縮工程によって当該硬化剤を熱硬化させる方法が挙げられる。複数種類及び/又は複数回の復元防止方法を実施してもよい。特に、発泡素材がメラミン発泡体である場合、硬化剤含浸工程を行うことが好ましい。
【0280】
硬化剤含浸工程における硬化剤としては、加熱することで樹脂中の硬化剤が活性化され、硬化するものであれば特に限定されず、例えば、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。
【0281】
硬化剤含浸工程において、前記発泡素材に含侵させる硬化剤の量としては、発泡素材を100質量部とした際に、硬化剤が0.5~10.0質量部であることが好ましく、1.0~5.0質量部であることがより好ましい。このような範囲とすることで、十分な柔軟性と熱圧縮工程後の形状維持性を両立させることが可能となる。硬化剤含浸工程は実施しても実施しなくともよい。例えば、発泡素材がポリウレタン発泡体またはイミド発泡体である場合、硬化剤含浸工程を実施せずに熱成形してもよい。
【0282】
<<表皮層形成工程>>
エアロゲルの脱落防止機能を更に高めるために、次工程である充填工程の前に、発泡体に表皮層を形成させる表皮層形成工程を設けることができる。即ち、エアロゲル複合材の発泡基材が表皮層を有していてもよい。
【0283】
本工程における表皮層の形成方法としては、例えば、連続気泡を有する発泡体層の熱プレス機や熱ロール機による加熱処理や、繊維体やフィルムといった面材との貼り合わせを挙げることができる。表皮層の形成条件は、材質などによって適宜選択することができるが、例えば、加熱した熱プレス機を用いて、連続気泡を有する発泡体層をプレス処理することで、連続気泡を有する発泡体層の表面に表皮層を形成することができる。プレス条件の例としては、プレス機を250℃に加熱し、圧力を200kg/cm2かけて、5分間プレスする条件を挙げることができる。
【0284】
表皮層の厚みは、特に限定されないが、例えば、0.01~30μmとすることができ、0.01~15μmが好ましく、0.01~10μmがより好ましい。表皮層の厚みがかかる範囲にある場合には、粉落ち防止性が高まる。
【0285】
<<充填工程>>
本発明において、シリカエアロゲル原料とは、シリカエアロゲルの原料液であるゾル溶液、および、当該ゾル溶液をゲル化させて得られた湿潤ゲルの両方を含むものとする。
【0286】
<ゾル溶液の原料>
シリカエアロゲルのシリコーン原料として、シリコーンアルコキシドもしくはその誘導体やケイ酸アルカリ金属塩を用いることができ、水系溶媒に混合してゾル溶液とする。
【0287】
シリコーン原料は、本発明の効果を阻害しない限りにおいて、特に限定されない。シリコーンアルコキシドやその誘導体としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシランオリゴマー、テトラエトキシシランオリゴマー、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、モノヘキシルトリエトキシシラン等を挙げることができる。ケイ酸アルカリ金属塩としては、ケイ酸カリウム、ケイ酸ナトリウム等が挙げることができる。前記シリコーン原料は、複数を組み合せて用いることができる。複数を用いる場合には、その組み合わせ及び配合比率は、目的に応じて選択することができる。
【0288】
シリコーン原料の加水分解には、水と、水に相溶性を有し、シリコーン原料を溶解する溶媒を用いることが好ましい。溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコールや、エタンジオール、プロパンジオール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の脂肪族ジオール、水素化ビスフェノールA、ビスフェノールA、シクロヘキサンジオール等の芳香族ジオール又は脂環式ジオール、グリセリン、ジグリセリン、トリメチロールプロパン、トリスヒドロキシメチルアミノペンタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ヘキサメチロールメラミン等の多価アルコール、ヘキサン、トルエン、クロロホルム、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、アセトン、アセトニトリル等が挙げられる。これらの溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0289】
シリコーン原料を効率良く加水分解するためには、反応系に予め触媒を添加しておくことが好ましい。触媒としては、本発明の効果を阻害しない限りにおいて、特に限定されず、例えば、酸性触媒としては、ギ酸、酢酸、コハク酸、リンゴ酸、クエン酸、塩酸、硝酸、ホウ酸、硫酸、炭酸、リン酸等が、塩基性触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の金属酸化物及び/又は水酸化物、ジメチルアミン、トリエチルアミン、N,N-ジメチルベンジルアミン、アニリン、1,5-ナフタレンジアミン等の脂肪族及び/又は芳香族アミン、アンモニア、2価金属のナフテン酸、2価金属の水酸化物などが挙げられる。これらの触媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0290】
<充填方法>
ゾル溶液の充填方法は、通常、常圧下、又は減圧下で行われる。
【0291】
ゾル溶液の充填方法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、上述した方法により得られた発泡基材を、減圧下で、調製したゾル溶液に完全に含浸することで充填する方法等が挙げられる。
【0292】
具体的には、ゾル溶液を、テトラメトキシシラン(以下TMOSとする):メタノール:水:触媒(アンモニア)をモル比1:7.2:4:0.01で混合したゾル溶液を例にすると、セパラブルフラスコ内に発泡基材を設置し、徐々に前記ゾル溶液を導入することで、発泡基材を完全にゾル溶液内に浸漬し、ゾル溶液を発泡基材に充填することができる。そのままゲル化まで2~3時間放置する。
【0293】
<ゲル化>
発泡基材に充填されたゾル溶液は、ゾル-ゲル反応によって、TMOSが水、触媒により加水分解され、ゾル状態を経て、湿潤ゲルを形成する。ここで湿潤ゲルとは、ゲル化後のゾル溶液の残液等の液体を含んだまま固体状になったものを示す。
【0294】
シリコーンアルコキシドもしくはその誘導体の加水分解によるゾル-ゲル反応により前記発泡基材内の連続気泡内部に湿潤ゲルが形成される。
【0295】
湿潤ゲルを形成した後に、湿潤ゲル中の水や未反応物を除去する工程を有してもよい。この工程で用いられる溶媒は、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコールやアセトン、アセトニトリル等が挙げられる。湿潤ゲルが充填された発泡基材を、前記溶媒に浸漬し、数回溶媒を新しいものに入れ替えることで、工程が完了する。
【0296】
親水性を持つシラノール基に対して反応する官能基と疎水基を有する疎水化処理剤によって、シリカエアロゲル表面のOH基を疎水化する工程を有してもよい。該疎水化処理剤は、シラノール基に対して反応する官能基と疎水基を有するものを用いる。シラノール基に対して反応する官能基としては、例えば、ハロゲン、アミノ基、イミノ基、カルボキシル基、アルコキシル基、及び水酸基が挙げられる。疎水基としては、例えばアルキル基、フェニル基、及びそれらのフッ化物等が挙げられる。疎水化処理剤は、上記官能基及び疎水基を、それぞれ1種のみを有してもよいし、2種以上を有してもよい。例えば、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルジシロキサン、トリメチルクロロシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、ジメチルジクロロシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン等の有機シラン化合物が挙げられ、これ以外にも、酢酸、蟻酸、コハク酸等のカルボン酸や、メチルクロリド等のハロゲン化アルキル等の有機化合物が挙げられる。疎水化処理剤は1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。
【0297】
エアロゲルと発泡基材の密着性を上げて、エアロゲルの脱落を抑制するために、カップリング剤を添加してもよい。カップリング剤としては特に制限されず、任意の好適なカップリング剤を使用することができる。カップリング剤としては、シランカップリング剤を用いることが好適で、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-2-(アミノエチル)―3―アミノプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、トリス-(トリメトキシシリルプロピル)イソシアヌレートなどが挙げられる。
【0298】
<<乾燥工程>>
シリカエアロゲル原料(湿潤ゲル)を乾燥させる乾燥工程を含む。乾燥方法としては公知の方法を用いることができ、特に限定されない。
【0299】
湿潤ゲルを乾燥させる場合には、シリカエアロゲルが壊れ難いため、超臨界流体乾燥が好ましい。超臨界流体乾燥としては、例えば、80℃、20MPa程度の条件で溶媒の全部を、この溶媒より臨界点の低い二酸化炭素に置換しながら除去する方法が挙げられる。
【0300】
<<<<外部層>>>>
エアロゲル積層構造体は、外部層として、第2の発泡体及び/または繊維体を含む。
【0301】
外部層は、発泡体層の表面から、第2の発泡体、繊維体、第2の発泡体/第2の発泡体、繊維体/繊維体、第2の発泡体/繊維体、繊維体/第2の発泡体等のように、適宜の順番で設けられた層構造とすることができる。なお、これらの層構造に、更に、繊維体や第2の発泡体を積層させることも可能である。
【0302】
前述したように、各層は、粘着剤層を介して積層されてもよいし、粘着剤層を介さずに直接積層されてもよい。
【0303】
前述したように、外部層は、エアロゲル複合材の一方の面にのみ設けられていてもよいし、エアロゲル複合材の両面に設けられていてもよい。
【0304】
発泡体層の片面側における外部層の厚みは、特に限定されず、用途に応じて適宜設計可能であるが、例えば、0.1~20mm、5~20mm等とすればよい。
【0305】
エアロゲル複合材に外部層を積層させることで、エアロゲル積層構造体の柔軟性を維持しつつも、エアロゲル複合材からの粉落ちを防止し、エアロゲル積層構造体の断熱性を向上させることができる。また外部層として、断熱性能に優れる第2の発泡体、繊維体、例えばエアロゲルとの複合材、を用いることで、エアロゲル積層構造体の断熱性をさらに向上させることができる。
【0306】
<<第2の発泡体>>
第2の発泡体の材質としては、特に限定されず、用途に応じて、ポリオレフィン系発泡体、アクリル系発泡体、ウレタン系発泡体、酢酸ビニル系発泡体、塩化ビニル系発泡体、エポキシ系発泡体、ゴム系発泡体、シリコーン樹脂系発泡体、メラミン樹脂系発泡体、イミド樹脂系発泡体等とすればよい。
【0307】
第2の発泡体は、樹脂成分以外の成分(各種添加剤等)を含んでいてもよい。
【0308】
第2の発泡体の物性や構造等については特に限定されず、用途に応じて適宜設計可能である。例えば、第2の発泡体は、厚みを0.1~20mmとすることができ、密度を0.010~0.200g/cm3とすることができる。第2の発泡体は、独立気泡樹脂発泡体であっても、連続気泡樹脂発泡体であってもよい。
【0309】
第2の発泡体は、第1の発泡体と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0310】
<<繊維体>>
繊維体は、通常、繊維より構成される繊維シートである。繊維体が繊維シートである場合、織布であっても不織布であってもよい。
【0311】
繊維体を構成する繊維としては、特に限定されず、用途に応じて、金属繊維、有機繊維、無機繊維等から選択できる。繊維は、より具体的には、ステンレス鋼繊維、ニッケル繊維、銅繊維、アルミニウム繊維、銀繊維、金繊維、チタン繊維等の金属繊維;ポリパラフェニレンベンズオキサゾール、ポリエチレンテレフタレ-ト(PET)樹脂、ポリビニルアルコ-ル(PVA)、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、アラミド樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール(PBO)繊維、セルロース、ビニロン、ナイロン、レ-ヨン、アラミド、フェノ-ル系繊維、フッ素繊維、パルプ(繊維)、ケナフ、麻、竹繊維等の有機繊維;ガラス繊維、炭素繊維、シリカ繊維、ロックウ-ル、スラグウ-ル、アルミナ繊維、セラミック繊維等の無機繊維;等から選択すればよい。
【0312】
繊維体は、繊維と樹脂成分(好ましくは熱硬化性樹脂)と、を含む繊維強化樹脂材料であってもよい。この場合の樹脂成分としては、繊維強化樹脂材料として通常使用される従来公知の熱硬化性樹脂(フェノール樹脂やメラミン樹脂等)を使用することができ、例えば、耐熱性や第1の発泡体との密着性等を考慮して適宜選択することができる。繊維体は、各種添加成分を含んでいてもよい。
【0313】
繊維体は、繊維として炭素繊維を含むことが好ましい。更に、繊維体は、炭素繊維織物を含むことが好ましく、炭素繊維織物に熱硬化性樹脂が含浸して硬化した繊維補強材であることが好ましい。エアロゲル複合材を芯材とした炭素繊維複合材を製造することで、優れた断熱性能を付与できる。
【0314】
繊維体は、繊維以外の成分(例えば、バインダー等)を含んでいてもよい。
【0315】
繊維体の物性や構造については特に限定されず、用途に応じて設計可能である。例えば、繊維体は、繊維体に含まれる繊維の平均繊維径を2~30μm等、厚みを0.1~20mm、目付を5~300g/m2又は5~200g/m2等とすることができる。
【0316】
<<<<<エアロゲル積層構造体の製造方法>>>>>
エアロゲル積層構造体は、例えば、エアロゲル複合材の少なくとも片面側に、外部層(第2の発泡体及び/又は前記繊維体)を積層する工程を実施することで、製造可能である。
【0317】
エアロゲル複合材と外部層とを、接着剤等を介して積層させてもよい。この場合、接着剤の種類、および、塗布量等は、用途および各層の材質等に応じて適宜設計可能である。
【0318】
接着剤としては、特に限定されず、本発明の効果を阻害しない限りにおいて、任意の接着剤を使用することができる。例えば、安価で良好な接着性が得られる液状イソシアネートが挙げられる。この液状イソシアネートは、湿分硬化型、すなわち、熱及び触媒の存在下で水(空気中の湿分の場合もある)との反応により反応硬化し、その硬化によって接着剤として機能するものである。芳香族系のTDI(トルエンジイソシアネート)、ポリメリックMDI(4,4’ジフェニルメタンジイソシアネート)、NDI(1,5-ナフタレンジイソシアネート)、TODI(トリジンジイソシアネート)、PPDI(パラフェニレンジイソシアネート)、XDI(キシリレンジイソシアネート)、TMXDI(テトラメチルキシレンジイソシアネート)及びそれらの変成体等が例示できる。好ましくは、ポリメリックMDIや、ウレタン変成、アロファネート変性、ビューレット変性、カルボイミド/ウレトニミン変性等種々の変性がなされた変性TDI、変性MDI等のTDI、MDIの変成体や、それらの混合物の使用が適している。
【0319】
これらのうち、粘度が3~300cPの液状イソシアネートは、浸透性や塗布性等に優れるため、より好ましいものである。また、これらのうち特にポリメリックMDIは蒸気圧が低く無機繊維としてのガラス繊維との親和性が良好で、反応性、接着性、作業性の面で適している。これら液状イソシアネートの種類は、接着性、積層品の剛性、反応性、作業性等に応じて適宜選択して用いられ、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0320】
また、エアロゲル複合材を構成する各層を積層させた後、必要に応じて接着剤等を含有させた状態で、全体を熱圧縮させ、一体化させる工程等を含んでいてもよい。
【0321】
繊維体が熱硬化性樹脂材料を含む場合、熱硬化前の樹脂を含む繊維体を発泡素材に積層した状態で熱圧縮工程を実施することで、発泡基材の熱圧縮(第1の発泡体の形成)と、熱硬化性樹脂材料の熱硬化(繊維強化樹脂材料の形成)と、を同時に実施することも可能である。なお、熱硬化後の熱硬化性樹脂を含む繊維体(繊維強化樹脂材料)と、第1の発泡体とを別々に製造し、必要に応じて接着剤等を介して積層させることも可能である。
【0322】
エアロゲル複合材と外部層とを、接着剤を介して積層させる場合、第1の発泡体として表皮付き発泡体を用いると、表皮によって接着剤が発泡体内部に含浸することが防止されるため、エアロゲル積層構造体の製造容易性が向上する。なお、このような表皮付き発泡体は、エアロゲルの脱落(粉落ち)を抑制できるため、断熱性能の経年劣化の抑制にも寄与する。
【0323】
<<<<<エアロゲル積層構造体の用途>>>>>
エアロゲル積層構造体を熱成形し、エアロゲル成形物として使用することが可能である。
エアロゲル積層構造体は、既存の断熱材と比較して、断熱性能、遮熱性能に優れるため、積層材の厚みを薄くできる。そのため、狭い空間に配した場合でも、空間を圧迫することなく、十分な断熱性能、遮熱性能を発揮することができる。また、エアロゲル積層構造体は、柔軟性(形状追従性)又は成形加工性等に優れていることから、種々の用途に適用することが可能であり、例えば、自動車、鉄道車両、航空機、船舶等の乗り物の屋根の内部に設けられる天井材や、保温部材/保冷部材として、食品や医療、医薬品向け保冷温ボックス、冷凍庫/冷蔵庫や冷凍/冷蔵ショーケース、製氷機、厨房機器といった保冷温機器、冷凍/冷蔵設備等を構成することができる。
【実施例】
【0324】
以下、実施例および比較例によって、本発明のエアロゲル積層構造体についてより詳細に説明するが、本発明はこれらには何ら限定されない。
【0325】
<<<シリカエアロゲル複合材>>>
第1の発泡体を変更し、複数種のシリカエアロゲル複合材を製造した。
【0326】
<<連続気泡樹脂発泡体の製造方法>>
<表皮付きポリオレフィン発泡体の製造方法>
(ポリマー樹脂)
・ランダム型ポリプロピレン
・低密度ポリエチレン
・EPDM(エチレン含量29.5%、ジエン含量5%)
(添加剤)
・ノニオン系界面活性剤(ポリオキシエチレンステアリルアミン)
・核剤(湿式シリカ)
・フェノール系酸化防止剤
【0327】
・実施例1
(樹脂発泡体原料調製、発泡体形成工程)
ランダム型ポリプロピレン58重量部に低密度ポリエチレン15重量部、EPDM(エチレン含量29.5%、ジエン含量5%)20重量部、ポリオキシエチレンステアリルアミン1.5重量部、湿式シリカ5重量部、フェノール系酸化防止剤0.2重量部とを、溶融混練させ、超臨界状態で二酸化炭素を含浸させた後、圧力を解放して発泡させて、押出し成形によって表皮付きポリオレフィン発泡体1を得た。製造条件は、含浸温度が180℃であり、含浸圧力が13MPaであり、含浸時間が20分である。
【0328】
・実施例9
密度が0.05g/cm3になるよう、含浸圧力、含浸時間等の製造条件を調整した以外は、実施例1と同様にして表皮付きポリオレフィン発泡体2を得た。
【0329】
・実施例10
密度が0.28g/cm3になるよう、含浸圧力、含浸時間等の製造条件を調整した以外は、実施例1と同様にして表皮付きポリオレフィン発泡体3を得た。
【0330】
・実施例14
核剤の配合量を3重量部にした以外は、実施例1と同様にして表皮付きポリオレフィン発泡体4を得た。
【0331】
・実施例15
核剤の配合量を7重量部にした以外は、実施例1と同様にして表皮付きポリオレフィン発泡体5を得た。
【0332】
・実施例16
核剤の配合量を9重量部にした以外は、実施例1と同様にして表皮付きポリオレフィン発泡体6を得た。
【0333】
・比較例2
密度が0.40g/cm3になるよう、含浸圧力、含浸時間等の製造条件を調整した以外は、実施例1と同様にして表皮付きポリオレフィン発泡体7を得た。
【0334】
<表皮なしポリオレフィン発泡体の製造方法>
・実施例8
表皮付きポリオレフィン発泡体1の表皮層をスライスして、取り除いたものを、表皮なしポリオレフィン発泡体とした。スライス後の表皮なしポリオレフィン発泡体の厚みは1mmであった。
【0335】
<水分散性樹脂分散体を用いた表皮付き連続気泡樹脂発泡体の製造方法>
(水分散性樹脂分散体)
・水分散性樹脂分散体1
ポリエーテルカーボネート系ウレタンエマルジョン(安定分散型水分散性樹脂;析出率0.8%)、pH8、固形分60%
・水分散性樹脂分散体2
アクリロニトリル・アクリル酸アルキルエステル・イタコン酸共重合体(安定分散型水分散性樹脂;析出率4.9%)、pH9、固形分60%
・水分散性樹脂分散体3
アクリロニトリル-ブタジエンゴムラテックス(不安定分散型水分散性樹脂;析出率33%)、pH11、固形分40%
(アニオン性界面活性剤)
・アニオン性界面活性剤1(牛脂由来のアルキルスルホコハク酸ナトリウム)
分散媒;水、pH9.4、固形分30%
・アニオン性界面活性剤2(ステアリン酸アンモニウム)
分散媒;水、pH11、固形分30%
・アニオン性界面活性剤3(オレイン酸カリウム石鹸)
分散媒;水、pH11.2、固形分30%
(硬化剤)
疎水系HDIイソシアヌレート(官能基数3.5、3量体)
(加硫系ペースト)
10質量部の硫黄、6質量部のチアゾール系加硫促進剤、18質量部の酸化亜鉛2種、13質量部の老化防止剤、及び3質量部の分散剤を50質量部のイオン交換水中に加えてボールミルにて48時間分散して、加硫系ペーストを調製した。
(破泡抑制剤)
トリメンベース(ユニロイヤル社製)
(ゲル化剤)
ケイフッ化ナトリウム
【0336】
・実施例2
(樹脂発泡体原料調製)
水分散性樹脂分散体1のウレタンエマルジョンを主剤として使用し、主剤100質量部に対し、3質量部のアニオン性界面活性剤1、3質量部のアニオン性界面活性剤2 、6質量部の硬化剤を混合して樹脂発泡体原料とした。
【0337】
(発泡体形成工程)
調製した樹脂発泡体原料に空気を加えて発泡させ、離型処理したPETフィルム(厚み38μm)上にキャスティングし、ドクターナイフを用いて成膜した。ドクターナイフは、後述する加熱後の発泡体の厚みが2mmとなるように設定した。得られた膜状の樹脂発泡体を、80℃のオーブンで、1時間加熱して、水分を完全に乾燥させ、表皮付きポリウレタン発泡体を得た。
【0338】
・実施例3
水分散性樹脂分散体として、アクリルエマルジョンである水分散性樹脂分散体2を主剤として使用し、主剤100質量部に対し、3質量部のアニオン性界面活性剤1、3質量部のアニオン性界面活性剤2、3質量部の硬化剤を混合して樹脂発泡体原料とした以外は、実施例2と同様にして表皮付きアクリル発泡体を得た。
【0339】
・実施例4
水分散性樹脂分散体として、ゴムラテックスである水分散性樹脂分散体3を主剤として使用し、主剤100質量部に対し、7.6質量部の加硫系ペースト、0.2質量部のアニオン性界面活性剤3、0.4質量部の破泡抑制剤、10質量部のゲル化剤を混合して樹脂発泡体原料とした以外は、実施例2と同様にして表皮付きアクリロニトリル-ブタジエンゴム発泡体を得た。
【0340】
・実施例12
ドクターナイフを加熱後の発泡体の厚みが0.1mmとなるように設定した以外は、実施例2と同様にして表皮付きポリウレタン発泡体2を得た。
【0341】
・実施例13
ドクターナイフを加熱後の発泡体の厚みが40.0mmとなるように設定した以外は、実施例2と同様にして表皮付きポリウレタン発泡体3を得た。
【0342】
<表皮付きシリコーン発泡体の製造方法>
(シリコーン樹脂発泡体原料)
シリコーン樹脂1:ビニル基を有するポリオルガノシロキサン(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製:XE18-C1103(A)) 白金触媒含有
シリコーン樹脂2:ポリオルガノハイドロジェンシロキサン(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製:NI-0539(B))
発泡助剤:フルオロ変性シリコーンオイル
【0343】
・実施例5
(樹脂発泡体原料調製)
シリコーン樹脂1と、シリコーン樹脂2を、質量比を100:13で混合し、シリコーン樹脂発泡体原料とした。
【0344】
(発泡体形成工程)
調製した樹脂発泡体原料に空気を加えて発泡させ、離型処理したPETフィルム(厚み38μm)上にキャスティングし、ドクターナイフを用いて成膜した。ドクターナイフは、後述する加熱後の発泡体の厚みが2mmとなるように設定した。得られた膜状の原材料を150℃で、1時間加熱して硬化反応を完了させ、表皮付きのシリコーン樹脂発泡体を得た。
【0345】
<熱成形したメラミン発泡体の製造方法>
(発泡素材)
・メラミン発泡体1
未反応のメチロール基を有するメラミン発泡体、密度0.010g/cm3
・メラミン発泡体2
未反応のメチロール基を有するメラミン発泡体、密度0.040g/cm3
【0346】
・実施例6
(熱圧縮工程)
厚み10.0mmの未反応のメチロール基を有するメラミン発泡体1を発泡素材とし、プレス温度160℃にて、厚み1.4mmの発泡基材となるよう、発泡素材を圧縮成形機の熱板間で熱圧縮した。
【0347】
・実施例11
厚み10.0mmの未反応のメチロール基を有するメラミン発泡体2を発泡素材とし、厚み1.8mmの発泡基材となるよう熱圧縮した以外は、実施例6と同様にして熱成形したメラミン発泡体2を得た。
【0348】
・実施例17
プレス温度230℃で熱圧縮した以外は、実施例6と同様にして熱成形したメラミン発泡体3を得た。
【0349】
・実施例18
厚み1.0mmの未反応のメチロール基を有するメラミン発泡体1を発泡素材とした以外は、実施例6と同様にして熱成形したメラミン発泡体4を得た。
【0350】
・実施例19
厚み40.0mmの未反応のメチロール基を有するメラミン発泡体1を発泡素材とした以外は、実施例6と同様にして熱成形したメラミン発泡体5を得た。
【0351】
<熱成形したポリウレタン発泡体の製造方法>
(発泡素材)
・ポリウレタン発泡体
ポリエステル系発泡体、密度 0.015g/cm3
【0352】
・実施例7
(熱圧縮工程)
厚み10.0mmのポリエステル系ポリウレタン発泡体を発泡素材とし、プレス温度160℃にて、厚み1.4mmの発泡基材となるよう、発泡素材を圧縮成形機の熱板間で熱圧縮した。
【0353】
<<エアロゲル複合材の製造方法>>
(ゲル素原料)
テトラメトキシシラン(信越化学工業社製)
(溶媒)
・溶媒1
メタノール(和光純薬工業社製)
・溶媒2
イオン交換水、電気抵抗率1×1010Ω・cm以上
(触媒)
25%アンモニア水(和光純薬工業社製)
【0354】
・実施例1
(ゾル溶液調製)
テトラメトキシシランを主剤として使用し、主剤1モルに対し、7.2モルのメタノール、4モルのイオン交換水、0.01モルの触媒を混合してゾル溶液とした。
【0355】
(ゾル溶液充填工程)
前記表皮付き連続気泡樹脂発泡体を、表皮層を付けたまま、セパラブルフラスコに収納できる大きさに裁断して収納した。調製したゾル溶液を表皮付き連続気泡樹脂発泡体が完全に浸漬するまで加えて、常圧下で3時間静置し、湿潤ゲルが充填された表皮付き連続気泡樹脂発泡体を得た。
【0356】
得られた前記湿潤ゲルが充填された表皮付き連続気泡樹脂発泡体をエタノールに浸漬し、撹拌しながらエタノールを繰り返し交換し、溶媒置換を24時間行った。次に、ゲル表面を疎水化するため、ヘキサメチルジシラザンのエタノール溶液(濃度20質量%)中に浸漬し、撹拌しながら疎水化処理を24時間行った。
【0357】
(乾燥工程)
ゲル表面が疎水化された前記表皮付き連続気泡樹脂発泡体を、80℃、20MPaの二酸化炭素中に含浸させ、超臨界流体乾燥を12時間行って、実施例1のエアロゲル複合材を得た。エアロゲル複合材におけるエアロゲルの充填率は95%だった。
【0358】
・実施例2~21、比較例1、2
各表に示した連続気泡樹脂発泡体を用いた以外は、実施例1と同様にしてエアロゲル複合材を得た。
【0359】
<<<<エアロゲル積層構造体>>>>
<<<実施例1の調製>>>
シリカエアロゲルを充填した表皮付きポリオレフィン発泡体1に、450g/m2のイソシアネート系バインダー(クルード・メチレンジフェニルジイソシアネート)を含浸させた。発泡体1の両面にガラス繊維マット(ガラス繊維不織布、平均繊維径12μm 、厚み1mm、目付量:100g/m2)を、ガラスマットの一方の表面に表面材(ポリエステル不織布)、他方の表面に裏面材(ポリプロピレンのホットメルトフィルムとポリプロピレンの不織布の積層体)をそれぞれ積層し、熱プレス(ホットプレス、120℃)にてエアロゲル積層構造体を得た。熱プレス時の圧縮によって、発泡体1から滲出させてガラス繊維マットにバインダーをそれぞれ含浸させた。また、表面材の接着は、ガラス繊維マットに含浸してガラス繊維マットの表面に浸出したバインダーによって、裏面材の接着はホットメルトフィルムの溶着によってそれぞれ行った。
【0360】
<<<実施例2~19、比較例1、2の調製>>>
各表に示した連続気泡樹脂発泡体を用いた以外は、実施例1と同様にしてエアロゲル積層構造体を得た。
【0361】
<<<実施例20の調製>>>
シリカエアロゲルを充填した表皮付きポリオレフィン発泡体の片面にガラス繊維マットを、ガラスマットの片面に表面材をそれぞれ積層した以外は、実施例1と同様にしてエアロゲル積層構造体を得た。
【0362】
<<<実施例21の調製>>>
シリカエアロゲルを充填した表皮付きオレフィン発泡体の両面にポリウレタン発泡体(厚み4mm、密度40kg/m3)を積層し、ポリウレタン発泡体の一方の表面に表面材(ポリエステル不織布)、他方の表面に裏面材(ポリプロピレンのホットメルトフィルムとポリプロピレンの不織布の積層体)をそれぞれ積層した以外は、実施例1と同様にしてエアロゲル積層構造体を得た。
【0363】
<<<実施例22の調製>>>
シリカエアロゲルを充填した表皮付きオレフィン発泡体の両面に炭素繊維織物(繊維重さ200g/m2の炭素繊維織物にフェノール樹脂を含浸し、60℃で乾燥させたもの)をそれぞれ積層し、180℃、10MPaで5分間、圧縮成形機の熱板間で熱圧縮した以外は、実施例1と同様にしてエアロゲル積層構造体を得た。
【0364】
<<<実施例23の調製>>>
シリカエアロゲルを充填したメラミン発泡体の両面に炭素繊維織物(繊維重さ200g/m2の炭素繊維織物にフェノール樹脂を含浸し、60℃で乾燥させたもの)をそれぞれ積層した以外は、実施例22と同様にしてエアロゲル積層構造体を得た。
【0365】
<<<比較例3の調製>>>
エアロゲル複合材の代わりに、硬質ポリウレタン発泡体(厚み6mm、密度40kg/m3)を用いた以外は、実施例1と同様にして積層構造体を得た。
【0366】
<<<比較例4の調製>>>
エアロゲル複合材の代わりに、真空断熱材(グラスウールを芯材とする真空断熱材、芯材:平均繊維径10μm、密度150kg/m3)を用いた以外は、実施例1と同様にして積層構造体を得た。
【0367】
<<<比較例5の調製>>>
ガラス繊維マットに150g/m2のイソシアネート系バインダーを含浸させ、表面材、裏面材をそれぞれ積層し、熱プレス(ホットプレス、120℃)にて積層構造体を得た。
【0368】
<<<比較例6の調製>>>
エアロゲル複合材の代わりに、表皮付きポリオレフィン発泡体(密度0.015g/cm3)を用いた以外は、実施例22と同様にして積層構造体を得た。
【0369】
<<<<評価>>>>
<<<連続気泡樹脂発泡体の評価>>>
上記のようにして作製した実施例及び比較例の連続気泡樹脂発泡体について、下記に示す方法に従い評価した。
【0370】
・平均セル径比の測定
各実施例及び比較例のエアロゲル複合材のRA及びRBを以下の方法で求めた。
走査型電子顕微鏡(SEM、株式会社キーエンス製、VHXD-500)を用いて、表皮層の法線方向からのセル写真を撮影した。その後、画像処理ソフトImage-ProPLUS(MediaCybernetics社製、6.3ver)を用いて、SEM画像を読み取り、コントラストでセルを認識するため、コントラストを調節した。次に、画像処理でセルの形状を読み取る(真円ではなく、形状をそのまま認識する)。次に、測定項目として「直径(平均)」を選択する。次に、オブジェクトの重心を通る径を2度刻みで測定しそれを平均した値として、各セル径を算出し、RAとした。
表皮層表面に垂直な断面についても、同様にセル写真を撮影し、RBを求めた。
【0371】
<<通気度量の評価>>
通気度量は、JIS L1096-7:2010 「織物及び編物の生地試験方法:A法(フラジール形法)」に準拠して、織布通気度試験機(東洋精機工業社製:KM-404P)を用いて測定したものを、評価基準に従い評価した。
【0372】
<評価基準>
「◎」は「通気度量が25cm3/cm2/sec以上」を、「○」は「通気度量が10cm3/cm2/sec以上25cm3/cm2/sec未満」を、「△」は「通気度量が0.5cm3/cm2/sec以上10cm3/cm2/sec未満」を、「△△」は「通気度量が0.01cm3/cm2/sec以上0.5cm3/cm2/sec」を、「×」は「0.01cm3/cm2/sec未満」をそれぞれ示す。
【0373】
<<熱伝導率の測定>>
熱伝導率の測定は、JIS A1412-2:1999「熱絶縁材の熱抵抗及び熱伝導
率の測定方法-第2部:熱流計法(HFM法)」に準拠して、熱伝導率測定装置(英弘精
機社製:HC-72)を用いて測定した。
【0374】
<<<実施例1-21、比較例1-5のエアロゲル積層構造体の評価>>>
上記のようにして作製した実施例1-21及び比較例1-5のエアロゲル積層構造体について、下記に示す方法に従い評価した。
【0375】
<<断熱性>>
断熱性は、下記手法に従って測定したものを、評価基準に従い評価した。
【0376】
<評価手法>
試料を80℃に加熱したヒーター上に5分間静置し、5分後の試料の表面温度を測定した。
試料の厚みと表面温度から、単位厚みあたりの温度変化を算出した。
単位厚みあたりの温度変化(℃)は(ヒーター温度80(℃)-試料の表面温度(℃))/試料の厚み、で計算した。
【0377】
<評価基準>
「◎」は「単位厚みあたりの温度変化が10℃超」を、「○」は「単位厚みあたりの温度変化が5℃超10℃以下」を、「△」は「単位厚みあたりの温度変化が2℃超5℃以下」を、「×」は単位厚みあたりの温度変化が2℃以下」をそれぞれ示す。
【0378】
<<遮熱性>>
遮熱性は、下記手法に従って測定したものを、評価基準に従い評価した。
【0379】
<評価手法>
天井に250W赤外線電球を、ボックス内部に硬質ポリウレタン発泡体で囲った断熱ボックス(250mm×250mm×高さ250mm)を備えたアクリル製ボックス(300mm×300mm×高さ500mm)にて、断熱ボックスの上部に天井パネルとして20mm厚の黒色鉄板と、試料を設置した。また、断熱ボックスの底部から100mmの高さに温度計を設置し、温度測定点とした。
赤外線電球を点灯させ、30分後の温度測定点での雰囲気温度を測定し、天井パネルのみの場合の雰囲気温度との温度変化を算出した。
温度変化(℃)は(天井パネルのみの場合の30分後の雰囲気温度(℃)-天井パネル+試料の場合の30分後の雰囲気温度(℃))、で計算した。
【0380】
<評価基準>
「○」は「温度変化が10℃以下」を、「△は温度変化が5℃以上10℃未満」を、「×」は「温度変化が5℃未満」をそれぞれ示す。
【0381】
<<柔軟性>>
柔軟性(屈曲性)は、JIS K 7171:2016 「プラスチック-曲げ特性の求め方」に準拠して測定したものを、評価基準に従い評価した。
【0382】
<評価基準>
「○」は「試験片が割れなく折れ曲がる」を、「△」は「135度超180度以下の屈曲で割れる」を、「×」は「135度以下の屈曲で割れる」をそれぞれ示す。
【0383】
<<粉落ち性>>
粉落ち性は、下記手法に従って測定したものを、評価基準に従い評価した。
【0384】
<評価手法>
試料を10mm×50mmの試験片に加工し、スコット型揉み試験機(東洋精機製作所製)を用いて、試験片間隔を20mm、ストローク間隔40mm、圧縮荷重200gfとして1200回(往復速度120回/分)揉んだ前後の試験片重量から粉落ち率を算出した。
粉落ち率(%)は(試験前重量(g)-試験後重量(g))/試験前重量(g)×100、で計算した。
粉落ち率が大きいほど、エアロゲルの脱落が多いことを示す。
【0385】
<評価基準>
「◎」は「粉落ち率が3%以下」を、「○」は「粉落ち率が3%超10%以下」を、「△」は「粉落ち率が10%超15%以下」を、「×」は「粉落ち率が15%超」をそれぞれ示す。
【0386】
<<<実施例22、23、比較例6のエアロゲル積層構造体の評価>>>
実施例22、23及び比較例6のエアロゲル積層構造体について、下記に示す方法に従い評価した。
【0387】
<<断熱性>>
断熱性は、上記同様に評価した。
【0388】
<<断熱性>>
遮熱性は、上記同様に評価した。
【0389】
<<成形加工性>>
成形加工性は、下記手法に従って測定したものを、評価基準に従い評価した。
【0390】
<評価手法>
炭素繊維織物の軟化点以上に試験片を加熱し、金型を用いて所定の形状に成形する。
成形前後での試験片重量から重量変化率を算出した。
重量変化率(%)は、(試験前重量(g)-試験後重量(g))/試験前重量(g)×100で計算した。
重量変化率が大きいほど、エアロゲルの発泡体からの脱落や、加熱によるエアロゲルや発泡体の分解が多いことを示す。
【0391】
<評価基準>
「○」は「重量変化率が5%以下」を、「△」は「重量変化率が5%超15%以下」を、「×」は「重量変化率が15%超、または試験片を所定形状に成形できない」をそれぞれ示す。
【0392】
【0393】
【0394】
【0395】
【0396】
【0397】
【0398】